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ADHD、高機能自閉症の理解と支援のために

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ADHD、高機能自閉症の理解と支援のために
ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴と
する行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものをいう。
また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全がある
と推定される。∼今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)
∼
判断基準
断基
①「不注意」「多動性」「衝動性」に関する設問に該当する項目が多く、少なくとも、その状態が6ヶ月以上続いている。
②「不注意」「多動性」「衝動性」のうちのいくつかが7歳以前に存在し、社会生活や学校生活を営む上で支障がある。
③ 著しい不適応が学校や家庭などに複数の場面で認められる。
④ 知的障害(軽度を除く)、自閉症などが認められない。
○不注意
・学習中に細かいところまで注意を払うことができず、不注意による間違いをしたりする。
4P−①参照
・課題や遊びの活動の中で、注意を集中し続けることが難しい。 4P−②参照
・授業中、物思いにふけることが多い。文房具で遊ぶなど手遊びが多く、授業に集中できないことが
ある。 4P−①参照
・面と向かって話しかけられているのに、聞いていないように見える。
・作業や課題がなかなかやり遂げられない。またそのような課題を避けようとする。4P−②参照
・忘れ物が多い。たびたび宿題を忘れる。
(宿題があったことそのものを忘れる)
5P−④参照
・やるべきことの優先順位がつけにくく、自分で計画を立てたり、それに基づいて実践したりする
のが苦手である。 6P−⑤参照
・学習や活動に必要な物をなくすことが多かったり、いつも机の周りが散らかっていることがある。
8P−⑧参照
○多動性
・授業中に手足をそわそわ動かしたり、座っていても、もじもじしたりする。
・座っているべき時に、すぐに席を立ってしまう。
・急に気になることを思い出して、教室を飛び出すことがある。
7P−⑥参照
・遊びや学級活動に参加するのがむずかしい。 9P−⑨参照
・気が散りやすく、周囲のちょっとしたことが気になる。
○衝動性
・教師が発問中なのに突然答えを言ったり、他の子の発言中に
割り込んで話し出したりする。延々と話し続けることがある。
5P−③参照
・遊びや作業の中で、順番を待つのが難しい。
・他の人がしていることをさえぎったり、じゃましたりする。
・かっとなりやすく、乱暴な言葉を言ったり、たたく、ける、
物を投げるなどの態度をとったりして友だちとトラブルにな
ることがある。7P−⑦参照
−1−
高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、① 他人との社会的関係の形成の困難さ、② 言葉の発達の
遅れ、③ 興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、
知的発達の遅れを伴わないものをいう。
また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
∼今後の特別支援教育の在り方について
(最終報告)∼
※アスペルガー症候群とは知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを
伴わないものである。
判断基準
① 知的発達の遅れが認められない。
② 社会生活や学校生活に不適応が認められる。
③ 以下の項目に多く該当する。
○人への反応やかかわりの乏しさ、社会的関係の困難さがある。
・目と目で見つめ合う、身振りなどの非言語的な行動が困難である。
・仲良くしたいという気持ちはあるが、同年齢の友達とのコミュニケーションをとることがあまり
できない。
1
1P−③参照
・友達のそばにいるが、一人で遊んでいる。
・球技やゲームをする時、仲間と協力してプレイをすることが不得意である。
11P−③参照
・いろいろなことを話すが、その時の状況や相手の感情、立場を理解しない。
・周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう。
○言葉の発達の遅れがある。
・話し言葉の遅れがあり、身振り手振りなどで補おうとしない。
・会話の仕方が形式的で、抑揚なく話したり、間合いがとれなかったりすることがある。
・反復的な言葉の使用や独特な言葉がある。
・含みのある言葉の真の意味が分からず、表面的な言葉の通りに受け取ってしまう。
・その年齢に合った変化に富んだ自発的なごっこ遊びや、社会性のある物まね遊びができない。
○興味や関心が狭く、特定のものにこだわる。
・強いこだわりがあり、限定された興味だけに熱中する。ゲームなどの勝ち負けに強いこだわりが
ある。
1
0P−①、1
2P−④参照
・自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる。
1
0P−②参照
・反復的な行動(例えば、手や指をぱたぱたさせるなど)をする。
・特定の分野の知識について高い記憶力を示す。
○その他、高機能自閉症における特徴
・常識的な判断が難しいことがある。
・動作やジェスチャー(身体的表現)
がぎこちない。
−2−
○発達の特徴としてとらえます。
子どもの甘えやしつけ、親子関係が原因だとして、子どもや保護者の養育について追い詰めない。
○できることや関心のあることを探して、取り組めるようにします。
得意な領域を伸ばす。成功体験を積み重ねる。
○活動の手順を分かりやすくします。
場面の写真や手順カードを準備する。突然のスケジュール変化はなるべく避け、前もって予告する。
○目で見て分かるように図示したり、動作化したりして示します。
言語による指示は短く伝える。視覚的な支援は効果的である。
○課題の量の調整や提示の仕方を工夫します。
学習や作業の量を減らしたり、少しずつ課題の量を増やしたりする。課題を順番に一つずつ示し、
できたら次に取り組むようにする。
○教室内の刺激をなるべく減らします。
廊下側にもカーテンを設置する。
掲示物を減らす。机や椅子に防音用のテニスボールを取り付ける。
ADHDや高機能自閉症の子どもたちへの対応については、学級担任一人の対応ではなく、学校全体
で支援する体制づくりを整えましょう。
○校内に今ある人や物・時間などの資源を最大限に活用しましょう。
就学指導委員会や生徒指導部など、いろいろな組織を活用しましょう。
少人数指導やTT指導、習熟度別指導など、いろいろな指導体制を活用しましょう。
校内・校外にある資源(特殊学級や通級指導教室、専門機関等や養護学校等との連携など)を活
用しましょう。
○子どもたちの状況や障害特性などに対する正しい知識と理解を促す研修を企画しましょう。
子どもたち一人一人の状況や特性を正しく把握し、理解することが大切です。
○子ども本人や保護者との懇談など、悩みをしっかり受け止める場を作りましょう。
校長、教頭、学年主任や養護教諭などを交えての懇談会を設定しましょう。
保護者と連絡帳を交わしましょう。
いろいろなサインを見逃さないようにしましょう。
○周囲の子どもたちや保護者の理解を促す環境づくりに配慮しましょう。
理解のための授業や保護者の体験談を聞くなどの機会を設けましょう。
−3−
授業中では
中では
① ぼんやりしたり、空想にふけったりすることがある。
○具体的な様子は・・・
授業中にぼんやりしていて 、 教師や友達の話を聞いていないように見えます。ずっとうつむいて
いたり、居眠りをしたりすることもあります。
○具体的な支援は・・・
・ 教室内での座席を担任のそばにして、意図的に名前を呼んだり、
肩に手をかけたりして、注意を担任に向けられるようにしま
しょう。
・口頭による指示だけでなく、合図や絵や写真など、視覚的な情
報を用いましょう。
・授業時間中に、体を動かす活動を取り入れたり、声に出したり、
歌ったりする活動も取り入れましょう。
・空想にふけってなかなか指示が通らない時は、叱るのではなく、
「けんじさん、○○をノートに書いてください」など具体的な
活動を示して、気分を変えましょう。
② 作業や学習課題がなかなか仕上げられない。
○具体的な様子は・・・
作業や学習課題への取りかかりが遅く、みんなが終わったころにやっと課題を始めたりします。
いざ取りかかっても、最後まで仕上げないうちに 、 ちがうことを始めてしまい、仕上げられませ
ん。少しうまくいかないと「やーめた」
「何でぼくだけ・・」と怒り出して、途中で止めてしまう
ことがあったりします。
○具体的な支援は・・・
・教室では廊下側や窓側の席を避け、不要な刺激を取り除きましょう。
・次々に興味が移って自分の課題に集中できない時は、座席を担任のそばにしておくと、さりげな
く声かけができます。
・音の出る教材や刺激の多い掲示物などは、布をかけたり、場所を移動するなどの工夫をします。
・テレビの音量や教師の声の大きさを調整しましょう。
・作業や課題を小さなまとまりに分けて、単純で手順が複雑でないものを、短い時間で出来上がる
ように工夫します。
・集中力が途切れた時は、無理して作業や課題を続けさせるのでなく、
「あと5分間だけやってみま
しょう」などと声をかけ、時間を決めて取り組めるようにしましょう。
−4−
③ 授業中に延々と話しつづけて止まらない。
○具体的な様子は・・・
教師の説明の途中や、他の子どもの発言中に割り込んで話し始め、延々と話し続けることがあり
ます。声の大きさや話すスピードを、相手や場面に応じて調整するのが苦手です。
○具体的な支援は・・・
・学級で「話をするときの約束」
「話を聞くときの約束」を
決めて見やすい場所に提示しておき、いつでも本人が確
認できるようにしておきましょう。
・発言カードを作成しましょう。どうしても発言したい時
には、それを利用するように約束しておきましょう。
・発言が長くなりそうな時や、その場にそぐわない発言の
時には「ゆうこさん、そのことは次の休み時間に聞くか
らね」と約束して、安心感を持てるようにします。
・声の大きさやスピードは自分では気づきにくいものです。
目で見て分かりやすい「声のものさしカード」を作り、
「今は○のレベルで話しましょう」と示します。
声のものさしカード
④ 宿題を忘れる。
○具体的な様子は・・・
宿題があること自体を忘れてしまうだけでなく、きちんと家で宿題をしていても、学校に持って
くるのを忘れてしまう場合もあります。また、担任の先生に提出することを忘れるだけのことも
あります。
○具体的な支援は・・・
・宿題の内容をメモにとる練習を取り入れましょう。
・宿題用のファイルや袋を作り、先生と一緒に宿題を入れ
るようにします。
・家庭と連携して、
「今日の宿題は何が出たの?」と家庭で
も声をかけて1つ1つ確認してもらうなどの協力体制を
作りましょう。
・子どもによっては、宿題の量を調整しましょう。中には、
宿題を最後までやり遂げないと落ち着かない子どもがい
ます。負担なく仕上げられる量を準備するなど、家庭と
の連絡を密にしましょう。
−5−
生活 面では
生活場面では
⑤ 授業や帰りの準備がスムーズにできず、時間がかかる
○具体的な様子は・・・
授業が始まっても、教科書を出さずに、おしゃべりを続けています。
「帰りの用意をしましょう」
と指示をしても、カバンを取りに行かずに、遊んでいます。友だちが準備をしていても、回りを
見渡すことをしません。
○具体的な支援は・・・
・これから活動する内容や順序を、口頭で指示するだけでなく、
黒板に文字で書いたり、
カードを
貼ったりしましょう。
・
「①ランドセルを取る→②教科書を全部ランドセルに入れる→③連絡帳を開く・・・」といった具
合に、やるべきことを順序よく並べて提示すると、より分かりやすくなります。
・クラス全員に指示するとともに、
「かずおさん、次は∼をしましょう」と個人の名前を呼んで、指
示しましょう。
「あっ、自分に言われているのだ」と意識できます。
活動に見通しを持てることで安定した5歳児こうさん(仮名)の場合(幼稚園)
こうさんは、次の行動へなかなか移れないこと
り、静かな場所で声をかけるようにする。
や、行動をコントロールすることが難しいことが
〇活動の前に個別に声をかけ、活動に見通しを持
あります。お弁当のときには、準備をするのに時
てるような援助をする。また、絵カードや写真
間がかかったり、手を洗わずに食べようとしたり、
を使って、その日の活動の流れや、遊びのルー
ごちそうさまの挨拶がすまないうちに外へ行って
ル、危険な行動などを丁寧に知らせ、
「いつでも
しまったりしました。
見て確認できる」という安心感を持てるよう保
そこで、保護者の了解を得て、市保健福祉セン
育室に掲示する。
ターの心理相談員の先生と連携を取ることにしま
した。こうさんについて話し合う中で、感覚が敏
このような支援を続けることで、自分から弁当
感で目や耳からの刺激が入りすぎること、活動の
の用意をしたり、分からないことを先生に尋ねた
見通しが持ちにくいことが分かってきました。そ
りするようになってきました。しかし、みんなで
こで、園内研修で話し合い、次のようなことを心
一緒にする活動が多い日は、保育室で弁当を食べ
がけるようにしました。
たがらないこともあります。そんなときは、職員
〇「早くしなさい」
「だめだよ」と言うのではなく、
室で園長先生と食べたり、部屋の隅で先生と一緒
「かばんの中からお弁当を持って来ようね」と、
に食べたりするようにしています。
具体的に行動を指し示すようなことばかけをす
園での様子を保護者にも伝え、卒園後も個別の
る。
支援が必要なのではないかと話し合いました。そ
〇まわりの音が大きかったりお友達のことが気に
なったりしているときは、部屋の隅や廊下に移
こで、こうさんの園での様子を、就学先の小学校へ
知らせるなどして連携を深めるようにしています。
お弁当の時間の手順カード
−6−
⑥ 教室を飛び出したら・・・
○具体的な様子は・・・
突然教室から飛び出していくことがあります。「ど
こに行くの?」
「もどって来なさい」と声をかけても
反応がなかったり、
「出ちゃだめよ」と制止すると、
大声を上げていやがることがあります。どこに行く
のか予想できる場合や 、 しばらくすると教室へ戻っ
てくる場合、時には校舎の外や学校外に出てしまう
場合があります。安全対策が望まれます。
○具体的な支援は・・・
・興奮して教室を飛び出す場合は、制止するだけでなく、避難場所をあらかじめ決めておきましょ
う。本人と前もって話し合いをして、
「不安になったらそこに行ってもいいよ」
「落ち着いたら教
室に戻ってきてね」など、教室を出ていく時と戻ってくる時の約束をしておくことで 、 本人はとて
も安心できます。
・急に教室を飛び出していった場合のために、前もって担任以外の先生など学校全体の応援体制を
とっておきます。
・教室内に本人が過ごしやすい場所を作りましょう。教卓や教師用机の横、教室の後方にロッカー
や本棚などを利用して、本人用のスペースを作ることも有効です。
⑦ 友達とのトラブルが多い
○具体的な様子は・・・
休み時間など、なにげない友達との会話や遊びの中で、口論になったり、急に叩く、ける、押す、
物を投げるなど攻撃的になったりすることがあります。
順番を待っている列に割り込んだりすることがあります。
○具体的な支援は・・・
・その時の状況や原因、子どもの気持ちを考えます。
いらいらしていたのか、自分の気持ちをうまく言
えずにそのような乱暴な行動に出てしまったのか、
自信がないことに対しての不安から防衛的にその
ような行動に出たのではないか・・などしっかり
見極めましょう。
・友達との相性を考えたり、席やグループに配慮し
て、友達とのトラブルが未然に防げるような工夫
をします。
・二人組みでの活動から班活動、その後学級全体での活動につなげるなど、集団での楽しさを味わ
える経験を、段階を踏みながら積み重ね、本人にとって学校での生活がプラスのイメージになる
ようにしましょう。
−7−
係活動を工夫することで落ち着きがみられるようになった しんたろうさん(仮名)の場合(小学校)
しんたろうさんは保育園の時から多動性や衝動性
ください。だめなことはだめときちんと伝え、でき
が見られ、友だちとのコミュニケーションがうまく
なかったときは、なぜできないのか話し合うように
とれず、そのため友だちに暴力をふるうことがたび
してください」と、アドバイスを受け、しんたろう
たびみられました。小学校3年生の時には、授業中
さんと相談をしながら、本人の係活動を決定してい
に急に席を離れたり、他の子どもたちに次々と話し
きました。
かけたりしました。時々はかんしゃくを起こして、
また、お母さんとの連絡ノートを作り、その日の
椅子を投げたりすることがありました。
がんばりを伝えるようにしたところ、家でもほめら
4年生になり、保護者に学校での様子を話し、一
れることが多くなり、少しずつ落ち着きがみられる
緒に市教育センターでの相談を受けることにしまし
ようになってきました。まだ時々興奮することもあ
た。
「学級で、やりがいを持てるような係を担当で
りますが、以前に比べると落ち着くまでに時間がか
きるようにして、できたときはうんとほめてあげて
からなくなっています。
⑧ 整理整頓ができない
○具体的な様子は・・・
机の上、引出しの中、カバンの中など、いつも物がいっぱいで散乱し、ごちゃごちゃになってい
ます。そのため必要な物が取り出せず、大切なものをなくしたりしがちです。また机の上の道具
が多すぎて作業の能率が悪くなりがちです。
○具体的な支援は・・・
・机の上や引出しの中に置くものの絵や写真カードを貼るなど、目で見て片付ける場所がわかるよ
うにします。
・筆箱の中身は鉛筆3本、赤鉛筆1本、消しゴム1個など、数を制限し、整理しやすくしましょう。
・本人の物と分かりやすい目印やマークをつけておくとよいでしょう。
・場合によっては、専用の片付け用の箱やロッカーを用意し、とりあえずその中にしまうようにし
ます。
・学級全体で持ち物整理の日を決め、一斉に整理をすると、片付ける機会が増えてきます。
・自分から片付けを始めた時は、
「なつこさん、きれいに片付けているね」と声に出してほめましょ
う。
−8−
⑨ 掃除や係り活動がうまくできない
○具体的な様子は・・・
係り活動や掃除時間は、なかなか自分の役割に取り組もうとしません。ほうきや雑巾を手にして
もつい遊んでしまい、それが原因でトラブルになったりします。給食当番では、
「パンを配る」
「お
かずをつぐ」など、自分の好きなことだけをしたがり、少しでもうまくいかないと「やめた」と
言って、やめてしまうことがあります。
○具体的な支援は・・・
・やることを具体的に示しましょう。絵カードや文字カードにして手渡したり、教室に掲示するの
も有効です。
・まず本人が好きな仕事やうまくいきそうな仕事を準備しま
す。量が多すぎないように注意しましょう。
・少しでもうまくできた時はしっかりほめましょう。みんな
の前でほめる機会も作りましょう。
・同じ仕事ばかりをしたがる時は 、「何回やったら交代ね」
「これを1回だけやってみたら」等と声かけをしてみます。
「うまくやれそうだ」
と本人が少しでも思えるようにします。
・友達と協力することが難しい時は、「黒板を消す係」や
「ジャムを運ぶ係」など一人の仕事にします。
医療と連携したてつおさん(仮名)の場合(小学校)
小学3年生のてつおさんは、授業に集中できず落
にばかりやさしい」と言った不満も口にしました。
ち着かない、途中で教室から出ていってしまう、注
学校での生活についてたずねると「教室がうるさ
意すると腹をたてて物にあたったり泣いたりする、
くてイライラする、集中できない」「頭が痛くなる」
下校時に物を振り回して他の子がケガをするなどの
と訴えたので、これまでの取り組みに加えて、落ち
トラブルが続きました。学校で本人が落ち着けるよ
着かない時の居場所として保健室の一角を用意して
うにいろいろな手だてを講じましたが、うまくいか
もらい、週に1回は情緒学級の教室を利用すること
ず、これらの行動が目立つようになったことから、
にしました。併せて、お母さんへのサポートも進め
家族も学校側も医療機関の受診を希望するようにな
ました。
りました。
これらの結果、心理面では改善に向かいましたが、
診察の結果、ADHDの診断基準の項目のうち、
集中力や感情コントロールに困難な面があったので、
「不注意」は6項目、「多動性」「衝動性」は4項目
2か月後に家族の希望で服薬を始めました。本人は
が当てはまりました。診察時の観察では、周りから
薬を飲んだ方が勉強に集中できると述べ、授業中の
の音や人の刺激で注意散漫となり、お母さんのささ
態度も改善がみられ出しました。1年後に服薬を中
いな言葉に対して怒り出して物に当たる行動が見ら
止して、その後は必要に応じての服薬に切り替えて
れました。お母さんが見かねて注意すると「どうせ
います。
自分は悪い子だ」と涙声になり、
「お母さんは弟の方
※ADHDは医学的には脳機能障害の背景が想定される行動症状群であり、合併症(LDなど)や二次障害
を含めて十分な評価が必要である。環境を整えることや心理面への配慮は行動を改善する上で効果的だが、
不注意や衝動性などに対して投薬療法が有効な例も多くある。学校内の支援だけでなく、医療との連携も
必要である。
−9−
授業中では
① 課題がうまくできない時に怒ったり泣いたりする
○具体的な様子は・・・
テストが百点でないと気にしたり、時間内に課題がすべて出来上がらないととても悔しがったり
します。他の友達と同じようにできないと不安になってしまいます。
○具体的な支援は・・・
・百点は取れなくても、正解した問題や、途中まで合っている箇所をしっかりほめるようにします。
・一度に全部の量を出してしまわずに、いくつかに分けたり、段階的に取り組んだりすることも考
えられます。
生活場面では
② パニックになったら・・・
○具体的な様子は・・・
ささいなことからとても興奮し、泣いたり 、 怒ったり、時には手当たり次第に物を投げたり、近く
の友達やおとなを叩く 、 噛み付くなどの危険な状態になることがあります。気に入らないことや
思い通りにならないことに対して、我慢ができずに感情的になってしまうことがあります。
○具体的な支援は・・・
・パニックは時間とともに収まることが多いので、周囲が冷静に対応することが大切です。本人と
一緒になって大声で叱ったり、押さえつけようとしたりすると、逆に、興奮が増してしまうこと
があります。
・興奮状態のときは周囲に危険なものがないかを確認します。興奮が起こった場所を離れることで
落ち着くこともあります。空教室やカーテンなどで仕切った刺激の少ない空間など、落ち着ける
場所に移動するのもいいでしょう。
・担任一人だけで対応するのではなく、校内全体の支援を受けましょう。
・興奮状態の時に、なだめたり、指導をしたりしても、効果
は少ないようです。落ち着いてから振り返りをさせま
しょう。
「こう思ったなら、こう言ったらよかったね」
「こ
んな時はこうしたらいいよ」などと具体的に望ましい行動
を教えます。時にはその場でロールプレイを通して練習
してみることも有効です。
・パニックになる原因や前兆が多くの場合はあります。それ
を早めに察知して、引きがねになりやすいものは可能な限
り取り除きましょう。
− 10 −
パニックにうまく対処したいさおさん(仮名)の場合(中学校)
いさおさんは状況や役割を理解することが困難で、
叩いてしまいました。
他人の気持ちを理解することや自分の気持ちを適切
週ごとに変わる当番活動の順番や内容が自分でき
に相手に伝えることが苦手です。また特定の習慣や
ちんと把握できていないと、混乱し不安定になりま
手順に固執する傾向があります。
す。そこで担任は毎週、表やカードで確認していく
学力は高く、
特に社会が得意です。しかし、体育や
ようにしました。また、パニックになった時は、静
美術、数学の図形などは苦手です。歴史的な分野に
かな落ち着いた雰囲気のカウンセリング室に行くよ
関心があり知識も豊富ですが、友達との共通の話題
うにしました。そこで、教師が一緒にいさおさんの
が少なく、同年代の生徒との会話は少ないようです。
行動を振り返りながら、良かったこと、いけなかった
ある日、いさおさんは給食当番の時に、不注意で
こと、こうすればよかったことなどを話し合うよう
お盆や食器を床に落としてしまいました。そのこと
にしています。現在では少しずつ自分の行動を客観
を友達に指摘されると、パニックを起こし、相手を
的に振り返ることができるようになってきています。
③ 友達と上手くつきあえない
○具体的な様子は・・・
強い口調で友だちを非難してしまったり、「 ゆみさんは太ってるね 」 とか「たいしさんはサッカー
が下手だよ」などと、相手の気持ちを考えずに発言してしまったりして、友だちとのトラブルが起
こりがちです。逆に友だち同士がふざけて「うそー。それって変じゃない」と言うと 、 その言葉通
りに受け止めて「僕のことを変だと言われた」ととても気にしたりします、また、相手が乗り気で
はない遊びを強制したりして、友だちとの仲が気まずくなったりします。
○具体的な支援は・・・
・教師自身も遊びの中に入って、友だちと一緒の楽しさ
を体験できるようにサポートします。
・ゲームのルールを簡単にしたり、ルールを図に表した
カードを持つようにしたり、活動の場に貼ったりします。
・
「こんな時はこんな風に言うんだよ」「こんなに言った
ら、ゆみさんやたいしさんはとっても悲しいんだよ」
など、どんな行動をすればいいのかを具体的にロール
プレイなどを通して学習します。
・時々は一人でゆったりとくつろげる時間や場所を確保
し、休むようにします。
− 11 −
④ こだわりが強い時は・・・
○具体的な様子は・・・
自分の興味のあることには長時間集中して取り組めるが、それ以外のことや、初めてのこと、苦
手なことなどにはとても抵抗を示します。特定の物や順番にこだわったり、特定の話題からなか
なか広がらなかったりします。また、
「ジュースは最後に飲むと決まっているのに、まゆみさんは
途中で飲んでいた」など、
ささいなことで友達を強く非難して、
トラブルになってしまうこともあ
ります。
○具体的な支援は・・・
・時間割の予定の変更などはできるだけ避けます。前もって変更が分かっていることは、その都度
事前に知らせるようにします。もし急に変更しなくてはいけない時には、変更の理由や内容を分
かりやすく説明しましょう。
・本人の関心を利用して、周りの友達の「先生」になってもらいましょう。折り紙の得意なせいじく
ん、難しい漢字をたくさん知っているゆうこさんの活躍の場を用意しましょう。
・嫌いなことや苦手なことに取り組むときは、できることや好きなこと、得意なことなどを組み合
わせます。例えば「漢字のプリントを仕上げたら絵を描いていいよ」という約束をします。
・作業量を減らし、嫌いなことをやり遂げたら、しっかり誉めるようにします。「やれた」
「できた」
と言う満足感を味わうことにより、
「またやってみよう」という意欲につながるように、少しずつ
取り組むようにします。
・本人のこだわりの内容を1つ1つ確認し、本人・保護者と話し合って「休み時間や教室だけはやっ
ていいよ」などの約束を決めます。
医療と連携したかよさん(仮名)の場合(小学校)
小学5年生のかよさん。幼児期から言葉が少なく、
情緒不安定で登校も嫌がるようになりました。養護
集団行動がとりにくかったのですが、年齢とともに
教諭の勧めで、病院を受診することになりました。
集団に馴じむようになり、家族は学年が進むにつれ
担当の医師は、現在の行動から、「高機能自閉症」
て問題が軽くなることを期待していました。
と診断しました。家庭・学校・医療担当者の三者で
5年生でクラスが替わった頃から、一人でいるこ
話し合いを持ち、
「学校生活を楽しむこと、無理のな
とが多くなり、休み時間はもっぱら図書館で過ごし
い学習ができること」を目標として、一日のスケ
ました。その後、唾をつけたり、他の子のノートに
ジュールと授業内容を見直しました。音楽の時間に
イタズラ書きをしたりし、そのことを注意してもや
耳を抑えて坐り込むことや、給食時の強い偏食など、
めなかったり、帰りの会では自分の関心事だけを話
我慢できないときはどうしたらいいかを本人と話し
したがったりするなどの行動が目立つようになりま
合いました。担任も、子どもの行動の意味がよく分
した。しかし具体的な手立てがなかなか見つかりま
かるようになり、スケジュールを変更する場合は本
せんでした。夏休み前に友だちとのトラブルが増え、
人が混乱しないように事前に話をする、言葉だけで
友達の文房具に傷をつけたことで、学級の友達から
なくメモで伝えるなどの方法をとることにしました。
責められ、
家に帰って「みんなが意地悪する」と泣き、
※高機能自閉症にみられる対人関係やコミュニケーションの障害は、学校生活を送る上で困難さの原因とな
り、不適応行動を生じやすい。一人一人の症状の特性と程度を理解して対処していく上で、家庭や医療と
の連携は欠かせない例が多いと思われる。
− 12 −
まず保護者と信頼関係を
家庭と学校での様子が大きく異なる場合があります。
「この子は、ちょっと元気が良すぎるだけ」と
いった具合にとらえ、あまり配慮をしていない場合や、逆に小さなことまで心配して、保護者にとっ
ては大きな不安になってしまっている場合もあります。保護者の気持ちを十分に受け止めながら 、 お
互いに子どもの理解を深め、よりよい対応を考える場になるような懇談の機会を持ちましょう。
学校での様子を具体的に
学習や子どもの変化を肯定的に伝えましょう。
「かけ算のプリントが最後まで取り組めましたよ。
」
「今日は地理の授業で班の代表として発表しました。
」など具体的に成長している姿を伝えます。友だ
ちとのトラブルがあったときも、非難するのではなく、いきさつや指導内容の事実を伝えましょう。
今後の対応について前向きに
指導のねらいや方法を、保護者と一緒に話し合って確認していきます。担任だけでなく、校内での
協力体制を深めるために、
校長・教頭や同学年の教師、養護教諭なども同席し、
話し合いを進めましょう。
専門機関につなげる
学校の中だけで対応するだけでなく市教育センター、保健・福祉や医療機関、特殊学級・通級指導
教室の設置校等と連携をとっていくことも必要です。
− 13 −
熊本
熊本市教育センターにおける教育相談手順
育センタ における 育相談
電話相談
S
ST
TEP 1
電話の相談
談と来所予約
受付時間 9
:0
0∼1
9:0
0
電話番号 359−3221
保護者本人の気持ちで
学校や園からの勧めで
相談機関からの紹介で
S
ST
TEP 2
来
所
来
付近地図
課題の整理・要望確認
発達の評価
学校への状況確認と相談
S
ST
TEP 3
状
状況
況報告
就学や支援に関して相談報告書
を学務課に提出
住所:熊本市千葉城町2−35
交通:バス・電車は「市役所前」で下車。
西社会保険事務所の隣です。
正面に相談者専用駐車場があります。
問題の早期解決のためには、教育センターでの相談とと
もに園や学校での普段からの教育相談が大切です。
保護者だけでなく、担任の先生方が同伴しての相談はと
ても効果的です。
相談内容については個人情報です。電話でのお尋ねには
答えられません。
情報依頼については、必ず保護者の承諾の元に行ってく
ださい。
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こどもの 達相談窓口における相談手順
こどもの発達相談窓口における相談手順
相 談
相
相 談 者
電話相談受付(月∼金)8:3
0∼1
7:15
来所個別相談(月∼金)9:0
0∼1
2:00
1
3:0
0∼1
6:00
来
来
電話番号 360−6133
所
・相 談
・観 察
・検 査
評
評価
価・説明
・保護者への生育歴の聴き取り、また相談内容の把握を行います。
・プレイルームでの遊びを通して発達、対人関係の様子を観察します。
・必要に応じて発達検査を実施します。
・検査結果の説明を行います。
処
処遇
遇決定
付近地図
・必要に応じて通所訓練活動への案内をします。
・幼稚園や保育園・他の専門機関の紹介、情報
提供をします。
相
相談
談の継続
・必要に応じて幼稚園や保育園・小学校
などの訪問、また保護者の依頼を受け
た場合は幼稚園や保育園・小学校・教
育センターへ同伴し、就園・就学問題
への支援・相談を実施します。
住所:熊本市湖東1丁目14−30
交通:バスは「若葉校」行き「秋津小楠公園」行き「湖東町」で下車。
電車は「神水橋」で下車。
子どもの発達相談窓口ってどんなところ?
「首がすわらない」
「なかなか歩かない」
「ことばが出ない」
「落ち着きがない」
「コミュニケーションがうまく取れない」等、
ご両親のさまざまな悩みを一つの問題だけでなく、お子さんの発達をご両親と一緒に見つめ、援助していくところです。
《受入れ対象児》
○0歳∼6歳の小児※就学後も必要に応じて相談継続することもある。
○発達に何らかの課題のある小児
《就学問題についての相談事業》
○保護者を対象とした教育関係者による講話 ○就学問題への相談およびアドバイス
○小学校・教育センターへの同伴 ※但し、依頼がある場合に限る
○小学校・教育センターへの情報提供(発達相談・当所での活動状況など)※但し、依頼がある場合に限る
《発達相談窓口のスタッフ》
・保育士 ・看護師 ・作業療法士 ・言語聴覚士 ・心理相談員 ・非常勤医師(小児科医師 発達小児科医師 歯科医師)
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機関名・診療科 他
所 在 地 他
T E L 他
熊本大学附属病院
発達小児科
熊本市本荘1−1−1
火、木曜
3
73−5
5
72
熊本大学附属病院
神経科 精神科
熊本市本荘1−1−1
火、木、金曜
3
73−5
5
66
熊本県福祉総合相談所
熊本市長嶺南2−3−3
3
81−4
4
11
・小児科・精神科医師による相談、診察
熊本大学教育学部
障害児教育学科
熊本市黒髪2−4
0−1
3
42−2
6
46 学科事務室
熊本県精神保健福祉センター
熊本市水道町9−16
3
56−3
6
29
・医師・臨床心理士による相談、診察
熊本市湖東1丁目14−3
0
3
60−6
1
33
・保育士・看護師・作業療法士・言語聴
覚士・心理相談員・非常勤医師(小児
科医師 発達小児科医師 歯科医師)
による相談、診察
熊本市千葉城町2番3
5号
3
59−3
2
21
・精神保健福祉士・元教員などによる相
談
・第3土曜日には小児科医などによる
「ピア・サタデー相談会」実施
熊本市こどもの発達相談窓口
熊本市教育センター
教育相談室
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