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経営戦略コンサルタントとしてのORの切り口

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経営戦略コンサルタントとしてのORの切り口
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経営戦略コンサノレタントとしての OR の切り口
矢矧晴一郎
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経営戦略コンサルタントとしての
iOR の切り口」
パソコン中心で OR に利用
私の会社で OR に使っているのは,主にパソコンであ
経営戦略を専門とするコンサルタントとして rOR は
毎日使っている」と言える.
2
.
r 毎日使っている J とし、ぅ
意味では,わが社では rOR は日常茶飯時 J と言える.
f 朝飯前J とは言えないまでも,昼食前であり,夜食前
る.変わり種としては,人工知能コンピュータも置いて
ある.
パソコンの機種は,客先が多業種にわたるため,国内
の主なパソコンメーカーのものはすべて使っている.
ソフトウェアは社内で開発したものがほとんどで,市
.後に OR を活用している.
現在このように経営戦略の OR は連日連夜の利用だが
販ソフトウェアは補助的に使うだけである.経営戦略計
最初のころはゼロであった .OR 学会への入会以来の 1
画,管理,意思決定,コンピュータグラフィックス・人
日 1 日年 l 年の積み重ねで. 30年の聞に「ここまで
工知能などのソフトウェアを社内で開発し,販売もして
きた J と L 、う感概がある.
いる.社内でわざわざ開発するのは,オリジナルな考え
私の OR 応用展開の考え方として rOR 応用 3 原則」
というものを作った.
に立ってコンピュータを動かそうとすると,できあいの
市販ソフトウェアではできな L 、からである.
①トップダウン型 OR 展開
3
.
②自己創造型 OR 展開
③縦横斜め連鎖型 OR 展開
A 社の経営戦略の策定…実例 1
「実際にどのように仕事をしているか j は,具体例で
現在わが社で使っている rOR の切り口」を紹介して
みよう.
解説するほうがわかりやすいと思う.そこで実例にそっ
て f どのように OR を応用しているか J を紹介しよう.
まず rOR 技法の切り口」で切れば,シミュレーショ
A 社のトップマネジメントからの依頼で,経営戦略を
ン,意思決定理論,需要予測,多変量解析,計量経済分
たてることになった .A 社は製造会社で,上場会社であ
析,人工知能,シナリオ・ライティングである.しかし,
る.まずは A 社の特質と実態を知るために,インタピュ
これは応用技法を大きく分けたときの話であって,それ
ーと視察をした.その上で A 社の経営戦略の構想を考え
ぞれの OR 技法の中で独自の工夫を盛り込むようにして
出した.
いる.特にシミュレーションと人工知能の活用が多い.
rOR の応用分野の切り口」で切れば,経営戦略,経
第 i に .A 社の「事業構造戦略のシミュレーション」
を実施した .A 社のトップの方針と要望を考慮しなが
営計画,経営管理,経営予測,質的判断の 5 つの分野に
ら,事業構成のあるべき姿の代替案をパソコンで試して
なる.
みた.
表 1 は矢矧コンサルタントにおける OR 利用の推移を
まとめたもので,横に応用分野,縦に利用技法をとって
・事業領域を今後どの方向へ伸ばすべきか?
・どのような事業構成バランスにするか?
ある.この表はわが社での OR 利用を網羅的にまとめた
・どの事業にどの程度の重点を置くか?
ものではなく,代表的なものをまとめたものである.
このようにして「事業構造戦略j をたて終ったので,
次に「経営資源配分戦略の策定 j に入った.
やはぎ
せいいちろう
矢矧コンサルタント脚
干 102 千代田区紀尾井町 4 ー 1
スコート 2815
1989 年 7 月号
ニューオータニビジネ
r 人的資源
と投資との配分をどうするのがベストか j の答を出すの
である.私が考案した「経営資源配分戦略シミュレーシ
ョン j を使って,人と投資の配分の検討に入る.現在の
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
(
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)3
1
3
表 1
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経営戦略
1
《司
「実戦ポート 7 ォリオ
経営」
ダイヤモンド社
、
、
、
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圏 <
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先手管理
経営先行指導
変化適応型モジュー
lレ構造計画
目標手段解決法
(YS 法)
「判断と決定の科学」
目本能率協会
日本経営出版会
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国 組田 一寸田
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験
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主11
質的判断
経営予測
「これからの経営計
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実
経営管理
経営計画
Z
製品構成戦略
y
わが社における OR 応用発展の推移
経営資源配分戦略
「ポート 7 ォリォ・ 7
戦略的重点管理
戦略的計|利
質的評価選択法
商品別販売適応予測
ーケティング」
ビジネス社
11 昌
経営効率向上戦略
l
' ~MI 構成戦略
コ
3 次尼グラ 7
J〆
ピ
5'先手管理グラ 7
7 経営先行グラ 7
9'戦略的重点管理グラ 7
10' 販売適応予測グラ 7
3' 重要度・満足度対角線
グラ 7
6' 綾合比較折れ線グラ 7
.\'経営資t原配分戦略
二L
タ
ユ主化適応計画 7 ラ 7
8'戦略的計画グラ 7
8 次元グラ 7
夕刊
11' 経営効率向上戦略
7
6 次Jê l' ラ 7
フ
イ
ソ
ク
ス
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G
1
5
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3
人
工
弾力的計画
戦略的重点管理
変化推察エキスパート
ンステム
エキスパートシステ
エキスパートシステム
システム
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2
質的判断システム
①事実明確化法
②加工分析法
ム
知
古色
A
l
1
7
1
6
経営戦略エキスパート
③比較評価法
④対策立案法
1
4
合計
戦略的決定ルール
5
5
5
5
20 システム
ンステム
A 社の経営資源配分構成を調べてみたところ,
í あるベ
後に満足できる投入効率の見通しが得られた .A 社の役
き姿の事業構造J から見て相当のギャップがあるのがわ
員会において,
A 社の経営戦略J についてプレゼンテ
かった.そこで経営資源配分をどのように,どのくらい
ーションを行なってプロジェクトを終了した.
変えれば良いか j の思考実験をパソコンで行なった.最
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© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
オベレーションズ・リサーチ
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.
B 社の経営計画のシミュレーション
D 社の管理者の経営戦略に利用…実
ミ
J
J4
…実例 2
B 社の中期 3 カ年計画を
私は教育研修の依頼を受けることが多い.役員または
B 社は多くの店舗を抱えているス
管理者のための教育研修である.役員の場合は 20人程
B 社のトップからの依頼で,
たてることになった.
ーパーである.したがって地域別売上高と損益を中心と
する中期 3 カ年計画を策定することにした.
企画部を通して地域別売上高の過去と現状の計画用デ
度,管理者の場合は数百人程度の人数になる.
こう L 、う場合に OR と言えば,お定まりはビジネス・
ゲームである.
しかし,
私の会社がやるのは,
r 意思決
ーダを入手した.その上でコンサルタント側で今後の発
定技法 j を応用した「グループ実習」となっている.私
展見通しをたてて,
が考案した「質的判断法」の中から 3 つまたは 4 つの技
3 年先までの中期計画シミュレーシ
ョン・モデルを作りあげたわけである.パソコンのソフ
トウェアは私の会社で開発した計画ソフト“ SIMPLE"
法を応用し
2 泊 3 日または 1 泊 3 日の研修を行なう.
D 社の場合には,f[.の講義とグル}プ実習の 2 つを組
というプログラムを使った.特に重点を置いたのは計画
み合せて,
の多角的検討による利益の向上である.
行なった.そして,このグループ実習で意思決定論の分
コンサルテーションを終るに当たって,数量的分析だ
けでは決められない具体策を立案した.
ゼンテーションは,
トップへのプン
OR 利用による計画シミュレーショ
ンの数量的分析結果と,コンサルタントの判断による質
的検討結果を合わせて報告したわけである.
5
.
C 社の研究開発テーマの評価…実例 3
C 社は中堅の製造会社である.この C 社の研究開発部
門から依額を受けて, r研究開発テーマの評価J を行な
った.
従来において C 社では研究開発の評価を,勘と経験に
頼ってきた.研究開発の進捗段階のポイントごとにテー
300人の管理者に対して「経営戦略研修」を
野に属する 4 つの技法を教え,受講者自身が抱えている
業務上の課題,悩みの解決策を出させた.
4 つの技法と
は,私が考案した「質的判断法」の中の次のものであ
る.
・目標手段解決法
-質的評価選択法
-可否決定法
・投入資源配分法
それぞれの技法の中身は,
OR の切り口で言えば意思
決定技法とシミュレーションとグラフを組み合せたもの
である.
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.
OR を実務に役立てるには
私の体験から言えば .OR を実務に役立てるには,次
マをふるいにかけて,さらに進めたり中断したりしてい
の 3 つが大事だと思う.
た.しかし一定の評価基準はないので,評価をする幹部
①真剣勝負の厳しさ……サラリーマンであった頃の OR
・管理者が替わると,評価の考え方と評価結果が揺れ動
応用時代に比べて,現在のプロフェッショナルになっ
いたのである.
てからは「真剣勝負の厳しさ J が出てきた.あなたは
そこで C 社では,外部の経営コンサルタントに依頼し
て. r 研究開発テーマ評価システム」を作り上げること
サラリーマンであって良いが「真剣の中の真剣さが重
要だ j とつくづく思う.
に決定した.依頼を受けた矢矧コンサルタントは,従来
②オリジナリティの鋭さ……実務上の大きな課題解決に
の研究開発テーマの評価結果の実態を調べあげたうえで
取り組むと .OR の教科書,定石が当てはまらない.
新しいテーマ評価基準項目と評価の仕組みを提案した.
そこで自分なりの考えの柱を深く現実の泥沼の底に打
社内プロジェクト・メンパーとコンサルタントとの討
ちこんで,固い岩盤(問題の核心)に穴をあけること
議の末,この新システムが採用された.この評価の仕組
が大事である.
みは,わが社が考案した「質的評価選択法 J を応用した
ものである.この方法は矢矧コンサルタントが考案した
「質的判断法 J 20技法の 1 つとなっている.
③広〈応用できる柔らかさ……経営戦略の分野で言えば
多くの業種に広〈応用できるように,
OR のコンセ
プト,手順,技法に磨きをかけることが大切である.
以上の「厳 J. r鋭 J. r 柔j が OR を実務に役立てる 3
つの鍵と言えよう.
1989 年 7 月号
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
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