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1-16 - kek

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1-16 - kek
DEVELOPMENT OF ULTRA LOW DRIFT TRACKING SYSTEM FOR
TELESCOPE IN SOUTH AFRICA,
SELECTION OF SERVOMOTER IN THE ULTRA LOW SPEED CONTROL
Kawai Toshihide
Nagoya University School of Science
南アフリカ望遠鏡の開発研究
サーボモータの低速回転領域における運動性能の比較と望遠鏡の制御システム
1、はじめに
1998年度からスタートした「マゼラン大研究」計画は、「マゼラン星雲」領域を全ての波長帯で観測する研究
です。この研究の近赤外サーベイ観測のために、南アフリカのサザーランドに 1.4mの可視∼赤外望遠鏡を新たに建設
します。今回の発表はこの南アフリカ望遠鏡(まだ名称が決まっていない)の概要と制御システムに関するもので、
天文観測のためにどの様な望遠鏡設備や技術が必要かを明らかにしながら、望遠鏡架台の制御用として使うサーボモ
ータの低速回転での性能について検討したので報告します。
2、望遠鏡の架台
望遠鏡による観測では日周運動と同期した動きを架台に与えて、視野の星像が動かないようにします。このことを
「追尾」あるいは「トラッキング」といって、この精度が望遠鏡の性能の半分を決めることになります。余談ですが、
もう半分はスバル望遠鏡でお馴染みの、鏡面の精度です。
望遠鏡の架台は、一般的に、赤道儀と呼ばれるものと、経緯台と呼ばれるものがあります。
赤道儀は、回転軸を地球の自転軸と平行に保ち、日周運動に合わせてその軸を回転させることによって望遠鏡の視
野内の星を止まって見えるようにするものです。制御の観点からは赤道儀は回転軸を一定速度で動かすだけなのでわ
かりやすいのですが、軸が赤緯方向に傾いているので、大型望遠鏡になると、この軸を支える構造が巨大化し、機械
設計が困難になったり、製作費用がかさむなどの欠点があります。
経緯台は、架台の構造が単純なことから機械設計や製作が容易ですが、制御が難しいという欠点があります。経緯
台では、方位、高度、イメージ回転の三つの軸がそれぞれ独自の動きをするので制御システムが複雑になるのです。
しかし、コンピュータ制御技術の発達した今日では、こうした問題は徐々に解決されており、新しい大型望遠鏡はほ
とんどが経緯台方式を採用するに至っています。
我々の作る 1.4m クラスの望遠鏡はどちらでも可能ですが、望遠鏡を収めるドームの大きさやコストなどの制約から
経緯台を採用しました。今回の南アフリカ望遠鏡の概要設計を図1に示します。これは私が3D−CADを用いて概
略設計を進めているものですが、業者の設計と競い合うコンペ方式で設計をつめていくことにしています。
3、制御の仕様
我々の考えている制御システムを図2に示します。我々が制御システムと呼んでいるのは、上位の位置(角度・速
度)計算を行うコンピュータと、下位のモーター制御専用のコンピュータを合わせたものです。下位のコンピュータ
部分をシーク電子工業が担当し、上位のコンピュータと部分を名古屋大学理学部が担当します。経緯台による星の追
尾は、南緯 32.5°付近なので水平線近くと真上では各軸の速度が大きく異なります。従って、経緯台の制御は上位の
コンピュータから逐一高度・方位・イメージの角度(速度)情報を下位の制御専用コンピュータに与えることによっ
て実現します。
南アフリカのサザーランドはシーイング(星の像の安定性)が大変良い場所で、鏡の精度と合わせて、1秒角離れ
た二重星が見分けられると言われています。望遠鏡架台はこの精度で最低5分間は修正無しに追尾できることが必要
なので、望遠鏡架台の追尾精度は 0.5 秒角以上をめざします。
経緯台の制御の難しさは、天頂付近では高度の速度、水平近くでは方位の速度が、それぞれゼロに近いものとなる
ことです。0.5 秒角の精度をめざすとすれば、少なくとも制御の最小分解能はそれ以下でなくてはなりません。このよ
うな精度で、ゼロに近い超低速領域において安定した回転を得られる制御モータが必要となります。
4、光学・機械・制御を統一した設計
このような仕様を満たすには、機械と制御において共通の基本的思想のもとに設計を進めることが重要です。今回、
こうした意味で、私は経緯台の機械設計から制御システムまでの技術全般に関わっていますので、この望遠鏡の精度
について多くの責任を負う立場にあります。ここでは制御以外の問題について簡単に説明します。
望遠鏡の光学系はクラシカル・カセグレンで、すでにロシア製のものを購入してありますので、それに合わせて機
械系の設計を行います。主鏡は 1.4mF3(厚さ20cm、700kg のガラス)
、副鏡は 0.4mで約3m先にあり、主鏡
の中央の穴に光を通して主鏡反射面の後ろ650mm の位置に焦点を結びます。この焦点をカセグレン焦点と言い、
合成F9.9 となります。
赤外線領域を観測する場合、常温の物体は全て熱輻射によって明るく輝いて見えます。従って、鏡筒にあたる部分
を構造物の少ないトラス構造とし、副鏡を支えるトップリングの口径を大きくして視野に温度の高い(常温)物が入
らない構造とし、受光部分の観測装置は液体窒素温度以下に冷却してあります。
鏡筒はセルリエトラス構造を採用します。これは、鏡筒のたわみを、支持部分を中心に主鏡と副鏡で一致させるこ
とによって光軸の歪みを出ないようにしたものです。鏡筒の熱膨張による影響は、インバー合金や超低熱膨張ガラス
などを基準とした補正機構によって副鏡位置を変化させる方法を採用します。主鏡を傾けたときに生じるひずみは主
鏡セルに設けたバランスおもりで取り除きます。
方位の軸受けはRガイド(THK)を用い、約15tの荷重を受けます。回転角はハイデンハインの開放型ロータ
リ・エンコーダを用い、0.028 秒の読みとり分解能と2秒の絶対精度を実現します。駆動のメカニズムは、従来の歯車
ではなく、円筒面の摩擦による駆動(フリクションドライブ)です。この方法は無限小の歯車と考えて良いのですが、
スリップを検出するためにロータリ・エンコーダが必要となります。
高度軸も方位と同じロータリ・エンコーダや駆動方法を用います。できる限り同じユニットを用いることは海外に
おける設備の保守性を高めるために必要です。
5、各種サーボモータの低速領域における運動性能
サーボモータにはその構造や制御方法などによって様々な種類があります。構造上の分類では、DCサーボモータ、
ACサーボモータ、DCブラシレスサーボモータ。制御方式による分類では、パルス列制御、アナログ電圧制御があ
ります。モータの回転数を検出する方法は、一般にはDCサーボモータはタコジェネレータ、ACサーボモータやD
Cブラシレスモータはオプティカル・ロータリンコーダです。最近は、ファインピッチの5相ステップモータが制御
用として用いられることも多くなりました。
それぞれの回転数検出方法によって低速域の運動性能を決める要因が異なります。オプティカル・エンコーダを用
いたものでは、その分解能による限界があって、それ以上細かい制御はできません。低速回転ではステップモータと
同じ動作になってしまいます。DCブラシレスモータも同様です。
それに比べ、DCサーボモータはタコジェネレータによるアナログ電圧をフィードバックするDCアンプが制御の
中心なので、ゲインや時定数を適当に選ぶことによって滑らかな低速回転が得られます。
これらのサーボモータについて、市販品を購入し、低速運転による性能比較を行なった結果、低速領域ではDCサ
ーボモータが最も安定性に優れていること、他のものは振動を伴ったステップ動作になることが確かめられました。
ACサーボモータの低速回転試験の様子を写真に示します。下段中央はACサーボモータの超低速で、振動状態と
なったときのロータリエンコーダの出力波形です。写真では分かりにくいのですが、オシロスコープのトリガが掛か
りにくいほど不安定です。このACサーボモータは2000p/rev の入力で、ロータリ・エンコーダの分解能は500
p/rev のものです。
DCサーボモータはアナログ電圧で制御するので別の難しい問題があります。それは、コンピュータからの指令値
をD/A変換た後の微少電圧の揺らぎや雑音(外来雑音と自らが発する火花雑音など)の問題です。ACサーボモー
タと比較した場合、制御システム全体として格段にコストが上がるとともに、ブラシなどの消耗品の保守という問題
がつきまといます。
6、現状でのまとめ
現在、1/5スケールモデル(図3)を製作中で、これに本番と同等の性能を有するサーボモータとエンコーダを
組み込み、シーク電子の開発した制御専用コンピュータと名古屋大学で開発した角度指令用コンピュータ(コンソー
ル)による総合試験を行い、問題点を掌握した後に本番用の最終的な設計に移る予定です。1/5モデルによるシス
テムの確認と評価は非常に重要となっています。現在、直線案内機構にこれらのモータを実装して、振動計によって
評価する実験を進めています。
シーク電子が得意なACサーボモータでも我々の仕様を満足することを確認できれば良いのですが、だめだった場
合はDCサーボモータによるアナログ制御となります。DCサーボモータは日本の制御技術者の間では経験が少なく、
シーク電子も同様ですので、ある程度の困難が予想されます。
日本におけるサーボモータの技術開発の歴史は一般民生品の需要が主で、今回のような特殊な条件での制御はあま
り考えられていなかったのではないかと思います。ACサーボモータは整流子やブラシなどの消耗部分がないので保
守性に優れていますが、制御範囲の広さや低速安定性ではDCサーボモータが勝っています。
図1、南アフリカ望遠鏡
図2、制御システム
図3、南アフリカ望遠鏡1/5モデルの設計図
写真、ACサーボモータの性能試験
試験用ステージ 加速度センサ
300rpm で運転(安定)
入力
エンコーダ
出力
ACサーボモータの試運転
15rpm で運転(振動)
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