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第 7 回都市気候に関する日独会議での論文発表と座長
日本工業大学 第 45巻 第 4号 (平成28年2月) Report of Researches, Nippon Institute of Technology, Vol.45, №4(February, 2016) 教育・研究活動報告 第 7 回都市気候に関する日独会議での論文発表と座長 第 3 回ヒートアイランド対策に関する国際会議での論文発表 † 成田 健一* (2015 年 12 月 21 日受理) Presentations at the 7th Japanese-German Meeting on Urban Climatology and the 3rd Internationl Conference on Countermeasures to Urban Heat Islands Ken-ichi NARITA (Received December 21, 2015) Tokyo Metropolitan area consists of western diluvial upland and eastern alluvial plain. In upland area, there are many dissected valleys arborescently, and some slope-forests remain along those valleys in patches even though in central Tokyo. It is difficult to lay out a new large park within built-up area, so such slope-forests are precious plots as a natural resource of cold air production. In first presentation, results are shown from micro-climatological observations performed in and around several slope-forests. The obvious shift of wind direction appeared at the beginning of flow-down with a sharp temperature fall of 1 or 2 degrees. In slope-forest, cold air drainage occurs earlier than plane green space because of topographical effects. In second presentation, firstly we proposed a temperature measuring method using the sound virtual temperature of the sonic anemometer-thermometer as a proper air-temperature measuring method for the investigation of water mist cooling. Secondary, in order to evaluate the psychological influence of water mist evaporation, subjective experiments were conducted in the outdoor sunny place. We succeeded to reveal the detailed air temperature variation in the outdoor real setting by the new measurement technique. And some proper condition for effective outdoor application, for example air temperature level and solar radiation shielding, were also clarified. はじめとした自然のポテンシャルを活かした街づくりとい 1 都市気候に関する日独会議の概要 う関心が高く、今回も都市計画分野の研究者から、 Nature-Oriented、Climate-Friendly、Regional potential、 本会議は、1994 年のドイツ・カールスルーエを皮切り に、 約3年毎に日本とドイツで交互に開催しているもので、 Water-Sensitive などのキーワードが強調されていたこと 40 人ほどの規模で都市計画への応用を意識した都市気候 が印象的であった。これらの方向性は、我々が環境省と進 研究の集中的な議論を行うことを意図した会議である。今 めている暑熱適応デザイン「暑熱対策が機能として盛り込 回の会議は、10/6~10 の日程でハノーバー大学で開催さ まれた街の景観づくり」にも通じる内容であった。 れ、エクスカーションでは、ハノーバー市の都市計画担当 者から温暖化に配慮した都市計画の取り組みについて情報 提供を受け、さらに Kornsberg で展開されているエコロ ジカル住宅地の現場を訪れ、ドイツにおける最近の宅地開 発コンセプトと具体的な適応技術を見学した。 日本はヒートアイランド対策技術では世界のトップを走 っており、今回も再帰反射フィルムなど日本の先端技術の 検証結果が数多く発表され、ドイツの研究者からは多くの 質問が出されていた。一方、ドイツは、クリマアトラスを 図1 _____________________________________________________________________________________________________________________________________________________ † 特別研究旅費による 建築学科 * 98 日独会議の会場となったハノーバー大学 日本工業大学 第 45巻 第 4号 (平成28年2月) Report of Researches, Nippon Institute of Technology, Vol.45, №4(February, 2016) 2 ドイツでの論文発表の概要 世界的にも評価されたことは喜ばしいことである。 筆者らが発表した内容は、以下の通りである。 *発表 1(10 月 6 日):K. Narita, et al. : Nighttime cold air drainage from patchy slope-forests in Tokyo. *発表 2(10 月 6 日):H. Sugawara, K. Narita, et al. : How Much Does Urban Green Cool Town? *座長(10 月 8 日) : session “Energy Consumpution” 発表 1 の要旨は、都内に点在す る斜面緑地に注目し、そこでの冷 図3 気形成と周辺市街地への流出の実 特別表彰の授与式で登壇した日本からの参加者 4 ベネチアでの論文発表の概要 態を実測結果から明らかにしたも のである。夜間、放射冷却作用で 筆者らが発表した内容は、以下の通りである。 形成された冷気が緑地から流出す K. Narita, et al. : Experimental Study on Evaporative る「にじ見出し現象」は、重力流 Cooling of Fine Water Mist for Outdoor Comfort in 的に生じるため、斜面緑地では地形効果でより流出し易く Urban Environment. なっていることを明らかにした。また、規模が異なる緑地 この発表の要旨は、近年日本において注目されている微 の比較検討から、十分な冷気形成には斜面緑地の幅が 細水ミスト噴霧による暑熱対策の効果について、超音波風 200m 以上であることが必要との結果も示された。 速温度計を用いた音仮温度からの気温低下測定法の適用と、 発表 2 の要旨は、目黒区の自然教育園を対象とした熱収 被験者実験による快適性評価の結果を報告したものである。 支観測から、緑地の冷却作用を熱量として評価することを 蒸発冷却効果を期待する微細水ミスト(以下、ミストと 試みたもので、 標準的な家庭用エアコン (冷房能力 2.2kW) いう)噴霧装置を用いた気温低下量の測定では、熱電対や の台数に換算すると、平均約 5000 台、最大では約 10000 サーミスタなどのセンサーを用いるのが一般的である。こ 台に相当することを示した。 の場合、ミスト粒子が気化していない状態の空気中での測 3 HI 対策に関する国際会議の概要 定では、センサーへのミスト付着(水滴)により測定値が 湿球温度に近似していることが考えられる。そこで、音仮 ヒートアイランド対策に関する国際会議は、2006 年に 第一回大会が東京で開催された日本発の国際会議といえる。 現在中心的に活動しているのはカリフォルニア大学の 温度の測定によりミスト付着の影響を軽減できると考えら れる超音波風速温度計での乾球温度測定の可能性を検討し、 その妥当性を示した。 Akbari 氏で、第二回大会は 2009 年に彼の所属するカリ 一方、ミスト噴霧による暑熱緩和効果に関しては、同時 フォルニア大学のバークレー校で行われた。今回は欧州に に日射遮蔽を行うことの有効性が指摘されている。そこで おける HI 対策の普及を図る目的で、10/13~15 の日程で 材質・配色等の違いにより日射遮蔽率の異なる数種の日除 イタリア・ベネチアでの開催となった。会場となったのは、 けを比較対象とし、日射遮蔽とミストの組み合わせによる ベネチアの市街地から船で 10 分ほどの Salvole 島という 冷却効果を被験者への心理実験によって検証した。暑熱感 小島にある Venice International University である。 の緩和には 25%以上の日射遮蔽を行うと効果的であるこ と、また 25℃以下ではミストを噴霧すると逆に不快にな る傾向が見られることなどを明らかにした。 おわりに ドイツの会議では、3.11 以降、筆者らが提唱してきたパ ッシブ・アーバン・デザインというコンセプトが、すでに 図2 広く都市計画に定着していることに共感と感動を覚えた。 ベネチアの会場となった Salvole 島 一方、イタリアの会議では、微細水ミスト噴霧というのは なお会議では、20 年以上に渡るヒートアイランド対策 日本ではかなり普及している対策技術であるものの、水が の科学及び応用に関する継続的な貢献という内容で日本人 貴重品である欧州では基本的に受け入れ難いという印象を 研究者全員が特別表彰された。これまでの、我々の成果が 持たれたようである。文化と風土の差を痛感させられた。 99