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平成27年11月号

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平成27年11月号
平成27 年 11 月号
平成 27 年 10 月に被用者年金制度(厚生年金と共済年金)の一元化が実施されたことで、遺族
厚生年金の年金額計算にも変更がありました。今回は後編として「長期要件の遺族厚生年金」の
年金額計算を取り上げます。
長期要件の遺族厚生年金とは
「老齢厚生年金を受給していた方、老齢厚生年金の受給資格期間(原則として、国民年金+厚
生年金+共済組合の加入期間が 25 年以上必要)を満たしている方」が死亡したときに支給され
るのが、「長期要件の遺族厚生年金」です。
長期要件というと、厚生年金に長期間加入した方が亡くなった場合に支給されると思われるか
もしれませんが、必ずしもそうではありません。例えば、20 歳から厚生年金に 5 年加入、その後、
国民年金に 35 年加入した夫が亡くなった場合、長期要件の年金額計算には、短期要件(厚生年
金加入中の死亡等)のように 300 ヵ月みなしがありませんので、妻に支給される遺族厚生年金の
年金額は実加入期間の 5 年分(60 ヶ月分)で計算されます。このような場合、受給できる遺族厚
生年金の年金額は年額数万円程度と少額になります。
長期要件の遺族厚生年金の年金額計算(一元化前と一元化後も同じ計算方法です)
昭和 29 年 10 月 2 日生まれの男性が以下の年金加入期間で、61 歳から特老厚を受給していた
が、平成 28 年 10 月に 62 歳で死亡した場合
妻は昭和 32 年 10 月 2 日生まれで、国民年金 480 ヵ月加入。18 歳未満の子はいない。
20 歳(S49.10)
35 歳(H1.10)
45 歳(H11.10)
60 歳(H26.10)
①国家公務員共済組合 180 ヵ月 ②厚生年金 120 ヵ月
国民年金 180 ヵ月
(第 2 号厚生年金被保険者)
(第 1 号厚生年金被保険者)
平均標準報酬月額 300,000 円
平均標準報酬月額 400,000 円
①国共済(第 2 号厚生年金被保険者)加入期間分の遺族厚生(共済)年金の年金額
・本体部分 300,000×7.125/1000×180 ヵ月×3/4=288,563 円
・職域加算額 300,000×0.713/1000×180 ヵ月×3/4=28,877 円
②厚生年金(第 1 号厚生年金被保険者)加入期間分の遺族厚生年金の年金額
・本体部分 400,000×7.125/1000×120 ヵ月×3/4=256,500 円
一元化後の遺族厚生年金の中高齢寡婦加算
「長期要件の遺族厚生年金」の場合、一元化後は厚生年金(第 1~4 号厚生年金被保険者)に
240 ヵ月以上加入した夫が死亡した時に、妻が次の A か B のいずれかに該当した場合に中高齢寡
婦加算(妻が 40 歳から 65 歳になるまで年額 585,100 円)が支給されます。
A.夫の死亡時に 40 歳以上 65 歳未満で子のない妻
B.夫の死亡時には子のある妻であったが、すべての子が 18 歳到達の年度末(障害等級 1 級・2 級
の子は 20 歳に達したとき)になり、遺族基礎年金が失権した時点で 40 歳以上 65 歳未満の妻
一元化が実施されなければ遺族年金は、このような受給でした。
59 歳(H28.10)
65 歳(H33.10)
①遺族共済年金(職域加算額)28,877 円
①遺族共済年金(本体部分)288,563 円
②遺族厚生年金 256,500 円
+
65 歳以降は併給されます
③老齢基礎年金 780,100 円
①は国共済から支給、②と③は日本年金機構から支給されます(以下、同じ)。
一元化前は、「長期要件の遺族厚生年金」への中高齢寡婦加算は厚生年金だけで 20 年以上加
入した方が亡くなった場合に加算されていました。同じく「長期要件の遺族共済年金」への中
高齢寡婦加算も共済年金だけで 20 年以上加入した方が亡くなった場合に加算されていました。
この事例の場合、死亡した夫は厚生年金も国共済も加入期間が 20 年未満のため、中高齢寡婦
加算は支給されませんでした。
妻が受給できる年金額は 59 歳から 65 歳までは①遺族共済年金 317,440 円+②遺族厚生年金
256,500 円=573,940 円。65 歳以降は老齢基礎年金と遺族年金が併給されるようになりますの
で、①遺族共済年金 317,440 円+②遺族厚生年金 256,500 円+③老齢基礎年金 780,100 円=
1,354,040 円となります。
一元化が実施されたことで遺族年金は、このような受給になりました。
59 歳(H28.10)
65 歳(H33.10)
①遺族厚生年金(中高齢寡婦加算)585,100 円
①遺族共済年金(職域加算額)28,877 円
①遺族厚生年金(第 2 号厚生年金の加入期間分)288,563 円
②遺族厚生年金(第 1 号厚生年金の加入期間分)256,500 円
+
65 歳以降は併給されます
③老齢基礎年金 780,100 円
死亡した夫の厚生年金(第 1 号厚生年金被保険者)と共済年金(第 2 号厚生年金被保険者)
の加入期間の合計が 20 年以上あるので、中高齢寡婦加算が支給されるようになりました。この
場合、加入期間が長い国共済から支給されます。
妻が受給できる年金額は 59 歳から 65 歳までは①遺族厚生年金 873,663 円+①遺族共済年金
28,877 円+②遺族厚生年金 256,500 円=1,159,040 円。65 歳以降は老齢基礎年金と遺族年金が
併給されるようになりますので、①遺族厚生年金 288,563 円+①遺族共済年金 28,877 円+②遺
族厚生年金 256,500 円+③老齢基礎年金 780,100 円=1,354,040 円となります。
一元化後の長期要件の遺族厚生年金の支払先
長期要件の遺族厚生年金は、第 1~4 号厚生年金被保険者の被保険者期間ごとに計算された金
額が各実施機関から支給されます。
*執筆 特定社会保険労務士 和田 満*
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