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FCRAM の携帯電話ソリューション モバイルFCRAM ファミリ
技術解説 R FCRAM の携帯電話ソリューション モバイルFCRAM ファミリ R FCRAM R コアをベースに携帯電話用途向けRAMとして開発された モバイルFCRAM R が,SRAMの代替ソリューションとして携帯端末 市場で脚光を浴びています。本稿では,携帯端末市場における当 社モバイルFCRAM R のメモリソリューションについて解説します。 はじめに 近年,先進国において携帯電話は急速に普及しています。とり わけ日本市場における携帯端末機では,通話機能に加え,電子 メールやインターネット,音楽配信対応などさまざまな機能が付加さ れ,単なる電話から携帯情報端末へと進化しています。今後もま すます高機能化することが予想されており,搭載されるメモリにも 大容量化が求められています。 これまで携帯電話には,フラッシュメモリと低消費電力型SRAM の2種類のメモリが搭載されていましたが,要求される容量に対し てSRAMの大容量化が追いつかないのが実情です。 写真1 チップ16M(MB82D01161) このような携帯電話に要求される低消費電力型SRAMの代替と して,当社は独自開発の高速・低消費電力メモリFCRAMをコア に,携帯電話向けRAMとしては世界最大容量の16Mビット/32M ビットモバイルFCRAMを,2000年6月/2001年8月よりそれぞれ 量産・出荷しています。これらの製品は,携帯電話用のRAM標準 メモリインタフェースである非同期SRAM型インタフェースを採用して いるため,システム設計者は従来のシステム構成を変更することな く搭載でき,すでに多くの携帯端末機でご使用いただいています。 市場トレンド 日本市場で現在市販されている携帯電話は,PDC方式や 写真2 チップ16M(MB82D01171A) cdmaOne方式などの2.5世代と呼ばれるものです。2.5世代では, Web閲覧やデジタルカメラ内蔵,Javaアプリケーション対応などの機 種が登場しており,サーバにアクセスしてプログラムをダウンロードし 実行したり,内蔵デジタルカメラで写真を撮ってメールを送ることな どが可能です。その際に大量のデータを処理するため,急速にシ ステムの高性能化が進んでおり,搭載するメモリは大容量化・高性 能 化が 要 求されています 。また, 今 後 登 場が 期 待されるW CDMA方式やcdma2000方式の第3世代では,この傾向がさらに 加速すると考えられます。 8 FIND Vol.19 No.6 2001 モバイルFCRAM R ファミリ 図1に携帯電話のメモリ容量の推移,図2にCPU動作周波数 とRAMスピード要求の推移を示します。 メモリシステム構成 携帯電話のメモリシステムの構成についてご説明します。図3に 携帯電話におけるメモリシステムの構成推移を示します。 これまでの携帯電話は,ベースバンド部ですべての処理が行わ れていました。基本的に動作に必要となる,プログラムコードや文 字キャラクタなどすべてのデータはフラッシュメモリに格納されてい 写真3 チップ32M(MB82D02172) て,SRAMはワークメモリ(CPUの作業領域)としての用途,お 図1 携帯電話メモリ容量の推移 F :Flash FC :モバイルFCRAM S :SRAM 動画再生 インターネット強化 +Java対応 カラー液晶 高機能化 128-192MF +32-48MFC +8-16MS インターネット対応 (ブラウザ) 96-128MF+ 16MFC+4-8MS 3G 48-64MF +8-12MS PDC 32MF+8MS J-CDMA 32MF+4MS GSM 64-96MF+8MS 192-256MF +128-256MFC +8-16MS 128-192MF +32-64MFC +8-16MS 64-128MF +32-64MFC +4-8MS 48-64MF +8MS 32-64MF+8MS 16-32MF+2MS 大容量 32MF+4MS 16MF+2MS 1999 2000 2001 2002 2003 図2 CPU動作周波数とRAMスピード要求の推移 >66 MHz 50 MHz 32ビットバス品 20-33 MHz PDC J-CDMA 2001 70 ns以下や ページモード品 20 MHz 10-12 MHz Vol.19 No.6 >33 MHz 33-50 MHz 3G FIND 同期型アクセス 8-10 MHz 12 MHz 8 MHz 100 ns品でOK 1999 2000 85 ns品 2001 2002 2003 9 モバイルFCRAM R ファミリ 図3 メモリシステム構成の推移 MCP ベースバンド CPU MCP-1 ベースバンド CPU Flash SRAM MCP-2 Flash Flash SRAM モバイル FCRAM 従来の構成#1 従来の構成#2 MCP-1 ベースバンド CPU Flash モバイル FCRAM SRAM アプリ ケーション CPU データバスは変型32ビット アドレスバスはMCP-1の ROM領域の一部を共有 MCP-2a MCP-2b Flash モバイル FCRAM モバイル FCRAM Flash データバス(上位16ビット) データバス(下位16ビット) 2CPU構成 よびバックアップデータの格納用途として使用されていました。しか 図4 メモリ用途の住み分け し,前述のように高性能化・多機能化に伴って必要なメモリ容量が 急増した結果,今までSRAMのみでカバーされていたワークメモリ に,当社が提案するモバイルFCRAMが採用され始めました。そ して現在,SRAMはデータバックアップ用として,FCRAMはワー フラッシュメモリ ク用として使用することが定着しています(図4)。 またごく最近では,ベースバンド部(データ通信プロトコルや電話と しての基本的な機能を処理する部分)とアプリケーション部(ベース プログラム・コード および キャラクタデータ バンド機能以外の,Javaなどのアプリケーションを処理・実行する部分) フラッシュメモリ 容量増加要求に 沿ってフラッシュ メモリの集積度 も向上 プログラム・コード キャラクタデータ 容量の増加 モバイル FCRAM に分けて,それぞれにCPUを持たせる構成も採用されつつあります。 SRAM 製品概要 現在モバイルFCRAMは,16Mビットを2品種,32Mビットを1 ワークメモリ (CPU作業領域) および データバックアップ 品種の計3品種を量産中です。 16Mビット第1世代品:MB82D01161 従来構成 ワークメモリ (CPU作業領域) 容量増加要求に SRAMの集積度 向上が追いつか ない状況。 FCRAMの登場 により,使途別 にSRAMとの住 み分けが定着化。 SRAM データバックアップ モバイルFCRAMを 採用した構成 16Mビット第2世代品:MB82D01171A 32Mビット第1世代品:MB82D02172 これらのモバイルFCRAMには次のような特長があります。 ・非同期SRAMインタフェース採用 ・×16 ・スタックMCP(別型格) 表1に各製品の主要特性を示します。 I/O構成 ・動作電源電圧:2.3V∼2.7V 2.7V∼3.1V パッケージ 3.1V∼3.5V(16Mビット単体パッケージ品 のみ対応) ・動作温度範囲:−25∼+85℃ (16Mビット単体パッケージ品は−30∼+85℃) ・パワーダウン機能搭載 MB82D01161とMB82D01171Aは,48ピンFBGAタイプでフラッシュ メモリピン互換とSRAMピン互換のパッケージをサポートしています。 図5にピン配置を示します。MB82D02172は,フラッシュメモリと の組合せMCPのみサポートしています。 ・48ピンFBGAパッケージ(16Mビットのみ) 10 FIND Vol.19 No.6 2001 モバイルFCRAM R ファミリ 要しました。しかし今回追加したNAPモードでは,パワーダウンか パワーダウンモード らの復帰時間を1μsに高速化しています。また,従来のSLEEP モードではメモリ内のすべての領域をデータ非保持としていましたが, モバイルFCRAMは,当社が提案する新機能であるパワーダウン Partialモードでは8Mビットの領域をデータ保持し,残りの24Mビッ 機能をサポートしています。この機能は従来のSRAMにはありません。 トはデータ非保持とするブロック選択が可能となりました。前述の通 前述したように,現在モバイルFCRAMは主にCPUのワークメモ り,これまではデータのバックアップにはLow Power SRAMを,ワ リとして使用されています。このワークメモリ内に格納されるデータ ークにはモバイルFCRAMを使い分けていましたが,このパーシャ は,CPUの作業終了後はデータ保持が不用です。この点に着目 ルパワーダウン機能により,SRAMの役割をモバイルFCRAMに取 し,待機時のデータ保持を行わないことで消費電流を軽減しました。 り込んでSRAMをなくすことも可能です(図7)。 表2にMB82D02172のパワーダウン時の電流規格値を示しま 本機能は,携帯電話でキーとなるバッテリーライフの向上に貢献し ています。 す。これらの新機能はすべてユーザーオプションであり,使用時の パワーダウンモードへのエントリとイグジットは,CE2ピンによりコント 電源投入後に設定が可能です。 ロールされます。 図6に,パワーダウンモード時の詳細 タイミングを示します。 表1 主要特性 さらに,32Mビット品では次のようにパ MB82D01161 項 目 ワーダウン機能の拡充を図りました。 ・SLEEP(スリープ): 従来のパワーダウンモード ・NAP(ナップ): パワーダウンモードからの高速復帰が可能 tRC(最小) ライトサイクルタイム tWC(最小) /CEアクセスタイム tCE(最大) 動作電流 IDDA(最大) ・Partial(パーシャル): 8Mビット分のデータを保持 IDDS1 (最大) スタンバイ電流 従来16Mビット品でサポートしているパ IDDP (最大) パワーダウン電流 −90 −80 −85 MB82D02172 −90 −85 −90 90ns 85ns 90ns 90 90 85ns 90ns 80ns 20mA 85ns 20ms ノーマルバージョン 200μA Lバージョン 100μA ── LLバージョン ワーダウンモード(SLEEPモード)では, パワーダウンからの復帰時間に350μsを −85 リードサイクルタイム MB82D01171A 30mA 70μA ── 20μA ノーマルバージョン Lバージョン 30μA 10μA 図5 端子配列 ・Flash互換型 1 ・SRAM互換型 2 3 4 5 6 A4 A17 /UB CE2 A8 A12 A3 A7 /LB /WE A9 A13 3 4 5 6 /LB /OE A0 A1 A2 CE2 DQ9 /UB A3 A4 /CE1 DQ1 DQ10 DQ11 A5 A6 DQ2 DQ3 VSS DQ12 A17 A7 DQ4 VDD VDD DQ13 NC A16 DQ5 VSS DQ15 DQ14 A14 A15 DQ6 DQ7 DQ16 A19 A12 A13 /WE DQ8 A18 A8 A9 A10 A11 NC C C A2 A6 A18 NC A10 A14 A1 A5 NC A19 A11 A15 D D E E A0 DQ1 DQ3 DQ6 DQ8 A16 F F /CE1 DQ9 DQ11 DQ13 DQ15 NC G G /OE DQ10 DQ12 VDD DQ14 DQ16 H H VSS DQ2 DQ4 DQ5 DQ7 VSS 48ピン FBGA 6×9 mm,0.8 mm ボールピッチ Vol.19 No.6 2 B B FIND 1 A A 2001 48ピン FBGA 6×9 mm,0.75 mm ボールピッチ 11 モバイルFCRAM R ファミリ 図6 パワーダウンモード時のタイミング /CE1 tCHS CE2 tCSP tC2LP DQ tCHH High-Z パワーダウン エントリ パワーダウンモード パワーダウンイグジット 今後の展開 図8に,モバイルFCRAMの今後の製品展開を示します。 図7 SRAMの役割をモバイルFCRAMに取り込む 今後の製品展開におけるキーポイントは,①大容量化 ②高速化 ③低電圧化です。当社ではこれらを踏まえ,64Mビット品の開発, アクセスタイムの高速化,ページモードのサポート,消費電流の低 モバイル FCRAM 減,動作電源1.8V品等の開発を検討しています。 32Mビット モバイルFCRAM 当社は今後とも,アプリケーションニーズにマッチしたより良いメモ リソリューションをご提案・ご提供してまいります。 16 Mビット ■ 24 Mビット (ワークメモリ) (ワークメモリ) *FCRAMは富士通株式会社の登録商標です。 表2 32MビットモバイルFCRAMのパワーダウン時の電流規格値 ノーマルバージョン Lバージョン VDD パワーダウン電流 ノーマルバージョン Lバージョン ノーマルバージョン Lバージョン SRAM 8 Mビット IDDPS (SLEEP) 30 μA 10 μA 4 Mビット IDDPN (NAP) 100 μA (バックアップ) 60 μA IDDP8 (8M Partial) 150 μA 70 μA (バックアップ) 図8 今後のモバイルFCRAM製品展開 軟に対応 進化に柔 の 携帯電話 モバイル 64 Mb 製品展開 さらに CRAMを F 32 Mb 16 Mb 2nd 16 Mb 2nd 32 Mb 3rd 16 Mb 大容量化 高速化 低消費電力化 低電圧化 2000 2001 2002 2003 当社フラッシュメモリと共に携帯電話向けトータルメモリソリューションを提供 12 FIND Vol.19 No.6 2001