...

哲学入門 5 ・・・ 形而上学

by user

on
Category: Documents
29

views

Report

Comments

Transcript

哲学入門 5 ・・・ 形而上学
リゲンザ神父の哲学入門
皆さん、今月は形而上学について考えてみましょう。
形而上:時間・空間の感性形式を探る経験的現象として存在することなく、それ自身超自然で
あって、ただ理性的思惟に、または独特な直感によってとらえられる究極的なもの。
形而上学 metaphysics: 元来「物理学の後に置かれた書」、ta meta ta phusika(ギリシャ)
という意味の字で、アリストテレスの死後、著書編纂の際に、存在の根本原理を
論じた書を物理学書の後に排列したことから起った名前。現象を超越し、または背後に
あるものの本質、存在の根本原理、絶対存在を純粋思惟により、あるいは直感によって
探求しようとする学問。神、世界、霊魂などがその主要問題。
哲 学 に お い て first philosophy は 見 え な い 世 界 と さ れ ま す 。
広辞苑より
物 理 学 は natural
philosophy(自然哲学)と呼ばれ second philosophy です。この first philosophy の
形而上学はアリストテレス神学とも呼ばれます。
上記の広辞苑でもご案内していますが、そもそも形而上学とは、存在の本質を探求する
ものです。
アリストテレスにとってイデア論は、being(存在・本質)を探求するためには
役立ちませんでした。プラトンの idea 論(idea を永遠不滅の真実在とする)によると、
idea はその人そのものですから、idea が解かれば自身のことが解かるのです。しかし、
そのためには死を迎えなければならず、人間は死んでからしか自分のことを知ることが
できないということになってしまうからです。
形相と
形相と質料
そこでアリストテレスは、自身を知るためには materia(一般的には物質・原料など→
いわゆる身体)を知る必要があるとしました。この materia を理解するために、形相・形態
(eidos・forma
現実にあるものの実体)と質料(hyle
現実にあるものの素材)を
必要としました。
ところで、この世界には無数の materia があり、その形態(形相)も違います。もし、
形態(形相)がなく質料だけであったら、世界はカオスとなります。
質料について考えてみましょう。質料はどこまでが質料でしょうか?例えば、スポンジ
ケーキの質料は、小麦粉、バター、卵・・・といったものになりますが、バターを構成して
いるものは油脂、タンパク質、糖質、水となり、油脂の中にも・・・・・・・というように
形相と質料とは常に相対的であって、生成のどの段階に注目するかによっていくらでも区別
されてしまうのです。
では、どの質料もそれより低次の生成の段階からみれば形相であることになり、その下降
は無限に続くのでしょうか?また反対に、どの形相もそれより高次の生成の段階から見れば
質料であることになり、その上昇は無限に続くのでしょうか?
アリストテレスは、他のいかなるものの形相でもありえない質料を第 1 質料(prote)と
名づけました。そうするとその対極に、つまり生成の最高の段階に、他のいかなるものの
質料でもありえない形相、純粋形相を考えなければなりません。
アリストテレスは質料を一切含まないこの純粋形相を神としました。こうして彼は、
すべての存在が最低から最高へ連続的に段階づけられていると考えました。
さて、今度は生成について考えてみましょう。先ほどの卵は、卵の段階ではスポンジ
ケーキではありませんが、スポンジケーキになる可能性をもっています。これを卵は
スポンジケーキの可能態(dynamis)であり、できあがったケーキは卵の現実態(energeia)
と、いうことができます。この現実態はまた完成態(enterecheia)とか、目的(telos)と
いわれます。
4原因説
物質の生成は可能態から現実態への移行です。そこで、アリストテレスは生成の原因を
4つに分け、質料因、形相因、作用因、目的因としています。作用因と目的因は結局、
形相因に還元されます。なぜなら、スポンジケーキを作る目的も行為も形相がなければ
成立しないからです。
さて、私たちの身体も含めたすべての存在について今度は考えます。すべての物質には
パワーが内在します。このパワーはどこからくるのでしょう?
パワーをつくるにはエンジンが必要です。当時の信仰のある方たちはこのエンジンを
神としました。当時の神学者たちは、全ての動きは神の計らいであるとしました。しかし、
アリストテレスはモーターはいただいているけれども、実際に動かすのは例えば人そのもの
であるとしました。神はモーターとして命を入れましたが、後は自身で動かすのです。
人間を動かすのは“脳”です。脳は魂であり、アリストテレスは脳を top としました。
なぜならば、人は脳によって自身の内と外を知ることができます。これにより人は自身の
身体からそのとりまく環境までを理解することもできますし、今回のテーマ見えない世界を
イメージすることもできるのです。しかし、脳だけでは成り立ちません。脳は身体の
一部なのです。
形相と質料は常に一体でなければならないとした、アリストテレスの考えをご理解
いただけましたか?
Fly UP