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7章 コーシーの積分公式と複素関数のベキ級数展開

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7章 コーシーの積分公式と複素関数のベキ級数展開
第7章
コーシーの積分公式と複素関数のべ
き級数展開
展望
コーシーの積分定理の応用として積分公式がある。この式は単なる公式で
はなく大変に懐深い式で、複素関数の豊かな性質が沢山これから導かれる。
本章では最初にコーシーの積分公式を与え、ついで「代数学の基本定理」
をふくむ基本的ないくつかの定理について説明する。またコーシーの積分定
理の逆であるモレラの定理が導かれる。この定理により複素関数 f (z ) の正則
H
性と f (z )dz
= 0 が同値であること、
f (z ) の正則性
,
I
f (z )dz
=0
が述べられ、複素関数の正則性の議論が完結する。
この章の後半では、コーシーの積分公式を用いて極および孤立した真正特
異点の周りでの級数展開の形が、具体的な操作によって決められる。複素関
数の定義や多くの性質は正または負のベキを含む無限級数の形の表現を用い
て議論されてきた。それらの議論がきわめて一般的な議論であったことがこ
の章を終えて納得できるであろう。
19 世紀の初めは数学の議論に厳密性が加わった時代であるという。これ
は近代思想、近代科学の発達の時代と一致しており、物理学では電磁気学や
熱力学が作られた時期でもある。これらのことは近代科学の必要条件の一つ
が厳密性、論理性であることを明確に物語っている。関数の性質や計算方法
だけでなく、
「論理とはどういうものか」というより一般的なことを数学から
123
第7章
124
図
7.1
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
コーシーの積分公式.
学びたい。コーシーに続くアーベル、ワイエルシュトラス、ミッタク・レフ
ラーといった人々により複素解析学の骨格が作り上げられた。
7.1
コーシーの積分公式
7.1.1
コーシーの積分公式
定理 32 コーシーの積分公式:f (z ) が正則である単連結領域を D とする。D
内のジョルダン閉曲線上を正の方向に 1 周する積分路を C とする。C 内部の
任意の点 z に対して(図 7.1 )
f (z )
=
1 I f ( )
d
2 i C 0 z
(7.1)
を得る。
(証明)f (z ) は領域内で正則であるから、 -平面上で C の内側にある f ( )=(
z ) の特異点は 1 位の極
= z だけである。 = z でのこの関数の留数は
Res(z ) = lim
( 0 z )
!z
f ( )
0 z = f (z ):
0
(7.2)
であるから式( 7.1 )を得る。
( 証明終り)
積分公式 (7.1) は様々な結果がこれから導かれる大変重要な定理である。
この定理は、閉じた積分路 C 上で f (z ) の値を定めれば、C 内部の任意の点
での値が定まることを述べている。以下にいくつかの帰結を述べよう。
7.1
コーシーの積分公式
7.1.2
125
コーシーの積分公式から導かれる諸定理
系 1 正則関数の実部および虚部は、その正則領域内で極大値、極小値をとら
ない。
= a で極大値をとると仮定する。jz 0 aj = rの円周
は正則領域内にあり、この上を正の向きに動く積分路を C とする。z = a で
f (z ) の実部が領域内 z
極大値をとるという仮定から、rを充分小さくするとすべての に対して
Ref (a) > Ref (a + r ei ):
(7.3)
0 a = rei ; dz = irei d = i(z 0 a)dであるから、コーシー
一方、C 上では z
の積分公式を書きかえると
1 Z 2
df (a + rei ):
f (a) =
2 0
(7.4)
この等式は左右両辺の実部、虚部各々についても成り立つ。実部については
(7.3) に矛盾する。よって f (z ) の実部は領域内で極大値をとり得ない。極小
値についても同じである。また f (z ) の虚部についても全く同じように示すこ
とができる。
系 2 正則関数の絶対値は、その正則領域内で極大値も 0 以外の極小値もとら
ない。
領域内の点 z
= a で正則関数 f (z ) の絶対値が極大値をとるならば、充分
小さい rについて
jf (a)j >
1 Z 2
djf (a + rei )j
2 0
(7.5)
となる。これは
1 Z 2
1 Z 2
i
jf (a)j = 2 0 df (a + re ) 2 0 djf (a + rei )j
(7.6)
に矛盾する。一方、jf (z )j が 0 でない極小値 m をとるとすると z = 0 の近傍
で 1=f (z ) は正則でかつ j1=f (z )j は 0 でない極大値を有する。これもまた先
の結果に矛盾する。
(証明おわり)
系 1, 系 2からすぐ に次の結論を得る。
第7章
126
図
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
リュービルの定理.
7.2
j
j
系 3 最大値の原理:f (z ) が閉じた領域で正則なとき、 f (z ) はその領域の境
界上でのみ最大値をとる。
定理 33 リュービル( Liouvil le )の定理: f (z ) が無限遠点を含めて複素 z 平
面全域で正則( すなわち整関数)であるなら、f (z ) は定数である。
(証明)正則関数であるから例えば
f (z )
= c0 + c1 z + c2z 2 + 1 1 1
(7.7)
と書けるとする。
( 7.3 参照。実は正則関数は必ず正則点の周りでこのような
ベき級数に展開できる。)また正則性から定理 6により
jc z j < M
n
あるいは( z
n
(有界)
6= 0 として)
jc j < jM
:
z j
n
z
(7.8)
n
(7.9)
! 1 とすると
cn
= 0 (n 6= 0)
(7.10)
を得る。すなわち c0 を除く全ての係数はゼロである。正則関数が上のように
正則点の周りのべキ級数で書けることはまだ示していないので同じことを少
し違う方法で示してみよう。
7.1
コーシーの積分公式
127
任意の 2 点 z1; z2 を内側に含むジョルダン閉曲線を正の向きに動く積分路
C を考える (図 7.2)。コーシーの積分公式により
1 I f ( )
f (zj ) =
d ; (j = 1; 2):
2i C 0 zj
(7.11)
これから
n
1
1 o
1 I
f ( )
0
d
f (z1 ) 0 f (z2 ) =
2 i C
0 z1
0 z2
I
z1 0 z2
f ( )
=
d:
(7.12)
2i C ( 0 z1 )( 0 z2 )
C として充分大きな半径 Rの円周をとる ( = Rei ; d = iRei d) と
jf (z1) 0 f (z2 )j
=
j
f (Rei )
d iRei i
i
0z )
2
(
R
e
0
z
)(
R
e
0
1
2
jz1 0 z2 j M Z 2
d
: (7.13)
2 R 0 j(ei 0 z1=R)(ei 0 z2=R)j
jz1 0 z2 j
j
ただし f (z ) < M: ここで R
Z
2
! 1 とすると
jf (z1 ) 0 f (z2 )j ! 0:
(7.14)
これは z1 ; z2に依存しないから
f (z1 )
= f (z2) = 定数:
(7.15)
さて、リュービルの定理から、代数学の基本定理(代数方程式の根に関す
る定理)がすぐ に導かれる。
定理 34 代数学の基本定理(ダランベール( d'Alembert )):
f (z )
= a0 z n + a1 z n01 + 1 1 1 + an01 z + an = 0 ; (n 1; a0 6= 0)
(7.16)
は複素数の範囲で n 個の根(零点)を持つ。
f (z ) が根を 1 つも持たないとしよう。すると
g (z )
=
1
f (z )
(7.17)
第7章
128
図
7.3
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
ポアソンの積分表示(例 49 )の積分路.
は無限遠点を含めて全域で正則である。よってリュービルの定理により g(z )
は定数となり仮定に反する。したがって f (z ) は少なくとも 1 つの根を持つ。
この根を z1 とすると
f (z )
と書けて h(z ) は n
= (z 0 z1 )h(z )
(7.18)
0 1 次多項式である。z1 を既知とすると h(z) を書き下す
ことは容易である。以下これを続けていけばよい。
例 49 ポアソン( Poisson )の積分表示:調和関数 u(r; )
r sin ) について r < R とすれば
(x = r cos ; y =
1 Z 2
R2 0 r 2
u(r; ) =
u(R; ) 2
d
2 0
R 0 2Rr cos( 0 ) + r2
(7.19)
が成り立つ。これをポアソンの積分表示という。
この式は次のように示すことができる。積分路 C を含む単連結領域内で
正則な関数 f (z ) に対するコーシーの積分公式
f (z )
=
1 I f ( )
d
2 i C 0 z
で積分路 C を半径 Rの円周を正の向きに廻るものとする。z
として (r < R)
f (rei )
=
1 Z 2 f (Rei )Rei
d i
:
2 0
Re 0 r ei
(7.20)
= r ei ;
= Rei
(7.21)
7.1
コーシーの積分公式
129
また z の C に関する鏡像の点(図 7.3) を z0
= (R2 =r)ei とする。z 0は積分路 C
の外にあるから
1 Z 2
f (Rei )Rei
1 I f ( )
d
=
d
:
0=
2 i C 0 z 0
2 0
Rei 0 (R2 =r )ei
2
(7.22)
式 (7.21)(7.22) の辺々を引いて
Rei
r ei
1 Z 2
i
df (Re )( i
0 rei 0 Rei )
2 0
Re 0 rei
1 Z 2
R2 0 r 2
=
df (Rei ) 2
2 0
R 0 2Rr cos( 0 ) + r2
f (rei ) =
(7.23)
を得る。調和関数は正則な関数の実部または虚部であるから、この式の実部
または虚部をとって求める式が得られる。
同様に 2 式 (7.21)(7.22) の辺々を足して
f (r ei )
1 Z 2
Rei
rei
df (Rei )( i
+
)
2 0
Re 0 r ei
r ei 0 Rei
1 Z 2
R2 + r2 0 2Rr ei(0)
df (Rei ) 2
=
2 0
R 0 2Rr cos( 0 ) + r2
=
(7.24)
を得る。f (z ) = u(z ) + iv (z ) として虚部をとると、
1 Z 2
2Rr sin( 0 )
v (r; ) = v0 +
u(R; ) 2
d
2 0
R 0 2Rr cos( 0 ) + r2
(7.25)
を得る。ただし
1 Z 2
v0 =
v (R; )d = v (0)
2 0
である。1
1 コーシーの積分公式より
f (a) =
1
2 i
Z
f (z )
dz
z
0a
jz0aj=R
=
1
2
Z 2
0
i
df (a + Re )
を得る。ここで a = 0 として、両辺の虚部をとることにより求められる。
(7.26)
第7章
130
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
グルサの定理
7.2
7.2.1
グルサの定理とモレラの定理
コーシーの積分公式をさらに一般化して、f (z ) の n 次導関数に対する次
の公式も成立する。
定理 35 グルサ( Goursat )の定理: f (z ) が単連結領域 Dで正則ならば、D内
の任意の点 z において、z を内部に含み D内を正の向きに一周するジョルダン
閉曲線 C を積分路として
f (n)(z )
=
n!
2 i
f ( )
I
( 0 z )n+1
C
d:
(7.27)
(証明) コーシーの積分公式から
f 0 (z )
+ 1z ) 0 f (z )
1z
1 I
f ( )
f ( )
= 1lim
(
0
)d
z !0 2 i1z C 0 z 0 1z
0z
1 I f ( )
=
d:
2i C ( 0 z )2
= 1lim
z !0
f (z
よって n = 1 では上式が成立する。n
(7.28)
2 については数学的帰納法を用いる。
或る n について上式が成立したとすると
f (n+1) (z )
f (n) (z + 1z ) 0 f (n) (z )
= 1lim
z !0
1z
I
n!
1 ( 0 z )n+1 0 ( 0 z 0 1z )n+1
=
lim
f ( )d
2 i 1z!0 C 1z ( 0 z 0 1z )n+1 ( 0 z )n+1
I
n!
(n + 1)( 0 z )n
=
f ( )d
2 i C ( 0 z )2(n+1)
(n + 1)! I
f ( )
=
d:
(7.29)
2 i C ( 0 z )n+2
よって証明された。
f (z ) が正則であれば f (z ) は何回でも微分可能であり、またその具体的形
がグルサの定理で与えられたことになる。これを系の形で述べておこう。
グルサの定理
7.2
131
図
7.4
モレラの定理.
系 4 f (z ) が領域 D 内で正則であれば、f (z ) は D内の各点で何回でも微分可
能である。
j 0zj rを考えよう。円周上の各点 j 0zj =
f ( ) の正則領域 D 内にある円 j
j
rで f ( ) < M であるとすると、グルサの定理により
jf (n)(z)j =
=
n!
f ( )
I
d n+1
2 i j 0zj=r ( 0 z )
I
n!
jf ( )j
j
d j
2 j 0zj=r
j 0 z jn+1
n!M
n!
2 M
2
1
dr n+1
r
0
Z
rn
(7.30)
となる。したがって次の結論が得られる。
j 0 z0 j rで正則で、また jz 0 z0 j = r上で
系 5 コーシーの評価式: f (z ) が z
jf (z )j < M であれば
jf ( )(z0 )j nr!M
n
n
(7.31)
が成り立つ。
グルサの定理が得られたので、コーシーの定理の逆を導くことができる。
定理 36 モレラ( Morera )の定理: f (z ) が閉じた単連結領域 D内で連続、か
つ D内の任意のジョルダン閉曲線 C を積分路として(図 7.4 )
I
C
f (z )dz
であれば、f (z ) は D内で正則である。
=0
(7.32)
第7章
132
図
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
7.5
例 50 の積分路 CR .
(証明) コーシーの定理で示したように、任意の閉曲線で積分が 0 であ
れば F (z ) =
Rz
z0
f ( )d は道すじによらず定まる( 7.4 )
。したがって F (z ) は z
を定めれば決まる関数であり微分可能で、
F 0 (z )
= f (z ):
(7.33)
F (z ) は微分可能すなわち正則であるから、グルサの定理により何度でも微分
可能である。したがって f (z )
= F 0 (z ) もまた微分可能であり、正則である。
(証明終り)
7.2.2
グルサの定理の応用
例 50
I
=
1
dx
01 (1 + x2 )n+1
Z
;
(n > 01)
(7.34)
0
積分路として Rから Rまで動きそのあと上半平面で閉じる積分路 CR ( 図
7.5
)を選ぶ。
I
dz
dz
=
:
2
n+1
n+1
(z 0 i) (z + i)n+1
CR (1 + z )
f (z ) = 1=(z + i)n+1 とするとグルサの定理より
I
dz
(2n)!
2 i (n)
f (z = i) = n 2 :
=
2
n
+1
n!
(2 n!)
CR (1 + z )
I
(7.35)
(7.36)
テイラー展開およびローラン展開
7.3
一方 R
133
! 1 とすると上半平面上の半円からの寄与は
lim
R!1
故に
0
となる。
1
dx
dz
=
:
2
n
+1
01 (1 + x2 )n+1
CR (1 + z )
Z
I
(7.37)
1
1 1 3 1 5 1 1 1 (2n 0 1)
(2n 0 1)!!
dx
=
=
:
2 1 4 1 6 1 1 1 (2n)
(2n)!!
01 (1 + x2 )n+1
Z
例 51
I
I
ここで ei
=
=
Z
0
2
cos2n d:
(7.38)
(7.39)
2 ei + e0i 2n
i I
(1 + z 2 )2n
(
) d = 0 2n
dz
(7.40)
2
2 jz j=1 z2n+1
0
d = 0idz=z を用いた。f (z ) = (1 + z 2 )2n としてグルサの定
Z
= z;
理を用いると
I
0 22i
2 i (2n)
i
(2n)!
f
(0) = 0 2n 1 2i 2
(2n)!
2
(n!)
(2n 0 1)!!
= 2
(2n)!!
=
n
(7.41)
を得る。
7.3
テイラー展開およびローラン展開
これまで、しばしば複素関数を級数展開した形を用いてきた。ここでは級
数展開がきわめて一般的に可能であることを示す。そのためにグルサの定理
が有用である。
7.3.1
テイラー展開:正則点のまわりのべき級数展開
f (z ) が領域 D内で正則であるとし、D内の 2 点 z と a を考える。z および
a を内部に含む D 内のジョルダン閉曲線を C とする。C 上の点を とし、すべ
j 0 aj > jz 0 aj とする(図 7.6 )。1=( 0 z ) をべき展開した
1
1
1 1 z0a
=
=
(
)
(7.42)
0z
( 0 a) 0 (z 0 a) 0 a =0 0 a
ての について X
n
n
第7章
134
図
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
テイラー展開.
7.6
j 0 aj < j 0 aj なので C 上で絶対収束する。コーシーの積分公式に上
は、 z
式を代入し
f (z )
1 (z 0 a)n
1 I f ( )
1 I X
d =
f ( )d
2 i C 0 z
2 i C n=0 ( 0 a)n+1
I
1
1 X
f ( )
n
=
(z 0 a)
d:
n+1
2 i n=0
C ( 0 a)
=
(7.43)
これはグルサの定理により
f (z )
=
1
X
n
f (n) (a)
=0
n!
(z 0 a)n
(7.44)
である。式( 7.43 )
( 7.44 )は積分路 C によらず、領域 D の境界に最初に触れ
る円(半径 r )内のすべての z で上の式が成立することに注意しよう。これを
テイラー (Taylor) 展開という。円の半径 rはテイラー展開の収束円になって
いる。こうして、複素関数はその正則点のまわりでテイラー級数に展開でき
ることがわかった。
例 52 対数関数 log(1 + z ) は
log(1 + z ) =
1
zn
(01)n01
n
n=1
X
とテイラー展開できる。収束半径は 1 である。
(7.45)
7.3
テイラー展開およびローラン展開
7.3.2
135
ローラン展開
点 a を中心とした円 k1 と k2にはさまれた環状領域 D が f (z ) の一価正則領
域であるとする。このとき 2 つの正の向きの積分路 C1 ; C2 を考え、C1 上の全
ての点1 ; C2上の全ての点2 に対して
j2 0 aj > jz 0 aj > j1 0 aj
(7.46)
0
とする。 C1( C1 の逆の向き)と C2 の間を往復する道0でつないで考えると、
f (z ) の一価正則性から0の往復は積分に寄与せずに
1 I
f (1 )
1 I f (2 )
d2 +
d
f (z ) =
2 i C2 2 0 z
2 i 0C1 1 0 z 1
(7.47)
となる。また
2
1
1
0z
=
0z
=
1
0a)
(2 0 a) 0 (z 0 a) 2 0 a =0 2 0 a
1
1 1 1 0 a
=0
(
)
(1 0 a) 0 (z 0 a)
z 0 a =0 z 0 a
1
=
1
1
X
(
z
(7.48)
n
n
X
n
(7.49)
n
はそれぞれ絶対収束する。よって
1
1 I
f ( )
f (z ) =
(z 0 a)
d
2 i C2 ( 0 a)n+1
n=0
1
X
1 I
+
(z 0 a)0n01
( 0 a)nf ( )d
2
i
C
1
n=0
X
n
(7.50)
である。D 内で f (z ) は正則であるから C1; C2 を変更して 1 つの積分路 C を考
えればよく、
f (z )
=
=
1
1 I
f ( )
d
2 i C ( 0 a)n+1
n=0
I
1
X
0
n01 1
+ (z 0 a)
( 0 a)n f ( )d
2
i
C
n=0
X
(z 0 a)n
1
X
n
=01
c n (z
0 a)
(7.51)
n
を得る。これは絶対収束する。cn は正負すべてについてまとめて
1 I
f ( )
cn =
d
2 i C ( 0 a)n+1
(01 < n < 1)
(7.52)
第7章
136
図
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
ローラン展開.
7.7
と書くことができる。これをローラン展開( Laurent )という。上の式はロー
ラン展開を実際に行なうときに用いる式では必ずしもないことに注意してお
こう。展開はもっと直接的に行なわれることが多い。具体的には例 53 、例 54
を見よ。
0 すなわち負のべきの部分をローラン展開の主要部という。ローラン
展開( 7.51 )が z = a を除いた z = a の近傍で成立し、主要部の最高べきが
(z 0 a)0n のとき z = a を n 位の極という。ローラン展開( 7.51 )が z = a を
除いた z = a の近傍で成立し、主要部が無限につづくときすなわち n ! 1
のとき、z = a は真性( 孤立)特異点である。z = a が孤立特異点であるな
n<
らば
Resf (a) =
1 I
f (z )dz = c01
2 i jz0aj=
(7.53)
である。これは既に説明した。
例 53 z
= 2 を 1 位の極とする関数
f (z )
jj
は z < 2 では
f (z )
jj
=
1
=
20z
2(1 0 z=2)
と展開される。一方 z > 2 では
1
=
1 z
1X
( )n
2 n=0 2
1 2
1X
f (z ) = 0
=0
( )n
z (1 0 2=z )
z n=0 z
1
(7.54)
(7.55)
(7.56)
7.3
テイラー展開およびローラン展開
jj
である。これが z > 2 における z
ラン展開( 7.56 )は z
ていても、z
137
= 0 のまわりのローラン展開である。ロー
= 0 の近傍では成立しないから、主要部が無限に続い
= 0 が真性特異点だということにはならない。
例 54
e1=z
(7.57)
= 0 は真性( 孤立)特異点で
11 1 1 2
1 1
e1=z = 1 +
+ ( ) + 1 1 1 + ( )n + 1 1 1
(7.58)
1! z 2! z
n! z
とローラン展開される。この形から z = 0 における留数は 1 であることがわ
z
かる。
第7章
138
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
第 7 章問題
7.4
問 1. グルサの定理を用いて
Z
0
2
sin2n d
を計算せよ。
問 2. 指定した点の周りでベキ級数(テーラー展開またはローラン展開)に
展開せよ。
1
(1) sin (z = 0)
z
(3) exp
n
t
(2)
1
(z = i)
(1 + z 2 )2
1 o
(z 0 ) (z = 0) : べッセル関数の母関数
2
z
(4) log(1 + z ) (z = 0)
(5)
z
(z = 0) (6) tan z (z = 0)
e 01
問 3. jz j Rで f (z ) が正則で f (z ) = u + iv; f (z ) = a0 + a1 z + a2 z 2 + 1 1 1 と
書かれる時
1 Z 2
a0 =
u(Rei )d
2 0
z
1 Z 2 u(Rei )
an =
d (n 1)
0 (Rei )n
を示せ。
問 4. ルジャンド ル多項式 Pn (z ) は
Pn (z )
1 dn 2
[(z 0 1)n]
2nn! dz n
=
と定義される。これから積分表示による公式
1 I ( 2 0 1)n
Pn (z ) =
d
2 i C 2n ( 0 z )n+1
を導け。z は積分路 C の内側にある。
問 5. ラゲール多項式 Ln (z ) は
Ln (z )
= ez
dn n 0z
(z e )
dz n
と定義される。これから積分表示による公式
Ln (z )
=
n!
2 i
I
C
n e0( 0z)
( 0 z )n+1
d
を導け。z は積分路 C の内側にある。
7.4
第 7 章問題
139
問 6.
1
(z 0 1)(z 0 2)
を次の領域で z のべき級数に展開せよ。
(1)1 < jz j < 2
(2) 0 < jz 0 1j < 1
(3) jz j < 1
(4) 2 < jz j
140
第7章
コーシーの積分公式と複素関数のべき級数展開
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