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黒大豆「丹波黒」の原産国 - 独立行政法人農林水産消費安全技術センター

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黒大豆「丹波黒」の原産国 - 独立行政法人農林水産消費安全技術センター
コンブの原産国判別マニュアル
平成 20年11月 4日
独立行政法人 農林水産消費安全技術センター
目次
ⅰ)はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
ⅱ)検査における一般事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
ⅲ)試薬の管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
ⅳ)安全性に関する情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
1 判別の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2 適用範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3 試料の購入及び保存 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
4 装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
5 試薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
6 操作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
7 分析法の妥当性確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
8 原産国の判別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
9 判別の確かさに関する情報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
表1
ICP−MSでの測定条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
表2
添加回収試験での許容回収率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
表3
必要とされる検出限界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
表4
操作ブランク値の限界値・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
表5
原産国についての判別関数の係数と定数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
ⅰ)はじめに
本マニュアルは、独立行政法人農林水産消費安全技術センターが、コンブ(マコンブ、リシリコンブ、
ミツイシコンブの素干など一次加工品)の原産国を判別し、その原産地表示が正しく行われているかどう
かを判定するための検査方法について記述している。
我が国における加工食品の品質表示は、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
の加工食品品質表示基準(平成12年3月31日農林水産省告示第513号)に基づき、平成13年4月1日から名称、
原材料名などを表示することが義務付けられ、さらに平成16年9月14日から生鮮食品に近い加工食品に原
料の原産地を表示することが義務付け(平成18年10月1日までは移行期間)られている。コンブは原則と
して、国産品は原料原産地名、輸入品は原産国名を記載することになっている。
コンブは輸入量を制限されている IQ 品目であり、輸入品は国内流通量の 10%程度になるように調整され
ている。平成 18 年における輸入コンブの 90%以上が中国産である。品種については日本のマコンブ
(Laminaria japonica )が中国の遼寧省に移植され中国でもマコンブの生産が開始されたが、現在、リシリ
コンブ(Laminaria ochotensis )、ミツイシコンブ(Laminaria angustata )などマコンブ以外の品種は中国で
は生産されていない。中国産マコンブの生産量は日本産コンブの生産量を大きく上回っており、中国産マ
コンブの価格は日本産コンブの価格の 3 分の 1 以下である。このことから中国産マコンブが日本産コンブ
と表示偽装されることが懸念されることから、これらの原産地表示の真正性を科学的に検証する技術の開
発が求められてきた。そこで、コンブ(マコンブ、リシリコンブ、ミツイシコンブ)の原産国(日本産及び中
国産)を判別するための手法を開発し、独立行政法人農林水産消費安全技術センターにおいて検査できる形
にマニュアル化した。
本マニュアルにおける判別法は、コンブを洗浄、粉砕、乾燥、酸分解し、試料溶液とした後、試料溶液
中のMn及びBaの2元素を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)により分析し、得られた値を統計解
析することにより原産国の判別を行う。
ⅱ)検査における一般事項
コンブに含まれる微量元素を対象として定量測定するので、汚染に注意する。
(1)ガラスからは様々な元素が溶出するため、酸分解などの酸に接する用途でガラス器具を用いてはなら
ない。
(2)ステンレスなどの金属は汚染の原因になるため、試料には金属が接しないように注意する。
(3)市販のラップ類や試験・研究用のワイパー類には様々な元素が付着していることがあるので、過信せ
ず、試料を包んだり、拭いたりしないように注意する。
(4)高濃度の酸を扱うので白衣、防護メガネ等を着用し、局所排気のあるところで注意深く作業する。
ⅲ)試薬の管理
(1)硝酸は「毒物及び劇物取締法」における劇物に指定されているため、鍵のかかる劇物庫に保管する。
(2)過塩素酸は危険な試薬であるため、鍵のかかるところに保管する。なお、当試薬は「消防法」におけ
る危険物第 6 類に指定されている。
(3)元素の標準溶液も硝酸などの溶液中に高濃度に元素が含まれるため、鍵のかかるところに保管する。
2
ⅳ)安全性に関する情報
(1)硝酸
酸化力が強い、腐食性の劇物。体に付着すると激しく侵し、皮膚に少量でも付着すると黄色く変色さ
せる。衣類や靴などに付着すると生地を酸化・分解する。高温、高濃度のものを取り扱うので、 蒸気を
吸引したり、皮膚や衣服に付着したりしないように、必ず樹脂製の手袋、防護メガネをし、作業着また
は白衣、作業靴を身につけて注意深く扱うこと。
(2)過塩素酸
不安定で爆発しやすく、強い酸化力を持つ。有機物との反応性が高く、高温、高濃度で有機物と接触
すると爆発する。酸分解では必ず、硝酸と混ざった状態で試料の分解を行うこと。樹脂製の手袋、防護
メガネをし、作業着又は白衣、作業靴を身につけて注意深く扱うこと。
上記の酸に対する応急措置
・吸入した場合:直ちに新鮮な空気のある場所に移動し、鼻をかみ、うがいをする。
・皮膚に付着した場合:直ちに付着部を大量の水で十分に洗い流す。
・目に入った場合:直ちに流水で十分に洗浄し、眼科医の処方を受ける。
・飲み込んだ場合:直ちに水又はできれば卵白を混ぜた牛乳を飲み、医師の処方を受ける。
3
1 判別の概要
コンブを洗浄後、粉砕、乾燥し、開放系での酸分解をすることで有機成分を揮散、溶液化させ、試料溶
液とする。ICP-MSにより試料溶液に含まれる2元素を定量し、得られた分析値を判別関数に代入すること
で国産か中国産かを判別する。
2 適用範囲
コンブのうち、原料原産地名が日本産である旨の表示があるコンブ(細切若しくは細刻したもの又は粉
末状にしたものを除く)に適用する。
3 試料の購入及び保存
3.1 試料の購入
コンブは、パック詰めで売られていることが多いが、同一ロットで約40g以上を購入することとする。
3.2 試料の保存
試料は、粉砕操作に入るまで、冷暗所(14℃前後が最適)で保存する。
なお、粉砕した試料は、速やかに分析に着手する。
4 装置
4.1 洗浄
・
樹脂製まな板
・
キムタオル
・
ポリ袋
4.2 粉砕
・
パウダーフリー手袋:塩化ビニール樹脂製で超純水洗浄加工済みのもの。
・
ミキサー:B-400、セラミック刃装着、BÜCHI製(注2)
4.3 乾燥
・
恒温乾燥機
・
デシケーター(シリカゲル入り)
・
50ml樹脂製保存瓶(SIMPORT 50ml SAMPLE TUBE NONSTERILE SELF-STANDING)(注2)
4.4 酸分解
・
電子天秤:0.1 mgまで秤量可能
・
酸用ドラフトチャンバー:過塩素酸対応
・
ホットプレート:温度制御可能(120 - 230 ℃)
・
ヒータブルビーカー:テフロン製、耐熱性(250 ℃)(注1)
・
時計皿:テフロン製(注1)
・
50mlコニカルチューブ
4
4.5 ICP-MSによる測定
・
樹脂製全量フラスコ:(注1)
・
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)(注3)
・
マイクロピペット:分注可能範囲20 µl∼10 ml
5 試薬
5.1 洗浄
・
超純水:比抵抗値18 MΩcm以上
5.2 酸分解
・
超純水:比抵抗値18 MΩcm以上
・
61 %硝酸:高純度電子工業用
・
61 %過塩素酸:原子吸光分析用
・
1%硝酸:61 %硝酸を超純水で 61 倍希釈により調製
同等品(注2)
同等品(注2)
5.3 ICP-MS による測定(注 3)
・超純水:比抵抗値 18 MΩcm 以上
・1%硝酸:61 %硝酸を超純水で 61 倍希釈により調製
・内標準用単元素標準溶液:原子吸光用、化学分析用又は ICP 測定用(例
In 標準溶液)
・測定用混合標準溶液
下記2元素の原子吸光用、化学分析用又はICP測定用の単元素又は多元素混合標準溶液同等品を1 %硝酸
により希釈してBa及びMnは500、50及び0 µg/lに調製し、これら混合標準には全て内標準元素(In)を希釈
後5 µg/lになるよう添加しておく。なお、6.5(7)で、希釈する場合は、希釈倍率を考慮の上、調製する。
6 操作
6.1 分析対象
同一ロット商品から約 20g 以上をロットを代表するように抽出する。この際、仮根部及び仮根部付近と
思われる部位が含まれる場合はこれを取り除く。
6.2 洗浄
(1)樹脂製まな板の上で、超純水を十分に含ませたキムタオルを用い、コンブ表面の夾雑物をふき取る。
(2)超純水をコンブ表面にリンスする。
(3)洗浄したコンブはポリ袋に入れ粉砕まで保管する。また、洗浄後は速やかに粉砕を行う。
6.3 粉砕
(1)洗浄したコンブをミキサー用ビーカーに採取し、ミキサーに取り付け、粉砕する。
(2)
粉砕した試料は樹脂製保存瓶に 25ml 程度採取しておく。
5
6.4 乾燥
(1)試料を樹脂製保存瓶に入れた状態で恒温乾燥機を用いて、常圧、105 ℃、12 時間以上乾燥する。
(2)乾燥終了後、容器の口を密閉し、デシケーター中で保存する。
6.5 酸分解
開放系での酸分解の操作を以下に示す(注 4)。分析は全て 2 点または 3 点併行で行い、試料を加えな
いで行う空試験(操作ブランク分析)も併行して行う。
(1)粉砕乾燥試料を、約 0.5 g をヒータブルビーカーに秤量する。
(2)採取した試料に 61 %硝酸 10 ml を加え、試料が浸るようにする。時計皿をして、ホットプレート上
で穏やかに加熱(約 120 ℃)する。加熱直後に粉砕試料が気泡を含み膨張するため、膨張が認められ
たら降温し、低温にて分解を進める。
(3)褐色のガスが発生する激しい反応が収まったらホットプレートから降ろし、61 %過塩素酸を 2.5 ml
加え、徐々に温度を上げながら加温(約 230 ℃)する。
(4)分解溶液が透明かつ無色または薄い黄色(
この程度では不十分)になるまで分解を続ける。
(5)時計皿をはずし、完全に分解液を蒸発・乾固させる。なお、途中分解液がこげ茶色になったら61 %
硝酸2 ml(分解液が少量しか残っていない場合にはさらに少量の過塩素酸)を加えて分解を続け、分
解残留物が無色または薄い黄色(
この程度では不十分)になるまで続ける。
(7)1%硝酸を加え、ビーカー内の残留物をホットプレート上で加温・溶解し、コニカルチューブに 25ml
まで定容する。必要な場合は、さらに 1%硝酸で適宜希釈する。また、内標準元素(In)を定容後 5 µg/l
になるように添加して ICP-MS 用試料溶液とする。
6.6 ICP-MS による測定(注 3)
内標準法(内標準=115In)により 55Mn 及び 137Ba を定量する。
測定条件は表 1 の条件を参考に各装置での最適条件を設定する。その際には、標準溶液及び試験溶液の
各元素の質量数のプロファイルをとり、目的のピークを過不足無く捉えるように設定する。検量線は 3 点
で作成する。
6.6.1 一般的な ICP-MS(四重極型)の手順
(1)アルゴンガスを供給し、RF ジェネレイター、ICP-MS 制御用パソコン及び排気ダクトの電源を入れ、
吸引とドレイン用チューブを適切にペリスタリックポンプに取り付ける。
(2)プラズマを点火し、正常にプラズマが点灯しているか確認する。
(3)超純水を吸引させ、正常に吸引・排水されているか確認する。
(4)チューニング液を吸引し、感度、酸化物イオンと二価イオンの生成状態、分解能などを最適化する。
(5)標準溶液を測定し、検量線を作成する。各元素の検量線が適正に作成されていることを確認し、適正
でない場合には再度標準溶液を測定し、適正な検量線が得られるようにする。
(6)検量線作成に使用した標準溶液(3 点)を未知試料として測定し、既知濃度から大きく外れていない
ことを確認する。大きく外れている場合には、検量線を引き直す。
(7)試料溶液を測定する。
6
(8)試料溶液の測定の間にも検量線作成に使用した標準溶液(3 点)を未知試料として測定する。
(9)1 %硝酸と超純水をそれぞれ 5 分以上順次吸引させ、ネブライザー、トーチ等を洗浄し、プラズマを
消灯する。
(10)吸引とドレイン用チューブをペリスタリックポンプから外し、RF ジェネレイター、ICP-MS 制御用
パソコン及び排気ダクトの電源を切り、アルゴンガスの供給を止める。
6.6.2 ICP-MS で必ず行うべき事項
(1)新たに混合標準溶液を調製した際には、その混合標準溶液を、別のメーカーの標準溶液を用いて調製
した多元素混合溶液またはメーカーの既に混合されている多元素混合溶液と続けて測定して比較する
ことで、間違いなく正確に調製されていることを確認する。
(2)検量線作成後、試料を測定する前と後に混合標準溶液(3 点)を未知試料として測定する。12∼15
試料おきにも混合標準溶液を未知試料として測定する。既知濃度と大きく外れている場合には、計算
時に前後の測定値を用いて補正し、また、以降の測定のため検量線を引き直す(注 5)。
6.7 コンブ中の含有元素量
6.7.1 コンブ中の無機元素濃度の算出
得られた測定値から、次式により各元素の濃度を求める。6.5(7)で、希釈した場合は、希釈倍率を考慮し
濃度を算出する。
xE = 25( AE − BE ) / W
xE:コンブ中の元素Eの濃度(µg/g)
AE:元素Eの測定値(µg / ml)
BE:元素Eのブランク値の平均値(µg/ml)
W:採取試料重量(g)
上式により得られた併行分析の各無機元素濃度の平均値を解析に用いる。ただし、平均濃度の算出は、6.
7.2 併行分析値の取り扱いに従う。また、xEが7.3で求めた検出限界未満の場合は、0として解析に用
いる。
6.7.2 併行分析値の取り扱い
汚染などの理由から併行分析により得られた元素濃度が大きくばらつくことがあるため、次の基準に従
って併行分析値を取り扱う(注6)。
2点併行で分析した場合:
2点の併行分析により得られた元素濃度の差が、次式により得られる基準値(D(2))より小さい場合には2
点の平均値を解析に用いる。大きい場合には、2点併行で再度分析を行う。
D(2) = 0.028 RSDE xE
xE:2点の併行分析により得られた元素Eの濃度の平均値
RSDE:7.1 分析精度の妥当性確認により得られた元素Eの相対標準偏差。次式により求める。
RSDE = 100 × √((VA1 /Av1 2+VA2 /Av2 2+VA3 / Av3 2)/3) (%)
7
VA1、VA2、VA3:2点併行での3回の分析(1∼3)の分散
Av1、Av2、Av3:2点併行での3回の分析(1∼3)の平均値
再分析を行って得られた4点のデータの最大値と最小値の間の差が、次式により得られる基準値(D(4))よ
り小さい場合には4点の平均値を解析に用いる。大きい場合には、4点のうち2番目に大きい値と3番目に大
きい値の平均値を解析に用いる。
D(4) = 0.036 RSDE xE
xE:4点の併行分析により得られた元素Eの濃度の平均値
RSDE:7.1 分析精度の妥当性確認により得られた元素Eの相対標準偏差
3点併行で分析した場合:
3点の併行分析により得られた元素濃度の最大値と最小値の差が、次式により得られる基準値(D(3))より
小さい場合には3点の平均値を解析に用いる。大きい場合には、中央値(2番目に大きい値)を解析に用い
る。
D(3) = 0.033 RSDE xE
xE:3点の併行分析により得られた元素濃度の平均値
RSDE:7.1 分析精度の妥当性確認により得られた元素Eの相対標準偏差
7 分析法の妥当性確認
本手法では分析値を統計解析し、原産国を判別するため、下記の要件(7.1∼7.4)を満たす妥当性の
確認された分析法により、精確な分析値を得る必要がある。
7.1 分析精度の妥当性確認
同一のコンブ粉砕試料から 7 試料以上サンプリングしてそれぞれについて分析し、繰り返し精度(相対
標準偏差:RSDr)を求める。これが Horwitz 式の修正式(注 7)の室間相対標準偏差の 2×2/3=4/3 倍以
内に入るようにする(注 8)。
7.2 分析の真度の妥当性確認
認証標準物質分析か添加回収試験のどちらかにより分析法の真度の妥当性確認を行う。
7.2.1 認証標準物質分析による確認
認証標準物質分析により、分析真度の妥当性確認を行う。できるだけコンブとマトリックスが近く、元
素の濃度レベルが近い植物体などの認証標準物質で分析を行う。Mn 及び Ba の分析値の平均値(x)と認証
値(µ)との間のずれ(|x-µ|)が次の式の範囲に入るようにする。
|x-µ|≦u+2s/√n
u:標準物質に示されている不確かさで、真値が 95%信頼限界に入る範囲
s:認証標準物質での繰り返し分析の標準偏差(3 点以上行うこと)
n:認証標準物質での繰り返し分析回数(3 点以上行うこと)
なお、s は Horwitz 式の修正式(注 7)の室間相対標準偏差の 4/3 倍以内に入るようにする。
8
7.2.2 添加回収試験による確認
コンブ粉砕試料において、測定対象元素を、元素含有量の 1/2 量∼同量程度(元素含有量が定量下限値
(検出限界値×10/3)の 2 倍を下回る元素にあっては定量下限値の 2 倍程度)添加したものと、添加しな
いもの両方を分析し、添加による回収率が表 2 に定める条件の範囲に入るようにする。
7.3 検出限界の確認
試料を加えずに分解から機器測定まで、未知試料と同様の操作を行う空試験(操作ブランク分析)の分
析値(= 25ml×ブランク測定値 / 0.5g:6.5(7)で、希釈した場合は、希釈倍率を考慮する)の標準偏差の 3
倍を検出限界とする。操作ブランク値の数は 7 点以上とし、それらの標準偏差を用いて求める。ただし、
分析値の日間差等をなくすため、2 回以上の併行試験によって得られた操作ブランク値を用いて標準偏差
を求める場合には、併行分析の分散の平均値の平方根を取ることで標準偏差を求める(例)。また、この値
が表 3 の値以下になるようにする。
(例)3 点併行のブランク分析で得たブランク値(3 点)4 回分、計ブランク値 12 点を用いて求める場合
検出限界=3×√((VA1 +VA2 +VA3 +VA4 ) / 4)
VA1、VA2、VA3、VA4:4 回の分析(1∼4)の分散
7.4 操作ブランク値の確認
分析操作による汚染等により、操作ブランク値がある一定の値を持つことがある。ブランク値があまり
にも大きいと精確な定量値を得ることが困難になるため、表4の操作ブランク値の限界値を超えないように
する。
8 原産国の判別(注9)
6.7.1により得られる元素濃度の平均値を判別関数(式1)に代入し、原産国を判別する。試料の表示品
種「マコンブ」、「リシリコンブ」、「ミツイシコンブ(日高昆布)」、「品種表示なし」に対応した係数及
び定数を用いる(表5)。これらの関数はMn及びBaの濃度を独立変数とする一次関数であり、未知試料の
元素濃度を代入し、得られた判別得点が正の値を示すと「国産」、負の値を示すと「中国産」と判定する。
(式1)
yg = kg,Mn xMn + kg,Ba xBa + Cg
g:表示品種=マコンブ、リシリコンブ、ミツイシコンブ(日高昆布)及び品種表示なし
yg:表示品種に対応する判別関数
kg,Mn, kg,Ba:Mn及びBaの元素濃度に対応するygの係数
xMn, xBa:Mn及びBaの濃度(µg / g)
Cg:ygの定数
9 判別の確かさに関する情報
モデリングに用いた試料をそれぞれの表示品種に対応した判別関数により判別したところ、「マコンブ」
(150点)及び「リシリコンブ」(120点)では100%、「ミツイシコンブ」(120点)は97.5%及び「品種
表示なし」(250点)は99.6%の的中率であった。それぞれの判別関数の判別精度を10-fold cross validation
(1/10の試料のデータを除いて新たに判別モデルを構築し、除いた試料について予測する操作を10回行い、
9
全試料を予測することで判別精度を得る)により確認した結果、
「マコンブ」及び「リシリコンブ」は100%、
「ミツイシコンブ」は97.5%及び「品種表示なし」では99.6%の的中率であった。
(注1)
20%以上の硝酸に1晩以上浸漬し、水道水で洗い流した後に超純水で十分に濯いだ清浄なものを使
用すること。
(注2)ここで示す装置、試薬、器具に限定しないが、取り扱いやすいため例として示した。
(注3)求める精確さで測定できるものであれば、各元素測定に用いる機器はここで示す機器に限定しない。
本マニュアルでは一例として、Agilent Technologies製 Agilent 4500での測定例を示した。
(注4)密閉系で酸分解を行う場合は、有機物の分解が完了し、求める精確さで測定できる条件を設定して
行う。
(注5)目安として、高濃度側の混合標準の測定値が5 %を越えて外れた場合には、検量線を引き直すと共
に、(混合標準の濃度)/(前後の混合標準の測定値の平均値)を試料測定値に乗ずることで
補正する。ただし、ゼロ及び低濃度側の混合標準の測定値、測定時の状況及び検量線を作り直
すのに必要な操作等も考慮に入れて適宜対応すること。
(注6)ISO 5725-6:1994(JIS Z 8402-6 : 1999 )を参考にした。
(注 7)Horwitz 式の修正式
22
RSDR(%)=
( c < 1.2×10-7 )
2c -0.1505 (1.2×10-7
≦
c ≦ 0.138 )
c -0.5 ( c > 0.138 )
RSDR(%)は室間の相対標準偏差、c は質量分率で表した濃度を示す。なお、修正式を用いるに
あたり、分析値を質量分率に換算した値をc に代入すること。濃度2 µg / gは、c = 2×10-6 とな
る。
(注8)HORRATが2以内とする基準を用いた。ただし、RSDrを室間での繰り返し精度に換算するため、
3/2を乗じた。
(注9) このモデルは、STATISTICA Pro 06J(スタットソフトジャパン製)により、国産マコンブ80試
料、リシリコンブ50試料、ミツイシコンブ50試料及び中国産マコンブ70試料のデータを用いて、
国産品−中国産品の2群に分類するモデルとしてステップワイズ線型判別分析により構築した。本
判別法の信頼性を維持するため、定期的に由来の確かな試料について分析を行うことで、判定の
基準値を更新していくことが望ましい。
10
表1
ICP−MS での測定条件
プラズマ条件
RF パワー
1.3 kW
補助ガス
1.00 l/min
キャリアガス
1.20 l/min
プラズマガス
14.80 l/min
ペリポンプ回転速度
0.1 rps
データ採取条件
データポイント
3 点/ピーク
積分時間
0.10 秒/点
繰り返し数
表2
添加回収試験での許容回収率
表3
濃度(μg/kg) 許容回収率(%)
3回
元素
m/z
Mn
55
Ba
137
必要とされる検出限界
元素
(μg/g)
100<
80-120
Mn
0.07
10-100
75-125
Ba
0.07
1-10
70-130
表4
操作ブランク値の限界値
表5
表示品種ごとの判別関数の係数と定数
元素
(μg/g)
元素
マコンブ
リシリコンブ
ミツイシコンブ
品種表示なし
Mn
0.2
Mn
-0.4909
-0.4039
-0.2348
-0.3703
Ba
0.4
Ba
-4.2277
-4.1338
-2.0814
-3.2509
定数
38.98
36.42
22.68
34.31
11
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