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ホメオパシーの理解にどうぞ PDFファイル クラシカルホメオパシー

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ホメオパシーの理解にどうぞ PDFファイル クラシカルホメオパシー
1
目次
まえがき ............................ 3
サミュエル・ハーネマン............... 5
同種の法則 .......................... 7
病気と治癒 .......................... 8
個別性 ............................. 10
ホメオパシーとアロパシー............ 12
ホメオパシーの医薬.................. 14
プルービング........................ 17
ホメオパシーのレメディーの投与量.... 18
“単一”レメディーと“複合”レメディー
................................... 20
急性病と慢性病...................... 22
マヤズムの素質...................... 23
治らない病気........................ 31
ホメオパシー的な悪化................ 32
治癒の過程 ......................... 34
抑圧 ............................... 37
実際のケーステイク.................. 41
根本体質治療........................ 43
妊娠中のホメオパシー................ 46
子供のホメオパシー.................. 47
ホメオパシーとスポーツ.............. 49
ホメオパシーのセルフケア............ 50
レメディーを摂るときの注意事項...... 52
Q and A (FAQ)....................... 53
参考文献 ........................... 57
連絡先 ............................. 58
2
まえがき
た。マヤズムの章では様々な方面からのリ
クエストに答え、大幅に増補してあります。
第 1~3 版
根本体質治療の章を新たに追加し、毎日の
私たちが日々患者と向き合ううちに、ク
診療で遭遇する、よくある質問の章も設け
ラシカルホメオパシーとは何かをやさしく
ました。
説明する必要があることに気づきました。
ここで、いろいろな意見を出してこの新
特にクラシカルホメオパシーの基礎につ
版の補足に協力してくれた方々に感謝の意
いて説明することが必要です。なぜならそ
を表したいと思います。また、ブリジット・
れはしばしば、他の代替療法と混同される
クラ-ト氏とカトリン・メーラー氏には計
からです。事実、クラシカルホメオパシー
り知れないほどの助力をいただき,感謝に
は独自の法則を持つ独立した科学です。そ
堪えません。
の上、患者さんがより多くの情報を得られ
ハイジ・グロールマン アルス・マウラー
るほど、自分の治療がより早い回復につな
がることを理解できるのです。
翻訳者まえがき
この療法を理解するためには、健康と病
この本を見るといつも私はギリシャの美
気に対する見方を変える必要があります。
しい島アロニッソスを思い出します。この
患者さんには、自分の病気とその治癒過程
本を最初に知ったのは、アロニッソスで行
に直面しようとする心の準備が必要となり
われたホメオパシーの国際公開セミナーの
ます。
最中でした。そこではジョージ・ヴィトル
この本やいろんなセミナーで、多くの役
カスが講師をしていました。これは非常に
に立つ情報を付け加え、クラシカルホメオ
よくできた分かりやすい教科書だったので、
パシーをより多くの聴衆に伝えたいと思い
英語圏の人たちにクラシカルホメオパシー
ます。
を簡潔に、そして魅力的に紹介する本とし
ては最適であろうと思いました。
第4版
今病気の人や将来病気になったらホメオ
多くの需要-ヨーロッパのドイツ語圏で
パシーを試してみたい人たちは、この本を
10000 部以上の販売部数-と同志たちや患
読むことで、世界で最も効果のある医療体
者さんからたくさんの好意的なコメントを
系の基礎を、はっきりとまた容易に理解す
頂いて、とても喜んでいます。このことは、
ることができるでしょう。
クラシカルホメオパシーが確立され広がっ
てきたことを意味します。
この本は多くのすべてのホメオパスの心
を捉えるでしょう。彼らはホメオパスが何
ここで 4 つ目の修正版を用意することが
をしているのか、なぜ数え切れないほどの
できました。すべての内容につき見直しと
奇妙な質問をするのかを患者さんに伝える
付け足しがなされています。この版の画期
ための教科書を探しているのです。この本
的な点は以下の通りです。日々の臨床で経
が教科書として、多くのホメオパシー診療
験した症例を、いろんな章で付け加えまし
所で販売されることを期待します。そこで
3
は患者さんが、自分の治療の成り行きをで
きるだけ知ることが望ましいからです。
この本の著者であるハイジ・グロールマ
ンとアルス・マウラーは、すばらしいお二
人で、私が今までに特権を与えたホメオパ
スのなかでも最も情熱的なホメオパスです。
彼らは忙しい診療をこなす一方で、好評を
博しているクラシカルホメオパシーの学校
を運営し、プロのホメオパスやレイホメオ
パスを対象としたセミナーを行い、また非
常に興味深いホメオパシーの本を執筆して
います。そして暇を見てはマラソンをし、
チューリッヒでゴルフをしています。
すべての知恵と創造は彼らに、すべての
過ちはわたしにあります。
ハンス・G・シュラウダ- BSc LCH MHMA
MGCP
4
サミュエル・ハーネマン
(1755-1843)
るとき、マラリアにおけるキナの皮の薬理
作用の解説に頭を悩ませました。そこには
キナの皮が胃の収斂作用を持つため、と説
ホメオパシーの創始者
明されていました。彼はこの主張に合点が
行きませんでした。そこで健康な人に及ぼ
ホ
メオパシーを発見し最初に始め
すキナの皮の効果を調べてみようと考え、
たクリスチャン・フリードリッ
このハーブ薬を繰り返し服用してみました。
ヒ・サミュエル・ハーネマンは
すると発熱や震えといった症状のほか、い
1755 年 4 月 12 日、陶器工の息子としてマ
ろいろなマラリアの症状が現れたのです。
イセンで生まれました。当時の経済的な状
この事実からハーネマンは、キナの皮で
況は、豊かさとは程遠いものでした。しか
マラリアが治るのは胃の収斂作用があるか
し並外れた才能の持ち主であったので、後
らではなく、これが健康な人にマラリアの
援者に恵まれて高校に進学することができ
症状を引き起こすためであると結論付けま
ました。ライプチッヒで医学を学ぶために
した。
ハーネマンは外国語を教えたり、翻訳の仕
この画期的な発見をした後、6 年間にわ
事をしたりして授業料を支払うことを余儀
たりハーネマンはいろいろな物質を用いて、
なくされました。ハーネマンはその時代で
自分自身や家族で実験を積み重ねました。
最も評判のいい翻訳者の一人でした。24 歳
彼はだんだんと診療に復帰するようになり
までに 7 ヶ国語をマスターし、自由に書い
ました。ハーネマンは一般的に受け入れら
たり話したりすることができました。1779
れている事実に疑問を呈することをためら
年にエルランゲンで医師国家試験を受けま
いませんでした。そして自説を説明するこ
した。
とを求めました。このようにして、彼は既
診療を始めると、すぐに医療に幻滅する
ようになりました。必要以上の瀉血や野蛮
存の医学にとって、大いなる脅威の象徴と
なったのです。
な催吐、下剤の使用といった治療は、しば
ハーネマンは“ホメオパシー”という言
しば命にかかわるものであったからです。
葉で表現しました。この言葉はギリシャ語
鉛や水銀、砒素といった強力な薬物治療に
の“homoios”(同種)と“pathos”(苦しみ)
より、患者さんは中毒を起こしました。ハ
に由来します。彼はレメディーを 1 粒だけ
ーネマンは当時としては普通に行われてい
使うことを推奨し、しかもごく微量で処方
た、これらの危険で効果のない治療に声を
していました。これが理由で、薬剤師たち
大にして反対を唱えました。すぐに彼は仲
は彼の最も偉大な敵となりました。彼らは
間内から異議を唱えたことで告発されまし
ホメオパシーにより、自分の仕事が脅かさ
た。ハーネマンは失意のうちに診療をあき
れたのです。絶えず迫害にあっているにも
らめました。彼は医学書の翻訳業で生計を
かかわらず、ホメオパシーは発展を続けて
立てました。
います。
カレン博士(1790)の薬局方を翻訳してい
5
ハー ネマ ンの 主要 な著 作で ある “ The
Organon of the Art of Healing”は 1810
年に出版されました。現代においてもなお
通用する、ホメオパシーの基本的な法則や
原則はこの本に記されています。数多くの
巻からなる著作“The Chronic Diseases”
は 1828 年から 1830 年にかけて著されまし
た。
1835 年、妻を亡くしていたハーネマンは
若いフランス人女性と結婚しました。彼は
新妻とともにパリに移り住みました。ハー
ネマンの人生で起こったこの晩年のエピソ
ードは、ホメオパシーが広がるのにとても
重要な出来事でした。彼はパリで 8 年間幅
広く診療を行いました。彼は死のちょうど
2 週間前まで診療を成功させていました。
ハーネマンは 1843 年 7 月 2 日、88 歳で生
涯を終えました。彼のなきがらは、パリの
有名な共同墓地である“Pere Lachaise”に
眠っています。印象的な墓石の墓は今も訪
れることができます。
6
同種の法則
古い著書の中にもすでに記載があります。
パラケルスス(1493-1541 年)は、彼が行
毒をもって毒を制する
った仕事の中で、この原則を示唆していま
す。
ホ
メオパシーの基本は“同種の法
しかし、この知識を徹底的・持続的に追
則”にあります。
“毒をもって毒
い求め、事実に基づいた治療体系にまで発
を制する”
。
“類似するものはそ
展させたのはハーネマンが最初の人でした。
れと同種のものによって治癒される”など、
病気はホメオパシーのレメディーによって
のみ治るのです。レメディーは健康な人に
病気と同じ症状をもたらすものです。
このことから何を理解すべきでしょう
か?風邪を引いて、涙が出て目がヒリヒリ
して痒くなり、鼻がむずむずしてくしゃみ
が出るといった症状があり、刺激性の鼻水
が出る状態になったとします。このような
症状を起こさせることのできるホメオパシ
ーのレメディーだけが助けとなるのです。
このような症状像は、玉ねぎを切ってい
るときに起こります。少しの間上記の症状、
つまり目のヒリヒリ感や刺激性の鼻水など
の症状が現れます。今これと同じかまたは
似たような症状になったとすると、普通の
玉ねぎから作られた Allium cepa というレ
メディーがこの風邪を治すでしょう。
同種の法則をはっきりさせるために、2
つ目の例を挙げます。コーヒーを飲みすぎ
ているとはっきり自覚しているとします。
個人的な感覚に基づくと、多くの人たちが
神経質や震え、動悸、不眠などを訴えます。
このような症状には Coffea(コーヒー)とい
うホメオパシーのレメディーがよく処方さ
れます。
このように、類似のものが似たものを治
すことができるということは、ギリシャの
医師ヒポクラテス(紀元前 460-377 年)の
7
病気と治癒
ルス、真菌、花粉など-から守られなくな
ります。バイタルフォースの障害こそが病
バイタルフォースについて
気の原因なのです。
組織や器官の変化-炎症や潰瘍、関節の
病
気の治療をする前に、本当の病
変形やのう胞など-は、それら自体が病気
気とは何かを正確に定義する必
であるというよりは、病気が進行した結果
要があります。
であるといえます。ただ単に、人体で正し
くないことが起こっているということを示
・なぜ風邪を引いた患者さんと接触した
唆するだけなのです。患者さんは、腫瘍が
ときに、健康なままの人と風邪を引いて
あるから病気なのではありません。むしろ
しまう人がいるのでしょうか?
病気であるから腫瘍があるといえるのです。
・なぜ同じ食事をしても、何も起こらな
実際には、ウイルスや細菌は決して病気
い人と皮膚に広く発疹が出る人がいる
の本当の原因ではありません。細菌やウイ
のでしょうか?
ルス、真菌のようなほかの微生物の繁殖を
・なぜ完全に落ち着いて試験を受ける生
助長させているのは、バイタルフォースの
徒がいる一方で、不安から試験に失敗し
弱体化なのです。このことは、最初にバイ
てしまう生徒がいるのでしょうか?
タルフォースの障害が起こり、続いて病原
・なぜ敏感な人もいれば、そうでない人
もいるのでしょうか?
菌が蔓延するということを意味します。
痔核切除などの手術療法や、強い作用の
ある軟膏での湿疹治療といった薬物療法で
ホメオパシーではこのような質問に特別
注意を払います。バイタルフォースやダイ
病気の症状がなくなることは、病気を制圧
する決定打とはなり得ません。
ナミスと呼ばれる上位のエネルギーが、生
病気のもともとの原因は、弱体化したバ
命のすべての方向性を決定していると考え
イタルフォースに見出されます。薬や手術
ます。
は病気が進行した最終の結果を扱っている
バイタルフォースの役割は、人体の調和
に過ぎません。バイタルフォースの障害を
と秩序を保つことです。人体のすべての構
このような治療で取り除くことはできませ
成物-すべての器官や細胞-はバイタルフ
ん。病気はより広がってゆき、体のほかの
ォースの影響を受けており、それにより守
部分に新たな障害を引き起こす原因となる
られています。バイタルフォースは私たち
のです。
を病気から守り、病気を引き起こす要因に
対して免疫を与えています。
バイタルフォースが弱くなったりバラン
スを崩したりすると(例えば疲労、ストレス、
したがって本当の治癒は、バイタルフォ
ースの調和を図ることによってのみ可能な
のです。
ホメオパシーのレメディーはバイタルフ
精神的な問題など)、人は病気になります。
ォースに影響を与え、病気の人の自然治癒
体はもはや病気の原因-例えば細菌、ウイ
力を刺激して元の平衡を回復させます。レ
8
メディーは、このようにしてバイタルフォ
ースを強めるのです。すると病気の人は自
分を治すための力を得ることができます。
9
個別性
で痛むところを圧迫したりすると具合
が良くなります。
すべての人はおのおの違う
・またある患者さんは、暗いところで横
になると症状が和らぎ、まぶしい光で悪
ク
ラシカルホメオパシーで最も重
化します。
要な原則は、すべての人がそれ
ぞれ違った個性を持つと考える
ことです。患者さんを個別に観察すること
病気の原因に関しても、十分に調査され
なければなりません。
は、ホメオパスの一番大切で基本的な仕事
です。治療されるのは、いつもただ一人の、
・ある患者さんは外を歩いていたときに
紛れもない個人であるべきです。患者さん
雷に遭遇しました。それ以来、彼は風邪
は、その人独特のなりかたで病気になり、
を引き、結果として強い頭痛を伴う副鼻
独自の症状を呈するのです。このようにし
腔炎になりました。
て、その人に合った適切なレメディーが選
ばれます。それはほかの何ものにも代えら
・別の患者さんは長時間日光を浴びたた
めに、今日射病に苦しんでいます。
れません。したがって、ホメオパスにとっ
て患者さんの病名や診断名が何であるのか
精神的な誘因についても考慮しなければ
は、それほど重要ではありません。それよ
なりません。心配事、悲しみ、経済的な損
りも、独特な病気の症状がどんな風にして
失、嫉妬、ストレスなどはすべて病気の原
患者さんに現れているのかが大切なのです。
因となります。
それではここで、ありふれた愁訴である
“頭痛”の実例を挙げてみましょう。
魂
精神
・ある患者さんは、鼻の付け根の上の一
点に限局した頭痛を訴えました。
・二人目の患者さんは、前頭部の拍動性
の頭痛を訴えました。
・別の患者さんは、後頭部の鈍痛を訴え
ました。
肉体
ホメオパシーでは、人間を肉体・精神・
病状がどんな状況下で良くなったり悪くな
魂から成る三位一体のものと考えます。こ
ったりするのかが、重要な役割を果たしま
れらを分断することはできません。こうし
す。
た理由で、患者さんの特徴や気分といった
・ある頭痛の患者さんは、温かくなると
良くなるように感じます。
・別の患者さんは、冷湿布をしたり、指
ものがとても大切な役割を果たすのです。
内向的で物事をきちんと管理し、感情を抑
圧していて近寄りがたく見え、閉鎖的な人
10
がいます。一方で、気分が変わりやすく攻
撃的で、仲間への遠慮や愛といったものの
かけらもない衝動的な人もいます。こんな
人とは関わらないほうがよいでしょう。
以前にかかった病気や家族の病歴、その
他の詳しい情報も、レメディーを見つける
ために役立ちます(診療におけるマヤズム
の素質とケーステイクについての章を参
照)。
クラシカルのホメオパスは、患者さん個
人の持つ症状をもとにして、その不調和を
調整するためのレメディーを探します。ホ
メオパスは患者さん個々人に合うレメディ
ーを、彼らの持つ知識と強調する能力とに
より探し出すでしょう。
ホメオパスは病気の名前(例えば頭痛)か
らレメディーを処方したりはしません。あ
くまでも患者さんの状態を総合的に判断し
た上で、適切なレメディーを探すのです。
ですから同じ症状(例えば頭痛)を持つ 10
人の患者さんがいるとすれば、患者さんの
一人一人の症状にもとづくと、それぞれ 10
種類の異なるレメディーが処方されること
もあるのです。
11
ホメオパシーとアロパシー
害であることは確かで、ゆえに病気は目に
見えないのだと言えます。
全く異なる哲学をもつ
アロパシーでは、細菌やウイルス、真菌
やそのほかの微生物が病気の原因であり、
ホ
メオパシーとアロパシー(通常
抗生物質や抗真菌剤で徹底的に撲滅しなけ
の医療)は、健康と病気に対する
ればならないと考えています。
理解の仕方において、基本から
それに比べてホメオパシーでは、細菌は
全く異なります。前章ではこの論点をホメ
くっつくことができるのみで、弱くなった
オパシーの立場から見ていきました。すで
人体にのみダメージを与えるという見方を
に述べたように、ホメオパシーでは病気と
します。体の抵抗力を強化しなければなり
はバイタルフォースの障害であり、健康と
ません。それが最大限にまで強くなったと
はバイタルフォースが調和を取り戻すこと
き、人は病気から開放されるでしょう。ホ
であると考えます。
メオパシーでは細菌や真菌を殺すことはあ
一方通常の医学では、症状が病気そのも
りません。そうするよりも、病気にかから
のであると考えます。例を挙げると、腫瘍
なくなるよう人間の抵抗力を強めるのです。
が手術で切り取られれば、患者さんはその
ホメオパシーは命を守るための手術や、
後健康になったと考えます。もし手術の後、
救命救急医療に反対しているわけではあり
新たに他の臓器の症状が起こったとすると、
ません。それらは価値のある医療であり、
それは新たな病気の現れであるとみなされ
特に外傷、妊娠・出産の時には必要です。
手術と関連付けて考えられることはないで
骨折をホメオパシーで治すことはできませ
しょう。
ん。整復し、ギプス固定をする必要があり
皮膚発疹が軟膏を塗って消えたときは治
ったもの判断されます。アロパシーでは病
ます。しかし、ホメオパシーを用いて治り
を早めることはできます。
気は測定可能であるもの、目に見えるもの
ヘルスケアの中でも、全く純粋な物理的
であり、検査や顕微鏡、X 線、超音波、CT
問題があります。特に慢性病で言えますが、
スキャンなどで検出できるものでなければ
腫瘍を例に挙げると、それが増大したとき
ならないのです。検査の値が正常となり病
に臓器の機能に影響して機能不全に陥るこ
気の兆候がなくなったとき、患者さんは治
ともあるのです。このような場合には手術
ったとみなされます。患者さんの本当の状
する以外に方法はありません。特に物理的
態は重要視されません。なぜならそれは測
な障害がある部位には手術が必要です。
定できないものであって、目に見えるもの
ではないからです。
しかし手術によって病気は治せません。
手術は病気の結果を取り除くものであり、
しかしホメオパシーでは、目に見える病
もしホメオパシーの治療を適切な時期に始
気の徴候はすべて、内的な障害や病気の結
めていたならば、手術する必要がなくなっ
果に過ぎないと考えます。真の病気はより
ていたかも知れません。
根深いものであり、バイタルフォースの障
ここ 10 年間でいろいろな手術が国境を
12
越えて、流行を追うように繰り返されてい
アロパシーは今日ますます専門化してい
ます。何年もの間、子供たちは扁桃腺を切
ます。心臓の症例は心臓内科医にゆだねら
り取られてきました。持続する喉の痛みが
れ、胃腸に不調があるとなれば内科の専門
あるなしにかかわらずです。スイスにおい
医が飛んできます。研究が進むにつれ、専
て、子供たちの扁桃腺は、後々腫れてこな
門家の領域もより発展します。しかしこの
いよう前もって切除すべきである(そうし
ような狭い領域における研究は、人間の全
た方が安全であるという理由で!)という
体性をないがしろにする恐れがあります。
明言がなされていたのは、ほんの 2,30 年
ホメオパシー治療の目的は、症状を直接
前のことでした。このようにして国家は役
取り除いたり抑圧したりすることではなく、
人を、のどの痛みや、ほかの同僚に病気を
バイタルフォースを強化して調和を保つこ
感染させるという危険から守りたかったの
とです。このようにして人間を、病気に打
です。
ち勝つことのできる状態にします。
扁桃腺だけではなく、ほかの臓器もまた
アロパシーでは、患者さんができるだけ
依然として不必要に取り除かれています。
早く症状を取り除きたいと望むために、症
子宮がその一例です。今日のドイツ連邦共
状がなくなれば病気は治ったとみなします。
和国では、40 歳を過ぎた女性の 3 人に 1 人
ホメオパシーでは、体に健康になるだけ
が子宮を持っていません。閉経後の女性に
の時間の猶予を与えます。
なるとその割合は 53%に上ります。スイス
はっきり分かるように、これら 2 つの治
では、1994 年におけるチューリッヒの癌登
療法は、その基礎から全くといっていいほ
録によると、50 歳から 70 歳までの女性の 3
ど異なります。これが理由となってホメオ
分の 1 が病気に侵されています。
パシーはしばしば攻撃の対象となり、その
アロパシーでは、それぞれ独特な症状を
治療効果は争点となっています。これはホ
持つ患者さんたちはみな同じ薬を処方され
メオパシーの法則を通常の医療の視点から
ます。例えば痛みがあれば鎮痛薬を、リウ
理解することができず、また研究すること
マチであればリウマチの薬を、花粉症であ
もできないためです。
れば抗ヒスタミン剤を、皮膚の発疹に対し
てはコーチゾンをといったように薬を処方
されます。
ホメオパシーでは、レメディーは患者さ
んの個人的な症状にもとづいて処方される
ことでしょう(個別性の章を参照)。
ホメオパシーでは人間を独自性のある、
分かつことのできない肉体と精神と魂の集
合体であると考えます。治療されるべきは
全体であり、分断された部分だけではない
のです。
13
ホメオパシーの医薬
るのです。これを説明する例を挙げると、
ポテンタイゼーションされていない石油は
調剤とポテンタイゼーション
レメディーとして全く使い物になりません。
しかしポテンタイゼーションされたもので
原材料
あれば治癒の活性を引き出すことができ、
ホメオパシーの医薬は次のような物質か
価値ある薬となるでしょう。例えば、乗り
ら作られます。
・植物
例
物酔いや皮膚のトラブル、また頭痛の薬と
苔杉(Lycopodium)、セイヨ
して使えます。それはあくまでも、患者さ
ウハシリドコロ(Belladonna)、アネモ
んの個人の持つ症状に照らし合わせて処方
ネ(Pulsatilla)
されるのです。
・動物
例
蜜 蜂 (Apis) 、蟻 (Formica
rufa)、蛇の毒 例
ブッシュマスター
(Lachesis)
・金属
例
いろいろなポーテンシーがあります。最
銅(Cuprum metallicum)、金
(Aurum metallicum)
・鉱物
ポーテンシー
も よく 用い られ るの は C- ポー テン シー
(Centesimal potencies)と呼ばれるもので
例 炭酸石灰/チョーク(Calcium
す。これは以下のようにして作られます。
carbonicum)、火打石(Silicea)、燐酸マ
1 の原物質を、99 のアルコール/水溶液に
グネシウム(Magnesium phosphoricum)
溶かして混ぜ合わせ、揺り動かします。こ
・病気の産生物、ノゾースと呼ばれます。
れが 1C のポーテンシーになります。この
・酸
1C から、再び 1 をとって 99 のアルコール/
例 硝酸(Nitricum acidum)、燐酸
(Phosphoricum acidum)
・その他
水溶液で希釈し、震盪します。これで 2C が
できました。
この希釈を 10 倍で行うと、1 の原物質は 9
調剤
のアルコール水で希釈・震盪されますが、
ホメオパシーの薬は特別な過程を経て作
この方法は X-ポーテンシーまたは D-ポー
られます。水溶性の鉱物は段階的に希釈さ
テンシー(decimal potencies)と呼ばれま
れ、揺らされ(震盪され)ます。金や鉄、水
す。ドイツでよく用いられる方法です。
晶などの水に溶けない物質は、乳糖(ラクト
各レメディーの正確な調剤過程は、ホメ
ース)の中に少しずつ粉末状に希釈されま
オパシーの薬局方に記載されています。C-
す。
ポーテンシーや X-ポーテンシーとは別に、
この段階的な希釈法はポテンタイゼーシ
Q-ポーテンシーや LM-ポーテンシーという
ョン(エネルギー化)と呼ばれます。多くの
ものも確立されています。これは 50000 倍
物質が持つ治癒力は、ポテンタイゼーショ
希釈法で構成されています。
ンによってのみ引き出すことができるので
す。そして有毒な物質の持つ毒性もまた、
ポテンタイゼーションによってのみ失われ
14
えを紙面に書き表しました。情報が書いて
ポテンタイズのスケジュール
あるこの紙は、いわば情報の媒体です。本
を化学的に分析する場合、単に情報の媒体
を検査するに過ぎず、この本は構成成分に
までバラバラに細分化されることでしょう。
強く震盪
アルコール・水溶液
強く震盪
アルコール・水溶液
原物質
99
1C
しかしこのような調べ方では、一番大切な
紙の上に書かれた情報が失われることにな
ります。その情報はどんな方法によっても
確認することができません。
2C
99
また、ビデオテープやカセットテープを
持って重さを量ってみてください。そして
原物質
1
1C
1
そのカセットに録音し、もう一度重さを量
りましょう。あなたは録音されたカセット
が、情報を記録しているとはいえ、録音さ
れていないものと同じ重さであることを確
認するでしょう。
効力
当然これらは説明の一例でしかありませ
12C や 23X 以上にポテンタイズされた薬
んし、すべての仮説が 100%適応できるわ
には、現物質はもはや 1 分子も含まれてい
けではありません。生命現象の多くは科学
ません。アルコール/水溶液や乳糖に転写さ
では説明できません。しかしそれは、こう
れたものは、原物質の持つ情報に過ぎませ
した生命現象が存在しないということを意
ん。こうした情報を、(今のところ)検査で
味するものではありません。
見つけ出すことはできません。化学的には、
ホメオパシーのレメディーは物質的なも
その情報を媒体する成分が検出されるだけ
のではなく、非物質的な活性を持つもので
です。そのため、現在の科学は 23X 以上の
す。すでに述べてきたように、病気は人体
レメディーに治療効果はありえないと主張
に備わった目に見えない力の障害なのです。
しています。そのようなレメディーには最
このような障害は、非物質的なレメディー
初の原物質が 1 分子も含まれていないとい
によってのみ調和を取り戻すのです。ホメ
う理由からです。
オパシーの薬は弱くなったバイタルフォー
ホメオパシーのレメディーの効果をより
スに働きかけて、治癒力を引き出します。
よく理解するために、ここで 2 つの例を挙
ホメオパシーのレメディーに治療効果が
げます。
あることは否定できません。実際に何年か
前、グラスゴー大学でスコットランド人の
あなたは今この瞬間に、本を手にしてこ
行った研究が科学雑誌“ランセット”に掲
の行を読んでいます。私たちは、我々の考
載されましたが、その論文では患者さんの
15
調査に基づいて、明白な治療効果が証明さ
れています。ホメオパシーに反対する人た
ちも、この研究を間違いであると証明する
ことはできませんでした。
より科学的な研究は我々のウェブサイト
www.groma.ch で見ることができます。
16
プルービング
ィー像と言われるものを形作ります。レメ
ディー像には臨床で観察された所見が付け
薬をテストする安全な方法-動物
実験はしていません!
い
足されます。それらはレメディーを病気の
人に使ったときの経験から得られた知識で
す。
わゆる“プルービング”と呼
このようなすべての調査結果を集めたも
ばれるものはホメオパシーで
のが、ホメオパシーでマテリア・メディカ
は重要な項目です。それは必
と呼ばれるものです。これは私たちが知る
要性が非常に高いものであり、特別な方法
最も包括的なレメディーの集積です。
で行われます。プルービングによって、ホ
動物でプルービングを研究することは、
メオパシーの薬の正確な作用を確立するこ
彼らが感覚や気分を表現できないため無意
とができます。例えて言うならばプルービ
味です。その上、動物は人間のように同じ
ングとは、その薬がどのような症状を引き
風には反応しません。ですから薬の効果を
起こすことができるか、またはそれらを治
調べるために、残酷な動物実験を行う必要
すことができるかを調べるテスト方法なの
はないのです。その代わり上記の通り、レ
です。
メディーのプルービングには健康な人が供
レメディーのプルービングでは、健康な
男女からなるグループが、取り決めに従っ
てその物質を試験的に摂ります。当然のこ
とながら、グループの人たちは何の物質を
摂っているのかは知りません。彼らはその
後、感じたすべての変化を記載し、プロト
コールを作ります。
すべての肉体的な、あるいは精神的な変
化が重要です。感覚は正確に記録される必
要があります。例として、
・家族に対して無関心
・愉快な出来事の夢
・左足に放散する背部痛、寒さと動作で好
転
・針で突き刺したような左膝の痛み
・などなど
プルービングの最後に、観察された項目
を集めて評価します。その結果は、レメデ
17
されるのです。
ホメオパシーのレメディーの
投与量
ります。例えば治療の目的で摂っていたレ
メディーの症状を呈することになります。
最近、医者から肺炎と診断された若い男
ホメオパシーのレメディーを使う
性が診療所にやってきました。以前に彼は
いわゆる“ホメオパス”である医師の診察
患
者さんは 2,3 粒の薬や“ポピー
を受け、悲しむべきことにホメオパシーの
シード”しかもらえず、それを
レ メ デ ィ ー で あ る Tuberculinum と
明日の朝空腹時に摂るように言
Luesinum を高いポーテンシーで処方されて
われてしばしば驚きます。これで十分なの
いました。私は彼に、今の肺炎の症状があ
かと尋ねますが、次の診察は結局数週間後
るのはホメオパシーのレメディーを誤って
か、場合によっては数ヶ月も後になります。
使っているせいだと説明しました。つまり、
クラシカルホメオパシーでは投与する薬
彼はレメディーをプルービングしている最
の量は最小限に留めます。1 回刺激が加わ
中だったのです。
れば、バイタルフォースを揺り動かすには
Sulphur 200C(一般に薬の誤使用に使わ
十分なのです。レメディーを時間を空けず
れる)を 1 回投与することで、2 日後に症状
にリピートしたり、頻繁に繰り返し摂った
は消えました。
りすると、調和をとろうとしている治癒の
彼は決して肺に問題があったわけではな
過程を妨げることになるでしょう。レメデ
く、一時的に肺炎の症状を起こしていたと
ィーが作用するには、ある程度の時間が必
いえます。このようなことには注意が必要
要です。頻繁にレメディーを繰り返し摂る
でしょう。
ことで、バイタルフォースはかき乱されて、
よりいっそう不調和を生じます。
分かりやすくするために振り子時計を例
不本意にも生じたレメディーのプルービ
ングの例をもうひとつ挙げましょう。
として挙げましょう。時計は止まっていま
す。振り子を引き上げて軽く押すと、振り
52 歳の患者さんが、吐き気を催す偏頭痛
子は周期的に左右に揺れます。振り子に少
に似た頭痛を訴えました。痛みは顔の右側
しだけまた触ると、振り子の動きは乱れて
にあり、右目へと広がります。右手を上げ
しまい、時計はすぐに止まってしまいます。
たとき、また夜にその手を横たえたとき、
物体が動いている限り、エネルギーを与え
右手の上腕と右肩に強い痛みが起こること
る必要はありません。さもないと全体が結
に彼女は気づきました。リウマチの検査と
局は間違った方向に行ってしまいます。
神経学的な所見には異常は認められません
ホメオパシーのレメディーはどんな状況
でした。それとは別に、彼女は更年期障害
下でも、何の害もなく作用するといった誤
のために産婦人科医からホメオパシーのレ
解が広がっています。もし同じレメディー
メディーを処方され、それをまる 2 年にわ
を長期にわたり摂り続けるなら、意に反し
たり服用している(15 粒を 1 日 2 回)と言い
てレメディーをプルービングする恐れがあ
ました。
18
ここで他に何かできることがあるでしょ
うか?そのホメオパシーの粒には、他のも
のに混じって Sanguinaria というレメディ
ーが含まれていました。このレメディーは、
偏頭痛に似た右側の頭痛と、横になったと
きや腕を上げたときに悪化する右肩の痛み
をレメディー像に持っています。
“更年期障害のレメディー”の摂りすぎ
により、望ましくないレメディーのプルー
ビングが起こったのです。このコンプレッ
クスレメディーを止めて Nux vomica 200C
を 1 粒摂ることで、彼女は一週間以内に不
快な症状から開放されました。
ポーテンシーが高くなるほど、その作用
はより深くなり、長期にわたり効果が続き
結果として摂る頻度も少なくできます。高
いポーテンシーのレメディーには貯蔵効果
があるのです。こうしたレメディーは数ヶ
月にわたり作用し続けます。ほとんどの場
合は粒の形で調剤されます。急性病ではこ
のようなレメディーを水に溶かして、少し
ずつ飲むようにすると便利なことがありま
す。あなたのホメオパスはこのような使い
方についてアドバイスするでしょう。LM ポ
ーテンシーの場合は、液剤の形で処方され
ることがほとんどです。一般的に、C ポー
テンシーや X ポーテンシーよりも頻繁に摂
る必要があります。
より低いポーテンシーは、バイタルフォ
ースが非常に弱くなった状態の、とても深
いレベルの健康障害のときに調剤されます。
レメディーを摂ったときの反応が、人体に
とって重荷になる可能性があるからです。
19
“単一”レメディーと“複合”レメ
ディー
レメディーを調べることが流行しています。
例えばバイオレゾナンスといったもの、ま
たペンジュラムと筋力テストを使う方法も
あります。患者さんを 2 分と経たず診て、
ホ
メオパスの真の技量は正しいレ
計測された数字を基にレメディーを処方す
メディーを見つけ出すことにあ
るというのは本当のホメオパシー治療とは
ります。そのためには多くの知
言えません。レメディーは病気の名前によ
識と時間、それに忍耐力や経験が必要です。
り処方されるだけであって、クラシカルホ
ホメオパシーを“片手間に”実践すること
メオパシーの原理(個別性、単一のレメディ
はできません。正統なクラシカルの立場か
ー、レメディーの投与回数など)は無視され
ら見ると、ホメオパスとして働く以上は、
ているのです。
他のどんな治療体系も全く利用することは
できないでしょう。
その他の治療方法
コンプレックスレメディー
さらに、ホメオパシーを簡素化する試み
として、いわゆるコンプレックスレメディ
ここ数年間で、
“ホメオパシー”という表
ーの使用があります。これは何を意味する
現は、別の治療体系を表す言葉として非常
のでしょうか?名前から考えると、何種類
に頻繁に用いられ(誤用され)ています。以
かのホメオパシーのレメディーを混合する
前はよく“私は自然療法家にかかっていま
ことにより作られたものです。ポーテンシ
す”と言っていたのが、今日では“私はホ
ーの異なる 2 種類から 30 種類(!) ものレ
メオパスにかかっています”と言うように
メディーを混ぜ合わせます。例として発熱
なっています。
のレメディーは、風邪や感染症、発熱に非
治療家が目を覗き込むとき、言い換える
常によく使われるレメディーを混合して作
と虹彩学になるのですが、その所見から病
ります。成分のうちのどれかが正しいレメ
気と体質がわかります。そしてファイトセ
ディーであることを願います。
ラピーや錬金術のエッセンス、またはバッ
コンプレックスレメディーを使うホメオ
チフラワーレメディーを処方します。それ
パシーは、クラシカルのホメオパスにとっ
らはクラシカルホメオパシーとは何の関係
て悩みの種です。ハーネマン、ケント、ア
もありません。それぞれ他の別個の治療法
レン、へリング、それに偉大なホメオパス
です。
といわれる人たちは、自分たちが残した遺
他の治療家は、正しいレメディーを見つ
産に何が起こったのかを知ったなら、墓場
ける時間を短くしたいと考えています。市
から出てくることでしょう。ここでは再び
場に出回りやすくするために、ホメオパシ
病気の名前に基づいてレメディーが処方さ
ーを簡素化しようという傾向は常にありま
れており、クラシカルホメオパシーの原則
す。ここ 2,3 年、電子機器を使って正確な
は無視されているのです。
20
コンプレックスレメディーは臨床では役
に立ちません。体は、反応を起こすために
必要な情報をどのようにして知ることがで
きるのでしょうか?もし、コンプレックス
レメディーの個別の成分がどのように作用
しているかを調べるなら、それぞれの成分
は互いに打ち消しあい、抑制的に働くこと
がよく分かるでしょう。
日々ホメオパシーの診療を繰り返してい
ると、以前にコンプレックスレメディーを
摂ったことのある人の場合は治療が難しい
ことに気づきます。コンプレックスレメデ
ィーによってたくさんの情報が加わると、
体は反応するだけの力を失ってしまうので
す。
コンプレックスレメディーに反対するほ
かの理由として、この混合レメディーが健
康人でプルービングされていないというこ
とが挙げられます。このレメディーが人体
にどう作用をするのかを、どのようにして
見分ければよいのでしょうか?2 種類また
はより多くの種類で作られた混合レメディ
ーは、元の一つ一つのレメディーと比較す
ると全く違った作用を持っていることが知
られています。
何種類かのレメディーを同時に摂った時
の効果や相互作用については分かっていま
せん。ホメオパシーでは単一のレメディー
の効果は知られています。それは健康人で
テストしているからです。
単一の、適切なホメオパシーのレメディ
ーだけが、永続する治癒へと導くのです。
ルドルフ・シュタイナーによる人智学医療
やシュースラーのバイオケミカル治療法は
クラシカルホメオパシーではありません。
なぜなら両方の治療法とも、原則として異
21
なる種類のホメオパシーのレメディーを同
時に使うからです。
急性病と慢性病
医療による処置が必要な深い傷も、治癒を
後押しする目的で急性のレメディーを使う
ことができます。
ホ
慢性病
バイタルフォースが障害されています。自
慢性病では、バイタルフォースの作用は
然治癒力は体と排泄器官を通じて病気を排
全く異なります。健康を回復するためにレ
除しようとします。
メディーを繰り返し使い、結局はうまく行
メオパシーの治療では、急性病
と慢性病を区別します。病気が
急性であっても慢性であっても、
皮膚発疹や下痢、嘔吐、発汗、発熱、鼻
かないのをよく見かけます。このようなや
水、湿疹などの排泄と浄化の過程が、薬に
り方で治癒に導くことはほとんど不可能で
よる治療で妨げられる場合、急性病は慢性
す。ここで質問ですが、体の自然治癒力が
病へと移行します。なぜなら、病気を体の
あまりに弱いために治癒につながらないの
表面に押し出そうとするバイタルフォース
はなぜでしょう?それはマヤズムの負荷
の働きが止められてしまうからです。人は
(マヤズムの素質の章を参照)や抑圧(抑圧
このような方法では健康を取り戻せません。
の章を参照)によってバイタルフォースが
病気はより深いところで“潰瘍化”します。
弱体化することが、慢性病を引き起こす最
もしそのような病気が発作的な発汗や風邪
も重要な原因であるからです。
であるならば、後に気管支喘息や関節の問
クラシカルホメオパシーの一番よいとこ
題、循環障害、めまい、精神的な問題など
ろは、心と体の慢性病を治療することがで
に苦しむことになるでしょう。
きる点にあります。例として、恐怖、神経
質、不安、抑うつ、ストレスと過労からく
急性病
る愁訴、不眠、頭痛、めまいと失神、筋肉
痛や関節痛、アレルギー、呼吸器の愁訴、
急性病では、病気の人のバイタルフォー
中耳の感染症(中耳炎)、背部痛、心臓と血
スは一般的に、それ自体のエネルギーで緊
管系の問題、風邪、副鼻腔炎、皮膚の問題、
急の状態に打ち勝つことができます。普通
胃腸障害、花粉症、腎臓や膀胱の問題、産
は短期間で健康は回復します。
婦人科的疾患などが挙げられます。また、
正しく選んだレメディーで、不安や目の
感染症、虫刺され、下痢、嘔吐、風邪、発
小児の発達障害や学習障害、行動障害とい
ったものは治療によく反応します。
熱、のどの痛み、耳の痛み、試験への恐怖、
慢性病は、全体としての人間を考慮した
乗り物酔い、疲労、日焼け、子供の歯の生
根本体質治療によってのみ治療することが
え変わりなどの急性症状に対応できます。
できます(根本体質治療の章を参照)。
ホメオパシーのレメディーは同様に、靭
帯断裂や打撲、捻挫、挫滅などの外傷にも
適用できます。浅い傷だけでなく、通常の
22
マヤズムの素質
シーのレメディーで首尾よく治療すること
ができ、抗生物質による治療を避けること
ができます。
慢
性病や生まれつきの体の障害や
精神障害が生じることと関連し
それでもなお、どうして風邪と耳の感染
て、マヤズムの素質はホメオパシ
を繰り返し起こすのかという疑問が残りま
ー治療にとって非常に重要です。マヤズム
す。はっきりいえば、自然治癒力が健康を
のテーマは非常に複雑であるため、ここで
維持できるほど十分に強くないのです。本
は少しだけ触れるに留めます。章の終わり
当の問題は免疫力の弱さにあるといえます
に表にしてまとめたものを見ることができ
が、それは解決されないままです。急性病
ます。
の症状に合わせて正しくレメディーを選ん
マヤズムを念頭に置くことにより、バイ
だとしても、完全な治癒には導かれません。
タルフォースをよりよく調和させることが
根底にある弱さ、つまり風邪を引きやすい
できます。マヤズムを理解すると、深く根
素質というものは残ったままなのです。
付いた病気を治療するときに全く新しい視
野が開けます。
以下で説明しましょう。
あらゆる可能性を考えると、より根深い
遺伝性の障害がこのような弱さの原因なの
です。この弱さ-バイタルフォースの障害
を、ホメオパシーでは“マヤズム”といい
毎年冬になると、あなたの子供は何週間
ます。マヤズムの素質はしばしば、なぜ病
も続くひどい風邪を引きます。いったん風
気が人体で発生するのかということに対す
邪を引くと、それは気管支だけでなく耳に
る理由になります。
も広がります。気管支炎になったときや耳
心に及ぼすマヤズムの影響を考えずに選
の感染症を起こしたときは、それぞれ抗生
ばれたホメオパシーのレメディーは、病気
物質で治療されます。あなたはこうした薬
の症状に打ち勝つことはできますが、問題
を子供に与えたくないと常日頃思っていま
の原因にまで到達することはできず、根深
す。そのためホメオパスに相談に行きます。
い慢性病を治すことはできません。今ある
次の秋に、お決まりの風邪を引いたとき
体の症状だけを見て治療することはあまり
は、気管支炎になる前に適切なホメオパシ
にも表面的過ぎます。治療が表面的なもの
ーのレメディーで治療されます。数日後こ
だけに留まっている限り、より深く根付い
の風邪は治り、子供は健康を満喫しました。
たマヤズムにまでたどり着くことはできま
次に風邪を引いたときはもう進んだ状態で
せん。
した。再びあなたはホメオパスのところに
果実を実らせる木を思い浮かべてくださ
行きます。気管支炎の咳は、またホメオパ
い。この木は枯れた枝を切り取られ、腐っ
シーのレメディーでよくなります。
た果実を取り除かれます。その結果として
この子は根深い病気から守られています。
繰り返し起こる咳と耳の痛みは、ホメオパ
23
年を経るごとにだんだんと実を付けなくな
り、徐々に死んでいくのに驚かされます。
この木が病気になった原因は何でしょう
から発展します。疥癬により機能的な障害
か?根が腐り、土の性質が変わったため木
が生じます。この障害は器官の変性を伴い
が適切な栄養を得ることができないことに
ません。言い換えれば、その障害は生命の
気づきます。これは木の根の病気なのです。
危険や脅威を伴わない、機能の障害なので
人間にも同じことが言えます。病気の原因
す。
は深く根付いたものであり、末梢にあるも
タイプ
のではありません。
外見と特徴
ホメオパスがマヤズムの視点から病気を
考えるなら、深く根付いたバイタルフォー
疥癬の典型的な特徴は皮膚の問題です。
スの弱体化であってもうまく治療すること
子供時代からいろんな形の皮膚発疹が出た
ができるでしょう。
ことがあるでしょう。湿疹、神経皮膚炎な
このように、患者さんの既往歴や、特に
家族や先祖の病歴といったものを知ること
は一番大切です(診療時のケーステイクの
章を参照)。
すべての病気、すなわち急性病や慢性病、
どです。皮膚の治療はうまくいかず、汚い
外見を呈します。
それはよく、かゆみに悩まされている神
経質な人々に起こります。この神経質な性
質は神経性の不安や急いで食べること、早
またこれらと関連している私たち自身と私
口でしゃべること、瞬きや顔面のチック、
たちの特性というものは、4 つのマヤズム
咳払いなどによって表現されます。
のグループに分けることができます。すべ
子供は独占欲が強く、自己中心的です。
ての病気の根源は“疥癬”です。これから
いつも注目の的になりたがり、分かち合う
発展したものが“淋病”マヤズムと“梅毒”
ことができません。それに、いつも不当に
マヤズムです。ハーネマンはすでにこの 3
扱われていると感じています。大人の場合
つのマヤズムについて述べていました。後
はこうした特徴をはっきりとは示しません。
になって“結核”マヤズムが加わりました。
バイタルフォースが弱くなると、眠ってい
トリガー
たマヤズムが目覚めます。マヤズムは病気
マヤズムが活性化する要因
の症状を現すことで自らの存在を示します。
皮膚発疹や鼻水、汗、生理、下痢などの
4 つのマヤズムについて詳しく見てみま
しょう。
排出により、疥癬マヤズムの患者さんは症
状が改善します。こうした排出が抑制され
ると(抑制の章を参照)疥癬は活性化して、
疥癬マヤズム
より深い疥癬の段階で新たな病気が生じま
す。別のマヤズムの病気が起こるのです。
疥癬は基本的なマヤズムです。これは、
ほかのマヤズムの基本となるものです。ほ
なぜなら疥癬は、新たなマヤズムから始ま
る病気への道を開くからです。
かのマヤズムは、疥癬による最初の弱体化
24
55 歳の女性が診療所に訪れて、頭痛とめ
疹を患っていたことを話しました。
まいを訴えました。これらの症状に 2 年間
ここではトリガーである-ストレス-に
悩んでいます。それ以来心配症になり、神
よって、家族の特質が遺伝した結果として
経質にもなっています。詳しく問診すると
内在していた疥癬マヤズムが活性化したの
頭痛とめまい、精神的な変化はすべて、更
をはっきりと見ることができます。
年期障害と関係した発汗と顔面紅潮を治療
するために、ホルモン剤を服用し始めてか
淋病マヤズム
ら生じていることがわかりました。
ホルモン剤で発汗を抑制することにより、
淋病では、ゆっくりと発症し何年にもわ
疥癬マヤズムを軽減することができなくな
たり人とともにあるような病気を扱います。
り、より深い段階に広がる結果となります。
淋病の病気はその早期において、慢性のね
ばねばした分泌物、深いカタル、膣の感染
前にも述べたとおり、疥癬の人はとても
神経質で敏感です。このようにして不快感
症などの症状を呈します。
病気が進行すると、
“腫瘍”が現れます。
や興奮、恐怖、心配、嫉妬やストレスなど
いぼ、嚢腫、筋腫(脂肪腫)、こわばりなど
の感情的な障害が要因となって、疥癬の病
がその例です。また、リウマチや精神病に
気を生じます。
発展する場合もあります。
近頃、若いマネージャーが診療所に訪れ
て顔にできた発疹を訴えました。問診の結
タイプ
外見と特徴
果、その発疹はいつもストレスを感じると
ひどくなることが明らかになりました。ま
淋病の目に見える徴候は、いぼやほくろ、
た何ヶ月もの間にわたる胃の痛みと不眠が
赤あざまたはポートワイン色のしみ、脂性
ありますが、特に一日が忙しかったときに
の皮膚に認められます。髪の成長が早いこ
そうした症状がみられます。そのようなと
とや、通常生えない所から髪が生えること
きはベッドに横になりますが、明かりを消
(たとえば、女性の髪の成長)も同様に見ら
すことができません。よく汗をびっしょり
れます。慢性的に副鼻腔の感染症を起こす
かいて夜中に目を覚まします。彼は几帳面
ことと、ポリープが習慣的にできることの
で実直な人柄なので、仕事の同僚との約束
結果、患者さんは鼻声で話します。淋病で
を守ることができないときにプレッシャー
は、にきびが何年もの間にわたり持続し、
を感じています。管理職となった 6 ヶ月前
深い傷が残ったままであるのが観察されま
からこの症状は悪化しています。
す。
家族の病歴を尋ねたとき彼は、母親が下
淋病の患者さんは、とても閉鎖的に見え
痢を伴う神経性の胃腸障害に何年にもわた
る疥癬の患者さんとは違います。しばしば
り苦しんでいること、父親はすごく心配性
頑固で融通が利きません。病気の深さにも
な性格で、母方の祖母においてはひどい湿
よりますが、抑うつ、深いうつ状態までに
25
至るような低調な精神状態といったものが
い頃、腎臓結石に苦しみました。父方の祖
みられます。
母は 2 回流産したことがあります。これら
トリガー
の病歴から世代間にわたる淋病マヤズムの
マヤズムが活性化する要因
結果として、年をとるごとに病気が確実に
進展していることがわかります。
いぼや真菌の感染症、また典型的な黄緑
色の分泌物によって淋病マヤズムは軽減し
梅毒マヤズム
ます。症状が抑圧されると(抑圧の章を参
照)、淋病は活性化し、より深い淋病の段階
で新たな病気が生じます。
このマヤズムでは破壊的な作用が見られ
ます。病気は非常に急速に発展し、深いと
こうした病気は、いぼ、ほくろ、骨の新
ころまで一気に進み、それに破壊的です。
生物、のう腫、ポリープ、ゆがんだ鼻腔、
疥癬と淋病、梅毒を区別するために、皮膚
筋腫、痔、外反母趾などの症状像を持って
疾患を例にとってみましょう。疥癬では強
いるため、患者さんはよく手術を受けます。
烈なかゆみがあり、赤くなっているかもし
こうした手術は予防接種とともに淋病マヤ
れません。淋病では化膿が持続し、傷の治
ズムを深くして、病気をより重いものへと
りが遅いです。梅毒では“深いクレーター”
発展させます。
となるような潰瘍がみられます。
遺伝性の障害、奇形、出産外傷はこのグ
2 人の子供の母親である 43 歳の女性が私
ループに属します。またアルコール依存症
の所に受診し、手と指の関節のリウマチ症
や薬物依存といったものもこれに含まれま
状を訴えました。この症状のために看護師
す。破壊性は肉体に限らず、行動にもみら
の仕事と家事に支障を来しています。自分
れます。梅毒の人々はしばしば暴力的な傾
の仕事を果たすため、抗炎症剤を服用して
向や精神病の傾向があり、自殺願望もみら
います。病歴を問診することで、子供の頃
れます。症状は夜に悪化します。
からたくさんのいぼがあり、思春期の間は
ひどいにきびがあったことがわかりました。
タイプ
看護学校に行っているときには慢性の膀胱
外見と特徴
感染症と膣の真菌感染症(カンジダ)に悩ん
でいました。2 回の妊娠の間、流産を経験
梅毒マヤズムは簡単に認識することがで
しました。彼女の娘が赤ちゃんの時、目の
きます。変形と奇形-髪の毛や唇、口蓋裂、
化膿性の感染症になり、息子は副鼻腔(顎と
顎の変形、歯のずれや変形、ひどい虫歯な
前頭部)の感染症を起こしました。
ど-が、すでに小さい子供の時からみられ
彼女は自分の健康を心配していました。
ます。
それは母親が、関節の変形を伴った多関節
梅毒に暴露された人たちは、しばしば破
炎になっていたからです。父親は最近、椎
壊的な考えを持ち、非常に攻撃的でときに
間板ヘルニアで手術を受けました。彼は若
は暴力を振るうこともあり、犯罪傾向さえ
26
あります。こうした攻撃性は直接他人に向
病歴を聴取することで、母親には先天性
けられるだけではありません。重度の薬物
の心臓の欠損があり、それを手術で治療し
依存や極度の精神疾患、そして自殺といっ
たということが分かりました。父方の親戚
た形で、自分自身にも向けられます。
にはアルコール依存の人がいました。
叔父は極度の抑うつで、自殺を試みたこ
トリガー
とがあります。叔母は何年も精神病院に入
マヤズムが活性化する要因
院しており、祖母はアルツハイマー病で亡
くなっています。
遺伝性の強い梅毒の特質を持った患者さ
彼女の息子は、強い梅毒の特質を持って
んでは、ちょっとしたことが原因となり重
この世に生を受けたことがわかります。そ
症の梅毒性疾患に罹ります。アルコールや
れは幼い時期からすでに現れています。
薬物の摂取、自殺を考えるほどの深い抑う
つ、重度の身体の疾患の例にみられるよう
結核マヤズム
な破壊的な病気が進行するのには、些細な
事柄で十分なのです。
結核マヤズムは疥癬マヤズムと梅毒マヤ
どのマヤズムであっても、抑圧により確
ズムが結びついたものです。そのため、疥
実に健康状態が危うくなるという最大の危
癬と梅毒の両方の性質がみられます。例え
険があります(抑圧の章を参照)。
ば梅毒からくる破壊性と結びついた、疥癬
患者さんは火薬庫の上に座っているとい
えるでしょう。
“ちょっとした”手術とバイ
にみられる落ち着きのなさや神経質さがそ
うです。
タルフォースとの間には調和はもはやあり
数十年前は、結核マヤズムは主として結
ません。病気は劇的に変化し、新たな病気
核症やくる病として現れました。今日では、
がその後まもなく生じます。
結核の徴候を中耳の慢性的な感染症や狭心
症、あるいは気管支炎や肺炎、偽クループ
母親が 5 歳になる息子を連れてやってき
などの気道の疾患という形でみることがで
ました。彼女は平静ではありませんでした。
きます。花粉症やその他のアレルギーは、
息子の激しい癇癪は両親に向けられるだけ
ここ数年増えてきていますが、同じように
でなく、主に妹や近所の子供にも向けられ
このグループに含まれます。
ます。ほんのちょっと機嫌が悪いだけで、
結核に曝された患者さんは、貯蔵してい
人を叩いたり、噛んだり、引っ掻いたりし
るエネルギーを急速に使い果たします。数
ます。そして手にすることのできるものは
日間は物事を行うのに必要なエネルギーに
何でも地面に投げ捨てて壊します。
満ちていますが、その後急に重い疲労感に
それに加えて母親は、彼の虫歯やひどい
乱杭歯、歯科医から診断されたエナメル質
の欠損、顎の軽い変形について心配してい
ました。
27
襲われます。こうした疲労から回復するに
は長い時間が必要です。
タイプ
ポーツもできません。生後 6 ヶ月から 3 歳
外見と特徴
までの間、毎年 2,3 回は喘息を起こし、中
耳炎と咽頭炎を併発しました。4 歳でひど
結核マヤズムでは、過度の落ち着きのな
い気管支炎になりました。5 歳の時、肺炎
さと異常な活動性がみられ、動作への欲求
のため入院しました。これらの病気は抗生
が過剰です。根本体質が虚弱であるため、
物質で治療されました。これまでの間、彼
それらが疲労を招くのです。結核の人はた
女はとても落ち着きがなくて活動過多でし
いてい新しいものを欲求します。自分が持
た。小学校に上がってからの彼女には、学
っているものに満足できません。絶えず刺
習困難と集中困難がありました。学校医は
激や興奮、スリル、時には危険をも求めま
ADHD と診断しました。家族の病歴は強い結
す。また集中力が散漫であり、すぐに気が
核の性質を示唆しています。祖母と 2 人の
散ります。衝動的で、感情を爆発させる傾
姉妹は子供の頃、結核になっています。姉
向があります。
妹のうちの 1 人は結核で亡くなっています。
結核に曝された人は簡単に見分けがつき
母親は 2 回肺炎になったことがあり、ひど
ます。典型的には背が高くて痩せ型で、ロ
く痩せています。父親は子供の頃に髄膜炎
ケットのような作りをしています。一般的
になったことがあり、彼の母親と祖母は 2
には“豆の茎”として知られています。薄
人とも甲状腺腫を持っていました。
い胸や鳩胸といったものも、結核の性質を
すでに幼少の頃から、強い結核の性質が
現しています。子供の頃には腺が腫れてい
繰り返す感染症の形で現れています。数多
るのがよく見られます。
くの治療がなされるうち、結核マヤズムは
淋病に曝されると、結核の人は予防接種
より深い段階に沈潜します。活動過多や、
を許容できません。予防接種の後、潜在し
もしくは後になるとアレルギー性の喘息に
ていた結核マヤズムが活性化して結核の症
発展します。
状が現れます。淋病に曝された場合には淋
病の症状が起こります。
毎日の診療で、病気が著明にマルチマヤ
すべてのマヤズムと同じように、薬物療
ズム化しているのをよく見ます。いくつか
法と手術は結核マヤズムに抑圧的に作用し
のマヤズムが人を苦しめているのです。各
ます。つまり患者さんはより深いマヤズム
マヤズムの違いを明らかにするため、ここ
の段階の病気になるのです。診療を行って
では単一のマヤズムからくる病気というこ
いると、結核の子供は病気に罹りやすい傾
とがはっきりしている、特別な症例を選び
向にあり、定期的に抗生物質を処方される
ました。
ことにしばしば気づきます。抗生物質は結
核マヤズムを助長するようなものです。
より詳しく知りたい人のために、本の末
尾に参考文献のリストを挙げておきます。
15 歳の少女が何年にもわたり、重度の喘
息に苦しんでいます。この病気のためにス
28
症状
患者さんやその家族に見られる病気
(専門的な科学文献から見れば不完全)
疥癬
淋病
・恐怖、たとえば試験の前や未来への、ま
・うつ病、躁病、強迫神経症のような精神
たは喪失への
・神経質、非常に落ち着きがない、ストレ
疾患
・いぼ、脂肪腫、ほくろ、ポリープ
ス、爪を噛む
・治りの悪い傷、ヘルペス、真菌感染症
・神経性の体のほてり
・黄緑色の粘液性の分泌物、鼻(副鼻腔炎)、
・神経性のめまい
目(新生児の目の感染症)、耳、肺、膣か
ら
・ひりひりする皮膚、かゆみ、治りが遅い、
汚い外見
・のう腫、腫瘍、乳房のしこり-発育が遅
い
・鼻水、水様性の、ただれを引き起こす、
皮膚を刺激する
・前立腺、膣、卵管の炎症、筋腫、流産、
腫瘍と奇形
・神経性の胃腸症状、空腹、下痢
・膀胱や腎臓、骨盤内の炎症
・睡眠障害、競争を考えることにより眠り
につくことができない、早朝に目が覚め
る
・神経質からの嗄声、声帯の酷使から
・リウマチ、関節炎、痛風、腰痛、慢性的
な背部痛
・外反母趾、槌趾、骨の腫瘍
・腎臓と膀胱の結石
・静脈瘤
・何年にもわたり存在する癌
29
梅毒
結核
・暴力、自殺
・ADHD、活動過多、集中力不足、癇癪
・中毒、薬物、アルコール、たばこ、麻薬
・寝汗
への
・歯ぎしり
・脳障害
・熱性痙攣
・精神薄弱
・貧血、出血傾向、鼻出血
・壊疽、潰瘍
・腫脹した腺(リンパ腺、扁桃腺)、腺熱
・あらゆる形の奇形
心臓、腎臓、卵巣、子宮、顔、顎、歯、
・慢性中耳炎、聴力の減弱と障害
耳、手の指の爪、足の指の爪、手足
・偽クループ、気管支炎、肺炎
・死産、乳幼児突然死(SIDS)
・結核症
・骨粗鬆症、二分脊椎(open spine)、毎夜
の骨の痛み(成長痛)、その他の骨疾患
・多発性硬化症、筋肉喪失、パーキンソニ
ズム、てんかん、アルツハイマー病
・ダウン症候群(モンゴリズム)、ターナー
症候群
・難聴、聞かれても答えない、盲目(先天性
・くる病
・花粉、動物、ダニ、食物に対するアレル
ギー
・甲状腺の病気
甲状腺腫、甲状腺機能亢
進症など
・髄膜炎とその合併症
の)
・梅毒、エイズ
・癌、急速に進行する
30
治らない病気
め、それを治療する薬を新たに飲まなけれ
ばなりませんでした。
彼女の治療にホメオパシーを用いること
ホ
メオパシーであれ、他のどんな
で、食生活に変化が起こりました。主治医
治療法であっても奇跡を起こす
は次回の診療で、血糖値が正常になってい
ことはできません。何年もの間
るのを確認することができました。糖尿病
にわたりたくさんの手術を受け、作用の強
の薬は中止され、コルチゾンは大幅に減量
い薬を飲みながらやっとの事で人生を生き
されました。
ているような人は、完全な治癒を望めませ
ん-ホメオパシーや、他のどんな治療によ
治癒を妨げ、難しくしているさらなる要
っても不可能です。人体は再生したりはし
因は、非常に厳しい家庭の事情にあります。
ないのです。たとえホメオパシーのレメデ
人は、それから逃れることはできません。
ィーの助けを借りようが、それは無理です。
患者さんが止めることのできない、または
関節炎や多関節炎の結果、ひどく変形して
止めたくないと思っている不健康な生活習
しまった関節はもうどうしようもないので
慣は治癒を妨げます。たとえば間違った食
す。
生活やアルコール、たばこ、薬物の摂取、
何年もインスリン注射に頼っている糖尿
極端な睡眠不足などがそれに当たります。
病の患者さんの治療を、ホメオパシー治療
ここで知っておいて頂きたいのですが、
に置き換えることはできません。長い間機
根本体質治療により長期にわたって、意志
能していなかった臓器を、再び機能させる
の力をよりいっそう強くすることができま
ことはできないのです。膵臓は萎縮してし
す。心の平静を回復し、健康に害のある生
まっています。どんなことをしても、もう
活習慣を改善しようとする意志を取り戻す
一度機能させることは不可能です。臓器の
ことができるのです。
障害は難治性です。皮肉なことに、それは
長期に及ぶ医療行為によって生じてくるの
です。
一つの例を挙げましょう。
50 歳の H さんは関節の変形がある、ひど
い多発性の関節炎に何年も苦しんでいます。
彼女はコルチゾンを毎日飲むことに頼って
います。数ヶ月前に激しいリウマチ痛の発
作がありました。コルチゾンの服用量を増
やす必要がありました。その後すぐに血糖
値が上昇しました。糖尿病と診断されたた
31
ホメオパシー的な悪化
たらきます。それは自浄作用のようなもの
を意味します。体は平穏を取り戻し、患者
治癒反応
さんはその後、気分が良くなります。
症状の悪化は、決して元の病気ほどひど
ホ
メオパシーの治療を受けている
くなることはありません。たとえばホメオ
間、特に慢性病の時にいえます
パシーのレメディーで中耳炎が生じたとき、
が、症状が一時的に悪化するこ
体はすでにレメディーによって強められて
とは珍しいことではありません。何年も起
いるのです。このようにして病気は激しさ
こらなかった古い症状が、短期間、再び姿
が弱まって、より早く治るのです。
を現します。これは症状が治癒していなか
治癒反応はまた精神面でも予想されます。
ったことを意味しています。時々こうした
内向的な人や閉鎖的な人は一時的に、より
症状の悪化が気づかれないときもあります。
感情的になります。もしこのような人が以
言い換えれば、患者さんは症状の悪化に気
前は外向的で、表向きはしっかりした人で
づきませんが、それはホメオパシーのレメ
あったなら、おそらくより我慢することが
ディーが作用していないことを意味するも
できず、よりいらいらし、感情を爆発させ
のではありません。
ることすらあるでしょう。抑圧されていた
こうした治癒反応は肯定的に捉えられ、
経験が表面化し、苦痛が取り除かれ、形を
バイタルフォースがよく反応していること
変えて折り合いをつけさせられるのです。
を示すものです。また同時に、肉体の弱点
患者さんは自分自身を理解し始めます。
がそこにあることや、治癒の過程が進行中
自分の有望な可能性に取り組むことができ、
であることも現しています。レメディーを
ストレスはより少なくなります。もし以前
摂ってから体が反応するまでの時間は 2 分
はみんなを喜ばせたいがためにノーといえ
以内か、場合によっては数週間かかります。
なかったなら、今度はこうした傾向を防ぐ
時には何ヶ月も後になることもあります。
ことができます。患者さんはまた、自分の
レメディーを摂った後の反応は人それぞれ
感情をよりよくコントロールすることがで
ですが、レメディーの種類やポーテンシー、
き、もっと気楽に感じ、安定して自由な気
根本体質によって変わってきます。
持ちになります。
治癒反応の出方はその人固有のものです。
はっきりとした変化を感じない場合があ
もし何人かに同じレメディーを同じポーテ
ります。そんなときは治癒反応を忍耐強く
ンシーで与えたなら、彼らは皆違った反応
見届ける必要があります。しかし結局の所
を示す可能性があります。その反応は各個
以前よりも心が楽になり強くなったのを感
人の感受性や根本体質によります。しばし
じることでしょう。いったん治癒の過程が
ば体には、分泌物の増加という形で反応が
始まると、それを止めることはできません。
現れます。つまり粘液や下痢、鼻血、汗、
生じたいろんな治癒反応を薬で抑圧しない
おりものなどの症状が起こるのです。こう
ことが大切です。
したすべての治癒反応は圧力弁のようには
また、ホメオパシーのレメディーを追加
32
して摂ることは治癒の過程を妨げます。多
くのホメオパシーのレメディーが、お互い
に相性がいい訳ではありません。あるレメ
ディーが別のレメディーの作用を打ち消す
ことがあるからです。一般的にいって、治
療中はホメオパスの許可なしに他のホメオ
パシーのレメディーを摂るべきではありま
せん。
重症の器官の病気(喘息、心臓病、糖尿病
など)で、長期にわたり薬を服用しなければ
ならない患者さんは、当然いつも飲んでい
る薬を続けなくてはなりません。突然薬を
中止することは危険です。何か分からない
ことがあったら、ホメオパスに相談してく
ださい。
終わりに、生じる可能性のある悪化の例
をいくつか挙げます。
・怒り、苛立ち、涙ぐむ
・強烈な夢
・発汗
・疲労
・生理の量が増える、周期の変化
・下痢、嘔吐
・皮膚発疹が増える、かゆみ
・頭、背中、関節の痛み
・昔の症状が再発する
33
治癒の過程
んが自分の症状をよく理解すると、すぐに
ホメオパシーのレメディーで生じた様々な
へリング治癒の法則
治癒反応をすんなり受け入れることができ
るようになります。
よ
くこう聞かれます。“治るのに
いろいろな治療を受けて何年もよくなら
どれくらいかかりますか?”治
なかった後、ホメオパシーで数週間以内に
癒に必要な時間は多くの要因
治ることを期待する人に出会います。こう
によります。病気はそれぞれ個別のもので
した治癒は起こらないのです。すると彼ら
あり、人によって独特の反応が見られます。
は失望し、また別の治療法に救いを求める
従って治癒にかかる時間は、一般的にど
のです。
れだけであるとはいえないのです。治癒は
忘れないでください。慢性病は何年もか
すぐに起こるか、あるいはかなり長い時間
かって進行し、体の奥深くにあるものです。
を必要とするときもあります。急病や進行
バイタルフォースが対処されなければなら
の早い病気は、基本的にじわじわと進行す
ず、正しい流れに戻す必要があるのです。
るような病気よりも早く治ります。
それにはしばしば忍耐が必要です。本当の
特別な病気がどのくらいの深さで生じて
いるのか、また体のどこまで広がっている
健康を取り戻すために、体に必要な時間を
与えてください。
かにも注意しなければなりません。重度の
患者さんの生活習慣によって、病気の治
変化が器官や組織に起きている場合、バイ
癒が難しくもなり、不可能にさえなり得ま
タルフォースが“浄化”作業を終えるまで
す。アルコールの過剰摂取やたばこ、スト
には長い時間が必要となります。
レス過多、運動不足がその例です。また、
若い人や子供の反応は、一般的に老人よ
その他の健康を脅かす習慣-薬物、睡眠不
りも速やかです。たくさんの薬を服用して
足、悪い食事-もそうです。また耐えがた
いるとか、いろいろな治療法を数多く行っ
い家庭環境というものも、病気が治癒する
てきた人は、ホメオパシーのレメディーに
妨げとなったり、治癒を不可能にさせたり
十分に反応しないことが多々あります。
するのです。
病気の期間も、遺伝的に引き継いだ感受
性(マヤズムの素質)と同様、重要な部分を
占めています。
最近、ビジネスマンが診療所にやってき
ました。ホメオパシーでストレスからくる
患者さんとの会話も大切です。十分に病
症状を和らげたいと訴えました。問診で彼
歴を聞き出した後に、患者さんにただ単に
は自分の人生は孤独なものであったと話し
レメディーを 2,3 粒渡して“1 ヶ月後にま
ました。彼は今症状がないことに感謝して
た来てください”と言うだけでは完全では
はいますが、今までのような生活-運動不
ありません。ホメオパスが、患者さんを理
足や睡眠不足、不健康な食生活、アルコー
解し病気になった背景とその原因を明らか
ルの常用-を続けられることをホメオパシ
にして、説明することが大事です。患者さ
ーに期待しています。
34
ホメオパシーの治療は、ストレスからく
る症状を一時的に緩和することができます。
もし治癒の法則や経過を無視して、足首
しかし不健康な生活習慣を変えない限り、
の痛みをとるレメディーをあたえたなら、
それらの症状は早かれ遅かれ戻ってくるこ
患者さんは少しの間は痛みから解放されま
とでしょう。
す。しかし治癒の過程は妨げられ、元々あ
った肩の痛みがまた生じることでしょう。
前にも述べたとおり、治癒までにどれく
治療者は常に、根本的な治療をするとき
らいの時間が必要かということに関して一
には全体を見なければなりません。症状は
般的な法則はありません。治癒に至る過程
ヘリングの法則に従って場所を変えていき
は、発見者であるコンスタンチン・へリン
ます。症状は上から下へと移動するのです。
グ(1802-1880)の名前の付いた法則に従い
背中の痛みや膝の痛みがある間、新しく
ます。
彼は以下の 3 つの治癒の法則を仮定しま
した。
生じた急性症状に対しレメディーは処方さ
れません。そのうち足首の痛みは無くなる
でしょう。
治癒に至る方向性
1. 上から下へ
ヘリング第2法則
2. 内側から外側へ
内側から外側へ
3. 逆の順序で現れる
これを正しく理解するために、次の例で
示しましょう。
治癒の経過は中心から末梢へと向かいま
す。たとえば重要な臓器からより重要でな
い臓器へと症状は移行します。気分や精神
ヘリング第1の法則
といったいわゆる人間の“もっとも内側の”
上から下へ
層が最初に良くなります。その後で心臓や
肝臓、腎臓、肺などの生命に関わる臓器が
ある患者さんが、4 ヶ月も続いている肩
改善し、さらにそのあと運動器官が治って
の痛みを治療するために訪れています。次
いきます。皮膚は一番外側にある器官です
の診察では、彼は背中の痛みに襲われてい
が、最後に治癒します。一番外にある“層
ます。
“肩はどうですか?”“そこはもう痛
“であるため、皮膚は排泄機能の役割を担
くありません”症状は体の下に移動してい
っています。皮膚はあたかも弁であるかの
ます。肩の痛みは背中の小領域に移ったの
ように働くのです。そのため皮膚の症状は
です。3 週間後、今度は膝の痛みを訴えま
とても治りにくいものとなります。
す。背中の痛みは、この期間はありません。
後に、彼は足首の痛みを取るレメディーを
要求します。
ここでは、症状が上から下へ移動してい
るのがはっきりと見て取れます。
35
14 歳の少女が周期的に起こるひどい偏頭
痛に苦しんでいます。学校を休んだり、授
業を途中で早退したりすることもしばしば
です。彼女は自分一人だけいじめを受け、
仲間とけんかしています。クラスに受け入
れられていないとよく感じています。詳し
い問診の後で根本体質レメディーが処方さ
れました。1 ヶ月後の再診で、偏頭痛の起
こる回数が前よりも減って、程度も軽くな
ったと告げました。さらに、友達ができた
とも伝えました。彼女はここ数ヶ月で急に
増えた手のほくろをとても心配していまし
た。この症例では内側から外側へという治
癒の進行がはっきりと示されています。強
められた体は、病気をほくろという形で表
面に押し出したのです。心が強くなるに従
い、頭痛が良くなっています。治癒の過程
が進行中であるため、レメディーは処方さ
れませんでした。2 ヶ月後偏頭痛とほくろ
は完全になくなりました。
ヘリング第3法則
逆の順序で現れる
最近かかった病気は一番はじめに治りま
す。病気の歴史はよく昔に遡ります。最終
的には一番古い病気がなくなるのです。
ある患者さんは子供の頃から副鼻腔炎を
持っています。ここ 5 年間では膣の真菌感
染症、最近 1 年はひどい生理痛があります。
従って生理痛が最初に治り、それから膣の
感染症、最後に副鼻腔炎が治ります。
ヘリングの法則に関しては、治癒が進ん
でいることを話すためは、そのうちの一つ
が当てはまっていれば十分です。
36
抑圧
す。抑圧は、病気を純粋に症状の段階で治
療するときに起こります。そこでは病気の
事態を悪くさせる
原因-弱くなったバイタルフォース-は考
慮されていません。抑圧と対症療法は、通
本
当の治癒とは、病気の症状が消
常の医学の考えの中に特にしっかりと根付
失したことだけを意味するもの
いています。
ではありません(病気と治癒の
抑圧にはいくつかのタイプがあります。
章を参照)。治癒の結果、症状は大抵無くな
りますが、また少しすると再発するのです。
1. 通常の医療による抑圧
このような例としては再発性の膀胱炎や風
邪、カンジダ、湿疹などを挙げることがで
きます。
手にできた湿疹に長い間苦しんでいる患
者さんがいます。皮膚科医から“マイルド
正直なところ、薬物治療は症状を取り除
な”コーチゾンを含む軟膏をもらっていま
くことができました。しかし病気は治癒し
す。1 週間後、皮膚は治り、湿疹からこん
ないままです。なぜなら再発することがよ
なにも早く解放されたことを喜びます。3
くあるからです。病気への感受性は残った
週間後、顔と手と膝の裏にひどい発疹がで
ままです。抑圧的な治療をするよりも、体
きます。患者さんはもっと作用の強い軟膏
が同じ症状を前面に出すだけのエネルギー
を処方されます。6 ヶ月の治療の後、発疹
を、継続的に持たなくてはなりません。こ
は最終的になくなります。患者さんは発疹
のことは相対的に強いバイタルフォースの
のことは忘れてしまいます。3 ヶ月後、家
ことを暗示しています。確実に言えること
庭医は患者さんを高血圧と診断します。
は、バイタルフォースはバランスを取り戻
すために、症状を繰り返し起こしているの
です。
この高血圧は皮膚の発疹を抑圧した結果
なのです。ただ単に“外面的に”扱われた
前にあった症状ではなく、
“新たな”病気
だけです。すなわち表面的な治療であり、
の症状が現れたときのほうが問題です。こ
病気の根源は治療されなかったのです。こ
のような病気はしばしば全く独立して起こ
のようにして病気は内側に移動するのです。
り、最初にあったものとは関係がないよう
正しくホメオパシー治療をしている間、最
にみえます。しかし実際は、病気の根源は
初に皮膚の発疹が再び現れて、それから高
同じものなのです。ただ病気が形を変えた
血圧が治っていくでしょう。
だけなのです。言い換えれば、前とは別の
症状であるためにそう感じるのです。
一般的なインフルエンザの例を挙げまし
病気は体の外側の表面から内側に移動す
ょう。ウイルスの感染が起こった時、体温
る傾向があります。そのようなことが起こ
は一般的に 2,3 度上がります。免疫の防御
っているときはもっと危険なものになりま
が最大限に働きます。薬によって体温を下
す。このような過程は“抑圧”と呼ばれま
げるならば、しなければならない日々の仕
37
事を続けることができます。医学的に見る
と健康であると言えます。2,3 日たって初
近頃、母親が 6 歳の子供を連れて診療所
めて、だるさや頭痛、胃の痛み、関節の痛
に急患として来ました。何日もの間、その
みを感じます。これはよく知られた、
“イン
子には、夜になると嘔吐するほど悪化する、
フルエンザになってから調子が悪い”とい
ひどい咳がありました。何が起きたのでし
うことではないでしょうか?
ょうか?
3 週間後、
遠足から帰ってきたときには、
この患者さんが診療所に来て、症状に合
目の焼けるような感じとひどい鼻水があり
ったホメオパシーのレメディーで治療すれ
ました。母親は近所の薬局に行き、花粉症
ば、おそらく発熱して発汗が始まるでしょ
のレメディーである Allium cepa を買って
う。
きて息子に一日 3 回摂らせました。症状が
何が起こったのでしょうか?ホメオパシ
ーのレメディーがバイタルフォースを刺激
したのです。バイタルフォースは体を治癒
するために最適な方法をまさに探している
悪化したときは、花粉症のコンプレックス
レメディーを与えました。
1週間後、咳に対して Bryonia を追加し、
何日間か摂らせました。
のです。この治癒反応が起こると患者さん
病気は気管支炎に移行しました。それは
は急速に健康を回復して、どんな挑戦をも
臓器に対する処方と、花粉症の症状に対す
受け入れる準備ができるのです。
る処方の結果として現れたのです。
2. ホメオパシーのレメディーによる抑
圧
すべてのホメオパスは治療の経過中、患
者さんの症状が実際に治癒に向かっている
のか、あるいは抑圧されているだけなのか
治療者がその人全体を見ていないときに
を見極めなくてはなりません。よく、ホメ
は、ホメオパシーやその他の治療法も抑圧
オパシーのレメディーでは抑圧することが
になりうるのです。ホメオパシーの抑圧は、
できないと思われています。しかし、それ
特にコンプレックスレメディーの場合に危
は誤りです。急性病の症例でも、患者さん
険性が高いのです。コンプレックスレメデ
の全体性を観察することは、極めて大切で
ィーは、病気の症状により選ばれた単一の
す。
レメディーを混合して作られています。患
者さんの症状を考えていない時には問題と
3. 治癒の過程の抑圧
なります。
同じような問題はホメオパシーのレメデ
患者さんはケーステイクの間、自分が最
ィーを、病気の名前で使用する場合にも生
近バッチフラワーレメディーやシュースラ
じます。特に風邪と、花粉症などのアレル
ーの生命組織塩、バイオレゾナンス、針治
ギー性疾患はホメオパシー的に抑圧を受け
療、リフレクソロジーなどの他の治療を受
ます。
けているとよく話します。
38
一例を挙げます。
症状の全体像に基づいて、神経性の消化
6 歳の少年が寝汗を治すために診療所に
来ました。彼はまた、化膿性の咽頭炎に苦
不良と睡眠障害の患者さんはホメオパシー
しんでいます。それは一年に 2,3 回起こり、
のレメディーLycopodium 1M を処方されま
高熱が出ます。咽頭炎になったときは小児
す。2,3 週間後、消化不良が良くなってい
科医の治療を受けています。病歴を詳しく
ることに気づきます。睡眠障害も良くなっ
調べた後、根本体質レメディーが処方され、
ています。しかし、以前患ったことのある、
寝汗はすぐになくなりました。その後、ひ
背中の痛みがレメディーへの反応として現
どい喉の痛みを訴えたために、母親は戸棚
れ、彼は今それに悩んでいます。痛みにう
にあった家庭薬から、レメディーを探して
んざりしていたために鍼灸師にかかり、短
与えました。すると喉の痛みは良くなりま
期間のうちに背中の症状は治療されます。
した。数週間後の再診で、母親は息子がま
その後すぐに、消化不良の症状が再発しま
た寝汗をかくようになったと言いました。
す。彼はまた神経質になり、睡眠障害にな
この症状は喉が痛くなってから 2 日後に始
っています。
まり、再び定期的に起こるようになってい
ここでは治癒過程の調和が妨げられてい
ました。
ます。病気は表面(背中)から中(神経、胃)
家庭薬の中にあるホメオパシーのレメデ
へと移行しています。体と治癒過程が再び
ィーを使うことで、喉の痛みは良くなりま
軌道に戻るためには、長い時間が必要とな
したが、そのために抑圧される結果となっ
るでしょう。
たのです。治癒過程はこのようにして妨げ
られ、慢性症状である寝汗が再発したので
これは“料理人が多いとスープがだめに
す。
なる”ということわざとして、よく知られ
ています。異なった治療法は、それぞれ治
このケースでは急性のホメオパシーのレ
癒の過程の調和を妨げるのです。いろいろ
メディーが、深く作用する根本体質レメデ
な影響や情報によって負荷がかかると、体
ィーを抑圧したことがはっきりと示されて
はどの刺激に対して反応するべきかが分か
います。
らなくなります。ホメオパシーの治癒過程
ホメオパシーの根本体質治療をしている
が進んでいるときは、いろいろな反応が起
間は、ホメオパスに相談せずに他のレメデ
こるかもしれません。それを他の治療で治
ィーを摂ることがないようにすべきです。
そうとするときには、これが抑圧的に作用
治療を行っているホメオパスだけが、ケー
することがあり、治癒過程が妨げられるで
ス全体の状況を把握しており、治癒の成り
しょう。説明を受けた後に、患者さんは自
行きを判断することができるのです。
分が続けるべき治療を選ばなければなりま
根本治療中に現れる症状に対して、通常
せん。その場合に限り、体に適切に反応す
の医薬を服用することはまた、治癒の過程
るチャンスを与えることができるのです。
を抑圧します。そのため、通常の医薬を服
39
用するときには、ホメオパスに相談する必
要があります。
40
実際のケーステイク
・うつ病
・自殺
すべての事実を得る
・関節炎
こ
・痛風
れまでの章では、クラシカル
・静脈瘤
ホメオパシーの理論的な基
・潰瘍
礎について明確に述べまし
・脳卒中
た。ここではそれが、臨床でどのように応
・麻痺
用されているかを示したいと思います。
・心臓病
・腫瘍
調査
・早産、流産
・死産
最初の相談の前に、患者さんは家族が持
・皮膚の病気
っている、すべての病気の素質を探さなけ
・奇形
ればなりません(マヤズムの素質の章を参
・血液の病気
照)。それはいつも簡単な訳ではありません
・肺の病気
し、家族から病歴を聞き出すには、快諾と
・性病
忍耐が必要となります。父親や母親は多く
・感染症
の場合病気にさほど留意せず、気づきもし
・予防接種の害
ないか、または過去に関しては話したがり
・アレルギー
ません。
・などなど
親が家族の病気を詳しく知っていると、
その分診療はシンプルなものになります。
さらに患者さんは、受けた手術や人生で
ホメオパスはケースのマヤズムについて重
起こった重要な出来事といった自分の病歴
要な情報を得ることができ、ふさわしいレ
を、時間を追ってリストアップする必要が
メディーを選ぶことができます。
あります。ホメオパスもまた、患者さんが
どんな病気が両親や祖父母、祖祖父母、
叔父、叔母、兄弟姉妹あるいは子供を悩ま
過去に服用したか、あるいは今も飲んでい
る薬物について知る必要があります。
せているかを知ることは大切です。手術や
親類の死因も大事です。
・癌
子供の場合はそれに加え、次のような情
報が大切です。
・結核
・糖尿病 1 型、2 型
・妊娠中の経過
・リウマチ
・すべての妊娠中に母親が使っていた薬
・多発性関節炎
・アルコール依存症
41
物
・分娩の経過
・生まれたときの大きさと体重
・他の症状
・外見
・睡眠/夢
・欠陥
・胃腸の症状
・出産外傷
・生理
・母乳栄養、どのくらいしていたか?
・体温調節
・食事中の振る舞い
・発汗
・発達、歯生、歩行、言葉
・恐れ、心配、悲しみ
・予防接種、日と起こりうる反応
・自信
・母親が言うその他の情報すべて
・侮蔑、傷ついた感情
・性格
ケースの病歴
・家庭の状況など
患者さんのケーステイクは、待合室で最
今現在の体や心の状態も大切ですが、子
初に会ったときから始まります。最初の印
供の頃から今日までに至るすべての経歴も
象は多くのことを語ります。どんな態度か、
大事です。ホメオパスはその人全体を理解
握手はどうか、神経質であるか、緊張して
しようとし、それらを記録します。ケース
いるか、それともくつろいでいるか?
テイク中、病気の原因を探すことは大切で
それに引き続き、実際の症状について、
す。病気が本質的には体の病気なのか、そ
次に挙げたようなことに関して長い問診が
れとも心の病気であるのか。また、いつか
始まります。
ら病気が生じたのかは問題ではありません。
・部位
病気の原因はすでに子供の頃から生じてい
・どこから始まったのか
ることもあり得ます。
・原因
この章ではケーステイクの方法を手短に
・症状がなくなる時間帯
洞察してみました。ケーステイクは、すべ
・痛みの性質
ての有用な情報を集めた最終的なリストで
・悪化する要因
はありません。ホメオパシーの診療では、
・好転する要因
ケーステイクはもっと広範囲にわたるもの
・主な症状に付随する症状
です。すべての集めた情報により、患者さ
・症状がある時の気分の変化など
んの最も完全な症状像を得ることができま
す。その作業は、モザイクタイルを一つ一
ケースを完全に把握するために、患者さ
つ組み合わせて、一枚の絵を形作るのに似
んをあらゆる視点から見て記録する必要が
ています。タイルがたくさんあるほど、絵
あります。従って、体と心について、別に
はよりクリアーになります。そのときに限
詳しく聞くことがとても大切です。例を挙
り、ホメオパスは、患者さんを治すことが
げましょう。
できると思われるレメディーを決めること
ができるのです。
42
根本体質治療
が増えて、そのためにひどく苦しんでいま
す。
その人全体を治療する
こ
H さんの最近の体の問題についてはこの
れまでの章で、ホメオパシー
辺でいいでしょう。
をいろんな側面から説明し
ホメオパシーでは、人間を体と心と魂の
てきました。これらはホメオ
集合体であると考えます。この全体を分離
パシーの根本体質治療において考慮され、
することはできません。患者さんの性格や
応用されています。以下に挙げるケースで、
気持ちといったものが、正しいレメディー
ホメオパシーの複雑さと慢性病の治療の仕
を突き止めるのに極めて大切な役割を果た
方を理解することができるでしょう。
すのです。
H さんという 52 歳の女性が、いろいろな
彼女は自分のことをとても義務感の強い
症状のために訪れました。まず、両肩のリ
女性であると言います。いつも他人の面倒
ウマチ性の痛みを訴えました。その痛みは
を見ています。育ち盛りの子供と夫の 2 人
両腕の循環障害と知覚障害を伴い、特に両
のためだけにいるようなもので、罪の意識
手の指先に強くその症状がありました。こ
を感じることがしばしばあり、ノーと言う
の痛みのために夜中に目覚めます。何年も
ことができません。36 歳の時に中絶をした
の間、再発性の腰痛と臀部痛に悩まされて
ことで、自分を許すことができないでいま
います。そのため仕事もままなりません。
す。
37 歳から続いている肩の痛みは、ここ 5 ヶ
現在、ケアの必要な自分の母親にプレッ
月の間、リウマチ専門医から何回かコーチ
シャーを感じています。事実、彼女は自分
ゾンの注射を受け、強力な抗リウマチ薬を
を守れないのではないかという心理的恐怖
処方されるくらいにひどくなっています。
について話します。子供の頃の話をしてい
るとき、泣きながら自分は望まれなかった
H さん自身の報告はこのくらいにしてお
子供だったこと、両親に捨てられないよう、
きましょう。しかしこの程度の症状の記述
また両親に愛されるよう、自分ができるこ
では、ホメオパシーのレメディーを処方す
とは何でもしてきたことを語ります。
るには十分ではありません。適切なレメデ
ィーにたどり着くためには、H さんを全体
的に理解する必要があります。
他の症状があるかという質問に、20 歳か
さらに、H さんが書いた質問票から次の
ような病歴が得られます。
年齢
病気/手術
らよくひどい膀胱炎を繰り返していたこと、 7
いろいろなほくろを切除
毎年冬になると副鼻腔炎を治療する必要が
8
麻疹、肺炎
あったと答えます。ここ 2,3 年で急に体重
9-18
一年に 1-2 回のひどい咽頭痛
43
19
虫垂切除
の薬を飲み続けたためです。以上のような
20-今日 膀胱炎
経過で、リウマチの症状が劇的に悪化した
23
妊娠 3 ヶ月で流産
のです。
26
卵管炎(卵管の炎症)
28
帝王切開
ここではほくろと腫瘍を切除した後に、
体がそれ自身にある障害を外に出すために
28-今日 うつ病
新たな出口を探し、重度の出血という形で
31
腫瘍切除
排出しようとしていることが、はっきりと
35
神経衰弱
分かります。ホルモン治療で出血は止まり
36
中絶
ましたが、病気はより深いレベルに移行し
37
結腸ポリープ切除
たのです(抑圧の章を参照)。
37
子宮筋腫、のう腫手術
37-今日 肩、背中の痛み
38-今日 慢性副鼻腔炎
質問票から次のような家族の病歴が得ら
れます。
50
ほくろ、脂肪腫切除
3ヶ月後
6 週間続くひどい出血、
母方
その後閉経
母
2 回の流産、静脈瘤、何回か手術
50-今日 ひどいリウマチの段階
それぞれの病気は、対応する通常の医療
で治療しました。
鍵となるべき問題は-37 歳の時に現れた
を受けた
叔父
腎臓結石
叔母
卵巣のう腫切除、うつ病
祖母
痛風、流産
祖父
癌
肩のリウマチ様症状の原因は何か?という
ものです。36 歳のとき中絶をしたことで心
父方
と体に多大なストレスをもたらした結果、
父
前立腺の手術
バイタルフォースが弱くなったのです。こ
叔父
胆嚢結石、ヘルニア(裂孔)
の出来事の後に、ひどい疝痛が起きて、結
祖母
腸の手術
腸ポリープを切除しました。それ以後、重
祖父
リウマチ
度の出血が始まり、そのために子宮筋腫や
息子
ヘルニア/破裂
いろいろなのう腫を切除しました。このよ
娘
慢性的な風邪
うな抑圧の結果、病気は現在リウマチの形
で現れています。
家族の病歴からは淋病の影響がはっきり
50 歳の時にほくろと脂肪腫を切除したこ
と分かります。患者さんの病気も、淋病マ
とや、それに続いて、重度の出血をホルモ
ヤズムに属しています。もっと詳しく知り
ン剤で治療したことが、さらに抑圧的に作
たい場合は、マヤズムの素質の章を参照し
用しています。この後、閉経が起こりまし
てください。
た。これは別のホルモン剤を処方され、そ
すべての事実をさらに調べて評価した後
44
で、ホメオパスは根本体質レメディーを処
再度向き合うことができることは重要な点
方します。反応と治癒の過程を注意深く観
です。また、よりオープンになって独り立
察する必要があります。
ちができるようになって、新しく友達の輪
に加わることができるようになったことも
次の診察の時、H さんは 2 年間止まって
同様に大事な点です。治療を 2 年間行って
いた生理がまた始まり、とてもひどいもの
きた結果、H さんの状態は、ほぼ症状のな
だったと話します。肩の痛みは無くなって、
い生活を送ることができるまでに改善して
代わりに臀部と背中の痛みが強くなってい
います。
ます。この痛みは、感覚の欠如と睡眠障害
H さんには、体の発するサインに注意を
を伴う、以前あった肩の痛みほどひどくは
払う必要があると話さなくてはなりません。
ありません。
体は、明らかな抑圧に対して非常に敏感に
さらに、最初から泣き通しで、昔の問題
反応することを示しています。何らかの問
が再び姿を現したと言いました。このこと
題が生じた場合は、すぐにそれらを全体的
で H さんは楽になりました。それに加えて
に把握した上で新たな症状像であると考え
夫と子供は、彼女がもはや自分たちの言い
て、適切なホメオパシーのレメディーで治
なりにはならないことに気づきました。H
療するべきでしょう。
さんは他の女性たちと交際することが多く
ここで挙げた例では、患者さんは同じホ
なり、それは彼女にとって、とても実りの
メオパシーのレメディーを、間隔を空けて
多いものでした。それとは別に、いくらか
摂っていました。臨床ではよく見られるの
痩せたことについて感想を述べています。
ですが、ホメオパシーのレメディーの中に
丸 2 年の間、生理は不規則でした。臀部の
は慢性病を治療する場合に長い年月を必要
痛みははるかに良くなりました。時々は関
とするものもあります。この章では、ホメ
節の症状に気づくこともあります。症状は
オパスが行う仕事とその思考過程を垣間見
我慢できるくらいであり、精神的にもバラ
てみました。
ンスがとれてきて、人生が明るい前途に満
ちあふれているのを感じています。
このケースでは、ホメオパシーのレメデ
ィーに対するバイタルフォースの反応が明
確に示されています。体は重度の出血とい
う形で障害を取り除き、肩の痛みは無くな
りました。体がこうした圧力弁を必要とし
なくなった時から、すぐにその出血は自然
に止まっています。52 歳で閉経するのは正
常なことです。
H さんが精神的に強くなって、心配事に
45
妊娠中のホメオパシー
メディーを使うことができます。すべての
患者さんと同じように、適切なレメディー
は個人が持つ症状に基づいて処方されます。
娠は、女性の一生のうちで特別
妊
このような関連で言っておきたいことは、
な期間です。それはまた女性の
助産師は次第にいくらかのホメオパシーの
体にとって、ある種のストレス
知識を持つようになっていることと、彼ら
であると言えます。妊娠している女性が強
がレメディーを効果的に使っているという
いバイタルフォースを持っているならば、
ことです。
妊娠期間中は活発なものとなるでしょう。
ホメオパシーのレメディーが妊娠や出産
もしバイタルフォースがさほど強くなけれ
の助けになるということだけでなく、その
ば、休眠状態にあるマヤズムの傾向が表に
後の母親や子供に対しても手助けすること
現れてきます。妊娠前の健康の問題が悪化
ができます。乳腺炎は母乳栄養中に見られ
するか、または新たな症状が現れてくるこ
る、最もありふれた病気の一つです。正し
とになります。
いホメオパシーのレメディーを使うことで、
他の薬剤の使用を避けることができます。
ひどい“朝の”吐き気、腹部膨満感、出
血、便秘、痔、湿疹、心臓血管障害、神経
質、ヘルペス、貧血、背中の痛み、関節の
痛み、睡眠障害、膣の感染症などの症状が
すぐに病気が治り、母親は再び授乳するこ
とができるようになります。
子宮の退縮期や出産後のうつも、ホメオ
パシーで治療することができます。
よく起こります。
多くの薬剤が胎盤を通過するため、薬は
しばしば胎児にとって脅威となります。
この視点から見ると、クラシカルホメオ
パシーは、妊娠、出産と、その後の期間に
おいてとても有益な助けとなります。正し
く適切に使えば、母親や子供に有害な副作
用を及ぼす危険はありません。
母親の健康は胎児の発達を左右する決め
手となります。臨床の場ではよく、妊娠前
や妊娠中に根本体質治療を受けた女性が、
前回の妊娠と比べると、いかに容易に“母
の喜び”を感じることができるかを見るこ
とができます。出産に伴う合併症も少なく、
より健康な子供を産むことができます。出
産に備えて、いろいろなホメオパシーのレ
46
子供のホメオパシー
らはバイタルフォースの防御反応と理解さ
れるべきものです。発疹は健康が内的に障
害を受けた結果であり、表面に押し出すこ
ホ
メオパシーの治療は赤ちゃんや
とで病気の存在を明らかにしているのです。
子供の健康を改善させるだけで
体は障害となっている物質を、排泄器官で
なく、健康な大人へと発達する
ある皮膚から排除しようとします。この過
段階においても有意義な役割を果たします。
程が理解されることなく、進行することを
特に注意されることなく、子供たちがど
許されずに、症状を薬物で治療した場合は、
れほど薬物にまみれているかについては、
体の内部へと病気が進展します(抑圧の章
いつも驚かされます。母親の多くは妊娠中
を参照)。
には薬物の使用を避けようとします。しか
皮膚の発疹が抑圧されたとき、よく気道
し子供を出産すると、こうした良い決意は
の問題が生じます。喘息の子供をホメオパ
忘れ去られます。咳が続くときはシロップ
シーで治療すると、しばらくの間発疹が再
で治療し、発疹が出たときは軟膏を塗って
び現れます。このようにして肺の症状はす
抑圧します。発熱したときは坐薬で熱を下
ぐに良くなります。喘息は根本的に治療さ
げ、耳が痛むときは抗生物質で治すのです。
れ、しばらくしてから子供は完全に健康を
このような抑圧の結果、子供の体は免疫
の防御を十分に確立することができなくな
ります。防御の力が常に訓練されているこ
取り戻します。
ホメオパシーではいろんな病気を治療す
ることができます。例として
とは、特別大切です。そうした場合にのみ、
体は自己を守ることを学び、外的な影響に
3 ヶ月目の痙攣、歯生の問題、発達の問
曝されたときにも無力ではなくなり、無防
題、学習困難、臆病、恐怖、どもり、ホー
備でもなくなるのです(抑圧の章を参照)。
ムシック、寝汗、人間関係上の困難、攻撃
ホメオパシーのレメディーは免疫系を強
性、落ち着きのなさ、活動過多、耳の感染
化するため、体は自分で病気を処理するこ
症、咽頭痛、中耳炎、おたふく風邪、はし
とができるようになります。
か、ドイツはしか、猩紅熱、咳、花粉症、
時々、生後1日目や生後数週間の新生児
皮膚の発疹など
で、すでに結膜炎や湿疹、おむつかぶれ、
消化障害、嘔吐、呼吸障害などの健康上の
最初の数ヶ月は母乳が非常に有益である
問題が見られることがあります。これらの
ことを忘れてはなりません。母乳には必要
早期に見られる症状は、マヤズムの汚点が
な栄養素がすべて含まれています。また、
見られるケースであることが多いのです
子供の免疫系と、免疫防御を担う抗体も母
(マヤズムの素質の章を参照)。ホメオパシ
乳に含まれています。抗体は子供を病気か
ーの治療は子供を、後に起こるより深い病
ら守ります。母乳で育った子供は健康状態
気から守ります。
が良く、病気になりやすいという傾向があ
子供はよく皮膚に発疹ができます。これ
47
りません。
病気の子供にとってリラックスできる環
境はとても大切です。心配性の親は、子供
が早く回復するのに必要な、穏やかさを与
えることができません。従って、親が子供
の持つ自己治癒力を信頼して、熱が出たり
咳をしたりする度にうろたえないことが非
常に大切となります。多くの場合、子供が
回復するためには親も治療する必要があり
ます。
48
ホメオパシーとスポーツ
怪我の危険も高めます。なぜなら運動の協
調性と反応性が、もう最良の状態ではなく
ス
なっているからです。心の緊張が増し、よ
ポーツを楽しむ人たちはだん
く筋肉の痙攣を起こします。ホメオパシー
だん増えてきています。アマ
はこのようなケースに役立ちます。プロの
チュアであれプロであれ、ほ
スポーツ選手やアマチュアの人たちも一様
どほどに行えばスポーツは健康にいいもの
に、リラックスすればするほど、よりよい
です。スポーツ活動と関係して起こる症状
パフォーマンスを行うことができます。
には、ホメオパシーのレメディーにより治
通常の医療を行わざるを得ないケースの
療できるものが多くあります。
場合、たとえば骨折したときは、クラシカ
スポーツ外傷の例としては
ルホメオパシーで治癒を早めることができ
ます。骨折は合併症を起こすことなく、ま
捻挫、筋違い、打撲、関節の炎症、使い
たそれほど痛まずに早く治ります。精神状
すぎからくる症状、熱中症、日射病、頭痛、
態も改善します。このようなすべての利点
痙攣、舞台負け、胃腸の問題、風邪など
は、運動選手が可能な限り早期にトレーニ
ングを再開できることを意味しています。
これらの症状は治療できるものの例です。
正しい使い方をすれば、ホメオパシーの
しかしホメオパシーは外傷のときに役に立
レメディーは、多くの化学的な“特効薬”
つだけではありません。ホメオパシーは通
とは違い、望ましくない副作用を引き起こ
常の医療が解決できないようなもの、たと
すことはありません。これは将来の健康を
えばスポーツ選手が才能を発揮できないよ
考えると大きな長所と言えます。
うな場合にも助けとなります。すなわちコ
ンディションを整えたにもかかわらず、世
界チャンピオンが試合で負けるような場合
です。多くの選手が自分のベストを尽くす
ことができますが、急にそのときになって
ブロックされてしまうことがあります。選
手たちは医学的な検査を受けますが、肉体
的には完全に健康であるとの結果が出ます。
このような場合、正しく選ばれたホメオパ
シーのレメディーが役に立つのです。
スポーツをする人たちは競技をする上で
は最高のコンディションにあるかもしれま
せんが、そのために必要な集中力が不足し
ていることがよくあります。集中力不足は
パフォーマンスの妨げになるだけではなく、
49
ホメオパシーのセルフケア
大切です。単純な家庭用のレメディーは、
圧迫ガーゼや入浴、ハーブティーなどと同
こ
じように、バイタルフォースをサポートす
れまで多くの人々がホメオ
るためには十分なものです。
パシーに興味を持つように
ホメオパシー治療を行っている間は、ホ
なり、日常的な症状をホメオ
メオパシーのファーストエイドキットをホ
パシーのレメディーで対処したいと望むよ
メオパスの許可なしに使わないでください。
うになっています。日頃のちょっとした症
さもないと、根本レメディーの治癒作用が
状を自分で治すことは確かに有益ですが、
妨げられ、抑制されることがあります(抑圧
すべての症状がセルフケアに適しているわ
の章を参照)。その上、すべてのレメディー
けではありません。
の相性が良いわけではありません。急を要
前の章を読んで気づかれたように、ホメ
するときには、家庭でホメオパシーのレメ
オパシーは扱う範囲が広く、難しい科学で
ディーを選ぶことは有益です。ホメオパス
あるため、長い時間をかけて集中的に学ん
に相談してから、適切なレメディーをすぐ
だ者だけが実践することができるのです。
に手にして摂ってください。
ホメオパシーのファーストエイドキットは
詳しいケーステイクは、ホメオパシーの
どのような状況であっても、ホメオパスや
急性のレメディーを見つけるのにとても大
医師の診療の代わりにはならないのです。
事です。ケーステイクは、以下のように症
しかし、以下に示す危険のない急性の症状
例を全体的に観察することで成り立ちます。
を治療するときには、とても役に立つもの
です。
・病気の性質:下痢、嘔吐、発熱、虫ささ
れ…
風邪、発熱、インフルエンザ、胃腸の症
・外見:顔色が悪い、赤い、腫れている…
状、虫さされ、目の炎症、喉の痛み、急性
・原因:外傷、食べ物、過熱、寒さ、スト
の外傷、耳の痛み、日焼け、膀胱炎、歯の
痛みなど
レス…
・患者の行動:無気力、心配、興奮…
・患者の感覚:痛みの性質(ずきずきする、
慢性症状や繰り返す症状は、セルフケア
には向きません。これらの症状はホメオパ
刺すような、など)、寒さ、ふるえ、かゆ
み…
スに相談して、深く作用するレメディーで
・ 基調 (症状が好転あるいは悪化す る要
治療する必要があります。セルフケアをす
因):暑さ、寒さ、休息、動作、一日の時
る場合、体には通常、自己の軽い病気であ
間帯…
れば治す力が十分あるということを心に留
めておかなければなりません。何かある度
最も適した急性レメディーを選ぶときに
に、ホメオパシーのファーストエイドキッ
確信を得るために、ホメオパシーのファー
トを手にすることがないようにすることは
ストエイド講座に参加することはよいアイ
50
ディアです(翻訳者からの情報が利用でき
ます)。
ホメオパシーのファーストエイドキット
はヘリオス社のホメオパシー薬局で作られ
ています。ファーストエイドキットは、ヘ
リオス社から直接購入することも可能で
(アドレスの章を参照)、他のホメオパシー
薬局や翻訳者からも入手することができま
す。
51
レメディーを摂るときの注意事項
・習慣的に摂取している紅茶やコーヒー、
レ
コーラ、ペパーミント、カモミールティ
メディーを摂るときには、治
ーは飲まないようにしてください。シリ
療を成功させるために、いく
アルコーヒーは、コーヒーの代用になる
つか注意する点があります。
ことが示されています。例えば、バイオ
フォース社の Bumbu Coffee Substitute
・ホメオパシーのレメディーを手で触らな
やネスレ社の Caro などがそうです。
いでください。
・臭いの強いものから離して保存してくだ
さい。
・レメディーを極端に暑いところや、日光
の当たるところに置かないでください。
・レメディーを摂る前後30分はたばこを
吸ったり、飲んだり食べたりしないでく
ださい。
・レメディーは口の中でゆっくり溶かして
ください。口の中がきれいなときだけレ
メディーを摂りましょう。歯磨きの直後
には摂らないでください。
・カンファーや、カンファーを含むもの、
例えば Vick VapoRub やその他の香りの強
い油などの使用は避けてください。また
それらを体にすり込まないください。さ
もないと、ホメオパシーのレメディーの
作用が打ち消されるか、または著しく弱
くなってしまいます。
・根本体質治療をしているときには、ホメ
オパスの許可なしに他のホメオパシーの
レメディーを摂らないでください。
52
Q and A (FAQ)
A:いいえ、心配いりません。2 粒飲もうが
一瓶全部飲もうが何も起こらないでしょ
う。お子さんが定期的に 2 粒摂るような
Q:私はよく膀胱炎になるのですが、医者に
場合に、反応が見られるだけです。
行くといつも尿検査で細菌が検出されま
す。もう何年も抗生物質をたくさん飲ん
Q:私のホメオパスは予防接種にかなり批判
でいます。細菌に対するホメオパシーの
的です。一方、小児科医は別の意見を持
レメディーはあるのですか?
ち、すべての予防接種がよいものである
A:いいえ、細菌に対するホメオパシーのレ
と考えています。予防接種のよい点と悪
メディーというものはありません。とは
い点を論じている情報は、どこを探した
いうものの、慢性的な繰り返し生じる膀
ら見つかりますか?
胱炎は、根本的に非常によく治すことが
A:この件に関して幅広い情報を得るには返
できます。なぜなら細菌は巣を作るだけ
信用封筒を次の住所に送るといいでしょ
であり、体が弱まった時にだけ障害を引
う。
き起こすものであるからです。体を防御
The
する力を強める必要があります。そうす
870,Harrow,Middlesex HA3 7UV
ることによって、多くの場合は病気から
電話番号は 020-8861-1022
解放されるでしょう。
URL は www.informedparent.co.uk です。
Informed
Parent,PO
Box
Trevor Gunn の本 Mass Immunisation も
Q:私たちはある子供を養子にしていますが、
読んでみてください。論争点については、
その子に根本体質治療を受けさせたいと
Susan Curtis の 本 A Handbook of
思っています。残念ながら、彼女のマヤ
Homoeopathic
ズム的な背景を知りません。このような
immunisation を参考にしてください。
Alternatives
to
場合でも、子供をホメオパシーで治療す
ることはできますか?
Q:私は心臓病のため、長年にわたり薬に頼
A:はい、お子さんは治療できます。家族の
っています。慢性的な背中の痛みや頭痛
マヤズム的な背景が分かっていたほうが
をホメオパシーで治療したいと思ってい
よいのですが、マヤズムの素質は子供に
ます。仕事の同僚が言うには薬を飲んで
も現れます。特別な詳細なケーステイク
いる限り、それは無理だろうとのことで
がここでは大切になってくるでしょう。
した。ホメオパシーは通常の薬を服用し
ていない場合にのみ作用するのでしょう
Q:私の 2 歳の子供がホメオパシーのファー
か。
ストエイドキットを見つけて、何本か瓶
A:これはそうではありません。不幸にもこ
を開けて中のレメディーを全部飲んでし
うした誤解が広まっているようです。ホ
ましました。中毒や他の反応の徴候に注
メオパシー治療は間違いなくあなたの助
意する必要がありますか?
けとなります。薬を急に止めることは非
53
常に危険であり、責任を負えません。ホ
しているので、最も適したレメディーは
メオパシーのレメディーは薬とは違うレ
症状を頼りに見つけなければなりません。
ベルで作用するので、通常の医薬を服用
あなたの助けとなったレメディーは、あ
していても治療効果はあります。
なたの友達にとっての特定のレメディー
とはならないのです。
Q:私は近々手術を受けなければなりません。
今からでもホメオパシーの治療を始めら
れますか?
A:いつ手術をするのでしょうか?もし手術
の前に十分な時間があるのなら、根本体
Q:私は Arsenicum album 200C をホメオパス
から処方されました。ヒ素はとても有害
であると知られているので心配している
のですが。
質治療を受けるのが一番いいでしょう。
A:安心してください。12C より高いポーテ
手術の前に根本体質を強めた人は、より
ンシーでは、原物質は 1 分子も含まれて
手術に耐えることができます。
いません。これはその物質がもはや毒性
自己治癒力は増大し、回復が早くなり
を持たないことを意味しています。
ます。手術日が目前に迫っているならば、
ホメオパスは手術前と手術後それぞれの
症状に対して治療することができます。
Q:毎日の診療ではどのポーテンシーが一番
よく使われますか?
手術に対する恐怖や麻酔後の吐き気、痛
A:それは病気の種類や患者さんの根本体質
み、創部の治りが遅いなどといった問題
によります。30C や 200C、1M、10M、LM の
は、適切なホメオパシーのレメディーを
どれを選ぶかを決めるのは、個人の考え
与えるとよく反応します。
によります。
Q:私のホメオパスは激しい生理痛に対して
Q:私が薬局でホメオパシーのレメディーを
Sepia を処方しました。それはとてもよい
買うときは 1 回につき 5 粒を少なくとも 1
助けとなっています。そこで友達にこれ
日 3 回、症状が良くなるまで摂るように
をあげたのですが、彼女の生理痛はよく
言われます。私はホメオパスの所に行っ
なりません。
てきたところです。ただ 5 粒入りの小さ
A:Sepia は深く作用する根本体質レメディ
な袋をもらって、それを一度に摂るよう
ーです。ホメオパスはあなたの症状の全
に言われました。次の診察は 1 ヶ月後で
体像をもとにして処方したのであり、生
す。このレメディーはちゃんと作用する
理痛のためだけに処方したのではありま
のでしょうか?
せん。
A:あなたがホメオパスからもらったレメデ
患者さんをそれぞれ独自の個人として
ィーはおそらくポーテンシーが高いもの
考えることは、ホメオパシーでは大切な
です。すなわちそのレメディーは長期に
基本原則です。人はそれぞれ独自のなり
わたり作用するものであり、時には数ヶ
方で病気になり、独自の病気の症状を現
月間効いていることもあります。そして
54
市販のレメディーよりも深いレベルに働
っています。私のような年齢で試す意味
きかけるものです。
があるでしょうか?ホメオパシーはたく
さんの手術や治療を受けていても、私の
Q:私はある講演で、根本体質レメディーは
助けとなるのでしょうか?
一生変わらないと聴きました。言い換え
A:ホメオパシーは年齢を問いません。ホメ
れば、いつも同じレメディーが処方され
オパシーの治療が正しく行われるなら、
るということです。私にはそれほど単純
バイタルフォースが弱まっていても、そ
ではないように思えます。人もまた変わ
れを強めることができます。もちろん、
るものであれば、レメディーも変わって
それにはいくらかの時間と忍耐が必要で
当然ではないでしょうか?
しょう。器官の変化を元に戻すことはで
A:全くその通りです。ただ一つのレメディ
きません。しかしホメオパシーで内的に
ーが答えであるケースはめったにありま
強くなり、よりバランスがとれた人の場
せん。特に“複雑な”病気の場合は、い
合は、自身が持つ症状と折り合いをつけ
くつかのレメディーを長い間隔を開けて
やすくなることが知られています。この
摂る必要があります。人が一生を通じて、
ような人では生活の質が高まり、深刻な
子供の時から大人になるまで同じレメデ
病気になることを防ぐことができます。
ィーを必要とすることはまれです。
Q:私は妊娠中ですが、おなかの子供を傷つ
Q:私のホメオパスは処方したレメディーが
けたくないために、薬を飲むことを避け
何かを決して私に話しません。これには
たいのです。ホメオパシーのレメディー
何か理由があるのでしょうか?
にはどのような副作用があるのでしょう
A:はい、はっきり言ってレメディーがあな
か?
たの先入観や偏見なしに作用するように
A:安心してください。正しい服用量を守れ
という理由からです。実際には自分のレ
ば、ホメオパシーのレメディーは全く害
メディーを知っている患者さんや、それ
がありません。この件に関しては、妊娠
を一般書で調べた患者さんは偏見を持つ
中のホメオパシーの章に記されています。
ことが多く、レメディーに対する反応を
客観的に判断することがもうできなくな
ることが示されています。しかし、後日
ならば、レメディーの名前について話さ
ない理由はありません。
Q:ホメオパシーの治療は何歳から始めるこ
とができますか?
A:治療はすでに出産中から始めることがで
きます。ホメオパシーを習得した助産師
はこれに関して成功を収めています。彼
Q:私は 72 歳ですが、数多くの手術を受けて
きました。そしていくつかの栄養につき
らは必要に応じて、赤ちゃんが生まれる
とすぐにレメディーを与えるのです。
悩んでいます。今私は健康に関心がある
限りは、違うやり方を試してみたいと思
55
Q:最近私はインターネットでホメオパシー
の情報を探しています。するとその情報
量に圧倒されます。何百ものアドレスが
見つかりました。
A:そうした努力を続けてみてください。
www.groma.ch では、クラシカルホメオパ
シーの、世界に広がるリンクの集まりを
見つけることができます。また
www.homeopathhome.com
や
www.homeopath.co.uk も訪れてみてくだ
さい。
56
参考文献
・ Blackie,
Margery
Homoeopathy
Dr.
(1986)
Classical
Beaconsfield:
Beaconsfield Publishers Ltd
・Blackie, Margery Dr, The Patient Not The
Cure (1976) London: MacDonald & Jane’s
・ Castro,
Miranda,
The
Complete
Homoeopathy Handbook (1990) London:
Macmillan
・ Curtis,
Susan,
Homoeopathic
A
Handbook
Alternatives
of
to
Immunisation (1996) London: Winter
Press
・Gunn Trevor, Mass Immunisation. A Point
in Question (1992) Kendal: Cutting Edge
Publications
・Hahnemann, Samuel, Organon of medicine,
6th Edition, Delhi: B. Jain Publishers
・ Kent, JT, Lectures on Homoeopathic
Philosophy, Delhi: B. Jain Publishers
・ Köhler, Gerhard, The Handbook of
Homoeopathy, Delhi: B. Jain Publishers
・ Vithoulkas, George, The Science of
Homoeopathy
・Vithoulkas, George, HomoeopathyMedicine of the New Man (1985) London:
Thorsons
・ Vithoulkas, George, A New Model for
Health and Disease (1991) Berkley:
North Atlantic Books
57
連絡先
Helios Homoeopathic Pharmacy
89-97 Camden Road
Tunbridge Wells
Kent TN1 2QR
Tel. 01892-537254 / 536393 (24 hrs)
http://www.helios.co.uk
Nelsons Homoeopathic Pharmacy
73 Duke Street
Grosvenor Square
London W1M 6BY
Tel. 020-7495-2404
本の販売先、ファーストエイドキットや
講座についてさらなる情報を得たいときは
以下の所にご連絡ください。
Hans G Schrauder BSc LCH MHMA MGCP
The Homoeopathic Clinic
82 Amberwood Rise
New Malden KT3 5JQ
Tel. 020-8942-2668
E-mail: [email protected]
もしくは
The Eden Medical Centre
63a Kings Road
London SW3 4NT
Tel. 020-7881-5800
E-mail: [email protected]
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