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紀要全データ(約4.5MB) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
東海職業能力開発大学校浜松校紀要 第 21 号 2015 年 3 月 安信 ・・・ 1 直哉 他 ・・・ 3 佳史 他 ・・・ 6 高男 他 ・・・ 9 康晴 他 ・・・ 15 哲也 他 ・・・ 20 小沢 浩二 ・・・ 24 幸野 政紀 ・・・ 28 小玉 博史 ・・・ 34 巻頭言 長瀬 【実践報告】 歯車ポンプと性能検証装置の設計・製作 瀧井 射出成形金型の設計・製作 勝廣、古杉 剛、山崎 -小型風力発電キットの設計・製作- モーターカバーの作製 久保 幸夫、出来 俊司、中村 ICT を用いた大規模災害時避難所支援システムのプロトタイプ開発 安部 惠一、橋本 隆志、西出 和広、天城 康晴、山口 ICT を用いた避難所支援システム向け組込み型メインサーバの開発 安部 自動ケーブル切断機「線切れ~る」の製作 惠一、天城 ~測長、切断の自動化~ 蔭山 【国際協力】 ベトナム国研修報告 ~サーボモータ及びステッピングモータ技術~ 【産学連携】 産学連携推進の取り組みについて 【年間報告】 平成 25 年度の取り組みについて 【参 考】 平成 25 年度総合制作実習テーマ・作品(写真集) ・・・ 44 共に学ぶ歓びを原点として 明治 44 年(1911 年)日本で初めての労働法「工場法」が制定された。同法は、子供の労 働の制限、長時間労働の制限、労働環境の改善などを定めた日本で初めての労働者保護法 で、劣悪な労働条件や労働環境を背景としていたものである。 当時の工場労働を知る代表的なものとして、大正 14 年(1925 年)7 月に細井和喜蔵(ほ そいわきぞう)氏の著作による「女工哀史」がある。同氏は 1897 年(明治 30 年)に京都 府丹後に生まれた。養子に来た父親は生まれる前に家からいなくなり、母親は朝から晩ま で機織りをしていたが7歳の時に入水自殺をしてしまい祖母に育てられたが、祖母も尋常 小学校 5 年(13 歳)の時に亡くなり、大阪を皮切りに住み込みで職工をしながら自活をす ることになった。長年勤めたのは、東京亀戸にあった「東京モスリン」という工場で「女 工哀史」を出版した1ヶ月後に 28 歳で病死した。 「女工哀史」について、大河内一男氏は、「官庁報告書・ジャーナリストのルポルタージ ュ的記事とは本質的に違い、著者の労働者としての生活経験に基づいて書かれた工場労働 に対する劇しいプロテストであり、労働生活の間をぬって綴られた工場生活に関する厖大 な生の記録である。本書を貫いて脈うっている工場労働の邪悪に対する著者のヒューメン な抗議こそ「女工哀史」を働く人々の愛読書たらしめたものである。」、最も強調している のは、「著者の鋭いかんは、見事に工場労働の真相を掴みとっているようである」と述べて いる。 工場法は第二次世界大戦を経て、労働組合法(昭和 20 年)、労働関係調整法(昭和 21 年)、 労働基準法(昭和 22 年)、職業安定法(昭和 22 年)、労働者災害補償保険法(昭和 22 年)、 「職業訓練法」(昭和 33 年(1958 年))(現職業能力開発促進法)に受け継がれ、近年は、最 低賃金法(昭和 34 年)、労働安全衛生法(昭和 47 年)、男女雇用機会均等法(昭和 47 年)、 雇用保険法(昭和 49 年)、労働者派遣法(昭和 60 年)、パートタイム労働法(平成 5 年)、 育児介護休業法(平成 3 年)、労働契約法(平成 19 年)など多くの関係法が整備されてい る。 以下の引用は「女工哀史」の 14 章「紡績工の教育問題」(技術偏重主義の無能)の一小 節である。 「大学校とは、一体何をなす処であるか?と実に素敵な質問である。すると彼は、何の 雑作もなく「大学とは、人をつくる処だ。」と即答した。「人をつくる」何でもない言葉の ようだが、よく咬み締めてみると意味深い金言である。 右は大学の話だが、独り大学に限らずあらゆる学校は、学問、技芸を教えたり、研究し たりするのも勿論だが、それよりも先ずもって立派な人間をこさえなければならない。学 問一方にのみ偏した教育は片輪である。学問は「人たるため」にするのでなければならな い。決して学問のための学問というようなことがあってはいけない。しかし日本の教育は、 遺憾ながら、どうやらそんな傾向にある。 これを技術教育において、最も著しく見ることができる。いわゆる「技術偏重主義」だ。 工科大学、商工、普通工業、職工徒弟学校、果ては工業補習教育に至るまで、人をつくる ことを忘れた教育のための教育をやっている。技術のみを重んじ、人格を軽んじた技術教 育偏重主義の教育だ。さながら藁人形に技術教育を施している観がある。吾人はこれを技 1 術偏重主義という。 技術とは一体、誰が行使するのであろうか?「人」である。技術家である。技術が主で、 人が属だというようなことは絶対にない。人が主で、技術は人の属である。かくあるなれ ば、技術を享けてこれを行使する技術家・・・・すなわち人を本位にさせなかったらどう して完全なる生産が行われようか。 産業のイノベーションやグローバル化の真っただ中にいる我々が担う教育訓練の本質・ 原点は何であるか。 第一は、企業で戦力となり得る技術・技能を付与することはもちろんであるが、それ以 前に「人をつくる」ことである。学生や受講者一人一人の顔・しぐさをみているか。「藁人 形に技術教育を施している」といったことはないか。 第二は、企業の人づくりや技術的課題を掴んだ上でカリキュラムから就職に至る一連の 学生指導や在職者訓練に反映しているか。企業内で勤務して実体験することは困難にせよ、 「企業の労働の真相をつかむ」ために、企業から学ぶという謙虚な気持ちで努力をしなけ ればならない。この二点は 100 年過ぎても私どもの役割の本質を教えている。 現代は 100 年前の労働者の貧困、子供の就労、長時間労働などは改善したとはいえ、OJT 指導者がいない・教育訓練の時間が無い・金が無いなどの企業や、非正規労働者・年収 200 万円に満たない勤労者が増え「格差社会」といわれ、100 年前とはまた違った雇用問題や教 育訓練の問題が山積している。細井和喜蔵氏が我々の大学校を見たとしたらどのような感 想をもつのか、常に問い直さなければならない命題である。教育訓練(職業訓練)は机上 の空論ではなく、企業の中にある課題(ニーズ・シーズ)を汲み取り我々の仕事の燃料に することが基本である。 いつでも、誰にでも、私どもが持っている人的ノウハウ・設備・教育訓練の仕組みを最 大限提供し、働く人たちが生涯に亘り幸せな勤労生活を営むため、「指導法の改善」「技術 革新に応じたカリキュラムの充実」 「就職支援・進路指導の強化」「在職者訓練の強化」「地 域企業への援助・連携の強化」などは永続的に取りくむミッションである。 工場法制定 104 年、本校の前身浜松総訓創設 47 年(昭和 43 年創設)、ポリテクカレッジ 浜松創立 33 年(昭和 57 年創設)という歴史的節目に向き合っているという幸せを感じ、 これから 10 年先 20 年先も本校が人づくりにおいて地域の核となれるよう、間もなく創設 50 年となる本校を築き上げていただいた関係者諸兄の基盤を大事にしながら、激動の二一 世紀に教職員が一丸となって静岡・東海地域におけるコミュニティカレッジを目指し果敢 にチャレンジしていくという決意を改めて確認したい。 ここに、平成 25 年度に学生と教職員の取組をまとめた「東海職業能力開発大学校浜松校 紀要第 21 号」を発刊する。学生と教職員が試行錯誤・切磋琢磨し、共に学ぶ歓びが伝わり、 関係者の皆様と課題などを共有できれば幸いである。 平成24年12月1日 校長 長瀬 2 安信 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 歯車ポンプと性能検証装置の設計・製作 Design and manufacture of performance verification equipment and gear pump 生産技術科 瀧井 勝廣・古杉 剛・山崎 直哉 小柳 翔(*1) 中尾 彰宏(*1) 野中 来記(*1) 渡辺 健太(*1) (*1):平成24年度 生産技術科卒業生 [要約] 生産技術科では、生産現場で将来中心的な存在になりえる技能・技術者を育成することを目標に 総合制作という実際のものづくりを通して、授業の中で学んだことをより実践的に展開できるように 取り組んでいる。今回その課題として、歯車ポンプと性能検証装置を選択した。歯車ポンプの設計に ついては、3 次元 CAD で歯車のモデリングを行い、これから歯溝の容積を求め吐出量を求めることか ら行った。性能検証装置についても、必要な油圧機器の選定から始めた。製作した歯車ポンプは、仕 様通りの満足のいく性能は得られなかった。今後、問題点を検討しながら継続できる課題であり、構 造的にも改良可能な課題であると思われるので、その製作経過について報告する。 1.はじめに 歯車ポンプとは、回転ポンプのうちの1つで、小型で 工、組立て、調整までの流れを体験することで、これま 構造が簡単等の有利な点が多いので、一般に容積効率や ョン能力の向上を目指すことをも目的とした。 で学んで来た設計及び加工技術に加え、コミュニケーシ 全効率が低いという短所はあるが、広く種々の方面で利 用されるポンプである。 2.ギアポンプの仕様 その原理は、 吸入側 吐出側 製作した歯車ポンプの仕様を下表に示す。 図1のよう ポンプ形式 外接歯車ポンプ に 1 対の歯 送油粘度グレード ISO VG32 車を回し, 回転数(min-1 ) 300 歯形とケー 計画吐出量(L/min) 10(166 ㎤/s) 吐出圧力(MPa) 0.8 シングの間 にはさまれ た液体を, 3.ギアポンプの設計 吸入側から 3-1.歯車の設計 図1歯車ポンプ 歯車の設計は、モジュールと歯数を決めることから始 吐出側に圧送するというものである。 めた。歯車の外径と歯幅が一定の時は、歯数を少なくす 今回の総合制作実習では、標準歯車、転位歯車、はす れば歯溝容積が増し、 1回転当たりの吐出量が増大する。 ば歯車の 3 種類の歯車を用いた歯車ポンプ及びその性能 また刃先面での摩擦損失が減少し全効率も向上する。 検証装置を設計・製作することにした。歯車は標準歯車 製作においては、モジュール 3、歯数 14 枚(標準歯車) 、 について、 報告する。 制作する歯車の設計に当たっては、 12 枚(転移歯車)とした。 次の項目で示す仕様に基づいて参考資料の理論吐出量計 仕様に基づき、下記の理論式から歯幅を求めた。 算式からの設計と、インボリュート曲線を基に CATIA に 理論吐出量(一回転あたりの吐出量) よる歯車の 3D モデルから求めた流量の比較検討から始 Vth = 60 × Q / N × ɳ めた。 Vth:理論吐出量(㎤/rev).Q:計画吐出量(㎤/s) また各班が設計・制作したギアポンプの性能(吐出圧 N:回転数(min-1).ɳv:容積効率(0.85) 力・吐出量)を検証するために性能検証装置も併せて設 計算から理論吐出量は 39.2(㎤/rev)となった、 。 計・製作することにした。 歯幅の理論式 以上のことを含め、今回の総合制作では、設計から加 Vth = 1/500×π × z ×b× ㎡ 3 b:歯幅(mm).Vth:理論吐出量(㎤/rev) z:歯数(標準歯車 14 枚). m:モジュール(3) b 上式を用いて歯幅bを求めた。 3-2.CATIA による歯車の設計 歯車ポンプは、歯溝とケーシングによる空間に輸送液 体を吸い込み、吐き出し側へ圧送するものである。この 図 5 作成した歯車と断面 空間の体積を求めることができれば、容積効率を設定し て、1回転当たりの吐出量を計算できる。機械部品とし て重要な要素である歯車については機械製図、機械要素 計算式による歯幅と CATIA で計算した歯幅とは、10mm 等で減速機構としの歯車の大きさ・歯形・歯車列の設計 程度異なる値になった。製作する歯車ポンプの歯幅にど については既に学んでいる。歯車に関する知識の習得の ちらの値を選択するか問題になった。3D でモデリングし 向上と、3 次元 CAD のモデリング技法の向上を目的とし た歯車と実際にホブ盤で試作した歯車の歯形形状は、重 た。そのためにインボリュート曲線(図 2) 、を描くこと ねるとほぼ歯形形状が一致したので、モデリングした歯 から始めた。図 3 に示すようにモジュール 3、歯数 14 枚 車の歯形曲線に問題は無いと考え、モデリングした歯車 のインボリュート歯形を作成しそれを基に歯溝を作成し、 から解析した1歯溝当たりの容積から求めた、歯幅を選 歯車を作成した。作成した歯車を図 4 示す。 択した。 標準平歯車の歯幅(mm) 計算式による値 49.5 CATIA による値 38 3-3.各部の設計 3-3-1.モータの選定 モータは、所要動力:L[KW] から選定した。 L=P・Q/60・ηv・ηm P:吐出圧(N/m2) Q:吐出量(l/min) 図 2 インボリュート曲線 ηm:械効率 ηv:容積効率、 計算した所要動力から余裕をみて 0.75(KW)のモータを 使用し、回転数は、周波数の変換により制御することに した。 3-3-2.口径の設計 吸い込み側、吐出側の口径の設計には、その流速が関係 している。吸込み側流速を1m/s、吐出側流速を2m/s として、次式によって、計算して求めた。 d=√4Q/π・v・ηv d:口径(mm) Q:流量(cm3/s) ηv:容積効率 v:流速 (m/s) 図 3 作成したインボリュート曲線 3-3-3.軸の設計 図 4 作成した歯車 駆動軸と従動軸を同じ太さにし、歯車に互換性が持たせ CATIA で設計した 3D 歯車から、歯溝の断面積を求める。 た。以下の式から軸径を決定した。 1 回転当たりの吐出量は、以下のように計算できる。こ T=60・L/2・π・N の式から歯幅を求める。 T:駆動軸に働くトルク(kg・m) N:回転数 Vth = 2×A × b × z L:動力(KW) Vth:理論吐出量(㎤/rev) .A:歯溝の断面積(mm2) d=10×3√5T/τ b:歯幅 (mm). d:軸径 z:歯数(14) 4 τ:許容せん断応力 積算流量計の内部にある回転計(図 8 赤針)が、1回転 3-3-4. 本体の設計 で1リットルの流量を示す。1周時間を計測し、歯車ポ ポンプ本体の設計は、既に決定した歯車の寸法、軸の ンプの流量を求めた。図 9 に装置全容を示す。 太さ、ポンプ口径の寸法を参考にして、それぞれに適当 な値を仮定し設計し、最終的に寸法を決定した。ケース の厚みは、吐出圧力 0.8(MPa)と低圧であるので、既に設 計されているものを参考にした。ポンプ本体は、ギヤケ ースと両サイドからの蓋、及びベースの 4 部品で構成し た。ギヤケースと片側からの蓋という構成が基本的であ 図 8 積算流量計 るが、加工を考慮して、ギヤケースを分割した。結果的 には、組立て調整で苦労することになった。設計した歯 車ポンプの 3D 構成図と製品を図 6 に示す。 図 9 歯車ポンプ性能検証装置 5.測定結果 回転数 300min-1 計画吐出量 実測値 l/min l/min 標準歯車 転位歯車 4.5 10 4.4 はすば歯車 1.2 モータの回転数を周波数制御で行ったことによるトル 図 6 歯車ポンプ構成図と製品 クの低下とポンプの吸い込み抵抗が原因で吐出圧力も、 仕様圧力に到達できなかった。 4.歯車ポンプの性能検証装置を設計・制作 性能検証装置の目的と概要 6.おわりに 性能検証装置は制作した歯車ポンプを実際に駆動し、 総合制作で、歯車ポンプを標準歯車・転位歯車・はす 吐出量・吐出圧力の測定を行うためものである。 ば歯車を用いてそれぞれものを設計・製作し、加えて 3 次元 CAD によるモデリング・解析設計された歯車を基 その性能検証装置の設計・製作を課題として取り組んだ。 にしたポンプの吐出量・吐出圧力が設計仕様通りになる その結果、加工では段取りや実際の加工が思い通りには かを検証した。製作した検証装置の油圧回路を図7に示 進まず、更に組立てでは、ギヤケースを分割したことに す。リリーフ弁、1 方向絞り弁と積算流量計を使用した よる軸心の調整に苦労することになった。また、性能検 簡単なものである。1方向絞り弁は、回路圧を設定する 証装置も工程が進む中で部品や配管の干渉があることに 目的で使用した。 気づき、修正するのに苦労した。出来上がったポンプ性 能は、3 次元 CAD による設計値を考察できるものに至ら なかった。グループ討議により、今回の結果について、 問題点そして改善すべき点を話し合いの中で見出した。 この総合制作によって、設計能力・加工技術はもちろん だが、問題解決能力やコミュニケーション能力の大切さ を実感できた。この経験を今後活かしていきたい。 参考文献 図7 歯車ポンプ性能検証装置 歯車ポンプの設計 5 工業教育図書研究会編 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 射出成形金型の設計・製作 A design and manufacture of an injection mold -小型風力発電キットの設計・製作- モーターカバーの作製 生産技術科 久保幸夫、出来俊司、中村佳史 山口祐輝(*1) 長谷川公大(*1) (*1)平成 25 年度 生産技術科卒業生 H25 年度総合製作実習で取り組んだ射出成形金型の設計・製作「小型風力発電キット」では 3 種類の成形金型を設 計・製作した。ここではその中の「モーターカバー」の成形金型について報告する。 1. はじめに 3. キット構成部品 生産技術では「モールドデザイン(プラスチック射出 成形金型) 」を科の主要目標に掲げている。今回、総合制 作実習でモールドデザインを取り組むことになり、プラ スチック射出成形金型の設計・製作課題として「作って 楽しいもの」を題材にすることとし、図 1 に示す小型風 力発電工作キットを課題に設定し設計・製作に取り組む こととした。 また、この課題を取り組むことによりプラスチック射 出成形金型の設計・製作な らびに射出成形加工まで を実践し、射出成形金型の 機構・構造を知ると同時に 機械技術者として必要な 技術力の習得および利 用・活用技術を習得するこ とを目的として実践した のでここに報告する 。 小型風力発電工作キットは図 3 に示す①モーターカバ ー、②発電モータ、③LED、④ピン、⑤ベース、⑥羽根、 ⑦軸、⑧尾翼、⑨土台の9部品からなる。 ⑤ベースは板厚 1.2mm の SUS430 をレーザ加工機で 切断後プレスブレーキにより曲げ加工仕上げ、②発電モ ータ、③LED、⑦軸の3部品は市販品を購入した。 ①モーターカバーと⑥羽根はそれぞれ一型で、④ピン、 ⑧尾翼、⑨土台の3部品を一型で、合計三型で成形する 設計構想を立てた。 ⑦ ⑧ ⑥ ⑤ ④ 図 1 完成品 ③ 2. 射出成形とは ② ① 図 3 キット構成部品 射出成形とは図 2 に示すように射出成形機シリンダ内 で溶融した樹脂を金型内に高温・高圧で射出注入し、冷 却・固化させ成形品を得る方法で、複雑な形状の製品を 大量に生産するのに適している。なお、今回使用した射 出成形機は日精樹脂工業社製の NEX30 である。 (1)シリンダ内 (2)金型に樹脂を で樹脂を溶かす 注入する 4.モーターカバーの作製 4-1 成形品設計 モーターカバーは図 4 に示すように発電モータを覆 う形状で使用樹脂はポリプロピレン(PP) 、成形品肉 厚は 2mm、幅 31mm、高さ 38mm、奥行 39mm、成 (3)冷やして成形 品を取出す 図 4 モーターカバーモデルと成形品 とPL図 2 射出成形のプロセス 6 形品容積は 9.4cm3 で収縮率は 2%で金型を設計、また 手にとっても安全であるよう角部には面取りR (丸味) をつけることとした。 また、モーターカバーとベースをネジや工具を使わ ずにスライド式組み立て構造としたため成形品にはベ ース挿入直溝 2 本と 2 方向の解放部を持つこととなり、 金型開閉動作がスムーズで樹脂漏れしない精度の高い 金型構造が必要となった。さらに、モーターカバー背 部に尾翼挿入用の角穴を設けたため、溶融樹脂がキャ ビティ充填最終端まで正常に充填され、かつ樹脂漏れ しない金型構造が必要となった。 図5 ベースとモーターカバースライド組立構造 4-2 金型設計 金型構造を確定するためパーティングライン(PL) 、 ゲート方式、突出し方式(エジェクタ) 、ガスベント、抜 き勾配、成形品の取り数および金型基本構造を検討した。 まず、設計した形状および肉厚 2mm の成形品を2プ レート金型で成形可能か、ゲートはサイドゲートで1シ ョット2個取りができ、かつキャビティ充填最終端まで 流動可能な流動比であるか、また充填圧力・充填温度の 樹脂充填およびウェルド・ヒケの発生は問題無いかをC AEの樹脂流動解析(TMD;東レ)にて検証した。 図6 充填解析(左)とガスベント解析(右) 2プレート金型のサイドゲート方式による2個取りに ついて、充填圧力・充填温度の充填解析結果をみると図 6に示すようにバランス良く約 0.5 秒で充填完了するこ とが得られた。この充填圧力・充填温度の解析結果より、 2プレート金型のサイドゲート方式、成形品取り数2個 取りとすることには問題がないことが分かった。 次に、ガスベント解析結果ではキャビティ充填最終端 にガスベントを要することが得られたことより、固定金 型キャビティの充填最終端にガスベント構造を設けてガ 7 ス焼け対策を講ずることとした。 PL PL 図7 ウェルド解析(左)とヒケ解析(右) 一方、図7に示すウェルド解析からウェルド発生位置 は充填最終端でガスベントと同一位置であるが、ウェル ドの大きさ等も踏まえて検討した結果モーターカバーの 機能を損なう要素はなく影響は無いと判断した。 また、ヒケ解析も編肉となっているベース挿入直溝の 反対側以外には発生しない結果が得られ、ほぼ予測した 結果であり、かつモーターカバーの機能には影響を及ぼ さないとの判断をした。 パーティングラインは、直線および単一平面とする ことが金型構造・製作面から最も効果的・効率的であ る。そこで図7に示す成形品端面を PL 面に決め、製 作した可動・固定両金型の PL 面を図 8 に示す。 図8 可動型板・固定型板のPL面 成形品突出しは、金型構造が単純で製作が比較的容易 である丸ピン突き出しを採用することとし、突き出し方 向はモーターカバー内部のベース挿入用直溝と同一方向 に取ることとした。また、突き出し長さが 39mm あり可 動金型コアへの抱き付き力が大きくなることから、突出 し離型抵抗を減少させるため 1 度の抜き勾配をつけ、か つコア表面の磨き処理をして確実に突き出す構造とした (図 9) 。なお、使用した丸ピンは直径 3mm、成形品一 個に 8 本ピンを配置し突き出しをした。なお、可動型板 中央に直径 5mm のスプルーロックピンを配置した。 図 9 可動金型コアと突き出しプレート・ピン 最終的に、金型構造は2プレート金型のサイドゲート 方式で 2 個取、金型キャビティ部は固定型板と可動型板 にそれぞれ入れ子を組み込む入れ子方式構造とした。な お、 使用モールドベースは双葉電子工業のMDC SC 1518 60 30 80 S –LN を選定した。 構造に仕上げれば樹脂漏れをおこさず目的とする良品の 成形品が得られる。 また、キャビティ入れ子の組み合わせ面に幅 2mm、深 さ 0.02mm のガスベントを設けてガス抜き対策をした。 図 13 可動型板と可動入れ子 図 10 可動・固定モールドベースと成形品 4-3 固定側型板の製作 金型の組み立ては、組立部品の直角、平行、位置の精 度が随所に要求されるため、部品加工も基本的に研削仕 上げ等加工精度の高い加工を施し組立精度を高くするこ とで金型寿命、成形品精度の保証につなげている。 固定側型板のキャビティ入れ子は図11 に示す2 個の部 品で構成、2 部品の組み立てはノックピン 2 本で位置決 めしたものをネジで固定し、固定型板のポケット加工部 に組み込む構造である。入れ子とポケットの組み付け関 係は「すきまばめ」の関係で、寸法公差は両側で 0.03mm 以内の「すきま」となるよう仕上げた。 4-4 可動側型板の製作 可動型板に組み付ける可動コア入れ子は、可動型板 PL 面と直角にするため接触面は研削加工仕上げ、直線部は 可動型板基準面と平行にするためノックピン 2 本で位置 決めしてネジで固定した。可動コア入れ子の位置が「ズ レ」ると、型閉行程で固定入れ子と可動入れ子が衝突し 金型が破損するので、ノックピンのリーマ穴加工では特 に位置と穴寸法に注意を払い加工を施した(図 13) 。 また、突き出しは丸ピンを使用し、エジェクタプレー トはピン取り付け穴加工の容易さと長さ寸法の一定化を 図るためスペーサ方式とした。また、丸ピン、リターン ピンの長さ調整を組立状態で研削加工にて調整をした。 5.射出成形 使用樹脂 PP(ポリプロピレン) 、樹脂温度 210℃、型 締め力 150kN、充填圧力 60MPa、充填速度 60m/sec、 保圧 30MPa にて成形した結果、予定通りに 2 個取りの 成形品「モーターカバー」を成形できた(図 4、図 10) 。 図 11 キャビティ入れ子とポケット加工 また、キャビティ入れ子のモーターカバー輪郭部のく り抜き加工は最も精度を要求されるところで、ワイヤー カット放電加工機で加工した。輪郭部のくり抜き位置決 め精度および PL 面との直角度精度を要求される難易度 の高い加工である(図 12) 。 6.おわりに これまでに学んできた設計・製図、機械加工技術、CAD /CAM などの知識を活用する総合製作実習課題として 「金型設計・製作」を取り組ませた。金型の設計・製作 自体、複合技術を必要とするものであり、機械技術習得 を目的とする学生には最適な課題であると考える。 今回、金型の設計・製作から製品成形まで一連の流れ を体験させたことにより、学生はものを作るには何が必 要か、何が大切なのか、またグループで取り組むことに よる人と人との係りで何が大事なのかを体得できたと評 価している。 [参考文献] プラスチック金型の設計・製作と射出成形技術 (社)実践教育訓練研究協会(2002 年) 図 12 ワイヤーカット加工とガスベント この固定側キャビティに可動側コアが「飛び込む」金 型構造で、型閉じ行程で可動側コアが隙間なく飛び込む 8 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 ICTを用いた大規模災害時避難所支援システムの プロトタイプ開発 Prototype development of support systems for a place of refuge using Information and Communication Technology 電子情報技術科 安部 惠一、橋本 隆志、西出 和広、天城 康晴(*1)、山口 高男(*2) 池谷 直人(*3)、加藤 守洋(*3)、佐野 友亮(*3)、岩崎 真規(*3) 野田 朋希(*3)、石塚 将人(*3)、土屋 宏晃(*3)、名倉 一樹(*3) 原田 龍之介(*3)、星野 成紀(*3)、 稲葉 賢(*3)、春名 雄介(*4) (*1) 株式会社ユー・エス・ピー (*2)アツミ特機株式会社 (*3)平成 25 年度電子情報技術科卒業生 (*4)平成 26 年度電子情報技術科卒業予定 [要約] 本研究では,日本大震災において発生した避難所における人的管理・資材管理の難しさや問題 点を教訓とし,大規模災害(M7 以上)における迅速かつ効率的な避難所の運営を実現するため,浜 松の地元企業と共同で ICT(Information and Communication Technology)を用いた避難所管理シス テムのプロトタイプ開発を行ったので、その詳細について報告する。また,本研究・開発の取組 み状況についても詳細を述べる。 1.はじめに た。 本研究は(株)ユー・エス・ピー代表取締役社長天 阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2 城氏,アツミ特機(株)代表取締役社長山口氏との共同 011年)など過去の大規模災害時において、被災者 研究の成果報告である。 の情報を収集するのに相当の時間がかかり,特にアレ ルギー情報や要介護など救援ニーズを取りまとめるの 2.関連技術と課題 は不可能 1)に近かった。また,災害発生時は,電源を 含めたインフラの喪失などによって,ICT 東日本大震災以来,企業,大学及び NPO 団体におい (Information and Communication Technology)が充分 て ICT を用いた被災者支援システムの研究及び開発が に活用できないなどの問題があった。 多く進められている。 本来ならICTの活用により迅速に被害状況や被災 類似する代表的な関連技術として,マイクロソフト 者情報を収集できるところが,実際は電力や通信等が が提供する「震災復興支援システム」3)や西宮市情報セ 2日間以上止まり発信できなかった。また,災害の備 ンターが無償提供する「被災者支援システム」4)などが えという面より防災に力点が置かれ,災害発生後の長 挙げられる。これらのシステムには災害発生からイン 期間の避難所の生活におけるQoL(Quality of Life) フラが復旧されない間はシステムを稼働できないとい 2) まで充分考慮されていない状況でした 。 う課題がある。また,従来技術では,避難所での避難 そこで,本研究では,東日本大震災において発生し 者の数,避難者の男女の割合,安否情報等といった行 た避難所における人的管理・資材管理の難しさや問題 政レベルで管理するおおまかな数字のみしか管理でき 点を教訓とし,インフラ断でも強く,ICTを用いて, ず,避難所における詳細な救援ニーズ、即ち、アレル 被災者の情報を収集し救援ニーズを含む名簿等を迅速 ギー疾患や難病の患者,障がい者,介護を要する老人、 に作成・発信できるシステムの開発を目指すことにし 障がい者、妊婦等配慮の必要な方のニーズ情報まで拾 9 発を行った。 い上げるシステムになっていないという課題が存在す る。また,他の避難所から大勢の避難者を緊急で受け フェーズ1のシステムでは実際の避難所での運用を 入れる場合でも,従来の技術では避難者の情報を入力 想定し,電力インフラが喪失した状態でも本避難所支 する際,手入力処理のため,避難所運営側で受け入れ 援システムを運用できるよう電源供給部は太陽電池と た避難者を迅速に把握できないという課題があった。 鉛蓄電池による太陽光発充電システムとした。また, 従って,本研究ではこれらの課題解決を実現するシ 鉛蓄電池を収容したケースと太陽電池に取手をつけ, 持ち運びしやすいデザインとした。晴天であれば5時 ステムの開発を行うことを目的とする。 間で充電が完了できる上、災害前にあらかじめ家庭用 3.システム概要 電源により充電しておくことも可能となっている。太 陽光発充電システムの仕様は表 1 の通りである。 図1に本研究開発の最終目標を示す。本研究の最終 目標としては,避難所内の避難者情報及び救援ニーズ 情報の収集・発信のみに限らず,図1に示すようにク ラウドシステムと連携し,ビッグデータによる被災状 況分析を行い,被害の大きい地域に自衛隊・消防等に 救助の応援要求を,NPO 協力団体等に対して食料物資 の要求を出せるようにしたいと考えている。 しかし,本研究が目指す避難所支援システムは図1 に示すように大規模であるため,約3~5年の開発計 画で,フェーズ1~3の3ステップで開発を進めるこ とで,最終目標のシステム実現を目指す計画である。 平成25年度の研究では開発 1 年目ということもあ り避難所内のデータ収集を目的としたフェーズ1の部 分の開発を行ったので,本稿の3-1節でその詳細に ついて述べる。 図2 フェーズ1の避難所支援システムの概要 表1 太陽光発充電システムの仕様 バッテリケース外寸 100mm×400mm×250mm 以内 内蔵バッテリ 型式 WP22-12 (LONG) [12V 22Ah] バッテリケース重量 8.4kg 以下 25W 太陽電池(2 枚) 型式 OPSM-SF1025 (Opt Supply) 表 2 メインサーバの仕様 図1 本研究の最終目標 3-1 フェーズ1のシステム開発 初年度(平成25年度)の研究開発は図2に示すフ ェーズ1(災害発生時から1週間以内)のシステム開 10 筐体外寸 170mm×275mm×140mm 以内 マイコンボード Raspberry Pi Model B [2.0~3.5W] NFCリーダ 型式 RC-S330 (Sony) [0.1~1.0W] マウス(メンテ用) 型式 M-BT7R (ELECOM) [0.35W] キーボード(メンテ用) 型式 SK-8115 (DELL) [0.15W] 無線子機 型式 WLI-UC-GNM [0.85W] タッチパネルLCD 型式 7DD1+1 FPC [4.0W (12V)] 難所の入退出管理システムの概要を示す。 一方、本システムの避難者データ収集用のメインサ ーバは,市販のマイコンボードである Raspberry Pi で の組込型システム(Linux)を採用し,これにデータベ ースやWebサーバ,無線ルータ等の機能を搭載し, メインサーバ自体の総消費電力をノート PC の 1/5 以下 とした。太陽光発充電システムを用いることで長時間 稼働(2日間以上)できるシステムを実現する。メイン サーバの仕様は表2の通りである。 避難所にいる避難者の情報入力(氏名,住所,被災 状況等)は,避難者自身が所有する携帯端末(ガラケ, スマホ,PC 端末等)の既存のWebブラウザソフト及び 専用ソフト(今回は Android 端末のみ)から容易に避難 者情報を入力できるよう開発した。 図4 NFCを用いた避難所の入退出管理システム 図3がスマートフォンの Web ブラウザで表示した避 難者情報の入力画面である。これは PHP アプリケーシ ョンで開発したものであるが、図3の入力画面の項目 一般的にNFCカードの代表例としては、Suic は実際に避難所で使用されたものを参考に作成した。 aやTカードなどがあるが、我々はこれらを個人認証 として有効活用できないか考えた。現代社会で生活し ている人ならNFCカード 1 枚以上は所有していると いっても過言ではない。もしも、NFCを所有してい ない人の場合でも避難所でNFCチップ内蔵のリスト バンドを配布し,腕などに付けさせることで個人認証 できるよう考案した。 NFCカード並びにNFCリストバンドに埋め込ま れたUID(User Identifier)と既に登録済みの避難 者情報とを対応づける。これにより、避難者が避難所 を入退出する際に身につけたNFCカード等を避難所 の出入り口付近に設置されたメインサーバと接続状態 のNFCリーダにかざすことで,避難者の入退出管理 を正確かつ迅速に行える。 本システムのメインサーバでは避難者の名簿を作成 する機能のほか、安否情報の作成や、配慮の必要な人 の救援ニーズ情報を作成する機能を搭載させる。後者 の救援ニーズ情報の作成機能は平成25年度の研究に おいては未対応である。また、作成した被災者名簿等 図3 Web ブラウザ上での避難者の情報入力画面 は USB フラッシュ・メモリ等の電子媒体に CSV 形式 また,避難所における避難者の入退出が流動的に変 並びに JSON 形式で保存し、外へ持ち出せる機能とし 動した場合でも避難者の入退出管理を迅速に行えるよ ている。よって、フェーズ1のシステムでは、原始的 う避難者が普段から所有するNFC(Near Field であるが人手を使って、NPO や協力団体へ救援を依頼 Communication)カード等を使った避難所の入退出管理 するシステムとした。図4に示す通信を利用してイン を行うシステムを考案した。図4にNFCを用いた避 ターネットを介して救援を依頼する機能については平 11 (3) 太陽光充電電力供給システムの開発 成26年度の開発フェーズ2で対応する予定である。 【指導教官 西出 和広】 以上のことから、避難者の状況把握,不足物資の確 担当:稲葉,星野 認などを容易にし,避難所の運営負担を低減させる。 本開発はグループワークを基本とすることから、ま 3-2 今後(平成26年度以降)の開発 ずは上記のプロジェクト毎に各役割や担当者等を決め、 平成26年度は図1のフェーズ2(災害発生時から 1ヶ月未満)のシステム開発及び,平成25年度に開 各班ごとに完成目標を立たててもらい、その後スケジ 発したフェーズ1のシステム評価・改善を行う予定で ュールの作成と進捗管理は、グループ会議及び、図5 ある。 のように毎月2回の民間企業の方を交えての共同研究 定例会(進捗報告・学習会等)を通して本開発に取り組 フェーズ2におけるシステム開発として,インター みました。 ネットが停止している際に,メインサーバのデータベ ースに登録されている避難者情報等を NPO や協力団 体等に無線で送信するための通信技術の検討を行う。 また,介護が必要な方,外国人,障がい者,アレル ギー疾患や難病の患者など,個別の対応を必要とする 人たちの名簿を作成し,避難者データと合わせて送信 できるようにする。 本システムの評価・改善としては,実稼働時間の測 定及びさらなるメインサーバの省電力化の検討,顔認 証等を用いた新たな入退出管理方法の検討,ウェアラ ブル端末を用いた避難所運営サポートシステムの提供 を目指し,平成 26 年度研究開発を行なっていく予定で ある。 図5 民間企業の方と毎月2回の共同研究の定例会 (進捗確認・勉強会等を実施)の写真 4.開発の進め方 4-1 研究開発の実施方法 4-2 全体の開発スケジュール 本避難所支援システムの開発(フェーズ1)は大き 表 3 に本開発の全体スケジュールを示す。 なシステムであることから,開発効率を考え,下記の 3つのプロジェクトに分かれ,研究室ごと、担当ごと 表 3 全体の開発スケジュール に開発を進めました. 本開発は専門課程電子情報技術科の「総合製作実習 期間(H25) 作業内容 4月~7月 勉強会(マイコン,Java,組込み Linux Ⅰ」 、 「総合製作実習Ⅱ」と放課後の時間を使って取組 など) ました。 8月~9月 システムの仕様決め及び システム設計 (1)避難所運営管理用メインサーバシステムの開発 10月~ 【指導教官 安部 惠一】 プロトタイプの開発及び評価 1月 担当:池谷,岩崎,加藤,佐野,野田 H26. 1 月 ~ アッセンブリでの評価 2月 (2)避難所管理システム向け携帯端末向けデータ入 3月 力用アプリケーションの開発 まとめ(卒業論文の作成) 【指導教官 橋本 隆志】 4月~7月の期間は本研究に着手するために必要な 担当:石塚,土屋,原田,名倉 12 基本技術を学生に習得させるため、専門過程電子情報 技術科の総合製作実習の時間を使って、講習会形式で マイコン開発、Java によるプログラム開発、組込み Linux 開発などの勉強会を実施致しました。 8月~9月は毎月2回以上の定例会を通じて、共同 研究企業パートナー企業の天城社長様、山口社長様、 並びに称賛企業・団体の方々のご意見を取り入れなが ら本避難所支援システムの仕様決め並びに全体のシス テム設計を行った。実際のシステム開発及び製作の着 手は10月スタートであり、実際に本システムのプロ トタイプを完成できたのは1月末であった。この成果 図7 平成 25 年度総合制作実習の成果物による 物を平成26年1月30日から31日に開催された公 表彰で最優秀賞(全国1位)を受賞(集合写真) 益財団法人浜松地域イノベーション推進機構主催の浜 松メッセ2014に出展し、多くの訪問者から反響を 4-3 全体の開発費用 得えることができました(図6)。 表4に本フェーズ1のシステムの開発費用の内訳を また、平成26年2月に岐阜で開催された東海ポリ 示す。今回の開発の全費用は部品代のみで、税込で約 テクビジョンにも本システムのプロトタイプのデモ機 8万円程度となった。 を出展並びに研究プレゼンテーション発表等を学生主 体で行いました。 表4 本システム(フェーズ1)の開発費用 3月は本研究のまとめと次年度の卒研生の引継ぎを 品名 兼ねて、担当した学生に卒業論文を作成させました。 価格 ケース(外装) 1.2 万円 組込みマイコンボード、液晶ディスプレ 1.8 万円 イ基板、NFC モジュール一式 鉛蓄電池(2セット) ・太陽光パネル(2 4.0 万円 セット) ・コントロール基板一式 各種パーツ類一式 1.0 万円 合計 8.0 万円 5.本開発テーマを通じての職業訓練効果の狙いにつ いて 表5に本開発テーマを取組むのに必要な前提となる 知識・技能・技術並びに、本開発テーマを通じて養成 図6 はままつメッセ 2014 に出展したときの写真 する技能・技術などを示す。 (イノベーション推進機構開催 2014 年 1/30,31) 本開発テーマは電子情報技術科の2年間で学んだ組 込み技術、ソフトウェア開発技術、電子回路技術、情 本研究の取組み等が評価され、平成26年3月20 報通信技術とった電子情報分野の柱となる技術をベー 日の当校の修了式に高齢・障害・求職者雇用支援機構 スに、電気エネルギー制御科で学ぶパワーエレクトロ の理事長から専門課程総合製作実習最優秀賞(全国1 ニクス技術や生産技術科で学ぶ機械 CAD による筐体設 位)5)を頂くことができました(図7) 。 計技術、さらに既存の電子情報技術科のカリキュラム にないデータベース構築技術等といった複合的な専門 13 トタイプ開発を行った 技術を有した内容であるため、学生にとっては就職後 この研究成果物は既に浜松メッセ 2014 及び東海ポ 即戦力になるような実践的な技術・技能の習得要素が リテクビジョン 2013 などに出展し、多くの訪問者から 含まれている。 反響を得えることができました。 また、本開発テーマは企業との共同研究と直結して いるため、本研究(総合製作実習)を開始した平成25 本研究は単に避難所支援システム開発に限らず、避 年4月から平成26年2月まで毎月2回以上のペース 難所の運営方法まで含めた総合的な管理支援システム (8月を除く)で企業と学生を交えた進捗会議及び学習 の実現を目指すものである。 今後はフェーズ2(災害発生時から1ヶ月未満)の 会を実施してきました。この進捗会議及び学習会では, 技能や技術以外の学生のヒューマンスキル(プレゼン システム開発及び、平成25年度に開発したフェーズ テーション能力,コミュニケーション能力等)を向上 1のシステム評価並びに改善を行う予定である。 させる目的で、研究開発の進捗説明等を積極的に担当 また、特に介護が必要な方,外国人,障がい者,ア 学生に行わせるなどして底上げを行ってきました。ま レルギー疾患や難病の患者など,個別の対応を必要と た組込み技術に関する最先端技術の習得の場にもなっ する人たちの救援ニーズ情報を作成し,避難者データ ており、職業訓練教育に携わる者として、大変有意義 と合わせて無線通信などで協力 NPO 団体や自治体へ な職業訓練教育環境を提供できたといえます。 送信できるようにしていきたいと考えている。 また、専門過程の職業訓練教育の底上げを図れるよ 表5 前提となる知識・技能・技術並びに本開発テー う民間企業及び団体、地元大学などを巻き込んで、本 マで養成する技術・技能について 研究プロジェクトを実施していきたいと考えている。 前提となる科目または知識、技能・技術 7.謝辞 組込みソフトウェア基礎実習、電子回路、デジタル回 路基礎実習、アナログ回路基礎実習、マイクロコンピ ュータ工学、マイクロコンピュータ工学実習、インタ 最後に、本研究を進めるにあたり、多大なご協力を ーフェイス技術、インターフェイス製作実習、組込み 頂きました株式会社ユー・エス・ピーの天城様、アツ システム工学、組込みシステム実習、センサ工学、計 ミ特機株式会社の山口様、和歌山職業訓練支援センタ 測制御実習、移動体通信技術、機械工作実習、基礎製 ー訓練課長 岡崎仁氏またご協賛頂きました梅澤無線 図実習 電機株式会社様、日本Androidの会浜松支部様、 本研究開発によって養成する知識、技能・技術 静岡大学情報学部准教授 峰野博史様に深く感謝申し 組込み型マイコン開発技術、データベース及び Web 上げます。 サーバの構築技術、 PHP を用いた Web アプリケーシ [参考文献] (1)内閣府(防災担当): “ 東日本大震災における災害 応 急 対 策 の 主 な 課 題 ”, 平 成 24 年 7 月 , <http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg ョン開発技術、オープンプラットフォーム系アプリケ ーションの開発技術、電子回路設計、モバイル系ネッ トワーク技術、機械設計技術、機械加工技術、データ /5/pdf/3.pdf> 処理技術、ユニバーサルデザイン (2)今井 建彦 : “ 東日本大震災から課題とその対応 の現状(自治体 ICT の側面から) ” ,仙台市総務企 画局情報政策部,(2011). (3)東日本大震災被災地支援への取り組みについて <http://www.microsoft.com/ja-jp/citizenship/d isasterrelief/default.aspx> (4)西宮情報センター:被災者支援システムの概要 <http://www.nishi.or.jp/homepage/n4c/hss/> (5)平成 25 年度専門課程総合制作実習の成果物表彰, 6.おわりに 本研究では,日本大震災において発生した避難所に おける人的管理・資材管理の難しさや問題点を教訓と <http://www.jeed.or.jp/js/kousotsusya/polyte し,大規模災害(M7 以上)における迅速かつ効率的な避 ch_co/hyosho_h25_senmon.html#01> 難所の運営を実現するため,浜松の地元企業と共同で ICT を用いた避難所管理システムのフェーズ1のプロ 14 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 ICTを用いた避難所支援システム向け 組込み型メインサーバの開発 Development of embedded server and support systems for a place of refuge using Information and Communication Technology 電子情報技術科 安部 惠一、天城 康晴(*1) 池谷 直人(*2)、加藤 守洋(*2)、佐野 友亮(*2) 岩崎 真規(*2)、野田 朋希(*2) (*1) 株式会社ユー・エス・ピー (*2)平成 25 年度電子情報技術科卒業生 [要約] 日本大震災において発生した避難所における人的管理・資材管理の難しさや問題点を教訓とし,大 規模災害(M7 以上)における迅速かつ効率的な避難所の運営を実現するため,浜松の地元企業と共同で ICT(Information and Communication Technology)を用いた避難所管理システムのプロトタイプ開 発を行った。本総合製作課題では,その避難所支援システムで使用する避難者データを収集・管理す るメインサーバの開発を行ったので、その詳細について報告する。 1.はじめに 今回開発するメインサーバシステムは、以下の機能 を実現することを目的とした。 本総合制作実習では、東日本大震災において発生し ①各種情報端末(スマホ,携帯電話,パソコン等) た避難所における人的管理・資材管理の難しさや問題 に搭載しているWEBブラウザから避難者の 点 1),2)を教訓とし,今後の災害(M7 以上)における迅速 情報を手軽に入力出来ること かつ効率的な避難所の運営を実現するため、ICT ②ソーラーパネルによる畜電源供給システムを (Information and Communication Technology)を用い 使用した場合,長時間メインサーバを稼働で て,被災者の情報を収集し救援ニーズを含む名簿等を きるよう組込み型マイコンを用いて省電力化 迅速に作成・発信できるシステムの開発を目指すこと (消費電力全体約8W 程度)を実現すること にした。 ③NFCリーダ(Near Field Communication)を用 本避難所支援システムの開発は大規模なシステムで いて、搭載避難所における避難者の入退出が流動 あることから、開発効率を考え、下記のとおり3つの 的に変化した場合でも避難者の入退出管理を迅速 プロジェクトチームに分かれ、研究室ごと、担当ごと に自動で行えるよう実現すること に開発を進めました。 (1)避難所運営管理用メインサーバシステムの開発 2.関連技術と課題 チーム(指導教官:安部) (2)避難所管理システム向け携帯端末向けデータ入 東日本大震災以来,企業,大学及びNPO団体にお 力用アプリケーションの開発チーム(指導教官:橋本) いて ICT を用いた被災者支援システムの研究及び開発 (3) 太陽光充電電力供給システムの開発チーム が多く進められている。 (指導教官:西出) 類似する代表的な関連技術として、マイクロソフト が提供する「震災復興支援システム」3)や西宮市情報セ 我々の開発チームは上記の(1)であり、開発目的 ンターが無償提供する「被災者支援システム」4)などが は約 400 人規模の避難所を管理するための避難者情報 挙げられる。これらのシステムには災害発生からイン の収集を目的としたメインサーバの開発である。 フラが復旧されない間はシステムを稼働できないとい 15 うな機能を追加することにした。 う課題がある。また、従来技術では、避難所での避難 者の数、避難者の男女の割合、安否情報等といった行 政レベルで管理するおおまかな数字のみしか管理でき ず、避難所における詳細な救援ニーズ、即ち、アレル ギー疾患や難病の患者,障がい者,介護を要する老人、 障がい者、妊婦等配慮の必要な方のニーズ情報まで拾 い上げるシステムになっていないという課題が存在す る。また、他の避難所から大勢の避難者を緊急で受け 入れる場合でも、従来の技術では避難者の情報を入力 する際、手入力処理のため、避難所運営側で受け入れ た避難者を迅速に把握できないという課題があった。 従って,本総合製作実習ではこれらの課題解決を実 図1 ICT を用いた避難所支援システムの概要(図の 現するシステムの開発を行う。 中央部分が今回開発したメインサーバ) 3.システム概要 図2がスマートフォンのWEBブラウザで表示した 避難者情報の入力画面である。これはPHPアプリケ 図1に避難所支援システムの全体概要を示す。我々 ーションで開発したものであるが、図2の入力画面の が開発したメインサーバの概要図は、図1の中央部分 項目は実際に避難所で使用されたものを参考に作成し である. た。 メインサーバのマイコンボード(MCU)には、 Raspberry Pi(以下RPIと呼ぶ)を使用した.このR PIに Raspbian というディストリュビューション (Linux OS) を 実 装 し , G U I (Graphical User Interface)アプリケーションを起動できるシステムと した. 避難所に避難してきた避難者情報(名前、住所 等)をこの RPI に登録できるようSQLiteでDB (Data Base)サーバを構築した。また、避難者が所有す るノート PC や携帯電話に搭載された Web ブラウザから も避難者情報を入力できるようRPIにApache でWEBサーバを構築し,避難者情報を入力できる専 用のPHPアプリケーションを搭載することで、各種 情報端末に対応できるシステムとした。 また、本開発のメインサーバには、抵抗膜方式のタ ッチパネル型液晶ディスプレイ(7 インチサイズ)を搭 載させているため,メインサーバ本体から避難者情報 を直接入力できるようにした。メインサーバにおいて データ収集した避難者情報をGUIアプリケーション でCSV形式あるいはJSON形式のファイルに変換 図2 Web ブラウザ上での避難者の情報入力画面 して、USBフラッシュメモリ等のメディア媒体に保 存してデータを持ち出せるようにした。これはメイン また,避難所における避難者の入退出が流動的に変 サーバがインターネットに接続できない状況下におい 動した場合でも避難者の入退出管理を迅速に行えるよ ても行政機関等に報告できるようにするため、このよ 16 う避難者が普段から所有するNFC(Near Field 始的であるが人手を使って、NPOや協力団体へ救援 Communication)カード等を使った避難所の入退出管理 を依頼するシステムとした。図3に示す通信を利用し を行うシステムを考案した。図4にNFCを用いた避 てインターネットを介して救援を依頼する機能につい 難所の入退出管理システムの概要を示す。 ては平成26年度以降対応する予定である。 4.開発の進め方 本総合製作課題では,スムーズに開発が進められる ように次のように各役割を分担して開発作業を進めた。 (1)組み込み Linux の実装及び Linux によるGUI アプリケーション開発(担当:加藤) (2)PHPアプリケーション開発(担当:岩崎、野田) (3)筐体設計及び制作(担当:池谷、佐野) 組込みマイコン開発では Linux のクロス開発環境の 構築、ディストリビューション(Ubuntu)のバージョン 動作の評価実験、各種サーバ(DB、WEB、DNS等) 図3 NFCを用いた避難所の入退出管理システム 構築、NFCリーダのドライバ(ソフトウェア)動作 評価などについては全員で対応しました。 一般的にNFCカードの代表例としては、Suic aやTカードなどがあるが、我々はこれらを個人認証 Linux のGUIアプリケーションは Lazarus という として有効活用できないか考えた。現代社会で生活し クロスプラットフォームのGUIプログラミング総合 ている人ならNFCカード 1 枚以上は所有していると 開発環境を用いて開発した。この Lazarus のプログラ いっても過言ではない。もしも、NFCを所有してい ム言語は Pascal がベースとなっています。 この Pascal ない人の場合でも避難所でNFCチップ内蔵のリスト 言語は専門課程電子情報技術科の授業では勉強してい バンドを配布し,腕などに付けさせることで個人認証 ないプログラム言語であったが、学生自身で書籍やイ できるよう考案した。 ンターネット等で調べさせながら技術・技能を習得さ せることにした。これにより、学生に問題解決能力を NFCカード並びにNFCリストバンドに埋め込ま 身につけさせることができたと考えられる。 れたUID(User Identifier)と既に登録済みの避難 者情報とを対応づける。これにより、避難者が避難所 を入退出する際に身につけたNFCカード等を避難所 の出入り口付近に設置されたメインサーバと接続状態 のNFCリーダにかざすことで,避難者の入退出管理 を正確かつ迅速に行える。 本システムのメインサーバでは避難者の名簿を作成 する機能のほか、安否情報の作成や、配慮の必要な人 の救援ニーズ情報を作成する機能を搭載させる。後者 の救援ニーズ情報の作成機能は平成25年度の総合製 作実習においては未対応である。また、作成した被災 者名簿等はUSBフラッシュメモリ等の電子媒体にC SV形式並びにJSON形式で保存し、外へ持ち出せ 図4 今回開発した避難所支援システム用 る機能としている。よって、本支援システムでは、原 メインサーバ(タッチパネル付き)の写真 17 構主催の浜松メッセ2014に出展し、多くの訪問者 から反響を得えることがきました(図5)。 メインサーバの筐体設計には、機械設計CADソフ また、平成26年2月に岐阜で開催された東海ポリ トであるAUTOCADで設計を行った。 図4に今回開発したメインサーバの写真を示す.完 テクビジョンにも本システムのプロトタイプのデモ機 成したメインサーバの筐体寸法は、持ち運びができる を出展並びに研究プレゼンテーション発表等を学生主 ように高さ 140mm、横幅 225mm、奥行き 190mm以 体で行いました。 3月は本研究のまとめと次年度の卒研生の引継ぎを 内のデザインとしました。 兼ねて、担当した学生に卒業論文を作成させました。 5.開発スケジュール 表1に本開発の全体スケジュールを示す。 表 1 全体の開発スケジュール 期間(H25) 4月 ~7 月 作業内容 マイコン制御の勉強 Java の勉強 Java を使った Android 開発 8月 ~9 月 10 月 システムの仕様決め システム設計 図5 はままつメッセ 2014 に出展したときの写真 プロトタイプの設計・製作 (イノベーション推進機構開催 2014 年 1/30,31) ~12 月 6 全体の開発費用 ・浜松メッセ 2014 展示(1/30-31) ・東海ポリテクビジョン(岐阜)で H26.12 月 ~2 月 3月 表2に本システムの開発費用の内訳を示す。今回の 発表・展示(2/21-22) ・総合制作実習発表会(2/28) 開発費用は部品代のみで、税込で約2.6万円程度と まとめ(卒業論文作成) なった。 多くの利用者に本避難所支援システムを使用しても 4月~7月の期間は本研究に着手するために必要な らうことを想定し、今回できるだけ安価な部品を選定 基本技術を学生に習得させるため、専門過程電子情報 し,ノートパソコンよりも非常に安価なサーバシステ 技術科の総合製作実習の時間を使って、講習会形式で ムを構築できたと考えられる。 マイコン開発、Java によるプログラム開発、組込み 表2 本システムの製作費 Linux 開発などの勉強会を実施致しました。 品名 8月~9月は毎月2回以上の定例会を通じて、共同 単価 研究企業パートナー企業の天城社長様、山口社長様、 組込型マイコンボード 並びに称賛企業・団体の方々のご意見を取り入れなが (RaspberryPi TypeB) 512MB ら本避難所支援システムの仕様決め並びに全体のシス タッチスクリーン液晶 10,000 テム設計を行った。実際のシステム開発及び製作の着 WiFi モジュール 1,000 手は10月スタートであり、実際に本システムのプロ ケース(外装) 5,000 トタイプを完成できたのは1月末であった。 NFC リーダー(RC-S330/SONY) 3,000 各種パーツ類 3,000 合計金額 26,000 この成果物を平成26年1月30日から31日に開 催された公益財団法人浜松地域イノベーション推進機 18 4,000 させる目的で、研究開発の進捗説明等を積極的に担当 学生に行わせるなどして底上げを行ってきました。ま 7.本総合製作課題を通じての職業訓練効果 た組込み技術に関する最先端技術の習得の場にもなっ ており、職業訓練教育に携わる者として、大変有意義 表3に本開発テーマを取組むのに必要な前提となる な職業訓練教育環境を提供できたといえます。 知識・技能・技術並びに、本開発テーマを通じて養成 する技能・技術などを示す。 6.おわりに 本開発テーマは電子情報技術科の2年間で学んだ組 込み技術、ソフトウェア開発技術、電子回路技術、情 報通信技術とった電子情報分野の柱となる技術をベー 日本大震災において発生した避難所における人的管 スに、生産技術科で学ぶ機械CADによる筐体設計技 理・資材管理の難しさや問題点を教訓とし,大規模災 術、さらに既存の電子情報技術科のカリキュラムにな 害(M7 以上)における迅速かつ効率的な避難所の運営 いデータベース構築技術等といった複合的な専門技術 を実現するため,浜松の地元企業と共同でICTを用 を有した内容であるため、学生にとっては就職後即戦 いた避難所管理システムのプロトタイプ開発を行い、 力になるような実践的な技術・技能の習得要素が含ま そのなかで本総合製作課題では,メインサーバの開発 れている。 を行いました。 今後は平成25年度に開発した避難所支援のシステ ムの全体評価並びに改善を行う予定である。 表3 前提となる知識・技能・技術並びに本開発テー また、特に介護が必要な方,外国人,障がい者,ア マで養成する技術・技能について 前提となる科目または知識、技能・技術 レルギー疾患や難病の患者など,個別の対応を必要と 組込みソフトウェア基礎実習、電子回路、デジタル回 する人たちの救援ニーズ情報を作成し,避難者データ 路基礎実習、アナログ回路基礎実習、マイクロコンピ と合わせて無線通信などで協力 NPO 団体や自治体へ送 ュータ工学、マイクロコンピュータ工学実習、インタ 信できるように実現していきたいと考えている。 ーフェイス技術、インターフェイス製作実習、組込み 7.謝辞 システム工学、組込みシステム実習、センサ工学、計 測制御実習、移動体通信技術、機械工作実習、基礎製 最後に、本研究を進めるにあたり、多大なご協力を 図実習 本研究開発によって養成する知識、技能・技術 頂きました株式会社ユー・エス・ピーの天城様、アツ 組込み型マイコン開発技術、データベース及び Web ミ特機株式会社の山口様、和歌山職業訓練支援センタ サーバの構築技術、 PHP を用いた Web アプリケーシ ー訓練課長 岡崎仁氏またご協賛頂きました梅澤無線 ョン開発技術、オープンプラットフォーム系アプリケ 電機株式会社様、日本Androidの会浜松支部様、 ーションの開発技術、電子回路設計、モバイル系ネッ 静岡大学情報学部准教授 峰野博史様に深く感謝申し トワーク技術、機械設計技術、機械加工技術、データ 上げます。 処理技術、ユニバーサルデザイン [参考文献] (1)内閣府(防災担当): “ 東日本大震災における災害 応 急 対 策 の 主 な 課 題 ”, 平 成 24 年 7 月 , <http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg また、本総合製作課題は企業との共同研究と直結し ているため、本総合製作実習を開始した平成25年4 /5/pdf/3.pdf> (2)今井 建彦 : “ 東日本大震災から課題とその対応 の現状(自治体 ICT の側面から) ” ,仙台市総務企 画局情報政策部,(2011). (3)東日本大震災被災地支援への取り組みについて <http://www.microsoft.com/ja-jp/citizenship/d isasterrelief/default.aspx> (4)西宮情報センター:被災者支援システムの概要 <http://www.nishi.or.jp/homepage/n4c/hss/> 月から平成26年2月まで毎月2回以上のペース(8 月を除く)で企業と学生を交えた進捗会議及び学習会 を実施してきました。この進捗会議及び学習会では, 技能や技術以外の学生のヒューマンスキル(プレゼン テーション能力,コミュニケーション能力等)を向上 19 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 自動ケーブル切断機「線切れ~る」の製作 ~測長、切断の自動化~ Manufacture of automatic cable cutting machine[SENKIREERU]~Automation side length of cut~ 所属科名 電気エネルギー制御科 蔭山 哲也 (*1)山田 勇斗 (*1)江川 遼吾 (*1)河合 利樹 (*1)近藤 恭兵 (*1)柴原 安美 (*1)平成 26 年度電気エネルギー制御科卒業生 [要約] 自動ケーブル切断機「線切れ~る」 (以下、本装置)は、主に屋内配線ケーブル工事にて使用す るケーブルを、自動的に切断することを目的に開発した装置である。本装置は、自動で測長を行 い、指定した長さ及び本数で切断する事ができ、これらの制御にはPLCを用いている。電気エ ネルギー制御科では、PLCを用いた制御方法について長期間にわたり訓練する。本装置は、こ れら訓練にて習得する技術を活かし、その技術の具体的利用を体験しながら製作したものである。 1.はじめに を事前に指導員が準備することがあり、当短大と同じ ように、この作業で多くの時間を要し、これらが負担 現在、流通している機械製品のほとんどが何らかの となっていた。 省力化・自動化がされている。 これらの作業の負担軽減を第一の目的とし、制御方 こうした背景の中で、電気エネルギー制御科では、 法や制御装置の具体的な使用方法などを、より深く理 これらの設計・製作又は保守管理の業務に従事できる 解することができると考え、自動ケーブル切断機の製 ように、1本目の柱として制御技術を身につけるため 作を行うこととした。 訓練を行っている。有接点による電動機制御に始まり、 PLCを使用しコンベアや空気圧アクチュエータの制 2.概要 御、このほか、高機能ユニットを利用して、タッチパ 本装置の動作概要は図 1 の通りである。ケーブルを 装置にセットし、タッチパネルより長さ・本数を入力。 その設定に応じてケーブルを測長・切断する。 装置概要を表1に、主な使用機器を表2に示す。 ネル、他のPLCとの通信、A/D、D/Aによる読 み取りなどについて訓練を行ってきた。また、2本目 の柱となる電気配線工事、また電力管理の保守につい ても同様に訓練を進めており、1学年時には、電気配 線工事による訓練を多く取り入れている。この電気配 ケーブルをセット 線工事の訓練では、ケーブルを指定した長さで準備す る作業がある。この作業に時間を多く費やしたことが タッチパネルで 装置開発のきっかけとなる。この作業では、生徒が中 設定入力 心となり、ケーブルをスケールなどを利用し長さを測 りペンチ等により切断を行っていたが、この長さを測 り切断する作業を自動化することにより、配線練習の 自動で測長・切断 時間を増やすことができると考えた。 また、職業訓練支援センターでも、電気配線工事を 終了のブザー カリキュラムとした実施施設が多くあり、特に仕上が ケーブルを取り出す り像の確認として行う習得度確認課題においては、同 様にしてこのようなケーブルを切断する作業が行われ 図 1 動作概要 ている。習得度確認課題では、時間制限を設けてその 出来栄えや時間などにより点数化するため、ケーブル 20 なり、実際の組み立てもスムーズに行うことができた。 各部品を班員が分担して、作図しそれらを組み合わせ ることで、2D-CADでは見抜くことのできなかっ た、部品同士などの干渉や、工具を使用して組み付け ることが可能かどうかなどを把握することができた。 また、主にカバーとして使用するアクリル部品など については、従前の2D-CADを利用し、レーザ加 工機により加工を行った。 始めに、フレーム部品を作画する方法を示し、それ らを用いた組み上げ方などを説明後、各部品作成にと りかかった。副効果として、部品を正確に仕上げる事 により、干渉を見抜く必要があったため、作図してい くにつれ、互いに責任感が生まれること。また、各自 が作成した部品が組み上げられていくことで、達成感 や一体感が生まれた。 表1 装置概要 大きさ H530×W800×D520[mm] 電源 AC100[V] 対象 VVF1.6-2C、1.6-3C、2.0-2C 長さ 200~2000[㎜]誤差+20[㎜]以内 加工速度 1 分間に 2m ケーブル 4 本切断 ・作業終了時、電線不足の際はブザーを鳴らす。 ・安全性に配慮し、全体をアクリルで覆う。 表2 主な使用機器 機器 平行開閉形エアチャック 型番 個数 MHZ2-25D-M9BWV 2 US425-401+4GN9K 1 CDM2E25-200Z-B59W 1 スピードコントロールモータ 4.駆動部 +ギヤヘッド エアシリンダ 5名体制の元で実施を行うため、人数の割り振りを 行った。この他、加工速度を上げることや人為的なエ ラーを少なくするために、レーザ加工機に専属1名、 機械加工に1名、3D-CADの責任者を1名として 割り当てた。制御の主となる駆動部は、電線を送る機 構と、切断する機構に分け設計・製作を行った。 RCP3-SA3C-I-28P 電動シリンダ 1 -4-150-P3-P CPU ユニット Q02HCPU 1 高速カウンタユニット QD62 1 タッチパネル AGP3500-T1-AF 1 4-1 切断機構 動力としてエアシリンダとモータを使用する案があ ったが、実習を通して得た技能・技術を活かして製作 したかったこと、ビニル被覆から銅線まで一度に切断 するため、材質の違いによる力の加え方を、空気の圧 縮性を用い切断すること、また、ケーブルを固定する 機構を同じく空気の圧縮性を用いて把持するために空 気圧源を使用することとしたため、エアシリンダを使 用することにした。 ケーブルの切断には、電子ばねばかりを使用して計 測し、マージンを1.5倍とした約1200[N]の 力が必要であることがわかった。この出力が得られる エアシリンダは口径が大きく、装置が大きくなってし まうため、10倍のリンク機構を使用することでトル クを得ることにした。これにより必要な出力は120 [N] 、ストロークは200[mm]以下となり、これ を補うことのできるSMC社製のクレビス型エアシリ ンダCDM2E25-200Zを使用することにした。 カッターは、調達が容易な市販のケーブルカッタを 使用した。リンク機構とするには長さが足りないため、 柄の部分は砥石切断機により切断後、ワイヤー放電加 工機により取り付け穴を設け、加工が行い易いSS4 00の板を固定した。 砥石切断機は、フレームを任意の長さに切断するこ とができるため、使用方法を説明後、この柄について も切断を行った。また、柄を固定するためのSS40 0の機械加工には、生産技術科の指導員の指導のもと、 半自動のフライス旋盤により穴あけを行った。 3.設計 当初は2D-CADソフトのECAD DIOを使 用して設計し、骨組みや部品の配置などを行っていた。 しかし、各部品の前後や重なり方など、部品間の干渉 がわかりくいため、パソコンの環境的に構築の行い易 い無償の3D-CADソフトであるGoogle S ketchup(図2)を使用した。 図2 Google Sketchupによる設計例 このソフトでは、使用している部品を一覧表示する 機能や、フレーム間を固定するブラケットの個数、同 サイズのフレームの使用数など、使用部品点数を表示 することができる。このため、部品発注ミスも少なく 21 4-3 ケーブルの位置決め機構 ケーブルの送り・切断の際に、それぞれの機構での 4-2 送り機構 柄の穴開け時に使用したワイヤー放電加工機からヒ ントを得て、ローラによる送り機構とした。2つのロ ーラを使用し、一方のローラを固定し、もう片方のロ ーラはバネで、固定されたローラ側に力を加え、ケー ブルを挟み込む機構とした。また、ローラを抑える力 は、ばねにより行うが、この調整が可能なようにねじ の先端にばねを取り付ける方法とした。それぞれのロ ーラなどは、2枚のアクリル壁にシャフトを通し固定 する方法とした。 ケーブルの測長方法は、ケーブルを挟むローラをさ らに一組設け、片方のローラにロータリーエンコーダ を用いることで、測長を行う仕組みとしている。装置 の写真を図3に示す。 ケーブルの位置決めが重要であることが分かった。こ のためケーブルを送るために必要な部品や機構を調べ、 フレアによる方法とすることとした。 本装置では切断対象である3種類の大きさのケーブ ルに対応しなければならず、市販のものではないため、 アクリル板のレーザ加工と3D-CADであるCAT IA(図5)を使用し、3Dプリンタを用いて製作し た部品とを組み合わせて製作した。 図5 CATIAによるモデリング 図3 ローラによる送り機構 ケーブルを送る為に必要な力を、図4の簡易的な装 置を作成後、電子ばねばかりを用いて計測しローラ半 径から算出した。また、理想回転速度は、目標とする 加工速度より算出し、50[min-1] 、必要なトルク は0.45[N・m]とし、販売されているモータか ら選定した。 さらに速度が速い場合での調整が行えるよう、10 ~133[min-1]までの速度可変が可能な、出力 0.72[N・m]のオリエンタルモータ社製スピー ドコントロールモータUS425-401を使用する ことにした。 図6 制作したフレア 図6のように、入り口の部分がケーブルごとに大き さを調整しており、上から順にVVF1.6-2C用 VVF1.6-3C用、VVF2.0-2C用に対応 している。 組み上げる方法についても検討を重ね、できるだけ 部品点数の少ない形となるように、Google S ketchupによる設計を重ね、最終的にこれらを CATIAへ移し替えて製作を行った。また、同様に 図4 簡易トルク計測装置 切断部にもフレアを製作した。 22 ルを送ることが出来なかった寸法部分である。 また、ケーブルを把持する部分においては、アクリ ルを加工し、図7のようにケーブルを把持する機能と ケーブルを持ち上げ、ケーブルを送る際にケーブルカ 表3 指示値との誤差 ッタの刃に引っかかってしまうことを防止した。 ケーブル長さ[mm] ※送り速度 50[min-1]の時 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 1.6-2C +15 +20 +18 +10 +10 +10 +12 +10 +10 +11 1.6-3C +13 +18 +10 +12 +10 +11 +10 +15 +15 +11 2.0-2C +20 +10 この他、2000 ミリメートルほどの長いケーブルの取 り出しがうまくできずに、エラーを起こしてしまうこ とがある点、安全面の配慮ではまだ不十分であるとい 図7 ケーブル把持部のフレア う点において改良が必要であると考える。 5.制御部 6.おわりに PLCには、ロータリーエンコーダ接続のための高 今回の設計、製作を通して、社会に通じる実践技術 速カウンタ、タッチパネルとの接続に使用するシリア 者になるように基礎的な知識、技術・技能を定着及び ルコミュニケーションユニットのほか、入出力点数が 向上させること、また、コミュニケーション能力を向 制作過程において増えることを考慮し、ビルディング 上させることができた。そして物作りの大変さ、楽し ブロックタイプの三菱電機社製Q02Hを使用するこ さを伝えることができた。装置の目的が当初からはっ ととした。 きりとわかりやすいものであったため、取り組みとし 測長には、1回転あたり2000パルスを出力する ては良かったものだと考えている。一方で、今回の装 ロータリーエンコーダのパルス数及び、ケーブルを送 置が、電気エネルギー制御科として初めての製作とな るローラの直径により、ケーブルの長さを求めた。 り、また、同様に私自身も初めての総合製作実習であ ケーブル長= ローラ直径 2000 π ったため、1年を通しての時間配分など進め方には苦 出力パルス値 労をし、生徒にも遅くまで残らせてしまうなど様々に この他、加工が終了した後や、ケーブルがなくなっ 反省する点があった。進め方や管理の仕方など多くの た場合、ケーブルを送ることができなくなった場合に 収穫があり、次年度以降の取り組みの中に反映してい ブザーを鳴らすようにした。また、操作方法を示すた きたい。 め、装置の立ち上げから切断までの工程をタッチパネ 最後に、自動ケーブル切断機の製作にあたり、アド ル画面にて示し、操作方法をわかりやすくした。 バイスを下さり、加工指導、道具提供までしてくださ った機械系指導員の皆様に感謝申し上げます。 6.結果 装置を稼働させ、実測を行った結果を表3に示す。 [参考文献] 数値は、加工されたケーブルの長さの平均で、制御方 熊谷英樹「新実践自動化機構図解集」日刊工業新聞社 2010 年 法を、ケーブルの送り値が指示された値より+10 ミリ 熊谷卓/西田真美「自動化機構 300 選」日刊工業新聞社 2011 年 メートル大きくなった時に、モータを止めるようにし 高橋徹「空気圧の基礎と応用」東京電機大学出版局 1995 年 ている為、いずれの場合でもケーブル長に+の誤差を生 じさせる結果となった。色のついた部分には、ケーブ 23 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 ベトナム国研修報告 ~サーボモータ及びステッピングモータ技術~ Vietnam Country training report ~Servo Motor and Stepper Motor Technique~ 電気エネルギー制御科 小沢 浩二 1.はじめに 2014年9月24日から10月10日までの約3 週間、ベトナム「ハノイ工業大学技術者育成支援プロ ジェクト」におけるベトナム国別研修「サーボモータ 及びステッピングモータ技術」を実施したので報告す る。 2.プロジェクトについて JICAはベトナム政府との合意に基づき、200 0年4月に技術協力プロジェクトがスタートした。第 1期技術協力プロジェクト(2000年4月~2005 図1 ハノイ工業大学 年3月までの5年間)により、教育訓練機材が整えら 識・技術・ノウハウをベトナムの他校へ普及させるた れ、機械加工・金属加工・電子制御分野の2年制職業 め、指導員研修を開発、実施することになっている。 訓練コースが新設された。これらのコースは「ベトナ ム日本センター(VJC) 」として確立され、年間35 3.計画 今回のプロジェクトは、受入施設、機構本部、JI 0名の技能者を輩出。日系企業の評価も高い。 第2期技術協力プロジェクト(2010年1月~20 CAとが一体となった取組みである。5月末に機構本 13年1月までの3年間)では、”産業界の人材ニーズ 部と打ち合わせを実施し、国際関係業務、今回実施す に沿った教育訓練カリキュラムの策定・実施能力の向 るプロジェクトの内容・実施経過、研修受入手続き(提 上”を目的としている。具体的な活動としては、職業訓 出書類、期日等)の確認、研修実施計画、テキスト等 練コースでは、企業ニーズに基づいた訓練カリキュラ について説明があった。 ムの改善や就職支援、インターンシップを行っている。 使用するテキストをベトナム語(英語)に翻訳する 企業の在職者に対しては、機械保全や電気保全などの ために、事前に作成しなくてはならないこと、研修後 短期訓練コースの実施や技能者の地位向上のための技 にベトナムで活用するための教材開発を作成する必要 能評価の試行などを実施した。 があることが通常の訓練とは特に異なっていた。また、 第3期技術協力プロジェクト(2013年6月から 訓練技法についても本校にて実施することになり、内 2016年6月までの3年間) 「指導員育成機能強化」 容の検討・テキストを作成することになった。 プロジェクトでは、これまで日本が支援してきたハノ 技能・技術を習得するためのテキストは在職者訓練、 イ工業大学が、日本レベルの職業訓練校の先行モデル 学卒者訓練で使用しているもの基本にした。特に初め として、ベトナム国内の他に職業訓練校に対して、適 てステッピングモータ・サーボモータの技能技術を習 切に技術移転が実施できることを目的としている。具 得する時に難しいとされる設定・配線について追記し 体的には、研修員が日本での研修等から得た知見・知 た。 24 訓練技法について、教材開発の一般的な手法につい ては、職業能力開発総合大学校 能力開発専門学科 特任准教授 村上智広氏より、 “教材ストーリーの設 計”の英語版の使用許可を得ることができため研修に て活用することにした。また、コース開発時の経緯や 苦労した点を伝えたいと思う。 教材作成するに当たって、ステッピングモータ・サ ーボモータに関する機器は精度が求められることより、 高価であり、予算内で今回の実習にて使って機器を購 図2 開講式 入することは出来なかった。そのため、設定・配線を 重視し、ベトナムに戻ってから購入・実施できる実習 トウェア操作に関しての技能・技術は習得しているこ 装置を選定を検討したため、多くの時間を費やした。 とがわかり、サーボモータ及びステッピングモータの 特にコントローラは位置決めユニットを使用して制御 基本技術を理解から実施することとした。 授業は、ベトナム語(英語)のテキスト、機器をプ する方式とした。 ロジェクターに表示しながら実施した。また。実習機 また、教材作成のねらい、装置概要(選定方法) 、教 器は1人1台を準備した。 材作成手順等をまとめたテキストも作成した。 下記のカリキュラムに沿い実施していった。 日本の技能・技術を確認してもらうために、工場見 学を検討した。一般的な窓越しからの見学ではなく、 ・制御方式の種類 実際に稼働している機器に触れることができるような ・位置決め制御の仕組み 工場、浜松を代表する企業を選定した。しかし、住所 ・構成要素の概略 が特定できない研修生は、見学の受け入れを断られる ・サーボモータ、ステッピングモータの特徴・原理・ 種類 ことあり(外為法等)苦戦したが、最終的に浜松ホト ・位置決めコントローラ概要 ニクス株式会社となった。 ・システム構成・仕様 ・各部機能と配線 4.研修実施 ・パラメータの設定 当初研修員は3人であったが、最終的に2人となっ た。日本での研修は初めての29歳男性(ハノイ技能 ・プログラミング 技術職業訓練短大 電気工学部 講師) 、日本での研修 (JOG運転、原点復帰、位置決め始動、エラー表示 1軸、2軸制御(補間運転)等) は4回目の42歳男性(ハノイ工業大学 ベトナム・ 日本センター 電気制御科長) 、通訳を中心に生活面の 通訳を介しての授業の実施のため、通常の授業より 世話をするJICA登録研修監理員の3人での実施と も時間がかかった。 なった。 サーボモータの位置決め制御に必要なシステムは、 4-1 開講式 当校にて、開講式を実施し(図2) 、その後オリエン テーションにて、施設概要、地域産業・生活環境等の 説明、施設見学等を実施した。 4-2 技能・技術の習得 オリエンテーションを実施して、研修生の技能・技 術、個々の研修の目的、今回使用する機器に対する事 前の習得レベル等を確認した。シーケンス制御、ソフ 25 図3 実習風景 ベトナムで伝達研修を実施する機器とは異なることを 表1 教材一覧 想定し、各種機器のマニュアル・取扱説明を用いて説 明し、他機種でも対応できるように心がけた。 プログラミング技法を覚えた後で、難しいとされて PLC 三菱 FX3U-16MR/ES PLC プログラミングソフト 三菱 GX-Works2 ウェア いるサーボモータのアンプのパラメータ設定、サーボ 位置決めユニット 三菱 教えた。しかし、幅広い技術要素が必要なため、説明 位置決めプログラミング 三菱 FX-PCS-VPS/WIN(FX2N-10GM 用) に多くの時間を費やし、総合課題として、プログラミ ソフトウェア ング実習を用意していたが多くの時間を割くことがで ステッピングモータ オリエンタルモータ ARL46AA-1 きなかった。 1軸ステージ オリジナルマインド L150 スイッチ・ランプボックス SUS 入力 5 点、出力 5 点 モータと制御コントローラ(PLC)の配線の詳細を FX2N-10GM ※PLC とモータ接続ケーブルはコネクタ・端子加工したものを購入 4-3 訓練技法 ④教材作成実習 サーボモータ及びステッピングモータ技術について の訓練技法について質疑応答を実施し、帰国後ベトナ 設計(レイアウト等の確認) 、組立・配線、動作確認、 ムにて実施する伝達研修で不安や問題点等について意 装置説明資料(各装置の役割や動作原理,装置全体の 見交換を行った。また、意見交換時に必要と思われる 回路図) 、テキスト作成の手順で実施した。 資料等を作成し配布した(在職者訓練のカリキュラム オリエンテーション時に、作成する機器はすべて研 シートにて、当校で実施しているセミナー体系を説明 修員で組立てたいと伝えられため、事前の準備はせず、 した) 。また、実際に在職者訓練コース開発の経緯や苦 機器は箱詰めの状態で渡した。また使用する機器に付 労して点などを指導した。 属していたマニュアルは日本がほとんどだったため、 メーカHPより英語のマニュアルをダウンロードし、 “教材ストーリーの設計”を用いて、教材ストーリ 事前に渡した。 ーの設計法 、教材提示媒体の選定などを説明した。 初めてのステッピングモータと位置決めユニットの 4-4 教材開発 教材開発は下記の手順で実施した。 配線作業となるため、配線図を書くことが難しく苦労 ①コンセプト 可能となった。しかし、機器の仕様確認・配線に時間 していたが、アドバイスを与えると動作させることが 目的(設計、配線、プログラミング技術の習得) 、目 がかかり、プログラム開発、テキスト開発までできな 標(ステッピングモータ制御の技能・技術の習得)を かった(図4) 。 説明した。目的により使用する機器が異なるためであ 機器を設置、組立、配線、動作確認まで一連の流れ、 る。 難しさを理解し、今後普及が予想されるサーボ及びス ②対象者とコースフロー サーボモータ及びステッピングモータ制技術に関す るコースは、制御装置(PLC等) 、モータ技術等の基 礎知識がないと実施することができない。そのため、 体系的・段階的に実施することの重要性を伝えた。 ③実習機器概要 実際に購入した機器一覧(表1)を用いて機器の確 認しながら、今回作成する実習装置の概要を説明した。 今回使用した主な実習機器を表1に示す。 図4 作成した実習機器 26 本の機器の状況等が異なるため、研修員が機器に使い テッピングモータの教材開発ができたと思う。 慣れるまで時間がかかった。しかし慣れてしまうと技 4-5 工場見学 静岡県磐田市にある、浜松ホトニクス豊岡製作所(電 能・技術の習得する時間が短くなり研修に対しての真 子事業部)の工場見学を実施した。高速・高感度の光 るサーボ及びステッピングモータの普及に少しでも貢 センサとして、医療・学術分野から産業分野まで応用 献できたことをうれしく思う。研修員が帰国後、カリ 範囲を広げる光電子増倍管の製造過程の見学、200 キュラム開発、実習機器の検討、伝達研修が実施され、 2年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士のカ ベトナム人技能者の地位向上につながることを期待す ミオカンデも浜松ホトニクス製のため展示を見ること る。 剣さが伝わってきた。今回の研修で、ベトナムにおけ ができた。研修生は、日本の工場の実作業を間近で見 多くの関係者の皆様のご協力により、初めての国別 ることで工場内の製造工程の理解が深まり、貴重な経 研修を無事に終えることができたこと、また大変貴重 験となったと思われる。 な経験をさせて頂いたことに感謝します。 4-6 成果発表会・評価会・閉講式 最終日に、研修した内容をまとめた成果発表会・評 価会を実施した(図5) 。成果報告は、プレゼンテーシ ョン用ソフトを使用し報告した。また研修に関するア ンケートを事前に実施し、研修の評価を行った。サー ボ及びステッピングモータの技能・技術を身につける ことでき研修目的を達成することができた。しかし、 プログラミングを実施する時間、教材作成する時間が 不足していたとの指摘があった。 図6 閉講式 図5 成果発表会・評価会 5.おわりに 休日には、浜松への散策(浜名湖、浜松城、浜松市 図7 見学(ETロボコン) 立美術館等) 、当校の学生が出場したETロボコン東海 大会(図7)に見学を行い、日本の文化にも触れあえ たと思う。 当初は確立されている在職者訓練の内容を実施すれ ばよいかと思っていたが、ベトナムにおける機器と日 27 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 産学連携推進の取り組みについて Report of the Academic-Industry Research Collaboration 学務援助課援助係 幸野 政紀 [要約] ものづくり産業の集積地である静岡県西部地域の人材育成の拠点として、学生の魅力と校の存在 を高める活動拠点として設けた「産学連携室」の活動を中心として産業界や教育機関との連携につ いて紹介する。なお、本レポートは「技能と技術 通巻第 278 号 4/2014」 (職業能力開発総合大学 校基盤整備センター編集、雇用問題研究会制作)に投稿し掲載されたものである。 は、魅力を高め地域へ存在力あるカレッジの地位を確 1.はじめに 東海職業能力開発大学校浜松校(愛称:ポリテクカ たるものにする以下の 3 項目の取り組みを行っている。 ①総合制作実習を通した学生力(=校の魅力)を高め レッジ浜松)は静岡県浜松市の南部遠州灘近くに位置 る取り組み(2015 全日本学生フォーミュラー大会への している。政令指定都市浜松は、北は赤石山系、東は 参画、若年者ものづくり競技大会や ET ロボコン大会へ 天竜川、南は遠州灘、西は浜名湖と四方を異なる環境 の出場) に囲まれ、面積は約 1,600Km2 で全国第 2 位と広大で、 ②共同研究等の実施による企業等の連携強化(在職 人口は 81 万人と静岡県 1 位である。浜松を含む静岡西 者・共同研究・事業内援助の強化等、共同研究成果の 部地域の産業は、楽器関連(ヤマハ・ローランド・カ 積極的発表、市民講座などを企画して地域に親しまれ ワイ) 、自動車関連(スズキ・ヤマハ発動機・ホンダ) 、 る環境づくり) 浜松ホトニクスなどの光技術関連の製造業が存在し、 ③地域(卒業生・企業等)と一層関わりながら学生力 浜松から愛知県に続く日本のものづくり産業の集積地 (=校の魅力)を高める仕掛けづくり(キャリア形成 域であり、浜松市の従業者の過半数は輸送用機械・生 の強化)(学生同士の交流、他大学学生等との交流、 産用機械・電気機械関連などの製造業に携わっている。 同窓会の活性化、学生のマナーや5S 教育の強化) 本校は昭和 57 年に短期大学校として設置され、専門 本校は、ものづくり産業の集積地である静岡県西部 課程の卒業生総数は 2,968 名、在職者対象の専門短期 地域の人材育成の拠点として、学生の魅力と校の存在 課程(以下、 「能力開発セミナー」という。 )の受講者 を高める上記②の活動拠点として設けた「産学連携室」 総数は 1 万人を超え、また、講師派遣や施設貸与によ の活動を中心として産業界や教育機関との連携につい り企業の研修や検定会場として、年間約 1 万人に利用 て紹介する。 され、地域の生涯教育訓練の一拠点となっている。 能力開発セミナーは「設計・開発」 「加工・組立」 「保 2.事業主団体等との連携 全・管理」を中心に平成 25 年度は 93 コースに 142 社 2-1 ポリテクカレッジ浜松協力会(1) 549 名が受講している。 同協力会は地元中堅・中小企業 69 社で構成する本校 一方、専門課程は、生産技術科(定員 30 名) 、電気 の事業と密接に関わる任意団体で発足以来 20 年とな エネルギー制御科(定員 20 名) 、電子情報技術科(定 る。学生のインターンシップや就職先、社員教育、校 員 20 名) 、日本版デュアルシステムの電気技術科(定 と連携しながら講習会や企業見学会の企画実施などを 員 15 名)の 4 科を設置しているが、専門課程学生の確 通じて、会員企業の発展に寄与するものである。平成 保は、若年者数の減少やものづくり離れ・大学間の過 25 年度は、インターンシップ受入企業 11 社、採用企 当競争など取り巻く状況は非常に厳しい。本校として 業 7 社、能力開発セミナー受講企業 14 社、平成 27 年 28 度採用説明会参加企業 17 社のほか、学生の就職講話講 師なども担当していただいている。 今年度の講習会は、協力会と本校が共催する「公開 講座」として㈱デンソー様を講師とし「自動車の安全 システムとセンシング技術」を開催し、会員企業をは じめ教育機関等の参加を得て開催した。 図2 製品設計のための三次元検証技術(ソリッド編) (H25.10.2) 図1 公開講座「自動車の安全システムとセンシ ング技術」風景(H26.10.1) また、オークマ㈱の新工場「ドリームサイトワン」 (愛知県丹羽郡大口町)の見学を企画している。今後 写真3 実践的 PLC 制御技術(H26.7.2) とも、同協力会と連携し会員企業など地域の期待に応 本校が担当する同講座は、オーダーメイド・レディ えられるものづくり現場を支える実践技術者の輩出と メイドの能力開発セミナーを活用して設定し、理論と 継続的な育成を図っていきたい。 実習により実際の加工機器や設計ソフトを使用するこ (2) とで実務的に理解を深めることを特徴としている。本 2-2 (公財)浜松地域イノベーション推進機構 (3) 受講がきっかけとなり、その他の能力開発セミナーの 同機構は、 「はままつ産業イノベーション構想」 に 受講に繋がった事例もあった。 基づき設立された浜松市所管の団体で、国の採択を受 今後も、人材育成に関する具体的なコース設定や実 けた「地域イノベーション戦略」に基づいて、4つの 施を継続していく。 次世代リーディング産業(輸送用機器用次世代技術産 業、新農業、健康・医療、光エネルギー)の創出のた め人材育成にも取り組んでいる。平成 26 年度は 1 千万 円の事業計画で人材育成に取り組んでいるが、本校は 「製造業中核人材育成講座」(4)の一部を担っている。 【平成 25 年度 実施講座】 ・製品設計のための三次元検証技術(ソリッド編) (受 講者 19 名) ・生産現場で使う品質管理技法を活用する現場改善法 写真4 生産現場で使う品質管理技法を活用する現場 (受講者 21 名) 改善法(H26.7.23) ・低消費電力化実務(インバータ編) (受講者 16 名) 2-3 湖西金属工業協同組合(5) ・実践的 PLC 制御技術(受講者 11 名) 同組合は、自動車や電機等の産業が集積した静岡県 29 西部の豊田佐吉の出身地でもある湖西市に位置してい ・CAD による金型設計(受講者 8 名) る。構成企業 60 社の殆どが中小企業でありながら、計 ・測定技術(精密測定+三次元測定) (受講者 6 名) 画的な教育訓練、従業員の職場定着や「ものづくり力」 【感想・意見・要望】 を維持・強化していくための技能継承などの課題解決 ・講師が理解度に合わせて進んでくれてよかった に取り組んでいる。 ・今後もこのような講習があれば参加したい ・他分野の金型の構造を知ることができた 平成 20 年度は、同組合と本校・ポリテクセンター静 (6) 岡が「人材育成研究会」 を立ち上げ、人材確保や人 ・高度過ぎてついていけませんでした。もっと勉強し 材育成のために、構成企業の多岐に渡る専門分野の職 なくてはなりません。 業能力を網羅した「湖西金属工業協同組合生涯職業能 ・普段使っている三次元測定機のわからない操作を知 力開発体系」を作成し冊子も発行している。これまで ることができた。 自動車産業の浮沈が構成企業の経営に大きな影響を与 ・もう少し実技の時間があったほうがよい。 えてきた経緯から、自動車以外の分野への進出による 多くの受講者から技術者として必要な技術及び知識 自動車依存からの脱却のため、湖西市も新産業の創出 を習得し、技術的要素・問題解決能力を身につけるこ を行政施策の柱に掲げ、既存産業の高度化と産業基盤 とができ今後に活かせると回答があった。また、技能 を活かした新産業の創出を目指している。その一つに 検定試験への挑戦意欲も高まり、自発的なスキルアッ 航空機産業への進出を挙げているが、構成企業は、こ プの意識を喚起・醸成する機会となり、高い技能と意 れまで培ってきた技能・技術を活かしながら、異種素 識をもった人材の育成に繋げることができた。 材加工技術を修得し、高まる製品品質基準をクリアす 今後は、①異種素材加工技術等の技能と技術を習得 ることで新産業進出による地域の再構築を図っていか し、高まる品質基準をクリアしていくための教育訓練 なければならない。 コースの検討。②受講企業数が構成企業 62 社中 18 社 と約 3 割にとどまっているので、多くの企業の参加が こうした背景の中で、平成 25 年度は、厚生労働省から (7) 「新事業展開地域人材育成支援事業」 に認定された できるコースの選定、参加しやすい環境(日程や時間) ため、当該事業の検討と同時に本校とポリテクセンタ の整備に向けた情報収集と検討。など、同組合の新分 ー静岡が加わり「人材育成研究会」を設置して、訓練 野進出のための人材育成の課題解決に向けて本校は継 コースの計画実施に取り組むこととした。検討にあた 続的な連携を図っていく。 っては、平成 20 年度に作成した職業能力開発体系を再 構築したカリキュラムの開発とこれまで実現しなかっ 2-4 浜松商工会議所 た教育訓練を実施し、既存の技術の更なるブラッシュ 静岡県及び(公財)静岡県産業振興財団の「新成長 アップと高い技能を持った人材の育成を行うこととし 産業戦略的育成事業」の人材育成として、同会議所が た。 実施する「航空宇宙産業中核人材育成講座」(8)の関連 講座を本校では「三次元測定技術」コースを本年度か 平成 25 年度に計画実施をした 8 コース及び受講者の 感想等は次のとおりである。 ら実施しているが、今後とも同講座に積極的に関わっ 【平成 25 年度計画実施コース】 ていく。また、同会議所が主催する「ビジネスマッチ <湖西地域職業訓練センター会場(5 コース)> ングフェアはままつ」にも出展を継続する。 ・有接点シーケンス制御の実践技術(受講者 5 名) ・電機系保全実践技術(受講者 7 名) ・旋盤精密加工技術(受講者 9 名) ・生産現場で使う品質管理及び問題発見・改善手法(受 講者 16 名) <本校会場(3 コース)> ・プラスチック射出成形技術(受講者 9 名) 30 写真8 三次元測定技術(H26.9.18) 社会性の高い課題設定に基づき、災害時における電源 喪失時や通信遮断時においても使用できるよう、組込 2-5 静岡県職業能力開発協会等 み機器による低消費電力サーバ、発電及び蓄電により 平成 25 年度は技能検定委員として教員を 18 回派遣 長時間の運用が可能となる工夫がされているとともに、 し 801 名の検定に関わった。その他に、 「若年技能者人 地元企業と密接に連携し、 2~3 年後の商品化を目指し、 材育成支援事業連絡会議」の座長及び「ものづくりフ 取組んでいる点や、電子情報技術科において習得する ェスタ」への参加、静岡県と同協会が実施する「静岡 組込み・ネットワーク・電子回路等に関連した技能・ 県ものづくり競技大会」 (機械 CAD、フライス盤、電子 技術が充分に網羅されていることが高く評価された。 機器組立)部門委員への教員派遣及び学生の参加、静 今年度も継続し、実用化に向けて問題点の改善に取り 岡県が主催する「全国若年者ものづくり競技大会のバ 組むこととしている。 スツアー」参加など、多くの事業に参画をしている。 ②高齢者向け健康器具のプロトタイプ評価システムの 開発 S社との共同により高齢化が進む中で高齢者の運動 機能の低下を防ぐ健康器具のプロトタイプの開発と評 価システムの開発を目的としている。パウダブレーキ のトルクで負荷をかける際の最適なトルクの算出など をフィードバック制御で行おうというものである。今 後具体的な計画に着手する予定である。 写真9 ものづくりフェスタ in 静岡 2014(ツイン 3-2 研修体系の援助 メッセ会場)本校ブース(H26.8.9) K社(資本金 2,000 万円、従業員約 70 名)は、日本 塑性加工学会賞、モノづくり中小企業 300 社、第 3 回 ものづくり日本大賞などを受賞した、自動車部品加工 (パイプ加工)に独自の技術力を持つ企業である。現 在、若年従業員を中心に長期的な視点で人材育成をす るための体系づくりに着手しその援助を継続している。 今後は事業の拡大とともに人材育成を強化することと している。こうした中堅企業の人材育成に関わってい 写真10 くことが地域産業発展にとって大切なものであると考 技能検定(旋盤作業)実施風景 えている。 (H25.9.7) 3.個別企業との連携 4.教育機関等との連携 3-1 共同研究 4-1 高校との連携 若年者の職業意識を高める高校のキャリア教育の一 ①ICTを用いた大規模災害時の避難所支援システム 環として、本校の「見学」 「ものづくり体験教室」 「職 のプロトタイプの開発 ㈱ユー・エス・ピーとの共同により電子情報技術科 業ガイダンス・職業講話」などの機会の提供に取り組 教員(安部惠一、橋本隆志、西出和広)が中心となり、 んでいる。平成 25 年度は、延べ 33 校、817 名の高校 専門課程の総合制作実習テーマに取り入れて進めてい 生を対象として実施している。今後も継続して、高校 るものである。平成 25 年度は、全国のポリテクカレッ 生のキャリア教育に関わっていく。 ジから応募された総合制作実習 24 点の中で最優秀賞 4-2 大学等との連携 静岡県から愛知県東部に至る地域の産業発展・イノ に輝いた。審査委員の講評では、大震災を教訓とした 31 ③限られた人的・機器設備的面からの検討 ベーション創出のための「東海イノベーションネット ワーク(東海iNET)に 18 の大学等機関が加入して 限られた機器等設備と限られた講師スタッフで、教 育訓練の質を担保しつつ専門課程と能力開発セミナー いるが本校もその一つである。 等事業主支援を両立し、機動的な産学連携を展開して また、静岡大学等からは専門課程の教科に部外講師 をお願いしている。これからも部外講師や学生の交流 いくための企画から実施までの工夫が求められること。 等の機会づくりを考えていきたい。 ④オーダーメイド型訓練計画の工夫・検討 平成 26 年 10 月 18 日に開催した第 19 回ポリテック 専門課程訓練計画を変更し機動的に計画実施するた ビジョン(PART1)では、静岡理工科大学の学生に「全 めの工夫が求められること。 日本学生フォーミュラー大会(EV)に夢を乗せて!」 ⑤講師スタッフの検討 として参画をしていただいた。 限られた講師スタッフを実務的に補完できる方策は 部外講師、あるいは、他施設からの応援以外に方法は ない。地域の関係機関等からの多方面に渡る専門家を 5.おわりに 部外講師として発掘する必要があること。 魅力を高め地域へ存在力あるカレッジの地位を確立 ⑥調整力を高める検討 する取組は、試行錯誤の連続であり、軌道に乗るため には校全体や教職員一人ひとりが現状の課題を直視し、 利用者(企業・団体・教育機関・関係者)の希望や これを打開するための前向きな取り組みが基本となる 意見を具体化する調整及び実施するための校内調整 が、第 9 次職業能力開発基本計画で掲げられている国 (コーディネート)力を高めていくことが大切である のプロデュース機能(総合調整機能)にも合致するも こと。 のであると考えている。 ⑦関係機関との実務的連携の検討 厚生労働省所管の大学校として、地域産業界のもの 新製品開発や新分野進出など複合的な人材育成も求 づくり現場での人材育成や技術的課題の共有とその解 められている中で、本校で「できること」 「できないこ 決策について共に考え、地域の教育機関と実務的な密 と」 、他機関で「できること」 「できないこと」を調整 接な関係づくりの強化し、学生・在職者・産業界・教 しながら、それぞれの機関が持ち味を活かし、複数の 育機関がそれぞれの特徴を如何なく発揮できる素地を 機関がまたがるようなコース設定の工夫なども検討す つくり、本校のステークホルダー(利害関係者)を拡 る必要があること。 大し、地域の継続的に発展に寄与するという目的を持 上記課題等に取り組みながら、今まで以上に、地域 って取組みたいと考えている。まだまだ、多くの課題 に根ざした大学校として、関係機関及び企業との連携 が山積をしているが、以下に実務的な課題等をあげる。 体制を一層強化し、地域産業の持続的発展の一翼を担 っていく。 ①広報周知の面からの検討 本校の産学連携の周知を強化するために、 「産学連携 サポートガイド」を作成して周知を行っているほか、 <参考資料等> 企業等約 200 社に対して毎月定期的なメルマガ「産学 (1)「ポリテクカレッジ浜松協力会」サイト参照 (9) 連携室ニュースレター」 の発行を開始している。今 http://www3.jeed.or.jp/shizuoka/college/abou 後も、こうした取り組みの定着と継続を図っていくこ t/katudo.html (2)(3)「 (公財)浜松地域イノベーション推進機構」 と。 サイト参照 ②企業の人材育成課題の把握の検討 https://www.hai.or.jp/ 教職員が各企業の人材育成の課題や今後求められる 人材についてその動向を把握し、専門課程や能力開発 (4)製造業中核人材育成講座は、静岡県西部地域の セミナーコース設定を図るための訪問活動等の充実強 基幹産業である輸送機器製造業を支える人材を継続し 化の取組についての行動が求められること。 て育てていくため、基盤製造技術(成形、加工、塗装、 32 仕上げ、組み立て等)を体系的に理解し、それぞれの 前後の工程を把握したうえで、広い視野でスキルアッ プしていくことが出来る人材を育成することを目的と して、将来、工場長、職長となる方、またスキルアッ プを目指し自社の扱う製品の前工程・後工程を見通せ る人材を育成できる人材の育成を目的としている。 (5) 「湖西金属工業協同組合サイト」参照 http://www5.ocn.ne.jp/~kkinkyo/katodou.html (6)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 で は、地域産業界の人材育成ニーズを的確に把握し、よ り効果的な職業能力開発事業を展開していくために 「人材育成研究会」を設置し、事業主団体等と機構が これまでの事業展開の中で培った生涯職業能力開発体 系をはじめとした成果・ノウハウを最大限活用して、 ものづくり分野の産業・業種別事業主団体との連携を 図ることにより、地域産業界におけるものづくりに関 する能力開発の推進・振興に資することとしている。 職業能力開発体系の作成にあたっては、構成企業が 有している職務や仕事、作業、作業に必要な知識及び 技能・技術を洗い出し、これを段階的かつ体系的に整 理して仕事の体系を作成し、次に、構成企業に対して 実施したアンケートやヒアリング等の調査結果から得 た能力開発目標をもとに教育訓練コースを検討し、こ れを段階的かつ体系的に整理して研修の体系を作成す る。 (7) 「新事業展開地域人材育成支援事業」 地場産業が集積する地域の事業協同組合などの事業 主団体が、構成員である中小企業等の人材育成を支援 するため、教育訓練機関と連携して、教育訓練カリキ ュラムの開発や教育訓練を行う。 (8) 「浜松商工会議所航空宇宙産業中核人材育成講 座」サイト参照 http://www.hamamatsu-cci.or.jp/events/show/220 (9) 「産学連携室ニュースレター」サイト参照 http://www3.jeed.or.jp/shizuoka/college/about/ merumaga.html 33 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 平成25年度の取り組みについて Report of Annual Action in Fiscal Year 2013 学務援助課 小玉 博史 [要約] 本レポートは、能力開発セミナーや共同研究を始め、大学連携、高校連携等、産学連携を中心 とした対外的な取り組み、学生のキャリア支援等の業務としての進学支援、就職支援、キャリア 相談、メンタルヘルスサポートの取り組み、技術習得を高めるための各種競技大会、資格取得等 の取り組みを、平成25年度の年間報告としてまとめものである。本校としては、このような取 り組みを引き続き推進し向上を図っている。関係者の皆様には、一層のご協力と各種支援のいた だき、本レポートを本校の紹介としても活用を願いたい。 八郎がそれぞれ「トヨタ」 「ホンダ」 「スズキ」 「ヤマハ」 「浜松ホトニクス」など世界有数のものづくり企業を 興しました。これらの企業のサプライチェーンやオン リーワンの中小企業も多数存在するものづくり産業の 世界有数の集積地にある本校は、ものづくり人材の育 成の中核拠点として存在しています。 1.はじめに 遠州・東海地域は、車・バイクなどの輸送用機械・ 楽器製造をはじめ、高い世界シェアを有する部品製造 等行う中小企業や研究開発型企業など世界有数のもの づくり産業の集積地です。 こうした地域に立地している本校は、若年者から企 業の最前線で活躍している社会人の方々への職業生涯 の人づくりを使命として、地域産業界と強く結びつき を持ちながら存在しています。 我が国は、少子高齢化・就業人口の減少という、か つて経験したことがないトップを走っています。一方 で、世界的には人口爆発・省エネルギーや環境問題・ 貧困などの世界的な課題を克服していかなければなり ませんが、人類の英知は技術革新により克服していく でしょう。遠州・東海地域のものづくり産業の技術力 は未来を切り開く力を秘めていますが、この技術力を 支えているのは「ものづくり」現場で日々向き合って いるエンジニア達です。 本校は職業生涯の技術革新に対応できるものづくり 現場を支える技術者の育成を継続し、産業界や地域社 会の発展に寄与するための様々な取り組みを行ってい ます。 静岡は世界遺産富士山や、お茶・みかん・うなぎな ど有名な産地であり、歴史的には徳川幕府と深く関わ り浜松城は徳川家康が拠点をおいて躍進した歴史があ るため「出世城」ともよばれています。地理的には「フ ォッサマグナ(大断層帯) 」が南北に走り、電力の周波 数50Hz・60Hz が代わる場所など、日本の東西を分 けるさまざまな境界線があります。この境界の西部地 域は古来、遠江(とおとおみ)と呼ばれ、都の人にと っては近い国であった近江(琵琶湖)に対して、遠江 (浜名湖)は遠い国であった一方で都(西国)との交 流があったという証でもあります。また、東海道は東 西が往来し交流する地域であり、今も日本の大動脈で す。 近代、こうした東西文化や人の交流が頻繁な地域に、 豊田佐吉・本田宗一郎・鈴木道雄・山葉虎楠・堀内平 2.産学連携について 産業のグローバル化により多くのものづくり企業が、 海外に拠点をもちながら事業展開をしています。国内 のものづくりにおいては新製品や高付加価値製品の開 発設計や製造機械設備の開発、海外拠点の現地スタッ フの教育・機械設備の保全、新分野展開などが課題と なっています。 一方、日本全体の就業者が減少する中で、若年者の 就業意識を高めるためのキャリア形成は益々重要とな っています。 本校の産学連携は、第1に産業・団体等との連携に よる企業の現場に密着をした中堅層のレベルアップ・ 中核的指導者の育成と新製品や新分野展開等のための 共同研究・受託研究の推進、第2に小中高校生などの 職業意識を高めるキャリア教育へのサポートや大学等 研究機関との広範囲な連携をとおして、 「産業界」 「教 育機関」 「研究機関」 「行政機関」と共に、地域産業の 持続的発展のため、多くのものづくり人材育成の課題 を克服すべく推進してまいります。 2-1 産業界の事例1 ・国内需要の減少からメーカーは内製化に取り組み、 また海外に需要を求め、こうした動きは中小企業に まで及んでいる。 ・培ってきた専門的ものづくりのノウハウを活かして 他業種製品づくりなど業務転換を図っている。また、 既存技術を利用して介護関連事業に進出している例 もある。 ・総括的には企業活力は戻りつつあるが海外市場に目 を向ける傾向にある。 34 ・機械製造業が専門技術を生かして介護ニーズを組み 込んで新商品を開発する動きにもあるように、顧客 の声を聞きニーズ把握をするといった情報収集力と、 説明力・プレゼンテーション力を高めること、更に、 海外進出を受けて総務担当者等の海外での管理能力 を高めることも必要である。 2-2 産業界の事例2 ・国内メーカーの海外進出に伴う現地での労務管理・ 税務処理・許認可等の課題、国内の仕事量の減少に 伴うスリム化・経営体質強化などの課題がある。 ・企業耐力を高めるには、高齢化している熟練技能者 の技能伝承のための人材育成は必須である。 ・階層別研修(職長研修、TWI、QC 活動、改善手法、 図面の見方など)を企画・実施しているが、技術系 研修を強化するためにはノウハウを有する貴校のよ うな機関のサポートを必要としている。 2-3 産業界の事例3 ・東南アジアを中心とした更なる海外シフトは見受け られず国内で組み立てて輸出している。リーマンシ ョック時点を 6 割とすると現在は 7 割程度である。 光関係産業の業績は上がっているが、介護・環境・ 医療等の新分野展開も視野に入れた新しい分野の商 品開発が急務となっている。 ・人材育成では、環境改善や安全衛生また国際化への 対応等の講座を企画実施し、中堅幹部の育成を重視 している。特に営業力が問われる。技術系社員育成 の基本は OJT であるが、貴校のような機関の OFF-JT を効果的に取り入れていくことが必要である。 図 4 「ICT を用いた大規模災害時復興支援システムの プロトタイプ開発」 2-6 各種講習会等の実施 キャンパスでは、各企業や団体の行う技術講習会・ 技能検定をはじめとする試験会場など、地域の生涯教 育の場として毎年度併せて約 1 万人程度の皆様にご利 用をいただいております。引き続き、本校の施設・設 備の積極的な活用をお願いすると共に企業訪問等の広 報を行っています。 2-4 能力開発セミナー(ものづくり技術・ビジネ ス講座)の実施 企業の社員教育(off-JT)の一環として、技術革新に 対応した知識・技術の習得や中堅指導者を育成するた めのコース(専門短期課程、2 日間程度)を設定し、 企業の皆様に利用していただいています。 平成5年開始以来これまでの受講者総数は1万人を 超えています。団体・企業・社会人の職業生涯に亘る 学びの場として地域産業界と強固な関係を強め、人づ くり・ものづくりに貢献してきました。 図 1 セミナーガイド 2-5 共同研究・受託研究の実施 学生や社会人に対する指導等のノウハウや最新の機 器・設備などを一層活用し、新製品開発や技術革新等 に対応する設備や製品の改良など身近な課題を解決す るための共同研究を実施しています。 共同研究は、企業と教員・学生がチームとなって取 り組んでいます。 平成 25 年度の共同研究は、 「ICT を用いた大規模災 害時復興支援システムのプロトタイプ開発」を実施し ました。 2-7 産業団体との連携 地域産業界をはじめとする関係機関の皆様と連携し たものづくり・人づくりのサポートを行っています。 関係機関との連携の一例を以下に紹介します。 (1)ポリテクカレッジ浜松協力会 ポリテクカレッジ協力会は平成 7 年に設立され、 地域産業 69 社(平成 26 年 1 月現在)の経営者の皆様 で構成している 20 年目を迎える本校の応援団です。 学生のインターンシップ・採用、講習会・企業見 学会・社員教育などをとおして会員企業の発展に努 めています。 ○平成 25 年度の活動 平成 25 年 10 月 25 日企業見学 「多摩川精機株式会社」の訪問 平成 25 年 9 月 18 日 技術講習会の開催 「振動・騒音実験計測・分析からコンピュータシミ ュレーション」 株式会社エステック 実験部 シニアプロダクトエンジニア 内田 真平 氏 図 2 産学連携査ポーロガイド 35 ベーション創出のためにバリューチェーンを構築し、 地域の参加研究機関が保有する知的財産の産学官連携 による活用、各機関との交流などを推進するものです。 平成 25 年は 18 の大学等機関が加入し、本校も参画 をしています。 「振動・音響解析」 エムエスシーソフトウェア株式会社 部長 齊藤 正毅 氏 「機構解析」 株式会社電通国際情報サービス CAE技術2部 錦織 知彦 氏 平成 25 年 6 月 18 日 第 19 回総会、講演会、懇親会 講演会 「企業におけるものづくり人材の育成」 電子情報技術科 特任教授 吉田 清 氏 「ものづくり人材育成研究会の報告について」 産技術科 准教授 瀧井 勝廣 氏 2-9 高校キャリア教育等サポート 高校進学率が 98%まで拡大し全生徒数の 72%を占め る普通科は、他の学科と比べ就職希望者に占める就職 者の割合が低く、18 才人口に比して約 51%が進学する 大学も、学生の約 8 割が職業に関する知識・技能に関 する自分の実力が不十分と回答するなどの状況が見ら れます。 本校は実践技術者というものづくり人材の育成に重 点をおいた教育訓練を実施する立場から、指導ノウハ ウや設備を用いてキャリア教育のサポートを行います。 進路指導や「総合的な学習」時間などを活用してご利 用いただいています。主な支援メニューは下記のとお りとなります。 (1)本校見学会(60 分~90 分程度) 校の特色・カリキュラム・授業内容・就職実績な どの概要を学びます。 (2)ものづくり体験授業(出前型を含む) (45 分~ 90 分程度:講義時間・回数は相談に応じて実施 しています) 一人又はグループで一つのものを製作する「もの づくり体験」を行います。それぞれの高校に出向き 出前型で実施することもできます。なるべく依頼さ れた高校の要望を取り入れて実施しています。 ○平成25年に実施した「ものづくり体験メニュー」 ①3次元CADモデリング ②NC旋盤による分鎮作成 ③ロボット制御プログラム体験 ④環境エネルギー実験(風力発電装置の開発) ⑤シーケンス制御(工場内コンピュータの制御プ ログラム体験) ⑥シーケンス制御(信号機制作) ⑦ものづくり競技大会等指導 ⑧ジョイスティク型マウスの製作 ⑨機械加工技術と基本測定作業 ○平成25年度実施高校等 ムンデ・ト・アレグリア、浜松学院、浜松城北工 業、浜松江ノ島、浜松大平台、池新田、クラーク記 念国際、湖西、遠江総合、豊橋市立豊橋、科学技術、 磐田南、湖南 ○生徒の感想(一例)高校2年生 ・はじめて知ることばかりでよかった。丁寧に教え てもらえて安心しました。 ・見たこともない機械があってビックリしました。 いろいろなことを学んでみたいと思いました。 ・知らない物がいっぱいあったけど優しく教えても らいわかりやすかった。生徒たちの顔がすごく楽 しそうでした。 図 4 「機構解析」技術講習会の実施風景 (2)公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構 同機構は企業・大学・産業支援機関等と連携し「オ ール浜松体制」で取り組む「はままつ産業イノベー ション構想」の中核機関で、本校は同機構が実施す る中核人材養成コースの一翼を担っています。 ・浜松地域イノベーション推進機構の主な業務内容 ①情報発信・分析 ②コンシェルジュ・相談 ③人材育成支援 ④創業・第二創業支援 ⑤知財総合支援 ⑥新事業開発支援 ⑦販路開拓支援 (3)湖西金属工業協同組合 同組合は人づくりに積極的に取りくんでおり、平 成 21 年度には本校等と協同で「静岡県湖西地域製造 業分野人材育成研究会」を開催し、平成 25 年度は厚 生労働省から「新分野展開地域人材育成支援事業」 として指定を受け、継続的に本校等と共に人づくり に取り組んできました。 2-8 大学等との連携 東海イノベーションネットワーク(東海iNET) は静岡県から愛知県東部に至る地域の産業発展・イノ 36 ≪平成 25 年度実施高校≫ 湖西、浜松啓陽、新居、浜松城北工業、城南静岡、 倉橋学園輝、浜松学院、浜松大平台、掛川工業、浜 松開誠館、川根、浜松修学舎、清水国際、気賀、磐 田農業、引佐 図 5 体験授業の実施例(浜松学院高校) 図 7 職業ガイダンス資料 (3)模擬授業(出前型) (45分~90分程度) 大学の授業・講義とはどういうものか知る良い機 会です。また、自分が学んでいる授業との関連性や 違いを知ることができます。 図 8 職業ガイダンスの実施例 図 6 出前授業の実施例(遠江総合高校) (4)インターンシップ(体験学習)の受入れ 職業意識の涵養や「ものづくり」意識を高めるた めの内容で実施します。 ○生徒の感想(一例)高校2年生 ・ 「働く」ということについて私たちなりにしっかり と考えることができ、これからの進路決定に向け てよい参考になりました。 ・細かい作業の説明を受けてコンピュータの楽しさ がわかったのでとても勉強になりました。 ・先生はとても優しく、面白く、やさしい説明をし てくれました。 ・機械のことを学んで興味を持ちポリテクカレッジ 浜松に行きたくなりました。 ・これからの高校生活の中で学ばせていただいたこ とを活かして充実した生活を送っていきます。 (5)職業ガイダンス・職業講話 高校卒業後どのような進路・就職の選択肢がある か体験談を交えながら説明します。希望があれば地 元企業側から直接話をいただける機会を用意します。 37 2-10 オープンキャンパスの取り組み (1)オープンキャンパスで何がわかるの? こんな悩みを持っていませんか? ・将来自分が就きたい職業を聞いてみたい。 ・どんな職業を選んでよいのか迷っています。 ・エンジニアを目指していますが、どのように進ん だらよいのですか。 ・仕事に必要な資格を取得することが可能ですか。 本校は、工科系の職業に就くための教育を行って います。機械系、電気系、電子情報系のエンジニア になるための学科や実習を聞いて人生設計を考え、 本校を修了する(進学・就職先)2 年後、4 年後の未 来を描けるよう説明しています。 (2)オープンキャンパスでどんなことをするの? 大きく3つの構成でオープンキャンパスを実施し ています。 ①学校紹介、学科紹介、キャンパス紹介(45分) 特色ある教育システム、各科の特徴・進路先、キ ャンパスライフ ②施設見学(60分) 各科の実習紹介及び機器設備、卒業研究内容 ③体験学習(60分) 希望する学科の体験学習 本人はもとより保護者の参加も歓迎しております。 保護者との個別相談も実施しています。 3.進学、就職、キャリア支援、メンタルサポート (3)オープンキャンパス参加の保護者様との意見交 換について(質問について) Q1 高校の普通科卒と工業科卒でハンディがありま すか? Q2 途中で退校する者はいますか? Q3 アルバイトをしながら修学が可能ですか? Q4 就職先での定着(離職)はどうですか? Q5 就職する地域はどのようなところが多いですか? Q6 英語が不得手なのですが? Q7 入試の成績は満点近くないと入れない? Q8 オープンキャンパスに何度も参加する生徒はい ますか? Q9 何年生がオープンキャンパスに参加しています か? Q10 専門学校や短大と本校のオープンキャンパス に参加しての感想は? Q11 本校の情報はどこから知りましたか? Q12 遠方から通学してくる学生はいますか? Q13 男子寮と女子寮の区別はありますか? Q14 奨学金が利用できますか? このようは、質問が寄せられました。 3-1 進学と就職 本校は職業安定法に基づいて企業からの求人を受け 付けて職業紹介を行う「無料職業紹介」機関となって います。学生には進路選択用の各種の講座を用意する ほか、教官のほか就職支援担当アドバイザーがきめ細 かい就職指導・進路指導を行います。平成 25 年度の学 生一人あたりの求人倍率は4倍でした。工科系 2 年課 程(専門課程)ながら毎年度ほぼ 100%という高い就 職率を誇っています。 東海職業能力開発大学校「応用課程」等へ進学し、 「生産現場のリーダー」等を目指す道も開かれていま す。入校後に、保護者様や学生本人の考えで進学や就 職のいずれかのステージを選択することができること もメリットです。進路選択は 1 年次後期には決定する ことになりますが、就職・進学いずれも 1 年次の成績 が非常に重要です。 求人数等の推移 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 3 月修了生 3 月修了生 3 月修了生 求人企業数 120社 109社 121社 求人数 164人 177人 179人 59 50 45 2.7 3.5 4.0 96.6 100 100 就職希望学生数 求人倍率 就職内定率(%) 応用課程進学のメリット ・専門課程で学んだことを更にもっと習得できる。 ・就職先では、4 年生大学工学部と同等な条件で「生 産現場のリーダー」として期待される。 ・より高いレベルで研究を続けるための大学院進学、 職業訓練指導員の道も可能。 図 9 オープンキャンパスの実施風景 2-11 こどもたちのものづくり啓発 ものづくり産業が集積している地域で育つ子供たち に、直接ものづくりに触れ合い、経験をして興味を高 めていただくために、機会をとらえて「ものづくり体 験」等を実施しています。 図 11 東海能開大応用課程見学 3-2 保護者会 1年生の保護者を対象に12月上旬に本校で保護者 会を実施しています。 保護者会の目的として、本校では保護者の皆様と連 図 10 ものづくり体験教室の実施風景 38 絡を密にし、各種のご相談及びご意見、ご要望等をう かがい、教育の一層の充実を図るとともに、今後の学 校運営に反映させることを目的として「保護者会」を 開催致します。また、この機会を通じて、学生の受講 状況や学校生活及び進路について個別相談を設定して おります。皆様方との意見交換をとおして、学生一人 ひとりへの指導や支援を充実させること目的としてお ります。 ①今年度の現況説明(進学状況、就職状況、進路支援) ②学生生活(学校行事、学生自治会、同窓会) ③各科教員との個別面談 図 13 合同企業説明会の実施風景 (6)インターンシップ 企業のものづくり現場の経験をするため、7 月頃 に 1 週間程度のインターンシップを行います(電気 技術科は 11 月頃 1 か月間実施) 。 平成 25 年度インターンシップは併せて 36 事業所 にご協力をいただきました。 図 12 保護者会の実施風景 3-3 キャリサポート (1)キャリア・コンサルティング(通年) キャリア・コンサルティングとは、学生と教官・ アドバイザーが①自己理解 ②仕事理解 ③啓発的 経験 ④意志決定 ⑤進路決定 ⑥就職・進学に向 けての行動 の順に行う進路指導方法です。学生個 人ごとに、ジョブカードを活用したキャリア・コン サルティングをおこないます。履歴書作成のために も大切なことです。 (2)進路決定のための専門教科 「キャリア形成論」 「職業社会論」により自分の進 路選択を考えます。 (3)面接指導 今就職試験で最も重視されているのが面接です。 挨拶の仕方やビジネスマナーはもちろん、自身の長 所・短所(強み・弱み) 、アピールポイント、志望理 由・動機などを簡潔にはっきりと話す練習をします。 (4)就職特別講座の実施 SPI 試験対策 (試験問題と解説) 、 ビジネスマナー、 企業の方の就職講和、面接の仕方などの知識を得て、 就職活動の準備を開始します。 (5)校独自の合同企業説明会の開催 校独自に求人企業による合同企業説明会を行いま す。平成 25 年度は 30 社が参加しました。 図 14 インターンシップ実施風景 3-3 メンタルヘルスサポート (専門のカウンセラー相談) 専門のカウンセンラー(臨床心理士等)を配置して 定期的な日程で相談に応じています。青年期は、青年 期や学生生活においては、勉強・進路・対人関係・家 庭等の問題で困ったり、悩んだります。 ①授業やキ ャンパス内の生活に関すること。②家庭での生活に関 すること。③こころに関すること。など、一人で悩ま ずに先生や友人や家族と話し合うことも大切ですが、 専門カウンセラーに相談することをお勧めします。相 談内容は秘密厳守です。お気軽にご相談ください。 4.技術を伸ばす取り組み 4-1 競技大会にチャレンジ 各種競技会出場は、指導教官や設備がなければでき ませんし、この体験は、忘れられない思い出となり自 信にもなります。また、校の代表として出場していた だくことによって校の存在感を高めていただくことで 39 ・電気技術科(日本版デュアルシステム) 第1種電気工事士、第2種電気工事士、第3種主 任技術者試験、技能講習(ガス溶接) 、特別教育(ア ーク溶接、低圧電気取扱い) もあります。各種の競技大会の出場機会を勧奨します。 本年度は、第 3 回静岡県ものづくり競技大会につい て生産技術科からフライス盤競技1名、機械製図CA D競技 2 名、電子情報技術科から電子回路組立て競技 に 5 名が出場しました。 結果は、フライス盤競技で 3 位、電子回路組立て競技 では、1 位~3 位までを当校が占める結果となりした。 この結果を受けて、7 月の全国大会「第 9 回若年者も のづくり競技大会」静岡県代表として推薦をいただき ました。 図 16 電気工事士の学科試験の補講風景 ・電子情報技術科 技能検定(電子機器組立て(電子機器組立て作業) ) 図 15 静岡県ものづくり競技大会(電子回路組立て) 4-2 資格取得にチャレンジ 資格取得の取組は、目標を明確にして学習のプロセ スを学ぶことに効果的であるとともに、合格すれば達 成感と自信がつきます。在校中にいろいろな資格取得 に挑戦することをお勧めします。学生がこれまでチャ レンジしてきた資格は以下のようなものです。 ・生産技術科 技能検定(機械製図 CAD、機械加工(フライス盤 作業、旋盤作業) ) 、技能講習(ガス溶接) 、特別教 育(アーク溶接、研削砥石) 図 17 電子機器組立て技能検定の補講風景 4-3 ポリテックビジョン等イベント (1)ポリテックビジョン in 浜松 Part1 10 月 19 日(土)「第 18 回ポリテックビジョン in 浜 松 Part1」を開催しました。ポリテックビジョン(10 月・2 月に開催)は、本校の学生による研究開発成果 の発表・展示や技能・技術競技会等の開催等を通して、 「ものづくり」について、静岡県西部地域を中心とす る高校生、学校関係者、事業主、企業関係者等の皆様 に紹介し交流を図る総合的なイベントです。10 月のポ リテックビジョンでは、特別講演、ものづくり体験教 室、展示・施設公開・オープンキャンパス・ポリテク 祭を実施しました。 ○特別講演では、多摩川精機株式会社 常務取締役 熊谷 秀夫氏による宇宙機器開発の歴史、特殊性、 宇宙分野の可能性等について貴重なご講演をいただ きました。ものづくりを学習している当校の学生も 聴講させていただきましたが、ものづくりに対する 図 15 機械加工(旋盤)技能検定の実施風景 ・電気エネルギー制御科 第1種電気工事士、第2種電気工事士、工事担任 者、技能検定(機械保全「電気系保全作業」 ) 40 モチベーションが向上したことと思います。 ○ものづくり体験教室では、70 名の体験者とその保護 者 81 名の計 1511名の方にご参加をいただきました。 ポリテックビジョンのものづくり体験教室では、5 つのテーマを開催しました。 「電子すずむしの制作」 「風車をつくろう!」 「オリジ ナルガラスコップをつくろう」 「モンスターボール形 LED(クリスマスバージョン)電灯を作ろう」 「エコ 燃料電池カーをつくろう」 ○施設公開・展示では、工作機械の実演、各種製作物 の展示、東海能開大やポリテクセンターの紹介を行 いました。 ○第7回オープンキャンパスでは、平成 26 年 4 月入校 の学生募集(生産技術科・電気エネルギー制御科・ 電子情報技術科)について概要説明及び施設見学、 体験授業が実施されました。当校の学生の就職希望 者は、今年度も浜松地域の製造業企業から数多くの 内定をいただいております。当校の特徴として、充 実した実習場・機器による授業、少人数制教育等が あげられます。参加生徒、保護者の方々に当校の魅 力が伝わるよう説明、見学に工夫しています。 ○学生自治会主催のポリテク祭ではゲームや模擬店な どで、学生同士や地域の方と交流をすることができ ました。 行政法人産業技術総合研究所知能システム研究部門副 研究部門長) 、ものづくり体験教室、東海地区技能五輪 ユースメカトロニクス技術競技会、ロボットデモンス トレーション等です。 図 20 東海ポリテックビジョン記念講演の風景 図 19 ポリテックビジョン Part1 記念講演の風景 (3)ポリテックビジョン in 浜松 Part2 2 月 28 日(金)に『ポリテックビジョン in 浜松(PART Ⅱ)-総合制作等発表会-』を開催いたしました。 「も のづくり・人づくり in 浜松」をキャッチフレーズに掲 げて、学生が 2 年間で習得した技術・知識等に加えて 創意工夫を取り入れた総合制作の発表展示、日本版デ ュアルシステムの電気技術科では、企業実習報告を行 いました。企業、保護者、関係機関の皆様方が見学に 来られ、熱心に学生の発表を聴講しておりましたまた。 また、当日新聞記者の方々も見学され、当日の内容 を「若い技術者の集大成」として 3 月 1 日(土)の静 岡新聞、中日新聞の朝刊に掲載いただきました。 将来を担う若き技術者達が 2 年間で学んだ集大成と して、発表や展示(デモンストレーション)に精根込 めて望み、自分の成果を披露できたことは、これから 社会へ巣立つ若者の第一歩として、すばらしい機会で あったと思います。 発表された総合制作は下記の 17 テーマ、企業実習報 告は5テーマです。 (2)東海ポリテックビジョン 2 月 21 日、22 日の両日、東海職業能力開発大学校の 所在地である大野町総合町民センターにおいて平成 25 年度(第 18 回)ポリテックビジョンを開催しました。 今年度は「ロボットと歩む未来の暮らし」をキャッチ フレーズに掲げていて、記念講演、講演、実演、競技 などの多くがロボットに関連するものでした。当校か らも専門課程の学生 1 年生、2 年生の全員が参加し、2 年生の発表展示担当者は、両日の参加となりました。 会場は技術者達のたまごで熱気があふれ、講演、発表、 作品見学と興味津々に見入っていました。 主な催しは、専門課程の研究発表及び作品展示、応 用課程の開発課題発表、記念講演「サイバネティック ヒューマン HRP-4C未夢」横井 一仁 氏(独立 図 20 ポリテックビジョン Part2 発表の風景 41 めて認識しました。 ○電気エネルギー制御科 「マイクロ風車の制作」 「マイコン搭載アクアフィッシ ュ」 「自動ケーブル切断機「線切れーる」の製作 -測 長、切断の自動化-」 「太陽光追尾装置の作成」 ○電子情報技術科 「PLC シーケンス制御実習教材の開発」 「ICT を用いた 大規模災害時の避難所支援システムのプロトタイプ開 発概要説明」 「ICT を用いた避難所支援システム向け組 込み型メインサーバーの開発」 「避難所運営管理システ ム災害時運用のための自立型太陽光蓄電システムの開 発」 「避難所運営管理システムのアプリ開発」 「可視光 線通信を用いた映像伝送システムの製作」 「高齢登山者 のための安心安全ケアツールの製作」 「LED イルミネー ションの製作」 ○生産技術科 「歯車ポンプと性能検証装置の設計・製作 -歯車ポ ンプの設計編-」 「歯車ポンプと性能検証装置の設計・ 製作 -検証装置の設計・製作編-」 「射出成形金型の 設計・製作 (小型風力発電工作キットの設計・製作) -モータカバー等の作製-」 「射出成形金型の設計・製 作 (小型風力発電工作キットの設計・製作)-尾翼 の作製-」 「射出成形金型の設計・製作 (小型風力発 電工作キットの設計・製作)-羽根の作製-」 図 23 全日本学生フォーミュラ見学記念写真 4-4 職業能力開総合大学校の実務実習受け入れ 7月1日(月)から7月26日(金)の4週間にわたって、 職業能力開発総合大学校 3 年の実務実習を受け入れま した。実務実習生は、職業能力開発総合大学校電気シ ステム工学科 3 年 1 名、電子情報システム工学科 3 年 1 名の 2 名となります。 実務実習の主な内容は、前半の 2 週間、主に学科を 中心に授業の補助やサポートを行い、模擬授業で指導 法等の評価とアドバイスを受け、講師としての技法を 習得してもらいました。電気エネルギー制御科での授 業科目は、 「シーケンス制御」 、 「電気工学基礎実験」等 で、模擬授業は「シーケンス制御」を 1 時限公開で実 施しました。電子情報技術科での授業科目は、 「マイク ロコンピュータ工学」 、 「情報通信工学」 、 「組込みソフ トウェア基礎実習」等で、模擬授業は「マイクロコン ピュータ工学」を行いました。 また、 「工場見学」 「職業能力開発施設の見学」を実 施しました。 工場見学は、ヤマハ株式会社豊岡工場、施設見学は、 浜松テクノカレッジ(静岡県立浜松技術専門校)と ポリテクセンター静岡(静岡職業訓練支援センター) です。 後半の 2 週間は、当校の集中実習期間となりました。 集中実習は、講義も含めて実施する「実学一体の集中 講義・実習」です。 電気エネルギー制御科では、 「電気設備実習」 、電子 情報技術科では、 「マイクロコンピュータ工学実習」と なります。その中で、実技指導の公開授業を行いまし た。 また、最終日には、当校専門課程1年生の東海職業 能力開発大学校応用課程見学に同行し、実務実習生と 同学年の学生が、実施している「標準課題制作」 、 「開 発課題制作」を見学し、応用課程の教育システムであ る「課題学習方式」 、 「ワーキンググループ学習方式」 の仕組みと実施体制、運用を学習しました。 当初は、緊張から先生、学生とのコミュニケーショ ンが大変だったかと思われますが、徐々に雰囲気に慣 図 22 ポリテックビジョン Part2 「マイコン搭載ア クアフィッシュ」デモンストレーションの風景 (4)工場見学・競技会見学 専門課程1年生が 9 月 6 日(金)に企業見学並びに全 日本学生フォーミュラ大会見学をしてきました。 朝 8 時 30 分にバスにて浜松短大を出発して最初に企 業見学を行いました。生産技術科は株式会社三共製作 所静岡事務所へ、電気エネルギー制御科並びに電子情 報技術科は日東工業株式会社掛川工場へそれぞれ伺い ました。最先端の機器及び生産過程を目の当たりにし て学習意欲を新たにしました。 昼食後からは、全日本学生フォーミュラ大会の会場 である小笠山総合運動公園エコパへ向かいました。学 生が自ら構想・設計・製作した車両によりものづくり の総合力を競い自動車産業の発展に資する人材を育成 することを目的とする大会を見学することにより普段 学んでいる「ものづくり」の素晴らしさ及び凄さを改 42 ポリテク祭ではゲームや模擬店などで、学生同士や 地域の方と交流をすることができました。 あいにくの空模様に自治会が用意していたイベント の一部が縮小されましたが、日頃、授業等に追われる 学生生活の中で、この日ばかりは存分にクラスごと、 全学生でエンジョイしたと思います。 れ、積極的に会話ができるようになり、先生としての 業務を肌で実感していただきました。この経験を職業 能力開発総合大学校の指導科目の授業に活かしてもら いたいと望んでおります。 図 24 実務実習生のヤマハ株式会社豊岡工場見学 図 26 ポリテク祭での模擬店風景 4-5 学生自治会によるイベント (1)球技大会 新緑の清々しい天候の下、5 月 31 日(金)に当校の 学生自治会が企画・立案した学生球技大会が実施され ました。競技種目はドッジボール、バドミントン、サ ッカーの3種目で、基本的に各科・学年ごとにチーム を結成して、全種目総当たり戦で試合を行いました。 学生等は体育の授業や放課後に練習した成果を十二 分に発揮し、伸び伸びとエネルギッシュなチームプレ ーを披露してくれました。競技終了後は職員チームと 学生チームに分かれてドッジボールのエキシビジョン マッチが行われ、結果は職員チームの健闘もむなしく、 若さ溢れる学生チームが勝利しました。その後、結果 発表と記念品の授与が行われ、怪我もなく無事に全行 程を終了しました。 4-6 プレゼンテーション力をつける 企業業態が B to B(企業間取引) 、B to C(企業と 顧客取引)など多様化している中で、プレゼンテーシ ョン能力は欠かすことができません。技術力の習得と 併せてプレゼンテーションを高める機会を用意し、人 間力を養う工夫をしています。 4-7 授業は社会で働く糧と考えて! 本校の強みは学歴ではありません。企業からの評価 は仕事に取り組む姿勢や即戦力としての力を有してい ることが最大の強みとなります。各科目の出席率を 80%以上ないと履修と認定されません。過密な科目を 用意していますが、2 年間を最大限努力して、技術・ 技能・知識を習得し、次のステップに向けて力を蓄え、 大きく飛躍するための 2 年間を位置づけています。 5.おわりに 平成25年度は、就職支援において、SPI 模擬試験、 一般常識試験、就活マナー等の特別講座を取り入れ、 また保護者会を開催して、保護者からの意見及び個別 面談等を充実させてきました。また、高等学校への就 職ガイダンスや進路ガイダンス、体験授業の回数を増 やし、より技術系、工科系の内容を高校生に説明して、 ものづくり分野の進学や就職を支援して来ました。 技術系、工科系離れと言われて久しい感もありますが、 今後とも、ものづくり企業が求める将来を担う生産現 場の実践技術者やリーダー養成を一層強化してまいり ます。 [参考資料] (1)2015 ガイド「学校案内パンフレット」H26.4 発行 (2)本校ホームページ http://www3.jeed.or.jp/shizuoka/college/ 図 25 学生球技大会でのサッカー試合風景 (2)ポリテク祭 小雨の中、10 月 19 日(土)「第18回ポリテックビ ジョン in 浜松 Part1」と同時開催で、学生自治会によ るポリテク祭を実施しました。 43 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 平成25年度総合制作実習テーマ 生産技術科 (1)歯車ポンプと性能検証装置の設計・製作 -歯車ポンプの設計編- [指導教員 河合 将史、小栁 翔、本間 瀧井 翔太、中尾 彰宏、二村 (2)歯車ポンプと性能検証装置の設計・製作 大輝、野中 来記、藤盛 (3)射出成形金型の設計・製作 瀧井 史也、渡辺 (4)射出成形金型の設計・製作 矢野 喜士、斎藤 健太、杉村 直哉] 類 -モータカバー等の作製- 出来俊司、久保幸夫、中村佳史] 宏希 -尾翼の作製- [指導教員 出来俊司、久保幸夫、中村佳史] 辰駿、村松 大輔、永井 遼羽、鈴木 裕太、大石 剛、山崎 小型風力発電工作キットの設計・製作 (5)射出成形金型の設計・製作 鈴木 三千誉 小型風力発電工作キットの設計・製作 祐輝、長谷川 公大、森田 直哉] 昂汰、山口 勝廣、古杉 [指導教員 山口 剛、山崎 -検証装置の設計、製作編- [指導教員 鈴木 勝廣、古杉 敬得 小型風力発電工作キットの設計・製作 -羽根の作成- 出来俊司、久保幸夫、中村佳史] 祐生、藤原 悠公 佑貴、髙塚 [指導教員 電気エネルギー制御科 (1)マイクロ風車の制作 佐藤 史乙、北村 [指導教員 吉田 和幸] [指導教員 小沢 浩二] 亮太 (2)マイコン搭載アクアフィッシュ 工藤ヨシユキ、黒田 裕希、桑原 弘卓、小出 (3)自動ケーブル切断機「線切れーる」の製作 直哉、武田 丹丹 -測長、切断の自動化- [指導教員 山田 勇斗、江川 遼吾、河合 利樹、近藤 (4)太陽光追尾装置の作製 鈴木 雅也、渡辺 篤、小川 恭兵、柴原 44 哲也] 川俣 文昭] 安美 [指導教員 龍幸 蔭山 電子情報技術科 (1)PLC シーケンス制御学習教材の開発 池谷 直人、野田 朋希、佐野 [指導教員 安部 惠一] 友亮 (2)ICT を用いた大規模災害時の避難所支援システムのプロトタイプ開発の概要説明 [指導教員 池谷 直人、石塚 将人、星野 安部 惠一、橋本 隆志、西出 和広] 成紀 (3)ICT を用いた避難所支援システム向け組込み型メインサーバの開発 [指導教員 池谷 直人、岩崎 真規、加藤 守洋、佐野 安部 惠一] 友亮 (4)避難所運営システム災害時運用のための太陽光蓄電システムの開発 星野 成紀、稲葉 将人、土屋 広晃、名倉 一樹、原田 浩貴、鈴木 隆太、中村 大貴、杉浦 橋本 隆志] [指導教員 西出 和広] [指導教員 熊谷 雅樹] [指導教員 熊谷 雅樹] 隆蔵 (8)LED イルミネーションの製作 望月 翔、山下 [指導教員 聡志 (7)高齢登山者のための安心安全ケアツールの製作 中田 和広] 龍之介 (6)可視光通信を用いた映像伝送システムの製作 鈴木 西出 賢 (5)避難所運営管理システムのアプリ開発 石塚 [指導教員 智也、北見 国利 45 平成25年度総合制作実習作品(写真集) 生産技術科 歯車ポンプと性能検証装置の 歯車ポンプと性能検証装置の設 設計・製作 -歯車ポンプの設計編- 計・製作 -検証装置の設計・製作編- 射出成形金型の設計・製作 小 型風力発電工作キットの設 射出成形金型の設計・製作 計・製作 型風力発電工作キットの設 型風力発電工作キットの設 計・製作 計・製作 -モータカバー等の作製- -尾翼の作製- 46 小 射出成形金型の設計・製作 -羽根の作成- 小 電気エネル ギー制御科 マイクロ風車の制作 マイコン搭載アクアフィッシュ 自動ケーブル切断機「線切れー る」の製作 -測長、切断の自動化- 47 太陽光追尾装置の製作 電子情報技 術科 PLC シーケンス制御学習教材の ICT を用いた大規模災害時の避 開発 難所支援システムのプロトタ イプ開発の概要説明 ICT を用いた避難所支援システ 避難所運営システム災害時運 ム向け組込み型メインサーバ 用のための太陽光蓄電システ 避難所運営管理システムのア ーの開発 ムの開発 プリ開発 高齢登山者のための安心安全 可視光通信を用いた映像伝送 ケアツールの製作 システムの製作 LED イルミネーションの製作 48 2014年度 紀要・ジャーナル編集委員会 長瀬 安信(校長 委員長) 岩崎 輝久(能力開発部長) 小玉 博史(学務援助課長) 中村 佳史(生産技術科) 寺田 憲司(電気エネルギー制御科) 安部 惠一(電子情報技術科) 齋藤 明宏(学務援助課) 幸野 政紀(学務援助課) 東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号 発行年 2015年3月16日 発行者 東海職業能力開発大学校附属浜松職業能力開発短期大学校 〒432-8053 静岡県浜松市南区法枝町 693 番地 TEL 印 刷 053-441-4444 FAX 053-441-9495 杉山メディアサポート株式会社 〒435-0046 静岡県浜松市東区丸塚町 196-1 TEL 053-467-6000 FAX 053-467-6006 BULLETIN OF TOKAI POLYTECNIC COLLEGE , HAMAMATSU No.21 MAR.2015 Yasunob NAGASE Foreword ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 【Vocational Training】 Katsuhiro TAKII , Takeshi KOSUGI , Naoya YAMASAKI etc Design and manufacture of performance verification equipment and gear pump ・・・ 3 Yukio KUBO , Shunji DEKI , Yoshifumi NAKAMURA etc A design and manufacture of an injection mold ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 Keiichi ABE , Takashi HASHIMOTO , Kazuhiro NISHIDE , Yasuharu AMAGI , Takao YAMAGCHI etc Prototype development of support systems for a place of refuge using Information and Communication Technolog ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 Keiichi ABE , Yasuharu AMAGI etc Development of embedded server and support systems for a place of refuge using Information and Communication Technology ・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 Tetsuya KAGEYAMA etc Manufacture of automatic cable cutting machine[SENKIREERU] ~Automation side length of cut~ ・・・・・・・・・ 20 【International Cooperation】 Koji OZAWA Vietnam Country training report ~Servo Motor and Stepper Motor Technique~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 【Academic-Industry Collaboration】 Masanori KONO Report of the Academic-Industry Research Collaboration ・・・・・・・・・・・・・・28 【Annual Report】 Hiroshi KODAMA Report of Annual Action in Fiscal Year 2013 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 【Reference】 List of Themes of Integrated Production Practice in Fiscal Year 2013 ・・・・・・・・ 44