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寒地土木研究所 第7回技術者交流フォーラム in 岩見沢 「空知地域の

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寒地土木研究所 第7回技術者交流フォーラム in 岩見沢 「空知地域の
研究所ニュース
寒地土木研究所 第7回技術者交流フォーラム in 岩見沢
「空知地域の発展と生活を支える土木技術」を開催しました
寒地技術推進室道央支所
1. はじめに
域は実現していない」と治水の重要性について述べられ
寒地土木研究所の各支所では、地域において求められ
ました。その上で「明治期に治水に尽力したエンジニア
る技術開発に関する情報交換、産学官の技術者交流及び
の岡崎文吉氏は、自然を科学の力でねじ伏せるのではな
連携等を図る目的で技術者交流フォーラムを開催してい
く、自然に沿った大地のあり方を考えた人物。岡崎氏の
ます。第7回目となる今回は、
「空知地域の発展と生活を
書物からは、河川を過度に矯正せず、不良な一部分に対
支える土木技術」をテーマに、平成22年10月5日
(火)に
して改修を施す、川そのものの本質を見極める視線が感
岩見沢市自治体ネットワークセンターにて開催し、各機
じられる。川は水の循環を表し、地球の生命そのもの。
関から180名の参加がありました。フォーラムでは、空知
その川を大事に未来に伝え、情緒あふれた美しい形を作
地域におけるインフラ整備の歴史と現状や地域活性化事
り出せるかは、土木技術者の頭脳と感性にかかっている。
業についてそれぞれからご講演いただき、参加者相互の
今後も、川との戦いの綱引きではなく、川の本質を活か
情報交換及び連携、さらには今後の技術開発についての
すための心の綱引きをしながら、環境をデザインしてい
方向性を探りました。
ってほしい」と土木関係者への期待を込めたお話をいた
だきました。
2. 講演概要
次に、国土交通省北海道開発局札幌開発建設部岩見沢
最初に、ノンフィクションライターの北室かず子氏よ
農業事務所の川口清美所長より「石狩川水系の農業水利
り「石狩川・人と川の壮大なる綱引き」と題して特別講
史と農業の発展」と題して講演をいただきました。
演をいただきました。
特別講演では、現在の米どころとしての空知地域を築
いた石狩川の洪水と治水の歴史を紐解き、石狩市で発見
された日本最古のサケ捕獲施設や、治水に携わったエン
ジニアの思想などにも言及、川と人の奥深い関係につい
講演を行う川口所長
講演では、空知の農業や過酷な自然条件に触れ、灌漑
事業や土木技術を取り入れて苦難を克服し、発展してい
った空知の農業水利史について、お話をいただきました。
特別講演を行う北室氏
川口氏は、「空知地域はもともと軟弱な泥炭土や度重な
る河川の氾濫、冷涼な気候などがあり米づくりに不向き。
てお話をいただきました。
ただ、『日本の一大穀倉地帯に』という地域の方々の想い
北室氏は、
「石狩川は北海道の歴史を凝縮した川であり、
や、北海道の開発、戦後の食料増産と失業救済などの社
わかっている限りで約4,000年前から人との関わりがあっ
会的背景もあり、国営総合かんがい排水事業で本格的に
た。洪水や泥炭性の低湿地もあることから、優れた治水
整備が進んだことで、北海道一の穀倉地帯へと発展した」
施設や技術がなければ、現在の米どころとしての空知地
とし、農業水利施設は地域の大きな財産であり、それら
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寒地土木研究所月報 №691 2010年12月
を守るために、適正でコストのかからない農業水利施設
ど、他にあまり例のない手法を取り入れたスマートなデ
のあり方の研究開発を進めて取り組んでいくというお話
ザインとなった」とした上で、建物は風景の中に異物と
をいただきました。
してあるのではなく、風景の一部として意識できるよう
続いて寒地土木研究所からは、水利基盤チームの中村
にすることが大切だというお話をいただきました。
和正上席研究員より「寒地土研における農業水利に関す
次に、空知フード&ワインロード計画協議会の真坂紀
る研究の事例と今後の展開方向」と題して、水利基盤チ
至氏と植村真美氏より、「空知フード&ワインロード計画
ームの研究課題のうち「コンクリート開水路の補修」「コ
から明るい未来を創り上げる~建設業と異業種の連携に
ンクリート開水路の凍害劣化の診断」など、水田用水の
よる空知元気回復プロジェクト~」と題して講演いただ
安定供給に関する課題を取り上げ、技術的課題、最近の
きました。
研究内容の要点、今後の方向性について講演しました。
真坂氏からは、異業種との連携から地域活性化へつな
げるという同プロジェクトの目的や事業展開などについ
て説明が、植村氏からは、空知産食材を使った商品の情
報発信手段として、ケータリングカーを使用した道の駅
での販売や商品開発の紹介がありました。
技術者交流フォーラムの様子
次に、岩見沢市建設部建設管理課の鈴木栄基課長より、
「まちとつながる駅と通路」と題した講演をいただきました。
講演では、駅舎を中心としたまちづくりと土木、建築
講演を行う真坂氏(左)、植村氏(右)
技術との関わりについて、グッドデザイン賞を受賞した
岩見沢複合駅舎の特徴を中心にお話をいただきました。
「空知ワインロード計画、空知シーニックバイウェイ構
想など、空知の魅力ある資源を活用したビジネス展開を
模索している。
」とした上で、異業種と連携して互いのノ
ウハウや知識を生かしながら、元気あふれる空知地域を
つくっていきたいと真坂氏よりお話をいただきました。
植村氏からは、「自分の地域の魅力を見直して活性化を
考えること、そのために会話を増やしていくことがまち
づくりには大切」という、地域に出向いて PR をしている
中で実感したことについてお話をいただきました。
3. おわりに
講演を行う鈴木課長
最後に、司会を務めた古賀道央支所長より、
「技術者交
流フォーラムは地域において求められる技術開発に関す
鈴木氏からは、「現在の岩見沢駅は、旧駅舎焼失を契機
る情報交換、技術者の交流及び連携を深める目的で開催
に、駅を市民に近づける複合駅舎として建設され、建築
している。今回のフォーラムを通じて、今後の技術開発
分野で非常に高い評価を受けている。まちの顔となる駅、
や地域活性化の取り組みに関して各機関の連携や交流の
地域交流の拠点、屋内環境、周辺施設との調和、市街地
輪が広がればと願っている。そのために寒地土木研究所
との連携などにも配慮した駅舎は、機能面は市民の意見
道央支所は、これからも地域の技術者の皆さんと密接な
を、デザインは専門家の提案を取り入れ、駅を市民に近
関係を作っていく」と宣言し、フォーラムを締めくくり
づけることに成功。建物と道路が一体化している複合駅
ました。
舎は、建築分野と土木技術との一体化や仕上げの統一な
寒地土木研究所月報 №691 2010年12月 (文責:坂口 勝利)
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