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Title 両側睾丸細網肉腫の1例 Author(s) - Kyoto University Research

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Title 両側睾丸細網肉腫の1例 Author(s) - Kyoto University Research
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両側睾丸細網肉腫の1例
川村, 繁美; 佐々木, 英夫; 高田, 耕; 吉田, 郁彦
泌尿器科紀要 (1986), 32(2): 287-292
1986-02
http://hdl.handle.net/2433/118734
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
287
泌 尿紀要32巻2号
1986年2月
両 側 睾 丸 細 網 肉 腫 の1例
岩 手 県 立 中央 病 院 泌尿 器 科(科 長:吉
川
A CASE
OF
村
繁
美
佐 々 木
英
夫
高
田
吉
田
Shigemi
Koh
耕
郁
BILATERAL
SARCOMA
田 郁 彦)
彦
RETICULUM
OF
THE
KAWAMURA,
TAKATA and
CELL
TESTIS
Hideo
Ikuhiko
SASAKI,
YOSHIDA
From the Department of Urology, Iwate Prefectural Central Hospital
(Chief - Dr. I. Yoshida)
A case of reticulum
cell sarcoma
of bilateral
testis is described.
The patient
was a 58-
year-old man who complained of painless swelling of the right scrotal contents.
He was
treated by bilateral high orchiectomy.
The right testicular tumor was histologically diagnosed
as reticulum
motherapy
cell sarcoma,
(vincristin,
and the left testicular
Endoxan,
has been doing well without
6-MP
and
any clinical
tumor was also
prednisolone)
evidence
diagnosed
was performed,
of recurrence.
The
as RCS.
and the
literature
Chepatient
is reviewed
briefly.
Key
words:
Reticulum
cell
sarcoma,
Testis
現病 歴:1984年3月
緒
言
腫脹 に 気付 い た.4月
睾丸 腫 瘍 の中 で細 網 肉腫 が 占 め る割 合 は少 な く,更
頃 よ り右 陰 の う内容 物 の 無 痛性
上 旬,某 医 を受 診 し,右 副 睾丸
結核 の疑 い で精 査,加 療 を 目的に 当科 を 紹 介 され た.
に 両側 に 発 生 した もの の 本邦 報告 は12例 を数 え る のみ
現症:体 格 中 等 度,栄 養 状態 良 好.眼 瞼,眼 球 結 膜
であ る,最 近 著 者 は,ほ ぼ 同時 発 生 した と思 わ れ る両
に 貧 血,黄 疸 を 認 め な い.全 身 の表 在 リンパ節 は触 知
側 睾丸 細 網 肉 腫 の1例 を経 験 した の で若 干 の文 献 的 考
しな い.胸 腹 部 に理 学 的異 常 所 見 を 認 め な い.陰 茎 及
察 を加 え て報 告 す る.
び前 立 腺 に は 異 常 を認 め な い.右 睾 丸 に は 副睾 丸 体 部
に 接 し て示 指 頭 大,表 面 平 滑 な硬 い 無 痛性 腫瘤 を触 知
症
患 者;58歳,男
例
し副 睾 丸 との境 界 は不 明瞭 であ った.左 側 は副 睾 丸 頭
性,公 務 員
部 に 接 して 大 豆 大 の硬 い無 痛 性 腫瘤 を触 知 した が 副 睾
主 訴=右 陰 の う内容 物 の無 痛 性 腫 脹
丸 との境 界 は不 明瞭 で あ った 。 精 索 は左 右 と もに 異 常
初診:1984年4月25日
所 見 は 認 め られ なか った.
入 院 時 検 査 成 績:赤 沈1時 間値5mm,2時
入院1984年5月1日
mm,CRP陰
家族 歴:特 記 す べ き こ とな し
既 往 歴140年
前,虫
垂 切除 術.9年
ニアに て1ヵ 月 入院 加療.
前,樵 間板 ヘ ル
性,血
間 値ll
液 一 般 検 査;RBC475×104/
mm3,Hbl5。49/dl,Ht45.8%,PLTI6.5×104/
mm3,WBC6,600/mm3,白
血 球 分 画 好 中 球55%(桿
288
泌 尿 紀要32巻2号1986年
どを 占 め,正 常 と思わ れ る睾 丸 実 質 が わ ず かに 残 って
状 核 球3%,分
葉 核 球52%),好
塩 基 球0%,好
酸球
02
0>単 球7%,リ
ン パ 球36,,°0.血 液 生 化 学 検 査;総
蛋 白6.69/dl,蛋
白 分 画 ア ル ブ ミ ン72.8%,α1グ
リ ン2.5%,α2グ
rグ
ロ プ リ ン7.9%,β
いた.ま
ロブ
病理組織所見
グ ロ ブ リ ン6.5%,
一P49
血 時 間2分30秒,プ
ロ ン ビ ン 時 間llO%,腎
分 値29%,ユ20分
機 能 検 査PSP排
色 検 査:陰
X線
肥 厚,造 精 細 胞 の 消失 な ど著 明 な萎 縮 性 変 化が 認 め ら
れ た(Fig.2,3).
ロ ト
泄 試 験15
術 後 経 過,創 治 癒 は 良 好 で あ ったが,初 診時,左 睾
丸に も大 豆 大 の無 痛 性 の結 節 を触 知 し てお り,細 網 肉
値79%.
尿 所 見 ・正 常,尿
性,ツ
一 般 細 菌 検 査 陰 性,尿
腫 の両 側 睾 丸 発 生 も否 定 で きな い ため,術 後7日
中結 核 菌 染
部X線
目に
左側 高 位除 睾 術 を 施 行 した.
ベ ル ク リ ン反 応 強 陽 性.
学 的 検 査=胸
類 の び ま ん性 リ
か に 残 存 す る精 細 管 に は基 底 膜 の硝 子 様 変 化,線 維 性
清 電 解 質 正 常,GPT2gmu/
ml,GOT27mu/ml,LDH178mu/ml,A正
mu/ml,T-BilO.5mg/dl,出
細 網 肉腫,LSG分
ンパ腫,大 細 胞 型 で 副 睾 丸 へ び ま ん性 に 浸 潤 し,わ ず
ロ ブ リ ン10.1%,AJG比2・68,BUN24mg/dl,
CRNNO.8mg/dl,血
た 副 睾 丸頭 部に 腫 瘍 の浸 潤 を 認 め た(Fig,
i).
手術 所 見 ・睾 丸 のほ ぼ 中央 に母 指 頭 大 の硬 い結 節 を
写 真 で 肺 門及 び 肺野 に 異 常
触知 したが,睾 丸 と副 睾 丸 の境 界 は 明瞭 で周 囲 との癒
陰 影 を 認 め な い.
着 もな か った.ま た 左 精 索 に も異 常 を認 め な か った.
排 泄 性 腎 孟 造影 で右 側 下 腎 杯 の変 形 を認 め る 以外 に
摘出標本
通 過 障 害 な ど の 異 常 所 見 は 認 め ら れ な い.
の 投 与 を 開 始 し た.同
年5月12日
で 経 過 観 察 し て い た が,退
院 後2週
副睾 丸,精 索 も含 め て35gで
あ った.
割 面 は 右側 同様 に 淡 黄 灰 白色 の充 実 性 腫 瘍 が 睾 丸 の中
以 上 の 検 査 成 績 よ り右 副 睾 丸 結 核 と 診 断 し 抗 結 核 剤
退 院 し,一
時外 来
央 に あ り,睾 丸組 織 は周 囲 へ 圧排 され て いた.副 睾丸
間 し て,右
陰の う
へ の浸 潤 は 認 め られ なか った(Fig.4).
内 容 物 の 増 大 傾 向 を 認 め た た め,6月6日,再
病 理 組 織 所 見:右 側 と 同様,細 網 肉腫,LSG分
入院 し
類
のび まん 性 リンパ腫,大 細 胞 型 で あ った.し か し睾丸
た.
入 院 翌 日,右
白膜 及 び 副 睾 丸 へ の 浸潤 は認 め られ な か った(Fig.
睾 丸 腫 瘍 の 疑 い の も とに 右 側 高 位 除 睾
5).
術 を 施 行 し た.
明な液
術 後,肝 及 び 骨 シ ンチ グ ラフ ィーを 施 行 した が 転移
体 の 貯 留 を 認 め た が,睾
丸 及 び 副 睾 丸 と周 囲 と の 癒 着
の所 見 は な く,リ ンパ管 造 影 で も後 腹 膜 リンパ節 並 び
は 認 め ら れ な か っ た.ま
た 精 索 に も 異 常 は 認 め られ な
に骨 盤 内 リ ンパ節 に 異 常 は認 め られ な か った.ま
手 術 所 見 ・鞘 膜 内 に は 約15mlの
か っ た.右
睾 丸 は ほ とん ど 黄 色,石
黄 色,透
CTscanで
様硬 の 腫瘍 に よ っ
て 置 きか わ り副 睾 丸 体 部 に も腫 瘍 が 達 し て お り,睾
丸
っ た.割
側 腎及 び後 腹 膜 腔,骨
た
盤腔
内 に 占 拠性 病 変 は 認 め られ なか った.そ の 他,鼻 咽 腔
に も異 常 は認 め られ なか った.
と 副 睾 丸 の 境 界 は 不 明 瞭 で あ っ た,
摘 出 標 本 ●重 量 は 副 睾 丸,精
も肝,脾,両
索 も 含 め て68gで
術 後 療 法 と して,6月18日
あ
ン ク リス チ ン1mg静
面 は淡 黄 灰 白色 の 充実 性 腫 瘍 が 睾 丸 の ほ とん
よ りVEMP療
注 週1回,エ
}
㍉
\
ド
角
:':
、.准
嵐
.、.
・
ね
リトゴサ
コ
γ 隷
\,
ぜ沸 劉
U'「.匹'「lluu
1閣
Fig.1.右
睾二
丸腫 瘍 割 面
法(ビ
ン ドキ サ ン50
289
川 村 ・ほ か:両 側 聖丸 細 網 肉腫
鼠1二
鰭 ξび':1:∫
☆ 絵1将;絵1
ぐ ご;『}1三勇
ノ・
・㌧,a,.n∵
で、 ド 諦..:
緯蘇
「ドーL.A幽
凶
Fig.2.び
一
●
一
ま ん 性 リ ンパ 腫.大
塾
巳
ρ
■-
細 胞 型(H.E.染
色 ×100)
離総簸鋳
璽驚
Fig.3.び
ま ん 性 リ ン パ 腫.大
細 胞 型(H.E.染
色 ×200)
緋
轡'
痩
冗,'.
'
ら
鰐 饗 騰
一.脇 禽
饗
吹 「.鶴
鉱
r
7
つ
「
「
、㍉'卿
11國B響1.1膠
鞍
曇1量,圏
置
懸
■
gnzA
Fig.4.左
睾 丸 腫瘍 割 面
暉
閣,,毒
ドド
・「
■18馨
290
泌 尿 紀要32巻2号1986年
麟藩
,'k_.・'・'3∵
.Fi
g.5.び
TableI.わ
曇
陣
ま ん 性
、.fづ,,鷺・
ト 冥 、∵
リ ン パ 腫.大
必
ニヲ.二「・で ㌧一/㌻3』
細 胞 型(H.E.染
が 国に おけ る睾 丸 細 網 肉腫 の報 告 例
告
年齢
年令
療
転
帰
宅 ら11)
isa2
74
右
x,采 懲
不
明
86松
田 ら18)
1983
65
右
X,R,C生
両側 同時発生
13例
87畑
口」ら 【9)
1983
53
X,R生
両側 異時発生
14例
88村
上 ら20)
1983
右
右
X,R生
不
89川
口 らzi)
1983
76
X,R生
90五
十 嵐 ら22)
1984
55
右
左
91加
藤 ら23)
1984
59
X,采
92武
内 らza)
issa
79
左
左
験
例
治
右
左
側
側
35例
29例
明
4例
計
95例
X,R生
懲
不
X,C不
1984
64
左
X,C生
〃
76
右
X死
1984
58
右,左
94////
95自
者
側
85三
深 田 らzs)
忠
Table3.患
No.報
93小
者
宏嘲.!
色 ×100)
明
及 び 胸 部X線
写 真 上,再 発 の徴 候 を認 め な い.8月
明
3日 退 院 し,現 在,外 来 に て 経過 観察 中 であ る.
考
X,C生
X:highorchiectomy
察
睾 丸 細 網 肉 腫 は比 較 的 まれ な疾 患 で あ り,睾 丸腫 瘍
R:irradiation
中 に 占め る割 合 は0.2∼7%と
C:chemotherapy
では1944年,二
Table2.睾
蓮 井 ら4)は1983年 ま でに5例 を 加 え て84例 を 報 告 して
症 例 数
齢
いわ れ て い る1).本 邦
目を報 告 して以 来,1980
年 ま でに 荒 木 ら3)は79例 を 集 計 して お り,そ の 後更 に
丸 細 網 肉 腫 の年 齢分 布
年
神2)が 第1例
0-9
4
い る.そ の 後,わ れ わ れ が 文 献 的 に調 べ えた10例 と自
験 例 を 加 え る と95例 とな る(Tablel).
10-19
3
20-29
5
30-39
9
40∼49
ii
50^59
zo
60-69
28
70-79
ii
80-89
2
不
細 網 肉腫 を 含 め た悪 性 リ ンパ 腫 は 一般 的 に は 全 身性
疾 患 と考 え られ て お り睾 丸 に 原 発 す るか 否 か は 議 論 の
多い と ころ で あ る.こ の点 に つ い て 笹野 ら5)は 睾 丸 間
質に も細 網 内 皮 系に 属す る細 胞 が 存 在す る こ と よ り,
睾丸 原 発 の細 網 肉 腫 の存 在 も十 分 期 待 され,し た が っ
て睾}L以 外 に 腫瘍 を 認め ず,除 睾 術 後1年 以上 リンパ
2
明
計
節 を 含め た 諸 臓 器 に 肉腫 の発 生 を み な け れ ば 睾丸 原 発
95
とみ な し て よい と述 べ て い る.自 験 例 は 発 症 よ り1年
を経 過 し てい ない が,リ
mg毎
日 経 口,メ
ル カ プ トプ リ ン120mg毎1ヨ
プ レ ドニ ゾ ロ ン30mg毎
後4iL目
日経 口)を
開 始 し た.投
頃 よ り肝 機 能 障 害 が 出 現 し た た め,エ
サ ン の み の 経 口投 与 と し た,術
後1ヵ
経1二1,
与
ン ドキ
月 後 の血 液 検 査
ンパ管 造 影,CTscanな
ど
よ り,ま た 耳 鼻 咽 喉 科 的 検 査 よ り睾丸 以 外 に 腫 瘍 の存
在 を証 明 で きなか った こ とは 睾 丸 原発 の悪 性 リ ンパ腫
と考 え て よい もの と思 わ れ る.し か し今後 更 に 十 分 な
経 過 観 察 が必 要 で あ る。
291
川 村 ・ほ か:両 側 睾 丸 細 網 肉腫
細 網 肉 腫 を 含 め た 悪 性.リ ン パ 腫 の 分 類 は,赤
GallandMalloryら
に よ る 慣 用 分 類,あ
Rappaport分
類 が 用 い ら れ て き た が,最
崎 や
るい は
近わが 国で
はLSG(LymphomaStudyGroup)分
類が多 く
用 い ら れ る よ うに な っ て き た.こ
の 分 類 に 従 う と 自験
例 は 両 側 睾 丸 と もdiffuse,1argecelltypeの
ン パ 腫 で あ った.し
かLな
悪性 リ
が ら免 疫 学 的 性 質 に よ る分
類(T,B,Non-T,Non-Bcelltype)は
行わなか っ
た.
悪 性 リ ン パ 腫 のsしagc分
(1965)を
類 はRycの
踏 襲 し たAnnArbor分
病 期 分類
類(1971)が
ジ キ ン リ ンパ 腫 に も 適 用 さ れ て い る.し
非 ポ
か しな が ら睾
丸 な どに 原 発 す る節 外 性悪 性 リ ンパ腫 に 対 し この 分類
を 適 用 す る こ と は 多 くの 矛 盾 が あ る と 考 え,更
に 自験
例 で は現 時 点 で原 発 性 か続 発性 か を 決め 難 い こ と よ り
自験 例 に つ い て はlocalizedtype(stageIorII)
と の み 分 類 す る こ と と し た.こ
のstageと
予 後 との
関 係 に つ い てDuncanら11)は,10calizedtypeは
睾 丸 細 網 肉 腫 はgerminalcelltumorに
い くつ か の 特 徴 を 有 し て い る.す
自 験 例 の ご と く50∼60歳
%以
比較 して
なわ ち発 生 年 齢 では
代 に ピ ー ク を 示 し,全
体 の60
上 が50歳 以 上 で 老 人 に 多 い(Table2).ま
本 腫 瘍 は60歳
以 上 の 睾 丸 腫 瘍 の50%以
た,
上を占めてい
(21%)に
睾 丸 悪 性 リ ン パ 腫212例
両 側 発 生 を 認 め て い る.本
及 び 蓮 井 ら4)が 集 計 し た84例
あ わ せ た95例
の う ち,初
中,45例
邦 で は 荒 木 ら3)
に 自験 例 を 含 め たll例
を
診 時 よ り両 側 に 認 め た も の13
診 時 は 片 側 で あ るが 終 局 的 に 両側 に 認 め た もの
14例 で 両 者 を あ わ せ る と 全 体 の 約1/3を
(Tablc3).自
占め て いた
験 例 は 初 診 時 既 に 両 側 睾 丸 に硬 結 を触
知 し て お り,両
側 同 時 発 生 例 と 考 え ら れ る.し
て 自 験 例 は 本 邦 報 告 の 両 側 同 時 発 生 例 の13例
たが っ
目に 相 当
す る.
射 線 療 法 及 び 化 学 療 法 が あ る.田
Rye病
期 分 類 に 従 っ てstage別
位除睾
口 ら12)は
の 治療 方 針 を 挙げ
は 放 射線 療 法 を主
は化 学
療 法 を 主 体 に 行 う と 述 べ て い る.自
験例は現時点では
両 側 睾 丸 に 限 局 し たlocalizedtypeで
あ る が,術
1年 以 上 経 過 し て お らずgeneralizedtypeの
症 で あ る こ と を 否 定 で き な い こ と,ま
後
一部分
た 睾丸 細 網 肉腫
の 予 後 が 極 め て 不 良 な こ と か ら 両 側 高 位 除 睾 術 後,化
学 療 法 を 併 用 し た.
高 位 除 睾 術 に つ い て は,腫
て も,両
瘍 が た とえ 一 側性 で あ っ
側 性 に 発 生 す る 頻 度 が 高 率 で あ る こ と か ら,
他側 に 腫 瘍 の存 在 が 疑わ れ る場 合 に は 自験 例 の ご と く
両 側 除 睾 術 を 考 え る べ き と 思 わ れ る.
本 症 の 予 後 はgerminalcelltumorvこ
常 に 悪 く,早
例 の う ち,1年
木 ら3)の 報 告 に よれ ば 本 邦 報 告60
以 内 に29例(48%)が,2年
例(12%)が
(5%)に
比 較 して 非
晩 全 身 の リ ンパ 節や 臓 器 に 腫 瘍 が 出現 す
る と さ れ て い る.荒
死 亡 し て お り3年
以 内 に7
あ り,最
存 率 は14%と
月
中,5年
以上 の生
在 リ ン パ 節 に38%,皮
肝 臓 に18%,膵
臓 に14%,鼻
法(bleomycin,Oncovin,Natulan,
法(bleomycin,vincriどが
近 で はLymphomaStudyGroupに
adriamycinを
が 開 発 さ れ,か
た.自
本 邦 報 告 例 と 大 き な 差 を 認 め て い る.
転 移 臓 器 に つ い て は,三
法13>を 始
加 え たVEPA療
よ り
法(vincristine,
cyclophosphamide,prednisolone,adriamycin)ls>
だ しJocksonandMontessoriら7)
の 集 計 で は 睾 丸 悪 性 リ ン パ194例
めBONP療
在 で は 多剤 併 用 療 法 が 主 流
験 例 に 行 っ たVEMP療
stine,cyclophosphamide,prednisolone)15)な
たOsmanand
平 均 生 存 期 間 は 非 常 に 短 く,1年8ヵ
と し て い る.た
化 学 療 法 に つ い て は,現
に な っ て お り,自
prednisolonc)is,BVCP療
以 上 の 生 存 例 は3例
す ぎ な い と 述 べ て い る.ま
Morrow8)は
り,な
睾 丸 細 網 肉 腫 に 対 す る 治 療 法 は 手 術 療 法(高
術),放
体 に,stageIII,IVのgeneralizedtypeで
患 側 で は 両 側 に 発 生 す る こ と が 多 く,Jacksonand
Montessoriら7)は
0,表
比 し明 ら か に 予 後 良 好 と 報 告 し
て い る.
stageI,IIのlocalizedtypeで
る6).
例,初
generalizedtypeに
国 ら9)は 深 在 リ ン パ 節 に46
な り良 好 な 成 績 を お さ め る よ うに な っ
験 例 は 維 持 療 法 と し て ゴEndoxanの
っ て い る が 術 後9ヵ
内服 を 行
月 経 過 した 現 在 で も再 発 の 徴 候 を
認 め て い な い.
慮 に22%,骨
格 に20%,
咽 腔 に14%と
報 告 して お
結
語
か で も皮 膚 及 び 鼻 咽 腔 の 腫 瘍 の 発 生 を 特 徴 と し
て い る.た
だ し,睾
dgikinlymphoma)に
丸 原 発 の 悪 性 リ ン パ 腫(non-Hoは 播 種 の 傾 向 が 少 な く,比
的 限 局 性 に 増 殖 す る こ と が 多 い と さ れ て お り,そ
58歳 男性 に お け る,両 側 睾 丸 細 網 肉腫 の1例 を 報 告
較
した,右 側 豊丸 腫瘍 の診 断 で 右 側 高 位除 睾術 を施 行 し
の理
た.病 理 組 織診 に て細 網 肉腫 と の こ とで,左 側 畢 丸 に
由 と し て 天 野1の は 睾 丸 原 発 例 で は リ ン パ 節 原 発 の も の
も所 見 が あ るた め 左側 高 位 除 睾 術 を 施 行 した.病 理 組
と比 較 し て 未 分 化 型 が 少 な い こ とか ら 睾 丸 以 外 へ 浸 潤
織 診 では 右 側 と 同 様 で あ った.術
す る 傾 向 が 少 な い の で は な い か と予 想 し て い る ・
後 化学療法 を 施行
し,術 後 約9ヵ 月 経 過 した現 在,再 発 の徴 候 は な く健
292
泌 尿 紀 要32巻2号1986年
1601,1969
在 で あ る.
14)小
な お,本
論 文 の 要 旨 は,第191回
川 一 誠 ・尾 山
日本 泌 尿 器 科 学 会 東 北 地
寛 ・村 上
方 会 に お い て 発 表 した.
悪 性 リ ン パ 腫 に 対 す る 多 剤 併 用(BONP)療
臨 床 治 験.癌
文
献
15)大
婁 泰 亮 ・安 原 尚 蔵 ・杉 山 元 治 ・占 部 康 雄 ・藤 井
パ 腫 の 化 学 療 法 一 多 剤 併 用BVCP療
UtzDC:Lymphomaofthetestis.Cancer
AVIP療
26:847852,1970
神 由 紀 彦:原
発 性 睾 丸 腫 瘍 の3例.日
幹 雄 ・小 島 宗 門:睾
che皿otherapywithvincristine,cyclophospha・
丸 細 網 肉 腫 の3例,泌
mide(Endoxan),prednisoloneandadria-
尿紀要
mycin(VEPA)inadvancedadultnon-Ho-
26:15371543,1980
井 良 浩 ・棚 田 敏 文 ・石 澤 靖 之=睾
腫 の1例.西
5)笹
dgkin'slymphoidmalignancies.JpnJCIin
丸 悪 性 リンパ
Oncol9;397-406,1979
日 泌 尿4511069∼1073,1983
野 伸 昭 。三 浦
亮 ・羽 山 督 太 良 。矢 尾 板 義 人=
睾 丸 原 発 の 細 網 肉 腫.癌
17)三
宅 康 之 ・太 田 節 子 ・津 嘉 山 朝 達=陰
した 悪 性 リ ン パ 腫.日
の 臨 床11:231∼234,
18)松
6)CollinsDHandPughRCBCIassification
田 聖 士 ・清 水 保 夫=睾
丸 腫 瘍 を 疑 わ しめ た 非 ポ
andfrequencyoftesticulartumors.BritJ
ジ キ ン リ ン パ 腫 の1例.西
Uro136:1∼
1061,1983
王1,1964
19)畑
7)JacksonSMandMontessoriGA:Malignant
山
俊 吾 ・東
883,1980
膏 夫 。吉 田
8)OsmanRandMorrowJW:Reticulumcell
勝 ・大 石 賢 二 ・真 田
義 人 ・岡 部 達 士 郎 ・宮 川 美 栄 子 ・桐 山
修:睾
丸 悪 性 リ ンパ 腫 の9例.日
20)村
上 泰 秀 ・岡 田 敬 司 ・河 村 信 夫=泌
を 呈 し た 悪 性 リ ン パ 腫 の3例.臨
testicle:3casereports.JUrol102=230∼
国 友 吉 ・田 倉
弘 ・田 端 運 久1左
睾 丸に 原発 し
た と思 わ れ る 睾}L細 網 細 胞 肉 腫 の1例
例 の 文 献 的 考 察.泌
2D川
な らび に 内
滋 ・若 狭 治 毅=睾
て,臨
泌26:989∼992,1972
一 彦:睾
丸 悪 性 リ ンパ 腫 の1例.日
泌 尿 会 誌74=863∼864,1983
22)五
野
口正 一 ・塚 原 健 治 ・宮 崎 公 雄 ・藤 田 幸 雄 ・渡 辺
験 七 郎 ・林
尿 紀 要18:743∼756,
1972
丸 原 発 の細 網 肉 腫 に つ い
十 嵐 丈 太 郎 ・新 村 武 明 ・熊 谷 振 作 ・岡 田 清 己 一
岸 本 孝=睾
丸 に 原 発 し た 悪 性 リ ン パ 腫 の1例.日
泌 尿 会 誌75:856∼857>1984
23)加
11)DuncanPR,ChccaF,GowingNFC,Mcel-
藤隆司
。 井 上 善 博 こ 左 睾 丸 に 発 生 し たR.etユ ー
wainTJandPeckhamMJ:];xtranodalnon-
culumcellsarcomaとdiffuselymphomaの
Hodgkin'slymphomapresentinginthete-
mixedtypeの1例,日
sticle.Cancer45:1578∼1584,1980
口鉄 男 。薄 金 真 雄 ・山 崎
照 射 と 化 学 療 法 の 併 用 一.癌
24)武
武:悪
性 リ ンパ 腫 一
の 臨 床22:ioso∼
巧 ・松 木 克 之 ・石 田 仁 男 ・三 方 律 治 ・福 谷
茂 郎:左
さ れ た 悪 性 リ ン パ 腫 の1例.日
陰 嚢 内腫 瘤 で発 見
泌 尿 会 誌75=
1682,1984
村 檎 代 二 ・坂 井 保 僑 ・近 田 千 尋 。柏 田 直 俊 ・北
村 武 志 ・稲 垣 治 郎 ・坂 野 輝 夫 ・藤 田
文 ・三 国 昌 喜;悪
mycinの
田
泌 尿 会 誌7511510,1984
恵 子 ・河 辺 香 月 ・森
1299,1976
13)木
尿 器科 的症 状
泌37:281∼
284,1983
232,1969
12)田
泌
尿 会 誌75:698∼699,isa4
sarcomawithprimarymanifestationinthe
10)天
日 泌 尿45:1057∼
忠 ・寺 井 章 人 一 日裏
lymphomaofthctestis.JUrol1231881∼
外50症
嚢水 に 出現
本 臨 床 細 胞 学 会 雑 誌21=
94^97,1982
1965
9)三
癌 の 臨 床22=
16)LymphomaStudyGroupCombination
木 博 孝 ・三 品 輝 男 ・斉 藤 雅 人 ・都 田 慶 一 ・前 川
4)蓮
法 の成 績 を 中心 に 一
性 リン
法 お よび
1293-1299,1976
泌 尿 会誌
36:392,1944
3)荒
法の
の 臨 床18:545∼549,1972
昌 史 ・町 田 健 一 ・村 上 直 樹 ・木 村 郁 郎:悪
1)KielyJM,MasseyBD,HarrisonI;Dand
2)二
淳 ・栗 田 宗 次 ・亀 井 良 孝 ・有 吉
稔 ・杉 浦 孝 彦 ・加 藤 良 一 ・太 田 和 雄=
浩 ・飯 塚 紀
性 リ ンパ 腫 の 化 学 療 法 一Bleo-
効 果 を 中 心 に 一.日
本 臨 床27=1593∼
25)小
深 田 義 勝 ・加 登 本 久 幸 ・児 玉 光 人:睾
ンパ 腫 の2例.目
丸悪性 リ
泌 尿 会 誌75=1694,1984
(1985年5月24日
受 付)
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