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褥瘡予防寝具の性能とその官能評価 - 地方独立行政法人大阪府立産業
褥瘡予防寝具の性能とその官能評価 Characteristic of Bedding for Preventing Bedsore and its Sensory Test (キーワード:褥瘡予防寝具,接触圧,組織血流量,高齢者) (KEYWORDS: Bedding for Preventing Bedsore, Contact Pressure, Tissue Blood Flow, Older Persons) ○山本貴則,片桐真子,平井学,木村裕和(大阪府立産業技術総合研究所) , 西嶋茂宏(大阪大学大学院工学研究科) 1.はじめに 時間は 60 分とし,接触圧および皮膚組織血流量は 60 秒毎 褥瘡(床ずれ)は,持続的圧迫による人体局所の虚血性皮膚 の加算平均値を算出した.また,接触圧,皮膚組織血流量 壊死である.そのために,褥瘡予防を目的とした寝具(マットレ の測定前後に仰臥位の状態で SD法により官能評価を実施 ス)は主に体圧の分散性を考慮して設計,開発されている.し した.官能評価項目としては,仙骨部の痛み,柔らかさ, かし,現在のところこれら褥瘡予防寝具の性能を評価する方法 むれ感,ならびに快適感を取り上げ,それぞれに適当な形 は確立されていない.また,素材の硬さや質が多種多様であり 容詞対(痛い/痛くない,硬い/柔らかい,むれていない ,寝心地がよくないなどの問題点がある.本研究では,優れた /むれている,不快/快適)を用いて 5 段階尺度(1~5) 性能を有する安価で汎用性の高い寝具の設計と開発を目的と で評価した.なお,実験室内の温湿度条件は温度 23±3℃ して,高齢被験者を用いて代表的な静止型マットレスに仰臥し ,相対湿度 50±5%RH とした. たときの人体仙骨部における接触圧と皮膚組織血流量を測定 3.結果および考察 した.さらに仰臥位における官能評価を行い,褥瘡予防寝具 図 1 は,各試料における被験者間の平均接触圧を示す. の性能との関係について検討した. シープスキンやウレタン,オーバーレイの平均接触圧は, 2.試料および実験 ベースマットレスに比べて低い値を示し,有意な差が認め 試料は,介護用ギャッチベッドに附属のベースマットレ られた.また,シープスキンに比べて,ウレタンやオーバ スのみ,ベースマットレスとシープスキンの組合せ(シー ーレイではさらに低い接触圧を示していることから,ウレ プスキン),ベースマットレスの上にウレタン系マットレ タン系マットレスを用いることによって,高い減圧効果が スを重ねた組合わせ(ウレタン),およびベースマットレ 期待できるものと考えられる.図 2 には,各試料に仰臥し スにウレタン系マットレスに重ねた上に,さらにシープス たときの各官能評価値と接触圧との関係を示す.接触圧が キンをオーバーレイした組合せ(オーバーレイ)の 4 パタ 小さい時に被験者は柔らかさを感じている.また,仙骨部 ーンとした.被験者は,16 名の高齢被験者(男性 8 名,女 に痛みやむれ感を感じることはなく,いずれの寝具とも快 性 8 名,平均年齢 71.1 歳)とした.仙骨部における接触圧 適感を覚える結果となった.すなわち,今回行った実験か と皮膚組織血流量の測定は,接触圧・血流センサー(エイ ら得られた接触圧の範囲においては,官能評価に有意な差 エムアイ・テクノ社製 A0010T-K)を用いて行った.接触圧 は認められなかった.したがって,優れた性能を有する褥 ・血流センサーを仙骨部に貼付させた被験者は,所定の寝 瘡予防寝具を設計開発するためには,幅広い接触圧領域に 衣(綿 100%)を着用し,試料上に仰臥位で静止する.その後 おいて官能評価との関係を検討する必要がある. ,所定の掛け布団(ポリエステル中綿 100%)を被せた.測定 平均接触圧(g/cm2) 120 100 ** : p < 0.01 * ** 5 * : p < 0 .0 5 ** 仙骨部痛み むれ感 柔らかさ 快適感 4 ** 官能評価値 140 ** 80 60 3 2 40 20 0 1 0 ヘ ゙ー スマ ットレ ス シ ー プス キン ウレ タ ン オ ー ハ ゙ー レ イ 図 1 人体仙骨部における接触圧 20 40 60 接触圧 (gf/cm2) 80 100 図 2 仙骨部における接触圧と官能評価との関係 〒594-1157 大阪府和泉市あゆみ野 2-7-1, Tel 0725-51-2579 /Fax 0725-51-2599, E-mail: [email protected]