...

埋設管保安高度化技術 第3章 防食方法の対策 第4章 腐食の測定調査

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

埋設管保安高度化技術 第3章 防食方法の対策 第4章 腐食の測定調査
第3章
防食方法の対策
1.防食の概念
1.1
防食の基本的考え方
埋設ガス管の腐食は土壌、水等の電解質の存在下で陽極反応と陰極反応が対になって起
こるものであるから、防食の基本はこの反応が起こらないようにすることである。
その方法は、
①
埋設ガス管表面と電解質(土壌、水分等)を遮断する。(塗覆装)
②
陽極反応の進行を阻止する。(電気防食)
③
陽極部と陰極部を切り離す(絶縁)
の3つに大別することができる。
①は埋設ガス管の表面に塗覆装を施すことにより、土壌、水等が埋設ガス管表面に触れ
ることを防ぎ、防食電流や漏れ電流の流出入ができないようにするものである。しかし、
塗覆装に完全さを期待することは難しく、外傷や経年劣化による欠陥が存在すると腐食電
流が欠陥部に集中し、塗覆装がない場合よりもずっと速く孔食が進行するので注意を要す
る。
②は埋設管表面に防食電流を流入させ、陽極反応を阻止することにより、防食するもの
である。この方法は金属材料表面に陰極反応を起こさせることから陰極防食とも呼ばれる。
③は腐食電流の経路を遮断することによる防食法で、管路への絶縁継手の挿入、鉄筋コ
ンクリート構造物と管体との絶縁等により電食やマクロセル腐食の防止に用いられる。こ
の方法では、ミクロセル腐食は防止できず、完全な防食法とは言えない。
1.2
防食法の分類
埋設ガス管の防食法の分類を図3.1に示す。
埋設ガス管の防食法
塗 覆 装
流電陽極法
電気防食
外部電源法
選択排流法
強制排流法
絶
図3.1
縁
埋設ガス管の防食法の分類
-51-
1.3
各種防食方法
(1) 塗覆装による防食方法
埋設管の管体塗覆装としては、従来アスファルトやコールタールエナメル等の有機質の瀝
青質塗料が多く用いられてきたが、近年は絶縁性、耐久性が優れていることからポリエチレ
ン、塩化ビニル等のプラスチックによる被覆が主流となっている。
塗覆装の必要条件としては、以下の項目があげられる。
①
化学的に安定で耐久性がある。
②
接着性が永続する。
③
土壌応力に耐える。
④
長期にわたり水の進入を防止する。
⑤
電気絶縁性を保つ。
⑥
バクテリアに対して抗性が強い。
⑦
電気防食と併用しても支障を起こさない。
塗覆装の防食効果を確実なものにするためには、これらの材料の吟味が大切なことは勿論
であるが、工場、敷設現場及び運搬中における施工、取扱い等についても十分な注意を払う
ことが必要である。
(2) 電気防食方法
(a) 電気防食方法の原理
マクロセル腐食の起こっている状態の鉄片に直流電源を使用して、電解質中に設けた補
助電極から防食電流を流入させていくと、まず電流はマクロセルの陰極部(位の貴な方)
に選択的に流入する。その結果、陰極部の電位は卑な方に変化し、陽極部の電位に近づき、
やがて陰極部と陽極部の電位は等しくなりマクロセルが消失する。(このような電流の流
出入による電位の変化を分極という)
このときの電位は、鉄の本来の自然(腐食)電位に等しく、まだミクロセル腐食が残存
している状態で不完全な防食状態にある。
次にこの状態からさらに防食電流を増加させていくと、腐食部(陽極部)であった部分
へも防食電流が流入し、電位も自然電位も卑な方向に変化する。これによりミクロセル腐
食が消失し、鉄片の表面においては、すべての腐食が完全に防止された状態となる。なお、
この完全防食が達成されたときの鉄の電位を防食電位と呼んでいる。
-52-
1.マクロセル腐食の状態
2.マクロセル腐食消失
3.完全防食状態
(不完全防食状態)
図3.2
電気防食の原理
(b) 防食電位
一般に土壌中における鉄の自然電位は、飽和硫酸銅電極基準で-0.5~-0.7V程度、防
食電位は-0.85Vとされている。ただし、硫酸塩還元バクテリアの繁殖する土壌や粘土質
の混在する土壌にような腐食性の大きい環境中では、安全を見て防食電位をさらに卑とす
るのが望ましいとされてきた。最近の調査、研究によれば、どのような土壌でも完全な防
食を維持するためには、-1.0V以下とする必要があるともいわれている。
また、埋設ガス管の電気防食施設からの防食電流を多く流しすぎると、管対地電位が低
くなりすぎ、いわゆる過防食の状態となる。この状態では、管表面に生成する水素気泡や
アルカリにより塗覆装の劣化を促進したり、他埋設物へ干渉を及ぼしたりするおそれがあ
る。一般的には、管対地電位を-2.5Vより卑な電位にならないようにするほうがよいと
されている。
(c) 電気防食方法
(ⅰ) 流電陽極方法
流電陽極法は図3.3に示すように土壌中に埋設ガス管よりも自然電位が卑な(低い)
金属を陽極として設置して埋設ガス管と電線で接続し、陽極と埋設ガス管の異種金属電
池作用により、埋設ガス管へ防食電流を流入させ腐食を防止する方法である。この方法
は犠牲陽極法とも呼ばれ、主として自然腐食の防止に用いられるが、小規模の配管の電
食防止にも使用される。
この方法は有効電圧が0.2~0.7Vと低いので、土壌比抵抗が高い場所では多数の陽極
を必要とするが、埋設管が輻輳している場所に用いても、他施設に悪影響を及ぼさない
-53-
安全な方法である。
埋設ガス管の防食に用いる陽極材料は、鉄との電位差の大きいMgまたはその合金が
主体であるが、環境によって亜鉛またはその合金、アルミニウム合金等が用いられる場
合もある。
陽極の設置は図3.3に示すように、埋設ガス管及び陽極からのリード線をターミナ
ルボックス内で接続し、容易に電位や電流を測定できるようにするのが普通であるが、
陽極を多数使用する際は、直接埋設ガス管へ接続する場合もある。
陽極の埋設深さは、管路の中心線より低く、水分の多いところが望ましい。また陽極
は接地抵抗を減少し、かつ陽極の消耗を一様にする目的で、周囲をバックフィルで包ん
で埋設することを原則としている。バックフィルの組成は一般に石こう、ベントナイト、
芒硝を3:6:1の割合に混合したものである。
図3.3
流電陽極法概念図
(ⅱ) 外部電源方法
外部電源法は図3.4に示すように土壌中に設置した電極と埋設ガス管に直流電源装
置から電線を通じて電圧を与え、電極から土壌を経て埋設管に防食電流を流入させて腐
食を防止する方法である。この方法は大電流を流すことが可能であり、また最高60Vま
での電圧を印加することができるので、大規模な埋設管の防食に適している。
直流電源装置は長期連続使用に耐え、なるべく直流変換効率の高いものが望ましい。
型式には一般の屋外用のほか、柱上用、屋内用等があり、また防爆型もあり、設置場
所の条件により選定する。
-54-
図3.4
深埋電極式外部電源法
代表的な電源装置はシリコン整流器で、その結線図を図3.5に示す。電源電圧は最
高60Vで、電圧切り換えタップにより0.2~1.0Vの調整が行なえるようになっている。
なお、60Vは「電気設備に関する技術基準」第248条に定められた「電気防食施設」の
使用最高電圧であり、これを上回るものを設置することはできない。
図3.5
直流電源装置結線図
-55-
制御方式は定電圧式と自動制御式に大別される。定電圧式は管路と電極の間に常に一
定の電圧をかけ、管路を防食しようとするもので、漏れ電流の影響をあまり受けない場
合には、この方式で管路は一定の電位を保つことができる。自動制御式は、照合電極と
埋設管の電位差を検出し、埋設管の対地電位が一定になるよう出力電流を自動制御する
方式で、漏れ電流の影響により管路の電位が大きく変動する場合に多用されている。
電極の材料としては鉄鋼、アルミニウムのような消耗性のものと、黒鉛、磁性酸化鉄、
珪素鋳鉄、フェライト、鉛合金、白金等の難溶性のものとがあるが、土中用には磁性酸
化鉄、黒鉛、珪素鋳鉄、フェライト及び白金が主に使用されている。
電極の設置方法としては、浅埋電極法と、深埋電極法に大別されるが、この他に海水
または淡水中に電極を設置する場合もある。
浅埋電極法は地表面下数mの位置に電極を分散設置するものであるが、この方式では
他埋設物への干渉が問題となるため、他埋設物への干渉があまり問題とならない局部的
な場所での防食に適用するのが一般的である。
深埋電極法は地表面下数10~120m程度の位置に電極を設置するもので、外電の最大の
欠点である他埋設物への干渉を軽微に抑えることが可能であり、他埋設物が輻輳する都
市部での大規模な管路の防食に適用されている。
(ⅲ) 選択排流方法
選択排流方法の概念を図3.6に示す。この方法は管対地電位に対してレール対地電
圧が低い場合(埋設管に対してレールの電圧が低い場合)、選択排流器を介して埋設管と
レールを電気的に接続し、埋設管を流れる電流を大地へ流出させずに直接レールに帰流
させる方法である。この埋設管を流れる電流をレールに帰流させるために埋設管から電
線を取出している部分を排流点という。
選択排流器はレールからの逆流電流を阻止する機能を備えている。これは単に電線で
埋設管とレールを接続した場合(直接排流法という)には、排流点付近のレール対地電
圧が高いときにレール側から埋設管側に電流が流れ込み、これが流出するときに電食を
引き起こすことを防止するためのものである。
図3.6
選択排流法の概念図
-56-
現在使用されている選択排流器の大半はシリコンダイオードを用いた整流式である。
シリコン排流器の回路の例を図3.7に示す。
選択排流器は下記の条件を満たすことが必要である。
①
レールと埋設管の間の広い電圧範囲にわたって、確実に選択排流動作を行う。
②
レールと埋設管の間の急激な電圧変化によく追随して動作する。
③
正方向の電気抵抗が小さく、逆方向の耐電圧が大きく逆流が小さい。
④
耐久性に優れ、故障を起こしにくい。
⑤
輸送及び現場の悪条件に十分耐える構造である。
⑥
保守、点検が簡単である。
⑦
異常電流による本体及び埋設管の損傷を防ぐためヒューズを備える。
図3.7
シリコン排流器回路図(例)
選択排流法は、埋設管の電食を効果的に防止し、比較的低コストな防食方法であると
言えるが、次の点に注意する必要がある。
①
レール対地電圧が高いとき及び夜間電鉄休止時等の電圧がないときは作動せず、
その間管路は無防食となる。
②
押出し型の電食には効果がない。
このため、選択排流法は他の防食法と併用することが不可欠となる。
また、選択排流法を使用する場合には、多大な排流電流が流れることにより、他埋設
管に干渉を及ぼすこともある。このような場合には、抵抗の挿入等の措置をとるのが一
般的である。
(ⅳ) 強制排流方法
強制排流方法の概念図を図3.8に示す。この方法は埋設管とレールを結ぶ回路に直
-57-
流電源装置を入れることにより、埋設管からレールに対して強制的に排流する方法で、
レールが外部電源法の電極の役割をする。この方法はレール対地電圧が正のレールに強
制的に排流するので、強制排流器設置前と設置後の埋設管の置かれる状態は図3.9の
ように変化する。
図3.8
強制排流法の概念図
国外ではこの方法を、選択排流法では防食できない時間帯の自然腐食の防止を目的に
採用している。
図3.9
強制排流法による電食防止効果の概念図
-58-
この方法は埋設管にとって、レール付近での過防食の懸念を除けば、押出し型電食を
含めて全ての腐食に対して常時防食が可能で、電極が不要なため低コストである等極め
て有利な方法であるが、電鉄レールは設置陽極として腐食する。このため、わが国では
「電気設備に関する技術基準」第 270条で、「選択排流器を設置してもなお電食作用に
よる障害を防止することができない場合に限り、強制排流器を設置することができる。」
として、押出し型の電食に限りその使用を認めている。
(ⅴ) 各種電気防食方法の得失
ここまで述べてきた各種電気防食法の得失を比較したものを表3.1に示す。
表3.1
項
目
各種電気防食法の得失比較表
流電陽極法
外部電源法
選択排流法
強制排流法
電源の要否 不要(電池構成)
必要(低圧)
電鉄利用
(場所制限あり)
必要(低圧)
有効電圧
60V以下任意
数+V以下変動大
通常定電流方式
採
用
0.2~0.7V
維持電力費
不
要
塗覆装劣化
のおそれ
ほとんどなし
他施設への
干渉
ほとんどなし
保守管理費
小
防爆対策
経済性
不
必
要
あり・調整を要す
あ
り
大
要
不
要
必
要
あり・場合により
あり・調整を要す
制御を要す
あ
り
あ
り
レールの電食も考
慮
中
大
必要により防爆型 必要としない場所 必要としない場所
とする
に設置
に設置
小さな対象に有利 小さな対象に不利 場所的に利用でき 外部電源法より有
大きな対象に割高 大きな対象に有利 れば最も有利
利
(3) 絶縁による防食方法
絶縁による防食法は、絶縁構造の継手の管路への設置、コンクリート構造物と埋設ガス管
の電気的隔離の2つに大別できる。絶縁による防食法の目的を以下に示す。
(a) 管路の電気的分断による防食
継手を全て絶縁するなどの方法で、管路を電気的に分断すれば、漏れ電流またはマクロ
セルにより生ずる管路の電位差が小さく制限され、腐食はほぼミクロセル腐食のみにする
ことが可能である。
(b) コンクリート構造物と管路の絶縁による防食
ビル、共同溝等コンクリート構造物と管路を絶縁し、コンクリート/土壌マクロセル腐
食を防止する方法である。コンクリート構造物貫通部において、鞘管や絶縁材等により鉄
-59-
筋と管路を電気的に絶縁するとともに、貫通部までの配管と貫通部以降の配管を電気的に
切り離すように管路に絶縁継手を挿入する。
(c) 異常電流の進入防止
電気鉄道関係の構造物に近接する配管類には異常電流が進入する懸念があるので、必要
に応じ管路と構造物を電気的に絶縁するとともに、管路にも絶縁継手を挿入する。
(d) 電気防食の効率化
埋設ガス管に電気防食を施す場合、
防食の必要のない他の構造物または管
路と電気的に絶縁すれば、小さな電流
で防食が可能になり、埋設ガス管の電
位分布も良好となる。これは電気絶縁
性の良好塗覆装を施した管路で顕著で
ある。また、不必要な他の構造物、管
路への防食電流の流入防止は干渉の軽
減となる。
ビルに引込む配管の絶縁方法の概念
を図3.10に示す。ビル外壁及びビル
フロアー貫通部において配管と鉄筋を
絶縁するとともに、屋内配管はサポー
ト、ガス器具等を通じてビル鉄筋と接
触している可能性があるため、貫通部
図3.10
ビル引き込み配管の
絶縁概念図
以降の配管には絶縁継手を挿入する。
絶縁材にはゴムまたはプラスチック材を主体としたものが多く使用される。
配管の絶縁継手は、外力を受けた場合の機械的強度と気密保持が必要であり、継手部に
おける電流のジャンピングにも注意しなけれはならない。
また、高圧送電線事故時または落雷等による絶縁継手の破壊を防止するために、絶縁継
手にアレスター(避雷器)等を設置する場合もある。
(4) メッキによる防食方法
なお、この他の防食方法としてメッキによる防食がある。このメッキによる防食方法には、
貴な金属によるメッキと卑な金属によるメッキがある。
貴な金属によるメッキは、金属を自然電位よりも貴な金属で被覆することにより防食する
方法で、プラチナメッキ等がこれに当たる。
卑な金属によるメッキは、防食しようとする金属をそれよりも卑な電位の金属により被覆
することにより、防食対象金属を腐食環境から遮断するとともに、被覆金属に外傷等があり
-60-
防食対象金属が露出していたとしても、被覆金属が陽極となり防食対象金属の露出部は陰極
となって、電気防食される。現在ガス管に用いられるメッキは、その経済性から卑な金属に
よるメッキが多く、主として溶融亜鉛メッキが用いられる。これはガス管を溶融亜鉛槽に浸
潰して行うもので、通常白ガス管と呼ばれている。過去には埋設にも使用されてきたが、現
在はC/Sマクロセル腐食には防食効果が無いため、埋設には使用しない。
-61-
第4章
腐食の測定調査
埋設管の腐食調査を詳細に行う場合は多くの方法を講じなければならないが、一般的には下記
の項目について行い総合的に判定すれば環境の良否、埋設管の腐食の進行度合いが推定出来ると
思われる。又測定器も最近総合的にかつデジタルで記録紙が出る最新機器が開発されている。し
かし、ここでは一般的に行われている調査項目、及び判定方法について示す。
1.一般の腐食測定方法
1.1
管対地電位の測定(P/S)
P/Sは高抵抗電圧計と照合電極を使用し、腐食状況または防食状況を推定するものである。
管と大地間の電位差で既設管では通常-500~-600mVが多いが、貴(正)方向の数値になる
に従い腐食が進行している恐れがある。(図4.1)
図4.1
管対地電位の測定方法
C/Sマクロセル腐食のある場合、下記のごとく電位分布になる。(図4.2参照)
pH値の高い強アルカリ性の環境では鋼材が不動態化して高電位になる。コンクリート中の
鉄筋の電位は-200mV程度であるのに対して土壌中の鋼は-500mV程度の電位を示す。埋設管
が鉄筋コンクリート製の建物の中に引き込まれる場合、壁や床の貫通部で鉄筋に接触すると約
300mVの電位差で腐食電池が形成され、土壌中の部分で腐食が促進される。防食被覆の良好な
鋼管を使用する場合、継手部の被覆欠陥部に孔食を生じ、建設工事期間中に穿孔に至った例も
ある。孔食部の腐食速度にして2~3mm/yrに及ぶ激しい腐食となるが、その影響範囲は図4.
2に示すように建物から数メートルである。配管の際、鉄筋に接触しないよう注意が必要なこ
とはもちろんであるが、接触してしまった場合はこの範囲にマグネシウム陽極を設置するなど
-62-
の対策が必要である。
図4.2
1.2
コンクリート壁貫通部付近の電位分布
土壌比抵抗の測定
土壌の電気抵抗の度合いを示す。一般に4,000 Ω・cm以下の土壌は、腐食性が強いといわれ
ている。(図4.3、4
図4.3
表4.1参照)
土壌抵抗率の測定方法
図4.4
土壌杖による測定例
a:測定深度(m)
表4.1
腐食性
激 し い
やや激しい
中
小
きわめて小
土壌比抵抗と土壌の腐食性の関係
土壌比抵抗(Ω・ cm)
F.O.Waters
L.M.Apploc
Y.R.Prrtula
0~
900
900~ 2,300
2,300~ 5,000
5,000~10,000
>10,000
0~ 1,000
1,000~ 5,000
5,000~ 10,000
10,000~100,000
>100,000
0~
500
500~ 1,000
1,000~ 2,000
2,000~10,000
>10,000
(注)F.O.Waters等はこの数値を発表した学者名
-63-
E.R.Shcpord
0~
500
500~ 1,000
定め難い
Komanoff
<700
700~ 2,000
2,000~ 5,000
>5,000
1.3
酸化還元電位の測定
硫酸塩還元バクテリアによる腐食性を示す指数である。(表4.2参照)
表4.2
酸化還元電位とバクテリア腐食の関係
酸化還元電位(mV)
100 以下
100 ~ 200
200 ~ 400
400 以上
図4.5
腐食程度
激
中
軽
無
程
腐
烈
度
微
食
酸化還元電位の測定方法
-64-
1.4
pHの測定
酸性・アルカリ性を判定する14の指数で、pH4以下の酸性土壌では、腐食が速いといわれ
ている。(図4.6参照)
・比色試験紙
・pHメーター
図4.6
1.5
水中の鉄の腐食に対するpHの影響
地表面電位勾配(S/S)
2本の飽和硫酸銅電極を所定の2地点に設置し、そのリード線をレコーダーまたは電圧計の
+ 側、○
- 側にそれぞれ接続し測定する。2地点をP 、P とし、基準とした地点P の電極を○
-
○
O
A
O
側に接続して測定した値が+200mVであったとき、PAの電位はPOの電位より200mV高いことに
なる。これはPAからPOに向かって大地を電流が流れているためである。(図4.7参照)
なお、通常の予備調査では電極間隔は100~200mの間隔で行うことが多く、詳細な調査が
必要な場合は数mの間隔で行う。
-65-
図4.7
地表面電位勾配の測定例
埋設管に沿って地表面電位勾配を連続的に測定していくと、詳細な地表面電位勾配が得られ、
地中の電気的な流れを測定するのに有効である。地表面電位勾配の測定法には次の①、②の2
種類の方法がある。(図4.8参照)
①
- 側の飽和硫酸銅電極を固定し、○
+ 極のみ一
任意の一地点を基準とし、そこに入力端子○
定間隔で移動させ、常に固定された基準点との電位差を測定する方法。
②
+ 極と○
- 極の距離を常に一定に保ち2本の電極を順次並行移動させ、常に隣接する2地
○
点の電位差を測定する手法。結果的には①と同じである。
地表面電位勾配の測定結果のまとめ方は、2地点間の地表面電位勾配をプロットしていく方
法が、管への電流の流出地点を容易に判別できるため通常用いられる。(図4.9参照)
-66-
図4.8
図4.9
地表面電位勾配の測定例
地表面電位勾配のプロット例
-67-
1.6
針電極法による欠陥調査
塗覆装に損傷があると、外部から電圧を印加したとき損傷部から電流が流入(あるいは流出)
するが、それに伴って地表面ではIR
dropによる電位勾配が生じる。この電位勾配から損傷
位置を判断するが、この場合に印加する電源と電位勾配の検出法により、幾種類かの探査法が
ある。その中で最も単純な手法がこの針電極法である。
針電極法は、図4.10に示したように、直流電圧を印加した管上で一定間隔ごとに針電極を
地中に打ち込み検流計(または電圧計)で電位差を順次測定するものであり、損傷部の両端で
電位が反転することにより損傷部が判明する。特殊な計器を用いないので簡便であるが、漏れ
電流の影響を受けやすい。
このような調査では、測定された絶対値に厳密な精度は要求されないので電極として飽和硫
酸銅電極のようなものを用いる必要はない。
V3・V4で検流計(電圧計)指示は逆転する。逆転する中心が損傷部防食用のMg陽極等、
低接地体が管路についている場合には、あらかじめ除去しておく(結線を外しておく)
図4.10
1.7
①
針電極による測定例
電食調査
レール対地電圧(R/S)
照合電極をレールのわきに設置し、これとレール間の電圧を測定する。(図4.11参照)
+ 側に、照合電極を○
- 側に接続する。
レールをレコーダーの○
通常管対地電位や地表面電位勾配、管内電流などと同時に測定しレコーダーに記録する。
測定時間は少なくとも電車が1~2往復する程度以上必要である。
なお、レール対地電圧の測定には、電鉄管理者の許可を得なければならない。
(②のレール対管電圧も同じく許可が必要である。)
-68-
R/S>0…レールから大地に漏れ電流が流出
R/S<0…大地からレールに漏れ電流が帰出
図4.11
②
レール対地電圧の測定例
レール対管電圧(R/P)
- 側に、管を○
+ 側に接続してレールと管の間の電圧を測定する。
レールをレコーダーの○
(図4.12参照)
R>P…レールから管に漏れ電流が流入しP/Sは-550mV(自然電位)よりも卑値を示す。
R<P…管からレールに漏れ電流が流出しP/Sは-550mVよりも貴値を示す。
図4.12
1.8
レール対管電圧の測定例
埋設管腐食測定器
埋設管腐食測定器は、非掘削でC/Sマクロセル腐食の有無と大きさ、白ガス管の腐食速度
などが測定することができる。
C/Sマクロセル腐食は、配管がコンクリートに接触し、さらに土壌に埋設されていると、
コンクリート部分はアルカリ性が強く高い電位になり、電位の低い土壌中の配管に向かって電
流が流れる。電気が配管から土壌に流れるとき、配管を溶かし腐食となる。
この電気の流れやすさは、コンクリートと土壌による電位差(電圧)と、コンクリート部分
と土壌部分の配管接地抵抗の大小によってきまる。これは、一般の電気と同じで電流は、電圧
-69-
が高いか抵抗が低いときに大きく流れる。
実際のLPガスの埋設管では、電圧はコンクリートに起因するためほぼ一定であり、抵抗は
配管が建築物の鉄筋に接触していると、建築物全体の鉄筋面積となるため、著しく低い抵抗と
なり大きな電流が流れ腐食が発生する。配管の接地抵抗は、施工方法、建築物の大きく、鉄筋
との接触の有無などにより大きく変る。
埋設管腐食測定器は、配管に電気を流す通電を行い配管接地抵抗が自動計測できるようにな
っている。また、腐食の管理全般に使用できるよう管対地電位の測定と導通試験の測定も行う
ことができる。
通電試験は、C/Sマクロセルの大小と白ガス管では最大腐食速度が求められるので、腐食
を防止する措置の良否、既存配管の腐食管理を行うことができる。導通試験は、通常の導通チ
ェックと抵抗測定ができる。
図4.13
腐食配管の電気化学反応
△E
I= ―
Rm
I
:腐食電流(mA)
△E:コンクリート中配管と土壌中配管の電位差(mV)
Rm :C/Sマクロセルの電池抵抗(Ω)
-70-
図4.14
配管腐食測定器の回路図
直流電源(乾電池)のマイナス側は埋設配管の露出部と接続し、プラス側は地中に差し込ん
だ金属棒と接続する。配管の管対地電位(V1)を測定し、その後、直流電流を流し、その時の
電位(通電時の管対地電位:V2)及び電流(A1)を測定し、式より接地抵抗を求めることがで
きる。
V1 -V2
R= ―
A1
R
:接地抵抗( Ω)
A1 :通電電流値(mA)
V1 :管対地電位値(mV)
V2 :通電時の管対地電位値(mV)
管対地電位(V1)から、通電時の電位(V2)を差引いたものは電圧となり、この時の電流値
(A1)で除すと、配管系全体の接地抵抗(R)となる。
-71-
仕
様
電位測定
測定範囲
0~-8,000mV
表
液晶デジタル表示
示
通電試験
印加電圧
1.5V、3V、6V(標準値)
電位測定範囲
0~-8,000mV
電流測定範囲
0~120mA
表
液晶(管対地電位、通電電位、通電電流、
示
通電変化、腐食速度(白ガス管))
導通試験
図4.15
導通チェック
約40 Ω以下
表
液晶ブザー
示
埋設配管腐食測定器の外観
-72-
図4.16
電気的絶縁継手の有る場合の測定方法
図4.17
ガス管との接続の方法
-73-
(1) 白ガス管の場合
白ガス管の最大腐食速度との関係式
Vmax=-0.07log R
+
0.13
Vmax=最大腐食速度(mm/yr)
R
=通電変化( Ω)
1.鉄筋コンクリート
2.鉄筋コンクリート
3.鉄筋コンクリート
4.鉄筋コンクリート
5.鉄筋コンクリート
6.鉄筋コンクリート
7.鉄筋コンクリート
9.鉄筋コンクリート
10.鉄筋コンクリート
11.鉄筋コンクリート
12.木造
13.木造
19.鉄筋コンクリート
20.鉄筋コンクリート
8.鉄筋コンクリート
図4.18
白ガス管の通電変化と最大腐食速度
腐食速度(mm/yr)
=測定値
最大腐食深さ(mm)
=腐食速度(mm/yr)×埋設年数(yr)
残存肉厚(mm)
=埋設管の管肉厚(mm)-最大腐食深さ(mm)
穿孔までの年数(yr)=残存肉厚(mm)÷腐食速度(mm/yr)
C/Sマクロセルは通電変化の値10(最大腐食速度0.06mm/yr)を境にし、10以上のとき
はC/Sマクロセルが無しと判断してよい。
-74-
(2) 防食テープ巻白ガス管とプラスチック被覆鋼管の場合
防食テープ巻白ガス管とプラスチック被覆鋼管の場合の通電変化(配管接地抵抗)の10を
境にし、10未満のときは腐食の対策を必要とする。
1)
防食テープ巻白ガス管
C/Sマクロセルが発生している設備では、防食テープによる腐食防止は難しく、特に
土壌水分が多いところ、掘削時に湧水がみられるところは、テープの欠陥部で水により電
気の導通がおこり激しい腐食が予想される。
2)
プラスチック被覆鋼管
①
継手が防食テープ巻
プラスチック被覆鋼管を使用しても、継手に防食テープ巻した場合、防食テープ巻白
ガス管と同様で、C/Sマクロセルが発生している設備での防食は難しい。土壌水分が
多いところ、掘削時に湧水がみられるところは激しい腐食が予想され、実際に防食テー
プ巻した継手部に、腐食によるガス漏えいが発生している。継手の防食テープ巻は、て
いねいに施工しても電気的に絶縁を取ることは難しい。
②
継手がプラスチック被覆継手
試験の数は少ないが、プラスチック被覆継手を使用したものに腐食はみられなかった。
継手の施工(端面のシールなど)が十分なら、C/Sマクロセルを防止できるが、被覆
材に傷やシールの不良があれば、防止テープ巻と同じく腐食の危険性がある。
防食テープ巻白ガス管やプラスチック被覆鋼管は、C/Sマクロセルが発生していると被
覆材の欠陥と土壌の状態によっては、被覆材を用いてない裸管より、激しい腐食が発生する
ので注意が必要である。
-75-
14.鉄筋C(PLS) 21.鉄筋C(テープ)
15.鉄筋C(テープ) 23.鉄筋C(テープ)
16.鉄筋C(テープ) 24.鉄筋C(PLS)
17.鉄筋C(テープ) 25.鉄筋C(テープ)
18.鉄筋C(PLS) 26.鉄筋C(テープ)
図4.19
被覆管類の通電変化と最大腐食速度
-76-
Fly UP