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2012年10月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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2012年10月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479
信金中金月報
第 11巻 第 1 0 号( 通 巻 4 7 8 号 )
2012年
月号
10
フローとスト ッ ク そ の 生 か し 方
メインストリ ー ト の 金 融 ①
―アメリカ金融システムの全体像―
中国の地方政 府 の 大 型 景 気 対 策 と 今 後 の 経 済 成 長
本物の顧客志 向 で 付 加 価 値 を 創 出 す る 中 小 企 業
−バイタリティある経営に不可欠な本質的ニーズへの対応−
地域別にみた 日 本 経 済 の 景 況 判 断
−復興需要の本格化で、景気は持直しの動きが続く−
実質成長率は 12年 度 2.2% 、13年 度 1.9% と 予 測
−復興需要を下支えに日本経済は回復基調を維持−
信用金庫の店 舗 数 の 動 向
信用金庫の常 勤 役 職 員 数 の 動 向
統計
アオ
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域」
「中小企業」
「協同組織」に関連する金融・
経済分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国におけ
る当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご
参照ください。
ホームページのご案内
当研究所のホームページでは、当研究所の調査研究成果である各種レポート、信金中金月報のほか、統計デー
タ等を掲示し、広く一般の方のご利用に供しておりますのでご活用ください。
また、「ご意見・ご要望窓口」を設置しておりますので、当研究所の調査研究や活動等に関しまして広くご意
見等をお寄せいただきますよう宜しくお願い申し上げます。
【ホームページの主なコンテンツ】
○当研究所の概要、活動状況、組織
○各種レポート
内外経済、中小企業金融、地域金融、
協同組織金融、産業・企業動向等
○刊行物
信金中金月報、全国信用金庫概況等
○信用金庫統計
編集委員会(敬称略、順不同)
委 員 長
清水啓典
一橋大学名誉教授・一橋大学大学院 商学研究科特任教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学 国際総合科学部教授
委 員
川波洋一
九州大学大学院 経済学研究院教授
委 員
鹿野嘉昭
同志社大学 経済学部教授
委 員
首藤 惠
早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授
問い合わせ先
日本語/英語
○アジア主要国との貿易・投資に関する各種情報
海外ビジネス支援
○論文募集
【URL】
http://www.scbri.jp/
信金中央金庫 地域・中小企業研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:山田、品田)
Tel : 03
(5202)
7671/Fax : 03
(3278)
7048
ISSN 1346−9479
2012年( 平 成24年 )1 0月1日 発 行
2012年 1 0月号 第11巻 第 1 0 号( 通 巻47 8 号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信 金 中 央 金 庫 地 域・中 小 企 業 研 究 所
〒1 0 3−0 0 2 8 東 京 都 中 央 区 八 重 洲 1−3−7
T E L 0 3( 5 2 0 2 )7 6 7 1 F A X 0 3( 3 2 7 8 )7 0 4 8
<本 誌の無 断 転 用 、転 載を禁じます>
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
年 月号 目次
フローとストック その生かし方
信金中金月報掲載論文 編集委員 藤野次雄
2
(横浜市立大学 国際総合科学部教授)
シリーズ
「メインストリートの金融」
シリーズの連載開始について
メインストリートの金融 ① −アメリカ金融システムの全体像−
地域・中小企業研究所
4
茨城大学 人文学部教授 内田 聡
5
トピックス
中国の地方政府の大型景気対策と今後の経済成長
黒岩達也
9
調 査
本物の顧客志向で付加価値を創出する中小企業
藤津勝一
14
地域別にみた日本経済の景況判断
斎藤大紀
37
角田 匠
65
−バイタリティある経営に不可欠な本質的ニーズへの対応−
−復興需要の本格化で、景気は持直しの動きが続く−
経済見通し
実質成長率は12年度2.2%、13年度1.9%と予測
−復興需要を下支えに日本経済は回復基調を維持−
信金中金だより
信金中央金庫 地域・中小企業研究所活動状況(8月)
統計トピックス
信用金庫の店舗数の動向
信用金庫の常勤役職員数の動向
統 計
信用金庫統計、金融機関業態別統計
80
刀禰和之
品田雄志
81
87
2012
10
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
フローとストック その生かし方
信金中金月報掲載論文 編集委員
藤野 次雄
(横浜市立大学 国際総合科学部教授)
大学は、8・9月がおよそ夏休みであり、この8月中に、プライベートにはお盆の帰省、公務
では大学のゼミ合宿を行った。
8月のはじめに、実家に帰省してきた。往きは、自宅-首都高(みなとみらいIC)― 保土ヶ谷
バイパス ― 東名 ― 新東名― 東名―名神 ―京滋バイパス― 第2京浜(枚方東IC) ― 実家。 帰り
は、実家 ― 第2京浜(枚方東IC)― 京滋バイパス ― 名神 ― 新名神― 東名阪― 伊勢湾 ― 東名
―新東名 ― 東名 ― 保土ヶ谷バイパス―首都高(みなとみらいIC)― 自宅。 自宅および実家か
らICまでは車で、5分程度。
運転中、これまで道路関係の仕事で、自動車税制と特別会計、費用便益分析や乗数効果の推
計、受益者負担と利用者負担のあり方、第2東名の意義についての雑誌の対談、社会資本の生
産性に関して研究してきたなと考えつつ、久しぶりの6時間程度の運転だった。
高度成長期、欧米主要国との比較で、社会資本整備の遅れが叫ばれ、フローとしての公共投
資を積極的に行いつつ、高速道路網も整備された。このインフラ整備により、民間経済も高い
生産性、経済効率を誇ることもできた。 バブル崩壊以降、「失われた20年」と言われつつ、グ
ローバル化、少子高齢化、地域経済の疲弊のなかでも、現在豊かな生活を享受できているの
は、これらの整備効果によるところも大きい。
他方、景気調整面でのフローとしての公共投資は、バブル崩壊以降、景気浮揚のため大量の
国債発行を行いつつ実施されたが、経済対策としては疑問、乗数効果は少なかった、中立性命
題が成立していて、負担のみ残ったともいわれている。また、ストックとしての社会資本に関
しても、民間資本の限界生産性と比較して低く、スピル・オーバー効果を考慮しても、整備効
果が十分でない分野、地域においても実施されてきたといわれている。
現在では、通行不能な橋問題が提示され、社会資本整備マネジメントが話題となっている。
社会資本というストックを持てば持つほど、その維持管理が問題となる。グローバル化、少子
高齢化の中で、社会資本整備についても、増分主義、均一主義を改め、真の地域資源を生か
す、地域経済の発展に資する分野・水準の整備が必要であろう。つまり、社会資本整備につい
ても、切るものは切る、更新しないものは更新しない、更新が真に必要なものは積極的に技術
革新を含む形で更新するという姿勢が必要であろう。従来、公共施設といわれるものは、一旦
つくれば壊れるまで使い、壊れればまたつくり直すというスタンスであった。たとえば耐震
化、省資源、省エネルギー化といった技術革新を含む長寿命化と、整備当初から所望の品質水
準が必要であろう。
2
信金中金月報 2012.10
また、帰省先で地元の建設業者にあった。この建設業者も、高度成長期以降に大阪郊外の人
口増大地域という立地にも恵まれ、公共事業の受注、戸建て分譲から、店舗建設、マンション
建設へと事業を拡大してきた。最近では、高齢者用介護施設、グループホームの建設にも進出
している。近頃増えている仕事は、分譲住宅の建て替え、維持補修、建設したマンションの管
理、NPOと連携した高齢者施設運営に比重を移しつつある。
民間資本でも、フローからストックへ、ストックからより高価格・高品質のフローの提供を
行っている。
教員の夏休みの公務は、学会活動とゼミ活動がある。計量分析の手法を習得するのには、短
期集中がよいとの判断で、4泊5日かけてゼミ合宿をしており、一泊は打ち上げの懇親会に充
てているが、午後理論、夜実習、午前発表を3回転させ、3年生をチューターに2年生に、一晩
かけて課題の実習をさせている。
本来の目的である計量分析の習得について言うと、2年生は次の朝の発表のために追い詰め
られて3年生に言われるままに習得しているが、隠れた目的は3年生の訓練である。一晩のス
ケジュールを計画させ、2年生に学習内容を習得させる役割であるから、これができて一人前
になるわけである。2年生にも、先生から高説を伺うよりも1年上の先輩のほうが学習の苦労
も伝わって、目標も近いのでやる気にさせているようだ。
また、4日間も一緒に生活するので、学年間の結びつきも強く、いい意味の上下関係も経験
する。この関係があるのでゼミは親子関係が2代、3代続くことによって祖父母、親、子、孫
と続くことによって、ゼミの中に10数の王朝ができている。
このようなゼミ指導は、システムとして構築するのには苦労もあり、学生たちの協力もあっ
てのものであるが、いったん出来上がると自立・自律し、管理職の時には、特に助かった。こ
れも、毎年のフローの活動がストックを形成し、先ほどの社会資本、民間資本がどちらかとい
えば有形のハードであるのに対して、それだけでなく、無形のソフトな資産でもあり、一般に
評判、のれん、ブランド、知的資産といわれるものであろう。ソフトの資産もやはりフローか
らストックへ、ストックからより高価格・高品質のフローの享受をもたらすことになる。
このようなゼミ活動は、楽しいものであったが、どちらかといえば、毎年同じ年齢の学生と
付き合うフローの関係に比重があった。ところが昨年の夏ごろから、あるSNSを始めた。する
と、OBOG会を1年に1回開催したり、年賀状を交換していたものが、一挙に時間と距離が縮
まった。誰かOBを見つけると、そこからさらにその先の友達を探すことができ、次々と増えて
OBOGインフラができていった。このインフラがあることによってゼミ生同士が共通の友達と
いう単語によって、自己増殖していった。いつでも利用可能となり、ストックが単なるストッ
クではなく、その活性化が図られたことになった。たとえば、ビジネスマッチングも生じた。
リレバンという長期継続的ストックを重視したビジネスモデルを実践している地域金融機
関、とりわけ信用金庫も、適正規模・分野の、有形・無形の、ハード・ソフトな、フローとス
トックという資産・取引先をうまく組み合わせて、自己増殖させるとともに、活性化し、地域
経済社会に貢献することが求められよう。
3
「メインストリートの金融」シリーズの連載開始について
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
「メインストリートの金融」は、茨城大学人文学部 内田聡教授による米国の小規模な地域金
融機関、とりわけコミュニティバンクを中心とした近年の米国金融システムの動向に関する分
析レポートである。
米国では、地方やそこに住む人々のことを「メインストリート」と呼ぶ。また、金融業界に
おいても、主に市場論理で機能する「ウォールストリート」と対比して、地域の金融や地元資
本の金融のことをメインストリートという。
メインストリートの金融における代表的な金融機関はコミュニティバンクである。
当シリーズでは、米国の地域経済を根底から支え、リレーションシップバンキングを実践して
いるコミュニティバンクの視点から、メインストリートの金融の実態や存在意義などを明らか
にしていくことを目的としている。
当レポートは、内田教授の米国での精力的かつきめ細かい実地調査にもとづくものであり、
米国の金融システムについて多くの含意を読み取ることができる。とりわけ、経営環境が厳し
さを増しているなかで、次の一手を模索している信用金庫をはじめとするわが国の地域金融機
関においても多くの示唆を得ることが可能と考えられる。
なお、当レポートは、全8回シリーズとして本月報に掲載していく予定である。
【「メインストリートの金融」シリーズの掲載予定】
第1回 アメリカ金融システムの全体像
第2回 メインストリートの存在意義
第3回 犬型のリレバンとメインストリートの絆
第4回 金融システムの組み替え
第5回 商業用不動産バブルとリレバン
第6回 「大いなる田舎国家」
の金融
第7回 環境変化とソーシャルメディア
第8回 当局によるメインストリートの研究
(予定は変更となる可能性がある。
)
4
信金中金月報 2012.10
シリーズ
メインストリートの金融 ①
―アメリカ金融システムの全体像―
茨城大学人文学部教授
内田 聡
アメリカの金融システムというと、ウォー
融システムの全体像のなかで捉え、その実態
ルストリートばかりを思い浮かべがちだが、
と存在意義を、以下のテーマから多角的に明
実はメインストリートという地域金融との相
らかにする。
互補完のもとに成り立っている。
1.金融システムの全体像
メインストリートという言葉は日本では耳
2.メインストリートの存在意義
慣れないかもしれないが、アメリカの多くの
3.犬型のリレバンとメインストリートの絆
地方にはメインストリートという大通りが存
4.金融システムの組み替え
在し、地方やそこに住む人々を指してメイン
5.商業用不動産バブルとリレバン
ストリートと呼ぶ。また、金融関連業界、連
6.「大いなる田舎国家」の金融
邦・州議会、業界専門誌などでは、ウォール
7.環境変化とソーシャルメディア
ストリートを念頭に、地方の金融や地元資本
8.金融当局のメインストリート研究
のそれを指してメインストリートという言葉
これらを通して、メインストリートがどの
を用いる。なお、本連載ではとくに断りのな
ような環境・条件のもとで機能しているのか
い限り、「メインストリート」は「メインス
(あるいは機能していないのか)を理解して
トリートの金融」の意味で用いる。
もらい、読者の様々な関心事を考えるヒント
メインストリートの銀行であるコミュニ
にしてもらえれば幸いである。
ティバンク(連結総資産10億ドル未満)は、
なお、この連載は、拙著『アメリカ金融シ
11年末に全銀行数の92%を占めている。合計
ステムの再構築~ウォールストリートとメイ
資産額では9%を占めるに過ぎないが、中小
ンストリート』
(昭和堂、09年、生活経済学会
企業向貸出額では38%を占める。また、メイ
奨励賞受賞)などを参考にしている。また、
ンストリートは、こうした数字だけではみえ
筆者はカリフォルニア大学センター・サクラ
ないさまざまな役割を果たしている。
メントでの在外研究期間を含め、本年9月まで
本連載ではメインストリートをアメリカ金
の7年間に、9州26市の約80の各種金融機関・
シリーズ
5
規制監督当局・業界団体などでインタビュー
リートの競争から生まれる価格メカニズムや
を行ったので適宜言及したい。
金融サービスに、メインストリートも恩恵を
第1回目は金融システムの全体像をメインス
受ける一方で、金融に求められる価値観は、
トリートとウォールストリートから把握した
市場論理ばかりでなく伝統・文化・慣習など
後、後者の変貌をデータも含めて考察する。
の非市場論理にもおよび多様であるにもかか
わらず、ウォールストリートが市場論理を重
1.金融システムの全体像
んじて活動できるのは、他の価値観をも支え
アメリカの金融システムは、ニューヨーク
るメインストリートの存在から恩恵を受ける
などのマネーセンターを拠点に国内外の資金
ためである。
が取引されるウォールストリートと、地域を
ただし、リーマンショックに象徴される金
拠点に地域の資金が取引されるメインスト
融危機のように、ウォールストリートが暴走
リートから形成される。前者にはマネーセン
し、一部のメインストリートがこれに便乗す
ターバンク、投資銀行、投資会社などの巨大
ることもあり、両者そしてその組み合わせで
資本の金融機関や専門金融機関が存在し、後
ある金融システムのあり方は常に検証されね
者にはコミュニティバンクなどの地元資本の
ばならない。
金融機関、協同組織金融機関などが存在して
いる(図表1)。
2.ウォールストリートとメインスト
ウォールストリートとメインストリートは
リート
対立軸として扱われることが多く、間違いで
反独占・反連邦主義的な気風の強いアメリ
はないが、対立しながらも両者の相互補完の
カにおいて、巨大資本のウォールストリート
もとに全体の金融システムが成立していると
に地元資本のメインストリートが対抗するす
いうのが筆者の理解である。ウォールスト
べとして、分断的・分権的な金融システムが
図表1 金融システムの全体像
ウォールストリート
マネーセンターバンク
投資銀行
投資会社
メインストリート
コミュニティ
バンクなど
(株式会社組織)
CDFI
CUなど
(協同組織)
市場論理
非市場論理
(注) 枠の大きさは必ずしも勢力の大小を表しているわけではない。CUはクレジットユニオン、CDFIは地域開発金融機関
(出所) 筆者作成
6
信金中金月報 2012.10
構築された。具体的には地理的規制や業際規
ウォールストリートにも、小さな政府・規
制があり、後者では銀行と証券の兼業を長い
制緩和・市場原理・自由貿易からなる「ワシ
間制限し、ウォールストリートの内部を分断
ントン・コンセンサス」を推し進める、アメ
していた。しかし、後述する90年代の証券
リカ財務省・国際通貨基金(IMF)・世界銀
化市場の拡大や兼業の制度的容認から銀行業
行や、そのルールで活動する巨大金融機関・
と証券業の区分が曖昧になり、証券化市場と
専門金融機関の間に濃密な人的関係が存在す
非証券化市場といった区分、あるいは証券化
る。メインストリートと異なるのは、金融商
に主体的にかかわる金融機関とそうでない金
品が当初の取引当事者の手許から離れて、金
融機関といった区分の方が、金融システムの
融商品だけが価格・格付けのなかで取引され
実態を捉えやすくなった。証券化の進展は、
る点である。ウォールストリートでは、洗練
ウォールストリート内にあった業際の壁を取
された金融商品・仕組みが提供される一方
り払い、ウォールストリートとメインスト
で、儲けやすい仕組みづくりが最優先され、
リートという構図を鮮明にした。それは同時
金融という行為自体が自己目的化しやすく、
に巨大資本と地元資本という構図をも鮮明に
サブプライムローン(信用力の低い個人向住
した。
宅ローン)のように一度問題が生じれば、そ
このような変化は、メインストリートと
の影響は広範におよぶことになる。
ウォールストリートを形成する人的側面にも
影響を与える。むしろ、人的つながりの結果
3.ウォールストリートの変貌
の多くが作用して、金融システムが形成され
先に触れたように、金融システムには銀行
ているといった方が適切かもしれない。メイ
業と証券業という区分が長い間存在した。し
ンストリートは、メインストリートの人的つ
かし、60年代後半からの経済環境の変化、
ながりから構成され、この人的関係のなかで
70年代の金融技術の進展、80年代の規制緩
金融業務が展開されていく。というよりは、
和を源流に、様子が変わってきた。現在の金
最初にメインストリートという人間社会があ
融システムでは、資産証券化などによる市場
り、そこに手段としての金融が存在している
型間接金融の生成によって資金の流れが複雑
というべきだろう。メインストリートを支え
化し、これにかかわる資産担保証券(ABS)
るさまざまな制度や慣行は、価値観を市場論
発行者などの新たな金融機関が誕生し、証券
理以外にも求めるコミュニティの要請に応ず
化資産を購入するファンド金融が拡大して
るために存在する。これらが金融機関の自己
いった。
保身だけに用いられる危険性がないとはいえ
これを全部門(金融+非金融)の金融負債
ないが、こうした行為は金融機関自らの存立
残 高 の 対 国 内 総 生 産(GDP) 比 で み る と
基盤の否定にほかならない。
(図表2)、金融が高度化する一方で、実体経
シリーズ
7
済から乖離して急速に膨張していく状況がわ
債権処理にめどがつき、住宅ローンの増大に
かる。対GDP比は長い間1.5前後で推移して
よってシェアを回復し、証券化などの手数料
きたが、80年代には金融自由化と歴史的高金
収入も獲得してきた。こうした動きは、金融
利期の終焉を背景に急速な伸びをみせ、その
技術の進展などによって金融業が変容してい
後安定した時期を迎えたものの、00年代には
くなかで、金融持株会社(FHC)の容認な
金融技術のさらなる活用と歴史的低金利を背
どの法整備を背景に、マネーセンターバンク
景に再び急速に伸びている。負債増大の内訳
が本体・持株会社レベルの双方で銀行業への
をみると、80年代が企業・政府部門が主因
かかわり方を大きく転換し、投資銀行や投資
だったが、00年代には家計部門の住宅ローン
会社などのほかのウォールストリートの金融
と証券化関連の金融機関が主因である。
機関とより同化していく過程である。同時
このように証券化市場が急拡大し、ウォー
に、投資銀行が伝統的な業務から自己勘定業
ルストリートが変貌するなかで、銀行の経営
務へと比重を移したように、ウォールスト
スタイルは二極化していった。すなわち、住
リートを変貌させていく過程でもある。
宅ローンなど証券化しやすい分野での貸出を
しかし、長期にわたる信用膨張のなかで、
伸ばしながら、証券化も含めた手数料収入を
ウォールストリートは適切なリスク移転・分
あげるマネーセンターバンクと、事業向貸出
散という証券化の本来の目的をなおざりに
に回帰するコミュニティバンクである。マ
し、資産価格は下落しないという非現実的な
ネーセンターバンクは80年代に(非金融部
想定のもとに、債務担保証券(CDO)など
門の金融負債残高に占める)貸出額シェアを
のさまざまな手段を使い、金融システム内で
縮小させていったが、90年代に入ると不良
クレジットを幾重にも膨張させ、利益を稼ぐ
仕組みになり、金融システムを大混乱に陥れ
図表2 全部門
(非金融+金融)
の金融負債残高
の対 GDP比
(対GDP比)
4.0
3.5
3.0
2.5
ていった。こうした混乱を予防できない、規
制・監督体制の再構築が不可避となり、10
年7月 に ド ッ ド = フ ラ ン ク・ ウ ォ ー ル ス ト
その他金融機関
証券化関連の金融機関
政府
家計
企業
リート改革および消費者保護法が成立したと
ころである。
次回は、ウォールストリートが変貌してい
2.0
1.5
くなかで、メインストリートがどのように対
1.0
応し、その存在意義を発揮しているのかをみ
0.5
ていきたい。
0.0
46 50 55 60 65 70 75
80 85 90 95 00
(出所) FRB, Flow of Funds Accounts から作成
8
信金中金月報 2012.10
05
11
(年末)
トピックス
中国の地方政府の大型景気対策と
今後の経済成長
信金中央金庫地域・中小企業研究所上席主任研究員
黒岩 達也
(ポイント)
⃝12年7月以降、広東省、重慶市、山西省などの各地方政府が相次いで大型の景気対策を打ち
出している。中国のメディアは、中央政府がリーマン・ショック後に実施した「4兆元の景
気対策」にちなんで、
「地方版4兆元景気対策」と称して注目を寄せている。
⃝中央政府は、投資偏重の経済成長を改め、減税や規制緩和による民間活力の導入や消費拡
大で景気を浮揚させたい考えだが、地方政府は、地場産業の苦境もあり、より即効性のあ
る対策を求められている。
⃝中長期的には、中国の潜在成長率が低下していくなかで、輸出・投資主導から消費主導の
発展パターンへの転換をいかに図っていくかが大きなカギとなる。
1.はじめに
図表1 中国の実質GDP成長率
(前年比)
(%)
16
12年4~6月の中国の実質GDP成長率は前
15
年 比7.6%増 と な り、1~3月 の 同8.1%増 か ら
13
14
鈍化した。四半期ベースで実質成長率が8%
12
を割り込んだのは、リーマン・ショック後の
10
09年4~6月以来のことである(図表1)。
景気減速の主因は、欧州債務危機による悪
影響から、輸出の約2割を占めるEU向け輸出
が低迷(1~8月は前年比4.9%減)している
14.8
12.1
11
9
7.6
8
7
6
6.6
07.1Q
08.1Q
09.1Q
10.1Q
11.1Q
12.1Q
(備考)国家統計局より作成
ことに加え、中国国内の不動産バブル崩壊に
年の同27.9%増から減速)。
よって、不動産開発投資が大幅に鈍化してい
景気が減速傾向を強めている状況下、中央
るためである(1~8月は前年比15.6%増と11
政府は相次いで景気対策を実施している(図
トピックス
9
表2)
。5月下旬以降、国家発展改革委員会は
利下げを実施して、金融面から景気のテコ入
公共事業の認可ペースを加速した。特に、9
れを図っている。
月5~6日の2日間で、同委員会は25の市電整
温家宝首相は、7月の地方視察の際、「7~
備プロジェクト、13の道路整備プロジェク
12月に政府は成長を下支えするために、政
ト、10の都市インフラ・プロジェクト、7の
策の微調整を強化する」と重ねて表明し、景
港湾・航路整備プロジェクトを認可し、これ
気対策の一層の強化を示唆した。また、8月
らプロジェクトの投資規模は1兆元を超えた、
中旬、温家宝首相は、浙江省を視察した際、
とされる。また、9月上旬には、鉄道部が今年
これまでの景気対策が一定の効果を発揮して
の投資計画を従来の4,160億元から4,960億元
いるとした上で、「インフレ率が引き続き低
へ引き上げた。
下していることから、金融政策の実施余地が
6月1日には、国務院が省エネ家電(エア
広がっている」として、もう一段の金融緩和
コン、薄型TV、冷蔵庫、洗濯機、給湯器)、
の実施の可能性を示唆している。
LED照明、1,600cc以下の低燃費車などの購
入に対して補助金を導入した。加えて、中国
人民銀行は、6月8日、7月6日と2か月連続の
図表2 最近の中央政府による景気対策
実施時期
内 容
11年12月5日 預金準備率を0.5%引下げ
12年2月24日 預金準備率を0.5%引下げ
3月21日
中国農業銀行の支店傘下にある出張所を対象
とした預金準備率の引下げ(2.0%ポイント)
4月14日
人 民 元 の 対 ド ル 相 場 の 変 動 幅 を1日 当 た り
0.5%から1.0%へ拡大(元安容認?)
5月18日 預金準備率を0.5%引下げ
5月下旬以降
国家発展改革委員会が発電や情報関連を中心
とした公共事業の認可ペースを加速
省エネ家電(エアコン、薄型TV、冷蔵庫、洗濯
機、給湯器に対して265億元)、LED照明(22億
6月1日 元)、1,600cc以下の低燃費車(60億元)、高効率
の電気機械(16億元)の購入に対して補助金
を導入
リーマン・ショック後の08年12月以来3年半
ぶりの利下げを実施。基準預金金利1年物は
6月8日
3.50% か ら3.25% へ、基 準 貸 出 金 利1年 物 は
6.56%から6.31%へ各々0.25ポイント引下げ
マイクロバス、路線バス、
12トン以上のトラッ
6月13日 クの買換えに対する補助金を導入(期間は12
年1月~12月の1年間で1台当たり1.1~1.8万元)
2か 月 連 続 の 利 下 げ。基 準 預 金 金 利1年 物 は
3.25%から3.00%へ0.25ポイント引下げ、基準
7月6日
貸出金利1年物は6.31%から6.00%へ0.31ポイ
ント引下げ
鉄道部が12年の投資計画を4.160億元から
9月上旬
4,960億元へ引上げ
(備考)政府公表資料などより作成
10
信金中金月報 2012.10
2. 地方政府は約9兆元規模の景気対
策を発表
7月以降、地方政府も相次いで独自の景気
対策を発表している(図表3)。
その内容は、インフラ建設や産業プロジェ
クトへの投資が主体となっており、これまで
明らかにされた分だけでも、その投資規模は
合計で9.3兆元に達している。
中国の新聞紙上では、中央政府がリーマ
ン・ショック後に実施した「4兆元の景気対
策 」 に ち な ん で、「地 方 版4兆 元 景 気 対 策 」
と称して報道されている。
地方政府の景気対策が中央政府との連携に
基づいているか否かは明らかではない。た
だ、温家宝首相は7月、「発展途上の大国と
しては、一定の経済成長を維持する必要があ
る」と発言した上で、「現在、重要なことは
投資の合理的な伸びを促進することだ」とし
て、投資促進を下期のテーマに掲げ、特に鉄
図表3 地方政府が公表した主な景気対策
省・市
投資金額
広東省
広東省は民間企業に向けて重大建設プロジェクトの公開入札を実施。第1弾は44件、総額
2,353億元
2,353億元。そのうち、交通と都市建設プロジェクトが6割を占める。
開放内容とその背景・手順等
湖南省長沙市
8,292億元
12年中に重大建設プロジェクト195件、8,292億元を実施予定。内容は、都市整備、産業
発展関連などが中心
広東省広州市
1,984億元
12年下期に101件、714億元の重点プロジェクトを実施予定。また、国有企業の継続投資
案件、新規投資案件が1,270億元強に達する見込み
貴州省
3兆元
『貴州生態文化観光産業発展計画』を発表。今後10年間で3兆元を投資する計画。今後10
年、貴州省政府は毎年1,000億元程度を投じて、主に交通インフラや医療施設の建設を進
める予定
重慶市
1兆5,000億元
広東省
1兆元
山西省
1兆元
天津市
第12次5か年計画(2011~15年)の期間中、全市の工業投資は1.5兆元に達する見通し。
IT産業、自動車、新素材など7大産業を育成
『海洋資源の優位性を十分に発揮し、海洋経済に強い省の建設に注力することに関する決
定』を発出すると同時に、5つの実施計画案を提出。177件、総額1兆元強のプロジェクト
が計画されている。
山西省投資局は、第4回エネルギー博覧会の記者会見の席上、契約投資案件が1,000件強、
契約金額が1兆元を超えたと発表
1兆5,000億元 今後4年間で、自動車、石油化学、航空宇宙、医薬、健康食品など10業種を重点的に育成
(備考)『中国証券報』12年8月23日付などより作成
道、都市公共事業、エネルギー、通信、衛
生、教育等を重点分野とした。地方政府の相
次ぐ景気対策の発表は、この温家宝発言に呼
3.異常に高い投資率を維持することは困
難であり、潜在成長率は徐々に低下
応したものであることは間違いなく、中央政
中西部地域や農村地域にはインフラを中心
府もこれら計画を追認することになる、とみ
として潜在的な投資需要があり、地方政府が
られる。
それを実行するのであれば、問題は少ないで
「地方版4兆元景気対策」は、規模的には
あろう。ただ、地方政府が既存産業の投資を
9.3兆元と、リーマン・ショック時の4兆元を
奨励して、いま以上の過剰ストックを創り出
大きく上回る。ただ、貴州省の『貴州生態文
すのであれば問題が大きい。
化 観 光 産 業 発 展 計 画 』 は 今 後10年 間 で3兆
79年の改革開放以降、中国経済は外資導入
元、広東省の海洋資源活用計画は1兆元規模
をテコとして、高い投資の伸びと、農村から
とされているものの、その実施期間は不明で
の豊富で安価な労働力の大量供給によって、
あるなど、短期的な景気の押上げ効果は見か
輸出を急拡大させ、高成長を維持してきた。
けほど大きくない可能性がある。
実 質GDP成 長 率 は、80年 代 が 年 平 均9.3%、
さらに、中国国内の有識者からは、重複投
90年 代 が10.5%、2001~10年 も10.5%と、30
資による過剰生産能力の積上げや不動産バブ
年間で10%前後の伸びを記録した。
ルの再来、を危ぶむ声や財源が明示されてい
しかし、中国経済は、もはや高い投資率を
ない点を憂慮する意見があるのも事実である。
維持し、製造業を中心とした高成長を持続させ
ることが難しい局面を迎えており、今後は安
トピックス
11
定成長へ移行すると考えるのが妥当であろう。
成 長 率 を 計 算 す る と、2011~20年 が7.4%、
第1の要因は、79年に導入された一人っ子
21~30年が4.2%程度になる(図表4)。
政策の影響もあって、遅くとも2020年まで
足元の実質成長率(12年1~6月で前年比
には労働力人口が減少へ向かうことである。
7.8%)は、潜在成長率からみれば、ほぼ妥
第2の要因は、労働賃金の上昇などによっ
当な水準であり、輸出製造業の不況をみて、
て、「世界の工場」としての価格競争力が失
拙速な投資拡大策を図ることは望ましくな
われつつあり、毎年、巨額な外国資本を呼び
く、投資分野を新産業や中西部のインフラ投
込んで高い投資率を維持することが難しく
資などに絞るべきであろう。
なってきていることである。ちなみに、11
年の投資率(実質固定資本形成÷実質GDP)
4.期待される個人消費の拡大
は不動産バブルの影響もあって56.0%と、日
中長期的にみて、中国が安定成長を遂げる
本の19.5%、米国の13.3%に比べて突出して
ためには、内需の拡大、とりわけ個人消費の
高い。
拡大が欠かせない。中国は、13.4億人の人口
将来の労働力人口の減少や投資率の低下を
を抱えているが、そのうち6.7億人は比較的
考慮し、技術革新が改革開放後の平均水準で
貧しい農村部に居住しており、その潜在的な
一定と仮定して、かなり保守的に中国の潜在
消費意欲をいかに顕在化させるか、が消費拡
大のカギを握っている。
図表4 中国の実質GDP成長率と潜在成長率
(%)
12.0
10.0
実質GDP成長率
(実績)
9.3
8.0
6.0
5.0
10.5
6.3
10.5
潜在成長率
金の導入、③農産物の最低買付制度の導入、
7.4
61-70 71-80 81-90 91-00 01-10 11-20 21-30
(備考)1. 潜在成長率の推計はコブ=ダグラス型生産関数を
想定した。
Y=AK(1-α) Lα
Y=生産量(GDP)、L=労働投入量(就業者数)、
K=資本ストック、A=全要素生産性(TFP)、
α=労働分配率
2. 労働分配率は 0.67で一定と仮定。資本ストックは
1952年をベンチマークとし、除却率を5%と仮定し
たベンチマークイヤー法により推計
3. 2012∼30年 の 潜 在 成 長 率 の 推 計 に 当 た っ て は、
TFP が過去の平均で推移すると仮定。労働投入量は
国連の生産年齢人口推計の伸びを用いた。資本スト
ッ クは30年 の 投 資 率(実 質 固 定 資 本 形成÷実 質
GDP)が 79∼2011 年の改革開放後の平均である
0.37 へ収斂していくものとした(11年は 0.56)。
4. 国家統計局、国連資料より当研究所推計
12
④農村インフラの整備、⑤農村における社会
保障制度の整備、⑥戸籍制度の一部改革(農
2.0
0.0
農村、農民)問題の解決をうたって、近年、
①農業税の撤廃、②農業生産者への直接補助
4.2
4.0
農村問題に関して、中国政府は三農(農業、
信金中金月報 2012.10
村から中小都市への移転を条件付で認める)
、
などを実施し、一定の成果を挙げている。
地域間でも大きな所得格差が存在しており、
北京など一部の都市では1人当たりGDPが1
万ドルを超えている一方、もっとも貧しい貴
州省では2,500ドル程度に過ぎない(図表5)。
こうした地域間の所得格差の是正も個人消費
拡大にとっては重要な課題である。地域間格
差の是正では、西部大開発、東北振興、中部
図表5 省・市・自治区の1人当たりGDPと耐久財普及率
1人当たり PC普及率 自家用車普及率
GDP(米ドル)(台/百世帯)(台/百世帯)
13,058
90.68
15.96
天津
16.81
1人当たり PC普及率 自家用車普及率
人口
GDP(米ドル)(台/百世帯)(台/百世帯) (万人)
4,796
54.08
11.53
3,593
人口
(万人)
1,355
山西
2,347
湖南
上海
12,783
128.19
4,618
北京
12,447
103.93
33.83
2,019
新疆
4,567
47.68
8.63
2,209
江蘇
9,545
81.36
13.83
7,899
河南
4,487
56.98
6.75
9,388
浙江
9,083
89.84
26.37
5,463
青海
4,473
39.94
5.49
568
内モンゴル
8,905
46.76
11.17
2,482
海南
4,459
52.88
11.76
877
遼寧
7,788
67.72
9.00
4,383
四川
4,046
61.35
8.60
8,050
広東
7,787
96.80
26.58
10,505
江西
4,008
59.91
5.31
4,488
山東
7,317
77.21
19.82
9,637
安徽
3,923
63.79
4.95
5,968
福建
7,273
94.81
10.97
3,720
広西
3,919
78.98
13.26
4,645
吉林
5,933
54.81
7.11
2,749
チベット
3,108
39.08
16.46
303
重慶
5,342
69.03
6.60
2,919
甘粛
3,022
42.90
3.53
2,564
湖北
5,284
58.53
5.53
5,758
雲南
2,935
53.64
18.26
4,631
河北
5,198
61.32
12.46
7,241
貴州
2,541
56.79
5.96
3,469
陝西
5,131
68.06
7.07
3,743
黒龍江
5,050
47.21
3.60
3,834
寧夏
5,015
51.32
7.00
100
8,000
100
6,000
91
4,000
93
年︶
92
2,000
0
100
PC普及率が %超え︵ 年︶
乗用車普及率が %超え︵ 年︶
10,000
6,596
自動車など高級品への需要
携帯電話普及率が %超え︵ 年︶
エアコン普及率が %超え︵ 年︶
カメラ普及率が %超え︵ 年︶
12,000
洗濯機普及率が %超え︵ 年︶
カラーテレビ普及率が %超え︵
冷蔵庫普及率が %超え︵ 年︶
14,000
7.69
(備考)1.1人当たりGDPは11年、普及率は10年。普及率は
都市部(農村部を含まない)
『中国統計年鑑』などより作成
639 2.
図表6 北京の 1 人当たりGDPと消費トレンド
(米ドル)
52.68
100
100100
30
01
09
02 03
100
10
が急速に拡大する、という
傾向がみられる(図表6)
。
前述のように、地域別の
1人当たりGDPでは最も貧
し い 貴 州 省 で も、 す で に
1,000ドルを超えて、3,000
ドルに迫ろうとしている状
81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
(備考)北京市統計局より作成
況である。したがって、今
後は、余暇や生活関連商品
勃興、などの名目で、地方へのプロジェクト
への需要が大きく伸びてくる余地があるとみ
投資を強化しているところである。
られる。さらに、所得水準上位の省・市・自
翻っていえば、中国の個人消費は、投資分
治区ではモータリゼーションが一段と本格化
野とは違って、依然として伸びシロが大きい。
してこよう。
北京の経験では、1人当たりGDPが1,000ド
こうした潜在力を引き出すためには、中
ル を 超 え る と、 白 物 家 電 の 普 及 が 進 み、
央・地方政府による消費拡大策も重要であり、
3,000ドルを超えると、余暇や生活の快適さ
年末にかけて、消費拡大に関連する新政策が
に対する消費が拡大し、1万ドルを超えると、
打ち出されるかが注目されるところである。
トピックス
13
調
査
本物の顧客志向で付加価値を創出する中小企業
―バイタリティある経営に不可欠な本質的ニーズへの対応―
信金中央金庫 地域・中小企業研究所上席主任研究員
藤津 勝一
(キーワード)付加価値、営業純益、顧客価値、本質的ニーズ、環境変化、ソリューショ
ン・サービス
(視 点)
バブル崩壊以降の閉塞感のある状況は、
「失われた20年」などといわれ、様々な面で構造的
な転換を迫られ中小企業経営も厳しい状況にある。当研究所の「全国中小企業景気動向調査」
では、業況判断D.I.(「業況が良いとする企業の割合」-「業況が悪いとする企業の割合」
)
は、97年~98年のアジア通貨危機・金融危機、00年のITバブルの崩壊、07年の米国住宅バブ
ルの崩壊や08年のリーマン・ショック、さらには昨年の東日本大震災などに見舞われ、水面
下での上下を繰り返している。また、財務省の法人企業統計で信用金庫取引先の太宗を成す
小規模企業(本稿では資本金1,000万円未満)の付加価値額の推移をみると、バブル崩壊後に
大きく水準を低下させたままとなっている。ところが、こうした厳しい状況下でも、業種を
問わずバイタリティのある中小企業は常に存在する。これらは顧客から評価される付加価値
を創出していると考えられるが、その付加価値をどのように捉え、対応しているのであろう
か。事例企業での確認も含めて、付加価値創出による経営力向上について考える。
(要 旨)
⃝法人企業統計によれば、小規模企業の付加価値額はバブル崩壊後に大幅に低下し、その構
成要素のひとつで企業の存続・発展にかかわる営業純益の赤字基調が続いている。
⃝付加価値低迷からの脱却には、顧客の本質的なニーズを捉え、商品・サービスの機能面だ
けでなく、様々なプラスαの価値も含めた顧客価値創出で対応することが重要である。
⃝顧客価値の創出で差異化を図るバイタリティのある中小企業の事例として、ばね製造・販
売の沢根スプリング株式会社(静岡県浜松市)
、機械装置設計・製造の株式会社テラシステ
ム(熊本県菊池郡)、書籍販売の株式会社長崎書店(熊本県熊本市)
、不動産賃貸・管理の
吉原住宅有限会社(福岡県福岡市)を紹介する。
14
信金中金月報 2012.10
はじめに
信用金庫の取引先に多い小規模企業(本稿
では法人企業統計の資本金1,000万円未満の
1.低迷する小規模企業の付加価値額
(1) 資本金1,000万円未満の小規模企業の付
加価値は90年比大幅に減少
企業)の付加価値は、バブル崩壊後の「失わ
小規模企業の付加価値額、すなわち、企業
れた20年」といわれる期間に、製造業、非
活動から生み出される価値を、財務省の法人
製造業を問わず大きく低下している。その背
企業統計でみてみる。すると、バブル崩壊以
景には、言うまでもなく企業を取り巻く環境
降において、同統計で企業数の6割を占める
の変化がある。業種や規模を問わず大きな変
資本金1,000万円未満の小規模企業と、4割の
化に見舞われ、大手家電メーカーの11年度
資本金1,000万円以上の層では、付加価値額
決算における巨額の欠損は、これまで「日本
が異なる動きをみせている(図表1、図表2)。
ブランド」の象徴であった企業ですら、経営
製造業の資本金1,000万円未満の層の付加
の巧拙により厳しい局面を余儀なくされるこ
価値額は、91年をピークに01年まで低下傾
とを現している。大手家電メーカーでは、海
向をたどり、その後は低位でほぼ横ばいが続
外メーカーとも競争が激化し、技術進歩で商
き、リーマン・ショック後に水準を若干落と
品の機能面での差異化が困難性を増し、ス
している。ちなみに、10年は90年比で実に
ピード、低コスト化などで後塵を拝する結果
71.8%減という低水準になっている。資本金
となっている。これまでのように、多額の投
1,000万円以上では、付加価値額は比較的高
資で機能を付加しても、顧客のニーズに合致
い水準を維持しており、むしろバブル崩壊後
する価値が創り出せていない。規模を問わ
の方が高い年も少なくない。たとえば、97
ず、顧客のニーズに合致した付加価値が創出
年には90年以降でもっとも高い値を記録し
できずに収益の低迷が続く企業は、しだいに
ている。リーマン・ショックで08年、09年
体力を消耗させ、ついには存続に赤信号がと
は や や 低 迷 し た も の の、10年 に は90年 比
もることにもなりかねず、是が非でも顧客か
3.7%減の水準まで戻している。
ら評価される価値を創り出さなければならな
一方、非製造業では、資本金1,000万円以
い。当然、基本である商品・サービスの機能
上の場合、バブル崩壊以降に付加価値額の水
面の付加価値追求は重要である。しかし、た
準がかなり高くなっており、10年は90年比
だ機能が高ければよいとは限らない。それが
45.9%増である。資本金1,000万円未満では、
顧客の求める本質的ニーズに合致しているの
製造業と同様に91年をピークに97年まで水準
かを、機能面以外の様々なプラスαの付加価
を下げ、その後は、ほぼ横ばい傾向となって
値も含めて考えることが重要である。
いる。10年では、製造業ほどではないものの
調 査
15
図表 1 製造業の資本金別(1,000 万円未満、1,000 万円以上)付加価値額の推移
(千億円)
1,000
900
900
951
890
880
816
800
765
700
600
752
500
789 773
760 804 829 835 871
400
822 836 869
840 839
768 762 770 802 798
690
資本金1,000万円以上
300
200
149 162 143
128 117
資本金1,000万円未満
100
0
90
91
92
93
94
98
95
656
724
80
69
58
54
56
52
54
49
48
48
50
48
48
39
42
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(年)
(備考)1.財務省『法人企業統計』より信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成
2.付加価値=役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+支払利息・割引料+租税公課+営業純益
なお、営業純益=営業利益−支払利息・割引料
図表2 非製造業の資本金別(1,000 万円未満、1,000 万円以上)付加価値額の推移
(千億円)
2,017
2,100
1,800
1,854
1,578
1,500
1,954
1,754
1,744
1,715
1,575
1,611
1,592
1,531
1,475
1,565
1,540
1,515
1,500
1,200
1,408
1,454
1,366
1,327
1,261
900 1,156
資本金1,000万円以上
600
1,692
1,676
1,640
1,687
300 423 454 445
419 405 379 337
260 257 253 259 254 241 250 293 266 273 275 266 262 267
資本金1,000万円未満
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
(備考)図表1に同じ
(年)
90年比で36.9%減とやはり低い水準である。
後の価格志向の強まり、④モノからサービス
これらの変化の背景として、①大企業を中
へといったサービス産業化にみられるような
心としたヒト・モノ・カネのリストラなど低
産業構造の変化、などがある。このように、
コスト化の進展とその影響の下請け中小企業
小規模企業において一時的ではなく、長期に
等への波及、②メーカーと流通業やユーザー
わたり付加価値が低迷しているということ
の間の力関係の後者への傾斜、③バブル崩壊
は、その体力の消耗も大きいと推察される。
16
信金中金月報 2012.10
(2)小規模企業の営業純益は赤字基調が続く
から2010年の21年間で、プラスは90年と91
前項で述べた法人企業統計における付加価
年のわずか2年、残りの19年はマイナスとい
値額の構成要素は、役員給与、役員賞与、従
う厳しい状況、つまり、小規模企業では、経
業員給与、従業員賞与、租税公課、動産・不
営の健全性・安全性・持続性を保つために欠
動産賃借料、支払利息等、営業純益である。
かせない価値が毀損されてきた。
このうち営業純益は、営業利益から支払利息
中小企業の経営者からは、こうした違いは
等を差し引いたものである。そこからさら
そもそもの企業体力、すなわち、仕入力、販
に、法人税等、配当金などの社外流出分を除
売力、資金調達力、技術力、生産力などにお
き、これを創業以来累積すると、その企業が
ける企業規模に起因する差異であるとして、
他の利害関係者に付加価値を分配後に積み上
仕方のないもの、あるいは努力しても限界が
げた財務上の企業価値となる。
あるものといった受け止められ方をする場合
図表3で営業純益の推移をみると、資本金
も少なくない。もしそうであれば外部環境ま
1,000万円以上では、バブル崩壊後に急激に
かせで、景気が好転して需要が増加し、増
落ち込んでいるが、マイナスにはなっておら
産・増販効果や価格が上昇する機会を待つ以
ず、その後、波はあるものの水準を上げ 、
外に、小規模企業の先行きの展望は開けにく
07年にはバブル崩壊以降のピークを達成し
いということになってしまう。しかし、これ
ている。リーマン・ショックで再び大きな落
まで当研究所では、「全国中小企業景気動向
ち込みとなったが、ここでも一定の回復をみ
調査」の結果として厳しい状況下でも各業種
せている。
において必ず業況が良いとする企業が存在し
一方、資本金1,000万円未満では、1990年
ていることに触れてきた。そこには、他とは
図表3 資本金別(1,000 万円未満、1,000 万円以上)の営業純益の推移
(百億円)
4,000
3,600
3,200
2,800
資本金1,000万円以上
2,400
2,000
3,418
1,600
1,200
資本金1,000万円未満
800 1,413
1,081 723
400
0
-400
93
28 -116
90
91
500
803
1,419
1,625
1,689
906
2,706
2,509
2,281
1,877
1,669
3,722
4,029
4,031
3,132
2,054
1,948
-105 -83 -195 -187 -99 -86 -168 -54 -25 -54 -65 -35 -158
-112
-245
-255 -293 -200
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
(年)
(備考)財務省『法人企業統計』より信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成
調 査
17
違う経営により、顧客に支持される付加価値
続的に創出することが求められる。すなわ
の創出が背景にあると推察される。
ち、流行など一時的なもので左右されない普
遍的な価値は常に追求しつつも、必要な部分
(3) 付加価値の維持向上に環境変化への対
応は不可欠
は変化させていかなければ、顧客等からそれ
までと同等以上の評価を受け続けることは困
商品・サービスなどにより創出された付加
難である。これは老舗企業の経営においても
価値(売上高)は、利害関係者に分配後、最
よく語られ、まさに「不易流行」ということ
終的に企業側にとっての価値(利益)として
であろう。
も残らなければ、事業を継続・発展させては
要するに、供給側の企業や経営者の都合で
いけない(図表4)。したがって、前述の営
はなく、顧客が求める本質的な価値を創出す
業純益がマイナスを続けていれば、いずれ事
ることがポイントである。ただし、本質的
業の継続は立ち行かなくなる。企業に付加価
ニーズは変わらずとも、相応しい商品・サー
値が残り、存続発展していくためには、“顧
ビスの質・内容とその提供方法などは技術進
客が喜んで十分な対価を支払ってくれるよう
歩等で変化させる必要も生じてくる。顧客の
な価値のある商品やサービスおよびそれらの
ニーズにフィットさせるには、先入観を持つ
提供方法等の創出”が不可欠である。供給側
ことなく本質的ニーズを、その分野のプロと
が顧客に良かれと思う商品・サービスでも、
して正しく捉え、ニーズ充足のための諸施策
顧客の価値に合致しなければ、評価は得られ
が組織全体としても整合的なものとなるよう
ない。また、供給側の企業と顧客の双方とも
に、具体的アプローチを計画・実行し、評
に状況は常に変わり続けるのであるから、変
価、改善し続けることが必要である。
化に対応して顧客に評価される付加価値を持
図表4 顧客が本質的に求める商品・サービスの価値充足から生まれる企業価値
・付 加 価 値 は マ イ ナ ス の 場 合 も
ある。
・付 加 価 値 は 企 業 の 存 続、発 展
に 不 可 欠 で あ り、創 業 以 来 の
累 計 額 は、企 業 が こ れ ま で に
生 み 出 し た 価 値 の 合 計︵定 量
的な企業価値︶となる。
・原材料費
・外注費
・人件費
・賃借料
・運送費
・通信費
・水道光熱費
・租税公課
・支払利息等
・法人税等
・配当金
分配後企業内に残った利益
︵付加価値︶が毎期累積
顧客は提供される商品・サービ
スが、自らのニーズに合致して
いると認識することで購入
把握したニーズに対応する商
品・サービスの開発・提供
本 質 的 な 顧 客 の ニ ー ズ を、適
切に把握
売上高から
利害関係者への分配
○留意点
・顧客ニーズの把握が適切であるか。(本質的なニーズでなければ一時的なもので終わる可能性)
・顧客が評価するニーズを満たす技術・ノウハウ・ビジネスモデル等はあるか
・商品・サービスを効果的・合理的に生産し、顧客に存在を正しく認識してもらえるか。(ただし、企業に残る価値を過度に優先したり、全
体の整合性を考慮せず、単に効率化のみを最優先したコストカットなどは、顧客その他の利害関係者の価値を損ない、結果として企業自
身に残る価値が創出されない可能性もあることには注意が必要)
(備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成
18
信金中金月報 2012.10
2.企業のバイタリティの源泉となる
付加価値創造
年3月期の連結最終損益は、3社全てが大幅
な欠損となり、合計で1兆6,049億円もの赤字
を計上した。家電エコポイントの終了や地上
(1) 供給側と顧客ニーズとのズレが付加価
値低迷の原因
デジタル放送化対応の一巡による需要減少、
円高などのマイナス要因もあるが、より根本
これまでみてきたように、小規模企業にお
的な問題としては、製品に対してかつてほど
いて、経営の継続性・活力の源泉となる付加
顧客が評価する付加価値の創出ができていな
価値、とりわけ、企業活動の継続と発展に欠
い、ということがある。
かせない営業純益でマイナスが続いているこ
かつては商品開発力にすぐれ、小型化や高
とは、極めて重大な問題である。いうまでも
機能化などで先行し、世界的に日本製である
なく、付加価値をプラスに転換させ、増加さ
ことが大きな価値を持っていたが、韓国や台
せる方向にもっていかなければ、社会を支え
湾、中国などの競合先の台頭が顕著である。
る重要な役割を担う中小企業のさらなる体力
代表的な製品である薄型テレビなどは、家電
低下や規模の縮小、事業からの撤退などが懸
メーカーの国内生産からの撤退や縮小、海外
念されるからである。
メーカーを含む他社との提携など、厳しい対
企業業績が芳しくない要因としては、前述
応を迫られている。
の本質的ニーズと環境変化に十分に対応でき
これは、技術レベルの向上や安価で高性能
ていないことが大きい。中小企業ではない
な部品供給、モジュール化などにより、製品
が、 顕 著 な 事 例 に11年 度 の 家 電 大 手 メ ー
開発においてわが国メーカーが急速に追い上
カーの業績不振がある。家電大手3社(パナ
げられ、一定レベルの満足が得られる製品
ソニック㈱、シャープ㈱、ソニー㈱)の12
が、海外メーカーも含めて比較的簡単に開
図表5 家電大手が迫られる顧客の評価する付加価値創出への転換
事 業 の 縮 小・撤 退 な ど 大 幅 な 構 造 改 革、海
外 を 含 む 他 社 と の 提 携・協 力 な ど の 対 応・
見直しが進められている。
顧 客 の 認 め る 価 値 創 造 の た め の 効 率 的、合
理的な組織と商品開発スタイルへの転換が
不可欠となる。
供 給 企 業 の 収 益 力 が 低 下、先 行 き 展 開 へ の
閉塞感も増大した。
一 方 で、顧 客 の 求 め る レ ベ ル を 超 え る 機 能
の商品に顧客はこれまでのように対価を簡
単には払わなくなった。
引き続き高機能
化で差異化を図
ろうとする従来
型の努力の継続
商 品・サ ー ビ ス の 同 質 化 と 海 外 メ ー カ ー の
低 コ ス ト、ス ピ ー ド 経 営 で の 展 開 が 低 価 格
化にさらなる拍車。
新規参入者を含め、一
定 以上 の 商 品開 発が 可
能となった。
部品の高機能化、
モジュール化が進展
商 品・サ ー ビ ス の 高 機 能 化 で 差 異 化、ブ ラ
ンドの維持・向上で優位性を保てた。
商品・サービスが普及段階で需要が拡大し、
供給すれば売れた。
(備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成
調 査
19
発・生産できるようになり、メーカー間での
が商品やサービスを選択する意味を見出すな
機能面の差異化が難しくなったからである
んらかの付加価値を創出している。
(図表5)。韓国や台湾、中国などの海外勢力
は低コストとスピードを武器に攻勢をかけて
おり、これに伴う価格下落に加えて、円高も
(2) 付加価値の基本である機能面でのニー
ズの把握
追い討ちをかけている。こうした環境変化に
機能面の価値は付加価値の基礎である。た
もかかわらず、国内の企業はこれまでのよう
だし、必ずしも高機能イコール高技術・高付
に機能を付加すれば顧客が高く評価してくれ
加価値でもない。モノをつくり出す技術自体
るという想定のもとに、多額の投資を行いな
は高くとも、顧客ニーズの正しい認識なし
がら対応を続けてきた。ところが、せっかく
に、適切な商品・サービスの開発や、どのよ
の技術・機能も顧客が納得する形での商品化
うに生産し供給すべきか、組織全体で整合性
に結びついていない。結局、多くの顧客が何
がとれた合理的・効果的な諸施策の計画と実
に価値を認め、付加された機能等による効用
行による成果には結実しにくい。
に対して支払うコストとのバランスをどのよ
営業純益の長期不振からすると、本質的な
うなレベルで求めているのかなど、本質的な
顧客ニーズに対して相当程度対応できている
ニーズを捉えて意味のある付加価値が提供で
中小企業は、残念ながら多くないと推察され
きていなかった。単に画面が3D対応である
る。経営者はプロとしての自負心もあり、い
とか高精細であるというだけでは、その薄型
まさら顧客ニーズの確認など必要ない、とい
テレビに顧客が喜んでその金額の代金を支払
う意見もあろう。しかし、その理解が正しい
うだけの納得性のある具体的な価値を提案し
場合でも、顧客が企業に十分な納得性を持っ
きれておらず、実際に評価されていないとい
て受け入れるのか、ニーズの変化の予兆はな
うことになる。
いかなどを、顧客とのコミュニケーションに
業績低迷が続いている企業では、少なから
より確認することは重要である。
ず顧客が本当に評価する価値と供給者側が想
なによりも、顧客が商品・サービスを利用
定した顧客価値のズレが生じている。また、
する現場の状況把握やコミュニケーションな
業績悪化要因を外部環境に求め、自らが対応
どを通じて、表面的・対症療法的ではなく本
を怠ってきたとの認識・反省がほとんどな
質的に求められているのはなにかを理解すべ
い、対応が従来型から抜け出せない、目先の
きであろう。顧客自身も表面的な事象にばか
措置にとどまる、などが多い。逆に、柔軟性
り目がいき、本当に必要なものを具体的に認
があり、積極果敢に対応しているバイタリ
識したり、表現できていない場合もあり、本
ティのある企業は、基本である商品・サービ
来対応すべき内容を明確にする意味は大き
スの機能面の価値を適切に押さえつつ、顧客
い。中小企業では、経営者自身が現場に近い
20
信金中金月報 2012.10
位置で情報収集を行いやすい強みを十分に生
かし、先入観を持たずに顧客の情報収集に当
るもうひとつの重要な要素であるプラスαの
価値への対応にもつながる。
(3)機能面を補うプラスαの付加価値の重要性
企業が捉えるべき情報は、単純に機能的な
高
商品・サービスの機能
たるべきである。これが、付加価値を構成す
図表6 機能と対価の関係のイメージ
B2
B1
L1
L2
だけでなく、プラスαの価値、すなわち、効
B
プラスαの価値
B3
A
L0
低
低
側面ばかりではない。たとえば、顧客の本質
的な問題・課題を解決するためには、機能面
C
高
顧客が対価として支払ってもよいと考える価格
(備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成
果的な導入・利用方法、メンテナンスや故障
にもかかわらず、高い価格付けがなされる、
等のアフターサービス、消費財などでは感動
あるいは、売れる商品と売れない商品があ
や共感による感性価値なども重要な意味を持
る、などといったことが起きる。これは、機
つからである。
能だけではない何らかのプラスαの付加価値
図表6で、直線L0がある商品群がもつ純粋
を顧客が評価しているからである。B3はBや
な機能面の価値に対する適正な評価価格を表
B1と純粋な機能の評価は同等だが、機能的
しているとすると、商品A、B、Cはちょう
に上回るCに比べてもやや高い価格に評価さ
ど機能に見合った価格付けがなされている。
れている。このBとB3の価格の差分が、機能
AはBより機能は低いが、その分価格評価も
面の価値に付加されたプラスαの価値とな
低い。逆にCはA、Bより機能が高く、その
る。技術・ノウハウに基づく機能が顧客に
分価格の評価も高い。機能が商品群全体で上
とって意味のある形で商品・サービスに組み
昇すると、直線L0は上方に移動し直線L1の
込まれ、さらにプラスαの付加価値と結び
ようになり、その際、Bの機能が同じままで
つくことで、顧客が本質的に求めている課題
あれば、価格の評価が低下しB1となる。
の解決に貢献し、独自性を創出する差異化が
また、機能の向上に伴う価格面の上昇率
図られる。
が、直線L0の場合ほどでなく、直線L2のよ
そうした顧客の課題解決は、ソリューショ
うになれば、Bと同様の機能ではB1の価格と
ン(課題解決)・サービスといわれる。たと
なる。
えば、生産財の機械などでは、単純に顧客の
機能面だけの評価であれば、各商品・サー
要求するスペックを満たすだけでなく、その
ビスはこうした直線の近辺での価格付けにな
機械がかかわる部分で顧客が課題とする点は
ると考えられる。しかし、機能で大差がない
何かを捉えてより相応しい使い方を提案し、
調 査
21
図表 7 機能面の付加価値とプラスαの付加価値の例(デジタル 1眼レフカメラの場合)
プラスαの付加価値
機能面の付加価値
高画素数、高感度、最新画像エンジン、ハイス
ピードフォーカス、短時間起動、手振れ補正、
大型モニター、望遠・広角・接写など豊富な高
性能交換レンズ、高速連写、防水・防塵性、高
容量バッテリー etc
機能面を損なうことなく感性があり扱いヤすい
デザインで、オーナーとしての優越感や他者へ
のアピール心を満足させる。オーナーのこだわ
りを満足させる。充実した相談・修理その他ア
フターケア体制。メーカーや販売店による写真
教室やクラブの設置など魅力的なサービス etc
Digital Camera
顧客の本質的なニーズに応える
トータルの付加価値
(備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成
場合によっては機械や部品を改良する。つま
佳社長は2代目で、大手電気メーカーを経て
り根本原因にメスを入れ、顧客の生産効率向
27歳で家業に入り、90年に35歳で事業を承
上、コストダウン、品質向上など課題解決に
継、社長に就任した(図表8、9)。
寄与する。あるいは、消費財などでコモディ
経済産業省の機械統計および金属製品統計
ティ化(日常品化)して競合品と品質・機能
によれば、ばねの生産金額は91年の4,098億
の差異がない場合でも、価格ではなく販売方
円をピークに、01年には2,672億円まで減少、
法、決済方法、配送の利便性、取付けサービ
その後回復はしているが、11年で3,009億円
ス、消耗品供給や修理などアフターサービス
での差異化でプラスαの価値を生み出せるこ
図表8 沢根スプリング㈱の概要
ともある(図表7)。
次章では、様々なプラスαも含めたトータ
ルでの付加価値を高め、バイタリティのある
企業として成長する事例を紹介する。
3.顧客に評価される価値を創出する
企業事例
(1) 沢根スプリング株式会社…常識を覆す
通販での小口スポット品対応で差異化
イ.企業概要
当社は、1966年に現取締役会長の沢根好
孝氏が、オートバイメーカーなどの下請けと
して創業したばねメーカーである。現在の孝
22
信金中金月報 2012.10
当社の概要
社
名
代 表 者
所 在 地
設
立
資 本 金
年
商
従業員数
事業内容
沢根スプリング株式会社
沢根孝佳(2代目)こ ざ わ た り
静岡県浜松市南区小沢渡町1366
1966年5月
3,000万円
8億5,600円(11年12月期)
54人(正社員42人、パート・嘱託12人)
ばねおよび関連製品製造販売
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所作成
とピークの73%にとどまっている。つまり、
600万円、年商4,500万円、従業員4人)、中国
現社長はバブルが崩壊し、業界がピークを迎
には93年に中国第一汽車集団公司との合弁
えるタイミングで事業承継をした。また、全
で、燃料噴射装置弁ばねやエンジン・バルブ
国でばね製造業は約2,500事業所と、競争の
スプリングを生産し、中国内に供給している
激しい業界であるが、前期まで創業以来47
無 錫 澤 根 弾 簧 有 限 公 司(資 本 金136万USド
期にわたり赤字決算はなく、自己資本比率も
ル、 出 資 比 率40%、 従 業 員90人 ) を 設 立 し
60%を超えている。
た。さらに、現在、独資での中国生産拠点の
直近決算で、製品の仕向先は4割弱が輸送
設立を準備中である。
用機器業界向けである。後述のとおり、生産
財ではほとんど前例がない通信販売を87年
に本格的にスタートさせ、小口スポット品で
ロ.顧客価値の考え方やその具体的な創出に
至った経緯等
顧客のニーズに素早くかつ1個からでも対応
当社はもともと、下請けとして輸送用機器
することで、他社にはない顧客にとっての高
業界向けをメインとした量産リピート品を製
い付加価値を創出し、差異化を図っている。
造していた。しかし、顧客や景気の動向に大
取引先数は、従来型の受注量産リピート品で
きく左右され、経営の安定性や健全性の問題
約400社、通信販売では全国約18,000社に達
も生じやすかった。そこで、下請けから脱却
し、売上構成では量産リピート品が若干多い
するために、取引先と対象業界の分散化を推
ものの、両者ほぼ半々である。
進すべく、同業他社があまり手がけたがらな
なお、通信販売は84年設立の関連会社、
い小口の注文にも積極的に対応し、量産リ
サミニ株式会社(資本金2,200万円、年商2.5
ピート品以外のマーケットの開拓を強力に推
億 円、 従 業 員11人 ) を 通 じ て 行 っ て い る。
進してきた。
このほか、関連会社では89年設立で職人に
そもそも、一般的には量産リピート品のほ
よる少量生産専門の有限会社石本(資本金
うが効率は良いといわれるが、それは需要が
図表9 沢根孝佳社長
拡大する右肩上がりの時代でのことであり、
モノづくりが海外に流れ、マニュアル通りに
仕事を進めていればなんとかなるという状況
ではなくなってきた。マニュアル仕事であれ
ば、チェックシートに沿って仕事をすればよ
いが、低成長時代に突入して構造が大きく変
わり、量産リピート品ではますます価格低下
を強いられるなど、国内ではもはや製造+小
(備考)沢根スプリング㈱提供
売サービスとして製造小売業化しなければ、
調 査
23
図表11 通販用カタログ
経営を維持継続し、生き残ることは大変に難
しいと考えた。
そこで当社は、規模の拡大を狙うのではな
く、経営の継続性・安全性・健全性を重視
し、あえて他社が手を出さない、通常は手
間・コストのかかる小口注文に積極的に対応
している。そもそも、小口小ロットのスポッ
ト品への対応は、量産リピート品の生産の片
(備考)沢根スプリング㈱提供
手間で行われるのが普通であった。このた
め、顧客の立場からすると、たとえば製造用
化や適正在庫ストックなど一連の効率的運用
機械の故障時などで、価格は高くとも一刻で
方法により、17時までの注文には原則即日
も早く代替部品を入手したいといった強い
発送というスピード処理を可能としている。
ニーズがあるにもかかわらず、迅速な対応は
現在では軌道化している通信販売も、最初
なされていなかった。
の2年は多額のカタログ作成費用にもかかわ
そこで、当社ではバネの標準品の品揃えを
らず、売上高はごくわずかしかなかった。し
充実させつつ長年の経験から常に適正な在庫
かし、地道な宣伝活動や品揃えの強化(現在
水準でストックし、欠品を極力排除し、他社
は約5,000種類)などの努力により、次第に
にはない購入量により価格が変化する一物多
認 知 度 が 高 ま り、1個 の バ ラ 売 り か ら 対 応
価とし、営業にコストをかけないための通信
し、小口小ロットでもすばやく入手が可能で
販売という方法を導入、ITを活用して受注
ある利便性が顧客から高く評価されるように
から発送までの事務処理を効率化するなどで
なった。
採算の取れるビジネスモデルとしている(図
このように小口対応を強力に推進してきた
表10、11)。ちなみに、当社では商品の標準
結果、現在の社長が事業を承継した90年当
図表10 各種ばね製品
時は、最大手の取引先の売上構成比は40%を
越えていたが、直近の11年12月期決算では
12.7%に低下している。取引業界別でも主力
の輸送用機器業界向けは、やはり90年には
80%に達していたものが、37.2%にまで低下
し、特定の取引先、業界への集中から分散化
が大きく進展し、リスクへの対応など経営力
の向上が図られている。
(備考)沢根スプリング㈱提供
24
信金中金月報 2012.10
こうした展開を支えるものとして、①商品
力と経済性の追求による「競争力」、②能力
とモチベーションによる「社員力」、そして
図表12 掲げられた創造開発型
集団のスローガンと工場内部の様子
③「財務力」が重要、としている。また、成
功イメージを描き、考え、楽しく仕事をする
には「ビジョン」が必要であり、このため
20年前から経営計画書を毎年作成し、社員
全員に渡し説明を行っている。また、これも
取組みが22年となる毎月10日の昼に1時間ほ
ど行う全社懇談会がある。ここでは、現状、
問題点・課題、対応や成果などについて社員
にオープンにしている。なお、社長は半年に
1回は説明用資料(財務3表と変動要因分析、
(備考)沢根スプリング㈱提供
今後の見通しなど)を作成して、金融機関に
拓で小口スポット品の売上比率を10年後には
も状況の説明を自発的に行っている。
現在の半分弱から8割に向上させる。2020年
さらに、毎週木曜日には、社員が講師を交
ビジョンでは、そうした取組みを通じて、創
代で務める社内勉強会が行われる。テキスト
造開発型集団として顧客から選択される世界
は講師が手作りし、出席者は内容が理解でき
最速のレスポンスのばね工場を目指していく
たか、役立つかなどを5段階で評価する。つ
(図表12)
。同時に、採算性と従業員への配慮
まり、受講者と講師のレベルアップを同時に
のバランスを取りつつ付加価値を配分し、売
行っている。こうした人材育成の目的は、効
上総利益率や売上高営業利益率、バランス
率一辺倒の「問題対処是正処理型」から、社
シートの資産・負債・資本の総資産に対する
員が自分の成長を感じられる「問題解決予防
構成割合などの目標も達成していく。
処理型」の人づくり、組織づくりにある。ま
一方、海外展開では、中国での合弁に続く
た、当社は社員の生活や人生を重要視してお
独資による新たな展開を準備中のほか、東ア
り、残業時間が業界の月20~30時間に対し
ジア地域で「SAWANEブランド」を確立す
て5時間台、有給休暇取得率も従業員30~99
るなどにより、世界で3万社の顧客獲得を目
人の企業の42%に対して76%など、モチベー
標としている。
ションの向上にも努めている。
(2) 株式会社テラシステム…顧客の立場を
ハ.今後の取組み
徹底的に重視しソリューションを提供
今後も、“付加価値=品質+スピード・サー
イ.企業概要
ビス”をさらに追及し、徹底した小口市場開
当社は、現社長の寺本力人氏が1985年に
調 査
25
創業、売上高の約8割を占める自動車業界向
アリングとして法人化し、97年に株式会社
けをメインに、フラットパネル、画像処理、
テラシステムとなった(図表13、14)。
半導体、食品、木工などの業界向けに生産・
工 場 は、 熊 本 市 中 心 部 か ら 車 で 約30分、
組立・検査用などの機械装置の設計・製造、
熊本空港からは車でわずか5分と利便性が高
これらを制御・管理するソフトウエアの開発
く、阿蘇山の外輪山の麓で景観にも恵まれた
を行っている。
工業団地に立地している。このため、当社の
89年には有限会社テラシステムエンジニ
取引先が多い関東、関西や海外などからのア
図表13 ㈱テラシステムの概要
クセスも良好である(図表15)。
寺本社長は、設計技術者として地元企業で
活 躍 し て い た。 し か し、「楽 し く 仕 事 を す
る。顧客が困っているから仕事が来るのであ
り、やったことがないからできないとは言わ
ない」、というポリシーのもと、かゆいとこ
ろに手が届く誠実で丁寧な仕事を自らの手で
実現するために独立した。
当社の概要
社
名 株式会社テラシステム
代 表 者 寺本力人(創業者)
所 在 地 本社事業本部:熊本県菊池郡大津町
岩坂塚ノ西3301
設
立 1989年4月(創業1985年)
資 本 金 2,500万円
年
商 6億円(2011年4月期)
従業員数 約72人(正社員32人、パート・アルバイト
約40人)
事業内容 機械・装置製造
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
図表14 寺本力人社長
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
26
信金中金月報 2012.10
当初は、自宅の庭の事務所で設計からス
タートし、ソフトウエアの開発者などの人材
を充実させ、現在のような設計から製作、シ
ステム全体としてのソリューションの提供と
いった展開へと発展させてきた。
部品の調達は、効率性やコストパフォーマ
ンス、利便性などの観点から、中国と韓国か
らが大半を占めている。韓国などは、工場団
図表15 工場内部の様子
(備考)会社案内より転載
地がわが国と違い金属加工なら金属加工でま
なく、それらが関わる一連のシステム全体を
とまって業者が集積しており、ワンストップ
適切に制御・管理できるパッケージソフトの
で事足りる利便性がある。納期も問題がな
開発まで、システムの一連の流れを視野に入
く、品質面では必ずしもまだ十分ではないが
れて顧客へのソリューションを提供している
徐々に改善されており、不足の部分は当社工
点にある。これは、当社が創業以来掲げてい
場において最終的な調整・仕上げをすること
る、「お 客 様 の ニ ー ズ に 対 し て『そ の 先 ま
でコストと品質を両立させている。
で』お応えすることが使命」という考え方を
実践したものといえる。社長にはもともと
ロ.顧客価値の考え方やその具体的な創出に
至った経緯等
「顧客の立場を徹底的に重視する」という考
え方があったが、この一連の流れまで捉えた
主力の自動車業界向けは、ダイハツ工業
管理・制御のノウハウは、かつて木材のプレ
㈱、本田技研工業㈱、日産自動車㈱、マツダ
カットシステムを受注し、木材製品製作の設
㈱、その他部品メーカー向けの四輪車用エン
計から生産まで一元管理するシステムの構築
ジンやミッション関係の加工・組立・検査用
を手がけたことをきっかけに蓄積してきたも
の装置をはじめ、これらをつなぐ搬送コンベ
のである。
ヤなども含めたトータルでの生産設備の設
他社では、機械は作るがソフトウエアは外
計・製作が中心である(図表16)。まさに、
注というのが一般的である。しかし当社で
自動車の心臓部で、極めて高い技術レベルを
は、顧客の課題を解決するために、一連の生
要求される部分に関係している。訪問時に
産システムの流れの制御・管理を適切に行お
は、某自動車メーカーの、最新型省エネエン
うとすれば、ソフトウエアも含めて自社で内
ジン用の検査装置の組立が行われていた。
製・開発をすることが重要である、としてい
当社の特徴は、機械の設計から製作だけで
る。つまり、目先の効率性優先ではなく、本
図表16 自動車エンジンシリンダー
内面加工機械
質的に顧客価値にとって重要な品質を追求し
ているのである。
生産の流れを一体として把握・管理するこ
とが大きな顧客価値を生むということは、言
われてみれば当然である。しかし、単に発注
者からのスペックに応じた機器を納入すると
いう常識的な発想を超えて、トータルのシス
テムで考え、そのための人材育成や組織とし
ての管理運営を実践できている中小企業は、
(備考)会社案内より転載
多くはないものと推察される。
調 査
27
実際、そうした一連の流れを押さえた精度
が当然であるし、そのために経営数値等の迅
の高い制御・管理の提供により、当社の製品
速かつ正確な把握は経営者としてかじ取りを
では、近年、一段と重要視さるようになった
行うためには必要不可欠としている。
製品の欠陥・不具合などの発生時における原
また社長は、経営の根幹のひとつである人
因追求に不可欠な、生産ラインにおけるト
材の育成面においても、「企業は人をつくる
レーサビリティ(生産履歴追跡)の確保が徹
ところ、道場である」としている。人間的に
底できる。こうした、実際に設備を利用する
成長し、金銭的なものだけでなく、仕事を楽
顧客企業の立場に立ったきめ細かな対応が、
しいと感じて没頭できる人材が、ベクトルを
顧客からの高い評価・信頼、つまり、当社の
合わせて未来を思考する組織とするために、
強みにつながっている。
人にも投資をしてきたということである。
また、汎用機械のような大量生産品ではな
こうした一連の取組みの結果、当社は創業
く、オーダーメードのニッチな市場であるた
以来、赤字決算はリーマン・ショック時の1
め、大手企業の参入が起りにくい。一方で、
期のみである。さらに、進行中の13年4月期
前述のとおりシステムとしてソリューション
の予想売上高に相当する受注残高はすでに確
を提供する能力などで競合する中小企業はあ
保している。これらは、当社の顧客価値重視
まりない。
の姿勢が、極めて高い評価を得ている証左と
このような当社の製品面の強みとともに、
いえよう。
自社経営の管理においても特徴的なことがあ
る。社長は、
「経営計画のない企業、金融機関
ハ.今後の取組み
を論理的に説得できない企業、経営がオープ
現在の課題については、環境が大きく変化
ンでない企業であってはならない」として、
しており、対象分野を限定することなくマー
利害関係者、すなわち、顧客はもちろん、社
ケットに順応していくことが重要としてい
員、金融機関などに対しても透明性の高い経
る。このため、医療やバイオ、食品などの
営を行なっている。そのために、経営の現状
図表17 細菌培養装置
をできるだけリアルタイムで把握し、経営管
理を行っている。当然、経営計画を策定し、
月次の計数管理もきちんと行い、金融機関に
対する説明は、求められるまでもなく自ら進
んで行っている。製品における顧客への説明
が十分にできなければ価値を認めてもらえず、
受注に結びつかないのと同様に、自社の経営
に関してもできる限り論理的に説明できるの
28
信金中金月報 2012.10
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
ニッチな市場を狙っていきたいとのことであ
図表18 ㈱長崎書店の概要
る(図表17)。
また、顧客からの海外への展開への要望も
多い。すでに英語、中国語、韓国語は社内対
応可能な体制としているが、国内を重視しつ
つも、インドネシアやメキシコなどでの展開
について、具体的に決定していく段階に入っ
ているとのことである。
当社の概要
当社は、1874年(明治7年)に熊本市新町
社
名
代 表 者
所 在 地
設
立
資 本 金
年
商
従業員数
で開業し、現在も熊本県官報販売所として営
事業内容
(3) 株式会社長崎書店…文化をテーマとし
た価値創造で書店の新展開を目指す
イ.企業概要
業を続ける長崎次郎書店が源流である。同書
店 は77年 に 西 南 戦 争 で 全 焼 す る も 復 興 し、
89年(明治22年)に長崎書店初代が熊本市
株式会社長崎書店
代表取締役社長長﨑健一(4代目)
熊本県熊本市中央区上通町6-23
1911年8月(創業1889年)創業123年
2,412万円
約2億円(2011年6月期)
11人(正社員6人、パート4人、
アルバイト1人)
書籍販売
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所作成
図表19 長﨑健一社長
かみとおりちょう
上 通 町 に長崎次郎書店支店を開設し、これ
が実質的な現長崎書店の創業となった。その
後、熊本水害などの困難も乗り越え、1955
年に長崎次郎書店の支店から有限会社長崎書
店となった。1889年から今年で実に123年の
歴史を誇る老舗書店である(図表18)。
当社の売場面積は約100坪で、立地する上通
アーケード商店街は、熊本城に近く、熊本市
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
現代美術館もある。ちなみに、熊本市の目抜
て近隣書店は3店であったが、現在は、当社
き通りで市電の通る通町筋から北側に伸びる
以外は他地域の資本で5店に増加している。
全長約350mのアーケードは、パリのオルセー
さらに、ブックオフのような古書店やネット
美術館をイメージしたもので、明治時代から
書店などの新業態、読書以外の時間を消費す
発展してきた中心商店街のひとつである。
るものとして、若者を中心としたゲームの普
しかしながら、通行量はピークの6割に減
及なども、書店にとってはマイナス要因のひ
少している。また、10年前には当社を含め
とつとなっている。市場が縮小傾向の中で競
調 査
29
合は一段と激化している状況にある。
直すことを決意し、先代社長を説得した。そ
現 社 長 は4代 目 で、 大 学 在 学 中 に は 全 国
の際、福岡や東京のいくつかの書店から、街
チェーンの書店で1年程アルバイトを経験し
の書店でも文化的・芸術的な顧客価値を十分
た(図表19)。01年に大学を中退して家業に
に創出できることを学び、これらを参考とし
入り経験を積み、上記のような厳しい環境
ながら独自のコンセプトを考えた。
下、創業120年の09年に30歳の若さで事業を
具体化のため、社長は地元の商工会議所か
承継した。現在は代表取締役兼店長として、
ら紹介された県の中小企業経営革新計画制度
従業員の能力を引き出しながら、これまでに
を利用することにした。経営革新計画の策定
ない本の魅力の紹介の仕方、地域との関わり
を通じてビジョンが明確になるうえに、県の
などを通じて、本と顧客をつなぐ書店の新た
承認を得られれば、別途審査が必要ではある
な価値づくりを目指している。
が、政府系金融機関による低利融資など保
証・融資の優遇措置を受けることができるか
ロ.顧客価値の考え方やその具体的な創出に
至った経緯等
らである。
ただし、経営革新計画書の策定は未経験の
現社長が家業に入った当時は、厳しい経営
ことであったため、福岡のコンサルタントの
環境下で業績も芳しくなかった。教科書だけ
手を借り、3か月かけて作成した。目指すと
で 年 商1~2億 円 と 稼 ぎ 頭 で あ っ た 外 商 が、
こ ろ は、 取 次 店 の 支 払 い を100%履 行 す る、
得意先の学校の取引の他社への変更で、効率
金融機関への返済も適切に実行する、そし
の良くない個人向けの配達ばかりとなり、赤
て、なによりも独自のコンセプトに沿った店
字部門に転落して経営の足を大きく引張って
舗リニューアルの実現で新たな付加価値を創
いた。
出する、ということにあった。
業績悪化は、支払いをめぐる仕入先の取次
業績不振の大きな原因となっていた外商
店との間の関係悪化や金融機関からの運転資
は、宣伝効果を目的に半径150m以内の信号
金の借入難にもつながり、一方で、従業員の
を渡らない範囲で、当社オリジナルのカート
モラルダウンも大きな問題となっていた。
と法被を着て行うことに限り残して廃止とし
当時、常務であった現社長は、取次店から
た。一方、目玉の店舗リニューアルの内容
求められていた取引継続可能な案の提示や、
は、美術館をイメージし、落ち着いた雰囲気
事業継続に欠かせない金融機関からの資金調
で芸術に親しめるような感覚で本と接するこ
達面の問題を解決するには、信頼関係の立て
とができるようにするため、書架を低くし、
直しが不可欠であり、そのために店としての
通路も広くゆったりとさせ、1階に約10坪の
明確なビジョンをもつことが必要と考え、新
ミニギャラリーを設けて雰囲気をかもし出
たなコンセプトに沿ったリニューアルで立て
し、 さ ら に3階 の 倉 庫 を 約30坪 の 多 目 的 ス
30
信金中金月報 2012.10
はっぴ
ペースの「リトルスターホール」に転換する
によるダンス、お絵かき会、読み聞かせ、講
(図表20、21、22)。本屋には美術館や画廊
演会など様々な企画を催し、自店と顧客や催
のような敷居の高さはなく気軽に入れ、ギャ
しに参加する顧客・作家・芸術家の交流・出
ラリーやホールで絵画や写真、書などを展
会いの場を創出する。計画は承認され、06
示、これらと組み合わせた雑貨販売や舞踏家
年にリニューアルが行われた(ただし、倉庫
図表20 低い書架の店内
からリトルスターホールへの転換は09年に
実施)。
一方、店舗コンセプトに合致した顧客価値
のある品揃えのため、売れる商品、売りたい
商品をプロの目で選別して取り揃える必要が
ある。そこで、従来からの取次店ルートだけ
でなく、①出版社の見切り品である新本を安
価に仕入れ、定価の半額程度で販売(バーゲ
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
図表21 バーゲン本フェア開催中のギャラリー
ン本:利益率は通常定価販売の倍以上ある)
、
②中小書店単独では仕入れが難しいベストセ
ラーの品揃えや仕入価格面など、取次店との
取引条件改善のため中小書店の仕入れ協業会
社「ネ ッ ト21」(現 在 参 加23社45店 で100億
円規模の売上げ)に参加、③東京神田神保町
のそれぞれ特定分野で強みをもち、小回りの
利く小取次店ルートの活用など、採算を意識
した積極的な取組みを行っている。この結
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
図表22 リトルスターホール
果、市場が年率4~5%の減少を続ける中で、
当社の売上高は横ばいをキープしている。
1階のギャラリーや3階のホールは、直接
的に書籍に関わらなくとも、書店としてブラ
ンディングや今後の展開につながるもの、換
言すれば顧客価値と書店としての価値が合致
すれば、短期的な実利だけでなく今後への投
資という意味合いで積極的に様々なものを
扱っていく方針である。ちなみに、10年に
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
行った熊本在住もしくは出身で、各分野で活
調 査
31
躍する100人を文庫本セレクターとし、選ば
れ た 文 庫 本100冊 を 展 示 販 売 す る 企 画
「La!Bunko」では、100点中20点で品切れが
(4) 吉原住宅有限会社…リノベーションで
既存物件に新たな価値を創出
イ.企業概要
で る 人 気 と な り、1か 月 で1,858冊 を 販 売 し
当社は、1965年の設立から47年となる。
た。また、足代などのコストはかかるが、出
元は福岡市中央区の清川で旅館を経営してい
版社や作家に対しても積極的に働きかけ、熊
た両親が、築後間もない冷泉荘(後述)を買
本の他店ではほとんど行っていないサイン会
い取り不動産賃貸業に進出し、旅館からはそ
などの提案も行っている。
の後撤退した(図表23)。
人材面では、読書アドバイザーの資格を取
現在は、福岡市中心部に、当社事務所と貸
得したモラールの高い従業員に絞り、積極的
事務所、貸会議室、貸駐車場、カフェ経営を
に売り場づくりに参加させている。さらに、
行っている築35年の天神パークビル(9階建、
れいぜん そう
「ながしょブログ」や月刊のフリーペーパー
48区画)同35年の新高砂マンション(7階建、
「ナガショ通信」という形で様々な文化・情
58室)
、同45年の山王マンション(6階建、45
報の発信もなされている。
室)
、同54年の冷泉荘(5階建、24室)の3棟
なお、社長は一連の改善への取組みを通じ
のマンションを所有し、計4棟の賃貸・管理
て経理・財務その他管理面を勉強し、試算表
や資金繰表の金融機関への提出・説明や、適
図表23 吉原住宅㈲の概要
切な税理士の活用なども行っている。
外観
天神パークビル
貸会議室・貸オフィス
ハ.今後の取組み
顧客にとっての価値は、最終的には売り
場・棚であり、「親しみやすい」「入りやす
い」「おしゃれ」「居心地がいい」などが重要
としている。そうした観点から、06年のリ
ニューアルを経て感じるところもあり、レイ
アウト、棚の段数、通路幅などで手直しを
図っていく。一方、仕入れ面でも前述のよう
な様々な条件の改善にさらに取り組む。例え
ば、ほしい商品の確保、作家のサイン会や
トークショーを催すなどのためには、出版社
とのパイプ・信頼関係を一段と醸成すること
も課題である。
32
信金中金月報 2012.10
当社の概要
社
名
代 表 者
所 在 地
設
立
資 本 金
年
商
従業員数
事業内容
吉原住宅有限会社
吉原勝己(2代目)
福岡県福岡市中央区大名2-8-18
1965年9月
500万円
約1億4,000万円(2011年8月期)
5人(正社員3人、契約社員1人、
アルバイト1人)
不動産賃貸・管理
(備考)吉原住宅㈲提供写真、同社HPなどより
運営を行っている。
ベーションのコンサルティング、工事監理、
いずれもかなりの築年数を経過している
不動産管理・仲介、空間デザイン・HPデザ
が、基本的な耐久性については問題がないた
インなどを行っている。
め、建替えではなく耐震補強や設備の更新を
しつつ、古いことを価値として積極的にア
ピールする個性的なリノベーションで新たな
ロ.顧客価値の考え方やその具体的な創出に
至った経緯等
付加価値を創出し、ヴィンテージ物件として
それぞれの所有物件は、かつては地域でも
いるところに大きな特徴がある。
ランドマーク的な高級物件であったが、好立
現社長は、当初、家業の不動産賃貸業を継
地にもかかわらず、現社長が家業に入った時
ぐ意思はなく、大学卒業後、医薬品メーカー
には経年変化などから入居率30%という物件
で サ ラ リ ー マ ン 生 活 を 送 っ て い た(図 表
もあるなど、経営は厳しい状況となっていた。
24)。しかし、先代社長が体調を崩し、家業
しかし建替えに関しては、構造面で問題は
の厳しい経営状況を何とかしたいとの思いか
なく社長自身が建物に対する愛着が強く、街
ら、医薬品の仕事に未練を残しつつも18年
の景観を変えたくなかったこと、長年の付き
のサラリーマン生活にピリオドを打ち、00
合いの居住者への配慮、投資負担が重くな
年に家業に転じた。業況は想像以上に厳しい
る、などから避けたかった。そこで、海外で
ものであったが、その後、不動産の勉強をし
の再生マンション事例をビジネス誌で見たの
つつ、リノベーションによる業績回復に注力
をきっかけに、リノベーションによる付加価
し、07年に先代から事業を承継した。
値の再生、新たな価値の追加により、入居率
08年には、社長が代表者で100%出資の㈱
の向上を図る方法を選択した。
スペースRデザイン(資本金500万円、年商
社長のリノベーションのイメージとして
約1億円、正社員6人)を設立した。同社で
は、大正から昭和初期にかけて関東大震災か
は、他のオーナー物件も含めた再生・リノ
らの復興として東京や横浜などに建設され、
図表24 吉原勝己社長
当時としては先進的であった同潤会アパート
や、空きの目立つ工場・倉庫街から芸術家や
デザイナーの街として知られるようになった
ニューヨークのソーホー地区、ということが
あった。もちろん、耐震性や設備などは診断
し、必要に応じて補強・強化・更新がなされ
ている。配管などはわざわざ外壁に這わせ
て、これを外観のデザインとして利用すると
(備考)信金中央金庫地域・中小企業研究所撮影
いったことも行われている。ただし、基本的
調 査
33
に外観については古さがアピールの大きなポ
図表25 冷泉荘(上)
、山王マンション(下)
イントであるため、従来の雰囲気をそのまま
冷泉荘
残している。
最初に手がけた冷泉荘は、もともとは近く
の川端通商店街の商店主が住む団地であった
が、管理が行き届かず、ホームレスなどが入
り込むなどの問題が起っていた(図表25)。
この物件は事務所に用途変更してSOHOとし
ても使用できるようにし、地元のアーティス
トの表現の場として活用することにした。具
山王マンション
体的には、耐震補強など建物のハードや外装
といった基本部分は当社として手を入れ、初
期家賃は1室30~35㎡で3万5,000円と、福岡
市中心では格安に設定した。その代わりに、
入居期間は3年で内装を入居者負担で好きな
ようにセルフリノベーションする。入居者が
才能を発揮することを可能としたのである。
なお、1階は60人程度が入れるホールとして
おり多目的利用が可能である。この当時、す
(備考)吉原住宅㈲提供
でに築47年で、しかも入居者が費用を負担
20年程度で回収するとして約7万円の家賃と
するセルフリノベーションというユニークな
している。家賃が高い分、入居者の質も良化
手法であったが、発想が豊かな地元の若手建
することにつながっている(図表25)。
築デザイナーから発表・活躍・切磋琢磨する
新 高 砂 マ ン シ ョ ン で は 耐 震 補 強 を 施 し、
場としても注目された。もちろん、それらの
55室 中34室 を リ ノ ベ ー シ ョ ン 済 み で あ る
作品は製作者以外の人たちからも評価され
(図 表26)。2DKタイプで子育て中の30歳 台
24室は満室状態となっている。
が中心、家賃は45㎡で7.3万円程度となって
山王マンションでは、退室があるたびに
いる。最近では、設備面などの機能は回復向
300~400万円/室でのリノベーションを行
上させるが、それ以外では、内装もわざわざ
い、45室 中27室 で 実 施 済 み で あ る。3DKタ
古いままを残した良さが人気となっている。
イプで、家賃設定は近隣の新築坪単価よりや
このため、リノベーション費用も50~100万
や高めである。経営的には45㎡で月5万円の
円/室と安価で可能であり、当社では「エコ
家賃でペイするが、リノベーション費用を
リノベーション」として行っている。
34
信金中金月報 2012.10
このような取組みの結果、福岡市の賃貸住
レベルとなっている。ただ、当ビルも築36
宅の空室率が20%程度に上るともいわれる中
年を経過し、現状では8室が空室となってお
で、当社の物件は入居希望のウエイティング
り、新たな施策を考えている。
が出る人気ぶりとなっている(ウエイティン
グリスト作成により、退去後に即時入居が可
ハ.今後の取組み
能で機会損失をなくし、顧客ニーズの把握も
マンションは、既存の3棟では未実施の部
できる)。デザイン性や新しい設備とともに、
屋のリノベーションを順次進め、新たな物件
建物の古さがもつ価値が融合し、入居希望者
を取得しての展開も含めて顧客ニーズに応え
にとって大きな魅力を作り出すヴィンテージ
ることに注力していく。天神パークビルは、
物件となっている。
耐震補強とオフィスリノベーションを考えて
当社事務所のある9階建てオフィスビルの
いる。クリエイティブ系の会社の入居を考え
天神パークビルは、00年に48区画の4分の1
ており、オープンな共有スペースでの交流な
が空室であったため、大手仲介業者周りの営
どを通じて、質の高い仕事ができる空間を
業に注力して満室とし、その収益を住宅部門
狙っている。
改善に回した。現在1階にカフェを設け、屋
加えて、㈱スペースRデザインでの他社物
上は庭園とし、共同利用可能な部屋を設ける
件のリノベーションで、建物の風景を残しな
など共有スペースが多く配置され、入居者全
がら街の価値向上に努力していく。このた
体でビルを使いこなすということから
め、経営面での管理を徹底するとともに、従
「Collective(集 合 的・ 集 団 的)Office」 と 名
業員に対するガラス張り経営と、チャレンジ
付けている。トイレも各階ごとに違うデザイ
ングなテーマ設定をして周りと議論しながら
ナーにより改装するなど、ユニークな取組み
まとめ、成功体験を積ませる人材育成にも
を行っている。家賃は新築ビルと変わらない
いっそう注力していく。
図表26 新高砂マンション
おわりに(事例企業からの示唆)
かつては付加価値を創出したビジネスモデ
ルが通用しなくなり、業種や規模を問わず、
企業には本質的な問題・課題への対応が求め
られている。多くの中小企業で付加価値が低
迷し、価格競争やコスト削減にきゅうきゅう
とする中、事例企業ではバイタリティあふれ
る企業活動の源泉として、付加価値を創出す
(備考)吉原住宅㈲提供
る以下のようなポイントが指摘される。
調 査
35
第一に、ターゲットとする顧客が本質的に
第四に、各事例企業は、経営判断を迅速か
望んでいるものを常に意識し、それは流行・
つ適切に行うために、経営の管理を徹底して
ブームではなく根源的に顧客が欲しているも
現状把握を行い、議論が行われ、ガラス張り
のである。もちろん、その要求を満たす方策
の経営を行っている。
は、技術進歩や環境の変化など時間の経過と
価値を考えるに当って、消費財では、デザ
ともに徐々に変化していく。しかし、表面的
インやモノに秘められたストーリーなどの感
ではなく本質を狙う確かさ、方向性が重要で
性価値といった定量的に示しにくいが、単純
あることを強く示唆している。
な価格やスペックだけではない価値も大きな
第二に、本質的ニーズの充足のために、顧
意味・力をもつことも認識しておかねばなら
客の立場に立って慣習・常識にとらわれない
ない。生産財でも、提供する機械や部品など
ビジネスモデルを構築し、単純に製品・サー
それそのものの機能向上に加えて、少なくと
ビスの機能を充足するだけでなく、プラスα
もそれが関わる部分ではメンテナンスの利便
も含めたトータルの付加価値を創出している。
性、より良い使用方法などプラスαの価値を
第三に、付加価値創出のために、企業の理
提案し、顧客の生産性、低コスト化、品質向
念・目的を組織全体で共有し、ベクトルを合
上などで期待以上の成果を実現して差異化を
わせた活動をしている。経営者や一部の社員
図る(これは感性価値に比べ、定量的な評価
だけではなく、全体がひとつの方向に向かい
で価値を示すことが格段にやりやすい)、な
能力を発揮させるため、縦割りの硬直した組
どが重要である。
織・業務運営ではない柔軟性をもって顧客の
バイタリティのある中小企業は、顧客に
本質的なニーズに対応している。すなわち、
とっての付加価値をいかに創造するかにおい
顧客の課題を根本的に解決するために求めら
て、本質的な問題を捉え、解決のための納得
れるものは何かを理解し、製商品・サービス
性あるストーリーを考え抜き、その実現に組
がそのために十分な機能を発揮できるよう人
織的に取り組み、長期的視点での差異化を成
材育成など様々なサポートも含めた活動が行
し遂げているのである。
われている。
〈 参考文献 〉
財務省『法人企業統計年報特集』(平成2年度から平成22年度の各年版)
A.G.Lafley,RamCharan(斎藤聖美訳)『ゲームの変革者』日本経済新聞社(2009)
すえかね
前川洋一郎、末包厚喜編著『老舗学の教科書』同友館(2011)
36
信金中金月報 2012.10
調
査
地域別にみた日本経済の景況判断
―
復興需要の本格化で、景気は持直しの動きが続く―
信金中央金庫 地域・中小企業研究所主任研究員
斎藤 大紀
(キーワード)東日本大震災、サプライチェーン、地域の景況感、地域間格差
(要 旨)
サプライチェーンの復旧と自粛ムードの低下につれて、日本経済は再び持直しに転じつつ
ある。欧州債務危機や円高の影響で輸出は伸び悩んでいるが、12年に入ってからは、復興需
要が徐々に本格化し、内需を底上げしている。特に、雇用情勢の改善、エコカー補助金の復
活で、年前半は個人消費が堅調に推移した。大飯原発の再稼働で夏場の電力不足も緩和され、
今後も復興関連支出の拡大をテコに、景気は緩やかながらも持直しの動きが続こう。
地域別にみると、生活再建とインフラ復旧のための需要増が被災地の経済活動を底上げし、
自動車関連の集積地でも景況感が大きく持ち直している。反面、電機産業への依存度が高い
地域では、改善の動きが緩慢なものにとどまっている。本稿では、全国を10の地域に分けて、
主として12年前半の指標を基に、地域別の景気動向を分析してみた。
1. 北海道 :製造業を中心に緩やかに持直し。主力の観光業も底入れ
2. 東北 :震災からの復興需要が本格化し、非製造業をけん引役に回復基調
3. 北関東・甲信越:製造業をリード役に、景気は緩やかに持直し
4. 首都圏 :非製造業をリード役に、景気は緩やかに持直し
5. 北陸 :総じて持直しの動きが続き、雇用情勢は着実に改善
6. 東海 :自動車をけん引役に、景気は回復基調。雇用情勢も改善
7. 近畿 :持直しの動きが一服し、足元の経済活動は足踏み状態
8. 中国 :生産活動は弱含みだが、雇用情勢は改善基調を維持
9. 四国 :緩やかながらも持直しの動きが続き、雇用情勢も改善基調
10. 九州 :観光業など非製造業をリード役に、景気は緩やかに持直し
(参考)本レポートにおいて原則とした地域区分
北海道
東北
北関東・甲信越
首都圏
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州北部
九州
南九州
北海道
青森県
茨城県
埼玉県
富山県
岐阜県
滋賀県
鳥取県
徳島県
福岡県
熊本県
岩手県
栃木県
千葉県
石川県
静岡県
京都府
島根県
香川県
佐賀県
大分県
宮城県
群馬県
東京都
福井県
愛知県
大阪府
岡山県
愛媛県
長崎県
宮崎県
秋田県
新潟県
神奈川県
山形県
山梨県
福島県
長野県
三重県
兵庫県
広島県
高知県
奈良県
山口県
和歌山県
鹿児島県
沖縄県
(注)本稿は12年8月末時点のデータに基づき記述
調 査
37
1.北海道 製造業を中心に緩やかに
持直し。主力の観光業も底入れ
―
11年3月11日に発生した東日本大震災の影響
で北海道経済も下振れしたが、11年後半以降
図表1 日銀短観の業況判断D.I.(北海道)
(D.I.)
20
製造業
10
0
は、製造業をけん引役に総じて緩やかな持直
-10
しの動きが続いている。主力産業である観光
-20
業も、自粛ムードや原発事故による風評被害で
-30
大きく落ち込んだあと、11年後半には底入れ
し、低水準ながらも持ち直しつつある。雇用情
勢は、依然として厳しいものの、改善の動きも
全産業
-40
02
非製造業
03
04 05
06
07
08
09
10
11
12(年)
(備考)日銀資料より作成
散見される。景気は緩やかに持ち直している。
〜6月の△36.9をボトムに10〜12月には△19.1
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)は、震
まで改善したが、12年に入ってからは改善一服
災後の11年6月(△24)をボトムに再び持直
となっている。12年4〜6月のD.I.は△21.3と全
しの方向に転じ、12年6月には△6と96年11
国平均
(△21.6)
を小幅上回っているが、製造
(注)1
月
(△5) 以 来 の 高 水 準 を 記 録 し た(図
業は△23.0と全国平均(△20.4)を下回ってい
表1)。全産業のD.I.は全国平均(△4)をや
る。日銀短観とは、やや異なる結果となった。
や下回っているが、製造業は+3と07年6月
鉱工業生産は、震災の影響で11年4〜6月に
(+5)以来の高水準を記録、全国9地域で唯
前期比△2.8%とマイナスを余儀なくされたが、
一プラスとなった。業種別にみると、製造業
相対的に落込み幅は小さく、年後半以降は総
では、食料品(+15)や輸送用機械(+25)
じて持直しの動きが続いている。12年4〜6
などが高水準の景況感を示した。非製造業は
月は前期比△2.5%と2四半期ぶりに減少した
△9と全国平均(△3)を下回ったが、観光
ものの、前年比では2.4%増と4四半期連続で
業の持直しで、宿泊・飲食サービスはマイナ
増加している(図表2)。業種別の動きを4〜6
ス幅が大きく縮小している(11年6月△61→
月の前年比でみると、サプライチェーンの正
12年6月△4)。物品賃貸(+22)や対事業所
常化で輸送機械が34.2%増と高い伸びを示す
サービス(+11)は堅調に推移している。
一方で、ウエイトの大きい食料品
(△3.8%)や
一方、中小・零細企業の景況感を表す信金
パルプ・紙・紙加工品
(△5.1%)
は、前年の水
(注)2
中央金庫の中小企業景気動向調査
をみる
と、北海道の業況判断D.I.(総合)は、11年4
準が高かった反動もあって、弱含んでいる。
企業の投資マインドは堅調に推移している。
(注)1.日銀短観の調査時期は、96年まで2月、5月、8月、11月
2.調査対象は信用金庫の取引先1万6千社程度で、従業員20人未満の企業が約7割を占める。
38
信金中金月報 2012.10
日銀短観の設備投資額(全産業)をみると、09
算が大きい。
年度に前年比△36.2%と大きく落ち込んだあと
個人消費は、震災直後は悪化したものの、
持直しに転じ、6月調査の12年度計画は13.4%
11年後半以降は緩やかに持ち直しつつある。
増と3年 連 続の増 加が見込まれている(11年
大型小売店の販売額(既存店ベース)は、前年
度:12.7%増 )
。業 種 別にみると、製 造 業が
割れが続いているが、12年4〜6月は△0.5%と
63.0%増(11年度:12.4%増)と大幅な増加が
小幅なマイナスにとどまった。サプライチェー
計画されている一方、非製造業は△15.4%(11
ンの正常化とエコカー補助金の復活で、12年
年度:12.8%増)と減少が見込まれている。
前半に乗用車販売は水準を大きく切り上げた。
雇用情勢は、緩やかに持ち直しているもの
雇用・所得環境はなお厳しいものの、消費は
の、引き続き厳しい状況にある。有効求人倍
総じて底堅く推移している。住宅投資は持直
率は、09年4〜6月(0.35倍)をボトムに上向
しの動きが一服している。住宅着工戸数は、
きに転じたが、12年4〜6月で0.59倍と全国平
11年に前年比11.5%増と2ケタの伸びを示した
均(0.81倍)を大きく下回っている。完全失
あと、12年前半は一進一退で推移している。
業率は、高止まりが続き、4〜6月で5.4%と
主力産業である観光は、07年度以降は総じ
全国平均(4.4%)を上回っている。ただ、日
て低調に推移し、震災直後は自粛ムードと原
銀短観の雇用人員判断D.I.(過剰-不足、全
発事故の風評被害で大きく落ち込んだ。来道
産業)は、09年6月調査(+14)をピークに低
者数の前年比をみると、11年4〜6月は△19.9%
下傾向をたどり、12年6月調査で△2と不足
と2四半期連続で2ケタのマイナスを余儀なく
超に転じている(全国平均は+1)。先行き見
された(図表3)
。その後は徐々に持直しに転じ
通 し は △5と 不 足 感 が さ ら に 強 ま る 見 通 し
た も の の、12年4〜6月 の 来 道 者 数 は2年 前
で、雇用情勢は引き続き緩やかに改善する公
(10年4〜6月)の水準を0.5%下回っている。
図表2 北海道の鉱工業生産指数
図表3 来道者数の推移
110 (2005年=100)
(万人)
105
360
95
320
90
鉱工業生産
85
食料品
03
04
05
06
07
09
(備考)北海道経済産業局資料より作成
10
11
12
(年)
15
5
280
0
240
-5
-10
来道者数
(左目盛)
160
08
20
10
200
パルプ・紙・紙加工品
80
02
25
前年比
(右目盛)
400
100
75
(%)
440
120
06
07
08
-15
-20
09
10
11
-25
12 (年)
(備考)北海道庁資料より作成
調 査
39
◇北海道の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
△18
(製造業)
-
-
△ 9
△ 3
△ 9
△13
△ 8
△ 4
△ 2
△ 8
3
(非製造業)
-
-
△21
△19
△21
△20
△30
△20
△17
△15
△ 9
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△32.8
△24.7
△27.5
△36.3
△36.9
△20.5
△19.1
△28.4
△21.3
(製造業)
-
-
△28.1
△23.4
△21.2
△40.3
△28.8
△16.3
△ 8.7
△28.9
△23.0
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
50.0
49.8
43.0
41.0
36.4
50.4
45.6
48.4
48.3
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
△ 2.5
(前年比)
①日銀短観・業況判断D.I.
10/Ⅱ
10/Ⅲ
△15
10/Ⅳ
△18
11/Ⅰ
△18
11/Ⅱ
△24
11/Ⅲ
11/Ⅳ
△16
△13
12/Ⅰ
△13
12/Ⅱ
△ 6
△ 1.2
0.3
△ 1.2
2.5
△ 2.8
3.0
△ 1.4
3.2
6.5
0.3
8.5
6.1
0.5
0.5
△ 1.5
1.2
1.2
3.2
2.4
(既存店、前年比) △ 1.5
△ 1.3
△ 1.0
△ 1.1
△ 1.3
△ 1.4
△ 2.2
△ 1.6
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.5
(百貨店、既存店、前年比) △ 2.0
⑤大型小売店販売額
△ 3.8
△ 0.1
△ 2.5
△ 3.4
△ 5.8
△ 3.6
△ 4.2
△ 1.8
△ 0.5
△ 1.8
⑥有効求人倍率
(倍)
0.41
0.47
0.39
0.42
0.44
0.44
0.45
0.48
0.50
0.54
0.59
⑦完全失業率
(%)
5.1
5.2
5.2
5.1
5.5
5.1
5.6
5.1
4.8
5.3
5.4
⑧住宅着工戸数
(前年比)
8.3
11.5
7.4
17.5
△ 5.1
18.9
10.0
5.6
14.8
△12.8
6.2
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 1.2
△ 0.8
△ 2.0
△ 1.9
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.0
△ 1.2
△ 0.8
△ 0.4
△ 0.7
(個人向け、前年比) △ 0.6
△ 0.6
△ 2.6
△ 1.8
△ 0.6
△ 0.1
0.2
0.2
△ 0.6
△ 0.8
△ 1.3
(企業向け、前年比) △ 3.8
△ 1.9
△ 5.3
△ 4.4
△ 3.8
△ 3.6
△ 2.6
△ 2.1
△ 1.9
△ 0.5
△ 1.0
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行札幌支店、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:北
海道経済産業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
信用金庫の貸出金は、住宅ローンを中心に
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)
は、11年6
個人向けが再び減少に転じ、企業向けも低調
月(△21)をボトムに上向きに転じ、12月には
な推移が続いている。12年6月末の残高は前
+3と92年2月(+4) 以来のプラスを達成 し
年比△0.7%と11四半期連続で減少した。
た(図表4)。12年6月のD.I.は+7と91年11月
2. 東北 震災からの復興需要が本格
化し、非製造業をけん引役に回復基調
―
11年3月11日の東日本大震災で、太平洋沿
岸部の東北地方は津波の影響で壊滅的な打撃
を被った。福島第1原発の事故による環境汚
染は、依然として収束のメドが立っていない。
ただ、インフラや設備の復旧が進むにつれて、
製造業の生産が持直しに転じ、生活再建のた
めの支出増が経済活動を押し上げている。12
(+15)
以来の高水準を記録し、全国9地域のな
かでは、東北だけがプラスとなった。6月の
D.I.を業種別にみると、非製造業
(+14)
の改善
図表4 日銀短観の業況判断D.I.(東北)
(D.I.)
20
-10
-20
-30
-40
-50
徐々に本格化し、経済活動を底上げしている。
-60
たどっており、雇用情勢も上向きつつある。
40
信金中金月報 2012.10
製造業
0
年に入ってからは、政 府による復 興 事 業が
景気は依然として厳しいながらも回復基調を
全産業
10
-70
非製造業
02
03 04
05
06
(備考)日銀資料より作成
07
08
09
10
11
12
(年)
が著しい。とりわけ、建設
(+20)
、不動産・
物品 賃 貸
(+27)
、卸 売・小 売
(+23)
、宿 泊・
図表5 中小企業景気動向調査
(東北の業況判断D.I.)
飲食サービス(+24)など、復旧・生活再建関
11年
7〜9
10〜12
12年
1〜3
4〜6
連の業種で景況感が大きく改善している。反
総合
△ 21.5
△ 13.5
△ 18.3
△ 11.6
面、製造業の業況判断D.I.は、11年12月の+1
製造
△ 19.8
△ 15.1
△ 24.7
△ 21.2
がピークであり、12年6月は△4と2四半期連続
卸売
△ 46.2
△ 24.3
△ 36.0
△ 14.3
でマイナスとなった。
小売
△ 34.0
△ 32.0
△ 27.3
△ 24.2
より規模の小さい企業を対象とした信金中
サービス
△ 25.5
△ 10.8
△ 14.2
△ 9.0
5.1
20.0
15.1
13.6
△ 4.6
△ 19.4
△ 13.8
7.6
金の中小企業景気動向調査の業況判断D.I.(総
合)は、12年4〜6月 に 前 期 比6.7ポ イ ン ト 上
昇の△11.6と2四半期ぶりに改善し、全国11
地域のなかで最もマイナス幅が小さかった
(図表5)
。業種別にみると、建設業以外は軒
建設
不動産
(備考)信金中央金庫資料より作成
に減少したが、前年比では17.3%増と1〜3月
の10.7%増から一段と伸びを高めている。
並み改善を示した。建設業(+13.6)は、前
企業の投資マインドは、すでに大底を脱
期比1.5ポイント低下したものの、4四半期連
し、持直しに転じつつある。日銀短観(6月
続でプラスを記録した。
調 査 ) に よ る と、 全 産 業 の 設 備 投 資 額 は、
企業の生産活動に目を向けると、震災のあっ
10年度に前年比△15.1%と09年度(△25.8%)
た11年3月の鉱工業生産は前月比△35.6%と
に続いて大幅な減少を記録したものの、11
未曾有の落込みを示したが、4月以降は生産
年度には3.1%増とプラスに転じ、12年度は
設備の復旧が想定以上のペースで進み、電力
17.7%増と2ケタの高い伸びが見込まれてい
をはじめとしたエネルギーの供給制約も徐々
る。12年度の計画を業種別にみると、製造
に薄れたことから、鉱工業生産は急ピッチで
業が27.0%増と全体をけん引するが、非製造
持直しに転じた。四半期ベースでみると、4
業も2.8%増と小幅ながらも増加が見込まれ
〜6月も前期比△10.0%と2四半期連続で大幅
ている。復旧のための投資だけでなく、投資
な 減 少 を 余 儀 な く さ れ た が、7〜9月 に は
拡大のすそ野が広がりつつある。
11.1%増と大幅な増加を記録した。その後は、
被災地を中心に東北の雇用情勢は震災後に
円高の長期化や海外経済の減速に加えて、タ
大きく悪化した。11年4〜6月の完全失業率
イの洪水による部品不足の影響などから、伸
(総務省による補完推計値)は、6.3%と前期
び悩む場面もあったが、自動車などのばん回
比0.9ポイント上昇した。その後も、需給の
生産や復興需要をテコに、生産活動は総じて
ミスマッチなどから、雇用環境は厳しい状態
持直しの動きが続いている。12年4〜6月の
が続いているが、復興需要が本格化するにつ
鉱工業生産は、前期比△1.9%と4四半期ぶり
れて、労働需給は大きく改善している。有効
調 査
41
求人倍率は、震災直後こそ低下したものの、
図表6 有効求人倍率の推移
11年5月以降は再び持直しに転じ、12年4〜6
1.2
月には0.91倍に上昇した(図表6)。4〜6月の
1.1
(倍)
青森
岩手
宮城
秋田
山形
福島
1.0
水 準 は 全 国 平 均(0.81倍 )を 上 回 り、 特 に、
0.9
宮城(1.10倍)は需給均衡点の1倍に達してい
0.8
る(岩 手0.99倍、 福 島0.97倍 )。 求 人 倍 率 は
0.7
0.6
上昇しているものの、新規の求人は建設など
0.5
0.4
復興関連に集中しており、①求職者の以前の
0.3
職種と異なる、②非正規雇用の求人が多い、
0.2
などから、必ずしも雇用の増加には結びつい
02
03
04
05
06 07 08
09
10
11
12(年)
(備考)厚生労働省資料より作成
ていないとの指摘もある。雇用情勢は依然と
して極めて厳しいと考えられるが、復旧・復
ラスに転じ、12年1〜3月は前年3月に激減し
興が本格的に進展するにつれて、雇用環境も
た反動もあって12.8%増と2ケタの伸びを記
徐々に改善に向かうことが期待できよう。
録した。復興需要の顕在化で、住宅投資は増
個人消費は、震災直後こそ大きく落ち込ん
加に転じている。12年4〜6月の住宅着工戸
だものの、その後は生活再建関連の支出増で
数は前年比60.4%増と2四半期連続で大幅な
持直しに転じている。大型小売店販売額(既
増加を示した。
存店)は、11年4〜6月に前年比1.6%増とプ
信用金庫の貸出金は、震災後の復興需要を
◇東北の主要経済指標
10年
11年
11/Ⅳ
12/Ⅰ
①日銀短観・業況判断D.I.
(全産業)
-
-
△18
10/Ⅱ
△10
10/Ⅲ
△13
10/Ⅳ
△15
11/Ⅰ
△21
11/Ⅱ
△ 4
11/Ⅲ
3
5
12/Ⅱ
7
(製造業)
-
-
△ 9
△ 1
△ 2
△ 8
△19
△ 4
1
△ 3
△ 4
5
10
14
(非製造業)
-
-
△24
△16
△20
△19
△22
△ 4
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△44.0
△36.1
△33.6
△37.5
△43.2
△21.5
△13.5
△18.3
△11.6
(製造業)
-
-
△40.6
△33.2
△33.4
△35.0
△42.2
△19.8
△15.1
△24.7
△21.2
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
48.3
45.0
41.9
36.2
37.3
52.4
49.9
49.4
48.1
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
0.6
△ 0.2
2.2
△ 8.9
△10.0
11.1
1.1
6.7
△ 1.9
(前年比)
15.9
△ 9.7
19.3
12.6
7.6
△ 7.5
△14.9
△ 7.4
△ 9.0
10.7
17.3
(既存店、前年比) △ 2.8
1.3
△ 4.4
△ 1.5
0.2
△ 7.4
1.6
4.9
5.4
12.8
2.2
(百貨店、既存店、前年比) △ 3.2
△ 3.0
△ 4.5
△ 3.7
0.3
△16.0
△ 2.7
2.5
4.2
20.6
8.3
(倍)
0.43
0.56
0.41
0.45
0.47
0.49
0.50
0.60
0.67
0.76
0.91
(%)
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
5.7
5.3
5.7
5.6
5.6
5.4
6.3
5.3
4.6
5.0
4.8
⑧住宅着工戸数
(前年比) △ 0.4
△ 4.3
△ 6.2
8.0
8.6
△ 5.7
△18.7
10.2
△ 4.5
27.9
60.4
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 1.3
△ 2.1
△ 1.9
△ 1.8
△ 1.3
△ 2.8
△ 2.7
△ 2.2
△ 2.1
△ 0.0
△ 0.5
(個人向け、前年比) △ 5.0
△ 5.8
△ 6.1
△ 4.9
△ 5.0
△ 4.8
△ 5.7
△ 5.6
△ 5.8
△ 6.1
△ 5.7
(企業向け、前年比) △ 2.2
△ 1.0
△ 2.5
△ 2.9
△ 2.2
△ 3.4
△ 1.8
△ 1.0
△ 1.0
2.2
0.4
⑦完全失業率
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行仙台支店、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:東
北経済産業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均。③は新潟を含む。
3.11年と11年Ⅰ〜Ⅲの完全失業率は総務省による補完推計値
42
信金中金月報 2012.10
受けて企業向けが増加に転じてきたものの、
個人の資金需要は冷え込んだままである。12
年6月末の残高は、前年比△0.5%と10四半期
連続で減少している。
3.北関東・甲信越―製造業をリード
役に、景気は緩やかに持直し
図表7 中小企業景気動向調査
(業況判断D.I.、北関東・甲信越)
(D.I.)
20
10
0
-10
-20
-30
-40
東日本大震災は、北関東にも深刻な被害を
-50
もたらしたが、サプライチェーンの復旧が進
-60
むにつれて生産活動は増勢を取り戻し、雇用
情勢の改善や自粛ムードの一巡で個人消費も
底堅く推移している。被災地では、復興事業
全業種
製造業
小売業
建設業
不動産業
-70
-80
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)信金中央金庫資料より作成
の進捗が内需を底上げし、景気は全体として
緩やかに持ち直しつつある。
年10〜12月(△17.8)以来の水準まで回復し
企業マインドは、震災後に大きく落ち込ん
た。業種別には、不動産業の改善が著しい。
だが、11年後半以降は総じて持直しの方向に
域内経済への影響度が大きい製造業の生産
転じている。日銀短観の業況判断D.I.をみる
活動をみてみると
と、首都圏を含む関東甲信越の全産業D.I.は、
産
(静岡を含む)は、震災の影響で11年3月には
11年6月の△18をボトムに再び上向きに転じ、
前月比△20.3%と東北、東海に次ぐ大幅な落
12年6月には△3とリーマン・ショック前の08年
込みを記録したが、サプライチェーンの復旧
6月(△3)以来の高水準を記録した。直近1年
につれて、4月以降は急速に持ち直した。足元
の改善幅は15ポイントに達し、全国平均(14ポ
では、円高・海外経済の減速に加えて、自動
イントの改善)を小幅上回った。業種別では、
車などのばん回生産の一巡で生産活動は伸び
自動車が景況感改善のけん引役を果たした。
悩んでいるが、復興需要が引き続き生産を下
中小・零細企業の企業マインドも、低水準
支えしよう。12年4〜6月の鉱工業生産は前期
ながら着実に改善しつつある。北関東・甲信
比△2.4%と4四半期ぶりに減少したが、前年
越に限定した信金中金の中小企業景気動向調
比では4.5%増と2四半期連続で増加している。
査をみると、業況判断D.I.(総合)は、11年4〜
震災後の復旧投資も加わって、設備投資は
6月の△40.2をボトムにマイナス幅が大きく
底堅く推移している。信金中金・中小企業景
縮小し(図表7)、12年4〜6月には△21.0と07
気動向調査の設備投資実施企業割合(製造
(注)
3
、関東甲信越の鉱工業生
(注)3.北関東・甲信越の域内総生産に占める産業別の構成比をみてみると、製造業は25.5%と地域別では東海(29.0%)に次い
で2番目に高く、全国平均(17.9%)を大きく上回っている。特に、県別にみると、北関東が高い(栃木31.5%、群馬
28.0%、茨城26.2%)(県民経済計算、09年度)。
調 査
43
図表8 設備投資実施企業割合(製造業)
図表9 大型小売店販売額の前年比
(北関東・甲信越、既存店ベース)
(%)
45
(%)
8
北関東・甲信越
40
6
東海
35
百貨店
4
大型小売店
2
中国
0
30
-2
-4
25
-6
20
15
-8
東北
-10
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)信金中央金庫資料より作成
-12
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12(年)
(備考)1.北関東・甲信越には静岡を含む。
2.関東経済産業局資料より作成
業)をみると、北関東・甲信越は震災直後の
す景気ウォッチャー調査をみると、北関東・甲
11年4〜6月に29.2%と前期比1.2ポイント上
信の家計動向関連の現状判断D.I.は、11年3月
昇し、全国11地 域のなかで 最も高い水 準と
の22.3をボトムに上向きに転じ、6月には49.8ま
なった(図表8)
。その後は、伸び悩んだもの
で改善した。自粛ムードの一巡後、家計のマイ
の、12年4〜6月 は32.8% と 前 期 比5.3ポ イ ン
ンドは一進一退で推移している。消費関連統
トも上昇し、再び全国11地域のなかで最高
計の動きをみると、百貨店販売額(既存店ベー
水準を記録している。ちなみに、震災後は、
ス)は、11年1〜3月に前年比△5.6%と落ち込
復旧・復興投資の拡大で、東北の設備投資実
んだあと、4〜6月以降は4四半期連続で増加し
施企業割合の上昇が著しい。
た(図表9)
。供給体制の正常化とエコカー補助
雇用情勢は、震災後も緩やかな改善トレン
金の効果で、12年前半には乗用車販売が大幅
ドを維持している。新潟を除く北関東・甲信
に増加した。消費は底堅い推移が続いている。
の完全失業率は、09年10〜12月の5.1%をピー
住宅投資は、被災地の復興需要の顕在化な
クに12年4〜6月には3.4%まで低下した。震災
どから、増加に転じている。12年4〜6月の
直後こそ労働需給は悪化を余儀なくされたが、
住宅着工戸数は、前年比12.2%増と2四半期
11年後半には再び持直しに転じている。12年4
連続でプラスとなった。
〜6月の有効求人倍率は、0.85倍と全国平均
信用金庫の貸出金は、設備投資の伸び悩
(0.81倍)を上回り、08年7〜9月(1.00倍)以
み、住宅ローンの減少などから、企業向け、
来の水準を回復した。
個人向けともに落込みが続き、12年6月末の
家計のマインドは、震災後に大きく悪化し
残高は前年比△1.6%と11四半期連続でマイ
たあと、持ち直しつつある。街角の景況感を表
ナスとなった。
44
信金中金月報 2012.10
◇北関東・甲信越の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
△14
(製造業)
-
-
△ 9
0
△ 2
△ 3
△15
△ 6
(非製造業)
-
-
△17
△12
△13
△ 9
△19
△11
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△37.6
△27.7
△25.2
△31.7
△40.2
△28.1
△22.4
△25.9
△21.0
(製造業)
-
-
△26.4
△19.0
△17.9
△28.3
△35.0
△22.4
△16.2
△25.9
△20.3
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
47.1
44.9
40.1
37.5
37.2
46.8
43.5
43.5
46.1
△ 2.4
①日銀短観・業況判断D.I.
10/Ⅱ
10/Ⅲ
△ 7
10/Ⅳ
△ 9
11/Ⅰ
△ 7
11/Ⅱ
△18
11/Ⅲ
△ 9
11/Ⅳ
△ 7
12/Ⅰ
12/Ⅱ
△ 6
△ 3
△ 9
△10
△ 8
△ 6
△ 4
0
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
1.5
0.0
△ 0.9
△ 4.2
△ 2.1
4.2
1.0
1.6
(前年比)
16.4
△ 4.1
20.6
16.4
7.2
△ 4.4
△ 5.9
△ 3.3
△ 2.7
7.0
4.5
(既存店、前年比) △ 2.1
△ 0.5
△ 2.9
△ 0.8
0.5
△ 1.1
△ 0.1
△ 0.5
△ 0.2
1.8
△ 1.2
(百貨店、既存店、前年比) △ 2.9
⑤大型小売店販売額
△ 0.9
△ 2.4
△ 3.7
△ 0.2
△ 5.6
0.6
0.1
1.4
6.5
△ 0.6
⑥有効求人倍率
(倍)
0.55
0.67
0.54
0.58
0.60
0.64
0.64
0.69
0.73
0.79
0.85
⑦完全失業率
(%)
4.7
4.4
4.8
4.6
4.7
4.7
4.2
4.1
4.4
4.1
3.4
⑧住宅着工戸数
(前年比)
0.9
△ 3.6
△ 7.4
14.1
1.7
△ 1.7
△ 3.9
3.7
△11.8
6.2
12.2
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 1.7
△ 1.1
△ 1.9
△ 1.8
△ 1.7
△ 0.5
△ 0.6
△ 0.7
△ 1.1
△ 1.3
△ 1.6
(個人向け、前年比) △ 3.1
△ 2.7
△ 2.4
△ 2.7
△ 3.1
△ 2.9
△ 3.0
△ 2.9
△ 2.7
△ 2.4
△ 2.6
(企業向け、前年比) △ 3.0
△ 2.0
△ 3.2
△ 3.3
△ 3.0
△ 1.9
△ 1.7
△ 1.5
△ 2.0
△ 1.6
△ 2.1
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:関東経済産
業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
3.①は首都圏を含む。③、⑦は新潟を除く。④は首都圏と静岡を含む。⑤は静岡を含む。
圏 で は、 サ ー ビ ス 業(26.1%)、 卸・ 小 売 業
4. 首都圏 ― 非製造業をリード役に、
(14.8%)、不動産業(15.8%)、金融・保険業
景気は緩やかに持直し
(8.6%)の構成比が全地域で最も高いことが
一部埋立地で液状化現象が起こり、原発事
特徴として挙げられる(図表10)。また、全
故で電力不足に陥るなど、東日本大震災は首
国10地域別の人口増加率をみると、07年か
都圏経済にも大きな打撃を与えた。しかし、
サプライチェーンの復旧や電力不足への対応
図表10 域内総生産の産業別構成比(09年度)
が進むにつれて、生産活動は持直しに転じ、
100
(%)
自粛ムードの一巡で、ウエイトの大きい非製
90
造業も緩やかに上向いている。景気は全体と
80
して持直しの動きが続いているが、電力料金
70
の値上げ問題やリーマン・ショックの後遺症
もあって、景気の先行き不透明感は根強い。
域内総生産に占める産業別の構成比(県民
9.4
23.1
26.1
60
6.6
6.5
50
14.1
15.8
40
5.8
サービス業
運輸・通信業
不動産業
金融・保険業
8.6
卸・小売業
14.8
電気・ガス
・水道
12.5
30
経済計算、09年度)をみてみると、首都圏
20
は、 製造業のウエイトが12.6%と全国平均
10
17.9
が大きい北関東と好対照をなしている。首都
対家計非営利
サービス
政府サービス
4.9
(17.9%)を大きく下回り、製造業のウエイト
7.2
0
全国
建設業
4.6
製造業
12.6
鉱業
農林水産業
首都圏
(備考)内閣府資料より作成
調 査
45
ら11年までの5年間で、東北(△3.6%)、四
ると、首都圏(総合)の業況判断D.I.は、11
国(△2.8%)、 北 海 道(△2.1%) な ど 多 く
年4〜6月の△39.2をボトムに上向きに転じ、
の地域が減少する一方で、首都圏は2.8%増
12年4〜6月には△23.2と4四半期連続で改善
と増加基調を維持している(図表11)。
した。ただ、その水準は、全国平均(△21.6)
日銀短観では首都圏に限定した数字は発表
を小幅ながらも下回っている。
されていないことから、神奈川県の業況判断
首都圏の景況感を左右する不動産市況は、
D.I.
(全産業)
をみると、震災後の11年6月
(△12)
リーマン・ショック後に信用収縮の深刻化で急
をボトムに総じて持直しの動きが続き、12年6
速に冷え込んだが、マンション在庫の調整一巡
月調査では+6と全国平均
(△4)
を大きく上回
と景気の持直しを背景に下げ止まってきた。震
り、08年3月
(+11)以来の高水準を記録した。
災後には一時的に混乱もみられたが、下落率縮
業種別では、サプライチェーンの正常化とエコ
小の方向性は維持されている。市街地価格指
カー補助金を追い風に、輸送用機械
(+25)が
数の前年比騰落率をみると
(図表12)
、東京区部
一段と水準を切り上げ、製造業全体でも+7と
では、09年3月をボトムにマイナス幅が徐々に
3四半期ぶりにプラスに転じた。人口集積を背
縮小し、市況悪化には歯止めがかかっている。
景に首都圏の優位性が顕著な非製造業は、+5
マンションの在庫調整一巡を背景に、住宅
と2四半期連続でプラスとなった。特に、自粛
投資は震災後も持直しの動きが続いていた
ムードの一巡などから、個人向け販売・サー
が、足元では一進一退で推移している。住宅
ビス関連(+20)
が高水準の景況感を示した。
着工戸数は10年4〜6月に前年比4.7%増と増
中小・零細企業の景況感は、持ち直しつつ
加に転じ、11年7〜9月まで6四半期連続で増加
あるものの、依然として厳しい状況が続いて
した。ただ、金利優遇制度の終了を前にした
いる。信金中金の中小企業景気動向調査をみ
駆込み需要の反動で、10〜12月は△4.9%と前
図表11 地域別の人口増加率
全国
02年
03年
04年
05年
06年
02〜06年
07年
08年
09年
10年
11年
07〜11年
△
△
△
△
0.1
0.2
0.1
0.0
0.1
0.5
0.1
0.0
0.0
0.0
0.2
0.1
北海道
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
0.1
0.2
0.2
0.4
0.4
1.3
0.5
0.6
0.4
0.3
0.4
2.1
東北
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
0.3
0.4
0.4
0.6
0.6
2.3
0.7
0.7
0.6
0.6
1.1
3.6
(単位:%)
北関東
甲信越
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
0.1
0.1
0.2
0.3
0.2
0.9
0.2
0.3
0.3
0.3
0.4
1.4
首都圏
0.6
0.7
0.5
0.4
0.7
3.0
0.8
0.7
0.5
0.6
0.2
2.8
北陸
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
(備考)人口は各年の10月1日時点。総務省「人口推計」より作成
46
信金中金月報 2012.10
東海
0.2
0.1
0.2
0.3
0.2
0.9
0.2
0.3
0.3 △
0.3 △
0.4 △
1.5
0.3
0.3
0.3
0.3
0.4
1.6
0.3
0.2
0.1
0.2
0.2
0.0
近畿
△
△
△
△
△
△
△
△
0.0
0.1
0.0
0.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.1
0.1
中国
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
0.1
0.1
0.2
0.3
0.3
1.0
0.2
0.4
0.4
0.3
0.4
1.6
四国
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
0.3
0.3
0.4
0.5
0.5
2.0
0.6
0.6
0.5
0.5
0.6
2.8
九州
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
0.0
0.1
0.1
0.2
0.1
0.5
0.2
0.2
0.2
0.1
0.1
0.8
図表12 市街地価格指数(前年比)の推移
年水準を割り込み、12年前半は一進一退で推
(%)
移している。ちなみに、首都圏のマンション
20
在 庫 は、12年6月 末 で 前 年 比7.5% 増 の4996
15
戸と緩やかな積増しの動きが続いている。
10
東京区部
一方、製造業の生産活動は持ち直している
5
が、円高・海外経済の減速などから足元では
0
伸び悩んでいる。製造業出荷額(工業統計
-5
表、10年)の業種別構成比をみると、首都
-10
-15
圏は、タイの洪水による部品不足の影響が大
全国
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
(年)
きかった電気機械(12.0%、電子部品・デバ
(備考)日本不動産研究所資料より作成
イス等を含む)や輸送用機械(15.1%)のウ
エイトが高い。関東甲信越(静岡を含む)の
雇用情勢は、依然として厳しいものの、持
鉱工業生産を業種別にみると、ばん回生産の
直しの動きが続いている。11年の完全失業
一巡などから輸送機械の生産は高水準ながら
率は、4.6%と前年比0.5ポイント低下し、12
も足元では伸び悩み、電機関連は引き続き低
年4〜6月には4.3%に低下した。有効求人倍
調に推移している。復興需要の本格化が下支
率 は、09年10〜12月 の0.45倍 を ボ ト ム に 上
え要因となろうが、当面、首都圏の生産活動
向きに転じ、12年4〜6月には0.79倍に改善し
は力強さを欠いた動きが続こう。
た。 個 人 消 費 は、 震 災 後 に 高 額 商 品 や レ
◇首都圏の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
△14
(製造業)
-
-
△ 9
0
△ 2
△ 3
△15
△ 6
(非製造業)
-
-
△17
△12
△13
△ 9
△19
△11
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△42.3
△38.4
△37.6
△34.1
△39.2
△34.2
△30.6
△29.4
△23.2
(製造業)
-
-
△41.3
△40.0
△36.1
△31.1
△35.8
△32.3
△30.0
△27.7
△23.2
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
46.7
42.3
41.6
36.9
36.5
46.2
44.5
46.8
46.0
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
1.5
0.0
△ 0.9
△ 4.2
△ 2.1
4.2
1.0
1.6
△ 2.4
(前年比)
①日銀短観・業況判断D.I.
10/Ⅲ
△ 7
10/Ⅳ
△ 9
11/Ⅰ
△ 7
11/Ⅱ
△18
11/Ⅲ
△ 9
11/Ⅳ
△ 7
12/Ⅰ
12/Ⅱ
△ 6
△ 3
△ 9
△10
△ 8
△ 6
△ 4
0
16.4
△ 4.1
20.6
16.4
7.2
△ 4.4
△ 5.9
△ 3.3
△ 2.7
7.0
4.5
(既存店、前年比) △ 2.4
△ 3.0
△ 3.0
△ 1.5
△ 0.2
△ 4.2
△ 2.8
△ 2.8
△ 2.3
2.4
△ 1.4
(百貨店、既存店、前年比) △ 2.8
△ 3.2
△ 3.6
△ 3.2
0.1
△ 7.7
△ 2.3
△ 2.2
△ 1.1
6.8
0.4
0.79
⑤大型小売店販売額
10/Ⅱ
⑥有効求人倍率
(倍)
0.52
0.64
0.50
0.54
0.56
0.60
0.62
0.65
0.68
0.73
⑦完全失業率
(%)
5.1
4.6
5.3
5.1
4.9
4.7
4.5
4.6
4.6
4.6
4.3
(前年比)
7.4
5.0
4.7
17.9
13.6
5.9
12.4
7.3
△ 4.9
3.3
△ 2.3
⑧住宅着工戸数
(前年比) △ 1.8
△ 0.9
△ 1.8
△ 1.9
△ 1.8
△ 1.3
△ 1.1
△ 0.8
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.7
(個人向け、前年比) △ 1.7
△ 0.7
△ 2.9
△ 2.8
△ 1.7
△ 1.5
△ 1.3
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.1
0.3
(企業向け、前年比) △ 1.9
△ 1.0
△ 1.5
△ 1.8
△ 1.9
△ 1.4
△ 1.1
△ 0.8
△ 1.0
△ 0.9
△ 1.2
⑨信用金庫貸出金
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:関東経済産
業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
3.①は北関東・甲信越を含む。④は北関東・甲信越と静岡を含む。
調 査
47
ジャー関連を中心に大きく落ち込んだが、自
ン・ショック前の07年6月
(△3)以来の高水準
粛ムードの低下につれて持ち直している。百
を記録した
(図表13)
。他地域との比較でみる
貨店販売額(既存店ベース)の前年比の動き
と、12月時点のD.I.は全国9地域のなかで東北
をみると、11年1〜3月(△7.7%)をボトム
(+3)
に次いで2番目に高く、うち製造業
(+4)
にマイナス幅が縮小し、12年前半は震災後
は最も高い水準であった。ただ、12年に入っ
に急減した反動もあって、前年を上回って推
てからは改善一服となり、12年6月の全産業
移している。エコカー補助金の復活などから、
D.I.は△8と全国平均(△4)を下回っている。
乗用車販売は12年前半に大幅に増加した。
中小・零細企業の景況感も、年明け後は反
信用金庫の貸出金は、住宅ローンの持直し
落している。信金中金の中小企業景気動向調
で個人向けが下げ止まってきたものの、企業
査をみると、業況判断D.I.(総合)は、11年
向けは不振が続いている。12年6月末の残高
10〜12月に△26.4と前期比6.8ポイント上昇
は、前年比△0.7%と11四半期連続でマイナ
し、07年12月(△22.2)以来の高水準を記録
スを記録した。
した。しかし、12年1〜3月には△38.0と大き
5. 北陸 ― 総じて持直しの動きが続
き、雇用情勢は着実に改善
く落ち込み、4〜6月は△29.3と持ち直したも
のの、全国11地域のなかでは最も低い水準
にとどまっている。
北陸地方の景気は、震災の影響も比較的軽
北陸地方は、製造業のウエイトが高く、そ
微にとどまり、全体としては持直しの動きが
の動向が域内経済に与える影響が大きい
続いている。企業の景況感は足元で改善一服
となっているが、被災地からの生産シフトの
一巡や円高・海外経済の減速にもかかわらず、
生産活動は底堅さを維持している。一方、雇
用情勢は着実に改善し、自粛ムードの一巡も
あって、個人消費も底堅さを取り戻している。
企業の景況感は、他地域に比べて震災後の
悪化度合いが軽微にとどまり、総じて持直し
の動きが続いている。日銀短観の業況判断
D.I.(全産業)をみると、震災後の11年6月に
△13と前期比4ポイント悪化したものの、その
後は再び改善を示し、12月には△5とリーマ
(注)4
。
図表13 北陸の景況感の推移
(D.I.)
10
日銀短観
(業況判断D.I.、全産業)
0
-10
-20
-30
-40
中小企業景気動向調査
(業況判断D.I.、総合)
-50
-60
-70
02 03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)日銀、信金中央金庫資料より作成
(注)4.域内総生産に占める製造業の構成比は、北陸は19.3%と、東海(29.0%)、北関東・甲信越(25.5%)、中国(23.0%)に次
いで高い(県民経済計算、09年度)。
48
信金中金月報 2012.10
製造業出荷額(工業統計表、10年)の業種別
17.9%増と3年連続の増加が見込まれている
構成比をみると、北陸は、電気機械(24.3%、
(11年度3.3%増)。12年度の設備投資計画を
電子部品・デバイス等を含む)
、一般機械(は
業種別にみると、円高や海外経済の減速にも
ん用機械・生産用機械・業務用機械の合計で
か か わ ら ず、 製 造 業 が20.3% 増 (11年 度
15.0%)のウエイトが高い。一般機械は新興国
6.5%増)と引き続き投資のけん引役を果た
経済の減速の影響を受けて減産を余儀なくさ
すが、非製造業も10.0%増(11年度△6.4%)
れているが、電子部品・デバイスの生産は在
とプラスに転じる見通しである。
庫調整の一巡から回復に転じている(図表14)
。
雇用情勢は、緩やかながらも着実に改善し
4〜6月の鉱工業生産は、前期比0.2%増と小幅
ている。12年4〜6月の完全失業率は3.3%と
ながらも3四半期連続で増加し、前年比でも
全 国 平 均(4.4%) を 大 き く 下 回 っ て い る。
1.8%増と再びプラスに転じている。業種別の
有効求人倍率は09年7〜9月の0.49倍をボトム
動向を4〜6月の前 年 比でみると、一 般 機 械
に上昇基調が続いている(図表15)。12年4
(△18.5%)は2四半期連続でマイナスとなった
〜6月の有効求人倍率は、1.03倍と需給均衡
ものの、電子部品・デバイス(20.1%増)は
点の1倍を上回り、全国10地域のなかで東海
2四半期連続で増加した。化学(3.0%増)や
(1.04倍)に次いで2番目に高かった。特に、
繊維(0.4%増)は底堅く推移している。
福井県は1.21倍と全都道府県のなかで最も高
高水準の生産活動を受けて、設備投資は増
い水準を記録した。日銀短観の雇用人員判断
加基調を維持している。日銀短観6月調査に
D.I.(過剰-不足)をみても、12年6月で0と
よると、12年度の設備投資計画は、前年比
適切な水準にあり、先行き見通しは△2と不
図表14 北陸の鉱工業生産指数
図表15 北陸の有効求人倍率の推移
180
(2005年=100)
(倍)
鉱工業生産
富山
1.4
160
一般機械
電子部品・デバイス
1.3
140
化学
1.2
繊維
石川
福井
1.1
120
1.0
0.9
100
0.8
80
0.7
0.6
60
40
北陸
1.5
0.5
02 03
04 05
06 07
08
(備考)中部経済産業局資料より作成
09
10 11
12
(年)
0.4
02 03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)厚生労働省資料より作成
調 査
49
◇北陸の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
△20
(製造業)
-
-
△14
1
△10
△ 2
△11
(非製造業)
-
-
△23
△22
△17
△14
△15
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△45.2
△36.5
△36.3
△39.4
△38.8
(製造業)
-
-
△38.4
△31.4
△25.2
△30.4
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
52.5
48.5
45.2
44.2
-
①日銀短観・業況判断D.I.
10/Ⅱ
10/Ⅲ
△12
10/Ⅳ
△14
11/Ⅰ
△ 9
11/Ⅱ
△13
11/Ⅲ
△ 7
11/Ⅳ
12/Ⅰ
12/Ⅱ
△ 5
△ 8
△ 8
△ 5
4
△ 3
△ 6
△ 8
△11
△12
△10
△33.2
△26.4
△38.0
△29.3
△27.6
△26.3
△16.2
△32.1
△28.4
39.4
51.1
46.8
49.0
48.1
0.2
④鉱工業生産
(前期比)
-
2.7
1.4
1.2
9.5
△ 3.9
△ 0.6
0.4
1.7
(前年比)
18.5
8.2
20.5
17.8
13.2
17.2
8.3
4.7
3.5
△ 1.4
1.8
(既存店、前年比) △ 2.4
△ 1.3
△ 2.8
△ 1.2
0.2
0.5
△ 0.7
△ 2.4
△ 2.5
△ 1.6
△ 3.4
(百貨店、既存店、前年比) △ 3.1
⑤大型小売店販売額
△ 0.7
△ 2.6
△ 4.1
△ 0.0
△ 1.9
1.5
△ 1.6
△ 0.6
0.0
△ 2.8
⑥有効求人倍率
(倍)
0.66
0.89
0.63
0.70
0.76
0.85
0.86
0.91
0.94
0.99
1.03
⑦完全失業率
(%)
4.2
3.9
4.3
4.1
4.4
4.3
3.7
3.7
3.7
4.0
3.3
⑧住宅着工戸数
(前年比) △ 0.7
5.8
△ 4.0
12.0
4.7
20.6
7.9
11.9
△11.5
△18.5
△15.0
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 3.2
△ 3.6
△ 3.0
△ 3.2
△ 3.2
△ 3.5
△ 3.1
△ 3.2
△ 3.6
△ 2.3
△ 2.2
(個人向け、前年比) △ 1.9
△ 2.5
△ 2.4
△ 2.0
△ 1.9
△ 2.1
△ 2.1
△ 2.6
△ 2.5
△ 2.0
△ 1.7
(企業向け、前年比) △ 5.5
△ 6.0
△ 5.1
△ 5.3
△ 5.5
△ 5.5
△ 5.0
△ 5.1
△ 6.0
△ 4.1
△ 4.6
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行金沢支店、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:中
部経済産業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
3.⑦は新潟を含む。
足超に転じると見込まれている。
個人消費は、震災直後に高額商品が落ち込
んだものの、自粛ムードの低下とともに底堅
6.東海―自動車をけん引役に、景気
は回復基調。雇用情勢も改善
さを取り戻している。11年の大型小売店販
東海地方は、震災で生産・輸出が大きく落
売額(既存店ベース)は、前年比△1.3%と
ち込んだ自動車に対する依存度が大きいこと
10年(△2.4%)に比べてマイナス幅が縮小
から、景気は被災地である東北・北関東以上
した。12年4〜6月の大型小売店販売額は前
に落ち込んだ。11年10〜12月にはタイの洪
年比マイナス幅がやや拡大しているが、エコ
水による部品不足の影響で、生産活動が伸び
カー補助金の復活で、乗用車販売が大きく増
悩んだ。しかし、すう勢としては、自動車の
加したことが響いたと考えられる。住宅投資
サプライチェーンは徐々に正常化に向かい、
は、11年末以降、落ち込んでいる。12年4〜
経済活動は全体としても持直しの動きが続い
6月の住宅着工戸数は、前年比△15.0%と3四
ている。生産活動の急激な落込みで雇用情勢
半期連続でマイナスとなった。
は一時的に悪化したものの、11年後半以降
信用金庫の貸出金は、住宅ローンの持直し
は着実に改善しつつある。
の動きが一服し、個人向け、企業向けともに
日 銀 短 観 に よ る と、 東 海4県 の 業 況 判 断
不 振 が 続 い て い る。12年6月 末 の 貸 出 残 高
D.I.(全産業)は、震災による自動車のサプ
は、前年比△2.2%と11四半期連続でマイナ
ライチェーン寸断の影響などから、11年6月
スとなった。
に は △27と3月 比 で20ポ イントも 低 下し た。
50
信金中金月報 2012.10
水準、低下幅ともに全国9地域のなかで最悪
図表16 東海の鉱工業生産指数
であった。しかし、供給制約の低下ととも
130
に、経済活動は急ピッチで持ち直し、12年3
月のD.I.は△2とリーマン・ショック前の08年
120
110
100
3月(+3)以来の高水準を記録した。ただ、
90
円高・海外経済の減速に加えて、震災やタイ
80
の洪水からのばん回生産が一巡したことで、
70
6月のD.I.は△3と改善が一服している。エコ
カー補助金の打切りもあって、当面、企業マ
インドは一進一退で推移する公算が大きい。
中小・零細企業の景況感も、震災後に急低
(2005年=100)
60
鉱工業生産
50
自動車総合(除く二輪自動車)
一般機械
40
02
03
04
05
06
07
08
09
10 11
12
(年)
(備考)中部経済産業局資料より作成
下したあと、持直しに転じている。信金中金・
みると(静岡を除く3県)、6月時点での12年
中小企業景気動向調査の業況判断D.I.(総合)
度の計画額は前年比18.9%増と3年連続で増
は、11年6月の△47.1をボトムに持直しに転
加が見込まれている(11年度は2.2%増)。業
じ、12年1〜3月には△19.6まで改善した。4〜
種別には、 製造業が23.3%増(11年度4.6%
6月は△19.8と改善一服となったが、全国11
増)、非製造業が15.2%増(11年度0.2%増)
地 域 の な か で は、 東 北(△11.6)、 九 州 北 部
といずれも2ケタの高い伸びが計画されてい
(△15.8)に次いで3番目に高い水準を示した。
る。一方、信金中金・中小企業景気動向調査
製造業の生産活動は、震災による供給制約
の設備投資実施企業割合(製造業)をみる
を背景に急激な落込みを記録したあと、持直
と、東海地方は、震災の影響で11年4〜6月
しに転じている。鉱工業生産を四半期ベース
には22.8%に低下したが、その後は緩やかに
でみると、サプライチェーンの復旧による自
持 ち 直 し、12年4〜6月 に は31.8% と 全 国11
動車生産の急回復を受けて、11年7〜9月に
地域のなかで北関東・甲信越(32.8%)に次
は前期比15.5%増と6四半期ぶりに増加した
いで2番目に高い水準を記録している。
(図表16)。タイの洪水の影響で10〜12月は
工場立地件数は、世界同時不況と円高の直
伸び悩んだが、供給体制の正常化とエコカー
撃で09年に半減したあと、10年も△14.5%と
補助金効果で自動車が大幅に増産した12年1
前年水準を大きく割り込んだが、11年には前
〜3月は前期比8.1%増加し、前年比でもプラ
年比17.7%増と持ち直した(図表17)
。ただ、
スに転じた。ただ、ばん回生産の一巡などか
設備の過剰感がなお残るなか、円高の長期化
ら、足元の生産活動は伸び悩んでいる。
や電力の供給制約で海外への生産流出も懸念
景況感の改善を受けて、設備投資は増勢を
され、今後も工場立地は低水準が続こう。
強めつつある。日銀短観の設備投資の動きを
雇用情勢は、震災による生産の急減を受け
調 査
51
図表17 地域別の工場立地件数と前年比
(11年)
(件)
図表18 有効求人倍率の推移
(倍)
40
立地件数
(左目盛)
90
前年比
(右目盛)
35
三重
1.4
1.2
15
1.0
0
0.8
5
南九州
九州北部
四国
中国
近畿
東海
北陸
首都圏
北関東
東北
北海道
全国
0
愛知
1.6
30
10
静岡
1.8
25
20
岐阜
2.0
60
30
東海
2.2
(%)
-30
0.6
0.4
0.2
(備考)1.工場立地件数は1都道府県当たりの数字
2.北関東は北関東・甲信越
3.経済産業省「工場立地動向調査結果」より作成
02
03
04
05
06 07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)厚生労働省資料より作成
て一時的に悪化したが、11年後半以降は改
12年4〜6月には1.04倍と需給均衡点の1倍を
善トレンドに復帰している。完全失業率は、
上回った(図表18)。特に、愛知県は1.20倍
09年7〜9月 の4.9% を ピ ー ク に 低 下 に 転 じ、
と全都道府県のなかで福井県(1.21倍)に次
10年10〜12月以降4%を割り込んでいる。有
いで2番目に高かった。東海地方の労働需給
効求人倍率は、震災直後こそ改善一服となっ
は、再びひっ迫しつつある。
たが、すう勢としては持直しの動きが続き、
個人消費は、震災の影響も軽微にとどまり、
◇東海の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
△18
△ 8
(製造業)
-
-
△12
△ 2
△ 4
△ 2
△29
1
(非製造業)
-
-
△25
△15
△18
△12
△27
△16
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△44.8
△33.0
△34.4
△31.2
△47.1
△30.4
(製造業)
-
-
△40.7
△23.6
△27.0
△23.4
△44.5
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
48.6
44.4
42.7
41.4
36.8
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
△ 0.4
△ 2.3
△ 1.8
△ 2.6
(前年比)
21.3
△ 6.4
30.1
17.2
3.2
(既存店、前年比) △ 1.7
△ 1.0
△ 2.5
△ 1.1
0.8
-
-
-
-
①日銀短観・業況判断D.I.
⑤大型小売店販売額
(百貨店、既存店、前年比)
10/Ⅱ
10/Ⅲ
10/Ⅳ
△10
11/Ⅰ
△ 7
11/Ⅱ
△27
11/Ⅲ
△ 7
11/Ⅳ
△ 5
12/Ⅰ
12/Ⅱ
△ 2
△ 3
△ 1
2
△ 2
△10
△ 6
△ 4
△25.4
△19.6
△19.8
△19.8
△17.1
△11.6
△ 9.3
49.5
46.2
48.6
48.2
△11.3
15.5
0.6
8.1
△ 0.3
△ 6.4
△17.1
△ 2.5
△ 0.1
14.1
24.8
△ 0.1
△ 1.3
△ 0.9
△ 1.6
△ 0.5
△ 1.0
-
-
-
-
-
-
-
1.04
⑥有効求人倍率
(倍)
0.59
0.77
0.57
0.62
0.65
0.71
0.72
0.80
0.84
0.93
⑦完全失業率
(%)
4.1
3.7
4.1
4.0
3.9
3.9
3.7
3.5
3.7
3.5
3.7
(前年比) △ 0.2
△ 2.6
△ 4.7
9.4
5.2
0.1
△ 5.3
9.7
△13.9
△ 6.9
△ 0.9
⑧住宅着工戸数
(前年比)
0.2
1.4
△ 0.3
0.0
0.2
0.7
1.2
1.3
1.4
2.0
1.4
(個人向け、前年比)
1.1
3.1
0.7
0.8
1.1
1.8
2.6
2.8
3.1
3.0
2.7
(企業向け、前年比) △ 2.0
△ 0.3
△ 2.6
△ 2.1
△ 2.0
△ 1.3
△ 0.4
△ 0.3
△ 0.3
0.6
△ 0.0
⑨信用金庫貸出金
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:中部経済産
業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
3.④、⑤ともに静岡を除く。
52
信金中金月報 2012.10
底堅く推移している。11年の大型小売店販売
額(既 存 店ベース)は前 年 比 △1.0%と10年
(△1.7%)に比べてマイナス幅が縮小してい
る。供給体制の正常化とエコカー補助金の復
活で、12年前半には乗用車販売が大幅に増加
した。反面、住宅投資は低調に推移している。
12年4〜6月の住宅着工戸数は前年比△0.9%と
小幅ながら3四半期連続でマイナスとなった。
信用金庫の貸出金は、自動車関連を中心と
した景気の持直しの動きを受けて、企業向け
が下げ止まってきた。住宅ローンの増加や地
公体向けの貸出増も寄与して、12年6月末の残
高は前年比1.4%増と8四半期連続で増加した。
7.近畿―持直しの動きが一服し、足
元の経済活動は足踏み状態
図表19 近畿の景況感の推移
(D.I.)
10
日銀短観
(全産業)
0
-10
-20
-30
中小企業景気動向調査
(総合)
-40
-50
-60
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)日銀、信金中央金庫資料より作成
均(9ポイント低下)よりは小さかった。た
だ、復旧・復興が進むにつれて、被災地の業
況判断D.I.が大きく改善したのに対して、近
畿の改善テンポは鈍い。12年4〜6月の近畿の
近畿地方は、震災の直接的な被害はなかっ
D.I.は、△9と3四半期連続で横ばいにとどま
たものの、サプライチェーンの寸断や自粛
り、全国平均(△4)を下回っている。
ムードで経済活動は一時的に落ち込んだ。震
一方、中小・零細企業の景況感は、総じて
災直後は、電力不足の東日本から関西への生
持直しの動きが続いている。信金中金・中小
産シフトの動きがみられたが、原発停止の影
企業景気動向調査をみると、業況判断D.I.(総
響で、足元では関西で電力不足が深刻化して
合)は、11年4〜6月の△35.5をボトムに上向き
いる。震災後の落込みが小さかった反面、持
に 転じ、12年4〜6月には △22.3とリーマン・
直しのペースも緩やかで、円高の持続や海外
ショック前の08年4〜6月(△22.1)以来の水
経済の減速などから、足元の経済活動は足踏
準まで回復した。ただ、4〜6月のD.I.は全国
み状態に陥っている。
平均(△21.6)を小幅ながら下回っている。
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)をみる
製造業の生産活動は、11年初めに一旦は踊
と、11年3月に△7とリーマン・ショック時(08
り場を脱したものの、震災後は低迷を余儀な
年9月:△9)を上回る水準まで改善が進んだ
くされている。近畿地方は、電機関連の集積
あと、6月調査では震災の影響が顕在化し、
が厚い一方、震災後の生産回復をリードした
△15と3月比8ポイント低下したが(図表19)
、
自動車関連のウエイトが相対的に小さいこと
全国平均(△18)を上回り、低下幅も全国平
が影響した。12年4〜6月の鉱工業生産は、前期
調 査
53
比△0.6%と再びマイナスに転じ、前年比では
△3.5%と3四半期連続で落ち込んでいる。4〜
6月の主要業種別の動きを前年比でみると、海
期ぶりにマイナスに転じ、在庫調整の遅れで電
子部品・デバイス
(△21.9%)は大幅なマイナス
が続いている。鉄鋼(△1.8%)も弱含んでいる。
そうしたなか、供給体制の正常化などから、輸
送機械(20.6%増)
は高い伸びを示した。ちな
みに、鉱工業の出荷と在庫の前年比をプロット
した在庫循環図(図表20)をみると、在庫水準
が適正かどうかの境界を示す45度線を11年1〜
(%)
12
10
8
12.Ⅰ
11.Ⅰ
09.Ⅰ
6
4
2
0
-2
-4
04.Ⅰ
-6
-8
-10
10.Ⅰ
-12
-14
-27 -24 -21 -18 -15 -12 -9 -6 -3 0 3 6 9 12 15 18
在庫
︵ 前年比 ︶
外経済の減速で一般機械(△9.0%)は10四半
図表20 鉱工業の在庫循環図(近畿)
(%)
出荷
(前年比)
(備考)福井を含む。近畿経済産業局資料より作成
(注)5
3月に右下から左上に横切っており、電気機
の悪化が目立った
械などを中心に在庫調整を余儀なくされてい
にみると、滋賀、大阪など高水準の府県が大
る。当面、生産活動は弱含みで推移しよう。
幅に水準を切り下げたことで、ばらつき度合
経済活動は足踏み状態に陥っているものの、
いが縮小した状態が続いている(図表21)
。
投資マインドには改善の兆しが見受けられる。
家計のマインドは、震災後に急落したあ
日銀短観の12年度の設備投資計画をみると、
と、緩やかに持ち直しつつある。街角の景況
6月調査では前年比7.4%増と2年ぶりに増加が
見込まれている(11年度は△8.6%)
。内訳を
みると、製 造 業が5.2%増(11年 度 △9.8%)
、
非製造業が9.0%増(11年度△7.8%)といず
れもプラスに転じる見通しである。
雇用情勢は、依然として厳しいながらも、方
向としては緩やかな持直しの動きが続いてい
る。11年の完全失業率は、5.0%と前年比0.9ポ
イント低下した。有効求人倍率は、09年10〜
12月の0.45倍をボトムに12年4〜6月には0.74倍
に上昇している。ちなみに、リーマン・ショッ
ク後には、工場の集積が厚い地域で雇用情勢
。有効求人倍率を府県別
図表21 有効求人倍率の推移
(倍)
滋賀
京都
大阪
兵庫
奈良
和歌山
1.3
1.1
0.9
0.7
0.5
0.3
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)厚生労働省資料より作成
(注)5.11年まで5年間の工場立地件数をみると、兵庫(352)
、滋賀(166)
、大阪(125)
、奈良(121)
、京都(102)
、和歌山(51)
の順で立地件数が多い(経済産業省「工場立地動向調査」より)
。
54
信金中金月報 2012.10
◇近畿の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
△16
△13
(製造業)
-
-
△10
△ 8
△ 5
△ 1
△11
△ 7
△ 8
△10
△10
(非製造業)
-
-
△21
△17
△19
△12
△19
△12
△ 9
△10
△ 8
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△35.1
△32.6
△27.2
△25.0
△35.5
△29.1
△26.1
△27.9
△22.3
(製造業)
-
-
△30.7
△24.0
△23.6
△17.0
△30.2
△25.4
△20.7
△23.6
△19.2
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
48.8
46.0
45.0
43.0
38.1
48.0
45.7
48.1
48.2
-
①日銀短観・業況判断D.I.
10/Ⅱ
10/Ⅲ
10/Ⅳ
△12
11/Ⅰ
△ 7
11/Ⅱ
△15
11/Ⅲ
△10
11/Ⅳ
△ 9
12/Ⅰ
△ 9
12/Ⅱ
△ 9
④鉱工業生産
(前期比)
-
1.2
△ 0.6
△ 0.7
5.4
△ 1.6
△ 2.2
△ 1.9
0.6
△ 0.6
(前年比)
10.1
1.7
13.2
9.8
3.8
5.6
2.6
0.9
△ 2.0
△ 3.1
△ 3.5
(既存店、前年比) △ 3.1
△ 1.9
△ 4.4
△ 1.7
△ 1.7
△ 1.8
△ 1.5
△ 2.3
△ 1.9
△ 0.8
△ 2.4
(百貨店、既存店、前年比) △ 3.3
△ 0.6
△ 4.7
△ 2.0
△ 1.3
△ 2.3
0.4
△ 0.9
0.4
0.9
△ 1.8
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(倍)
0.52
0.63
0.51
0.54
0.57
0.61
0.62
0.64
0.66
0.70
0.74
⑦完全失業率
(%)
5.9
5.0
5.8
5.9
5.8
5.5
5.2
4.4
5.0
5.6
5.2
⑧住宅着工戸数
(前年比)
3.3
△ 0.3
2.9
9.1
4.7
△ 3.4
△ 5.9
5.2
2.2
6.9
18.0
⑨信用金庫貸出金
(前年比)
0.2
0.1
△ 0.3
△ 0.0
0.2
0.3
0.6
0.6
0.1
0.4
0.1
(個人向け、前年比) △ 0.7
0.1
△ 0.9
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.3
△ 0.0
0.1
0.1
0.2
0.3
(企業向け、前年比) △ 0.1
△ 0.6
△ 1.0
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.2
0.0
△ 0.1
△ 0.6
0.1
△ 0.1
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行大阪支店、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:近
畿経済産業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
3.④、⑤ともに福井を含む。
感を表す景気ウォッチャー調査をみると、家
たものの、伸び率は0.1%と小幅にとどまっ
計 動 向 関 連 の 現 状 判 断D.I.は、11年2月 の
ている。
49.0から3月には29.7に急低下したが、4月の
27.0をボトムに上向きに転じ、12年4月には
54.3まで回復した。消費関連指標の推移をみ
8.中国―生産活動は弱含みだが、雇
用情勢は改善基調を維持
ると、11年の大型小売店販売額(既存店ベー
中国地方は、震災の直接的な被害を受け
ス)は、前年比△1.9%と10年(△3.1%)か
ず、サプライチェーン寸断の影響も相対的に
らマイナス幅が縮小している。供給体制の正
は小さかった。原発への依存度が低いことか
常化とエコカー補助金の効果で、乗用車販売
ら、電力の供給も安定している。その結果、
は12年前半に水準を大きく切り上げた。住
震災後も製造業の生産活動は相対的に底堅く
宅投資は、震災後の混乱で一時的に落ち込ん
推移していたが、円高の持続や海外経済の減
だものの、緩やかに持ち直している。12年4
速などから、足元の生産活動は弱含んでい
〜6月の住宅着工戸数は、前年比18.0%増と4
る。企業の景況感も年明け後は改善一服と
四半期連続で増加を示した。
なっているが、雇用情勢は緩やかながらも改
信用金庫の貸出金は、企業向け、個人向け
善基調が維持されている。自粛ムードの低下
ともに横ばい圏内の動きが続いている。地公
とともに、個人消費も底堅く推移している。
体向け貸出の増勢も鈍化してきた。12年6月
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)をみると、
末の貸出残高は前年比で7四半期連続増加し
10年9月に△7とリーマン・ショック前の08年
調 査
55
3月(△7)以来の高水準を記録したあと、一進
D.I.は全国平均(△21.6)を下回っている。
一退で推移している(図表22)
。震災後は、11
生産活動に目を向けると、鉱工業生産は10
年6月(△15)をボトムに持直しに転じたが、
年10〜12月に前期比2.1%増とプラスに転じ、
12年6月で△11と震災前のピークを下回って
他地域に先駆けて踊り場を脱したが、円高や
いる。6月のD.I.は、全国9地域で最も低い水
海外経済の減速を主因に、震災後は低迷を余
準にとどまった。業種別にみると、鉄鋼や石
儀なくされている。12年4〜6月の鉱工業生産
油・石炭製品など素材型製造業(△20)の悪
は、前期比0.3%増と小幅ながら5四半期ぶりに
化が全体の景況感を押し下げている。6月の
プラスに転じたが、前年比では△3.0%と5四半
全産業D.I.を県別にみると、岡山が△5と全国
期連続で減少した。4〜6月の前年比の動きを
平均(△4)並みを確保する一方、鳥取・島
主要業種別にみると、けん引役であった一般
根は△17に悪化しており、景況感のバラツ
機械(9.5%増)は1ケタの伸びに減速し、電子
キが再び大きくなっている(図表23)。
部 品・ デ バ イ ス
(△15.2%)
、化学
(△11.8%)
一方、中小・零細企業の景況感は、総じて
は大幅な減少を余儀なくされた。そうしたな
持直しの動きが続いている。信金中金・中小
か、供給体制の正常化などから、輸送機械
企業景気動向調査でみると、中国地方の業況
(6.4%増)は堅調な伸びを示した。
判断D.I.(総合)は、11年4〜6月の△33.4をボト
生産活動が弱含んでいることから、企業の
ムにマイナス幅が着実に縮小し、12年4〜6月
投資マインドも低迷している。日銀短観の12
には△25.5とリーマン・ショック前の08年1〜3
年度の設備投資計画(6月調査)は、全産業
月(△24.5)以来の水準を回復した。ただ、日
で前年比△4.0%と5年連続でマイナスが見込
銀短観同様に、震災の影響が相対的に小さ
ま れ て い る(11年 度 は △0.4%)。 業 種 別 で
かった反面、その後の戻りも鈍く、4〜6月の
は、製造業が△6.1%(11年度は△1.0%)と
2年連続で減少し、非製造業は△0.5%(11年
図表22 中国の景況感の推移
(D.I.)
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
-35
-40
-45
-50
-55
-60
-65
図表23 日銀短観の業況判断D.I.
日銀短観
(全産業)
全国平均
中国地方
岡山
広島
中小企業景気動向調査
(総合)
02
03
04
05 06
07 08
山口
09
(備考)日銀、信金中央金庫資料より作成
56
信金中金月報 2012.10
10 11
12
(年)
鳥取・島根
全産業
製造業
非製造業
△4
(△6)
△11
(△12)
△5
(△5)
△10
(△9)
△14
(△17)
△17
(△14)
△8
(△7)
△12
(△13)
△11
(△8)
△9
(△7)
△16
(△19)
△16
(△15)
△3
(△5)
△11
(△11)
1
(△2)
△11
(△11)
△12
(△16)
△17
(△13)
(備考)12年6月調査。カッコ内は3月。日銀資料より作成
度0.8%増)と小幅ながら2年ぶりに減少する
世界同時不況の直撃を受けた08年度下期には
見通しである。ただ、中小・零細製造業の投
両県の倍率が急低下した(図表24)
。この結
資マインドは底堅い。中小企業景気動向調査
果、県別格差が一旦はほぼ解消したが、足元
の製造業の設備投資実施企業割合をみると、
では再び格差が広がりつつある。
11年7〜9月の32.2%をピークに水準を切り下
個人消費は、震災の影響も軽微にとどま
げているが、12年4〜6月で25.9%と全国平均
り、底堅く推移している。11年の大型小売店
(20.9%)を大きく上回っている。
図表24 有効求人倍率の推移
雇用情勢は、緩やかに持ち直し、他地域と
(倍)
の比較では相対的に良好な状態にある。11年
鳥取
島根
岡山
広島
山口
1.4
の完全失業率は、前年比0.5ポイント低下の
1.2
3.7%と全国平均(4.6%)を大きく下回ってい
る。有効求人倍率は、09年7〜9月の0.54倍を
1.0
ボトムに12年4〜6月には0.92倍に上昇し、全
0.8
国平均(0.81倍)を上回った。ちなみに、有効
求人倍率を県別にみると、前回の景気回復期
0.6
には、自動車など輸出産業が集積し、工場立
(注)6
地の多かった岡山、広島が高かったが
0.4
、
02
03
04 05 06
07
08
09
10
11
(備考)厚生労働省資料より作成
12
(年)
◇中国の主要経済指標
10年
11年
①日銀短観・業況判断D.I.
(全産業)
-
-
△13
10/Ⅱ
△ 7
10/Ⅲ
△ 8
10/Ⅳ
△ 7
11/Ⅰ
△15
11/Ⅱ
△ 9
11/Ⅲ
△ 8
11/Ⅳ
△12
12/Ⅰ
△11
12/Ⅱ
(製造業)
-
-
△ 4
2
△ 1
0
△10
△ 2
△ 3
△13
△12
(非製造業)
-
-
△20
△12
△14
△13
△18
△15
△13
△11
△11
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△40.3
△38.0
△32.2
△31.7
△33.4
△29.2
△27.7
△26.1
△25.5
(製造業)
-
-
△36.0
△32.7
△20.6
△31.4
△32.4
△27.0
△27.9
△28.2
△26.9
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
48.0
45.9
42.6
41.2
40.3
46.8
42.7
44.3
45.9
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
0.7
△ 3.6
2.1
1.8
△ 3.6
△ 0.7
△ 1.5
△ 1.6
0.3
(前年比)
14.3
△ 1.7
20.6
8.4
5.3
1.5
△ 3.1
△ 1.1
△ 4.4
△ 5.1
△ 3.0
(既存店、前年比) △ 3.9
△ 1.5
△ 5.5
△ 2.6
△ 1.4
△ 1.2
△ 0.8
△ 2.1
△ 1.9
△ 0.6
△ 1.4
(百貨店、既存店、前年比) △ 4.3
△ 2.0
△ 5.2
△ 4.2
△ 1.8
△ 2.6
△ 1.2
△ 2.0
△ 2.0
△ 0.2
△ 0.5
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(倍)
0.64
0.81
0.62
0.67
0.72
0.77
0.79
0.82
0.85
0.89
0.92
⑦完全失業率
(%)
4.2
3.7
4.3
4.1
3.9
3.7
3.6
3.7
3.5
3.7
3.7
⑧住宅着工戸数
(前年比) △ 2.2
5.7
△ 8.4
21.3
2.6
4.2
2.0
26.1
△ 8.3
19.8
15.2
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 1.0
△ 0.9
△ 1.3
△ 1.2
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.9
△ 0.4
△ 0.5
(個人向け、前年比) △ 3.0
△ 2.2
△ 2.4
△ 3.4
△ 3.0
△ 3.1
△ 2.9
△ 1.9
△ 2.2
△ 2.0
△ 1.9
(企業向け、前年比) △ 1.9
△ 1.3
△ 2.3
△ 1.7
△ 1.9
△ 2.0
△ 1.9
△ 1.8
△ 1.3
0.3
0.2
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行広島支店、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:中
国経済産業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均。⑦は四半期も原数値
(注)6.11年まで5年間の工場立地件数は、広島(104件)、岡山(73件)、山口(50件)、島根(31件)、鳥取(28件)となっている
(経済産業省「工場立地動向調査」より)。
調 査
57
販売額(既存店ベース)は、前年比△1.5%
に縮小し、12年6月のD.I.は、△7とリーマン・
と10年(△3.9%)に比べて、マイナス幅が
ショック前の06年12月(△7)以来の水準を
縮小している。供給体制の正常化とエコカー
回復している。ただ、震災の影響が軽微だっ
補助金の効果で、12年前半には乗用車販売
た分、その後の戻りも鈍く、6月のD.I.は全国
が大幅に増加した。住宅投資は緩やかに持ち
平均(△4)を下回っている。
直しつつある。12年4〜6月の住宅着工戸数
中小・零細企業の景況感も改善度合いは小
は前年比15.2%増と2四半期連続で2ケタの伸
さい。信金中金・中小企業景気動向調査の業
び率を記録した。
況判断D.I.(総合)は、震災後の11年4〜6月
信用金庫の貸出金は、景気の持直しの動き
に△39.3に落ち込んだあと改善基調をたど
を受けて企業向けが下げ止まってきたもの
り、12年1 〜 3月 に は △25.9と07年4 〜 6月
の、住宅ローンの減少などから個人向けは不
(△25.9)以来の水準を回復した(図表25)。
振が続いている。12年6月末の残高は前年比
ただ、4〜6月は△26.6と小幅低下し、全国11
△0.5%と12四半期連続で減少している。
地域のなかで北陸(△29.3)に次いで2番目
9.四国―緩やかながらも持直しの動
きが続き、雇用情勢も改善基調
に低い水準にとどまっている。
生産活動は、10年末頃に一旦は踊り場を脱
したが、震災後は再び足踏み状態となった。
四国の景気は10年末頃に踊り場を脱し、
鉱工業生産は、11年1〜3月に前期比4.6%増と
震災後も経済活動は持直しの方向性を維持し
3四半期ぶりにプラスに転じたが、4〜6月には
ている。一部業種では、被災地からの生産シ
△1.3%と落ち込み、その後も弱含みで推移
フトが生産水準を押し上げる動きもみられ
した。12年1〜3月は前期比0.3%増と小幅な
た。震災の影響が相対的に軽微だった分、戻
りも鈍かったが、全体として景気は着実に持
ち直している。雇用情勢も緩やかに持ち直
し、個人消費は底堅く推移している。
他地域に比べれば影響は小さかったもの
の、四国地方の企業の景況感も震災後に悪化
を余儀なくされた。日銀短観の業況判断D.I.
(全産業)をみると、景気の踊り場脱却を受
けて11年3月に△14まで改善を示したが、震
災後の6月には、輸送用機械、小売、宿泊・
飲食サービスなどの悪化を受けて、△19に低
下した。ただ、その後は、マイナス幅が着実
58
信金中金月報 2012.10
図表25 中小企業景気動向調査
(業況判断D.I.、四国)
(D.I.)
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
総合
建設業
02
03
04
05
製造業
小売業
06
07
08
(備考)信金中央金庫資料より作成
09
10
11
12
(年)
がらも4四半期ぶりに増加したが、前年比で
も緩やかな改善の動きが続いている。12年4〜
は△1.5%と9四半期ぶりにマイナスとなった。
6月の完全失業率(原数値)は4.3%と前年比0.3
ただ、4〜6月には前 期 比2.8%増と伸びを高
ポイント低下した。労働需給を敏感に表す有
め、前年比でも1.8%増と持直しに転じつつあ
効求人倍率は09年7〜9月の0.53倍をボトムに
る。4〜6月の主要業種の動きを前年比でみる
上昇トレンドを維持している。12年4〜6月の
(注)7
と、ウエイトの大きい化学
(9.7%増)が堅
有効求人倍率は、0.85倍と全国平均(0.81倍)
調な伸びを示し、輸送機械(0.9%増)や食料
を上回っている。県別にみると、香川の有効
品(0.2%増)は底堅く推移している
(図表26)
。
求人倍率は、4〜6月で1.08倍と需給均衡点の1
設備投資は大型投資の一巡で弱含んでい
倍を上回り、福井(1.21倍)
、愛知(1.20倍)に
る。日銀短観6月調査によると、12年度の設
次いで全国で3番目に高い(図表27)
。香川は
備投資計画は前年比△8.0%と3年ぶりに減少
他の3県と比較して工場の立地件数が相対的に
する見通しである(11年度は16.6%増)。業
多かったことが寄与しているとみられ
種別にみると、高水準の投資が2年続いた反
国における労働需給の県別格差は再び拡大傾
動で製造業が△13.8%(11年度16.6%増)と
向に転じている。
大きく減少する一方、非製造業は0.5%増(11
雇用・所得環境の改善を受けて、個人消費
年度は16.6%増)と小幅ながら2年連続で増
は底堅く推移している。震災直後には、高額
加が見込まれている。
品の落込みなど弱い動きもみられたが、自粛
雇用情勢は、依然として厳しいが、震災後
ムードの低下につれて、消費は底堅さを取り
図表26 四国の鉱工業生産指数
図表27 有効求人倍率の推移
130
(2005年=100)
(注)8
(倍)
徳島
1.3
香川
120
愛媛
高知
1.1
110
0.9
100
90
0.7
鉱工業生産
80
食料品
0.5
電気機械
70
60
02 03
、四
化学
04
05
06
07 08
(備考)四国経済産業局資料より作成
09
10
11
12
(年)
0.3
02
03
04 05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)厚生労働省資料より作成
(注)7. 製造業出荷額ベースの業種別構成比をみると、化学工業(14.3%)
、非鉄金属(11.2%)
、石油・石炭(11.0%)
、食料・飲
料等(10.7%)
、パルプ・紙(9.6%)の順でウエイトが高い(工業統計表、10年)
。
8.11年まで5年間の工場立地件数は、香川79件、愛媛72件、高知38件、徳島38件(経済産業省「工場立地動向調査」より)
調 査
59
◇四国の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
△21
△15
△19
△14
△19
△16
△12
(製造業)
-
-
△19
△17
△15
△11
△15
△12
△ 8
△ 9
△ 9
(非製造業)
-
-
△22
△14
△20
△16
△22
△19
△14
△10
△ 7
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△44.6
△38.6
△32.2
△34.2
△39.3
△28.1
△29.6
△25.9
△26.6
(製造業)
-
-
△41.8
△29.0
△31.9
△29.1
△29.5
△23.1
△14.6
△19.1
△24.2
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
49.0
45.4
41.0
41.5
40.0
45.3
44.4
46.2
45.2
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
2.8
(前年比)
①日銀短観・業況判断D.I.
10/Ⅱ
10/Ⅲ
10/Ⅳ
11/Ⅰ
11/Ⅱ
11/Ⅲ
11/Ⅳ
12/Ⅰ
△10
12/Ⅱ
△ 7
2.4
△ 0.8
△ 1.6
4.6
△ 1.3
△ 0.2
△ 1.5
0.3
8.7
2.1
10.9
8.9
2.6
5.3
1.0
1.6
0.6
△ 1.5
1.8
(既存店、前年比) △ 4.5
△ 1.4
△ 7.4
△ 3.4
△ 1.7
△ 1.1
△ 0.4
△ 2.0
△ 1.8
△ 1.0
△ 1.7
(百貨店、既存店、前年比) △ 6.0
⑤大型小売店販売額
△ 1.4
△ 8.1
△ 6.6
△ 2.9
△ 3.2
△ 0.6
△ 1.5
△ 0.5
△ 0.2
△ 1.6
⑥有効求人倍率
(倍)
0.63
0.80
0.60
0.65
0.70
0.75
0.80
0.82
0.82
0.85
0.85
⑦完全失業率
(%)
4.5
4.6
5.0
4.5
4.5
4.5
4.6
4.6
4.1
4.6
4.3
⑧住宅着工戸数
(前年比) △ 4.3
2.6
△13.5
8.6
0.9
8.6
15.1
1.9
△11.1
1.9
△ 7.6
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 1.7
△ 2.4
△ 1.5
△ 1.5
△ 1.7
△ 1.9
△ 1.7
△ 2.0
△ 2.4
△ 1.8
△ 2.8
(個人向け、前年比) △ 3.3
△ 4.1
△ 5.1
△ 3.7
△ 3.3
△ 3.3
△ 3.5
△ 3.8
△ 4.1
△ 4.5
△ 4.2
(企業向け、前年比) △ 1.9
△ 1.9
△ 0.7
△ 1.5
△ 1.9
△ 1.3
△ 1.2
△ 1.4
△ 1.9
△ 1.1
△ 1.9
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行高松支店、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:四
国経済産業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均。⑦は四半期も原数値
戻しつつある。11年の大型小売店販売額(既
ら、九州の経済活動も大きく落ち込んだ。た
存店ベース)は前年比△1.4%と10年(△4.5%)
だ、サプライチェーンの復旧につれて、生産
からマイナス幅が大きく縮小し、エコカー補
活動は持直しに転じ、足元でも底堅く推移し
助金の復活などから、12年前半は乗用車販
ている。依然として厳しいながらも、雇用情
売が大幅に増加している。反面、住宅投資は
勢は緩やかに改善し、個人消費は底堅く推移
横ばい圏内の動きにとどまっている。4〜6
している。景気は全体として緩やかな回復へ
月の住宅着工戸数は前年比△7.6%と2四半期
向かいつつある。沖縄経済は、主力の観光業
ぶりにマイナスとなった。
が震災後の落込みを脱し、緩やかながらも持
信用金庫の貸出金は、設備投資の伸び悩み
直しの動きが続いている。
で企業向けの減少が続き、住宅ローンの減少
企業の景況感は、震災直後に悪化したあと
もあって個人向けは不振が続いている。12
再び持直しに転じている。日銀短観の業況判
年6月末の残高は、△2.8%と10四半期連続で
断D.I.(全産業)
は、震災によるサプライチェー
減少している。
ンの寸断を受けて11年6月に△13と3月比8ポイ
10.九州 観光業など非製造業をリー
ド役に、景気は緩やかに持直し
―
ント低下したあと、再び持直しに転じている
(図 表28)。12年6月 のD.I.は、 △5と 震 災 前
(11年3月)の水準と並んで、08年3月(△5)以
震災による直接的な被害はなかったもの
来の高水準を記録した。ただ、6月のD.I.は、
の、自動車のサプライチェーン寸断などか
小幅ながら全国平均(△4)を下回っている。業
60
信金中金月報 2012.10
種別にみると、円高・海外経済の減速などか
ら、製造業の改善テンポが鈍い一方、九州新
幹 線の全 線開通(11年3月)効 果 な ど か ら、
図表28 九州の景況感(業況判断D.I.)
(D.I.)
5
0
非製造業の景況感は着実に改善している。
-10
中小・零細企業の景況感は、他地域に比べ
-15
て引き続き良好に推移している。信金中金・
中小企業景気動向調査の12年4〜6月調査を
みると(総合)、九州北部は△15.8と震災前
を上回り、全国11地域のなかで東北(△11.6)
に次いで2番目にマイナス幅が小さい。南九
州は△19.9と全国平均(△21.6)を小幅上回
る程度だが、うち製造業は△12.3と全国11地
日銀短観
(全産業)
-5
-20
-25
中小企業景気動向調査
(総合、南九州)
-30
-35
-40
中小企業景気動向調査
(総合、
九州北部)
-45
-50
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(年)
(備考)日銀、信金中央金庫資料より作成
域のなかで東海(△9.3)に次いで2番目にマ
高い伸びを示す一方、電子部品・デバイスは
イナス幅が小さかった。
△5.0% と7四 半 期 連 続 で 減 少 し て い る。 ま
自動車の工場立地の増加などを背景に、九
た、11年半ばまで好調だった一般機械は3四
州では製造業が景気のけん引役を果たしてき
半期連続でマイナスとなり、減少率は22.0%
た。震災の影響で、11年3月の鉱工業生産は
と1〜3月(0.6%)から大きく拡大した。
自動車を中心に前月比△8.0%と大きく落ち
生産動向の先行きを占ううえでは、自動車
込んだが、その後は、サプライチェーンの復
とともにIT関連の動向が注目される。IT関
旧につれて、生産活動は総じて持直しの動き
連の生産を大きく左右するシリコンサイクル
が続いている。12年1〜3月の鉱工業生産は、
は、足踏み状態が続いているが、底打ちの兆
前期比1.3%増と4四半期連続で増加し、前年
しも出てきた。電子部品・デバイスの出荷と
比でも6.2%増と堅調な伸びを示した。ただ、
在庫の前年比をプロットした在庫循環図(図
足元の生産活動は、自動車のばん回生産の一
表29)をみると、10年半ば以降は在庫が大
巡や海外経済の減速などから、弱含んでい
きく積み上がり、減産を余儀なくされてきた
る。4〜6月の鉱工業生産は前期比2.5%減と5
が、足元では在庫調整が徐々に進んでいる。
四半期ぶりに減少し、前年比でも1.9%増に
九州の製造業出荷額の業種別構成比(10年)
(注)9
減速している。主要業種
の動きを4〜6月
を地域別にみると、電子部品・デバイスのウ
の前年比でみると、輸送機械が前年に大きく
エイトは南九州で11.3%と九州北部(6.1%)の2
落ち込んだ反動もあって41.0%増と引き続き
倍 近 く に 達 し て い る。 県 別 に は、 鹿 児 島
(注)9. 製造業出荷額ベースの業種別構成比をみると、九州では、食料・飲料等(20.1%)
、輸送用機械(18.7%)
、電気機械
(15.0%)などの割合が高い(工業統計表、10年)
。
調 査
61
(16.4%)
、大分(14.2%)
、宮崎(13.0%)
、熊本
8.4%増へ、非製造業も△20.4%から4.3%増
(8.4%)の順で高い。当面は、IT関連の低迷が
へ持ち直す計画となっている。
南九州の生産を抑制しようが、ロンドン・オ
製造業がけん引役となってきた九州に対し
リンピック(12年7〜8月)などをテコに、シ
て、沖縄は、製造業のウエイトが極めて低く、
リコンサイクルは徐々に持ち直してこよう。
非製造業、とりわけ観光産業に大きく依存す
一方、九州北部には自動車産業が集積してい
る産業構造となっている
(注)10
る
。中国をはじめとする新興国の自動車
(注)11
。そこで、沖縄
の観光客数の推移をみると、震災後の自粛
市場は減速しつつもなお拡大余地が大きく、
ムードにより、11年1〜3月には前年比△10.6%
米国の自動車市場は持直しの動きが続いてい
と5四半期ぶりにマイナスに転じ、4〜6月には
る。エコカー補助金の打切り後も、九州北部
△16.4%とマイナス幅が一段と拡大した(図
の生産活動は総じて底堅く推移しよう。
表30)。ただ、自粛ムードの低下などから、
設備投資は持直しに転じつつある。日銀短
7〜9月 以 降 は 持 直 し に 転 じ、10〜12月 は
観の6月調査によると、12年度の設備投資計
3.9%増と4四半期ぶりにプラスを記録してい
画額は5.7%増と2年ぶりに増加が見込まれて
る。主力の観光業の持直しで、沖縄経済は上
いる(11年度は△19.5%)。業種別にみると、
向きに転じつつある。12年4〜6月の観光客
製 造 業 が11年 度 の △17.5% か ら12年 度 に は
数は、16.8%増と3四半期連続で増加したが、
2年前の水準を小幅ながら下回っている。本
図表29 在庫循環図
(電子部品・デバイス、九州)
(%)
在庫
︵前年比︶
90
12.Ⅰ
80
70
60
50
04.Ⅰ
40
30
20
10
11.Ⅰ
09.Ⅰ
0
-10
-20
-30
-40
10.Ⅰ
-50
-60
-60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80
出荷
(前年比)
(備考)九州経済産業局資料より作成
(%)
図表30 沖縄の観光客数の推移
(%)
(万人)
20
180
170
15
前年比
(右目盛)
10
160
5
150
0
140
-5
130
-10
観光客数
(左目盛)
120
110
07
08
09
-15
10
11
12
-20
(年)
(備考)沖縄県資料より作成
(注)10.製造業出荷額に占める輸送用機械の構成比をみると、九州北部は27.2%と東海(34.7%)に次いで全地域で2番目に高い
(工業統計表、10年)。
11. 県民経済計算(09年度)によると、沖縄の県内総生産に占める第3次産業の割合は、85.8%と都道府県別では東京都
(87.0%)に次いで2番目に高い。
62
信金中金月報 2012.10
◇九州の主要経済指標
10年
11年
(全産業)
-
-
(製造業)
-
-
0
△ 2
△ 3
△ 2
△ 8
△ 3
△ 8
△10
△ 8
(非製造業)
-
-
△15
△ 8
△11
△ 7
△17
△12
△ 8
△ 5
△ 3
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
①日銀短観・業況判断D.I.
10/Ⅱ
△10
10/Ⅲ
△ 6
10/Ⅳ
△ 8
11/Ⅰ
△ 5
11/Ⅱ
△13
11/Ⅲ
△ 9
11/Ⅳ
△ 8
12/Ⅰ
△ 6
12/Ⅱ
△ 5
-
-
△31.8
△25.5
△25.7
△19.2
△27.9
△22.4
△16.4
△21.8
△15.8
(製造業)
-
-
△29.4
△28.4
△18.3
△20.1
△27.4
△22.8
△ 4.2
△16.6
△22.3
中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△34.2
△30.5
△26.9
△25.0
△31.4
△26.9
△19.6
△24.2
△19.9
(製造業)
-
-
△27.8
△37.0
△25.5
△29.6
△31.8
△27.7
△18.8
△23.5
△12.3
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
47.8
45.1
45.8
42.1
39.4
47.7
48.8
46.8
47.3
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
1.4
0.6
△ 1.2
△ 0.3
0.4
2.2
0.8
1.3
△ 2.5
(前年比)
〈九州北部〉
〈南九州〉
19.7
1.1
23.0
16.9
7.5
△ 0.1
△ 0.1
1.7
2.5
6.2
1.9
(既存店、前年比) △ 3.1
△ 2.0
△ 4.5
△ 2.5
△ 1.0
△ 1.6
△ 2.1
△ 2.5
△ 1.6
△ 1.6
△ 1.7
(百貨店、既存店、前年比) △ 3.7
△ 3.1
△ 5.0
△ 3.8
△ 2.0
△ 4.1
△ 3.3
△ 2.9
△ 2.5
△ 0.9
△ 0.2
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(倍)
0.45
0.55
0.44
0.46
0.49
0.53
0.54
0.55
0.59
0.62
0.66
⑦完全失業率
(%)
5.7
5.2
5.4
5.5
5.8
5.4
5.3
5.2
5.1
4.8
5.2
⑧住宅着工戸数
(前年比) △ 0.1
8.9
△ 8.4
12.9
3.6
7.7
17.2
8.4
3.6
4.9
8.2
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 1.3
△ 0.1
△ 2.1
△ 1.8
△ 1.3
△ 1.1
△ 0.4
△ 0.4
△ 0.1
△ 0.4
△ 0.3
(個人向け、前年比) △ 1.3
△ 1.0
△ 1.8
△ 1.9
△ 1.3
△ 1.5
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.0
△ 0.6
△ 0.3
(企業向け、前年比) △ 2.2
△ 0.2
△ 3.0
△ 2.6
△ 2.2
△ 1.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.2
△ 0.5
△ 0.5
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行福岡支店、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:九
州経済産業局、⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
3.③、④は沖縄を除く。
格回復には、まだ時間がかかりそうだ。
る。11年の大型小売店販売額(既存店ベース)
雇用情勢は、改善しつつも、引き続き厳し
は、前年比△2.0%と10年(△3.1%)に比べて
い 状 況 に 置 か れ て い る。 有 効 求 人 倍 率 は、
マイナス幅が縮小し、エコカー補助金の復活
09年7〜9月 の0.38倍 を ボ ト ム に、12年4〜6
などから、12年前半は乗用車販売が大幅に増
月には0.66倍に上昇したが、地域別には北海
加した。住宅投資は緩やかながらも持直しに
道(0.59倍)に次いで2番目に低い水準にと
転じており、12年4〜6月の住宅着工戸数は前
どまっている。また、完全失業率は、10年10
年比8.2%増と8四半期連続で増加している。
〜12月の5.8%をピークに低下基調にあるが、
信用金庫の貸出金は、低調な推移が続いて
12年4〜6月 で5.2% と 依 然 と し て 全 国 平 均
いるものの、景気の持直しの動きを受けて、
(4.4%)を大きく上回っている。
減少には歯止めがかかりつつある。12年6月末
個人消費は、震災直後に高額商品を中心に
の残高は、前年比△0.3%と11四半期連続で減
落ち込んだものの、総じて底堅く推移してい
少したが、減少率は小幅にとどまっている。
〈 参考文献 〉
信金中央金庫「中小企業景況レポート」
内閣府「地域経済動向」
日本銀行「地域経済報告」(さくらレポート)
調 査
63
(参考)全国の主要経済指標
10年
11年
10/Ⅱ
10/Ⅲ
10/Ⅳ
11/Ⅰ
11/Ⅱ
11/Ⅲ
11/Ⅳ
12/Ⅰ
12/Ⅱ
①日銀短観・業況判断D.I.
(全産業)
-
-
△15
△10
△11
△ 9
△18
△ 9
△ 7
△ 6
(製造業)
-
-
△10
△ 4
△ 4
△ 4
△15
△ 5
△ 5
△ 7
△ 4
△ 8
(非製造業)
-
-
△19
△13
△15
△11
△20
△12
△ 7
△ 5
△ 3
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
-
-
△39.7
△33.9
△32.2
△31.6
△38.4
△29.3
△25.3
△26.6
△21.6
(製造業)
-
-
△36.0
△30.7
△28.0
△28.0
△34.5
△25.7
△20.8
△24.2
△20.4
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
-
-
48.3
45.4
43.0
40.1
38.0
48.4
46.0
47.3
47.3
④鉱工業生産
(前期比)
-
-
0.7
△ 1.0
△ 0.1
△ 1.5
△ 4.2
5.4
0.4
1.3
△ 2.0
(前年比)
16.4
△ 2.3
21.3
14.0
5.9
△ 1.3
△ 5.8
△ 0.9
△ 1.6
4.8
5.3
(既存店、前年比) △ 2.6
△ 1.8
△ 3.5
△ 1.6
△ 0.5
△ 2.6
△ 1.6
△ 1.7
△ 1.3
1.3
△ 1.3
(百貨店、既存店、前年比) △ 3.0
△ 2.3
△ 3.8
△ 3.0
△ 0.6
△ 5.5
△ 1.5
△ 1.6
△ 0.6
3.9
△ 0.2
(倍)
0.52
0.65
0.51
0.54
0.57
0.61
0.62
0.66
0.69
0.75
0.81
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(%)
5.1
4.6
5.1
5.0
5.0
4.8
4.7
4.4
4.5
4.5
4.4
⑧住宅着工戸数
(前年比)
3.1
2.6
△ 1.1
13.8
6.9
3.2
4.1
7.9
△ 4.5
3.7
6.2
⑨信用金庫貸出金
(前年比) △ 0.9
△ 0.3
△ 1.2
△ 1.1
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.3
0.0
△ 0.2
(個人向け、前年比) △ 1.2
△ 0.2
△ 1.8
△ 1.7
△ 1.2
△ 0.8
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.0
0.0
(企業向け、前年比) △ 1.8
△ 1.0
△ 2.1
△ 2.0
△ 1.8
△ 1.5
△ 1.0
△ 0.8
△ 1.0
△ 0.3
△ 0.7
⑦完全失業率
(備考)1.各指標の出所は以下の通り。①:日本銀行、②および⑨:信金中央金庫、③:内閣府、④および⑤:経済産業省、
⑥:厚生労働省、⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.③は月次D.I.の単純平均
3.11年と11年Ⅰ〜Ⅲの完全失業率は総務省による補完推計値
(参考)日銀短観、信金中央金庫・中小企業景気動向調査の地域別一覧表
日銀短観
信金中央金庫・中小企業景気動向調査
全産業
製造業 非製造業
総合
製造業
卸売業
小売業 サービス業 建設業 不動産業
△ 4
△ 8
△ 3
△21.6
△20.4
△24.5
△33.6
△18.5
△16.3
△ 8.9
(△ 6)(△ 7)(△ 5)(△26.6)(△24.2)(△31.4)(△38.7)(△30.1)(△16.7)(△13.7)
△ 6
3
△ 9
△21.3
△23.0
△26.9
△26.6
△25.9
△10.7
0.0
(△ 13)(△ 8)(△ 15)(△28.4)(△28.9)(△31.1)(△30.2)(△27.6)(△25.9)(△20.0)
7
△ 4
14
△11.6
△21.2
△14.3
△24.2
△ 9.0
13.6
7.6
(
5)(△ 3)(
10)(△18.3)(△24.7)(△36.0)(△27.3)(△14.2)( 15.1)(△13.8)
全国
北海道
東北
北関東・
甲信越
△
(△
首都圏
3
△ 8
6)(△ 10)(△
△ 8
△
(△ 8)(△
△ 3
△
(△ 2)(
△ 9
△
(△ 9)(△
△ 11
△
(△ 12)(△
△ 7
△
(△ 10)(△
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州
九州北部
南九州
△
(△
6
△
3)(△
2
△
2)(△
10
△
10)(△
12
△
13)(△
9
△
9)(△
5
△ 8
△
6)(△ 10)(△
△21.0
△20.3
△20.1
△28.3
△11.4
△25.2
△14.7
0 (△25.9)(△25.9)(△26.2)(△29.1)(△30.2)(△21.2)(△22.7)
4) △23.2
△23.2
△22.8
△34.7
△20.8
△ 9.7
△15.6
(△29.4)(△27.7)(△28.3)(△43.4)(△33.3)(△12.3)(△14.9)
10
△29.3
△28.4
△33.3
△43.5
△29.1
△25.9
△ 8.6
12)(△38.0)(△32.1)(△49.0)(△46.9)(△37.3)(△34.8)(△32.8)
4
△19.8
△ 9.3
△28.5
△37.3
△17.1
△29.6
△ 7.9
6)(△19.6)(△11.6)(△29.8)(△39.2)(△19.1)(△21.0)(△ 1.7)
8
△22.3
△19.2
△26.7
△36.7
△15.7
△22.5
△ 7.2
10)(△27.9)(△23.6)(△32.1)(△40.4)(△29.6)(△24.5)(△19.7)
11
△25.5
△26.9
△32.0
△44.8
△ 9.9
△25.8
0.0
11)(△26.1)(△28.2)(△37.8)(△39.1)(△25.3)(△18.1)( 7.1)
7
△26.6
△24.2
△23.4
△36.8
△29.3
△25.8
△20.5
10)(△25.9)(△19.1)(△32.8)(△40.3)(△35.2)(△23.1)(△ 8.7)
△15.8
△22.3
△12.5
△24.1
△10.5
△10.8
△ 5.5
3 (△21.8)(△16.6)(△24.3)(△32.8)(△34.3)(△15.6)(△11.3)
5) △19.9
△12.3
△26.0
△32.0
△19.0
△25.4
△ 4.3
(△24.2)(△23.5)(△29.5)(△38.1)(△39.3)(△ 4.7)(△ 7.9)
(備考)1.日銀短観は12年6月調査(カッコ内は3月調査)。信金中央金庫・中小企業景気動向調査は12年4〜6月(カッコ内
は1〜3月)
2.日本銀行、信金中央金庫資料より作成
64
信金中金月報 2012.10
調
査
経済見通し
実質成長率は12年度2.2%、13年度1.9%と予測
−復興需要を下支えに日本経済は回復基調を維持−
信金中央金庫 地域・中小企業研究所上席主任研究員
角田 匠
(要 旨)
1.12年4〜6月の実質GDPは前期比0.3%増(年率1.4%増)
個人消費は前期比0.1%増と5四半期連続で増加した。復興事業の本格化で公共投資は1.7%
増と前期(3.6%増)に続いて高めの伸びを維持した。一方、欧州経済の停滞で輸出の増勢が
鈍化したため、輸出から輸入を差し引いた純輸出は実質成長率を0.1%ポイント押し下げた。
2.復興需要を下支えに日本経済は回復基調を維持
当面の景気は輸出の伸び悩みやエコカー補助金終了後の反動減などで減速すると予想され
る。ただ、米景気の回復テンポが高まると想定している年度下期以降、輸出は徐々に回復の
動きを取り戻し、生産活動も上向こう。欧州債務危機に伴う世界経済の減速、円高の長期化
が引き続きリスク要因となるが、日本経済は今後も復興需要を支えに回復基調を維持しよう。
3.実質成長率は12年度2.2%、13年度1.9%と予測
実質成長率は12年度2.2%と前回予測値を据え置いた。海外経済の減速に伴う輸出の伸び悩
みは想定の範囲内であり、復興需要の本格化を下支えに景気回復が続くとの見方に変化はな
い。13年度は前回予測の1.7%から1.9%へ上方修正した。今回から消費税率の引上げ(14年4
月に8%、15年10月に10%)を予測の前提に加えたため、13年度下期にかけて個人消費を中
心に増税前の駆込み需要が発生すると想定した。
4.デフレ圧力は根強く、実質ゼロ金利政策は長期化する公算大
日銀は4月27日の金融政策決定会合で「資産買入等の基金」を70兆円に増額して以来、追加
金融緩和を見送っている。ただ、デフレ圧力は依然として根強く、12〜13年度の消費者物価上
昇率は「中長期的な物価安定の目途」である1%を下回る見通しである。日銀は今後も金融緩
和スタンスを強化する可能性が高く、利上げ開始は14年度以降にずれ込むと予想される。
(注)本稿は2012年8月13日時点のデータに基づき記述されている。
調 査
65
図表1 GDP成長率の推移と予測
(単位:%)
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
前回
(12年5月)
〈実績〉
〈実績〉
〈実績〉
〈予測〉 〈予測〉 12年度(予) 13年度(予)
△ 0.0
2.2
1.9
2.2
1.7
実 質 G D P
△ 2.1
3.3
個 人 消 費
1.2
1.6
1.2
1.6
1.4
1.2
0.9
住 宅 投 資
△ 21.0
2.6
3.8
3.9
3.8
5.3
2.1
設 備 投 資
△ 12.0
3.9
1.1
3.8
4.6
2.6
5.4
公 共 投 資
11.5
△
6.0
2.9
7.1
△
5.8
9.7
△
6.7
純輸出(寄与度) (
0.2)(
0.8)(△
1.0)(△
0.1)(
0.5)(
0.0)(
0.7)
名 目 G D P
△ 3.2
1.2
△ 2.0
1.5
1.8
1.7
1.6
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成。予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所
1.12年4〜6月 の 実 質GDPは 前 期 比
0.3%増(年率1.4%増)
輸出は前期比1.2%増と1〜3月(3.4%増)に
比べて増勢が鈍化した。米国向け輸出は、自
動車をけん引役に底堅く推移したものの、欧
12年4〜6月の実質GDPは、前期比0.3%増、
州向け輸出の不振で輸出全体では伸び悩ん
年率に換算して1.4%増と4四半期連続で増加
だ。一方、輸入は、火力発電用のLNG(液化天
した。ただ、景気の実感に近い名目GDPは、
然ガス)
や原油を中心に増加が続いた。この結
前期比0.1%減(年率0.6%減)と再びマイナ
果、輸出から輸入を差し引いた純輸出は、実
スに転じた(図表2)。
質 成長 率を0.1%ポイント押し下げる要因と
4〜6月の動きを需要項目別(実質)にみ
なった(年率では0.3%ポイントの押下げ要因)
。
る と、 個 人 消 費 は 前 期 比0.1% 増 と1〜3月
GDPデフレーターは前年比1.1%の下落と
(1.2%増)に比べて増勢は鈍化したものの、
1〜3月(1.3%下落)に比べてマイナス幅は
5四半期連続で増加した。エコカー補助金の
縮小したが、11四半期連続で前年同期の水
効果で自動車販売の好調が続いたほか、娯楽
準を下回った。
や旅行などサービス関連消費が底堅く推移し
た(図表3)。住宅投資は前期比0.8%増と2四
半期ぶりに増加した。住宅エコポイントによ
る政策効果に加え、被災地での住宅再建が
徐々に進み始めたことが寄与した。
設備投資は前期比1.5%増加した。世界経
済に対する先行き不安から投資を手控える動
きもみられるが、震災後に見送った投資の再
開や電源設備の新増設などが下支えとなって
いる。被災地での復興事業が本格化してお
り、公共投資は前期比1.7%増と前期(3.6%
増)に続いて高めの伸びを維持した。
66
信金中金月報 2012.10
図表2 実質GDPの前期比年率と寄与度
(%)
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
-14
-16
-18
純輸出
公的需要
民間需要
実質GDP
名目GDP
08
09
10
11
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成
12
(年)
図表3 個人消費関連指標(前年比増減率)
11年
12年
7〜9月 10〜12月 1〜3月 4〜6月
全 世 帯 実 質 消 費 △ 2.8 △ 1.0
平均消費性向(勤労者)
乗
1.1
(単位:%)
11年
10月
12年
11月
12月
2.7 △ 0.4 △ 3.2
1月
0.5 △ 2.3
2月
3月
4月
5月
6月
2.3
3.4
2.6
4.0
1.6
73.1
74.2
71.8
74.1
72.7
74.1
74.5
73.7
72.2
72.9
73.0
74.6
72.0
売 △17.8
24.6
50.3
66.0
27.5
25.1
20.9
38.4
31.7
76.3
99.5
68.6
46.8
(普通+小型乗用車) △19.8
25.2
54.3
59.0
28.3
23.9
23.4
42.7
33.1
82.0
92.6
64.0
39.8
(軽乗用車) △12.8
23.2
42.6
79.6
25.9
27.8
16.1
30.7
29.0
64.6
111.4
76.8
62.3
0.7 △ 1.2 △ 0.5
14.2
用
車
販
百 貨 店 販 売 額 △ 1.6 △ 0.6
3.9 △ 0.2 △ 0.8 △ 2.2
ス ー パ ー 販 売 額 △ 1.7 △ 1.7 △ 0.1 △ 1.9 △ 1.7 △ 2.7 △ 0.9 △ 1.2
0.6
商 業 販 売 ・ 小 売 業 △ 1.0
1.5 △ 0.9 △ 1.2
0.5 △ 1.6 △ 0.7 △ 3.3
0.8
5.2
3.1
1.9 △ 2.2
2.5
1.8
3.4
10.3
5.7
3.6
3.4
5.7
1.7
3.2
4.4
1.4
0.3
15.6
4.3
1.1 △ 0.3
(衣類・身の回り品)
1.1
(飲料・食料品)
1.4
0.5
2.1
0.6
(自動車) △12.6
19.1
33.1
45.9
2.4
1.0 △ 0.1
22.8
19.8
0.7
0.6
2.4
3.2
1.2
14.9
24.1
21.3
50.4
55.3
0.2
0.8 △ 0.3
47.2
37.2
(家庭用機械) △ 9.4 △32.4 △13.4 △25.4 △30.3 △51.9 △ 9.5 △12.3 △16.1 △12.2 △18.3 △23.9 △32.4
(燃料)
2.4
3.6
3.5
(その他)
1.3
1.3
2.6 △ 0.1
-
-
外 食 産 業 売 上 高
-
1.4
-
5.7 △ 0.8
5.0
6.1
7.5
2.4 △ 6.1
2.3 △ 0.1
3.6
1.1
1.8
0.0
1.4
6.4
1.2
0.6 △ 2.1
0.5
1.8
0.0
1.0
13.1
1.0
3.4 △ 1.5
2.6
(備考)1.平均消費性向は季節調整済みの実数。百貨店、スーパーは既存店、外食産業売上高は全店ベース
2.総務省『家計調査報告』
、経済産業省『商業販売統計』などより作成
2.復興需要を下支えに日本経済は回
復基調を維持
(1) 輸出の伸び悩みで当面の景気回復ペー
スは緩慢
か月連続で前月の水準を下回り、4〜6月合
計では前期比2.0%減と4四半期ぶりに減少し
た(図表4)。大震災やタイの洪水からのば
ん回生産が一巡したことが主因とみられる
が、欧州や中国向け輸出の低迷も響いてい
12年4〜6月の実質成長率は前期比年率で
る。製造工業生産予測指数は、7月が前月比
1.4%と1〜3月(年率5.5%)に比べて成長ペー
4.5%増、8月が0.6%減と持ち直す見通しだ
スは鈍化したものの、うるう年効果で押し上
げられた前期の反動を考慮すると底堅い動き
図表4 鉱工業生産指数と輸出数量指数の推移
(05年=100)
を維持したといえる。もっとも、東日本大震
125
災からの復興需要やエコカー補助金といった
115
120
政策効果に支えられた側面が強く、日本経済
110
の自律回復力は依然として弱い。今後も復興
100
105
需要を下支えに景気は回復基調を維持しよう
95
が、欧州景気の停滞による輸出の伸び悩みや
85
90
エコカー補助金終了後の反動減などで、先行
80
きの成長ペースは鈍化する公算が大きい。
70
鉱工業生産は、12年1〜3月に前期比1.3%
増と3四半期連続で増加したが、4〜5月は2
輸出数量指数
75
65
生産
予測
鉱工業生産
東日本大震災
11年3月
08
09
10
11
12
(年)
(備考)経済産業省、内閣府資料より作成
調 査
67
が、素材などへの波及効果が大きい輸送機械
図表5 仕向け先別の輸出数量指数の推移
が横ばい圏の計画(7月0.1%減、8月1.2%増)
140
にとどまるなど、当面の生産活動は力強さを
130
欠いた動きが続くとみられる。
120
生産活動の回復に弾みが付かない最大の要
(05年=100)
110
100
因は輸出の伸び悩みである。輸出数量指数
90
(季節調整済み)の動きをみると、タイの洪
80
水による供給制約が解消した年明け以降、米
国向け自動車輸出の回復も加わって持ち直し
たものの、5月は前月比1.8%減、6月は4.1%
減と足元では再び弱含みの動きとなってい
アジア
米国
70
60
EU
50
40
08
09
10
11
12 (年)
(備考)内閣府資料より作成
る。欧州債務危機の深刻化で世界経済が減速
していることが主因であり、特に震源地であ
動きが続こうが、年度下期以降は米国向けの
る欧州景気の停滞が影響している。
自動車とアジア向けの電子部品をけん引役に
EU向けの輸出数量指数は、欧州債務問題
回復の動きを取り戻し、つれて生産活動も上
が深刻化した昨年10〜12月に前期比マイナ
向いてくると予想される。
スに転じ、1〜3月は前期比0.9%減、4〜6月
4〜6月の設備投資(GDPベース)は2四半
は5.1%減と3四半期連続で減少した。一方、
期ぶりに前期比プラスに転じたが、設備投資
米国向け輸出数量は、自動車輸出をけん引役
の先行指標である機械受注(船舶・電力を除
に4〜6月まで4四半期連続の前期比プラス、
く民需)は、4〜6月に前期比4.1%減とマイ
スマートフォン(多機能携帯電話)向けの電
ナスに転じ、7〜9月の受注見通しも1.2%減
子部品需要が回復しつつあるアジア向けの輸
となった(図表6)。欧州債務危機の深刻化
出数量は、小幅ながら2四半期連続のプラス
を背景とする世界経済の減速などで、企業の
と回復基調を維持している(図表5)。
投資スタンスが慎重化しているとみられる。
先行きについても、欧州向け輸出は弱含み
もっとも、震災後に先送りした設備投資を
で推移すると予想され、輸出全体を下押しす
再開する動きが広がっており、12年度全体
る要因となろう。ただ、欧州の危機対応は
では設備投資の増加を計画する企業が多い。
徐々にではあるが前進しており、年度下期に
また、全国的な電力不足に対応するために、
は過度な悲観論の後退で、欧州経済の悪化に
自家発電設備を新増設する動きも散見され
も歯止めがかかると予想される。足元で減速
る。日銀短観6月調査によると、12年度の大
している米景気も再び回復の勢いを取り戻す
企業の設備投資計画は前年比6.2%増と5年ぶ
とみられる。輸出全体は秋頃まで一進一退の
りの増加を見込んでいる。
68
信金中金月報 2012.10
図表6 名目設備投資と機械受注(年率換算)
(兆円)
(兆円)
80
機械受注
(船舶・電力を除く民需)
右目盛
78
76
74
機械受注
7∼9月
見通し
14
13
図表7 大震災後の実質公共投資の推移
(震災時=100)
120
阪神大震災後
115
12
72
70
11
110
復興事業が本格化
68
10
66
64
9
62
60
58
56
設備投資
(名目GDPベース)
左目盛
105
100
東日本大震災後
8
7
96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (年)
(備考)内閣府資料より作成
95
95年1-3月
11年1-3月
7-9月
7-9月
96年1-3月 4-6月
12年1-3月 4-6月
7-9月
7-9月
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成
個人消費は堅調に推移している。エコカー
被災地での復興事業の本格化で、公共投資
補助金の効果で自動車販売の好調が続いてい
の増加が続いている。実質GDPベースの公共
ることに加え、娯楽や旅行などのサービス関
投資は12年1〜3月に3四半期ぶりに増加し、4
連消費も引き続き底堅い。しかし、エコカー
〜6月も前期比1.7%増と堅調な伸びを示した
補助金は9月中に終了する見通しで、その後
(図表7)
。東日本大震災からの復旧・復興対策
は反動減が懸念される。失業率の低下が続く
として編成された補正予算と12年度予算に計
など雇用情勢が緩やかながらも改善している
上された経費の合計は18.9兆円(復興庁資料)
ことや、被災地での復興関連消費も下支えと
に達した。阪神大震災後の95年中に編成され
なることで、個人消費が急減速する可能性は
た3回の補正予算(合計3.2兆円)と比較しても
小さいが、今年前半に比べると増勢は鈍化し
大規模なものであり、今後も復興事業を中心
よう。
とした公共投資は景気の回復に寄与しよう。
また、政府による復興事業に続いて、被災
(2) 復興需要を下支えに日本経済は回復基
調を維持
地を中心に住宅を再建する動きも出始めてい
る。欧州債務危機の影響で世界経済は減速し
輸出の伸び悩みやエコカー補助金終了後の
ているものの、12年度の日本経済は、復興
反動減などで、当面の景気はやや減速すると
事業の本格化を下支えに景気回復の動きを維
みられるが、震災後の復興需要が下支えと
持すると予想される。
なっており、景気の回復基調は今後も維持さ
もっとも、景気の下振れリスクは依然とし
れよう。
て払拭できない。欧州債務危機は経済規模の
調 査
69
大きいスペインにも広がり始めており、対応を
人消費を下支えに景気回復が続くとの見方に
誤れば債務問題は混迷を深め、世界経済の一
変化はない。13年度は前回予測の1.7%から
段の減速や円高進行などから、企業行動が慎
1.9%へ上方修正した。今回から消費税率の
重化する可能性がある。国内では電力不足の
引上げ(14年4月に8%、15年10月に10%)を
問題が解決していない。大飯原発(関西電力)
予測の前提に加えたため、13年度下期にか
による発電が再開されたものの、定期検査中
けて個人消費を中心に増税前の駆込み需要が
の原子力発電所の再稼働を巡る調整は引き続
発生すると想定した。
き難航している。慢性的な電力不足が懸念さ
12年度の景気は復興需要の本格化に支えら
れるうえ、火力発電での代替が続けば、全国的
れ、回復基調を維持しよう。足元では被災地
に電気料金が引き上げられる可能性が高まる。
での復興事業が本格化しており、12年度の公
欧州債務危機の行方や原発を中心とするエネ
共投資は前年比7.1%増、政府最終消費を含
ルギー問題には引き続き注意が必要となろう。
めた公的部門全体では実質成長率を0.6%ポイ
3. 実質成長率は12年度2.2%、13年
度1.9%と予測
ント押し上げると予測した。民間部門では住
宅関連の復興需要が見込まれる。津波の被害
が大きかった沿岸部では、高台移転による住
実 質 成 長 率 は12年 度2.2% と 前 回 予 測 値
宅地の集約化などで住民との合意形成に時間
(11年5月時点)を据え置いた(図表8)。海
を要しているが、被災地全体でみると住宅再
外経済の減速に伴う輸出の伸び悩みは想定の
建は徐々に進むとみられる。住宅投資は前年
範囲内であり、復興需要の本格化と底堅い個
比3.9%増と堅調な伸びが見込まれる。
図表8 実質GDP成長率の推移と予測
(%)
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
-3.0
-3.5
-4.0
<実質成長率と需要項目別寄与度
(年度)
>
(兆円)
予測
純輸出
公的需要
民間需要
実質GDP
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
(年度)
545
540
535
530
525
520
515
510
505
500
495
490
485
480
予測
08年度
(△3.7%)
11年度
(△0.0%)
09年度
(△2.1%)
信金中金月報 2012.10
13年度
(1.9%)
12年度
(2.2%)
10年度
(3.3%)
07年度 08年度 09年度 10年度 11年度 12年度 13年度
(備考)内閣府資料より作成。予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所
70
<四半期ベースの実質GDPの推移>
南欧諸国の債務危機と景気悪化で欧州向け
に転じることが下押し要因となるが、一方
の輸出は引き続き低迷しよう。ただ、年度下
で、消費税率の引上げ(14年4月に5%→8%)
期には欧州経済の悪化に歯止めがかかり、中
を前にした駆込み需要が成長率を押し上げる
国や米国経済は徐々に成長ペースを高めてい
要因となろう。
くと想定している。足元の輸出は伸び悩んで
いるものの、年度下期以降は米国向けの自動
車とアジア向けの電子部品をけん引役に回復
の動きを取り戻そう。12年度の輸出は前年比
(1) 前提条件 ― 為替相場、原油価格、財政
政策、海外経済
(為替相場)
5.0%増と予測した。一方、原発の再稼働を巡
円相場は3月15日に一時1ドル84円台まで
る調整の遅れから火力発電用のLNG(液化
下落したものの、米景気に対する楽観的な見
天然ガス)や原油の輸入が引き続き増加する
方が後退するとともに相場の流れは再び円高
公算が大きい。この結果、輸出から輸入を差
方向に転じた。5月にはギリシャ総選挙を受
し引いた純輸出の寄与度は△0.1%ポイント
けて欧州の債務問題に対する懸念が高まった
と、11年度(△1.0%ポイント)に続いてマイ
ことから、投資マネーは逃避先通貨とされる
ナスになると予想される。
円に向かい、1ドル79円台まで円高ドル安が
震災後の自粛ムードの緩和とともに持ち直
進んだ。さらに、6月1日に発表された米雇
した個人消費は足元でも底堅く推移してい
用統計が低調だったことからドル売り圧力が
る。しかし、エコカー補助金は9月中に終了
強まり、円相場は同日の米国市場で一時1ド
する見通しで、その後は反動減が懸念され
ル77円台まで買い進まれた。その後、ユー
る。被災地での復興関連消費が引き続き下支
ロ圏に対する過度な悲観論が後退したことか
えとなることで、個人消費が急減速する可能
らドルやユーロを買い戻す動きもみられた
性は小さいが、今年前半に比べると増勢は鈍
が、日銀が7月11〜12日の金融政策決定会合
化しよう。12年度の個人消費は前年比1.6%
で追加緩和を見送ったことをきっかけに再び
増と予測した。
円高圧力が強まった。8月3日に発表された
13年度は、世界経済の持直しを受けて輸
米雇用統計は市場の予想を上回ったものの、
出の回復に弾みが付こう。安全が確認された
米国のQE3(量的緩和第3弾)観測は依然と
原発の再稼働などで燃料輸入の増加に歯止め
して根強く、ドルを買い戻す動きは広がって
がかかり、13年度の純輸出の寄与度は0.5%
いない。当面も円高圧力の強い相場展開が続
ポイントと3年ぶりのプラスに転じると予測
くと予想される。もっとも、日銀による追加
した。企業マインドの改善で設備投資にも回
金融緩和への期待や、政府・日銀による介入
復の動きが広がると予想される。復興事業の
への警戒感などもあって、昨秋のように一方
一巡で公共投資を中心とする政府支出が減少
的な円高が進む可能性は小さい。為替相場の
調 査
71
カギを握る米国経済は徐々に成長ペースを高
(財政政策)
めていくと想定しており、来年にかけてドル
東日本大震災からの復旧・復興対策を中心
を買い戻す動きが広がると予想される。13
に、11年度は4度の補正予算が編成された。
年度にかけて行き過ぎた円高は緩やかに是正
このうち復興関係予算は、12年度予算に計
されよう。年度平均の為替レートは、12年
上された経費を含めて18.9兆円に達した(復
度1ドル81円、13年度86円と想定した。
興庁資料)。被災地での復興事業は本格化し
(原油価格)
ており、今後も公共投資が景気を下支えする
原油価格(WTI)は、米景気の減速や欧
と予想される。復興債(11年度第3次補正予
州債務危機に対する懸念が強まった5月上旬
算の財源)の償還財源の柱となる所得税増税
に1バレル100ドルを割り込んだ。その後も
(所 得 税 額 の2.1%、25年 で7.5兆 円 の 増 税 )
欧州債務危機の深刻化による世界経済への悪
は13年1月から実施されるが、増税期間は復
影響が懸念され、投資家のリスク回避姿勢は
興 債 の 償 還 期 間 と 同 じ25年 と な っ た た め、
一段と強まった。5月23日には1バレル90ド
単年度の景気に与える影響は軽微にとどまろ
ルを割り込み、経済指標の悪化や欧米銀行の
う。 た だ、 消 費 税 率 が14年4月 に8%、15年
格 下 げ が 重 な っ た6月21日 に は80ド ル を 下
10月に10%へ引き上げられる見通しで、13
回った。6月28日には、米国の経済指標が低
年度後半に駆込み需要が膨らんだ後、14年
調だったことから、1バレル77ドル台へ下落
度はその反動と実質購買力の低下で個人消費
した。7月もスペインの財政不安に伴うリス
や住宅投資に強い下押し圧力がかかるとみら
ク回避の動きが続いたが、欧州や中国、ブラ
れる。
ジルなどに続いて米国も金融緩和に踏み切る
との見方が広がり、流動性相場への期待から
(海外経済)
〈米国〉…12年4〜6月の実質成長率は前期
原油相場は上昇に転じた。7月中旬には中東
比年率1.5%(事前推定値)と1〜3月(2.0%)
情勢の緊張が高まったことも買い材料とな
に続いて、潜在成長率(2.5%程度)を下
り、 原 油 価 格 は1バ レ ル90ド ル 台 を 回 復 し
回る伸びにとどまった。住宅投資が9.7%
た。もっとも、世界経済の先行き不透明感は
増と高めの伸びを維持したものの、GDP
根強く、一段高を目指す展開ではない。当面
の7割を占める個人消費が1.5%増と1〜3月
は一進一退の相場が続くとみられる。来年に
(2.4%増)から減速した。雇用の回復テン
かけては米景気が回復テンポを徐々に高め、
ポが鈍く、消費者の購買意欲は盛り上がり
原油需要も緩やかに上向くと想定している。
を欠いているため、個人消費は当面も緩慢
経済見通しの前提となる原油価格(通関ベー
な回復にとどまる可能性がある。欧州債務
ス ) は、12年 度1バ レ ル112.0ド ル、13年 度
危機で企業マインドが慎重化していること
113.0ドルと想定した。
も景気減速の一因である。ただ、リーマ
72
信金中金月報 2012.10
ン・ショック後の過剰債務や住宅価格の調
13年0.7%と予測した。
整はほぼ一巡しており、景気の本格回復に
〈中国〉…12年4〜6月の中国の実質成長率
向けた準備は着実に進んでいる。欧州債務
(前年比) は7.6%と1〜3月の8.1%から鈍
危機への対応が進み、世界経済に対する過
化した。欧州向け輸出の低迷が続き、景気
度な不安が後退すれば、米景気は再び回復
のリード役である輸出が伸び悩んだことが
の勢いを取り戻すと予想される。来年にか
影響している。個人消費は高い伸びを維持
けて雇用情勢が安定したペースで回復し、
しているものの、けん引役だった自動車販
個人消費はペントアップ・デマンド(不況
売の減速で、全体としては勢いを欠いてい
期に抑制された需要)の顕在化で伸びを高
る。こうした景気の減速を受けて、中国人
めよう。住宅投資も持続的な回復局面に入
民銀行は6月から2か月連続の利下げに踏
り、13年にかけて米国経済の成長ペース
み切った。物価が安定した状況を維持して
は徐々に加速すると予想される。実質成長
いることから、今後も利下げや預金準備率
率は、12年2.3%、13年2.7%と予測した。
の引下げなどの緩和措置が実行される可能
〈欧州〉…ドイツ経済は減速傾向ながらも、
性が高い。政府による景気テコ入れ策の効
ユーロ圏経済のなかでは相対的に良好な状
果もあって、中国経済は年後半から13年
態を維持している。一方、厳しい緊縮財政
にかけて徐々に回復の勢いを取り戻そう。
を強いられているイタリアやスペインなど
実質成長率は、12年8.0%、13年8.5%と予
南欧諸国の景気は後退局面に入っている。
測した。
ギリシャ情勢の混乱に伴う債務問題の再燃
などで南欧諸国の景気は今後も低迷が続く
とみられ、ドイツ経済にも域内輸出の伸び
(2) エコカー補助金の終了で年度下期の個
人消費の増勢は鈍化
悩みによる悪影響が波及しつつある。もっ
個人消費のカギを握る雇用情勢は緩やかに
ともドイツの雇用情勢は依然として良好
改善している。12年6月の失業率は4.3%と昨
で、個人消費は堅調に推移している。ま
年9月に記録した4.2%以来の低水準となっ
た、ユーロ安の進行で域外への輸出競争力
た。復興需要の本格化で被災地での雇用情勢
は高まっており、新興国や米国向けの輸出
が改善しているほか、輸出が回復している自
は底堅い。南欧経済の低迷長期化がリスク
動車産業や、娯楽や飲食などサービス関連分
要因ながらも、ドイツ経済はリセッション
野の労働需要が上向いているためである。
を回避できると予想される。ドイツの実質
雇用環境の改善は家計の消費マインドにも
成 長 率 は12年0.5%、13年1.3% と 予 測 し
好影響を与えており、個人消費の回復に寄与
た。ユーロ圏については南欧諸国の景気後
している。4〜6月の個人消費も、レジャー
退 の 影 響 で、 実 質 成 長 率 は12年 △0.5%、
や娯楽、外食などサービス関連が堅調に推移
調 査
73
した。また、エコカー補助金の復活による効
カー補助金終了に伴う反動減が打ち消される
果も大きく、補助金再開後の乗用車販売は堅
公算が大きい。13年度の個人消費は前年比
調に推移している(図表9)。
1.4%増と予測した。
しかし、エコカー補助金は9月中に終了す
る見通しで、その後は反動減が懸念される。
失業率の低下が続くなど雇用情勢が緩やかな
(3) 復興需要を支えに住宅投資は緩やかに
回復へ
がらも改善していることや、被災地での復興
住宅着工戸数(季節調整済み年率)は、11
関連消費も下支えとなることで、個人消費が
年10〜12月 に 年 率79.8万 戸 へ 減 少 し た 後、
急減速する可能性は小さいが、今年前半に比
12年1〜3月は85.7万戸、4〜6月は88.1万戸と
べると増勢は鈍化しよう。12年度の個人消
2四半期連続で増加した(図表10)。住宅エコ
費は前年比1.6%増と予測した。
ポイントによる下支え効果に加え、被災地で
13年度の個人消費は、エコカー補助金で
の住宅再建が進み始めたことが背景にある。
押し上げられた12年度の反動や復興関連消
住宅エコポイントの受付が7月4日に終了
費の一巡などがマイナス要因となる。ただ、
(被災地での終了時期は10月末を目途)した
14年4月には消費税率が8%へ引き上げられ
ことで、短期的には駆込み着工の反動減が予
る見通しで、13年度下期にかけて増税前の
想されるが、今後も震災で全半壊した住宅
駆込み需要が発生すると予想される。乗用車
(東日本大震災による住宅被害は、8月8日時
販売については、駆込み需要の発生でエコ
点で全壊12.9万戸、半壊26.4万戸)の再建が
図表9 乗用車販売台数(季節調整済み年率)
図表10 住宅着工戸数(年率、四半期)
(万戸)
(年率:万台)
600
エコカー補助金打切り前
10年8月
550
エコカー補助金再開
11年12月
110
100
500
7月
450
80
60
50
350
40
リーマン・ショック
08年9月
300
250
30
20
東日本大震災
11年3月
08
09
10
10
11
(備考)1.信金中央金庫による季節調整値
2.自動車販売連合会資料より作成
74
90
70
400
200
分譲住宅
給与住宅
貸家
持家
120
信金中金月報 2012.10
12
(年)
0
08
09
10
(備考)国土交通省資料より作成
11
12
(年)
続く見通しである。津波による被害が大き
かった沿岸部では、高台移転による住宅地の
図表11 日銀短観の設備投資計画(大企業)
(当初計画→実績、前年比)
(%)
集約化などで住民との合意形成に時間を要し
12
ているが、被災地全体でみると、住宅を再建
9
する動きは着実に広がろう。12年度の住宅
投資は前年比3.9%増と予測した。
13年度も被災した住宅の再建が続くこと
に加え、消費税率引上げ前の駆込み着工も見
込まれる。13年度の住宅投資は3.8%増と増
実績
4.5
3
-3
1.5
1.5
-0.6
1.0
-0.8 -0.6
-6
-4.7
-9
-8.9 -8.4
計画
(6月調査)
6.2
7.2
6
0
10.0
当初計画
4.9
2.7 2.9
0.0
-0.4 -0.4-1.3
-1.9
-1.6
-6.6
-6.6
-12
加が続こう。住宅着工戸数は12年度88万戸、
-15
13年度91万戸と予測した。
-18
-13.6
-17.0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
(年度)
(4) 設備投資は回復傾向が続こうが、円高
(備考)日銀短観より作成
や電力不足が下押し要因
12年4〜6月の設備投資(GDPベース)は2
た。プラスになれば、5年ぶりの増加である
四半期ぶりに前期比プラスに転じたが、設備
(図表11)。足元の機械受注は弱含んでいる
投資の先行指標である機械受注(船舶・電力
ものの、設備投資の回復基調は崩れていない
を除く民需)は、4〜6月に前期比4.1%減と
と考えられる。
マ イ ナ ス に 転 じ、7〜9月 の 受 注 見 通 し も
ただ、円高が長期化していることに加え、
1.2%減となった。欧州債務危機の深刻化を
全国的な電力不足と電力料金の値上げなど、
背景とする世界経済の減速で、投資スタンス
国内での投資を抑制する要因は少なくない。
が慎重化しているとみられる。
工場の新設など増産投資については海外へシ
もっとも、震災後に先送りした設備投資を
フトする動きが広がっている。設備投資は中
再開する動きが広がっており、12年度全体で
期的にも回復基調で推移しようが、その回復
は設備投資の増加を計画する企業が多い。ま
ペースは緩やかにとどまると予想される。
た、全国的な電力不足に対応するために、自
実質GDPベースの設備投資は、12年度が
家発電設備を新増設する動きも散見される。
前年比3.8%増、13年度が4.6%増と回復が続
リーマン・ショック後から手控えられてき
こうが、リーマン・ショック前の07年度の水
た更新投資も設備投資の回復を下支えしよ
準には届かないと予測した。
う。日銀短観の12年度設備投資計画をみる
と、3月調査で前年比0.0%だった大企業の計
画 は、6月 調 査 で は6.2% 増 に 上 方 修 正 さ れ
調 査
75
4.デフレ圧力は根強く、実質ゼロ金
利政策は長期化する公算大
(1) 国内需給を反映する米国式コア指数は
水面下の動きが続く
図表12 消費者物価指数の前年比
(%)
コア指数
0.5
0.0
-0.5
12年6月のコア消費者物価(生鮮食品を除
く総合)は前年同月に比べて0.2%下落した
(図表12)。原油価格の下落に伴ってガソリ
ン価格が2年7か月ぶりに前年水準を下回っ
たことや電力・ガス料金の上昇率が縮小して
いることなどが主因であるが、国内の需給
-1.0
米国式コア
-1.5
-2.0
11/1 3
5
7
9
11 12/1
3
5
(年/月)
(備考)総務省資料より作成
ギャップに起因するデフレ圧力の根強さが背
景にある。
ガソリン価格などに影響されない米国式コ
起因したデフレ圧力は徐々に和らいでいくと
ア指数(食料・エネルギーを除く総合指数)
予想される。行き過ぎた円高もある程度是正
をみると、テレビやエアコンの調査銘柄の変
されると想定しており、13年度のコア指数
更で年初から下落率が縮小したものの、5月
は前年比0.2%の上昇と予測した。もっとも、
には再びマイナス幅が拡大し、6月も前年比
米国式コア消費者物価は下げ止まる程度であ
で0.6%下落した。
り、13年度もデフレ脱却を確認することは
今後も日本経済は復興需要を支えに回復基
難しいと予想される。
調を維持すると想定しているが、需給ギャッ
なお、原子力発電所の稼働停止に伴う火力
プは依然として大きく、円高の長期化なども
発電比率の上昇で、東京電力以外の電力会社
あってデフレからの脱却には時間を要すると
でも発電コストが大幅に上昇している。現時
考えられる。足元の原油市況が反発している
点では東京電力以外の電力料金の本格改定は
ことや、東京電力管内における家庭向け電力
見込んでいないが、原発の再稼働が広がらな
料金の値上げ(平均8.46%)で、エネルギー
い場合には、全国的に電力料金が引き上げら
価格は再び物価を押し上げる要因となろう
れる可能性もある。
が、財・サービス全般の物価は弱く、全体で
GDPデフレーターは、12年度が0.7%の下
は横ばい圏で推移しよう。12年度のコア指
落、13年度が0.1%の下落と16年連続(98〜
数は前年比0.1%の下落、米国式コア指数は
13年度)のマイナスと予測した。
0.4%の下落と予測した。
13年度は景気回復の持続で、国内需給に
76
信金中金月報 2012.10
(2) 実質ゼロ金利からの政策転換は14年度
以降
い。世界的に金融緩和の動きが広がるなか、
日銀の相対的な緩和姿勢の弱さは最近の円高
日銀は、4月27日の金融政策決定会合で量
の一因にもなっており、デフレ脱却と行き過
的緩和を強化し、「資産買入等の基金」の規
ぎた円高の是正に向けた金融緩和策の強化が
模を65兆円程度から70兆円程度に拡大した
求められている。
が、その後は様子見スタンスを維持してい
日銀は、「中長期的な物価安定の目途」を
る。7月11〜12日の決定会合に続き、8月8〜
消費者物価上昇率でみて1%と明示し、「そ
9日に開催された決定会合でも金融政策の変
れが見通せるようになるまで、強力に金融緩
更は見送られた。
和を推進していく」と言明しているだけに、
ただ、依然としてデフレ圧力の強い状態が
今後も断続的に金融緩和スタンスを強化する
続いている。日本経済は今後も緩やかな回復
公算が大きい。13年度末までに消費者物価
が続くとみられるが、需給ギャップの解消は
上昇率が1%に到達する可能性は低く、少な
容易ではなく、デフレからの脱却にはなお時
くとも予測期間中は実質ゼロ金利政策が維持
間を要すると考えられる。円高の影響で、安
されよう。日銀による利上げ開始は14年度
価な輸入製品の流入を通じたデフレ圧力も強
以降にずれ込むと予想される。
調 査
77
〈12年度、13年度の日本経済予測(前年度比)
〉
名目GDP
実質GDP
国内需要
民間部門
民間最終消費支出
民間住宅投資
民間企業設備
民間在庫品増加
政府部門
政府最終消費支出
公的固定資本形成
財・サービスの純輸出
財・サービスの輸出
財・サービスの輸入
(単位:%、十億円)
09年度
10年度
〈実績〉
〈実績〉
△
△
△
△
3.2
2.1
2.2
4.2
1.2
21.0
12.0
5,209 △
4.2
2.7
11.5 △
11,688
9.8
10.7
△
△
△
△
△
1.2
3.3
2.6
3.2
1.6
2.6
3.9
1,156
0.7
2.5
6.0
16,764
17.4
12.2
△
△
△
△
11年度
12年度
13年度
〈実績〉
〈予測〉
〈予測〉
2.0
0.0
1.0
0.6
1.2
3.8
1.1
3,468 △
2.2
1.9
2.9
11,854
1.4
5.6
1.5
2.2
2.2
2.2
1.6
3.9
3.8
2,856
2.2
1.2
7.1
12,258
5.0
5.2
△
△
△
△
1.8
1.9
1.4
2.3
1.4
3.8
4.6
1,820
1.4
0.4
5.8
15,671
7.0
3.6
(備考)内閣府資料より作成。在庫投資、財貨・サービスの純輸出は実額。予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所
〈実質成長率の需要項目別寄与度〉
(単位:%)
09年度
〈実績〉
実質GDP
国内需要
民間部門
民間最終消費支出
民間住宅投資
民間企業設備
民間在庫品増加
政府部門
政府最終消費支出
公的固定資本形成
財・サービスの純輸出
財・サービスの輸出
財・サービスの輸入
△
△
△
10年度
〈実績〉
2.1
2.2
3.2
0.7
0.7
1.7
1.5
1.0
0.5
0.5 △
0.2
1.6
1.7 △
△
△
△
△
11年度
〈実績〉
3.3
2.5
2.3
0.9
0.1
0.5
0.9
0.2
0.5
0.3
0.8
2.3
1.5
△
12年度
〈予測〉
0.0
1.0
0.5
0.7
0.1
0.1
0.5
0.5
0.4
0.1
1.0 △
0.2
0.8 △
△
△
△
△
13年度
〈予測〉
2.2
2.3
1.7
1.0
0.1
0.5
0.1
0.6
0.2
0.3
0.1
0.7
0.9
1.9
1.4
1.8
0.9
0.1
0.6
0.2
0.4
0.1
0.3
0.5
1.1
0.6
△
△
△
△
(備考)内閣府資料より作成。予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所
〈前提条件〉
09年度
10年度
11年度
12年度
13年度
〈実績〉
〈実績〉
〈実績〉
〈予測〉
〈予測〉
為 替 レ ー ト (円/ドル)
92.8
85.7
79.0
81.0
86.0
原 油 価 格 (CIF、ドル/バレル)
69.0
83.8
114.1
112.0
113.0
25.5
21.5
36.1
1.8
0.9
公 定 歩 合 (%)
0.30
0.30
0.30
0.30
0.30
無担保コール翌日物 (%)
0.10
0.00〜0.10
0.00〜0.10
0.00〜0.10
0.00〜0.10
春 闘 賃 上 げ (%)
1.83
1.82
1.83
1.78
1.80
(前年比、%) △
(備考)日本銀行資料などより作成。予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所。
78
信金中金月報 2012.10
△
〈主要経済指標の推移と予測〉
09年度
10年度
〈実績〉
11年度
〈実績〉
12年度
〈実績〉
13年度
〈予測〉
〈予測〉
鉱工業生産指数
(前年比、%) △
86.1
8.8
94.1
9.3 △
93.2
1.0
95.3
2.3
100.2
5.1
第3次産業活動指数
(前年比、%) △
96.7
3.4
97.8
1.1
98.5
0.7
99.7
1.2
101.1
1.4
5.2
5.0
4.5
4.3
4.0
5.2
0.7
1.7 △
0.9
1.0
コア消費者物価(前年比、%)
△
(生鮮食品を除く総合)
1.6 △
0.8
0.0 △
0.1
0.2
米 国 式コア (前年比、%)
△
(食料・エネルギーを除く総合)
1.0 △
1.1 △
0.8 △
0.4
0.0
完全失業率
(季調済、%)
国内企業物価
(前年比、%)
△
(備考)1.経済産業省、総務省資料などより作成
2.予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所
〈経常収支〉
(単位:億円、%)
08年度
09年度
〈実績〉
〈実績〉
経常収支
126,071
163,382
前年差 △ 121,148
37,311
名目GDP比(%)
2.6
3.4
貿易・サービス収支
△
8,878
47,813
前年差 △
99,780
56,691
貿易収支
11,591
65,998
前年差 △ 105,270
54,407
サービス収支
△
20,469 △
18,185
前年差
5,491
2,284
所得収支
148,239
126,325
前年差 △
21,081 △
21,914
経常移転収支
△
13,290 △
10,755
前年差 △
288
2,535
10年度
〈実績〉
166,593
3,211
3.5
52,225
4,412
64,955
△
1,043
△
12,730
5,455
126,117
△
208
△
11,749
△
994
11年度
〈実績〉
76,179
△
90,414
1.6
△
52,964
△ 105,189
△
34,697
△
99,652
△
18,267
△
5,537
140,070
13,953
△
10,927
822
12年度
〈予測〉
65,434
△
10,745
1.4
△
61,218
△
8,254
△
37,010
△
2,313
△
24,207
△
5,940
138,268
△
1,802
△
11,616
△
689
13年度
〈予測〉
93,436
28,002
1.9
△
36,715
24,502
△
13,114
23,897
△
23,602
605
142,322
4,054
△
12,170
△
554
(備考)日本銀行『国際収支統計』より作成。予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所
〈主要国の実質成長率の推移と予測〉
国名
米国
ユーロ圏
ドイツ
フランス
イギリス
韓国
台湾
香港
シンガポール
タイ
マレーシア
インドネシア
フィリピン
中国
08年
△
0.3
0.3
0.8
△
0.2
△
1.0
2.3
0.7
2.3
1.7
2.6
4.8
6.0
4.2
9.6
(単位:前年比、%)
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
09年
3.5
4.4
5.1
3.1
4.0
0.3
1.8
2.6
1.0
2.3
1.6
4.6
1.1
9.2
10年
3.0
1.9
3.6
1.6
1.8
6.2
10.7
7.0
14.8
7.8
7.2
6.2
7.6
10.4
11年
1.7
1.5
3.1
1.7
0.8
3.6
4.0
5.0
4.9
0.1
5.1
6.5
3.7
9.2
12年
(予)
2.3
△
0.5
0.5
0.3
0.3
2.9
3.0
1.8
3.2
5.0
4.5
6.2
4.6
8.0
13年
(予)
2.7
0.7
1.3
0.8
1.5
3.6
4.1
3.0
4.5
6.2
5.0
6.5
5.3
8.5
(注)各国資料より作成。予測は信金中央金庫 地域・中小企業研究所
調 査
79
信金中金だより
信金中央金庫 地域・中小企業研究所活動状況(8月)
1. レポート等の発行
発行日
レポート分類
通巻
タ イ ト ル
執筆者
12.8.8
産業企業情報
24-3
信用金庫の視点で読み解く2012年版中小企業白書-中小企 吉田智哉
業の“潜在力”を引き出すためのガイドブック-
12.8.8
産業企業情報
24-4
中小企業における省エネルギーの取組みの可能性-ESCO導 鉢嶺実
入にかかる検討を中心に-
毛涯郷史
12.8.15
産業企業情報
24-5
本物の顧客志向で付加価値を創出する中小企業-バイタリ 藤津勝一
ティある経営に不可欠な本質的ニーズへの対応-
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
種類
タ イ ト ル
講座・講演会・番組名称
主 催
講師等
12.8.3
講演
業況堅調企業の経営事例にみる中 亀有信用金庫営業係長会議 亀有信用金庫
小企業経営のヒント
鉢嶺実
毛涯郷史
12.8.8
講演
いま改めて注目される老舗企業の きりしんCSRフォーラム第 桐生信用金庫
底力
2部「文化講演会」
鉢嶺実
12.8.24
講演
11年度の決算トピックスと収益性 平成24年度第1回経理担当 岩手県信用金庫協会
改善への取組みについて
課長会議
刀禰和之
12.8.24
講演
最近の経済と金融情勢について
斎藤大紀
12.8.28
講演
BCP策定の重要性について~平常時の 碧南碧青会経営セミナー
経営力向上にも通じるBCPの策定~
碧海信用金庫
藤津勝一
12.8.30
講演
金融円滑化の出口戦略にかかる研修 金融円滑化の出口戦略にか 村上信用金庫
かる研修
藤津勝一
山梨信金相模原ブロック若 山梨信用金庫
手経営者セミナー
3.原稿掲載
発行日
12.8.1
80
タ イ ト ル
掲 載 紙
信金・信組に求められる取引先支援~外 月刊金融ジャーナル8月号
部機関との連携強化を~
信金中金月報 2012.10
発 行
金融ジャーナル社
執 筆 者
奥津智彦
統計トピックス
信用金庫の店舗数の動向
信金中央金庫地域・中小企業研究所主任研究員
刀禰 和之
信金中央金庫地域・中小企業研究所主任研究員
品田 雄志
(ポイント)
⃝全国信用金庫の11年度末の店舗数は、前期比0.6%減の7,535店舗となった。店舗数がピーク
だった98年度末に比べ13.1%の減少である。
⃝地区別の店舗数は、①東北が前期比増加、②東京、東海、九州北部の3地区が年度中の増減
なし、③他の7地区が前期比減少した。98年度末と比較すると、全11地区で店舗数が減少し
ているが、東海の減少率は2.2%にとどまる。
⃝信用金庫別店舗数は、①前期比増加が12金庫、②年度中の増減なしが231金庫、③前期比減
少が28金庫である。
⃝合 併経験の有無による店舗数の増減状況は、
「合併経験あり」が01年度末比で20.8%減に、
「合併経験なし」は5.2%減と違いがみられた。
⃝11年度末の1店舗あたりの預金残高は前期比3.0%増の162.6億円、貸出金残高は0.7%増の
84.6億円になった。98年度末比では、預金残高で40.2%増、貸出金残高で3.1%増となる。
1.信用金庫の店舗数の推移
(1)
全国信用金庫の状況
舗)と比べると1,138店舗、13.1%の減少であ
る。内訳では、支店数が減少した一方で、出
張所数は増加した(図表2)。
全国信用金庫の11年度末の店舗数は、前
期比49店舗、0.6%減少の7,535店舗となった
(図表1)。一部で新規出店の動きがみられた
(2)
地区別の状況
11年度末の地区別店舗数は、東北が前期
ものの、引き続き店舗の削減が続いたため、
比2店舗、0.4%増加した(図表3)。また、東
13年連続で前期を下回った。
京、東海、九州北部の3地区は年度中の増減
店舗数がピークだった98年度末(8,673店
なしで、他の7地区は店舗数が減少した。
統計トピックス
81
図表 1 店舗数の推移
(店)
(%)
9,000
2
前期比増減率(右目盛)
8,673
1
8,500
0
△ 0.6
8,000
△1
7,535
7,500
△2
店舗数(左目盛)
7,000
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
△3
11 (年度末)
98年度末と比べると、全11地区で店舗数
減)など7地区では2桁減となったが、東海
が 減 少 し た。 九 州 北 部 (21.7%減 )、 中 国
の減少率は2.2%にとどまっている。
(18.6%減 )、 東 京(17.5%減 )、 関 東(17.5%
図表2 店舗の内訳 (単位:店舗、%)
本店
(構成比)
支店
(構成比)
出張所
(構成比)
合 計
98年度末
396
4.5
8,050
92.8
227
2.6
8,673
10年度末
271
3.5
7,052
92.9
261
3.4
7,584
11年度末
271
3.5
7,005
92.9
259
3.4
7,535
(3)信用金庫別の状況
11年度末の信用金庫別店舗数は、①前期
比増加が12金庫(271金庫の4.4%)、 ②年度
中の増減なしが231金庫(85.2%)、③前期比
減少が28金庫(10.3%)だった。
店舗数が増加した信用金庫のうち、2店舗
図表3 地区別の店舗数 (単位:店舗、%、金庫)
地 区
北海道
東 北
東 京
関 東
北 陸
東 海
近 畿
中 国
四 国
九州北部
南九州
合 計
98年度末
557
543
1,143
1,691
386
1,405
1,419
616
227
271
389
8,673
10年度末
521
492
942
1,400
347
1,374
1,216
518
212
212
331
7,584
11年度末
518
494
942
1,394
333
1,374
1,215
501
210
212
323
7,535
(備考)1.地区間の譲渡等は調整していない。
2.沖縄県は合計に含む。
82
信金中金月報 2012.10
98年度末対比
増減率
増減数
△ 7.0 △
39
△ 9.0 △
49
△ 17.5 △ 201
△ 17.5 △ 297
△ 13.7 △
53
△ 2.2 △
31
△ 14.3 △ 204
△ 18.6 △ 115
△ 7.4 △
17
△ 21.7 △
59
△ 16.9 △
66
△ 13.1 △ 1,138
10年度末対比
増減率
増減数
△ 0.5 △
3
0.4
2
0.0
0
△ 0.4 △
6
△ 4.0 △
14
0.0
0
△ 0.0 △
1
△ 3.2 △
17
△ 0.9 △
2
0.0
0
△ 2.4 △
8
△ 0.6 △
49
金庫数
23
27
23
49
17
39
32
22
10
13
15
271
平 均
店舗数
22.5
18.2
40.9
28.4
19.5
35.2
37.9
22.7
21.0
16.3
21.5
27.8
以上の増加が3金庫、1店舗の増加が9金庫で
億円、0.7%増加の84.6億円であった。
ある。また、店舗数が減少した信用金庫のう
98年度末の1店舗あたり預貸金残高と比べ
ち、2店舗以上の減少が13金庫、1店舗の減
ると、預金残高で40.2%増に、貸出金残高で
少が15金庫であった。
は3.1%増になる(図表5)。
2.合併経験の有無による比較
4.店舗数の見通し
合併が店舗数に与える影響をみるため、合
成長の見込める地域を中心に店舗を新設す
併経験の有無で信用金庫の店舗数の変化を比
る動きがあるものの、全体としては信用金庫
較した(図表4)。
経営に対する効率化圧力は根強く、またマー
01年度末に比べ、店舗数計は10.3%減少し
ケットの変化に対応した店舗網の再編成が進
た。これに対し、「合併経験あり」の信用金
んでいることから、店舗数の減少は今後も続
庫 は、01年 度 末 比 で20.8%減 と な っ た も の
く可能性がある。
の、「合併経験なし」の信用金庫については
こうした状況下、信用金庫は自らの強みで
5.2%減にとどまる。
ある地域密着性やフェイス・トゥ・フェイス
(注)1
3.1店舗あたり預貸金残高の状況
(注)2
の営業体制とのバランスを考えつつ、店舗網
の再配置や機能の特化・拡充に取り組むこと
11年度末の1店舗あたり預金残高は、前期
が求められよう。
比4.7億 円、3.0%増 加 の162.6億 円 と な っ た。
また、1店舗あたり貸出金残高は、前期比0.5
図表4 合併経験の有無による店舗数の推移
(億円)
(01年度末=100)
175
105
100
1店舗あたり預金残高
94.8
89.7
90
162.6
150
合併経験なし
95
店舗数計
125
115.9
100
82.1
85
80
75
図表5 1 店舗あたり預貸金残高の推移
79.2
合併経験あり
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
84.6
75
50
01
1店舗あたり貸出金残高
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
(年度末)
(年度末)
(注)1.01年度末から11年度末までの10年間に信用金庫間で合併したケースを「合併経験あり」とした。なお、業態間の合併は調
整していない。
2.末残ベース
統計トピックス
83
統計トピックス
信用金庫の常勤役職員数の動向
信金中央金庫地域・中小企業研究所主任研究員
刀禰 和之
信金中央金庫地域・中小企業研究所主任研究員
品田 雄志
(ポイント)
⃝全 国信用金庫の11年度末の常勤役職員数(以下「役職員数」という。
)は、前期比0.6%減
の11万5,260人となり、5年ぶりに減少した。ピークの94年度末比では28.0%減である。
⃝内 訳は、常勤役員が前期比0.8%減の2,238人、男子職員が1.5%減の7万4,678人、女子職員
が1.3%増の3万8,344人となった。94年度末と比べると、常勤役員が24.8%減、男子職員が
27.1%減、女子職員が29.9%減となる。
⃝地 区別の役職員数は、九州北部(前期比0.5%増)と東海(0.1%増)の2地区で前期を上
回った。1994年度末との比較では、全11地区で役職員数が減少したが、東海の減少率は
10.8%減にとどまる。
⃝信用金庫別の役職員数は、①前期比増加が97金庫、②年度中の増減なしが21金庫、③前期
比減少が153金庫であった。
⃝合併経験の有無による役職員数の変化をみるため01年度末と比較すると、
「合併経験あり」
の信用金庫で24.6%減に、
「合併経験なし」の信用金庫では8.3%減になった。
1.信用金庫の役職員数の推移
た(図表2)。
役職員数がピークだった94年度末(16万
(1)
全国信用金庫の状況
293人)と比較すると、28.0%減になる。内
全 国 信 用 金 庫 の11年 度 末 の 役 職 員 数 は、
訳 は、 常 勤 役 員 が24.8%減、 男 子 職 員 が
前 期 比700人、0.6%減 少 の11万5,260人 と な
27.1%減、女子職員が29.9%減であった。
り、5年ぶりに減少した(図表1)。
内訳は、常勤役員が前期比0.8%減の2,238
(2)
地区別の状況 人、 男 子 職 員 が1.5%減 の7万4,678人 だ っ た
11年度末の地区別役職員数は、九州北部
が、女子職員は1.3%増の3万8,344人に増加し
が 前 期 比0.5%増、 東 海 が0.1%増 と な っ た
84
信金中金月報 2012.10
図表 1 常勤役職員数の推移
(%)
(人)
5
200,000
常勤役員(左目盛)
4
前期比増減率(総数、右目盛)
160,293
3
150,000
115,292
1
0
100,000
△0.6
男子職員(左目盛)
△1
△2
50,000
△3
女子職員(左目盛)
0
2
92
93
94
95
96
△4
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
△5
11(年度末)
10
(図表3)。一方、減少した地区では、北陸の
94年度末と比較すると、全11地区で役職
前 期 比3.9%減、 東 北 の2.9%減、 南 九 州 の
員数が減少した。地区別でみると、最も減少
2.9%減などとなる。
した東京が40.5%減だったのに対し、東海は
図表2 常勤役職員の内訳 (単位:人、%)
常勤役員
(構成比)
男子職員
(構成比)
女子職員
(構成比)
合 計
94年度末
2,980
1.8
102,559
63.9
54,754
34.1
160,293
10年度末
2,258
1.9
75,867
65.4
37,835
32.6
115,960
11年度末
2,238
1.9
74,678
64.7
38,344
33.2
115,260
10.8%の減少にとどまる。
(3)
信用金庫別の状況
11年度末の信用金庫別役職員数は、①前
期比増加が97金庫、②年度中の増減なしが
21金庫、③前期比減少が153金庫であった。
図表3 地区別の常勤役職員数 (単位:店舗、%、金庫)
地 区
北海道
東 北
東 京
関 東
北 陸
東 海
近 畿
中 国
四 国
九州北部
南九州
合 計
94年度末
6,992
7,925
32,199
30,956
5,459
25,567
30,436
8,791
3,001
3,490
5,094
160,293
10年度末
5,163
5,798
19,183
22,453
4,115
22,744
21,202
6,521
2,268
2,579
3,726
115,960
11年度末
5,113
5,626
19,132
22,349
3,951
22,781
21,149
6,481
2,255
2,594
3,615
115,260
94年度末対比
増減率
増減数
△ 26.8 △ 1,879
△ 29.0 △ 2,299
△ 40.5 △ 13,067
△ 27.8 △ 8,607
△ 27.6 △ 1,508
△ 10.8 △ 2,786
△ 30.5 △ 9,287
△ 26.2 △ 2,310
△ 24.8 △
746
△ 25.6 △
896
△ 29.0 △ 1,479
△ 28.0 △ 45,033
10年度末対比
増減率
増減数
△
0.9 △
50
△
2.9 △
172
△
0.2 △
51
△
0.4 △
104
△
3.9 △
164
0.1
37
△
0.2 △
53
△
0.6 △
40
△
0.5 △
13
0.5
15
△
2.9 △
111
△
0.6 △
700
金庫数
23
27
23
49
17
39
32
22
10
13
15
271
平 均
役職員数
222
208
831
456
232
584
660
294
225
199
241
425
(備考)1.地区間の譲渡等は調整していない。
2.沖縄県は合計に含む。
統計トピックス
85
役職員数が前期比増加した97金庫のうち1
高は、前期比2.9%増の10.6億円に、1人あた
~9人の増加が78金庫、10人以上の増加が19
りの貸出金残高は0.6%増の5.5億円となった
金庫であった。一方、前期比減少した153金
(図表5)。
庫のうち1~9人の減少が109金庫、10人以上
94年度末の1人あたり預貸金残高と比較す
の減少が44金庫であった。
ると、預金残高で81.0%増、貸出金残高では
30.6%増となる。
2.合併経験の有無による比較
(注)1
合併が役職員数に与える影響をみるため、
4.役職員数の見通し
合併経験の有無で信用金庫役職員数の変化を
信用金庫経営に対する効率化圧力は根強
比較した(図表4)。
く、また現在の経済・雇用情勢を勘案する
11年度末の役職員数を10年前の01年度末
と、今後の役職員数は横這いで推移する可能
と比べると、「合併経験あり」の信用金庫は
性がある。
24.6%減 に な っ た。 一 方、「合 併 経 験 な し 」
その一方で、中長期的な人口減少社会に備
の信用金庫は8.3%の減少にとどまっており、
えた一定数の職員の確保が必要になると考え
合併経験のある信用金庫の方が役職員数を削
られる。
減している。
こうした状況下、信用金庫は、今後、効率
的な職員の配置や女性職員・再雇用職員の活
3.1人あたり預貸金残高の状況
(注)2
用などを通じて業務の生産性を高める努力が
11年度末の常勤役職員1人あたりの預金残
求められよう。
図表 4 合併経験の有無による常勤役職員数
の推移
図表 5 常勤役職員1人あたり預貸金残高の
推移
(億円)
(01年度末=100)
12
105
100
常勤役職員1人あたり預金残高
10
95
91.7
合併経験なし
90
86.6
85
75.4
75
合併経験あり
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
8
6
常勤役職員数計
80
70
10.6
11
(年度末)
5.8
5.5
4.2
4
2
常勤役職員1人あたり貸出金残高
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
(年度末)
(注)1.01年度末から11年度末までの10年間に信用金庫間で合併したケースを「合併経験あり」とした。なお、業態間の合併は調
整していない。
2.末残ベース
86
信金中金月報 2012.10
統
計
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況………… 87
(2)信用金庫の店舗数、合併等……… 89
(3)信用金庫の預金種類別預金・地区別預金…… 90
(4)信用金庫の預金者別預金………… 91
(5)信用金庫の科目別貸出金・地区別貸出金…… 92
(6)信用金庫の貸出先別貸出金……… 93
(7)信用金庫の余裕資金運用状況…… 94
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等…………………… 95
(2)業態別貸出金……………………… 96
統計資料の照会先:
信金中央金庫 地域・中小企業研究所
Tel03‒5202‒7671 Fax03‒3278‒7048
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔△〕減少または負
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数
〔 — 〕該当計数なし
〔…〕不詳または算出不能
〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字
〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の
4県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金地域・中小企業研究所のホームページ
(http://www.scbri.jp/)
よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.(1)信用金庫の主要勘定概況
○預 金
7月の全国信用金庫の預金は、月中6,449億円、0.5%減と、前年同月
(1,613億円、0.1%減)
と同様に減少した。
①要求払預金は、月中9,546億円、2.1%減と、前年同月(4,277億円、1.0%減)と同様に減少した。
②定期性預金は、月中3,285億円、0.4%増と、前年同月(2,687億円、0.3%増)と同様に増加した。
③外貨預金等は、月中189億円、6.4%減少した。
なお、2012年7月末の預金の前年同月比増減率は、1.6%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中2,204億円、0.3%減と、前年同月(1,958億円、0.3%増)の増加から減少となった。
①割引手形は、月中1,302億円、11.9%減と、前年同月(969億円、9.8%増)の増加から減少となった。
②貸付金は、月中902億円、0.1%減と、前年同月(989億円、0.1%増)の増加から減少となった。
なお、2012年7月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.8%減となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中5,467億円、0.7%減と、前年同月(2,341億円、0.3%減)と同様に減少した。
主な内訳をみると、預け金は、月中4,589億円、1.5%減となった。
コールローンは、月中809億円、14.4%減となった。
有価証券は、国債(861億円減)
、株式(26億円減)等が減少したものの、社債(581億円増)、地方債(308
億円増)
、投資信託(114億円増)等が増加したことから、月中86億円、0.0%増となった。
統 計
87
信用金庫の主要勘定増減状況(2012年7月末)
区 分
現
(
(
(
資
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
買
入
手
形
コ ー ル ロ ー ン
買
現
先
勘
定
債券貸借取引 支 払 保 証 金
買 入 金 銭 債 権
金
銭
の
信
託
商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
小 計
貸
出
金
(月 中 平 残)
(うち金融機関貸付金)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預
金 ・
積
金
(月 中 平 残)
要
求
払
預
金
当
座
預
金
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定
期
性
預
金
定
期
預
金
定
期
積
金
外
貨
預
金
等
実
質
預
金
譲
渡
性
預
金
借
用
金
預
貸
率
産
項
目
負
債
項
目
純
資
産
項
目
純
資
産
出
資
金
普 通 出 資 金
優 先 出 資 金
優先出資申込証拠金
資
本
剰
余
金
資 本 準 備 金
その他資本剰余金
利
益
剰
余
金
利 益 準 備 金
その他利益剰余金
特 別 積 立 金
繰
越
金
未 処 分 剰 余 金
処 分 未 済 持 分
自 己 優 先 出 資
自己優先出資申込証拠金
その他有価証券評価差額金
繰 延 ヘ ッ ジ 損 益
土 地 再 評 価 差 額 金
(単位:百万円、%)
前 年 同 月
前年同月比
残 高
増 減 額
増 減 率 増 減 率
月中増減額
月中増減率
増 減 率
1,358,057
1,727
0.1
0.0
4,683
0.3
△ 4.3
90,653)
(△
70,319)
(△ 43.6)
(△ 42.5)
(
65,722)
(
71.3)
(△ 7.8)
28,920,476
△
458,957
△ 1.5
5.1
△
555,227
△ 1.9
7.9
22,693,708)
(△
155,027)
(△ 0.6)
(
1.9)
(△
359,197)
(△ 1.5)
(
2.7)
79,000)
(△
7,500)
(△ 8.6)
(
19.8)
(
2,500)
(
3.9)
(△ 53.0)
0
0
―
―
0
―
―
479,286
△
80,976
△ 14.4
5.2
△
39,744
△ 8.0
△ 21.0
0
0
―
―
0
―
―
0
0
―
―
0
―
△ 100.0
389,537
△
17,291
△ 4.2
1.5
18,020
4.9
△ 4.2
218,369
△
500
△ 0.2
△ 4.1
9,800
4.4
10.3
5,696
585
11.4
25.6
△
684
△ 13.1
17.5
36,501,714
8,649
0.0
3.4
329,030
0.9
4.6
9,384,067
△
86,184
△ 0.9
△ 0.1
△
25,260
△ 0.2
0.0
6,510,509
30,867
0.4
12.0
48,862
0.8
14.7
14,977
△
1,001
△
6.2
△ 46.8
3,397
13.7
△ 49.4
15,427,062
58,171
0.3
4.7
268,447
1.8
7.8
663,152
△
2,661
△ 0.3
△ 0.5
△
2,353
△ 0.3
△ 7.3
1
0
0.0
0.0
△
1
△ 50.0
△ 50.0
675,950
11,480
1.7
4.2
538
0.0
△ 4.9
3,721,167
△
1,337
△ 0.0
△ 4.7
35,927
0.9
△ 2.8
104,824
△
687
△ 0.6
△ 9.8
△
527
△ 0.4
△ 8.6
67,873,137
△
546,764
△ 0.7
4.0
△
234,121
△ 0.3
5.4
62,838,509
△
220,441
△ 0.3
△ 0.8
195,811
0.3
△ 0.3
62,673,395)
(
9,329)
(
0.0)
(△ 0.6)
(
119,937)
(
0.1)
(△ 0.3)
1,006,899
7,145
0.7
18.9
4,824
0.5
14.9
959,134
△
130,204
△ 11.9
△ 11.1
96,900
9.8
△ 4.2
61,879,374
△
90,236
△ 0.1
△ 0.7
98,913
0.1
△ 0.2
3,959,882
17,254
0.4
△ 5.6
32,454
0.7
△ 5.7
55,362,867
△
127,363
△ 0.2
△ 0.2
88,932
0.1
0.3
2,556,624
19,872
0.7
△ 2.4
△
22,474
△ 0.8
△ 3.0
124,130,101
△
644,987
△ 0.5
1.6
△
161,358
△ 0.1
2.4
123,812,178)
(
285,201)
(
0.2)
(
1.7)
(
470,376)
(
0.3)
(
2.3)
42,503,711
△
954,601
△ 2.1
2.5
△
427,701
△ 1.0
5.0
2,265,125
△
281,186
△ 11.0
△ 7.6
113,799
4.8
0.9
38,103,107
△
1,036,963
△ 2.6
2.4
△
237,329
△ 0.6
5.1
1,081,892
3,115
0.2
△ 2.2
3,658
0.3
0.1
123,168
△
15,196
△ 10.9
△ 22.5
△
25,471
△ 13.7
54.3
901,425
380,171
72.9
78.5
△
282,964
△ 35.9
24.3
28,991
△
4,543
△ 13.5
△ 9.8
606
1.9
△ 4.2
81,351,286
328,538
0.4
1.1
268,731
0.3
1.1
76,369,634
337,497
0.4
1.4
417,144
0.5
1.7
4,981,652
△
8,958
△ 0.1
△ 3.6
△
148,414
△ 2.7
△ 7.6
275,103
△
18,923
△ 6.4
△ 0.8
△
2,387
△ 0.8
△ 4.5
124,039,448
△
574,667
△ 0.4
1.6
△
227,080
△ 0.1
2.4
89,844
△
25
△ 0.0
10.0
8,200
11.1
△ 15.4
2,201
0.3
15.2
116,562
32.0
84.5
554,161
50.5
前月比増減
(
(
△
△
△
6,743,930
809,543
636,177
173,365
0
85,691
85,691
0
5,693,355
446,160
5,247,195
5,029,337
215,776
2,081
1,625
0
0
1,707
2,519
161,193
△
△
△
△
△
△
4,616
106
105
0
0
0
0
0
4,980
75
5,055
4,682
441
814
206
0
0
61
0
8
△
△
△
△
△
△
前年同月比
0.0
0.0
0.0
0.0
―
0.0
0.0
―
0.0
0.0
0.0
0.0
0.2
28.1
―
―
―
―
―
0.0
(備考)預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
88
信金中金月報 2012.10
2.6
4.7
0.3
25.2
―
60.7
60.7
―
1.6
1.8
1.6
1.2
12.0
△ 7.1
―
―
―
―
―
5.8
△
△
△
△
△
△
18
18
18
0
0
0
0
0
37
1
37
1,800
471
1,291
74
0
0
0
0
2
0.0
0.0
0.0
0.0
―
0.0
0.0
―
△ 0.0
0.0
△ 0.0
△ 0.0
0.2
135.8
―
―
―
―
―
△ 0.0
△
△
2.7
0.5
0.3
1.0
―
2.8
2.8
―
3.1
2.3
3.1
2.8
10.8
717.8
―
―
―
―
―
△ 0.8
1.(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数の推移
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
店 舗 数
本 店
支 店
(信用金庫数)
281
7,128
279
7,126
272
7,089
272
7,058
271
7,052
271
7,055
271
7,056
271
7,054
271
7,048
271
7,040
271
7,022
271
7,017
271
7,017
271
7,007
271
7,005
271
7,007
271
7,008
271
7,006
271
7,006
出張所
合 計
278
266
258
264
261
262
261
260
259
262
261
261
259
259
259
258
258
257
257
7,687
7,671
7,619
7,594
7,584
7,588
7,588
7,585
7,578
7,573
7,554
7,549
7,547
7,537
7,535
7,536
7,537
7,534
7,534
(単位:店、人)
会 員 数
9,278,994
9,311,661
9,317,116
9,328,348
9,318,325
9,325,017
9,322,099
9,321,117
9,324,040
9,324,886
9,326,557
9,330,422
9,330,981
9,331,664
r9,318,366
9,321,151
9,322,675
9,322,161
9,317,062
常勤役員
2,298
2,290
2,271
2,271
2,258
2,260
2,260
2,261
2,259
2,260
2,259
2,258
2,256
2,255
r2,238
r2,236
r2,234
r2,242
2,244
常 勤 役 職 員 数
職 員
男 子
女 子
計
77,110
33,065
110,175
76,956
34,766
111,722
76,640
36,722
113,362
77,194
38,723
115,917
75,867
37,835
113,702
77,425
40,264
117,689
77,236
40,049
117,285
77,051
39,869
116,920
76,737
39,670
116,407
76,572
39,579
116,151
76,409
39,507
115,916
76,218
39,259
115,477
75,988
39,128
115,116
75,780
38,994
114,774
r74,678
r38,344
r113,022
r76,912
40,857
r117,769
r76,738
40,761
r117,499
r76,271
40,532
r116,803
76,019
40,311
116,330
合 計
112,473
114,012
115,633
118,188
115,960
119,949
119,545
119,181
118,666
118,411
118,175
117,735
117,372
117,029
r115,260
r120,005
r119,733
r119,045
118,574
信用金庫の合併等
年 月 日
異 動 金 庫 名
新金庫名
金庫数
異動の種類
2004年10月12日
大阪
南大阪
大阪
303
合併
2004年11月15日
大牟田
柳川
大牟田柳川
302
合併
2004年11月22日
足利
小山
足利小山
301
合併
2005年 1 月 4 日
伊勢崎太田
アイオー
301
名称変更
2005年 2 月14日
北海
古平
北海
300
合併
2005年 2 月14日
阪奈
八光
大阪東
299
合併
2005年 3 月14日 (大分県信組) 杵築
298
合併・解散
2005年 7 月19日
仙台
塩竈
杜の都
297
合併
2005年10月17日
高鍋
西諸
高鍋
296
合併
2005年11月21日
新川水橋
滑川
にいかわ
295
合併
2005年11月21日
広島
大竹
2006年 1 月10日
多摩中央
八王子
(大分県信組)
太平
広島
294
合併
多摩
292
合併
合併
2006年10月16日
三島
伊豆
三島
291
2006年10月16日
愛媛
三津浜
愛媛
290
合併
2006年11月 6 日
島根中央
(出雲信組)
島根中央
290
合併
2007年 1 月 9 日
下関
津和野
西中国
287
合併
2007年10月 9 日
名寄
士別
北星
286
合併
2007年11月26日
かんら
ぐんま
しののめ
284
合併
宇部
吉南
多野
2008年 1 月15日
沼津
駿河
沼津
283
合併
2008年 1 月15日
きのくに
湯浅
きのくに
282
合併
合併
2008年 1 月21日
伊達
(室蘭商工信組)
伊達
282
2008年 3 月17日
鶴岡
酒田
鶴岡
281
合併
2008年 5 月19日
八戸
十和田
八戸
280
合併
2008年 7 月 7 日
盛岡
二戸
盛岡
279
合併
2009年 2 月16日
山形
(山形庶民信組)
山形
279
合併
2009年 7 月13日
羽後
秋田ふれあい
羽後
278
合併
2009年10月13日
西中国
岩国
(下関市職員信組)
西中国
277
合併
2009年11月 9 日
八戸
あおもり
下北
青い森
275
合併
2009年11月24日
北見
紋別
北見
274
合併
2010年 1 月12日
山口
萩
萩山口
273
合併
2010年 2 月15日
杵島
西九州
九州ひぜん
272
合併
2011年 2 月14日
富山
上市
富山
271
合併
統 計
89
1.(3)信用金庫の預金種類別預金・地区別預金
預金種類別預金
預金計
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11. 3
6
11. 7
8
9
10
11
12
12. 1
2
3
4
5
6
7
1,137,275
1,154,531
1,173,806
1,208,008
1,197,465
1,223,084
1,221,470
1,223,770
1,223,773
1,225,081
1,222,801
1,236,065
1,227,326
1,230,955
1,225,884
1,242,241
1,234,790
1,247,750
1,241,301
(単位:億円、%)
前年同月比
増 減 率
2.1
1.5
1.6
1.8
2.0
2.1
2.4
2.2
2.3
2.2
2.3
2.3
2.2
2.0
2.3
2.0
1.9
2.0
1.6
要求払
382,240
385,019
388,510
408,277
401,123
418,681
414,404
416,328
417,827
420,741
418,484
427,673
417,887
423,414
422,706
436,946
427,373
434,583
425,037
前年同月比
増 減 率
△ 1.1
0.7
0.9
2.3
3.2
4.1
5.0
4.8
5.0
4.6
4.8
4.7
4.8
4.3
5.3
4.2
3.7
3.7
2.5
定期性
749,326
764,590
780,139
796,269
790,761
801,605
804,292
804,716
802,692
801,203
801,375
805,482
806,534
804,553
798,587
802,370
804,119
810,227
813,512
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
3.8
5,707
4.0
2.0
4,921 △13.7
2.0
5,157
4.8
1.5
3,461
17.8
1.3
5,580
8.1
1.1
2,797 △ 0.9
1.1
2,773 △ 4.5
0.9
2,724 △ 4.6
0.9
3,253
1.7
1.1
3,136 △ 0.3
1.1
2,941 △ 7.7
1.1
2,909 △15.9
1.0
2,903 △ 9.1
0.9
2,987 △ 3.7
0.9
4,590 △17.7
0.9
2,925 △ 5.9
0.9
3,296
10.4
1.0
2,940
5.1
1.1
2,751 △ 0.8
実質預金
1,134,949
1,152,438
1,171,806
1,206,349
1,195,493
1,222,163
1,219,892
1,222,866
1,222,368
1,224,173
1,221,852
1,234,577
1,226,413
1,230,102
1,223,269
1,240,478
1,233,880
1,246,141
1,240,394
前年同月比
増 減 率
2.2
1.5
1.6
1.8
2.0
2.1
2.4
2.2
2.3
2.3
2.3
2.3
2.2
2.0
2.3
2.0
1.9
1.9
1.6
譲渡性預金
911
517
470
875
525
734
816
876
784
748
766
754
736
727
498
753
840
898
898
前年同月比
増 減 率
△ 8.7
△43.1
△ 9.1
40.4
11.6
△20.9
△15.4
△ 8.7
△15.0
△12.0
△11.9
△13.8
△14.7
△19.7
△ 5.0
13.8
18.3
22.3
10.0
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
地区別預金
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11. 3
6
11. 7
8
9
10
11
12
12. 1
2
3
4
5
6
7
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11. 3
6
11. 7
8
9
10
11
12
12. 1
2
3
4
5
6
7
(単位:億円、%)
北海道
59,718
60,762
62,249
65,352
63,609
65,799
65,279
65,386
65,322
65,257
65,692
67,045
65,338
65,295
65,059
66,234
65,689
66,532
65,877
近 畿
226,819
230,428
236,386
245,810
242,384
247,523
247,832
247,793
248,359
248,271
248,047
250,327
249,211
249,938
247,833
251,373
249,884
252,547
251,550
前年同月比
増 減 率
0.9
1.7
2.4
2.0
2.1
1.7
2.0
1.9
2.1
2.0
2.2
2.5
1.9
1.8
2.2
1.0
1.1
1.1
0.9
前年同月比
増 減 率
2.7
1.5
2.5
2.8
2.5
2.3
2.4
1.9
1.9
1.9
1.9
1.8
1.9
1.7
2.2
1.8
1.8
2.0
1.4
東 北
40,772
41,643
42,044
43,533
42,455
45,478
45,667
46,136
46,129
46,426
46,187
46,592
46,239
46,530
45,660
47,246
46,973
47,683
47,360
中 国
53,292
53,589
53,671
54,937
54,435
55,536
55,265
55,281
55,157
55,038
54,800
55,263
54,881
55,190
55,002
55,779
55,465
56,166
55,897
(備考)沖縄地区は全国に含めた。
90
信金中金月報 2012.10
前年同月比
増 減 率
1.2
2.1
0.9
1.1
0.9
4.9
6.1
6.8
7.1
7.4
7.2
7.0
7.2
7.2
7.5
7.4
5.4
4.8
3.7
前年同月比
増 減 率
0.8
0.5
0.1
0.9
1.4
1.6
1.5
1.0
1.2
0.7
0.7
0.5
0.7
0.2
1.0
0.9
1.0
1.1
1.1
東 京
211,882
213,414
216,091
219,800
219,358
222,763
222,425
222,820
222,692
223,428
222,873
224,380
223,280
224,108
223,533
226,476
225,267
226,892
225,583
四 国
21,775
22,362
23,230
24,053
23,929
24,484
24,356
24,381
24,363
24,449
24,513
24,745
24,644
24,694
24,656
24,945
24,933
25,299
25,224
前年同月比
増 減 率
1.8
0.7
1.2
1.0
1.5
1.6
1.9
1.9
1.9
1.9
2.1
2.0
2.0
1.9
1.9
1.7
1.7
1.8
1.4
前年同月比
増 減 率
5.0
2.6
3.8
2.5
3.0
3.3
2.9
2.6
2.9
2.5
2.8
2.8
2.8
2.6
3.0
3.1
3.2
3.3
3.5
関 東
216,685
219,830
222,137
228,350
225,747
231,118
230,842
231,712
230,932
231,858
231,110
233,800
231,990
232,709
231,594
234,785
232,914
235,597
234,053
九州北部
19,492
19,858
20,001
20,802
20,195
20,874
20,793
20,809
20,897
20,976
20,922
21,435
20,993
21,068
20,595
21,279
21,052
21,304
21,080
前年同月比
増 減 率
2.2
1.4
1.0
1.5
1.6
2.0
2.4
2.4
2.3
2.3
2.4
2.3
2.3
2.1
2.5
2.2
1.9
1.9
1.3
前年同月比
増 減 率
1.4
1.8
0.7
0.9
0.9
0.6
0.8
0.8
1.6
1.6
1.9
3.0
2.0
1.7
1.9
1.4
1.5
2.0
1.3
北 陸
34,270
34,931
35,517
36,223
35,885
36,574
36,422
36,498
36,410
36,371
36,181
36,404
36,094
36,136
36,003
36,344
36,143
36,505
36,288
南九州
24,313
24,447
24,785
25,437
25,182
25,771
25,727
25,649
25,666
25,655
25,569
26,269
25,785
25,696
25,619
25,979
25,846
26,154
25,998
前年同月比
増 減 率
1.4
1.9
1.6
1.0
1.0
0.8
0.7
0.3
1.1
0.9
0.9
0.4
0.3
△ 0.0
0.3
0.2
△ 0.1
△ 0.1
△ 0.3
前年同月比
増 減 率
0.5
0.5
1.3
1.2
1.6
1.7
2.0
1.6
2.3
1.7
1.8
3.2
1.8
1.2
1.7
1.3
1.0
1.4
1.0
東 海
226,859
231,857
236,300
242,303
242,861
245,634
245,372
245,829
246,346
245,879
245,439
248,348
247,425
248,138
248,839
250,325
249,175
251,488
250,860
全国計
1,137,275
1,154,531
1,173,806
1,208,008
1,197,465
1,223,084
1,221,470
1,223,770
1,223,773
1,225,081
1,222,801
1,236,065
1,227,326
1,230,955
1,225,884
1,242,241
1,234,790
1,247,750
1,241,301
前年同月比
増 減 率
2.4
2.2
1.9
2.5
2.7
2.7
2.8
2.7
2.6
2.6
2.5
2.4
2.5
2.3
2.4
2.2
2.0
2.3
2.2
前年同月比
増 減 率
2.1
1.5
1.6
1.8
2.0
2.1
2.4
2.2
2.3
2.2
2.3
2.3
2.2
2.0
2.3
2.0
1.9
2.0
1.6
1.(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
年 月 末
預金計
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
1,136,973
1,154,529
1,173,805
1,208,007
1,197,462
1,223,082
1,221,468
1,223,769
1,223,772
1,225,080
1,222,799
1,236,063
1,227,325
1,230,953
1,225,883
1,242,240
1,234,785
1,247,749
1,241,299
年 月 末
一般法人預金
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
180,120
178,052
179,509
186,770
181,934
182,980
184,779
180,989
187,563
184,342
184,622
190,845
183,154
182,267
189,710
193,111
188,108
189,968
184,466
要求払
9,087
9,366
9,297
13,838
10,311
17,003
14,482
16,937
16,324
15,400
17,411
14,283
17,339
16,960
11,120
14,059
18,362
13,974
16,289
前年同月比
増 減 率
2.1
1.5
1.6
1.8
2.0
2.1
2.4
2.2
2.3
2.2
2.3
2.3
2.2
2.0
2.3
2.0
1.9
2.0
1.6
個人預金
923,693
944,286
960,208
978,332
978,354
990,552
989,723
992,737
987,668
994,124
988,987
999,715
995,924
1,002,051
998,543
1,007,036
997,210
1,009,040
1,005,182
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 1.1
0.8
0.0
1.3
1.3
1.7
1.8
2.1
0.4
1.9
2.1
2.5
2.3
4.2
2.4
2.7
3.8
△ 0.1
要求払
前年同月比
増 減 率
△ 9.9
3.0
△ 0.7
33.2
10.8
12.7
15.0
10.6
9.9
21.1
6.9
3.2
6.4
5.3
7.8
△ 3.7
1.3
△ 17.8
12.4
定期性
96,086
96,105
94,976
102,343
96,853
97,727
99,588
95,495
101,543
97,916
98,672
105,292
96,655
95,766
103,472
106,553
99,857
103,886
98,078
11,620
11,958
13,154
18,704
14,471
22,320
22,853
22,678
21,218
20,520
20,933
20,881
20,312
18,933
15,546
17,253
19,425
24,208
24,410
前年同月比
増 減 率
3.3
2.2
1.6
1.6
1.8
2.1
2.2
2.1
2.1
2.1
2.2
2.1
2.1
1.9
2.0
1.9
1.6
1.8
1.5
要求払
前年同月比
増 減 率
△ 6.6
0.0
△ 1.1
△ 1.0
1.9
2.3
3.1
3.3
3.4
△ 0.2
2.5
2.8
3.2
3.3
6.8
3.8
2.6
6.3
△ 1.5
定期性
前年同月比
増 減 率
1.0
0.9
1.7
2.5
3.4
4.4
5.3
5.1
5.4
5.3
5.6
5.4
5.4
4.9
5.1
4.7
4.3
4.4
3.2
273,708
276,390
281,284
290,555
291,020
302,140
299,091
302,029
297,988
305,636
300,377
306,505
302,010
308,762
306,106
314,671
307,003
315,454
308,777
定期性
649,352
667,109
678,066
686,865
686,397
687,501
689,692
689,770
688,749
687,560
687,678
692,283
692,994
692,396
691,494
691,424
689,272
692,675
695,488
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
4.3
623
39.4
2.7
778
24.8
1.6
847
8.9
1.2
901
12.9
1.2
926
9.3
1.0
901
7.2
0.9
931
10.4
0.8
928
5.3
0.8
922
4.1
0.8
917
2.3
0.8
923
6.3
0.7
916
1.7
0.7
910
3.9
0.6
883 △ 1.3
0.7
933
0.7
0.7
932
0.9
0.4
925
0.5
0.7
900 △ 0.1
0.8
907 △ 2.4
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.3
323
33.3
△ 2.3
237 △ 26.3
3.1
267
12.5
1.3
296
14.2
0.5
349
30.5
0.1
368
32.7
0.0
379
32.6
0.1
382
24.6
0.4
375
26.3
1.2
360
21.0
1.1
347
23.4
1.2
343
15.8
1.7
336
8.0
1.2
311 △ 1.3
1.3
322 △ 7.6
0.7
320 △ 8.3
2.9
325 △ 7.8
1.0
318 △ 13.6
1.4
331 △ 12.5
83,703
81,701
84,257
84,123
84,723
84,876
84,804
85,103
85,637
86,058
85,595
85,202
86,155
86,182
85,908
86,229
87,918
85,755
86,049
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
6.9
752
33.8
2.9
857
14.0
9.9
778 △ 9.2
14.1
103
90.1
10.0
1,055
35.6
6.7
68 △ 40.8
8.7
69 △ 51.7
7.2
91 △ 18.3
6.4
68
9.3
8.8
36 △ 18.6
8.8
32 △ 58.0
11.6
59 △ 42.3
8.1
55 △ 32.1
6.8
41 △ 18.4
7.4
62 △ 94.0
8.3
74 △ 2.2
5.9
92 △ 15.4
8.4
102
50.0
6.8
91
33.3
金融機関預金
11,692
10,001
10,850
10,251
11,329
10,150
9,553
10,328
10,920
10,649
10,804
10,270
10,532
10,692
10,892
10,698
11,580
10,447
10,851
前年同月比
増 減 率
△ 0.5
△ 14.4
8.4
8.7
4.4
△ 0.6
2.8
0.7
1.9
9.9
△ 0.5
0.1
△ 1.9
△ 5.0
△ 3.8
4.5
6.0
2.9
13.5
公金預金
前年同月比
増 減 率
△ 0.2
3.3
4.7
21.7
11.2
9.0
10.8
8.5
7.9
13.7
7.8
7.9
7.3
6.0
3.4
2.5
3.6
△ 2.8
9.0
21,462
22,184
23,233
32,648
25,841
39,395
37,407
39,709
37,614
35,960
38,380
35,228
37,710
35,938
26,732
31,389
37,882
38,288
40,794
政府関係
預 り 金
譲渡性預金
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
911
517
470
875
525
734
816
876
784
747
766
754
736
727
498
753
840
898
898
(備考)日本銀行 「預金現金貸出金調査表」より作成。このため、「日計表」による(3)預金種類別・地区別預金の預金計とは一致
しない。
統 計
91
1.(5)信用金庫の科目別貸出金・地区別貸出金
科目別貸出金
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
(単位:億円、%)
貸出金計
635,433
648,786
641,574
640,623
637,550
632,028
633,986
631,778
635,665
631,853
631,474
638,352
631,492
631,323
637,888
631,519
628,390
630,589
628,385
前年同月比
増 減 率
0.0
2.1
△ 1.1
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.5
△ 0.2
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.2
0.0
△ 0.4
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.8
割引手形
16,753
13,003
10,515
12,110
10,623
9,827
10,796
9,376
9,785
9,675
9,769
11,745
10,238
10,019
11,473
10,970
9,708
10,893
9,591
前年同月比
増 減 率
△16.9
△22.3
△19.1
1.5
1.0
△ 3.4
△ 4.2
△ 3.7
△ 2.9
△13.1
△ 3.2
△ 3.0
△ 3.3
△ 3.0
8.0
△ 3.2
△ 1.6
10.8
△11.1
貸付金
618,680
635,782
631,059
628,512
626,927
622,200
623,189
622,402
625,879
622,177
621,705
626,606
621,253
621,303
626,414
620,549
618,681
619,696
618,793
前年同月比
増 減 率
0.6
2.7
△ 0.7
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.1
△ 0.1
△ 0.3
△ 0.1
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.4
△ 0.7
手形貸付
60,234
54,019
48,306
46,180
45,356
41,635
41,960
42,083
42,957
42,263
42,395
43,707
42,754
42,766
42,926
40,501
39,318
39,426
39,598
前年同月比
増 減 率
△ 3.8
△10.3
△10.5
△ 7.6
△ 6.1
△ 5.7
△ 5.7
△ 5.6
△ 5.9
△ 6.4
△ 5.8
△ 5.3
△ 5.0
△ 5.1
△ 5.3
△ 6.0
△ 5.6
△ 5.3
△ 5.6
証書貸付
527,985
551,706
553,842
554,248
553,402
554,139
555,029
553,936
554,812
553,406
552,709
555,588
552,143
552,279
556,522
554,625
553,740
554,902
553,628
前年同月比
増 減 率
1.1
4.4
0.3
△ 0.2
△ 0.0
0.2
0.3
0.4
0.4
0.2
0.4
0.2
0.2
0.3
0.5
0.2
0.1
0.1
△ 0.2
地区別貸出金
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
30,459
30,057
28,911
28,083
28,168
26,425
26,200
26,382
28,108
26,507
26,600
27,309
26,355
26,258
26,965
25,421
25,622
25,367
25,566
前年同月比
増 減 率
1.6
△ 1.3
△ 3.8
△ 2.7
△ 2.5
△ 2.5
△ 3.0
△ 3.0
△ 2.9
△ 2.4
△ 3.3
△ 2.7
△ 3.3
△ 3.3
△ 4.2
△ 3.3
△ 3.3
△ 4.0
△ 2.4
(単位:億円、%)
北海道
31,109
31,786
31,002
30,592
30,572
29,545
29,643
29,638
29,791
29,794
29,817
30,335
29,720
29,933
30,445
29,567
29,292
29,326
29,294
近 畿
128,502
131,004
130,804
131,768
131,324
130,643
131,165
130,474
131,214
130,591
130,615
132,003
130,617
130,495
131,895
130,939
130,071
130,850
130,338
前年同月比
増 減 率
0.3
2.1
△ 2.4
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.0
△ 1.0
△ 0.8
△ 1.2
△ 1.5
△ 0.9
△ 0.8
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.4
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.7
△ 1.1
前年同月比
増 減 率
0.5
1.9
△ 0.1
0.2
0.3
0.6
0.5
0.7
0.6
0.1
0.6
0.1
0.1
0.1
0.4
△ 0.0
△ 0.1
0.1
△ 0.6
東 北
22,672
23,392
22,908
22,623
22,266
21,961
22,008
22,003
22,052
21,944
21,939
22,147
21,915
21,979
22,249
21,903
21,832
21,844
21,810
中 国
30,194
30,793
30,417
30,106
30,178
29,644
29,750
29,676
29,868
29,547
29,462
29,816
29,576
29,669
30,055
29,547
29,389
29,472
29,442
(備考)沖縄地区は全国に含めた。
92
当座貸越
信金中金月報 2012.10
前年同月比
増 減 率
△ 0.7
3.1
△ 2.0
△ 1.3
△ 2.7
△ 2.7
△ 2.6
△ 2.4
△ 2.2
△ 2.3
△ 2.1
△ 2.1
△ 1.9
△ 1.4
△ 0.0
△ 0.7
△ 0.7
△ 0.5
△ 0.8
前年同月比
増 減 率
△ 0.1
1.9
△ 1.2
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.8
△ 0.6
△ 0.7
△ 1.0
△ 1.0
△ 0.9
△ 0.8
△ 0.9
△ 0.4
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.5
△ 1.0
東 京
123,881
125,048
122,517
121,510
120,147
119,444
119,919
119,330
119,725
119,175
119,067
119,942
118,860
118,614
119,147
118,496
117,826
118,144
117,668
四 国
10,684
11,023
10,893
10,798
10,685
10,620
10,620
10,590
10,614
10,525
10,496
10,535
10,443
10,445
10,487
10,347
10,316
10,316
10,253
前年同月比
増 減 率
△ 0.5
0.9
△ 2.0
△ 2.2
△ 1.9
△ 1.6
△ 1.4
△ 1.2
△ 1.1
△ 1.4
△ 1.1
△ 1.2
△ 1.2
△ 1.1
△ 0.8
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.0
△ 1.8
前年同月比
増 減 率
0.7
3.1
△ 1.1
△ 1.7
△ 1.9
△ 1.7
△ 2.0
△ 2.0
△ 2.0
△ 2.3
△ 2.2
△ 2.4
△ 2.5
△ 2.3
△ 1.8
△ 2.9
△ 3.0
△ 2.8
△ 3.4
関 東
119,536
121,363
119,524
119,291
118,931
117,731
117,959
117,614
118,223
117,498
117,439
118,483
117,356
117,290
118,145
117,079
116,497
116,778
116,446
九州北部
11,709
12,258
12,096
12,006
11,862
11,811
11,857
11,811
11,897
11,784
11,774
11,995
11,766
11,772
11,874
11,732
11,648
11,732
11,657
前年同月比
増 減 率
0.2
1.5
△ 1.5
△ 1.3
△ 0.4
△ 0.4
△ 0.5
△ 0.4
△ 0.5
△ 0.8
△ 0.4
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.9
△ 1.0
△ 0.8
△ 1.2
前年同月比
増 減 率
1.2
4.6
△ 1.3
△ 1.8
△ 1.9
△ 0.3
△ 0.2
0.0
△ 0.0
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.0
△ 0.8
△ 0.4
0.0
△ 0.7
△ 1.1
△ 0.6
△ 1.6
北 陸
18,316
18,647
18,293
17,955
17,638
17,349
17,411
17,315
17,386
17,200
17,139
17,296
17,073
17,035
17,215
17,010
16,983
16,961
16,870
南九州
14,652
14,810
14,560
14,632
14,465
14,273
14,299
14,279
14,359
14,314
14,342
14,589
14,400
14,383
14,310
14,197
14,207
14,233
14,239
前年同月比
増 減 率
△ 0.3
1.8
△ 1.8
△ 3.2
△ 3.5
△ 3.1
△ 3.3
△ 3.6
△ 3.2
△ 3.6
△ 3.5
△ 3.6
△ 3.7
△ 3.5
△ 2.3
△ 2.5
△ 2.3
△ 2.2
△ 3.1
前年同月比
増 減 率
△ 2.0
1.0
△ 1.6
△ 1.0
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.6
△ 0.8
△ 0.5
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.5
△ 1.0
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.2
△ 0.4
東 海
123,155
127,618
127,512
128,294
128,436
127,969
128,310
128,004
129,481
128,436
128,331
130,161
128,718
128,665
131,005
129,675
129,280
129,876
129,317
全国計
635,433
648,786
641,574
640,623
637,550
632,028
633,986
631,778
635,665
631,853
631,474
638,352
631,492
631,323
637,888
631,519
628,390
630,589
628,385
前年同月比
増 減 率
0.3
3.6
△ 0.0
0.2
0.7
1.2
1.2
1.3
1.3
1.0
1.4
1.4
1.4
1.4
2.0
1.5
1.4
1.4
0.7
前年同月比
増 減 率
0.0
2.1
△ 1.1
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.5
△ 0.2
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.2
0.0
△ 0.4
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.8
1.(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10.9
12
11.3
6
9
12
12.3
6
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10.9
12
11.3
6
9
12
12.3
6
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10.9
12
11.3
6
9
12
12.3
6
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10.9
12
11.3
6
9
12
12.3
6
635,438
648,783
641,573
637,068
640,621
637,546
632,027
635,663
638,350
637,886
630,588
卸売業
32,332
32,996
32,413
32,051
32,521
31,439
31,036
31,539
31,903
30,997
30,162
前年同月比
増 減 率
構成比
0.0
2.1
1.1
1.1
0.9
0.6
0.3
0.2
0.3
0.0
0.2
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
前年同月比
増 減 率
構成比
△ 1.5
2.0
△ 1.7
△ 3.1
△ 3.0
△ 3.0
△ 2.0
△ 1.5
△ 1.8
△ 1.4
△ 2.8
5.0
5.0
5.0
5.0
5.0
4.9
4.9
4.9
4.9
4.8
4.7
△
△
△
△
△
△
△
△
サービス業
(各種サービス) 前年同月比 構成比
増 減 率
78,660
80,166
—
—
—
—
—
—
—
—
—
△ 1.6
1.9
—
—
—
—
—
—
—
—
—
12.3
12.3
—
—
—
—
—
—
—
—
—
物品賃貸業 前年同月比 構成比
増 減 率
3,145
3,159
3,202
3,137
3,127
3,078
3,003
3,044
3,026
3,001
2,903
△ 6.9
0.4
1.3
△ 2.4
△ 5.3
△ 3.8
△ 3.0
△ 2.9
△ 3.2
△ 2.5
△ 3.3
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
企業向け計
前年同月比
増 減 率
構成比
416,469
427,170
420,924
417,202
420,242
414,550
409,749
413,582
415,755
413,127
406,569
△ 0.1
2.5
△ 1.4
△ 2.0
△ 1.8
△ 1.5
△ 1.0
△ 0.8
△ 1.0
△ 0.3
△ 0.7
65.5
65.8
65.6
65.4
65.5
65.0
64.8
65.0
65.1
64.7
64.4
前年同月比
増 減 率
構成比
△ 3.3
0.7
△ 4.3
△ 3.6
△ 3.4
△ 3.3
△ 3.3
△ 2.8
△ 3.3
△ 3.6
△ 4.0
4.9
4.9
4.7
4.7
4.6
4.6
4.5
4.5
4.5
4.4
4.3
小売業
31,544
31,793
30,421
29,976
29,943
29,390
28,900
29,111
28,946
28,329
27,740
飲食業
10,304
10,284
10,377
10,272
10,216
10,042
9,991
9,953
9,865
9,655
9,537
製造業
76,511
77,564
73,994
72,830
73,474
71,219
69,933
70,480
71,067
69,474
67,840
不動産業
宿泊業
1.6
1.5
1.6
1.6
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
1.5
7,427
7,311
7,144
6,999
6,936
6,750
6,774
6,722
6,636
6,466
6,410
地方公共団体 前年同月比 構成比
増 減 率
27,845
32,878
36,815
37,359
37,961
40,814
40,888
40,192
40,712
42,638
42,500
19.5
18.0
11.9
12.9
12.8
10.8
8.1
7.5
7.2
4.4
3.9
構成比
△ 3.2
1.3
△ 4.6
△ 4.2
△ 4.0
△ 3.7
△ 3.6
△ 3.2
△ 3.2
△ 2.4
△ 2.9
12.0
11.9
11.5
11.4
11.4
11.1
11.0
11.0
11.1
10.8
10.7
56,640
57,509
54,659
53,080
53,717
52,704
50,647
51,813
52,007
51,095
48,722
前年同月比
増 減 率
構成比
個人による
貸家業
5.4
3.1
2.8
1.3
1.3
1.6
2.0
2.0
2.0
2.2
2.3
17.9
18.1
18.8
19.0
19.0
19.2
19.4
19.5
19.5
19.7
19.9
114,045
117,600
121,003
121,653
122,261
123,044
123,088
124,086
124,774
125,806
125,955
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.4
△ 0.1
0.9
△ 2.6
△ 3.3
△ 3.2
△ 2.8
△ 3.1
△ 3.4
△ 3.8
△ 4.5
前年同月比
増 減 率
個 人
4.3
5.0
5.7
5.8
5.9
6.4
6.4
6.3
6.3
6.6
6.7
191,123
188,734
183,833
182,506
182,418
182,182
181,389
181,889
181,883
182,121
181,517
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
5.8
1.5
2.2
5.6
5.8
5.5
4.1
3.9
4.3
4.2
5.3
1.1
1.1
1.1
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
1.8
1.2
2.5
1.7
1.2
0.8
0.6
0.3
0.2
0.0
0.0
30.0
29.0
28.6
28.6
28.4
28.5
28.6
28.6
28.4
28.5
28.7
前年同月比
構成比
増 減 率
建設業
51,766
52,118
52,227
52,520
52,644
52,930
53,163
53,355
53,787
医療・福祉
15,228
16,406
17,196
17,425
17,736
17,687
17,711
17,804
18,107
18,594
18,601
住宅ローン
148,973
149,717
148,755
148,440
149,159
149,240
149,274
149,708
150,622
150,810
150,925
△ 1.9
1.5
△ 4.9
△ 4.5
△ 3.8
△ 3.5
△ 2.7
△ 2.3
△ 3.1
△ 3.0
△ 3.8
8.9
8.8
8.5
8.3
8.3
8.2
8.0
8.1
8.1
8.0
7.7
前年同月比
構成比
増 減 率
—
—
—
0.9
0.1
1.4
1.4
1.5
1.7
1.5
2.1
—
—
8.0
8.1
8.1
8.2
8.3
8.3
8.3
8.3
8.5
前年同月比
構成比
増 減 率
3.1
7.7
4.8
2.3
2.8
2.8
2.3
2.1
2.0
5.1
5.0
2.3
2.5
2.6
2.7
2.7
2.7
2.8
2.8
2.8
2.9
2.9
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 0.0
0.4
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.1
0.3
0.6
0.8
0.9
1.0
1.1
23.4
23.0
23.1
23.3
23.2
23.4
23.6
23.5
23.5
23.6
23.9
(備考)1.日本銀行「業種別貸出金調査表」より作成。このため、「日計表」による(5)科目別・地区別貸出金の貸出金計とは一致しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2009年6月から日本銀行「業種別貸出金調査表」の業種分類変更に伴い、不動産業の内訳として「個人による貸家業」を追加
サービス業(各種サービス)の更新停止に伴い、「飲食業」、「宿泊業」、「医療・福祉」、「物品賃貸業」を追加
統 計
93
1.(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
現 金
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
16,670
16,741
15,872
15,449
16,187
13,532
13,579
13,507
14,170
13,061
13,725
15,279
13,721
13,007
15,189
13,712
13,605
13,563
13,580
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
年 月 末
2008.3
09.3
10.3
10. 12
11.3
6
11.7
8
9
10
11
12
12.1
2
3
4
5
6
7
預け金
208,064
214,336
227,793
257,092
258,109
280,554
275,001
279,773
281,645
276,985
271,366
276,775
273,632
279,703
264,639
289,906
283,746
293,794
289,204
有価証券
323,482
324,132
343,384
348,449
344,224
349,719
353,009
352,965
349,848
357,731
361,609
360,884
364,616
365,050
370,593
362,965
363,383
364,930
365,017
貸付信託
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
うち信金中金預け金
7.3)
3.0)
6.2)
7.9)
13.3)
7.6)
7.9)
5.5)
7.8)
4.9)
5.6)
7.6)
6.8)
5.4)
2.5)
5.7)
4.5)
4.7)
5.1)
176,971
181,259
190,076
218,296
208,325
226,256
222,664
223,367
222,191
219,433
217,649
220,353
216,801
218,830
207,198
227,962
224,577
228,487
226,937
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(△
(△
(
(
(△
(△
(
(
(
(
国 債
1.6) 101,608 (
2.9)
0.2)
97,509 (△ 4.0)
5.9) 104,547 (
7.2)
3.5)
99,944 (
3.4)
0.2)
96,241 (△ 7.9)
3.9)
94,254 (△ 0.4)
4.6)
94,002 (
0.0)
5.0)
93,805 (
0.2)
3.8)
90,077 (△ 5.1)
5.6)
93,517 (△ 0.3)
4.8)
96,185 (△ 1.1)
3.5)
96,222 (△ 3.7)
3.8)
97,658 (△ 2.7)
4.3)
97,885 (△ 1.4)
7.6) 103,325 (
7.3)
3.9)
95,857 (△ 1.4)
3.7)
94,457 (△ 1.8)
4.3)
94,702 (
0.4)
3.4)
93,840 (△ 0.1)
投資信託
9,129
6,602
6,037
6,549
5,664
6,480
6,485
6,738
6,794
6,780
6,829
6,833
6,749
6,558
5,747
6,329
6,509
6,644
6,759
外国証券
47,488
44,613
40,327
39,755
38,470
38,705
39,064
39,109
38,929
38,989
39,044
38,453
38,467
37,985
37,077
37,380
37,604
37,225
37,211
その他の
証 券
1,616
1,150
1,167
1,228
1,080
1,168
1,162
1,157
1,151
1,158
1,149
1,140
1,114
1,108
998
1,085
1,078
1,055
1,048
買入手形
5.0)
2.4)
4.8)
7.4)
9.6)
2.6)
2.7)
0.4)
0.5)
1.1)
0.3)
0.9)
0.1)
1.6)
0.5)
2.2)
0.4)
0.9)
1.9)
地方債
500
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
短期社債
34,602
37,995
47,258
54,581
56,047
57,591
58,079
58,144
58,494
60,235
60,906
61,464
62,645
63,049
64,594
63,475
63,352
64,796
65,105
320
283
21
329
21
247
281
276
95
169
178
195
174
206
26
146
151
159
149
余資運用資産計
(A)
563,638 (
562,869 (△
595,768 (
632,450 (
625,003 (
654,648 (
652,306 (
656,873 (
653,078 (
658,232 (
657,290 (
664,054 (
662,419 (
668,490 (
658,798 (
677,301 (
671,978 (
684,199 (
678,731 (
3.7)
0.1)
5.8)
4.8)
4.9)
4.8)
5.4)
4.7)
4.8)
5.0)
4.8)
4.9)
4.9)
4.7)
5.4)
4.6)
4.1)
4.5)
4.0)
コール
ローン
買現先勘定
8,918
2,439
3,768
5,532
1,631
4,951
4,553
4,634
1,568
4,600
4,558
4,748
4,249
4,762
3,109
5,020
5,374
5,602
4,792
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
社 債
120,431
129,396
137,250
139,007
140,598
144,577
147,261
146,935
147,477
150,046
150,498
149,791
151,064
151,586
153,025
152,225
153,630
153,688
154,270
信金中金
利 用 額
(B)
176,971
181,259
190,076
218,296
208,325
226,256
222,664
223,367
222,191
219,433
217,649
220,353
216,801
218,830
207,198
227,962
224,577
228,487
226,937
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
3.2)
7.4)
6.0)
2.0)
2.4)
6.2)
7.8)
8.0)
8.3)
9.2)
8.3)
7.7)
7.7)
8.4)
8.8)
7.1)
7.0)
6.3)
4.7)
債券貸借取引 買入金銭
支 払 保 証 金 債 権
1,299
759
150
0
59
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
公社公団債
42,898
42,510
45,377
47,819
48,772
50,395
51,543
51,282
51,041
52,018
52,447
52,332
53,183
53,795
54,977
54,511
55,250
55,406
55,299
預貸率 (A)
/預金
55.8
56.1
54.6
52.9
53.2
51.6
51.8
51.5
51.9
51.5
51.6
51.6
51.4
51.2
52.0
50.8
50.8
50.5
50.5
49.5
48.7
50.7
52.3
52.1
53.4
53.3
53.6
53.3
53.6
53.7
53.6
53.9
54.2
53.7
54.4
54.3
54.7
54.6
金銭の信託
2,452
2,653
3,090
3,675
2,839
3,657
3,837
3,658
3,547
3,547
3,719
4,025
3,877
3,706
3,289
3,581
3,705
4,068
3,895
2,205
1,768
1,657
2,193
1,898
2,180
2,278
2,280
2,238
2,242
2,256
2,291
2,271
2,209
1,932
2,069
2,112
2,188
2,183
金融債
35,774
37,492
33,622
30,358
30,269
30,909
31,158
31,212
31,283
31,655
31,743
31,846
31,896
31,857
32,015
31,755
31,947
32,087
32,081
その他
41,758
49,394
58,250
60,829
61,556
63,272
64,560
64,439
65,152
66,372
66,306
65,613
65,984
65,932
66,033
65,958
66,432
66,195
66,889
商 品
有価証券
45
36
51
56
52
52
45
53
59
63
53
49
50
50
44
43
50
51
56
株 式
8,284
6,580
6,773
7,052
6,099
6,694
6,670
6,798
6,826
6,833
6,816
6,782
6,741
6,669
5,798
6,465
6,597
6,658
6,631
預証率 (B)
/預金(B)
/
(A)
28.4
28.0
29.2
28.8
28.7
28.5
28.8
28.8
28.5
29.1
29.5
29.1
29.6
29.6
30.2
29.2
29.4
29.2
29.3
15.5
15.6
16.1
18.0
17.3
18.4
18.2
18.2
18.1
17.9
17.7
17.8
17.6
17.7
16.8
18.3
18.1
18.2
18.2
31.3
32.2
31.9
34.5
33.3
34.5
34.1
34.0
34.0
33.3
33.1
33.1
32.7
32.7
31.4
33.6
33.4
33.3
33.4
(備考)1.()内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
3.余資運用資産計は、現金、預け金、買入手形、コールローン、買現先勘定、債券貸借取引支払保証金、買入金銭債権、
金銭の信託、商品有価証券、有価証券の合計
94
信金中金月報 2012.10
2.(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
2008.3
信用金庫
前年同月比
増 減 率
1,137,275
2.1
国内銀行
(債券、信託
を含む。)
前年同月比
増 減 率
7,780,686
1.3
大手銀行
前年同月比
増 減 率
5,268,076
1.4
(債券、信託
を含む。)
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
3,032,690
3.9
2,525,751
1.5
うち預金
地方銀行
前年同月比
増 減 率
1,956,991
1.0
09.3
1,154,531
1.5
7,694,609
△ 1.1
5,131,449
△ 2.5
3,133,105
3.3
2,575,584
1.9
2,002,165
2.3
10.3
1,173,806
1.6
7,802,680
1.4
5,162,829
0.6
3,186,534
1.7
2,633,256
2.2
2,072,150
3.4
10. 12
1,208,008
1.8
7,727,318
1.2
5,053,586
0.8
3,123,062
1.0
2,576,384
1.6
2,097,915
2.6
11. 3
1,197,465
2.0
7,932,061
1.6
5,231,596
1.3
3,292,961
3.3
2,742,676
4.1
2,124,424
2.5
6
1,223,084
2.1
7,854,077
0.9
5,104,786
△ 0.2
3,224,611
1.5
2,670,710
1.6
2,164,346
3.5
11. 7
1,221,470
2.4
7,784,939
0.8
5,052,943
△ 0.4
3,180,051
1.5
2,623,105
1.5
2,148,943
3.6
8
1,223,770
2.2
7,784,877
0.8
5,055,907
△ 0.5
3,192,006
1.5
2,636,808
1.7
2,145,956
3.5
9
1,223,773
2.3
7,824,356
0.8
5,093,540
△ 0.4
3,228,699
1.8
2,668,955
1.9
2,145,286
3.5
10
1,225,081
2.2
7,795,313
1.1
5,071,432
0.0
3,204,262
2.4
2,644,245
2.5
2,140,909
3.5
11
1,222,801
2.3
7,868,186
1.5
5,140,673
0.6
3,257,484
3.4
2,695,341
3.5
2,143,822
3.3
12
1,236,065
2.3
7,854,388
1.6
5,094,239
0.8
3,238,111
3.6
2,673,692
3.7
2,167,776
3.3
12. 1
1,227,326
2.2
7,859,344
1.8
5,123,176
1.0
3,244,325
3.4
2,682,451
3.5
2,150,149
3.3
2
1,230,955
2.0
7,870,715
1.4
5,128,183
0.7
3,247,919
2.6
2,682,553
2.4
2,154,644
3.0
3
1,225,884
2.3
8,036,404
1.3
5,232,140
0.0
3,328,132
1.0
2,758,508
0.5
2,207,560
3.9
4
1,242,241
2.0
7,965,523
1.2
5,158,942
0.4
3,286,632
1.3
2,724,868
1.2
2,209,213
2.6
5
1,234,790
1.9
7,971,125
1.2
5,189,923
0.7
3,315,071
1.6
2,751,255
1.5
2,190,264
2.1
6
1,247,750
2.0
7,951,347
1.2
5,137,152
0.6
3,296,732
2.2
2,727,744
2.1
2,215,090
2.3
7
1,241,301
1.6
7,900,457
1.4
5,120,306
1.3
3,276,665
3.0
2,711,070
3.3
2,187,118
1.7
年 月 末
2008.3
第二地銀
前年同月比
増 減 率
555,619
1.7
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
1,817,438
―
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
10,735,399
―
09.3
560,995
0.9
1,774,798
△ 2.3
10,623,938
△ 1.0
10.3
567,701
1.1
1,757,977
△ 0.9
10,734,463
1.0
10. 12
575,817
△ 0.2
1,757,299
△ 0.7
10,692,625
0.9
11. 3
576,041
1.4
1,746,532
△ 0.6
10,876,058
1.3
0.8
6
584,945
2.0
1,761,866
△ 0.3
10,839,027
11. 7
583,053
2.3
― ―
―
―
8
583,014
2.6
― ―
―
―
0.8
9
585,530
2.6
1,748,784
△ 0.0
10,796,913
10
582,972
2.3
― ―
―
―
11
583,691
2.6
― ―
―
―
1.4
12
592,373
2.8
1,760,519
0.1
10,850,972
12. 1
586,019
2.7
―
―
―
―
2
587,888
2.4
―
―
―
―
1.3
3
596,704
3.5
1,756,353
0.5
11,018,641
4
597,368
2.6
―
―
―
―
5
590,938
2.1
―
―
―
―
6
599,105
2.4
1,767,281
0.3
10,966,378
1.1
7
593,033
1.7
― ―
―
―
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、ゆうちょ銀行ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行-(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.郵便貯金は2008年4月より四半期ベースで公表
5.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
95
2.(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
年 月 末
2008.3
信用金庫
前年同月比
増 減 率
635,433
0.0
大手銀行
前年同月比
増 減 率
2,281,304
0.4
前年同月比
増 減 率
1,854,662 △ 0.3
都市銀行
地方銀行
前年同月比
増 減 率
1,483,586
2.6
第二地銀
前年同月比
増 減 率
429,309
2.3
前年同月比
増 減 率
4,829,632
1.2
09.3
648,786
2.1
2,391,966
4.8
1,952,042
5.2
1,547,581
4.3
435,832
1.5
5,024,165
4.0
10.3
641,574
△ 1.1
2,293,569
△ 4.1
1,846,180
△ 5.4
1,547,663
0.0
434,891
△ 0.2
4,917,697
△ 2.1
10. 12
640,623
△ 0.9
2,208,028
△ 4.2
1,780,767
△ 4.7
1,559,490
1.2
436,660
△ 0.4
4,844,801
△ 1.7
11. 3
637,550
△ 0.6
2,238,025
△ 2.4
1,794,237
△ 2.8
1,574,727
1.7
438,766
0.8
4,889,068
△ 0.5
6
632,028
△ 0.3
2,195,313
△ 2.8
1,763,963
△ 3.3
1,560,699
1.8
434,596
1.3
4,822,636
△ 0.6
11. 7
633,986
△ 0.3
2,190,647
△ 1.9
1,765,610
△ 2.3
1,569,213
1.7
435,942
1.3
4,829,788
△ 0.2
8
631,778
△ 0.2
2,181,412
△ 2.0
1,753,933
△ 2.7
1,566,685
1.8
434,079
1.2
4,813,954
△ 0.2
9
635,665
△ 0.2
2,218,353
△ 1.4
1,774,622
△ 2.0
1,582,388
2.0
439,905
1.4
4,876,311
0.1
10
631,853
△ 0.5
2,196,709
△ 0.7
1,763,303
△ 1.2
1,574,558
1.7
435,560
0.9
4,838,680
0.2
11
631,474
△ 0.2
2,192,041
△ 0.3
1,760,065
△ 0.6
1,579,319
2.2
436,345
1.3
4,839,179
0.6
12
638,352
△ 0.3
2,218,987
0.4
1,784,820
0.2
1,597,352
2.4
442,243
1.2
4,896,934
1.0
12. 1
631,492
△ 0.3
2,194,926
△ 0.0
1,764,642
△ 0.6
1,590,991
2.5
437,679
1.1
4,855,088
0.8
2
631,323
△ 0.2
2,206,697
0.3
1,777,391
0.0
1,592,988
2.4
437,711
1.1
4,868,719
1.0
3
637,888
0.0
2,239,295
0.0
1,798,636
0.2
1,616,955
2.6
446,643
1.7
4,940,781
1.0
4
631,519
△ 0.4
2,211,462
0.0
1,778,427
0.0
1,603,340
2.5
441,107
1.4
4,887,428
0.9
5
628,390
△ 0.3
2,195,697
△ 0.4
1,764,416
△ 0.7
1,601,371
2.7
439,270
1.4
4,864,728
0.7
6
630,589
△ 0.2
2,212,770
0.7
1,771,611
0.4
1,610,013
3.1
442,894
1.9
4,896,266
1.5
7
628,385
△ 0.8
2,198,958
0.3
1,761,194
△ 0.2
1,609,645
2.5
441,748
1.3
4,878,736
1.0
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行-(地方銀行+第二地銀)の計数
3.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
96
合 計
信金中金月報 2012.10
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域」
「中小企業」
「協同組織」に関連する金融・
経済分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国におけ
る当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご
参照ください。
ホームページのご案内
当研究所のホームページでは、当研究所の調査研究成果である各種レポート、信金中金月報のほか、統計デー
タ等を掲示し、広く一般の方のご利用に供しておりますのでご活用ください。
また、「ご意見・ご要望窓口」を設置しておりますので、当研究所の調査研究や活動等に関しまして広くご意
見等をお寄せいただきますよう宜しくお願い申し上げます。
【ホームページの主なコンテンツ】
○当研究所の概要、活動状況、組織
○各種レポート
内外経済、中小企業金融、地域金融、
協同組織金融、産業・企業動向等
○刊行物
信金中金月報、全国信用金庫概況等
○信用金庫統計
編集委員会(敬称略、順不同)
委 員 長
清水啓典
一橋大学名誉教授・一橋大学大学院 商学研究科特任教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学 国際総合科学部教授
委 員
川波洋一
九州大学大学院 経済学研究院教授
委 員
鹿野嘉昭
同志社大学 経済学部教授
委 員
首藤 惠
早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授
問い合わせ先
日本語/英語
○アジア主要国との貿易・投資に関する各種情報
海外ビジネス支援
○論文募集
【URL】
http://www.scbri.jp/
信金中央金庫 地域・中小企業研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:山田、品田)
Tel : 03
(5202)
7671/Fax : 03
(3278)
7048
ISSN 1346−9479
2012年( 平 成24年 )1 0月1日 発 行
2012年 1 0月号 第11巻 第 1 0 号( 通 巻47 8 号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信 金 中 央 金 庫 地 域・中 小 企 業 研 究 所
〒1 0 3−0 0 2 8 東 京 都 中 央 区 八 重 洲 1−3−7
T E L 0 3( 5 2 0 2 )7 6 7 1 F A X 0 3( 3 2 7 8 )7 0 4 8
<本 誌の無 断 転 用 、転 載を禁じます>
ISSN1346-9479
信金中金月報
第 11巻 第 9 号( 通 巻 4 7 7 号 )
2012年
月号
9
デジタル革命 の イ ン パ ク ト
「再生可能エ ネ ル ギ ー を 考 え る 」
(とましん創友会主催シンポジウム報告)
中小企業にお け る 省 エ ネ ル ギ ー の 取 組 み の 可 能 性
−ESCO(エスコ)導入にかかる検討を中心に−
信用金庫の視 点 で 読 み 解 く 2012年 版 中 小 企 業 白 書
−中小企業の“潜在力”を引き出すためのガイドブック−
信用金庫の医 療・福 祉 向 け 融 資 の 動 向
信用金庫の地 公 体 向 け 融 資 の 動 向
統計
アオ
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