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パフォーマンス記録のポータビリティに関するガイダンス・ステートメント

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パフォーマンス記録のポータビリティに関するガイダンス・ステートメント
改訂発効日: 2006 年 1 月 1 日
採 択 日: 2001 年 5 月 18 日
発 効 日: 2001 年 5 月 18 日
遡 及 適 用: 必須ではない
公開コメント期間:2000 年 9 月~12 月
パフォーマンス記録のポータビリティに関するガイダンス・ステートメント(改訂版)
序
論
資産運用会社の合併、買収、統合がグローバルに展開するなかで、過去のパフォーマンス記録はそ
の所有者にとってますます重要な価値を持つものとなってきている。しかし、過去の記録は多くの要
因(人材、プロセス、規律 <discipline>、戦略)からもたらされたものであり、それらの要因は容易
に新会社に移転されないかもしれず、合併等の後も引続き旧会社の記録とするのが妥当であろう。パ
フォーマンス記録の有効性と品質(integrity)は、投資戦略およびすべての寄与要因の品質が保持さ
れてはじめて確保されるものである。したがって、パフォーマンス記録のポータビリティは、グロー
バル投資パフォーマンス基準(GIPS®)において明確にされるべき重要な分野である。さらに、ポータ
ビリティに関連する法律上の問題および要件は非常に複雑であることが考えられるため、GIPS にお
いては、会社は本ガイダンス・ステートメントを適用する前に、ポータビリティに関連する法律およ
び規制のすべてを遵守していなければならない。
パフォーマンスは会社の記録であり、個人のものではない
会社組織の変更を理由に、コンポジットのパフォーマンス記録を変更することはできない。したが
って、過去の実績に責任を有する個人が既に退職している場合であっても、コンポジットには会社の
役職員により運用されたすべての口座が含まれなければならない。また、在籍役職員が入社以前に別
の会社で運用していたポートフォリオの記録は、基準 5.A.4(後掲)を満たさない限り、コンポジッ
トに含めてはならない。基準 5.A.4 を満たす場合には、パフォーマンス記録は、新会社(new
affiliation)または新設会社 (newly formed entity) の過去の記録として、マネジャーまたはマネジ
ャー・グループにより使用されなければならない。旧会社のパフォーマンス記録を補足情報として使
用することは、過去の記録が補足情報として提示されている旨が明確にされており、かつ、新会社の
記録とリンクされていない場合に限り許容される。ポータビリティに関する基準を満たす場合には、
複数の会社が同一のパフォーマンス記録を自らのものとしてそれぞれ提示することがあり得る。
GIPS 基準 0.A.2 は、基準との関係で、会社がどのように定義されなければならないかを規定して
いる。「会社」の合併は関連グループ会社間でも生じることがあるが、本ガイダンスはそうした場合
にも適用される。GIPS 基準 5.A.4.(d) は、
「本基準に準拠している会社が非準拠会社を買収し、あ
るいは非準拠会社に買収されたときは、会社は1年以内に非準拠の資産を本基準に準拠させなければ
ならない」と規定している。しかしながら、パフォーマンス記録のポータビリティの可否を決定する
重要な要因は、会社が過去に GIPS 基準に準拠していたかどうかではなく、買収会社がコンポジット
を定義していた元の投資戦略をそのすべての要因とともに存続させるかどうかである。
旧会社からのパフォーマンス記録は、適切な開示事項とともに補足情報として使用することができ
る。基準 5.A.4(後掲)の条件を満たさない場合には、この補足情報は新会社の継続的な記録とリン
本資料は、GIPS Executive Committee (前身は IPC) が採択した GIPS の 「パフォーマンス記録のポータビリティに関するガイダンス・
ステートメント (改訂版) (Guidance Statement on Performance Record Portability (Revised))」全文(英語)の日本語訳である。翻訳
は、日本における GIPS カントリー・スポンサーである(社)日本証券アナリスト協会が行った。本ガイダンス・ステートメントの日本語訳と原
文である英語版との間に矛盾があるときは、英語版を正本とする。本翻訳物の著作権は、(社)日本証券アナリスト協会に属する。
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クしてはならない。本質的な論点は、過去のパフォーマンス記録と新会社となってからのパフォーマ
ンス記録とのリンクである。
マネジャーまたはマネジャー・グループが別の会社に移籍するとき、もしくはある会社全体が別の
会社と合併するときは、基準 5.A.4 は次の事項を必須としている。
a.
(合併・買収等が生じた場合、) 次のすべてに該当するときは、旧会社のパフォーマンス記録
は、新会社のパフォーマンス記録にリンクし、または新会社のパフォーマンス記録として使
用しなければならない。
i.
実質的に投資意思決定者のすべて(例えば、リサーチ部門、ポートフォリオ・マネジャ
ー、およびその他の関連スタッフ)が、新会社に雇用されていること。
ii. スタッフと投資意思決定プロセスが、新会社においてそのまま維持されており、かつ、
独立性を保っていること。
iii. 新会社が、報告されるパフォーマンスの根拠となる記録を保持していること。
b.
新会社は、旧会社のパフォーマンス記録が新会社としての記録にリンクされている旨を開示
しなければならない。
c.
基準 5.A.4.a および 5.A.4.b の条件に加えて、ある会社が他の会社と合併するときは、実質的
に旧会社のコンポジット資産のすべてが新会社に移管されている場合には、両会社のコンポ
ジット・パフォーマンスは合併してからのリターンにリンクしなければならない。
d.
本基準に準拠している会社が非準拠会社を買収し、あるいは非準拠会社に買収されたときは、
会社は1年以内に非準拠の資産を本基準に準拠させなければならない。
上記条件のすべてを満たすことができない場合には、旧会社または旧会社のマネジャーないしマネジャ
ー・グループの過去のパフォーマンス記録は新会社となってからの記録とリンクすることはできない。しかし、
適切な場合には過去の記録を補足情報として提示することはできる。
2つの会社が合併し2つのコンポジットを結合する場合は、新会社はまず「存続」するコンポジッ
トの有無を確認しなければならない。「存続」コンポジットとは、投資戦略、投資プロセスおよび投
資スタッフが継続しているコンポジットを意味する。「存続」コンポジットであるためには、当該コ
ンポジットに係るスタッフと投資意思決定プロセスが新会社においてそのまま維持されており、かつ、
独立性を保っていなければならない。
「存続」コンポジットが確認された場合には、そのパフォーマンスは結合されたコンポジットの継
続的なパフォーマンスとリンクすることができる。非「存続」コンポジットのパフォーマンスは、顧
客の要請に応じて補足資料として提示できるようになっていることが勧奨される。例えば、合併の結
果、コンポジットCとDを結合してコンポジットCDにするとする。会社がポータビリティの条件の
すべてを満たすことができ、コンポジットCが「存続」コンポジットであると判断する場合には、コ
ンポジットCの過去のパフォーマンス記録はコンポジットCDの継続的な記録にリンクすることが
できる。コンポジットDに含まれる資産はコンポジットCDに含まれることとなるが、コンポジット
Dのパフォーマンス記録はコンポジットCDの継続的な記録にリンクされることはなく、顧客の要請
があれば補足資料として提示すべきである。
会社が、旧会社のいずれのコンポジットも(訳注:例えば、コンポジット C, D とも)継続性の要
件を満たしていないと判断する場合には、これら旧会社のコンポジットは結合されず、当該コンポジ
ットの過去のパフォーマンス記録はいずれも新会社としての継続的なコンポジット・パフォーマンス
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の記録とリンクすることはできない。しかし、これら非「存続」コンポジットの記録は双方とも補足
情報として提示することが勧奨される。例えば、2つの会社のスタッフが1つのチームにまとめられ、
投資意思決定プロセスが共有される(したがって変更される)場合は、旧会社の非「存続」コンポジッ
トの過去のパフォーマンス記録は両者とも補足情報として提示されるべきであるが、新会社のコンポ
ジットの継続的な記録とリンクしてはならない。
パフォーマンスを提示する会社が「マネジャー・オブ・マネジャーズ」であり、マネジャー選択の
スキルによって顧客から採用され、かつ、原資産について裁量権を有している(サブアドバイザーを
採用・解任する権限を有する)場合には、当該会社は、サブアドバイザーに委託した資産を自らの運
用総資産に含めなければならず、かつ、当該再委託資産のパフォーマンスを自らのコンポジットにお
いて提示しなければならない。同様に、当該会社がサブアドバイザーを交代させた場合には、新任者
に委託した資産のパフォーマンスは交替前と同じコンポジットに引続き含めなければならず、また、
前任者のパフォーマンス記録もそのまま当該コンポジットに残さなければならない。基準 4.A.18 は、
2006 年 1 月 1 日以降の運用実績については、会社はサブアドバイザーの使用およびその使用期間を
開示しなければならないとしている。
パフォーマンスを提示する会社がサブアドバイザーにより運用される原資産について裁量権を有
しない場合には、当該資産のパフォーマンス記録はパフォーマンスを提示する会社のコンポジット・
パフォーマンスに含めてはならない。
会社は、本ガイダンス・ステートメントが GIPS 基準の最優先原則である「公正な表示と完全な開
示」の下に置かれていることを認識しなければならない。基準 4.A.19 は、会社は、見込顧客がパフ
ォーマンス記録を解釈するうえで有用な重大な事項をすべて開示しなければならないとしている。し
たがって、会社の業務や投資プロセスに影響を与える事項(例えば、会社支配権の移転、合併・買収、
重要な投資専門職員の退職、等)は、開示しなければならない。
発効日
本ガイダンス・ステートメントの発効日は、2001 年 5 月 18 日であったが、GIPS 基準の改訂を反
映して 2006 年 1 月 1 日付に変更された。
会社は、本ガイダンスを元の発効日である 2001 年 5 月 18 日より前に適用することが奨励される
が、必須ではない。しかしながら、改訂前のガイダンスは、当該日(2001 年 5 月 18 日)以降のすべ
ての運用実績に適用しなければならない。
本ガイダンスの改訂内容(2006 年 1 月 1 日発効)は、2006 年 1 月 1 日以降のすべての運用実績に
適用しなければならない。
適用事例
1.
A 社が B 社を買収し、ポータビリティに関する必須基準のすべてを満たしている場合、A 社は B
社の過去のパフォーマンス記録を提示しなければならないか。それとも、A 社は、B 社のパフォ
ーマンス記録を提示しないことを選択することができるか。
GIPS 基準は、公正な表示と完全な開示という基本的な原則に基づいている。ポータビリティに関
する必須基準のすべてを満たしており、かつ、B 社が A 社の会社の定義に含まれる場合には、A 社は
B 社のパフォーマンス記録を使用しなければならない。A 社が B 社のパフォーマンス記録を除外する
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ことが許容されれば、よいパフォーマンスのみ取り出して示すこと(cherry-picking)になるかもし
れず、それは GIPS 基準の公正な表示という精神に反する。
2.
パフォーマンス記録のポータビリティに関するガイダンス・ステートメントによると、一定の条
件を満たす場合には、「旧会社のパフォーマンス記録は、新会社のパフォーマンス記録にリンク
するか、新会社のパフォーマンス記録として使用しなければならない」とされている。ここでい
うパフォーマンス記録とは何か。当該パフォーマンス記録が旧コンポジットを代表するものであ
る場合に、会社は、新会社に移管されたポートフォリオに基づいてコンポジットを構築すること
ができるか。
ポータビリティとは、パフォーマンス記録をある会社から別の会社に持ち運ぶことができることに
ついて考え方を示したものであり、選定したポートフォリオのみを使って記録を再編することを意図
したものではない。旧会社のコンポジットを新会社の継続的なパフォーマンスにリンクすることが可
能となるためには、ガイダンス・ステートメントの要素をすべて満たすことに加えて、すべてのポー
トフォリオを含むコンポジットのパフォーマンス記録全体が使用されなければならない。会社は、過
去のパフォーマンス記録の裏付けとなる記録をすべて保持していなければならない。
3.
A マネジャーは、GIPS 基準に準拠していない X 社で以前働いていた。A マネジャーは X 社を離
れ、Z 社に雇用された。Z 社と A マネジャーは、ポータビリティ・ルールのすべてを満たしてい
ることに満足している。X 社での A マネジャーのパフォーマンス記録は、準拠できるのか、それ
とも準拠していないので使用できないのか。
基準への準拠は、パフォーマンス記録が「準拠する」ということではなく、会社全体でのみ達成し
得るものである。
当該マネジャー(または運用チーム)がパフォーマンス記録のポータビリティに関するガイダン
ス・ステートメントの必須事項を(根拠となる文書および記録をすべて Z 社に携帯していることも含
めて)すべて満たしている場合には、Z 社は、A マネジャーの記録を使って、使用可能なコンポジッ
ト記録を作成することができる。パフォーマンス記録のポータビリティに関するガイダンス・ステー
トメントに規定されているように、パフォーマンス記録がポータブルであるかどうかを決定する重要
な要素は、会社が以前 GIPS 基準に準拠していたがどうかではなく、買収会社が、コンポジットを定
義していた元の戦略を、そのすべてのファクターとともに今後も続けるのかどうかである。
ポータビリティに関する必須基準のすべてを満たすケースはほとんどないであろう。満たさない場
合には、マネジャーの過去のパフォーマンス記録は、会社のパフォーマンス記録とリンクすることは
できない。適切な場合には当該マネジャーの過去の記録を補足情報として提示することはできる。
ポータビリティ・ルールの1つは、スタッフと投資意思決定プロセスが、新会社においてそのまま
維持されており、かつ、独立性を保っていることが必須である点に留意されたい。投資プロセスが変
更されている場合、あるいは投資スタッフに変更がある場合には、新マネジャーの過去のパフォーマ
ンス記録は補足情報としてのみ提示することが可能であり、会社の継続的な記録にリンクすることは
できない。
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