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Radiographic Image Analysis of Dental Pulp Chamber in Intraoral

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Radiographic Image Analysis of Dental Pulp Chamber in Intraoral
11
明海歯学(J Meikai Dent Med )36(1)
, 11−16, 2007
口内法エックス線撮影における歯髄腔のエックス線画像解析
(第 2 報)
清水
小澤
英之1
智宣1
池 真樹子1§
伊澤 和三2
1
沼田
鈴木
真美1
弘平1
花輪小百合1
奥村 泰彦1
明海大学歯学部病態診断治療学講座歯科放射線学分野
2
東海大学医学部付属病院歯科口腔外科
要旨:エックス線写真による画像診断は,口腔領域疾患の診断を行う上で重要な役割を担っている.エックス線の作用
で最も特徴としてあげられるのは物質透過性である.物質内をエックス線が透過する際,その経路を構成する物質の原子
番号,密度,厚さなどが相互に影響し,その結果透過エックス線量の変化が生じる.この線量の変化からエックス線写真
画像が形成されている.得られた画像から体の内部構造が視覚的に観察可能となり,診断に寄与している.
著者らは歯科治療を行う際,撮影する口内法エックス線写真について,歯髄の画像に注目し研究を行ってきた.本実験
は,歯が顎骨に植立された条件で撮影された下顎第一大臼歯のエックス線画像コントラスト変化について,フィルムおよ
び根管内の状態の違いを観察した.その結果以下の結論を得た.
1 .管電圧 60 kV では,Ultra フィルムは Ekta+フィルムに比較してコントラストが大きかった.管電圧 70 kV でも同様
に Ultra フィルムのコントラストが大きかった.
2 .タイマは 0.32 sec が大きなコントラストであった.
3 .象牙質と歯髄とのコントラストはビタペックス 0.71,空洞 0.58,油 0.54,水 0.49 の順番で小さくなっていた.
索引用語:口内法撮影,管電圧,フィルム濃度
Radiographic Image Analysis of Dental Pulp Chamber
in Intraoral Radiogaraphy(Part 2)
Hideyuki SHIMIZU1, Makiko IKE1§, Mami NUMATA1,
Sayuri HANAWA1, Tomonori OZAWA1, Kazumi IZAWA2,
Kohei SUZUKI1 and Yasuhiko OKUMURA1
1
Division of Dental Radiology, Department of Diagnostic & Therapeutic Sciences, Meikai University School of Dentistry
2
Department of Dentistry and Oral Surgery School of Medicine, Tokai University
Abstract : Image diagnosis involving X-ray photography plays an important role in terms of diagnosing disorders of the
oral region. Radio-transparency of object masses is the most significant characteristic associated with X-ray. When an X-ray
passes through an object, the identities of the elements, density and thickness of the route interact with one another ; as a
result, a change in the amount of transmitted X-ray occurs. An X-ray image is comprised of these radiation changes. The
internal structure of the body may then be visible to the naked eye, which greatly enhances clinical diagnoses.
The authors examined intraoral radiography employed in dental treatment, with special emphasis on dental pulp images.
X-ray photography of the first molar tooth rooted in the mandible revealed differences in condition and image contrast
changes of the film as well as within the pulpchamber. The following results were obtained :
1. Following application of an X-ray tube voltage of 60 kV, Ultra film demonstrated larger contrast in comparison with
Ekta+film. Similarly, Ultra film exhibited larger contrast at 70 kV.
2. When the timer is set in 0.32 sec it became the biggest contrast.
3. The contrast between dentin and dental pulp decreased as follows : Vitapex 0.71, cavity 0.58, oil 0.54 and water 0.49.
Key words : intraoral radiograph, tube voltage, film density
12
明海歯学 36, 2007
清水英之・池 真樹子・沼田真美ほか
緒
する,Eastman KODAK, Rochester, NY, USA)と Ultra-
言
speed film(以降 Ultra とする,Eastman KODAK)の 2
エックス線写真による画像診断は,口腔領域疾患の診
断を行う上で重要な役割を担っている.エックス線の作
種類を使用した.
2 .使用機器および方法
用で最も特徴としてあげられるのは物質透過性である.
エックス線撮影装置は口内法撮影装置ヘリオデント
物質内をエックス線が透過する際,その経路を構成する
MD(Siemens,New York, NY, USA, Fig 1)を使用し
物質の原子番号,密度,厚さなどが相互に影響し,その
た.撮影時のジオメトリーを一定にするため規格撮影を
1)
結果透過エックス線量の変化が生じる .物質入力時の
エックス線量は透過後の線量と比例関係にあり I=I0e-µ d,
µ =KZ3λ 3ρ (I:入射エックス線量,I 0:透過後のエッ
クス線量,e:自然対数, µ :吸収係数,d:厚さ,K:
比例定数,Z:原子番号, λ :エックス線の波長, ρ :
物質の密度)の式で示される2).式のごとく,特に物質
の原子番号と入力エックス線の波長が物質とエックス線
吸収の相互の関係に大きく関与している.エックス線写
真は,このエックス線透過量のばらつきを,比例的関係
で臭化銀に吸収させ銀粒子のばらつきとしてフィルムに
記録している3).得られたエックス線写真は物質内部が
二次元平面として白黒濃度分布の画像が形成されてい
る.口腔領域の組織が病的な変化を来たした場合,画像
上にも濃度の違いとして当然描出されることになる.こ
の得られた画像から体の内部構造が視覚的に観察可能と
なり,診断に寄与している.
著者らは歯科治療を行う際,撮影する口内法エックス
線写真について,歯髄の画像に注目し研究を行ってき
た.第 1 報4)で抜去歯を用いて歯髄腔のエックス線透過
率をコントラストとして計測し,撮影時の管電圧と使用
するフィルムの感度の違いにより,最もコントラストの
得られる撮影条件について報告をした5).引き続き本実
験は,歯が顎骨に植立された状態での条件下で歯髄のコ
ントラストがどのように変化するかを研究した.歯が顎
骨に植立されたことでエックス線透過率に変化が生じ
る.この条件により撮影されたエックス線画像コントラ
スト変化についてフィルムおよび根管内の状態の違いに
ついて実験を行った.その結果,写真コントラストに対
する興味ある知見が得られたので報告する.
Fig 1
Dental X-ray unit(Heriodent MD, Siemens)
.
Fig 2
Experimental apparatus.
材料と方法
1 .材料
使用した歯はヒト乾燥下顎骨に植立状態にある下顎左
側第一大臼歯とした.
使用したフィルムは Ektaspeed+Film(以降 Ekta+と
─────────────────────────────
§別刷請求先:池 真樹子,〒350-0283 埼玉県坂戸市けやき台 1−1
明海大学歯学部病態診断治療学講座歯科放射線学分野
歯髄腔のエックス線画像解析
行った.規格撮影装置は自作し,焦点・被写体間距離 40
cm に設定した(Fig 2).
13
(以降水とする)を注入したもの,ミシン油(以降油と
する)を注入したもの,根管充頡材ビタペックス(ネオ
エックス線フィルムの濃度計測は,ミクロデンシトメ
製薬,東京)を注入したものの 4 種類を組み合わせて,
ータ PDM-5(コニカミノルタ,東京)を使用した.測
合計 16 種類の条件にて規格撮影を行った.撮影時間は
定領域のスリット設定は,幅 500 µ m×高さ 1000 µ m,
Ekta+では管電圧 60 kV, 70 kV とも 0.16 秒のタイマ条
フィルム送りスピード 50 µ m/sec で計測した.計測部位
件で行った.Ultra では感度が落ちるため Ekta+と同程
は Fig 3 に示す走査線である.計測されたデータは A/D
度の濃度になるよう管電圧 60 kV, 70 kV とも,0.32 秒
変換後マイクロコンピュータ FM-V(富士通,東京)に
データメモリした.データ処理ソフトは Densito 2(ア
ークテクノロジー,東京)を使用した.マイクロフォト
メータから得られたデータはノイズが含まれた状態であ
る(Fig 4A).このデータから空間周波数の高濃度側の
平均濃度と低周波数の平均濃度を計測しグラフを算出し
た(Fig 4B).このグラフから歯の無い外側部分と象牙
質の濃度差 A,象牙質と歯髄部の濃度差 B を測定し解
析した.
測 定 さ れ た 濃 度 の 補 正 は 標 準 濃 度 フ ィ ル ム photographic step tablet no 3(Eastman KODAK, Fig 5)を使用
し,得られたデータの濃度補正後測定値とした.次に得
られた走査濃度曲線から髄腔部と象牙質部の濃度差を測
定し,次式にしたがってコントラストを求め解析した.
C=D2−D1
(C:コントラスト,D2, D1:隣接する組織濃度)
3 .撮影方法
歯のエックス線撮影にあたって歯髄腔の処理をした.
歯の天蓋を除去し歯髄腔,根管を清掃し残留物の無い状
態にした.つぎに Ekta+と Ultra の 2 種類のフィルムを
使用して規格撮影を行った.撮影条件は,管電流 10 mA
で管電圧は 60 kV と 70 kV を使用し,各種歯髄腔の状
態を撮影した.歯髄腔の状態は,空洞のまま,蒸留水
Fig 3 Scanning line of micro-densitometer PDM-5(Konica Minolta)
.
Fig 4 The output value of pulp chamber with microdensitometer. A , the output raw data. B , the average density
curve. a , dentin and surrounding density difference. b , density
difference between dentin and pulp chamber.
Fig 5
Photographic step tablet no 3(Eastmen KODAK)
.
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明海歯学 36, 2007
清水英之・池 真樹子・沼田真美ほか
のタイマ条件で撮影を行った.
撮影されたそれぞれのフィルムの象牙質,歯髄腔部に
ついてミクロデンシトメータにて濃度を測定した.
結
果
1 .管電圧およびフィルムに対するコントラストの違い
象牙質と周囲とのコントラスト変化について,フィル
ムの違いによる結果を Fig 6, 7, Table 1, 2 に示す.
1 )管電圧 60 kV, Ekta+のコントラスト
A の値は,空洞のコントラストが一番大きく 2.21 で
あった.次にビタペックス 2.11,水と油のコントラスト
差は少なく 1.95, 1.93 であった.
B の値は,ビタペックスのコントラストが一番大きく
0.57 であった.次に空洞 0.51,油 0.49,水 0.47 であった.
2 )管電圧 60 kV, Ultra のコントラスト
A の値は,空洞のコントラストが高く 2.17 であっ
0.71 であった.次に,空洞 0.58,油 0.54,水 0.49 であ
った.
Ekta+と Ultra の比較は Ultra の方が Ekta+に比較し
てコントラストが大きく空洞で 0.07,水で 0.02,油で 0.05
のコントラスト差であった.
3 )管電圧 70 kV, Ekta+のコントラスト
A の値は,空洞のコントラストが高く 1.66 であっ
た.次にビタペックス 1.62,水 1.53,油 1.45 であった.
B の値は,ビタペックスのコントラストが一番大きく
0.33 であった.次に空洞 0.31,油 0.22,水 0.18 であった.
4 )管電圧 70 kV, Ultra のコントラスト
A の値は,空洞のコントラストが高く 1.98,次にビ
タペックス 1.9,油 1.89,水 1.86 であった.
B の値は,ビタペックスのコントラストが一番大き
く,0.51 であった.次に空洞 0.47,油 0.39,水 0.37 で
あった.
た.次にビタペックス 2.01,水と油のコントラストは差
が少なく 1.96, 1.97 であった.
B の値は,ビタペックスのコントラストが一番大きく
2 .歯髄腔の状態に対するコントラスト
1.の結果から,歯髄腔 4 種類の状態に対するフィル
ム,撮影条件の違いによる濃度差(B の値)としてまと
めた結果を Fig 8 に示す.歯髄腔と象牙質のコントラス
トは,空洞の場合,Ultra+60 kV の条件が最も大きく 0.58
であった.次いで Ekta+60 kV で 0.51, Ultra 70 kV で
0.47, Ekta+70 kV で 0.31 の順であった.
ビタペックスの場合は,Ultra+60 kV の条件が最も大
きく 0.71 であった.次に Ekta+60 kV で 0.57, Ultra 70
kV で 0.51, Ekta+70 kV で 0.33 の順であった.
水および油の場合も空洞と同じ順番であった.水の場
Fig 6 Density difference between dentin and surroundings of
tube voltage and film.
Table 1 Density difference between dentin and surroundings
of tube voltage and film.
empty
bitapex
water
oil
E+60 kV
U 60 kV
E+70 kV
U 70 kV
2.21
2.11
1.95
1.93
2.17
2.01
1.96
1.97
1.66
1.62
1.53
1.45
1.98
1.9
1.86
1.89
Table 2 Density difference between dentin and pulp chamber
of tube voltage and film.
Fig 7 Density difference between dentin and pulp chamber of
tube voltage and film.
empty
bitapex
water
oil
E+60 kV
U 60 kV
E+70 kV
U 70 kV
0.51
0.57
0.47
0.49
0.58
0.71
0.49
0.54
0.31
0.33
0.18
0.22
0.47
0.51
0.37
0.39
歯髄腔のエックス線画像解析
15
の異なる歯科用フィルムの場合,撮影された画像の濃度
にどのような影響が生じるかを観察した.その結果,管
電圧 60 kV の場合,Ekta+では歯の周囲と象牙質との濃
度差は空洞で最もコントラストが大きくビタペックス,
水,油の順番であった.これはエックス線吸収係数によ
る値が影響しており,感度の異なるフィルムの照射条件
を観察したことになる.両者のフィルムの感度は Ultra
が D 感度であり,Ekta+は E 感度である.タイマ条件
は,撮影の際は約 20% 程度多いタイマを設定した方が
Fig 8 Density difference between dentin and pulp chamber of
tube voltage and film(a difference in pulp chamber)
.
良いと報告されている4).
歯髄状態の画像診断では,今回根管充頡材であるビタ
ペックスを追加し実験を行った.ビタペックスはペース
合,Ultra 60 kV の条件が最も大きく 0.49 であった.次
ト状でエックス線吸収体であるヨードホルムが加えられ
に Ekta+60 kV で 0.47, Ultra 70 kV で 0.37, Ekta+70 kV
ており,治療後の充頡状態がエックス線画像により診断
で 0.18 の順であった.
可能となっている.空洞,油,水に加えビタペックスの
油の場合,Ultra 60 kV の条件が最も大きく 0.54 であ
4 条件で実験を行った.この 4 つの状態ではエックス線
った.次に Ekta+60 kV で 0.49, Ultra 70 kV で 0.39, Ekta
吸収係数で比較するとビタペックス,水,油,空洞の順
+70 kV で 0.22 であった.
番であり理論的にはこの順番でエックス線が吸収され
考
る.周囲象牙質と歯髄腔とのコントラストの差は大きい
察
ほど視覚的にエックス線フィルムの画像診断が容易であ
CCD センサ,Imaging Plate(IP)などを使用したデジ
る.象牙質と歯髄腔とのコントラストは,何もない状態
タルエックス線画像形成法が主流となりつつある現在,
である空洞はエックス線吸収が少ない分,象牙質との濃
フィルム法は時代遅れの感が否めないが,フィルム法は
度差が大きくなる.また逆にビタペックスによるエック
画像解像度が圧倒的に高く,決して衰退してしまう撮影
ス線吸収が大きい場合,象牙質との差も大きくなり診断
法とは考えられない.両撮影方法には利点,欠点がある
が容易であった.
が,画像の MTF あるいは粒状性を比較するとフィルム
6−11)
法が圧倒的に勝っている
適切な撮影条件であれば歯の口内法エックス線写真か
.今後の技術進歩により,
ら生活歯髄であるか,乾死状態であるか,根管充頡の状
増感紙フィルム系撮影法のデジタル化は,事実上問題に
態はどうかなどが診断可能と思われる.経験豊かな歯科
12)
ならなくなってくるとも考えられるが ,口内法エック
医師ほどその診断能力に優れている.つまりいかに微少
ス線撮影のような詳細部分の画像が要求される口内法エ
なコントラストを認識できるかが診断能力に影響を与え
ックス線撮影の場合,デジタル法では当分の間十分な満
ることになる.
足を得られないのが現状である.デジタル画像診断はセ
実験結果から,なるべくコントラストを大きくするた
ンサの画素の大きさで最小分解能が決定される.フィル
めには Ultra を使用し,60 kV, 0.32 秒の撮影条件で行う
ム法では,特に口内法エックス線撮影の場合,ノンスク
ことが良いと思われる.コントラストが最も少ないの
リーンフィルムを使用するため,その MTF は 10 cycles/
は,Ekta+の使用で 60 kV である.しかし,X 線被曝を
mm,最高濃度は 6.0 以上を示す13).したがって現在の
考慮すると Ekta+の使用で 60 kV, 0.16 秒の撮影条件が
ところフィルム法は歯科領域にとっては,画像診断に欠
適切と思われる14−16).
くことができない方法と考えられる.本実験は歯のエッ
歯髄内の状態はある程度,空洞の状態と油の識別は可
クス線撮影から得られた画像の濃度測定を行い,歯髄診
能と思われる.水の場合も最小のコントラスト 0.31 で
断の可能性を目的に研究を行った.特に,写真コントラ
識別が可能と思われる.フィルム濃度の視覚的識別が最
スト評価から各撮影条件での比較をし,診断に適した条
も良いとされているのは.0.9 から 1.316)とされ,したが
件を検討した.
って 60 kV の管電圧で撮影した場合この範囲に近いこ
2 種類の感度が異なる歯科用フィルムを使用し,管電
圧を 60 kV および 70 kV に設定し撮影を行った.感度
とから最も診断に適していると思われる.特に無髄と有
髄の診断は可能と思われる.
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明海歯学 36, 2007
清水英之・池 真樹子・沼田真美ほか
ビタペックスと空洞は象牙質とのコントラストが大き
く診断が容易であった.また,エックス線透過性が大き
い空洞と,エックス線吸収性が大きいビタペックスで
は,大きなコントラストを呈する.したがって,根管充
頡材となるビタペックスの歯髄腔の診断は正診率が高い
と考えられる.
本実験においては顎骨に植立された状態でエックス線
撮影を行った.第 1 報4)の報告と比較すると全体的にコ
ントラストが低下している.この原因は抜去された歯の
みでエックス線撮影を行った場合,周囲組織の吸収係数
が重畳されないためと考えられる.
著者らの研究目的は,エックス線撮影法で歯髄腔の状
態の診断が可能かということにある.生活歯髄であるか
あるいは乾死状態であるか,あるいは空洞状態であるか
が口内法撮影で得られた画像から把握できれば治療の一
助になる.歯の中心部に位置する歯髄腔はその周囲の象
牙質,歯槽骨,軟組織の総合的なエックス線吸収状態と
の相互関係によりエックス線透過像として描出されてい
る.したがって,いかに詳細な部分を観察するかという
より,黒白のコントラストを認識するかに主眼が置かれ
る17−19).実験結果から歯髄腔と象牙質とのコントラスト
が大きいほど診断に有効であると思われる.
象牙質と歯髄腔のコン ト ラ ス ト は ビ タ ペ ッ クスで
0.71,空洞で 0.58,油で 0.54,水で 0.49 であった.この
結果から人間の視覚的識別と比較すると,吸収係数の高
い物質もしくは空洞の識別が容易である.
本実験は軟組織の存在を考えずに実験を行っている.
この内容で水ファントムを付加した実験を行った場合は
散乱線が加わるためコントラストが低くなると想定され
る.次の課題として水ファントムの付加と視覚的評価を
行いたいと考えている.
結
論
ヒト乾燥下顎骨に植立状態にある下顎第一大臼歯を用
い,歯髄内の画像診断を目的に実験を行い以下の結論を
得た.
1 .管電圧 60 kV では,Ultra フィルムは Ekta+フィル
ムに比較してコントラストが大きかった.管電圧 70
kV でも同様に Ultra フィルムのコントラストが大き
かった.
2 .タイマは 0.32 sec が大きなコントラストであった.
3 .象牙質と歯髄とのコントラストはビタ ペ ックス
0.71,空洞 0.58,油 0.54,水 0.49 の順番で小さくなっ
ていた.
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(受付日:2006 年 10 月 27 日
受理日:2006 年 11 月 30 日)
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