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くまもと生活排水処理構想2011
~快適なくらしと健全な水環境をめざして~
私たちのふるさと熊本は、清らかで豊かな水資源に恵まれ、森林や草原、棚田など先人から受け継い
だすばらしい自然と景観を持っています。特に、豊富な地下水や多くの湧水源、水産資源の宝庫である
有明海・八代海は、私たち県民の生活と産業を支えており、まさに“水は県民の宝”と言えるものです。
このすばらしい水環境を守り次世代に残していくため、県では「くまもとの夢4カ年戦略」の中で「県
民総ぐるみで世界に誇れる環境立県くまもと」をめざして、健全な水環境と水循環の保全や有明海・八
代海の再生、快適な生活環境の保全などに取り組んでおります。
公共用水域の水質保全と生活環境の改善を担う生活排水対策については、平成15年に「熊本県生活
排水対策基本方針」及び「熊本県生活排水処理施設整備構想」を定め、市町村と連携して各種の生活排
水処理施設整備を進めてきたところです。これにより、施設整備は、一定の水準に達しましたが、少子
高齢化の進行や市町村財政の悪化等生活排水対策を取り巻く情勢も、大きく変化してまいりました。そ
こで、このたび、有識者や県民の皆様の御意見を伺い、市町村と協力して新たな生活排水対策のマスタ
ープランとなる「くまもと生活排水処理構想2011」を策定することとしました。
この新しい構想では、単に生活排水処理施設整備の進め方を示すだけでなく、整備した施設の機能を
十分に発揮させるため、市町村や県が「すべきこと」、県民の皆様に「していただきたいこと」
、県民の
皆様が「できること」を明らかにしております。
今後は、県民の皆様、市町村、県がそれぞれの役割のもと一体となって生活排水対策を進め、「全て
の県民の快適な暮らし」と「健全な水環境と水循環」の実現を目指してまいります。
平成23年6月
熊本県知事
蒲 島 郁 夫
【くまもと生活排水処理構想2011】
-目 次-
1.生活排水処理とは
1
生活排水について
生活排水処理施設について
2.生活排水処理のめざすところ
5
快適なくらしの実現
川や海などの健全な水環境と水循環の実現
3.くらしと水環境の10年後の姿
17
くらしの姿
水環境の姿
4.めざすところを実現するために
県民、市町村、県が一体となった総合的な取組
生活排水処理施設の整備手法の決定
県民の皆様に重点的に取り組んでいただきたいこと
市町村、県が重点的に取り組むこと
理解を深めるために
11
【 資 料 編 】
-目
資料-1
次-
生活雑排水とその影響
26
( 1 ) 台 所 か ら の 排 水 ··············································································· 26
( 2 ) 生 活 雑 排 水 の 影 響 ············································································ 26
資料-2
生活排水処理施設の特徴と種類
27
( 1 ) 集 合 処 理 と 個 別 処 理 の 比 較 ································································ 27
( 2 ) 生 活 排 水 処 理 施 設 の 種 類 ··································································· 28
資料-3
生活排水処理施設のしくみ
29
( 1 ) 集 合 処 理 施 設 ( 下 水 道 ・ 集 落 排 水 施 設 ) の し く み ···································· 29
( 2 ) 個 別 処 理 施 設 ( 合 併 浄 化 槽 ) の し く み ·················································· 30
資料-4
生活排水処理施設の現状
31
( 1 ) 都 道 府 県 別 生 活 排 水 処 理 施 設 の 普 及 状 況 ( 汚 水 処 理 人 口 普 及 率 ) ··············· 31
( 2 ) 市 町 村 別 生 活 排 水 処 理 施 設 の 普 及 状 況 ( 汚 水 処 理 人 口 普 及 率 ) ·················· 33
( 3 ) 生 活 排 水 処 理 施 設 の 普 及 ( 汚 水 処 理 人 口 普 及 率 ) の 推 移 ··························· 35
( 4 ) 生 活 排 水 処 理 施 設 整 備 事 業 費 の 推 移 ····················································· 36
( 5 ) 生 活 排 水 処 理 施 設 整 備 の 実 施 状 況 ( 平 成 2 3 年 4 月 現 在 ) ······················· 36
資料-5
公共用水域の水質保全の現状
37
資料-6
生活排水処理施設の整備手法の決定
38
( 1 ) 整 備 手 法 の 決 定 フ ロ ー ······································································ 38
( 2 ) 総 人 口 の 推 移 と 予 測 ········································································· 38
( 3 ) 整 備 手 法 別 の ト ー タ ル コ ス ト 算 定 根 拠 ·················································· 39
( 4 ) 水 質 保 全 効 果 の 確 認 ········································································· 40
( 5 ) 決 定 し た 整 備 手 法 の 全 体 計 画 ····························································· 43
資料-7
前回計画との比較
45
( 1 ) 市 町 村 別 比 較 ················································································· 45
( 2 ) 県 全 体 の 比 較 ················································································· 49
資料-8
生 活 排 水 処 理 施 設 の 整 備 見 通 し ( 平 成 27 年 度 末 )
51
資料-9
生 活 排 水 処 理 施 設 の 整 備 見 通 し ( 平 成 32 年 度 末 )
53
資 料 - 10
資 料 - 11
資料-12
生 活 排 水 処 理 施 設 整 備 の 現 状 と 10 年 後
平 成 32 年 度 県 内 河 川 の 環 境 基 準 達 成 の 見 通 し
平成32年度水質汚濁量改善の見通し
55
59
60
( 1 ) 坪 井 川 に 流 れ 込 む 汚 れ の 量 ( B O D 負 荷 量 ) ········································· 60
( 2 ) 有 明 海 ・ 八 代 海 に 流 れ 込 む 汚 れ の 量 ( C O D 負 荷 量 ) ······························ 61
( 3 ) 有 明 海 ・ 八 代 海 に 流 れ 込 む 汚 れ の 量 ( 窒 素 負 荷 量 ) ································· 63
( 4 ) 有 明 海 ・ 八 代 海 に 流 れ 込 む 汚 れ の 量 ( リ ン 負 荷 量 ) ································· 65
資 料 - 13
下水道汚泥の有効利用状況
67
資 料 - 14
構想策定フロー
68
資 料 - 15
生 活 排 水 対 策 に 係 る 経 緯 ( 平 成 22 年 度 現 在 )
69
資 料 - 16
生活排水対策に関する問合せ先一覧
73
1.生活排水処理とは
生活排水について
生活排水とは
○
生活排水とは、私たちが日常生活を営む上
例えば、天ぷら油大さじ1杯 を
15ml
で出す排水(汚水)のことです。生活排水に
魚が住める水質にするには・・・
は大きく分けて、炊事、洗濯、入浴などによ
×15杯
る“生活雑排水”とトイレから出る“し尿”
があります。
○
の水 が必要
バスタブ(300L)
私たちは、1 人 1 日当り200リットル
の生活排水を出すと言われていますが、その
し尿
33%(13g)
中には約40gの汚れ(BOD*負荷量)が
生活排水
BOD*
(40g)
含まれています。そのうち67%が生活雑排
水によるもので、し尿に比べ大きなウェイト
を占めています。
炊事
45%(18g)
生 活雑排 水
洗濯
67%(27g)
10%(4g)
入浴
12%(5g)
また、生活排水にも含まれる窒素やリンは、
海へ過剰に流入することで、藻類等の異常増
殖を引き起こす富栄養化の一因となってい
ます。
○
........
生活雑排水を適切に処理しない(きれいに
しない)まま、家の周りの側溝や水路に流す
ことは、家の周辺で悪臭や害虫が発生するお
生活排水に含まれる汚れの量
それがあることに加え、川や海などを汚す原
(1人1日当り)
因の1つとなります。
佐賀県
福岡県
大分県
生活排水が熊本県の川や海に与える影響
有明海
菊池川
九
阿蘇
白川
○
有明海・八代海は、陸地に囲まれ外海との
山
長崎県
水の交換が行われにくい閉鎖性水域である
地
緑川
ことから、熊本県を含む沿岸5県の陸域から
の影響を大きく受けます。
○
州
宮崎県
特に、熊本県は、九州山地の西側に位置し、
球磨川
八代海
県内を流れるほとんどの河川が有明海・八代
海に流れ込む地理的特徴を持っています。
鹿児島県
熊本県における流域界
1
-1-
生活排水処理施設について
生活排水処理施設の種類と特徴
生活排水処理施設は、“下水道”、“集落排水施設”、“合併浄化槽”の主に3種類
○
“下水道”や“集落排水施設”は、複数の家庭からの生活排水を管きょで集めて処理場で処理
......
するものであり、集合処理施設と呼ばれています。また、
“合併浄化槽”は、家庭ごとに生活排
......
水を処理するものであり、個別処理施設と呼ばれています。
○
集合処理施設は市町村が、個別処理施設は住民が整備することが一般的です。
○
家屋が多く集まっている地域には“下水道”、農山漁村の家屋が集まっている地域には“集落
排水施設”が一般的に用いられます。一方、家屋がまばらな地域には“合併浄化槽”が多く用い
られます。
農山漁村の家屋が
集まっている地域
家屋がまばらな地域
【集合処理】
下水道
集落排水施設
【個別処理】
合併浄化槽
下水処理場
合併浄化槽
家屋が多く集まっている地域
単独浄化槽の問題点
浄化槽には、「単独浄化槽」と「合併浄化槽」
未処理
の2種類があります。
単独浄化槽は、トイレ排水のみを処理する浄化
単独浄化槽
槽です。合併浄化槽は生活雑排水とし尿の両方を
処理する施設です。
単独浄化槽の家庭は、くみ取り便所の家庭と同
じように、生活雑排水を処理しないまま流してい
未処理
ます。(合併浄化槽に比べ8倍のよごれを排出)
このため、単独浄化槽は、現在では新設が禁止
されているとともに、既存の単独浄化槽は、合併
浄化槽に転換することが求められています。
くみ取り
3
-3-
生活排水処理施設の整備効果
○
これまで、生活排水処理施設整備の推進(汚水処理人口普及率*の増加)に伴い、県内の河川
環境基準達成率(%)
100
100
80
80
60
60
40
40
20
20
H21
H20
H19
H18
H17
H16
H15
H14
H13
H12
H11
H10
H9
H8
H7
H6
H5
H4
H3
H2
0
H1
0
汚水処理人口普及率(%)
や有明海・八代海の水質は、着実に改善(環境基準*達成率の増加)してきています。
汚水処理人口普及率
環境基準達成率(BOD)
※平成元年から平成 9 年までの汚水処理人口普及率については、下水道だけの数値です。
環境基準達成率(河川)
生活排水処理のしくみ
...
生活排水を処理(きれいに)する主役は、水中に生息する微生物です。
水中の微生物に十分な酸素を与えると、微生物が汚れを食べて増殖し集まって沈殿することにより、生活
排水がきれいになります。
..
また、沈殿した微生物は、汚泥として取り除かれます。
処理水
生活排水
汚泥
●汚れを食べて増える微生物
●微生物が集まって沈殿した汚泥
汚水処理人口普及率とは?
生活排水処理施設を利用することができる人口、すなわち生活排水(汚水)を適切に処理することができ
る人口の割合を示すものです。
環境基準とは?
人が清潔で快適なくらしを送る上で維持することが望ましいとされる、大気、土壌の汚染、水質汚濁、騒
音などの基準のことです。
この基準を満たしている(達成している)ことが、環境の良し悪しを判断する代表的な指標となります。
本構想での環境基準達成率は、川や海などの水質基準に関して達成している割合を示すものです。
4
-4-
2.生活排水処理のめざすところ
快適なくらしの実現
◆いまの姿◆
○
快適なくらしを送れていない県民がまだ“40万人”もいます。
生活排水処理施設が整備されていないと・・・
・ 台所の排水などの生活雑排水が家の周りの側溝や水路などに流れ込み、悪臭や害虫が発生した
......
り、美観が損なわれることとなり快適なくらしと言えません。
・ くみ取り便所の家庭では水洗トイレも利用できません。
整備されていないと・・・
整備されると・・・
整備されていないと・・・
整備されると・・・
生活排水処理施設の普及状況
口は、着実に増えてきていま
す。今では県民のおおむね4
......
人に3人が快適なくらしを送
れるようになっています。
しかし、まだ県民の約40
100.0
約40万人
80.0
1,500
60.0
1,000
40.0
500
20.0
0
0.0
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21
万人(おおむね4人に1人)
に生活排水処理施設が普及し
ていません。
下水道
集落排水施設等
合併浄化槽
未普及
汚水処理人口普及率
汚水処理人口の推移
◆めざすところ◆
生活排水処理の推進により、全ての県民が快適なくらしを送れるようになること
をめざします。
5
-5-
汚水処理人口普及率(%)
設の整備により、汚水処理人
(課題)
2,000
これまでの生活排水処理施
汚水処理人口(千人)
(現状)
川や海などの健全な水環境と水循環の実現
◆いまの姿◆
○
健全な“水環境”が達成されていません。
熊本県は、清らかで豊かな地下水や湧水源を有し、これら
が川を通じて有明海・八代海に流れ込む豊かな水環境に恵ま
れています。これらの水は、県民の生活と産業を支えており、
まさに“水は県民の宝”となっています。
○
私たちは、水を大切に使うとともに、川や海などの水質を
守っていく取組等を進め、水環境と水循環を健全な状態に保
っていくことが必要です。
水環境の保全状況
○
熊本県内を流れる川や有明海・八代海等には、水質に関す
る環境基準が設定されています。
BOD・COD
窒素・りん
環境基準の達成状況(平成 21 年)
(現状)
環境基準の達成率(平成 21 年)
河川・湖沼:91.2%
達身成 : 未達成 :
※調査地点数により算定
海域:69.4%(うち窒素・リンの達成率 40.9%)
(課題) 川や海の環境基準がまだ達成されていない箇所が残っています。
(課題)特に、閉鎖性水域である有明海・八代海では、窒素・リンの環境基準が達成されていな
い箇所が多くあります。
◆めざすところ◆
生活排水処理の推進により、川や海などの水環境と水循環が健全な姿になる
ことをめざします。
6
-6-
3.くらしと水環境の10年後の姿
○
今後、「生活排水処理のめざすところ」に向かって、県民、市町村、県がそれぞれの役割を踏
まえつつお互いに協力・連携しながら、地域の実情に応じた生活排水処理施設の整備や機能向上、
施設の適切な維持管理など、総合的な生活排水処理の取組みを進めていくこととなります。
○
その上で、ここでは、生活排水処理のめざすところの“くらし”と“水環境”の 10 年後の姿
を明らかにします。
くらしの姿
◆快適なくらしを送れる県民が、10 万人増える見込みです。
○
......
今後10年間で、さらに10万人の県民の方が、
快適なくらしを送れるようになる見込みです。
【汚水処理人口普及率】
平成 21 年度末
平成32 年度末
増減
県総人口 (a)
183 万人
171 万人
-12 万人
汚水処理人口 (b)
144 万人
154 万人
+10 万人
汚水処理人口普及率 (b)/(a)
78%
90%
+12%
平成 32 年度末の県総人口は、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口資料に基づくものです。
100.0
90%
78%
200
80.0
17
39
150
60.0
10万人増
100
40.0
183
171
144
154
50
0
20.0
0.0
H21
H32
下水道
集落排水施設等
未普及
汚水処理人口普及率
10年後の汚水処理人口
7
-7-
合併浄化槽
汚水処理人口普及率(%)
250
汚水処理人口(万人)
※
項目
水環境の姿
◆川や海などの水質が改善します。
○
今後10年間で、県内河川の環境基準達成率が 100%まで向上する見込みです。
【環境基準達成率(河川)
】
平成 21 年度末
平成 32 年度末
増減
環境基準達成率(BOD)
92%
100%
+8%
環境基準達成率 (%)
100.0
100.0
90.0
80.0
80.0
60.0
70.0
40.0
60.0
20.0
50.0
0.0
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21
環境基準達成率 (BOD)
汚水処理人口普及率
環境基準達成率(河川BOD)
8
-8-
H32
汚水処理人口普及率 (%)
項目
(事例1)坪井川の水質改善
今後 10 年間で、坪井川に流れ込む生活排水による汚れの量(BOD 負荷量)
が 70%減少し、坪井川の水質が改善する見込みです。
河川の水質改善の事例として、生活排水による影響が大きく、環境基準未達成となっている坪井川を選定しています。
坪井川に流れ込む生活排水による汚れの量
項目
坪井川
平成 21 年度末
平成32 年度末
増減
2.0t/日
0.6t/日
-1.4t/日
BOD 負荷量
3.0
BOD負荷量(t/日)
2.0
2.0
70%減
1.0
0.6
0.0
H21
H32
BOD負荷量
坪井川の水質改善
坪井川の上代橋、千金甲橋には環境基準点(BOD 5mg/L)が設定されています。現在、環境
基準を達成していない上代橋においても、10 年後には水質の改善が見込まれます。
上代橋
BOD(mg/L)
10.0
熊本市
7.0
環境基準値:5.0mg/L
5.0
3
0.0
H21
千金甲橋
H32
坪井川
千金甲橋
10.0
上代橋
BOD(mg/L)
※
白川
5.0
3.6
環境基準値:5.0mg/L
1
0.0
H21
坪井川の水質改善
9
-9-
H32
(BOD 5mg/L:魚が住める水質)
(事例2)有明海・八代海の水質改善
今後 10 年間で、有明海・八代海に流れ込む生活排水による汚れの量(COD
負荷量)が31%、窒素が 6%、リンが 8%減少し、有明海・八代海の水質の改
善が見込まれます。
有明海・八代海に流れ込む生活排水による汚れ等の量
項目
平成 21 年度末
平成32 年度末
増減
COD負荷量
19.7t/日
13.6t/日
-6.1t/日
窒素
13.9t/日
13.0t/日
-0.9t/日
リン
1.2t/日
1.1t/日
-0.1t/日
有明海・八代海
20.0
19.7
20.0
15.0
5.8
13.6
31%減
10.0
5.0
窒素(t/日)
COD負荷量(t/日)
25.0
13.9
3.8
9.8
13.9
13.0
2.4
2.8
10.0
5.0
6%減
11.1
10.6
H21
H32
0.0
0.0
H21
H32
有明海
八代海
有明海
2.5
2.0
1.5
1.2
1.0
0.3
0.5
0.9
0.8
H21
H32
1.1
8%減
0.3
0.0
有明海
八代海
窒素
COD負荷量
リン(t/日)
15.0
八代海
リン
10
-10-
4.めざすところを実現するために
県
県民、市町村、県が一体となった総合的な取組
○
「生活排水処理のめざすところ」を実現するためには、下水道、集落排水施設、合併浄化槽の
3 種類ある生活排水処理施設のうち、どの手法で各地域を整備するのかを決定する必要がありま
す。
○
この決定した整備手法により、市町村が中心となって下水道や集落排水施設などを着実に整備
していくこととなります。
○
また、県民の皆様にも、下水道等への接続や合併浄化槽の整備など“していただくこと”や、
調理油等を流さないなど“できること”があります。そのため、市町村・県では、県民の皆様の
理解が得られるよう広報に努めるとともに、補助金等による支援に取り組みます。
○
このように、「生活排水処理のめざすところ」を実現するためには、県民、市町村、県がそれ
ぞれの生活排水処理における役割等を理解したうえで、相互に協力・連携しながら一体となって
総合的に取り組んでいくことが必要です。
県民
市町村・県
生活排水処理施設の整備手法の決定
施設整備の
推進
・下水道等への接続
・下水道、集落排水施設等の整備
・市町村設置管理型合併浄化槽
の整備拡大
・単独浄化槽の
合併浄化槽への転換
・合併浄化槽の設置
(くみ取り便所の家庭)
・県民への働きかけ、支援
・下水道等の効率的、効果的な
管理運営
・生活排水が有する資源、
エネルギーの有効利用
・浄化槽の保守点検、清掃、
法定検査の適切な実施
施設の適切な
管理運営
・調理油等を流さないなど、
生活排水処理施設の適正な
使用
・県民への働きかけ
11
-11-
生活排水処理施設の整備手法の決定
○
地域ごとの整備手法を決めるに当たっては、市町村が人口などの地域社会の変化や地形、家屋
の分散状況等を踏まえ、水質保全効果及び経済性など様々な要素に基づき総合的に検討するとと
もに、住民の皆様のご意見を反映するように努めています。
○
決定した整備手法を、その施設の種類ごとの対象人口についてとりまとめると下表のようにな
ります。また、決定した整備手法のエリアを熊本県全域の地図に表した“全体計画図(エリアマ
ップ)”は、次ページのようになります。さらに、市町村ごとの整備手法別の割合は、14 ペー
ジのようになります。
【生活排水処理施設の整備手法別対象人口】
対象人口
(千人)
施設の種類
下水道
集合処理
集落排水施設等
計
個別処理
合併浄化槽
合計(熊本県全体)
※
構成比
1,311
76.6%
121
7.0%
1,432
83.6%
280
16.4%
1,712
100%
対象人口は、平成 32 年推計人口(国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口資料より)に基づくものです。
合併浄化槽
16.4%
集落排水施設等
7.0%
対象人口
1,712 千人
下水道
76.6%
生活排水処理施設の整備手法別割合
12
-12-
下水道
凡例
集落排水施設等
合併浄化槽
全体計画図(エリアマップ)
13
-13-
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
熊本市
八代市
人吉市
荒尾市
水俣市
玉名市
山鹿市
菊池市
宇土市
上天草市
宇城市
阿蘇市
天草市
合志市
美里町
玉東町
南関町
長洲町
和水町
大津町
菊陽町
南小国町
小国町
産山村
高森町
西原村
南阿蘇村
御船町
嘉島町
益城町
甲佐町
山都町
氷川町
芦北町
津奈木町
錦町
多良木町
湯前町
水上村
相良村
五木村
山江村
球磨村
あさぎり町
苓北町
熊本県合計
下水道
集落排水施設等
合併浄化槽
生活排水処理施設の整備手法別割合(人口ベース)
14
-14-
90%
100%
県民の皆様に重点的に取り組んでいただきたいこと
◆取組1◆
○
下水道などへの接続、合併浄化槽の整備
単独浄化槽を使用されている家庭やくみ取り便所の家庭では、台所排水等の生活雑排水を処理
しないまま汚れを流しています。
○
特に、下水道や集落排水施設が整備されている地域であるにもかかわらず、これらにつながず
に単独浄化槽やくみ取り便所のままの家庭が見受けられます。平成 21 年度末現在、約 13 万人
の方が下水道等を利用されていません。
また、熊本県内には、単独浄化槽が、平成 21 年度末現在、約 8 万基もあります。
○
現在、浄化槽を使用されている家庭やくみ取り便所の家庭は、ご自宅などの家屋が“下水道・
集落排水施設(集合処理方式)”か“合併浄化槽(個別処理方式)”のどちらの地域にあるかご
確認ください。(P13 の「全体計画図(エリアマップ)」参照)
その上で・・・
【下水道又は集落排水施設整備地域の場合】
していただきたいこと:下水道などへの接続
下水道管が整備された後、自宅敷地内に排
水管などの排水設備等を設置して下水道管な
どに接続してください。
(下水道法で接続が義務づけられています。)
※
下水道管など
への接続
市町村等による様々な助成制度があります。
【合併浄化槽整備地域の場合】
していただきたいこと:合併浄化槽の整備
単独浄化槽を使用されている場合は、合併
浄化槽へ転換してください。
・ くみ取り便所の家庭は、合併浄化槽を設置
してください。
・
単独浄化槽から
合併浄化槽への
転換
※
市町村等による様々な助成制度があります。
15
-15-
下水道管
10,000
○
100
50
100
40
16
未満 未満
BOD(mg/L)
約 9%が水質基準を守れていません。
(合併浄化槽の放流水質基準
14
れます。熊本県内の合併浄化槽のうち
12
0
8
実施されていないケースが見受けら
10
2,000
6
しかし、なかには維持管理が適切に
2
○
4
4,000
30
基 準 値 (20mg/L)以 上 の 水 質
基準値(20mg/L)をこえる水質
( 全 体 の 9% )
(全体の9%)
28
6,000
26
切に行うよう定められています。
24
8,000
22
点検・清掃・法定検査の維持管理を適
20
浄化槽については、浄化槽法で保守
基数
○
浄化槽の保守点検・清掃・法定検査の適切な実施
18
◆取組2◆
未満 以上
熊本県内の合併浄化槽の放流水質分布
BOD20mg/L 以下)
(公益社団法人 熊本県浄化槽協会
平成 21 年度 法定検査結果より)
また、熊本県内では、法定検査を実施している家庭が 50%以下と低いため、浄化槽がきち
んと機能を発揮できているかどうかが確認できていません。
していただきたいこと:浄化槽の適切な維持管理
浄化槽法に基づき、浄化槽の保守点検・清掃を適切に行い、法定検査を確実に受
けてください。
浄化槽の保守点検・清掃・法定検査とは?
(公益社団法人熊本県浄化槽協会作成パンフレットより)
16
-16-
◆取組3◆
○
家庭内での生活排水対策
川や海の汚れを少しでも減らすためには、各家庭でできるだけ汚れを流さないことが大事です。
また、このことが、生活排水処理施設の機能維持にもつながります。
できること:家庭内での汚れを減らす努力
家庭内でも調理油等を流さないなどできることがあります。
台
所
で
で
き
る
こ
と
洗
濯
で
で
き
る
こ
と
・
油を直接排水口に流さず、残った油は吸収剤に吸
わせたり、新聞紙や古布に染込ませるなどして処
理します。
・
米のとぎ汁は、庭や畑、植物への水やりに利用し
ます。
・
食器に付いた油などの汚れは、ゴムベラやキッチ
ンペーパーなどでふき取ってから洗います。
・
三角コーナーやストレーナにはネットや水切り袋
を取り付け、できるだけ調理くずを流さないよう
にします。
・
シャンプーやリンスの適量使用を心
がけます。
・
排水口の髪の毛などはこまめに取り
除きます。
・
洗剤を減らす工夫として、アクリル
たわし等を掃除の際に使用します。
・
・
洗剤の適量使用を心がけます。
分解性の高い石けんやリンを含まない洗剤を使用
します。
・
風呂の残り湯は、洗濯などへの再利用を心がけます。
17
-17-
お
風
呂
場
で
で
き
る
こ
と
市町村、県が重点的に取り組むこと
◆取組1◆
生活排水処理施設の整備促進
【下水道又は集落排水施設整備地域の場合】
すべきこと:下水道・集落排水施設の整備促進
・
・
市町村と県が連携して、下水道及び集落排水施設の整備を進めます。
整備された下水道等への早期接続が進むよう、市町村は、広報誌などによ
り住民の皆様への周知に努めるとともに、接続費用に対する助成も行ってい
きます。
【下水道、集落排水施設の整備面積】
(単位:千 ha)
施設の種類
全体計画
平成 21 年度
平成 32 年度
増
下水道
36.6
25.7
32.6
+6.9
集落排水施設
6.6
4.3
4.8
+0.5
【合併浄化槽整備地域の場合】
すべきこと:合併浄化槽の普及促進
・
単独浄化槽やくみ取り便所の合併浄化槽への切り替えについて、広報誌など
により住民の皆様への周知に努めるとともに、切り替え費用に対する助成も行
っていきます。
・ 特に県は、合併浄化槽の適切な維持管理が確保できる市町村設置管理型の
合併浄化槽の整備が普及するよう、市町村に対する働きかけや支援を行ってい
きます。
下水道等への接続における助成制度
県内市町村では、接続に伴う排水設備の設置やトイレの改造などに必要な費用に対して、補助金を設けた
り、融資のあっせん、利子補給などを行っています。
合併浄化槽設置における助成制度
合併浄化槽本体の設置や単独浄化槽の撤去にかかる費用に対して、国、県、市町村からの補助があります。
18
-18-
◆取組2◆
下水道等の効率的・安定的な管理運営
すべきこと:下水道等の計画的な改築・更新
下水道等の長寿命化計画を策定し、計画的な改築・更新を行うことにより、施設の
故障や運転停止等を未然に防止するとともに、施設の耐震性能の向上等にも取り組
みます。
これまで市町村、県が整備した下水道等の多くは、近く老朽化する時期を迎えます。
15年以上
29%
(35施設)
15年未満
71%
(84施設)
現在
平成22年度
処理場数の増加
(※15 年は機械や電気などの設備の更新が
必要となってくる時期)
10年後
平成32年度
30年以上
33%
(1,991km)
30年未満
67%
(4,040km)
30年未満
90%
(5,439km)
建設後 15 年以上の
15年以上
85%
(101施設)
5年後
平成27年度
30年以上
10%
(592km)
建設後 30 年以上の
30年未満
31%
(1,857km)
30年以上
69%
(4,174km)
下水道管きょの整備延長
(※30 年は管きょの損傷の発生が多く
なってくる時期)
10年後
平成32年度
20年後
平成42年度
300
6,000
200
4,000
100
2,000
年度別整備延長
H20
H18
H16
H14
H12
H8
H10
H6
H4
H2
S63
S61
S59
S57
S55
S53
S51
S49
S47
S45
S43
S41
S39
S37
S35
S33
S31
S29
S27
S25
S23
0
延べ管渠延長(km)
現在
平成22年度
各年度別管渠整備延長
(km)
15年未満
15%
(18施設)
15年未満
43%
(51施設) 15年以上
57%
(68施設)
H21
○
0
延べ延長
県内下水道の管きょ整備延長の推移
○
老朽化した下水道等は、管きょの破損や下水処理場等の突然の運転停止など、県民の安全・安
心な生活に重大な影響を及ぼすおそれがあるため、不測の事態に備えた老朽化対策が必要となり
ます。今後は、長寿命化計画を策定し、計画的に改築・更新して、施設にかかる総費用の最小化
や最適化に取り組んでいく必要があります。
○
東日本大震災では、多くの生活排水処理施設が被災し、住民の生活に大きな影響をあたえまし
た。施設の耐震性能の向上等に取り組むとともに、仮に被災しても早急に機能回復が図れるよう
あらかじめ備えておく必要があります。
19
-19-
すべきこと:下水道等の管理運営における収支改善
今後とも、施設の管理運営を効率的・安定的に継続していくために、建設費や維持
管理費のコスト削減、使用料の確保など収入と支出のバランスが取れた健全な経営
に努めます。
○
下水道など、市町村が管理する生活排水処理施設は、使用者の皆様から料金(使用料)をいた
だいて管理運営しています。
このため、下水道等は、上水道やバス・電車・病院等と同じようにそれだけの特別な会計(財
布)を設けて独立採算することが原則となっており、性質上一般会計から負担すべき分を除き、
使用料収入によって管理運営費を賄うこととされています。この収支の主な内訳は、下表のよ
うになっています。
【生活排水の処理にかかる収支の内訳】
項目
○
内訳
収入
使用料、一般会計からの負担金、
[一般会計からの補てん]
支出
管理運営費
維持管理費(処理場の運転など施設の維持管理に要する費用)
元利償還費(施設建設時に借りたお金及び利子の返済費)
しかし、下水道や集落排水施設の管理運営状況をみると、維持管理費を使用料収入で賄えてい
ない施設を抱えている市町村は約3分の 2 となっており、収入の不足分は一般会計から補てん
しています。
○
さらに、将来は、施設の老朽化に伴う改築・更新費用などの支出の増加や人口減少による使用
料収入の減少が見込まれ、収入と収支のバランスがくずれることが想定されます。
○
今後、市町村が管理する生活排水処理施設の管理運営を健全に行うためには、中長期の収支見
通しを踏まえ、建設・維持管理の支出の節減や使用料収入の確保など、収入・支出の両面にわた
って取組を進めていく必要があります。
20
-20-
◆取組3◆
生活排水が有する資源・エネルギーの有効利用
すべきこと:資源・エネルギーの有効利用
未利用となっている下水道の汚泥や処理水の有効利用の推進など、生活排水処
理においても循環型社会の形成や地球温暖化対策に貢献していきます。
特に、下水道汚泥については 100%有効利用をめざします。
○
下水処理場は、生活排水を処理するために、電気などの大量のエネルギーを消費しており地球
温暖化につながる温室効果ガスの排出施設となっています。
[熊本県内の下水処理場の電力消費量 7,252 万 kwh/年(一般家庭約 2 万戸分に相当)]
○
一方、下水処理場では生活排水の処理の結果、多量の汚泥や処理水が発生します。
[熊本県内の下水処理場の汚泥発生量約 6 万4千t/年(10t ダンプ約 6,400 台分に相当)、
]
処理水量約 44 万 m3/日(25m プール約 1,460 杯分に相当)
処理水
生活排水
汚泥
○
発生する汚泥には多くの有機物が含まれるため、堆肥化して肥料としたり、乾燥や炭化させて
石炭に替わる燃料とすることができます。また、汚泥の焼却灰をセメント原料等の建設材料にも
利用できます。さらには、汚泥の醗酵過程で発生するメタンガスを発電に利用したり、汚泥に含
..
まれるリンを利用することもできます。
○
処理水は、農業用水としても利用できます。また、処理水を放流する過程で水力発電に利用す
ることも可能です。
70%
10.0
水が有している資源やエネル
ギーをさらに有効利用してい
くことが重要です。
6.0
52%
50%
57%
56%
54%
53%
8.0
57%
54%
66% 60%
59%
59%
50%
40%
30%
4.0
20%
2.0
10%
0.0
0%
H10
H11
H12
発生汚泥量
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
有効利用量
下水道汚泥の有効利用の推移
21
-21-
H20
H21
有効利用率
有効利用率(%)
下水道汚泥をはじめ、生活排
汚泥量(万t/年)
○
61%
理解を深めるために
生活排水処理に関する取組みを効果的・効率的に推進していくためには、市町村や県の取組みだけ
でなく、先に説明しましたように、県民の皆様にも「できること」、「していただきたいこと」を行っ
ていただくことが重要です。
そのため、市町村・県では「県民の皆様に生活排水処理について理解を深めていただく」ことや、
県民の皆様と市町村・県の「相互理解を深める」ための活動を推進していきます。
事例①:下水環境フェアの開催
○
県では、平成 20 年から毎年、熊本市の中心部に
おいて、県民の皆様に、生活排水処理施設のしくみ
や水環境について説明し、できるだけ汚れた生活排
水を流さないよう普段の生活の中でできることを
実践していただくため、「下水環境フェア」を開催
しています。
○
フェアでは、生活排水に関するパネル、合併浄化
槽模型、生活排水を浄化する微生物や発生する汚泥
などを展示するとともに、生活排水に関するクイズ
を行なっています。
事例②:体験学習会や施設見学会の開催
○
県内の下水処理場では、小学生を対象に生活排
水処理の仕組み、水環境を守ることの大切さなど
を学習していただくため体験学習会を開催して
います。
○
また、地区老人会・婦人会等の各種団体や県民
の皆様に対し施設見学会を行っている下水処理
場もあります。
23
-23-
事例③:出前講座の実施
○
市町村や県では、学校や公民館など、県
民の方が希望される場所に職員が伺って、
生活排水処理に関する学習会を実施して
います。
事例④:戸別訪問の実施
○
市町村、県等では、職員が各家庭を
直接訪問して、下水道等が整備された
地域での下水道等への接続や浄化槽
の適正な維持管理等を行っていただ
くようお願いしています。
○
例えば、県、市町村、公益社団法人
熊本県浄化槽協会では、浄化槽の適切
な維持管理の実施に向け、各家庭を訪
問し、法定検査の受検勧奨に取組んで
います。西原村での戸別訪問では、浄
化槽の法定検査受検率が 65%から
86%に向上しました。
事例⑤:情報の発信(広報誌・ホームページなど)
○
市町村、県では、生活排水処理の大切さなどを県民の皆様に理解していただくため、広報誌や
ホームページなどで、分かりやすくお知らせしています。
24
-24-
25
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