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UAV(小型無人航空機) - 国土交通省 東北地方整備局
UAV(小型無人航空機)による 空撮についての安全対策 発注者 新庄河川事務所 受注者 大和工営株式会社 業務名 鮭川流量調査 発表者 ○担当技術者 佐藤 明世 主任技術者 阿部 英樹 1.はじめに 本業務は、新庄河川事務所管内の鮭川流域における河川管理、整備計画検討及び砂防計画立案のため の基礎資料を得るために実施しています。本業務内で洪水時に浸水が想定される危険個所の航空写真を 撮影するためにUAVによる空撮を行いました。今回はUAVを運用するに当たり、当社で実施してい る安全対策を発表したいと思います。 2.UAVの導入 UAVは従来の航空機(ヘリ・パラグライダー等)では近づけない箇所や、人が入るのが困難な危険 箇所や災害発生直後の現場など様々な場面で活躍できる事が期待されるため、当社でも昨年9月に導入 しました。 DJI 社 INSPIRE 1 DJI 社 SPREADING WING S1000 3.安全操作講習会の受講 近年は安価で高性能なUAVが購入できる上、練習なしでも簡単に飛行させることが出来てしまい す。その結果、十分な知識も無く飛行させ墜落させる事故が多く発生しています。当社でも新規の購 入ということもあり、機体の正しい運用方法やメンテナンス管理の知識が無い状態でした。そこでU AVを運用するに当たり、機体販売業者主催の安全操作講習会を受講しました。 4. 産業用無人ヘリコプター 総合保険(ドローン保険)の加入 操縦しているUAVが高い高度で飛行している途中に突然故障が発生してしまった場合、制御でき なくなり思わぬところに墜落してしまう事故が起こりえます。どんなに安全に配慮しても事故のリス クは0にはなりません。当社では万が一の事故に備え産業用損害賠償責任保険に加入しています。 5.空撮作業を行うための準備 自在に飛行可能なUAVですが、外の地上作業と比較して天候等運用時の条件に様々な制約があり ます。場合によっては作業続行不能となる場合もありますので事前に現地踏査を行い、最適な飛行計 画を立てました。 5.1 気象条件 当社保有のUAVは最大風速 10m/s まで飛行可能ですが安全を考慮し 5m/s を限界とし、風がある場 合は風向きに対し機首を向けて飛行します。また、UAVは防水仕様では無いため雨が降った場合は 飛行を中止します。 5.2 電波条件 現在日本のUAVのプロポ送信機の周波数は 2.4GHz を利用することが多いのですが、2.4GHz の周 波数帯は強力な電波や電磁波を受けると混信して操縦不能になる可能性があります。そこで飛行予定 場所の近くに電波塔や高圧線、携帯電話の基地局が無いか確認します。もし有った場合は電波発生箇 所に近づかないような飛行ルートを考えます。 5.3 離発着場の選定 離発着時は風の影響を受けやすいので風の巻き込みを受けなく、上空に障害物がない開けた平らな 場所を選びます。 5.4 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール 平成 27 年 9 月に航空法の一部が改正され、無人航空機の飛行に許可が必要となる空域と無人航空機 の飛行方法が制定されました。 上記のルールによらずに無人航空機を飛行させようとする場合には、あらかじめ国土交通大臣の承 認を受ける必要がありますが本作業ではどの項目にも該当していませんでした。 6.空撮作業 6.1 人員配置 作業体制は操縦者 1 名・撮影者 1 名・監視員 1 名の 3 人体制で実施しました。 撮影者 作業体制・システム 機体情報・映像信号 カメラ映像 撮影・ジンバル操作 機体 操縦者 飛行位置 機体確認 機体操作 安全誘導 機体情報・映像信号 監視者 操縦者・・・プロポを操作し、UAVの操縦を行う。目視・及び携帯端末上の地図で飛行位置を確 認し安全に機体を飛行させる。 撮影者・・・FPVシステムにより機体に搭載されているカメラ画像を携帯端末に表示し、映し出 された映像を観てジンバルによりカメラアングルを操作し被写体を撮影する。また、 バッテリー残量や飛行高度・飛行距離の確認をし操縦者に伝える。 監視者・・・目視で機体の位置を確認し、歩行者や車両がUAVの下付近を通過しないように誘導 する。また墜落などの万が一のアクシデントに備える。 6.2 自動帰還機能の設定 バッテリー残量が機体の帰還に影響が出るかもしれない量まで減少した場合や機体操作信号が 3 秒 以上途絶した場合に離陸した場所まで自動で帰還出来るように設定しておきます。 6.3 飛行制限の設定 プロポと機体の通信は約 2km 程度可能だが、安全のため目視できる範囲で飛行出来るように飛行距 離に限界値を設定します。また最大高度も航空法で許されている 150m 以下に設定します。 6.4 電子コンパスのキャリブレーション 新しい場所での飛行前には、必ずコンパスキャリブレーションをします。コンパスがずれていると 飛行の不安定化、墜落などにつながりかねないので確実に行います。 6.5 離陸前の機体チェック 下記の記載されている機体確認を行ってから離陸します。 1.プロポ・機体バッテリー及び携帯端末のバッテリー残量は十分か。 2.機体へプロペラは正しい箇所へしっかり装着されているか。 3.搭載カメラに Micro-SD カードが挿入されているか。 4.ジンバルが通常通りに機能しているか。 5.モーターは正常に起動して停止するか。 6.飛行管理アプリと接続が完了しているか。 真室川・真鶴橋上流部 6.6 飛行記録の保存 空撮終了後、飛行時間、飛行時に気になったことや不具合な点があれば記録として残しておき、以 後のフライト時の参考にします。また、使用バッテリーの残量確認や充電回数も記録し適切なバッテ リー管理の資料とします。 7.おわりに UAVでの空撮は、通常我々が今まで撮影することができる視点とは全く違うことから、専門家は もちろん一般の人にとっても大変興味深い映像も撮影可能です。このため、今後は施設の調査や維持 管理のみならず、広報手段としての活用が期待されます。当社でも今後も空撮を行いながら様々な分 野で活用出来るよう運用していきたいと思います。