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革新的鋳造シミュレーション技術 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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革新的鋳造シミュレーション技術 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
「革新的鋳造シミュレーション技術」
事後評価報告書
平成16年3月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会
目
次
はじめに
分科会委員名簿
審議経過
評価概要
研究評価委員会におけるコメント
研究評価委員会委員名簿
第1章 評 価
1.プロジェクト全体に関する評価結果
1.1 総論
1.2 各論
2.個別テーマに関する評価結果
2.1 シミュレーションプログラムの開発
2.2 物性値等の計測技術開発
3.評点結果
3.評点結果
第2章 評価対象プロジェクト
1.事業原簿
1.事業原簿
2.分科会における概要説明資料
2.分科会における概要説明資料
参考資料1 評価の実施方法
参考資料2 評価に係る実施者意見
1
2
3
4
7
8
1-1
1-2
1-7
1-15
1-15
1-17
1-19
2-1
2-2
参考資料 1-1
参考資料 2-1
はじめに
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構においては、被評価プロジェク
ト毎に当該技術の外部の専門家、有識者等によって構成される研究評価分科会を研究
評価委員会によって設置し、同分科会にて被評価対象プロジェクトの研究評価を行い、
評価報告書案を策定の上、研究評価委員会において確定している。
本書は、「革新的鋳造シミュレーション技術」の事後評価報告書であり、第7回技
術評価委員会(平成15年2月10日(※平成15年10月の独立行政法人化にとも
ない研究評価委員会に改名))において設置された「革新的鋳造シミュレーション技
術」(事後評価)技術評価分科会において評価報告書案を策定し、第2回研究評価委
員(平成16年3月23日)に諮り、確定されたものである。
平成16年3月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会
1
「革新的鋳造シミュレーション技術」
事後評価分科会委員名簿
(平成 15 年 11 月現在)
氏名
所属、役職
分科会長
大城
桂作
九州大学
大学院工学研究院
分科会長
代理
安斉
浩一
東北大学
大学院工学研究科
菅野
利猛
株式会社木村鋳造所
仲森
智博
日経BP社
馬場
哲也
産業技術総合研究所
物性統計科
分科会
委員
材料工学部門
開発部
ビズテック局開発
計測標準研究部門
敬称略、五十音順
2
審議経過
!
第1回 分科会(平成15年11月28日)
公開セッション
1.分科会の公開について
2.評価の在り方と評価の手順について
3.評価の分担及び評価報告書の構成について
4.プロジェクトの概要
5.プロジェクトの個別テーマの詳細について
6.コメント、質疑応答(全体について)
!
第2回 研究評価委員会(平成16年3月23日)
1.評価報告書の報告
3
評価概要
1.1.総論
1)総合評価
鋳造品は多くの産業機械の主要部品として利用されているが、我が国の鋳造業は中
国等の追い上げや先進国の IT 活用による技術の高度化に対して十分な競争力を維持
し難くなっている状況にある。また、鋳造業は中小企業が多数を占めることから、今
回、NEDO の支援は適切と判断される。
加えて物性値の測定という従来あまり顧みられなかった分野にも支援の手を伸ば
したことが、プロジェクト全体のバランスを大変良くしていたと考える。
シミュレーションプロクラムの開発では、内容の面でも「ガス圧を考慮したシミュ
レーション」や「球状黒鉛鋳鉄における引け巣予測」などはその成果が業界にとって
非常に重要なもので本成果をブラシュアップすることにより十分、実用化・事業化し
うると判断される。
しかし、シミュレーション、物性値研究の相互の関連・連携に関しては不十分な面
があった。必要とされる諸物性の高精度データベースの作成やソフトの利用しやすさ
向上等を含め、プロジェクトチーム全体の共同体制を構築しておくべきではなかった
か。
また、物性値測定は純粋系に関するものが多く、一般的な鋳造合金、特に鋳鉄には
適用できない。一般的な鋳造合金について、シミュレーションの精度向上の観点から
従来よりも精密値を必要とする物性値を明確化し、データをとっておくべきではなか
っただろうか。
2)今後に対する提言
素形材分野は,日本の経済を担う重要な産業分野であり,今後とも,素形材分野への
支援が望まれる。特に、鋳造は,ロケットから自動車,家電まで幅広い産業分野での
中心的素形材である。今後は,鋳造 CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)を
さらに発展させた鋳造 CAO(最適設計支援技術)などへの支援などを期待する。
今回のプロジェクトでは、シミュレーション技術開発と、基礎研究的な物性値測定の
両者がより同期された形での運営がなされる必要があったと考える。今後、本プロジ
ェクトの様な基礎研究と実用技術が両輪となった開発の実施の際には、両者の連携体
制が強化される必要がある。
また、プロジェクトにおいて得られた物性値データをシミュレーションソフトウェ
アから利用しやすい形でデータベース化することも重要である。
今回のプロジェクト成果である、シミュレーションプログラムは、誰でも(たとえ
ば競合国も)使う事が出来るツールとなっている。市場拡大のために、多くのユーザ
ー獲得が必要ではあるが、
「日本の産業振興」を目的として取り組んだ研究であり、
「ど
のようにして成果を日本企業が優先的に享受するしくみを作るか」が重要な課題にな
4
ると思慮する。
1.2 各論
1)事業の位置付け・必要性について
国際情勢からして、日本の産業を根底から支えている素形材の生産技術、鋳造技術
の飛躍的レベルアップが必須の状況になってきており、本プロジェクトは時宜にかな
ったものである。鋳造産業は、自動車などの日本の産業を支える基盤ではあるが、国
内では中小企業が多く民間のみでは研究の遂行が困難なことから、NEDO の事業と
して妥当である、と考えられる。
また、物性値の高精度測定は、鋳造シミュレーションはもとより種々の材料プロセ
スの設計・制御において欠くことの出来ないものである。こうした地味な課題を主要
テーマの1つに取り上げたことは意義あることである。
2)研究開発マネジメントについて
世界の技術動向の調査結果に基づいて具体的な目標が設定されており、研究開発の
体制およびスケジュールも含めて、研究計画の内容は妥当である。一口に鋳造といっ
ても、それぞれの鋳造法毎に強化すべき技術課題は異なるため、鋳造技術すべてをカ
バーする様な目標設定は焦点が絞りきれない問題がある。耐熱合金鋳造用精密鋳造に
的を絞ったのなら、その分野で世界のトップレベルの成果を得るように目標設定する
へきであった。革新的鋳造シミュレーションプログラム作成のために、鋳造シミュレ
ーション研究者とシミュレーションに必要な物性値測定の専門家が共同研究体制を
とったことは妥当である。シミュレーショングループと物性値測定グループに分けて、
それぞれ主体的に研究を展開したことは、両分野で新たな知見・開発を得る上で有効
であったと評価できるが、2つのサブテーマ間の連携が十分になされておらず、物性
値グループにより測定された物性値がシミュレーショングループにより速やかに活
用されるような研究マネジメントを目指すべきであったと考える。
3)研究開発成果について
「シミュレーション」,
「物性値の測定」ともに,設定した数値目標はクリアしてお
り,所定の成果はあったと判断する。シミュレーション研究では、研究開発の着眼点、
手法に新規性が認められ、従来にない高いレベルの成果が得られている。物性研究に
おいても、微小重力下での実験等を通して、高精度化に向けての努力が認められ、新
たな計測手法の開発・提案が行われている。一方、研究期間の制約によるものであろ
うが、物性値測定研究では、個々のテーマについては初期の目標をほぼ達成している
が、微小重力下等での基礎的研究成果をシミュレーションのデータベースとなる物性
測定へ応用するには至ってない。たとえば純粋系にとどまらず一般的な鋳造合金での
データをとっても良かったのではないか。
5
4)実用化、事業化の見通しについて
シミュレーションソフトウェアに関しては本プロジェクトの成果に基づき今後の
実用化、事業化が期待される。また物性値関連技術に関しては、本プロジェクトの成
果に基づく測定装置の実用化の計画が提示されていることは評価される。特にシミュ
レーションに関しては、アルミニウム合金、球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥発生など鋳造
における重要課題について、またガス圧を考慮したシミュレーション等、従来にない
合理的なソフトの開発がなされており、実用化、事業化の可能性は高い。
なお精密鋳造法に関しては、実用化予定が遅く,加えてさらなる投資・ボランティ
アが必要との結果は,本プロジェクトが設定した目標から考えると問題である。
2.個別テーマに関する評価結果
2.1 シミュレーションプログラムの開発
1)成果、実用化に関する評価、今後の提言等
X 線による湯流れ、ガス巻き込みを直接観察し、シミュレーション計算結果と比
較・検証するシステムを構築したことは、新たな研究開発技術として高く評価できる。
ガスを考慮した湯流れ、ガス巻き込み欠陥の予測法、球状黒鉛鋳鉄鋳物の引け巣や変
形などに関するシミュレーションは、新規性があり、工業的にも重要な課題であるの
で、実用化の可能性は高い。
ただし、精密鋳造法に対する目標設定は,市場調査も含めて不十分であったと判断
する.得られた成果は,現時点での世界トップレベルにあるとは思えない.
また、解析対象とした現象に関して、物性値の精度がシミュレーション結果にどの
ように影響するかを明示することが望まれる。
なお、実用化に際しては、ユーザーの利用しやすさを考慮に入れる必要がある。
2.2 物性値等の計測技術の開発評価コメント
1) 成果、実用化に関する評価、今後の提言等
測定精度向上のため、従来法の改善や、新たな測定法の提案がなされており、物性
値測定実験は、当初の計画に沿って各種材料について温度や組成との関連で系統的に
行われてほぼ目標を達成している。また、地下無重力センターの廃止に対応して、1.5m
の落下距離での測定が可能な落下型熱物性測定装置を開発したことは高く評価され
る
一方、シミュレーションGrとの連携不足のためか、新規に得た物性値がどの程度
シミュレーションのデータベースとして用いられたのか、また、どの程度シミュレー
ションの精度向上に寄与できたか、明確でない点は問題である。
また、一般的な鋳造合金であるアルミニウム合金の他、鉄、鋳鉄程度の物性値測定
は、参考値でも良いから行うべきであった。
6
研究評価委員会におけるコメント
第2回研究評価委員会(平成16年3月23日開催)に諮り、了承された。研究評
価委員からのコメントは特になし。
7
研究評価委員会委員名簿
委員長
小野田 武
日本大学 総合科学研究所 教授
伊東
弘一
大阪府立大学大学院 工学研究科 教授
稲葉
陽二
内山
明彦
日本大学 法学部 教授
早稲田大学 理工学部 教授
大西
優
鐘淵化学工業株式会社 常務取締役
黒川
淳一
小柳
光正
横浜国立大学大学院 工学研究院 教授
東北大学大学院 工学研究科 教授
曽我
直弘
独立行政法人 産業技術総合研究所 理事
冨田
房男
放送大学 北海道学習センター 所長
西村
吉雄
大阪大学 フロンティア研究機構 特任教授
架谷
昌信
平澤
泠
名古屋大学大学院 工学研究科 教授
東京大学 名誉教授
真鍋
正巳
株式会社デンソー 常務取締役
(合計 13名)
(敬称略、五十音順)
8
第1章
評価
この章では評価結果を枠内に掲載している。なお、枠の下の○、●、●が付され
た箇条書きは評価委員のコメントであり、評価コメント票に記述されたコメント
を原文のまま掲載したものである。
1-1
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
1)総合評価
鋳造品は多くの産業機械の主要部品として利用されているが、我が国の鋳造業は中
国等の追い上げや先進国の IT 活用による技術の高度化に対して十分な競争力を維持
し難くなっている状況にある。また、鋳造業は中小企業が多数を占めることから、今
回、NEDO の支援は適切と判断される。
加えて物性値の測定という従来あまり顧みられなかった分野にも支援の手を伸ばし
たことが、プロジェクト全体のバランスを大変良くしていたと考える。
シミュレーションプロクラムの開発では、内容の面でも「ガス圧を考慮したシミュ
レーション」や「球状黒鉛鋳鉄における引け巣予測」などはその成果が業界にとって
非常に重要なもので本成果をブラシュアップすることにより十分、実用化・事業化し
うると判断される。
しかし、シミュレーション、物性値研究の相互の関連・連携に関しては不十分な面
があった。必要とされる諸物性の高精度データベースの作成やソフトの利用しやすさ
向上等を含め、プロジェクトチーム全体の共同体制を構築しておくべきではなかった
か。
また、物性値測定は純粋系に関するものが多く、一般的な鋳造合金、特に鋳鉄には
適用できない。一般的な鋳造合金について、シミュレーションの精度向上の観点から
従来よりも精密値を必要とする物性値を明確化し、データをとっておくべきではなか
っただろうか。
<肯定的意見>
○ 鋳造品は多くの産業機械の主要部品として利用されているが、我が国の鋳造業は
中国等、低所得国の追い上げや先進国の IT 活用による技術の高度化に対して十分
な競争力を維持し難くなっている状況にある。社会基盤強化、IT 利用技術の高度
化・普及の面から重要なテーマであり、鋳造関連企業はは中小が多数を占めるこ
とからして、 国および NEDO の支援は適切と判断される。
○ 研究課題はかなり広範なものになっているが、研究開発マネジメントはよくなさ
れており、多くの課題に対しておおむね当初の目標を達成している。
○ シミュレーション研究において、従来にない要素、解析技術を加味することによ
って、実用的にも意義ある成果が得られている。
○ 物性値測定研究においても、おおむね当初の目標を達成しており、精度の向上、
新たな測定機器開発につながる成果が得られている。
○ シミュレーション関連は本研究成果を基にブラッシュアップすることにより十分、
実用化・事業化しうると判断される。
○ 日本経済のさらなる飛躍の為には,「もの作りの IT 化」が必須である.今回,鋳
1-2
○
○
○
○
○
造シミュレーション技術を取り上げ,国家プロジェクトとして支援したことは,
正鵠を得ている。また,物性値の測定という従来あまり顧みられなかった分野に
も支援の手を伸ばしたことは,プロジェクト全体のバランスを大変良くしていた
と考える。こうしたデータベースは,広く国民に公開し有効活用してもらうべき
だ。
「鋳造シミュレーション技術」は基礎学問をベースとして成立するものであり、
公共性が高く、民間活動のみでは限界があると考えられる。よって、本事業は
NEDO の事業として十分に価値のあるものと考えられる。
全体としての目標達成度は 85%程度であると判断される。成果については世界最
高水準と考えても良いと思われる。新しい物性値測定装置を開発したことも評価
できる。
「ガス圧を考慮したシミュレーション」や「球状黒鉛鋳鉄における引け巣予測」
などはその成果が業界にとって非常に重要なものであり、十分に評価できる。
成果については、当初目標を十分に満たすものが得られ、実用化の道筋も見えて
いることから、十分に評価できる。この成果が得られたことは、各研究グループ
の連携を含めた研究開発マネジメントがうまく実施されたことの証左だろう。
本プロジェクトはコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)を現状では従来
の経験則に依存している鋳造産業に導入し、製造技術革新による競争力強化を図
ることを目的としている。これによりアジア近隣諸国に対する技術的優位を保ち、
我が国製造業の空洞化を阻止することが可能となる。鋳造産業は主として中小企
業によって担われており、民間主体の技術開発が困難であることから NEDO(国)
が関与することが妥当であると思われる。
<問題点・改善すべき点>
● シミュレーション、物性値研究の個々の課題については、おおむね目標を達成し
ているが、相互の関連・連携に関しては不十分な面がある。開発シミュレーショ
ンソフトの中でその特徴(売り)を基に早期に実用化できそうなものについて、
必要とされる諸物性の高精度データベースの作成や、ソフトの利用しやすさ向上
等も含め、プロジェクトチーム全体の共同作業体制を構築しておくべきではなか
ったか。
● ノウハウ的な要素技術がかなり得られているが、特許の取得が全くなされていな
い。研究の性格によるのであろうが、当初から念頭になかったのであろうか。
● 得られた成果は,従来の技術に比較し高度化されており,目標値もクリアしてい
る点で評価できるが,現時点の評価としては世界的に見て必ずしも最高レベルの
ものができたとは思えない.目標の設定が低すぎたのか,世の中の進歩が想定し
ていたより早かったのか不明だが,実用化に際してはさらに完成度を高めていた
だきたい。
● 研究開発用装置に投資した金額が 2 億円と、全投資額 16 億円に対して少し少な
1-3
すぎるように思われる。
● 物性値測定は純粋系に関するものが多く、一般的な鋳造合金、特に鋳鉄には適用
できない。一般的な鋳造合金について、シミュレーションの精度向上の観点から
従来よりも精密値を必要とする物性値を明確化し、データをとっておくべきでは
なかっただろうか。
● 本件の目的を「日本の鋳造業界の国際競争力を高める」こととしながらも、本成
果であるシミュレータは競合国のメーカーを含め、誰もが利用できるツールとな
っている。つまり、本件が日本の鋳造業界の競争力を高めるだけでなく、ライバ
ル国、ライバル・メーカーの競争力をも高める可能性がある。こうした問題に対
する基本的考え・戦略が明確でない。
<その他の意見>
△ 今回の事業においては、基礎学問である「物性値」の測定が行われており、この
ような基礎的研究への投資は、日本の将来にとって非常に重要なことだと考えら
れる。
△ 実用合金の物性値測定は、時間的な問題から出来なかったようにも思われる。こ
のような場合、研究期間を伸ばしてはいかがか。
△ 「成果は専らわが国鋳造業界の競争力向上に資するべきでは」
、との問題は、この
ツールの使用を国内メーカーにのみ限定すれば解決できる。ただ、こうすること
で「国内に使用を限れば市場が広がらず、ツールの競争力が低下しかねない」と
いう問題が浮上する。こうした状況を踏まえ、「業界の強化」と「ツールの強化」
のどちらに優先順位を置くのかをプロジェクト開始当初から議論すべきではなか
ったか。
1-4
2)今後に対する提言
素形材分野は,日本の経済を担う重要な産業分野であり,今後とも,素形材分野への
支援が望まれる。特に、鋳造は,ロケットから自動車,家電まで幅広い産業分野での中
心的素形材である。今後は,鋳造 CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)をさら
に発展させた鋳造 CAO(最適設計支援技術)などへの支援などを期待する。
今回のプロジェクトでは、シミュレーション技術開発と、基礎研究的な物性値測定の両
者がより同期された形での運営がなされる必要があったと考える。今後、本プロジェク
トの様な基礎研究と実用技術が両輪となった開発の実施の際には、両者の連携体制が強
化される必要がある。
また、プロジェクトにおいて得られた物性値データをシミュレーションソフトウェア
から利用しやすい形でデータベース化することも重要である。
今回のプロジェクト成果である、シミュレーションプログラムは、誰でも(たとえば
競合国も)使う事が出来るツールとなっている。市場拡大のために、多くのユーザ獲得
が必要ではあるが、
「日本の産業振興」を目的として取り組んだ研究であり、
「どのよう
にして成果を日本企業が優先的に享受するしくみを作るか」が重要な課題になると思慮
する。
<今後に対する提言>
○ 中間評価がないので、外部からの意見・助言を受け入れる場として技術推進委員
会の役割が大きい。中間評価システムはそれなりの意義はあるが、長時間の議論
を行いうる技術推進委員会の設置は研究を展開させる上で一層意義あることと思
われるが、委員の中に本プロジェクトの成果を利用する立場の者(企業)が入っ
ていない。実用化・事業化を目的とするのであれば、それに沿った人選(委員の
追加等)を行うべきである。
○ 個別テーマについてはほぼ当初の目的を果たしているが、事業化のためにはさら
に調査・研究が必要であり、何らかの支援体制が必要と考えられる。
○ 素形材分野は,日本の経済を担う大変重要な産業分野であり,関連する分野も広
い.今後とも,素形材分野への支援事業を優先的に実施して頂きたい.特に鋳造
は,ロケットから自動車,家電まで幅広い産業分野での中心的素形材である.今
後は,鋳造 CAE をさらに発展させた鋳造 CAO への支援など進めて頂きたい。
○ 今回のプロジェクトにおいては、基礎研究の部分も含まれており、今後のプロジ
ェクトにおいても基礎研究と実用化技術が両輪となった開発への投資が日本にと
って重要になると思う。特に大学との連携を行う場合は、この事を考慮した方が
良いと思う。
○ 物性値の測定においては、時間的な問題から実用合金の測定が行えなかったよう
にも思われる。このような場合は研究期間を伸ばしてはいかがか。シミュレーシ
ョンにおいても変形等の解析が加われば、より完成されたものになると思われる。
1-5
○ 本プロジェクトに関しては、十分な成果が出ており、事業化の道筋がついている
ことから、十分に当初の目的を果たしたといえる。今後は、これから数年をかけ、
本成果に基づく商品のユーザーから意見を吸い上げ、さらなる改善が必要かどう
かを見極める必要があるだろう。ただし、このテーマに関しては、事業と並行し
て実施するものであり、事業担当企業の手に委ねられるものだと考える。
○ 類似プロジェクトにおいてはシミュレーション技術と物性値等の関連測定技術の
連携体制を強化する必要がある。
○ 物性値グループは測定技術の開発と基本材料の物性測定のみに留まらず、シミュ
レーングループが必要とする物性値をプロジェクトの進捗に同期して提供してい
くことが求められる。シミュレーショングループは物性値グループに対して必要
とする物性値を明確な形で依頼するとともに、提供された物性値を入力パラメー
タとしたシミュレーションの結果を考察し、物性値データの整備がシミュレーシ
ョン結果に対する寄与を、物性値グループに速やかにフィードバックしていくこ
とが要請される。
○ プロジェクトにおいて得られた物性値データをシミュレーションソフトウェアか
ら利用しやすい形でデータベース化することも重要である。
<その他の意見>
△ 総合評価の欄で述べたような、
「卓越した成果が出れば、その成果が日本の業界の
みならず、世界中のメーカに利益をもたらしてしまう」という現象は、多くのプ
ロジェクトで発生するだろう。
「国としてのプロジェクトは何を第一目的とすべき
か」という課題を改めて議論すべきではないか。個人的には、国のプロジェクト
は国の税金を利用するものであり、
「日本の産業振興」を最も優先順位の高い目標
とすべきであると考える。それをその前提に立てば、
「どうやれば成果が日本企業
に優先的に享受できるしくみが作れるか」が重要な課題になるのではないか。例
えば、
「中小企業を対象に、これがあれば職人的ノウハウがなくても高水準の製品
が製造できるという有用なツールを開発したが、結局はそれを導入した中国企業
の競争力が向上し日本企業が駆逐された」といった事態が起きれば、何のために
プロジェクトで成果を出したのかわからなくなってしまう。
1-6
1.2 各論
1)事業の位置付け・必要性について
国際情勢からして、日本の産業を根底から支えている素形材の生産技術、鋳造技術
の飛躍的レベルアップが必須の状況になってきており、本プロジェクトは時宜にかな
ったものである。鋳造産業は、自動車などの日本の産業を支える基盤ではあるが、国
内では中小企業が多く民間のみでは研究の遂行が困難なことから、NEDO の事業とし
て妥当である、と考えられる。
また、物性値の高精度測定は、鋳造シミュレーションはもとより種々の材料プロセ
スの設計・制御において欠くことの出来ないものである。こうした地味な課題を主要
テーマの1つに取り上げたことは意義あることである。
<肯定的意見>
○ IT 技術をベースに革新的基盤技術[製造技術(鋳造)]の開発を目的としており、ナノ
テクノロジー・材料分野とも関わりのあるテーマである。
○ 国際情勢からして、鋳造技術の飛躍的レベルアップが必須の状況になってきてお
り、本プロジェクトは時宜にかなったものである。民間のみでは研究の遂行が困
難なことから、NEDO の事業として妥当である。
○ 物性値の高精度測定は、鋳造シミュレーションはもとより種々の材料プロセスの
設計・制御において欠くことの出来ないものである。こうした地味な課題を主要
テーマの1つに取り上げたてことは意義あることである。
○ 日本の産業を根底から支えている素形材の生産技術を取り上げ IT 関連技術で強
化することは,経済不況にあえいでいる日本にとって,最優先で実施しなければ
ならない措置である.特に,鋳造品は日本における素形材生産の約半分を占めて
おり,重電から家電・情報産業まで波及効果が大きい。
○ 「鋳造シミュレーション技術」は基礎学問をベースとして成立するものであるこ
とから、公共性が高く、民間活動のみでは限界があると考えられる。よって、本
事業は NEDO の事業として十分に価値のあるものと考えられる。
○ 鋳造産業は、自動車など日本の産業を支える基盤ではあるが、国内では中小企業
が多く研究開発がしにくい状況にあるようだ。こうした状況を踏まえれば、NEDO
が関与する意義、必要性は十分にあると考えられる。
○ 本プロジェクトはコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)を現状では従来
の経験則に依存している鋳造産業に導入し、製造技術革新による競争力強化を図
ることを目的としている。これによりアジア近隣諸国に対する技術的優位を保ち、
我が国製造業の空洞化を阻止することが可能となる。鋳造産業は主として中小企
業によって担われており、民間主体の技術開発が困難であることから NEDO(国)
が関与することが妥当であると思われる。
○ 本プロジェクトにおいて取得された物性データは鋳造技術以外の産業分野にも寄
1-7
与するものであり、科学技術を広範に支える知的基盤の整備の一翼を担う視点か
らも NEDO の支援が適切であったと判断される。
<問題点・改善すべき点>
● 知的基盤・標準整備に寄与しうる内容を含んでいるが、事業化を目的としたプロ
ジェクトであるので、市場規模拡大の方策が必要である。国内鋳造業だけを対象
とするのでは市場規模は小さい。
● 事業予算が 4 年間で約 16 億円(4 億円/年)であり、販売予測が 10 億円/6 年間(1.7
億円/年)であることから、2∼3 億円/年の事業予算でも良かったのではないかと
思われる。もしくは、16 億円で 6 年間ぐらいの事業にしても良かったのではない
だろうか。
● シミュレータの開発に関しては、その目的、位置付け、必要性とも十分に確認で
きるが、物性値の測定に関しては、必要性、費用対効果の面で若干の疑問が残る。
目的からすれば、「論文になりやすい」材料を取り上げるのではなく、「実際に使
われており利用価値が高い」物性値の測定に重点を置くべきではなかったか。
<その他の意見>
△ 今回の事業においては、基礎学問である「物性値」の測定が行われており、この
ような基礎的研究への投資は、日本の将来にとって非常に重要なことだと思う。
1-8
2)研究開発マネジメントについて
世界の技術動向の調査結果に基づいて具体的な目標が設定されており、研究開発の体
制およびスケジュールも含めて、研究計画の内容は妥当である。一口に鋳造といっても、
それぞれの鋳造法毎に強化すべき技術課題は異なるため、鋳造技術すべてをカバーする
様な目標設定は焦点が絞りきれない問題がある。耐熱合金鋳造用精密鋳造に的を絞った
のなら、その分野で世界のトップレベルの成果を得るように目標設定するへきであった。
革新的鋳造シミュレーションプログラム作成のために、鋳造シミュレーション研究者と
シミュレーションに必要な物性値測定の専門家が共同研究体制をとったことは妥当であ
る。シミュレーショングループと物性値測定グループに分けて、それぞれ主体的に研究
を展開したことは、両分野で新たな知見・開発を得る上で有効であったと評価できるが、
2つのサブテーマ間の連携が十分になされておらず、物性値グループにより測定された
物性値がシミュレーショングループにより速やかに活用されるような研究マネジメント
を目指すべきであったと考える。
<肯定的意見>
○ 世界の技術動向の調査結果に基づいて具体的な目標が設定されており、研究開発
の体制およびスケジュールも含めて、研究計画の内容は妥当である。
○ 革新的シミュレーションプログラム作成のために、鋳造シミュレーション研究者
とシミュレーションに必要な物性値測定の専門家が共同研究体制をとったことは
妥当であり、評価できる。
○ シミュレーショングループと物性値測定グループに分けて、それぞれ主体的に研
究を展開したことは、両分野で新たな知見・開発を得る上で有効であったと評価
できる。
○ 研究課題がかなり広範にわたっているが、目標に向かってよくマネージメントさ
れている。
○ 実用化につながる成果が出ており,評価できる。
○ 研究開発の「目標」
「計画」
「事業体制」
「情勢変化への対応」については、おおむ
ね良好と考えられる。特に、
「事業体制」に関しては、成果を実用化できるような
体制になっている点が良いと思われる。
○ 複数の研究機関が連携し、商品として競争力のあるシミュレータを開発し得たこ
とは、研究開発マネジメントが適切に行われたことの証左であろうと思う。
<問題点・改善すべき点>
● 一口に鋳造といっても,それぞれの鋳造法毎に強化すべき技術課題は異なるため,
鋳造技術全てをカバーするような目標設定は焦点が合わず問題.耐熱合金鋳物用
精密鋳造に的を絞ったのなら,その分野で世界トップレベルの成果を得るように
目標設定するべきだったと判断する。
1-9
● 研究開発用装置に投資した金額が 2 億円と、全投資額 16 億円に対して少し少な
すぎるように思われる。
● シミュレーション技術と物性値等の関連測定技術の2つのサブテーマ間の連携が
十分になされておらず、物性値グループにより測定された物性値がシミュレーシ
ョングループにより速やかに活用されるような研究マネジメントを目指すべきで
あったと考える。
<その他意見>
△ 研究機関の選定と動機付けという点に関し、本プロジェクトを通し重要な問題が
垣間見えたような気がする。一つは、大学などの研究機関は「論文になるテーマ
かどうか」を重視するが、そのこととミッションとの間には往々にして隔たりが
あることである。今回のテーマでいえば、物性値の測定がそれに当たるだろう。
もう一つは、大学などの研究機関は、成果が出ればそれを広く知らしめ、とにか
く「広く使ってもらう」ことを指向する。ただし、成果を享受する対象を「日本
の産業界」というように限定してしまうと、このことが成果を評価する際の足か
せになり、研究者のモチベーションを下げる可能性がある。どういったテーマを
どういった研究機関に委嘱するかを含め、今後議論していく必要がある問題だろ
う。
1-10
3)研究開発成果について
「シミュレーション」,
「物性値の測定」ともに,設定した数値目標はクリアしており,
所定の成果はあったと判断する。シミュレーション研究では、研究開発の着眼点、手法
に新規性が認められ、従来にない高いレベルの成果が得られている。物性研究において
も、微小重力下での実験等を通して、高精度化に向けての努力が認められ、新たな計測
手法の開発・提案が行われている。一方、研究期間の制約によるものであろうが、物性
値測定研究では、個々のテーマについては初期の目標をほぼ達成しているが、微小重力
下等での基礎的研究成果をシミュレーションのデータベースとなる物性測定へ応用する
には至ってない。たとえば純粋系にとどまらず一般的な鋳造合金でのデータをとっても
良かったのではないか。
<肯定的意見>
○ シミュレーション、物性測定研究とも各テーマについて当初設定した目標値をほ
ぼクリアしている。
○ シミュレーション研究では、研究開発の着眼点、手法に新規性が認められ、従来
にない高いレベルの成果が得られている。
○ 物性研究においても、微小重力下での実験等を通して、高精度化に向けての努力
が認められ、新たな計測手法の開発・提案が行われている。
○ 「シミュレーション」,「物性値の測定」ともに,設定した数値目標はクリアして
おり,所定の成果はあったと判断する。
○ 全体としての目標達成度は 85%程度であると思われる。成果については世界最高
水準と考えても良いと思う。新しい物性値測定装置を開発したことも評価できる。
○ 期限内に予定された予算で商品として競争力のあるシミュレータを開発し得たこ
とは、大きな成果であると思う。単に物性を測定するだけでなく、簡易な物性測
定手法(装置)を開発し得たことも成果といえるだろう。
○ シミュレーション技術と物性値等の関連測定技術の両者ともに概ね十分な研究成
果を挙げている。
<問題点・改善すべき点>
● 研究期間の制約によるものであろうが、物性値測定研究では、個々のテーマにつ
いては初期の目標をほぼ達成しているが、微小重力下等での基礎的研究成果をシ
ミュレーションのデータベースとなる物性測定へ応用するには至ってない。
● シミュレーション Gr と物性値の測定 Gr の連携に問題があった.測定した物性値
の有効性に関する検証は不十分と判断する。
● 物性値測定が純粋系で行われているため、一般的な金属では応用できない問題が
あります。学問的な意味合いも理解できないわけではないが、一般的な鋳造合金
でのデータをある程度取っても良かったのではないだろうか。
● シミュレーションの誤差の実験結果との対比による検証が必ずしも十分ではない。
1-11
X 線透過法による観察では各部分の温度変化を観測することができずシミュレー
ションの定量的評価に十分な情報が得られない。
● 主要な位置における鋳型と湯の温度の時間変化が正確に測定できるような実験を
行うことが理想である。このような実験結果との比較によりシミュレーション誤
差の客観的評価が可能となる。
<その他の意見>
△ 開発した物性測定手法(装置)は、ロータリーポンプのみの高真空下でのみ測定
が可能となっている。測定方法の実用性を見極める意味では、超高真空下と高真
空下で、複数材料を使って測定を実施し、材料の表面状態(酸化や吸着など)が
測定値に及ぼす影響についても知見を得られるとよかったと思う。
1-12
4)実用化、事業化の見通しについて
シミュレーションソフトウェアに関しては本プロジェクトの成果に基づき今後の実
用化、事業化が期待される。また物性値関連技術に関しては、本プロジェクトの成果に
基づく測定装置の実用化の計画が提示されていることは評価される。特にシミュレーシ
ョンに関しては、アルミニウム合金、球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥発生など鋳造における
重要課題について、またガス圧を考慮したシミュレーション等、従来にない合理的なソ
フトの開発がなされており、実用化、事業化の可能性は高い。
なお精密鋳造法に関しては、実用化予定が遅く,加えてさらなる投資・ボランティア
が必要との結果は,本プロジェクトが設定した目標から考えると問題である。
<肯定的意見>
○ シミュレーションに関しては、アルミニウム合金、球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥発
生など鋳造における重要課題について、従来にない合理的なソフトの開発がなさ
れており、実用化、事業化の可能性は高い。
○ 新しい物性値測定装置の実用化の可能性がある点やシミュレーションソフトの一
部が実用化される見通しである点は,評価できる。
○ 「実用化」
「波及効果」
「事業化までのシナリオ」に関しては何ら問題ない。
「ガス
圧を考慮したシミュレーション」や「球状黒鉛鋳鉄における引け巣予測」などは
その成果が業界にとって非常に重要なものであり、十分に評価できる。
○ 実際に商品販売に向けたアプローチが始まっており、現実味のある事業計画も立
案していることから、高く評価できる。今後は、耐熱合金の欠陥予測シミュレー
ション手法など商品化には組み込まれなかった成果、物性値、物性測定手法など、
未だ事業化していない成果を本事業、あるいは他事業へどう生かしていくかが課
題になるだろう。
<問題点・改善すべき点>
● 物性値に関する研究成果は、対象となる材料および物性の種類からして、事業化
はかなり困難であり、市場規模も小さいと考えられる。
● 精密鋳造法に対する実用化予定が遅く,加えてさらなる投資・ボランティアが必
要との結果は,本プロジェクトが設定した目標から考えると問題.その他の鋳造
法への応用はあくまでも副産物と理解すべきである。
● 物性値の測定を一般的な実用金属合金であるアルミ、鉄、鋳鉄程度は行うべきで
あったと思う。
<その他の意見>
△ 当面は日本語版のみの発売と聞いているが、英語版、中国語版などの開発や販売、
あるいは海外のシミュレータ・ベンダへのライセンス供与に当たっては、
「日本の
1-13
鋳造業界に貢献する」つまり、
「日本の鋳造業界に優先的に利益を供する」という
観点を踏まえ、総合的に判断していただきたい。
△ シミュレーションソフトウェアに関しては本プロジェクトの成果に基づき今後の
実用化、事業化が期待される。
△ 物性値関連技術に関しては、本プロジェクトの成果に基づく測定装置の実用化の
計画が提示されていることは評価される。
1-14
2.個別テーマに関する評価
2.1 シミュレーションプログラムの開発評価コメント
1)成果、実用化に関する評価、今後の提言等(案)
X 線による湯流れ、ガス巻き込みを直接観察し、シミュレーション計算結果と比較・
検証するシステムを構築したことは、新たな研究開発技術として高く評価できる。ガス
を考慮した湯流れ、ガス巻き込み欠陥の予測法、球状黒鉛鋳鉄鋳物の引け巣や変形など
に関するシミュレーションは、新規性があり、工業的にも重要な課題であるので、実用
化の可能性は高い。
ただし、精密鋳造法に対する目標設定は,市場調査も含めて不十分であったと判断す
る.得られた成果は,現時点での世界トップレベルにあるとは思えない.
また、解析対象とした現象に関して、物性値の精度がシミュレーション結果にどのよ
うに影響するかを明示することが望まれる。
なお、実用化に際しては、ユーザーの利用しやすさを考慮に入れる必要がある。
<肯定的意見>
○ ガスを考慮した湯流れ、ガス巻き込み欠陥の予測法、球状黒鉛鋳鉄鋳物の引け巣
や変形などに関するシミュレーションは、新規性があり、工業的にも重要な課題
であるので、実用化の可能性は高い。
○ X 線による湯流れ、ガス巻き込みを直接観察し、シミュレーション計算結果と比
較・検証するシステムを構築したことは、新たな研究開発技術として高く評価で
きる。
○ チャンネル型偏析についてのシミュレーションソフトは従来にないものであり、
凝固組織予測と組み合わせることにより大型タービンブレード等の開発に有効な
ツールとなる可能性がある。
○ 従来のソフトと比較して計算時間が短縮され、機能面での優位性が認められる。
○ 設定した数値目標をクリアしており,当初の目標を達成したものと判断する。
○ いくつかの発見、発明があり、実用化が確実であることから、十分に評価できる。
今後は、本研究をベースとして精度の高いシミュレーション技術を確立して頂き
たい。また、変形、内部応力等のシミュレーションも付加して頂ければと思われ
る。
<問題点・改善すべき点>
● ユーザーの利用のしやすさという視点を明確に持つべきである。
● 解析対象とした現象に関して、物性値の精度がシミュレーション結果にどのよう
に影響するかを明示することが望まれる。
● 精密鋳造法に対する目標設定は,市場調査も含めて不十分であったと判断する.
得られた成果は,現時点での世界トップレベルにあるとは思えない。
● 好ましくは、変形等の解析が加わればより完成されたシミュレーションになると
1-15
思う。
<その他の意見>
△ シミュレーションソフトウェアに関しては本プロジェクトの成果に基づき今後の
実用化、事業化が期待される。
1-16
2.2 物性値等の計測技術の開発評価コメント
1)成果、実用化に関する評価、今後の提言等(案)
測定精度向上のため、従来法の改善や、新たな測定法の提案がなされており、物性値
測定実験は、当初の計画に沿って各種材料について温度や組成との関連で系統的に行わ
れてほぼ目標を達成している。また、地下無重力センターの廃止に対応して、1.5m の落
下距離での測定が可能な落下型熱物性測定装置を開発したことは高く評価される
一方、シミュレーションGrとの連携不足のためか、新規に得た物性値がどの程度シ
ミュレーションのデータベースとして用いられたのか、また、どの程度シミュレーショ
ンの精度向上に寄与できたか、明確でない点は問題である。
また、一般的な鋳造合金であるアルミニウム合金の他、鉄、鋳鉄程度の物性値測定は、
参考値でも良いから行うべきであった。
<肯定的意見>
○ 物性値測定実験は、当初の計画に沿って各種材料について温度や組成との関連で
系統的に行われており、ほぼ目標を達成している。
○ 測定精度向上のため、従来法の改善や、新たな測定法の提案がなされている。
○ 設定した数値目標をクリアしており,当初の目標を達成したものと判断する.ま
た,新しい物性値測定装置を開発した点は,高く評価したい。
○ 新しい物性測定装置を開発したことは、大きな成果であると考えられる。また
NEDO の事業として基礎研究を行うことができたことも、大きな成果であると思
われる。
○ 測定が困難な液相における金属、合金の物性値に関しては概ね研究の目標として
提示された精度の計測技術を開発している。特に地下無重力センターの落下塔を
用いた密度、表面張力の測定、通常の重力下での粘度、表面張力の測定は世界的
にも最先端の成果を達成している。一方、微小重力下の非定常細線加熱法による
熱伝導率測定の結果は従来の実験による測定結果および理論的に予測される結果
より著しく低いが、専門家の間での評価が確定し、結果が普遍的に受け入れられ
るためには、更なる検証が必要である。
○ 地下無重力センターの廃止に対応して、1.5m の落下距離での測定が可能な落下型
熱物性測定装置を開発したことは高く評価される。
<問題点・改善すべき点>
● 新規に得た物性値がどの程度シミュレーションのデータベースとして用いられた
のか、また、どの程度シミュレーションの精度向上に寄与できたか、明確でない。
● 測定精度を定義する基準がやや不明確である。
● シミュレーション Gr との連携が不足していた.シミュレーションに利用するこ
1-17
とで,どれだけ精度が向上したのか検証されていない点は問題。
● 一般的な鋳造合金であるアルミニウム合金の他、鉄、鋳鉄程度の物性値測定は、
参考値でも良いから行うべきであった。今後に期待する。
● 固体の物性値測定については主に従来の測定技術を複数用いた測定を行っている
が、例えば比熱容量の場合には異なる測定間で10%程度の不一致を生じており、
その原因も必ずしも明確にされていない。本プロジェクトの参加機関に固体熱物
性測定の専門家が少ないことが危惧され、今後類似のプロジェクトを実施する場
合の研究体制の再検討が求められる。
<その他意見>
△ 実用金属合金の物性値測定は、時間的な問題から出来なかったようにも思われる。
このような場合、研究期間を伸ばしてはいかがか。
△ 1.5m の落下距離での測定が可能な落下型熱物性測定装置の実用化計画が提示は
評価されるが、事業化にはニーズの大きさと採算性の評価が不可欠である。それ
とともに開発された測定技術を活用してニーズに速やかに対応して物性値を測定
し、測定された熱物性値をデータベース化していく体制を構築することが求めら
れる。
1-18
3.評点
3.1 標準的評価項目
2.6
1.事業の位置付け・必要性
2.2
2.研究開発マネジメント
3.研究開発成果
2.4
4.実用化・事業化の見通し
2.4
0.0
1.0
2.0
3.0
平均値
評価項目
平均値
素点(注1)
1.事業の位置付け・必要性
2.6
B
A
A
B
A
2.研究開発マネジメント
2.2
A
B
B
A
C
3.研究開発成果
2.4
A
B
B
A
B
4.実用化・事業化の見通し
2.4
B
B
A
A
B
(注1)A=3、B=2、C=1、D=0 として事務局が数値に換算して、平均値を算出。
<判定基準>
1)事業の位置付け・必要性について
3)研究開発成果について
・非常に重要
・重要
・概ね妥当
・妥当性がない、又は失われた
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
→A
→B
→C
→D
2)研究開発マネジメントについて
・非常によい
・よい
・概ね適切
・適切とはいえない
→A
→B
→C
→D
4)実用化・事業化の見通しについて
→A
→B
→C
→D
1-19
・明確に実現可能なプランあり
・実現可能なプランあり
・概ね実現可能なプランあり
・見通しが不明
→A
→B
→C
→D
3.2
個別テーマ
3.シミュレーションプログラムの開発の研究開発成果
2
4.シミュレーションプログラムの開発の研究開発実用
化、事業化の見通し
2
3.物性値等の計測技術の開発の研究開発成果
.
2.25
4.物性値等の計測技術の開発の実用化、事業化の見
通し
1.5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
平均値
評価項目
平均値
素点(注2)
シミュレーシ 3.研究開発成
ョンプログラ 果
ムの開発
4.実用化・事
業化の見通し
2
A
C
B
B
2
B
C
A
B
物性値等の計 3.研究開発成
測技術の開発 果
2.25
B
B
B
A
4.実用化・事
業化の見通し
1.5
C
B
C
B
(注2)A=3、B=2、C=1,D=0 として事務局が数値に換算して、平均値を算出。
<判定基準>
3)研究開発成果について
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
4)実用化・事業化の見通しについて
→A
→B
→C
→D
1-20
・明確に実現可能なプランあり
・実現可能なプランあり
・概ね実現可能なプランあり
・見通しが不明
→A
→B
→C
→D
第2章
評価対象プロジェクト
1.事業原簿
次ページに当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿を示す。
2-1
「革新的鋳造シミュレーション技術」
事業原簿
作成者
新エネルギー・産業技術総合開発機構
産業技術開発室
独立行政法人 産業技術総合研究所
―目次―
0.概要
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
1. NEDOの関与の必要性・制度への適合性
1.1 NEDOが関与することの意義 ..
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.1
1.2 実施の効果(費用対効果)
2.
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...1
事業の背景・目的・位置付け
2.1 事業の背景
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..2
2.2 事業の目的及び意義 ..
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..2
2.3 事業の位置付け ..
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.3
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
1.
事業の目標
1.1 事業の全体目標 ..
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..4
1.2 事業の詳細目標 ..
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.4
1.3 目標の設定理由 ..
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..6
2. 事業の計画内容
2.1 研究開発の内容 ..
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..9
2.2 研究開発の実施体制 ..
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.17
2.3 研究の運営管理 ..
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.26
3. 情勢変化への対応 ..
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.30
4. 中間評価結果への対応 .
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.30
5. 評価に関する事項 ..
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.31
Ⅲ.研究開発成果について
1. 事業全体の成果 ..
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.32
2. 研究開発項目毎の成果 .
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.37
Ⅳ.実用化、事業化の見通しについて
1. 実用化、事業化の見通し ..
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.132
2. 今後の展開 .
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..134
Ⅴ.成果資料
1. 論文リスト .....
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..135
2. 口頭発表リスト ..
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.137
ii
【添付資料】
1. 新製造技術プログラム基本計画
2. 革新的鋳造シミュレーション技術プロジェクト基本計画
3. 「革新的鋳造シミュレーション技術」用語解説
iii
概
要
作成日
平成15年10月15日
制度・施策(プログラム)
新製造技術プログラム
名
事業(プロジェクト)名
革新的鋳造シミュレーション技術
プロジェクト番号
51102488-0(一般), 51102489-0(エネ高)
担当推進部/担当者
ナノテクノロジー・材料技術開発部 肥後信司
本研究では、鋳造法における精密化、生産性向上、開発期間短縮等のため、従来困難で
あった精密鋳造法(鋳造方案、鋳造条件等)の事前評価をコンピュータシミュレーション
により高精度かつ短時間で可能にするための基盤技術を確立する。
0.事業の概要
そのため、超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法を対象として、湯流れおよび凝固
過程のシミュレーションプログラム、鋳造組織および欠陥生成のシミュレーションプログ
ラム、並びに物性値等の関連測定技術の開発を行う。
近年、機械の省エネ化や高効率化等の必要性が増し、鋳造分野においても、鋳造品の形
状精度や鋳造面平滑さの向上、柱状晶や単結晶の製造、多種の組成の合金や複相組織の金
属の凝固等に対応できる精密な鋳造技術が求められている。これまでは鋳造工程が熱及び
物質移動を伴う複雑な過程を含むため、鋳造品の組織および欠陥の予測はもとより、鋳造
過程の計測・解析も困難であった。
Ⅰ.事業の位置付け・必要
本プロジェクトにおいては、従来の経験工学的な試行錯誤による技術開発から脱却し、
性について
理論的な解析に基づいて、鋳造における精密化、生産性向上、低コスト化、開発期間の短
縮化等を実現するために、鋳造過程のシミュレーション技術を確立する。
これにより我が国鋳造産業の国際競争力を向上させ、国内産業の空洞化に歯止めをかけ
るとともに、精密鋳造部材の性能・機能に強く依存する産業機械、航空機・自動車・車両、
動力プラント等広範な産業分野の振興に資する
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
超耐熱合金精密鋳造法と一般精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程のシミュレーシ
ョン技術、鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション技術、ならびに物性値等の関連測定
技術を開発する。
(1)シミュレーション技術
湯流れ及び凝固過程、並びに鋳造組織及び欠陥生成を、以下の精度と計算時間で予測す
ることを目標とする。
①鋳造時にガス発生のない超合金タービン翼精密鋳造(100 万要素分割の代表的製品)に
おける鋳型充満時間を 10%以下の誤差で、かつ鋳型充満直後の鋳型及び溶湯温度につい
ては 5%以下の誤差で、計算時間 24 時間以内で予測する。
②鋳造前加熱時のサセプタ及びセラミックス鋳型温度変化(100 万要素分割の代表的製品)
を誤差 5%以下、計算時間 5 時間以内で予測する。
③鋳造時にガス発生する一般精密鋳造(100 万要素分割の代表的製品)における鋳型充満
時間及び充満途中の空隙部圧力を 10%以下の誤差で、かつ鋳型充満直後の鋳型及び溶湯
温度については 5%以下の誤差で、計算時間 24 時間以内で予測する。
④超合金タービン翼(主要素分割 50 万要素の代表的製品)の単結晶化及び柱状晶化を 80%
以上の確率、計算時間 35 時間以内で予測する。
⑤チャンネル型偏析欠陥の発生位置とその程度(欠陥の幅)を 20% 以下の誤差、計算時間
事業の目標
48 時間以内で予測する。
⑥アルミニウム合金精密鋳造品(200 万要素分割の代表的製品)の引け巣欠陥の発生位置
と程度(ポロシティ量)を 15%以下の誤差で、計算時間 12 時間以下で予測する。
⑦球状黒鉛鋳鉄精密鋳造品(200 万要素分割の代表的製品)の引け巣欠陥の発生位置と程
度(ポロシティ量)を 15%以下の誤差で、計算時間 12 時間以下で予測する。
(2)物性等の関連測定技術
物性等の関連測定技術については、以下の精度を目標とする。
①タービン翼用主要超合金の物性値を、温度依存性を含めて次の誤差範囲内で測定する。
・液相線・固相線温度、潜熱、比熱 : 誤差 3%以下
・密度
: 誤差 2%以下
・固体熱伝導率、溶質分配係数
: 誤差 10%以下
・液体熱伝導率
: 誤差 15%以下
・表面張力、粘度
: 誤差 5%以下
②代表的精密鋳造用アルミニウム合金の液相線・固相線温度、潜熱、並びに、固体状態の
密度、比熱及び熱伝導率を誤差 5%以下で測定する。
③精密鋳造用セラミックス鋳型及びサセプタの熱伝導率、比熱、密度、放射率を、温度依
存性を含めて、誤差 10%以下で測定する。
iv
主な実施事項
H11fy
基本アル
ゴリズム
の検討、基
本設計
H12fy
2次元版
の試作、
3次元版
の設計
H13fy
3次元版
の試作、
検証試験
鋳造組織及び欠陥生成のシ
ミュレーションプログラム
の開発
基本アル
ゴリズム
の検討、基
本設計
2次元版
の試作、
3次元版
の設計
3次元版
の試作、
検証試験
物性値等の関連計測技術の
開発
電磁浮遊
炉の作製、
測定手法
の開発
電磁浮遊
炉を用い
た実験、各
種測定手
法の開発
電磁浮遊
炉を用い
た実験、各
種測定手
法の開発
H4fy
システム
統合、
計算速度・
解析精度
の向上
システム
統合、
計算速度・
解析精度
の向上
電磁浮遊
炉を用い
た実験、各
種測定手
法の開発
成果とりまとめ
実績報告
実績報告
実績報告
実績報告
H11fy
H12fy
H13fy
H14fy
湯流れ及び凝固過程のシミ
ュレーションプログラムの
開発
事業の計画内容
会計・勘定
開発予算
(会計・勘定別に実績
額を記載)
(単位:百万円)
開発体制
情勢変化への対応
Ⅲ.研究開発成果について
総額
一般会計
139.2
157.3
151.2
126.0
573.7
特別会計(高度化)
249.4
228.4
228.7
201.5
908.0
総予算額
388.6
385.7
379.9
327.5
1481.7
経産省担当原課
製造産業局航空機武器宇宙産業課、素形材産業室
運営機関
新エネルギー・産業技術総合開発機構
プロジェクトリーダー
大阪大学大学院 大中逸雄 教授
委託先
財団法人素形材センター
基本計画の変更無し
超耐熱合金精密鋳造法と一般精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程のシミュレーシ
ョン技術、鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション技術、ならびに物性値等の関連測定
技術の開発を計画通りに実施し、全項目において目標を充分に達成した。
(1)シミュレーション技術
各種シミュレーションプログラムは、いずれも所定の目標を達成した。特に、計算速度
に関しては、当初の目標を大幅に上回り、メッシュの要素分割数と計算時間から単純換算
すると、曲面対応湯流れおよび凝固予測プログラムで、目標の16倍、組織形成予測プロ
グラムで、目標の17倍に達した。それ以外のプログラムについても、1倍∼3倍の計算
速度が得られた。
①曲面対応湯流れおよび凝固予測プログラム
目標計算対象「ガス発生のない超合金タービン翼精密鋳造(100 万要素分割の代表的製
品)
」に対し、
「タービン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品(1,340 万要素分割)
」の計算を行っ
た結果、計算精度、計算時間ともに目標を達成した。
②サセプタ温度解析プログラム
目標計算対象「鋳造前加熱時(100 万要素分割の代表的製品)」に対し、「タービン翼一
方向凝固精密鋳造品(90 万要素分割)」の計算を行った結果、計算精度、計算時間ともに
目標を達成した。
③ガス考慮湯流れおよび凝固予測プログラム
目標計算対象「ガス発生する一般精密鋳造(100 万要素分割の代表的製品)
」に対し、
「ク
ランクシャフト砂型精密鋳造品(100 万要素分割)
」の計算を行った結果、計算精度、計算
時間ともに目標を達成した。
④組織形成予測プログラム
目標計算対象「超合金タービン翼(主要素分割 50 万要素の代表的製品)
」に対し、
「ター
ビン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品(100 万主要素分割)
」の計算を行った結果、計算精度、
計算時間ともに目標を達成した。
⑤チャンネル型偏析予測プログラム
目標計算対象「超合金タービン翼(主要素分割 50 万要素の代表的製品)
」に対し、
「ター
ビン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品(100 万主要素分割)
」の計算を行った結果、計算精度、
計算時間ともに目標を達成した。
v
Ⅳ.実用化、事業化の見通
しについて
Ⅴ.評価に関する事項
Ⅵ.基本計画に関する事項
⑥アルミニウム合金の引け巣欠陥予測プログラム
目標計算対象「アルミニウム合金精密鋳造品(200 万要素分割の代表的製品)
」に対し、
「インテークマニホールド AC4C 精密鋳造品(200 万要素分割)
」の計算を行った結果、計
算精度、計算時間ともに目標を達成した。
⑦球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥予測プログラム
目標計算対象「球状黒鉛鋳鉄精密鋳造品(200 万要素分割の代表的製品)」に対し、「セ
グメント間継手金物 FCD450 精密鋳造品(200 万要素分割)
」の計算を行った結果、計算精
度、計算時間ともに目標を達成した。
(2)物性値等の関連測定技術
いずれの測定技術についても、精度および誤差目標を達成した。
①タービン翼用主要超合金の物性値を、温度依存性を含めて次の誤差範囲内で測定した。
・液相線・固相線温度、潜熱、比熱 : 誤差 1%以下
・密度
: 誤差 2%以下
・固体熱伝導率、溶質分配係数
: 誤差 10%以下
・液体熱伝導率
: 誤差 5%以下
・表面張力、粘度
: 誤差 3%以下
②代表的精密鋳造用アルミニウム合金の液相線・固相線温度、潜熱、並びに、固体状態の
密度、比熱及び熱伝導率を誤差4%以下で測定した。
③精密鋳造用セラミックス鋳型及びサセプタの熱伝導率、比熱、密度、放射率を、温度依
存性を含めて、誤差5%以下で測定した。
論文発表
論文:24件、口頭発表:49件
特
許
特許:0件
本開発ソフトの販売見通しを予測すると、クオリカの JSCAST(1990 年中小企業事業団開
発)の販売実績は 155 セットあるので、ICST は JSCAST ユーザに対して買い替えが期待で
き、さらに新しい顧客を併せて、2 倍の 300 セット以上が期待できる。
平成 15 年 11 月 20 日に「第 14 回 JSCAST ユーザ会」で、本プロジェクトの成果について
一般公開した後、平成 16 年 1 月より順次販売を開始する。平成 16 年から平成 21 年の 6 年
間で売上金額約 10 億円が見込まれる。
本開発ソフト(仮称 ICST)は下記の特徴を有する。
①多くのプロセスに適用可能である。
(一般精密鋳造、重力鋳造、ダイカストはもとより、
一方向凝固、低圧鋳造、傾斜鋳造が可能である。
)
②組織欠陥解析機能が最も豊富で、かつ強力である。
(アルミニウムおよび球状黒鉛鋳鉄の
引け巣欠陥発生予測、チャンネル型偏析予測については、従来の市販ソフトにはない、
画期的な機能である。
)
③計算速度が速い。
(湯流れ凝固予測、組織及び欠陥発生予測プログラムはいずれも目標を
大幅に達成した。
)
④日本語対話処理ができる。
⑤WEB 環境を利用した結果出力ができる。
(世界で初めて、WEB 環境を利用したポストプロ
セッサを開発した。
)
⑥専用ナレッジデータベースを付属する。
(鋳造に関する知識ノウハウをデータベースにし
て蓄積および呼び出しができる。技術のトランスファーができる世界唯一のソフトであ
る。
)
⑦適用機種において、汎用パソコンが使用できる。
(WindowsNT、2000、XP が適用可能であ
る。
)
⑧販売価格が安い。
(ソフト開発費用が NEDO によるため、予想価格は競合他社よりも安く
設定する。
)
評価履歴
中間評価 無し
評価予定
平成15年度
事後評価実施予定
策定時期
平成11年1月
変更履歴
変更無し
策定
vi
I.事業の位置付け・必要性について
1. NEDOの関与の必要性・制度への適合性
1.1 NEDOが関与することの意義
IT等最新の技術を導入し、プロセス技術の革新を図ることにより、我が国経済社会の
基盤である製造業の競争力の維持・強化を目指す、新製造技術の開発は、我が国製造業の
空洞化と労働人口の高齢化という国家的・社会的課題に対応した研究開発であり、公共性・
基盤性が極めて高く、必要な資金規模は膨大であり、研究開発期間も長期に及ぶことから、
国による集中的な資源の投入ならびに関与が必要である。
鋳造は金属を材料とした複雑形状部材の製造法として主要な位置を占めており、その製
品は各種の産業機械、航空機・自動車・車両、動力プラント等に広く用いられ、広範な産
業の基盤を支えている。一方、近年、機械の省エネ化や高効率化等の必要性が増し、鋳造
分野においても、鋳造品の形状精度や鋳造面平滑さの向上、柱状晶や単結晶の製造、多種
の組成の合金や複相組織の金属の凝固等に対応できる精密な鋳造技術が求められている。
本プロジェクトにおいては、コンピュータ支援エンジニアリング(CAE)を、従来の
経験則に基づく試行錯誤的な鋳造方案の策定現場に導入し、製造技術革新による競争力強
化を狙って、鋳造における精密化、生産性向上、低コスト化、開発期間の短縮化等を実現
するため、鋳造過程のシミュレーション技術の確立を図る。
各種精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程のシミュレーション技術、鋳造組織及び
欠陥生成のシミュレーション技術ならびに関連測定技術の開発は、未だ基礎的な研究開発
段階にあり、難易度が高く、研究は必然的に長期間と相当の費用を要する。また、鋳造業
界は、大半が中小企業で占められ、アジア近隣諸国の技術力向上により、生存をかけて激
しい国際競争を強いられているため、民間企業の資金能力および技術開発における余裕資
源の観点からも充分でなく、NEDO(国)による積極的な関与が必要である。
1.2 実施の効果(費用対効果)
費用:4年間で約15億円
効果:事業終了後6年間でソフト売上げ約10億円
革新的鋳造シミュレーション技術(曲面対応湯流れ及び凝固シミュレーション技術及び
鋳造組織及び欠陥生成シミュレーション技術)は、精密鋳造はもとより一般鋳造プロセス
への適用が可能であり、次の効果が期待される。
① 新規鋳造品開発のためのリードタイムの短縮(試作回数の低減と短納期開発)
② 鋳造方案の最適化、技術の継承
③ 不良率の低減、歩留まりの向上
④ 画期的な研究開発・競争力の向上
具体的には、伝熱、物質移動及び結晶欠陥生成等の革新的シミュレーション技術の開発
を通じた精密鋳造工程の効率化・省エネルギー化により、日本のエネルギー需給構造の高
1
度化を図る観点から、原油換算で次の効果が試算されている。原油価格として2002年
の日本到着価格CIF平均19.4千円/kL(通関統計の平均値)を使用した。
省エネ効果 : 2010年度
約 3.7万kL (約 7.2億円)
2020年度
約 7.5万kL (約14.6億円)
2030年度
約11.2万kL (約21.7億円)
2. 事業の背景・目的・位置付け
2.1 事業の背景
従来は、鋳造工程が、熱及び物質移動を伴う複雑な過程を含むため、鋳造品の組織および
欠陥の予測はもとより、鋳造過程の計測・解析も困難なため、主として経験工学的な試行
錯誤により、技術を向上させてきた。
近年、機械の省エネ化、高効率化等の必要性が増し、それに伴い、部材の高強度化、軽
量化、高耐熱性化、機能性付与等が求められるようになった。鋳造分野においても、形状
精度や鋳造面平滑さの向上、柱状晶や単結晶の製造、多種の組成の合金や複相組織の金属
の凝固等に対応できる精密な鋳造技術が求められている。しかしながら、このような複雑
な合金系や大型部材の鋳造を、従来のように経験工学的な試行錯誤により達成するのは、
要する時間や費用の点から非常に困難であった。
一方、昨今のコンピュータの演算能力・データ容量の飛躍的な向上により、熱及び物質
移動や結晶欠陥生成等の総合的・体系的なシミュレーションプログラムの構築が可能にな
ってきた。また、シミュレーションの基礎データとなる金属の熱物性等の厳密な測定も、
微小重力環境における無対流・無容器電磁浮遊等の利用により達成可能な状況にあった。
以上のように、鋳造分野において、革新的鋳造シミュレーション技術を開発・導入し、
従来の経験工学的な試行錯誤による技術開発から脱却し、理論的な解析に基づいた製造技
術革新をもたらし、鋳造における精密化、生産性向上、低コスト化、開発期間の短縮化等
を実現するための社会的・技術的環境が整いつつあった。
2.2 事業の目的及び意義
本プロジェクトにおいては、鋳造における精密化、生産性向上、低コスト化、開発期間の
短縮化等を実現するために、革新的鋳造シミュレーション技術の確立を図る。具体的には、
湯流れ及び凝固過程のシミュレーション技術、鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション
技術、並びにシミュレーションの基礎となる金属等の物性値の計測技術を開発する。
これにより、鋳造分野において、従来の経験工学的な試行錯誤による技術開発から脱却し、
理論的な解析に基づいた製造技術革新をもたらし、鋳造における精密化、生産性向上、低
コスト化、開発期間の短縮化等を実現する。また、我が国鋳造産業の国際競争力を向上さ
せ、国内産業の空洞化に歯止めをかけるとともに、精密鋳造部材の性能・機能に強く依存
する産業機械、航空機・自動車・車両、動力プラント等広範な産業分野の振興に資する。
2
2.3 事業の位置付け
(1) 国の政策における位置付け
本プロジェクトは、新製造技術プログラムに属しており、科学技術基本計画(2001年
3月閣議決定)における国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化分野である製造
技術分野、分野別推進戦略(2001年9月総合科学技術会議)における重点分野である
製造技術分野に位置づけられるものである。
また、産業技術戦略(2000年4月工業技術院)における革新的・基盤的技術(製造
技術)の涵養、知的な基盤の整備とともに「産業発掘戦略−技術革新」(
「経済財政運営と
構造改革に関する基本方針2002」(2002年6月閣議決定)に基づき、2002年1
2月取りまとめ)の情報家電・ブロードバンド・IT分野における戦略目標(国民、産業
界、政府等共有の目標により、国民の存在需要を発掘)
、及びナノテクノロジー・材料分野
における戦略目標(10年後に、世界市場を主導できる我が国発の企業をナノテクノロジ
ー・材料分野の‘5つの産業’で創出する。
)等への対応を図るものである。
(2) 関連する国内外の研究開発の動向、その中での位置付け
鋳造シミュレーション技術は、1960年代から凝固解析について研究されるようにな
り、1980年代初頭から普及し始めた。湯流れ解析については、Los Alamos 科学研究所
などの研究機関で研究が開始され、1983年ピッツバーグ大学の W.S.Hwang、R.A.Stoehr
らが、その成果を鋳造プロセスにおける溶湯流動過程に応用した。その後の研究・開発に
よって、1999年頃には普及し始めており、今日の鋳造シミュレーションは実用的な品
質予測のツールとして認知されてきている。
現在、Pro−CAST(米、UES社)や、MAGMA(独、EKK社)等の鋳造シ
ミュレーションソフトが開発されているが、全ての鋳造現象が高速かつ高精度に予測でき
るわけではなく、現在も盛んに研究されている。
本プロジェクトでは、湯流れ及び凝固過程から鋳造組織及び欠陥生成までの、鋳造方案
の策定に必要な鋳造現象を高速かつ高精度に予測できる、画期的な鋳造シミュレーション
技術の開発を特長とする。本開発ソフトは、湯流れ及び凝固過程、並びに鋳造組織及び欠
陥生成について、計算結果と検証実験結果が非常に良く一致しており、国内外の鋳造シミ
ュレーションソフトでは検証実験データが希薄であることを考慮すると、極めて信頼性が
高いといえる。また、本開発ソフトは、国内外の鋳造シミュレーションソフトと比較して、
高速かつ高精度であり、ガス発生、欠陥予測(アルミポロシティ予測)、球状黒鉛鋳鉄凝固
解析、一方向凝固予測等、解析可能な対象が広く、精密鋳造法に要求される基本的な要求
をほぼ満足する。以上のことから、本開発ソフトは、世界最高水準の鋳造シミュレーショ
ンソフトであるといえる。本開発ソフトと国内外の鋳造シミュレーションソフトの比較を
表Ⅳ1.2 に示す。
3
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
1. 事業の目標
1.1 事業の全体目標
事業最終年度(平成14年度)までに、超耐熱合金精密鋳造法と一般精密鋳造法における、
湯流れ及び凝固過程のシミュレーション技術、鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション技
術、
並びにシミュレーションの基礎となる物性値等の関連測定技術を開発する。
(
【添付資料】
基本計画参照。
)
なお、最終目標の設定においては、企画連絡委員会で検討すると共に、技術評価委員会に
て、外部有識者の評価を受けた。また、NEDOの開催する技術推進委員会において、外部
有識者の指導のもとにプロジェクトリーダー及び委託先と協議して、最終目標値の妥当性を
評価した。
1.2 事業の詳細目標
事業最終年度(平成14年度)に、開発したシミュレーションプログラムと、物性値等の
関連測定技術を統合し、単結晶及び柱状晶タービン翼の超合金精密鋳造法とアルミニウム
合金等の複雑形状部材の一般精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程、並びに鋳造組織
及び欠陥生成を、次の精度と計算時間で予測する。
(【添付資料】基本計画、詳細目標参照。
)
但し、これまでのパーソナルコンピュータの性能向上傾向から予測される開発計画終了
時点のパーソナルコンピュータ能力を基準とする。また、データ入力及び結果出力に要す
る時間は含まない。
(1) 湯流れおよび凝固過程のシミュレーション技術
① 曲面対応湯流れおよび凝固予測プログラム
鋳造時にガス発生のない超合金タービン翼精密鋳造(100万要素分割の代表的製品)にお
ける鋳型充満時間を10%以下の誤差で、かつ鋳型充満直後の鋳型及び溶湯温度については
5%以下の誤差で、計算時間24時間以内で予測する。
② サセプタ温度解析プログラム
鋳造前加熱時のサセプタ及びセラミックス鋳型温度変化(100万要素分割の代表的製品)
を誤差5%以下、計算時間5時間以内で予測する。
③ ガスを考慮した湯流れおよび凝固予測プログラム
鋳造時にガス発生する一般精密鋳造(100万要素分割の代表的製品)における鋳型充満時
間及び充満途中の空隙部圧力を10%以下の誤差で、かつ鋳型充満直後の鋳型及び溶湯温度
については5%以下の誤差で、計算時間24時間以内で予測する。
4
(2) 鋳造組織および欠陥生成のシミュレーション技術
① 組織形成シミュレーションプログラム
超合金タービン翼(主要素分割50万要素の代表的製品)の単結晶化及び柱状晶化を80%以
上の確率、計算時間35時間以内で予測する。
② チャンネル型偏析予測プログラム
超合金タービン翼(主要素分割50万要素の代表的製品)のチャンネル型偏析欠陥の発生位
置とその程度(欠陥の幅)を20% 以下の誤差、計算時間48時間以内で予測する。
③ アルミニウム合金の引け巣欠陥予測プログラム
アルミニウム合金精密鋳造品(200万要素分割の代表的製品)の引け巣欠陥の発生位置と
程度(ポロシティ量)を15%以下の誤差で、計算時間12時間以下で予測する。
④ 球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥予測プログラム
球状黒鉛鋳鉄精密鋳造品(200万要素分割の代表的製品)の引け巣欠陥の発生位置と程度
(ポロシティ量)を15%以下の誤差で、計算時間12時間以下で予測する。
(3)
物性値等の関連測定技術
物性値の関連測定技術については、以下の精度を有する測定技術の開発を目標とする。
① 超合金の物性値
タービン翼用主要超合金の物性値を、温度依存性を含めて次の誤差範囲内で測定する。
②
(a)液相線・固相線温度、潜熱、比熱
:誤差3%以下
(b)密度
:誤差2%以下
(c)固体熱伝導率、溶質分配係数
:誤差10%以下
(d)液体熱伝導率
:誤差15%以下
(e)表面張力、粘度
:誤差5%以下
アルミニウム合金の物性値
代表的精密鋳造用アルミニウム合金の液相線・固相線温度、潜熱、並びに固体状態の密度、
比熱、熱伝導率を、誤差5%以下で測定する。
③
鋳型及びサセプタの物性値
精密鋳造用セラミックス鋳型及びサセプタの熱伝導率、比熱、密度、放射率を、温度依存
性を含めて、誤差10%以下で測定する。
5
1.3 目標の設定理由
(1) シミュレーション技術
目標設定に際しては、国内外の鋳造シミュレーションプログラムを調査検討し、現状の
精度と計算時間を把握すると共に、ユーザー希望を調査し、技術レベル等を総合的に判断
して最終目標値を設定した。表 1.3.1 に、シミュレーション技術の現状と目標を示す。
(2) 物性値等の関連測定技術
目標設定に際しては、国内外の物性値等の関連測定技術を調査検討し、現状での測定値
の有無及び測定精度を把握すると共に、シミュレーションの予測精度に求められる物性値
の精度、並びに測定技術の難易度を総合的に判断して最終目標値を設定した。表 1.3.2 に、
物性値等の関連測定技術の現状と目標を示す。
6
表Ⅱ1.3.1 シミュレーション技術の現状と目標
(2D:2次元、E:要素数、FEM:有限要素法)
シミュレーション技術
評価項目
現 状 1)
湯流れおよび凝固 曲面対応湯流れおよび凝固予測プ 鋳型充満時間
誤差 10∼50%
過程のシミュレー ログラム
鋳型及び溶湯温度
誤差 10∼50%
ション技術
:ガス発生のない超合金タービン 計算時間
23 時間(2D,FEM,E=4×104)
120 時間(E=50×104)
翼精密鋳造
(100 万要素分割の代表的製品)
サセプタ温度解析プログラム
鋳型温度
不明
:鋳造前加熱時
計算時間
12 時間(E=104)
(100 万要素分割の代表的製品)
ガス考慮湯流れおよび凝固予測プ
ログラム
:ガス発生する一般精密鋳造
(100 万要素分割の代表的製品)
鋳造組織および欠 組織形成予測プログラム
陥生成のシミュレ :超合金タービン翼
ーション技術
(主要素分割 50 万要素の代表的製
品)
チャンネル型偏析予測プログラム
:超合金タービン翼
(主要素分割 50 万要素の代表的製
品)
アルミニウム合金の引け巣欠陥予
測プログラム
:アルミニウム合金精密鋳造品
(200 万要素分割の代表的製品)
球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥予測プ
ログラム
:球状黒鉛鋳鉄精密鋳造品
(200 万要素分割の代表的製品)
1)現状の計算機は、中・高級ワークステーション
ユーザー希望
誤差 3∼20%
誤差 3∼20%
12∼36 時間
目 標
誤差 10%以下
誤差 5%以下
24 時間以内
誤差 5%以下
5 時間以内
誤差 5%以下
5 時間以内
鋳型充満時間
ソフトなし
空隙部圧力
鋳型及び溶湯温度
計算時間
単 結 晶 化 及 び 柱 状 晶 予測確率 70%(G/R 法)
化
計算時間
60 時間(G/R 法 E=104)
誤差 3%以下
誤差 10∼20%
誤差 10∼20%
24∼36 時間以内
予測確率 80%以上
誤差 10%以下
誤差 10%以下
誤差 5%以下
24 時間以内
予測確率 80%以上
24∼36 時間以内
35 時間以内
発生位置と欠陥幅
計算時間
誤差 20%以下
誤差 20%以下
48 時間以内
発 生 位 置 と ポ ロ シ テ 誤差 20∼30%
ィ量
計算時間
48 時間(E=70×104)
誤差 15%以下
誤差 15%以下
12 時間以内
12 時間以内
発 生 位 置 と ポ ロ シ テ 誤差 20∼30%
ィ量
計算時間
48 時間(E=70×104)
誤差 15%以下
誤差 15%以下
12 時間以内
12 時間以内
不明
7
表Ⅱ1.3.2 物性値等の関連測定技術の現状と目標
測定対象
タービン翼用主要超合金
物性値
液相線温度、固相線温度、潜熱、比熱
現状
測定値が存在しない
目標*
誤差3%以下
密度
測定値が存在しない
金属Feの場合約4%である
誤差2%以下
固体熱伝導率、溶質分配係数
測定値が存在しない
誤差10%以下
液体熱伝導率
測定値が存在しない
酸化物液体の場合約30%である
誤差15%以下
表面張力、粘度
測定値が存在しない
Fe,Siの場合約15%である
誤差5%以下
精密鋳造用アルミニウム合金
液相線温度、固相線温度、潜熱、
固体状態の密度、比熱、熱伝導率
精密鋳造用 Al 合金は測定値が存在しない
純粋 Al の場合約5%である
誤差5%以下
精密鋳造用セラミックス鋳型
及びサセプタ
熱伝導率、比熱、密度、放射率
測定値が存在しない
測定方法の開発から行う必要がある
誤差10%以下
*目標は、主にシミュレーション側の要望に基づく。
8
2.
事業の計画内容
2.1 研究開発の内容
2.1.1 事業全体の計画内容
IT等最新の技術を導入し、プロセス技術の革新を図ることにより、我が国経済社会の
基盤である製造業の競争力の維持・強化を目指す、新製造技術の開発に、大きな期待が寄
せられている。本プロジェクトは、2007年度までに、現在の製造に要する時間やコス
ト等を半減することを目標に、プロセスの一層の合理化を図るとともに、新たな高付加価
値産業を生み出すプロダクトイノベーションの環境を整える「新製造技術プログラム」の
うち、製造技術革新による競争力強化に係わる技術の一環として、実施したものである。
(図
Ⅱ2.1.1.1 参照)
新製造技術プログラム
Ⅰ.製造技術の新たな領域開拓
(1)MEMSプロジェクト
(2)インクジェット法による回路基板製造プロジェクト
(3)クラスターイオンビームプロセステクノロジー
Ⅱ.製造技術革新による競争力強化
(1)デジタルマイスタープロジェクト
(1)デジタルマイスタープロジェクト
(2)IMS国際共同研究プロジェクト
((3
3))革
革新
新的
的鋳
鋳造
造シ
シミ
ミュ
ュレ
レー
ーシ
ショ
ョン
ン技
技術
術開
開発
発
図Ⅱ2.1.1.1 新製造技術プログラム
革新的鋳造シミュレーション技術プロジェクトの位置付け
9
本プロジェクトでは、鋳造法における精密化、生産性向上、低コスト化、開発期間の短
縮化等を実現するために、鋳造過程のシミュレーション技術を確立することを目的として、
表Ⅱ2.1.1.1 に示す研究課題に取り組んだ。
図Ⅱ2.1.1.2 に、開発したプログラムの構成図を示す。ソルバは、湯流れ、凝固、鋳造組
織、欠陥生成の各シミュレーションプログラムから構成され、豊富で高精度な物性値デー
タベースを具備している。
表Ⅱ2.1.1.1 本プロジェクトの研究課題と研究実施場所
研究開発項目
詳細項目
研究実施場所
1.湯流れ及び (a)曲面対応
大阪大、IHI、
凝固過程のシミ
KHI
ュレーションプ (b)ガス考慮
大阪大、クボタ
ログラムの開発
(c)鋳型温度予測
大阪大、北大
(d)プリポストプロセッサ
大阪大、クオリカ
2.鋳造組織及 (a)組織予測
大阪大、IHI
び欠陥生成のシ
KHI
ミュレーション (b)チャンネル型偏析
大阪大、IHI
プログラムの開
KHI
発
(c)アルミニウム引け巣欠陥
大阪大
(d)球状黒鉛鋳鉄引け巣欠陥
大阪大
(e)プリポストプロセッサ
大阪大、クオリカ
3.物性値等の タ ー ビ ン 翼 用 (a)液相線・固相線温度、潜熱、 大阪大、北大
関連測定技術の 主要超合金
比熱
開発
(b)密度
大阪大、九工大、
JAMIC
(c)固体熱伝導率、溶質分配係数
大阪大、北大
(d)液体熱伝導率
東工大、JAMIC
(e)表面張力、粘度
大阪大、東北大
JAMIC
代 表 的 精 密 鋳 (a)液相線・固相線温度、潜熱
大阪大
造 用 ア ル ミ ニ (b)固体状態の密度、比熱、熱伝 大阪大、九工大
ウム合金
導度
精密鋳造用セラミ (a)熱伝導率、比熱、密度
大阪大
ックス鋳型及びサセ (b)放射率
東工大
プタ
10
CADデータ
物性値データ
プリプロセッサ
・形状データ
・鋳物材料の物性値データ
・境界条件データ
湯流れシミュレーション
温度分布、流れ速度分布
プログラム
圧力分布、充満時間
プログラム
ポストプロセッサ
凝固シミュレーション
温度分布、固相率分布、
ガス流れ場、固液共存域
鋳造組織シミュレーション
結晶組織、
プログラム
核生成状況
欠陥生成シミュレーション
引け巣欠陥
プログラム
チャンネル型偏析
図Ⅱ2.1.1.2
開発したプログラムの構成図
11
2.1.2 全体スケジュールと予算
【全体スケジュール】
開発項目
1.湯流れ及び凝固過程のシミュレーション
①曲面対応
②ガス考慮
③鋳型温度予測
④プリポストプロセッサ
2.鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション
表Ⅱ2.1.2.1 研究開発における全体スケジュール
平成11年度
平成12年度
平成13年度
2次元版の試作
基本アルゴリズ
ムの検討
3次元版の設計及び試作
解析精度の向上、不具合の改良
基本設計
①組織予測
②チャンネル型偏析
③アルミニウム引け巣欠陥
④球状黒鉛鋳鉄引け巣欠陥
⑤プリポストプロセッサ
3.関連測定技術の開発
①静滴法による密度・表面張力
②超合金等の固体状態における物性値
③改良型静滴法及びピクノメータ法による密度
④微小重力環境を利用した密度及び表面張力
⑤微小重力環境を利用した熱伝導率
⑥回転振動法による粘度
⑦液相線、固相線温度および平衡分配係数
⑧アルミ合金の固体状態における密度、比熱等
平成14年度
解析精度の向上、不具合
の
改良
システム統合
プログラムのチューニン
グ
(計算速度の向上と使用
メモリーの削減)
検証用実鋳造品の実験データの取得
検証試験結果との比較及び評価
電磁浮遊炉の製
作・浮遊液滴法
の地上実験
(④、⑤)
各種測定手法の
開発
電磁浮遊炉を用いた浮遊液滴法の実験
純ニッケル及びモデル合金による測定手
法の開発、検証のための測定(④、⑤)
電磁浮遊炉を用いた浮遊液滴法
による測定
実用超耐熱合金の密度・表面張
力、熱伝導率の測定(④、⑤)
純ニッケル及びモデル合金による測定手法の開発、検証のための測定
実用超耐熱合金の各種物性値測定
温度依存性、組成依存性の評価、測定精度の評価
物性値推算方法の検討
12
シミュ
レー
ション
プログ
ラム用
入力
データ
【予算推移】
一般会計
エネ高会計
総予算額
表Ⅱ 2.1.2.2 研究開発予算
H11fy
H12fy
H13fy
(当初)
144.5
162.8
151.2
(実績)
139.2
157.3
151.2
(当初)
270.3
243.1
227.6
(実績)
249.4
228.4
228.7
(当初)
414.8
405.9
378.8
(実績)
388.6
385.7
379.9
H14fy
116.5
126
201.5
201.5
318
327.5
単位:百万円
総額
575
573.7
942.5
908
1517.5
1481.7
2.1.3 研究開発項目毎の詳細計画内容
以下に各研究開発項目の詳細な計画内容を説明する。
(1) 湯流れ及び凝固過程のシミュレーションプログラムの開発
超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における湯流れ及び凝固過程をシミュレーシ
ョンする以下の4つのプログラムを開発するとともに、シミュレーション精度確認のため
にX線による湯流れ及び凝固過程の直接観察技術を開発する。
①
直接差分法及び輸送現象理論により、タービン翼に代表される複雑な曲面を有する鋳
型空隙部を溶湯が温度変化しつつ充満していく、湯流れ過程をシミュレーションする
プログラムを開発する。
②
直接差分法及び輸送現象理論により、鋳型と溶湯の反応でガスが生じ、ガスが鋳型や
溶湯を通過する現象を考慮した、湯流れ過程をシミュレーションするプログラムを開
発する。
③
直接差分法並びに熱移動論及び電磁気理論により、サセプタの電磁加熱を利用して真
空中で超耐熱合金用セラミックス鋳型を加熱し、さらに鋳型を移動させる時の鋳型温
度変化をシミュレーションするプログラムを開発する。
④
上記のプログラムを組み合わせて、超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法の湯流
れ及び凝固過程をシミュレーションするプログラムを開発する。
⑤
湯流れ及び凝固過程を、X線により、シミュレーション精度を確認し得る速度及び細
かさで、直接観察する技術を開発する。
13
湯流れ及び凝固過程のシミュレーションプログラム
超耐熱合金
精密鋳造用
曲面対応
実験に
よる検証
X 線による
直接観察
一般精密鋳造用
ガス考慮
プログラム
プログラム
ふく射
ソルバ
サセプタ温度
解析ソルバ
図 Ⅱ2.1.3.1 湯流れ及び凝固過程のシミュレーションプログラムの開発
14
(2) 鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラムの開発
超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における鋳造組織及び欠陥生成過程をシミュ
レーションする以下の2つのプログラムを開発する。
①
核生成を仮定し、結晶成長理論を利用したセルオートマトン法と直接差分法により、
タービン翼などの超耐熱合金精密鋳造法における、単結晶や柱状晶の凝固組織形成を
シミュレーションするプログラムを開発する。
②
直接差分法、凝固理論及びフェーズフィールド法により、タービン翼などの超耐熱合
金精密鋳造法で生じるチャンネル型偏析と引け巣欠陥の生成、及びアルミニウム合金
や球状黒鉛鋳鉄の一般精密鋳造法で生じる引け巣欠陥をシミュレーションするプロ
グラムを開発する。
鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラム
超耐熱合金精密鋳造
用鋳造組織シミュレ
ーションプログラム
欠陥生成のシミュレ
実験に
よる検証
セルオートマトン法
直接差分法
ーションプログラム
超耐熱合金
一般精密
精密鋳造用
鋳造用
チャンネル型偏
アルミニウム合
析プログラム
金・球状黒鉛鋳鉄
引け巣欠陥プロ
グラム
図 Ⅱ2.1.3.2 鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラムの開発
15
(3) 関連測定技術の開発
精密鋳造シミュレーションの入力データとして必要な材料物性値及び熱力学データを高
精度で測定する技術を開発するとともに、開発された技術等を用いて、合金、鋳型材料等
のデータを測定する。
①
微小重力環境を利用して、溶融金属の表面張力、密度及び粘度を高精度に測定する
技術を開発する。
②
電磁浮遊法等を用いて、耐熱金属の融点、比熱及び熱伝導率を高精度に測定する技
術を開発する。
③
熱分析やX線マイクロアナライザを用いて、耐熱合金の液相線、固相線温度、分配
係数等の熱力学データ及びミクロ偏析を高精度に測定する技術を開発する。
④
熱移動理論に基づいて、多孔質セラミックス鋳型材料の比熱、熱伝導率、放射率及
び透過率を高精度に測定する技術を開発する。
⑤ 上記の高精度な測定技術を用いて、シミュレーションに必要な材料の物性値等を測
定する。
精密鋳造シミュレーション
開発した測定技術を用いた
材料物性値等のデータ測定
(耐熱金属、鋳型材料、他)
微小重力環境下で
電磁浮遊法を用い
熱分析等各種分析
多孔質鋳型材料
の溶融金属の表面
た溶融金属の熱伝
法による物性値等
の物性値等の測
張力等の測定技術
導率等の測定技術
の測定技術開発
定技術開発
開発
開発
図Ⅱ2.1.3.3
関連測定技術の開発
16
2.2 研究開発の実施体制
2.2.1 実施体制
本研究開発は、経済産業省の新規産業創出型産業科学技術研究開発制度により、新エネ
ルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、
「財団法人 素形材センター」に委託して
実施した。図Ⅱ2.2.1 に、研究開発の実施体制を示す。民間企業等8社と国立大学6大学が
参加し、研究開発責任者である大中逸雄(PL)、野城清(SL)の下に集結して、研究開発を
実施した。
大中 PL は、大阪大学大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻 教授で、鋳造シミュ
レーションプログラム開発全体をとりまとめるとともに、シミュレーション関連のグルー
プのとりまとめを行った。大阪大学大学院工学研究科(大中研究室)と(財)素形材センタ
ーは、共同研究契約を結び、大阪大学の先端科学技術共同研究センター内で集中共同研究
を行った。
野城 SL は、大阪大学 接合科学研究所 教授で、物性値の測定技術に関するグループの
とりまとめを行った。大阪大学接合科学研究所(野城研究室)と(財)素形材センターは、
共同研究契約を結び、大阪大学の先端科学技術共同研究センター内等で共同研究を行った。
大中 PL を委員長、野城 SL を副委員長として、選任された研究者及び有識者による総合
調査研究委員会を発足した。本プロジェクトを共同して研究実施するに要する施策につき、
協議検討をした。
17
経済産業省
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)
技術推進委員会
委託
集中研究
集中研究
総合調査
研究委員会
(財)素形材センター
共同研究
共同研究
大阪大学 大学院工学研究科
(大中逸雄 PL)
PL)
大阪大学 接合科学研究所
(野城清 SL)
SL)
各種シミュレーションソルバの開発
密度、比熱、熱伝導率、
表面張力、潜熱の測定
再委託
分 室
北海道大学 大学院工学研究科物質工学専攻
クオリカ㈱(旧コマツソフト(株)
クオリカ㈱(旧コマツソフト(株)
)
(工藤昌行教授:液相線温度および固相線温
(プリ及びポスト・プロセッサ)
石川島播磨重工業㈱
度、溶質分配係数等)
(湯流れ直接観察、模擬翼検証実験)
北海道大学 大学院工学研究科機械科学専攻
㈱クボタ
(工藤一彦教授:ふく射伝熱解析)
(工藤一彦教授:ふく射伝熱解析)
(湯流れ直接観察、検証実験)
東北大学 工学部 金属工学専攻
川崎重工業㈱
(佐藤譲助教授:粘度)
(模擬翼の鋳造方案検討および検証実験)
東京大学 大学院工学系研究科
㈱センシュー
(鈴木俊夫教授:フェーズフィールド法の適用)
(検証実験計画・指導)
東京工業大学 大学院理工学系研究科
㈱ヤマニシ
(永田和宏教授:熱伝導率)
(検証実験計画・指導)
九州工業大学 工学部 物質工学科
石川島システムテクノロジー㈱
(向井楠宏教授:密度・表面張力)
(残留変形と応力解析)
(財)宇宙環境利用推進センター
(微小重力環境を利用した物性値の測定)
図Ⅱ2.2.1 研究開発の実施体制
18
2.2.2 登録研究員
表Ⅱ2.2.2.1 研究担当者
大学名・会社名
氏名
所属・役職
備
考
大阪大学
大中 逸雄
大学院工学研究科 教授
(集)
大阪大学
安田 秀幸
大学院工学研究科 助教授
(集)
大阪大学
杉山
明
大学院工学研究科 助手
(集)
大阪大学
朱
金東
大学院工学研究科 助手
(集)
大阪大学
山内
勇
大学院工学研究科 助教授
(集)
大阪大学
大道徹太郎
大学院工学研究科技術職員
(集)
大阪大学
野城
清
接合科学研究所 教授
(集)
大阪大学
松縄
朗
接合科学研究所 教授
(集)
大阪大学
藤井 英俊
接合科学研究所 助教授
(集)
大阪大学
松本 大平
接合科学研究所 助手
(集)
大阪大学
周
民
接合科学研究所客員研究員
(集)
大阪大学
沈
平
接合科学研究所客員研究員
(集)
大阪大学
陸
善平
接合科学研究所客員研究員
(集)
大阪大学
劉
会杰
接合科学研究所客員研究員
(集)
大阪大学
左子由紀子
大学院博士課程(後期)
(集)
大阪大学
岩根
潤
大学院博士課程(後期)
(集)
大阪大学
峯下健太郎
大学院博士課程(前期)
(集)
大阪大学
上津 智宏
大学院博士課程(前期)
(集)
大阪大学
猪又 賢介
大学院博士課程(前期)
(集)
大阪大学
松田 崇之
大学院博士課程(前期)
(集)
(財)素形材センター
木下 文昭
技術部 研究員
クオリカ㈱
(財)素形材センター
木間塚明彦
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(集)
(財)素形材センター
小川 隆行
技術部 研究員
川崎重工業㈱
(集)
(財)素形材センター
趙
海東
技術部 研究員
清華大学
(集)
(財)素形材センター
王
同敏
技術部 研究員
大連工科大学
(集)
(財)素形材センター
野本 祐春
技術部 研究員
石川島システムテクノロジー㈱(集)
(財)素形材センター
久保 幸一
技術部 研究員
㈱クボタ
(集)
(財)素形材センター
吉元 孝一
技術部 研究員
㈱センシュー
(集)
(財)素形材センター
江川 勝一
技術部 研究員
㈱ヤマニシ
(集)
(財)素形材センター
朱
躍峰
技術部 研究員
清華大学
(集)
(財)素形材センター
趙
寅成
技術部 研究員
延世大学
(集)
(財)素形材センター
村上 俊彦
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
清水 康和
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
19
(集)
(財)素形材センター
田中 浩幸
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
横井 雅浩
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
迫
伸生
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
高野 正幸
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
木下 慎一
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
谷口 光一
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
谷口 和也
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
島田 敬二
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
中社 芳博
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
清水 康和
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
本田 仁志
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
吉川
清
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
小西 一生
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
扇屋 慎司
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
田中
学
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
森廣 一男
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
弁野
彰
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
木佐貫 新
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
古瀬 勝茂
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
山下 敏郎
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
寺内 真吾
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
岡本 勇規
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
大橋
勉
技術部 研究員
クオリカ㈱
(分)
(財)素形材センター
松田 謙治
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
田中
徹
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
松井 邦雄
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
平田
淳
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
石毛 健吾
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
吉澤 廣喜
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
黒木 康徳
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
筑後 一義
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
徳良
晋
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
佐藤 茂征
技術部 研究員
石川島播磨重工業㈱(分)
(財)素形材センター
秋川 尚史
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
加藤 博士
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
松広 純二
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
島田 幸雄
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
石原 広助
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
高橋
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
勝
20
(財)素形材センター
小川 隆行
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
水田 明能
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
佐藤 昌宏
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
野村 嘉道
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
橋本 啓介
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
永田 康史
技術部 研究員
川崎重工業㈱(分)
(財)素形材センター
荻野 義道
技術部 研究員
㈱クボタ
(分)
(財)素形材センター
上原 健文
技術部 研究員
㈱クボタ
(分)
(財)素形材センター
品部耕一郎
技術部 研究員
㈱クボタ
(分)
(財)素形材センター
岡部 和男
技術部 研究員
㈱クボタ
(分)
(財)素形材センター
山本 育男
技術部 研究員
㈱クボタ
(分)
(財)素形材センター
泉谷 一弘
技術部 研究員
㈱クボタ
(分)
(財)素形材センター
高岡
技術部 研究員
㈱クボタ
(分)
※
勉
所属、役職等は全て、実施時点のものである。
注1)
(集)は集中研究所、(分)は分室の略である。
21
表Ⅱ2.2.2.2 総合調査研究の研究担当者
大学名・会社名
氏名
所属・役職
(財)素形材センター
荻布真十郎
常務理事
(財)素形材センター
日比野高三
技術部長
(財)素形材センター
冨澤 幸雄
技術部 部長
(財)素形材センター
田邊 秀一
技術部 主任
(財)素形材センター
笹谷 純子
技術部 技術課長
(財)素形材センター
木村 朋子
技術部 主任
(財)素形材センター
小池
技術部 主任
(財)素形材センター
小杉 伸也
※
卓
技術部
所属、役職等は全て、実施時点のものである。
22
備 考
表Ⅱ2.2.2.3 再委託先の研究担当者
大学名・会社名
北海道大学
氏名
所属・役職
工藤 昌行
大学院工学研究科 教授
野口
大学院工学研究科 教授
徹
大笹 憲一
大学院工学研究科 助教授
工藤 一彦
大学院工学研究科 教授
黒田 明慈
大学院工学研究科 助教授
持田 明野
大学院工学研究科 助手
小原 伸也
大学院工学研究科 研究生
金澤 卓也
大学院工学研究科 修士課程
李
炳煕
大学院工学研究科 研究生
須田 金文
大学院工学研究科 元技官
持田あけの
大学院工学研究科 助手
東北大学
佐藤
譲
大学院工学研究科 助教授
東京大学
鈴木 俊夫
大学院工学系研究科 教授
東京工業大学
永田 和宏
大学院工学研究科 教授
福山 博之
大学院工学研究科 助教授
林
幸
大学院工学研究科 助手
向井 楠広
工学部物質工学科 教授
北海道大学
九州工業大学
(財)宇宙環境利用 炭竃 豊治
推進センター
※
無重力施設利用部 総括部長
櫻谷
隆
無重力施設利用部 部長
小山
徹
無重力施設利用部 主任研究員
村木 義弘
無重力施設利用部 主任研究員
高橋 英之
無重力施設利用部 主任研究員
渡辺
毅
無重力施設利用部 主任研究員
高橋
満
無重力施設利用部 研究員
松本 悟美
無重力施設利用部 研究員
堀江
無重力施設利用部 統括主任研究員
裕
中野 幹男
無重力施設利用部 主任研究員
丹治
彰
無重力施設利用部主任研究員
栗山 和之
無重力施設利用部主任研究員
太田
無重力施設利用部主任研究員
稔
所属、役職等は全て、実施時点のものである。
23
備 考
2.2.3 共同研究先、再委託先、出向元企業のプロファイル
【シミュレーション関係】
[共同研究先]
1)大阪大学 大学院工学研究化 知能機能創成工学専攻
鋳造における湯流れや、凝固現象を長年研究しており、鋳造シミュレーションに関する
研究で顕著な業績をあげている。
[再委託先:大学]
1) 北海道大学 大学院工学研究科機械科学専攻
ふく射熱移動に関する国内で数少ない研究拠点であり、燃焼炉内等におけるふく射伝熱
に関して優れた業績をあげている。
2)東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻
凝固組織形成に関する研究,特にフェーズ・フィールド法によるデンドライト成長に関
する研究で顕著な業績をあげている。
[出向元企業]
1) クオリカ株式会社(旧コマツソフト㈱)
鋳造シミュレーションのプリ、ポスト・プロセッサの開発に関して長年の経験があり、
優れた人材を有している。
2) 石川島播磨重工業株式会社
本研究で対象としているガスタービン翼の精密鋳造メーカとして、日本でトップクラス
の製造実績があり、それに関連した数値解析やシミュレーション、実験技術に関しても
優れた実績がある。
3) 株式会社 クボタ
関西地域で最大の鋳造工場を持つ企業の一つで、農業機械関係の精密鋳造技術に関して
高い技術を有しており、湯流れの直接観察やシミュレーション精度の確認等の実施に適
している。
4) 川崎重工業株式会社
航空機用あるいは発電用ガスタービンメーカとして多くの実績があり、タービン翼等の
精密鋳造品に対するユーザからの要求やシミュレーション技術の効果的活用について
の仕様開発や試用に適している。
5) 株式会社 センシュー
自動車部品等の鋳鉄鋳物を製造している優良中小企業であり、シミュレーション技術の
有効活用に関しての要求や使い勝手等の意見を聞くのに適している。
6) 株式会社 ヤマニシ
タイヤ用金型等の精密アルミニュウム鋳物を製造している優良中小企業であり、中小企
業におけるアルミニュウム鋳造に関するシミュレーション技術の活用に関しての要求
やソフトの使い勝手等の意見を聞くのに適している。
7) 株式会社 IHI エスキューブ(旧石川島システムテクノロジー㈱)
24
石川島播磨重工業関連のソフト会社として凝固や結晶成長、応力解析用ソフト開発に多
くの実績がある。
【関連測定技術関係】
[共同研究先]
1)大阪大学接合科学研究所 機能評価研究部門
我が国で浮遊液滴法による高融点合融液の物性測定について実績のある研究は、当研究
部門のみである。また国内において微小重力環境で浮遊液滴法による高温融液の物性値
測定を実施しているのは当研究部門のみである。
[再委託先:大学]
1)九州工業大学 物質工学科
高温融液の密度測定について改良静滴法を開発し、メタルの密度を正確に精度良く測定
出来ることを明らかにしている。又溶融金属の表面張力に及ぼす酸素と温度の影響を世
界ではじめて定量的に解明した。
2)東京工業大学 大学院理工学研究科
高温における熱伝導度の測定は、対流伝熱と輻射伝熱による影響が大きく信頼性のある
データに乏しい。細線加熱法により、数秒程度の短時間での測定を可能とし、各種金属
の熱伝導度を測定している。
3)東北大学 大学院工学研究科
我が国で高融点合金融液の粘度測定について研究実績があり、現在も継続しているのは
当研究室のみである。改良型高温用回転振動法により、粘度の測定を行っている。
4)北海道大学 大学院工学研究科(機械)
合金の凝固現象を把握する上で溶質の平衡分配係数は、重要な因子でありこの値により
ミクロ、マクロの偏析の程度が決まる。実用合金の多くは多成分系であり、実験と計算
の両面からの求める必要である。当研究室は、これらの研究で各種の賞を得ている。
[再委託先:団体]
1)財団法人 宇宙環境利用推進センター
微小重力環境下での物性値測定、特に浮遊液滴法による密度、表面張力の測定には実績
がある。
25
2.3 研究の運営管理
研究開発全体の管理・執行に責任と決定権を持つNEDOは、経済産業省及び研究開発
責任者と密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに、本研究開発の目
的及び目標に照らして適切に遂行されるよう、NEDO内に革新的鋳造シミュレーション
技術推進委員会を設置し、外部有識者の意見を運営管理に反映させた。表Ⅱ2.3.1 に革新的
鋳造シミュレーション技術推進委員会の委員名簿を示す。
表Ⅱ2.3.1 革新的鋳造シミュレーション技術推進委員会における委嘱委員
氏
名
所属・役職
梅田 高照
東京大学 教授
佐藤 嘉晃
NEDO 主研
森
克巳
九州大学大学院 教授
大中 逸雄
大阪大学大学院 教授
宮沢 和男
高知工科大学 教授
福水 健文
NEDO 部長
荻布 真十郎
(財)素形材センター 常務理事
野村 宏之
名古屋大学 教授
西田 享平
NEDO 室長
NEDOが実施・管理を行う当該プロジェクトの、より効率的な研究開発の推進を図る
ため、研究開発の現場において指示・指導・調整の任にあたる研究者であり、実施者の一
員として自ら研究開発に携わる他、研究開発計画原案の策定、研究成果のとりまとめ等の
役割を担う研究開発責任者(プロジェクトリーダー)として、大阪大学
大中逸雄教授を
指名し、そのもとで、本プロジェクトを推進した。
本研究開発を効率的に実施するため、大阪大学大学院工学研究科および大阪大学接合科
学研究所との間で、それぞれ包括的な「共同研究契約」を締結し、有機的に結合した革新
的鋳造シミュレーション技術研究体を形成し、当該研究体規定に基づいて、密接な強調の
下で共同して研究実施した。
次に、上記研究体規定に定められたプロジェクトリーダーの債務と権限を以下に挙げる。
(1)組織関連
・サブリーダの選任と解任を行う
・研究体のグループの設置・廃止等、組織構成を決定する
・グループリーダの選任及び解任を行う
(2)研究体所属研究者関係
・甲及び乙が提出する研究者候補リストの中から研究体所属研究者を選任し、選任し
たリストを甲及び乙に通知する
・研究環境の整備及び安全の確保を行う
・研究体所属研究者の任期の設定及び変更に関する調整を行う
26
・研究者の担当研究項目を決定する
・その他、研究体所属研究者の総合的な総括を行う
(3)予算、研究場所、研究設備、装置等
・実施時における予算の配分(予算区分を含む)を調整する
・研究体の活動に割り当てられた研究場所の配分や模様替え等を調整する
・研究設備・装置等の使用範囲を調整する
(4)研究計画
・年度毎概算要求案を策定する(予算計画、予算区分を含む)
実施計画書案を策定する(予算計画、予算区分を含む)
・研究計画の変更
実施計画書変更申請案を策定する(甲経由で NEDO へ提出)
・研究経過報告
実績報告書を策定する(甲経由で NEDO へ提出)
成果報告書案を策定する(甲経由で NEDO へ提出)
(5)研究評価
・研究内容の研究体内での評価を行う
・研究者の研究体内での評価を行う
(6)研究成果
・別途定める研究体知的所有権取扱規程の施行及びその遵守に関する指導管理をする
・論文発表等による公開を知的所有権による保護に優先させるか否かを判断する
(7)その他
・研究体の研究活動推進のための総合調整をする
・ワークショップ、シンポジウム等、本プロジェクト関連事業計画の策定及び実施
を行う
また、研究開発を統括して、効率的な研究の推進、進捗を図るため、総合調査研究委員会
を開催し、外部からの指導および協力を得て、研究計画の検討、研究進捗状況の管理等を
行った。また、国内外における成果発表および関連研究における最新の動向調査等を行い、
研究開発計画に反映させた。担当機関相互の連絡・調整を行い、研究開発の効率化を行っ
た。表Ⅱ2.3.2 に総合調査研究委員会の委員名簿を示す。
27
表Ⅱ2.3.2 総合調査研究委員会名簿
氏
委 員 長
副委員長
委
員
名(敬称略)
大中 逸雄
野城
清
秋川 尚史
島田 幸雄
江川 勝一
荻野 義道
荻布真十郎
木下 文昭
木間塚明彦
王
同敏
趙
海東
工藤 一彦
工藤 昌行
大笹 憲一
駒場 栄司
西戸 誠志
堀江
裕
桜谷
隆
佐近 淑郎
石出 孝一
下畠 幸郎
岡田 郁生
守屋 慶一
佐藤
讓
朱
躍峰
趙
寅成
杉山
明
朱
金東
鈴木 俊夫
田村
至
森岡 宏文
川端 隆史
中間 敦司
河野 藤孝
長坂 悦敬
永田 和宏
福山 博之
日比野高三
平田
淳
松田 謙治
松井 邦雄
田中
徹
黒木 康徳
向井 楠宏
肖
峰
村上 俊彦
吉岡 洋明
吉成
明
吉元 孝一
所属・役職
大阪大学大学院工学研究科 教授
大阪大学接合科学研究所 教授
川崎重工業㈱航空エンジン技術部 参与
川崎重工業㈱航空エンジン技術部 主事
㈱ヤマニシ開発センター 所長
㈱クボタ 素形材技術部 課長
(財)素形材センター 常務理事
(財)素形材センター 研究員
(財)素形材センター 研究員
(財)素形材センター 研究員
(財)素形材センター 研究員
北海道大学大学院工学研究科 教授
北海道大学大学院工学研究科 教授
北海道大学大学院工学研究科 助教授
アイシン高丘㈱技術センター 課長
アイシン高丘㈱技術センター
(財)宇宙環境利用推進センター 総括主任研究員
(財)宇宙環境利用推進センター 部長
三菱重工業㈱高砂研究所 次長
三菱重工業㈱高砂研究所 次長
三菱重工業㈱高砂研究所 主任
三菱重工業㈱高砂研究所 主任
三菱重工業㈱高砂研究所
東北大学大学院工学研究科 助教授
(財)素形材センター 研究員
(財)素形材センター 研究員
大阪大学大学院工学研究科 助手
大阪大学大学院工学研究科 助手
東京大学大学院工学系研究科 教授
ダイヤ精鋳㈱製造部 主査
ダイヤ精鋳㈱製造部
ダイヤ精鋳㈱製造部
日立金属㈱冶金研究所 主任研究員
日立金属㈱技術センター 主管技師
甲南大学 経営学部 助教授
東京工業大学大学院理工学研究科 教授
東京工業大学大学院理工学研究科 助教授
(財)素形材センター 技術部長
石川島播磨重工業㈱機械プラント開発センター 課長
石川島播磨重工業㈱技術開発本部 技師長
石川島播磨重工業㈱機械プラント開発センター 部長代理
石川島播磨重工業㈱基盤技術研究所 部長
石川島播磨重工業㈱基盤技術研究所
九州工業大学工学部物質工学科 教授
九州工業大学工学部物質工学科 研究員
コマツソフト㈱ エンジニアリングソリューション室 室長
㈱東芝 電力・産業システム技術開発センター 主幹
㈱日立製作所日立研究所 主任研究員
㈱センシュー研究開発グループ チームリーダー
28
事務局
オブザーバ
冨澤 幸雄
田邊 秀一
(財)素形材センター 技術部 部長
(財)素形材センター 技術部 主任
経済産業省 産業技術環境局 研究開発課
経済産業省 製造産業局 素形材産業室
経済産業省 製造産業局 航空機武器宇宙産業課
新エネルギー・産業技術総合開発機構 新材料・プロセス技術開発室
29
3. 情勢変化への対応
本プロジェクト開始後、研究開発上の技術的・社会的情勢変化に伴う研究内容の調整と
見直しを適切に行った。
平成 11 年度は、総合調査委員会を4回開催し、ソルバ開発担当と物性値担当研究者との
調整、ソルバ間における調整を行った。開発プログラムに対するユーザサイドからの各種
要望があり、総合調査委員会で協議を行った。また、海外研究動向調査を行い、ProCAST 等、
競合メーカの動向を調査した。
平成 12 年度は、総合調査委員会を 7 回開催し、進捗状況の報告と結果の検討を行った。
ソルバに必要な物性値仕様一覧を示し、ソルバ開発担当と物性値担当研究者との調整を行
った。また、物性値の目標精度についても検討した。さらに、SIM2000 国際会議に参加し、
研究発表を行うとともに、競合メーカの動向を調査した。
平成 13 年度は、総合調査委員会を 6 回開催し、進捗状況の報告と結果の検討を行った。
ソルバ検証 WG を開催して、ユーザ側のプリポストの検証試験に基づき、各種機能について
ユーザの要望をもとにプログラムを改善した。
平成 14 年度は、総合調査委員会を 6 回開催し、進捗状況の報告と結果の検討を行った。
ソルバ検証 WG を開催して、ユーザ側から検証モデルおよび検証試験結果を提供してもらい、
シミュレーション予測と検証試験結果の比較を行った。各種物性値データをプログラムに
取り込むためのフォーマットを検討し、当該フォーマットに従って物性値データを整備し、
物性値データの取り込みを行った。さらに、第 65 回世界鋳物会議に参加し、3件の研究発
表を行うとともに、競合メーカの動向を調査した。
以上のとおり、
① ソルバー開発グループ内での協議
② ソルバー開発グループと物性値測定グループでの協議
③ ソルバー開発グループとユーザグループでの協議
④ 競合メーカの動向への対応
を通じて、NEDO及びプロジェクトリーダー並びに委託先が、技術的・社会的情勢変化
に対して適宜対処した結果、当初の研究目標、並びに研究内容を大幅に変更すること無く、
プロジェクトを遂行できた。
4.中間評価結果への対応
中間評価を実施していないため、提言・コメントはない。
30
5.評価に関する事項
NEDOは、国の定める技術評価に係る指針及び技術評価実施要領に基づき、技術的及び
産業技術政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成果の技術的意義並びに将来の産
業への波及効果等について、NEDOに設置する技術評価委員会において外部有識者による
研究開発の事後評価を15年度に実施する。
31
Ⅲ.研究開発成果について
1.
事業全体の成果
研究開発項目「超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における、湯流れおよび凝固
過程のシミュレーションプログラム、鋳造組織および欠陥生成のシミュレーションプログ
ラム、並びに関連測定技術の開発」に関して、事業最終年度終了時(平成 15 年 3 月)にお
ける、各シミュレーションプログラムの開発実績を表Ⅲ1.1 に示す。また、関連測定技術の
開発実績を表Ⅲ1.2 に示す。
各シミュレーションプログラムの開発において、計算精度と計算時間の全項目に対して
目標を十分に達成できた。従来の鋳造シミュレーションプログラム、並びに国内・国外の
現有の鋳造シミュレーションプログラムと比較して、計算精度、計算時間、共に飛躍的に
向上した。
また、関連測定技術の開発において、全ての測定精度目標を達成した。超耐熱合金、ア
ルミニウム合金、セラミックス鋳型及びサセプタにおける物性値等の精度目標に対して、
測定誤差が当初目標の 1/2∼1/3 という、高精度の各種測定技術を開発できた。
(1) 湯流れおよび凝固過程のシミュレーションプログラムの開発
①
曲面対応湯流れおよび凝固予測プログラム
目標計算対象「ガス発生のない超合金タービン翼精密鋳造(100 万要素分割の代表的製
品)
」に対し、「タービン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品(1,340 万要素分割)
」の計算を行っ
た結果、表Ⅲ1.1 に示すように、計算精度:誤差 7%(溶湯の鋳型充満時間)
、誤差 4.2%(充
満直後の鋳型温度、4計測点の平均予測誤差)、誤差 3%(充満直後の溶湯温度、4計測点
の平均予測誤差)、計算時間:約 20 時間で、計算精度、計算時間ともに目標を達成した。
②
サセプタ温度解析プログラム
目標計算対象「鋳造前加熱時(100 万要素分割の代表的製品)」に対し、
「タービン翼一方
向凝固精密鋳造品(90 万要素分割)
」の計算を行った結果、表Ⅲ1.1 に示すように、計算精
度:誤差 5%程度、計算時間:1.5 時間で、計算精度、計算時間ともに目標を達成した。
③
ガス考慮湯流れおよび凝固予測プログラム
目標計算対象「ガス発生する一般精密鋳造(100 万要素分割の代表的製品)」に対し、
「ク
ランクシャフト砂型精密鋳造品(100 万要素分割)
」の計算を行った結果、表Ⅲ1.1 に示す
ように、計算精度:誤差 10%以下(溶湯の鋳型充満時間)、誤差 10%以下(空隙部圧力)、
誤差 4.2%(充満直後の鋳型温度、4計測点の平均予測誤差)、誤差 3%(充満直後の溶湯
温度、4計測点の平均予測誤差)
、計算時間:17 時間で、計算精度、計算時間ともに目標を
達成した。
32
(2) 鋳造組織および欠陥生成のシミュレーションプログラムの開発
①
組織形成予測プログラム
目標計算対象「超合金タービン翼(主要素分割 50 万要素の代表的製品)」に対し、
「ター
ビン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品(100 万主要素分割)
」の計算を行った結果、表Ⅲ1.1 に
示すように、計算精度:予測確率 80%∼85%(単結晶化及び柱状晶化)
、計算時間:4 時間以
内(組織ソルバのみ、輻射考慮無し)で、計算精度、計算時間ともに目標を達成した。
② チャンネル型偏析予測プログラム
目標計算対象「超合金タービン翼(主要素分割 50 万要素の代表的製品)」に対し、
「ター
ビン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品(100 万主要素分割)
」の計算を行った結果、表Ⅲ1.1 に
示すように、計算精度:80%以上の確率で健全な模擬翼を作製(チャンネル型偏析の発生位
置と欠陥幅)、計算時間:70 時間以内(輻射考慮無し、目標要素分割に対し 35 時間相当)
で、計算精度、計算時間ともに目標を達成した。
③ アルミニウム合金の引け巣欠陥予測プログラム
目標計算対象「アルミニウム合金精密鋳造品(200 万要素分割の代表的製品)」に対し、
「インテークマニホールド AC4C 精密鋳造品(200 万要素分割)」の計算を行った結果、表
Ⅲ1.1 に示すように、計算精度:誤差 13%以下(引け巣の発生位置とポロシティ量)
、計算
時間:6 時間で、計算精度、計算時間ともに目標を達成した。
④ 球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥予測プログラム
目標計算対象「球状黒鉛鋳鉄精密鋳造品(200 万要素分割の代表的製品)」に対し、
「セグ
メント間継手金物 FCD450 精密鋳造品(200 万要素分割)」の計算を行った結果、表Ⅲ1.1
に示すように、計算精度:85%程度の確率で引け巣の有無が一致(引け巣の発生位置とポロ
シティ量)
、計算時間:12 時間(流れ計算 8 時間、凝固計算 4 時間)で、計算精度、計算時
間ともに目標を達成した。
(3)物性値等の関連測定技術の開発
① タービン翼用主要超合金の物性値等
タービン翼用主要超合金の液相線温度、固相線温度、潜熱、比熱、密度、固体熱伝導率、
溶質分配係数、液体熱伝導率、表面張力および粘度の測定結果は、表Ⅲ1.2 に示すように、
いずれの実績も目標精度を達成した。
② 代表的精密鋳造用アルミニウム合金の物性値等
代表的精密鋳造用アルミニウム合金の液相線温度、固相線温度、潜熱、固体状態の密度、
固体比熱および固体熱伝導率の測定結果は、表Ⅲ1.2 に示すように、いずれの実績も目標精
33
度を達成した。
③ 精密鋳造用セラミックス鋳型及びサセプタの物性値等
精密鋳造用セラミックス鋳型及びサセプタの熱伝導率、比熱、固体状態の密度および放
射率の測定結果は、表Ⅲ1.2 に示すように、いずれの実績も目標精度を達成した。
34
表Ⅲ1.1 シミュレーション技術の実績
シミュレーション技術
計算条件
評価項目
湯 流 れ お よ び 凝 曲面対応湯流れおよび凝固予測 タービン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品 鋳型充満時間
(1,340 万要素分割)
固 過 程 の シ ミ ュ プログラム
鋳型温度
CPU:PentiumIV 2.53GHz, Memory:1GB
レーション技術 :ガス発生のない超合金タービン
溶湯温度
※計算可能要素数(鋳物要素率 10%)
翼精密鋳造
直交:約 4 千万、混合:約 1.5 千万 計算時間
(100 万要素分割の代表的製品)
タービン翼一方向凝固精密鋳造品
鋳型温度
サセプタ温度解析プログラム
(90 万要素分割)
計算時間
:鋳造前加熱時
CPU:PentiumIV 2.4GHz, Memory:1GB
(100 万要素分割の代表的製品)
目 標
誤差 10%以下
誤差 5%以下
誤差 5%以下
24 時間以内
実績
誤差 7%
誤差 4.2%
誤差 3%
約 20 時間
誤差 5%以下
5 時間以内
誤差 5%程度
1.5 時間
誤差 10%以下
誤差 10%以下
誤差 5%以下
誤差 5%以下
24 時間以内
予測確率 80%以上
誤差 10%以下
誤差 10%以下
誤差 4.2%
誤差 3%
17 時間
予測確率 80%-85%
35 時間以内
4 時間以内 (組織ソル
*1
メモリ使用量:910MB
ガス考慮湯流れおよび凝固予測 クランクシャフト砂型精密鋳造品
(100 万要素分割)
プログラム
CPU:PentiumIV 2.4GHz, Memory:1GB
:ガス発生する一般精密鋳造
メモリ使用量:200MB
(100 万要素分割の代表的製品)
鋳型充満時間
空隙部圧力
鋳型温度
溶湯温度
計算時間
タービン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品 単結晶化及び柱状晶
鋳 造 組 織 お よ び 組織形成予測プログラム
(100 万主要素分割)
欠 陥 生 成 の シ ミ :超合金タービン翼
化
CPU:PentiumIV 2.4GHz, Memory:1GB
ュ レ ー シ ョ ン 技 (主要素分割 50 万要素の代表的
計算時間
メモリ使用量:100MB(凝固ソルバ)
術
製品)
+ 20MB(組織ソルバ)
チャンネル型偏析予測プログラ
ム
:超合金タービン翼
(主要素分割 50 万要素の代表的
製品)
アルミニウム合金の引け巣欠陥
予測プログラム
:アルミニウム合金精密鋳造品
(200 万要素分割の代表的製品)
球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥予測
プログラム
:球状黒鉛鋳鉄精密鋳造品
(200 万要素分割の代表的製品)
バのみ輻射考慮無)
タービン模擬翼超耐熱合金精密鋳造品
(100 万要素分割)
CPU:PentiumIV 2.4GHz, Memory:1GB
メモリ使用量:600MB
発生位置と欠陥幅
誤差 20%以下
計算時間
48 時間以内
インテークマニホールド AC4C 鋳造品
(200 万要素分割)
CPU:PentiumIV 2.4GHz, Memory:1GB
メモリ使用量:未確認
発生位置とポロシテ 誤差 15%以下
ィ量
計算時間
12 時間以内
誤差 13%以下
セグメント間継手金物 FCD450 鋳造品
(200 万要素分割)
CPU:PentiumIV 2.4GHz, Memory:1GB
メモリ使用量:140MB
発生位置とポロシテ 誤差 15%以下
ィ量
計算時間
12 時間以内
85%程度の確率で引
け巣の有無一致
流れ計算:8 時間
凝固計算:4 時間
注)*1精度の高い測定が困難であったため、正確な評価ができていない。
*2
超耐熱合金 CMSX-4 の検証試験結果。
*3
計算対象目標の 50 万要素分割に換算すると、35 時間相当と見なせる。
35
80%以上の確率で健
全な模擬翼を作製*2
70 時間以内(輻射考慮
無)*3
約 6 時間
測定対象
物性値
表Ⅲ1.2 関連測定技術の実績
目標
液相線温度
誤差3%以下
誤差1%以下
固相線温度
誤差3%以下
誤差1%以下
潜熱
誤差3%以下
誤差3%以下
比熱
密度
誤差3%以下
誤差3%以下
誤差2%以下
固体熱伝導率
誤差10%以下
誤差2%以下 (電磁浮遊法)
誤差0.11%(改良型ピクノメータ)
誤差0.38%(改良静滴法)
誤差3%以下
溶質分配係数
誤差10%以下
誤差7%以下
液体熱伝導率
誤差15%以下
誤差5%
表面張力
誤差5%以下
誤差2%
(電磁浮遊法)
誤差3%以下(静滴法)
粘度
誤差5%以下
誤差3%以下(バラツキ0.5%程度)
液相線温度
誤差5%以下
誤差0%
固相線温度
誤差5%以下
誤差1.5%
潜熱
誤差5%以下
誤差4%以下
固体状態の密度
誤差5%以下
誤差2%以下
固体比熱
誤差5%以下
誤差3%以下
固体熱伝導率
誤差5%以下
誤差3%以下
熱伝導率
誤差10%以下
誤差5%以下
比熱
誤差10%以下
誤差5%以下
固体状態の密度
誤差10%以下
誤差5%以下
放射率
誤差10%以下
誤差5%以下
タービン翼用主要超合金
代表的精密鋳造用アルミニウム
合金
精密鋳造用セラミックス鋳型
及びサセプタ
実績
36
(電磁浮遊法)
2.
研究開発項目毎の成果
2.1 湯流れおよび凝固過程のシミュレーションプログラム
(1) 一方向凝固精密鋳造法のシミュレーション
①曲面対応湯流れおよび凝固予測プログラム
本開発項目の主な目的は湯流れ・凝固解析に適用する要素形状を直交要素(不等間隔分
割を含む)から直交・非直交混合要素まで拡張することによって計算精度を向上させるこ
とである。適用解析範囲は一般精密鋳造プロセスのほか、一方向凝固を含む精密鋳造プロ
セスである。
まず、本プロジェクト初年度の平成 11 年に直交・非直交混合要素システムを採用した湯
流れ・凝固解析手法を提案し、それに基づく湯流れ・凝固解析の基本アルゴリズムを開発
した。平成 12 年度には2次元湯流れ・凝固解析ソルバを試作し、アルゴリズムの有効性と
実用的シミュレーションソフトへ発展できる可能性を確認した。
平成 13 年度は3次元プログラムの開発を行った。特に凝固ソルバでは、前進差分法のほ
か、凝固時間の長い鋳造プロセスに対応させるため、後退差分法を解析ソルバに取り入れ
た。また湯流れソルバでは、混合要素システムにおける自由表面形態の推定方法を確立し
た。
最終年度の平成 14 年に湯流れ・凝固ソルバ単体の計算能力(解析できる要素数の拡張な
ど)を向上させた。また、輻射ソルバおよび電磁誘導加熱ソルバとの連成を行い、一方向
凝固プロセスにおいて輻射伝熱を考慮した鋳型加熱過程、鋳型移動に伴う凝固過程の解析
が可能となった。
さらに完成した湯流れ・凝固ソルバに対して、計算精度および計算能力の検証を行い、
以下の結果が得られた。
(ア) 45 度傾斜角柱鋳物の冷却過程(凝固潜熱を考慮せず)の厳密解と数値解との比較を行
い、凝固ソルバ単体の精度評価を行った(図Ⅲ2.1.1)。直交要素を使用した場合、鋳物中
心温度の 100 秒後の計算誤差は約 15%で、混合要素を使用した場合、計算誤差は 0.5%以内
に抑えられた。なお、混合要素を使用した場合の CPU 時間は直交要素の約 1.5 倍であった。
(イ) 直立角柱鋳物の輻射冷却過程の厳密解と数値解との比較を行い、輻射ソルバと連成し
た凝固ソルバの精度評価を行った。その結果、輻射熱流束および温度変化の計算誤差はそ
れぞれ 0.6%および 1.5%以内であった。
(ウ) 鋳型移動を伴わないロストワックス・シェルモールド法の場合の凝固解析を行い、輻
射冷却の効果を調べた。図Ⅲ2.1.2 に示す計算結果から冷却機構によって最終凝固位置、凝
固の指向性が異なる可能性を示唆した。さらに簡易形状モデルで一方向凝固プロセスの凝
固計算を行い、固液共存領域の幅および固液共存領域とサセプタとの相対位置などについ
て妥当な計算結果が得られた。
(エ) 湾曲湯道系を持つ簡易形状キャビティの湯流れ過程の可視化実験結果と比較し、湯流
れソルバの計算精度を検証した。直交要素および混合要素の場合、鋳型充満時間に対する
37
計算誤差は、それぞれ 83%および 3%で、凝固解析と同様に混合要素を使用することによっ
て計算精度の向上が実現できた。なお、混合要素の場合、計算の CPU 時間は直交要素の約
1.6 倍であった。
(オ) ブレード状鋳物の湯流れ検証実験と比較検討した結果、鋳型充満時間、充満直後の溶
湯温度および鋳型温度の計算誤差はそれぞれ 7%, 3%および 4%となった(図Ⅲ2.1.3 および
表Ⅲ2.1.1)。なお、総要素数および鋳物用素数はそれぞれ約 1340 万、103 万で、計算の
CPU 時間は約 20h であった。
P
P
厳密解(実線)
混合要素(○)
直交要素(△)
P
45 度傾斜角柱モデル
100 秒後の角柱中心温度
の数値誤差
直交要素:
15%
混合要素:
0.5%
図Ⅲ2.1.1 45 度傾斜角柱の非定常熱伝導問題の厳密解と数
値解との比較
(a) 形状モデル(1/2 表示)
(b) 輻射冷却
(c) 熱伝達冷却
図Ⅲ2.1.2 凝固シミュレーションの結果例−輻射冷却と熱伝達冷却との比較
38
0.354s
0.610s
1.143s
1.370s
計算の CPU 時間:約 20h(72279s)
、Windows PC(Pentium4-2.53GHz CPU, 1GB メモリ)
全要素数:約 1340 万(13,395,000)
、鋳物要素数:約 103 万(1,025,674)
ブレードおよびセンターポール上部の充満時間の測定値: 1.75s(実験 No_1∼No_3 の平均)
上記の数値解析による推定値:1.627s、数値誤差:7%
図Ⅲ2.1.3 ブレード鋳物の鋳型充填過程のシミュレーション結果
表Ⅲ2.1.1 鋳型充満直後の溶湯および鋳型温度の計算結果と実験結果との比較
測定位置
P1_melt
P2_melt
P3_melt
P4_melt
湯
計算結果
1429.9
1327.5
1375.6
1397.2
温
実験結果
No_1~No3 の平均
1348.5
1360.1
1360.0
1364.8
計算誤差
6.04%
2.40%
1.14%
2.38%
測定位置
P1_mold
P2_mold
P3_mold
P4_mold
計算結果
915.9
917.2
1187.9
1085.1
実験結果
No 1~No3 の平均
843.6
923.8
1237.1
1123.2
計算誤差
8.56%
0.71%
3.98%
3.39%
溶
度
鋳
型
温
度
溶湯温度の平均計算誤差: 2.99%
鋳型温度の平均計算誤差: 4.16%
39
②曲面対応プリ及びポスト・プロセッサ
曲面対応のプリ、ポスト・プロセッサとして、製品形状の曲面部を表現する要素分割と
して大阪大学で考案した規則−不規則混合要素を採用した。平成 11 年度から平成 14 年度
の間に規則−不規則混合要素を用いた要素分割プログラムや解析結果表示機能を開発した。
これらはまず2次元形状に対応し、3次元形状へと拡張した。最終年度に開発した折れ面
近似による規則−不規則混合要素分割は図Ⅲ2.1.4 及び図Ⅲ2.1.5 に示したように直交要素
と比較して2次元形状及び3次元形状においても形状近似精度の向上がうかがえる。解析
結果表示としては図Ⅲ2.1.6 に示したように表示設定項目をダイアログ上で設定でき、解析
結果の評価が容易になるように配慮した。また、計算条件の設定や物性値データの登録・
編集機能も開発し、それらが容易に設定・修正できるように配慮した。
(a)3D-CAD
(b)直交要素
(c)規則−不規則混合要素
図Ⅲ2.1.4 2次元形状の分割例
(a)3D-CAD モデル
(b)直交要素
(c)規則−不規則混合要素
図Ⅲ2.1.5 3次元形状(タービンブレード)の分割例
40
図Ⅲ2.1.6 規則−不規則混合要素による湯流れ解析結果例
③一方向凝固精密鋳造装置用プリ及びポスト・プロセッサ
一方向凝固精密鋳造装置用のプリ、ポスト・プロセッサとして平成 11 年度から平成 14
年度の間に一方向凝固精密鋳造装置の形状作成とその要素分割機能、一方向凝固用の計算
条件設定や物性値データの設定及び引き下げによる鋳型の移動を考慮した解析結果の表示
機能を開発した。最終年度にはプリ、ポスト・プロセッサと凝固解析、輻射計算及び電磁
誘導加熱によるサセプタ温度予測計算との連成を可能とし、一連の操作により一方向凝固
によるシミュレーションが可能となった。また、セレクタ形状のパラメトリック方式によ
る自動作成(図Ⅲ2.1.7)やセラミック鋳型の作成機能(図Ⅲ2.1.8)など一方向凝固に特
化した自動作成機能を開発したことにより、一方向凝固のシミュレーションがより容易に
実現可能となった(図Ⅲ2.1.9)
。
一方、輻射計算の形態係数算出は計算時間を多く要することが判明したため、この計算
時間を短縮することを目的に鋳物・鋳型表面の輻射対象面となる面を結合して、面数を削
減する機能を開発した。輻射対象面を減らすことで、計算量が削減され、計算時間は短縮
される。この結果、輻射計算対象面数は直交要素の場合に約 1/6、規則−不規則混合要素の
場合に約 1/4 となった。
41
(a)ZIGZAG 型
(b)HELIX 型
(a)3D-CAD モデル
(b)鋳型作成結果
図Ⅲ2.1.7 セレクタの自動作成
図Ⅲ2.1.8 セラミック鋳型の自動作成
(a) 30 s 後
(c) 3000 s 後
(b) 1250 s 後
(d) 5000 s 後
図Ⅲ2.1.9 一方向凝固シミュレーション結果例
④サセプタ温度解析ソルバ
一方向凝固プロセスの数値シミュレーションをするためにサセプタ電磁誘導加熱解析−輻射解析−凝固解析を
連成したシュミレーションシステムを開発した。この解析システムを使ってサセプタ温度・引き抜き
速度・輻射等の評価を行うことにより、一方向凝固プロセスの最適な鋳造条件を検討する有
効なツールとなる。本ソルバは下記に示す機能・特徴を持つ。
42
(ア)電磁誘導加熱解析
(イ)サセプタからの輻射による鋳型加熱解析
(ウ)サセプタからの輻射を考慮した一方向凝固精密鋳造凝固プロセスの解析
(エ)サセプタ、鋳型のメッシュはそれぞれ独立で作成可能
サセプタソルバにおいては電磁誘導加熱を計算するために下記の式を用いた。
1
µ ∫v
(
)
∇ × N e ⋅∇ × A e dV − ∫ N e J 0e dV + σ ∫ N e ∇φ e + jωA e dV = 0
v
ρC pV (T t + ∆t − T t )i / ∆t = λia
v
Sij
lij
(T
t + ∆t
j
[
)
− Ti t + ∆t +
Sij
rb +
(
li
λi
+
lj
(T
λj
t + ∆t
j
(1)
− Ti t + ∆t
)
(2)
)]
+ Sij q& j + ε eσ (Te + 273.15) − Ti t + ∆t + 273.15 Sij + V ⋅ Qloss
4
4
(1)式を有限要素法により解いて誘導加熱による発熱量 Qloss を求める。(2)式の右辺第二
項は輻射による鋳型との熱交換量であり、輻射ソルバに計算される。直接差分法による(2)
式によりサセプタの温度分布が得られる。同様にサセプタ表面温度から輻射ソルバにより
鋳型への熱交換量が求められる。以上のように輻射ソルバを介してサセプタ-鋳型間のメッ
シュを必要とせずに図Ⅲ2.1.10 に示すような一方向凝固プロセスの解析が可能となる。サ
セプタ電磁誘導加熱は軸対象モデルで計算し、凝固計算用に 3 次元に展開する事で従来と
比較して計算時間、メモリの低減が可能となった。
V1
サセプタ
サセプタソルバ用
メッシュ
輻射
誘導加熱コイル
凝固解析用
メッシュ
Z
Y
X
冷却盤
引き抜き
図Ⅲ.2.1.10 一方向凝固プロセス解析モデル
43
⑤熱放射計算のための形態係数解析および放射熱移動量の算出プログラム
平成 11 年度には、形態係数を短時間で計算するために、微小な値の形態係数の解析を近
似式と簡易的な面積分を導入して簡易化するプログラムの基本アルゴリズム検討と、ベン
チマーク試験用の解析系に基づいた形態係数解析用3次元ソフトの試作を行った。この結
果、ProCAST の形態係数計算に比べ、1.1∼1.8 倍の計算速度が得られた。
平成 12 年度には、鋳型及びサセプタでの壁面間の輻射形態係数解析の高速化のため、壁
面要素間での遮断要素の有無の判定を3次元平面走査法で行う方式の開発を行った。また
壁面間の交換熱量を射度の概念を利用して行列解析で求めるプログラムの開発を行った。
この結果、サセプタ内面と鋳型外面の壁面要素間の伝熱解析の全体の解析時間は ProCAST
の 1.9 倍となることがわかり、時間のかかる伝熱解析の簡略化が課題となった。誤差につ
いては厳密解と比べて 1%以内であった。
平成 13 年度には、面間の輻射交換熱量解析の射度に関する行列計算の計算時間を大幅に
減らすため、面での輻射の反射回数に制限を加える手法を提案した。これにより、伝熱計
算の解析時間は、誤差を数%に押さえながら、これまでのおよそ 1/3 になった。また、前
年度までの数百程度の鋳型壁面要素を対象としたプログラムを、数万要素程度にまで対応
可能とするため、ハードディスクスワップ、配列の再利用等を図った。
平成 14 年度は、輻射形態係数と面間熱交換の解析プログラムに、鋳型移動時の解析を行う
プログラムを追加し、他のプログラム部分(鋳型およびその内部の溶湯部、サセプタ部)
との結合用のインターフェースを整備した。また、全体の結合計算の実行を支援し、この
結果判明する問題点を解決した。
44
湯流れ及び凝固
シミュレーションプログラム
データ群
3次元平面走査法
走査平面
走査線
○鋳型の位置
○壁面温度
遮へい物
(初期値)
○壁面放射率
鋳型壁面要素
○解析系の幾何学的なデータ
サセプタ壁面
Call
本研究で採用した高速化の手段
壁面要素間での,形態係数の計算
●表が見える壁面要素の判定計算
●遮へい判定の計算
■壁面要素間の法線の内積により,表が見える
要素を判定する。以下の計算では,これらに
ついてのみ行う。
■3次元平面走査法を水平投影面,及びサセプタ
軸線方向に導入。
●形態係数の計算
■近似式と簡易面積分の導入。
鋳型壁面要素への,流入出熱量の計算
●ゾーン法の原理を利用した行列計算
ふく射伝熱プログラム
Output : 流入出熱量/形態係数
■形態係数が小さく,かつ壁面間の温度差が
小さな要素については,要素をまとめて扱う
(行列計算の簡素化)。
■面における反射回数を限定する。
ふく射伝熱プログラムの高速化手法
図Ⅲ2.1.11 輻射伝熱プログラムの高速化手法
⑥X線透過法を利用した湯流れ直接観察とシミュレーションの検証
平成 12 年度には予備検討として、以下の検討を実施した。航空機エンジンの高推力・高
効率化に対応するタービン翼は大型化・薄肉複雑形状化されると考えられる。シミュレー
ションにおいてもそのような形状で検証することが望ましいので、ブレード模擬形状とし
ては図Ⅲ2.1.12 に示す大型翼とした。超合金製タービン翼の精密鋳造における通常の鋳造
方案は、センターポールの周囲に複数の製品を配置する。しかし、X 線透過装置により観察
する場合、X 線透過方向に複数の製品があることは望ましくないので、図Ⅲ2.1.13 に示す
ようにセンターポールの片側にのみ製品を配置した鋳造方案とした。また、X線透過装置
はその構成上、真空炉内部に設置することが出来ない。そこで、素材としては大気溶解・
鋳造が可能である Ni 基超合金の中の Inconel713C を選択した。
平成 13 年度には図Ⅲ2.1.14 に示すように X 線透過装置を移設した。また、予備実験にお
いて鋳造までの鋳型・溶湯の温度変化を計測し、ブレード鋳造時の湯流れを観察できるよ
う、これらの温度低下を低減する実験方法を確立した。図Ⅲ2.1.15 に示すように 300s 後で
も 1420℃以上のレードルでの溶湯温度とすることができた。
45
平成 14 年度には X 線透過装置による模擬ブレード形状鋳型内での湯流れ直接観察実験を
実施した。図Ⅲ2.1.16 に示すようにカップ下での充填状態変化を観察することが出来た。
また、図Ⅲ2.1.17 に示すように鋳造時の鋳型・溶湯の温度変化を計測し、充填状態変化・
鋳込み充満時間とともにシミュレーションプログラムの検証データとした。
A
カップ
上部ランナー
センター
ポール
A
ブレード
下部ランナー
View A-A
図Ⅲ2.1.12 ブレード模擬形状
図Ⅲ2.1.13 鋳造方案
概略サイズ
翼幅:60 mm
翼厚:最薄部
0.6 mm
最厚部
3 mm
翼全長:300
mm
鋳型全長:500 mm
46
図Ⅲ2.1.14 X 線透過装置 (IHI 横浜に設置)
1520
出湯温度 1600℃
Temperature ℃
1500
1480
1460
1440
1420
1400
0
50
100
150
Time s
200
図Ⅲ2.1.15 レードルでの溶湯温度変化
47
250
300
0.00 s
0.80 s
0.20 s
0.40 s
1.00s
1.20 s
図Ⅲ2.1.16 カップ下充填状態変化
1500
Temperature ℃
1400
1300
1200
溶湯
鋳型
1100
1000
900
800
0
0.5
1
Time s
1.5
図Ⅲ2.1.17 上部ゲート位置での温度変化
48
2
⑦航空機エンジン用模擬翼の鋳造方案検討と試鋳造による検証
平成 12 年度には、鋳造シミュレーションを行う際の問題点を明らかにするとともに、操
作性改善のための多数の提案を行った。
平成 13 年度には、航空機エンジン用簡易モデル翼を設定し、その鋳造方案を検討するとと
もに、既存ソフトを使用して湯流れ鋳型充満および一方向凝固の試計算を行い、入力パラ
メータが凝固に及ぼす影響を検討し、シミュレーションの精度を向上させるためには正確
な物性値を得ることが必要であることを示した。
平成 14 年度には、比較検証用の航空機エンジン用模擬翼を設定し、量産鋳造設備での鋳造
方案を検討した。模擬翼を図Ⅲ2.1.18 に、鋳造方案を図Ⅲ2.1.19 に示す。湯流れ鋳型充満
検証実験では、鋳型充満時間、鋳型及び溶湯温度を測定し、図Ⅲ2.1.20 に示す結果を得た。
一方向凝固鋳造実験では、鋳造条件を変えて得られた鋳造翼のマクロ組織を評価した。検
証実験で得られた代表的なマクロ組織を図Ⅲ2.1.21 に示す。開発中のソフトを用いてシミ
ュレーション計算した結果は、実験結果と良く合っており、達成目標を満足する結果が得
られた。計算結果を図Ⅲ2.1.22 に示す。
20°
A
2 5 .0
A
38.0
R267.5
65.5
51.9
29.4
16.0
Section A- A
図Ⅲ2.1.19 シミュレーション計算
及び検証鋳造実験用鋳造方案
図Ⅲ2.1.18 航空機エンジン用模擬翼形状
1600
鋳型表面上部①
1500
2.3
溶湯上部①
4.3
湯口
1400
温度(℃)
溶湯上部②
1300
鋳型表面上部②
4.0
1200
図Ⅲ2.1.20 鋳型充満
4.3
1100
検証実験温度データ
4.2
3.9
1000
2.0
900
1
2
3
4
5
時間(秒)
49
6
7
(a)引抜速度 150mm/hr
(b)引抜速度 250mm/hr
(c)引抜速度 350mm/hr
図Ⅲ2.1.21 柱状晶組織写真
(a)注湯後 1.924 秒
(b)注湯後 2.022 秒
図Ⅲ2.1.22 鋳型充満時間計算結果
50
(2) 一般精密鋳造法のシミュレーション
①ガスを考慮した湯流れ・凝固予測プログラム
砂型・中子および通気ベントなどを通過するガス流れを考慮した湯流れ・凝固予測 3 次元
プログラムを開発した。鋳型に通気性を持たない金型(ダイカスト等)に適用できるベン
トからのガスの排出を考慮した金型ソルバと、砂型へのガス排出を考慮できる砂型ソルバ
をそれぞれ開発した。本ソルバは従来のソフトには無い下記の機能を備えている
(ア)背圧を考慮した湯流れ解析によるガス巻き込み欠陥予測
(イ)砂型、ベントへのガスの排気、塗型の影響、砂型でのガス発生を考慮
(ウ)背圧による湯周り不良の予測
本ソルバでは背圧および鋳型内でのガス流れを考慮するために溶湯の湯流れの方程式に
加えて下記の方程式を用いる。
t + ∆t
t + ∆t

ρ igt Vigt
Pjt + ∆t − Pigt + ∆t
r t  M Vig
M Vig
t + ∆t
ρ
n
S
−
P
=
P
−
∑j  ij ij µ (d / K + d / K ) c / m  RT ∆t ig RT ∆t abs _ air ∆t (1)
S
S
2
2



P jt + ∆ t − Pi t + ∆ t t  M V i ε t + ∆ t  M
V ε
=
ρi  −
Pi
Pabs _ air − ρ it  i − V i ⋅ Q m (T g ) (2)
∑j n ij S ij
µ RT
 RT ∆ t
 RT
 ∆t

(1)式によりキャビティ内ガス圧力が求まり、(2)式により鋳型内ガス圧力が求められる。
図Ⅲ2.1.23 は今回開発したソルバによるガス巻き込み欠陥の表示例である。溶湯が左の
ゲートより注湯され、キャビティ内に円形の障害物があるモデルでの解析結果を示してい
る。従来はガス巻き込み欠陥予測は充満時間からしか予測できなかったが、本手法を用い
る事により欠陥位置を定量的に評価できるため、鋳造方案の検討に有効なツールとなる。
さらに、実鋳物での計算例として図Ⅲ2.1.24 に示すクランクシャフトに対する結果を図
Ⅲ2.1.25 に示す。方案1では湯が乱れてキャビティ内に注湯されている。方案2の方では
下から順に湯が回っており、方案1に比べて方案2のほうが湯の乱れが少なく良い方案で
ある事が言える。以上のように、本ソルバは鋳造方案の検討に有効であるといえる。
51
大きなガス巻き込み欠陥
小さなガス巻き込み欠陥
注湯
図Ⅲ2.1.23 ガス巻き込み欠陥結果表示
方案1
方案2
図Ⅲ2.1.24 クランクシャフトモデル方案
52
方案1
方案2
図Ⅲ2.1.25 クランクシャフトモデル(鋳型内圧力分布)
②直交要素対応ガス考慮プリ及びポスト・プロセッサ
平成 11 年度から平成 14 年度の間に直交要素を用いたガス考慮湯流れ・凝固解析用及び
一般精密鋳造法にも応用できるプリ、ポスト・プロセッサを開発した。プリ・プロセッサ
の基本機能として(ア)基本立体形状の作成、(イ)STL を用いた 3D-CAD I/F、(ウ)メッシュ作成、
(エ)直交要素作成、(オ)直交要素修正、(カ)計算条件の設定などが可能となった(図Ⅲ2.1.26)。
ガス考慮に特化した機能としては、ダイカスト鋳造で用いる排気用のベントや押し出しピ
ンの設定機能、見切り面の設定機能がある。ここではベント設計が容易にできるように配
慮されている。ポスト・プロセッサとしてはガス欠陥を容易に判断できるように様々な工
夫を施した。また、物性値データの登録・編集機能を開発し、ソルバに必要な様々な物性
値が登録・修正可能となった。
一方、Web 環境の発達に伴って業務プロセスのあり方も進化しており、鋳造シミュレーシ
ョンにおいても Web 環境を利用する可能性を検討すべくポスト・プロセッサの開発を実施
した。これには検討項目に対してプログラムの速度測定による検証や新たな手法の導入を
行った。その結果として図Ⅲ2.1.27 のような Web ブラウザ上で動作可能なポスト・プロセ
ッサが完成した。また、Web サーバ上で結果ファイルを処理して VRML ファイルを作成し、
その VRML ファイルをクライアント側で表示するなどの Servlet による開発するといった方
法により更なる可能性があることを示すことができた。
53
(a)3D-CAD I/F 例
(b)直交要素作成例
図Ⅲ2.1.26 プリ・プロセッサ
図Ⅲ2.1.27 Web 環境を利用したポスト・プロセッサ
54
③注湯時の鋳型内ガス圧力・温度測定
ガス考慮湯流れ・凝固シミュレーションの開発に対し、プログラムの精度向上及びシミ
ュレーション結果の検証の手段として、鋳型内のガス圧力の発生状況及び溶湯及び鋳型の
温度を計測するシステムを検討し、図Ⅲ2.1.28 に示す測定方法を確立した。簡易形状モデ
ル(中空四角柱…FC 材質)及び実製品モデル(クランクシャフト…FCD 材質)の2種類の
模型を用い、塗型の有無、開放揚がりの有無により、鋳型の通気性の条件を変化させて、
鋳型内のガス圧力の発生状況、溶湯及び鋳型の温度を測定した。図Ⅲ2.1.29 および 図Ⅲ
2.1.30 に実製品モデルと計測結果の一例を示す。
その結果、鋳型の通気度の変化がガス圧に大きく影響するという結果を得られた。塗型
が有る場合、通気度が低く、キャビティ内で発生するガス圧が鋳型へ抜けないためキャビ
ティ内の圧力が高くなる。塗型が無い場合は発生したガス圧が鋳型へ抜ける為キャビティ
内の圧力は高まらないが、鋳型内(または中子内)の圧力が若干高くなる結果が得られた。
図Ⅲ2.1.28 鋳型内ガス圧測定装置
55
図Ⅲ2.1.29 実製品モデル
図Ⅲ2.1.30 測定結果
④X線透過法を利用した湯流れ直接観察
湯流れシミュレーションの開発に対し、プログラムの精度向上及びシミュレーション結
果の検証手段として鋳型内の直接観察が必須である。そのため観察方法を検討し、X線に
よる湯流れの直接観察方法を確立した。
図Ⅲ2.1.31 および表Ⅲ2.1.2∼表Ⅲ2.1.4 に示すX線湯流れ観察装置を使用し、種々のモ
デルによる湯流れ状態の観察を行なった。その結果本装置により比較的鮮明な画像を得る
事が確認され、鋳造方案や鋳造プロセス等の違いによる湯流れの変化を観察することが出
来た。また気泡の巻き込み状態等も明確に観察され、この観察結果は湯流れシミュレーシ
ョンの検証実験として有効であることが解った。図Ⅲ2.1.32, 図Ⅲ2.1.33 にフラン自硬性
鋳型によるキャビティへの注湯と消失模型を用いた注湯による湯流れの違いを示す。
56
図Ⅲ2.1.31 X線湯流れ観察装置
表Ⅲ2.1.2 X線湯流れ観察装置概要
X線管電圧
X線管電流
焦点寸法
最大出力
照射角度
I-I
TV装置
高速ビデオ
コモンベース
X線管・I-I昇降ユニット
入力面寸法
出力像寸法
モニタサイズ
ストローク
移動速度
ストローク
移動速度
X線防護箱
0∼225kV
0∼13mA
0.4×0.4mm (小焦点)
3.0×3.0mm(大焦点)
640W(小焦点)
3000W(大焦点)
20度
φ230mm
25mm
14インチ
250∼2000Frame/sec
500mm
0.01∼0.5 m/sec
450mm
0.01∼0.2 m/sec
2800×2500×1900H mm
表Ⅲ2.1.3 追跡機構概要
X方向
Z方向
速度
0.01∼0.5m/sec
0.01∼0.2m/sec
距離
500mm
450mm
追跡方法
10ポイント以内追跡ポイント指定ティーチング
57
表Ⅲ2.1.4 自動注湯装置概要
注湯量
角度
傾動
速度
走行
30kg (FC)
0∼58度
3∼29度/sec
Max 11m/min
図Ⅲ2.1.32 X線湯流れ直接観察結果(フラン型)
図Ⅲ2.1.33 X線湯流れ直接観察結果(フラン型・消失模型)
58
⑤鋳型と鋳物間の接触熱抵抗を推定するプログラム
平成11年度は実際の鋳物における温度測定結果から接触熱抵抗値を推定する「逆解析ソ
ルバ」の基礎式(式1)および基本アルゴリズムの検討および設計を行った。平成12年度は
前年度に作成したアルゴリズムを基に、2次元形状に対応した逆解析ソルバの開発を行っ
た。平成13年度は、3次元形状に対応した逆解析ソルバへの拡張を行い、実用化に必要な
機能を付加させると共に、既存の凝固シミュレーションソルバ(JSCAST)で計算した温度
結果を実際に測温した結果に見立てて接触熱抵抗値を推定する方法で、逆解析ソルバの検
証を行った。また、最終年度に行う逆解析ソルバの妥当性を検証するための前準備として、
純アルミニウム等の金型鋳造の注湯実験を実施し、時刻毎の温度履歴測定を行った。平成
14年度は、平成13年度に得た純アルミニウムの測定温度情報を入力データとし、逆解析ソ
ルバの検証を行い、精度の改善および、プリ・ポストプロセッサとの本格的な連携を取る
よう開発を行った。また、実際に逆解析ソルバを使用する際に生じる問題点の一つとして
測温実験時に溶湯の揺らぎやノイズなどから生じる測定誤差がある場合が挙げられるが、
逆解析ソルバで解析の前に処理を施すことによって、解析精度を向上させる方法の検討、
および開発を行った。その結果、逆解析による接触熱抵抗値の推定が可能となり、凝固シ
ミュレーションの温度履歴結果は、測温実験で得た結果とほぼ一致した。(図Ⅲ2.1.34)
基礎式
S * ∆t (Tct − T*t )
r=
( ρC pV ) * (T
t + ∆t
*
− T ) − ∆t ∑
t
*
j ≠c
λm S * j
d* j
− rm − rc
(1)
(T − T )
t
j
t
*
ここで、ρ:密度,Cp:比熱,V:要素体積,S:要素表面積,λ:熱伝導率,
d:節点間距離,r:熱抵抗(下添え字 c:鋳物,m:鋳型(中子),なし:接触熱抵抗)
,
j:*要素の隣接要素(または構成面)番号を表す。
また Tc,T* は鋳物・鋳型(中子)の各時刻における温度で、実験から得る。
800
700
600
実測値
温度 [℃]
500
1対型−鋳型1
1対型−鋳物1
シミュレーション値
1対型−鋳型1
1対型−鋳物1
400
300
200
100
0
0
1
2
3
時 間
4
5
[s ]
図Ⅲ2.1.34 注湯実験と逆解析で求まった温度履歴の比較
59
⑥シミュレーションの検証
平成 13 年度までに、基本的なアルゴリズムの検証と、単純な鋳物を用いての検証を行っ
てきた。平成 14 年度以降は、実際の鋳物を用いた検証を行った。まず、二輪車のエンジン
カバー部品のダイカスト鋳造の計算を実施した結果を示す。本モデルではオーバーフロー
先端部にベントが3箇所、製品表面に 12 箇所の押し出しピンが設置してある。図Ⅲ2.1.35
にショートショット実験との比較を行った結果を示す。シミュレーションの結果はガス巻
き込み欠陥を示しているが、実験の結果と良い一致を示しており、本シミュレーション手
法が妥当であることが確認された。
ベント
(a)ショートショット実験
(b)シミュレーション結果
図Ⅲ2.1.35 ショートショット実験と解析の比較
図Ⅲ2.1.36 はフラン鋳型を用いて FC250 を鋳込み、X 線による観察結果と計算結果を比
較したものであり充填過程は良く一致している。また、図Ⅲ2.1.36 に示した A 点において
キャビティ内のガス圧力を計測した。図Ⅲ2.1.37 の実線が実験結果、赤丸が計算結果を示
している。計算結果は約 10 パーセント以内の誤差で一致しており、本解析手法の妥当性が
確認できた。また、鋳型および塗型の透過率を変化させた場合の結果を示した。塗型の透
過率はキャビティ内圧力に影響を与える事が分かった。
60
(a)t=0.43s
(b)t=0.71s
図Ⅲ2.1.36 充填パターンの比較
7000
実験結果
計算結果
塗型透過率×5
鋳型透過率×10
塗型透過率×0.1
鋳型透過率×0.1
6000
圧力(Pa)
5000
4000
3000
2000
1000
0
0
0.05
0.1
0.15
時間(s)
図Ⅲ2.1.37 キャビティ内圧力変化
61
0.2
0.25
2.2 鋳造組織および欠陥生成のシミュレーションプログラム
(1)組織シミュレーション
① 組織形成予測プログラム
タービンブレード鋳造における凝固組織をシミュレートし、予測するために Cellular
Automaton(以下 CA)法に基づく新しい結晶成長アルゴリズムを構築し、プログラムを開発
した。本プログラムの特徴は:
(ア)従来からある凝固プロセスや一方向凝固プロセスに適用可能。
(イ)結晶粒の核生成と成長、溶質の分配をモデル化した。
核生成は瞬間核生成モデルによってシミュレートした。結晶粒の成長は、本プロジェク
トで開発したデンドライト包絡面追跡法(DETM)によってシミュレートした。DETM では、
セルサイズに対して厳格な制限はないので、従来法に比べて高速計算が実現できる。さ
らに、有効分配係数を導入することによって包絡面周りの溶質分布の計算を行った。有
効分配係数は本プロジェクトで初めて開発した概念である。
(ウ)直接法、間接法による組織欠陥の推定
直接推定法は、組織欠陥を核生成、成長シミュレーションによって直接予測する。
間接推定法は、組織欠陥を溶質濃化領域や高い組成的過冷領域を間接的に検索すること
によって予測する。
(エ)直交要素と直交−非直交混合要素をいずれも使用できる。
直交−非直交混合要素を使用することによって、従来に比べてより高い精度の温度デー
タを得ることができる。
(オ)大小混合メッシュ、大小混合タイムステップ、陽的直接差分法、陰的直接差分法、動的
セル分割法を使用する。
動的セル分割法における分割領域は、従来法で行われているような固液混合領域全体で
はなく、包絡面周りの要素とする。従って、従来法に比べ、分割領域は非常に小さく狭
い。その結果、計算時間を大幅に短縮できる。
このような特徴を持つソルバは、図Ⅲ2.2.1 に示すように開発当初と比較して、CPU 時間と
メモリをそれぞれ 80%以上削減した。主要素分割 100 万のタービンブレードモデル(図Ⅲ
2.2.2)を 4 時間で計算可能となり、目標を達成した。また予測精度も 80%-85%を達成した。
次に、デンドライト包絡面追跡法と有効分配係数のアルゴリズムを示す。
液相内での溶質拡散は直接差分法(DFDM)から導かれる以下の式で表される。
V ⋅ (C i t + ∆t − C i t ) = D L ⋅ S ij ⋅ ∆t
∑
j
(
C tj − C it
a
)
(1)
デンドライトエンベロープでの溶質の排出を考えるため、本プロジェクトでは有効分配
係数を導入した。有効分配係数を以下のように定義した。
62
ke =
C env −in
(2)
C env −out
ここで、 C env −in 、 C env − out :デンドライトエンベロープセル内部、外部の平均濃度である。
エンベロープセルから排出される溶質量は以下の式で与えられる。
(3)
∆C r = V ⋅ ∆f e ⋅ (1 − k e ) ⋅ C env − out
そして、排出された溶質は第一および第二近接エンベロープセルと,それに隣接する液相
セルに液相率を考慮して配分されるとした。
r
図Ⅲ2.2.3 に示すように法線ベクトル n (nx , n y , nz ) をデンドライト占有率より計算する。
nx = −
∂f e
∂x
ny = −
∂f e
∂y
nz = −
∂f e
∂z
(4)
デンドライト占有率の増加量を計算する
∆f e =
S ⋅ v tip (∆T ) ⋅ ∆t
a3
f (α )
(5)
ここで、 α 優先成長方位−法線ベクトル間の角度, f (α ) は優先成長方位に基づく形態関数.
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
CPU time
Memory
M0: no optimization
M1: +Macro/Micro mesh
M2: +Dynamic Macro/Micro
time step
M3: +Dynamic Allocation
Technique
M4: +Implicit DFDM
M0
M1
M2
M3
M4
Optimization Methods
図Ⅲ2.2.1 各最適化法による効果
63
600 mm/h
異結晶
等軸晶
図Ⅲ2.2.2 タービンブレードモデルによる実験結果と計算結果
A
図Ⅲ2.2.3 デンドライト包絡面
成長モデルの概略図
64
②組織予測のためのプリ及びポスト・プロセッサ
組織予測用のプリ、ポスト・プロセッサとして、平成 11 年度から平成 14 年度の間に CA
セルの作成や計算条件の設定及び解析に必要な物性値データの入力機能を開発した。組織
予測ソルバによる解析結果は CA セルを用いているためファイルサイズが大きくなる傾向が
みられた。これらの点を考慮し、ファイル書式を最適化してファイルサイズ削減、読み込
み速度向上といった改善を実施した。この結果、組織ソルバの改良によって出力データ数
が7倍に増えたにもかかわらず、ファイルサイズは改善前の約 1/2、ファイル読み込み速度
も 1/2 に短縮された。また、CA セルを用いた結果表示による表示速度は、CA セル数が増加
するにつれ極端に遅くなる傾向があった。そこで表示速度向上のために、下記2点の改善
を行い、約 5.7 倍の表示速度向上を実現した。
・CA セルの表面を抽出し、表面のみを表示面とすることにより表示量を削減する。
・CA セルのレイヤ情報を用いて規則性を持たせ、表示面の並び替えを省略する。
その他として、組織予測ソルバが規則―不規則混合要素に対応するために、不規則要素
部において CA セルが鋳物/鋳型のどちらに属するかを判定するサブルーチンを作成し、組
織予測ソルバに組み込んだ。その結果を図Ⅲ2.2.4 に示した。これにより規則―不規則混合
要素に対応可能となった。さらに組織予測ソルバが動的セル分割法(Dynamic Allocation
method)に対応したことにより、ポスト・プロセッサにおいても動的セル分割法による解析
結果表示に対応した。この結果を図Ⅲ2.2.5 に示した。
(a)規則−不規則混合要素
(b)組織予測結果
図Ⅲ2.2.4 規則−不規則混合要素による組織予測例
65
(a) 40s
(d) 5861s
(d)5861s
(b) 2902s
(e) 13080s
(e)13080s
(c) 4804s
(f) 142404s
(f)14240s
図Ⅲ2.2.5 動的セル分割を用いた結果表示(結晶粒)
66
③フェーズフィールド法によるミクロ組織予測
平成 11 年度には、希薄3元系合金に対するフェーズフィールドモデルを導出し、フェー
ズフィールドパラメータと物性値の関係を求めた。また、本モデルにより F-C-P 系合金のミ
クロ偏析解析と等温デンドライト成長解析を行った。
平成 12 年度には、開発したモデルを用い、Fe 基合金および Al 基合金のデンドライト2
次アーム間隔の予測を行った。その結果、2次アーム間隔および部分凝固時間指数に対する
予測値は、報告されている実験値と良く一致することを示した。また、2次アーム間隔に対
する物性値の影響を検討した。
平成 13 年度には、開発したモデルにより鉄−炭素合金の急速凝固時のミクロ組織形成過
程を解析した。ここでは、温度場の影響を検討するために熱伝導方程式を連成し、ダブルグ
リッド法と並列計算手法を用いて数値解析した。
セルの競争成長やセル/デンドライト遷移
が再現され、ミクロ組織は優先成長方位にも依存することが確認できた。
平成 14 年度には、カイネティック係数が無視できる条件で、熱力学データと連成可能な
3元系合金のフェーズフィールドモデルを開発した。本モデルの解析精度および解析計算時
間をいくつかの数値例で検討し、その実用性を確認した。
(a)Fe-0.5mol%C
(b)Fe-0.5mol%C-0.001%P
図Ⅲ2.2.6 デンドライト界面形態に及ぼす第3元素の影響
67
図Ⅲ2.2.7 2次アーム間隔の凝固時間指数と状態図物性値(me/(1-ke))の関係
④
組織シミュレーションの検証
a.
X 線回折結果による検証
図Ⅲ2.2.8 (a)に X 線透過法による観察結果を示す。また、同図(b)に ICAST によるシミ
ュレーション結果を示す。両者には良い一致が見られる。
b.
単純な鋳物での検証
図Ⅲ2.2.9 に単純な鋳物の形状を示す。図Ⅲ2.2.10 はこれに対応した実験結果であり、
異結晶は凸部(I と II)の表面で観察される。ICAST によるシミュレーション結果を図Ⅲ
2.2.11 と図Ⅲ2.2.12 に示す。異結晶は飛び出した部分(I と II)に存在することもわかる。
これは、凝固途中において飛び出した部分では高い局部的な過冷却が起こるためである。
図Ⅲ2.2.9 に示すように、1,3,5,6における過冷却は他の部分に比べて高くなってい
る。図Ⅲ2.2.13 にこのシミュレーションで使用した核生成、成長のパラメータを示す。
c.
タービンブレードモデルによる検証
図Ⅲ2.2.15 にタービンブレードモデル(Wax モデル)と熱電対の位置を示す。図Ⅲ2.2.16
と図Ⅲ2.2.17 に示すように冷却曲線は実験とシミュレーションで同じ傾向を示した。
図Ⅲ2.2.18 と表Ⅲ2.2.1 では、結晶粒組織について実験とシミュレーション結果を比較
した。良い一致が見られたのは引き抜き速度が 50mm/h から 100mm/h の場合である。引き抜
き速度が 150mm/h から 300mm/h の場合、実験では異結晶がタブテイル部に生じていた。し
かしながら、シミュレーションは異結晶がブレード部に生じると予測した。引き抜き速度
が 600mm/h の場合、良い一致が見られた。しかし、ブレード部においては、実験では異結
晶が見られるのに対しシミュレーションでは見られない。この誤差の理由は、組織予測ソ
68
ルバにおいて流動計算を直接計算せず実効分配係数のみを用いていることや他の要因が考
えられるが、今後の課題である。
y
G, v
x
T0
(b) Simulated results by the Dendrite Envelope
(a) Experimental results (Sn-21at%Bi)
Tracking Method (G = 3 C0/mm, v = 20 mm/h )
図Ⅲ2.2.8 シミュレーション結果と実験結果の比較
B view
異結晶
A view
380 mm
I
I
II
II
III
III
(a) A view
130 mm
(b) B view
図Ⅲ2.2.10 異結晶の分布状態, 引き抜き速
図Ⅲ2.2.9 鋳物の外観
度:100 mm/h, 超合金: CM247LC
(三菱重工業高砂研究所提供)
69
nucleation number
60
50
40
30
20
10
0
0
50
100
150
z layers (from bottom)
種結晶
3
図Ⅲ2.2.12 核生成サイトの3次元分布
等軸晶
異結晶
1
200
5
2
4
6
図Ⅲ2.2.11 核生成数の変化曲線と核生成サイトの分布
#最大核密度
constitutional undercooling, C
chill surface: 1.0e+7 個/m2
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
1
2
3
4
5
6
other surfaces: 1.0e+6 個/m2
bulk: 2.5e+8 個/m3
#偏差過冷度
chill surface: 0.5 C0
other surfaces: 1.0 C0
bulk: 1.5 C0
0
100
200
300
#平均過冷度,
400
chill surface: 0.5 C0
time, s
other surfaces: 6.2 C0
bulk: 8.8 C0
図Ⅲ2.2.13 過冷却曲線
#grain growth parameters
v(∆T ) = a 2 ∆T 2 + a3 ∆T 3
a 2 = 6.577 × 10 −7 ms −1C 0−2
a3 = 7.842 × 10 −7 ms −1C 0−3
図Ⅲ2.2.14 核生成、成長パラメータ
70
1.スタータ
2.シュラウド 翼面側
7
プラットフォーム
翼面側
3
4
5
6
翼面L/E側(No.3∼6:等間隔に4点)
図Ⅲ2.2.15 タービンブレードモデル (wax model) と 温度測定位置 (IHIから)
図Ⅲ2.2.17
図Ⅲ2.2.16
ブレード鋳物の抜き過程におけ
ブレード鋳物の抜き過程にお
ける温度変化(計算結果)、合金:IN738LC、
る温度変化(実験結果)、合金:CMSX-4、溶湯
溶湯温度:1400℃
温度:1520℃、鋳型予熱:1520℃、引抜き速
鋳型予熱:1400℃、引抜き速度:150mm/h
度:150mm/h
71
(a) 50 mm/h
(b) 300 mm/h
異結晶
異結晶
(c) 600
600 mm/h
等軸晶
図Ⅲ2.2.18
結晶組織について IHI の実験結果と計算結果の比較
表Ⅲ2.2.1 引抜き条件とブレード形状鋳物表面のマクロ欠陥
引抜き速度
50 mm/h
100 mm/h
150 mm/h
300 mm/h
600 mm/h
シュラウド部
翼部
ダブテイル部
○E ○S
○E ○ S
○E ○S
○E ○S
○E 異 S
異E ○S
異E 異S
異E ○ S
等E 等S
○: 欠陥発生なし、 異: 異結晶、等:等軸晶
E
:Experimental results by IHI、S:Simulated results by ICAST
72
(2) チャンネル型偏析シミュレーション
①
チャンネル型偏析推定ソルバ
チャンネル型偏析は合金の組織構造及び組成の不均一性を伴う鋳造欠陥の一種である。
本研究の目的は超合金タービンブレード鋳造品におけるチャンネル型偏析の形成をシミュ
レート及び予測するためのソルバを開発することである。
まず、超合金鋳造品におけるチャンネル型偏析の形成メカニズムを理解するためにその
背景について調査を行った。その結果、チャンネル型偏析の形成は主に合金凝固中のデン
ドライト間の液相における二重拡散効果(熱拡散及び溶質拡散)による対流に起因するこ
とを明らかにした。また上述の対流をシミュレートし、偏析を予測するために凝固進行中
の熱エネルギー、溶質及び運動量の保存則を考慮する際に直接差分法(DFDM)を計算に用
いるアルゴリズムを提案した。このアルゴリズムを基に基礎方程式を作成し、プログラム
を完成させた。
完成したプログラムを、Al 系合金の水平一方向凝固や Pb-10wt%Sn 合金の一方向凝固、タ
ービンブレード模擬翼の一方向凝固に適用した(図Ⅲ2.2.26 参照)
。一方、実際の鋳物を計
算する場合、計算する要素数が飛躍的に増大し、計算時間の増加を招いた。そこで、凝固
時間の削減をおこなった。計算時間削減の方針は、多くの計算時間を占めている流動計算
を適宜飛ばしながら計算する手法、必要な部分だけ細かな要素で分割し、全体の要素数を
減少させる手法(Dynamic Allocation Technique:動的要素分割法、以下 DA 法)と反復法
における緩和係数を大きくする手法である。2次元 DA 法のプログラムは完成し、固液共存
域/液相界面を含む領域を細分化することでチャンネル形成を計算できること、また計算
時間を 30%程度削減できることを示した。さらに流動計算を適宜飛ばし、緩和係数を大きく
とることで計算時間を 90%以上削減可能であった。
次に、計算の特徴を下記に示す。
(ア)連立微分方程式を強引に解くのではなく、直接差分法で差分式を導き、速度場とその他
の場をタイムステップ毎の弱い連成とする。その他の場(温度、濃度、固相率)について
は、解を代数的に得ることで従来に比べて計算精度を犠牲にすることなく、計算時間を削
減している。計算に使用する方程式を下記に示す。
(質量保存則)
∆ ( ρV ) i
∆t
= ∑ ( n ρ L f L SU )
j
(1)
ij
73
(エネルギー保存則)
Δ( ρ C pVT )
=∑
Δt
Sij (T jB − Ti B )
Rij
j
v
∆VS
+ ∑ ( n ρ L C p Sf LUT B ) + ρ S ∆H
ij
∆t
j
(2)
(溶質保存則)
Δ( ρV mC )
v
= ∑ ( n ρ L f L SU mCLB ) + ∑ ( m DL ρ L f L S )
i
Δt
ij
j
j
(
ij
m
CLjB − mCLiB )
d ij
(3)
(運動量保存則)
∆ (ρ LVLU ) j
∆t
= M d + MC + M S + M g + M P
(4)
ここで、Md:ダルシー項、MC:対流項、MS:粘性項、Mg:浮力項、MP:圧力項
 f 2d
f2d 
M d = − µ S J U Jt +∆t  L1 1 + L 2 2 
K2 
 K1
vB
v
M C = U SS 5 (U B f LB S ρ LB ) − U SSB 6 (U B f LB S ρ LB )
SS 5
SS 6
vB
B B
B
+ ∑ U SSl (U f L S ρ L )
SSl
l =1,4
 U B − U JB 
M S = µ ∑ ( Sf LB )  Jl

Jl
l =1,4
 d Jl

(5)
M g = − ∑ ( ρ LB − ρ 0 ) VLlB g
l
l =1,4
M P = S J f LJt +∆t ( P1 − P2 )
t +∆t
(イ)チャンネル型偏析のみならず、濃度の変調を伴うマクロ偏析を計算可能。
(ウ)濃度分布の時間変化を計算、表示可能。
(エ)液相密度、固相密度について、溶質濃度変化と温度変化を考慮。
密度の計算式を以下に示す。
(固相密度)
ρ S = ρ S 0 + ∑ m aSC m k m (C L − C0 ) + m aST ( T − T0 )
(6)
m
(液相密度)
ρ L = ρ L 0 + ∑ m aLC ( mC L − C0 ) + m aLT (T − T0 )
(7)
m
(オ)固液共存層にダルシー流れを仮定し、デンドライト間隔、液相率の関数として透過率を
計算。
74
(カ)溶質元素同士の相互作用は無視し、母合金と溶質元素との2元合金が複数混在する状態
を仮定してそれぞれ加成性が成立すると仮定することで多元合金を取扱可能。
タービンブレードモデル(100 万要素)では目標時間(50 万要素で 48 時間)以内でブレー
ド内の偏析の様子も計算できた。
L=0.025m
(a)
(b)
冷 却
H=0.1m
Cmix[wt%H2O]
t=9053s
断熱面
図Ⅲ2.2.19 二次元 NH4Cl-70wt%H2O 水平一方向凝固の(a)計算モデルと(b)計算結果
図Ⅲ2.2.20 3 次元形状を考慮した Pb-10wt%Sn 合金の計算結果
75
(a)
(b)
CSn[wt%]
図Ⅲ2.2.21 小要素計算(a)と DA 法による計算結果(b)
Cr濃度
図Ⅲ2.2.22 タービンブレードモデルにおける濃度分布
76
②チャンネル型偏析推定ソルバのためのプリ及びポスト・プロセッサ
チャンネル型偏析推定ソルバ用のプリ、ポスト・プロセッサとして、平成 11 年度から平
成 14 年度の間に計算条件の設定及び解析に必要な物性値データの入力機能及び解析結果表
示機能を開発した。最終年度にはプリ、ポスト・プロセッサとチャンネル型偏析推定ソル
バと連成し、一連の操作により一方向凝固によるチャンネル型偏析シミュレーションが可
能となった。
チャンネル型偏析推定ソルバは2次元計算から3次元計算へと拡張され、DA 法の導入な
どにより様々な改善が実施された。当初の解析結果ファイルは汎用的なファイル書式であ
る VTK 形式を用いていたが、この書式は汎用性がある分ファイルサイズは大きくなる。そ
こで独自のファイル書式を定義し、また出力ファイルを時系列で分割するといった改善を
実施したことにより解析結果ファイルのファイルサイズ縮小、読み込み速度向上などの効
果があった。
また、プリ、ポスト・プロセッサにおいてもソルバと共に改善を実施し、固相率分布、
流速分布、液相濃度分布などの表示機能を開発した(図Ⅲ2.2.23)。これによりチャンネル
型偏析の推定が可能となった。
Solid
Liquid
Solid + Liquid
図Ⅲ2.2.23 DA 法による解析結果例
77
③チャンネル型偏析シミュレーションの検証
チャンネル型偏析の発生を予測するシミュレーションプログラムの計算結果を検証する
ために、平成 11 年度、平成 12 年度、平成 13 年度はソルバの基本的アルゴリズムについて
従来の研究や試験的な実験結果と比較した。図Ⅲ2.24 に Al-4.5wt%Cu 合金について Cu 濃度
分布の実験による測定値と計算結果を示す。実験、および計算に用いたモデルは同図 (a)
に示す。Cu 濃度の測定位置は冷却端から 50mm、100mm の位置とした。なお、このモデルで
は動的要素分割法による計算結果も検証したので、同時に示す。図から明らかなように、
本プロジェクトで作成した計算プログラムは比較的実験結果とよく一致していると思われ
る。3次元プログラムに関しては、従来の計算結果と比較した。図Ⅲ2.25 にそれぞれの計
算結果を示す。計算は Pb-10wt%Sn 合金で行った。定性的ではあるが、チャンネル形成位置
などよく一致していると思われる。平成 14 年度より実際のタービンブレード模擬翼形状鋳
物について実鋳造と計算を行った。図Ⅲ2.26 に計算モデルと計算結果を示す。目標を満足
する精度と時間で偏析が予測できることを確認した。
78
冷却端
100mm
(a)
250mm
Fraction Height, y/H
(b)
Copper Concentration, Ccu/mass%
図Ⅲ2.2.24 Al-Cu 合金を用いた検証結果
(a)モデル、(b)Cu 濃度分布結果
79
(b)
(a)
(a)
(b)
図Ⅲ2.2.25 3 次元形状を考慮した Pb-10wt%Sn 合金の計算結果
(a):本計算結果,(b)Felicelli らの計算結果 6)
Cr濃度
図Ⅲ2.2.26 タービンブレードモデル計算結果
(a)メッシュモデル、(b)200 秒後の濃度分布
80
④模擬翼形状におけるチャンネル型偏析の検証
平成 11 年度はシミュレーション検証実験に用いる合金・鋳型の選定ならびに鋳造炉が要
する仕様の検討と整備計画を決定し、平成 12 年度以降の計画を確定した。平成 12 年度は、
ブレード模擬鋳型での鋳型温度測定法を検討した後、温度測定を実施し,引き抜き条件と鋳
型ならびにサセプタ温度との関係を明らかにした。開発プログラムによる解析結果と測定
結果とを比較・検証する準備を進めた。種々の引抜き速度で単純な形状の鋳物を作製し、
得られた鋳物について、デンドライトサイズ、内部欠陥量の測定などによる鋳造組織の定
量化を実施した。
平成 13 年度は、模擬翼を用いた欠陥発生条件の検証試験に関して、模擬翼形状を確定し、
チャンネル型偏析の検証について、検証データとして「フレッケル欠陥の発生臨界条件を
示す」などの検証試験内容を確定し、検証 WG にて承認を得た。単結晶ならびに柱状晶鋳物
作製用炉体の調整を完了し、模擬翼を用い異なる引抜き速度で鋳物を作製した。鋳造模擬
翼の組織観察・方位解析によりフレッケル欠陥の発生条件ならびに結晶方位のずれを確認
した。
平成 14 年度は、鋳型ならびにサセプタ温度予測ソルバ検証実験として、模擬翼形状鋳物
を用い、引抜き凝固中のサセプタ表面温度と鋳型表面温度について温度測定を実施した。引
抜き速度の異なる鋳造条件でデータ採取を完了した。形状の異なる円柱形状鋳物についても
データ採取を完了した。結晶欠陥および組織予測ソルバ検証実験として、異結晶の発生する
鋳造条件やその発生確率を定量的に示す鋳造データを採取し、ソルバ開発 Gr.に提供した。
また、ミクロ組織の分析結果を提示した。フレッケル欠陥などの発生条件、鋳造時の鋳型
温度変化及びミクロ組織の分析結果に加えて、多数個鋳造におけるフレッケル欠陥の発生率
など、データ整備を行なった。検証実験に不可欠である不良発生のデータ提供数が少なかっ
たが、
これまで定量的には整備されていなかった鋳造時の温度変化データなどを提供するこ
とができた。
←成長方向
←成長方向
図Ⅲ2.2.27 フレッケル検証用鋳物の外観 円柱試験体(φ30×L120mm)
、合金種:CMSX-4
81
(b)引抜き速度:600mm/h、腹側
(a)引抜き速度:600mm/h、背側
1500
1500
1300
1300
温度 ,℃
温度 ,℃
図Ⅲ2.2.28 フレッケル検証用鋳物の外観
単結晶模擬翼、合金種:CMSX-4
1100
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.7
900
700
500
0
1100
900
700
800 1600 2400 3200 4000 4800 5600
注湯後の経過時間 , sec
(a)引抜き速度:150mm/h
500
No.7
No.6
No.5
No.4
No.3
No.2
No.1
0 200
400
600
800 1000 1200
注湯後の経過時間 , sec
(b)引抜き速度:600mm/h
図Ⅲ2.2.29 フレッケル検証用鋳物鋳造時の鋳型表面温度変化
単結晶模擬翼、合金種:CMSX-4
引抜き速度:150mm/h 及び 600mm/h の場合
82
(3)アルミニウム引け巣欠陥シミュレーション
①アルミニウム鋳造品の引け巣実態調査
アルミニウム鋳造品内部に見られるポロシティ欠陥について、生成機構を明らかにして
シミュレーションに反映することを目的として調査を行った。様々な鋳物について観察を
行い、ポロシティの大きさ、形状等の形態的特徴や、濃度分布といった科学的特徴を明ら
かにした。図Ⅲ2.2.30 に観察結果の一例を示す。
さらに、欠陥の生成機構に注目して調査した結果(図Ⅲ2.2.31)、表面の亀裂状欠陥は凝
固遅れ部であり、その生成機構は凝固収縮によって粒界(デンドライト先端)で割れが発
生したためと考えられた。また、X線直接観察結果においてポロシティ生成位置は発生位
置からほとんど移動しなかったため、残留液相跡あるいは空気中のガス取込後の凝固組織
と思われる。注湯時の衝突によるポロシティ存在位置に及ぼす影響を分析した結果を図Ⅲ
2.2.32 に示す。方案1では、ポロシティが全体に分散しているが、試料下部に比較的小さ
なポロシティが集中している。方案2では、ポロシティは堰から壁に向かって放射状に存
在しており、鋳物上部分と比較すると鋳物下部分の方がポロシティ率が高い。方案3では、
堰付近の鋳物上部を除いて全体に分散しており、ポロシティは比較的サイズの大きいもの
が存在している。このように、溶湯衝突による酸化膜の巻き込みとポロシティ存在位置と
の関連性が強く、提案モデルの裏付けになった。アルミニウム引け巣予測シミュレーショ
ンを開発する際には、溶湯流動および酸化皮膜の巻き込みとの関連性を考慮する必要があ
り、ポロシティ存在位置については生成位置としてもよいと考えられる。
83
図Ⅲ2.2.30 アルミニウム鋳造品の引け巣欠陥 観察例
84
b)
a)
図Ⅲ2.2.31 試料表面の亀裂状欠陥写真
a)全体写真 b)亀裂部 SEM 写真
85
a)
b)
c)
図Ⅲ2.2.32 試料断面写真
a)方案 1 b)方案 2 c)方案 3
86
②アルミニウム引け巣欠陥予測ソルバ
最近の研究から、酸化物がガス気孔やポロシティ欠陥の核生成サイトになることが指摘
されている。しかしながら、従来の欠陥予測モデルには酸化物の巻き込みの効果を考慮し
ていない。本プロジェクトにおいて、従来法にはない鋳型充填途中における酸化物の巻き
込みを考慮したモデルを提案し、ポロシティ欠陥の予測に適用した。さらに、凝固収縮を
考慮した引け巣予測の簡易法、溶湯圧力および水素濃度を考慮した凝固収縮圧力法ポロシ
ティ分布を予測した。この時、巻き込まれた酸化皮膜がポロシティの核生成サイトとなる
というモデルを構築し、ポロシティ量の評価に酸化皮膜の情報を考慮することで、より高
精度の予測プログラムとした。
以上をまとめて、このプログラムの特徴を示す;
a
酸化皮膜の巻き込みを考慮した溶湯充填シミュレーション。
1.曲面になっている液相の自由表面を直方体形状として図Ⅲ2.2.33 のように表す。液相の
自由表面は常に酸化皮膜に覆われ、この皮膜は自由表面の衝突によって破壊されると仮定
する。
2.自由表面の衝突によって破壊された皮膜の大きさと数は以下によって推定する;
(
)
N Ox = α1 u js1 − u js2 + α 2 S
SOx = ∑
(1)
SM
N is
ここで、 N Ox は衝突の結果巻き込まれた酸化物の数、 α1 と α 2 は合金の組成に依存したパ
ラメータ、 S は衝突面積、 u js1 − u js2 は相対衝突速度、 SOx は破壊された酸化物の平均表
面積、 S M は破壊された酸化被膜の表面積。
3.溶湯流動中の酸化物の運動は以下によって追加する;
lv = uv dt
(2)
ここで、lv は酸化物の移動距離(下付の v は x,y,z の方向を示す)、uv は酸化物の速度であ
り、要素を通過する流体の流速に等しいとおく。dt はタイムステップ。
b
ポロシティ欠陥予測シミュレーション
b-1 簡易法
1.最終的なポロシティ率 fp はガスポロシティ fg と凝固収縮によるポロシティ fv の項からな
る;
fP = fg + fv
(3)
2.各要素におけるガスポロシティは酸化物量との関係から下記のように推定できる;
87
f g ,i =
N Ox ,i S Ox ,i
∑ (N
Ox ,i
S Ox,i )
∑f
(4)
g
i
ここで、 N Ox ,i と S Ox ,i はそれぞれ酸化物の数と大きさを示し、下付き文字の i は要素番号
を示す。
3.液相が固相に変態することによって生じる体積収縮は下記によって表すことができる。
従って、ホットスポットにおける体積収縮の総計は;
VH = ∑ ( f v ,iVi )
f v ,i = (
i
ρs
− 1) f l ,i = αf l ,i
ρl
(5)
ここで、V H はホットスポットにおける体積収縮の総量、i はホットスポットでの要素番号、
Vi は要素の体積、 ρ s と ρ l はそれぞれ固相と液相の密度、 f l は液相から固相に変化した液
相率、 α は凝固における体積収縮率である。
4.体積収縮に酸化物の影響を考慮するために、ホットスポットにおける収縮体積の一部を
酸化物濃度に応じて再分配する;
VE ,i = βV H
N Ox ,i S Ox ,i
(0.0 ≤ β ≤ 1.0)
∑ ( N Ox,i S Ox,i )
(6)
i
ここで、 β は体積収縮における酸化物の影響を示すパラメータである。以上から、各要素
において再分配された体積収縮によるポロシティ量は下記のように表すことができる;
f v ,i = (1 − β )αf l t,i +
V E ,i
(7)
Vi
b-2 凝固収縮圧力法
1.凝固が始まる前では水素の拡散による気孔の体積変化は、図Ⅲ2.2.34 に示すような準安
定状態の拡散と理想気体を仮定することによって計算することができる;
∆VPi =
RH Ti
MH
PLi
M Hi = 4π (rPit ) 2 n pi ρ L DH
(8)
∂C
∂r
r = rPt
∆t = 4π rPit n pi ρ L DH (CH 0 − k H PLi1/ 2 )∆t
(9)
ここで、 rPi は気孔の半径、 nPi は有効酸化物数、 k H は平衡係数。(8)式において、ガスの
圧力は液相の圧力と等しいと仮定した。
2.凝固開始後では、図Ⅲ2.2.35 に示すように、固液共存域における圧力場とデンドライト
間の流動は質量保存則とダルシー則によって下記のように計算した;
( ρ S − ρ L )∆VSit +∆t − ρ L ∆VPit = ∑ SijU ijt +∆t ρ L f Li ∆t
'
88
(10)
U ijt +∆t = (
K
)ij [ PLjt +∆t − PLit +∆t + ρ L g ( z j − zi )]
µ fLd
(11)
ここで、 ∆VPi は気孔体積増分、 Sij は要素 i の表面積、 U ij は内向きの流体の流速、 f Li は
t'
液相率、 K は f S の関数の透過率、 µ は粘度、g は重力加速度、z は重力鉛直軸を示す。
3.固相中における水素の溶解度は液相に比べて一桁小さいので、固相から排出された水素
はすべて酸化物上の気孔に移動し、気孔の圧力は前回の圧力変化から外挿する;
∆V =
t'
Pi
ρ S CLH ∆VSit +∆t Ti t +∆t
(12)
'
PLit
293
ここで、 CHL は液相線温度における水素濃度を示す。(12)式中の仮想圧力は下記によって
外挿する;
PLit = PLit + ( PLit − PLit −∆t )
'
∆t t +∆t
∆t t
(13)
4.最終的に、気孔の体積は新しい圧力を用いて、下記によって補正する;
'
t +∆t
Pi
∆V
PLit
= ∆V
PLit +∆t
t'
Pi
(14)
酸化物巻き込みの効果を考慮した手法は、従来の手法に比べてより高い精度でポロシテ
ィの予測が可能であるといえる。また、開発したソルバは実際の Al 鋳造においてポロシテ
ィ予測のための実際的なツールであり、有望なアプリケーションであるといえる。
Gas
Liquid
a) description of liquid free surfaces
b) formation of oxides
c) movement of oxides
図Ⅲ2.2.33 充填過程における酸化皮膜巻き込み過程の概略図
89
Oxide film
Pore
u2
CH
CH 0
CL
Rp
u1
u3
u4
= k H PL1 / 2
RP
図Ⅲ2.2.34
Pore
r
液相からガス孔への水素拡散
の模式図
図Ⅲ2.2.35 デンドライト間流れに及ぼす
ポロシティ成長の効果
③アルミニウム引け巣欠陥予測ソルバのためのプリ及びポスト・プロセッサ
アルミニウム引け巣欠陥予測ソルバ用のプリ、ポスト・プロセッサとして、平成 11 年度
から平成 14 年度の間に計算に必要な計算条件や物性値データの設定及び解析結果の表示と
して酸化被膜の発生と移動を意味するマーカー表示などを開発した。アルミニウム引け巣
欠陥予測ソルバは湯流れ解析と凝固解析があり、凝固解析は簡易計算と複雑計算があるた
めポスト・プロセッサにおいてもそれぞれに対応する解析結果表示機能を開発した。湯流
れ解析の結果からは酸化被膜の発生とそれが溶湯と共に流動している様子が判断でき、凝
固解析の結果からは酸化被膜の影響や凝固収縮などによるポロシティ発生が予測可能とな
った(図Ⅲ2.2.36)
。また、アルミニウム引け巣欠陥予測ソルバの解析結果が表示可能な Web
環境を利用したポスト・プロセッサを開発し、Web ブラウザ上で解析結果が表示可能となっ
た(図Ⅲ2.2.37)。
一方、プロジェクト参画企業によるソフト検証により改善版を定期的にリリースしたこ
とやソフト検証により提案された改善・要望事項についての改善を実施したことにより、
より使い易いシステムになってきており、好評価も得た。
90
(a)全体図
(b)1方向複数表示
図Ⅲ2.2.36 解析結果表示例(ポロシティ率合計)
図Ⅲ2.2.37
Web 環境を利用したポスト・プロセッサ
91
④X線透過法による引け巣生成の直接観察
X線が物質中を透過する性質を利用した透過観察法は金属材料などを内部観察する唯一
の手法であり、引け巣・ポロシティの形成過程の直接観察はシミュレーション技術開発に
おいて非常に有意義な情報を得ることが期待される。しかし、分解能の低いイメージング
では非破壊検査として広く普及しているが、引け巣といったポロシティの生成、その生成
過程の直接観察に応用された例は極めて少ない。そこで、平成 11 年、12 年度に、マイクロ
フォーカスX線ならびに放射光を利用した高解像度の直接観察手法を開発し、引け巣・ポ
ロシティ形成の直接観察を行った。
第3世代の放射光施設である SPring8 では、硬X線領域で、高輝度かつ平行度の高い単
色X線の利用が可能である。その結果、従来から広く利用されている吸収像だけでなく、
屈折像(図Ⅲ2.2.38)を利用することにより、X線イメージングによるポロシティ欠陥の
分解能が向上することを明らかにした。そこで、マイクロフォーカスX線による観察と放
射光による高分解能観察を組み合わせて、Al 合金のポロシティ形成過程の直接観察に応用
した。平成 11 年度にはまず Al 合金の静的な観察により、光学系・試料の厚さなどの条件
の最適化を行った。さらに、ポロシティ生成のその場観察を放射光実験施設およびマイク
ロフォーカスX線装置において観察を行うための試料溶解装置を試作した(図Ⅲ2.2.39)。
開発した装置では、試料の加熱はカーボンシートに直流電流を通電することにより行い、
試料中に挿入した熱電対により温度制御を行っており、Al 合金の溶解から凝固過程のX線
による直接観察が可能になった。
Al-4.5mass%Cu 合金のポロシティの直接観察例を図Ⅲ2.2.40 に示す。試料は厚さが
3mm であり、アルミナ製のるつぼ内で溶解し、2K/min の冷却速度で凝固させた。X線の
エネルギーは 28keV を選択し、屈折コントラスト条件での観察を行った。画面は(a)から順
に 658℃から 10℃ごとの観察結果である。 (c)638℃では右下から左上にわたりデンドライ
トが成長している様子が観察されている。さらに、凝固が進行した(d)628℃では、ポロシテ
ィが形成される過程が観察された。非常に短い時間で、複数のポロシティが生成し、生成
は急激に成長することが明らかになった。これは水素の過飽和が臨界値になると核生成す
るが、試料中ではその臨界値には大きなばらつきがないこと、ガス/液相間の局所平衡はポ
ロシティ生成直後に成立すること示している。このようなポロシティ生成過程の特長は、
ポロシティ形成モデルに重要な知見を提供した。
92
図Ⅲ2.2.38
屈折コントラスト像の模式図
図Ⅲ2.2.39
X線透過像によるその場観
察 用溶解・凝固装置
93
図Ⅲ2.2.40 Al-4,5mass%Cu 合金の凝固過程の直接観察.試料厚さ 3mm、冷却速度 2K/min.
(i) 578℃、(j) 568℃、(k) 558℃、(l) 548℃.ポロシティは(d) 628℃で画面の右上に確
認され、温度低下にともない成長している.
94
⑤アルミニウム引け巣シミュレーションの検証
平成 13 年度以前では、開発したソルバを単純形状の鋳物に適用し、計算結果を検証して
きた。平成 14 年度以降、開発したソルバを実際の鋳物に適用し、検証を行った。自動車用
インテークマニホールド AC4C 鋳物に適用した結果を図Ⅲ2.2.41 に示す。図は鋳型充填過程
における酸化物の巻き込みの計算結果である。また、図Ⅲ2.2.42 に2つの断面でのポロシ
ティの予測結果と実際の観察結果を比較して示す。おのおのの結果に良い一致が見られた。
さらに、実際の鋳塊の一つの断面から、図Ⅲ2.2.43 に示すように、A1 から A24 までの 24
個の試験片を切り出し、アルキメデス法によってポロシティ体積を測定した。ポロシティ
体積の測定結果と計算結果を比較して図Ⅲ2.2.44 に示す。この結果より、本プロジェクト
で開発したシミュレーションプログラムの予測精度は、87%であった。なお、この計算に用
いた鋳物の総要素数は約 200 万である。
シミュレーションは一般的な PC
(PentiumIV、2.4Ghz、
1GBRAM)で行い、酸化物巻き込み、簡易法および凝固収縮圧力法のシミュレーション時間
はそれぞれ 3.52、2.06 そして 2.49 時間であった。
次に、AC2B 鋳物製オイルポンプ(アイシン高丘)のシミュレーションに開発したソルバ
を適用した結果を示す。表 6.1.2.2 は鋳物の様々な断面(図Ⅲ2.2.45)におけるポロシテ
ィ欠陥の観察結果と計算結果である。両者の間にはよい一致がみられた。なおこの計算に
用いた鋳物の総要素数は約 290 万である。酸化物巻き込みを考慮した流動計算、簡易法お
よび凝固収縮圧力法の計算時間はそれぞれ、1.19、3.64 そして 4.03 時間であった。
(a) 50% filled
(b) 75% filled
(c) 100% filled
図Ⅲ2.2.41 鋳型充填過程における酸化物巻き込みのシミュレーション
(日産自動車(株)提供)
95
図Ⅲ2.2.42 鋳塊において実際に観察されるポロシティと計算結果の比較
図Ⅲ2.2.43 ポロシティ体積測定位置
0.08
Porosity volume (simulation), cc
0.10
Experiment
Simulation
0.04
0.02
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
0.00
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
Porosity volume,cc
0.06
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
Porosity volume(experiment), cc
No. of specimen
図Ⅲ2.2.44 実験によるポロシティ体積の測定結果と計算結果の比較
96
図Ⅲ2.2.45 ポロシティをチェックした断面
表Ⅲ2.2.2 実験結果と計算結果の比較
Section
Actual Porosity
Results of SSP
method
Section
A-A
B-B
C-C
D-D
E-E
F-F
G-G
H-H
I-I
J-J
K-K
L-L
M-M
N-N
O-O
97
Actual Porosity
Results of SSP
method
(4)球状黒鉛鋳鉄における引け巣欠陥シミュレーション
①球状黒鉛鋳鉄における引け巣欠陥予測ソルバ
球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥を定量的に予測するため従来考慮していない、以下の要因を
考慮した。
(ア) オーステナイト相晶出による凝固収縮
(イ) 黒鉛晶出による体積膨張
(ウ) 鋳物と鋳型の変形
(エ) 押湯からの溶湯供給
(オ) ガス、介在物の巻き込み
(カ) 溶湯性状
具体的には以下のような計算、取扱いを行った。
(a)球状黒鉛鋳鉄の凝固過程のモデル化
球状黒鉛鋳鉄の凝固過程では、過冷、黒鉛の核生成、オーステナイト殻に覆われた球状
黒鉛の成長を考慮した。過冷度は、共晶温度を横切るときの冷却速度の関数で、核生成す
る黒鉛の核密度は、過冷度の関数で、実験式を求めておく方法をとった。球状黒鉛を覆う
オーステナイト殻の成長速度は次式で表される擬平衡方程式を用いて計算した。
G/γ
L/γ
dR γ +G
RG
C −C
= D Cγ
(1)
(R G − R γ+G )R γ+G C γ / L − C L / γ
dt
γ
ここで R G : 黒鉛粒径,R γ+G : オーステナイト殻の外径,D C : オーステナイト
Ci / j : i,j 界面の炭素濃度を示す。
中の炭素の拡散係数,
これによって、オーステナイト、黒鉛、液相それぞれの凝固中の重量、体積、体積率の
分布を精度良く得ることができるようになった。
(b)体積膨張係数分布計算
黒鉛の成長をモデル化した球状黒鉛鋳鉄の凝固計算結果を用いて、相変化による各位置
の体積膨張係数を次式で計算することができる。
t
t
t
M γ ρL
M G ρL
ML
+
+
−1
(2)
M elm ρ G M elm ρ γ M telm
M elm :矩形要
M i : 相 i の質量, :相 i の密度,
ここで、
: 体積膨張係数,
α Gt =
t
G
t
G
t
G
素の初期質量を示す。
ρi
α Gt
これにより、凝固中の温度変化と相変化による体積変化を、体積膨張係数という形で得
ることができるようになった。
98
(c)凝固中の鋳物の変形解析
本ソルバでは、体積膨張係数の分布により生じる凝固中の鋳物の変形解析が可能であり、
凝固中の鋳物の変形、鋳物に働く応力を計算できる(図Ⅲ2.2.46)。応力計算には、有限要
素法の一種であるVOXEL法を用いた。この方法は計算時間が短いため、凝固開始から終了ま
での間に変形計算を十分な回数行うことができる。鋳物の凝固中には、鋳物表面と鋳物内
部の黒鉛膨張量の差により、鋳物の凝固遅れ部には引張応力が生じる。位置ごとに集計し
た引張(負圧)方向の最大主応力の最大値(これを最大応力と呼ぶ。
)は、引け巣の発生と
強く結びついていることがわかった。引け巣は、引け巣が発生する臨界応力(これを引け
巣発生臨界応力と呼ぶ。
)を上回る最大応力を示している領域に発生していた。
(図Ⅲ2.2.50
参照)また、引け巣発生臨界応力は、鋳型強度、鋳型の種類によって図Ⅲ2.2.47のように
変わることが分かった。
従って、ユーザーは解析対象となる鋳型の種類、鋳型強度から引け巣発生臨界応力を設
定し、モデル作成して、本ソルバにより解析し、得られた最大応力の分布を用いて、引け
巣発生臨界応力以上の領域の有無を調べることにより、引け巣の発生を判断することがで
きる。また、引け巣有りと判断された場合には、引け巣がなくなるような方案変更をコン
ピュータ上で行うことにより、最小限の模型制作回数で、新規鋳造方案を設計することが
できるはずである。
(d)押湯効果の自動計算
引け巣が生じる方案を変更する際、最も多く行われるのが、押湯の形状、位置の変更で
ある。従って、実際に効果のある押湯の変更によって解析上でも効果が現れなければ、コ
ンピュータ上での方案変更を行う意味がない。そこで、本ソルバでは、製品と、押湯、湯
道、堰との間に溶湯補給可能な連絡経路が存在するかどうかを自動的に計算できるように
した。溶湯補給経路が存在すれば、その部分の応力は溶湯補給により緩和されるはずであ
る。そこで、体積膨張係数を0とすることによって、溶湯補給を考慮する近似的な方法を
用いた。
本ソルバでは、製品に効果的な押湯をたてると押湯の効いた製品部分の最大応力は下が
る。この値が、引け巣発生臨界応力を下回るように押湯設計することにより最大限の効果
を発揮する押湯を設計することができるはずである。(図Ⅲ2.2.52参照)
(e)実験式を用いた溶湯性状表現
溶湯成分により溶湯性状を設定することは、まだまだ未知の部分が多く、精度良く溶湯
性状を表現することが難しい段階である。そこで本ソルバでは、溶湯成分についての設定
項目はない。しかし、ユーザーが使用する球状黒鉛鋳鉄溶湯について、準備試験を行い、
実験式を算出することによって、その溶湯にあった凝固特性を持たせた球状黒鉛鋳鉄の凝
固シミュレーションを行うことができる。
99
最大応力
図Ⅲ2.2.46 凝固中の弾性変形解析結果の例(左:変位表示、右:最大応力分布表示)
s /MPa
100
90
σs = 20Ln(F m ) + 17
80
ひけ巣発生臨界応力 ,
70
60
50
40
30
20
10
生型
フラン鋳型
0
0
10
20
鋳型強度 F m , kgf/cm
30
40
2
図Ⅲ2.2.47 鋳型の種類・強度と引け巣発生臨界応力との関係
100
②球状黒鉛鋳鉄における引け巣結果予測ソルバのためのプリ及びポスト・プロセッサ
球状黒鉛鋳鉄引け巣欠陥予測ソルバ用のプリ、ポスト・プロセッサとして、平成11年
度から平成14年度の間に計算に必要な計算条件や物性値データの設定及び解析結果の表
示機能を開発した。最終年度にはプリ、ポスト・プロセッサと球状黒鉛鋳鉄引け巣欠陥予
測ソルバと連成し、一連の操作によるシミュレーションが可能となった。
球状黒鉛鋳鉄引け巣欠陥予測ソルバは凝固解析と熱応力解析があり、黒鉛成長の考慮や
凝固中の鋳物の変形を計算しており、ポスト・プロセッサにおいてもそれらの結果表示機
能を開発した。これにより凝固過程における鋳物の変形の様子や最大応力値による引け巣
発生箇所の評価が可能となった(図Ⅲ2.2.48)。また、球状黒鉛鋳鉄引け巣欠陥予測ソルバ
の解析結果が表示可能な Web 環境を利用したポスト・プロセッサを開発し、Web ブラウザ上
で解析結果が表示可能となった(図Ⅲ2.2.49)。
一方、プロジェクト参画企業によるソフト検証を実施し、このソフト検証の結果から様々
な改善・要望事項が提案された。そしてこれらの点を改善したシステムを定期的にリリー
スした。
(a)148 s 後
(b)537 s 後
(c) 1360 s 後
図Ⅲ2.2.48 応力値+変形表示の例(変形倍率:20000 倍)
図Ⅲ2.2.49
Web環境を利用したポスト・プロセッサ
101
③球状黒鉛鋳鉄における引け巣欠陥シミュレーションの検証
H13,14年度にかけて、生型、フラン鋳型に鋳造した球状黒鉛鋳鉄の引け巣発生状況と球
状黒鉛鋳鉄における引け巣欠陥予測シミュレーション結果との比較、検証を行った。
精度についての検証は、同種溶湯(FCD450)
、同一生産ライン(生型)の異なる製品十数種
について、引け巣のある製品の断面写真から引け巣発生領域を大まかにとらえ、その引け
巣発生領域に最も近い領域を予測する引け巣発生臨界応力を選び、この引け巣発生臨界応
力を十数種について調査、集計し、誤差を求めることにより行った。その結果、引け巣発
生領域はほぼ同じ引け巣発生臨界応力値(40MPa,誤差:約10%)を用いて予測した領域と一
致していた。(図Ⅲ2.2.50∼Ⅲ2.2.52)
計算時間については、最大で要素数340万、鋳物要素数35万程度までの計算を行い検証し
た。目標の200万要素、12時間以内に対して、6時間以下で計算することができ、計算速度
についての目標を達成した。なお、この際使用したPC環境は、CPU:Pentium4 2.4GHz、メモリ:
1GB DDR SDRAMであった。現時点で流通している一般的なパソコンで目標をクリアすること
ができたといえる。
(図Ⅲ2.2.53)
○印が欠陥
シミュレーション結果
図Ⅲ2.2.50 球状黒鉛鋳鉄における引け巣欠陥シミュレーションの結果例
102
○印が欠陥
シミュレーション結果
図Ⅲ2.2.51 球状黒鉛鋳鉄における引け巣欠陥シミュレーションの結果例
103
○印が欠陥
シミュレーション結果
凝固計算時間 t / h
図Ⅲ2.2.52 球状黒鉛鋳鉄における引け巣欠陥シミュレーションの結果例
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
設定目標
0
1,000,000
2,000,000
3,000,000
要素数 n / 個
図Ⅲ2.2.53 要素数と計算時間との関係
104
4,000,000
2.3 関連計測技術の開発
(1) 静滴法による表面張力及び密度の測定
高温融体の物性値を高精度で測定するために既存の静滴法用装置の改良を行い、これを
用いて物性測定を行った。具体的な改良点は、昇温時の試料と基板の反応を避けるための
滴下管の設置、鮮明な液滴画像を得るためのレーザー、バンドパスフィルター、デジタル
カメラを組合せた撮影システムの設置、2 方向からの観察を可能にするための観察窓の設置、
高温での使用に耐えるようにするための冷却機構の強化等である。
この装置を使用して、Ni 基耐熱金属として INCONEL713C、TMS75、CM247LC、CMSX-4、モ
デル系合金として純 Ni、Ni-Cr 合金、Ni-Co 合金、Ni-W 合金、Ni-Al 合金、Ni-Ta 合金の密
度及び表面張力の測定を行った。装置概略を図Ⅲ2.3.1 に、Ni 基耐熱金属の密度の測定結
果を図Ⅲ2.3.2 に、Ni 基耐熱金属の表面張力の測定結果を図Ⅲ2.3.3 に示す。
高温融体の物性値を高精度で測定するために既存の静滴法用装置の改良を行い、これを
もちいて Ni 基耐熱合金及びモデル合金の密度及び表面張力を測定し、目標精度を達成する
ことができた。
Side View
熱電対
滴下管
バンドパスフィルター
He-Ne レーザ
Mo
リフレクター
デジタルカメラ
Ta ヒーター
試料
Top View
図Ⅲ2.3.1 静滴法装置概略
105
CM247LC
CMSX-4
Inconel713C
TMS75
8.5
3
Density(g/cm )
8.3
8.1
7.9
7.7
7.5
7.3
1350
1400
1450
1500
1550
1600
1650
Temperature(℃)
図Ⅲ2.3.2
Ni 基耐熱合金の密度
CM247LC
CMSX-4
Inconel713C
TMS75
Surface Tension(mN/m)
2000
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1350
1400
1450
1500
1550
Temperature(℃)
図Ⅲ2.3.3 Ni 基耐熱合金の表面張力
106
1600
1650
(2) ニッケル基超合金およびカーボンサセプタの固体状態における各種物性値測定
平成 12 年度には Ni 基耐熱鋳造合金のモデル合金として純 Ni、Ni-Cr 合金、Ni-Co 合金、
Ni-W 合金の密度、比熱、熱伝導率及び、カーボンサセプタの密度、比熱、熱伝導度の測定
を実施した。平成 13 年度には Ni 基耐熱鋳造合金 Inconel713C、TMS75 の密度、比熱、融点
(液相線温度、固相線温度)、熱伝導率及び Ni-Al 合金とシェル鋳型の密度、比熱、熱伝導
率の測定を実施した。平成 14 年度には Ni 基耐熱鋳造合金 CM247LC、CMSX-4 の密度、比熱、
融点(液相線温度、固相線温度)、熱伝導率、Ni-Ta 合金の密度、比熱、熱伝導率、及び、
Inconel713C、TMS75、CM247LC、CMSX-4 の溶融状態での比熱の測定を実施した。
測定結果の一例として、実用耐熱合金の比熱の測定結果を図Ⅲ2.3.4∼図Ⅲ2.3.7 に示す。
比熱の測定には断熱法、ドロップカロリーメトリー法、レーザーフラッシュ法の 3 種類の
測定法を使用しており、測定方法によって得られる結果が異なることがわかる。
この原因として以下の 2 点が考えられる。1つは、試料に熱量を与えて温度変化を計測
する過程での熱損失が測定法によって異なること、もう1つは連続測定法とポイント測定
法に差があることである。例えば断熱法で比熱を測定した場合、温度を連続的に変化させ
ていくので、組織の変化を原因とする比熱の変化をリアルタイムに検出できるが、レーザ
ーフラッシュ法では目的の温度を保持したまま測定を行うので、温度保持中に組織変化が
終了してしまい、組織変化を原因とする比熱の変化を検出できない可能性がある。また、
方法によって測定可能な温度範囲も異なるので、ここでは3つの方法で測定した比熱をそ
れぞれそれなりに評価するべきである。
超耐熱鋳造合金精密鋳造法のシミュレーションに必要とされる、Ni 基耐熱鋳造合金、カ
ーボンヒーター、シェル鋳型の各種物性値を測定した。測定精度は潜熱 3%、比熱 3%、密
度 2%、熱伝導率 10%であり、いずれの物性値の測定においても初期の目標精度を達成す
ることができた。
107
0.9
0.8
比熱(J/g・K)
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
断熱法
0.2
ドロップカロリーメトリー法
0.1
レーザーフラッシュ法
0.0
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
温度(℃)
図Ⅲ2.3.4 Inconel713C の比熱
0.9
0.8
比熱(J/g・K)
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
断熱法
0.2
ドロップカロリーメトリー法
0.1
レーザーフラッシュ法
0.0
0
200
400
600
800
温度(℃)
図Ⅲ2.3.5 TMS75 の比熱
108
1000
1200
1400
0.9
0.8
比熱(J/g・K)
0.7
断熱法
ドロップカロリメトリ
レーザーフラッシュ
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0
200
400
図Ⅲ2.3.6
600
800
温度(℃)
1000
1200
1400
CMSX4 の比熱
0.9
0.8
比熱(J/g・K)
0.7
0.6
0.5
0.4
断熱法
ドロップカロリメトリ
レーザーフラッシュ
0.3
0.2
0.1
0.0
0
200
400
600
800
温度(℃)
図Ⅲ2.3.7 CM247LC の比熱
109
1000
1200
1400
(3) 改良型静滴法および改良型ピクノメータ法による密度測定
平成 12 年度には、合金系の密度測定のための新たな方法として改良型静滴法および改良
型ピクノメータ法による測定方法を確立した。改良型静的法における最大見積り誤差は±
0.77%であった。また、改良型ピクノメータ法での最大見積り誤差は±0.55%であった。こ
れらの方法を用いることで、合金の密度の精密な測定を行うことができた。改良型静滴法
を用いて測定した、Ni-Cr 合金の密度測定結果を図Ⅲ2.3.8 に示す。
平成 13 年度には、モデル系合金および実用合金の密度を測定した。改良型ピクノメー
タ法のデータのバラツキが改良型静滴法のそれよりも小さかった。二つの方法を用いて測
定した密度値の差の最大は±0.58%であった。固液共存域における Ni-Cr 合金の推奨値と
して提案した式を用いて計算した密度値と測定値の差は 0.68%以下、また、溶融 Ni-Co 合金
の場合は 0.90%以下であった。推奨した式を用いて、測定値をよい精度で記述できることが
わかった。また、Ni-Co-Al 系合金の密度と温度、Co 濃度の関係を整理した場合の式を用い
て計算した密度値と測定値の差は 1.40%以下であった。図Ⅲ2.3.9 に AC4C 合金の密度測定
結果示す。
平成 14 年度に得られた結果のうち、Ni-Al および Ni-W 合金の密度の測定結果をそれぞれ
図Ⅲ2.3.10 および図Ⅲ2.3.11 に示す。また、本プロジェクトで得られた主な測定結果を表
Ⅲ2.3.1 に示す。この表は合金の密度を組成と温度の関数で表わしたものであり、推奨値は、
液相での密度としては両測定法の平均値を、固液共存域では、液相線温度での両測定法の
平均値と改良型ピクノメータ法での温度係数を組合せた値である。
図Ⅲ2.3.8 固相線温度以上での Ni-Cr
合金の密度と温度との関係
110
図Ⅲ2.3.9 本研究で測定した AC4C 実用
合金の密度と温度との関係
図Ⅲ2.3.10 改良型静滴法と改良型ピクノメ
ータ法を用いて測定した固相線温度以上で
の Ni-Al 合金の密度と温度との関係
表Ⅲ2.3.1
Ni 基合金および Al 基合金の密度と温度、組成との関係
密度, ρ/Mg⋅m-3
測定
合金
Ni
改良型静滴法
L
改良型ピクノメータ法
推奨値
ρ=7.91-1.43×10-3(T-1728)
ρ=7.89-1.51×10-3(T-1728)
ρ=(7.90-1.47×10-3(T-1728)
(1728≤T≤1923K)
(1728≤T≤1873K)
(1728≤T≤1873K)
ρ=(7.91-3.71×10-2CCr+3.15
ρ=(7.89-3.40×10-2CCr+1.57
×10-3 C Cr )-(1.43-5.48×
×10-3 C Cr )-(1.51-2.58×
-3
-3
2
2
10 CCr
L
+1.95×10
-6 C 2
Cr
10 CCr
-3
)×10 (T-TL)
+6.28×10
-5 C 2
Cr
ρ=(7.90-3.56×10-2CCr+2.36
×10-3 C Cr )-(1.47-4.03×10-3CCr
2
+4.12×10-5 C Cr )×10-3(T-TL)
2
)×10-3(T-TL)
(TL≤T≤1833K)
(TL≤T≤1833K)
(TL≤T≤1913K)
ρ=(7.99-3.28×10-2CCr+2.07
ρ=(7.91-1.88×10-2CCr-4.41
ρ=(7.95-2.58×10-2CCr-1.17
S
×10-4 C Cr2 )-(1.17-2.14×10-2
×10-4 C Cr2 )-(1.61-1.13×
×10-4 C Cr2 )-( 1.61-1.13×
+
CCr-4.98×10-4 C Cr2 )×10-2(T-TS
10-2CCr
10-2CCr
L
)
+2.35×10-3 C Cr2 )×10-2(T-TS)
+2.35×10-3 C Cr2 )×10-2(T-TS)
(TS≤T≤TL)
(TS≤T≤TL)
ρ=(7.91-6.46×10 CCo+
ρ=(7.89-6.36×10 CCo+1.71
ρ=(7.90-6.42×10-3CCo+1.53
1.35×10-4 CCo2 )-(1.43-9.44
×10-4 CCo2 )-(1.51-1.18×10-2
×10-4 CCo2 )-(1.47-1.06×
×10-2CCo
CCo+5.12×10-3 CCo2 )×10-3(T-TL
10-2CCo
+3.66×10-3 CCo2 )×10-3(T-TL)
)
+4.39×10-3 CCo2 )×10-3(T-TL)
(TL≤T≤1833K)
(TL≤T≤1923K)
(TL≤T≤1833K)
Ni-Cr
(TS≤T≤TL)
-3
Ni-Co
図Ⅲ2.3.11
改良型静滴法と改良型ピクノ
メータ法を用いて測定した固相線温度以上
での Ni-W合金の密度と温度との関係
L
-3
111
ρ=(7.91+4.01×10-2CW+8.35
ρ=(7.89+3.30×10-2CW+1.24
ρ=(7.90+3.66×10-2CW+1.04
×10-3 CW2 )-(1.51-1.06×10-1CW
×10-3 CW2 )-(1.47-7.15×10-2CW
+6.95×10-3 CW2 )×10-3(T-TL)
+4.32×10-3 CW2 )×10-3(T-TL)
(TL≤T≤1873K)
(TL≤T≤1833K)
ρ=(7.91+2.02×10-2CTa+3.10
ρ=(7.89+1.61×10-2CTa+3.89
ρ=(7.90+1.82×10-2CTa+3.45
×10-3 CTa )-(1.43-1.74×10-2
×10-3 CTa )-(1.51-1.78×10-2
×10-3 CTa )-(1.47-1.76×10-2
×10
Ni-W
-4 C 2
W
)-(1.43-3.69×
-2
10 CW
L
+1.68×10
-3 C 2
W
-3
)×10 (T-TL)
(TL≤T≤1833K)
2
Ni-Ta
L
CTa
+1.25×10
-2 C 2
Ta
)×10 (T-TL)
×10-3 C Al )-(1.43-1.76×10-2
×10-3 C Al )-(1.51-2.04×10-2
×10-3 C Al )-(1.47-1.90×10-2
CAl
CAl
CAl
+1.28×10-3 C )×10-3(T-TL)
+1.48×10-3 C )×10-3(T-TL)
+1.38×10-3 C Al )×10-2(T-TL)
(TL≤T≤1833K)
(TL≤T≤1873K)
(TL≤T≤1833K)
ρ=(8.16-1.49×10-2CAl-7.98
ρ=(7.85-3.98×10-2CAl-5.95
ρ=(8.01-2.74×10-2CAl-6.97
×10-3 C Al )-(9.30-6.55×10-1
×10-3 C Al )-(8.17-1.47×10-1
×10-3 C Al )-(8.17-1.47×10-1
2
2
2
Al
2
CAl
-3.09×10
-3 C 2
Al
Al
)×10 (T-TS)
-Al-C
r
L
2
2
+8.38×10
-3 C 2
Al
CAl
-2
)×10 (T-TS)
+8.38×10
-3 C 2
Al
)×10-2(T-TS)
(TS≤T≤TL)
(TS≤T≤TL)
ρ=(9.18-5.26×10-2CCo-2.37
ρ=(9.18-5.26×10-2CCo-2.37
×10-3 CCo2 )-(1.22-2.86×10-2
×10-3 CCo2 )-(1.22-2.86×10-2
CCo -1.09×10-3 CCo )×10-3T
CCo -1.09×10-3 CCo )×10-3T
(1685K≤T≤1873K)
(1685K≤T≤1873K)
(CAl=7mass%)
(CAl=7mass%)
ρ=(7.83-1.32×10 CAl+3.25
ρ=(7.62-9.15×10 CAl+6.14
ρ=(7.73-1.12×10-2CAl+1.93
×10-3 C Al2 )-(1.00-1.28×10-2
×10-3 C Al2 )-(0.84-1.06×10-2
×10-3 C Al2 )-(0.92-1.17×10-2
CAl
CAl
CAl
-9.50×10-4 C )×10-3(T-TL)
+1.03×10-3 C )×10-3(T-TL)
-9.90×10-4 C Al2 )×10-3(T-TL)
(TL≤T≤1833K)
(TL≤T≤1873K)(xNi:xCo=86:14
(TL≤T≤1833K)
(xNi:xCo=86:14)
)
(xNi:xCo=86:14)
ρ=8.52-7.54×10 T
ρ=8.49-8.20×10 T
ρ=8.51-7.88×10-4T
(1693K≤T≤1833K)
(1693K≤T≤1873K)
(1693K≤T≤1833K)
(Ni75.36-Co11.78-Al7.06
(Ni75.55-Co11.76-Al6.81-
(Ni75.45-Co11.77-Al6.94-
-Cr5.81)
Cr5.88)
Cr5.84)
2
2
Al
-4
Ni-Co
2
CAl
-2
L
L
)×10-3(T-TL)
ρ=(7.90-1.36×10-1CAl+2.94
-2
-
Ta
ρ=(7.89-1.37×10 CAl+2.92
2
Al
Ni-Co
+1.54×10
ρ=(7.91-1.34×10 CAl+2.95
-1
(TS≤T≤TL)
-Co
)×10 (T-TL)
-2 C 2
(TL≤T≤1833K)
+
Ni-Al
Ta
CTa
-3
(TL≤T≤1873K)
L
L
+1.82×10
-2 C 2
(TL≤T≤1833K)
2
S
2
CTa
-3
-1
Ni-Al
2
-3
2
Al
-4
112
2
Ni-Co
-Al-M
L
o
ρ=8.81-8.36×10-4T
ρ=8.80-8.68×10-4T
ρ=8.81-8.52×10-4T
(1693K≤T≤1833K)
(1693K≤T≤1873K)
(1693K≤T≤1833K)
(Ni75.73-Co12.02-Al7.11
(Ni75.59-Co12.10-Al7.06-
(Ni75.66-Co12.06-Al7.09-
-Cr5.14)
Cr5.25)
Cr5.19)
ρ=8.69-8.27×10 T
ρ=8.78-8.78×10 T
ρ=8.74-8.53×10-4T
(1693K≤T≤1833K)
(1693K≤T≤1873K)
(1693K≤T≤1833K)
(Ni75.47-Co13.18-Al6.29
(Ni75.67-Co13.12-Al6.18-
(Ni75.57-Co13.15-Al6.24-
-Cr5.06)
Cr5.02)
Cr5.04)
ρ=7.15-8.30×10 (T-1611)
ρ=7.09-9.77×10 (T-1609)
ρ=7.12-9.04×10-4(T-1609)
ρ=7.33-4.64×10-3(T-1571)
ρ=7.24-3.62×10-3(T-1571)
ρ=7.29-3.62×10-3(T-1571)
-4
Ni-Cr
-Al-M
L
o
L
INCO7
S
13C
+
-4
-4
-4
L
ρ=11.44-2.30×10-3T
CMSX4
L
ρ=11.44-2.30×10-3 T
ρ=11.30-2.23×10-3T
(1513K≤T≤1603K)
(1513K≤T≤1833K)
(1603K≤T≤1873K)
ρ=11.37-2.27×10-3T
(1603K≤T≤1873K)
L
TMS75
S
+
L
L
CM247
LC
ρ=7.70-4.22×10-4(T-1696)
ρ=7.73-4.27×10-4(T-1696)
(1692K≤T≤1836K)
(1696K≤T≤1873K)
(1696K≤T≤1836K)
ρ=7.78-3.01×10-4(T-1643)
ρ=7.77-1.12×10-3(T-1643)
ρ=7.78-1.12×10-3(T-1643)
(1643K≤T≤1692K)
(1643K≤T≤1696K)
(1643K≤T≤1696K)
ρ=7.48-1.68×10-3(T-1645)
ρ=7.41-1.50×10-3(T-1648)
ρ=7.45-1.59(10-3(T-1648)
(1645K≤T≤1823K)
(1648K≤T≤1873K)
(1648K(T(1823K)
ρ=7.47-1.90×10-3(T-1612)
ρ=7.49-1.90×10-3(T-1612)
(1612K≤T≤1648K)
(1612K≤T≤1648K)
S
ρ=7.51-9.81(10-4
+
(T-1612)
L
(1612K(T(1645K)
L
AC4C
ρ=7.75-4.32×10-4(T-1692)
S
+
L
ρ=2.38-2.34×10-4 (T-893)
ρ=2.38-2.34×10-4 (T-893)
(893K≤T≤1273K)
(893K≤T≤1273K)
ρ=2.42-5.16×10-4 (T-818)
ρ=2.42-5.16×10-4 (T-818)
(818K≤T≤893K)
(818K≤T≤893K)
L は液相、S+L は固液共存域、Ci は成分 i の濃度(mass%)、xi は成分 i のモル分率、TL、TS は
それぞれ液相線温度、固相線温度(K)。―:測定不能。
113
(4) 微小重力環境を利用した密度及び表面張力の測定
微小重力環境用電磁浮遊装置の開発を行い、これを用いて精密鋳造シミュレーションの
入力データとして必要な、高温融体の密度と表面張力の測定を行った。装置写真を図Ⅲ
2.3.12 に示す。電磁浮遊装置は株式会社地下無重力実験センター(JAMIC)で実験を行うこ
とができる仕様になっており、JAMIC で提供される約 10 秒間の微小重力環境で高精度の測
定を行えるようになっている。装置性能は純 Ni の密度、表面張力を測定することにより確
認している。純 Ni の測定結果を図Ⅲ2.3.13、図Ⅲ2.3.14 に示す。測定値のばらつきは密度、
表面張力ともに 2%以内に収まっており、計画で定めた性能を満たしていることが確認でき
た。この装置を使用して、Ni 基耐熱合金の Inconel713C、TMS75、CM247LC、CMSX-4、モデ
ル合金の Ni-Cr 合金、Ni-Co 合金、Ni-W 合金、Ni-Al 合金、Ni-Ta 合金の密度及び表面張力
の測定を実施した。測定結果を図Ⅲ2.3.15、図Ⅲ2.3.16 に示す。所定の材料の物性を取得
し、初期の目標を達成した。
図Ⅲ2.3.12 微小重力用電磁浮遊装置外観
114
8.3
2000
pureNi (微小重力)
pureNi (静滴法)
pureNi (微小重力)
pureNi (静滴法)
SurfaceTension(mN/m)
1900
8.1
8.0
7.9
7.8
1800
1700
1600
1500
7.7
7.6
1100
1200
1300
1400 1500 1600
Temperature (℃)
1700
1800
1400
1200
図Ⅲ2.3.13 純 Ni の密度
1300
1400
1500 1600 1700
Temperature(℃)
Inconel713C
TMS75
CM247LC
CMSX-4
Surface Tension (mN/m)
1750
1700
1650
1600
1550
1500
1450
1400
1400
1500
1600
1700
Temperature(℃)
1800
1900
図Ⅲ2.3.15 Ni 基耐熱合金の表面張力
8.2
Inconel713C
TMS75
CM247LC
CMSX-4
8.0
7.8
7.6
7.4
7.2
7.0
1400
1450
1800
図Ⅲ2.3.14 純 Ni の表面張力
1800
Density (g/cm 3)
Density (g/cm3)
8.2
1500
1550
1600
Temperature(℃)
図Ⅲ2.3.16 Ni 基耐熱合金の密度
115
1650
1700
1900
(5) 微小重力環境を利用した細線加熱法による熱伝導度の測定
JAMIC において、落下用チャンバー内に細線加熱法による熱伝導度測定装置を設置した後、
内カプセルに搭載し、さらに落下カプセルに設置後、外部電源を使い電気炉の温度を約3
時間かけて所定の温度に上げた。所定の温度に到達後 20 分間維持し、その後測定プローブ
をステップモーターで降下させ溶融金属中に挿入した。このとき、マランゴニ対流防止板
が溶融金属の自由表面を覆うようにした。この位置にはあらかじめ印を付けておきビデオ
モニターで観察しながら制御室から操作した。この後3分後にカプセルを落下させた。
落下 10 秒前に外部電源を外し、無停電源から炉に電流を供給した。落下カプセル内は真
空に引いてあり、落下カプセルは空気抵抗を補正するために圧縮空気を噴射する。内カプ
セルは真空中を浮遊し自由落下状態になるようにしてある。微小重力レベルは 10-5G で 10
秒間継続する。最初の3秒間そのままにし、重力下で起きていた可能性のある対流が無く
なるのを待った。水を用いた実験では約 1 秒で対流が無くなると報告されている。3秒後、
定電流装置から電流が細線に流され測定を開始した。7 秒後、落下カプセルに制動がかかり、
微小重力状態が解除された。さらに 20 秒後には電気炉の電源が切れるようにタイマーを設
定した。
微小重力下で行った実験結果の一例として図Ⅲ2.3.17(b)に溶融 Al-30mass%Si および図
Ⅲ2.3.19 に溶融 Ni における細線の温度上昇と通電時間の対数の関係を示す。
フーリエの熱伝導方程式を、線熱源としての細線から一定の熱流束が試料に流れ出てお
り、試料が半無限大であるとして解くと、λ=(Q/4π)/(dΔT/dlnt)、が得られる。こ
こで Q は熱流束で、ジュール熱で与えられる。ΔT は細線の温度上昇、tは通電時間である。
従って、これらの図の傾きから熱伝導度が得られる。0.3 秒から 5 秒まで一定の傾きが得ら
れていることが分かる。一方、図Ⅲ2.3.17 (a)は Al-30mass%Si について地上の重力下で行
った結果である。上に凸の曲線が得られている。これは通電前の溶融状態で既に熱対流が
起きていたことを示している。
図Ⅲ2.3.19 は、微小重力下での溶融 Ni の測定結果であるが、
マランゴニ対流防止板を入れていないため、対流が起きている例である。図Ⅲ2.3.20 には
溶融 Al 及び Al-Si 合金の熱伝導度の温度依存性を示した。いずれも温度係数はほとんど無
いことが分かる。図Ⅲ2.3.21 には溶融 Ni、Ni-11mass%Al、Ni-10-20mass%Cr 合金及び溶融
TMS75、INCO713C の熱伝導度を示した。いずれも負の温度依存性を示している。熱伝導度の
誤差は±5%程度である。
純 Al の熱伝導度は微小重力下で測定した他、地上実験でも熱対流とマランゴニ対流を防
止して測定した。その結果は図Ⅲ2.3.20 に示すように良く一致した。従来の測定(1-3)は定常
法で測定しており熱対流の影響を受けていると考えられる。いずれも大きい値を示してお
り、本研究結果の 2 倍である。
純 Ni の溶融状態の熱伝導度は、Ostrovskii ら(4)と Zinovyev ら(5)が測定し約 60W/m・K の値
を報告しているが、本研究結果の 10 倍である。彼らは定常法で測定しており対流の影響を
含んでいる可能性がある。理論的に自由電子が熱を運ぶと仮定すると電気伝導度と熱伝導
116
度との間には Wiedemann- Franz 則、λ=2.45x10-8σT、が知られている。電気伝導度(6)か
ら計算した Ni の値は 50 W/m・K 程度である。また温度係数は本実験での負に対し正である。
この大きな差異の原因の究明は今後の課題である。しかしこの関係は純金属の完全結晶に
対して導かれており、液体金属に成立するかどうかは検討されていない。
0. 5
Sample: Al-30Si
Temperature: 1184K
Current: 3.5A
0. 4
Sample: Al-30Si
Temperature: 1180K
Current: 3.5A
0. 4
∆V /10-2 V
∆V/10 -2 V
0. 5
0. 3
0. 3
0. 2
0. 2
(a)
0. 1
0. 5
1
(b)
0. 1
5
0. 5
Time /s
1
Time /s
5
図Ⅲ2.3.17 溶融 Al-30%Si 合金における細線の温度上昇と通電時間の対
数の関係;(a) 1 G and (b) 10-5 G.
1
∆ V /1 0 V
-2
Δ V /1 0 -2 V
0.95
Sample: Ni
Temperature : 1822K
Current: 2.5A
Sample:Al
Temperature:1164K
Current:3.5A
0.9
1
0.85
0.8
0.5 1
0
0.1
5
0.5 1
5
Time /s
Time /s
図Ⅲ2.3.18 マランゴニ対流
図Ⅲ2.3.19 微小重力下におけ
を含む溶融 Al における細線
る溶融 Ni の場合の細線の温度
の温度上昇と通電時間の対
上昇と通電時間の対数の関係
数の関係
117
600
700
Temperature
/ ºC
800
900
1000
Al
W-F law
Touloukian et al.
Powell et al.
-1
λ / Wm K
-1
100
Bidwell
50
M.P.(Al) = 933K
0
900
1000
1100
1200
Temperature
1300
/K
Al,1G
Al-12Si,1G
Al-30Si,1G
Al, µ G
Al-30Si, µ G
図Ⅲ2.3.20 溶融 Al 及び溶融 mass%Si の熱伝導度
Temperature / ºC
1450
1500
1550
Calculated
Ni,1G
Ni,µG
Ni-10Cr,µG
Ni-20Cr,µG
Ni-11Al,µG
TMS75,µG
INCO713C,µG
λ / Wm-1K-1
15
10
5
a*x+b
a=-2.86292447e-02
b=5.54124789e+01
2.84650234e-01
|r|=9.12958664e-01
a*x+b
a=-3.72280131e-02
b=7.28656455e+01
8.28015714e-01
|r|=2.72063217e-01
M.P.(Ni)=1718K
0
1700
1750
1800
1850
Temperature / K
図Ⅲ2.3.21
溶融 Ni、Ni-Cr、N-Al 合金及び TMS75、INCO713C の熱伝導度
118
(6) 回転振動法粘度計による粘度測定
平成 12 年度においては粘度計を改良した結果、1600℃に到るまで非常に安定な測定が可
能となり、かつ測定誤差を最大 3∼5%に収めることが出来た。粘度計の全体を図Ⅲ2.3.22
に示す。純 Ni においては測定温度範囲で良好な Arrhenius 型の温度依存性を満足すること
が確認された。測定結果を文献値と共に図Ⅲ2.3.23 に示す。Ni-Co 二元系の等温粘度は Co
の Ni への添加に伴って低濃度範囲では殆ど変化しないが Co 側では増加する。Ni-Cr 二元系
の等温粘度は Cr 濃度の増加に伴って単調に増加する。Ni-Al 二元系の等温粘度は Al の低濃
度範囲では低下するが NiAl の化合物組成で最大値を示し、その後は低下する。
平成 13 年度の結果によれば、Ni への W および Ta の添加は等温粘度を著しく増加させる
ことが明らかとなった。
これは高融点金属である W および Ta は強い凝集エネルギーを有し、
本研究の測定温度における仮想的な粘度が著しく高いためと考えられる。得られた5種類
のモデル系の 1823K における等温粘度を図Ⅲ2.3.24 に示す。TMS-75 および INCO-713C につ
いても良好な Arrhenius 型の温度依存性を示し、粘度の絶対値は純 Ni よりも高いことが確
認された。実用 Al 合金である AC4C, ADC12, AC1A および AC7A の粘度測定結果を純 Al の結
果と共に図Ⅲ2.3.25 に示す。
平成 14 年度において測定を行った CM-247LC および CMSX-4 の粘度を TMS-75 および
INCO-713C の結果と共に図Ⅲ2.3.26 に示す。何れも純 Ni よりも高い粘度を示す。モデル系
の測定結果より、各添加元素の粘度に及ぼす効果を定量的に求め、粘度の対数が合金元素
の原子分率に対して加成的であると仮定して、4種類の実用超合金の推算値を求めた結果
を実測値と共に図Ⅲ2.3.27 に示す。
得られた粘度は、総ての合金について良好な Arrhenius 型の直線を満足し、モデル系の
等温粘度曲線は滑らかな組成依存性を示した。モデル系の結果より、溶融 Ni の粘度に及ぼ
す各合金元素の影響を定量化して、実用の Ni 基超合金組成における粘度を推算し実測値と
比較した結果、最大 5%以内の偏差で一致し、この様なモデル系の結果に基づく推算が効果
的であることが明らかとなった。
119
1
2
3
1: Head Corn
2: Gas Inlet
He inlet
3: Torsion Wire
4: Water Circulation Tube
4
5: Reflection Mirror
5
Laser
Sensors
6: Window
6
7
7: Inertia Disk
8: Oscillation Initiator
9: Water Jacket
8
9
10
10: W Rod
11: Mo plate
Cooling
Water
12: Crucible
13: Three divided Furnace
11
14: Zr sponge
12
15: Thermocouple
13
14
Cooling
Water
9
15
図Ⅲ2.3.22 高温用回転振動法粘度計
Log (Viscosity, η / mPa•s )
1.00
This work
Samarin
Cavalier
Losana
Lucas
Ogino
Kaplun
0.90
0.80
0.70
0.60
Ni
0.50
0.52
0.53
0.54
0.55
(Temperature, T
0.56
) -1
図Ⅲ2.3.23 溶融純 Ni の粘度
120
/
10-3
K-1
0.57
0.58
20.0
Ni-W
Ni-Ta
Ni-Cr
Ni-Al ( Ni side)
Ni-Al ( Al side)
Ni-Co
Viscosity, η / mPa s
15.0
10.0
5.0
0.0 0
20
40
60
80
100
Composition ( at%W, Ta, Cr, Al, Co )
図Ⅲ2.3.24 各種 Ni 基二元合金の 1823K に於ける等温粘度
0.30
AC4C
AC7A
AC1A
ADC12
pure-Al
Log ( Viscosity, η / mPa s )
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0.85
0.90
0.95
1.00
(Temperature, T )
1.05
-1
/ 10 K
図Ⅲ2.3.25 各種 Al 合金の粘度
121
-3
1.10
-1
1.15
Temperature, T / ℃
1600
1550
1500
1450
1400
1350
1300
0.90
8.0
0.85
7.0
0.80
TMS-75
CM-247LC
CMSX-4
INCO-713C
Ni
0.75
0.70
0.65
0.60
0.55
0.52
6.0
5.0
Viscosity, η / mPa •s
Log (Viscosity, η / mPa •s )
0.95
4.0
0.54
0.56
0.58
(Temperature, T )
-1
0.60
0.62
-3
-1
0.64
/ 10 K
図Ⅲ2.3.26 Ni 基耐熱性超合金の粘度の実測値
Temperature, T / ℃
1600
1550
1500
1450
1400
1350
1300
0.90
8.0
0.85
7.0
0.80
6.0
0.75
TMS-75
CM-247LC
CMSX-4
INCO-713C
Ni
TMS-75 (estimated)
CM-247LC (estimated)
CMSX-4 (estimated)
INCO-713C (estimated)
0.70
0.65
0.60
0.55
0.52
0.54
0.56
0.58
(Temperature, T )
-1
0.60
-3
-1
0.62
/ 10 K
図Ⅲ2.3.27 Ni 基耐熱性超合金の粘度の推算値と実測値との比較
122
Viscosity, η / mPa •s
Log (Viscosity, η / mPa •s )
0.95
5.0
4.0
0.64
(7) 液相線温度、固相線温度および平衡分配係数の測定
4 年間で扱った主な Ni 基 3 元、4 元合金および超合金の組成を表Ⅲ2.3.2 に示す。Ni 基
合金は、温度勾配下での保持で、写真Ⅲ2.3.1 に示すように平滑な固液界面が得られ、分配
係数値を評価する実験方法を達成できた。測定値を表Ⅲ2.3.3 に示す。一方、平成 13 年度
に行った超合金では、写真Ⅲ2.3.1(b)に示すように、平滑界面にはならなかったが、固液
界面近傍の濃度測定より、分配係数を評価できた。結果を表Ⅲ2.3.4 に示す。これらの値は
5回の測定の平均値であり、そのときの誤差は、全てのデータの平均で 10%以下となる。特
に誤差の少ない元素は Cr、Mo、Co、W、Al であり、誤差の多い元素は Re、Nb である。
一方、平成 13 年度に行った AC4C 合金の分配係数の測定は、固液共存温度保持で得た実
験方法で測定することで、分配係数評価を達成できた。結果を表Ⅲ2.3.5 に示す。Si の分
配係数の測定値は±0.02 の誤差があり、Mg の分配係数値の相関係数は 0.86 となっている。
超合金および AC4C 合金の分配係数値は、EPMA 測定の限界を考えると、ほぼ妥当な誤差範囲
といえる。また超合金の分配係数値の妥当性は、平成 13 年度に行った TMS75 合金のミクロ
偏析度(デンドライト谷間の溶質濃度/デンドライト軸の溶質濃度)を評価することで確
認した(表Ⅲ2.3.6 の結果を表Ⅲ2.3.4 と比較する)。平成 12 年度から 14 年度に得られた
分配係数は、Thermo-Calc の計算値とほぼ一致することから、測定値は平衡分配係数として
扱えることを示すと共に、超合金の溶質元素の多くは図Ⅲ2.3.28 に示すように、
Thermo-Calc で予測できることを示し、評価予測方法を達成した。
一方、0.033mm/s で一方向凝固した固液共存層の固相率による分配係数の影響を図Ⅲ
2.3.29 に示す。凝固過程における分配係数の変化はシミュレーション計算に必要な情報で
あるが、固相率に対応した濃度を変えて分配係数を測定することは膨大な実験となり、現
実的でない。ここでは一方向凝固過程を凍結して、固相と液相の濃度分布を測定し、その
比は分配係数に相当する可能性を検討した。固相率0における分配係数は表Ⅲ2.3.4 に示す
値であり、固相率が増加しても多くの合金はほぼ一定か、幾分増加している。ただし W と
Re については増加の割合が大きくなっている。一方、0.020mm/s で凝固したときの分配係
数は、ほぼ一定であり、Re、W は固相率と共にいくぶん減少している。従ってこれらを総合
すると、固相率が増加しても分配係数はほぼ一定として扱える。
平成 12 年から 14 年度に行った液相線温度と固相線温度は示差熱分析と熱分析の両方を
併用したが、Ni 基合金は示差熱分析法で、AC4C 合金および超合金は熱分析法の方が正確な
値となった。これらの値は、実験回数3回の値とこれまでに報告されている値とを比較し
て選定したが、3回の実験での差は全て 5%以内に収まっている。熱分析法による超合金の
結果を表Ⅲ2.3.7 に示す。
4年間の目標は以下のように纏められ、その全てを達成した。
(a)平衡分配係数を評価するための実験方法の確立:Ni 基合金は温度勾配下での平滑固液界
面法、超合金はデンドライト法および AC4C 合金は固液共存温度での等温保持法で試料を作
製することが、実験設備との関係で最も優れていることを確立した。
123
(b)平衡分配係数の評価:固液界面における溶質濃度分布は急冷の影響を含んでいるので、
急冷の影響を考慮した溶質濃度で分配係数を評価したが、それらの値は二元系平衡状態図
での平衡分配係数および Thermo-Calc による計算値とほぼ一致していることから、平衡分
配係数として扱えることを示した。
(c)実験方法および分配係数の妥当性:固相内拡散がほとんどない状態でのミクロ偏析度を
測定し、それが実験値と対応していることを示すことで、分配係数の妥当性を評価した。
(d)凝固過程での固相率増加に伴う分配係数:TMS 合金の各元素の分配係数は、ほぼ一定と
して扱える。
(e)平衡分配係数の予測法:扱った超合金の溶質元素の平衡分配係数は Thermo-Calc でほぼ
予測できることを示した。
(f)液相線温度、固相線温度の評価:示差熱分析法および熱分析法で評価したが、Ni 基合金
は示差熱分析法で評価できたが、AC4C 合金及び超合金は熱分析法の方が正しい値が測定で
きた。
表Ⅲ2.3.2 供試材の公称組成(mass%).
Sample
Cr
Mo
Co
W
Al
Ti
Ta
Re
Hf
C
Nb
Ni-Cr-Al-0.5Ti 10.0
-
-
-
5.0
0.5
-
-
-
-
-
Ni-Cr-Al-1.0Ti 10.0
-
-
-
5.0
1.0
-
-
-
-
-
Ni-Cr-Al-3.0Ti 10.0
-
-
-
5.0
3.0
-
-
-
-
-
Ni-5Co-Al
-
-
5.0
-
7.0
-
-
-
-
-
-
Ni-10Co-Al
-
-
10.0
-
7.0
-
-
-
-
-
-
Ni-15Co-Al
-
-
15.0
-
7.0
-
-
-
-
-
-
Ni-Co-Al-1Mo
-
1.0
12.0
-
7.0
-
-
-
-
-
-
Ni-Co-Al-2Mo
-
2.0
12.0
-
7.0
-
-
-
-
-
-
Ni-Co-Al-3Mo
-
3.0
12.0
-
7.0
-
-
-
-
-
-
TMS75
3.0
2.0
12.0 6.0
6.0
-
6.0
5.0
0.1
-
-
IN713C
14.0
4.5
-
6.0
0.8
-
-
-
-
2.3
CM247LC
8.4
0.7
10.0 9.9
5.5
1.0
3.0
-
1.4
0.2
-
CMSX4
6.5
0.6
9.0
5.6
1.0
6.5
3.0
0.1
-
-
-
6.0
124
(a)
写真Ⅲ2.3.1
(b)
Ni 基四元合金と TMS75 合金の固液界面形態
表Ⅲ2.3.3 Ni 基三元および四元合金の分配係数
Sample
Cr
Al
Ni-Cr-Al-0.5Ti
0.95
0.85
Ni-Cr-Al-1Ti
0.95
Ni-Cr-Al-3Ti
Co
Mo
0.72
-
-
0.80
0.77
-
-
1.02
0.96
0.61
-
-
Ni-5Co-Al
-
0.89
-
1.05
-
Ni-10Co-Al
-
0.91
-
1.01
-
Ni-15Co-Al
-
0.89
-
1.00
-
Ni-Co-Al-1Mo
-
0.86
-
1.07
1.01
Ni-Co-Al-2Mo
-
0.84
-
1.07
1.01
Ni-Co-Al-3Mo
-
0.89
-
1.07
0.99
125
Ti
表Ⅲ2.3.4 Ni 基超合金の分配係数
Sample
Cr
Mo
Co
W
Al
Ti
Ta
Re
Nb
TMS75
0.97
0.89
1.08 1.37
0.81
-
0.62
1.75
-
CM247LC
0.94
0.84
1.11 1.40
0.86
0.50
0.59
-
-
IN713C
0.95
0.85
0.97
0.65
-
-
0.48
CMSX4
0.99
0.92
0.88
0.65
0.75
1.45
-
-
-
1.06 1.26
表Ⅲ2.3.5 AC4C 合金の分配係数と液相線、固相線温度
溶質元素
分配係数
備
考
Si
0.10
5.7mass%<Si<12.0mass%
Mg
0.24
同上範囲で
ko=-0.0142Co(Si)+0.0093Co(Mg)+0.3358
TL:
TS:831K
890K
表Ⅲ2.3.6
超合金のミクロ偏析度
Sample
Cr
Mo
Co
W
Al
TMS75
1.11
1.66
0.79
0.43
1.76
CM247LC 1.14
1.43
0.76
0.53
IN713C
1.15
1.94
-
CMSX4
1.00
1.15
0.91
Ta
Re
-
2.74
0.24
-
1.23
3.81
4.06
-
-
-
0.90
3.16
-
-
7.77
0.56
1.18
2.10
1.71
0.43
-
126
Ti
Nb
(a)TMS75
(b)CM247LC
(c)IN713C
図Ⅲ2.3.28
(d)CMSX4
Ni 基超合金の分配係数の測定値と計算値との比較
127
distribution coefficient K
3.5
Cr
Mo
Co
W
Al
Ta
Re
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
0
図Ⅲ2.3.29
0.5
fs
1
Ni 基超合金の固相率による分配係数への影響
表Ⅲ2.3.7 超合金の液相線温度と固相線温度の測定値と計算値との比較
Sample
Measured
TL/K
Calculated
TS/K
TL/K
TS/K
TMS75
1696
1643
1683
1629
IN713C
1649
1617
1642
1612
CM247LC
1658
1621
1649
1613
CMSX4
1633
1598
1626
1575
128
(8)鋳造用アルミニウム合金の固体状態における密度、比熱及び熱伝導率の測定
精密鋳造法のシミュレーションに必要とされる、アルミニウム鋳造合金の固相、固液共
存相での各種物性値を測定した。固相線温度、液相線温度、潜熱を示差熱分析で、密度を
アルキメデス法と熱機械分析で、比熱をレーザーフラッシュ法で、熱伝導率をレーザーフ
ラッシュ法で測定した。
平成 11 年度にはモデル合金として純 Al、Al-Si 合金、Al-Mg 合金の密度、比熱、熱伝導
率の測定を実施した。平成 12 年度にはモデル合金として Al-Cu 合金の密度、比熱、熱伝導
率の測定を実施した。平成 13 年度には鋳造用アルミ合金 AC4C、ADC12 の密度、比熱、融点
(液相線温度、固相線温度)、潜熱、及び、モデル合金として Al-Si-Mg 合金の密度、比熱、
熱伝導率の測定を実施した。平成 14 年度には鋳造用アルミ合金 AC1A、AC7A の密度、比熱、
融点(液相線温度、固相線温度)、潜熱、熱伝導率の測定を実施した。
精密鋳造シミュレーションに必要とされる、アルミニウム合金の各種物性値を測定した。
測定精度は密度 2%、比熱 3%、熱伝導率 3%、潜熱4%であり、初期の目標精度を達成す
ることができた。
測定結果の一例として実用アルミ合金の比熱、熱拡散率、熱伝導率の測定結果を図Ⅲ
2.3.30∼ 図Ⅲ2.3.33 に示す。
1.5
250
熱拡散率
熱伝導率
1.2
200
0.9
150
0.6
100
0.3
50
0.0
0
100
200
300
400
500
熱伝導率(W/(m・K))
比熱(J/g・K)、熱拡散率(cm2 /s)
比熱
0
600
温度(℃)
図Ⅲ2.3.30 アルミニウム合金 AC4C の比熱・熱拡散率・熱伝導率
129
1.5
250
熱拡散率
熱伝導率
1.2
200
0.9
150
0.6
100
0.3
50
0.0
0
100
200
300
温度(℃)
400
500
熱伝導率(W/(m・K))
比熱(J/g・K)、熱拡散率(cm 2 /s)
比熱
0
600
図Ⅲ2.3.31 アルミニウム合金 ADC12 の比熱・熱拡散率・熱伝導率
1.5
250
熱拡散率
熱伝導率
1.2
200
0.9
150
0.6
100
0.3
50
0.0
0
図Ⅲ2.3.32
100
200
300
温度(℃)
400
500
熱伝導率(W/(m・K))
比熱(J/g・K)、熱拡散率(cm 2 /s)
比熱
0
600
アルミニウム合金 AC1A の比熱・熱拡散率・熱伝導率
130
1.5
250
熱拡散率
熱伝導率
1.2
200
0.9
150
0.6
100
0.3
50
0.0
0
100
200
300
温度(℃)
400
500
熱伝導率(W/(m・K))
比熱(J/g・K)、熱拡散率(cm 2 /s)
比熱
0
600
図Ⅲ2.3.33 アルミニウム合金 AC7A の比熱・熱拡散率・熱伝導率
131
Ⅳ.実用化、事業化の見通しについて
1. 実用化、事業化の見通し
本開発ソフト(仮称 ICST)の主な特長を表Ⅳ1.1 に示す。また市販されている競合商用
ソフトに対する性能、価格、適用機種等の調査結果を、表Ⅳ1.2 に示す。
本事業成果による開発ソフトの販売見通しを予測すると、クオリカによる JSCAST(1990
年開発)の販売実績はおよそ 155 セットあるので、今後 ICST は、JSCAST のニュー・バージ
ョンとして買い替えが期待でき、さらに新しい顧客を併せて、約2倍の 300 セット以上が
期待できる。
表Ⅳ1.1 本開発ソフトの主な特長
① 多くの鋳造プロセスに適用可能である。
(一般精密鋳造、重力鋳造、ダイカストはもとより一方向凝固、低圧鋳造、傾斜鋳造等
多くの鋳造プロセスへの適用が可能な、世界最高水準のソフト
世界最高水準のソフトである。
)
世界最高水準のソフト
② WEB 環境を利用した結果出力ができる。
(WEB 環境を利用したポストプロセッサを世界で初めて
世界で初めて開発した。データの共有化、クラ
世界で初めて
イアントマシンの管理作業削減等ができる。
)
③ 専用ナレッジデータベースを付属する。
(鋳造に関する知識ノウハウをデータベースにして蓄積および呼び出しができ、技術の
トランスファーができる世界唯一のソフト
世界唯一のソフトである。
)
世界唯一のソフト
④ 組織・欠陥解析機能が最も豊富かつ強力である。
(アルミニウムおよび球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥発生予測、チャンネル型偏析予測につ
いては、世界最高水準の機能
世界最高水準の機能である。
)
世界最高水準の機能
⑤ 日本語対話処理ができる。
(プログラム操作において言語の壁がないことから、操作手順および内容理解が容易な
ソフトである。
)
⑥ 適用機種において、汎用パソコンが使用できる。
(WindowsNT、2000、XP が適用可能)
⑦ ソフト価格が安い。
(ソフト開発費が NEDO によるため、市販ソフトの予想価格は競合他社よりも十分安く設
定する予定。)
132
表Ⅳ1.2 競合商用ソフトに対する性能、価格等の調査結果
項目
革新的鋳造シミュレーション技術
ソフトA
ソフトB
ソフトC
ソフトD
NEDO
A社
B社
C社
D社
3,200(予定)
3,200
4,000~
9,800~
14,850~
重力鋳造、ダイカスト、
ダイカスト、重力鋳造、
ダイカスト、重力鋳造、
一方向凝固、一般精密鋳造、
低圧鋳造、傾斜鋳造
低圧鋳造、傾斜鋳造
傾斜鋳造、
ダイカスト、重力鋳造
不等間隔直交格子
等間隔直交格子
等間隔直交格子
任意形状(薄肉対応)
直接差分β法
直接差分β法
VOF法
VOF法
VOF法/非ニュートン流体
直接差分法
直接差分法
差分法
差分法
有限要素法
速度境界条件
○
○
○
○
○
圧力境界条件
○
○
△
○
×
背圧/ベントの考慮(金型)
○
×
○
○
○
背圧/ベントの考慮(砂型)
○
×
×
×
×
AL ポロシティ定量予測
○
△
△
△
△
ストレーナ考慮
○
×
×
×
×
球状黒鉛鋳鉄のポロシティ
○
△
△
△
△
マクロ偏析の直接シミュレーション
○
×
×
△
△
凝固応力解析
○
△
△
△
○
一方向凝固対応
○
×
×
×
○
凝固組織予測
○
×
×
△
○
開発元
ソフト価格(千円)
一方向凝固、一般精密鋳造、
主な解析対象
重力鋳造、ダイカスト、
低圧鋳造、傾斜鋳造
要素分割
自由表面の取扱い
解析方法
不等間隔直交格子,
規則-不規則混合要素
<凡例 ○:機能有、×:機能無、△:不明>
133
2.
今後の展開
平成15年11月20日に「第14回JSCASTユーザ会」で、本プロジェクトの成果について
一般公開した後、平成16年1月より順次販売を開始する。平成16年から平成21年の6年間で、
売上金額約10億円が見込まれる。
本プロジェクトにおける成果物は、鋳造シミュレーションのプロトタイプ・プログラムである。した
がって、今回の成果を基にして、鋳造シミュレーションプログラムを商品として完成させるため、今後
実施すべき事項の概要を下記に示す。
①
鋳造シミュレーションソフトウェアの実用化開発
鋳造現場の方案担当技術者が日常のツールとして活用できるために、操作性、計算精度
及び計算速度の向上を実施する。
☆鋳造シミュレーションの用途拡大:低圧鋳造、真空鋳造、ダイカスト鋳造等
☆計算精度、計算速度の向上:X線直接観察結果及び鋳込み実験結果との比較による欠陥予測精
度の向上、プログラムの見直しによる計算速度の向上
☆操作性の向上:ウィザード形式等による操作支援機能等
②
X線直接観察による実証実験とデータライブラリの作成
X線透過法を利用した湯流れの直接観察によるデータライブラリ化(世界初)と解析
事例集(解析ノウハウ集)の作成
③
専用ナレッジデータベースの開発
鋳造方案担当者が手軽に湯流れ直接観察結果やシミュレーション結果を登録したり、方案業務効率
化のために設計者の意思決定根拠が残せるシステム構築
以上のことから画期的な鋳造シミュレーション技術の構築が世界に先駆けて確立され、鋳造品の最
適設計、コスト削減、短納期、高品質に加え、技術・ノウハウの継承、などが期待できる。
134
Ⅴ.成果資料
1.
論文リスト
(1)シミュレーション関係
下記の内、13 は平成 14 年度日本鋳造工学会論文賞、15 は同小林賞を受賞している。また、鋳造シミュ
レーションで最大の国際会議である Modeling of Casting, Welding and Solidification Processes 第 10
回国際会議で基調講演に選ばれている。この他、日本鋳造工学会全国大会での基調講演、日本鉄鋼協会湯
川記念講演などに招待され講演している。
著
1
2
者
雑誌名
掲載巻/号/頁
品部耕二郎、荻野義 日本ダクタイル鋳
道、岡部和男、大中 鉄協会 DCI NEWS
逸男、大道徹太郎、
杉山明
I.Ohnaka
and ISIJ
(1999), pp. 217-224
H.Yasuda
題 名
X線透過法による湯流れの直接観
察
3
J.D.Zhu, I.Ohnaka
and Y. Ageta
Proc. of Modeling
of Casting and
Solidification
Processes IV
Seoul,
(1999.9,
Korea), pp. 149-157
4
S.Kashiwai
I.Ohnaka
Seoul,
(1999.9,
Korea), pp. 169-176
5
SKashiwai,
J.D.
Zhu and I.Ohnaka
(2000.8, Aachen,
Germany),
pp.
326-333
Effects of Viscosity and
Solidification on Mold Filling
Behavior
6
J.D.Zhu
Ohnaka
(2000.8, Aachen,
Germany),
pp.
428-435
A New Simulation Method of Mold
Filling by Using Regular and
Irregular-Mixed Elements
7
小原伸哉、工藤一彦
8
大中逸雄
Proc. of Modeling
of Casting and
Solidification
Processes IV
Modeling
of
Casting, Welding
and
Solidification
Processes IX
Modeling
of
Casting, Welding
and
Solidification
Processes IX
日本機械学会論文
集
素形材
Innovative Computer Simulation
of Casting, Cutting Edge of
Computer
Simulation
of
Solidification and Casting
A Practical Algorithm for Two
Dimensional Computer Simulation
of Mold Filling by Using
Orthogonal-Nonorthogonal-Mixed
Element
Effects of Meshing and Viscosity
on Mold Filling Simulation
9
I.Ohnaka ans
J.D.Zhu
10
I.Ohnaka
and
and
I.
Proceedings of
the International
Conference on the
Science of
Casting and
Solidification
Proc. of the 7th
Asian Foundry
Congress
ガスタービン翼精密鋳造時のふく
射伝熱解析高速化
Vol. 42, (2001), 鋳造シミュレーションの現状と動
No. 7, pp. 6-11
向
(2001.5, Brasov,
Casting and solidification
Transilvania,
based on direct finite
Romania), pp. 91-99 difference method
(2001.10, Taipei,
Taiwan), pp1-11
135
Contribution and Development of
Computer Simulation in Foundry
Industry
11
J.Iwane, I.Ohnaka,
J.D.Zhu and H.
Yasuda
Proc. of the 7th
Asian Foundry
Congress
(2001.10, Taipei,
Taiwan), pp.
101-108
12
Y.Sako, I.Ohnaka,
J.D.Zhu, H.Yasuda
Proc. of the 7th
Asian Foundry
Congress
(2001.10, Taipei,
Taiwan), pp.
363-369
Solidification Simulation of
Spheroidal Graphite Cast Iron
with Consideration of Graphite
Growth
Modeling of oxides entrapment
during mold filling of Al-alloy
Castings
13
柏井茂雄、朱金東、
大中逸雄
左子由紀子、
大中逸雄、朱 金
東、
安田秀幸
岩根 潤、大中逸
雄、朱 金東、安田
秀幸
大出真知子、鈴木俊
夫、金聖均
A. Kimatsuka,
I.Ohanka, J.D. Zhu
and T.Ohmichi
J.D.Zhu, I.Ohanka,
A.Sugiyama,
T.Ohmichi and
Y.Ogino
T.M.Wang,
I.Ohnaka, J.D.Zhu,
F, Kinoshita and
T.Murakami
I. Ohnaka, J.
Iwane, Y. Sako, H.
Yasuda and H. Zhao
鋳造工学
Vol.73 (2001)No.
9,p.592-597
Vol. 74, (2002),
No. 4, pp. 235-239
AC4C 合金板状鋳物の湯流れ及び
流動停止の数値予測
アルミニウム合金の酸化皮膜巻込
みシミュレーション
鋳造工学
Vol. 74, (2002),
No. 4, pp. 246-251
黒鉛成長を考慮した球状黒鉛鋳鉄
のひけ巣予測シミュレーション
材料とプロセス
Vol.14,No.4,pp.881
Int. J. Cast
Metals Research
vol.15 (2002)
pp.149-152
Int. J. Cast
Metals Research
vol.15 (2002)
pp.161-165
フェーズフィールド法による初期
凝固組織形成の解析
Mold Filling Simulation with
Consideration of Gas Escape
through Sand Mold
Modeling of Mold Filling for
Gating Systems with Filters
Int. J. Cast
Metals Research
vol.15 (2002)
pp.399-404
Proceedings of
the 65th World
Foundry Congress
(2002.10,
Gyeongju, Korea),
pp.639-648
H.D.Zhao,
I.Ohnaka, Y.Sako,
H.Onda, J.D.Zhu
and H.Yasuda
T.M.Wang,
I.Ohnaka, H.Yasuda
and K.Mineshita
Proceedings of
the 65th World
Foundry Congress
(2002.10,Gyeongju,
Korea), pp. 749-754
Proceedings of
the 65th World
Foundry Congress
(2002.10,
Gyeongju, Korea),
pp.755-761
I.Ohnaka, J.Iwane,
H.Yasuda and J.D.
Zhu
A.Kimatsuka,
I. Ohnaka, J.D.
Zhu,
A.Sugiyama and T.
Kamitsu
Int.
J.
Cast
Metals Research
Vol.16(2003),
pp.293-299
Modeling
of
Casting,
Welding
and
Solidification
Processes X, TMS
(2003.5, Florida,
U.S.A),
p. 335-342
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
鋳造工学
136
A regular-irregular mixed
meshing method for
solidification simulation of
castings
Estimation of Porosity Defects
in Al-alloy and
Spheroidal-graphite Iron
Castings
Estimation of Porosity Defects
with Consideration of Oxide
Entrapment
Prediction of Solidification
Structure in Unidirectionally
Solidified Alloys by a Dendrite
Envelope Tracking Method
Prediction of porosity defect in
spheroidal
graphite
iron
castings
Mold Filling Simulation of High
Pressure Die Casting for
Predicting Gas Porosity
25
I.Ohnaka
26
J.D.
Zhu,
I.
Ohnaka, K. Kudo, S.
Obara,
A.
Kimatsuka
T.M.
Wang, F. Kinoshita
and T. Murakami
I. Ohnaka
27
28
A. Sugiyama, I.
Ohnaka, J.D. Zhu,
M. Kuwahara, T. Uno
and H. Yasuda
29
村上俊彦、大中逸
雄、朱金東
Modeling
of
Casting,
Welding
and
Solidification
Processes X, TMS
Modeling
of
Casting,
Welding
and
Solidification
Processes X, TMS
(2003.5, Florida,
U.S.A),
p. 403-414
Recent Development of Numerical
Modeling
of
Casting
and
Solidification
(2003.5, Florida,
U.S.A),
p. 447-454
Solidification Simulation with
Consideration of Radiation by
Using a New Regular-Irregular
-Mixed Mesh System
The 8th Asian
Foundry Congress,
Thai
Foundrymen’s
Society
The 8th Asian
Foundry Congress,
Thai
Foundrymen’s
Society
応用数理
(2003.10, Bangkok)
p.549-558
Development of A New Casting
Simulation Code in Japan
(2003.10, Bangkok)
p.568-577
Simulation of Macro-segregation
using
Dynamic
Allocation
Technique
Vol. 13, (2003),
No. 1, p. 10-2
CAE システム「JSCAST」の開発
(2)測定技術関係
著
者
雑誌名
掲載巻/号/頁
題 名
26(2000), No.6,
p.300-305
41(2001),p.39-44
Al-Mg、Al-Si 合金の熱物性値の
測定
微小重力環境を利用した材料研
究
Analysis of Surface
Oscillation of Droplet under
Microgravity Environment
Density of Ni-Cr Alloy in
Liquid
and
Solid-Liquid
Coexistence States
Measurement of the Density of
Ni-Cr Alloy by a Modified
Pycnometric Method,
Thermal
Conductivities
of
Silicon and Germanium in Solid
and Liquid States Measured by
Non-stationary Hot Wire Method
with Silica Coated Probe
微小重力環境における高温融体
の熱伝導度測定
1
野城清
高温学会誌
2
野城清
大阪冶金会誌
3
H. Fujii, T.
Matsumoto
, K. Nogi
K.Mukai and F.Xiao
Acta. Mater
48(2000),
p.2933-2939
Transaction JIM
43(2002)No.5,
1153-1160
4
5
K.Mukai, F.Xiao and
K.Nogi
Transaction JIM
(投稿中)
6
E.Yamasue, M.Susa,
H.Fukuyama and
K.Nagata
J. Crystal Growth
Vol.234/1(2001),
p.121-131
7
福山博之,永田和宏
8
福山博之
平成 13 年度 JSUP 宇 (2002),印刷中
宙環境利用の展望,
(財)宇宙環境利用
推進センター
まてりあ(日本金属 (2001),p.970
137
微小重力環境における液体金属
学会会報)
,談話室
2.
の熱伝導度測定に挑戦して
著作権リスト
登録者
登録番号
登録日
1
大中逸雄
P 第 8110 号−1
2003.10.17
2
(株)クオリカ
P 第 8114 号−1
2003.10.17
3.
題 名
「革新的鋳造シミュレーション
技術」におけるソルバ
「革新的鋳造シミュレーション
技術」におけるプリ・プロセッ
サおよびポスト・プロセッサ
口頭発表リスト
(1)シミュレーション関係
発表者
発表先
発表(予定)日
題 目
Cutting Edge of Computer
Simulation of Solidification
and Casting
ガスタービン翼精密鋳造時のふく
射伝熱解析高速化
X線透過法による湯流れの直接観
察
1
I. Ohnaka , H. Yasuda
ISIJ
1999/11/14-16
2
小原伸哉・工藤一彦
2000
3
荻野義道・品部耕二
郎・山本勉次・大中逸
雄・朱金東・大道徹太
郎
荻野義道・品部耕二
郎・山本勉次・大中逸
雄・朱金東・大道徹太
郎
岩根潤、恩田祐、鳥垣
俊和、大中逸雄、朱金
東、安田秀幸
木間塚明彦、大中逸
雄、朱金東、大道徹太
郎
大中逸雄、大道徹太
郎、朱金東、荻野義道、
山本勉次、品部耕二郎
小原伸哉、工藤一彦
日本機械学会第 13
回計算力学講演会
鋳造工学会関西支
部秋季講演大会
鋳造工学会関西支
部鋳造プロセス研
究会
2001/3/16
X線透過法による湯流れの直接観
察
日本鋳造工学会第
138 回全国講演大会
2001/5/13
鋳造工学会第 138 回
全国講演大会
2001/5/13
鋳物の変形を考慮した球状黒鉛鋳
鉄の引け巣欠陥予測シミュレーシ
ョン
背圧を考慮した湯流れ解析
日本鋳造工学会第
138 回全国講演大会
2001/5/13
可動 X 線透過による湯流れの直接
観察
第 41 回講演会概要
集(日本機械学会北
海道支部)
杉山明、大中逸雄、大 日 本 鋳 造 工 学 会 第
道徹太郎、上津智宏、 139 回全国講演大会
桑名紀文、則包哲、笹
井直樹
上津智宏、大中逸雄、 日 本 鋳 造 工 学 会 第
杉山明、安田秀幸、木 139 回全国講演大会
間塚明彦、朱金東
2001/9/29
スタービン翼精密鋳造時のふく射
伝熱解析高速化(射度解析の簡易
化)
アルミニウムダイカストにおける
金型内ガス圧の挙動
4
5
6
7
8
9
10
2000/11/16
2001/10/24
2001/10/24
138
ダイカストにおける背圧を考慮し
た湯流れシミュレーション
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
柏井茂雄、呉田博司、
江川勝一、朱金東、大
中逸雄
品部耕二郎、荻野義
道、岡部和男、大中逸
男、大道徹太郎、杉山
明
杉山明,安田秀幸,大
中逸雄,大道徹太郎,
荻野義道,梅田啓二,
川崎宏一
桑原昌広、杉山明、大
中逸雄、松田崇之、朱
金東
日本鋳造工学会第
139 回全国講演大会
2001/10/24
重力鋳造の湯流れシミュレーショ
ンにおける湯口境界条件の設定
日本ダクタイル鋳
鉄協会 第 105 回 DCI
研究発表会
2001/11/6
X線透過法による湯流れの直接観
察
ヤング・サイエンテ
ィスト・フォーラム
(鉄鋼協会 2002 年春
季大会内で開催)
ヤング・サイエンテ
ィスト・フォーラム
(鉄鋼協会 2002 年春
季大会内で開催)
筑後一義、黒木康徳、 第 5 回ヤングサイエ
錦織貞郎、松田謙治
ンティストフォー
ラム
桑原昌広、大中逸雄、 日 本 鋳 造 工 学 会 第
安田秀幸、杉山明、朱 141 回全国講演大会
金東
宇野智久、大中逸雄、 日 本 鋳 造 工 学 会 第
安田秀幸、杉山明、朱 141 回全国講演大会
金東
趙海東、大中逸雄、左 日 本 鋳 造 工 学 会 第
子由紀子、朱金東
141 回全国講演大会
木間塚明彦、大中逸 日本鋳造工学会第
雄、朱金東、木下文昭、 141 回全国講演大会
上原健文
王同敏、大中逸雄、安 日 本 鋳 造 工 学 会 第
田秀幸、峯下健太郎
141 回全国講演大会
2002/3/28-30
透過 X 線を用いた鋳造および凝固
現象の可視化
2002/3/28-30
直接差分法によるマクロ偏析のシ
ミュレーション
2002/3/28
Ni 基単結晶超合金の組織制御と
鋳造シミュレーションへの展開
2002/10/7
混合要素を用いたマクロ偏析のシ
ミュレーション
2002/10/7
Al 系合金鋳塊におけるマクロ偏
析のシミュレーション
2002/10/7
アルミ合金鋳物のミクロポロシテ
ィ形成のシミュレーション
背圧を考慮した湯流れ解析
2002/10/7
A Dendrite Envelope Tracking
Method for Simulating the
Solidification Structure in
Unidirectional-solidified
Alloys.
岩根潤、大中逸雄、安
日本鋳造工学会第
2003/5/31
黒鉛成長を考慮した球状黒鉛鋳鉄
田秀幸、朱金東
142 回全国講演大会
宇野智久、大中逸雄、 日 本 鋳 造 工 学 会 第
安田秀幸、杉山明、朱
2002/10/7
のひけ巣予測シミュレーション
2003/10/28
143 回全国講演大会
Dynamic Allocation を用いたマク
ロ偏析の数値シミュレーション
金東
23
24
岩根潤、大中逸雄、安
日本鋳造工学会第
田秀幸、朱金東
143 回全国講演大会
大中逸雄
日本鋳造工学会第
2003/10/28
黒鉛鋳鉄のひけ巣予測
2003/10/28
143 回全国講演大会
25
木間塚明彦、黒木康
日本鋳造工学会第
凝固シミュレーションによる球状
鋳造コンピュータ・シミュレーシ
ョンの動向
2003/10/28
徳、大中逸雄、朱金東、 143 回全国講演大会
一方向凝固プロセスの数値シミュ
レーション
139
工藤一彦、小原伸哉
26
佐藤暁拓、野本祐春、 日 本 鋳 造 工 学 会 第
岩根潤、大中逸雄
27
143 回全国講演大会
村上俊彦、木下文昭、 日 本 鋳 造 工 学 会 第
迫伸生、大中逸雄、朱
2003/10/28
弾塑性 VOXEL-FEM による球状黒鉛
鋳鉄鋳造物の残留変形解析
2003/10/28
143 回全国講演大会
規則-不規則混合要素を用いた湯
流れ凝固解析システムの活用例
金東
28
柏井茂雄、兼吉高宏、 日 本 鋳 造 工 学 会 第
大中逸雄、大道徹太
2003/10/28
143 回全国講演大会
吸引鋳造における湯流れ挙動の直
接観察及び数値予測
郎、木間塚明彦、朱金
東
(2)測定技術関係
発表者
発表先
1
杉澤孝治、佐藤讓、山
村力
2
松本大平, 藤井英俊,
野城清
松本大平, 藤井英俊,
野城清
日本金属学会 2001
年春期(128 回)大
会
第 22 回日本熱物
性シンポジウム
第 5 回ヤングサイ
エンティストフォ
ーラム
軽金属学会第 100
回春季大会
日本金属学会第
2001 年秋季大会
日本金属学会第
128 回春季大会
日本金属学会第
128 回春季大会
日本金属学会春季
大会第 128 回
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
小松幹長,工藤昌行,
伊藤洋一
工藤昌行,小泉正樹,
大笹憲一
田口弘毅、福山博之,
林幸,永田和宏
石井裕之、林幸,福山
博之,永田和宏
田口弘毅、石井裕之、
林幸,福山博之,永田
和宏
杉澤孝治、青木大輔、 日本金属学会春季
佐藤譲、山村力
大会第 130 回
向井楠宏, 肖鋒
日本鉄鋼協会九州
支部平成 13 年度
合同学術講演会
向井楠宏, 肖鋒
日本鉄鋼協会第
142 回秋季講演大
会
向 井 楠 宏 , 肖 鋒 , 野 日本金属学会 2001
城清:
年秋期(第 129 回)
大会
K.Mukai and F.Xiao
日本熱物性学会第
22 回シンポジウム
発表(予定)日
題 目
2001/3/30
溶融 Ni-Co 合金の粘度
2001/11/20-22
浮遊液滴振動法による粘性率と表
面張力の精密測定
種々の微小重力環境を利用した液
滴振動法による表面張力測定
2002/3/28
2001/5/19-20
2001/9/22−24
2001/3
2001/3
2001/3
AC4C アルミニウム合金の平衡分
配係数評価
Ni-Co 基耐熱合金の平衡分配係数
溶融活性金属の熱伝導度測定用プ
ローブの開発
溶融アルミニウム−シリコン合金
の熱伝導度の温度及び組織依存性
微小重力下における溶融 Al-Si 合
金の熱伝導度測定
2002/3/29
溶融 Ni-Cr 二元合金の粘度
2001/6/1
液相及び固液共存域におけるニッ
ケル基合金の密度測定法の開発
2001/9/22-24
改良型静滴法による液相および固
液共存域における超耐熱合金の密
度の測定
液相および固液共存域における
Ni-Cr 系合金および耐熱合金の密
度測定
Measurement of the Density of
Nickel-Chromium Alloy at
Liquid State and Solid-Liquid
2001/9/22-24
2001/11/20-22
140
14
K.Mukai, F.Xiao and
K.Nogi
日本熱物性学会第
22 回シンポジウム
2001/11/20-22
15
K.Mukai, F.Xiao and
K.Nogi
日本学術振興会製
鋼第 19 委員会平
成 14 年 1 月期研究
発表会
2002/1/30
16
K.Mukai and F.Xiao
2002/3/7
17
向井楠宏, 肖鋒
18
松本大平, 藤井英俊,
野城清
平成 13 年度九州
工業大学サテライ
ト・ベンチャー・ビ
ジネス・ラボラト
リー研究成果報告
会
日本鉄鋼協会第
143 回春季講演大
会
第 22 回日本熱物
性シンポジウム
19
松本大平, 藤井英俊,
野城清
20
田口弘毅,林幸,福山
博之,永田和宏
田口弘毅,林幸,福山
博之,永田和宏
第 5 回ヤングサイ
エンティストフォ
ーラム,社団法人
日本鉄鋼協会育成
委員会
日本鉄鋼協会春季
大会第 143 回
日本金属学会秋期
大会第 129 回
21
Two-phase State by a Modified
Sessile Drop Method
Measurement of the Density of
Nickel-Chromium Alloy at
Liquid State and Solid-Liquid
Two-phase State by a Modified
Pycnometric Method
Measurement of the Density of
Nickel -Base Heat-Resistant
Alloy in Liquid and Solid-Liquid
Coexistence States by a Modified
Sessile Drop Me
thod and a Modified Pycnometric
Method,
Density of Ni-Base Alloy in
Liquid
and
Solid-Liquid
Coexistence States
2002/3/29-31
改良型静滴法による溶融 Ni-Co 系
合金の密度測定
2001/11/20-22
浮遊液滴振動法による粘性率と表
面張力の精密測定
2002/3/28
種々の微小重力環境を利用した液
滴振動法による表面張力測定"
2002/3
微小重力下における溶融 Ni の熱
伝導度の測定
微小重力下における溶融 Al-Si 合
金の熱伝導度測定
2001/9
以上
141
平成15・03・07産局第9号
平成15年3月10日
新製造技術プログラム基本計画
1. 目的
IT等最新の技術を導入し、プロセス技術の革新を図ることにより、我が国経済社会の
基盤である製造業の競争力の維持・強化を目指す。
2. 政策的位置付け
科学技術基本計画(2001年3月閣議決定)における国家的・社会的課題に対応した
研究開発の重点化分野である製造技術分野、分野別推進戦略(2001年9月総合科学技
術会議)における重点分野である製造技術分野に位置づけられるものである。
また、産業技術戦略(2000年4月工業技術院)における革新的・基盤的技術(製造
技術)の涵養、知的な基盤の整備とともに「産業発掘戦略−技術革新」(「経済財政運営
と構造改革に関する基本方針2002」(2002年6月閣議決定)に基づき、2002
年12月取りまとめ)の情報家電・ブロードバンド・IT分野における戦略目標(国民、
産業界、政府等共有の目標により、国民の存在需要を発掘)、及びナノテクノロジー・材
料分野における戦略目標(10年後に、世界市場を主導できる我が国発の企業をナノテク
ノロジー・材料分野の‘5つの産業’で創出する。)等への対応を図るものである。
3. 目標
2007年度までに、現在の製造に要する時間やコスト等を半減することを目標に、プ
ロセスの一層の合理化を図るとともに、新たな高付加価値産業を生み出すプロダクトイノ
ベーションの環境を整える。
4. 研究開発内容
【プロジェクト】
Ⅰ.製造技術の新たな領域開拓
(1) MEMSプロジェクト(フォーカス21)
①概要
我が国に蓄積された半導体製造技術やマイクロマシン技術を活用し、情報通信、医
療・バイオ、産業機械など多様な分野におけるキーデバイスとして期待が高まっている
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のうち、今後比較的短期に大きな市場
が形成されると期待されるMEMS(RF−MEMS、光MEMS、センサMEMS)
の実用化に必要な製造技術を開発するとともに、これらのMEMS製品の実用化等を通
じ、多様な産業・民生分野におけるエネルギー使用の合理化を図る。
②技術目標及び達成時期
2005年度までに、RF−MEMS、光MEMS、センサMEMSの各分野におい
て特に有望と期待されるデバイスの実用化に必要な製造技術を確立するとともに、これ
らのMEMS製品を実用化する。
③研究開発期間
2003年度∼2005年度
④中間・事後評価の実施期間
事後評価を2006年度に実施。
⑤実施形態
民間企業、大学、公的機関等から最適な研究体制を構築し、実施。
(2)インクジェット法による回路基板製造プロジェクト(フォーカス21)
①概要
エネルギー需給構造高度化の観点から行うものであり、金属インク、絶縁物インク等
をインクジェットヘッドから基板に吐出して回路基板を製造する技術の開発を行う。
メッキ、レジスト塗布、露光、現像、エッチング等の一連の工程を行う従来法(エッチ
ング法)に比べ、本プロジェクトの回路基板製造方法は数分の1の工程で行うため、製
造工程の省エネルギー化が可能となる。
②技術目標及び達成時期
2005年度までに、インクジェット法による回路基板の製造技術を確立する。
③研究開発期間
2003年度∼2005年度
④中間・事後評価の実施時期
事後評価を2006年度に実施。
⑤実施形態
民間企業、大学、公的機関等から最適な研究体制を構築し、実施。
(3)クラスターイオンビームプロセステクノロジー
①概要
イオン化した原子・分子集団からなるクラスターイオンビームを活用した大電流ビー
ム発生・照射技術の開発及び超硬質薄膜形成等の新規材料プロセス技術の開発を行う。
②技術目標及び達成時期
2004年度までに、ビーム電流1mAのクラスターイオンビーム発生装置を開発し、
超硬質薄膜形成等の新規プロセス技術の実用化を図る。
③研究開発期間
2000年度∼2004年度
④中間・事後評価の実施時期
ミレニアム・プロジェクトの評価・助言会議において、毎年度、評価を実施。
⑤実施形態
民間企業、大学、公的機関等から最適な研究体制を構築し、実施。
Ⅱ.製造技術革新による競争力強化
(1)デジタルマイスタープロジェクト
①概要
設計・製造現場に、「暗黙知」として存在する技能やノウハウを科学的な分析を通じ
て「形式知」化し、情報技術を活用してソフトウェア化、データベース化する手法等の
開発を行うことにより、情報技術と製造技術が融合した、時間・コスト・品質競争力の
ある新たな生産システムの構築を図る。この一部については、現場技能の形式知化等を
通じた加工工程の効率化・省エネルギー化により、エネルギー需給構造の高度化を図る
観点から行うものである。
②技術目標及び達成時期
2003年度までに、金型設計・製造に係る熟練者の技能をCAD/CAM等の設
計・製造支援アプリケーションに組み込んで活用するシステムの高性能化、及び金型加
工機等の高速・高精度化のための技術とともに、複雑曲面形状等を有する超精密金型を
高精度で加工・計測する技術を開発する。また、2007年度(一部の事業については
2003及び2005年度)までに、金型設計・製造分野をはじめ、一般製造分野に関
する技能の抽出・整理・体系化手法を確立し、当該手法を活用してデータベース等を開
発するとともに、当該システムを企業で効果的に活用し、IT等を駆使した新しいもの
づくりの方法を提案する。
③研究開発期間
2001年度∼2007年度
④中間・事後評価の実施時期
中間評価を2004年度に、事後評価を2008年度に実施。(一部の事業について
は、中間評価を2003年度に、事後評価を2004年度、2006年度に実施。)
⑤実施形態
民間企業、大学、公的機関等から最適な研究体制を構築し、実施。
(2)IMS国際共同研究プロジェクト
①概要
先進国の製造業が共通して抱える環境問題や製造現場の省エネルギー推進などの課題
に つ い て 国 際 的 な 共 同 研 究 に よ り 効 率 的 な 解 決 を 目 指 す I M S (Intelligent
Manufacturing System)プログラムの枠組みの中で、設計・製造工程の効率化など次世
代高度生産システムを目指した研究開発を行う。具体的には、エネルギー需給構造の高
度化及び電源の多様化の促進を図る観点から行うものであり、省エネルギー化・省資源
化を考慮した設計システムや発電施設等への適用が期待される研究開発を行う。
②技術目標及び達成時期
2004年度までに、多様なユーザニーズに対応できる柔軟かつ効率的な生産シス
テムなど次世代高度生産システムに必要とされる技術基盤の確立を目指す。
③研究開発期間
1995年度∼2004年度
④中間・事後評価の実施時期
中間評価を2000年度に、事後評価を2005年度に実施。
⑤実施形態
民間企業、大学、公的機関等から最適な研究体制を構築し、実施。
(3)革新的鋳造シミュレーション技術開発
①概要
鋳造法における精密化、生産性向上、低コスト化、開発期間の短縮化等を実現するた
め、超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における湯流れ及び凝固過程のシミュ
レーション技術、鋳造組織及び欠陥生成シミュレーション技術、並びに関連測定技術の
開発を行う。この一部については、伝熱、物質移動及び結晶欠陥生成等の革新的シミュ
レーション技術の開発を通じた精密鋳造工程の効率化・省エネルギー化により、エネル
ギー需給構造の高度化を図る観点から行うものである。
②技術目標及び達成時期
2002年度までに、鋳造時の鋳型充満時間、充満直後の鋳型、溶湯温度及び引け巣
発生位置・程度等を、高精度に且つ短時間で予測する技術を開発する。
③研究開発期間
1999年度∼2002年度
④中間・事後評価の実施時期
事後評価を2003年度に実施。
⑤実施形態
民間企業、大学、公的機関等から最適な研究体制を構築し、実施。
5.研究開発の実施に当たっての留意事項
【フォーカス21の成果の実用化の推進】
フォーカス21は、研究開発成果を迅速に事業に結び付け、産業競争力強化に直結さ
せるため、次の要件の下で実施。
・ 技術的革新性により競争力を強化できること。
・ 研究開発成果を新たな製品・サービスに結びつける目途があること。
・ 比較的短期間で新たな市場が想定され、大きな成長と経済波及効果が期待できること。
・ 産業界も資金等の負担を行うことにより、市場化に向けた産業界の具体的な取り組み
が示されていること。
具体的には、成果の実用化に向け、実施者による以下のような取組を求める。
・MEMSプロジェクト
事業費の1/2負担により、今後成長が期待される情報通信分野のMEMS等の
実用化に必要な高精度三次元加工技術等の開発を行う。また、本プロジェクトに
よって確立される高度なMEMS製造技術を活用し、多様な主体によるMEMS製
品開発・生産が活性化する環境を構築する。
・インクジェット法による回路基板製造プロジェクト
事業費の1/2負担により、金属インク、絶縁物インク等をインクジェットヘッ
ドから基板に吐出して回路基板を製造する技術を確立する。
なお、適切な時期に、実用化・市場化状況等について検証する。
6. プログラムの期間、評価等
プログラムの期間は2002年度から2007年度までとし、プログラムの中間評価を
2005年度、事後評価を2008年度に行うとともに、研究開発以外のものについては
2010年度に検証する。
また、中間評価等を踏まえ、必要に応じ基本計画の内容の見直しを行う。
7. 研究開発成果の政策上の活用
・研究開発成果啓蒙普及事業
公益法人等を活用した成果の積極的な啓蒙普及に取り組む。
8.政策目標の実現に向けた環境整備
・国際標準化戦略
各プロジェクトの成果として得られたもののうち国際標準化すべきものについては適切
に実施する。
9.改訂履歴
(1) 平成14年2月28日付け制定。
(2) 平成15年3月10日付け制定。新製造技術プログラム基本計画(平成14・0
2・25産局第6号は、廃止。
新製造技術プログラム
革新的鋳造シミュレーション技術プロジェクト基本計画
1.研究開発の目的・目標・内容
(1) 研究開発の目的
技術革新は、産業の競争力の源泉であり、中長期的な経済成長の原動力となる。特に、
資源に恵まれず、今後急速な高齢化により労働・資本の供給制約の顕在化が懸念される我
が国が国際的な大競争時代の中で産業競争力を維持していくためには、技術革新による経
済社会全体の生産性・効率性の向上が不可欠である。
鋳造は金属を材料とした複雑形状部材の製造法として主要な位置を占めており、その製
品は各種の産業機械、航空機・自動車・車両、動力プラント等に広く用いられて、広範な
産業の基盤を支えている。これまでは、鋳造工程が熱及び物質移動を伴う複雑な過程を含
み、鋳造品の組織の予測はもとより、鋳造過程を計測・解析することも困難なため、主と
して経験を蓄積して技術を向上させてきた。近年、機械の省エネ化、高効率化等の必要性
が増し、それに伴い、部材の高強度化、軽量化、高耐熱性化、機能性付与等が求められ、
鋳造分野においても、形状精度や鋳造面平滑さの向上、柱状晶や単結晶の製造、多種の組
成の合金や複相組織の金属の凝固等に対応できる精密な鋳造技術が求められている。この
ような複雑な合金系や大型部材の鋳造を、従来のように試行錯誤的に達成するのは、要す
る時間や費用の点から非常に困難になっている。
一方、コンピュータの演算能力・データ容量の飛躍的な向上により、熱及び物質移動や
結晶欠陥生成等の総合的・体系的なシミュレーションプログラムの構築が可能になってい
る。また、シミュレーションの基礎データとなる金属の熱物性等の厳密な測定も、微小重
力環境における無対流・無容器電磁浮遊等を利用して行われつつある。このように、経験
的な技術開発を基本としてきた鋳造分野において、シミュレーション技術を確立させる技
術的環境が整いつつある。
本研究開発プロジェクトにおいては、鋳造における精密化、生産性向上、低コスト化、
開発期間の短縮化等を実現するために、鋳造過程のシミュレーション技術の確立を図る。
これにより、鋳造産業をはじめ、産業機械、航空機・自動車・車両、動力プラント等広範
な産業分野の振興に資する。
(2) 研究開発の目標
平成14年度までに、超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における、湯流れ及び
凝固過程のシミュレーション技術、鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション技術、並び
にシミュレーションの基礎となる金属等の物性値の計測技術を開発する。
(3) 研究開発内容
革新的鋳造シミュレーション技術に係る研究開発の中で、以下の研究開発項目について、
別紙の研究開発計画に基づき研究開発を実施する。
「超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程のシミュレー
ションプログラム、鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラム、並びに関連測
定技術の開発」
2.研究開発の実施方式
(1) 研究開発の実施体制
本研究開発は、共同研究開発に参加する産・学の各研究開発グループの有する研究開発
ポテンシャルの最大限の活用により効率的な研究開発の促進を図るとの観点から、大中逸
- 1 -
雄大阪大学大学院工学研究科教授(以下「研究開発責任者」という。)の下に産・学の研
究者を結集して大規模・集中的に研究開発を実施する方式(集中管理型)を採用する。
本研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)に
よって選定される民間企業等(委託先から再委託された大学等研究開発実施者を含む。)
(以下「委託先」という。)と大阪大学との間で共同研究契約等を締結し、効果的な研究
開発を実施する。
この場合において、研究開発の一体的な促進を図るため、NEDOは、研究開発責任者
及び経済産業省と密接な関係を維持しつつ、研究開発実施者の研究開発達成状況等の情報
の集約を行い、研究開発の適正な運営を図る。
(2) 研究開発の運営管理
研究開発全体の管理・執行に責任と決定権を持つNEDOは、経済産業省及び研究開発
責任者と密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに、本研究開発の目
的及び目標に照らして適切な運営管理を実施する。具体的には、必要に応じて、NEDO
に設置する技術審議委員会及び技術検討会等、外部有識者の意見を運営管理に反映させる
他、適宜プロジェクトリーダ等を通じてプロジェクトの進捗について報告を受けること等
を行う。
3.研究開発の実施期間
本研究開発の期間は、平成11年度から平成14年度までの4年間とする。
4.評価の実施
NEDOは、国の定める技術評価に係る指針及び技術評価実施要領に基づき、技術的及
び産業技術政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成果の技術的意義並びに将来
の産業への波及効果等について、NEDOに設置する技術評価委員会において外部有識者
による研究開発の事後評価を15年度に実施する。なお、評価の時期については、当該研
究開発に係る技術動向、政策動向や当該研究開発の進捗状況等に応じて、前倒しする等、
適宜見直すものとする。
5.その他の重要事項
(1) 研究開発成果の取り扱い
①共通基盤技術の形成に資する成果の普及
得られた研究成果のうち、下記共通基盤技術に係る研究開発成果についてはNEDO、
実施者とも普及に努めるものとする。
a)実現手法の確立、体系的整理
・超耐熱合金精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程のシミュレーション技術、
鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション技術
・一般精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程のシミュレーション技術、鋳造組
織及び欠陥生成のシミュレーション技術
b)新たな特性 デ ータの取得・整備
・超耐熱合金、一般精密鋳造用アルミニウム合金の物性値
c)試験・評価方法、ツールの提供
・金属等の物性値の計測技術
・鋳型内部での溶融金属の流れ挙動直接観察手法
②知的基盤整備事 業 又は標準化との連携
得 ら れ た 研 究 開 発の 成 果 に つ い て は 、 知的 基 盤 整 備 事 業 又 は 標準 化 と の 連 携 を 図 る
- 2 -
た め 、 デ ー タ ベ ー ス へ の デ ー タ の 提 供 、 必 要 に 応 じ て 標 準 情 報 ( T R ) 制 度 へ の提
案等を行う。
③知的所有権の扱い
NEDOの委託研究開発の成果に係る知的所有権については、「新エネルギー・産業技
術総合開発機構産業技術研究開発等業務方法書」第19条(「新エネルギー・産業技術
総合開発機構新エネルギー業務方法書」第43条)の規定等に基づき、原則として、
すべてを受託者に帰属させることとする。
(2) 基本計画の変更
NEDOは、研究開発内容の妥当性を確保するため、社会・経済的状況、内外の研究開
発動向、産業技術政策動向、第三者の視点からの評価結果、研究開発費の確保状況、当該
研究開発の進捗状況等を総合的に勘案し、達成目標・実施期間・研究開発体制等、基本計
画の見直しを弾力的に行うこととする。
(3) 根拠法
本プロジェクトは、「産業技術に関する研究開発体制の整備等に関する法律(昭和63
年法律第33号)第4条第1号」に基づき実施する。
(4) その他
「新製造技術プログラム」で実施される他のプロジェクトと連携を図りつつ実施するこ
ととする。
6.基本計画の改訂履歴
(1)平成11年3月、制定。
(2)平成14年3月、新製造技術プログラムへの改編を受け、研究開発の目的、内容、
目標を統一的に明記する等、改訂。
- 3 -
(別紙)研究開発計画
研究開発項目
「超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における、湯流れ及び凝固過程のシミュレー
ションプログラム、鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラム、並びに関連測
定技術の開発」
1.研究開発の必要性
近年の情報処理技術の急速な進展、及び微小重力環境等における物性値測定技術の向上
を活かして、複雑な鋳造過程をシミュレーションすることによって、鋳造の精密化、省エ
ネルギー化、鋳造過程の最適化、歩留まりの向上等を図ることが必要である。
具体的には、超耐熱合金精密鋳造法(超耐熱合金を材料として、柱状晶又は単結晶凝固
により、タービン翼等を鋳造する方法)、及び一般精密鋳造法(鋳肌、寸法精度、鋳物材
質等に優れた製品を作り得る鋳造法を指すものとし、具体的には、狭義な精密鋳造法であ
るロストワックス法のほか、真空/減圧鋳造法、及び半溶融法も含む。)における、注湯
から凝固までをシミュレーションする技術の開発、鋳造組織形成及び欠陥生成をシミュレ
ーションする技術の開発、並びにシミュレーションの基礎となる金属等の物性値の計測技
術開発と実測を行うことが必要である。
2.研究開発の具体的内容
(1) 湯流れ及び凝固過程のシミュレーションプログラムの開発
超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における湯流れ及び凝固過程をシミュレーシ
ョンする以下の4つのプログラムを開発するとともに、シミュレーション精度確認のため
にX線による湯流れ及び凝固過程の直接観察技術を開発する。
ア.直接差分法及び輸送現象理論により、タービン翼に代表される複雑な曲面を有する鋳
型空隙部を溶湯が温度変化しつつ充満していく、湯流れ過程をシミュレーションするプロ
グラムを開発する。
イ.直接差分法及び輸送現象理論により、鋳型と溶湯の反応でガスが生じ、ガスが鋳型や
溶湯を通過する現象を考慮した、湯流れ過程をシミュレーションするプログラムを開発す
る。
ウ.直接差分法並びに熱移動論及び電磁気理論により、サセプタの電磁加熱を利用して真
空中で超耐熱合金用セラミックス鋳型を加熱し、さらに鋳型を移動させる時の鋳型温度変
化をシミュレーションするプログラムを開発する。
エ.上記のプログラムを組み合わせて、超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法の湯流
れ及び凝固過程をシミュレーションするプログラムを開発する。
オ.湯流れ及び凝固過程を、X線により、シミュレーション精度を確認し得る速度及び細
かさで、直接観察する技術を開発する。
(2) 鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラムの開発
超耐熱合金精密鋳造法及び一般精密鋳造法における鋳造組織及び欠陥生成過程をシミュ
レーションする以下の2つのプログラムを開発する。
ア.核生成を仮定し、結晶成長理論を利用したセルオートマトン法と直接差分法により、
タービン翼などの超耐熱合金精密鋳造法における、単結晶や柱状晶の凝固組織形成をシミ
ュレーションするプログラムを開発する。
イ.直接差分法、凝固理論及びフェーズフィールド法により、タービン翼などの超耐熱合
金精密鋳造法で生じるチャンネル型偏析と引け巣欠陥の生成、及びアルミニウム合金や球
- 4 -
状黒鉛鋳鉄の一般精密鋳造法で生じる引け巣欠陥をシミュレーションするプログラムを開
発する。
(3) 精密鋳造シミュレーションに必要な材料物性値及び熱力学的データの高精度な測定
技術の開発
精密鋳造シミュレーションの入力データとして必要な材料物性値及び熱力学データを高
精度で測定する技術を開発するとともに、開発された技術等を用いて、合金、鋳型材料等
のデータを測定する。
ア.微小重力環境を利用して、溶融金属の表面張力、密度及び粘度を高精度に測定する技
術を開発する。
イ.電磁浮遊法等を用いて、耐熱金属の融点、比熱及び熱伝導率を高精度に測定する技術
を開発する。
ウ.熱分析やX線マイクロアナライザを用いて、耐熱合金の液相線、固相線温度、分配係
数等の熱力学データ及びミクロ偏析を高精度に測定する技術を開発する。
エ.熱移動理論に基づいて、多孔質セラミックス鋳型材料の比熱、熱伝導率、放射率及び
透過率を高精度に測定する技術を開発する。
オ.上記の高精度な測定技術を用いて、シミュレーションに必要な材料の物性値等を測定
する。
3.達成目標
(1) 開発したシミュレーションプログラムと物性等の測定技術を統合して、単結晶及び
柱状晶タービン翼の超合金精密鋳造法、並びにアルミニウム合金等の複雑形状部材の一般
精密鋳造法における湯流れ及び凝固過程、並びに鋳造組織及び欠陥生成を、以下の精度と
計算時間(これまでのパーソナルコンピュータの性能向上傾向から予測される開発計画終
了時点のパーソナルコンピュータ能力を基準とする。また、データ入力及び結果出力に要
する時間は含まない。)で予測することを目標とする。
ア.鋳造時にガス発生のない超合金タービン翼精密鋳造(100万要素分割の代表的製品)に
おける鋳型充満時間を10%以下の誤差で、かつ鋳型充満直後の鋳型及び溶湯温度について
は5%以下の誤差で、計算時間24時間以内で予測する。
イ.鋳造前加熱時のサセプタ及びセラミックス鋳型温度変化(100万要素分割の代表的製品)
を誤差5%以下、計算時間5時間以内で予測する。
ウ.超合金タービン翼(主要素分割50万要素の代表的製品)の単結晶化及び柱状晶化を80%
以上の確率、計算時間35時間以内で予測する。また、チャンネル型偏析欠陥の発生位置と
その程度(欠陥の幅)を20% 以下の誤差、計算時間48時間以内で予測する。
エ.鋳造時にガス発生する一般精密鋳造(100万要素分割の代表的製品)における鋳型充満
時間及び充満途中の空隙部圧力を10%以下の誤差で、かつ鋳型充満直後の鋳型及び溶湯温
度については5%以下の誤差で、計算時間24時間以内で予測する。
オ.アルミニウム合金及び球状黒鉛鋳鉄精密鋳造品(200万要素分割の代表的製品)の引け
巣欠陥の発生位置と程度(ポロシティ量)を15%以下の誤差で、計算時間12時間以下で予
測する。
(2) 物性等の測定技術については以下の精度を目標とする。
ア.タービン翼用主要超合金の物性値を、温度依存性を含めて次の誤差範囲内で測定する。
・液相線、固相線温度、潜熱、比熱:誤差3%以下
・密度:誤差2%以下
・固体熱伝導率、溶質分配係数:誤差10%以下
- 5 -
・液体熱伝導率:誤差15%以下
・表面張力、粘度:誤差5%以下
イ.代表的精密鋳造用アルミニウム合金の液相線、固相線温度、潜熱、並びに、固体状態
の密度、比熱及び熱伝導率を誤差5%以下で測定する。
ウ.精密鋳造用セラミックス鋳型及びサセプタの熱伝導率、比熱、密度、放射率を、温度
依存性を含めて、誤差10%以下で測定する。
- 6 -
(1)
「革新的鋳造シミュレーション技術」用語解説
用
語
解
説
超耐熱合金
耐熱ニッケル超合金(ガスタービン翼)
一般合金
球状黒鉛鋳鉄、アルミウム合金、鋳鋼、その他合金
精密鋳造法
セラミックモールド法とも呼ばれ、寸法精度のよい、あるいは表面の
滑らかなセラミック鋳型を作り、寸法精度のよい、あるいは鋳肌の美
しい鋳造品を作る方法である。
湯流れ
鋳造時の鋳型内の溶融金属の流れ
凝固
液体から個体への変態
ロストワック
ス法
ろうやプラスチックなど、溶融、溶解などにより除去しやすい模型を
セラミックで被覆して鋳型とし、模型を除去したのち注湯して鋳物を
得る方法である。
真空鋳造法
セラミックシェルモールドを利用した鋳造法でAlやCrを含む超合
金は真空中で鋳造しなければならない。
焼成した鋳型を真空チャンバに挿入し、真空(10∼100mmPa)中で所定
の組成に調整したインゴットを高周波炉で急速溶解し注湯する。
一方向凝固
タービン翼など高温クリープ強度が重要な部品は、結晶粒が大きいほ
ど望ましい。特に、応力の作用する方向に成長した柱状晶や単結晶に
することにより、クリープ強度は著しく上昇する。単結晶を得るには
温度勾配を十分にとった一方向凝固を実現しなければならない。
柱状晶
柱のような細長い結晶
単結晶
結晶粒界の存在しない結晶
半溶融法
固相線と液相線の中間温度、すなわち、固液共存域でかくはんするこ
とにより、固相率が30∼70%の半溶融スラリーを作り、ダイカスト法
と同様にして鋳造するもの。
- 1 -
(2)
用
語
解
説
輸送現象理論
流動、伝熱、拡散、蒸気など、エネルギーと物質移動を伴う現象を数
式表現して定量的に取り扱う学問
セルオートマ
トン法
解析領域を微少セルで自動的に分割し、セルにあるモデルを適応して
全体の現象をシミュレートする方法
フェーズフィ
ールド法
非平衡熱力学を基礎にした数値シミュレーションの手法の一つであ
り、樹脂状晶(デンドライト)など凝固組織形成への応用がおこなわ
れている。多元系合金のミクロ偏析予測を汎用的に可能にすると考え
られている。
液相線
溶融状態(液相)から凝固開始する液相単独の領域の限界線
固相線
さらに冷却し液相がなくなり固相だけになる固相単独の領域の限界線
引け巣
凝固収縮、液相収縮、鋳型変形に伴う液面の低下により、凝固遅れ部
等に微少気孔が発生する欠陥。
ポロシティ
空孔、気泡
分配係数
合金元素が固相と液相に不平等に分かれることを溶質の分配といい、
固液相の濃度比(k=CS/CL)を平衡分配係数という。
ミクロ偏析
分配係数が1より小さい合金では、凝固した結晶中の溶質濃度は液相
濃度より低く、溶質は液相中に排出される。最後に凝固した樹脂状晶
(デンドライト)樹脂間の溶質濃度が最も高濃度になる。このような
樹脂状晶の形に対応した濃度不均一をミクロ偏析という。
マクロ偏析
樹脂状晶(デンドライト)間隔あるいは結晶粒間隔以上離れた場所間
の化学成分の不均一であり、マクロ偏析は、ミクロ偏析により濃化さ
れた液相が流動するために生じるのがほとんどである。液相流動の駆
動力としては、温度差および濃度差に基づく自然対流、表面張力差に
よる対流、凝固収縮、外力(電磁力、遠心力)などがある。
- 2 -
2.分科会における概要説明資料
本資料は、第1回分科会において、プロジェクト実施者がプロジェクトの概要を説
明する際に使用したものである。
2-2
新製造技術プログラム
革新的鋳造シミュレーション技術プロジェクト
平成15年11月28日
○財団法人素形材センター
○独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
ナノテクノロジー・材料技術開発部
平成15年11月28日
事後評価分科会
1
報告の流れ
Ⅰ.事業の位置付け・必要性
Ⅱ.研究開発マネジメント
NEDO 肥後
NEDO 肥後
[物性値等の関連測定技術]
Ⅲ.研究開発成果
Ⅳ.実用化、事業化の見通し
大阪大学 野城教授 (SPL)
大阪大学 野城教授 (SPL)
[シミュレーションプログラム]
Ⅲ.研究開発成果
Ⅳ.実用化、事業化の見通し
平成15年11月28日
事後評価分科会
大阪大学 大中教授 (PL)
クオリカ㈱ 村上部長 2
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
NEDOが関与することの意義
NEDOが関与することの意義
<事業の意義>
精密鋳造法
鋳造産業の競争力
維持・強化
CAE・I T活用
基盤技術向上
機械、製造過程の
省エネ化・効率化
○精密化
○生産性向上
○低コスト化
○開発期間の短縮
新製造技術
<NEDOが関与する意義>
鋳造業界→大半が中小企業
資金力、人的資源の問題
○鋳造シミュレーション技術
○物性値の関連計測技術
基礎的な
研究開発段階
平成15年11月28日
NEDOの関与
事後評価分科会
事業原簿P.1
3
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
実施の効果(費用対効果)
<開発費用>
4年間で約16億円
<効果>
【ソフト売上げ】
約10億円/6年間
【省エネ効果:原油換算】
2010年度 約 3.7万kL (約 7.2億円)
2020年度 約 7.5万kL (約14.6億円)
2030年度 約11.2万kL (約21.7億円)
原油価格として2002年の日本到着価格CIF平均19.4千円/kL(通関統計の平均値)を使用
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.1,2
4
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
事業の背景
<社会的背景>
精密鋳造技術に対する
ニーズの高度化
省エネ化・効率化
タービンブレード、エンジン等
<技術的背景>
コンピュータの飛躍的な向上
演算能力
データ容量
CAE、IT活用による
CAE、IT活用
製造技術革新
物性測定設備の存在
微小重力環境における
物性測定
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.2
5
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
事業の目的及び意義
<目的>
革新的鋳造シミュレーション技術の確立
<意義>
鋳造産業の
国際競争力向上
経験工学的な試行錯誤
による技術開発
我が国産業の振興
○産業機械
○航空機・自動車
○動力プラント
理論的な解析
による技術開発
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.2
6
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
事業の位置付け (Ⅰ)
<国の政策における位置付け>
○科学技術基本計画(2001年3月閣議決定)
における重点化分野である製造技術分野
○分野別推進戦略(2001年9月総合科学技術会議)
における重点分野である製造技術分野
新製造技術プログラム
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.3
7
Ⅰ.事業の位置付け・必要性について
事業の位置付け (Ⅱ)
<国内外の動向>
○Pro-CAST (米国)
開発元 : UES社 販売元 : 日本電子計算
○MAGMA (独国)
開発元 : MAGMA社 販売元 : 住商エレクトロニクス
○AnyCasting (韓国)
開発・販売元 : AnyCasting Co., Ltd
世界最高水準
高速・高精度
革新的鋳造シミュレーション
平成15年11月28日
事後評価分科会
高精度の物性値データ
豊富な検証実験データ
事業原簿P.3
8
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
事業の全体目標
超耐熱合金精密鋳造法
一般精密鋳造法
革新的鋳造シミュレーション技術
①湯流れ及び凝固過程のシミュレーション技術
②鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーション技術
③シミュレーションの基礎となる物性値等の関連測定技術
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.4
9
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
事業の詳細目標 (シミュレーションⅠ)
シミュレーション技術
曲面対応
湯流れ・凝固予測
プログラム
湯流れおよび凝固過程の
シミュレーション技術
サセプタ温度解析
プログラム
ガス考慮
湯流れ・凝固予測
プログラム
平成15年11月28日
評価項目
目 標
鋳型充満時間
誤差10%以下
鋳型及び溶湯温度
誤差5%以下
計算時間
24時間以内
鋳型温度
誤差5%以下
計算時間
5時間以内
鋳型充満時間
空隙部圧力
誤差10%以下
鋳型及び溶湯温度
誤差5%以下
計算時間
24時間以内
事後評価分科会
事業原簿P.4,7
10
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
事業の詳細目標 (シミュレーションⅡ)
シミュレーション技術
評価項目
目 標
単結晶化及び柱状晶化
予測確率80%以上
計算時間
35時間以内
発生位置と欠陥幅
誤差20%以下
計算時間
48時間以内
アルミニウム合金の
引け巣欠陥
予測プログラム
発生位置とポロシティ量
誤差15%以下
計算時間
12時間以内
球状黒鉛鋳鉄の
引け巣欠陥
予測プログラム
発生位置とポロシティ量
誤差15%以下
計算時間
12時間以内
組織形成
予測プログラム
チャンネル型偏析
予測プログラム
鋳造組織および欠陥生成
のシミュレーション技術
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.5,7
11
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
事業の詳細目標 (関連測定技術)
測定対象
物性値
目 標
液相線温度、固相線温度、潜熱、比熱
誤差3%以下
密度
誤差2%以下
固体熱伝導率、溶質分配係数
誤差10%以下
液体熱伝導率
誤差15%以下
表面張力、粘度
誤差5%以下
精密鋳造用アルミニウム合金
液相線温度、固相線温度、潜熱、
固体状態の密度、比熱、熱伝導率
誤差5%以下
精密鋳造用セラミックス鋳型
及びサセプタ
熱伝導率、比熱、密度、放射率
誤差10%以下
タービン翼用主要超合金
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.5,8
12
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
目標の設定理由
<シミュレーション技術>
現状の精度と計算時間
シミュレーションの
最終目標値
ユーザー希望
技術レベル
<物性値等の関連測定技術>
現状での測定値の有無、測定精度
関連測定技術の
最終目標値
シミュレーションの予測精度に求められる
物性値の精度
測定技術の難易度
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.6
13
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
プログラムの構成
物性値データ
CADデータ
CAE技術
<入力>
ユーザーフレンドリー
プリプロセッサ
<演算>
高速・高精度
・形状データ
・鋳物材料の物性値データ
・境界条件データ
凝固シミュレーション
凝固シミュレーション
プログラム
プログラム
ポス
スト
トプ
プロ
ロセ
セッ
ッサ
サ
ポ
湯流れシミュレーション
湯流れシミュレーション
プログラム
プログラム
温度分布、流れ速度分布
温度分布、流れ速度分布
圧力分布、充満時間
圧力分布、充満時間
温度分布、固相率分布、
温度分布、固相率分布、
ガス流れ場、固液共存域
ガス流れ場、固液共存域
鋳造組織シミュレーション
鋳造組織シミュレーション
プログラム
プログラム
結晶組織、
結晶組織、
核生成状況
核生成状況
欠陥生成シミュレーション
欠陥生成シミュレーション
プログラム
プログラム
引け巣欠陥
引け巣欠陥
チャンネル型偏析
チャンネル型偏析
IT技術
<出力>
ネットワーク上での
結果出力
世界初
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.11
14
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
開発予算
(当初)
(実績)
(当初)
(実績)
(当初)
(実績)
一般会計
特会エネ高
会計
総予算額
H11fy
145
139
270
249
415
389
平成15年11月28日
H12fy
163
157
243
228
406
386
H13fy
151
151
228
229
379
380
(単位:百万円)
H14fy
総額
117
575
126
574
202
943
202
908
318
1,518
328
1,482
事後評価分科会
事業原簿P.13
15
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
①湯流れ及び凝固過程のシミュレーションプログラム
湯流れ及び凝固過程のシミュレーションプログラム
超耐熱合金
精密鋳造用
曲面対応
湯流れ・凝固予測
プログラム
鋳込実験に
よる検証
X線による
直接観察
一般精密鋳造用
ガス考慮
湯流れ・凝固予測
プログラム
ふく射
ソルバ
サセプタ温度
解析ソルバ
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.13,14
16
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
② 鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラム
鋳造組織及び欠陥生成のシミュレーションプログラム
鋳造組織のシミュレー
ションプログラム
欠陥生成のシミュレー
ションプログラム
鋳込実験に
よる検証
超耐熱合金
精密鋳造用
超耐熱合金
精密鋳造用
一般精密
鋳造用
組 織形 成 予測プ
ログラム
チ ャン ネ ル型偏
析 予測 プ ログラ
ム
セルオートマトン法
直接差分法
平成15年11月28日
事後評価分科会
ア ルミ ニ ウム合
金 ・球 状 黒鉛鋳
鉄 の引 け 巣欠陥
予測プログラム
事業原簿P.15
17
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
③物性値等の関連測定技術
精密鋳造シミュレーション
開発した測定技術を用いた
材料物性値等のデータ測定
(耐熱金属、鋳型材料、他)
微小重力環境下で
の溶融金属の表面
張力等の測定技術
開発
平成15年11月28日
電磁浮遊法を用い
た溶融金属の熱伝
導率等の測定技術
開発
熱分析等各種分析
法による物性値等
の測定技術開発
事後評価分科会
多孔質鋳型材料 の物性値等の測 定技術開発
事業原簿P.16
18
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
実施体制
経済産業省
研究開発期間:
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)
H11~H14年度
技術推進委員会
技術推進委員会
参加研究員:123名
委託
集中研究
(財)素形材センター
共同研究
参加企業 :7社
総合調査
総合調査
研究委員会
研究委員会
共同研究
大阪大学 大学院工学研究科
(大中逸雄PL
(大中逸雄PL)
PL)
各種シミュレーションソルバの開発
大阪大学 接合科学研究所
(野城清SL
(野城清SL)
SL)
密度、比熱、熱伝導率、
表面張力、潜熱の測定
分 室
再委託
北海道大学 大学院工学研究科物質工学専攻
北海道大学 大学院工学研究科物質工学専攻
(工藤昌行教授:液相線温度および固相線温度、
(工藤昌行教授:液相線温度および固相線温度、
溶質分配係数等)
溶質分配係数等)
北海道大学 大学院工学研究科機械科学専攻
北海道大学 大学院工学研究科機械科学専攻
(工藤一彦教授:ふく射伝熱解析)
(工藤一彦教授:ふく射伝熱解析)
東北大学 工学部 金属工学専攻
東北大学 工学部 金属工学専攻
(佐藤譲助教授:粘度)
(佐藤譲助教授:粘度)
東京大学 大学院工学系研究科
東京大学 大学院工学系研究科
(鈴木俊夫教授:フェーズフィールド法の適用)
(鈴木俊夫教授:フェーズフィールド法の適用)
東京工業大学 大学院理工学系研究科
東京工業大学 大学院理工学系研究科
(永田和宏教授:熱伝導率)
(永田和宏教授:熱伝導率)
九州工業大学 工学部 物質工学科
九州工業大学 工学部 物質工学科
(向井楠宏教授:密度・表面張力)
(向井楠宏教授:密度・表面張力)
(財)宇宙環境利用推進センター
(財)宇宙環境利用推進センター
(微小重力環境を利用した物性値の測定)
(微小重力環境を利用した物性値の測定)
平成15年11月28日
クオリカ㈱(旧コマツソフト(株))
クオリカ㈱(旧コマツソフト(株))
(プリ及びポスト・プロセッサ)
(プリ及びポスト・プロセッサ)
石川島播磨重工業㈱
石川島播磨重工業㈱
(湯流れ直接観察、模擬翼検証実験)
(湯流れ直接観察、模擬翼検証実験)
㈱クボタ
㈱クボタ
(湯流れ直接観察、検証実験)
(湯流れ直接観察、検証実験)
川崎重工業㈱
川崎重工業㈱
(模擬翼の鋳造方案検討および検証実験)
(模擬翼の鋳造方案検討および検証実験)
㈱センシュー
㈱センシュー
(検証実験計画・指導)
(検証実験計画・指導)
㈱ヤマニシ
㈱ヤマニシ
(検証実験計画・指導)
(検証実験計画・指導)
石川島システムテクノロジー㈱
石川島システムテクノロジー㈱
(残留変形と応力解析)
(残留変形と応力解析)
事後評価分科会
事業原簿P.17,18
19
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
研究の運営管理
技術推進委員会の設置 (NEDO内)
外部有識者の意見を反映
外部有識者
研究の指導・調整
指導・調整
研究計画の原案作成
研究成果のとりまとめ
プロジェクトリーダーの選任
技術研究体の形成 (集中研)
シミュレーションGrと
測定技術Grの有機的結合
有機的結合
総合調査研究委員会の開催
外部有識者の指導・協力
最新技術の動向調査
動向調査
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.26
20
Ⅱ.研究開発マネージメントについて
情勢変化への対応
【平成11年度】
•
•
総合調査委員会4回:ソルバ開発と物性値測定の調整、ユーザの各種要望対応
総合調査委員会
海外研究動向調査
【平成12年度】
•
•
総合調査委員会7回:物性値仕様一覧作成、物性値の目標精度設定
物性値の目標精度設定
総合調査委員会
海外研究動向調査 :SIM2000国際会議にて研究発表、競合メーカの動向を調査
海外研究動向調査
【平成13年度】
•
•
総合調査委員会6回
総合調査委員会
ソルバ検証WG開催:ユーザのプリポス検証試験、各種機能のユーザ要望対応
ソルバ検証WG
【平成14年度】
•
•
•
総合調査委員会6回
総合調査委員会
ソルバ検証WG開催:ユーザデータ基づく検証、物性値データベース構築
ソルバ検証WG
海外研究動向調査 :第65回世界鋳物会議にて研究発表
世界鋳物会議にて研究発表(3件)、
海外研究動向調査
世界鋳物会議にて研究発表
競合メーカの動向調査
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.30
21
Ⅲ.研究開発成果について
実績 (シミュレーションⅠ)
シミュレーション技術
曲面対応
湯流れ・凝固予測
プログラム
湯流れおよび凝固過程の
シミュレーション技術
サセプタ温度解析
プログラム
ガス考慮
湯流れ・凝固予測
プログラム
平成15年11月28日
評価項目
目 標
鋳型充満時間
誤差10%以下
○
鋳型及び溶湯温度
誤差5%以下
○
計算時間
24時間以内
○
鋳型温度
誤差5%以下
○
計算時間
5時間以内
○
鋳型充満時間
空隙部圧力
誤差10%以下
○
鋳型及び溶湯温度
誤差5%以下
○
計算時間
24時間以内
○
事後評価分科会
実 績
事業原簿P.35,37
22
Ⅲ.研究開発成果について
実績 (シミュレーションⅡ)
シミュレーション技術
評価項目
目 標
実 績
単結晶化及び柱状晶化
予測確率80%以上
○
計算時間
35時間以内
○
発生位置と欠陥幅
誤差20%以下
○
計算時間
48時間以内
○
アルミニウム合金の
引け巣欠陥
予測プログラム
発生位置とポロシティ量
誤差15%以下
○
計算時間
12時間以内
○
球状黒鉛鋳鉄の
引け巣欠陥
予測プログラム
発生位置とポロシティ量
誤差15%以下
○
計算時間
12時間以内
○
組織形成
予測プログラム
チャンネル型偏析
予測プログラム
鋳造組織および欠陥生成
のシミュレーション技術
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.35,62
23
Ⅲ.研究開発成果について
実績 (関連測定技術)
測定対象
物性値
目 標
実 績
液相線温度、固相線温度、潜熱、比熱
誤差3%以下
○
密度
誤差2%以下
○
固体熱伝導率、溶質分配係数
誤差10%以下
○
液体熱伝導率
誤差15%以下
○
表面張力、粘度
誤差5%以下
○
精密鋳造用アルミニウム合金
液相線温度、固相線温度、潜熱、
固体状態の密度、比熱、熱伝導率
誤差5%以下
○
精密鋳造用セラミックス鋳型
及びサセプタ
熱伝導率、比熱、密度、放射率
誤差10%以下
○
タービン翼用主要超合金
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.36,105
24
Ⅳ.実用化、事業化の見通しについて
実用化、事業化の見通し
<シミュレーション技術>
著作権取得
○平成16年1月よりソフト販売開始
○販売予測 : 10億円/6年間(H15~H20年度)
<関連計測技術>
特許出願
○販売ソフトの物性値データ
○落下型高精度熱物性値測定装置
: 製造・販売企業を検討中
平成15年11月28日
事後評価分科会
事業原簿P.132
25
参考資料1
評価の実施方法
本評価は、「技術評価実施要領」
(平成 15 年 10 月制定)に基づいて研究評価を実
施する。「技術評価実施要領」は、以下の 2 つのガイドラインに定めるところによっ
て評価を実施することになっている。
総合科学技術会議にて取りまとめられた「国の研究開発評価に関する大綱的指
針」(平成 13 年 11 月内閣総理大臣決定)
経済産業省にて取りまとめられた「経済産業省技術評価指針」
(平成 14 年 4 月
経済産業省告示)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)における研究評価の
手順は、以下のように被評価プロジェクト毎に分科会を設置し、同分科会にて研究評
価を行い、評価報告書(案)を策定の上、研究評価委員会において確定している。
「NEDO 技術委員・技術委員会等規程」に基づき研究評価委員会を設置
研究評価委員会はその下に分科会を設置
国 民
評価結果公開
NEDO
理事長
評価結果の事業等への反映
推進部署
評価書報告
研究評価委員会
評価報告書(案)審議・確定
事務局
分科会A
研究評価部
分科会C
分科会B
分科会D
評価報告書(案)作成
プロジェクトの説明
図1.評価手順
参考資料 1-1
推進部署
実施者
1.評価の目的
評価の目的は「技術評価実施規程」において、
!
!
業務の高度化等の自己改革を促進する。
社会に対する説明責任を履行するとともに、経済・社会ニーズを取り込
む。
! 評価結果を資源配分に反映させ、資源の重点化及び業務の効率化を促進
する。
としている。
本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥当
性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検討・評
価した。
2.評価者
技術評価実施規程に基づき、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者から
なる委員会方式により評価を行う。分科会委員選定に当たっては以下の事項に配慮し
て行う。
! 科学技術全般に知見のある専門家、有識者
! 当該研究開発の分野の知見を有する専門家
!
研究開発マネジメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニーズ
関連の専門家、有識者
! 産業界の専門家、有識者
また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象から除外
し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面にかんがみ、事前評価に関与してい
ない者を主体とすることとしている。
これらに基づき、分科会委員名簿にある5名が選任した。
なお、本分科会の事務局については、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開
発機構研究評価部が担当した。
3.評価対象
平成 11年度に開始された「革新的鋳造シミュレーション技術」プロジェクトを評
価対象とした。
なお、分科会においては、当該事業の推進部室である独立行政法人新エネルギー・
産業技術総合開発機構 ナノテクノロジー・材料技術開発部及び研究実施者から提出
された事業原簿、プロジェクトの内容、成果に関する資料をもって評価した。
参考資料 1-2
4.評価方法
分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、それ
を踏まえた分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施者側等と
の議論等により評価作業を進めた。
なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認められ
る場合等を除き、原則として分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換する形で審
議を行うこととした。
5.評価項目、評価基準
分科会(H15.11)においては、次に掲げる「評価項目・評価基準」で評価を
行った。これは、研究評価委員会による『各分科会における評価項目・評価基準は、
被評価プロジェクトの性格、中間・事後評価の別等に応じて、各分科会において判断
すべきものである。』との考え方に従い、第1回分科会において、事務局が、評価委
員会により示された「標準的評価項目・評価基準」(参考資料1−7頁参照)をもと
に改訂案を提示し、承認されたものである。
プロジェクト全体に係わる評価においては、主に事業の目的、計画、運営、達成度、
成果の意義や実用化への見通し等について評価した。各個別テーマに係る評価につい
ては、主にその目標に対する達成度等について評価した。
参考資料 1-3
評価項目・評価基準
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
各論、個別テーマの評価を踏まえ総合的に
1)総合評価
判断する
2)今後に対する提言
1.2 各論
1)事業の位置付け・必要性について
(1)NEDOの事業としての妥当性
・特定の施策(プログラム)、制度の下で実施する事業の場合、当該施策・制度の
選定基準等に適合しているか。
・民間活動のみでは改善できないものであること、又は公共性が高いことにより、
NEDOの関与が必要とされる事業か。
・当該事業を実施することによりもたらされる効果が、投じた予算との比較にお
いて十分であるか(知的基盤・標準整備等のための研究開発の場合を除く)。
(注)独立行政法人化後においては、NEDOの中期目標・中期計画に適合して
いるかについても評価する。
(2)事業目的の妥当性
・社会的・経済的背景及び研究開発の動向から見て、事業の目的は妥当か。
2)研究開発マネジメントについて
(1)研究開発目標の妥当性
・技術動向調査等に基づき、戦略的な目標が設定されているか。
・目標達成のために、具体的かつ明確な開発目標を設定しているか。
・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
(2)研究開発計画の妥当性
・目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を含
む)となっているか。
・目標達成に必要な要素技術を取り上げているか。
・研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。
・継続プロジェクトや長期プロジェクトの場合、技術蓄積を、実用化の観点から
絞り込んだうえで活用が図られているか。
参考資料 1-4
(3)研究開発実施者の事業体制の妥当性
・目標を達成する上で、事業体制は適切なものか。
・各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか。
・全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる環境が
整備されているか
・目標達成及び効率的実施のために必要な、実施者間の連携 and/or 競争が十分
に行われる体制となっているか。
・実用化シナリオに基づき、成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に対し
て、成果を普及し関与を求める体制を整えているか。
(4)情勢変化への対応等
・進捗状況を常に把握し、計画見直しを適切に実施しているか。
・社会・経済の情勢の変化及び政策・技術動向に機敏かつ適切に対応しているか。
・計画見直しの方針は一貫しているか(中途半端な計画見直しが研究方針の揺ら
ぎとなっていないか)。
3)研究開発成果について
(1)目標の達成度
・成果は目標値をクリアしているか。
・全体としての目標達成はどの程度か。
(2)成果の意義
・成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。
・成果は、世界初あるいは世界最高水準か。
・成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。
・成果は汎用性があるか。
・投入された予算に見合った成果が得られているか。
(3)特許の取得
・特許等(特許、著作権等)は事業戦略に沿って適切に出願されているか。
・外国での積極的活用が想定される場合、外国の特許を取得するための国際出願
が適切にされているか。
(4)論文発表・成果の普及
・論文の発表は、質・量ともに十分か。
・成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に対して、適切に成果を普及して
いるか。
・一般に向けて広く情報発信をしているか。
参考資料 1-5
4)実用化、事業化の見通しについて
(1)成果の実用化可能性
・産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。
(2)波及効果
・成果は関連分野への技術的波及効果及び経済的波及効果を期待できるものか。
・プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果を生
じているか。
(3)事業化までのシナリオ
・コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果等
の見通しは立っているか。
2.個別テーマに関する評価
1)成果、実用化に関する評価、今後に対する提言等
評価基準は各論に同じ
参考資料 1-6
標準的評価項目・評価基準
【本標準的項目・基準の位置付け(基本的考え方)】
本項目・基準は、研究開発プロジェクトの中間・事後評価における標準的な
評価の視点の例であり、各分科会における評価項目・評価基準は、被評価プロ
ジェクトの性格、中間・事後評価の別等に応じて、各分科会において判断すべ
きものである。
なお、短期間(3年以下)又は少額(予算総額 10 億円未満)のプロジェクト
に係る事後評価については、以下の「3.」及び「4.」を主たる視点として、
より簡素な評価項目・評価基準を別途設定して評価をすることができるものと
する。
1.事業の位置付け・必要性について
(1)NEDOの事業としての妥当性
・特定の施策(プログラム)、制度の下で実施する事業の場合、当該施策・制
度の選定基準等に適合しているか。
・民間活動のみでは改善できないものであること、又は公共性が高いことに
より、NEDOの関与が必要とされる事業か。
・当該事業を実施することによりもたらされる効果が、投じた予算との比較
において十分であるか(知的基盤・標準整備等のための研究開発の場合を
除く)。
(注)独立行政法人化後においては、NEDOの中期目標・中期計画に適合
しているかについても評価する。
(2)事業目的の妥当性
・社会的・経済的背景及び研究開発の動向から見て、事業の目的は妥当か。
2.研究開発マネジメントについて
(1)研究開発目標の妥当性
・技術動向調査等に基づき、戦略的な目標が設定されているか。
・目標達成のために、具体的かつ明確な開発目標を設定しているか。
・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
参考資料 1-7
(2)研究開発計画の妥当性
・目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分
を含む)となっているか。
・目標達成に必要な要素技術を取り上げているか。
・研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。
・継続プロジェクトや長期プロジェクトの場合、技術蓄積を、実用化の観点
から絞り込んだうえで活用が図られているか。
(3)研究開発実施者の事業体制の妥当性
・目標を達成する上で、事業体制は適切なものか。
・各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか。
・全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる環
境が整備されているか
・目標達成及び効率的実施のために必要な、実施者間の連携 and/or 競争が
十分に行われる体制となっているか。
・実用化シナリオに基づき、成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に
対して、成果を普及し関与を求める体制を整えているか。
(4)情勢変化への対応等
・進捗状況を常に把握し、計画見直しを適切に実施しているか。
・社会・経済の情勢の変化及び政策・技術動向に機敏かつ適切に対応してい
るか。
・計画見直しの方針は一貫しているか(中途半端な計画見直しが研究方針の
揺らぎとなっていないか)。
3.研究開発成果について
(1)目標の達成度
・成果は目標値をクリアしているか。
・全体としての目標達成はどの程度か。
(2)成果の意義
・成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。
・成果は、世界初あるいは世界最高水準か。
・成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。
・成果は汎用性があるか。
・投入された予算に見合った成果が得られているか。
参考資料 1-8
(3)特許の取得
・特許等(特許、著作権等)は事業戦略に沿って適切に出願されているか。
・外国での積極的活用が想定される場合、外国の特許を取得するための国際
出願が適切にされているか。
(4)論文発表・成果の普及
・論文の発表は、質・量ともに十分か。
・成果の受け取り手(活用・実用化の想定者)に対して、適切に成果を
普及しているか。
・一般に向けて広く情報発信をしているか。
4.実用化、事業化の見通しについて
(1)成果の実用化可能性
・産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。
(2)波及効果
・成果は関連分野への技術的波及効果及び経済的波及効果を期待できるもの
か。
・プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果
を生じているか。
(3)事業化までのシナリオ
・コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効
果等の見通しは立っているか。
5.その他
知的基盤・標準整備等のための研究開発に特有の評価項目
・成果の公共性を担保するための措置、或いは普及方策を講じているのか(J
IS化、国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広報は積
極的に為されているか等)
。
・公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。
・公共性は実際にあるか。見込みはあるか。
参考資料 1-9
参考資料2
評価に係る実施者意見
研究評価委員会(分科会)は、評価結果を確定するに当たり、あらかじめ当該実施
者に対して評価結果を示し、その内容が、事実関係から正確性を欠くなどの意見があ
る場合に、補足説明、反論などの意見を求めた。技術評価委員会(分科会)では、意
見があったものに対してその内容を検討し、必要に応じて評価結果を修正の上、最終
的な評価結果を確定した。
以下に最終的な評価結果と、評価(下線部分)に対する実施者意見の中で評価結果
に反映されなかった意見及びそれに対する評価委員の見解を示す。
評価に対する実施者意見
【評価結果 1.1 総論 1)総合評価】
鋳造品は多くの産業機械の主要部品として利用
されているが、我が国の鋳造業は中国等の追い
上げや先進国の IT 活用による技術の高度化に対
して十分な競争力を維持し難くなっている状況
にある。また、鋳造業は中小企業が多数を占め
ることから、今回、NEDO の支援は適切と判断
される。
加えて物性値の測定という従来あまり顧みら
れなかった分野にも支援の手を伸ばしたこと
が、プロジェクト全体のバランスを大変良くし
ていたと考える。
シミュレーションプロクラムの開発では、内
容の面でも「ガス圧を考慮したシミュレーショ
ン」や「球状黒鉛鋳鉄における引け巣予測」な
どはその成果が業界にとって非常に重要なもの
で本成果をブラシュアップすることにより十
分、実用化・事業化しうると判断される。
しかし、シミュレーション、物性値研究の[1]
相互の関連・連携に関しては不十分な面があっ
た。必要とされる諸物性の高精度データベース
の作成やソフトの利用しやすさ向上等を含め、
プロジェクトチーム全体の共同体制を構築して
おくべきではなかったか。
また、物性値測定は純粋系に関するものが多
く、一般的な鋳造合金、特に鋳鉄には適用でき
ない。一般的な鋳造合金について、シミュレー
ションの精度向上の観点から従来よりも精密値
を必要とする物性値を明確化し、データをとっ
参考資料 2-1
評価委員の見解
ておくべきではなかっただろうか。
【実施者意見】
[1]本プロジェクトは、当初は産業科学技
術研究開発制度の「大学連携型」プロジェクト
であり、学術的成果も期待されておりました。
さらに、成果は、完成された商品ではなく、プ
ロトタイプです。このことをご考慮の上、評価
をお願いいたします。
【理由】
[1]大中教授を委員長、野城教授を副委員
長、中小企業を含むユーザ企業、シミュレーシ
ョン開発者、物性値開発者等の委員よりなる総
合調査研究委員会を設け、委員会を4∼7回/
【評価委員見解】
「実施者意見」、「指摘」の内容
は理解するが、実際に得られた
成果を判断して、評価者が感じ
たことを示したものである。
シミュレーションプログラム
開発、物性値計測技術開発それ
ぞれが成果を出しているが、物
性値の精度向上がどの程度シミ
ュレーション精度向上に寄与し
たかが不明等の問題がある。
相互連携改善でより良い成果
年開催し、ユーザ意見の開発への反映、シミュ を出せた可能性があるため、内
レーショングループと物性値グループの調整、 容変更しない。
進捗状況の報告と結果の検討、海外技術調査報
告等を行い、プロジェクト全体の方向付けと相
互の連携・調整を行っています。
【評価結果 1.1 総論 2)今後の提言に
ついて】
素形材分野は,日本の経済を担う重要な産業
分野であり,今後とも,素形材分野への支援が
望まれる。特に、鋳造は,ロケットから自動車,
家電まで幅広い産業分野での中心的素形材であ
る。今後は,鋳造 CAE(コンピュータ支援エン
ジニアリング)をさらに発展させた鋳造 CAO
(最適設計支援技術)などへの支援などを期待
する。
[2]今回のプロジェクトでは、シミュレーシ
ョン技術開発と、基礎研究的な物性値測定の両
者がより同期された形での運営がなされる必要
があったと考える。今後、本プロジェクトの様
な基礎研究と実用技術が両輪となった開発の実
施の際には、両者の連携体制が強化される必要
がある。
また、プロジェクトにおいて得られた物性値
データをシミュレーションソフトウェアから利
参考資料 2-2
用しやすい形でデータベース化することも重要
である。
[3]今回のプロジェクト成果である、シミュ
レーションプログラムは、誰でも(たとえば競
合国も)使う事が出来るツールとなっている。
市場拡大のために、多くのユーザー獲得が必要
ではあるが、
「日本の産業振興」を目的として取
り組んだ研究であり、
「どのようにして成果を日
本企業が優先的に享受するしくみを作るか」が
重要な課題になると思慮する。
【実施者意見】
[2]当初は産業科学技術研究開発制度の「大
学連携型」プロジェクトであり、学術的配慮も
必要でした。純粋系から実用合金の物性値を推
定できるように将来なることを期待して、純粋
系を測定しています.実用合金も前述のように
ある程度測定しています.なお、液相状態や固
液共存状態での測定は極めて困難あるいは費用
がかかることから今回のプロジェクトでは、時
間的、費用的にこの程度しかできなかったとい
うことです。
【理由】
[2]総合調査研究委員会を通じて、シミュレ
ーション技術開発と物性値測定の両者を同期さ
せて運営しています。
【評価委員見解】
シミュレーションプログラム
開発(実用技術)、物性値計測技
術開発(基礎研究)それぞれが
成果を出している。
しかしながら、総合評価に対
する実施者意見に対するコメン
トで述べた様に、相互連携改善
でより良い成果を出せた可能性
がある。
今後の同様なプロジェクトへ
の提言として残すべきなので、
変更は行わない。
【実施者意見・理由】
[3]当面は、日本語バージョンです.また、
海外に販売する場合は、より高価になりますし、
技術サービスや相談は容易ではありません.さ
らに、将来海外へ販売が可能となっても、それ
までに、かなりの改善がなされ、海外は常に遅
れたソフトの利用になります.また、開発組織
が日本にあり、迅速かつより低コストでカスタ
ム化が可能です.
現に、海外のソフトを中小企業で使用している
企業は極めて限られています.
【評価委員見解】
確かに、言語の面では、日本
語の理解できるオペレータが必
要という制約があるが、ハード
の面では汎用パソコンが使える
ことを目標として開発をすす
め、達成している。
したがって要旨内容の変更は
必要ないと考える。
参考資料 2-3
【評価結果 1.2 各論 2)研究開発マネジ
メントについて】
世界の技術動向の調査結果に基づいて具体的
な目標が設定されており、研究開発の体制およ
びスケジュールも含めて、研究計画の内容は妥
当である。一口に鋳造といっても、それぞれの
鋳造法毎に強化すべき技術課題は異なるため、
鋳造技術すべてをカバーする様な目標設定は焦
点が絞りきれない問題がある。
[4]耐熱合金鋳
造用精密鋳造に的を絞ったのなら、その分野で
世界のトップレベルの成果を得るように目標設
定するへきであった。革新的鋳造シミュレーシ
ョンプログラム作成のために、鋳造シミュレー
ション研究者とシミュレーションに必要な物性
値測定の専門家が共同研究体制をとったことは
妥当である。シミュレーショングループと物性
値測定グループに分けて、それぞれ主体的に研
究を展開したことは、両分野で新たな知見・開
発 を 得 る 上 で有 効で あった と評 価で きる が、
[5]2つのサブテーマ間の連携が十分になさ
れておらず、物性値グループにより測定された
物性値がシミュレーショングループにより速や
かに活用されるような研究マネジメントを目指
すべきであったと考える。
【実施者意見・理由】
[4]耐熱合金鋳造用精密鋳造に的を絞った場
合、それを利用する企業数は極めて少なく、日
本の鋳造業の国際競争力競争への寄与は大幅に
減少します。
参考資料 2-4
【評価委員見解】
事業原簿の概要「0.事業の概要」
に超耐熱合金精密鋳造法のシミ
ュレーションプログラムの開発
を行う事が明記されており一般
鋳造法とともにトップレベルの
成果を得る様に目標設定すべき
であったのではないか。
実施者意見により要旨を変更
する事は出来ない。
【実施者意見・理由】
[5]大中教授を委員長、野城教授を副委員長、
中小企業を含むユーザ企業、シミュレーション
開発者、物性値開発者等の委員よりなる総合調
査研究委員会を設け、委員会を4∼7回/年開
催し、ユーザ意見の開発への反映、シミュレー
ショングループと物性値グループの調整、進捗
状況の報告と結果の検討、海外技術調査報告等
を行い、プロジェクト全体の方向付けと相互の
連携・調整を行っています。又、物性値グルー
プからの測定データは、総合調査研究委員会等
を通じて入手し、その都度活用しています。
【評価委員見解】
シミュレーションプログラム
開発(実用技術)、物性値計測技
術開発(基礎研究)それぞれが
成果を出している。
しかしながら、総合評価に対
する実施者意見に対するコメン
トで述べた様に、相互連携改善
でより良い成果を出せた可能性
がある。
今後の同様なプロジェクトへ
の提言として残すべきなので、
変更は行わない。
【評価結果 1.2 各論 4)実用化、事業
化の見通しについて】
シミュレーションソフトウェアに関しては本
プロジェクトの成果に基づき今後の実用化、事
業化が期待される。また物性値関連技術に関し
ては、本プロジェクトの成果に基づく測定装置
の実用化の計画が提示されていることは評価さ
れる。特にシミュレーションに関しては、アル
ミニウム合金、球状黒鉛鋳鉄の引け巣欠陥発生
など鋳造における重要課題について、またガス
圧を考慮したシミュレーション等、従来にない
合理的なソフトの開発がなされており、実用化、
事業化の可能性は高い。
なお[6]精密鋳造法に関しては、実用化予
定が遅く,加えてさらなる投資・ボランティア
が必要との結果は,本プロジェクトが設定した
目標から考えると問題である。
【実施者意見・理由】
[6]鋳造産業の国際競争力向上のためには、
超耐熱合金精密鋳造法より、一般精密鋳造法及
びその他の鋳造法の方がより重要であると考え
ます。
参考資料 2-5
【評価委員見解】
事業原簿の概要「0.事業の概要」
に一般精密鋳造法および超耐熱
合金精密鋳造法のシミュレーシ
ョンプログラムの開発を行う事
が明記されており、実施者意見
により要旨を変更する事は出来
ない
【個別テーマに関する評価 2.1 シミュレ
ーションプログラムの開発評価】
X 線による湯流れ、ガス巻き込みを直接観察
し、シミュレーション計算結果と比較・検証す
るシステムを構築したことは、新たな研究開発
技術として高く評価できる。ガスを考慮した湯
流れ、ガス巻き込み欠陥の予測法、球状黒鉛鋳
鉄鋳物の引け巣や変形などに関するシミュレー
ションは、新規性があり、工業的にも重要な課
題であるので、実用化の可能性は高い。
[7]ただし、精密鋳造法に対する目標設定は,
市場調査も含めて不十分であったと判断する.
得られた成果は,現時点での世界トップレベル
にあるとは思えない.
また、解析対象とした現象に関して、物性値
の精度がシミュレーション結果にどのように影
響するかを明示することが望まれる。
なお、実用化に際しては、ユーザーの利用し
やすさを考慮に入れる必要がある。
【実施者意見】
[7]目標については、日本の代表的精密鋳
造メーカー等の業界の意見をアンケートで調べ
て決定したものです。計算速度等の水準は現時
点ではそうかも知れませんが、これは、プロト
タイプであることにもよります.商品化した場
合に比較しないと分からないと思います。
参考資料 2-6
【評価委員見解】
実施者の「指摘」は、Ni基
超合金よりも一般鋳造品(Al
等)が重要との認識に立ってい
るが、当初の事業目標には、は
超合金に関する研究開発が主要
テーマのように記載されている
と思われる。
こうした点から、
「超合金の開発
が中心であるべき」との観点か
ら、評価したもの。
要旨の変更は行わない。
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