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次世代個体識別システム実用化事業

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次世代個体識別システム実用化事業
日本中央競馬会特別
振興資金助成事業
畜産振興助成事業
先端技術を活用した畜産技術研究開発推進事業
畜産先端技術を用いた BSE 対策技術開発実用化事業
(うち次世代個体識別システム実用化事業)
平成 15~17 年度
事業報告書
平成 18 年3月
社団
法人
畜 産 技 術 協 会
目
次
はじめに
1.事業の概要と実施経過
畜産先端技術を用いたBSE対策技術開発実用化事業
(うち次世代個体識別システム実用化事業)の概要 ............................ 1
事業実施の経過....................................................................... 2
2.電子耳標をとりまく情勢について
(1) 国際的な情勢
.......................................................................
5
(2) 国内の情勢 ............................................................................ 8
3.電子耳標実証試験
(1) 電子耳標の装着及びデータ読み取り試験 ......................................... 11
(2) データ収集・管理試験............................................................... 33
4.成果のとりまとめと活用について
(1) 耳標の特性と利用 .................................................................... 51
(2) データ収集のための整備(アンテナ特性と場所等その他) .................... 51
(3) その他の活用 ......................................................................... 52
(4) データ収集・管理システムの開発及び現地実証試験 ............................ 52
参考資料
オーストラリアにおける牛の電子標識による
個体識別システムに関する実態調査報告(概要) ....................................... 54
は
じ
め
に
社団法人畜産技術協会では、平成15年度から平成17年度までの3ヵ年事業として、JRA日本中
央競馬会特別振興資金事業により財団法人全国競馬・畜産振興会からの助成を受けて「先端技術
を活用した畜産技術研究開発推進事業(畜産先端技術を用いたBSE対策技術開発実用化事業)
」を
実施し、その中の「次世代家畜個体識別システム実用化事業」において、将来の家畜個体識別技
術として期待される電子耳標について、これをわが国で導入する場合の技術的課題の検討を行い
ました。
本書には、3年間にわたる事業の実施、実証試験の成績、成果の活用を総括的に取りまとめま
した。
さらに別途、家畜の個体識別について解説的に記述した「家畜の次世代個体識別に向けて」を
作成しました。
なお、当協会は、平成5年1月以降ISO(国際標準化機構)のRFID(Radio Frequency Identification:
非接触型ICカード)開発審議団体となっており、動物用電子識別コード体系や技術要件に関する表
決権の行使等を行っております。平成15~17年度の本事業においてもドイツ、英国、オランダで
開催された累次のISO国際会議に出席し、さらにEUの中で特に先駆的に電子式家畜個体識別シス
テムの導入に向け取組んでいる関係各国を訪問して先進事例についての現地調査を実施し情報
を収集しました。これらの海外調査については、別途報告しました。
本事業の実施に当りましては、農林水産省生産局畜産部畜産振興課をはじめとして、独立行政
法人家畜改良センター、財団法人全国競馬・畜産振興会ほか関係各位に多大なご指導・ご協力を
賜り厚く感謝申し上げる次第であります。
平成18年3月
社団法人
畜産技術協会
1.事業の概要と実施経過
畜産先端技術を用いた BSE 対策技術開発実用化事業
(うち次世代個体識別システム実用化事業)の概要
1 事業の目的
(2) 電子耳標実証試験
近年の BSE 発生及び食肉偽装の発覚等を契機に
電子耳標を導入するにあたっての技術的課
消費者から食の安全・安心が強く求められている
題の調査・検討を行うため、乳用牛、肥育牛、
中で、畜産物のトレーサビリティの導入など BSE
子牛について電子耳標を装着し、形態による
関連対策が推進されてきているものの、畜産関連
脱落等の耐久性、
自動読み取りのための施設、
の先端技術をめぐっては、なお解決すべき技術的
アンテナの検討、模擬センターによるデータ
課題も多い。
収集・管理等の実証試験を実施し、技術の改
このうち、次世代個体識別システム実用化事業
良・改善を行う。
(3) 海外調査
として将来の個体識別技術として期待される電子
耳標を導入する場合の技術的課題についての検討
電子耳標に関する海外の技術開発動向及び
を行う。
電子耳標導入を検討している諸外国の事例調
査を行い、わが国に導入するための情報収集
2 事業の内容
を行う。
(1) 技術検討委員会
(4) 活用マニュアルの作成
実証試験成績及び海外情報をもとに、電子
技術検討委員会委員
伊藤
稔
耳標導入のためのマニュアルを作成する。
社団法人 農林水産技術情報協会
技術主幹
鵜飼 昭宗
風間 辰也
3 事業主体及び事業の一部を委託
する団体
社団法人 日本食肉市場卸売協会
(1) 事業主体
社団法人 畜産技術協会
専務理事
(2) 委託団体
畜産用電子技術研究組合
社団法人 家畜改良事業団
富士平工業株式会社
電子計算センター部長
鈴木 一男
独立行政法人 家畜改良センター
個体識別部長
新山 陽子
京都大学大学院農学研究科
(3) 協力機関
独立行政法人 家畜改良センター
有限会社 関東肉牛肥育
生物資源経済学専攻 教授
信國 卓史
(座 長)
地方競馬全国協会 理事
林
独立行政法人 農業・生物系特定
孝
有限会社ベルワイドアイ
さいたま市食肉中央卸市場株式会社
全農とちぎ矢板家畜市場
産業技術研究機構
中央農業総合研究センター
農業情報研究部 上席研究官
-1-
事 業 実 施 の 経 過
1.技術検討委員会の開催
③データ集積・分析・送信システム 農場、
(1) 平成 15 年度「第 1 回技術検討委
員会」
(出席者敬称略)
登録センター
3)実証試験の場所
3.効果的な事業の推進方策等の検討について
日 時:平成15年8月5日(火)
場 所:畜産技術協会会議室(緬羊会館303号)
出席者:
(委員)伊藤 稔、鵜飼 昭宗、
(2) 平成 16 年度「第 1 回技術検討委
員会」および現地視察
風間 辰也、鈴木 一男、
日 時:平成16年7月21日(水)
新山 陽子、信國 卓史、
会議場所:大宮ソニックシティー701号会議室
林 孝
現地視察:埼玉県行田市
(農水省)奥地 弘明、葛谷 好弘、
㈲関東肉牛(斉藤 三郎農場)
鈴木 学
出席者:
(委員)伊藤 稔、鵜飼 昭宗、
(全国競馬・畜産振興会)大谷 清澄
風間 辰也、鈴木 一男、
(畜産技術協会)山下 喜弘、林 茂昭、
新山 陽子(欠)、信國 卓史、
安田 侃也、針生 程吉、
林 孝
杉村 正司
(農水省)太鼓矢 修一、鈴木 学、
(畜産用電子技術研究組合)
小野寺 健一、池田 正樹
富士平工業:中村 雄有
(畜産技術協会)山下 喜弘、
沖電気工業:広田 真一郎
赤松 勇二、福川
議 題
一郎、
針生 程吉、杉村 正司
1.次世代家畜個体識別システム実用化事業の
(畜産用電子技術研究組合)
概要について
富士平工業:坪井 正規、麻生 博、
1)技術検討委員会の開催
中村 雄有、
2)電子耳標実証試験の実施
ベルワイドアイ:鈴木 伸之、
3)電子耳標システムに関する情報の収集及
び国内及び海外の現地などの調査
広田 真一郎
議
4)国内コード(ISO 規格に基づく)体系委
員会の開催
題:
1.15度事業の実施状況について
1)次世代家畜個体識別システム実用化事業
2.次世代家畜個体識別システム実用化事業実
証試験実施計画案
の概要について
2)次世代家畜個体識別システム実用化事業
1)実証試験
進捗状況について
2)実証試験モデルシステム機器等
3)平成15年度実証試験報告書
①電子耳標 貼付札型耳標、札型耳標、ボ
タン型耳標
2.16年度事業の実施計画について
3.その他
②読み取り装置(リーダ) 据え置き型、
ハンディ型
現地視察:肥育農場(関東肉牛肥育)における
実証試験
-2-
1)実証試験の実施状況
1)実証試験:
2)海外調査の実施計画
① 耳標読取試験
ボタン型耳標、札型耳標及び貼付耳標
3)国内コード委員会の実施計画
装着耳標装着牛の据置きリーダ及びハ
4)報告書取りまとめ方針
現地視察:搾乳パーラーにおける実証試験
ンディリーダによる読取り
1)実証試験
② データ管理試験
①ボタン型、札型及び札型貼付耳標の据置
据置きアンテナ、ハンディリーダから
リーダによる読み取り試験
のデータ転送、
農家 PC 及び携帯端末(PDA)から模擬
2.実証試験実施の経過
センターへのデータ登録、
農家 PC 及び携帯端末(PDA)から模擬
(1) 平成 15 年度
1)福島県西郷村、家畜改良センター
センターの登録データ呼出
センター内搾乳パーラー出口に電子耳標読
(3) 平成 17 年度「第 1 回技術検討委
員会」
取り(アンテナ)システムを左右に2基設置し
日 時:平成17年9月1日(木)
PC を経由し模擬登録センターに送信するシ
会議場所:
(独)家畜改良センター会議室
ステムを構築した。
た。読取りデータは無線で事務所に設置した
搾乳牛45頭に貼付型電子耳標を取付けた。
現地視察:
(独)家畜改良センター
なお、貼付耳標はペルタック耳標の交換時期
出席者:
(委員)伊藤 稔、鵜飼 昭宗、
後藤 秀幸、鈴木 一男、
であったためこれに貼付し牛に装着する事と
信國 卓史、林 孝
した。テストの結果、牛の歩行中にその電子
(農水省)太鼓矢 修一、日田 吉則
耳標が読み取れる事が確認されたが、アンテ
(家畜改良センター)伊藤 敦、伊藤 論
ナの読み取り範囲で待機中の牛の耳標も読ん
(畜産技術協会)山下 喜弘、
でしまうことが判明したため、1基には電波
赤松 勇二、福川
一郎、
反射板を取付けた。
また装着時の確認作業などに使用するため
針生 程吉、金沢 真紀子
ハンディリーダを用意した。非読み取り検出
(畜産用電子技術研究組合)
富士平工業:坪井 正規、麻生 博、
中村 雄有、守田 まさみ、
システムは組み込みのみ行った。
データ送信システムはデータベースへの取
り込みまでは確認できたが、電話回線が不備
後藤 充弘
ベルワイドアイ :鈴木 伸之、広田 真一郎、
のため模擬登録センターへのデータ通信は実
施できなかった。
中島 義和、伊藤 勝
2)埼玉県、(有)関東肉牛肥育(斉藤農場)
議 題:
1.16年度事業の実施状況について
出入荷用の積み降ろし口への通路右側にア
1)実証試験の実施状況
ンテナシステムを設置し、試験実施のため、
2)海外調査の実施状況
通路・扉・柵などを大幅に改良した、また作
3)国内コード委員会の実施状況
業用小屋も設置した。耳標は札型・ボタン型・
4)平成15年度実証試験報告書
貼付型の3種をそれぞれ10頭、計30頭に装着
2.17年度事業の実施計画について
した。
-3-
上記改良センターも含め装着は全て右側と
し、これに合わせアンテナシステムも通路の
右側に構築した。
2)埼玉県、(有)関東肉牛肥育(斉藤農場)
読取りアンテナの経年変化による読み取り
性能の変化を確認するため、読み取り距離の
データ送信システムは確認試験を行い、読
再測定などを行った。また、電子耳標の再装
取れる事を確認した。模擬登録センターまで
着を行った。
ボタン型10頭、
札型10頭である。
の試験は現場農場にインターネット環境が無
く実施できなかった。
3)さいたま市、食肉中央卸市場
昨年に引き続き実証試験を実施した、繋留
(2) 平成 16 年度
中の牛10頭に札型及びボタン型の耳標を装着
1)福島県西郷村、家畜改良センター
し、と殺前の繋留場で読み取り試験を実施し
前年度43頭に電子耳標を装着したが乾乳・
た。バーコードの読み取りは読み取り困難な
治療・入替えなどで減少したため、46頭に再
ため目視に変更していたため、赤外線バーコ
装着を行った。前年の貼付耳標は脱落が多い
ードリーダとの比較試験は実施できなかった。
ため札型・ボタン型のみの利用とした。デー
タ収集は月1度の体重計測日に行った。
4)栃木県、全農とちぎ矢板家畜市場
牛のトレサビリティのなかで、所有者の異
模擬登録センターへの通信は公衆電話回線
動の発生する機会の多い子牛市場に着目し、
接続については工事費を検討の上とりやめ、
子牛の搬入から購買、搬出に至る過程で、電
携帯電話による受送信のシステム構築とした。
子耳標の読み取りに適した箇所を選定するた
2)埼玉県、(有)関東肉牛肥育(斉藤農場)
出荷等で電子耳標装着牛が減少したため再
装着を行った。計測通路の幅が広く直線とな
っており、計測牛が団子状でアンテナ範囲に
入ることが見受けられた。これを防ぐため通
路手前に分離用可動柵を設置し、読取り率の
向上を図った。
なお、
「16年度技術検討会」現地実証試験を
技術検討委員出席の上行った。
3)さいたま市、食肉中央卸市場
当市場に斉藤農場から上場する電子耳標装
着牛を、市場内に設置したアンテナとハンデ
ィリーダで読み取り、電子耳標による農場か
ら市場(と場)までの流れの実証実験を行った。
(3) 平成 17 年度
1)福島県西郷村、家畜改良センター
電子耳標牛が減少したため追加装着を行っ
た。貼付耳標は15、16年度で脱落などが多く
発生したため、ボタン型及び札型のみ実施し
た。
-4-
め、現地聞取り調査を実施した。
2.電子耳標をとりまく情勢について
(1) 国際的な情勢
この IDEA プロジェクトの結果を受けて、
EU
1)各国の動き
理事会はでは2003年12月17日、家畜の疾病の
EU では家畜に対する電子標識の実行可能
拡大を防止する対策の一環として、羊、山羊
性を確認するために、1998年3月から2001年
の個体識別に関する規則(理事会規則
12月まで100万頭の牛、羊、山羊を対象とした
No.21/2004)を承認した。
IDEA ( Identification Electronique des
これによると、
2008年1月1日からはすべて
Animaux)
プロジェクトと称する大規模な実証
の羊と山羊は電子標識の装着が義務化される。
プロジェクトが行われた。このプロジェクト
但し、羊および山羊の総数が60万頭未満の加
の参加国(地域)
、家畜および電子標識を表2
盟国では自国内に流通する羊、山羊に対して
-1に示す。
は任意、山羊の総数が16万頭未満の加盟国で
2003年5月5日にこのプロジェクトの最終
は自国内に流通する山羊に対しては任意とな
報告書が発表された。それによると、IDEA プ
る。また、適用日については2006年6月までに
ロジェクトは家畜に電子識別を使用すること
委員会から発表される個体識別の実施結果の
によって、トレーサビリティが大きく改善さ
レポートを踏まえて再検討にされることにな
れること、牛、バッファロー、羊、山羊にこ
っている。
のシステムの導入にどんな技術的な障害もな
いことを立証したとしている。
ここで適用される電子標識について規則の
付属書には ISO11784と11785に従った HDX ま
さらに、
次のような声明が記載されている。
たは FDX-B の技術を適用したリードオンリー
すなわち、EU 内において家畜個体識別、登録、
の受動的なトランスポンダでなくてはならな
管理システムを確立するための見地から、
牛、
いと規定されている。
これは EU の畜産の分野
バッファロー、羊そして山羊のために電子的
で初めて公に ISO11784と SO11784が記載され
個体識別を導入すべき適切な時期である。
たものである。
表2-1
IDEA プロジェクトの家畜と電子標識
家畜(頭)
参加国(地域)
牛
羊
電子標識(個)
山羊
ボーラス
電子耳標
10,000
20,000
ドイツ
50,000
スペイン
49,000
176,000
20,000
245,000
イタリア(Aosta)
58,000
10,000
2,000
70,000
イタリア(Lazio)
29,700
83,325
2,000
11,5025
イタリア(M.Sanita)
70,000
10,000
オランダ
80,000
ポルトガル
21,000
フランス(Sud-Est)
122,000
5,000
99,600
10,000
70,000
34,000
34,000
500
99,100
12,000
3,000
9 000
フランス(Bretagne)
16,800
4,500
12,300
640,025
244,400
386,500
500,925
-5-
29,000
20,000
12,000
148,000
フランス(Bourgogne)
合計
埋込型
32,000
EU における牛に対する電子標識装着の義
明示した耳標と組み合わせて使用される。図
務化の時期については現在どこからも公表さ
2-1に現在承認されている二種の電子耳標
れ て い な い 。 イ ギ リ ス の NFU (National
とボーラスの一例を示す。
Farmers Union ) の EID 担当者は、牛への義
NLIS で適用されている個体識別番号は電
務化は羊、山羊の電子標識の義務化の成功を
子耳標の表面に印字されている NLIS 番号
(16
見てからになるから、2008年の4年後、つま
桁)および電子標識の中に記憶されている
り2012年になるのではないかと2004年に推測
RFID 番号(15桁)で構成されている。NLIS
していた。
番 号 で は Property Identification Code
一方、オーストラリア・ヴィクトリア州で
(PIC)
(始めの8桁)を与えられたプロパティ
は全国家畜個体識別制度(NLIS)により2002
が唯一性を保証するシリアル番号を作り、
年1月1日以降に生まれた牛に対して世界で
RFID 番号では製造者コード(始めの3桁)を
初めて家畜に電子標識の装着を義務化した。
与えられた電子標識のメーカがそれを作るこ
さらに、
2005年7月1日からは一部の例外を除
とになっている。
き、
全州の牛に電子標識の装着を義務化した。
ここでは NLIS の技術規格にて適用する電
子標識は ISO11784および ISO11785に準拠の
NLIS 番号の例:3ABCD123LBA00002
RFID 番号の例:951000005667748
電子耳標およびボーラスとし、通信方式は
HDX のみと規定している。ボーラスは装着を
明示するために‘R'または‘RUMEN'の文字を
図2-1 承認されている電子耳標二種(左)とボーラスの一例(右)
2002年から義務化を実施したヴィクトリア
州の農場、家畜市場、と畜場などでは、電子
標識はデータベースへの移動報告のためだけ
ではなく、牛の管理のために非接触で個体識
別ができるという特性を活かした利用が広く
実用化されており、経営上無くてはならない
ものになっている。右の写真は家畜市場にお
いて牛房単位でセリ落とされた10~20頭の牛
の電子標識を遅滞なく読み取るために考案さ
れたマルチ・リーダシステムを示す(図2-2)
。
-6-
図2-2 家畜市場に設置されている
マルチ・リーダシステム
なお、詳細は巻末に添付されている「オー
information field (5ビット)を新設する。
ストラリアにおける牛の電子標識による個体
これは Country Code との組合せでのみ使用
識別実態調査報告(概要)
」を参照のこと。
される。
2)ISO の取り組み
この審議結果に基づき、DRAFT AMENDMENT
ISO 11874: 1996/DAmd 1(ISO 11784 修正案)
①ISO11784の改訂
2003年10月30、31日のフランクフルトで開
催された国際標準化機構第23技術委員会第19
が作成された。
2003年2月にそれに対する投票
が行われ、我が国は賛成の投票を行った。
現行の ISO11784のコード体系と AMENDMENT
分科会第3分科会(ISO/TC23/SC19/WG3)にお
いて、ISO11784(動物用電子識別コード体系)
ISO 11874のコード体系を表2-2に示す。
の改訂内容が審議された。この改訂は先に実
さらに、2005年9月13、14日のオランダで
施された EU の IDEA プロジェクトの経験に基
開 催 さ れ た 会 議 で は ビ ッ ト 番 号 15 を
づいて EU から要求されたものである。
「RUDI-Bit」
(Reference to User Data Inside
改訂内容:
the transponder memory トランスポンダがア
ア RFID を脱落等で再発行する場合の Retag
ドバンスドトランスポンダであることを示す
ビット)
に使用する改訂案が承認されている。
counter(3ビット)の新設
イ 現行の National ID Code(38ビット)では
動物に対する情報量が少ないので、User
表2-2 ISO11784のコード体系
< 現行のISO11784のコード体系>
ビット番号
組合せ数
内容
1
2~15
2
16384
Application
16
Reserved field
bit
17~26
27~64
2
1024
274,877,906,944
Extra data
block
Country
code
National ID code
<AMENDMENT1のコード体系>
ビット番号
1
2~4
5~9
10~15
16
17~26
27~64
組合せ数
2
8
32
64
2
1024
274,877,906,944
Retag
User information
Reserved
Extra data
counter
field
field
block
Country
code
National ID code
内容
Application
bit
National ID code の体系を整備するよう国内
②国内 ID コード(National ID code)
2002年10月に Wageningen(オランダ)で開
の関係機関に働きかけることを求められた。
催された国際標準化機構第23技術委員会第19
現在、National ID code を整備している国は
分科会第3分科会(ISO/TC23/SC19/WG3)で、
フランスのみである。
多くの国では、各国で整備するよう ISO11784
2005 年 9 月 に フ ラ ン ス 家 畜 改 良 協 会
にて規定されている National ID code 体系が
(INSTIUT DE ELEVAGAE)を訪問し、調査の結
整備されていないため、
国コードを使用せず、
果、次のようなコード体系であることが判っ
製造者コードを使用して RFID が製造され、
流
た。(表2-3)
通していることに鑑み、各国の委員は
-7-
表2-3
フランスにおける National ID Code 体系
上記の表においてフランスの National ID
(2) 国内の情勢
Code は国コード3桁(ここでは FR と書かれ
1)産業界における電子タグの取り組み
ている)の次からの12桁で書かれている。最
国内の工業界や流通業界においては商品管
初の二桁が「種別コード」となっている。例
理の面から電子タグへの関心は非常に高く、
えば牛については「00」
、羊/山羊に対しては
近い将来バーコードを利用している業務の多
「01」から「05」
、馬に対しては「25」が割り
くを電子タグがとって代わるだろうと期待さ
振られている。
れている。とくに、電子タグの利点は、バー
コードに比べて情報量が飛躍的に多くできる
③アドバンスドトランスポンダ
こと、小型化できること、読み取り能力が高
(Advanced transponder)
いことにある。電子タグ素子の小型化は著し
現在の ISO11784/11785で規定されている
く進展し、1mm 角以下のチップも開発されて
動物用トランスポンダはリードオンリである
おり、普及すれば大幅な低コスト化が期待で
が、次世代の動物用トランスポンダとしてリ
きるという。これら電子タグは、政府が推進
ードライトが可能なアドバンスドトランスポ
している誰でもどこでもコンピューターが利
ンダの規格が下記のように一部は完成され、
用できる「ユビキタス社会」の中で大きな役
一部は準備中である。
割を果たすと期待されている。 現段階にお
ISO 14223-1 (2003): Radio frequency ident
ける電子タグの利用は、工場内、スーパーマ
ification of animals- Part 1: Air inter-
ーケット内、農場内などの閉鎖系における商
face.
品管理やトレサビリティであり、未だ実験段
ISO 14223-2 ( 準 備 中 ) :Radio frequency
階のものが多い。その多くは読み取り距離が
identification of animals- Part 2:Code and
極めて短くても利用可能で有ることから、ア
command structure
ンテナの小さい貼付型電子タグである。
ISO14223-3(準備中):Radio frequency ide-n
tification of animals- Part 3:Application
電子タグが本格的に普及するためには生産
段階、流通段階を通じた利用が求められるが
-8-
電子タグのチップや読み取り機器の低コスト
れた動物愛護管理法において個体登録の推
化はもちろんであるが、データの標準化や情
奨・体制支援を行うこととなっている。犬猫に
報管理のソフト面の整備も重要である。
ついてはすでに埋め込み型電子タグの装着・登
データの標準化については ISO(国際標準
録が始まっており、平成17年度末現在で約1万
化機構)と IEC(国際電気標準会議)が共同
頭に装着されている、予防注射、病歴、迷い犬
して国際標準規格の策定を検討している。デ
の保護等に役立つと期待されている。
ータ管理の面については、個人情報保護との
外来生物法による特定外来生物及び動物愛
関係について総務省の「ユビキタスネットワ
護管理法による、特定動物(危険動物)につ
ーク時代における高度利活用に関する調査研
いては、個体識別のため電子タグ等の装着が
究会」でも指摘しており、今後の検討課題で
義務付けられ、環境省によって電子タグ装着
ある。
のためのマニュアル作り、装着のための研修
農畜産物については、実用化されているも
会など具体的取り組みが行われている。
のはバーコードによる牛のトレサビリティシ
ステムであり、
電子タグについては、
青果物、
食品、加工食品、養豚農場などについて農林
水産省その他が行っている実験事業段階であ
る。
4)動物電子タグのデータ標準化の取り
組み(ISO 規格動物用電子タグ協議会)
動物用電子タグのデータ標準化については、
国際的の情勢の中で紹介したが、ISO の中の
ISO/TC23/SC19/WG3
「動物用電子タグワーキン
2)家畜における電子タグの取り組み
ググループ」が検討を進めており、既に
牛については、現在 BSE 対策として始まっ
たバーコード耳標によって個体識別とトレサ
ISO11784/11785によって利用周波数帯、コー
ド体系が決められている。
ビリティーが実用化されており、電子タグに
上記 ISO 動物用タグワーキンググループに
ついては本事業により次世代個体識別技術と
は、(社)畜産技術協会が日本における登録団
して耳標型の形態や耐久性、自動読み取り技
体として参加している。国内の動物が ISO 規
術等が、データ管理については農場と模擬登
格のコード体系を利用する意義は、メーカー
録センターによる携帯端末等による実証試験
が異なっても読み取り等の互換性が確保され
が実施されている。養豚についてはユビキタ
ること、競走馬やペット類のように海外から
ス事業の一環として農場内の個体管理につい
の導入や渡航した場合にそれぞれ個体識別で
て耳標型の電子タグ実証試験が実施され、一
きること等にある。
国内の ISO 規格動物用電子タグの利用につ
部実用化されている。
競走馬については、国際的に電子タグ装着
いて関係者で協議するため、平成17年6月に
の動きがあり、わが国においても平成19年産
「ISO 規格動物用電子タグ協議会」が設立さ
馬から電子タグの装着が義務付けられること
れた。この協議会は、電子タグを利用する団
となり、埋め込み型電子タグをたてがみ近く
体、供給するメーカーまたは代理店、普及に
の皮下に装着することとしている。
係わる団体等が会員として、農林水産省等関
係機関がオブザーバーとして、事務局を(社)
3)家畜以外の動物における電子タグの
取り組み
愛玩動物については、平成17年6月に改定さ
-9-
畜産技術協会が担当している。
協議会では、主として ISO 規格の国内コー
ドについて協議することとしており、動物用
コードの割り当てについて、牛用コードを10
番、馬用コードを11番、ペット用コードを14
番とすることを申し合わせた。
牛については、
現在バーコードによる個体識別を行っている
が、データベース上では ISO 規格に対応した
コード体系を採っており、動物用コードとし
て10番を用いている。外来生物法による特定
外来生物及び動物愛護管理法による特定動物
についても装着する電子タグは ISO 規格によ
ることが明記されており、ペット用コードの
14番を適用することとなっている。
この動物用コードの情報は ISO 登録団体の
(社)畜産技術協会を通じて、ISO に報告さ
れることにより国際的に認知される。
今後、他の動物に ISO 規格の電子タグを導
入する場合には、この協議会に諮っていくこ
とが必要であり、広く関係者の参加が望まれ
る。
-10-
3.電子耳標実証試験
(1) 電子耳標の装着及びデータ読み
取り試験
ア 酪 農 場 :独立行政法人 家畜改良
センター内搾乳パーラー
1)目 的
イ 肥 育 農 場 :有限会社 関東肉牛肥育
(斉藤農場)
現行の牛個体識別で利用されているバーコ
ードシステムに代わる電子耳標の実用化に向
ウ と 畜 場 :さいたま食肉市場株式会
けて、電子耳標の装着方法、牧場等における
社 さいたま市食肉中央
自動読み取り施設等にについて実証試験を実
卸市場
施し、利用のための指針作成に向けたデータ
エ 子 牛 市 場 :全農とちぎ矢板家畜市場
を収集する。
オ 模擬登録センター:
2)試験方法
サーバー上の模擬的な情報登録センター
③ 適用する電子耳標
① 実施期間
貼付型、札型、ボタン型の3つのタイプ
平成15年度~平成17年度の3年間
の電子耳標について実証試験を実施した。
② 実施場所
対象とする牛と環境の異なる下記の場所で
実施
①貼付型電子耳標
②札型電子耳標
③ ボタン型電子耳標
外観
特徴
既装着の札型耳標に貼 現行の家畜個体識別シ 小型の電子耳標
り 付 け で 付 加 で き る ステム用耳標とほぼ同
RFID タグ(黒丸型部) 一寸法
寸法
45mmφ
73×58×2.2mm
33mmφ
質量
2.1g
11.7g
8.2g
表面印字
内蔵 ID の下4桁
内蔵 ID の下 4 桁または 5 桁
内蔵 ID の下4桁
読取距離*
47cm
47cm
44cm
準拠規格
ISO11784/11785
通信方式
FDX-B
内蔵コード
試作コード(999+12 桁の個体識別番号)
装着
牛の右耳に装着する。
注)*:DATAMARS 製ハンディリーダ ISO MAXIII(磁界強度=122db μV/m at 3m)による読取距離を示す。
図3-1 実証試験に供した電子耳標
-11-
3)酪農場における実証試験(家畜改良
センター内搾乳パーラー)
実証試験の年度計画
① 試験計画
乳牛に電子耳標を装着し「フリーストール
平成15年度:電子耳標装着、読取アンテナの
牛舎→待機場に集合→パーラーで搾乳→フリ
構築、ID 無線転送システムの構
ーストール牛舎に戻る」の朝夜1日2回の搾
築
乳作業の流れ(図3-2)の中で、
電子耳標の脱
平成16年度:電子耳標再装着、非読取検出装
落等の耐久性、読み取り性能、アンテナの位
置試験、模擬登録センター構築
置等の検討を行う。
読み取りデータの PC への
平成17年度:電子耳標再装着、読取アンテナ
改良、読取試験
無線転送データ収集・管理、さらに模擬セン
ターへの登録を実施し実用技術の開発を行う。
牛導入口
体重計
アンテナ B
事務所内 PC(アンテナから無線でデータ転送)
追込み可動柵
アンテナ A
・アンテナ寸法:1500×800mm
搾乳パーラー
ISO11784 準拠
・無線仕様:周波数 449.715~449.825MHz
変調 FSK
待機場
各 10 チャンネル
送信電力 10mW
図3-2 実証試験機器配置図
-12-
形式 FID
② 平成15年度実証試験
イ 試験結果
ア 試験方法
a 搾乳牛43頭に貼付型電子耳標を装着。テ
a 貼付電子耳標の読み取り性能は実用に耐
ストの結果、牛の歩行中にその電子耳標の
える事が確認できたが、今回のペルタック
ID を読み取れることが確認された。
への装着には無理があることが確認出来た。
装着方法は検討が必要である。
b 搾乳パーラー通路左右に2箇所アンテナ
システムを設置。アンテナを支える金属柵
b 実験場がパーラー内であり各種機器のノ
部を木製に変えることが出来ず、柵から前
イズ、搾乳器自体の無線電波など条件は過
方に10cm 離した位置に設置した、金属柵パ
酷であったが、ISO 規格電子機器システム
イプの影響が懸念されたが読み取りは可能
の対環境性の高さは確認できた。
であった。無線通信装置を組み込み事務所
c アンテナ等新設機器に強い興味を持つ牛
内に設置した PC に無線でデータを送り込
が前で立ち止まり、
同じ ID が何10回も記録
めることを確認した。(図3-3)
される例が多く、PC 記録上での対応が必要
である。
目的牛以外の誤読み取りを防ぐためアン
テナAに電波反射板を取付けた。
アンテナ設置前の通路
牛の動き
アンテナ B
事務所内データ処理用 PC:アンテナ A、B より
無線でデータが毎日蓄積される、また別場所に設置されている模擬登録センター
(サーバー上)にデータが自動送信される。
図3-3 搾乳パーラーにおける実証試験
-13-
表3-1 平成15・16年度 電子耳標(貼付型)読み取り率と脱落率試験
日時・場所
試験牛
試用耳標
表の解説:
ハンドリーダー
調査
平成 16 年 3 月 10 日~7 月 29 日 家畜改良センター 搾乳パーラー及びフリーストール
ホルスタイン42頭、ジャージー1頭 計43頭
貼付型耳標をペルタック(薬液含浸)耳標に接着して牛に装着
不在
乾乳・乳房炎などで他牛舎へ移動してしまって、パーラーに入場せず
1
アンテナで読取れた時(データ有)は 1
0
アンテナで読取れなかった時(データ無)は 0
読取り率
1ヶ月後は 92%、3 ヶ月後は 27%まで低下 貼付型のペルタックからの剥れ落が多い
9月2日のハンドリーダーの読取り調査では、対象牛21頭中、12頭脱落、4頭故障し、5頭が正常に読取
れた。このときの貼付型の脱落率は57%であった。
→調査
牛No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
342
786
2766
3831
3855
3961
4180
4203
4210
4227
4241
4388
4418
4593
4746
4760
4791
4821
4906
4951
5118
5125
5170
5194
5231
5309
5316
5354
5491
5569
5590
5637
5651
5675
5712
5798
5811
5835
5842
5934
4616
5552
5644
読取り数
非読取り数
対象頭数
読取り率
3/10 3/11 3/17 3/17 4/10 7/10 7/28 7/29
9/2
PM
AM AM PM AM AM AM AM ハンド読取り
1
0
1
1
1
1 不在
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
43 40 41 40
0
3
1
2
43 43 42 42
100% 93% 98% 95%
IDの
有無
備考
1 不在
不在
1
不在
1
1
1
1
不在
1
1
0
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
不在
1
1
1
1
1
1
1
35
3
38
92%
0
不在
不在
不在
0
0
不在
0
0
0
無
脱落
0
無
脱落
0
無
脱落
0
無
脱落
0
0
0
0
1
0 不在
不在
不在
1
1
1
1
1
0
0
0
不在
1
1
1 不在
不在
不在
0
0
0
0
0
0
1
1
不在
不在
不在
不在
不在
不在
不在
0
0
0
無
有
脱落
故障
1
1
0
0
0
1
0
0
無
有
無
有
脱落
1
1
有
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
有
無
有
無
無
有
1
有
1
0
不在
0
脱落
故障
故障
脱落
故障
脱落
脱落
0
0
0
無
脱落
0
0
0
1
無
有
脱落
4
11
15
27%
読取り数
非読(ID有り)
対象頭数
ID「有」
ID「無」
1 不在
不在
不在
不在
8
5
10 10
18 15
44% 33%
-14-
5 貼付型ID脱落率 57%
4 (ID無/対象頭数)
21
9
12
構成はセンサーで牛の存在を確認し読み取
③平成16年度実証試験
り指令を出す、このとき ID が読めなければ、
ア 試験方法
牛は入場したが ID は読めなかったので NO ID
電子耳標再装着は札型・ボタン型のみ使用。
貼付型は15年度試験において耐久性などの問
である、のち入場牛一覧表と比較しセンサー
題が出た(表3-1)
、主原因はペルタック耳
のみで確認した NO ID 牛の耳標などの状況を
標に貼付した事があげられる、薬液で表面が
チェックすることにより、当 ID 耳標の脱落、
濡れた状態であり接着が効かず特殊ホチキス
故障などの状況・原因を追究できる。
(図3-
針でのみ装着している状態であった。装着前
4、表3-3)
の通常耳標に貼付すればこの点は改善される。
イ 試験成果
アンテナ関係では読み取り確認システムを
新たに46頭に、札型・ボタン型耳標を追加
追加可動させた。模擬登録センターへのデー
装着した。
タ送受信は、公衆電話回線の工事費検討の上
データ収集は、毎日朝夕の搾乳時に行なっ
取りやめ、携帯電話によるデータ送受信シス
た (表3-3)。札型・ボタン型耳標において
テムのみ行った。
は、耳切れ等による脱落以外は目立った非読
み取りは見られず、実用に使用できる可能性
読み取り確認システム概念図
は高い。
牛が、個体識別アンテナの前に来て正常に
貼付型の電子耳標は、擦りつけ等によると
ID を読み取ることが出来た場合と ID を読み
取れなかった場合を識別する。
思われる、破損や剥離による損傷の発生が多
ID を読み取れ無かった牛には:
かった(図3-5)
。
読み取り確認システムは実証試験を行ない
a:電子耳標を装着していない場合
ながら改良を加え、作動確認を実施した後、
b:電子耳標を装着していても、機能しな
据置型読取装置に組み込んだ(図3-4)
。
い場合(故障、外部ノイズ等)
c:電子耳標は正常であっても牛の挙動等
で読み取れなかった場合が有る。
誘導柵
牛検出センサー
パソコン
非読取検出用
警報表示
アンテナ
Power Max
コントローラ
無線ユニット
図3-4 読み取り確認システム概念図
-15-
無線ユニット
表3-2 パソコン内のデータのイメージ
時間
ID
牛番号
Xxxxxxxxxxxxxxx
Xxx
1
2003/xx/xx
xx:xx:xx
2
2003/xx/xx
xx:xx:xx
3
2003/xx/xx
xx:xx:xx
Xxxxxxxxxxxxxxx
Xxx
4
2003/xx/xx
xx:xx:xx
Xxxxxxxxxxxxxxx
Xxx
非読取
1
再装着後ハンドリーダによる確認
通信不可となった貼付電子耳標
表面が擦れコイルが一部破損、ベース耳標はペルタック(薬液付耳標)
図3-5 貼付型耳標の損傷例
-16-
表3-3 平成16年度 電子耳標(札・ボタン型)読み取り率試験
日時・場所
平成16年11月25日~12月25日・家畜改良センター搾乳パーラー
表の解説 試験牛
ホルスタイン46頭
試用耳標
札型・ボタン型
23頭×2種=46頭
不在
乾乳・乳房炎などで他牛舎へ移動してしまって、パーラーに入場せず。
1 アンテナで読取れた時(データ有)は 1
0
アンテナで読取れ無かった時(データ無し)は 0
平均読取り率
札型=86.9%ボタン型=84.5%と大差は無い。
装着電子耳標: 札型 牛No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
441
442
458
466
471
487
493
498
507
511
523
528
544
549
563
576
578
582
585
586
590
591
592
対象頭数
非読取り数
読取り数
読取り率
11/25 11/26 11/26 11/27 11/30 12/1 12/1 12/5 12/5 12/6 12/6 12/7 12/7 12/25 12/25
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
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1
1
1
1
1
1
0
1
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1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
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1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
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1
1
1
0
1
1
1
1
1
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1
1
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1
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1
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1
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1
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1
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1
1
1
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1
1
1
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1
1
0
1
0
0
0
1
0
1
1
1
1
0
1
0
1
不在
1
1
1
1
1
1
0
1
不在
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
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1
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1
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1
1
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1
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1
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1
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0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
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1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
不在
23
23
23
23
23
23
23
23
22
22
22
22
22
21
20
4
5
1
1
5
2
4
3
1
1
3
4
4
3
3
19
18
22
22
18
21
19
20
21
21
19
18
18
18
17
82.6% 78.3% 95.7% 95.7% 78.3% 91.3% 82.6% 87.0% 95.5% 95.5% 86.4% 81.8% 81.8% 85.7% 85.0%
22
3
19
86.9%
平均読取り率
装着電子耳標: ボタン型
牛No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
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18
19
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21
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23
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83
84
85
90
94
96
97
98
99
103
105
107
108
111
113
119
445
594
595
596
599
600
対象頭数
非読取り数
読取り数
読取り率
11/25 11/26 11/26 11/27 11/30 12/1 12/1 12/5 12/5 12/6 12/6 12/7 12/7 12/25 12/25
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AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
AM
PM
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1
1
1
1
1
1
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1
1
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1
1
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1
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1
1
1
0
1
1
1
不在
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1
1
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1
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0
1
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1
0
1
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0
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0
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1
1
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1
0
0
1
1
1
1
0
0
1
0
1
1
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
1
1
1
0
1
1
1
0
0
1
1
1
1
1
1
1
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1
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0
1
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1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
23
23
23
23
23
23
23
23
23
23
23
23
23
22
22
3
1
1
3
4
3
1
10
4
7
3
3
1
5
4
20
22
22
20
19
20
22
13
19
16
20
20
22
17
18
87.0% 95.7% 95.7% 87.0% 82.6% 87.0% 95.7% 56.5% 82.6% 69.6% 87.0% 87.0% 95.7% 77.3% 81.8%
23
4
19
84.5%
平均読取り率
-17-
アンテナは現状のままで、B アンテナをセン
④ 平成17年度実証試験
サー検知方法・位置等を読み取り率の改善を
ア 試験方法
搾乳パーラーにおいて、朝夕の搾乳時に電
子耳標の自動読み取りを実施した結果は表3
目指し変更改良を行った。(表3-5)
a アンテナを前(内側)に出す。通路幅を狭
くする。
-6のとおりである。
牛の ID 番号毎に、
"1"は牛が通過したこと
が記録された場合、"0"は牛の通過が記録さ
b アンテナの感度調整
c 読み取り確認システムの位置変更。 横位
れなかった場合である。搾乳パーラーでは必
置から上部に変更
ず通路を通過することから、なんらかの原因
d 焦電センサーを設置
で読み取りできなかったことになる。
e ID 情報受信のパソコンの設定変更
表3-6を見ると、
読取率は札型耳標では80
~100%であり、
ボタン型耳標では70~95%で
ある。
据置型のアンテナの指向性や設置位置、
イ 試験結果
自動読取装置のアンテナ設置方法及び関連
周辺の金属による電波障害、アンテナの受信
設備の改良を行い、アンテナを読み取り試験
範囲に同時に複数頭が侵入したための読み取
を行った結果、
アンテナは正常稼動しており、
り不能等が考えられた。したがって、通路の
読み取り距離は80cm まで可能であることを
構造の改善について搾乳作業に支障が起こら
確認した。
ない範囲で対策を講じてみた。すなわち、A
改良前
改良後
(写真内○印のところが上記a~dの改良箇所)
図3-6
-18-
表3-6 平成17年度 電子耳標(ボタン・札型)読み取り試験結果
日時・場所
試験牛
試用耳標
表の解説
平成17年12月9日~平成18年2月27日・家畜改良センター、搾乳パーラー及びフリーストール
31頭
札型16頭 ボタン型31頭 計47頭
不在
乾乳・乳房炎などで他牛舎へ移動してしまい、パーラーに入場せず
1
アンテナで読取れた時(データ有)は、1
0
アンテナで読取れなかった時(データ無)は、0
読取り 率比較 平均読取り率=ボタン型79.5% 札型は90,6%である 約10%札型が良い。
昨年のデータでは差がなかった。
装着ID:札型
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
563
582
88
92
101
109
168
170
175
461
498
523
530
549
571
593
12/9 12/10 12/10 12/11 12/11 12/12 12/12 12/13 12/13 12/14 12/14 12/25 12/25 1/20 1/20 2/1 2/1
PM
AM PM AM PM AM PM AM PM AM PM AM
PM AM PM AM PM
04.11/25
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
04.11/25
0
0
1
1
1
1
1
0
1
1
0
1
1
1
1
1
0
05.07/20
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
05.07/20
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
05.07/20
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
不在
05.07/20
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
0
0
0
0
05.12/07
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
05.12/07
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
05.12/07
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
05.12/07
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
不在
04.11/25
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
04.11/25
0
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
05.07/20
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
不在
04.11/25
0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
05.07/20
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
不在
05.07/20
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
読取り数
13
14
14
16
16
16
15
13
16
14
15
14
12
12
12
11
10
非読取り数
3
2
2
0
0
0
1
3
0
2
1
1
2
2
2
1
2
対象頭数
16
16
16
16
16
16
16
16
16
16
16
15
14
14
14
12
12
読取り率 81.3 87.5 87.5 100.0 100.0 100.0 93.8 81.3 100.0 87.5 93.8 93.3 85.7 85.7 85.7 91.7 83.3
装着日
2/27
AM
1
1
計
不在
1
不在
1
0
1
1
不在
1
1
8
1
9
88.9
241
25
266
90.6%
平均読取率
装着ID:ボタン型
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
81
93
94
95
106
111
122
126
127
134
135
136
138
139
140
141
142
144
145
148
149
150
151
152
153
154
155
159
167
594
599
12/9 12/10 12/10
PM
AM PM
04.11/25
0
1
1
05.12/07
1
1
0
04.11/25
0
1
1
05.12/07
1
1
1
05.07/20
1
0
1
04.11/25
1
1
0
05.07/20
1
1
1
05.07/20
1
1
1
05.07/20
1
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05.07/20
1
0
1
05.07/20
0
1
0
05.07/20
0
1
1
05.07/20
1
1
1
05.07/20
1
1
1
05.07/20
1
1
1
05.07/20
1
0
1
05.07/20
1
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05.07/20
1
1
1
05.07/20
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05.12/07
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1
0
05.12/07
1
1
0
05.07/20
1
1
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05.07/20
0
1
0
05.07/20
1
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1
05.07/20
0
1
1
05.07/20
1
1
1
05.12/07
0
1
0
05.12/07
0
1
1
05.12/07
1
1
0
04.11/25
1
1
1
04.11/25
1
1
1
読取り数
22
28
23
非読取り数
9
3
8
対象頭数
31
31
31
読取り率% 71.0 90.3 74.2
装着日
12/11 12/11 12/12 12/12 12/13 12/13 12/14 12/14 12/25 12/25 1/20 1/20 2/1
AM PM AM PM AM PM AM PM AM
PM AM PM AM
不在
0
0
1
1
1
0
0
1
0
0
1
1
1
1
0
1
1
1
0
0
1
1
1
1
1
1
0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
不在
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2/1
PM
2/27
AM
1
1
1
1
計
不在
0
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
0
1
1
1
0
1
1
1
0
0
1
0
1
1
22
8
30
73.3
1
0
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
0
0
1
1
0
1
0
0
0
1
1
21
9
30
70.0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
0
1
1
1
0
1
1
1
27
3
30
90.0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
27
3
30
90.0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
21
9
30
70.0
0
1
1
0
0
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
0
1
23
7
30
76.7
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
0
1
0
1
0
0
1
1
1
1
24
6
30
80.0
1
1
0
1
1
1
1
1
1
0
0
1
0
0
1
0
1
1
0
1
0
1
0
1
1
1
21
9
30
70.0
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
0
1
1
0
22
7
29
75.9
不在
0
1
1
1
1
1
1
1
1
不在
0
1
1
1
1
1
1
1
1
不在
不在
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
0
1
0
0
18
6
24
75.0
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
21
1
22
95.5
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
21
1
22
95.5
不在
1
1
0
1
1
1
1
1
0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
0
0
1
1
21
8
29
72.4
1
不在
1
不在
1
1
1
0
不在
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
0
1
1
0
21
3
24
87.5
0
不在
1
1
1
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
16
3
19
84.2
399
103
502
79.5%
平均読取率
-19-
システム稼動状態説明
実証試験
図3-7 平成17年度「技術検討委員会」現地視察状況
表3-5 自動読み取り装置の改善結果
ⅱ.対応策:
ウ 改善方向
ⅰ)当牛自動確認表示システム
(ID対応自動
a 読み取り確認システムについて
ⅰ.「NO ID」はデータ上だけではどの牛の
ペイント吹付け装置)の組み込み
ⅱ)画像自動モニタリングシステム
ID を読み取ったのか判断がつかない。
ⅲ)作業者の目視による確認等が必要であ
ⅰ)前牛と繋がって通った
ⅱ)2頭以上が両センサーを塞いだ
り、省力化・コスト面からは再検討が必
ⅲ)逆行し戻った、などの場合にもNO ID表
要であろう。
ⅳ)改善例を図3-8に示した。
示が確認された。
-20-
b ID システムが正常に作動する条件
一頭しか通れない
下を狭めた通路
アンテナ取付け部は木製とし
して周囲も金属柵をなるべく
く避ける。
逆行防止弁
アンテナ
取付け部は
木製とする。
ⅰアンテナの周囲の金属柵等を排除する。
(特にアンテナ取り付け部は木柵がよい)
ⅱアンテナ前通路に牛を重複入場させないため脚基を狭める等する。
ⅲ同様に逆行させない工夫を施す
(参考資料のオーストラリア調査レポート参照)
図3-8 通路の工夫による複数頭の侵入防止改善例
⑤結果のまとめ
・貼付型電子耳標は、家畜の擦りつけ等による
・電子耳標の導入には、札型、ボタン型の特長
と思われる剥がれ落ちや破損があり、長期的
と利便性の面から判断して選択する必要があ
な利用には不向きであり、一時的な装着にの
る。
み利用可能である。
・自動読み取りにおいては、アンテナの形状や
・札型電子耳標はボタン型と比較すると、表面
設置方法による改善効果は限定されているこ
積が大きいので読み取り距離は長く、読取り
と、アンテナの受信障害の原因となる金属類
率もよかった。また個体識別番号も併記でき
の存在や、受信範囲に複数の個体が侵入する
ることから目視による確認ができる利点があ
場合など、施設の構造等の要素が、読取り率
る。
などに影響を大きく影響した。とくに、複数
脱落率は、現状の札型のバーコード耳標の脱
の牛がアンテナの受信範囲に進入することを
落率と同等と想定されるが、コスト面から現
防止することは施設改善を含むことから、導
状のバーコード耳標のように両耳装着は困難
入に当って充分検討する必要がある。
と思われることから、脱落による個体確認が
・自動読み取り施設は、省力化、迅速化の面か
できないトラブルは高くなると予想される。
ら効果的であるが、付帯施設の改良を伴う場
・ボタン型電子耳標は札型と比較すると、表面
合が多いと予想されることから、ハンディリ
ーダとの得失を充分検討する必要がある。
積が小さく牛の耳に隠れる為、故障・脱落は
札型に比べやや少なかった。しかし読み取り
距離はやや劣った。
-21-
4)肥育農場における実証試験
② 実証試験の年度計画
平成15年度:電子耳標装着、読み取りアン
(有限会社 関東肉牛肥育 斉藤農場)
テナの構築、ID 有線転送シス
① 実証試験の目的
テムの構築、読取り試験
肉牛(肥育牛)に電子耳標を装着し、畜舎
平成16年度:電子耳標読み取り、読み取り
内肥育環境における電子耳標の有効性を試験
確認システム試験、模擬登録
する。
センター構築、分離可動柵構
入出荷用通路に自動読み取り装置を設置し
築、自動読み取り試験
月1回の電子耳標の読み取り計測、
及び脱落等
平成17年度:電子耳標再装着、自動読み取
の耐久性を調査を行い、電子耳標の有用性を
り試験
実証する。
牛房約 10 頭
アンテナ
既存柵 新設可動柵
出荷口
新設可動柵
通路
入路
スタンチョン・分離ゲート
可動1頭分離柵
図3-9「斉藤農場機械設置図」
属の柵による電波障害を回避するため、アン
③平成15年度実証試験結果
平成15年度は、主として電子耳標の自動読
み取りシステムの整備を行い、装着した耳標
テナ装着部周辺の通路のみ金属パイプを撤去
し、木製の柵に改造した。
の読み取りは予備試験として実施した。耳標
読み取り確認システムは基本設定のみ行い
は札型・ボタン型・貼付型それぞれ10頭、計
稼動は次期とした。データ送信システムに関
30頭に装着した。装着はすべて右耳とした。
しては、装着した耳標の読み取り試験を実施
出荷出口へ通路右側に自動読み取りシステム
し読み取れることを確認した。プレハブの PC
を設置し、電子耳標読み取り試験のため既存
作業室を新設し、同所までの場内回線を設置
の通路・扉・分離柵など大幅に改造した。金
した。
(図3-10~18参照)
-22-
図3-10 斉藤農場牛飼養状況
1牛房に約 10 頭
図3-11 牛の耳に装着した貼付け型電子耳標。
既存の耳標の裏側に粘着及び特殊ホチ
キスで装着。
図3-12 設置したアンテナ
(緑色)奥が読み取り通路
図3-13 スタンチョンシステム、耳標装着時に使用
なることを避けるため、アンテナの手前に分
④ 平成16年度実証試験結果
離可動柵を設置した結果、有効に分離できる
電子耳標装着牛が出荷・移動などにより減
ことが確認された(図3-14、15、16、17、18)。
少したため、追加装着を行った。
平成16年度「技術検討委員会」の現地視察
これは、既存施設の電子耳標の自動読み取
として、当農場において試験設備を用いた実
りシステムを導入する場合に有効な方法とな
証試験のデモンストレーションを実施した。
る。形状寸法等については、通路の幅だけで
自動読み取りシステムを設置した通路は、
なく、牛の管理作業との兼ね合いがあり今後
検討を要すると考えられた。
直線で幅が広いため計測時に複数頭の牛が侵
入することによりアンテナで読み取り不能に
「16年度技術検討委員会実施試験」
開催日時:平成16年7月21日
図3-14 ハンドリーダでの読み取り実証
図3-15 読み取った ID を PC へ表示、模擬センターへ転送
-23-
図3-17 委員の質問に答える斉藤農場主
図3-16 アンテナ部(外側より)
図3-18 可動分離柵。電子耳標読み取り時に複数頭が侵入しないよう分離するために直
線通路をクランク状にし、通常作業時は引き込んでおく。
から、アンテナの再チェック性能試験及びそ
⑤ 平成17年度実証試験結果
平成17年6月から札型耳標10頭及びボタン
型耳標10頭について自動読み取り試験を実施
の他設備機器も点検を行った後、試験を開始
した。(表3-10)
した。
アンテナを設置後3年経過していること
表3-10 設置したアンテナの受信範囲と指向性
-24-
⑥ 肥育農場における実証試験の成果
ィック型もあるため、牛房内に入らなくても
ア.斉藤農場の肥育形態は1牛房に約10頭の牛
牛にアンテナを近づけて読み取ることも可能
を収容している。牛房は肥育牛が自由に動き
である。
回れる広さがあるので耳標番号を確認すると
また、ハンドリーダは少数頭の農家におけ
きなど、牛が動き回り非常に困難を伴う。番
る牛の搬入・搬出時において個体識別し、そ
号の目視はある程度可能であるが、バーコー
の番号をセンターへ直接送信することも可能
ドリーダによるバーコードの判読は牛を保定
である。
現在、多くの現場で行われているファック
しないと不可能である(図3-19)
。
一方、電子耳標であればハンドリーダを利
ス・電話通信を使ったセンターへの報告作業
用すれば、20cm 程度までならば読み取り可能
では避けられない人為的ミスを解消するため
であり、光学読み取りに比べて指向性も広い
にも有効である。
現在のバーコード方式でも、
ため、耳標番号の確認作業の効率化は大きな
読み取ったデータの携帯端末によるセンター
意義がある(図3-20)
。また、ハンドリーダ
への送信は導入可能な技術である。
には、写真のような円形型だけでなく、ステ
図3-20 電子耳標リーダによる読み取り
図3-19 バーコードリーダによる読み取り
イ.複数の牛の同時進入を避ける分離用可動柵
通路に至る手前から進むほど下側が狭くな
は有効に機能した。通路で自動読み取りを行
る曲線壁や逆行防止用スプリング作動柵な
う場合には、牛が団子状に連なり頭が反対側
どを設け、電子耳標・アンテナ類が電子的性
に隠れたり、またセンサーが確実に個体を認
能を完全に発揮できるようにしている。(図
識できない場合が多い。
3-21)
参考資料として示したオーストラリアの例
では、1頭分離を確実にするためアンテナ前
①誘導通路、曲線で狭くなる。
②脚基を狭くしてある
③押す方向にのみ動くバー
図3-21 オーストラリアの家畜市場における参考例
-25-
5)と畜場における実証試験
② 実証場所:さいたま市食肉中央卸市場
① と畜場における実証試験の目的
埼玉県さいたま市大宮区
家畜に装着された電子耳標の読み取りによ
吉敷町2丁目23番地
り異動等の確認が必要とされる場所として農
場、家畜市場およびと畜場が想定される。と
畜場においては金属の施設が多く、他の二箇
所に比べ電波障害が多く、アンテナの近傍に
③ 実施日:
第一回:平成16年12月14日(火)
(体重計上での読取試験)
金属が存在する場合に受信能力の低下が懸念
平成16年12月15日(水)
される。この環境下で実際に電子耳標の支障
(と畜前の誘導路での読取試験)
第二回:平成18年3月2日(木)
なく読み取れることを実証する。
さらに、現在、耳標のバーコードをバーコ
(と畜前の誘導路での読取試験)
ードリーダで読み取っているが、電子耳標は
バーコードより読取効率が高いことを実証す
る。
(図3-22)
第一回、
と畜場
:ハンディリーダによる読み取り
第二回
実証時読
第一回
み取り
実証時読
:据置型リーダによる読み取り
み取り
体重計
第一回
実証時読
み取り
係留場
搬入口
図3-22 さいたま市食肉中央卸市場の牛の動きと電子耳標の読み取り場所
-26-
④ 第一回実証の試験材料
表3-11 供試牛と装着耳標種類
耳標種類
札型
ボタン型
肥育牛(斉藤農場出荷)
3
4
肥育牛(塚田畜産出荷)
3
3
肥育牛(長野出荷)
10
2
合計
16
9
合計
貼付型
7
3
9
12
3
28
表3-12 電子耳標
種類
準拠規格
通信方式
寸法
質量
1
札型電子耳標
ISO11784/11785
FDX-B
73×58×2.2 mm
11.7g
2
ボタン型電子耳標
ISO11784/11785
FDX-B
33 mmφ×6 mm
8.2g
3
貼付型電子耳標
ISO11784/11785
FDX-B
45 mmφ×1.1 mm
2.1g
表3-13 リーダ
型式
メーカ
仕様
ハンディリーダ
ISOMAXIII
DATAMARS
1000ID のメモリ機能
据置型リーダ
ASR454
Agrident
アンテナ:寸法 50×60 cm、 質量約 3 kg
自動同調機能付き
(参考)
「Agrident 社の据付型アンテナの自動同調機能」
リーダのアンテナは134.2 kHz で同調する共振
回路を形成するように調整されているが、近傍に
金属が存在するなど環境が変わるとアンテナの回
路常数が変わり、同調が崩れてしまう。これを自
動的に補正し、同調させるのが自動同調機能であ
って、Agrident 社のリーダ ASR はその機能を具備
しており、実際に同調していることをビジュアル
に示すこともできる。図3-22において同調曲線の
ピークが中央(134.2kHz)にあるので、最適な同
調になっていることを示している。
図3-22 Agrident 社のアンテナの最適同調曲
線の例
-27-
ま市食肉中央卸市場にて右耳に装着
⑤ 第一回実証の読み取り試験
d 読み取り:
ア 体重計上での読み取り試験
ハンディリーダによる読み取り
a 試 験 日:平成16年12月14日(火)
と畜前の誘導路に牛が保定されている間に
午後2時~
b 読取対象:肥育牛(斉藤牧場出荷)7頭
ハンディリーダで電子耳標を読む(図3
c 耳標装着:平成16年12月13日斉藤農場にて
-24)
。
右耳に装着
d 読み取り:
入荷直後の牛が係員によって牛綱で追われ
ながら体重計上を通過する際にその鉄柵に
木部材で離して(図3-23)取り付けたアンテ
ナによって電子耳標を読み取る。
鉄柵幅:1 m
e 読み取り結果
読取結果を表3-14に示した。
図3-24 ハンディリーダによる読み取り
表3-14
耳標種類
読取結果
個数
読取
読取率(%)
ウ 据置型リーダによる読取
1
札型
3
3
100
と畜前の誘導路を牛が自由歩行する際にそ
2
ボタン型
4
4
100
の誘導路の鉄柵に木部材で離して取り付けた
合計
7
7
100
アンテナによって電子耳標を読み取った。誘
導路幅は1mであった(図3-25)
。
図3-23 電子耳標の読み取り
(左上にアンテナが見える)
図3-25 据置型リーダによる読み取り
イ と畜前の誘導路での読み取り試験
据置型リーダの読み取りにおいて16頭中3頭
a 試 験 日:平成16年12月15日(水)
が読み取りできなかった。これは牛が頭を下げ
午前9時40分~
b 読み取り対象:肥育牛
て歩行することによって、その電子耳標がアン
テナの読み取り範囲の下を通過したためである。
(斉藤農場、塚田畜産、長野出荷)28頭
今回、採用したアンテナは幅50 cm×高さ60 cm
c 耳標装着:平成16年12月14日(水)さいた
であり、大型のアンテナを採用すればアンテナ
-28-
の読み取り範囲が広がり、
100%の読取率が期待
ルの関係で据置型リーダでは読むことができな
できると考えられた。
かった。
なお、長野出荷分の12頭はと畜のスケジュー
表3-15 読み取り結果
耳標種類
肥育牛
札型
読み取り数
読み取り数
読み取り率
読み取り率
(%)
(%)
100
2
66.7
4
4
100
3
75
3
3
100
3
100
3
3
100
3
100
貼付型
3
3
100
2
66.7
札型
10
10
100
-
-
ボタン型
2
2
100
-
-
28
28
100
13
82.3
寸法
質量
(塚田畜産) ボタン型
(長野)
据置型リーダによる
3
札型
肥育牛
数
ハンディリーダによる
3
(斉藤農場) ボタン型
肥育牛
個
合計
⑥ 第二回実証の試験材料
a 供試牛と装着耳標種類 (表3-16)
札型
ボタン型
合計
4
6
10
肥育牛
b 電子耳標
(表3-17)
種類
準拠規格
通信方
式
1
札型電子耳標
ISO11784/11785
FDX-B
73×58×2.2 mm
11.7g
2
ボタン型電子耳標
ISO11784/11785
FDX-B
33 mmφ×6 mm
8.2g
c リーダ
(表3-18)
ハンディリーダ
型式
メーカ
仕様
ISOMAXIII
DATAMARS
1000ID のメモリ機能
-29-
⑦ 第二回実証の読み取り試験
a 試
験
e 読み取り結果:
(表3-19)
日:平成18年3月2日(木)
耳標種類
個数
読み取り
読み取り率(%)
午前9時~
1
札型
4
4
100
b 読み取り対象:肥育牛10頭
2
ボタン型
6
6
100
合計
10
10
100
c 耳 標 装 着:平成18年3月2日(木)
右耳に装着
d 読 み 取 り:と畜前の誘導路にて静止
読み取り率は100%であった。
している牛の電子耳標を
ハンディリーダにて読み
取った。
第一回実証試験の時には、と畜前の誘導路で現
在装着されている耳標のバーコードをバーコード
リーダで職員が読んで、確認をしていた。今回の
試験時には耳標のバーコードをリーダで読むこと
は手間が掛かるので止め、耳標の個体識別番号を
目視で読み、手元にある個体識別番号がプリント
されたリストを職員がチェックする方式になって
いた。そのため、読み取りの作業効率の比較はで
きないが、バーコードをバーコードリーダで読み
取る場合と比較すると、電子耳標の場合は耳標の
向きや表面の汚れに関係なく読み取ることができ
るため、作業効率は高いと想定された。
電子耳標を読み取る
図3-27 スティックリーダ
なお、ここでの読み取りのように、読み取り作
業が誘導柵の外から行われる場合は写真(図3
読み取った番号の表示
図3-26 と畜場におけるハンディリーダに
よる読み取り試験
-27)に示すようなアンテナがスティック状になっ
ているスティックリーダを使用すると、作業効率
はアップすると考えられた。
-30-
6)子牛市場における電子耳標の適用調査
イ 開催日における牛のフローと作業
① 電子耳標の適用調査の目的
家畜に装着された電子耳標の読み取りが実
次にこの市場における牛のフローを示す。
際に行われることが想定される場所として子
図3-29の写真は額票を付けた牛の例を示す。
牛市場がある。子牛市場での電子耳標の適用
(他の子牛市場での撮影)
の可能性および市場における電子耳標導入の
メリットを調査する。
② 調査場所:全農とちぎ矢板家畜市場
(栃木県矢板市越畑明神前328-1)
③ 実施日:平成18年2月24日(金)
④ 調査
ア 市場の概要
・開催日:2日/月
図3-29 額標を付けた子牛
・上場牛:和牛子牛(月齢8~9ヶ月)
・取扱頭数:約350頭/日
市場の中央部の写真を図3-28に示す。
図3-28 市場の中央部(左前方に体重計が見える)
図3-30 矢板家畜市場における牛のフロー図
購買者用係留場
③
②
購買者
用係留
場
待機場
体重計
(耳標のバー
コード読み取
りを行う)
(左右に2基)
⑤
競り場
①
⑥
④
-31-
作業は次の順序で行われる。
a 開催日の当日、会場に到着した牛はまず会
場における管理のためにあらかじめ決めら
れている数字を書いた額票(31ページの写
真(図3-29)参照)を付けられ、体重が測
定される。計測された体重に手動で入力さ
れる額標の数字が付加され、場内のパソコ
・適用するリーダ:
据置型リーダ、
grident 社製 DAF006
ISO11784/11785準拠
アンテナ寸法:
60×50×2.5cm
IP 65
ンに記録される。
図3-31 アンテナの写真
b 体重の計測が完了した牛は待機場の額票と
同じ番号の掲示の下に運ばれ、待機する。
この場所では牛は体重測定時に牛綱で引かれ
c 係留場では買い手の下見とともに、職員2
ながら体重計に乗り、一時、静止されられるの
人による牛に装着されている耳標のバーコ
ードの読み取りが行われる。これはハンデ
で、電子耳標を確実に読むことができる。
図3-34に体重計部の写真を示す。
ィタイプのリーダで行われる。
350頭のバー
コードの読み取りにおよそ1時間を要す。
d 読み取りが終わった牛は、待機場から出さ
れ、競り場の入り口の前で待機する。
e 競り場に入り、
ア で計測された体重と額票
が表示された電光掲示版の下で一頭ずつの
競りが行われる。
f 競りが終わると、購買者用係留場に運ばれ
図3-34 体重計(牛の出側から見る)
る。
ウ 電子耳標読み取りシステムの適用
エ 電子耳標導入によるメリット
市場での牛のフローおよび市場のレイアウ
市場の責任者からのヒアリングに基づき電
トを考慮して、図3-32のような適用が最適と
子耳標の導入のメリットを考察すると、下記
考えられる。
の点が上げられる。
・体重測定時に牛毎の額票の数字を手動でイ
・取り付け場所:左右の体重計の柵に取り付ける。
アンテナ
柵
アンテナ
ンプットする手間が省ける。また、入力エ
ラーもなくなる。
柵
・待機時に耳標のバーコードを読み取ること
が不要となり、省力化が図れる。
体重計
秤
制御部
秤
秤
秤
96cm
96cm
図3-32 アンテナ取り付け構想図
-32-
(2) データ収集・管理試験
して、Web、インターネット、i モードなど
を利用し、模擬登録センター、農場、と畜
1)目的
場などのネットワークシステムを継続して
現行のバーコード耳標システムに代わる電
実証した。
子耳標による個体識別システムとして、電子
耳標、読み取り装置、データ送受信およびデ
ータの分析・整理機能を備えたモデルシステ
ムを構築し、農場、家畜市場及びと畜場にお
ける家畜の個体識別番号の確実かつ効率的な
システムへの取り込みを実証する。
4)システム開発
① データ収集・管理試験システム
データ収集・管理システム開発として以
下のソフトウェアを開発した。
・サーバ用プログラム
・PC 用プログラム
2)システム開発の基本条件
・PDA 用プログラム
電子耳標の有効性を実証するための環境と
・携帯電話用プログラム
して、49頁の図3.53(1)実証実験ネット
ワーク構成(電子耳標)に示すようなネット
ア データ収集・管理
ワークを対象とする。これにより、生産、肥
PC および PDA の場合は、個体識別登録と
育農家、家畜市場、食肉処理場(と畜場)と
して、出生登録、異動登録(転出・死亡)、転
模擬登録センターを、Web、インターネット、
入登録、搾乳乾乳登録を行い、牛の情報を
i モードなどの最新の情報通信技術で結ぶモ
登録して表示・帳票出力を行う。また、耳
デルを具体化すること。
標読取関連として、耳標読取対象の設定、
現行のバーコード耳標システムを50頁の図
3-33(2)
(参考)家畜個体識別システムの
データの流れ(バーコード耳標による)を示
読取不能時の原因登録、
耳標再登録を行い、
耳標管理を行うことにした。
さらに、携帯電話の場合は、個体識別登
録表示として、出生登録、異動登録(転出・
す。
死亡)を行い、
牛の情報を登録して表示を行
3)システム開発の経緯
うことにした。
① 15年度は、電子耳標の装着と読み取りシ
ステムの設置、データ送信システムと分
イ データ送受信
析、整理機能を備えたモデルシステムを
PC および PDA の場合は、センターサー
パソコン(PC)および携帯端末(PDA)で
バ送受信機能として、牛毎の個体識別情
構築した。
報、異動情報、耳標読み取り結果の情報
をセンターサーバに送信し、センターサ
② 16年度は、
モデルシステムを家畜改良セン
ターおよび斉藤農場ならびにさいたま市食
ーバにある最新情報(転入情報など)を
取得することとした。
肉市場に設置し、実験稼動させ、携帯電話
また、携帯電話を利用した場合は、セン
によるデータ送信システムと分析、整理機
ターサーバ送受信機能として、牛毎の個体
能を備えたモデルシステムを構築した。
識別情報、異動情報をセンターサーバに送
信し、
センターサーバにある最新情報(転出
③ 17年度は、
16年度のモデルシステムを継続
-33-
など)を取得することとした。
表示する。
ウ 農家等の携帯端末(PDA)機能
ウ 模擬登録センター
模擬登録センターについては、実験デー
タ集計分析機能を持ち、個体の出生、異動
農家等のパソコン(PC)機能と同等とす
る。
等のデータベースを管理し、個別データの
消費者閲覧を可能とした。また牛個体識別
エ 農家等の携帯電話機能
データベース、実験データベースを管理し
農家コード、ID 番号、品種、性別、生年
耳標発行を可能とし、さらに Web で情報を
月日、
母牛 ID 番号、
異動内容、
異動年月日、
公開し、セキュリティを確保することがで
耳標再発行データなど個体識別データを登
きることとした。
録する。また、登録データをセンターサー
バに送信する。
エ 機能の流れ
具体的なデータ収集・管理は、以下のス
オ 開発する機能等
本システムで開発する機能の一覧を表3
テップで行われる。
・アンテナから電子耳標を読み取り、PC の
-20、表3-21、表3-22に示す。また、デー
タ収集・管理システムの入出力データベー
データベースに登録する。
・ハンディリーダで電子耳標を読み取り、
ステーブルを表3-23に示す。
パソコン PC のデータベースに登録する。
・電子耳標、各牛情報をセンターサーバに
カ システムの主構成画面
パソコン PC、携帯端末 PDA、携帯電話の
送信登録する。
・センターサーバに登録されている情報を
メインメニューを図3-35、図3-36、図3
-37に示す。
携帯端末で受信する。
・センターサーバの情報を携帯電話で受信
する。
② システムの機能概要
ア 実験センターサーバ機能
実験データ集計分析機能を持ち、個体の
出生、異動等のデータベースを管理し、個
別データの一般消費者からの閲覧ができる。
イ 農家等のパソコン(PC)機能
農家コード、ID 番号、品種、性別、生年
月日、
母牛 ID 番号、
異動内容、
異動年月日、
耳標再発行データなど個体識別データを登
録する。また、牛舎等での電子耳標読取デ
ータと共に登録データをセンターサーバに
送信すること。データ受信機能はセンター
サーバから必要なデータを受信し、格納し
-34-
図3-35 メインメニュー(パソコン PC)
図3-36 メインメニュー(携帯端末 PDA)
-35-
図3-37 メインメニュー(携帯電話)
表3-20 データ収集・管理機能
処理概要
登録
処理名
処理内容
出生情報
生年月日・品種などの登録
異動情報
転出・死亡などの登録
農家情報更新
農家情報を更新する
搾乳乾乳
牛の状態が搾乳か乾乳どちらかを登録する
家畜市場
上場日・取引内容などの登録
食肉センター
荷受業者・と畜日などの登録
輸入牛
輸入先国名などの登録
輸出牛
輸出先国名などの登録
転入情報
転入登録
耳標読取対象登録
耳標読取対象の耳標番号登録
耳標読取休止登録
耳標読取対象外の耳標番号登録
耳標読取不能原因登録
耳標不読取結果の原因登録
耳標再発行
枚数・脱落理由などの登録
耳標読取対象一覧
耳標読込休止一覧
読取不能原因登録済一覧
表示
詳細表示
牛基本情報
牛 1 頭毎の基本情報・異動履歴表示
既存牛一覧
農家の既存牛一覧
取扱牛一覧
農家の取扱牛一覧
既存牛一覧
農家の既存牛一覧
取扱牛一覧
農家の取扱牛一覧
月別移動数一覧
農家の牛月別移動数一覧
耳標読取結果
耳標読取結果を一覧表示
異動結果一覧
農家牛の異動一覧
耳標不読取結果一覧
耳標不読取結果一覧(不読取全件表示)
検索
農場コード検索
農場コードの検索画面
メイン
メイン画面表示
各処理を選択する画面を表示する
ログイン
ログイン
農家コード・パスワードの確認
送信
サーバ登録
農家が保持している情報をサーバーに送信
受信
サーバ情報受信
サーバー側の情報受信
ISO コードの読取
ISO コードの読取
帳票
読取
耳標読取 HD
耳標読取自動
-36-
表3-21(携帯端末 PDA)
処理概要
登録
処理名
処理内容
出生情報
生年月日・品種などの登録
異動情報
転出・死亡などの登録
転入情報
転入登録
家畜市場
上場日・取引内容などの登録
食肉センター
荷受業者・と畜日などの登録
輸入牛
種別・輸入先国名のどの登録
輸出牛
輸出先国名などの登録
①耳標読取対象外の耳標番号登録
耳標読取情報
②耳標不読取結果の原因登録
耳標再発行
枚数・脱落理由などの登録
搾乳乾乳
牛の状態が搾乳か乾乳どちらかを登録する
農家情報更新
農家情報を更新する
牛基本情報
牛 1 頭毎の基本情報・異動履歴表示
取扱牛一覧
農家の取扱牛一覧
既存牛一覧
農家の既存牛一覧
既存牛一覧
農家の既存牛一覧
月別異動数一覧
農家の牛月異動数一覧
耳標不読取結果一覧
耳標不読取結果一覧(不読取全件表示)
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農家コード・パスワードの確認
送信
サーバ登録
農家が保持している情報をサーバに送信
受信
サーバ情報受信
サーバ側の情報受信
読取
ISO コードの読取
ISO コードの読取
表示
帳票
表3-22(センタサーバ)
処理概要
処理名
処理内容
登録
各情報登録
農家より送られた情報をサーバ DB に登録
ダウンロード
情報ダウンロード
農家にサーバ DB の情報を送る
ISO コードをキーに牛 1 頭毎の基本情報・異動履歴表示
牛基本情報
(輸入者・と畜者・輸出者情報も含む)
実験関係者用表示
DB のテーブル内容表示
携帯端末用表示
携帯端末用表示用の表示画面作成
耳標管理
耳標
耳標管理
月次分析
月次分析
月次分析結果レポート作成、出力
携帯電話
携帯電話用開発
携帯電話から情報の登録受付
表示
-37-
表3-23
データ収集・管理入出力データベーステーブル
No
画面
入力テーブル
出力テーブル
1 ログイン
農家マスター
農家マスター(パスワード削除)
2 メイン(農家)
牛個体識別台帳テーブル
-
耳標管理テーブル
3 メイン(家畜市場)
牛個体識別台帳テーブル
-
耳標管理テーブル
4 メイン(食肉センター)
牛個体識別台帳テーブル
-
耳標管理テーブル
5 メイン(輸入業者)
牛個体識別台帳テーブル
-
耳標管理テーブル
6 メイン(輸出業者)
牛個体識別台帳テーブル
-
耳標管理テーブル
7 出生登録
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
異動履歴テーブル
品種マスター
異動履歴サマリーテーブル
都道府県マスター
8 異動登録
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
耳標管理テーブル
異動履歴テーブル
異動履歴テーブル
履歴状態マスター
異動履歴予約テーブル
異動履歴サマリーテーブル
9 農家情報更新
農家マスター
農家マスター
都道府県マスター
所属団体マスター
耳標配布不要マスター
10 搾乳、乾乳
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
異動履歴テーブル
異動履歴サマリーテーブル
11 耳標読取対象
12 耳標読取休止
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
耳標読取対象履歴テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標読取休止テーブル
耳標管理テーブル
耳標読取休止履歴テーブル
耳標読取対象外理由マスター
13 耳標読取不能原因
14 耳標再発行
耳標読取不能原因テーブル
耳標読取不能原因テーブル
耳標読取不能原因マスター
耳標読取結果サマリーテーブル
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
異動履歴テーブル
耳標脱落理由マスター
異動履歴予約テーブル
耳標再発行テーブル
-38-
15 耳標読取
耳標読取対象履歴テーブル
耳標読取結果テーブル
耳標読取結果テーブル
耳標読取不能原因テーブル
耳標読取休止テーブル
耳標読取結果サマリーテーブル
データ管理テーブル
データ管理テーブル
16 耳標読取対象一覧
耳標読取対象履歴テーブル
-
17 耳標読取休止一覧
耳標読取休止履歴テーブル
-
18 耳標読取不能原因一覧
耳標読取不能原因テーブル
-
耳標読取不能原因マスター
19 牛基本情報
牛個体識別台帳テーブル
-
異動履歴テーブル
異動履歴予約テーブル
品種マスター
履歴状態マスター
20 取扱牛一覧
牛個体識別台帳テーブル
-
異動履歴テーブル
異動履歴予約テーブル
品種マスター
履歴状態マスター
21 既存牛一覧
牛個体識別台帳テーブル
-
異動履歴テーブル
品種マスター
履歴状態マスター
22 取扱牛一覧(帳票)
牛個体識別台帳テーブル
-
品種マスター
履歴状態マスター
23 既存牛一覧(帳票)
牛個体識別台帳テーブル
-
品種マスター
履歴状態マスター
24 耳標読取不能結果(帳票)
耳標読取不能原因テーブル
-
25 月別異動数一覧(帳票)
異動履歴サマリーテーブル
-
26 耳標読取結果日別(帳票)
耳標読取結果サマリーテーブル
-
27 耳標読取結果月別(帳票)
耳標読取結果サマリーテーブル
-
28 異動履歴一覧(帳票)
牛個体識別台帳テーブル
-
異動履歴テーブル
品種マスター
履歴状態マスター
農家マスター
29 家畜市場
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
家畜市場テーブル
家畜市場取引内容マスター
-39-
牛個体識別台帳テーブル
30 食肉センター
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
異動履歴テーブル
食肉センターテーブル
異動履歴予約テーブル
食肉センターテーブル
異動履歴サマリーテーブル
31 輸入牛
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
耳標管理テーブル
輸入業者テーブル
異動履歴テーブル
品種マスター
異動履歴予約テーブル
輸入牛状態マスター
異動履歴サマリーテーブル
輸出入先国マスター
輸入業者テーブル
農家マスター
32 輸出牛
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
耳標管理テーブル
輸出業者テーブル
異動履歴テーブル
輸出入先国マスター
異動履歴予約テーブル
農家マスター
異動履歴サマリーテーブル
輸出業者テーブル
33 転入
牛個体識別台帳テーブル
牛個体識別台帳テーブル
耳標管理テーブル
異動履歴テーブル
異動履歴テーブル
異動履歴予約テーブル
農家マスター
異動履歴サマリーテーブル
食肉センターテーブル
輸入業者テーブル
輸出業者テーブル
34 農家コード検索
農家マスター
-
都道府県マスター
所属団体マスター
35 耳標読取(HD)
ー
耳標読取テーブル
36 耳標読取(自動)
ー
耳標読取テーブル
37 エラー発生時
-
エラー履歴テーブル
画面、図3-43 取扱牛リスト(月別異動数)
キ 提供データ等
模擬登録センターでは、これらのデータ
一覧画面、図3-44 耳標読み取り結果(日
をデータベースに収集・管理して必要に応
別)画面、図3-45 耳標読み取り結果(月
じて、経営、管理に役立つ資料を作成、提
別平均)画面、図3-46 異動履歴一覧画面
供する。
などを示す。
これらの例として、図3-38 牛基本情報
端末 PDA では、各牛の固体識別情報とし
画面、図3-39 既存牛一覧画面、図3-40
て、出生、異動(転出、死亡)
、転入、搾乳、
取扱牛一覧画面、図3-41 耳標読み取り不
乾乳などの登録や、耳標読み取りに関して
能結果一覧画面、図3-42 月別異動数一覧
読み取り対象固体の設定、読み取り不能時
-40-
の原因などの登録を行い、それを模擬登録
携帯電話に表示する画面を図3-47 出生登
センターに送受信する。
録画面、図3-49 異動登録画面、図3-48、
携帯電話では、記憶容量の関係で簡易な
3-50 登録完了画面、基本情報閲覧のため
登録、固体識別情報として出生、異動(転
の図3-51 詳細表示画面、
図3-52 異動履歴
出、死亡)の登録とこれらの模擬登録セン
画面を示す。
ターと送受信することができる。この際の
耳標番号を選択することにより、耳標情報および異動履歴情報を表示する。
図3-38 牛基本情報画面
-41-
取り扱って耳標のうち現在の状態が「出生」
「転入」の耳標番号を表示する。
図3-39 既存牛一覧画面
取り扱っている全ての耳標を表示する。
図3-40 取り扱い牛一覧画面
-42-
図3-41 耳標読み取り不能一覧画面
図3-42
月別異動数画面
-43-
図3-43 取り扱い牛リスト一覧画面(月別異動数一覧)
図3-44 耳標読み取り結果(日別)画面
-44-
図3-45 耳標読み取り結果一覧(月別平均)画面
図3-46 異動履歴一覧画面
-45-
出生登録
i*
i*
i*
異動登録
耳標番号
詳細表示
異動内容
生年月日
耳標番号
年
雄雌の別
月 日
異動年月日
オス
年
種別
月
日時
1999年12月25日
分
ホルスタイン種
譲受け又は譲渡し先
母牛固体識別番号
登録
戻る
生年月日
輸入年月日
2001年12月25日
雄雌の別
耳標番号
メス
母牛識別番号
101010101010
図3-47 出生登録画面
戻る
登録
図3-49 異動登録画面
戻る
図3-51 詳細表示画面
i*
i*
i*
出生登録
履歴
詳細登録→異動履歴
異動登録
登録が完了しました。
続けて登録
戻る
登録が完了しました。
続けて登録
戻る
戻る
図3-48 登録完了画面
図3-50 登録完了画面
-46-
図3-52 異動履歴画面
5)実証実験
④ 矢板家畜市場
市場で扱うデータと作業の流れについて
① 家畜改良センター
調査した。
広大な場域の中で、実証実験を実施する
ア 市場で扱うデータ
場所は、搾乳パーラーとその管理室が割り
当てられた。同センターの実験サイトに設
全国個体識別データベースに関するもの
置するパソコンと模擬登録センターのサー
として、市場では、出場する牛について売
バを接続する回線を確保することが必要と
主からの受け入れ、買主への受け渡しを異
なり、有線、無線と商用通信サービスの利
動データとして、全国個体識別データベー
用という選択肢から、当初は有線でNTT
スへ登録する。そのために受け入れ時に売
の電話回線の利用を考えたが、設備がない
主と牛の個体、受け渡し時に買主と牛の個
ことから無線の採用を検討し、ボーダフォ
体を、それぞれ確認する必要がある。
ンのコネクトカードを利用できることを確
イ 市場のせりに関するもの
認し、インターネットが利用できる環境と
和牛子牛のせりに当たっては、取引する
することにした。試験対象牛への電子耳標
個体の肥育結果を予測するための情報を売
から据え置きアンテナと備え付けパソコン
主、市場が買主に開示している。
(PC)を利用し、読み込んだ牛データ(ID)
買主は事前に市場から送付されたせり出
を模擬登録センターのサーバへ送信登録が
場名簿に表示された各種データにより購入
できた。
予定を立てる。データには子牛の父、母、
祖父母名やそれらの育種価、脂肪交雑、枝
肉重量の育種価レベル、脂肪交雑の期待育
② 斉藤農場
ボーダフォンのコネクトカード(無線)
種価レベルによる育種価、更には体格審査
が利用できることから、試験対象牛への電
結果により一定の得点を得たものを本登録
子耳標から据え置きアンテナおよびハンデ
牛として認められたことが表示される。ま
ィリーダを利用し、読み込んだ牛データ
た、供用種雄牛情報(血統、産地、間接検
(ID)を模擬登録センターのサーバへ送信
定成績、不良遺伝形質、推定育種価等)が
し、センターサーバから携帯端末(PDA)お
表示される。さらに損徴表示、予防接種実
よび携帯電話へのデータ受信を行った。ま
施済表示を行う。
た、農家用ノートパソコン(PC)により ID
これらの子牛の個体履歴、管理データが
番号および牛の各情報をセンターサーバへ
売主、市場、買主に共有されることで、売
送信登録することができた。
買が円滑に行われ適正な価格で取引が成立
する。
ウ データの収集、通知、確認の流れ
③ さいたま市食肉中央卸市場
ボーダフォンのコネクトカード(無線)
a 農家やそれを支援する各種団体が関係
を利用し、試験対象牛の電子耳標からハン
することから1頭の子牛の出生から食
ディリーダを利用し、読み込んだ牛データ
肉として最終評価を受けるまでその固
(ID)を基に模擬登録センターのサーバへ
有のコードがキーとして有効であるこ
転出、搬入、と畜の届出を行い、実験セン
とを改めて確認した。
b 一方、これ程多岐にわたるデータの処
ターが受付たことが確認できた。
理では、人為的ミスの発生、利害に関
-47-
6)まとめ(3年間の総括)
係するトラブルなどの発生を防ぐ必要
があり、人手の介在を少なくする工夫
電子耳標の装着と読み取りシステムの設
が求められる。
置、およびデータ送信システムと分析、整
c せり出場申込から個体転出転入登録の
理機能を備えたモデルシステムをパソコン
間、市場はそのせり日限りの番号(出
(PC)および携帯端末(PDA)ならびに携帯
場名簿上の番号資格)
を子牛毎に与え、
電話で構築でき、さらに、Web、インターネ
これを可視識別コードとして額票で個
ット、i モードなどを利用し、模擬登録セ
体に取り付け表示する。せりに先行す
ンター、農場、と畜場などのネットワーク
る買主への情報提供から決済、引取り
によるシステムが実証でき、また、家畜市
までこの番号が使用される。この一連
場での導入にあたっての留意点が把握され、
の処理の流れの中で電子耳標を介した
本開発の目的を達成できた。このシステム
データ授受、変換、伝票発行の流れを
をもとに今後の実用化の可能性が確認され
システム化することは円滑な、信頼性
た。
の高い業務処理には不可欠である。
d 市場はせり開始までに買主に下見によ
る子牛個体の確認を推奨しており、取
引決定の重要な要素となっている。こ
れを支援する動画情報の提供も子牛取
引には有効である。
e 体重計測の自動化と計測データの転送、
それと同時に個体コード読み取りによ
る額票ナンバー発行の自動化が考えら
れる。
f 換畜券の自動発行と買主コードの自動
収受が可能となる。
g 取引の現金主義からネット決済への移
行は時代の流れであり、導入について
検討する必要がある。
h 既存のせり・システムとの融合や補完
を検討すべきである。
i せりに関わる人が共用できる個体情報
を取得し表示する端末が必要となる。
j 市場における取引に関係する人の持つ
情報についてどんなものを、どの人ま
で開示すべきなのか、一方であまり知
られたくない情報の保護をどう共存さ
せるか、慎重に検討する必要がある。
-48-
-49-
-50-
4.成果のとりまとめと活用について
(1) 耳標の特性と利用
3)ボタン型耳標
実証試験に供した耳標は 貼付型、札型、ボ
タン型の3種類である。
ボタン型耳標は構造的に安定しており使用
中の故障は少なく、耳の空きスペースに装着
できる点などが良い。応答距離等は室内テス
1)貼付型耳標
トでは札型と大差ないが、実証試験では読取
貼付け耳標は15,16年度実証試験で剥がれ
率は多少落ちる。アンテナ面積等が原因と思
による脱落など出たため、16年度からは不使
われる。視認性の面では劣るが、手書き・レ
用とした。しかし緊急・短時間の調査等の利
ーザーマーキング等で番号を入れられる。世
用なら利用価値はある。
界的にも電子耳標はほとんどがボタン型であ
る。
2)札型耳標
札型耳標は、現在のバーコード個体識別耳
電 子 機 器 の 生 産 コ ス ト は 100,000 個 、
標とほぼ同寸である。目視が行い易いこと、
1,000,000個などのロットが通常であり、試験
扱い易いことなどメリットは多い。構造的に
製作の1000枚程の単位の場合単価が非常に高
アンテナコイルと IC を樹脂成型時にはさみ
価となる、
また実用生産時もプリント配線など
込み一体成型品とすることで、アンテナ面積
大量生産レベルを前提に考慮しなければ実用
が広く取れるので応答距離などでは有利であ
的な価格にならない。
現時点における実用面で
る。
はボタン型が良いと言える。
視認性が高く、標記は手書き、レーザーマ
デメリットとしては、現状ではバーコード
(2) データ収集のための整備(アンテ
ナ特性と場所等その他)
耳標が両耳に装着されていて子牛など耳が小
既存施設内にアンテナを取付ける場合、
改装
さい場合は追加装着が困難な場合がある。ま
などどこまで手間と費用をかけられるかが問
た同耳標は脱落等による事故が生じ易く、バ
題となる。自動読み取りにおいても読取率は
ーコード耳標は両耳に装着されているため、
100パーセントを確保する必要があり、参考例
片方が脱落してももう一方の番号確認により
のオーストラリアで実用化しているように、
ア
再装着が容易であるが、電子耳標の場合には
ンテナ設置の通路を含めた施設の整備が必要
コスト面から両耳装着は困難と思われるので
である。
ーキング等利用目的に応じて使いこなせる。
脱落時の個体番号確認が難しい。
今回許容範囲で通路内にアンテナをせり出
数例であるが、装着時何かに挟まる等の事
す、可動式分離柵を設置するなど対策を施し、
態で耳標自体が極端に折り曲げられ、IC とア
有効な結果を得たが、
完全な対応策までは至ら
ンテナコイルのレーザー融着部が接続不良に
なかった。
なると思われる事例があった。対策としては
FPC(フレキシブルプリント配線)の利用があ
るが、試験では生産ロット・コスト面から実
既存の設備内で自動読み取りを実現するた
めには、
①取り付け柵部及びアンテナ至近部は金属を
使用せず木などにする。
施できなかった。
②アンテナ前通路は牛が一頭ずつ通過するよ
-51-
(4) データ収集・管理システムの開発
及び現地実証試験
うな幅または形状にする。
③体重計に設置する。
などにより、
1頭分離にある程度の人手をかけ
1) 試験成果
試験結果からデータの管理法として、模
て確保すれば確実な読取りが出来る。
また、
自動読取は多頭数を計測する必要のあ
擬登録センターでは、各牛の個体識別情報
る家畜市場、と畜場、公共牧場、大農場等や自
として、出生、異動(転出・死亡)、転入、搾
動搾乳、哺乳ロボット、自動給餌等の自動化施
乳、乾乳など、耳標読み取り関連として、
設への導入が期待されるが、
一方で小頭数や測
耳標読み取り対象の設定、読み取り不能時
定場所の移動に対応したハンドリーダの利用
の原因などをデータベースに登録し管理す
を併せて考える必要がある。
ることで、収集されたデータを基に牛基本
情報、既存牛一覧、取扱牛一覧、耳標読み
(3) その他の活用
取り不能結果、月別移動数一覧、耳標読み
電子耳標は、
自動測定や情報量の拡充が可能
なことから、
トレサビリティのための個体識別
取り結果(月別)
、異動履歴一覧のデータを
作成することができる。
にのみ利用するだけでなく、
家畜生産管理の中
携帯端末 PDA では、各牛の個体識別情報
で利用拡大を図ることにより、
経営全体の中で
として、出生、異動(転出・死亡)、転入、搾
のコスト評価を行うことが望まれる。
乳乾乳などの登録、耳標読み取り関連とし
とくに、 搾乳ロボット・哺乳ロボット用な
て、耳標読み取り対象の設定、読み取り不
ど閉鎖系システム内では電子個体識別標識は
能時の原因などの登録ができ、その情報を
十分実用化されており、
これらの識別情報がト
模擬登録センターに送受信することができ
レサビリティ主体の電子耳標の情報と連動す
る。
ることにより情報管理も容易になると同時に
携帯電話では、記憶容量の関係で簡易な
各牛の個体識別情報として、出生、異動(転
利用拡大が期待できる。
たとえば、登録情報、育種改良情報、牛群検
定情報、疾病履歴や治療履歴情報、繁殖管理情
出・死亡)の登録ができ、その情報を模擬登
録センターに送受信することができる。
報等、
生産現場の管理情報が一元的に管理でき
経済性から見ると、携帯端末 PDA は、パ
るようになれば、
電子識別標識のコスト負担は
ソコンが 20 万円とすれば、
これに比べ価格
問題にならないであろう。
が三分の一以下、携帯電話は六分の一以下
しかし、これを実現するためには、情報の共
通化や情報を管理する団体等の連携協力も重
で、本システムを有効に利用することがで
きる。
要である。
産業界でもユビキタス社会実現を検討して
いるが、
そこでも情報の共通化と情報管理やセ
2) 成果の活用
①携帯端末等の活用
携帯端末では、パソコンと同一機能が実
キュリティが問題となっている。
このように、
電子耳標による個体識別技術に
現でき、コンパクトであり、持ち運びに便
ついても、情報収集技術の開発と平行して、情
利で、全国どこからでもデータセンターに
報の標準化、
統一化と情報管理制度や連携の面
アクセスすることができる。
携帯電話では、
記憶容量の制約はあるが、
も整備が重要である。
コンパクトであり、誰もが入手し易く、し
-52-
かも情報は限定されるが全国どこからでも
においても、随時発生する個体確認にはこ
データセンターにアクセスできる。しかも
れらの成果を取り入れることで、作業を簡
データ端末としては非常に安価である。さ
素化するばかりでなく、場所を選ばない必
らに、携帯電話は、記憶容量が増大してい
要情報の検索、登録情報の送出など、事後
く傾向にあり、i モードの普及もあり、将
の作業をいつでも、どこでも可能とするユ
来はパソコンと同一機能が実現できる可能
ビキタス時代の畜産経営、管理作業を実現
性がある。
するために有効となる。
携帯端末、携帯電話を利用することで、
③ 今後、端末機器の情報容量が大きくなる
送信したデータをその場で即座に確認でき
流れにあることから、個体コードをキーと
ることにより、情報のトレーサビリティに
する必要情報の内容を充実できることから、
大いに貢献できるものである。
さらにきめ細かな管理の様々な場面で役立
② データ端末が小型・軽量になることによ
り、飼養の現場、家畜市場やと畜場など管
理の現場、さらには移動、輸送などの場面
-53-
てることができる。
参
考
資
料
オーストラリアにおける牛の電子標識による
個体識別システムに関する実態調査報告(概要)
1 調査機関名および調査実施者
年1月1日以降は加盟国すべての羊,山羊に電
子標識の装着を義務づけることにしている。
調 査 機 関:富士平工業株式会社
義務化を実施するためには,適用する電子標
調査実施者:麻生 博, 中村 雄有
識による個体識別システムの信頼性が高く,か
2 調査の目的
つ省力化されている必要がある。そこで,オー
オーストラリアのヴィクトリア州では世界に
ストラリアにおいて牛に適用されている電子標
先駆けて全国家畜個体識別制度(NLIS)によっ
識による個体識別システムの実態を調査し,高
て2002年1月1日以降に生まれたすべての牛に
信頼性と省力化を実現した要因を考察し,我が
電子標識の装着を義務化した。さらに,2005 年
国における次世代の家畜個体識別システム構築
7月1日からは全国約 27,000 千頭の牛への電
の参考とする。
子標識の装着を義務化した。一方,EU では 2008
3 調査の日程
月/日
地名
11/10(木)
11/11(金)
訪問,調査先
(成田 → シドニー)
シドニー
MLA 内の NLIS 訪問,調査
11/12(土)
(休日)
11/13(日)
(シドニー → メルボルン)
11/14(月)
Warragul
と畜場 R.Radfords & Son Pty. Ltd 訪問,調査
Tarwin Lower
農場 John Wyld’s property 訪問,調査
Pakenham
家畜市場 Victoria Livestock Exchange 訪問,調査
Warrnambool
家畜市場 Warrnambool Livestock Exchange 訪問,事前調査
11/16(水)
Warrnambool
家畜市場 Warrnambool Livestock Exchange 訪問,調査
11/17(木)
Craigieburn
電子標識メーカ LEADER PRODUCTS 社訪問,調査
11/15(火)
11/18(金)
(メルボルン → 成田)
4 実態調査
(1) NLIS 訪問,調査
NLIS(The National Livestock Identification
訪問先:MLA (Meat & livestock Australia)
トラリアにおける肉牛と乳牛の個体識別と
NLIS
面談者:Mr. Rick Beasley (NLIS Operation
∗
System 全国家畜個体識別システム)はオース
トレースのためのシステムであると共に,そ
Manager)
れ を 実 施 す る MLA ( MEAT & LIVESTOCK
Mr. George Basha (NLIS Database
AUSTRALIA 豪州家畜生産者事業団)の中にあ
Services Manager)
る組織の名称になっている。
(社)畜産技術協会 平成 17 年度海外畜産振興実態調査事業による海外調査報告
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1)NLIS における技術規格
た。
NLIS の技術規格には NLIS に適用される電
ている。この中で,NLIS の個体識別システム
2)NLIS によって現在承認されている
電子標識
が高信頼性を実現している主要な要因は下
NLIS は規格に適合している電子標識に対
子標識について最低の必須事項が記載され
記の三点にあると考えられる。
して承認を与えている。前記の規格に適合し
① HDX の適用:一般に HDX の方が FDX-B に
て承認を受けている電子標識は電子耳標2
比べて読み取り距離が長いと言われている。
種類とボーラス4種類の合計 6 種類である。
多くの RFID システムは両方の通信方式を
ボーラスは装着を明示するために'R'または
許容しているが、
NLIS では HDX のみに絞っ
'RUMEN'の文字を明示した耳標と組み合わせ
ている。
て使用される。
② 1.2m 幅の通路での確実な読み取りを規
定している。
③ 電子標識の脱落率を 3 年間で 3%未満とし
承認されている電子耳標(左)とボーラスと耳標の組合せの一例(右)
(NLIS の資料から転載)
右の写真は実際に電子耳標を装着した牛を
示す。電子耳標は右耳に装着しなければなら
ない。右耳に白く見えるのが NLIS の電子耳標
である。
右耳に NLIS の電子耳標を装着した牛
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3)NLIS が紹介しているリーダ
お,オーストラリアで使用されているリーダ
電子標識を読むリーダについて NLIS の技
は HDX のみ読めるものがある。ISO11785 では
術規格は言及していない。承認も認定もして
リーダは HDX および FDX-B の両方を読めなく
いないが,ハンディリーダおよび据置型リー
てはならないと規定している。
ダを紹介している。下にその写真を示す。な
ハンディリーダ
据置型リーダ
(NLIS の資料から転載)
(NLIS の資料から転載)
4)NLIS における個体識別番号
① データベースへの登録:電子標識メーカ
NLIS で適用されている個体識別番号は電
は,農家から通知された耳標に印字され
子耳標の表面に印字されている NLIS 番号
(16
る 16 桁の NLIS 番号を電子耳標の表面に
桁)および電子標識の中に記憶されている
印字すると共に,自社の持つ製造者番号
RFID 番号(15 桁)で構成されている。NLIS
(3 桁)と唯一性を保証するシリアル番号
番 号 で は Property Identification Code
(12 桁)からなる 15 桁の RFID 番号を電
(PIC)
(始めの 8 桁)を与えられたプロパテ
子標識に書き込む。電子標識メーカは完
ィが唯一性を保証するシリアル番号を作り,
成した電子標識を農家に納入すると同時
RFID 番号では製造者コード(始めの3桁)を
に,農家に代わって NLIS のデータベース
与えられた電子標識のメーカがそれを作る
へ NLIS 番号および RFID 番号を含む 40 桁
ことになっている。
の数字で個体識別番号を NLIS のデータベ
ースに登録をする。
NLIS 番号の例:3ABCD123LBA00002
② 移動の報告:各移動点にてデータベース
RFID 番号の例:951000005667748
5)NLIS のデータベース
へ報告される。
ここ NLIS には全国の牛の中央データベー
スがあり,現在 28 百万頭の牛が登録され,
その移動履歴が管理されている。
(2) と畜場訪問,調査
訪問先:R. Radford & Son Pty. Ltd,
このデータベースは,48 時間以内に特定の
牛がいたプロパティに同時にいたすべての
牛の現在の場所の特定を可能とすることを
目標として構築されている。
面 談 者 : Mr. Robert Radford (Managing
Director)
このと畜場ではと畜後,と体となった状態
で電子標識が読まれている。電子標識は生体
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では読まれず,ここだけで読まれるとのこと
(3) 農場訪問,調査
である。電子標識を読み取る据置型リーダは
訪問先:John Wyld's property,
2 個あって一つは電子耳標用,もう一つはボ
面談者:Mr. Lindsay Marriott
ーラス用となっている。写真は電子耳標を読
出荷のために牛の体重を測定し,一定の体
んでいるところを示している。右側にボーラ
重以上とそれ未満を仕分けしていた。牛を一
ス用のリーダが見える。
頭ずつ入側と出側に手動の扉のある秤に追
い込みに,一定の体重以上か,それ未満かに
よって出側の扉を開く方向を変えて仕分け
する。その際,側面にアンテナを設置してい
る据置型リーダで電子標識を読み,体重とと
もに記録する方式がとらえている。
と体の電子耳標の読み取り
現場で読まれたデータは事務所にあるパソ
コンにリアルタイムで伝送され,表示される。
と畜された牛の RFID 番号が左下に,枝肉情
報 と し て HSCW (Hot Standard Carcass
体重測定中の写真
Weight) データが右下に見える。ここから一
日一回 NLIS のデータベースへデータが纏め
ここでは牛は一頭一頭追い込まれ,静止し
て送られる。送られるデータの入力はすべて
た状態で体重が計測されるが,入側の通路に
自動入力され,手動で入力されるものはない
は牛が逆流しないように弁の効果を持つ逆
という。
流防止装置が付けられ,追い込み作業を容易
にしている。
管理パソコン画面
逆流防止装置
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(4) 家畜市場訪問,調査 その1
訪問先:Victoria Livestock Exchange
面 談 者 : Mr. Graham Osborne (Managing
Director),
Ms. Julie Khalid (System Manager)
据置型リーダによる読み取り
下の写真はシステムの全景を示す。確実に
読むためにとらえている方策を順次見てみ
る。
牛の誘導柵は幅を狭くしながら右にカーブ
している。
調査実施者による読み取り
アンテナの反対側には電波の遮蔽板があり,
オーストラリアにおける牛のセリは牛房を
囲む通路の上から牛を眺めながら行われる。
他の電子耳標を読まない配慮がなされてい
る。
ここで電子耳標の読み取りに使われている
のが釣り竿のように長いスチックを持った
スチックリーダである。読み取った RFID 番
号は無線で近くにある PDA に伝送され,そこ
で表示される。このリーダは Director の Mr.
Osborne の提案によって 2 年前に完成したも
のとのことである。
(5) 家畜市場訪問,調査 その2
読み取りシステムの全景
訪問先:Warrnambool Livestock Exchange,
面談者:Mr. Paul White (Manager)
下の写真はシステムの入側から見たもので
ある。柵の下側が緩やかに狭くなっている。
1)据置型リーダによる電子耳標の読み取り:
2頭が一緒に入ることを防止している。
プロパティからこの市場に運ばれてきた牛
はこのリーダによって電子耳標が読み取ら
れ,NLIS への報告に使用される。この市場
全体でこのシステムは6個設置されている
という。
入側から見る。
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下の写真は出側から見たものである。柵は
service guide」を見ても6レーンのものが
設置されているのはここ Warrnambool のみ
下が狭くなっている。測定すると,
柵の上側の幅 (内法)
:800 mm
である。
約2年半前の 2003 年 3 月に完成し
柵の最下部の幅(内法)
:400 mm
たとのことである。因みに幾らかと聞いた
となっていた。
ところ,60,000AU$ (約 540 万円)と言って
いた。
出側から見る。
マルチ・リーダシステム
下の写真 はアンテナを示す。
アンテナは木
(6) 電子耳標メーカ訪問,調査
に固定され,近傍に金属をなくし,電波の発
訪問先:LEADER PRODUCTS PTY LTD
生を妨げる要因を排除している。また,アン
面談者:Mr. Bruce Dumbrell(Director)
テナの幅が 600mm と狭く,牛の進行方向の検
Mr. Robert Dumbrell(Director)
出エリアを狭くしているのも確実に読むた
1)リーダプロダクツ社の電子標識
めに効果があると思われる。
電子標識の系列には,HDX の電子耳標,FDX
の電子耳標,ボーラス(HDX)の(大小)が
ある。
下の写真に示す HDX の電子耳標は Allflex
の電子耳標とともに NLIS の承認を受けてお
り,TI 社の長さ 32mm マイクロチップをその
まま樹脂の耳標に取り付けている。
アンテナ
2)マルチ・リーダシステム:体重測定機の出
側に設置されているのがマルチ・リーダシ
ステムである。秤一台に対し3レーン,合
計で6レーンになっている。NLIS の発行の
「 NLIS Saleyard reader and reader
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HDX の電子耳標
5 結び
2)電子耳標のリサイクル
と畜された牛に取り付けられていた HDX の
オーストラリアにおける牛用の電子標識システ
電子耳標はと畜場からリーダプロダクツ社
ムは,NLIS が信頼性の高い電子標識を選定し,ユ
へ送られてくる。リーダプロダクツ社はその
ーザがそれを使って信頼性が高い読み取りシステ
電子耳標の中にあるマイクロチップを取り
ムを構築するという構図になっていることが今回
出し,新しい電子耳標やボーラスに再利用す
の実態調査で明らかになった。
る。と畜された牛の電子耳標 1 個あたり
さらに,その高い信頼性と省力化を実現した要因
0.1AU$をと畜場に支払うという。
を考察すると,
次の点に要約されると考えられる。
すなわち,
①標識についての主たる要因は HDX の採用,読
み取り距離 1.2mの設定,脱落率3年間で 3%
以下と NLIS が技術規格に設定している。
②ユーザが構築する読み取りシステムの主たる
要因は各適用分野でユーザが信頼性,省力化
の観点から牛の通路の最適幅,
逆流防止装置,
さらに長いスチックリーダなどそれぞれ現場
電子耳標に内蔵のマイクロチップ
での発想によってリーダおよび牛の誘導を含
めた最適なシステムを構築している。
この点は今後我が国で電子耳標を普及させる場
合に大いに参考になるところであると思われる。
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