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(連携を通じた商工業が有するアイデアやノウハウ、経験の獲得)
資料7 これまでの主な意見 平成21年3月 農商工連携研究会 1.地域活性化の鍵を握る農商工連携 農商工連携は、農業者と商工業者のニッチトップを目指す新商品開発の 取組のみに留まらず、地域の生産者の組合や法人、自治体等が連携して取 組の規模を拡大させることで、 ① 地域内の農林水産物に対する商品開発や販路確保といった商工業が有 するアイデアやノウハウ、経験の浸透 ② 地域内雇用の確保、農林漁業者の所得の増加・安定化 ③ 観光事業への展開、直売所事業等の展開を通じた地域内消費の増大 を通じた地域経済の活性化を実現 <研究会における意見> ○農商工連携はまだ始まったばかり。これまでの現状では、商業・工業が農業を引 っ張っている事例が多いと認識。これはこれで有意義ではあるが、今後は「農業 が主体となって商工業の支援を仰ぐ形とは何か」という議論をするべきではない か。農業現場発信型の農商工連携とは何かを問うことは大事な本質ではないか。 ○工が果たす役割は、これまでの農業において、経験や勘で制御された部分に加え て、サイエンスを入れて、制御された揺らぎのない環境でどういうものを作って 高付加価値化に結びつけるかということ。商の果たす役割として、広い意味での マーケティング力とは何か、グローバルな視点を加味したマーケティング力とは 何かというところにある。 ○規格外品でも、加工用として販売することやブランド化して販売する等、商品と して有効活用することで農業者の所得の向上に貢献できる。 ○中長期的には、次世代の担う若者に如何に農業に関心を持ってもらうか。そのた めの人材育成や教育が必要。 2.農商工連携を通じた地域活性化の実現に向けた課題 これまでの研究会において出されたコメントの中で、農商工連携を通じ た地域活性化を実現するための課題として挙げられたコメントは、主に3 種類に分類できる。 ① 農林水産事業者の基礎的な「経営力」 (連携を通じた商工業が有するアイデアやノウハウ、経験の獲得) − 農商工連携の取組を継続して実施するためには、農林水産業者 が安定的に収益を上げることが不可欠。そのための前提として、 1 /5 農林水産業者自身が、 ・一定規模の生産能力(規模、技術)と販路拡大 ・企業的経営を実践するために必要な知識・ノウハウ・人材 を獲得する必要がある。 <研究会における意見> ○ 農業者の所得を上げるためには、農業者自身がプライシングできる仕組みが必 要。そのためにも、商品のブランド化の取組を促進すべき。 ○ 商品生産を拡大するに当たって、品質が安定することが大事な要素になる。お いしいものを作ったとしても、品質がブレると売れなくなるので安定して作り続 けることが重要。 ○ 人口が減少している県では、地産地消だけではやっていけず、地のものを外で 売るという地産外消(地産他消)をしないと生き残れない。ただ、地のものを外 で売る場合、物流コストやロット等の問題がある。この問題を解決するためには、 付加価値を高めていくしかない。生鮮食品は生産履歴を如何に残し、安全・安心 を如何に形として残すかが大事。 ○ 都道府県を通じて斡旋された個々の企業体や農業者と長期的な商品開発に取 り組もうとしても、事業者の体力が足らず、結局成功しないケースが多い。 ○ 中山間地を含め、生産地自体が弱っている。そういった産地の生産者が自らマ ーケットインの視点を取り込もうとしても、自分達だけではなかなかうまくいか ない。特に首都圏から離れた地域においては、そもそも戦略的な商品づくりを推 進していくための施設等ツールが不足。農林水産業における個々人の事業者では 資本の蓄積が不十分であることが多く、特に加工用施設等のインフラについては 公的に支援していくことが必要。 ○ 農作物は工業製品ではないので、味の保証はできない。環境への取組や減農薬 等のプレミアムで差別化を図るしかない。 ○ 生産者の中で、食品衛生法への対応等、全国的な商品販売を展開するために必 要となる基礎的なコンプライアンスに関する知識が不足している。このような商 品販売におけるディフェンス面の対応への支援を強化すべき。 ○ 安 全安心 のプ ラッ トフォ ーム 形成に 役立 つ仕 組みと して GAP( Good Agricultural Practice:適切な農場管理とその実践)の取得が挙げられる。他方、 GAP は、やったからといって商品にプレミアがつくものではなく、専業農家が 兼業農家と差別化した生産を実現している意識作りをするために取得する性格 のもの。 ○優良事例を選定することが、他の農業者のモチベーションの向上に効果的。また、 農業者同士の自発的な情報交換が促進され、商品の改善にも繋がる。 2 /5 ② 消費者ニーズを掘り起こす「販売力」 (流通事業者との連携・直売所の有効活用) − 生産者の所得向上のためには、「商品を売る」ことを見据えたた 消費者ニーズに対応した生産が不可欠。 − 飽きやすい消費者のニーズを継続的に掘り起こすためには、小 売・卸売業者との情報共有や消費者との情報交換の場の設定、直売 所等直販ルートの確保等を通じ、常に消費者の意見を把握する体制 が必要。 <研究会における意見> ○ 農業は製造業であるという考え方に立って、マーケットイン(消費者からの観 点)からの供給を行わなければならない。 ○ 小売業に届く消費者の意見・要望を生産者へ伝える仕組みが必要。生産・流通・ 消費者が協議会や交流会を通じ、互いの意見を交換する場を設けることが効果的。 ○ 商品の仕入れに関して生産履歴等は当然チェックが必要だが、重要なのは消費 者に評価されるものであるかどうかという点である。生産者は自分が作った物が 1番おいしいと言うが、売れないものはだめである。 ○ 交流会や協議会を実施するに当たり、一番の負担となるのは交通費と滞在費で あり、この部分を支援すべき。また、様々な立場の人が議論できる協議会のよう な場を作ることと、リーダーシップを発揮する人材の育成が必要である。 ○ 消費者のニーズを把握する等、情報の流通を促進するためにはインターネット の活用が非常に効果的。 ○ アンテナショップや商談会への出店については、単に売上げを重視するのでは なく、アンテナショップや商談会の中で得た購買者のニーズを生産者にフィード バックする取組が重要。 ○ 流通サイドの事業者は、全国各地の情報集めに苦慮している。どこかで産地の 情報を集約すべき。また、市場経由で商品調達をしているが、産地に消費者ニー ズを伝える役割を担っている市場関係を農商工連携に絡めた取組を検討すべき。 ○ 繁盛している直売所には、コンテンツ(商品・サービスの製造仕様書)と人材 が生まれつつあり、これを進化(ネットワーク化)させることによって「各店の 商品品揃えが向上」、「大口販売先と直接取引が可能」等がある。 ③ 商品の魅力を向上する「商品力」 − 新商品を消費者のニーズを掘り起こす魅力ある商品とするため には、 ・生産技術の向上 ・加工技術の向上 3 /5 ・消費者に対する訴求力を持った地域ブランドの醸成。 を推進が不可欠。 <研究会における意見> ○ 加工業や農業が不振な理由は、商品の「新しい価値(=個性)」をアピールで きていないからである。その商品価値をなかなか(消費者等に)気付いてもらえ ていない。 ○ 食べ物の付加価値とは、 「おいしい」である。 「安全・安心」であるということ は前提であるため付加価値ではない。また、「おいしさ」の定義が曖昧であり、 消費者と生産者では、味の評価が違う。 ○ 類似の商品とどう差別化しているか、できているかを生産者サイドが常に意識 して生産に取りかかることが重要。 ○ 重量等の規格ではなく、食味や安全性を加味した品質を客観的に評価する指標 を整備すべき。 ○ 有機野菜と無農薬野菜のどちらが安全か分からない消費者は多い。指標自身を ブランド化し、広く浸透させる取組が必要。 ○ おいしさの指標づくりについて、糖度計ではかられる糖度と消費者の嗜好は合 致していないことから、科学的な指標と統計的手法を組み合わせた指標が望まし い。 ○ 直売所は「新しい価値」を生み出す場として、また、消費者にアピールする場 として有効。直売所流通が活発になると、固定化している農産物流通の市場構造 が活性化する。直売所の繁盛などを通じて一次産業と観光産業が連携することで、 お互いの良さを引き出せる。 ④ 連携を促進する「地域力」 (地域ぐるみの連携の拡大) −地域経済の主力となる農林水産物の生産に取組むためには、 個々 の農林水産事業者の生産能力だけでは限界があり、自治体やJAな どの様々な関係者が連携する必要がある。 このような取組を拡大するためには、地域の自治体等キーパーソ ンが中心となって、 ・ 大手小売・卸売業者との連携や企業の誘致。 ・ 地域の特色ある技術の保護。 ・ 地域ブランドの管理の徹底 ・ 既存の農商工連携による商品販売の取組の拡大 等の地域ごとの具体的かつ長期的な戦略を構築し、取組を面的に拡 大することが効果的。 4 /5 <研究会における意見> ○ 地域を巻き込んで農商工連携に取り組むことが重要。アイデアはあるがアイデ アのみにとどまる事例が少なくない。地域内で雇用や収入を生むためのシステム づくりが必要。生産設備などのハード支援を単発で行うのではなく、例えばテス ト販売のような試行錯誤を自律的に何度も繰り返していけるようなシステムを 地域に作っていくことが必要。そういったソフト支援を進めるべき。 ○ (再掲)都道府県を通じて斡旋された個々の企業体や農業者と長期的な商品開 発に取り組もうとしても、事業者の体力が足らず、結局成功しないケースが多い。 ○ 地域単位で長期的に取り組む場合には、協議会等の地域をまとめる組織が、マ ーケティングのみならず品質管理やブランド管理までを徹底して取り組むこと や、共同で冷凍施設や物流センターを創設するところまで踏み込んで対応すべき。 ○ JAを始めとする地域の有力な担い手を取り込むことが農商工連携を成功に導く 重要な観点 ○ 地方には原料や場所はあるが、原料を加工する技術者がいない。企業にメリッ トは出るが、農家にメリットが出ていない。農家側が原料供給だけでなく、加工 品に合わせた品種改良ができるようになればメリットが出てくるのではないか。 ○ 直売所は農林水産物の研究開発センター・マーケティングセンター的要素をも っており、重要な核となる。他方、農家は直売所で提示される価格では経営が維 持できていない。これからの直売所には、デフレを起こすことなく、適正な価格・ 適正な商品価値を伝えていく役割が求められる。 ○ 商品が育成に値するものかどうかを選別し、重点的に指導することが重要。都 道府県において、地元商材(農産物等)の取組にばらつきがある。京都や金沢な どの知名度の高い地域では地元商材に恵まれ、商品開発やブランド化が進んでい る。一方、過疎化している地域は、良い商品があっても製品化ができない。また、 仮に製品化できても販路獲得がうまくいっていない。 ○ 首都圏から遠い地域においては、①市場の情報収集能力②事業の採算性の審査 能力③首都圏に売り込むための強い発信力を持つアドバイザーが必要。アドバイ ザーによる地域の取組をバックアップするためには、国で知見を持つ人を登録し た人材バンクを創設する等、アドバイザーに関する情報を蓄積することが効果的。 ○ 公的研究機関による研究はプロダクトアウトに留まりがち。事業者が必要とす る技術を研究機関に依頼するといった連携を促進することが必要。また、そうい った受託研究に対して迅速に対応する体制を研究機関が準備することが重要。 5 /5