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1.6 九州・山口県に影響した台風[PDF形式:227KB]
個 1.6 九州・山口県に影響した台風 8 台風は、大雨による洪水や、高潮、強風によ 3-6月 7-9月 10-翌2月 6 り、日本列島に大きな被害を与えてきた。特に 九州・山口県では、台風の接近・上陸によって 4 毎年のように被害が発生している。ここでは、 「異常気象レポート 2005」に掲載されていない、 2 九州・山口県への台風の影響について記述する。 なお、九州北部地方と九州南部への台風の接 0 1950 近・上陸数の平年値はそれぞれ 3.2 個及び 3.6 個で、そのうち 7~9 月の九州北部地方と九州南 及び 2.9 個と、全体の 80%以上がこの時期に接 近・上陸している。 1990 2000 年 て 1990 年代半ば以降は概ね 4~5 個の間で推移 している。また、長期的な増加・減少傾向は明 台風の発生数と、九州北部地方・九州南部(用 確でない。上陸数の変動もほぼ接近数と同様で、 語集を参照)への接近数及び上陸数(用語集を その数は 0~3 個の間で推移しており、長期的な 参照)の経年変化を図 1.6.1 に示す。 増加・減少傾向は明確でない。 発生数 九州北部地方・九州南部接近数 九州北部地方・九州南部上陸数 40 1980 6 個とピークを迎えたが、その後はやや減少し (1)発生数と接近数・上陸数 個 1970 図1.6.2 時期別の九州北部地方・九州南部への 接近・上陸数 細線は年々の値、太線は5年移動平均値を示す。 部への接近・上陸数の平年値はそれぞれ 2.8 個 45 1960 時期別の九州北部地方・九州南部への接近・ 上陸数を図 1.6.2 に示す。図 1.6.2 は、平年値 35 で台風の接近・上陸数が集中する 7~9 月(補足 30 1)とその前後の期間に分けてその変動を示して 25 いる。7~9 月の九州北部地方・九州南部への接 20 近・上陸数は概ね 1~6 個の間で推移しており、 15 通年の接近・上陸数に対する割合は 1951~2007 10 年平均で 88%である。また、7~9 月の接近・上 陸数の変化傾向は年間の接近数・上陸数 5 0 1950 の変 化傾向とほぼ対応している。 1960 1970 1980 1990 2000 年 図 1.6.1 台風の発生数及び、九州北部地方・九 州南部への接近・上陸数 細線は年々の値、太線は 5 年移動平均値を示す。 8 個 6-7月 8-9月 6 発生数は 1960 年代半ばと 1990 年代はじめに 4 ピークがみられ、数十年スケールの周期性を示 2 している。1990 年代後半以降は発生の少ない傾 向を示している。九州北部地方・九州南部への 0 1950 接近数は、1970 年代までは概ね 4 個程度だが、 1980 年代前半には 2~3 個程度と少なくなった。 1960 1970 1980 1990 2000 年 図1.6.3 6~7月(梅雨時期に対応)と8~9月の 九州北部地方・九州南部への接近・上陸数 細線は年々の値、太線は5年移動平均値を示す。 その後増加傾向となって 1990 年代前半には 5~ 47 図 1.6.3 に梅雨時期に当たる 6~7 月と、その 160 後の 8~9 月の 2 か月間の九州北部地方・九州南 155 部への接近・上陸数の変動を示す。梅雨時期に 150 対応する 6~7 月でも、概ね 0~2 個程度、1951 145 ~2007 年の平均で 1.2 個の台風が接近・上陸し 140 東経:度 発生 消滅 135 ており、梅雨期でも台風の影響を受けている事 130 がわかる。また、8~9 月は 1~4 個程度の範囲 125 (1951~2007 年平均 2.3 個)で推移しており、 120 1950 6~7 月に比べて接近上陸数は概ね多く、変動の 1960 1970 1980 1990 2000 年 図 1.6.5 九州北部地方・九州南部へ接近・上陸 した台風の発生、消滅の年平均経度 細線は年々の値、太線は 5 年移動平均値を示す。 は九州が存在する経度を表す。 幅も大きい事がわかる。 (2)九州北部地方・九州南部へ接近・上陸し た台風の発生・消滅位置 九州北部地方・九州南部へ接近・上陸した台 風の発生・消滅位置(補足 1)の南北、東西変 動の長期的な傾向をみるため、その経年変化を それぞれ図 1.6.4、図 1.6.5 に示す。また個々 の台風についての発生を面的に把握するため、 1951~2007 年に九州北部地方・九州南部へ接 近・上陸したすべての台風の発生場所を図 1.6.6 に示す。年平均の発生位置の南北変動は ほぼ北緯 10~25 度の範囲内で、長期的にみると、 1960 年代には北に偏っており、その後やや南偏 傾向を示すも、2000 年頃に再び北偏のピークを 図 1.6.6 九州北部地方・九州南部に接近・上陸し た台風の発生分布(個) 統計期間は 1951~2007 年。 迎え、最近は比較的南に偏っている。年平均の 東西変動は東経 125~155 度と南北変動に比べ て変動の幅が大きく、九州より東で発生するも やや東に偏る傾向を示している。 のが多い傾向となっている。長期的には、1950 台風は主にフィリピンの東方海上と南シナ海 年代、1970 年代に東に偏っており、最近もまた で発生する。九州北部地方・九州南部へ接近し 北緯:度 50 発生 消滅 45 た台風の発生頻度分布図をみると、フィリピン 40 の東方海上からマリアナ諸島付近で発生した台 35 風が多いことが分かる。 30 25 年平均の消滅位置については、南北変動は北 20 緯 30~50 度の範囲内で消滅する傾向がある。長 15 期的には南北どちらかに偏る傾向はない。年平 10 5 1950 均の東西変動は、九州北部地方・九州南部へ接 1960 1970 1980 1990 2000 年 近・上陸した台風は九州よりも西側で消滅する 図 1.6.4 九州北部地方・九州南部へ接近・上 陸した台風の発生、消滅の年平均緯度 細線は年々の値、太線は 5 年移動平均値を示す。 は九州が存在する緯度を表す。 48 ものは少なく、接近・上陸後には偏西風に流さ れて九州よりも東側で消滅する傾向がみられる。 (3)九州北部地方・九州南部への接近・上陸 接近・上陸数 (回) 8-9月台風接近・上陸数 8-9月100mm以上の日数地域平均 5 した台風の強さ 次に、九州北部地方・九州南部に接近・上陸 100mm以上 観測日数(日) 4 2 した台風の強さの変動をみるため、台風が接 3 近・上陸している期間内で、最も強かった勢力 が「強い」 (補足 2)以上であった個数を図 1.6.7 2 に示す。また比較のため、九州北部地方・九州 1 1 南部への接近・上陸数も同じグラフ内にプロッ トしている。ただし、 「強い」勢力以上の台風の 0 1950 個数については、気象衛星等による台風の観測 そろっている 1977 年以降の変動を示す。 個 1970 1980 1990 2000 年 図 1.6.8 8~9 月における、九州北部地方・九州 南部への台風接近・上陸数と各気象官署の日降水 量 100mm 以上の発生日数の平均 細線は年々の値、太線は 5 年移動平均値を示す。 1951 年から継続して降水量を観測している気象官 署のみを抽出して使用。 が進展し、台風の中心付近の最大風速データが 12 0 1960 強い台風以上の接近数・上陸数 接近数・上陸数 10 8 6 【補足 1:台風の発生とは】 4 台風として初めて観測された時とする。台風 2 0 1975 の消滅とは、最後に台風ではなくなった(温帯 1980 1985 1990 1995 2000 2005 低気圧化、もしくは熱帯低気圧化した)時とす 年 る。 図 1.6.7 九州北部地方・九州南部に接近・上陸 時に「強い」以上の勢力を持つ台風の数と、九 州北部地方・九州南部への接近・上陸数 細線は年々の値、太線は 5 年移動平均値を示す。 【補足 2:台風の強さとは】 台風の強さの階級は中心付近の最大風速(10 分間平均した風の強さ)によって定義される。 2004 年は「強い」以上の勢力で接近・上陸し た個数が 8 個と極端に多くなったものの、平均 して年に 2 個程度である。 (4)台風の接近・上陸数と大雨との関係 九州北部地方・九州南部への台風接近・上陸 数と、1951 年以降の観測データが存在する気象 官署で日降水量 100mm 以上を観測した日数を比 較したデータを図 1.6.8 に示す。1951~2007 年 の日降水量 100mm 以上の発生回数と台風の接 近・上陸数の相関係数は 0.48 で、8~9 月にお ける日降水量 100mm 以上の降水は、九州北部地 方・九州南部では台風の影響を受けている可能 性がある。 49 階級 最大風速 猛烈な 54m/s以上 非常に強い 44m/s以上54m/s未満 強い 33m/s以上44m/s未満