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新規スフェランドの合成と超原子価 5 配位スズアート錯体の安定化
新規スフェランドの合成と超原子価 5 配位スズアート錯体の安定化 Synthesis of New Spherands and Stabilization of Pentaorganostannate 鈴川 直幸、柏葉 崇、松川 史郎、山本 陽介(広大院理) 【序】スフェランド 11, 2 は、現在知られている Liに対する包接能を有する化合物中、 最大の錯形成力を持ち、かつ包接した Liをメトキシ基が完全に覆い隠すため、強 制的にアニオンとカチオンを引き離すことが可能である。この特徴を利用すれば、 反応性が高い不安定なアニオン種を裸の状態で発生させることができると考えら れる(eq 1)。また、eq 2 のような解離状態 (左辺)にかたよっている反応に対して、 スフェランドを用いて Liを包接すれば、[1・Li]の安定化により平衡は右辺にかた R R Me Me O O Me R O O R Me O O Me Me R R Spherand 1 : R = Me 2 : R = t-Bu 3 : R = Cyclohexyl よって、超原子価アート錯体の単離 (eq 3 右辺)など Active (eq 1) 1 LiX [1·Li] X Highly Anion が可能になると期待できる。 (eq 2) Li[MRnX] MRn LiX 1 の既存の合成法 1 は、収率と再現性が低かったた (eq 3) [1·Li][MRnX] Hypervalent め、まず 1 の新規合成法の開発が行なった。その結 1MRn LiX Compound X = F, OR, NR2, CR3 果、全収率は改善できたが、1 は有機溶媒への溶解 度が極端に低いために反応に用いることが困難であるという問題が判明した。 【本論】 1. 新規スフェランドの合成 有機溶媒への溶解度の向上を目指して、t-ブチル基を有するスフェランド 2 を合成した(Scheme 1)。2 は 1 と比べて溶解度は向上したが、反応試剤として用いるには、まだ溶解度が足りないこと が判明したため、さらに溶解度の向上を検討した。 次にシクロヘキシル基(Cy)を有するスフェランド 3 を合成した。3・LiCl をブロモシクロヘキサ ンから 5 段階、全収率 20%で合成した。次に既存の方法では Liを取り除けなかったため、脱メチ ル化し、5 を収率 88%で合成した後、5 のメチル化することで 7 段階、全収率 16%で 3 を合成でき た。THF やトルエンに対して、3 は 2 と同等の溶解度だったが、3・Liの溶解度は 2・Liよりも大き R R + く向上していることが分かった。 2. 超原子価スズアート錯体の安定化と単離の試み R R R R 1) NH Cl Me Me Me Me O O 2) H O O 5 配位有機スズ化合物は Li-Sn 交換反応の中間 O O Me Li Me Me Me O O O O CCl O O 体であり、重要な化学種である。しかし不安定であ Me Me reflux H Me R R R R り、6Liは低温で生成が確認されているのみで単離 Cl R R には至ってない 3。そこでスフェランドによる 6 の 2·LiCl (R = t-Bu): 4 (R = t-Bu): y. 99% Total Yield 30% (5 steps) 5 (R = Cy): y. 88% 安定化および単離を検討した。6Li を78 ℃で発生 3·LiCl (R = Cy): Total Yield 21% (5 steps) R Solv. Yield 1) KH させた後、少過剰の 3 を加え78 ℃で 1 日撹拌した。 2) MeI t-Bu THF 79% Solv. Cy CH Cl 87% 次 に 室 温 で 119Sn NMR を 測 定 し た と こ ろ 、 MeOH : H O = 1: 4 2 (R = t-Bu): Total Yield 23% (7 steps) 3 (R = Cy): Total Yield 16% (7 steps) 6[Spherand・Li]の生成が確認でき、スフェランドに Scheme 1. 150 °C, 5 d,-LiCl Me Me より 6 が安定化され、室温で安定であることがわか SnMe Spherand Me Li Me Sn Me + [Spherand·Li] Me Sn った(Scheme 2)。現在 6[Spherand・Li]の単離も検 Me Me MeLi Me Me 討している。 6Li 6[Spherand·Li] + 4 4 2 2 2 4 119 Sn 0 Scheme 2. 119 Sn -286 at r.t. <参考文献> 1) Cram, D. J.; Kaneda, T.; Helgeson, R. C.; Brown, S. B.; Knobler, C. B.; Maverick. E.; Trueblood, K. N.J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 3645-3657. 2) Cram, D. J.; Lein, G. M. J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 3657-3668. 3) Reich, H. J.; Philips, N. H. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 2102-2103. 発表者紹介 氏名 鈴川 直幸 (すずかわ なおゆき) 所属 広島大学大学院理学研究科 化学専攻 学年 D2 研究室 有機典型元素化学研究室 E-mail [email protected]