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フランス離婚法における破綻主義の展開 (一)

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フランス離婚法における破綻主義の展開 (一)
法学研究論集第3号95・8
第嗣章 はじめに
フランス離婚法における破綻主義の展開︵一︶
第一章 はじめに
第二章 フランスにおける破綻主義導入の経緯
は第二二九条において、﹁離婚は生存配偶者による婚姻の解消であり、
X三〇︶がある場合に、裁判所によって言い渡される﹂と規定するこ
第四章 新法の適用状況
の大幅な﹁自由化﹂を図ろうとするものであった。すなわち、新離婚法
ハ 婚﹂︵島くo円①℃o霞﹁巷け霞①匹①冨く凶①ooヨ量﹂ロo︶とを導入して、離婚
︵島くo﹁oΦb舞8つω058ヨΦ暮ヨロε9と﹁共同生活の破綻による離
義に基づく離婚事由のほかに、新たに﹁相互の同意による離婚﹂
に離婚法が全面的に改正された。この改正は、旧法の伝統的な有責主
り
一九七五年七月一一日フランスにおいて、﹁離婚の改正を定める法
︵二︶第二三七条について
︵一︶提出法案
第三章 離婚法の構⋮造
︵三︶判例上の経緯
︵一︶社会的経緯
美
律﹂第六一七号により従前と同一の離婚︵U‘巳くo﹁o①︶の標題のもと
麻
︵二︶政治的経緯
杉
離婚事由として、相互の同意、共同生活の破綻、または有責事由
︵三︶第二四〇条について ︵以上第三号︶
一75一
大
︵一︶第二三七条について
︵二︶第二四〇条について
第五章 おわりに ︵以上第四号予定︶
所の離婚意思及び離婚条件の確認を経る協議離婚︵O一くO﹃OO°OOコ︿Φコけ剛O﹃戸︶
とにより、離婚の方式を多様化し、熟慮期間を前提とした上での、裁判
(h
ないし共同請求離婚︵9くo﹃o①ωξ自①ヨロコα①8コすヨけ①︶・認諾離婚
○条の﹁苛酷条項﹂の適用範囲をめぐって問題が生じることとなったの
である。﹁事実上の別居﹂の解釈及び﹁苛酷条項﹂の適用次第に よっ
︵巳くo﹁oo−みω粛コ讐δコ︶・破綻離婚︵αぞo﹁oΦ唱費ω9胃讐δコ血①賦詫
8ロニ昌鼠︶・精神病離婚︵臼くo﹃8℃o霞巴臨鑓二〇ロαΦh8巳叡∋9琶Φω︶ては、離婚の可能性を制限することも、またより緩やかに離婚を認める
する﹁救済﹂とみる考え方︵臼くo﹁8覗Φ∋Φ鼠︶をも導入することによ
る り破綻主義の理念に基づく離婚事由も規定した点に、その特徴があった。
︵臼くo﹁oΦ・ω雪oけδコ︶にのみ支配されていたのに対し、不幸な婚姻に対
基づく離婚原因を導入して、法改正を行うようになった。世界の国々は
めているのである。世界の潮流も、一九六〇年代に入ると、破綻主義に
分野に解放された﹁離婚の自由﹂の意義そのものが没却される恐れを秘
消もまた当事者の自由意思により認められるべきだとされ、私的自治の
ことも可能になるからである。そしてそれは、﹁フランス憲法典﹂第二
このうち共同生活の破綻による離婚については、第二三七条において、
着実に破綻主義の理念に基づく離婚原因を導入する方向に向かっていた。
及び一方的双方的有責離婚︵臼くo﹁o①唱o霞貯三Φ︶を認めたものである。
ヨ 夫婦が六年以上にわたって事実上別居した状態で生活している場合は離
例えば、イギリスにおいては一九六九年離婚法改正法︵↓﹃①Uぞo﹁oΦ
編第七条において婚姻が契約として考えられたことの帰結としてその解
婚請求を認めるとともに第二四〇条において﹁苛酷条項﹂を規定し、離
閃Φ8﹁∋>90h600︶によって﹁婚姻が回復しがたいほどに破綻して
これは、旧来の離婚が﹁有責配偶者に対する制裁﹂とみる考え方
婚請求棄却の裁量権を裁判所に与えている。
いる︵9Φヨ四三〇σqΦ8冨くΦげ﹁o評雪αo≦コ写Φ窪Φ︿9。σξ︶﹂という唯
一の離婚事由を定め、同時に五つの法定認定事由のうち一つ以上を立証
ところで、一七九一年九月三日の﹁フランス憲法典﹂第二編第七条に
おいて規定された﹁法律は婚姻を市民的契約としてのみ考える︵ピ9。一9
8コo置①みδヨ費すσqoρ¢①ooヨヨΦ§oo暮﹁讐9≦︶﹂の条文に鑑みし
れて破綻の存在を裁判所によって認定してもらわなければならないと規
定した。また、カリフォルニア州においては、一九六九年法において
﹁婚姻に回復しがたいほどの破綻が生じたこと﹂と﹁不治の精神病﹂の
ば契約として締結された婚姻は当事者の自由意思によってのみその解消
が認められるべきであり、その他の事由が必要とされるべきではないよ
二つの離婚事由を認め、別居が存在していなくても直ちに婚姻破綻が認
められるとされた。これはまさに当事者の離婚はなるべく私的自治に委
ハ うにも思われる。この立場にたって本改正を考慮すると、第二三七条に
おける﹁共同生活の破綻による離婚﹂のみがこの理念を最もよく現して
ねられるべきであるという精神の現れである。そして、ここにおいて規
真実当事者の婚姻生活が回復しがたい程度に破綻しているという客観的
いると考えられる。
しかし、理念としての破綻主義を反映した条文を新設するに当たって
ハ は、社会的にも政治的にもかなり顕著な意見の対立がみられた。また、
事実に離婚の根拠を置くものである。従って、﹁破綻﹂の意義が右のよ
定されている﹁破綻﹂とは、あくまでも破綻に至った原因はどうあれ、
新法成立後も、第二三七条における﹁事実上の別居﹂の解釈及び第二四
一76一
うに考えられるとすれば、今回フランスにおいて規定された共同生活の
破綻による離婚の条文は、第二三七条に該当する離婚原因事実が認めら
れる場合には、破綻の原因を問わず当然に離婚が認められるべきである
ことを目指して規定されたものであると考えられる。
すなわち、破綻主義の理念が破綻の原因を問わず離婚を認めるべきで
あるとするのであれば、第二四〇条において離婚が棄却される可能性が
認められたことは、破綻主義の本旨そのものを没却する可能性を内包す
︵3︶竃藝蕎∪垂﹀ω・ヌ“肉↓く二ρ↓≡z潤い勇c°。ω﹃幻δ⊂二い①∋巴鋤αq①①二。
︵4︶フランス民法典研究会﹁フランスの新離婚法﹂法律時報四入巻三号
臼<o﹁8°b。。①0ρ℃°qO°閃こロマO一゜
︵5︶旨O‘鼠げ舞9>°2°も゜ω宥㊤゜
︵一九六七年︶九六頁
︵6︶川田昇﹁イギリスの離婚﹂、利谷信義・江守五夫・稲本洋之助編﹁離
婚の法社会学﹂︵一九入入年 東大出版会︶所収 一五五頁、米倉明
﹁アメリカの離婚﹂同書所収一二九頁
一体、フランスにおいて、破綻主義に基づく離婚原因はどのような歴史
済状態などのあらゆる事情を反映して規定されるものである。それでは
における契約の一形態とする民事婚主義の見解が圧倒的な支持を得、婚
る﹂として民事婚の制度を確立した。この結果として、婚姻を市民社会
一七九一年の革命憲法は、﹁法律は婚姻を民事契約としてのみ考え
第二章 フランスにおける破綻主義導入の経緯
的経済的社会的状況から生まれ、どのような議論が政府内部で尽くされ、
姻の成立と同様に婚姻の消滅もまた意思の合致に基づいて行われるぺき
立法者意思から疑問点の解明を試み、更に新法適用後の実際の判例の適
以下の章では、立法の際の国民議会及び元老院で議論された資料を元に
離婚制度が導入された。離婚原因は法定原因の他に、性格不一致による
このような流れを受けて、一七九二年九月二〇日、フランスに初めて
であるとされた。
ポレオン法典︶では離婚を制限するに至った。一八〇四年民法典︵ナポ
レオン法典︶は一七九二年法とは異なり、法定された次の二種類の離婚
一77一
るものである。離婚法は、当該国の歴史や宗教、あるいは社会状態や経
フランスの離婚訴訟にどのような影響を与えることになったのだろうか。
用状況及び学説を考察することによって、どのような方向に向かってい
離婚及び協議離婚が認められた。このうち法定原因としては、心身喪失、
るのか、またどのような方向に向かうべきものであるのかについて考察
精神錯乱及び狂気、体刑または名誉刑の有罪判決、暴行あるいは重大な
この結果、特に都市での離婚が急増したため、一八〇四年民法典︵ナ
あげられる。離婚は非常に緩やかに認められていて、性格の不一致を理
ハ 由とする場合は実質上審理なくして離婚が宣告された。
虐待、著しい風紀棄乱、二年以上の遺棄、五年以上の生死不明、亡命が
を加えたい。
卜Ω刈卜ooo 5。一ω刈゜
・﹁
﹁①ooロ<﹁①ヨΦ暮 ℃信び一剛o OΦω ロ①コωδ昌ω巴圃ヨ①葺巴﹁Φ゜・‘一゜ρ℃‘一㊤胡゜一゜
︵2︶即 い≡8z‘ ピo コo=<①=① 一①ぴq巨讐向oコ ω昌 一Φ 島くo吋o① Φけ一①
ける最近の民法改正﹂日仏法学一〇号七九頁以下
ロ胃O臣ω↓一z︵︸°︶‘勺費一ω‘いφU°一゜胃お¢一‘づ。⑩㎝こ野村豊弘﹁フランスにお
︵1︶エき゜・塁︵と曾=鵠﹃≦。・F高閃︵U’︶‘↓轟まα①酔o算o凶乱‘卜。巴‘二口‘
注
して事前に取り決めること、子による夫婦の財産の二分の一の取得、三
年間四度の離婚意思の申述、物質的利益、住居の確保、子供の監護に関
二〇年以上二五年以下に限定され、そのほかにも尊属の了解を得ること、
以上妻は二一歳以上四五歳以下でなければならず、婚姻期間については
ねばならず、要件も非常に厳格であった。年齢については、夫は二〇歳
まず第一には協議離婚が認められたが、裁判官の面前に出頭して行わ
形態を認めた。
由刑及び名誉刑の宣告を受けた場合は、他方は離婚の請求をなすことが
された時は、裁判所は当然に離婚を宣告しなければならない。第二は自
三〇条︶。この原因は絶対的拘束的なものであって、姦通の事実が証明
である。夫の姦通も妻のそれと変わるところはない︵第二二九条、第二
絶対的離婚原因︵6p。二ωΦ゜。℃騨oヨ箕9﹁Φω︶の第一は、姦通︵巴三畠諾︶
因︵60ω島①ω融〇三冨二く①ω︶に分けられた。
離婚原因は、絶対的離婚原因︵8口のΦω℃曾oヨ嘗o一﹁oω︶と相対的離婚原
しかしこれは一八〇四年法︵ナポレオン法典︶以上に制限的であった。
できる︵第二三一条︶。 ﹂
年以内の再婚禁止、等が要求された。
ハヨ 第二には、姦通、重罪判決、暴力・虐待・重大なる侮辱の三個の有責
辱︵第二三一条︶があった。本法は基本的には有責主義的な考え方に沿
相対的離婚原因︵〇四二ω①ω h口O=一け鋤け一くO︶としては、暴行・虐待及び侮
フソ
更に、一八一六年五月入日法は離婚を全く禁止し、法定事由として別
った規定であったが、相対的離婚原因は絶対的離婚原因と異なり、裁判
的離婚原因による判決離婚であった。
居制度のみを認めた。これには、一八一四年ブルボン王朝が復活し︵王
官が離婚を命ずるか否かの裁量の余地が認められていた。もっとも、そ
活法案が上程されたが、実現をみるに至らなかった。第二帝政の終わり
このような情況のもと、離婚の数は増大し、一入入四年には一六五七
ある。従って、法律で罪悪感を与えることが必要で離婚は貞潔な配偶者
ハ がその有責な相手方に科す制裁である﹂と観念されていたといわれる。
の理念は、﹁離婚は神に対してだけでなく、社会と国家に対する罪悪で
ソ
政復古力Φω富二惹諏o昌︶、カトリックが国教となったことが、その背景に
ハる ある。
に、ナケー︵2餌ρ¢2︶によって本格的な離婚復活運動が開始された。
件であったものが一九〇〇年には入二二〇件に、一九三入年には二三三
一入三〇年の七月革命及び一入四入年の二月革命の直後には、離婚復
彼は前後三回復活法案を提出した。一八七六年に提出した第一法案は離
七七件にのぼった。
︵−o︶
これに対応すべく、一九〇五年一二月一五日下院議員マニョーは、自
婚の契約的要素を強調した︸七九二年法の復活を企図する幅広い離婚制
度であったが、それは成立せず、次いで更に緩和修正された第二法案も
由離婚主義を探り︵一︶不定因離婚︵彗o自。⊆ωΦぎ鼠8﹁ヨ凶融①︶、︵二︶
単意離婚︵虫く。﹃809。﹁α8奪巴。⇒ユ薯。δ三〇ロ邑讐①﹁巴Φ︶︵三︶協議
一入入一年に否決され、漸く第三法案が成立し、一入入四年七月工七日
に施行され、再び民法典の第二二九条以下に離婚制度が挿入されること
離婚の併用を主張した。
となった。
一78一
な制限を課した。すなわち、第二三二条において、暴行︵Φ×o甜︶・虐待
年四月二日の法律は、離婚請求を抑制することを目的としてかなり厳格
そして一九四〇年成立したヴィシi政府によって制定された一九四一
︵16︶
れを言い渡すことができる︵第二項︶﹂と規定した。
為が共同生活の破綻を耐え難いものとすることが証明された時にのみこ
姻より生ずる義務その他の重大なる違反︵第一項︶、離婚はこれらの行
︵ω0≦o霧︶が﹁婚姻から生じる義務及び債務の重大または継続的な違反 そして一九七五年七月一一日の﹁離婚の改正を定める法律﹂第六一七
︵§o︿δ一鑑8σq﹁巽08﹁90ロく色Φ①α89︿o貯①ωoけo喜σ号
q︵
9一
ユo
九拐
七六年一月一日から施行︶により、第一編第六章﹁離婚﹂︵第
に限ってのみ離婚を請求することができるとした。
どの特別な場合を除いて、六年間の別居という明確な破綻主義の理念に
基づく離婚原因のほかに、配偶者の︸方が不治の強度の精神病であるな
二二九条∼第三一〇条︶が全文が書き改められた。そして、有責主義に
第二次大戦後の︸九四五年四月一二日のオルドナンスは﹁夫婦生活﹂
基づく離婚事由を規定した。
おω巳鼠暮含ヨ四二四σqo︶を構成して夫婦生活の維持を耐え難くする時﹂
︵12︶
を﹁夫婦関係﹂に改めただけで同法の効力をそのまま認めた︵第二三二
条︶。
別居して生活する時は、共同生活の継続的破綻を理由として、離婚を請
第二三七条:︵破綻離婚︶﹁夫婦︵の一方︶は、六年︵前︶から事実上
︵13︶
その後、一九四五年六月五日のデクレによって司法省に設置された民
求することができる﹂
歪O霞①只o一〇ロoqOαΦ 一四く一①8∋ヨ¢器’一〇誘ρ二〇一Φω0唱o¢×く凶く①暮
﹀芦・。ωSd昌98×g真OΦ∋餌民臼冨αo︿冒8層2量一の8畠.8①
法典改正委員会は、第一編第六章︵第二二九条ー第三一〇条︶に規定さ
れていた﹁離婚Uロ島<o﹁8﹂を第一編第二章﹁婚姻・離婚及び別居﹂
に移して改正草案を作成した。これを基礎として、一九五五年には二つ
︵14︶
この第二三七条は、六年間事実上の別居があれば当然に離婚が認めら
ω①層四a°自αΦ出巴辞ユ①〇三ωω一×”房畳
る第一編︶の七四七か条に亘る民法典予備草案︵﹀≦耳も﹃9露αo
れると規定したものである。これはあくまでも破綻に至った原因はどう
の編︵﹁法律及びその適用﹂に関する序編と﹁自然人及び家族﹂に関す
Ooα①Ω︿εが公にされた。そして、一九五三年=一月に発表されたフ
︵15︶
に基づく離婚原因は、 一九四五年草案の段階においても想定されていな
たわけである。離婚法改正の主張が何度もなされていたものの破綻主義
婚姻の基本理念は﹁有責配偶者に対する制裁﹂とみる考え方が主流だっ
一八八四年の改正以来、一九七五年までのおよそ一九〇年間にわたって
客観的事実に離婚の根拠を置くものである。しかしフランスにおいては、
ランス民法典予備草案︵﹀<蝉暮・℃﹃9醇亀ΦOogoΩ乱︶は以下のように あれ、真実当事者の婚姻生活が回復しがたい程度に破綻しているという
規定された。
すなわち、第三二入条は、﹁離婚は左の原因により、夫婦の一方の請
求に基づきこれを言い渡すことができる。︵一︶夫婦の他方の姦通、
︵二︶普通法の罪による夫婦の他方の自由、名誉刑の宣告、︵三︶夫婦
の他方による重大なもしくは常習的な虐待、︵四︶夫婦の他方による婚
一79一
れ、世界的に破綻主義に基づく離婚を認める風潮が強まってきた。しか
かった。確かに一九六〇年代に入って、各国において離婚原因が改正さ
えられる。
が賛意を示し、破綻主義に基づく離婚の導入を認める方向にあったと考
あらゆる事情を反映して規定されるものである。それでは、フランスが
九六五年に夫婦財産制の改正がなされて以降、立法関係者のみならず広
第二の理由としては政治的な動きがあげられる。離婚法の改正は、一
︵三︶政治的経緯
破綻主義に基づく離婚原因を導入したのは、いかなる事情によるのであ
く政治的諸党派にとっても最大の関心事の一つであった。それは、民法
し離婚法は、当該国の歴史や宗教、あるいは社会状態や経済状態などの
ろうか。以下で考察したい。
れる。まず、離婚の許容は信仰の自由を侵害するもめではないとの考え
まず第一の理由としては、フランスにおける社会情勢の変化があげら
それは、ポンピドウ大統領の死亡によって新大統領選挙が行われること
する上での重要課題とみることによりすぐれて政治的関心事でもあった。
く、9政治的選挙特に直接選挙制をとる大統領選挙において婦人票を獲得
典家族法を全面的に見直すという狭義の立法政策上の関心からだけでな
方が浸透し、同時に、家族観も変化した。すなわち、夫婦関係が破綻し、
になった一九七四年五月に決定的な高まりを迎え、ジスカールーーデスタ
ついて賛成四八%、反対五二%と差が極めて小さく、かつ、反対のうち
よれば、﹁婚姻不解消﹂から﹁離婚の自由﹂へと原則を転換することに
て一九七二年に実施された世論調査においても示唆されている。それに
決が示すように、﹁暴行を離婚訴訟として正当化し得るためには、一方
第一に﹁暴行﹂については、一八八六年一〇月二〇日のパリ控訴院判
︵20︶
三三七七件。︶という事実が挙げられる。
一80一
︵二︶社会的経緯
家庭も崩壊した夫婦は、別居を続けるよりも、離婚して新家庭の想像を
ンが一・四%の僅差でフランソワーーミッテランに辛勝した、という事情
によって加重されたのである。
︵19︶
可能にした方が互いにも子供の境遇にも好ましいとされるに至ったので
ある。そして実際資本主義の発展を背景に家族の分解が進み、女性の社
︵四︶判例上の経緯
第三の理由としては、現実には、旧二三二条における﹁暴行、虐待、
会進出と経済力の増大と共に離婚は増加した。更に、事実上の別居、内
縁関係、非嫡出子の出生を増すのは望ましくないとして破綻主義による
重大な侮辱﹂の解釈を通じて次第に広く離婚請求が認容されるに至った
︵17︶
離婚を認めるべしとの主張が強まった。これは司法省、国立人口統計学
ェ入四年、一六五七件。一九〇〇年、八二二〇件。一九三入年、二
二〇%は離婚原因の拡大ないし容易化を承認した。個別の問題に対する
配偶者が他方配偶者の生活を侵害したということ、また、他方配偶者の
︵21︶
生活を危機に陥れるような行動があったこと﹂が要求されるとしている。
研究所︵一゜Z°国゜∪°︶、パリ第二大学法社会学研究室の三者の協力によっ
是非の解答は、右の意見分布を更に上回り、合意離婚を許容するための
第二に、﹁虐待﹂については、配偶者の人格に対して行われるあらゆ
︵18︶
手続きの簡易化に入九%が、長期の別居を離婚事由とすることに九〇%
(一
すような性的関係の濫用は虐待となると解された。
あるいは拘禁や食事を与えないこと、また妻が精神病や事故を引き起こ
おいても、具体的には、配偶者の健康な肉体や自由や健康に対する暴行
等による暴虐等精神的手段に基づく虐待も可能であるとされた。学説に
らず、不作為による暴虐・著しい不貞不業績・性的暴虐その他言語態度
い虐待となり、また必ずしも有形力の行使に基づく暴力的行為のみに限
傷に至らない暴行であっても激しく繰り返される場合は、同居に耐えな
は殴打の程度もしくは負傷の大小によって決められるものではなく、創
る行為を含むと解し、当該行為が、﹁虐待﹂に当たるかどうかについて
である。
内在する﹂と判示するようにより緩やかに離婚を認めようとしていたの
したことによって、婚姻関係にもたらす深刻にして且つ恒久的な鍛損に
主張される重大な事実よりも、かかる事実が共同生活を耐え難いものと
マー控訴院判決が、﹁離婚訴訟の原因は、離婚を請求するものによって
ての行為の上に成立するとされ、そして、一九三九年一月二五日のコル
離婚原因は、配偶者たる義務に違反しもしくは配偶者の品位を損うすべ
二三二条の条文の文言に従って、離婚原因となる﹂と判示するように、
婚姻義務違反となり、婚姻生活の継続が耐え難いものとなる場A口には第
殿院の判決が、﹁暴行・虐待・侮辱は、その事実が重大な侵害となり、
︵22︶
第三に、侮辱は全件数の四分の三を占め、これを利用することにより
念について論じたものが多い。そして、侮辱という用語は狭義において
広い。従って、判例を分析すると︵一般的離婚原因に関するV侮辱の概
かなり広く離婚が認められている。これは裁判所では非常に適用範囲が
因の概念を緩やかに解せばどうなるであろうか。例えば、侮辱するよう
に解せば、相手の違法行為に対する制裁の一種となる。しかし、離婚原
原因がない限り離婚請求はできないことになる。そしてこれを文言通り
確かに旧法下の離婚原因は有責主義の理念に基づいた規定であるから、
︵23︶
は、侮辱されたものに対し不名誉な感情を抱かせるところの軽蔑・誹諺
な意図はなかったとしても、一方配偶者が他方配偶者に対してかけた言
︵24︶
を言うが、離婚原因における侮辱なる意味はもっと拡張され、婚姻から
葉が侮辱されたと感じられるのであれば、離婚原因事実になるのではな
的な性質は完全に婚姻義務違反というわけではないが、離婚原因に固有
︵貯臼①︶に近い。破殿院によれば、一方配偶者の侮辱的な行動や侮辱
はないだろうか。従って、暴行・虐待・侮辱は、有責主義的離婚原因と
離婚したいとする、いわゆる破綻主義の考え方に通じるものとなるので
制裁というよりもむしろ、もう夫婦関係を継続することができないから
いだろうか。とすればこれはまさに、相手方配偶者の違法行為に対する
生ずる義務の躁踊、夫婦生活の品位を傷つけるところのすべての言動を
指称することになるとされた。それは侮辱というよりも、配偶者の過失
のあらゆる状況、特に配偶者についての侮辱的な性質を考慮することに
して典型的なものであるが、それはまた婚姻関係を破綻させる主要な事
︵25∀
よって判定しなければならないと言及している。
由でもあるから破綻主義の下においても破綻を認定するに際しての具体
︹26︶
従って、実質的には、破綻主義的な考え方が裁判所の実務の中にかな
的内容となり得る事項なのである。
︵27︶
り浸透していたのである。それは、例えば、一九五〇年四月二六日の破
一81一
という離婚原因事実について如何なる種類・程度・内容において婚姻関
そこで、本稿においては、特に離婚請求の四分の三を占める﹁侮辱﹂
姻生活の継続が耐え難いものとならない限り、離婚原因とはなり得な
虐待・侮辱は、以上の事実が重大な侵害となり、婚姻義務に違反し、婚
生じた事実について考慮されなければならないとしている。しかし判例
たものに限られるのであろうか。これについては原則として、婚姻後に
まず、離婚原因として考慮される﹁侮辱﹂の事実は婚姻期間中に生じ
〇〇年一一月一二日の判決は、夫が数か月に亘って、婚姻の継続を故意
んでいることを証明しなかった場合や、夫が継続的かつ自発的に婚姻生
︵32︾
活の遂行を拒んだ場合は、重大な侮辱となるとした。例えば破鍛院一九
第二に、夫が肉体的障害を有していることや、妻が逆に性的関係を拒
い﹂と判示したのである。
︵31︶
は、婚姻前の事実を他方配偶者に隠していた場合にも重大な侮辱となる
に且つ執拗に差し控えることは、妻のために離婚を宣告させる性質を持
係破綻の事由となり得るかについて判例を考察したい。
としている。実際、婚姻前の事実、例えば有罪判決、無能力、精神的欠
︵29︶
れ、離婚原因事実が拡張されている。
配偶者が他方配偶者に隠していた事実についても重大な侮辱になるとさ
とは、重大な侮辱にあたると判示した。すなわち、ここに婚姻時に一方
の判決は、妻が婚姻前に精神病に罹患していたことを夫に黙っていたこ
て離婚を認めたのである。例えば、アクサン控訴院一九三六年六月三日
下︶。しかし、裁判所は以上の事実を隠していたことは侮辱であるとし
要に金を使うのは夫の過失によるとして﹁離婚訴訟の原因は、離婚を請
二五日の判決は、日中長時間カフェに女性の気を引くために行き、不必
な嫉妬はまた重大な侮辱となる。例えばコルマー控訴院一九三九年一月
辱となる。妻に対して不愉快となる監視によりもたらされる過度の不当
そらせるような第三者との純粋に精神的な交際があった場合も重大な侮
侮辱となる。判決の中には、配偶者に対して持つべき愛情を配偶者から
第三に、不貞はそれ自体離婚原因となる。また不貞の企てについても
つ重大な侮辱となるとした。
︵33︶
次に、﹁侮辱﹂の具体的内容について以下に考察したい。
求するものによって主張される重大な事実よりも、かかる事実が共同生
︵28︶
陥、等は離婚原因でなく婚姻無効の原因とされていた︵第一八〇条以
第一に、フランスの判例によると婚姻について約された宗教的儀式を
︵34︶
履行することの拒否、出生した子の受洗の拒否、妻の親族に接すること
活を耐え難いものとしたことによって、婚姻関係にもたらす深刻にして
︵35V
且つ恒久的な殿損に内在する﹂という判断を示した。
第四に、配偶者の一方が他方配偶者を夫婦の同居場所に受け入れるこ
︵36︶
とを拒否することを重大な侮辱としている。例えば、夫が、妻の同居を
の拒否、不適当な雇人を解雇することの拒否、偏屈な沈黙等もここにい
る。破穀院一九四五年一二月三日の判決は、﹁夫婦間の非常に活発な言
拒む場合の如きがそれである。破殿院一九五一年五月七日の判決は、妻
わゆる夫婦生活の品位を傷つけるものとして重大な侮辱に数えられてい
い争いが喧嘩に変わった場合には、婚姻から生じる義務の重大な違反に
は三度にわたって共同生活を拒否し、二度の催告に対しても共同生活を
︵30︶
なるとして、第二三一条の意味における重大な侮辱とは、重大な暴行・
一82一
︵例えば、夫婦の双方が相手方に対して侮辱となる手紙を出すなどし
実質的な合意があり、夫婦が離婚事由を共謀して作り出している場合
第六に、離婚が認められた判決の中には、夫婦の間に離婚することの
︵38v
ことは婚姻関係の維持を耐え難いものとするとした。
言葉を使い、金を浪費し、日常生活に必要な衣服の代金も妻に与えない
いて、夫はたびたび妻に暴力を加え、ショックを与えるようなみだらな
例えば、破鍛院一九五二年一月九日の判決は、夫が妻を訴えた事案にお
第五に、共同生活の品位を損なうような行動も侮辱と考えられている。
かみついたり、足蹴りを食らわせたりした事実を認定しながら、これを
︵37︶
侮辱と判断するかどうかは裁判官の最高の権限に属するとして棄却した。
回復させることを拒み、夫に対して侮辱的な言葉を吐き、わめき散らし、
主義的乃至救済離婚的な要素をフランス離婚法の中に混入させる結果を
事由の修正が判例に解釈の余地を広げる役割を果たし、実質的には破綻
このように一九四一年四月二日の法律による暴行・虐待・侮辱の離婚
事態を示すものにほかならない。
を与えていたのである。離婚請求に対する排斥事例の少なさも、同様の
易に推測されるが、裁判所は、そうした場合にも比較的容易に離婚判決
は、夫婦の問に離婚についての事実上の合意が形成されていることが容
事由を理由に離婚を請求し、他方も、それを特に争わないという場合に
るケースが少なからず含まれていた。例えば、夫婦の一方が他方の有責
七〇%を占めており、しかも、その中には、事実上の協議離婚に相当す
の六年間では、この暴行・虐待・侮辱を原因とする離婚が全離婚件数の
法の実効性を失わせるものであるという批判がなされた一方で、無責配
よって、民法典と離れた離婚実務が司法に対する不信感を生ぜしめ、立
に、離婚原因のひとつである﹁侮辱﹂が、裁判所で広く解されたことに
べく認めていこうとする意図の現れであるとも言えよう。しかし、反対
わたっている。これは、条文の意味を非常に緩やかに解し、離婚をなる
以上のように、第二三二条の離婚原因に該当する事実は非常に多岐に
よる協議離婚を認めているに等しいと考えられる。
て︶が少なくないことが挙げられる。このことは、結局当事者の合意に
この点について、立法過程の議事録をもとに考察を加えたいと考える。
過程を経て立法化されるに至ったのであろうか。以下の章においては、
それでは、以上のような﹁実態としての離婚の自由化﹂はどのような
うに思われる。
婚原因の導入を踏み切らせる大きな要因となったことは否定できないよ
いたのである。以上のような事情は政府に、破綻主義の理念に基づく離
とっての﹁実態として離婚の自由化﹂は、既にかなりの程度まで進んで
その意味では、一九七五年の制度改正前においても、破綻した夫婦に
もたらしたといわれる。
︵39︶
偶者が離婚に強く反対するために、事実上の別居、内縁関係、私生児の
出生を増加させるのは望ましくないとして、広く破綻主義による離婚を
認めるべきであるという主張も強まった。
︵40︶
事実、実際の離婚判決の内容において、例えば一九七五年の法改正前
一83一
注 ・
︵1︶勺;zδ﹁こ8h幽け’B。=ω刈。も゜ω刈N
︵2︶幻9。署o﹁叶 α Φ ζ b ° ≡ 伽 N も ﹁ Φ 6 ほ 層 O ° 県
︵3︶い巴zと≡°↓血Φ冨︼≦°聖z。勇ぎO﹁o詳Ω<ぞ一︶巴δN°”這㎝OごPωミ.野
村前掲︵1︶九五頁
︵4︶青山道夫編﹁講座家族4婚姻の解消﹂︵昭和四九年 弘文堂︶一一七
︵5︶い勇。ωω﹃幻歪︵○︶剛Uδ団けα巴9。富ヨ≡。L.<♀㌔巴ω゜竃霧゜z二HO°。心二
頁
9ωミ
︵6︶=舅[訂゜z︵ζ゜︶。け葛︾Z︵ヌ︶”冨8房α①O﹁o津。一≦層け﹂‘劇①巴
︵19︶判例に関する分析として、寓菊oαQ①びZ①﹁ωoロし弓凶ωロ﹁&①琴o
︵18︶稲本洋之助.﹁フランスの家族法﹂︵一九八五年 東大出版会︶三九頁
閃茜コゆp。凶ωρ力①く゜貯凶ヨ゜ユ﹁。o圃く‘H㊤◎。O°ロ戸刈ωP
︵20︶三田高三郎﹁婚姻事件訴訟の研究﹂︵帝国判例法規出版社 一九五五
︵21︶塑で勇↓卑C口゜5︾z霧㌍目﹁曽淳0田ΦヨΦ茸巴﹁①α①α﹃o剛け皇︿=低①勺冨三〇r
年V二二二頁
︵22︶℃釦二゜。﹄08け﹄°。°。①こO°勺の゜。O°N°さH魯ρ
δ㎝90°=ぎPコ↓差↓Φけ寓゜男>z°勇寧↓轟凶叡αΦα﹁o謬〇三♂這αω゜
︵23V︾;毫Uq国いN”い①酔o剛けα㊦島くo﹁8.”O冒匿ωO.
︵7︶青山前掲︵一 ω ︶ 一 一 八 頁
︵27︶≧×ω甘圃ロ゜しりω①‘U°国゜−おω①.㎝&°
︵26︶O°;’琵bO一雪く巳ωO二〇.=﹂㊤ω㊤゜一謁゜
︵25︶Ω<°ωooけh凶く。◎。∋蝕6㎝O‘U°雪㎝PN眞ω9
︵24︶Ωく.ωΦoげo剛く﹄0鋤く﹁一㊤αO二U”勺.㎝PP幽認゜
︵8V9寄゜z三塁︵ごU﹁o#Ωく=ト目”旨。0α二δ。。ω’勺゜q閃゜P一心b。°
︵29︶9°唇国゜・勾弓雪↓こ畢zじ口゜⊂r≧°問㌍↓量凶8号α8詳o凶三♂コ。=ω刈
︵28︶山本桂一﹁フランスの離婚法﹂比較法研究二号、一八二頁
国 臼 試 o 昌 ζ 0 5 8ぼ①ω甑①コ‘P謎一゜
︵9︶閑碧8﹃乙Φζ ゜ ︼ ︶ ° 慧 岡 ゜ 瓦 8 旨 0 ‘ 5 。 δ ゜ 。 員 一 ︶
︵34︶閑①ρしb。コoく’おOO二〇°勺゜同08°b。°b。一.
︵33︶勾①ρこb。O昌oくレ㊤OPO.勺﹂㊤Oいピ一bH
︵32︶O円9∼°田汐謁雪諒窪Ud°己;z°罫↓﹁巴8αo費o搾o圃≦ン昌。=巽
︵31ω一︶勾①ρ゜ωほoH㊤δ二U6℃’一〇ホ.ωoヨヨO°
︵30︶9°召留汐﹁勇↓層︸塁z口ご゜こ;z°畢↓﹁巴8α㊦二﹁o謬〇三r5。=ω刈
︵10︶寄呂誹号ζ6董。N°も﹁8羅
︵12︶久貴忠彦11小幡由子﹁フランスにおける破綻主義離婚法の誕生︵上︶﹂
︵11︶久貴忠彦11小幡由子﹁フランスにおける破綻主義離婚法の誕生︵上︶﹂
判タ四一〇号、五二頁
︵13︶一九七〇年代以降のいくつかの草案の内容やその後の経過については、
判タ四一〇号五二頁、
︵36︶U言コニト。ωぎく一。。O卜。二U°℃°㊤ω゜悼゜い。刈゜。°閃8°ωこ撃く゜一゜。O°。こU°℃°
︵35︶Oo一ヨ①びb。ご9。コくおω㊤゜”∪出゜一㊤ωO°H謡゜
㊤ωのじこ゜OH刈゜
ζ゜bσ雲悼勇噂い①ぎ虞く①鋤二〇﹁O律α①巳<O﹁Oρδ♂もO°昼①けω①ρに詳し
めの第一法律草案﹂から示唆を受けたとされている。
い。政府草案は特に西ドイツの一九七一年﹁婚姻法及び家族法改正のた
︵39︶[①∋2三臼︵閃゜︶;U﹁o犀Ω︿=牢冒o言①ω曾冒拶萬盤①‘O①2勺m﹁β
︵38︶Ω<.器90圃く‘㊤冨コタδ給゜uU﹂㊤認﹄謹゜
年V二二二頁
︵40︶三田高三郎﹁婚姻事件訴訟の研究﹂︵帝国判例法規出版社 一九五五
竃﹀ωωOZしOOPも。。OΦけω゜.野村前掲︵30︶四四頁以下
︵37︶9︿二ωΦoρo凶く゜為ヨβ。=O㎝一;U﹂㊤留゜ミN°
メリカの離婚﹂利谷信義・江守五夫・稲本洋之助編﹃離婚の法社会学﹂
①二⇔ω9費騨凶oコα①86ω二︵這巴゜旨∪国口≦>QD︶.
︵17︶旨﹀ε詔く°こ5↓°℃い四みho﹁ヨ①含U同くo﹁8‘︵お♂︶”薯噂゜㎝゜︾ぴ①U凶<o﹁8
会︶二六九頁
︵16︶福島正夫編﹁家族政策と法4欧米資本主義国﹂︵一九九一 東大出版
︵15︶じロ雪N弱︵竃の︶‘oPo搾.”5。合.−℃°這Φ樽ωoρ
︵一九入八年東大出版会︶所収 一二九頁
︵14︶川田昇﹁イギリスの離婚﹂利谷信義・江守五夫・稲本洋之助編﹃離婚
の法社会学﹂︵一九八八年 東大出版会︶所収 一五五頁、米倉明﹁ア
一84一
司法大臣に報告した改正案は以下のように規定された。すなわち、第三
考え方が裁判所の実務の中にかなり浸透していたことがわかった。すな
前章までの検討の結果、離婚訴訟において実質的には、破綻主義的な
は夫婦の他方による重大なまたは常習的な虐待、第四には婚姻より生ず
普通法の罪により夫婦の他方が自由・名誉刑に処せられたこと、第三に
言い渡すことができる﹂として、第一には夫婦の他方の姦通、第二には
二八条において、﹁離婚は左の原因により夫婦の一方の請求に基づいて
わち離婚原因のひとつである﹁侮辱﹂というのは、裁判所では広く解さ
る義務の夫婦の他方によるその他の重大な違反があった時、とされた。
第三 章 離 婚 法 の 構 造
れており︵侮辱を理由とする離婚判決が他の原因に比して圧倒的に多
そして、この草案は、拘束的原因︵o窪ω①U曾Φ∋讐δロω︶と任意的原因
︵S二゜・Φω富o巳冨ユ<Φω︶との区別をせず離婚原因のすべてを裁判所の完
い︶、必ずしも有責性と明確に結びつくわけではなく、有責性の要件が
実質的に緩和されていて、破綻主義の理念に立脚した離婚原因の解釈が
る。第四に、有責主義においては、相手方の有責性を立証しなければ、
的な基準がない。第三に、離婚に有責性を要求する事は離婚を困難にす
部にまで入り込まなければならないが、裁判官にはそれを判断する科学
る事が一層困難になる。第二に、有責性を探究するためには、夫婦の内
婚姻が長期になると、破綻の原因となっている有責的事実を明らかにす
得る手段を有していない。婚姻の破綻はいろいろな原因から生ずるし、
判官は何が婚姻の破綻を決定している有責的事実であるかを明らかにし
このような展開の理由として次のような事が考えられる。第一に、裁
請求することができる。
別居して生活するときは、共同生活の継続的破綻を理由として、離婚を
第二三七条:︵破綻離婚︶夫婦︵の一方︶は、六年︵前︶から事実上
ハ による離婚については以下のように規定された。
法案は破綻主義離婚の導入を目指して精神病離婚を除く共同生活の破綻
これに対して一九七五年四月一七日国民議会に対して提出された政府
判断されたものである。
あるが、基本的には一入〇四年法の考え方を維持するのが妥当であると
因に任意的性格を認めたりして、いくつかの修正がなされていたわけで
全な判断に委ねている︵第三二八条第二項︶。旧法ではすべての離婚原
ハユ たとえ婚姻が破綻していても離婚は認められない。
﹀昼N巽.d昌90煽×9彗9ヨ9。ao﹃δa︿o﹁oρ雪﹁巴ω8αゴg
なされていたのである。
しかし、ヨーロッパの多くの国では、有責離婚の偽装の下に実質的に
を理由とする離婚がそのために、最も利用されていた。
第二三七条は六年間事実上の別居があれば、当然に離婚が認められる
ユohp。淳α9三ω匹×帥房’
歪讐ロ﹁Φ冒o首コぴq伽ユΦ冨く一Φ8∋ヨロロρδ﹁ωρ器δω90昼×<凶く①昌けω9巽0ω
このような流れを受けて、一九四五年六月五日のデクレによって司法
と規定したものである。第二三七条が予定している破綻主義は、あくま
破綻離婚を裁判所は認めている。前述のように、フランスでは﹁侮辱﹂
省に設置された民法典改正委員会が作成し、一九五三年=一月二〇日に
一85一
でも破綻に至った原因はどうあれ真実当事者の婚姻生活が回復し難い程
度に破綻しているという客観的事実に離婚の根拠を置くものである。
棄却される可能性を認めるような条文を規定した理由は何であろうか。
一体、フランスにおいて、①破綻主義はどのような意図から導入され、
て、その年齢、及び婚姻期間、子供については物質的精神的効果を考慮
第二四〇条 ︵離婚が︶離婚を請求された一方当事者及び子供に対し
婚請求を棄却する余地が認められた。
更に新法適用後の実際の判例の適用状況及び学説を考察することによっ
び元老院で議論された資料をもとに立法者意思から疑問点の解明を試み、
ろうか。以下の章では、先に指摘されたような、立法の際の国民議会及
の条文は、フランスの離婚訴訟においてどのような影響を及ぼしたのだ
②なぜ破綻主義の理念と相矛盾するような苛酷条項が規定され、③以上
して例外的苛酷であると証明された場合には、裁判官は離婚請求を棄却
て、どのような方向に向かっているのか、またどのような方向に向かう
そして、第二四〇条において、いわゆる﹁苛酷条項﹂が導入され、離
することができる。
j提出法案
﹀﹁け゜逡ρω剛一げ¢qΦ①Oo¢×①冨げ澤ρ¢Φ一〇臼くo﹁8四霞巴戸ωo律Oogべきものであるのかについて考察を加えてゆきたい。
一三℃ 8ヨ讐Φ 8⊇﹄ 50冨ヨヨΦ耳匹Φωoコ叫σqΦ曾匹Φ一四α霞①o山ロ
oそ
ヨ9二四〇qρωo詳℃o霞δω雪︷p。暮ρ島①ω60器9二28ωヨ魯①ユΦ=①ω
ロもそもフランスにおいて、破綻主義に基づく離婚原因を導入するに
ハヨ 当たっては、社会的にも政治的にもかなり顕著な意見の対立がみられた。
るとする。しかし破綻主義の理念が破綻の原因を問わないとするもので
に苛酷であると認められた場合には裁判官が離婚を認めないことができ
婚の根拠を置くものである。これに対して、第二四〇条は離婚が例外的
者の婚姻生活が回復しがたい程度に破綻しているという客観的事実に離
ある。すなわち、あくまでも破綻に至った原因はどうであれ、真実当事
第二三七条に該当する場合、当然に離婚が宣言されるべきはずのもので
破綻主義の理念が、破綻の原因を問わないとするものであるならば、
はじめとして、多数の議員提出法案が現れるに及んで、一九七五年四月
党及び急進社会党左派グループ共同の法案が国民議会に提出されたのを
政府は、同年一〇月入日に共産党の法案が、また一一月一五日に社会
結社によってしきりに要求されるようになった。
とから、離婚法の改革が国会議員や多数の政治集団、そしてさまざまな
ことによって離婚をするという﹁慣れ合い離婚﹂が多く行われていたこ
ければ離婚できなかったため、しばしば夫婦が共謀して過失を作り出す
旧法においては、少なくとも一方配偶者が他方配偶者の過誤を証明しな
∋o﹃巴oωα.二昌①Φ×8冥δ昌po目⑦Ω貫①融し①冒σqo﹁oU①け8一9αoヨ帥コαρ
あるならば、離婚が棄却される可能性を規定した点においてフランスは
に提出された共産党法案は以下のとおりである。
一七日に国民議会に政府提出法案が提出された。一九七五年一〇月八日
ハる るのである。フランスでは﹁離婚の自由化﹂を目指して破綻主義の理念
第一に、事実上の別居による離婚の導入を主張した。すなわち、夫婦
破綻主義の概念と矛盾する考え方を示す条文を規定したことになってい
に基づく離婚原因を導入したわけである。とすれば、このように離婚が
一86一
(一
バァ ップルと家族に幸福追求権を認めるべきであることを挙げている。従っ
居している場合には、新しい家庭を築いている可能性があるから、新カ
的な概念と矛盾していること、第三に、夫婦が数年にわたって事実上別
に関する現行法は多くの人々によって承認されている婚姻と家族の近代
による離婚事由の導入を主張した。その理由として、第一に、制裁離婚
とが出来るとすべきであるとした。第二に、夫婦関係の回復し難い破綻
ている場合に於て、裁判官は一方配偶者の請求により離婚を宣告するこ
ないから、過失や不法行為を問うことなく三年以上に亘り事実上別居し
り夫婦関係の回復がもはや期待できない場合には、婚姻はもはや存在し
が、子供が生まれている別の家庭を築いて親子関係の問題が錯綜してお
が数年に亘って別居している場合及び一方配偶者︵時には双方配偶者︶
以上の二つの案共に破綻主義を導入する意図を表していることは明確
て夫婦が共同体に終止符を打つ権利を特に承認することによって離婚の
ハ 改革を速やかに促進することが必要であることを挙げた。
している場合、明らかに夫婦の破綻を構築していることを挙げる。従っ
いことを挙げる。第三に、夫婦が長期に亘って︵三年以上︶事実上別居
依存しているのであるという婚姻に対する考え方とは明らかに相容れな
を挙げる。第二に、旧法の規定は、二人の人間の愛情に婚姻は本質的に
マ﹂を伴い、﹁裁判上のコメディー﹂を演じてしまう可能性があること
また、時には、配偶者と子供を害する以外のものはあり得ない﹁ドラ
る示談の合意をより困難にし夫婦間の本来的な闘争を苛酷なものにする。
による見せかけの理由書を取引することを企てさせ、離婚の効果に関す
システムは、カップルを追いつめ、また、時には、双方の弁護士の調停
ハ ね
て過失離婚を完全に排除し破綻主義の理念を徹底させたものとなってい
宣告する権限を裁判官に与えることにより、離婚を認容すべきであると
ことが﹁十分に証明﹂されれば、一方配偶者の請求に基づいて、離婚を
た場合﹂には、﹁夫婦関係の破綻が存在している﹂のであるから、その
党のグループから提出された法案は、﹁夫婦が非常に長い間別居してい
一九七五年一一月一五日に総裁︵7貞の一︶①hh①﹁﹁O︶のサインの下で社会
全な破綻を示す離婚に関しての客観的原因を二つ採用した。すなわち、
そして、共同生活の破綻による離婚として、政府法案は共同生活の完
が提唱された。
ほかに、同意離婚あるいは、共同生活の破綻による離婚を導入すること
政府法案が提出された。政府法案では、過失離婚、あるいは制裁離婚の
議員提出法案が現れるに及んで、一九七五年四月一七日に国民議会に
である。
主張して、第二三〇条において、三年以上に亘り事実上の別居が証明さ
共同生活が夫婦間で全く存在せず、より具体的な予想に従えば将来にわ
る。
れた場合には一方配偶者の請求に基づいて離婚が宣言されなければなら
たっても回復することが不可能であるような場合の、事実上の別居によ
による離婚に関しては、第二三七条において﹁夫婦が、六年以上、事実
る離婚と精神病離婚である。このうち精神病離婚を除いた事実上の別居
︵10︶
ない、そして第二三一条において、婚姻破綻が理由を間わず回復不可能
であると見られる場合には一方配偶者の請求に基づいて離婚が宣言され
得ると主張した。そしてその理由として第一に、従来の﹁制裁離婚﹂の
一87一
理由として、離婚を請求することができるLとし、さらに第二四〇条に
上別居して生活している場合、一方配偶者は、共同生活の継続的破綻を
のである。
併せて主張している。以下においてはその理由について検討を加えるも
項﹂の導入を併せて主張した。以上のような改革が必要である理由とし
立証された場合には、裁判官は離婚請求を棄却する﹂とする﹁苛酷条
間を考慮して、子供にとっては精神的物質的に例外的苛酷となることが
六年にわたって破綻した後に、他方配偶者を遺棄した配偶者が離婚を請
旨説明は以下のとおりである。﹁この規定が画期的なのは、共同生活が
七条について、ζ゜ζ母oい9霞圃o一︵¢b°閑゜土ハ和国民主連合︶が行った趣
国民議会第︼読会︵一九七五年五月二九日木曜日︶において、第二三
︵二︶第二三七条
ては、主査委員会報告者︵7山゜h︾O昌口ΦN︶から、おおよそ三つの理由が挙
求することが可能であることである。婚姻はすなわち六年間の予告期間
おいて﹁離婚が、︵一方︶当事者に対しては、特にその年齢及び婚姻期
げられた。第一に、現行の離婚訴訟においては、夫婦間の闘争を激化さ
の後、一方配偶者が一方的に解約することができるという解約権付きの
け せ、子供にショックを与えるような裁判上の戦いを始めることを強制さ
る事実上の別居に至ること、第三に、夫婦が離婚に合意している場合、
︵15︶
とが肝要なのであると主張したのである。
能の終身の共同体であるという婚姻の本質に対する理解を変化させるこ
合意契約であるという思想に基づいている﹂。従って、婚姻は解消不可
︹14︶
第三者に様々な別居の事由を開示しないために、表面的な苦情を申し立
これに対して、①ζ゜ωo一〇︵d’U°押﹀による第七一号案、②ζ゜閃o﹁魯ω
れること、第二に、請求棄却の場合は、しばしば同棲を伴い長期にわた
てるためのシナリオを準備しなければならないこと、このような状況は、
定的破綻を規定すること、第二の方法は、ある一定の期間に亘って絶え
六九年にイギリス法が採用したように、列挙された事実から、婚姻の決
ことを挙げる。それに対する可能な解決策として、第一の方法は、一九
関して目をつぶることを裁判官に強制しており司法の信用を失墜させる
観的原因﹂と呼ばれるものとして宣言され得るものであること、第二に、
の意思に基づく共同生活の破綻が決定的になった場合には、離婚が﹁客
この修正案は、第一に、六年間の期間が経ち、少なくとも一方配偶者
これはいずれも、第二三七条を削除する案であった。
ランス民主連合︶による第二三九号案の三つが修正案として提出された。
︵国゜O﹂︶°ωの︶による第八一号案、③竃’×餌≦震∪①三9。¢︵>bP⊂のP即フ
間なく夫婦が別居していたという事実から破綻を認定することが必要で
二人の人間が、愛情に続く憎しみからもはや理解しあえず、数年にわた
裁判官の面前で演じられる裁判上のコメディー︵8∋Φ巳①甘99巴お︶に
あると主張したのである。
って別居しており、あらゆる勧解の希望が復旧不可能な程に失われた場
離婚事由として別居のみを挙げた。これに対し、政府法案は、かつて一
ないことをその理由とする。そして第三に、政府法案はより若い女性と
合には、その状況︵一方が利益を受け得る︶を無視することは妥当では
︵13︾
︵12︶
共産党案・社会党案共に破綻主義の理念を積極的に取り入れたため、
九六九年にイギリス法において採用されたような﹁苛酷条項﹂の導入を
一88一
入するものであるとの批判をその内容とする。そして、例えば五〇歳を
生活することを望む男性に対して利益となる一方的追い出しの形態を導
解を示している。
離婚と追い出し離婚はあくまでもその性質が異なるものであるという見
的な刷新点である。事実上の別居は、物理的、情緒的、知的、精神的、
﹁六年間に亘る事実上の別居による離婚を認めることは、改革の根本
これに対して政府︵ζ゜ひqβρaΦ山Φωωo$¢×︶の意見は以下のようである。
したのである。
べた。すなわち、事実上の別居による破綻の認定権を裁判官に委ねるこ
あらゆる場合において裁判官が介入して、評価するからである。﹂と述
るだろうか。共同生活の破綻による離婚は自動的ではない、なぜなら、
に亘って婚姻が破綻している場合に、それを再生する真のチャンスがあ
し恣意的でもない。なぜなら六年間が経過しているからである。六年間
そして、﹁長期にわたる共同生活の破綻による離婚は自動的でもない
物質的な生活共同体である婚姻が法的擬制以外のものではない空虚な実
とにより、破綻離婚と追い出し離婚、すなわち単意離婚との一線を画し
越えた子供のいない女性等の場合には離婚を認めるべきではないと主張
体を生み出すものであるとの概念に基づいている。したがって、婚姻生
たということができる。従って、別居が当事者の婚姻破綻の客観的懲悪
づいて離婚を認めることの目的は、婚姻が非現実的な空虚なものとなる
されるならば、追出し離婚は可能となる。しかし、破綻主義の理念に基
確かに、この法律が六年間執拗に維持し続けたペテン師によって使用
となるものでなくてはならない。
︵17︶
活の継続が耐え難いものであるならば、現実を直視することが大切であ
る。大概、新たな家族が確立され、秘密の性質を呈し、しばしば不義の
子と生活しているような場合には、婚姻生活を継続させることは、社会
的道徳的に見ても望ましい事ではない﹂とし、あくまでも破綻主義の導
入を主張した。
︵16︶
場A口には新たな家族を確立することを認めるという目的のみを有してい
の懲葱があると考えているのである。例えば、ζ゜﹀コα﹁ρOげ9。&030σqo﹁
従って共同生活の破綻が六年に亘っている場合にはそこに決定的破綻
るということなのである。
︵18︶
この問題は引き続き国民議会第︸読会︵一九七五年六月三日月曜日︶
においても議論され、政府︵ζ゜一Φσq費αΦ血Φωωo①碧×︶は以下のように
述べた。,
﹁第二三七条に規定する破綻主義を導入するについての問題点は、長
体は存在しないから、婚姻が破綻していると認めなければならない﹂と
︵勺゜ω.勾φ急進社会党︶も﹁六年間別居が継続した時は、もはや共同
る事に存している。いかさまをする人、ペテン師が、妻から離れるため
して、とにかく事実上の別居が六年間に亘って継続していれば離婚を認
期にわたる事実上の別居から生じる離婚と、追い出しの権利を同一視す
にこの可能性を使おうとすれば、それは可能である。しかし追い出しと
︵19︶
めるようにしなければならないと主張した。
その結果賛成八八、反対三五九で、第七一号・第入一号・第二三九号
は何であろうか。これは一方的な行動であり、より明確に述べれば、男
性によって完結される行為なのである。﹂として、別居から生じる破綻
一89一
存在は、破綻の要件になるとは限らない。このことから家庭共同体が存
は、婚姻関係の単なる外的一側面に過ぎない。従って、家庭共同体の不
も実際に破綻しているということも考えられるからである。家庭共同体
因ということにはならないはずである。すなわち、同居している夫婦で
るいは双方配偶者の意思が含まれる。従って、別居が必ずしも破綻の原
念でしかない。これに対し、破綻は、別居を生じさせる一方配偶者、あ
上の別居は共同生活の停止という物理的な一事象﹂すなわち抽象的な概
しかし、別居とは、ζ゜い①$昌ロ9︵法務大臣︶が述べたように﹁事実
綻の唯一の認定要素として認められたのである。
の修正案は採択されなかった。すなわち、長期に亘る事実上の別居が破
のでなければならないのである。従って、六年の期間は土ハ同生活の回復
従って、この意味における別居とは、婚姻破綻の客観的懲愚となるも
共同体ではないのである。﹂ということが挙げられる。
擬制の中にいるのである。もはや婚姻はなく、うわべだけのものであり、
がなく、手紙もなく、話し合いもなく、会うこともないような場合には、
の条件において、夫が破綻したと感じ、年を重ねるごとに、もはや交流
別れてカップルが形骸化し、女性が夫婦生活から離れると決心し、同様
は婚姻はまず第一に物理的同居なのである。一方あるいは他方配偶者が
に結婚しようとは敢えて考えないからである。しかし婚姻の本質として
りも道徳的、情緒的、感情的な共同体である。なぜなら人は利益のため
その理由としては、ζ゜O餌凶一一曽くoけが述べるように、﹁婚姻はまず何よ
︵21︾
︵20︶
在しなくても、婚姻生活共同体は存在する場合があり得ることになる。
が不可能であると確信するに至るまでの十分な証拠となる。婚姻中の当
事者は第二一二条に記載された婚姻中遂行される義務﹁夫婦は互いに貞
とすれば、なぜ破綻の認定要素を六年間の別居ひとつに限ったのであ
ろうか。
国民議会においては、①ζζ゜霊Φ羅o一〇×ρ閏o∋凶”国〇三①①﹃﹄︶餌二ぎr 節、扶助、協力の義務を負う﹂が物質的あるいは同時に愛情に基づいた
精神的道徳的社会的な共同体であると言及した婚姻がもはや法的擬制に
い昏p旨曾ρO冨コα。﹁轟oqo5>ゑo器の第二百入号法案、及び、②ζ冨゜
とにはつながらない。実際、和解を試みても、破綻した土ハ同体を回復さ
共同生活の回復を拒否した場合に離婚を拒否しても夫婦を和解させるこ
09。﹁9戸内国嵩づω評︽9竃ヨΦO冨轟︿①一の第八号法案において﹁別居期間 よる空虚な実体である場合や六年間別居が継続した場合、一方配偶者が
を三年にする﹂との主張があり、③竃゜Ω窪α言ω℃①鼻の修正第三百八
︵22︶
号法案において﹁別居期間を十年にする﹂との主張があった。
ち、実質的な婚姻の目的が失われた場合、婚姻共同体を解消させること
これに対して政府竃゜Ω①o菌ΦωUo目ΦN︵鑓署o耳Φ貫、委貝会報告者、せることはできない。新たな家庭を作り、不義の子を産むことは社会的
︵24︶
に望まれるべきではないし道徳的には満足すべきものではない。すなわ
国゜ρU°QD°︶は、﹁委貝会は共同生活の破綻が六年に亘っている場合には
そこに決定的破綻の懲愚がある﹂と述べた。すなわち、ζ.﹀昌費ρ
0冨⇒αoヨ90qo﹁が述べたように﹁六年の後はもはや共同体は存在せず、 が離婚であるとすれば、元とえ離婚を認めないでいたとして、婚姻共同
︵23︶
体を存続させることは、却って夫婦間の対立を増大し、姦通等を導くこ
結果として婚姻が破綻している﹂と認めなければならないのである。
一90一
とになる等、種々の点で弊害を生じさせるということである。しかし、
﹁苛酷条項﹂の条文が新設されれば、離婚が認められない場合が生じる。
ではなぜ苛酷条項の導入を併せて主張したのであろうか。
︵三︶第二四〇条
られる配偶者を保護する方法を維持することが必要﹂ということである。
しかし、離婚することによって苛酷な状態を生じるかどうかは、当事
者の主観によるところが大きい。従って、実際、裁判官がいかなる基準
に従って苛酷を認定するのかが問題となる。
未成年の子供がいない場合以外には、離婚を認めるべきではないことと
考えられるならば、離婚を認めないこと、第二に、共同体から生まれた
年齢、例えば四〇歳を越えて遺棄された場合に苛酷が特に重大であると
たのである。そして、苛酷の内容については、第一に、配偶者が一定の
うと欲する場合は、非常に厳しい性質を帯び得るということが説明され
る﹂すなわち、夫婦の従来の関係が壊れ、法律上の婚姻関係を解消しよ
﹁離婚は、共同生活の破綻とは違って、例外的苛酷の性質を帯び得
がなされた。
そして、﹁苛酷﹂の概念についてはζ匿[碧ユ2から以下のような説明
条項の導入を主張した。その趣旨は、﹁離婚を押しつけられる配偶者を
︵25︶
保護するために不可欠なものである﹂と説明された。
証明した場合には、裁判官は請求を拒否することができる﹂とする苛酷
あるいは子供にとって精神的物質的に例外的苛酷となると他方配偶者が
﹁離婚が、その者にとって特にその年齢あるいは婚姻期間を考慮して、
実上の別居を唯一の原因として夫婦関係は破綻したものとみなすと共に、
よる離婚請求そのものが却下される余地を認めるのではなく、六年の事
って夫婦関係が破綻したと﹁推定﹂することによって共同生活の破綻に
を破るものではなく、例外的に離婚を宣言しないということである。従
﹁婚姻が破綻した時は、離婚することができる﹂という破綻主義の理念
が宣言できるという有責主義の理念に奉仕するものではない。それは
すなわち、苛酷条項は婚姻期間中の一方配偶者の過失に基づいて離婚
るような衡平条項である﹂。
ている被告配偶者との矛盾した利益のバランスを取る事を裁判官に認め
る。苛酷条項は破綻の主導権を取った原告と破綻の状況を余儀なくされ
合には婚姻の法的関係を維持する事を裁判官に認める事が重要なのであ
が問題なのではなくて、仮に将来にわたって、離婚から生じる結果が被
指向するものではない。破綻や遺棄の状況を考慮して離婚を拒否する事
以下のようである。 ﹁苛酷条項は将来を指向するものであり、過去を
これについての政府︵寓煽o彗ぴ①S⇒ロorσq9。aΦαoωω∩㊦窪×︶の意見は
した。すなわち、苛酷条項は客観的に異常の状況下にある配偶者を保護
夫婦の一方が離婚により苛酷な状態に陥ることが認められる場合にはそ
国民議会第一読会︵一九七五年六月三日月曜日︶において、政府は、
する規定であるというのである。それは国民議会において政府が説明し
の状態から救済して保護するための唯一の例外的手段として﹁苛酷条
︵27︶
︵28︶
告配偶者あるいは子供にとって非常に厳しいものになると証明された場
たとおり、﹁破綻主義を採用することにより、仮に離婚が他方配偶者に
項﹂を規定したものと考えるのが妥当であろう。すなわち、﹁苛酷条
︵26︾
とって非常に困難な状況になると考えられる場合には、離婚を押し付け
一91一
項﹂は、離婚が﹁自動的な性質を持つ事﹂を避け、﹁︸種の追い出し離
婚であるところの共同生活の破綻による離婚﹂と区別することに奉仕し
ているのである。
︵29︶
しかしながら、たとえ苛酷条項が破綻主義の例外規定として制定され
たとしても、やはり、.破綻している夫婦に対して婚姻の続行を強制する
のは不合理ではないだろうか。破綻主義というのはそもそも破綻してい
る夫婦が夫婦でいることこそ不合理であるという理念を持つ。とすれば、
まったく異なる価値観の導入をフランス政府自体が認めたことになりは
しないだろうか。
立法制定過程においても、苛酷条項は、﹁共同生活の破綻による離婚
︵19︶一゜ρh9舞ω‘﹀ωψZ島。ρ−Pωおメ
︵18︶旨Oも09けω;﹀ωψZロけ‘O°ωおS
︵17︶旨b‘濫σ簿2>ωω’Z讐゜噛℃.ωお①﹁
︵16︶旨O‘﹀ωω゜Z彗二℃Pωω刈¢°
︵15︶旨04︾ωω゜Z田f◎。ω刈゜。°
︵14︶旨b二﹀ωω.29・fωω刈o。.
︵13︶刃昌瓦Φζきzz琴も﹁Φo⋮けPPHNe
︵12︶寄℃°α①ζき藷Nもお・ま’も゜F
︵11︶牢o寄け鳥①一〇一B﹁8暮﹁①︷o﹁∋0曾巳<o﹁oρ昌。一㎝OP
︵10︶即岩b①ζきz彰N.も﹁8幽仲0‘ウ一一゜
︵9︶寄℃.︾ωω゜z卑も費客g甕N°し8綜゜噛二昌。H①゜。Hもo自卑ω゜
︵8︶牢80ω剛ユ8ユoζ゜O働暁暁騨Φも﹃①o藏゜も゜b。°
︵7︶勺﹁8。ω三8号ζ零く︻r⊆も﹁8まも゜ω゜
︵6︶牢8。ω三9乙Φζζ゜<F;も§まも゜°。°
︵5︶勺δ8°・三8αΦζ客く一r;も§ま’ロ.N’曾ω゜
︵4︶審℃°﹀鍔密梓゜も費ζ﹄舅琴も9昇ρ−け﹄°・。H①゜。Hもロ゜ωド
﹃比較法雑誌﹄四巻三・四号合併号︵一九五九︶
︵3︶稲本洋之助﹁フランスの家族法﹂東大出版会︵一九八五︶四〇頁
︵2︶フランス民法典改正草案翻訳委員会﹁フランス民法典改正草案︵二︶﹂
族・相続関係﹂参照
︵1︶訳については、法務大臣官房司法法制調査部編﹃フランス民法典ー家
注
︵28︶﹄b°”鼠冨ジーω二ω⑪碧o①曾一ご三コ一〇¶㎝゜も﹁一㎝ωq.
︵27︶旨O二︾°2°讐Pωω刈゜。°
︵26︶90‘濠訂け゜。‘︾°2二ω0鋤9Φ臼゜。嘗コ一㊤酬も.ω幽⑩①.
︵25︶90‘鼠σ緯ω二﹀°24唱。ωおメ
︵24︶︸°ρ”忌σ讐即ωも.一器切゜
︵23︶旨9鼠σ9ω‘﹀°2°も.ω毒。。°
︵22︶旨○‘鼠σ讐ω=︾﹁Z°層PωおO.
︵21︶旨ρ瓦0冨ジーQリニω鐙コ8臼一ω]三コ一〇¶㎝幽も.一㎝8﹁
↓①9三ρ器ω二一〇♂°15。圃ω‘Pb。o。.
︵20︶炉ぎ゜z︵即︶oけじd巽↓舅︵℃°︶‘O凶く。﹁8刈0二一巴‘霊塁‘=σ邑﹁虜
一92一
を認容する我々の数多くの隣国においても見いだされる客観的原因によ
る離婚を認定するうえで欠かせない妥協策﹂であると考えられた。
︵30︶
このように、一九七五年七月一一日の離婚法の改正の起草者は、折衷
的な解決を図り、制裁離婚と破綻離婚との間にはっきりした線を引かな
かった。起草者の一人であるジャン・カルポニエ・パリ大学名誉教授も、
同法が﹁客観主義者と有責主義者との妥協の産物﹂であることを認めて
いる 。
︵31︶
ではフランスはその適用において、破綻主義と苛酷条項の関係をどの
ように捉えていたのであろうか。以下の章においては、第二三七条及び
第二四〇条の判例における適用状況を通してフランスにおいて破綻主義
に基づく離婚がどのように捉えられているか、また、﹁苛酷条項﹂はど
の程度の﹁苛酷﹂について救済措置が取られていたのかについて考察を
加えたいと考える。
、
︵29︶い04山ασ卑ωこ﹀°Z二PωおN
︵30︶日゜ρ”α0げ讐ω;ω゜”P一α①Q。.
︵31︶〇四﹁ご。昌三①﹁︵ご‘冨曾Φ巴8飢ロ臼く。﹁8°と。∋。冨葭8昌ω巳8びUこ
お﹃㎝‘oぴ﹁。P=9滝沢ハツ代﹁現代フランス家族法﹂﹁講座 現代家族
法第一巻﹂所収︵日本評論社 ︸九九一年︶一二五頁
ψ
一93一
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