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施設入所中の精神遅滞男性における脆弱X症 候群の 頻度とその臨床

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施設入所中の精神遅滞男性における脆弱X症 候群の 頻度とその臨床
岡山医 誌
(1993)
105,
847∼858
施設 入所 中の精神 遅滞 男性 にお け る脆弱X症 候 群 の
頻度 とその臨床心 理学的特徴
岡 山 大 学 医 学 部 小 児 科 学 教 室(指
村
上
導:清
政
江
(平成5年7月13日
Key
words:脆
弱X症
緒
脆 弱X症
候 群,精
野 佳 紀 教 授)
受 稿)
神 発 達 遅 滞,自
閉 性 障 害,葉
酸欠 乏培地
か に さ れ て い る と は い え な い.本 研 究 で は,脆
言
弱X症
候 群の 疫学 的実態 とその心理 学 的特性 を
知 る こ と を 目的 と して,精
候 群 はX連 鎖 性 の 遺 伝 性 疾 患 で あ り,
神遅 滞 者施 設に入 所
ダ ウ ン症 候 群 に次 い で 精 神 遅 滞 の 重 要 な 原 因 で
して い る男 性 患 者 で の 脆 弱X症
あ る.そ の 臨 床 症 状 は,中
を 細 胞 遺 伝 学 的 に 調 査 し,脆 弱X症
遅 滞,け
い れ ん,自
な 顔 貌,巨
等 度 か ら重 度 の 精 神
閉 症 に 似 た 行 動 異 常,特
を施 行 した.
結 合 織 の 異 常 を特 徴 とす る1).本 疾 患 は,1943年
Martin-Bell症
対象 および方 法
報 告 した た め2),
候 群 と も呼 称 され る.一 方,脆 弱
X染 色 体 は1969年 にLubs3)に
れ た が,1977年
I.
よ り初 め て 記 載 さ
に な り よ うや く脆 弱X染
対
象
社 会 福 祉 法 人 旭 川 荘 の 精 神 遅 滞 者 施 設,旭
色体 が
葉 酸 欠 乏 培 地 に よ り誘 発 さ れ,Martin-Bell症
候 群 と診 断
さ れ た精 神 遅 滞 患 者 に つ い て 臨 床 心 理 学 的 検 査
異
大 睾 丸 お よび関節 や心 臓の 弁 な どの
にす で にMartinとBellが
候群 患者 の頻 度
学 園,愛
本 人 精 神 遅 滞 男 性183例 を対 象 と し た.同 胞 例 は
候
群 に 特 異 的 で あ る こ とが 判 明 し た4).その 後 の 研
1例 と して 算 定 した.年
究 で,脆
た っ て お り,平 均 年 齢 は18.7歳 で あ っ た.37例
弱X症
候 群 は精神 遅 滞者施 設 に入所 中
の 男 性 患 者 の1.6∼7.9%に
男 性 で も1500人 に1人
認 め られ5),一 般 集 団
(21.4%)は
が 罹 患 す る 比 較 的 日常 的
%)は
齢 は6歳
最 重 度 の 精 神 遅 滞 者 で,54例(31.2
等 度 の 精 神 遅 滞 者,37例(21.4%)は
の 原 因 遺 伝 子 が 単 離 され,遺
神 遅 滞 者 で あ っ た.精
伝 子 内 のCGGリ
rich
る と,こ れ ら の症 例 の う ち28例(15.3%)で
出 生 前 要 因 が,43例(23.5%)で
され た7).
が,20例(10.9%)で
脆 弱X症
す た め,当
の うち89例(45.3%)に
閉症 の 一 成 因 と して 注 目 を 浴
び た8).し か しな が ら,そ の 後 の 臨 床 心 理 学 的 研
め ら れ た.
究 で は,本
II. 方
症 候 群 と 自 閉症 との 関 連 に つ い て 互
は明確 な原
お,こ
れ らの症例
はて んか んの合併 が 認
法
い に 相 反 す る結 果 が 報 告 さ れ て お り9-11),その 異
1.
細胞遺 伝 学的方 法
同 に 関 し今 も な お 論 議 が 続 い て い る.
1)
脆 弱X染
わ が 国 で は 脆 弱X症
は 出生後要 因が その成 因
因 が 不 明 で あ っ た(表1).な
覚 過 敏 な どの 特 異 な 行 動 異 常 を 示
色体誘 発法
次 の い ず れ か の 方 法 で 細 胞 にthymidylate
候 群 の 系 統 的 な疫 学 的 調
査 は1報 告 の み で12),本疾 患 の 罹 病 率 は まだ 明 ら
stressを 負 荷 して 脆 弱X染
847
は
は 周産期要 因
と考 え ら れ た が,92例(50.3%)で
候 群 患 者 は 言 語 の 異 常 や 視 線 回 避,
初,自
中
軽度 の精
神遅 滞の 原因別 に分類 す
islandの メ チ ル 化 が そ の病 因 で あ る こ とが 決 定
常 同 運 動,触
か ら60歳 に わ
重 度 の 精 神 遅 滞 者,45例(26.0%)は
な 疾 患 で あ る こ とが 示 さ れ た6).最 近,本 症 候 群
ピー トの 延 長 と,そ の 上 流 に 存 在 す るCpG
川
育 寮 お よ び いづ み 寮 に 入 所 して い る 日
色 体 を誘 発 し た.
848 村
上
表1 対 象 に おけ る精神 遅 滞 の 原 因別 分 類
政
江
表2 臨 床 心 理 検査 を施行 した3群 の年 齢 及 び 知
能 指数 の 比 較
に5×10-7MのFdUで
処 理 した.染 色 体 の 収 穫,
標 本 作 製 はMEM-FA誘
2)
脆 弱X染
発 法 と同 様 に 行 っ た.
色体 の 同定
染 色 体 標 本 を最 低3日
0.005%ト
間 室 温 で 乾 燥 し た後,
リプ シ ン で 短 時 間 処 理 し,2%ギ
液 で染 色 した.Sutherlandら
Xq27バ
ムザ
が 記 載 した よ うに13),
ン ドq28バ ン ドとの 境 界 で,染 色 分 体 の
片 方 あ る い は 双 方 に 切 断(break),間
隙(gap)
あ るい は染 色 体 内 部 分 重 複(endoreduplication)
が み ら れ る もの を脆 弱X染
と して 判 定 した.1症
色 体fra(X)(q27.3)
例 に つ い て,少
な くとも
50個 以 上 の 細 胞 を顕 微 鏡 下 に 観 察 し,2%以
の 陽 性 率 を示 す 場 合 を脆 弱X染
*ダ
ウ ン 症 候 群10例,部
よ びInv
dup
分11pモ
(15)1例
ノ ソ ミー1例,お
を含 む.
した.脆
弱X染
上
色体 陽 性 と診断
色 体 が 低 率 の例 で は,リ
培 養 を複 数 回 繰 り返 し,脆 弱X染
ンパ球
色体 が常 に陽
性 で あ る こ と を確 認 し た.
a)
葉 酸 欠 乏MEM培
Sutherlandが
地(MEM-FA法)
2.
記 載 した 方 法13)に準 じ,MEM
必 須 ア ミ ノ酸,葉
酸(FA)を
ン お よびEarleの
緩 衝 液 と を調 合 し,MEM-FA
培 地 を 作 製 し た.25mM
NaOHでpHを8.2に
除 いた必 須 ビ タ ミ
Hepesお
調 整 し た後,ろ
臨 床心理 学的検 査
染 色 体 検 査 で 同 定 さ れ た 脆 弱X症
候 群6症
例
の 臨 床 心 理 学 的 特 徴 を 明 ら か に す る た め に,脆
弱X染
色 体 が 陰 性 で,知
能 お よ び 年 齢 が 脆 弱X
よ び1M
症 候 群 患 者 と相 一 致 し,原 因 が 不 明 の 精 神 遅 滞
過 滅菌 し
者 お よ び 自閉 性 障 害 者 そ れ ぞ れ6例
を対照 と し
た.生 理 食 塩 水 で一 昼 夜 透 析 し た牛 胎 児 血 清(5
て(表2),以
%容 量)と 抗 生 物 質(streptomycin/penicillin)
障 害 につ いて はDSM-III(米
と をMEM-FA培
の 診 断 基 準15)を満 足 す る 症 例 を選 定 した.な お,
地 に 添 加 して 完 全 培 地 と した.
下 の 心 理 検 査 を施 行 した.自
全 血 を 完 全 培 地 に 適 量 加 え た 後,phytohemagg
臨 床 心 理 学 的 検 査 は,ア
lutininで 刺 激 して,37℃
で,脆
穫2時
で96時 間 培 養 し た.収
間 前 に コ ル セ ミ ドを加 え,分 裂 中期 細 胞
を 回 収 し た.染
色 体 標 本 の 作 製 を通 常 の 方 法 を
Fluorodeoxyuridine
Tommerupら
(FdU)処
理
の 方 法14)を改 変 し て 行 っ た.す
国 精 神 医 学 会, 1980)
ン ケ ー ト調 査 で あ る の
候 群 の 診 断 を 知 らせ て い な い 生 活
指 導 員 と 臨 床 心 理 士 に よ り行 わ れ た.
1)
新 版SM社
会 生 活 能 力 検 査16)
こ の 検 査 は,精
用 い 施 行 した.
b)
弱X症
閉性
身 辺 自立,移
神 遅 滞 児 の 社 会 生 活 能 力 を,
動 能 力,作 業 能 力,意
団 参 加 お よ び 自 己統 制 の6領
志 交 換,集
域 か ら評 価 す る も
な わ ち,末 梢 血 リ ンパ 球 をphytohemagglutinin
の で あ る.各 領 域 に は 一 定 数 の 社 会 生 活 能 力 に
で 刺 激 し て,10%の
関 す る項 目が 設 け て あ り,そ の 得 点 数(粗
1640培 地 で37℃,96時
牛 胎 児 血 清 を 含 むPRMI
間 培 養 し,収 穫24時 間 前
か ら社 会 成 熟 年 齢 を 求 め る.満13歳
点)
レベ ル の 成
脆 弱X症 候 群 の頻度 とその 臨床 心理 学的特 徴 表3 熟 度 を100点 と し,成 熟 度 は領 域 別 に 社 会 成 熟 年
849
自閉 性 障 害:診 断 基準
齢 を 暦 年 齢 で 割 り100を 乗 じ た 社 会 生 活 指 数
(SQ)と
して 表 示 す る.本
研 究で は暦年 齢 増加
に よ る社 会 生 活 指 数 の み か け 上 の 低 下 を避 け る
た め,暦
年 齢 が13歳 以 上 で は,母
数 を13歳 と し
う ちAか
排 泄,着
衣,遊
閉 児 の 発 達 水 準 を,食
び,対 人 関 係,言
ら1項
目,Cか
ら1項
陥
習 慣,
2. 苦 しい時 に安 楽 を求め る こ との欠 如,あ る
い は 異常 な 求め 方
域24の 尺 度 に
3. 模 倣 す るこ との 欠 如,ま た は 不 足
お い て 行 動 パ ター ンか ら評 価 す る もの で あ る.
4. 社 会 性 の い る遊 び の 欠如,ま た は異 常
そ れ ぞ れ の 尺 度 を6歳
5.
点 と し て5段
の 健 常 児 の 発 達 水 準 を満
階 で 評 価 し,9領
域 全体 のサ イ コ
DSM-III-R(自
B.
言語 的 お よ び非 言語 的 意 志 伝 達 や 想像 上 の
1. 伝達 様 式 の な い こ と
閉 性 障 害 の 診 断 基 準)18)
2.
米 国 精 神 医 学 会 よ り最 近 提 唱 さ れ た 小 児 の 自
閉 性 障 害 の 診 断 基 準 で(表3),A(対
反 応),B(言
の 活 動)お
の3種
語 的,非
人 的相互
3.
想像 上 の 活 動 の欠 如,想 像 上 の事 件 に つ い
言語 的意志 伝達 や 想像上
よ びC(活
ての お話 に 興 味 が ない
動 や 興 味 の レ パ ト リー)
4.
の カ テ ゴ リー16項 目 に 記 載 さ れ て い る 障
単 語 や文 節 の 独 自の用 い方;無 関係 の 言動
6. 十 分 な会 話 の 能 力が あ るの に,他 人 と会 話
を始 め た り,続 け た りす る能 力 の 障 害
し,行 動 が 異 常 で あ る場 合 だ け で も基 準 をみ た
C.
す と判 定 し た.
会 話 の仕 方 の 異常
5. 会 話 形 式 や 内容 の 異 常;代 名 詞 の 逆 転;
診 断 す る もの で あ る.患 者 の 発 達 レベ ル に 照 ら
活動 や 興味 の レパー ト リー が 限 られ て い る
1. 常 動 的 な 身体 運動
統 計学 的 方法
2. 対 象 物 の部 分 の とら われ
連 続 変 数 の 差 の 検 定 に はF検
定 を,不
対 人的 相 互 反 応 を開 始 し調 節 す る,非 言 語
的 意 志伝 達 の 異常
害 の 有 無 を 検 討 し,総 合 得 点 か ら 自 閉 性 障 害 を
3.
仲 間関 係 を作 る能 力 の著 しい不 足
活 動 に おけ る障害
グ ラ ム と し て 表 し比 較 した.
3)
目
対 人的 相 互反 応 の 障害
語,表 現 活 動,
ハ ン ド リン グ,行 動 の 自律 の9領
目,Bか
1. 他 者 の 存在,ま た は感 情 に 気づ くこ との 欠
自 閉 児 の 行 動 評 定(CLAC-II)17)
この 検 査 は,自
ら2項
を含 む こ と
A.
て 補 正 し た.
2)
症 状 リス トか ら16項 目 の 少 な く と も8つ が 存 在 し,
定 あ る い はt検
3. 環 境 が 変 わ るこ とに対 す る心 痛
連 続 変 数 の 差 の 検 定 に はWilcoxon検
定 を,比 率 の 差 の 検 定 に はFisherの
算 法 を応 用 した.P<0.05の
4.
場 合,統
な興 味 に 夢 中 にな る
計的 に有
意 で あ る と み な し た.
いつ ものや り方 の 固執
5. 興 味 の 範 囲が 限 局 してい た り,また は特 殊
直接 確率 計
D.
発症 は幼 児期 あ るい は小 児期 で あ る(生 後36
ヶ月 以降 の 発症 な らば特 定 せ よ)
結
I.
果
細 胞遺伝 学 的検査
性 率 か ら,2∼8%の
精 神 遅 滞 男 性183例 の う ち6例(3.3%)に,
脆 弱X染
色 体 が 陽 性 で あ っ た.い
大 多 数 の 細 胞 で,脆
弱X染
ずれ の症例 も
色体は染色分体の
の 高 率 群(3例)と
率 が2%で
低 率 群(3例)と40∼54
の2群
あ っ た2例
で は,合
breakあ
る い はgapと
して み ら れ た が,1症
例
球 培 養 で い ず れ も脆 弱X染
で は1細
胞 にXq28分
節 のendoreduplication
さ れ た.6例
た,高
精 度 分 析 レベ ル で
家 族 歴 が 認 め ら れ た が,逆
が み ら れ た(図1).ま
脆 弱 部 位 はXq27.3とXq28バ
在 す る こ と を確 認 した.こ
状 を 表4に
示 す.年
ン ドの 境 界 に 存
れ ら6症 例 の 臨 床 症
齢 は6か
平 均 年 齢 は16.2歳 で あ っ た.脆
ら27歳 に わ た り,
弱X染
色体 の 陽
に 区別 さ れ た.陽 性
計3回
の リンパ
色体 が低頻 度 に検 出
の う ち4例(67%)に
精 神遅 滞 の
に家 族性精 神 遅滞 者
18例 の う ち4例(22.2%)が
脆 弱X症
っ た.精
で 最 重 度,2例
神 遅 滞 の 程 度 は3例
重 度 で,1例
候 群 であ
で
で 中 等 度 で あ っ た.全 例 に 長 い顔,
下 顎 の突 出お よび思春 期 後の 巨大 睾丸 が認 め ら
850 図1 村
脆 弱X染 色 体 の 諸 相
a:染
色 分 体 のgap, partial
endoreduplicationを
b:染
で は-2SD以
で,大
江
c:染
色 体 のbreak, d:Xq28分
節の
示 す.
脆 弱X症
き な 耳 介 と そ の 聳 立 が,1例
下 の 低 身 長 が み られ た.な お,て ん
か ん 発 作 が 高 率 で,全
政
色 分 体 に お け るisogap, 表4 れ た.5例
上
例 に脳 波異常 が認 め られ
た.し
か し,心 臓 の聴 診 は い ず れ の 症 例 も正 常
で,関
節 の 過 伸 展 な どの 結 合 織 の 異 常 は 認 め ら
候 群6症
例 の 臨床 症状
れ な か っ た.
II. 臨床心理 学的 検査 所 見
1. 新 版SM社
会能 力検査 結果
すべ て の領 域 で,脆 弱X症 候 群 の社会 生活 指
数(SQ)は
精 神遅 滞群 と 自閉性 障害 群 との 中間
脆弱X症 候群 の 頻度 とその 臨床心 理 学的特 徴 表5 SM社
会 生 活 能 力検 査 結 果(SQ平
851
均 値 表示)
括弧 内の数 字 は標 準 偏差 を示 す. *:P<0.05
図2 3群 に お け るCLAK-II検
●:脆
弱X症
歳 レ ベ ル を5点
候 群, 値 を 示 した(表5).自
査 サ イ コグ ラム
o:精
神 遅 滞 群, 満 点 とす る.ア
□:自
ラ ビ ア 数 字 は9発
閉 性 障 害 群 は 他 の2群
に
閉 性 障 害 群 を 示 す.中
達 領 域 の24項
心 よ り 同 心 円 上 に 点 数 を示 し,6
目 を 示 す.
害 群 は 精 神 遅 滞 群 と 身 辺 自 立,移
動 能 力,意
比 べ 測 定 値 の 分 散 が 少 な い こ とが 特 徴 で,F検
交 換 お よび 集 団 参 加 の 領 域 で,脆
弱X症
定 で 脆 弱X症
は 身 辺 自立 の 領 域 で い ず れ も有 意 差(P<0.05)
候 群 とは 移 動 能 力(P<0.05),意
志 交 換(P<0.05)お
で,精 神 遅 滞 群 とは 身 辺 自立(P<0.05),移
能 力(P<0.05),集
が 認 め られ た.一
よ び 自 己統 制(P<0.01)
団 参 加(P<0.05)お
動
よび
は 認 め られ な か っ た.
2.
学 的 有 意 差 は な か っ た.t検
人 関 係,言
閉性 障
定 に お い て も脆 弱X
症 候 群 と精 神 遅 滞 群 との 間 に は 統 計 学 的 有 意 差
早 己 統 制(P<0.01)で
有 意 差 が 認 め られ た.
一方
,脆 弱X症 候 群 と精 神 遅 滞 群 の 間 に は統 計
定 で は,自
方,t検
志
候群 と
CLAC-II検
脆 弱X症
査結 果
候 群 の サ イ コ グ ラ ム で は,遊
語,表
現 活 動,ハ
び,対
ン ド リン グお よ び
852 村
行 動 の 自律 の 領 域 が 食 習 慣,排
上
泄 お よび 着 衣 の
領 域 に 比 し低 水 準 で あ っ た(図2).3群
Wilcoxon検
政
江
ま た,自
間の
閉性 障 害 群 に 比 して 表 現 活 動 や ハ ン ド
リ ン グ に お い て 比 較 的 に低 水 準 で あ っ た が,行
定 に よ る 比 較 で は,す べ て の 尺 度
動 の 自律 に お い て は他 の2群
よ りも高水準 の傾
に お い て 統 計 学 的 有 意 差 は 認 め られ な か っ た.
向 で あ っ た.こ
し か し な が ら,脆 弱X症
症 例 で は 言 語 や 非 言 語 に よ る 表 現 活 動 お よび 合
し て 対 人 関 係,言
候群 は精神 遅滞群 に比
語 や ハ ン ドリ ン グ に お い て,
表6 平 均 値(±
図3 標 準 値)で
表 示. *:P<0.05, 3群 に おけ るDSM-III-R検
れ らの こ とか ら,脆
弱X症
候群
目的 動 作 に何 らか の 発 達 障 害 が 存 在 す る こ と が
DSM-III-R検
査結果
**:P<0.01
査結果
頻 度 を ヒ ス トグラ ム で表示 し,Fisherの 直 接確 率 法 で 有意 差 を示 す.A,B,Cは
そ れ ぞれ 対 人的 相 互
反 応 の障 害,意 志 伝 達や 想像 上 の 活動 に お け る障 害,活 動 ・
興 味 の レパ トリー の限 局 の カ テ ゴ リー,ア ラ
ビア数 字 は それ ぞ れの 小 項 目 を示 す(表3を
参 照).
脆 弱X症 候群 の 頻度 とその 臨床心 理学 的特 徴 示 唆 さ れ た.
3.
を 平 均 す る と,施 設 人 所 中 の 日本 人 精 神 遅 滞 男
DSM-III-R検
本 検 査 で,少
査結果
ら1項
性 で の 頻 度 は4.3%と
な く と も8項
在 し,そ の う ちAか
Cか
853
ら2項
目以 上 の 障 害 が 存
目,Bか
ら1項
目,
目 を 含 む 場 合 を 自 閉 性 障 害 とす る
DSM-III-Rの
診 断 基 準 に 沿 え ば,脆 弱X症
候群
に お け る脆 弱X症
な る.こ れ ら の2つ
の研 究
候群 の頻 度 には統 計学 的 な有
意 差 は 認 め られ ず(x2=3.84,
df=1,
P<0.05),
検 出 頻 度 の 差 は 単 な る偶 然 で あ る可 能 性 が 強 い.
しか し,2つ
の 研 究 で は 患 者 の 年 齢 分 布,精
神
の3症
例 が 自閉 性 障 害 の 診 断 基 準 を 満 た し て い
遅 滞 の 程 度 お よ び 原 因 別 の 患 者 の 比 率 が 多少 異
た.し
か し な が ら,群
な っ て お り,背 景 因 子 の 差 異 が 検 出 頻 度 の 差 を
と し て 比 較 す る と,脆 弱
X症 候 群 の 得 点 数 は,SM社
会 生活 能力検 査 と
同 様 に,対
語 的 ・非 言 語 的 意
人 的相 互 反 応,言
志 伝達 や想像 上 の 活動 お よび活動 や 興味 の レパ
ト リー ら の3つ
の カ テ ゴ リー で,精
神遅 滞群 と
自閉 性 障 害 群 との 中 間 値 を 示 した(表6).ま
脆 弱X症
た,
候 群 は 自 閉 性 障 害群 に 比 し,総 合 得 点
で 有 意(P<0.05)に
低 値 で あ る が,精
神遅 滞
ひ き起 こ した 可 能 性 が あ る.
脆 弱X染
色 体 誘 発 に は,(1)葉
(MEM-FA)13),(2)Methotrexate
理13),(3)FdU処
酸 欠乏培 地
(MTX)処
理14),(4)高 濃 度 チ ミジ ン処 理19)
が 用 い ら れ て い る.誘 発 の 機 序 は そ れ ぞ れ 異 な
っ て い る が,最
終 的 に はDNA合
るdTTPやdCTPの
成 に必要 で あ
細 胞 内枯 渇 を起 こ し,脆
群 とは 統 計 的 差 が 認 め られ な か っ た.一 方,自
弱X染
閉 性 障 害 群 は 精 神 遅 滞 群 に 比 し,対 人 的 相 互 反
る誘 発 効 率 は ほ ぼ 同 等 と考 え られ て お り,簡 便
応 お よ び 言 語 ・非 言 語 的 意 志 伝 達 の カ テ ゴ リー
性 と確 実 性 よ り,そ れ ぞ れ の 研 究 機 関 で そ れ ぞ
での異常 お よび総 合得 点 で有 意 に高得 点 であ っ
れ の 方法 が 用 い られ て い る.し か しなが ら,MEM
た(P<0.01).
-FA法
で は ,培 養 前 の 細 胞 内 葉 酸 蓄 積 状 況 が20),
FdU処
理 で は組 織 培 養 で の 細 胞 密 度 がfra
A,Bお
よ びCの
カ テ ゴ リー の 各 項 目 ご とに
3群 の 間 で その 陽 性 率 をFisherの
法 で 比 較 検 討 し た(図3).脆
自閉 性 障 害 群 に 比 し,A
に 気 付 か な い 障 害,A
の 不 足,B
直接確 率 計算
弱X症
候 群 で は,
1の 他 者 の 存 在 や 感 情
5の 仲 間 関 係 を 作 る 能 力
5の 会 話 形 式 や 内 容 の 異 常 が 有 意 に
低 率 で あ っ た(P<0.05).一
方,精
比 し,A
3の 環 境 へ の 不 適
3の 模 倣 の 欠 如 やC
神 遅滞 群 に
色 体 が 誘 発 さ れ る.こ
れ らの方 法に おけ
で はMEM-FA法
あ る い はFdU法
の 研 究 で はTC
199培 地 とMTX処
れ て お り,方 法 の 差 が2つ
が,有
理 が 用い ら
X症 候 群 の 検 出 頻 度 の 差 に 関 与 す るか も しれ な
い.
国 外 で は,主
に 白色 人 種 で 精 神 遅 滞 者 施 設 に
お,自
入 所 し て い る 男 性 患 者 に お い て 脆 弱X症
閉 性 障 害 群 と精 神 遅 滞 群 と の 間 に は,A
1,
検 索 さ れ,そ
の 頻 度 は1.6∼7.9%と
候群 が
報 告 され て
言語 的意志 伝達
い る5).施 設 に よ り,入 所 して い る 患 者 の 精 神 遅
話 の 音 量 ・高 さ ・リ ズ ム な ど
滞 の 程 度 や 原 因 に 差 が 存 在 す る の で,本 邦 に お
1(伝 達 様 式 の 欠 如),B
の 異 常),B
4(会
の 異 常),B
5お よ びC
2(非
3の6項
目で統計 学 的
け る検 出 頻 度 と比 較 す る こ と は妥 当 とは い え な
い .し か し,本 邦 に お け る頻 度 と諸 外 国 に お け
に 有 意 差 が 認 め ら れ た.
る 平 均 頻 度(4.5%)と
考
本 研 究 で は,MEM-FA法
に よ り脆 弱X染
波 ら
の調 査 にお け る脆弱
応 が 有 意 に 高 率 で あ っ た(P<0.05).な
B
(X)
の 誘 発 効 率 に影 響 す る とい わ れ て い る21).本研 究
察
あ る い はFdU法
色 体 を誘 発 し,施 設 入 所 中 の 精
邦 で は,有
目 され る.こ の こ とは,脆
弱X症
変 異 が,民
等 に浸 透 して い る こ
族 を 問 わ ず,均
候群 の遺 伝 子
と を示 唆 す る もの で あ る.事 実,ア フ リ カ黒 人22),
脆 弱X
メ キ シ コ人23),ブ ラ ジ ル 人24),ス リ ラ ン カ 人25),
波 ら(1986)
お よ び パ キス タ ン人26)で本 症 候 群 が 確 認 され て い
神 遅 滞 男 性183例 の う ち6例(3.3%)に
症 候 群 が 検 出 さ れ た.本
が 一 致 して い る こ とは 注
が,同 様 に 施 設 入 所 中 の 精 神 遅 滞 男 性243例 を細
る.ま
胞 遺 伝 学 的 に ス ク リー ニ ン グ し脆 弱X症
候 群13
滞 男 性 の 調 査 で は,脆 弱X症
の調査
と報 告 さ れ て い る27).本邦 に お け る 原 因 不 明 の 精
例(5.3%)を
発 見 し た12).こ れ らの2つ
た,フ
ィ ン ラ ン ドで の 原 因 不 明 の 精 神 遅
候 群 の頻 度 は8.8%
854 村
神 遅 滞 者 中 の 脆 弱X症
研 究 で は8.6%,本
候 群 の 頻 度 は,有
研 究 で は6.5%で
ドで の 結 果 と違 背 して お らず,脆
上
波 らの
フィ ンラ ン
弱X症
候群 の
普 遍 性 を支 持 す る と思 わ れ る.
最 近,脆 弱X症
遺 伝 子 内 のCGGリ
の 延 長 と そ の 上 流 に あ るCpG
江
査 は 認 知 能 力 の 検 定 に 最 良 の 方 法 で あ るが,適
切 な 判 断 に は 被 験 者 が70以 上 の 知 能 指 数 を 有 す
る こ と を必 要 とす る.し
中 の 脆 弱X症
候 群 の 候 補 遺 伝 子FMR-1が
ロ ー ニ ン グ さ れ,本
政
か し な が ら,施 設 入 所
候 群 患 者 は 中 等 度 か ら最 重 度 の 精
ク
神 遅 滞 を示 し て お り,WISC知
ピー ト
困 難 で あ る.本 研 究 で は,脆
rich islandの
メ
能検 査 の応用 が
弱X症
症 との 異 同 の 論 議 を勘 案 して,行
候 群 と 自閉
動 観察 を主 と
チ ル 化 が 本 症 候 群 の 病 因 で あ る こ と が 明 らか に
した 心 理 検 査 を用 い て,本
症候 群 の臨床 心理 学
さ れ た.FRM-1遺
的 特 性 を検 討 した.SM社
会生 活能 力検 査 では
伝 子 の ノザ ンプ ロ ッ ト解 析 で,
本 遺 伝 子 は ほ とん どす べ て の 組 織 に 発 現 して い
社 会 的 成 熟 度 を,CLAC-IIお
る こ とが 示 さ れ,そ
検 査 で は 自 閉 性 行 動 を 行 動 観 察 の 主 眼 と した.
の 塩 基 配 列 よ り核 結 合 蛋 白
を コー ドして い る こ とが 推 測 さ れ て い る7).また,
脆 弱X染
色 体 の 発 現 と リピ ー トの 延 長 との 関 係
SM社
よ びDSM-III-R
会 生 活 能 力 検 査 で は,す
活 領 域 に お い て,脆
弱X症
べ て の社会 生
候 群 患 者 は 自閉 性 障
も ほぼ 確 定 さ れ るに 至 っ た28).本研 究 で は 結 果 を
害 群 よ り優 れ た社 会 成 熟 度 を 示 した が,精
示 さ な か っ た が,確
滞 群 に 比 して 劣 る傾 向 を示 し た.こ
認 さ れ た 脆 弱X症
症 例 は す べ てFMR-1遺
候 群 の6
伝 子 内 のCGGリ
トの 延 長 が 認 め られ た.さ
長 が 長 い ほ ど,脆 弱X染
ら に,リ
ピー
ピー トの 延
色 体 の誘 発 頻 度 が 高 率
で あ る傾 向 が 顕 著 で あ っ た.CGGリ
長 が 軽 度(premutation)の
ピー トの 延
症 例 で は,脆
弱X染
色 体 は 通 常 認 め られ ず28),精 神 遅 滞 者 に お け る脆
弱X症
候 群 の 頻 度 はFMR-1遺
伝 子の分 子遺 伝
学 的 解 析 に よ り再 検 討 さ れ る 必 要 が あ る.
脆 弱X症
候 群 の 表 現 型 であ る精 神 遅 滞,
長 い 顔 と聳 立 した 耳 介 お よ び 巨大 睾 丸 の3主
が 約60%の
徴
症 例 に 存 在 す る と報 告 さ れ て い る22).
の こ とは 脆
候群 に社会 的 な相 互作 用の 障害 が存在 す
る こ と を示 唆 す る もの で あ る.脆
者 で は,視
線 を避 け た り,手
弱X症
候群 患
を た た くあ る い は
咬 む な ど の常 同運 動 あ る い は 触 れ られ る こ と を
極 度 に 嫌 う と い う社 会 的 回 避 行 動 が 高 頻 度 に 認
め ら れ る31).しか し な が ら,本 症 候 群 患 者 が 身 辺
自立 の 領 域 で 自閉 性 障 害 群 よ り有 意 に 高 得 点 で
あ っ た 結 果 は,自
候 群 の思春 期 以降 の男性 で は いわゆ
るMartin-Bell症
弱X症
神遅
閉 性 障 害 者 と異 な り,脆 弱X
症 候 群 で は 自律 行 動 に お い て 執 行 能 力 が 保 全 さ
れ て い る こ と を示 す と考 え ら れ る.
CLAC-II検
査 で は,脆 弱X症
人 関 係 や 言 語 の 領 域 で,自
候 群 患 者 は,対
閉 性 障 害 群 と 同様 に
本 研 究 に お い て も思 春 期 以 降 の4症
例 の う ち3
精 神 遅 滞 群 に 比 し て 劣 り,表 現 活 動 や ハ ン ド リ
例 が こ の3主
ん かん の合
ン グ に お い て は 自 閉 性 障 害 群 よ り も さ ら に劣 る
徴 を示 し た.一
併 頻 度 に 関 して は10%か
方,て
ら75%と
の報告 が な さ
傾 向 が 認 め ら れ た.脆
弱X症
的 で,流
ん あ る い は 脳 波 上 の て ん か ん 波 が 認 め られ た.
文 法 的 誤 りが 高頻 度 で あ る と い われ て お り32),一
こ の こ とは 脆 弱X症
見 自閉 性 障 害 群 と 区 別 で き な い.さ
は,神
候群 患者 の神 経学 的評価 に
経 生 理 学 的 検 査 が 必 須 で あ る こ と を示 唆
す る.さ
らに,本
患 者 で は4/6
研 究 で 発 見 され た 本 症 候 群 の
(67%)に
め られ て お り,脆 弱X症
に は,上
述 した3主
執 性,お
う む が え し,
ら に,身
振
りあ る い は顔 や 頭 の 動 作 に よ る非 言 語 的 表 現 が,
ダ ウ ン症 候 群 な ど の 精 神 遅 滞 者 と比 して 少 な い
精神 遅滞 の家 族歴 が認
とい う報 告 もな され てい る33).脆弱X症
候 群 の ス ク リー ニ ン グ
言語 的 お よび非言語 的表 現 での統 合能 力 の障害
徴 の 存 在 ば か りで な く,家
候 群 で は,
が 非 社 会 性 を惹 起 して い る 可 能 性 が 示 唆 され る.
DSM-III-R検
族 歴 の 存 在 も参 考 に な る と考 え られ る.
査 で は,脆 弱X症
候 群6症
例の
伝 子の変 異に起 因す る
う ち3例 が 自閉 性 障 害 の 診 断 基 準 を満 た したが,
候 群 患 者 の 臨 床 心 理 学 的 特 性 を検 討 す
異 常 行 動 の総 合 得 点 では 自 閉 性 障 害 群 に 比 して,
本 研 究 で は,FMR-1遺
脆 弱X症
暢 性 の 欠 如,固
候 群 の 言語 は特 徴
れ て い る29,30).本研 究 で は,全 例 に 臨 床 的 て ん か
る こ とに よ り,本 遺 伝 子 の 認 知 と行 動 に お け る
有 意 に 低 得 点 で あ っ た.カ
役 割 を 明 ら か に し よ う と試 み た.WISC知
弱X症
能検
テ ゴ リー 別 に は,脆
候 群 患 者 で は 自 閉 性 障 害 群 に 比 して,他
脆 弱X症 候群 の頻 度 とその臨 床心理 学 的特 徴 者 の 存 在 や 感 情 に 気 付 か な い 障 害,仲
間関係 を
855
体 を検 索 し た 結 果,6例(3.3%)の
脆 弱X症
つ くる 能 力 の 不 足 お よ び 会 話 形 式 や 内 容 の 異 常
群 が検 出 され た.大 多数 の症 例 がMartin-Bell症
が 有 意 に 低 率 で,一
候 群 の 表 現 型 を示 した.
方,精
神 遅 滞 群 に 比 し て,
模 倣 の 欠 如 お よび 環 境 へ の不 適 応 が 有 意 に 高 率
で あ っ た.こ れ ら の 所 見 は,脆 弱X症
候 群 で は,
こ れ らの6例
候
の 心 理 学 的 検 査 所 見 を,年 齢 お
よ び 知 能 が マ ッ チ した 精 神 遅 滞 者 お よ び 自閉 性
い わ ゆ る 自閉 性 障 害 に 認 め ら れ る社 会 性 の 障 害
障 害 者 そ れ ぞ れ6例
と は 異 な り,見 知 らぬ 他 者 や もの を極 度 に 回 避
能 力 検 査 で は,脆
す る 異 常 性 が,そ
精 神 遅 滞 者 群 と の 中 間 値 を 示 し,身 辺 自 立 の 領
の 中核 的 な臨床心 理学 的特 性
で あ る こ と を 示 唆 す る と 思 わ れ る.
最 近 の 研 究 か ら,自
と比 較 し た.SM社
弱X症
域 で 自 閉 性 障 害 群 よ り高 値 で あ っ た.CLAC-II
閉性 障 害は先 天性 の発 達
検 査 で は,脆
弱X症
候 群 は 自閉 性 障 害 群 に 比 し
障 害 で あ り,多 病 因 的 お よ び 普 遍 的 な症 候 群 と
て,表
して と らえ る べ きで あ る とす る観 点 が 強 調 され
傾 向 で あ っ た.DSM-III-R検
て い る34).自閉 性 障 害 が 一 卵 性 双 生 児や 同 胞 に 高
候 群 の3例
頻 度 に 起 こ る こ と よ り,そ の 病 因 に 遺 伝 的 素 因
が,本
が 関 与 す る こ とが 明 らか とな っ た35).脆 弱X症
者 の 存 在 や 感 情 の 無 視,仲
群 と 自 閉 性 障 害 との 関 係 に つ い て は,論
反 して い る.す
な わ ち,脆
弱X染
会生 活
候 群 は 自閉 性 障 害 群 と
候
議 が相
色 体 が 陽性 の
精 神 遅 滞 者 で の 自閉 性 障 害 の 頻 度 と,脆 弱X染
現 活 動 や ハ ン ド リン グの 領 域 で 低 水 準 の
査 で は,脆 弱X症
が 自閉 性 障 害 の 診 断 基 準 を 満 た し た
症 候 群 で は,自
閉 性 障 害 群 に 比 し て,他
間 関 係 を作 る能 力 の
不 足 や 会 話 の 異 常 が よ り低 率 で,一
滞 者 群 に 比 して,模
方,精 神 遅
倣 の欠如 や環 境変 化へ の不
適 応 が 高 率 で あ っ た.
色 体 陰 性 の 精 神 遅 滞 者 に お け る 自閉 性 障 害 の 頻
本 研 究 に お け る 脆 弱X症
候 群 の頻度 は欧 米 で
度 とが 統 計 的 に 有 意 差 が な い こ と よ り,こ の 関
の 頻 度 と近 似 し て お り,脆 弱X症
連 を否 定 す る報 告36)や,逆 に,一 般 集 団 で 自 閉 性
異 常 は 民 族 を 問 わ ず 均 等 に 浸 透 して い る と考 え
障 害 と脆 弱X症
ら れ た.臨
比 して,実
候 群 が 偶 然 同 時 に 起 こ る確 率 に
際 に 脆 弱X症
候 群 と 自閉 性 障 害 が 同
候 群 遺伝 子の
床 心 理 学 的 検 査 の 結 果 か ら,脆
弱X
症 候 群 は 基 本 的 に他 人 の 存 在 を認 識 す るが,言
時 に 起 こ る確 率 は 数 百 倍 高 く,関 連 を 肯 定 す る
語 ・非 言 語 的 な 表 現 能 力 の 障 害 と極 度 の 社 会 的
報 告 が あ る37).前 述 した よ う に,自 閉 性 障 害 が 症
回 避 の た め に,一 部 の 症 例 が 自閉 性 障 害 を示 す
候 論 的 な 概 念 で あ る 以 上,脆
と結 論 さ れ る.
弱X症
候群 が その
1原 因 で あ る こ とは 否 定 で き な い.実 際 に,DSM
-III-Rで 自 閉 性 障 害 と診 断 さ れ た症 例 の な か に
もFMR-1遺
伝 子 の 異 常 が 報 告 され て お り38),
稿 を終 え るに あた り,御 指 導 を賜 わっ た清 野 佳 紀
教 授 に謝 意 を表 す る とと もに,終 始 直 接 に御 指 導 頂
自 閉 症 は 遺 伝 学 的 に 多 様 な 疾 患 で あ る と考 え る
い た楢 原 幸 二助 教 授 に感 謝 します.ま た,本 研 究 に
の が 妥 当 で あ ろ う.脆 弱X症
候 群 が,社
会的回
御 協 力頂 い た社 会 福 祉法 人旭 川荘 旭 川児 童院 院 長 末
避 の ため に 自閉 性 障 害 を 起 こ す の か,社
会的回
光
避 とは 別 に 自閉 性 障 害 を 起 こ す の か,今
後 の検
の 山村
討 が 要 望 さ れ る.
生 お よび 心理 検 査 に こ こ ろ よ く御 協 力頂 いた生 活 指
論
わ が 国 に お け る 脆 弱X症
導 貝や 心理 士の 皆 様 に深 謝 致 します.
候群 の疫 学的 実態 と
そ の 心 理 学 的 特 性 を知 る 目的 で,精
神遅 滞者 施
設 に入所 中の 男性 患者 に おい て本症 候群 の頻 度
と そ の 臨 床 心 理 学 的 特 徴 を 検 討 し た.
精 神 遅 滞 者 施 設 に 入 所 中 の 男 性 患 者183例 を
対 象 に,葉
健先 生,愛 育 寮 寮長 の 浜 口喜 義 先 生,い づ
み寮 の安達 正 信 先 生,児 童 院 医療 課 長 の笠 井 良 造 先
結
酸 欠 乏 培 地(MEM-FA)あ
fluorodeoxyuridine処
茂 先 生,院 長代 理 中 島 洋子 先 生,旭 川学 園 園 長
るい は
理 法 を用 い て 脆 弱X染
色
856 村
上
政
江
文
1)
Sutherland
GR,
in Fragile
Sites
New
York
2)
Martin
3)
Lubs
4)
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6)
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containing
in
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Xq28
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X
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type
KE
ratios
Reiner
GJ.
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Richards
Shastain
Identification
region
Wisniewski
1,
C,
JL,
Kunst
of a gene
exhibiting
length
S,
(FMR
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K,
Raguthu
S
and
French
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syndrome
Hudson
Am
A:
Speech,
and
Is
IL,
M
with
Pfadt
associated?
A,
(1992)
autism:
the
Jenkins
Conceptual
34,
570-584.
genetic
fragile
X
EC,
Brown
and
influences.
syndrome?
WT
Pediatrics
Am
and
J Med
Vietze
Mehodological
(1991)
Genet
PM:
issues.
Why
Am
J Hum
87,
(1992)
are
767-773.
43,
autism
Genet
47-55.
and
the
(1991)
48,
195-202.
38)
a
251-257.
community
Varonen
analysis
閉 症 の 内 的 世 界.
SE
GS:
fragile-X
F:
59,
Poulsen
J:
(1983)
Mulley
J Pediatr
杉 山 登 志 郎:自
Cohen
Croquette
Schinzel
Association
37)
and
V,
by
Kemper
EG:
Folstein
.
pp113-130.
Wolf-Schein
Fisch
expression
589-595.
RH
36)
M
Genet
C,
Garusa
Hagermann
35)
(X)
237-240.
(1982)
of
Biancalana
institutionalized
23,
the
fra
1673-1681.
(1985)
Sanfilippo
Largo
on
220-222.
and
Todd
importance
Wilska
Hecht
Sites
of
12,
Res
and
(1981)
24,
M
Defic
Giraud
Frota-Pessoa
(1982)
A
Clin
D,
325,
GR,
syndrome.
33)
Heitz
York
with
32)
the
males.
(1991)
(1986)
treatment
467-474.
and
normo-functional
(1981)
Mikkelsen
Thake
diagnosis
Sutherland
group
acid
Fragile
Sanchez-Corona
I and
J Mental
Delozier-Blanchet
in Fragile
30)
folic
WT:
23,
Genet
L,
Genet
Genet
Brown
M
deficiency,
M,
Leisti
F,
New
and
Hum
Armando
T,
retarded
Med
29)
of
857
258-266.
Rousseau
JL:
Result
(1986)
Plascencia
Ann
and
Xq28.
Auger
families.
J Med
Webb
Midlands
C,
C,
mental
family.
S,
150
Genet
AM,
Am
Kahkonen
of
J Med
15
Senanayahe
Bundey
(1985)
28)
the
at
EC
Aumeras
A,
syndrome.
West
27)
of
on
site
Jenkins
Am
chromosome
P,
KP,
MG,
observations
Soysa
fragile
と そ の 臨 床 心 理 学 的 特 徴 225-229.
Lele
cell-culture
Sri-Lankan
26)
66,
MS,
chromosome.
25)
the
候 群 の 頻 度
Gustavson
autism-fragile
830-833.
K-H,
X:
Wahlstrom
molecular
J,
Arpi-Henriksson
findings
support
I,
genetic
Bensch
J,
heterogeneity.
Pettersson
Am
U
J Med
and
Dahl
Genet
858 村
Prevalence
of
male
fragile
patients
上
and
X
政
psychological
syndrome
with
in
mental
Masae
Department
Okayama
江
features
institutionalized
retardation
in
Japan
MURAKAMI
of Pediatrics,
University Medical School,
Okayama
700, Japan
(Director: Prof. Y. Seino)
To determine the prevalence and psychological features of fragile X syndrome among
Japanese, cytogenetic and psychologicalstudieswere conducted on 183 institutionalized
male
retardates. The induction of fra (X) (q27)by MEM-FA
medium or fluorodeoxyuridinetreat
ment revealed that 6 (3.3%) patients had fragileX syndrome.
Psychological tests in the 6
patientswith fragileX syndrome [Fra(X)], 6 controlsubjectswith autism [AU] and 6 with
simple mental retardation [MR] showed the following results:(1)on SM socialmaturity test,
overallscores of socialskillsin Fra (X) were between those in AU
and those patientsin MR.
Behavioral autonomy
patients; (2) on CLAC-II
was much better in Fra (X) than in AU
behavior evaluation,Fra (X) patients had a tendency toward lower developmental levelsin
verbal and nonverbal expression as well as in handling compared to AU patients; (3)on DSM
-III-Rtest, 3 of the 6 Fra (X) males met the criteriafor autism. Fra (X) patientshad fewer
failuresin recognizing others'existenceor emotions, to develop relationshipswith others and
to use language appropriately compared to AU patients,but had more defects in imitationof
others and adaptation to environmental changes than MR patients.
The similarityin the prevalence of the fragileX syndrome in the Japanese male retardates
to that reported in Caucasians suggests that Fra (X) is a common
genetic disorder affecting
allethnic populations. From the psychologicalfindings,we concluded that Fra (X) patients
have strong socialaversion and defects in verbal and nonverbal expression which sometimes
lead to autism.
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