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運動セルフ・エフィカシーの向上を目的とした 短期動機づけ面接法の検討
早稲田大学審査学位論文 博士(人間科学) 運動セルフ・エフィカシーの向上を目的とした 短期動機づけ面接法の検討 The study of Brief-Motivational Interviewing to increase exercise self-efficacy 2011年1月 早稲田大学大学院 人間科学研究科 藤澤 雄太 Fujisawa, Yuta 研究指導教員: 竹中 晃二 教授 第 1 章 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 強 に 関 す る 研 究 動 向 ................................ 1 第 1 節 生 活 習 慣 の 改 善 に 向 け た わ が 国 の 取 組 み ................................ 5 第 2 節 不 活 動 が 引 き 起 こ す 健 康 問 題 と 対 策 ....................................... 7 第 3 節 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 加 を 意 図 し た 面 接 介 入 ....................... 10 第 4 節 身 体 活 動 ・ 運 動 の 促 進 を 意 図 し た 目 標 設 定 ........................... 29 第 5 節 本 研 究 の 対 象 者 .................................................................... 31 第 6 節 本 章 の ま と め ........................................................................ 34 第 2 章 本 研 究 の 目 的 と 意 義 ................................................................. 35 第 1 節 本 研 究 の 目 的 ........................................................................ 35 第 2 節 本 研 究 の 意 義 ........................................................................ 37 第 3 節 本 研 究 の 構 成 ........................................................................ 39 第 3 章 面 接 者 か ら 見 た 個 別 介 入 の 課 題 ............................................... 42 第 1 節 本 章 の 内 容 ........................................................................... 42 第 2 節 保 健 指 導 の 成 功 ・ 失 敗 原 因 に 関 す る 帰 属 様 式 の 検 討 ( 研 究 1) .......................................................................................................... 43 第 3 節 大学健康管理施設における身体活動・運動の促進・阻害要因に つ い て ( 研 究 2) ............................................................................... 66 第 4 節 第 4 章 本 章 の ま と め ........................................................................ 73 行 動 変 容 を 意 図 し た 発 話 と SE の 関 連 ...................................... 75 第 1 節 本 章 の 目 的 ........................................................................... 75 第 2 節 質 問 様 式 の 違 い が SE に 与 え る 影 響 ( 研 究 3) ...................... 76 第 3 節 会 話 に よ る オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン が S E に 与 え る 影 響( 研 究 4 ) .......................................................................................................... 98 第 4 節 第 5 章 本 章 の ま と め ...................................................................... 107 健 康 行 動 に 関 す る 実 施 し や す い 目 標 に つ い て の 検 討 .............. 108 第 1 節 本 章 の 目 的 ......................................................................... 108 第 2 節 ウ ォ ー キ ン グ 目 標 の 内 容 と 目 標 達 成 度 の 関 連 ( 研 究 5) ..... 109 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れ易さ ............................................................................................................ 126 第 1 節 本 章 の 目 的 ......................................................................... 126 第 2 節 身体活動量の増強を意図した面接の効果および受け入れ易さ ( 研 究 6) ........................................................................................ 126 第 3 節 第 7 章 本 章 の ま と め ...................................................................... 139 総 合 論 議 ................................................................................ 141 第 1 節 本 研 究 の 概 要 お よ び 研 究 の 知 見 .......................................... 141 第 2 節 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 強 を 目 的 と し た 面 接 法 に 関 す る 提 案 143 文 献 ..................................................................................................... 147 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 第 1章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 近 年 , わ が 国 で は 生 活 習 慣 病 ( l i fe -st yl e rel at ed di sea se ) の 罹 患 者 が 増 加 し , 2002 年 の 調 査 で は , 国 民 の 約 半 数 が , 生 活 習 慣 病 で あ る「 高 血 圧 症 」, 「 高 脂 血 症 」, 「 糖 尿 病 」の い ず れ か に 該 当 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る ( 厚 生 労 働 省 , 200 5 ). 生 活 習 慣 病 と は , 「 食 習 慣 ,運 動 習 慣 ,休 養 ,喫 煙 ,飲 酒 等 の 生 活 習 慣 が ,そ の 発 症 ・ 進 行 に 関 与 す る 疾 患 群 」 と 定 義 さ れ ( 厚 生 労 働 省 , 199 6 ), 不 活 動 や 栄 養 バ ラ ン ス の 悪 い 食 生 活 な ど が そ の 発 症 に 起 因 し て い る .わ が 国では, 「 1 に 運 動 ,2 に 食 事 ,し っ か り 禁 煙 ,最 後 に ク ス リ 」と い う ス ロ ー ガ ン の も と ,若 い 世 代 か ら 生 活 習 慣 病 予 防 の 活 動 が 始 め ら れ て い る .し か し な が ら ,図 1 -1 に 示 す よ う に ,若 年 お よ び 中 年 男 女 の 運 動 習 慣 保 持 者 の 割 合 は そ れ ぞ れ 20 % 前 後 に と ど ま っ て い る . ま た , 図 1 -2 に 示 し た 1 日 あ た り の 平 均 歩 数 の 年 次 推 移 を 見 る と , 20 歳 以 上 の 平 均 歩 数 は 男 女 と も 減 尐 傾 向 で あ る こ と が わ か る . こ の よ う な 不 活 動 傾 向 を 改 善 す る た め に ,身 体 活 動 お よ び 運 動 を 促 進 するための具体的な方略が求められている. 本 研 究 で は ,健 康 増 進 や 疾 病 予 防 を 目 指 し ,身 体 活 動 ・ 運 動 行 動 の促進を目的とした面接における, 「 オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 」,お よ び「 目 標 設 定 」の 効 果 に つ い て 検 討 を 行 う .オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン と は ,面 接 対 象 者 の 考 え ,関 心 ,態 度 と い っ た ,全 般 的 な 気 持 ち を 広 く 知 る た め に 用 い る 質 問 様 式 で あ る が ( 小 林 , 2 004 ), 本 研 究 で は ,「 対 象 者 に 広 く 考 え さ せ る 」 質 問 様 式 の 意 味 も 定 義 に 加 え た .一 方 ,目 標 設 定 と は ,特 に 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 強 を 目 的 と し た そ れ ら の 「 内 容 」,「 頻 度 」,「 量 」 の 決 定 を 指 す . さ ら に , 目 標 設 定 に よ る 自 己 の 能 力 向 上 や ス キ ル 獲 得 も 目 的 と し て い る .従 来 ,健 1 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 50.0% 40.0% 30.0% 男性 女性 20.0% 10.0% 0.0% 20 - 29歳 30 - 39歳 図1-1 40 - 49歳 50 - 59歳 60 - 69歳 わが国における運動習慣のある者の割合 (平成20年 国民健康・栄養調査結果の概要より) 2 70歳以上 ※運動習慣のある者とは,1回30分 以上の運動を週2日以上実施し,1 年以上継続している者 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 (歩) 8000 7500 7000 男性 女性 6500 6000 5500 2003年 2004年 図1-2 2005年 2006年 2007年 2008年 わが国における1日あたりの平均歩数の年次推移 (平成20年 国民健康・栄養調査結果の概要より) 3 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 康 行 動 の 促 進 を 目 的 と し た 種 々 の 面 接 法 で は ,効 果 が 認 め ら れ る 要 素 を 面 接 技 術 の 中 に 集 約 し ,そ れ ぞ れ の 技 術 を 意 図 的 に 用 い る こ と で 人 の 行 動 変 容 を 導 い て き た .そ の 理 由 と し て は ,指 導 型 の 面 接 で は 人 の 行 動 が 変 わ ら な い こ と が 経 験 的 に も ,ま た 科 学 的 に も 明 ら か に な っ て き た た め で あ る .目 標 設 定 に 関 し て も ,生 化 学 的 な 正 常 値 を 導 く レ ベ ル ,あ る い は 疾 病 の 発 症 予 防 が 可 能 な レ ベ ル の 目 標 を 対 象 者 に 処 方 す る 方 法 で は ,対 象 者 の 目 標 達 成 が 困 難 で あ る こ と が わ かっている. 一 方 で ,面 接 に お い て 無 計 画 に オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン や 目 標 設 定 を 使 え ば よ い と い う わ け で は な い .す な わ ち ,ど の よ う な 対 象 者 に 用 い る こ と で ,ど の よ う な 反 応 が 返 っ て く る の か を 予 測 し た 上 で 利 用 す る タ イ ミ ン グ を 計 る 必 要 が あ る .し か し な が ら ,身 体 活 動 ・ 運 動 の 促 進 を 目 的 と し た 面 接 で は ,面 接 技 術 に 関 す る 詳 細 な 議 論 は 行 わ れ て お ら ず ,基 礎 的 な 資 料 が 極 め て 不 足 し て い る .し た が っ て , 現 在 の と こ ろ ,オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン の 効 果 は 経 験 的 な 仮 説 に 基 づ い て 利 用 さ れ て い る に と ど ま っ て い る .ま た ,目 標 設 定 の 方 略 に つ い て も ,比 較 的 強 度 の 高 い 運 動 や ス ポ ー ツ の 領 域 で は 検 討 が 行 わ れ て い る も の の ,健 康 の 維 持 を 目 的 と し た 低・中 等 度 強 度 の 身 体 活 動においてはほとんど研究が行われていない. こ の よ う な 状 況 に お い て ,本 論 文 で は ,第 一 に ,面 接 に お け る オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 使 用 に よ り ,対 象 者 の セ ル フ ・ エ フ ィ カ シ ー ( S el f-Effi cac y: 以 後 S E と 略 記 ) が ど の よ う に 変 化 す る の か に つ い て 検 討 し た .更 に ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン の 特 徴 を 明 確 に す る た め に ,ク ロ ー ズ ド ・ ク エ ス チ ョ ン 中 心 の 面 接 と の 比 較 ,な ら び に 非対面で会話によらないオープン・クエスチョンとの比較を行い, 4 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 多 面 的 な 検 討 を 行 っ た .第 二 に ,目 標 設 定 に 関 し て ,ま ず 目 標 行 動 の 遂 行 者 が ,ど の よ う な 目 標 内 容 が 実 行 し や す い と 評 価 す る の か と い う 目 標 の 実 行 可 能 性 に つ い て 明 ら か に し た .さ ら に ,実 行 し や す い 目 標 と 目 標 の 遂 行 度 の 関 連 を 検 討 す る こ と に よ り ,対 象 者 中 心 の 目標設定法の効果を明らかにした. 身 体 活 動・運 動 行 動 の 促 進 の た め の ポ ピ ュ レ ー シ ョ ン ア プ ロ ー チ に 関 し て は ,こ れ ま で 多 く の 介 入 が 実 施 さ れ ,欧 米 に お い て エ ビ デ ン ス が 蓄 積 さ れ て き た .そ の 一 方 で ,個 別 ア プ ロ ー チ に 関 す る エ ビ デ ン ス は ,わ が 国 に お い て 不 足 し て い る .本 研 究 で 得 ら れ る 知 見 は , 面 接 時 間 の 尐 な い 医 療 現 場 で の 活 用 や 時 間 不 足( 忙 し さ )が 運 動 実 施の阻害要因となっている対象者への行動変容方略として有益な 資料となることが見込まれる. 第 1 節 生活習慣の改善に向けたわが国の取組み 近 年 ,わ が 国 で は ,ラ イ フ ス タ イ ル の 変 化 や 価 値 観 の 多 様 化 と い っ た 大 き な 環 境 変 化 の 中 で ,身 体 活 動 ・ 運 動 量 が 減 尐 し て い る .そ の 結 果 ,癌 や 循 環 器 疾 患 を は じ め と し た 生 活 習 慣 病 罹 患 者 が 増 加 す る な ど ,疾 病 構 造 が 様 変 わ り し た .こ の よ う な 現 象 は ,中 高 年 者 の み に 影 響 を 与 え る の で は な く ,幼 尐 か ら 青 年 期 の 若 年 層 に 対 し て も 健 康 問 題 を も た ら し ,国 民 全 体 に 広 く 悪 影 響 を 与 え る 結 果 と な っ た . 例 え ば , 糖 尿 病 に 関 連 し た 人 口 に つ い て み る と , 2002 年 に お い て 糖 尿 病 の 可 能 性 を 有 し た 人 は 1620 万 人 と な り ,1997 年 か ら の 5 年 間 で 約 2 割 増 加 し て い る . 2004 年 度 に 厚 生 労 働 省 よ り 発 表 さ れ た 生活習慣病の医療費は,悪性新生物,虚血性心疾患,脳血管疾患, 糖 尿 病 , 高 血 圧 性 疾 患 を 合 わ せ て 10 .4 兆 円 に の ぼ り , 国 民 医 療 費 5 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 総 額 で あ る 32.1 兆 円 の う ち , 約 3 割 を 占 め る ま で に 増 大 し て い る ( 中 島 , 200 6 ). そ の た め , 保 健 ・ 医 療 分 野 に お い て は , 国 民 皆 保 険 制 度 の 存 続 が 危 惧 さ れ る よ う に な っ て き て お り ,今 後 は ,予 防 に 特 化 し た 施 策 が 望 ま れ て い る ( 厚 生 労 働 省 , 2005 ). 保 険 制 度 の 危 機 に 対 し て ,当 時 の 政 府 は ,現 在 の 医 療 保 険 制 度 維 持 の た め ,「 医 療 制 度 改 革 大 綱 」 に お い て , 生 活 習 慣 病 に 重 点 を 絞 った施策を打ち出し,予防に特化した取り組みの実施を決定した ( 政 府 ・ 与 党 医 療 改 革 協 議 会 , 2005 ). ま た 厚 生 労 働 省 は , 2008 年 4 月 よ り , 生 活 習 慣 病 予 防 対 策 の 推 進 を 目 的 と し て ,「 メ タ ボ リ ッ ク シ ン ド ロ ー ム ( 内 臓 脂 肪 型 肥 満 )」 の 概 念 を 導 入 し , リ ス ク 要 因 に よ っ て 階 層 化 し た 対 象 者 に 対 す る 保 健 指 導 義 務 化 を 決 定 し た( 厚 生 労 働 省 ,2007 ).予 防 へ 向 け た 政 策 転 換 は ,保 健 指 導 を 行 う 医 師 , 保 健 師 , 管 理 栄 養 士 に 対 し て ,「 対 象 者 の 生 活 を 基 盤 と し , 対 象 者 が 自 ら の 生 活 習 慣 に お け る 課 題 に 気 づ き ,健 康 的 な 行 動 変 容 の 方 向 性 を 自 ら が 導 き 出 せ る よ う に 支 援 す る こ と 」( 厚 生 労 働 省 , 2007 ) を 求 め ,単 に 知 識 伝 達 型 で は な い 行 動 変 容 に 関 す る 働 き か け に よ り 活動量を増加させることが必要となった. 一 方 で ,国 は 2000 年 に「 21 世 紀 に お け る 国 民 健 康 づ く り 運 動( 健 康 日 本 21 )」 を 策 定 し , 広 く 国 民 に 対 し て , 国 民 の 主 体 的 で , 意 欲 的 な 健 康 づ く り を 促 す ガ イ ド ラ イ ン を 示 し た .例 え ば ,成 人 に お け る 身 体 活 動 ・ 運 動 の 目 標 と し て は , 1) 身 体 活 動 ・ 運 動 に 対 す る 意 識 の 向 上 , 2 ) 日 常 生 活 に お け る 歩 数 の 増 加 , な ら び に 3) 運 動 習 慣 者 の 増 加 な ど が 挙 げ ら れ る ( 健 康 日 本 21 推 進 全 国 連 絡 協 議 会 , 2 0 0 1). 他 方 , 肥 満 率 の 増 加 が 社 会 問 題 と な っ て い る 米 国 ( C e nt er for 6 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 Di s eas e C ont rol and P revent i on: 以 後 C D C と 略 記 , 2005 )で は ,国 立 衛 生 研 究 所( Nat i onal Inst i t ut es of Hea lt h )が 長 期 に わ た る 健 康 的 生 活 の 実 現 に 向 け ,「 行 動 変 容 を 用 い た 疾 病 予 防 に 向 け た 新 し い 取 り 組 み ( 1997 )」 を 発 表 し た . さ ら に , 環 境 整 備 を は じ め と し た 取 り 組 み に よ っ て 国 民 の 健 康 改 善 を 図 る た め ,H eal t h y P eop l e 2000 の 策 定 を 行 い , 複 数 の 健 康 行 動 の 促 進 が 期 待 さ れ て い る ( Uni t ed St at es Depart m ent of Heal t h and Hum an S ervi ces;以 後 HHS と 略 記 ,1990 ). 例 え ば , 身 体 活 動 に 関 連 し て ,「 軽 度 か ら 中 強 度 の 身 体 活 動 を 1 日 合 計 し て 30 分 以 上 , 週 の う ち ほ と ん ど 行 う 」 と い う 目 標 を 示 し て い る . 1995 年 に は , C DC と ア メ リ カ ス ポ ー ツ 医 学 会 ( Am eri c an C ol l ege of S port s Medi ci ne )が 共 同 で ガ イ ド ラ イ ン を 発 表 し て お り , そ の 中 で も 「 中 強 度 の 身 体 活 動 を 1 日 合 計 30 分 以 上 , 週 の う ち ほ と ん ど 行 う 」 と い う 身 体 活 動 量 を 示 し て い る ( R ussel l , 1998 ). こ れ ら の こ と か ら も ,わ が 国 に 限 ら ず ,先 進 諸 外 国 に お い て は ,座 位 中心生活や偏った食生活などからもたらされる疾病への対策が優 先課題となっていることがわかる. 以 上 よ り ,単 に 強 度 の 高 い 運 動 を 推 奨 す る の で は な く ,国 を あ げ て日常生活における活動量を増加させる方向へとシフトしている ことがわかる. 第 2 節 不活動が引き起こす健康問題と対策 メ タ ボ リ ッ ク シ ン ド ロ ー ム は ,内 臓 脂 肪 型 肥 満 と 高 血 糖 ,血 中 脂 質 異 常 ,な ら び に 高 血 圧 な ど を 合 併 し た 状 態( 内 臓 脂 肪 と そ の 他 2 つ の 該 当 に よ り メ タ ボ リ ッ ク シ ン ド ロ ー ム と 判 定 )で あ る が ,こ の 状 態 は ,身 体 活 動・運 動 量 の 不 足 や 過 食 と い っ た 生 活 習 慣 に 原 因 が 7 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 あ る と 指 摘 さ れ て い る .ま た ,メ タ ボ リ ッ ク シ ン ド ロ ー ム お よ び そ の 他 の リ ス ク 要 因 の 存 在 は ,心 筋 梗 塞 や 脳 卒 中 と い っ た 循 環 器 疾 患 発 症 の 可 能 性 を 高 め る こ と が わ か っ て い る .例 え ば ,身 体 活 動 量 の 違いによって生活習慣病の相対危険度を検証した研究によれば, 「 週 に 2000kcal 未 満 の 身 体 活 動 量 ( 曝 露 群 )」 と 「 週 に 2000kcal 以 上 の 身 体 活 動 量 ( 非 曝 露 群 )」 を 比 較 し た 冠 動 脈 疾 患 の 相 対 危 険 度 は 1 . 31( P affenb arger et al ., 1984 ),高 血 圧 症 の 相 対 危 険 度 は 1.30 ( P aff enbarger et al ., 1983 )で あ っ た .ま た ,糖 尿 病 に 関 し て は , 「週 1 回 未 満 の 運 動 ( 曝 露 群 )」 と 「 週 1 回 以 上 の 運 動 ( 非 曝 露 群 )」 の 比 較 に お い て 相 対 危 険 度 は 1.43 で あ っ た( M anson et al ., 1992 ).以 上 の 結 果 か ら ,身 体 活 動 量 が 尐 な い こ と が 循 環 器 疾 患 の 発 症 を 高 め ることが明らかになっている. 身 体 活 動 量 が 尐 な い こ と ,あ る い は 不 活 動 で あ る こ と は ,心 理 的 な 弊 害 も も た ら す . Gal pe r et al . ( 20 06 ) は , 合 計 6000 名 強 の 男 女 に 横 断 的 調 査 を 実 施 し ,身 体 活 動 量 と 抑 う つ ,お よ び 一 般 的 健 康 行 動 の 関 連 を 検 討 し た .そ の 結 果 ,過 去 3 ヵ 月 に お い て ,身 体 活 動 量 が 多 い ほ ど 抑 う つ 得 点 が 低 く ,一 般 的 健 康 度 が 高 い こ と が 明 ら か に な っ た . ま た , Go odwi n ( 2003) は , 無 作 為 抽 出 し た 約 6000 名 の 男 女 ( 15 -64 歳 ) の 定 期 的 な 身 体 活 動 と 精 神 神 経 疾 患 の 関 連 性 を 調 査 し た 結 果 ,定 期 的 な 身 体 活 動 を 実 践 し て い る 人 は ,精 神 神 経 疾 患 ( 大 う つ 病 ,パ ニ ッ ク 発 作 ,不 安 神 経 症 ,社 会 恐 怖 )を 有 す る リ ス ク が 低 い こ と を 示 し た .こ れ ら の 大 規 模 調 査 は 横 断 的 研 究 で あ る が , Brown et al . ( 2005 ) に よ る 縦 断 的 研 究 に お い て も , 身 体 活 動 と 抑 う つ の 関 連 が 示 さ れ た . こ の 研 究 で は , 9207 名 の 中 年 女 性 に 対 し て身体活動得点と 5 年後の抑うつおよびメンタルヘルスの関連を 8 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 調 査 し ,米 国 の 推 奨 ガ イ ド ラ イ ン( 中 等 度 以 上 の 身 体 活 動 を 週 あ た り 1 5 0 分 以 上 )よ り 低 い 身 体 活 動 量 で あ っ て も ,抑 う つ の 発 症 予 防 や メ ン タ ル ヘ ル ス の 維 持 が 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た .以 上 の よ う に ,複 数 の 調 査 結 果 か ら ,身 体 的 に 不 活 動 で あ る 人 の 方 が ,相 対 的 に 抑 う つ 傾 向 に あ り ,精 神 的 な 健 康 度 が 低 い こ と が 明 ら か に な っ て いる. 以 上 よ り ,不 活 動 と 心 身 の 健 康 問 題 の 関 連 性 が 強 く 示 さ れ ,わ が 国 で は , 社 会 的 な 健 康 問 題 解 決 の た め に , 健 康 日 本 21 と い う ガ イ ド ラ イ ン お よ び 健 康 行 動 に 関 す る 目 標 値 が 示 さ れ て い る .ガ イ ド ラ イ ン で は ,国 民 の 主 体 的 な 健 康 行 動 の 実 践 が 求 め ら れ て い た が ,健 康 日 本 21 の 中 間 評 価 に お い て , そ れ ぞ れ の 目 標 に 対 す る 実 績 値 が 参 考 値( ベ ー ス ラ イ ン 値 )よ り も 減 尐 し て お り ,目 標 達 成 に 及 ば な い ば か り か ,不 活 動 が 進 行 し た 可 能 性 も 否 定 で き な い 状 況 と な っ て い る .こ の 結 果 を み て も わ か る よ う に ,目 標 値 の 設 定 や 目 標 値 の 達 成 に 向 け た 活 動 内 容 の 提 示 と い っ た 知 識 提 供・指 示 型 の 取 り 組 み で は ,国 民 の 生 活 習 慣 の 改 善 に 対 し て は 十 分 と は 言 え な い .そ の た め , 人 の 改 善 意 欲 を 引 き 出 し ,自 律 的 な 行 動 変 容 に 導 く よ う な 行 動 変 容 技法を用いた取り組みが必要である. 以 下 ,第 3 節 に お い て は ,身 体 活 動・運 動 を 促 進 す る 介 入 の う ち , 面 接 を 用 い た 個 別 介 入 に つ い て 概 観 し ,臨 床 現 場 の 医 療 者 が 習 得 し や す い 面 接 を 選 定 す る .つ づ く 第 4 節 で は ,個 別 介 入 の 面 接 要 素 の 1 つ で あ る 目 標 設 定 法 に つ い て 述 べ ,身 体 活 動 量 の 増 強 を 目 的 に し た面接における,効果的な目標設定の方法について概観する. 9 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 第 3 節 身体活動・運動量の増加を意図した面接介入 近 年 の ヘ ル ス プ ロ モ ー シ ョ ン に お い て は ,健 康 行 動 の 獲 得 に 向 け た 知 識 を 提 供 す る 教 育 的 介 入 以 上 の 取 り 組 み が 求 め ら れ て い る .す な わ ち ,個 人 に 対 し て 情 報 提 供 に よ っ て 知 識 や 態 度 を 変 え る だ け で は な く ,集 団 や 社 会 単 位 の 取 り 組 み と い っ た 複 数 の 介 入 を 備 え る こ とにより,ヘルスプロモーションが達成されるというものである. M c Lero y et al . ( 19 88 ) は , 健 康 関 連 行 動 に 対 す る 介 入 を , 生 態 学 的 観 点 か ら ま と め ,表 1 -1 の よ う に ,階 層 ご と に 整 理 し た .彼 ら は , 階 層 を 1 )個 人 内 レ ベ ル ,2 )対 人 レ ベ ル ,お よ び 3 )社 会 集 団 レ ベ ル ,に 分 け ,社 会 集 団 レ ベ ル を さ ら に ① 組 織 的 要 因 ,② 社 会 集 団 要 因 ,な ら び に ③ 公 共 政 策 ,と い う 3 種 類 の 要 因 に よ り 説 明 し て い る . 個 人 内 レ ベ ル の 視 点 と は ,行 動 に 影 響 を 与 え る 個 人 の 特 徴 に 注 目 し た も の で あ り ,ト ラ ン ス セ オ レ テ ィ カ ル・モ デ ル や 健 康 信 念 モ デ ルが該当する.個人内レベルの介入は,個人に直接的に働きかけ, 態度や考え方を変えることにより行動変容を引き出す内容によっ て 作 ら れ る .対 人 レ ベ ル の 視 点 は ,個 人 間 の 相 互 作 用 に お い て 生 じ る 作 用 に 焦 点 を 当 て て い る .こ の レ ベ ル の 理 論 で は ,主 に 社 会 的 認 知 理 論 が 該 当 し ,他 者 の 行 動 を 通 し て 対 象 者 の 考 え や 行 動 に 働 き か け る 仕 組 み と な っ て い る .最 後 に ,社 会 集 団 レ ベ ル の 視 点 と し て は , 組 織 に お け る ル ー ル ,あ る い は 法 的 な 決 ま り が 挙 げ ら れ る .こ の レ ベ ル で の 介 入 は ,外 的 な 強 制 力 を 発 動 さ せ て 行 動 を 変 え る よ う な 内 容 を 指 し ,例 え ば ,通 勤 に 自 動 車 を 使 っ て は い け な い ,エ レ ベ ー タ は使ってはいけない等の規則によって行動を規定する. こ の よ う に ,行 動 変 容 理 論 を 用 い た 介 入 で は ,単 一 の レ ベ ル の 介 入 だ け を 選 択 す る の で は な く ,マ ル チ レ ベ ル の 介 入 が 推 奨 さ れ て い 10 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 表1-1 生態学的視点:各レベルごとの影響性 (McLeroy et al.(1988)を参考に著者が邦訳) コンセプト 定義 個人内レベル (Intrapersonal Level) 行動に影響を与える個人的特徴(知識,態度,考え,パーソナリ ティ) 対人レベル (Interpersonal Level) 社会的なアイデンティティ,社会的支援,社会的役割を付与するよう な家族,友人,仲間といった個人間の一連のつながり,および第一 次集団 社会集団レベル (Community Level) 組織的要因 (Institutional Factors) 推奨されている行動を強制,あるいは促進するルール,規則,政 策,非公式な組織 社会集団要因 (Community Factors) 個,集団,組織において公式・非公式なものとして存在する社会的 ネットワーク,規範,あるいは基準 公共政策 (Public Policy) 疾病予防,早期発見,疾病管理のための健康的な行動や実践を管 理,あるいは支援する地域,州,国家の政策や法律 11 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 る .様 々 な 場 面 ,お よ び 対 象 に 適 し た 介 入 を 組 み 合 わ せ て 活 用 す る こ と が 推 奨 さ れ て お り ,こ れ に よ り ,さ ら に 大 き な 成 果 を 導 く こ と ができると考えられている. 本 研 究 で は ,マ ル チ レ ベ ル の 介 入 の 中 か ら ,個 人 内 レ ベ ル の 介 入 に 当 た る 個 別 介 入 に 焦 点 を 当 て ,身 体 活 動・運 動 の 促 進 を 意 図 し た 面 接 方 略 の 特 徴 を 検 討 す る .面 接 方 略 は 主 に 医 療 現 場 や 地 域 保 健 の 現 場 な ど に お い て ,疾 病 予 防 介 入 と し て 利 用 さ れ て い る が ,面 接 内 容 が 定 式 化 さ れ ,他 の 面 接 介 入 と の 比 較 検 討 に 耐 え う る 方 略 は 限 ら れ て い る .し た が っ て ,面 接 内 容 に 関 す る 原 則 が 決 め ら れ て い る 面 接 を 検 討 の 対 象 と し て 採 用 す る .例 え ば ,医 療 現 場 に お い て 身 体 活 動 量 を 増 強 す る 面 接 と し て は , P h ysi cal Act i vi t y C ounsel i ng ( 以 後 , PA カ ウ ン セ リ ン グ と 略 記 ) と 名 づ け ら れ た 面 接 法 が 多 く 活 用 さ れ て い る . し か し , E den et al .( 2002 ) の レ ビ ュ ー に よ れ ば , PA カ ウ ン セ リ ン グ の 面 接 効 果 が 示 さ れ た 一 方 で ,そ の プ ロ ト コ ル に 一 貫 性 がなく,介入効果を評価できないことが明らかになっている. こ れ に 対 し ,介 入 内 容 が 原 則 的 に 決 め ら れ て い る 面 接 と し て ,主 に 次 の 3 つ の 面 接 方 略 が 挙 げ ら れ る . そ れ ら は , 1 ) Mot i vat i onal Int ervi e wi ng( 動 機 づ け 面 接:以 後 ,M I と 略 記 ),2 )Bri e f Moti vat i onal Int ervi e wi ng ( 短 期 動 機 づ け 面 接 : 以 後 , B -M I と 略 記 ), お よ び 3) 5 A ア プ ロ ー チ ( 以 後 , 5A と 略 記 ), で あ る . 以 下 , そ れ ぞ れ の 面 接の内容を紹介する. 1. MI M I は , 当 初 ア ル コ ー ル 依 存 症 の 治 療 法 と し て R ol l ni ck & Mi l l er ( 1 9 9 5)に よ っ て ま と め ら れ た 面 接 技 法 で あ り ,近 年 で は 運 動 習 慣 の 改 善 , 禁 煙 , 治 療 管 理 行 動 の 遂 行 , な ら び に H IV の 予 防 行 動 等 12 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 に も 適 用 さ れ て い る ( Het t em a et al ., 2005 ). M I に お い て は , 面 接 者 が ,オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン( Op en -e nded quest i on ),肯 定( Affi rm ), 聞 き 返 し( R efl ect i on ),要 約( S um m ar iz e )な ど の 会 話 技 術 を 用 い , 対 象 者 の「 変 化 に 向 け た 意 欲 」に 関 連 し た 言 葉( チ ェ ン ジ・ト ー ク ) を 引 き 出 し ,行 動 変 容 に 対 す る 意 志 を 強 化 さ せ る こ と に よ っ て 動 機 づ け を 行 う . チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と は ,「 現 状 を 維 持 す る こ と に よ る 不 利 益 」, 「 変 化 を 起 こ す こ と の 利 点 」, 「 変 わ る こ と へ の 意 志 」, 「変 わ る こ と へ の 楽 観 性 」を 表 す 言 葉 で あ り ,こ れ ら を 強 く 表 出 す る こ と が 行 動 変 容 に 繋 が る ( Mi l l er & R oll ni ck, 松 島 ・ 後 藤 訳 , 2007 ). MI が 健 康 行 動 に 関 す る 行 動 変 容 を 導 く 仮 説 で は , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク 数 が 多 い ほ ど ,あ る い は チ ェ ン ジ・ト ー ク の 強 度 が 高 い ほ ど 行 動 的 ア ウ ト カ ム( 飲 酒 回 数 ,喫 煙 回 数 ,エ ネ ル ギ ー 消 費 量 等 )が 改 善 す る こ と が 指 摘 さ れ て い る( Mi l l er & R ose, 2009 ).こ の 仮 説 は ,自 己 知 覚 理 論 ( Bem , 1967 ) や 認 知 的 不 協 和 理 論 ( Fest i n ge r, 1957 ) を 用 い る こ と で 理 解 す る こ と が で き る . MI の 対 象 者 は , ま ず , 面 接 の 中 で の 自 己 の 発 話 を 通 し て ,自 分 自 身 の 健 康 行 動 に 関 す る 考 え や 行 動 を メ タ 認 知 的 に 認 識 す る .こ こ で ,現 在 の 考 え や 行 動 と 理 想 的 な 行 動 実 践 の 乖 離 を 認 識 す る こ と で ,対 象 者 は 理 想 と 現 実 の 乖 離 を 解消するため自分の考え方および行動の変化を起こすと考えられ ている. MI の 効 果 に 関 す る 複 数 の レ ビ ュ ー に よ れ ば , 様 々 な 健 康 行 動 の 中 で も ,特 に 運 動 行 動 の 変 容 に お い て 長 期 に わ た る 効 果 が 示 さ れ て い る ( Het t em a et al ., 2005; Dunn et al ., 2001; R ubak, 2005; Mart ins & M cNei l , 2009; Lund ahl et al ., 2010 ). す な わ ち , M I は ア ル コ ー ル 依 存 症 の 治 療 を 目 的 に 開 発 さ れ た が ,身 体 活 動・運 動 の 促 進 に 対 し て 13 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 非常に有効な介入法である. 心 身 と も に 健 康 な 若 者 や 成 人 に MI が 適 用 さ れ た 例 は そ れ 程 多 く は な い .し か し ,タ ー ゲ ッ ト 行 動 を 身 体 活 動 や 運 動 に 設 定 し て 介 入 した事例では成功例がいくつか報告されており,事例の概要を表 1 -2 に ま と め た . 例 え ば , S m it h et al . ( 1997) は , Ⅱ 型 糖 尿 病 を 有 す る 中 高 年 女 性 を 対 象 に , 運 動 の 実 施 と 食 事 管 理 を 目 的 と し た MI を 実 施 し た . そ の 結 果 , 従 来 の 体 重 管 理 プ ロ グ ラ ム ( 全 16 回 の セ ッ シ ョ ン ) と 比 べ , MI を 受 け た 者 の 運 動 日 数 や 血 糖 値 の 記 録 回 数 な ど の 行 動 が 有 意 に 増 加 し ,そ の 結 果 ,疾 病 管 理 行 動 が 改 善 す る こ と が 示 さ れ た .ま た ,Bennet t et al .( 2007 )は ,が ん 患 者 に 対 し て , 化 学 療 法 の 副 作 用 で あ る 倦 怠 感 を 軽 減 す る こ と を 目 的 と し て ,身 体 活 動 量 を 増 加 さ せ る 介 入 を 行 っ た . こ の 研 究 で は , 18 歳 以 上 の 癌 治 療 中 の 患 者 を 対 象 に MI が 適 用 さ れ , MI を 受 け た 者 の う ち , ベ ー ス ラ イ ン 期 に お い て 定 期 的 な 身 体 活 動 に 対 す る SE が 高 い 者 が 身 体活動量を増加させる傾向にあることを明らかにした. し か し な が ら , MI が 健 康 行 動 の 行 動 変 容 を 導 く メ カ ニ ズ ム に は 不 明 な 点 が 残 さ れ て い る( Apoda ca & Lon gabau gh, 2009 ).先 行 研 究 に お い て , MI が 心 理 的 変 数 に 与 え る 影 響 や , 心 理 的 変 数 が 行 動 的 アウトカムを変容させるメカニズムについてはほとんど検討され て い な い .例 え ば ,M I に よ っ て 身 体 活 動 量 の 増 加 が 認 め ら れ て も , 対 象 者 の 心 理 的 な 変 化 は 測 定 さ れ て お ら ず ,身 体 活 動 量 の 増 加 を 導 いた要因の検討が不十分である. さ ら に , MI の 実 施 に つ い て も い く つ か の 問 題 が あ る . 1 つ は 面 接 技 術 の 習 得 に 関 す る 問 題 で あ る . MI の 面 接 技 術 は 容 易 に 習 得 で き る も の で は な く ,専 門 の ト レ ー ナ ー に よ る 訓 練 を 必 要 と す る .ま 14 15 a,c,d ・プログラム参加回数 ・食事記録表記入回数 ・血糖値記録数 ・運動記録日数 ・摂取カロリー記録日数 ・体重減尐量 ・MI 群は,Standard 群に比べて,すべての項目において良好な 結果(プログラム参加回数多い,食事記録表記入回数多い,血 糖値記録回数多い,運動記録日数多い,摂取カロリー記録日数 多い:すべて有意差あり)を示した。体重減尐量は,MI 群が多 い傾向であった。 ・Standard 群:食事管理,身体活動,血糖コント ロールに関する教育 ・Standard + MI 群:食事管理,身体活動,血糖コ ントロールに関する教育 + MI ・16-week group behavioral weight-control program (Standard) 群 ・16-week group behavioral weight-control program + MI 群 Brodie DA, Inoue A (2005)a , b 中高年女性 Ⅱ型糖尿病 患者 16名 ・3群の介入後において,歩行距離が有意に増加(群間差なし) ・MI + SC群およびMI群の介入後において,エネルギー消費量 が有意に増加(群間差なし) ・エネルギー消費量 ・余暇身体活動量 ・座位時間 ・歩行時間 ・歩行距離 ・階段利用時間 ・MI + SC群:心疾患専門看護師による通常ケア (アドバイス) + 研究者によるMI ・MI群:研究者によるMI ・SC群:心疾患専門看護師による通常ケア(アド バイス) ・MI + Standard Care (SC)群 ・MI 群 ・SC 群 高齢心不全 患者 60名 Smith DE, Kratt PP, Heckemeyer CM, et al. (1997) ・MI群は介入後において,中性脂肪,LDLおよびHDLコレステ ロールが有意に減尐(群間差はなし) ・中性脂肪 ・LDLコレステロール ・HDLコレステロール ・最大酸素摂取量 ・MI群:米国心臓協会の冊子 + MI ・Cont群:米国心臓協会の冊子 + 冊子内容に関 する電話面接 ・MI 群 ・Control 群 一般中年者 24名 ・Cont群と比較してNC群の疾患特異的QOLが介入後有意に減 尐 ・対象者を75歳以下に限定した場合,社会的活動制限,健康的 悩み・苦悩,疾患特異的QOLにおいて,NC群はCont群よりも有 意に減尐 成果(有意差が認められた項目) ・NC群:MIをベースとしたコーチング ・Cont群:非介入 測定指標 (運動・身体活動関連) ・主観的健康観 ・活気 ・社会的活動制限 ・疾患特異的QOL ・健康的悩み・苦悩 ・日常生活困難度 介入の内容 Kreman R, Yates BC, Agrawal S et al. (2006)b ・Nurse coaching (NC)群 ・Control 群 群構成 有疾患者 111名 対象者 Bennett JA, Perrin NA, Hanson G et al. (2005)a 著者 表1-2 身体活動および運動をターゲット行動にしたMotivational Interviewing に関する研究 (Lundahl, 2010; Martin, 2009; Burke, 2003; Dunn, 2001のレビュー論文をもとに著者が再構成) 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 16 消防士 599名 Elliot DL, Goldberg L, Kuehl KS, et al. (2007) a , b 冠動脈疾患リ スク保有成人 218名 Hardcastle S, Taylor A, Bailey M, et al. (2008) b 肥満,座位生 活成人 55名 肥満成人 141名 Greaves CJ, Middlebrooke A, O'Loughlin L, et al. (2008) b Carels RA, Darby L, Cacciapaglia HM, et al. (2007) b 対象者 著者 ・2つの群において,介入前から介入後にかけて,体重が有意に 減尐 ・2つの群の減量目標未達成者のうち,MIを受けた者と受けてい ない者の体重減尐量を比較すると,MIを受けた者の方が有意 に減尐 ・MI群は,介入1年後にフルーツ,野菜消費量,ならびにSit-ups 回数が有意に増加 ・Team-centered curriculum群も,介入1年後にフルーツ,野菜 消費量,ならびにSit-ups回数が有意に増加 ・フルーツ,野菜摂取量 (serving) ・脂質からの摂取カロリー ・食事管理の理解 ・食事に関するソーシャル サポート ・最大酸素摂取量 ・Sit-ups回数(1分あたり) ・健康的な身体活動実施 ・身体活動に関するソー シャルサポート ・体重 ・BMI ・Well-being ・Team-centered curriculum 群:訓練を受けた チームリーダーを中心とした個別目標設定と励ま し ・MI 群:MI ・Control 群:ベースライン時の測定結果配布 ・Team-centered curriculum 群 ・MI 群 ・Control 群 ・Cont群と比較して,Int群のBMI,体重,拡張期血圧が有意に 減尐 ・Cont群と比較して,Int群の合計身体活動量,歩行活動量が有 意に増加 ・血圧(収縮期/拡張期) ・BMI ・体重 ・総コレステロール ・中性脂肪 ・HDLコレステロール ・LDLコレステロール ・身体活動(強度,中等 度,歩行,合計) ・体重 ・最大酸素摂取量 ・Int群はCont群と比較して,5%減量の目標達成率が有意に高 い ・Int群はCont群と比較して,6カ月後の平均体重が有意に低い 成果(有意差が認められた項目) ・5%の減量達成度 ・週に150分の身体活動 ・体重 ・腹囲 測定指標 (運動・身体活動関連) ・BWLP 群:身体活動,食事に関するグループ セッション ・BWLP + MI 群:身体活動,食事に関するグ ループセッション + MIをベースとした個別面接 ・Int 群:MIをベースとした面接 ・Cont 群:非介入 ・Int 群:MIをベースとした面接 ・Cont 群:身体活動と栄養管理に関する情報提 供 介入の内容 ・Behavioral Weight Loss Program 群 ・Behavioral Weight Loss Program + MI 群 ・Intervention (MI) 群 ・Control 群 ・Intervention (MI) 群 ・Control 群 群構成 表1-2 続き 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 17 がん患者 72名 中年女性 46名 大学職員 239名 Bennett JA, Lyons KS, Winter-Stone K, et al. (2007) b Perry CK, Rosenfeld AG, Bennett JA, et al. (2007) b Butterworth S, Linden A, McClay W, et al. (2006) b b Lundahl, 2010 Martin, 2009 c Burke, 2003 d Dunn, 2001 MI = Motivational Interviewing Cont = Control a 対象者 著者 ・MI ベースのヘルスコー チング群 ・Control 群 ・Heart to Heart (HTH) + MI 群 ・Control 群 ・MI 群 ・Control 群 群構成 ・MI ベースのヘルスコーチング群:MI を元にし たヘルスコーチング ・Control 群:非介入 ・HTH + MI 群:グループセッション+ MI ・Cont 群:運動に関する情報提供 + アドバイス ・MI 群:MI + 歩数計提供 ・Cont 群:非介入(歩数計なし) 介入の内容 表1-2 続き 成果(有意差が認められた項目) ・MI 群は,Cont 群に比して,セルフ・エフィカシーが有意に増加 ・身体活動量に関して,有意な群間差なし ・HTH + MI 群は,Cont 群に比して,歩行距離およびソーシャル サポートが有意に増加した ・MI ヘルスコーチング群においてMCSの有意な改善あり 測定指標 (運動・身体活動関連) ・身体活動量 ・体力 ・SF-36 ・倦怠感 ・定期的な身体活動実施 に対するセルフ・エフィカ シー ・心肺機能 ・運動に対するセルフ・エ フィカシー ・運動に関するソーシャル サポート ・BMI ・Short Form 12 (Mental composite score : MCS & Physical composite score : PCS) 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 た , MI 習 得 後 に 時 間 が 経 過 す る に つ れ て MI が 忠 実 に 行 わ れ な く な る こ と も 指 摘 さ れ て お り( S cho ene r, 2005 ),面 接 技 術 の 維 持 に 関 する定期的な支援が必要となる.これに対して,わが国における MI 専 門 ト レ ー ナ ー の 数 は 極 め て 尐 な く , 現 実 的 に MI の 技 術 を コ メ デ ィ カ ル・ス タ ッ フ に 対 し て 普 及 さ せ ,実 用 的 な 方 法 と し て 定 着 させるためには,マンパワーの問題を解決しなくてはいけない.2 つ 目 は , 面 接 時 間 に 関 す る 問 題 で あ る . MI の 面 接 時 間 は 1 名 あ た り 約 60 分 程 度 必 要 で あ る . し た が っ て , 診 療 時 間 が 短 い こ と が 問 題 と な っ て い る 医 療 機 関 に お い て ,十 分 な M I を 実 施 す る こ と は 難 し く , MI の 内 容 を 簡 略 化 す る な ど の 工 夫 が 求 め ら れ る . 2 . B -M I B-M I は , R ol l ni ck et al . ( 1992 ) が M I の 精 神 と 実 践 を 簡 略 化 し た 形 式 で ま と め た 面 接 で あ る . B-M I は , 診 察 時 間 の 尐 な い プ ラ イ マ リ ケ ア に お い て ,M I の 考 え 方 を 適 用 す る こ と を 目 的 と し て お り , 1 度 の 面 接 介 入 に 対 応 さ せ る よ う に 開 発 さ れ た . B -M I は ,“ 方 略 リ ス ト ( m enu of st ra t eg y)” と 呼 ば れ る 8 つ の ス テ ッ プ を 対 象 者 に 合 わ せ て 使 用 す る こ と に よ り , MI に 用 い ら れ る 熟 練 し た 技 術 を 身 に つけていない医療者でも利用できるようなプロトコルとなってい る .表 1 -3 に は ,薬 物 依 存 を 対 象 と し た 場 合 の 8 つ の ス テ ッ プ を 記 載 し た . 以 下 , 表 1-3 に 沿 っ て , そ れ ぞ れ の 項 目 を 説 明 す る . 「 1 .導 入 方 略:生 活 ス タ イ ル( Openi ng St rat e g y: l i fest yl e,st resses and s ubst ance abuse )」と は ,対 象 者 に お け る 最 近 の 生 活 習 慣 お よ び 薬 物 依 存 を 引 き 起 こ す よ う な 関 連 事 項( 例 え ば ス ト レ ス )に つ い て , オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い て 尋 ね る こ と で あ る . 例 え ば ,「 ど う い う と こ ろ で 薬 物 を 使 う の で す か ? 」な ど の 質 問 の 回 答 か ら ,薬 18 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 表1-3 Brief Motivational Interviewing の質問項目 (Rollnick et al., 1992 を参考に,著者が邦訳) 方略リスト (The menu of strategies) 1. 導入方略:生活スタイル(Opening Strategy: lifestyle, stresses and substance use) 2. 導入方略:健康(Opening Strategy: health and sustance use) 3. 典型的な1日(A typical day/session) 4. 良い点・悪い点(The good things and the less good things) 5. 情報提供(Providing information) 6. 将来と現在(The future and the present) 7. 心配事の探索(Exploring concerns) 8. 意思決定の支援(Helping with decision-making) 19 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 物がどのような文脈で使用されているのかを理解する. 「 2.導 入 方 略 : 健 康 ( Openi ng St rat e g y: he al t h and subst ance abuse )」 と は , 薬 物依存がどのような健康障害を引き起こすのかについて尋ねるこ とである. 「薬物を使うとあなたの体にどんな影響がありますか?」 な ど の 質 問 か ら ,対 象 者 の 健 康 問 題 に 関 す る 考 え を 確 認 で き る . 「 3. 典 型 的 な 1 日 ( A t yp i cal da y/ sessi on )」 で は , 対 象 者 に お け る 最 近 の行動について詳細に尋ねる.また,一般的な会話をすることで, 面 接 者 と 対 象 者 の 関 係 性 の 構 築 を 行 う .「 4 . 良 い 点 ・ 悪 い 点 ( The good t hi ngs and t he l ess good t hi ngs )」 と は , 対 象 者 に 罪 の 意 識 を も た せ ず に ,タ ー ゲ ッ ト 行 動 に 関 す る 対 象 者 の 気 持 ち を 引 出 す こ と で あ る . 例 え ば ,「 薬 物 を 使 う こ と の 良 い 点 は 何 で す か 」, あ る い は , 「 悪 い 点 は 何 で す か ? 」と 質 問 す る こ と で ,対 象 者 の 考 え を 引 き 出 すとともに,何が問題であるのかを気づかせることが目的である. 「 5 . 情 報 提 供 ( P rovi di ng i nform at i on )」 は , 対 象 者 の 薬 物 使 用 の 制 止 を 促 進 す る た め に ,適 切 な 助 言 を 行 う こ と で あ る .し か し ,助 言 は 対 象 者 個 人 に 合 っ た 内 容 で は な く ,一 般 的 な 内 容 に と ど め ,助 言 に よ り 対 象 者 の 行 動 が 強 制 さ れ て は な ら な い .「 6 . 将 来 と 現 在 ( The fut ure and t h e present )」 は , 現 状 と 将 来 を 意 識 さ せ る こ と に よ っ て ,現 在 の 自 分 の 言 動 と 将 来 の 自 分 の 姿 の 間 に 矛 盾 を 生 じ さ せ る よ う に す る こ と で あ る .例 え ば ,ま ず「 ど う や っ て 将 来 を 変 え て いくのか」について尋ねる.ここで,理想的な将来像を尋ねると, 達 成 不 可 能 な 未 来 像 を 挙 げ て し ま う た め に ,そ れ を 避 け る こ と が 望 ま し い . 続 い て ,「 今 , 何 を や め た い の か 」 を 尋 ね , 現 在 不 満 を 感 じ て い る 事 柄 を 明 ら か に す る .こ の よ う に 対 象 者 自 身 に 矛 盾 を 広 げ さ せ る こ と が ,対 象 者 に 非 常 に 強 い 動 機 を 与 え る . 「 7 .心 配 事 の 探 20 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 索 ( Ex pl ori ng con c erns )」 と は , 対 象 者 が 薬 物 に 関 す る 不 安 や 心 配 事 を も っ て い る 場 合 に ,薬 物 の ど の よ う な 点 に 不 安・心 配 を 抱 い て い る の か に つ い て , 対 象 者 自 身 に 表 出 さ せ る こ と で あ る .「 将 来 と 現 在 」 同 様 に , 矛 盾 を 拡 大 す る 効 果 が あ る .「 8 . 意 思 決 定 の 支 援 ( Hel pi n g wi t h deci si on -m aki ng )」は ,タ ー ゲ ッ ト 行 動 の 遂 行 に 向 け た 意 思 の 確 認 を 契 機 に ,対 象 者 の 決 断 を 支 援 す る こ と で あ る .例 え ば ,「 そ れ で は , こ れ か ら 何 を 実 施 し ま す か ? 」 と い う 質 問 を , 行 動を強制することなく,中立的な言い方で尋ねる. 本 節 で は , R ol l ni ck et al .( 1992 ) の 論 文 を も と に , 薬 物 依 存 を 対 象 と し た 場 合 の プ ロ セ ス を 紹 介 し た .タ ー ゲ ッ ト 行 動 を 薬 物 依 存 か ら 他 の 健 康 行 動 ( 運 動 , 禁 酒 な ど ) に 変 え る こ と で , B-M I を 援 用 す る こ と が 可 能 で あ る .特 に こ れ ま で は ,飲 酒 行 動 を タ ー ゲ ッ ト 行 動 と し て 研 究 が 行 わ れ て き た が( H ea t her et al ., 1996 ),そ の 後 ,様 々 な 健 康 行 動 に 関 す る 研 究 も 行 わ れ て き た .表 1 -4 は ,身 体 活 動 ・ 運 動 行 動 を タ ー ゲ ッ ト 行 動 に し た 事 例 を ま と め た も の で あ る .例 え ば , C hannon et al . ( 200 7 ) は , 若 年 ( 14-1 7 歳 ) の Ⅰ 型 糖 尿 病 患 者 に 対 して,血糖コントロールを目的とした面接の効果を分析している. こ の 研 究 で は , 看 護 師 が 「 方 略 リ ス ト ( m enu of st rat eg y)」 を 用 い た 面 接( 平 均 4 回 )を 行 っ た 群 の 方 が ,情 報 提 供 の み を 行 う 統 制 群 ( 情 報 提 供 回 数 6 回 )と 比 べ て 血 糖 値 の コ ン ト ロ ー ル の 程 度 を 表 す HbA1c の 値 を 改 善 さ せ た .さ ら に ,対 象 者 の wel l -bei n g( Wel l -bei ng Ques t i onnai re ), な ら び に QO L( Di ab et es Qual i t y of Li fe Measure for Youth ) の 得 点 に お い て も , 介 入 群 が 統 制 群 に 比 べ て 有 意 に 高 い 値 を 認 め た . M I に つ い て の 非 専 門 家 ( 看 護 師 ) が 行 っ た B-M I は , 対象者の行動のみならず,心理的側面に対しても効果を示した. 21 22 b Lundahl, 2010 Martin, 2009 c Burke, 2003 d Dunn, 2001 MI = Motivational Interviewing Cont = Control a c,d 中年患者 523名 10代Ⅰ型糖 尿病患者 60名 Channon SJ, Cannings-John RL, HuwsThomas MV, et al. (2007) a Harland J, White M, Drinkwater C, et al. (1999) a , b , 一般中年者 1658名 対象者 Hillsdon M, Thorogood M, White I, et al. (2002) a 著者 ・身体活動量 ・身体活動の種類 ・身体活動の強度 ・すべての群に身体活動に関するリーフレット配布 ・Group 1 群: 保健師によるMI(1回) ・Group 2 群: 保健師によるMI(1回) + レジャーチケット(割引券30枚) ・Group 3 群: 保健師によるMI(6回) ・Group 4 群: 保健師によるMI(6回) + レジャーチケット(割引券30枚) ・Cont群:非介入 ・Group 1 (MI 1回) 群 ・Group 2 (MI 1回 + 経済 的インセンティブ) 群 ・Group 3 (MI 6回) 群 ・Group 4 (MI 6回 + 経済 的インセンティブ) 群 ・Control 群 ・身体活動得点,強度身体活動量,中等度身体活動量におい て,4群すべてがCont群と比較して有意に高い(4群間に身体活 動量の有意差なし) ・QOL,Well-being(活気以外の4項目),疾患に関する考えにお いて,MI群はCont群と比較して有意に増加 ・ヘモグロビンA1Cは,介入後6ヵ月目までは差は認められず, 12ヶ月後,24ヶ月後にMI群がCont群に比較して有意に減尐 ・MI群:BMIのmenu of strategyを参考とした面接 ・Cont群:疾患に関する情報提供および患者中心教育 ・MI 群 ・Control 群 成果(有意差が認められた項目) ・糖尿病患者QOL ・Health Locus of Control ・主観的ヘルスケア環境評価 ・糖尿病の知識 ・自己効力感 ・Well-being ・ソーシャルサポート(家族) ・疾患に関する考え ・ヘモグロビンA1C 測定指標 (運動・身体活動関連) ・エネルギー消費量の変化量に有意な群間差なし ・BMI群はDA群の間と比較して有意な拡張期血圧の減尐 ・BMI群:BMIのmenu of strategyを参考とした面接 ・DA群:健康信念モデルに基づいたアドバイス提供 ・Cont群:非介入 介入の内容 ・エネルギー消費量 ・BMI ・収縮期/拡張期血圧 ・Brief Negotiation (BMI) 群 ・Direct Advice (DA) 群 ・Control 群 群構成 表1-4 身体活動および運動をターゲット行動にしたBrief Motivational Interviewing に関する研究 (Lundahl, 2010; Martin, 2009; Burke, 2003; Dunn, 2001のレビュー論文をもとに著者が再構成) 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 B-M I を 用 い て 心 理 的 側 面 へ の 影 響 を 検 討 し た 研 究 は , 依 存 行 動 を タ ー ゲ ッ ト 行 動 に し た 研 究 で も 殆 ど 行 わ れ て お ら ず ,C hannon et al . の研究結果は貴重な資料である. Hi ll s don et al .( 200 2 ) は , 中 年 男 女 を 対 象 に , 身 体 活 動 量 の 増 強 を 目 的 と し て B-M I を 実 施 す る 群 ,身 体 活 動 量 増 強 へ の ア ド バ イ ス を 提 供 す る 群 ,な ら び に 介 入 を 行 わ な い 非 介 入 群 と い う 3 群 を 設 定 し ,エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の 比 較 を 行 っ た .そ の 結 果 ,各 群 に お い て エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の 記 録 を 行 っ た 人 は , B-M I 群 と 非 介 入 群 の 比 較 に お い て ,エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の 有 意 な 差 が 認 め ら れ た .そ の 他 の 群 間 に は 有 意 差 が 認 め ら れ な か っ た が , B-M I を 実 施 し た 群 と 非 介 入 群 を 比 較 し た 場 合 に は , B -M I 群 の 方 が エ ネ ル ギ ー 消 費 量 が 増 加 す る ことが明らかになった. Harl and et al . ( 199 9 ) は , 健 常 な 中 年 男 女 の 身 体 活 動 量 の 増 強 を 目 的 と し て B-M I を 実 施 し た .B-M I に よ る 介 入 回 数 の 違 い( 1 回 お よ び 6 回 ) に よ る 効 果 を 比 較 し た 結 果 , B -M I を 1 回 お よ び 6 回 実 施した群の身体活動量は,介入のない群と比べて有意に増加した. ま た ,介 入 回 数 の 違 い に よ っ て 身 体 活 動 量 の 有 意 な 差 は 認 め ら れ ず , M I の 非 専 門 家 ( 保 健 師 ら ) が 1 回 の B-M I 介 入 で 身 体 活 動 量 を 増 加させることが示唆された. Hi ll s don et al . の 研 究 結 果 の み で は , ア ド バ イ ス の 提 供 よ り も B-M I の 実 施 が 効 果 的 で あ る と は 断 定 で き な い . し か し , 情 報 提 供 の み を 行 う よ り も B-M I を 実 施 す る こ と に よ り ,対 象 者 の 心 理 的 変 化 お よ び 行 動 的 変 化 を 起 こ す こ と が 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た .ま た , そ れ ぞ れ の 研 究 か ら , M I の 非 専 門 家 に よ る B -M I が 実 施 可 能 な介入であり,かつ効果的であることが示された.しかしながら, 23 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 M I の 研 究 と 同 様 に ,B-M I の ど の よ う な 要 素 が ア ウ ト カ ム に 影 響 を 与 え た の か と い う メ カ ニ ズ ム に つ い て は 検 討 が 行 わ れ て お ら ず ,依 然 と し て 課 題 が 残 っ て い る .ま た ,表 1 -4 か ら も わ か る よ う に ,身 体活動・運動量の増強を目的として実施された事例はまだ尐なく, エビデンスの蓄積が必要である. 3. 5A 5A は , 健 康 関 連 の 行 動 変 容 を 支 援 す る た め の 方 略 で あ り , 医 療 現 場 な ど に お い て 用 い ら れ て き た .具 体 的 に は ,禁 煙 や 身 体 活 動 量 の 増 強 な ど を 目 的 に 利 用 さ れ , 面 接 に お い て は , 5A と 呼 ば れ る 5 つ の 頭 文 字 “ A ”( Ask , Advi se , Asse ss , Assi st , Arran ge ) が 示 す 面 接 ス キ ル を 用 い て ,対 象 者 の 意 図 を 引 き 出 し た り ,あ る い は 適 切 な ア ド バ イ ス を 行 う こ と に よ っ て 行 動 変 容 を 促 す .表 1-5 に は ,禁 煙 に 対 し て 5A を 用 い た ガ イ ド ラ イ ン を 示 し て お り ,以 下 に そ れ ぞ れ の 内 容 を 説 明 す る( 循 環 器 病 の 診 断 と 治 療 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン 2 0 0 3-2 0 04 年 度 合 同 研 究 班 , 2005 ). ス テ ッ プ 1 の “ Ask ” で は , 対 象 者 の 特 徴 を 把 握 す る . 例 え ば , 診 察 に お い て 喫 煙 者 の 特 徴( 喫 煙 の 種 類 ; 現 在 喫 煙 ,以 前 喫 煙 ,非 喫煙など)を特定したり,健康状態の把握を行う.ステップ 2 の “ Advi ce ”で は ,対 象 者 に イ ン パ ク ト の あ る 忠 告 を 行 い ,行 動 改 善 に 向 け た 方 向 付 け を 行 う .例 え ば ,喫 煙 す る こ と に よ っ て ,子 ど も や 家 族 の 健 康 被 害 が も た ら さ れ る と い っ た 忠 告 を 行 う .ス テ ッ プ 3 の “ Assess ” で は , タ ー ゲ ッ ト 行 動 に つ い て の 関 心 を 査 定 す る . 例 え ば 禁 煙 を す る つ も り で あ る か 否 か を 問 い ,意 欲 が あ れ ば 禁 煙 に 向 け た ス テ ッ プ へ 進 み ,意 欲 が 無 い よ う で あ れ ば ,ま ず 禁 煙 に 向 け た 動 機 づ け の 準 備 を 行 う . ス テ ッ プ 4 の “ Assi st ” で は , 様 々 な サ ポ 24 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 表1-5 禁煙を対象とした5Aアプローチのプロセス概要 (循環器病の診断と治療に関するガイドライン,2005より抜粋) 段階 各ステップの概要 5A ステップ1 Ask ・診察のたびに,全ての喫煙者を系統的に同定する ステップ2 Advise ・全ての喫煙者にやめるようにはっきりと,強く,個別的 に忠告する ステップ3 Assess ・禁煙への関心度を評価する ステップ4 Assist ・患者が禁煙を計画するのを支援する ・カウンセリングを行う ・診療活動のなかで,ソーシャル・サポートを提供する ・患者が医療従事者以外からソーシャル・サポートを利用 できるよう支援する ・薬物療法の使用を勧める ・補助教材を提供する ステップ5 Arrange ・フォローアップの診察の予定を決める 25 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 ー ト の 利 用 ,目 標 設 定 ,お よ び 問 題 解 決 な ど を 行 い な が ら ,タ ー ゲ ッ ト 行 動 の 実 行 を 支 援 す る .具 体 的 に は ,禁 煙 の た め の 処 方 薬 の 紹 介 や 家 族 関 係 の 評 価 ,禁 煙 開 始 日 の 設 定 ,禁 煙 を 阻 害 す る 要 因 に 向 けた対処方法の習得などが挙げられる.最後にステップ 5 の “ Ar ran ge ” で は , フ ォ ロ ー ア ッ プ の 予 定 を 決 定 す る . 医 療 現 場 で あ れ ば , 次 の 診 察 日 の 決 定 が 該 当 す る . こ の よ う に , 5A で は 5 つ の ス テ ッ プ を 段 階 的 に 進 み ,対 象 者 と の 面 接 を 実 行 す る .こ こ で は 例 と し て 禁 煙 を 示 し た が ,タ ー ゲ ッ ト 行 動 を 身 体 活 動・運 動 に 変 え て 5A を 用 い た 介 入 を 以 下 に 紹 介 す る . C os t anz o et al ( . 2 010 )に よ れ ば ,5 A は 効 果 が 紹 介 さ れ て い る が , 確 固 た る エ ビ デ ン ス が 得 ら れ て い る わ け で は な く ,今 後 さ ら に 検 討 す る 必 要 性 を 指 摘 し て い る .例 え ば ,身 体 活 動 量 の 増 強 を 目 的 に 実 施 さ れ た 研 究 の う ち , C al fas et al . ( 1996 ) な ら び に Le wi s & Lyn ch ( 1 9 9 3)の 介 入 は ,5A に 関 す る 良 好 な 結 果 を 示 し て い る .Le wi s & Lyn c h は , 18 歳 以 上 の 外 来 患 者 に 5 A を 実 施 し , 週 あ た り の 運 動 時 間 を 増 加 さ せ , 5A が 身 体 活 動 量 の 増 加 を 導 く 方 略 で あ る こ と を 示 し た . C al f as et al . は , 不 活 動 な 中 年 者 に 対 し て , 内 科 医 が 5A を 実 施する群と身体活動とは関連のないテーマの面接を実施する群の 歩 数 を 比 較 し た . そ の 結 果 , 5A 実 施 群 が 対 照 群 に 比 べ て 歩 数 を 増 加 さ せ た . た だ し , 5A 群 は 5A の 内 容 に 関 心 を 示 し た 内 科 医 に よ り 構 成 さ れ て お り , 5A に 対 し て 好 意 的 な 印 象 を 持 っ て い る こ と が 介 入 に 影 響 を 及 ぼ し て い る と 考 え ら れ る .ま た ,対 照 群 の 面 接 は 身 体活動の増加とは全く関連のない面接内容によって構成されてお り , こ の よ う な 対 照 群 の 設 定 で は , 5A の 効 果 を 示 す に は 不 十 分 で ある. 26 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 一 方 で , 5A を 実 施 し て 身 体 活 動 の 増 加 を 意 図 し た も の の , 最 大 酸 素 摂 取 量 な ど の 心 肺 機 能 の 改 善 は 認 め ら れ た が ,身 体 活 動 量 が 増 加 し な い ケ ー ス も 報 告 さ れ て い る ( C ost anz o et al , 2010; The Act i vit y C ounsel i ng Tri al R esea rch Gro up, 2001 ). C ost anz o et al . は , 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ が ,前 熟 考 か ら 準 備 ス テ ー ジ の 中 高 年 女 性 に 対 し て 5A を 実 施 し た . し か し な が ら , 中 等 度 の 強 度 の 身 体 活 動 は 有 意 に 増 加 せ ず ,身 体 活 動 量 の 増 加 に は 効 果 が な い 可 能 性 が 示 唆 さ れ た . ま た , St e pt oe et al . ( 2001) は , 不 活 動 な 中 年 男 女 612 名 に 対 し て , 5A を 用 い た 身 体 活 動 量 増 強 を 目 的 と し た 面 接 を 行 う 群 ( 5A 群 ) と , 身 体 活 動 量 増 強 の メ リ ッ ト を 教 育 す る 群 ( 統 制 群 ) と の 比 較 を 行 っ た .介 入 前 後 に は ,両 群 の 対 象 者 の 身 体 活 動 に 対 す る 行 動 変 容 ス テ ー ジ を 測 定 し ,介 入 前 後 の 変 容 ス テ ー ジ の 変 動 を 分 析 し て 介 入 効 果 を 評 価 し た .介 入 4 ヵ 月 後 で は ,統 制 群 を 1 と し た 場 合 の 5A 群 に つ い て の オ ッ ズ 比 は 次 の よ う に な っ た .“ 前 熟 考 ス テ ー ジ → 実 行 ・ 維 持 ス テ ー ジ ” は 1. 28 ,“ 熟 考 ス テ ー ジ → 実 行 ・ 維 持 ス テ ー ジ ”は 1.4 2 , “ 準 備 ス テ ー ジ → 実 行・維 持 ス テ ー ジ ”は 1.85 と な っ た .さ ら に ,12 ヵ 月 後 に お い て は , “ 前 熟 考 ス テ ー ジ → 実 行・ 維 持 ス テ ー ジ ” は 1.30 ,“ 熟 考 ス テ ー ジ → 実 行 ・ 維 持 ス テ ー ジ ” は 1 . 0 0,“ 準 備 ス テ ー ジ → 実 行 ・ 維 持 ス テ ー ジ ” は 1.89 と な っ た . 4 ヵ 月 後 , 12 ヵ 月 後 , そ れ ぞ れ の オ ッ ズ 比 を み る と , 準 備 ス テ ー ジ 者 に は 効 果 的 だ と 言 え る が ,特 に 熟 考 ス テ ー ジ 者 に は 長 期 的 な 効 果 が な い こ と が わ か る . つ ま り , 5A は 前 熟 考 ・ 熟 考 ス テ ー ジ 者 よ り も ,準 備 ス テ ー ジ 者 を 実 行・維 持 ス テ ー ジ に 引 き 上 げ る た め に 有 効 であることが示された. 以 上 の 結 果 を 導 く 理 由 と し て , 5A が 前 熟 考 ・ 熟 考 ス テ ー ジ 者 に 27 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 対 す る 介 入 方 法 と し て 不 適 切 で あ る こ と が 考 え ら れ る .酒 井( 2007 ) は ,変 容 ス テ ー ジ が 前 熟 考 ス テ ー ジ に あ る 人 に 対 し て ア ド バ イ ス を 行 っ て も ,そ れ に よ り 対 象 者 の 抵 抗 が 強 く な り ,介 入 を 拒 絶 す る 可 能 性 が あ る と し て い る .す な わ ち ,特 に 前 熟 考 ス テ ー ジ 者 の よ う な , タ ー ゲ ッ ト 行 動 の 実 行 に 対 し て 意 識 が 低 い 者 に は , 5A ア プ ロ ー チ が 適 切 で は な い と 指 摘 し て い る .し か し ,酒 井 の 指 摘 を 裏 付 け る 科 学 的 な 検 証 が 十 分 行 わ れ て い る と は 言 え な い .ま た ,G l asgow et al . ( 2 0 0 6 ) は , 5A に 関 す る ス タ ン ダ ー ド な 活 用 法 が 設 定 さ れ て い な い た め , 使 用 法 に ば ら つ き が 生 じ る こ と も 指 摘 し て い る . 5A を 適 用 す る に あ た っ て は ,上 述 し た よ う な 身 体 活 動 へ の 関 心 の 程 度 が 低 い者に対して効果的であることが求められる. 本 節 で は ,身 体 活 動 ・ 運 動 を 促 進 す る た め に ,個 人 内 レ ベ ル の 介 入 に 焦 点 を 当 て て 介 入 内 容 の 特 徴 を 概 観 し た .ま た ,医 療 者 ,特 に 保 健 師 ,看 護 師 と い っ た コ メ デ ィ カ ル・ス タ ッ フ( co - m edi cal st aff ) に よ る 実 施 し や す さ の 観 点 か ら 各 介 入 法 を 評 価 し た 結 果 ,以 下 の 通 りになった. MI は , 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 強 に 対 し て , 短 期 的 な 効 果 に と ど ま ら ず ,介 入 効 果 が 長 期 的 に 持 続 す る こ と も わ か っ て お り ,個 別 介 入 と し て 優 れ た 面 接 法 で あ る こ と が わ か っ た .し か し ,面 接 技 術 の 習 得 と 面 接 時 間 に 関 し て 解 決 す べ き 課 題 が 残 っ て お り ,た だ ち に 活 用できるとは言えない. B-M I は ,M I の 原 理 を 残 し た 上 で ,面 接 技 術 の 習 得 ,な ら び に 面 接 時 間 の 課 題 を 解 決 し て お り ,コ メ デ ィ カ ル・ス タ ッ フ に 実 施 し や す い 面 接 法 だ と 言 え る .身 体 活 動・運 動 量 の 増 強 に 対 し て は ,B-M I の 効 果 が 認 め ら れ て い る が ,B -M I の 研 究 例 が 尐 な く ,M I と 同 様 の 28 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 介入効果が見込めるかどうかについては今後の研究によってデー タを蓄積する必要がある. 5A は 医 療 現 場 に お い て 多 く 活 用 さ れ て き た 面 接 法 で あ り , 利 用 実績から実行可能性の高い面接だと評価できる.また 5 つの A が 面接者の行動を指し示しているため,分かりやすく,コメディカ ル ・ ス タ ッ フ に は 活 用 し や す い と 言 え る .し か し な が ら ,先 行 研 究 で は ,身 体 活 動 量 の 増 強 に は 効 果 が 認 め ら れ な い 事 例 が 報 告 さ れ て い る こ と や ,健 康 行 動 に 無 関 心 な 人 に は 面 接 効 果 が な い こ と も 示 さ れている. 以 上 よ り , B-M I は 介 入 効 果 に 関 す る エ ビ デ ン ス の 蓄 積 が 将 来 も 含 め て 必 要 だ が ,介 入 内 容 は コ メ デ ィ カ ル・ス タ ッ フ が 習 得 可 能 な も の で あ る . ま た , B-M I は , 身 体 活 動 等 に 対 し て 無 関 心 な 者 に 対 す る 身 体 活 動・運 動 量 の 増 強 に 介 入 効 果 が 見 込 ま れ る 面 接 で あ る と 評 価 し , 本 研 究 で は B-M I を 採 用 す る . B -M I は , 面 接 が 心 理 的 変 数 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 不 明 確 で あ る た め ,今 後 ,心 理 的 変 数 に 対 する面接効果を検証する必要がある. 第 4 節 身体活動・運動の促進を意図した目標設定 M I,B-M I,お よ び 5A は ,対 象 者 の タ ー ゲ ッ ト 行 動 の 遂 行 を 促 進 す る 面 接 法 で あ る が ,面 接 に お け る 目 標 設 定 法 に 関 し て は ,そ れ ぞ れ 具 体 的 な 記 述 が さ れ て い な い .特 に ,身 体 活 動 量 の 増 強 を 目 的 と し た 場 合 ,ど の よ う な 対 象 者 に ,ど の よ う な 目 標 が 適 し て い る の か は 判 明 し て い な い .し た が っ て ,上 記 の 面 接 方 略 を 補 完 す る た め に , 身体活動や運動行動に関する目標設定法の検討が求められる. 目標設定法は,個別の面接方略やポピュレーション・アプローチ 29 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 に 加 え ,身 体 活 動 や 運 動 の 開 始 を 促 進 す る 有 効 な 手 段 の 1 つ に 挙 げ ら れ て い る ( Dun c an & P oz ehl , 2002 ). こ れ ま で , 身 体 活 動 量 の 増 加 を 目 的 と し た 目 標 設 定 に 関 す る 研 究 に お い て は ,目 標 設 定 の 有 無 と ア ウ ト カ ム の 関 連 を 比 較 し た 研 究 が 多 く ,ま た ど の よ う な 目 標 内 容 が ア ウ ト カ ム に 良 好 な 影 響 を 与 え る の か と い う 検 討 が 研 究 者( 目 標 設 定 者 )側 の 視 点 か ら 論 じ ら れ て き た .し か し ,無 作 為 化 比 較 試 験 に よ っ て 行 わ れ た 研 究 に お い て は ,目 標 設 定 を 行 う こ と が 身 体 活 動 量 の 増 強 さ せ る こ と が 示 唆 さ れ た 研 究 ( Annesi , 2002; Duncan & Poz ehl , 2002; Al ex y, 1985 )と ,目 標 設 定 者 が 目 標 未 設 定 者 と の 間 に 身 体 活 動 量 の 有 意 差 を 示 さ な か っ た 例 ( McKa y et al ., 2 001; C obb et al ., 2000 ) が 報 告 さ れ た . 例 え ば , Annesi は フ ィ ッ ト ネ ス ク ラ ブ に 通 う 2 0 ‐ 60 歳 の 対 象 者 を 目 標 設 定 群 と 非 目 標 設 定 群 に 分 け て 運 動 実 施 度 合 い を 比 較 し た と こ ろ ,目 標 設 定 を 行 う こ と に よ り ,ド ロ ッ プ ア ウ ト 率 の 低 減 ,お よ び 運 動 参 加 回 数 の 増 加 が 有 意 に 達 成 さ れ る こ と を 示 し た .ま た ,ク リ ニ ッ ク に 通 う 心 疾 患 患 者 を 対 象 に 行 っ た Duncan & P oz ehl の 研 究 で は , 運 動 を 行 う 際 に 目 標 設 定 を 行 っ た 群 と目標設定をせずに運動を行った群の運動継続率を比較したとこ ろ ,目 標 設 定 を 行 う こ と に よ り ,運 動 継 続 率 の 増 加 に 加 え ,将 来 に おける運動継続の自信も高まることが示された.その一方で, M cKa y et al . は , Ⅱ 型 糖 尿 病 患 者 を 対 象 に , イ ン タ ー ネ ッ ト を 用 い て 目 標 設 定 に よ る 身 体 活 動 量 の 増 強 を 行 う 群 と ,身 体 活 動 量 増 強 に 関 す る 情 報 提 供 の み を 行 う 群 の 身 体 活 動 レ ベ ル の 比 較 を 行 っ た .そ の 結 果 ,両 群 と も に 身 体 活 動 レ ベ ル が 向 上 し た た め ,目 標 設 定 の 効 果 は 認 め ら れ な か っ た . ま た , C obb et al . は , フ ィ ッ ト ネ ス プ ロ グ ラムに参加している大学生を,目標設定群,情報提供(読書)群, 30 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 お よ び 非 介 入 群 の 3 群 に 無 作 為 に 割 り 当 て ,運 動 継 続 率 を 測 定 し た . そ の 結 果 ,3 つ の 群 の 間 に 運 動 継 続 率 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た .つ ま り ,目 標 設 定 が 身 体 活 動 量 を 増 強 さ せ る か ど う か に 関 し て 一 貫 し た 結 果 を 得 て い な い ( S hi l t s et al ., 2004 ). 他 方 , 従 来 の 研 究 で は ,目 標 設 定 の 効 果 の 研 究 を 強 調 し て い る も の の ,設 定 し た 目 標 の 達 成 率 を 評 価 し て い る わ け で は な い .目 標 設 定 に よ る 身 体 活 動 量 の 増 減 や ,運 動 教 室 へ の 出 席 回 数 が 評 価 の 指 標 と な っ て お り ,設 定 した目標が適切であったのかについては十分な評価がなされてい ない. こ の よ う に ,身 体 活 動 量 の 増 加 を 目 的 と し た 目 標 設 定 の 研 究 で は , 目 標 達 成 率 を 指 標 と し て い る 例 は 尐 な い .目 標 設 定 の 目 的 は ,目 標 を 達 成 し や す く す る こ と で あ り ,目 標 設 定 し て い な い 人 よ り も 身 体 活動量が相対的に増やすことが本来の目的ではない.したがって, 目標設定法の研究では,目標達成の有無を指標にする必要がある. 第 5 節 本研究の対象者 本 研 究 で は , B-M I に 準 じ た 面 接 の 医 療 現 場 に お け る 適 用 に 先 立 ち , 青 年 期 の 女 子 学 生 を 対 象 者 と し て 選 択 し た . 女 子 学 生 は ,「 痩 せ て い る こ と が 美 し い 」と い う 社 会 的 風 潮 に 影 響 を 受 け ,標 準 体 重 で あ る に も 関 わ ら ず 痩 せ る こ と を 望 み ,誤 っ た 食 事 管 理 に よ っ て 体 重 や 体 型 の 改 善 を 行 っ て い る( 尾 峪 ら ,2005;亀 崎・岩 井 ,1998 ). こ の よ う な 欠 食 や 偏 食 と い っ た 食 習 慣 は ,骨 粗 鬆 症 の 発 症 リ ス ク を 高 め る が( Ori m o et al ., 2001 ),図 1-3 に 示 す よ う に ,単 純 に カ ル シ ウムやビタミンの不足といった栄養不足だけが骨粗鬆症を生じさ せ る の で は な く ,身 体 活 動・運 動 量 の 不 足 ,喫 煙 ,飲 酒 と い っ た 様 々 31 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 骨粗鬆症の原因因子群 健康行動変容のターゲット行動としても 扱われている項目 骨に対する 荷重不足 加齢 (閉経後) エストロゲン 不足 栄養不足 (カルシウム,ビタミンD ビタミンK) 運動不足 飲酒 喫煙 骨粗鬆症 図1-3 骨粗鬆症の原因因子(「堀尾ら,2007」を参考に著者が作成) 32 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 な 健 康 行 動 も 関 連 し て い る ( 堀 尾 ら , 2007 ). ま た 一 方 で は , 女 子 大 学 生 の 精 神 的 健 康 度 が 身 体 活 動・運 動 量 に よ っ て 影 響 さ れ や す い こ と や ( 甲 斐 ・ 山 崎 , 2009 ; 本 山 , 2 003 ), た と え 普 通 体 重 の 者 で あ っ て も ,不 活 動 に よ り 循 環 器 疾 患 の 発 症 リ ス ク が 増 加 す る こ と も 報 告 さ れ て い る ( 古 川 ら , 2009). こ の よ う な 女 子 大 学 生 の 状 況 に 対 し て は ,足 立 ら( 200 9 )が 提 案 す る よ う に ,体 重 だ け で は な く ,体 力 な ど に も 関 心 が 向 け ら れ る よ う な 働 き か け を 行 い ,バ ラ ン ス の 良 い 栄 養 摂 取 と 十 分 な カ ロ リ ー 摂 取 ,な ら び に 運 動 に よ る カ ロ リ ー 消 費 と い う 総 合 的 な 健 康 管 理 を 行 うことが望まれている.したがって,青年期の女子学生の身体活 動・運 動 量 を 増 加 さ せ る こ と は ,単 に 体 力 を 向 上 さ せ る だ け で は な く ,心 身 の 健 康 度 を 高 め ,骨 粗 鬆 症 や 循 環 器 系 疾 患 の 発 症 リ ス ク の 抑制に繋がる. 欧 米 に お い て も ,大 学 入 学 を 契 機 と し た 健 康 問 題 が 指 摘 さ れ て い る .わ が 国 と 同 様 に ,一 人 暮 ら し の 開 始 ,新 し い 社 会 的 役 割 の 獲 得 , あ る い は 多 く の 人・出 来 事 と の 接 触 機 会 が 増 加 す る こ と が ,重 大 な 健 康 リ ス ク を 招 く こ と に も 繋 が る こ と が わ か っ て い る .こ の 背 景 に は , 米 国 に お け る 主 要 な 死 因 で あ る 心 疾 患 ( Am eri can H eart As s oci at i on, 2002 )に 肥 満 が 大 き く 影 響 し て い る こ と( H HS , 2000 ), な ら び に ,若 年 期 の 過 体 重 者 の 7 割 が 成 人 期 以 降 の 過 体 重・肥 満 の 可 能 性 を 有 し て い る ( C DC , 2003 ) と い う こ と が 挙 げ ら れ る . さ ら に ,座 位 中 心 生 活 が も た ら す 不 活 動 が ,将 来 的 に は 心 疾 患 を 誘 発 す る ( S penc er, 2002 ) と い う 事 実 も 多 く の 健 康 障 害 の ひ と つ で あ る . こ の よ う な 状 況 に 対 し , 米 国 で は He al t h y P eopl e 2010 の 中 に お い て ,不 十 分 な 身 体 活 動 な ど の 問 題 を 抱 え る 大 学 生 に 対 し て ,健 康 情 33 第 1 章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 報 を 与 え る 必 要 性 を 述 べ ,若 年 者 の 健 康 リ ス ク の 低 減 に 向 け て 国 と し て の 対 策 を 打 ち 出 し て い る ( H HS , 2000 ). 第 6 節 本章のまとめ 本 章 で は ,第 1 節 に お い て ,わ が 国 の 不 活 動 な 生 活 習 慣 を 起 因 と し た 疾 患 の 予 防 に 対 し て ,日 常 生 活 に お け る 身 体 活 動・運 動 量 を 増 加 さ せ る 方 略 が 求 め ら れ て い る こ と を 示 し た .第 2 節 で は ,不 活 動 がもたらす具体的な健康問題を取り上げた.第 3 節では,身体活 動・運動量の増加を目的とした介入のうち,特に個別介入である M I,B-M I,お よ び 5A に 焦 点 を 当 て ,そ れ ぞ れ の 介 入 の 特 徴 と 実 行 可 能 性 に つ い て 述 べ た .第 4 節 で は ,身 体 活 動 ・ 運 動 量 を 増 加 さ せ るための目標設定の方法に関する研究を取り上げた.最後に第 5 節 で は ,本 研 究 の 対 象 者 で あ る 女 子 大 学 生 を 取 り 巻 く 健 康 問 題 に つ いて指摘した. 以 上 よ り ,本 研 究 で は ,身 体 活 動 ・ 運 動 量 を 増 強 さ せ る 個 別 面 接 に 焦 点 を 当 て ,医 療 現 場 で の 適 用 に 先 立 ち ,不 活 動 状 態 に あ る 女 子 大 学 生 を 対 象 に 行 う 面 接 法 の 効 果 を 検 討 す る .本 研 究 で 得 ら れ る 知 見 を 生 か し ,将 来 的 に は ,医 療 現 場 に お け る 身 体 活 動・運 動 の 開 始 , ならびに継続を目的とした個別面接法の開発につなげる. 34 第 2 章 本研究の目的と意義 第 2章 第 1 節 本研究の目的と意義 本研究の目的 第 1 章 で は ,身 体 活 動 量 の 増 強 に 関 す る 研 究 の 展 望 を 行 っ た .そ の 結 果 ,身 体 活 動・運 動 量 の 増 強 に 対 す る 個 別 介 入 研 究 の 問 題 点 を 以下のようにまとめることができる. 1) 医 療 現 場 に お い て 適 用 可 能 な 簡 易 面 接 法 に 関 す る 検 討 が 行 わ れていない. 2)簡 易 面 接 が 心 理 的 変 容 を 導 く メ カ ニ ズ ム が 検 討 さ れ て い な い . こ れ ら の 問 題 点 を 鑑 み ,本 研 究 で は 以 下 の 点 に に つ い て 検 討 を 行 う. 1. 身 体 活 動 ・ 運 動 の 増 強 を 目 的 と し た 簡 易 面 接 法 の 実 行 可 能 性 ( F eas i bi l i t y), お よ び 受 け 入 れ や す さ ( Ac cept abi l i t y ) の 検 討 こ れ ま で 身 体 活 動・運 動 量 の 増 加 を 目 的 と し た 個 別 面 接 に つ い て は ,面 接 者 が 継 続 的 に 実 施 可 能 な 面 接 で あ る の か と い う ,面 接 の 実 行 可 能 性 の 評 価 が 行 わ れ て こ な か っ た .ま た 一 方 で ,対 象 者 が 受 け 入 れ や す い 面 接 内 容 で あ る の か と い う ,面 接 の 受 け 入 れ や す さ の 評 価 も 行 わ れ て い な い .個 別 の 面 接 介 入 が ,継 続 的 に 臨 床 現 場 で 活 用 さ れ る た め に は , 面 接 の 効 果 だ け で は な く , 図 2-1 に 示 す よ う に , 面 接 者 側 ,な ら び に 対 象 者 側 か ら ,面 接 の 評 価 を 行 う こ と が 必 要 で あ る .し た が っ て ,本 研 究 の 第 一 の 目 的 は ,生 活 習 慣 改 善 の 介 入 を 行 っ て い る 面 接 実 施 者 ,お よ び 面 接 を 受 け た 者 に 対 す る 調 査 を 行 い , 面 接 介 入 の 実 行 可 能 性 ,お よ び 受 け 入 れ や す さ に 関 す る 評 価 を 行 う ことである. 35 第 2 章 本研究の目的と意義 面接者 対象者 面接介入 (研究3・4・5) 面接の 実行可能性 (研究1・2) 面接の 受け入れやすさ (研究6) 図2-1 本研究の概念図 36 第 2 章 本研究の目的と意義 2. 個 別 面 接 が も た ら す 心 理 的 変 数 へ の 影 響 お よ び 介 入 効 果 に 関 す る研究 M I や B -M I に お い て は , 仮 説 と し て 認 知 的 な 変 容 を 介 し て 行 動 的 ア ウ ト カ ム( 例 え ば ,身 体 活 動 ・ 運 動 量 )が 改 善 す る こ と を 想 定 し て い る も の の ,実 際 の 介 入 研 究 で は ,図 2-2 の よ う に ,心 理 的 変 数 の 変 化 を 確 認 す る こ と な く ,行 動 的 ア ウ ト カ ム の み を 測 定 す る ケ ー ス が 極 め て 多 い . そ こ で 本 研 究 の 第 二 の 目 的 は , B- M I に 準 じ た 簡易面接が心理的変数に及ぼす影響を検討することである.また, 短 時 間 で 行 わ れ る 簡 易 面 接 が ,対 象 者 の 心 理 的 変 数 ,な ら び に 行 動 的アウトカムに対してどのような影響を与えるのかについても検 討を行う. 第 2 節 本研究の意義 わ が 国 に お い て は ,若 年 期 か ら 中 年 期 男 女 の 身 体 活 動・運 動 量 が 尐ないことが指摘され,不活動による健康問題が懸念されてきた. こ の よ う な 状 況 に 対 し ,医 学 的 な 視 点 か ら 理 想 的 な 生 活 習 慣 が 推 奨 さ れ ,学 校 施 設 ,職 域 ,あ る い は 地 域 の 公 共 施 設 な ど に お い て 健 康 教 育 が 行 わ れ て き た .し か し な が ら ,不 活 動 者 が 健 康 的 な 生 活 に つ い て 理 解 し て い て も 実 践 で き な い こ と は ,近 年 の 調 査 結 果 か ら 明 ら か で あ る . こ の よ う に ,“ わ か っ て は い る け れ ど も 実 行 で き な い ” と い う ア ン ビ バ レ ン ス を 解 決 す る 方 略 は M I に 備 わ っ て い る .と こ ろ が ,疾 病 予 防 を 目 的 に M I が 実 施 さ れ た と い う 報 告 は 行 わ れ て い な い .そ の た め ,個 別 介 入 方 略 で あ る M I の メ カ ニ ズ ム ,介 入 効 果 , な ら び に 実 行 可 能 性 に つ い て 検 討 す る こ と は ,従 来 の 健 康 教 育 を 補 完 す る と い う 意 味 で も ,ま た ,生 活 習 慣 改 善 の 介 入 を 行 っ て い る 臨 37 第 2 章 本研究の目的と意義 従来の研究 本研究 心理的変数 (運動SE,一般性SE) 行動的アウトカム 動機づけ面接 (身体活動量,飲酒量, 禁煙の有無) 図2-2 従来の研究と本研究の違い 38 第 2 章 本研究の目的と意義 床現場の要求に応える意味においても,大きな意義がある. 女 子 学 生 を 研 究 対 象 と し た 理 由 は ,彼 女 ら が 運 動 で は な く 誤 っ た 食 事 管 理 を 利 用 し た 減 量 を 行 い ,そ れ に よ っ て 生 じ る 健 康 障 害 を 予 防 す る 必 要 が あ る か ら で あ る .ま た ,あ る 程 度 の 運 動 が 必 要 で あ る が 運 動 に 関 心 が な い 者 に 対 し て 運 動 の 開 始・継 続 を 促 す こ と は ,ど の 世 代 に と っ て も 重 要 な 課 題 で あ り ,特 に 若 い 世 代 か ら 活 動 的 な 生 活習慣を身につけることが求められている. ま た ,本 研 究 で 適 用 す る 面 接 方 略 は ,習 得 が 困 難 で あ る と 考 え ら れ て い る M I で は な く ,カ ウ ン セ リ ン グ の 非 専 門 家 が 実 施 し や す く , また介入時間が十分に確保できない場合にも実施可能といわれて い る B -M I を 適 用 し て い る . B-M I は , M I の 原 理 を 生 か し な が ら 医 療 現 場 の ニ ー ズ に 適 合 さ せ た 方 略 で あ る が ,臨 床 心 理 士 ,カ ウ ン セ ラ ー と い っ た 面 接 の 専 門 家 で は な い ,保 健 師 や 看 護 師 と い っ た コ メ ディカル・スタッフが利用するための面接法として発展してきた. そ の た め , 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 強 に 対 し て , B-M I を 適 用 す る こ と は ,コ メ デ ィ カ ル ・ ス タ ッ フ に よ る 予 防 医 学 的 介 入 を 促 し ,疾 病 予防の早期個別介入方略の普及・拡大に寄与する. 第 3 節 本研究の構成 本 研 究 は , 図 2-3 に 示 す よ う に , 以 下 の よ う な 構 成 で 展 開 す る . 第 3 章 で は ,面 接 者 に 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 面 接 要 素 に 関 す る 調 査 ,お よ び 大 学 施 設 に お け る 実 態 調 査 を も と に ,介 入 者 側 の 視 点 による介入の実施可能性に関する調査結果を示す. 第 4 章 で は , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と SE の 関 連 性 に つ い て 検 討 す る た め に , B-M I に 準 じ た 面 接 を 実 施 し , 面 接 に よ る S E の 変 化 を 分 39 第 2 章 本研究の目的と意義 第1章 身体活動・運動量の増強に関する研究動向 第2章 本研究の目的と意義 第3章 面接者から見た個別介入の課題 研究1:保健指導の成功・失敗原因に関する帰属様式の検討 研究2:大学健康管理施設における身体活動・運動の促進・阻害要因について 第4章 行動変容を意図した発話とセルフ・エフィカシーの関連 研究3:質問様式の違いがセルフ・エフィカシーに与える影響 研究4:会話によるオープン・クエスチョンがセルフ・エフィカシーに与える影響 第5章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 研究5:ウォーキング目標の内容と目標達成度の関連 第6章 身体活動量の増強を意図した面接効果についての検討 研究6:身体活動量の増強を意図した面接の効果および受け入れ易さ 第7章 総合論議 図2-3 本研究の構成 40 第 2 章 本研究の目的と意義 析した. 第 5 章 で は ,目 標 行 動 の 実 施 者 の 視 点 か ら 目 標 設 定 法 を 検 討 す る た め に ,実 施 し や す い 目 標 内 容 の 検 討 ,お よ び 目 標 達 成 度 の 評 価 を 行った. 第 6 章 で は ,第 4 章 で 用 い た 面 接 法 と 第 5 章 で 用 い た 目 標 設 定 法 の 要 素 を 適 用 し て 面 接 を 実 施 し ,1 ヶ 月 間 の 目 標 達 成 行 動 を 評 価 し た .ま た ,目 標 設 定 法 と 同 様 に ,対 象 者 側 の 視 点 か ら 評 価 し た 面 接 内容の受け入れやすさについて評価を行った. 41 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 第 3章 第 1 節 面接者から見た個別介入の課題 本章の内容 本 章 で は ,診 療 場 面 ,お よ び 生 活 習 慣 改 善 の 面 接 場 面 で の 活 用 に 適 切 で あ る と 評 価 し た B -M I が , 女 子 大 学 生 を 対 象 に , 大 学 施 設 に お い て 実 施 可 能 な 方 略 で あ る の か を 検 討 す る .将 来 的 に は 医 療 現 場 で の 適 用 を 目 指 し て い る が ,本 研 究 で は そ れ に 先 立 ち ,女 子 学 生 に 対 す る B -M I の 実 施 可 能 性 を 検 討 す る . そ の た め , ま ず , わ が 国 の 生 活 習 慣 改 善 を 担 う 保 健 師 に 調 査 を 行 い ,ど の よ う な 要 因 が 保 健 指 導 の 成 功 要 因 で あ る の か ,あ る い は 失 敗 要 因 で あ る の か に つ い て 検 討 を 行 う .特 定 保 健 指 導 は ,2008 年 に 指 導 の 開 始 が 義 務 化 さ れ( 厚 生 労 働 省 , 2007 ) , 2010 年 に 国 立 保 健 医 療 科 学 院 に よ り 介 入 効 果 に 関 す る 評 価 が 行 わ れ た ( 朝 日 新 聞 , 2010 ) . そ の 結 果 , 2009 年 度 の 結 果 が 2008 年 度 に 比 べ て , 男 女 と も 平 均 で 1.7k g , 腹 囲 は 2 -2.5cm の 減 尐 が み ら れ た . こ の よ う に , 一 定 の 成 果 が 得 ら れ て い る も の の ,効 果 的 な 面 接 内 容 の 要 素 に つ い て は 明 ら か に な っ て い な い .そ こ で ,本 研 究 で は ,保 健 指 導 の 成 功 ・ 失 敗 原 因 と 思 わ れ る 要 素 を 抽 出 し , B-M I の 面 接 要 素 と の 関 連 を 検 討 す る . さ ら に , 面 接 実 施 者 の 心 理 的 支 援 に 活 用 可 能 な 知 見 を 得 る た め に ,保 健 指 導 の 成 否に関する原因認識と行動の関連性を帰属理論を通して理解を試 み , 原 因 認 識 と SE の 関 連 性 に つ い て も 検 討 を 行 う . 女子学生への介入に関しては,面接実施者は体育教師ではなく, 大 学 の 健 康 管 理 室( あ る い は 健 康 相 談 室 )に 勤 務 す る 保 健 師 お よ び 看 護 師 が 担 当 す る こ と が 望 ま し い .そ こ で ま ず ,大 学 施 設 に 勤 務 す る 保 健 師 な ら び に 看 護 師 が ,身 体 活 動・運 動 量 の 増 加 の た め に 実 施 42 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 し て き た 介 入 内 容 を 調 査 す る .さ ら に ,介 入 の 際 に 感 じ ら れ た 促 進 要 因 と 阻 害 要 因 を 抽 出 す る .大 学 施 設 で の 介 入 の 促 進 要 因 ,阻 害 要 因 を 通 し て , B-M I の 内 容 が , ど の 程 度 現 場 に 適 合 す る の か を 評 価 する. 第 2 節 保 健 指 導 の 成 功・失 敗 原 因 に 関 す る 帰 属 様 式 の 検 討( 研 究 1) 1. 目 的 本 研 究 の 目 的 は ,保 健 師 が 有 す る 保 健 指 導 の 成 功・失 敗 に 関 す る 原 因 認 識 の 特 徴 を 把 握 す る た め に ,保 健 指 導 の 成 否 に 関 す る 原 因 帰 属 尺 度 を 開 発 し ,原 因 帰 属 様 式 と 保 健 指 導 の 実 施 に 対 す る S E の 関 連 に つ い て 検 討 す る . ま た , B-M I の 要 素 と 成 功 原 因 と の 関 連 に つ いても検討を行う. 2. 方 法 予備調査 保健指導の成否に関する原因帰属尺度の開発に用いる質問紙作 成 の た め に ,予 備 調 査 を 実 施 し た .関 東 地 方 に お い て ,自 治 体 主 催 の保健指導スキルの向上を目的とした研修会に参加した地域保健 師 4 7 名 を 対 象 に ,1 )あ な た の 保 健 指 導 が う ま く い っ た 原 因 は ど こ に あ る と 考 え て い る か ,ま た 2)あ な た の 保 健 指 導 が う ま く い か な か っ た 原 因 は ど こ に あ る と 考 え て い る か ,の 2 項 目 に つ い て 自 由 記 述 に よ る 回 答 を 求 め た .研 修 後 の 時 間 を 利 用 し て 質 問 紙 調 査 を 実 施 し ,そ の 場 で 回 収 し た .そ の 際 ,調 査 へ の 参 加 は 自 由 意 志 で あ る こ 43 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 と ,デ ー タ は 統 計 的 に 処 理 さ れ 個 人 の 情 報 は 保 護 さ れ る こ と を 口 頭 お よ び 紙 面 で 説 明 し た .調 査 対 象 者 の 属 性 は ,表 3-1 に 示 し た .成 功 な ら び に 失 敗 の 判 断 は ,過 去 に 実 施 し た 保 健 指 導 を 振 り 返 っ て も ら い 回 答 を 求 め た .尺 度 開 発 に 用 い る 質 問 項 目 の 作 成 に あ た っ て は , 1) 質 問 紙 調 査 に よ る 項 目 の 収 集 ,お よ び , 2) 帰 属 理 論 の 二 次 元 分 類 ( Wei ner, 1983 ) を 基 に 著 者 が 項 目 を 作 成 す る と い う 2 つ の 手 続 き を 用 い た .帰 属 理 論 の 二 次 元 分 類 は ,行 動 結 果 の 原 因 を ど こ に 求 め る か と い う 判 断 を ま と め た も の で ,結 果 の 原 因 を ,表 3 -2 に 示 す よ う に , 自 分 の 内 か 外 に 帰 属 さ せ る か ( 統 制 の 位 置 ), さ ら に , 時 間 的 経 過 と と も に 変 化 す る 要 因 か ,あ る い は 変 化 し な い 要 因 に 帰 属 さ せ る か ( 安 定 性 ), と い う 二 次 元 4 項 目 ( 統 制 の 位 置 ×安 定 性 ) か ら な る .調 査 で 得 ら れ た 回 答 は ,図 3 -1 の 流 れ に 沿 っ て ,意 味 が わ か る 単 位 で 断 片( フ ラ グ メ ン ト )化 し ,言 葉 を 補 い( エ デ ィ テ ィ ン グ ), コ ー デ ィ ン グ を 行 っ た の ち , 類 似 し た カ テ ゴ リ ご と に 分 類 し た ( 松 本 ら , 200 4 ). 保 健 指 導 が 成 功 し た 原 因 に つ い て ,研 究 者 に よ り 意 味 内 容 が 類 似 し た 項 目 を ま と め た 結 果 , 3 つ の 要 因 に 関 し て 14 項 目 が 抽 出 さ れ た . 1 つ 目 は ,「 相 手 に 合 っ た 目 標 立 案 」 な ど , 保 健 指 導 の 方 法 に 関 す る 要 因 で あ っ た . 2 つ 目 は ,「 相 手 の や る 気 が 高 い 」 と い っ た 対 象 者 の 動 機 の 高 さ に 関 す る 要 因 で あ り , 3 つ 目 と し て は「 相 手 と の 信 頼 関 係 の 構 築 」な ど ,対 象 者 と の 関 係 性 に 関 す る 要 因 で あ っ た . 一 方 , 保 健 指 導 が 失 敗 し た 原 因 は 3 つ の 要 因 に 関 し て 17 項 目 が 抽 出 さ れ た . 1 つ 目 は ,「 知 識 が 足 り な か っ た 」 な ど 面 接 者 の 面 接 方 法 や 能 力 に 関 す る 要 因 で あ っ た .2 つ 目 は , 「相手にやる気がない」 な ど と い っ た 対 象 者 に 関 す る 要 因 , そ し て 3 つ 目 は ,「 時 間 が な か 44 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 表3-1 質問紙調査協力者の要約 予備調査 本調査 性別 256名 (93.4%) ― 16名 (5.8%) ― 2名 (0.7%) 女性 47名 男性 不明 (100.0%) 年齢(年代) 20代 11名 (23.4%) 50名 (18.2%) 30代 19名 (40.4%) 91名 (33.2%) 40代 13名 (27.7%) 84名 (30.7%) 50代 3名 (6.4%) 37名 (13.5%) 60代以上 1名 (2.1%) 12名 (4.4%) 平均経験年数 11.4年 (SD 8.5) 12.1年 (SD 9.2) 1人当たりの 平均面接時間 23.1分 (SD 12.7) 28.3分 (SD 18.5) 45 46 自己の安定的努力 他者の安定的努力 内 的 外 的 安 定 不安定 他者の不安定的努力 自己の不安定的努力 統制可能 疲労,ムード, 自己のスキルの変動 疲労,ムード, 他者のスキルの変動, 運 他者の能力, 課題の困難度 不安定 自己の能力 安 定 統制不能 表3-2 成功と失敗の知覚される原因についての三次元分類 (Weiner, 1983) 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 調査終了 テープ起こし ICレコーダの記録を基に会話を文字に起こす フラグメント化 発言の内容をワード上で適切な長さに断片化する エディティング 発言の文脈に沿った意味を最小限の言葉で補足する コーディング 類似したものをカテゴリーにまとめ,テーマをつける 最終結果をまとめる 図3-1 分析の手順 47 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 っ た 」と い う 面 接 時 間 に 関 す る 要 因 と な っ た .上 記 の 項 目 は ,す べ て 複 数 回 答 が 得 ら れ た 項 目 で あ り ,回 答 数 が 1 つ で あ っ た 項 目 に 関 しては,著者による合議の結果削除した. 以 上 の 手 続 き に 加 え て ,著 者 3 名 の 合 議 に よ り ,帰 属 理 論 の 二 次 元 分 類 を 基 に 保 健 指 導 の 現 場 環 境 を 想 定 し て 項 目 を 作 成 し た .成 功 お よ び 失 敗 原 因 に 関 し て 準 備 し た 質 問 項 目 は , 「内 的 統 制 - 安 定 」 「内 的 統 制 - 不 安 定 」「外 的 統 制 ( 環 境 要 因 ) - 安 定 」「 外 的 統 制 ( 対 象 者 要 因 )- 安 定 」 「外 的 統 制 - 不 安 定 」と い う カ テ ゴ リ に 分 類 し た . 「 内 的 統 制 - 安 定 」 に 属 す る 項 目 と し て は ,「 自 分 に 保 健 指 導 の 経 験 が 多 か っ た か ら ( 不 足 し て い た か ら )」 等 , 保 健 師 自 身 の 保 健 指 導 の 能 力 ・ 経 験 に 関 す る 項 目 を 作 成 し た .「 内 的 統 制 - 不 安 定 」 に 属 す る 項 目 と し て は ,「 本 気 で 相 手 の 行 動 を 変 え よ う と 思 っ て 接 し た か ら ( 変 え よ う と い う 気 持 ち が 足 り な か っ た )」 等 , 保 健 指 導 に 臨 む 際 の 気 持 ち や 準 備 に 関 す る 項 目 を 作 成 し た .「 外 的 統 制 ( 環 境 要 因 ) - 安 定 」 に 属 す る 項 目 に 関 し て は ,「 保 健 指 導 の 時 間 が 十 分 あ っ た か ら ( 時 間 が 足 り な か っ た か ら )」 を は じ め と し て , 面 接 時 間 や 保 健 師 教 育 に 関 連 し た 項 目 を 作 成 し た .「 外 的 統 制 ( 対 象 者 要 因 ) - 安 定 」 に 関 し て は ,「 相 手 の や る 気 が 高 か っ た か ら ( 相 手 の や る 気 が な か っ た か ら )」 と い っ た , 対 象 者 の 行 動 変 容 へ の 意 欲 や 抱 え て い る 問 題 の 難 易 度 に 関 連 し た 項 目 を 作 成 し た .「 外 的 統 制 - 不 安 定 」 に 属 す る 項 目 と し て は ,「 た ま た ま う ま く い く ケ ー ス だ っ た ( た ま た ま う ま く い か な い ケ ー ス に あ た っ て し ま っ た )」 等 , 対 象 者 と の 相 性 や 運 に 関 連 し た 項 目 を 作 成 し た .成 功 原 因 ,お よ び 失 敗 原 因 の 項 目 に 関 し て は ,重 複 な く ま た 偏 り の な い よ う に 3 項 目 ず つ そ れ ぞ れ 計 15 項 目 を 準 備 し た . 48 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 質 問 紙 調 査 ,な ら び に 著 者 に よ る 項 目 の 作 成 に よ り ,成 功 原 因 に 関 し て は 合 計 29 の 質 問 項 目 を 収 集 し た . ま た , 失 敗 原 因 に 関 し て は 合 計 32 の 質 問 項 目 を 収 集 し た . 収 集 し た 質 問 項 目 の う ち , ま ず 重 複 し た 内 容 を 含 む 項 目 を ま と め ,意 味 内 容 を 統 合 し た 項 目 と し て 成 功 原 因 に 関 し て は 8 つ ,失 敗 原 因 に 関 し て は 7 つ 項 目 を 作 成 し た . そ の 後 ,研 究 者 ら に よ っ て 内 容 の 適 切 さ を 検 討 し た 結 果 ,最 終 的 に , 保健指導の成功原因および失敗原因に関する帰属様式を測定する 質 問 紙 と し て ,表 3 -3,お よ び 表 3 -4 に 示 す 成 功 の 原 因 に 関 す る 21 項 目 ,な ら び に 失 敗 の 原 因 に 関 す る 25 項 目 の 合 計 46 項 目 を 採 用 し た. 本調査 1) 調 査 協 力 者 東 北 ‐ 関 西 間 に 位 置 す る 3 県 に お い て ,自 治 体 主 催 の 保 健 指 導 ス キ ル の 向 上 を 目 的 と し た 研 修 会 に 参 加 し た 地 域 保 健 師 298 名 を 対 象 に ,質 問 紙 に よ る 横 断 的 調 査 を 実 施 し た .保 健 指 導 の 経 験 の な い 対 象 者 ,な ら び に 記 入 ミ ス ,記 入 漏 れ の あ る 回 答 を 削 除 し ,最 終 的 に 274 名 を 分 析 の 対 象 と し た . 2) 調 査 内 容 ①対象者の属性 性 別 , 年 齢 ( 世 代 ), 職 種 , 保 健 指 導 経 験 年 数 , 1 人 あ た り の 保 健指導に費やすことのできる時間(分)について質問を行った. ②保健指導の成功および失敗原因に関する質問 予 備 調 査 を も と に 作 成 し た 質 問 紙 に 対 し て 回 答 を 求 め た .そ の 際 , 保健指導の成功の原因,および失敗の原因についての質問として, 49 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 表3-3 保健指導の成功原因に関する質問項目 成功 No 二次元分類 作成元 1 お互いに良い雰囲気で保健指導をすることができたから 内・外-安定 予 2 これまでの自分の努力の成果 内的-不安定 研 3 本気で相手の行動を変えようと思って接したから 内的-不安定 研 4 使用した資料がよかったから 外的-安定 予 5 相手のやる気が高かったから 外的-安定 研,予 6 保健指導の時間が十分にあったから 外的-安定 研,予 7 指導内容をわかりやすく説明することができたから 内的-不安定 研,予 8 たまたまうまくいくケースだったから 外的-不安定 研 9 自分に保健指導の才能があったから 内的-安定 研 10 保健指導のための十分な準備ができたから 内的-不安定 研,予 11 相手に合った方法を提示することができたから 内・外-安定 予 12 相手との相性がよかったから 外的-不安定 研,予 13 保健指導の経験が多かったから 内的-安定 研,予 14 相手と一緒に目標を考えることができたから 内・外-安定 予 15 相手から変わることに向けた気持ちを引き出すことができたから 内・外-安定 予 16 保健指導に関する学校教育が良いものだったから 外的-安定 研 17 比較的簡単な問題の相手だったから 外的-安定 研 18 相手の家族のサポートがあったから 外的-安定 研,予 19 相手が必要としている時期とたまたまタイミングが合ったから 内・外-不安定 予 20 自分のカウンセリング能力が優れていたから 内的-安定 研 21 仕事に余裕があったから 外的-不安定 研,予 予 : 予備調査を参考に作成した項目 研 : 研究者があらかじめ作成した項目 研,予 : 予備調査による項目と研究者作成の項目と重複した項目 50 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 表3-4 保健指導の失敗原因に関する質問項目 失敗 No 二次元分類 作成元 1 相手に合った方法を提示できなかったから 内・外-安定 予 2 相手が言い訳ばかりする人だったから 外的-安定 予 3 保健指導の経験が不足していたから 内的-安定 研,予 4 指導内容をわかりやすく説明できなかったから 内的-不安定 予 5 自分に保健指導の才能がないから 内的-安定 研 6 職場のスタッフの協力が得られなかったから 外的-安定 研 7 難しい問題をもった相手だったから 外的-安定 研,予 8 話しやすい環境をつくることができなかったから 内的-不安定 予 9 自分の知識が不足していたから 内的-安定 研,予 10 よい資料がなかったから 外的-安定 予 11 保健指導の準備が不十分だったから 内的-不安定 研,予 12 相手に時間があまりなかったから 外的-不安定 予 13 相手との相性が悪かったから 外的-不安定 研 14 一方的に話してしまったから 内的-不安定 予 15 自分の保健指導能力が不足していたから 内的-安定 研 16 たまたまうまくいかないケースにあたってしまったから 外的-不安定 研 17 相手のやる気を引き出せなかったから 内・外-安定 予 18 相手の家族のサポートが尐なかったから 外的-安定 研,予 19 相手の気持ちをくみ取れなかったから 内・外-安定 予 20 保健指導の時間が足りなかったから 外的-安定 研,予 21 たまたま忙しく,時間がかけられなかったから 外的-不安定 研 22 本気で相手の行動を変えようとする気持ちが足りなかったから 内的-不安定 研 23 相手のやる気がなかったから 外的-安定 研,予 24 保健指導に関する学校教育がよくなかったから 外的-安定 研 25 保健指導の途中にあきらめの気持ちがでてきてしまったから 内的-不安定 予 予 : 予備調査を参考に作成した項目 研 : 研究者があらかじめ作成した項目 研,予 : 予備調査による項目と研究者作成の項目と重複した項目 51 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 「 あ な た の 保 健 指 導 が う ま く い っ た( う ま く い か な か っ た )原 因 が あ る と し た ら ,そ れ は ど の よ う な こ と が 考 え ら れ ま す か 」と 教 示 を 与 え た . 回 答 は ,「 ま っ た く あ て は ま ら な い ( 1 )」 か ら 「 非 常 に よ く あ て は ま る( 6 )」ま で の 6 件 法 で 求 め た .質 問 項 目 は 成 功 原 因 に 関 す る 21 項 目 ,失 敗 原 因 に 関 す る 25 項 目 か ら 構 成 さ れ て お り ,保 健指導の成否の基準については回答者の判断に委ねられている. ③ 保 健 指 導 の 実 施 に 対 す る S E( 以 下 , 保 健 指 導 S E と 省 略 す る ) 保健指導を効果的に行う自信について回答を求めた. 「あなたは, 保 健 指 導 を 効 果 的 に 行 う 自 信 は ど れ く ら い あ り ま す か 」と 教 示 を 与 え ,回 答 は「 ま っ た く 自 信 が な い( 1 )」か ら「 と て も 自 信 が あ る( 5 )」 までの 5 件法で求めた. 3) 調 査 実 施 手 続 き 研 修 後 の 時 間 を 利 用 し て 質 問 紙 調 査 を 実 施 し ,そ の 場 で 回 収 し た . そ の 際 ,調 査 へ の 参 加 は 自 由 意 志 で あ る こ と ,デ ー タ は 統 計 的 に 処 理され個人の情報は保護されることを口頭および紙面で説明した. 4) 解 析 方 法 保 健 指 導 の 結 果 に 関 す る 原 因 帰 属 尺 度 の 因 子 構 造 は ,最 尤 法・プ ロ マ ッ ク ス 回 転 に 基 づ く 探 索 的 因 子 分 析 に よ っ て 検 討 し た .因 子 の 内 的 整 合 性 は , C r onbach の α 係 数 を 算 出 し , 検 証 的 因 子 分 析 に よ っ て 構 成 概 念 妥 当 性 を 検 証 し た .帰 属 様 式 と S E の 関 連 に つ い て は , Spearm a n の 順 位 相 関 係 数 を 求 め た . な お 統 計 解 析 に は , ア プ リ ケ ー シ ョ ン ソ フ ト ウ ェ ア S PS S 11.0J , お よ び Am os4.0J を 用 い た . 3. 結 果 1) 対 象 者 の 属 性 52 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 対 象 者 の 属 性 を 表 3-1 に 示 し た . 調 査 対 象 者 の 年 代 は , 30 代 と 40 代 が と も に 大 き な 割 合 を 占 め , 2 つ の 年 代 を 合 わ せ る と ほ ぼ 6 割 に 達 し た .平 均 面 接 時 間 は 28.3 分( SD18.5 ),平 均 経 験 年 数 は 12.1 年 ( S D9.2 ) と な っ た . 2) 成 功 原 因 に 関 連 し た 尺 度 の 構 成 保 健 指 導 の 成 功 原 因 に 関 す る 21 項 目 に つ い て 因 子 分 析 を 行 っ た . 固 有 値 の 減 衰 状 況 お よ び 解 釈 可 能 性 か ら 3 因 子 解 を 採 用 し た .因 子 負 荷 が 1 つ の 因 子 に つ い て 0.40 以 上 で , か つ 2 因 子 に ま た が っ て 0 . 3 0 以 上 の 負 荷 を 示 さ な い 項 目 を 選 出 し ,再 度 分 析 を 行 っ た .そ の 結 果 ,表 3 -5 に 示 す よ う に ,保 健 指 導 の 成 功 原 因 に 関 連 す る 項 目 と し て , 12 項 目 で 3 因 子 構 造 を 得 た . 第 1 因 子 に は 3 項 目 が 含 ま れ ,「 相 手 と 一 緒 に 目 標 を 考 え る こ と が で き た か ら 」な ど の 対 象 者 の 意 思 や 能 力 を い か そ う と す る か か わ り方の項目からなる「対象者中心の面接方略」の因子と解釈した. 第 2 因 子 は 4 項 目 か ら な り ,面 接 者 の 面 接 能 力 に 関 す る 項 目 に よ っ て構成されていたことから, 「 面 接 能 力 」の 因 子 と 考 え た . 「仕事に 余 裕 が あ っ た か ら 」と い う 項 目 は 直 接 的 に 面 接 能 力 を 表 す も の で は な い が ,能 力 の 高 さ が 起 因 し て 生 じ る 認 識 で あ る と 判 断 し て 採 用 し た .第 3 因 子 は 5 項 目 か ら 構 成 さ れ ,保 健 師 や 保 健 指 導 環 境 の な か で 変 動 し や す い 項 目 で あ る こ と か ら ,「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」 の 因 子とした. 3) 失 敗 原 因 に 関 連 し た 尺 度 の 構 成 保健指導の失敗原因に関する因子構造を確認するために,先の 25 項 目 に つ い て 因 子 分 析 を 行 っ た . 固 有 値 の 減 衰 状 況 お よ び 解 釈 可能性から 3 因子解を採用した.因子負荷が 1 つの因子について 53 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 表3-5 保健指導の成功に関する原因帰属因子の分析結果( プロマックス回転後の因子行列 ) 質問 No 項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 〔第1因子 対象者中心の面接方略(α = 0.86)〕 14 相手と一緒に目標を考えることができたから 0.92 -0.02 -0.00 15 相手から変わることに向けた気持ちを引き出すことができたから 0.86 0.04 -0.03 11 相手に合った方法を提示することができたから 0.62 -0.03 0.19 〔第2因子 面接能力(α = 0.77)〕 20 自分のカウンセリング能力が優れていたから 0.19 0.80 -0.15 13 保健指導の経験が多かったから 0.13 0.65 0.06 21 仕事に余裕があったから -0.26 0.64 0.07 9 自分に保健指導の才能があったから -0.03 0.64 0.08 〔第3因子 面接の統制不能要因(α = 0.76)〕 7 指導内容を分かりやすく説明することができたから 0.03 0.02 0.68 3 本気で相手の行動を変えようと思って接したから 0.09 -0.01 0.59 10 保健指導のための十分な準備ができたから 6 保健指導の時間が十分にあったから 1 お互いに良い雰囲気で保健指導をすることができたから 因子負荷量二乗和 寄与率(%) 累積寄与率(%) 54 0.08 0.10 0.58 -0.15 0.16 0.58 0.19 -0.17 0.51 3.79 37.16 37.16 1.61 16.05 53.21 0.78 9.87 63.08 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 0 . 4 0 以 上 で , か つ 2 因 子 に ま た が っ て 0.30 以 上 の 負 荷 を 示 さ な い 項 目 を 選 出 し ,再 度 分 析 を 行 っ た .そ の 結 果 ,表 3-6 に 示 す よ う に , 保 健 指 導 の 失 敗 原 因 に 関 連 す る 項 目 と し て , 19 項 目 で 3 因 子 構 造 を得た. 第 1 因 子 は 6 項 目 か ら な り ,面 接 者 自 身 に 帰 属 す る ,能 力 不 足 や 経 験 不 足 を 示 す 項 目 か ら 構 成 さ れ て い た こ と か ら ,「 面 接 者 要 因 」 の 因 子 と し た .第 2 因 子 に は 9 項 目 が 含 ま れ ,面 接 者 以 外 の“ 対 象 者 ”お よ び“ 面 接 環 境 ”に 関 連 し た ,面 接 者 で は コ ン ト ロ ー ル で き ず ,ま た 変 わ り や す い 内 容 が 含 ま れ る 項 目 か ら 構 成 さ れ て い た た め , 「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」の 因 子 と し た .第 3 因 子 に は 4 項 目 が 含 ま れ ,対 象 者 を 中 心 に 考 え た 面 接 が 実 施 で き な か っ た こ と を 示 す 項 目 に よ っ て 構 成 さ れ て い た こ と か ら ,「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 不 全 」 の因子と命名した. 4) 保 健 指 導 の 成 功 ・ 失 敗 原 因 に 関 す る 尺 度 の 信 頼 性 お よ び 妥 当 性 の検討 ①内的整合性の検討 因 子 の 内 的 整 合 性 を 検 討 す る た め に ,保 健 指 導 の 成 功 ,失 敗 原 因 に 関 す る 各 因 子 に つ い て , C ronba ch の α 係 数 を 算 出 し た . そ の 結 果 , 成 功 原 因 に 関 し て は ,「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 」 因 子 α =0.86 , 「 面 接 能 力 」 因 子 α =0.77 ,「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」 因 子 α =0.76 で あ っ た . 失 敗 原 因 に 関 し て は ,「 面 接 者 要 因 」 因 子 α =0.83 ,「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」 α =0.76 ,「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 不 全 」 α =0.71 であった.これにより,両原因帰属尺度の信頼性が確認された. ②内容的妥当性の検討 本 研 究 で 準 備 さ れ た 質 問 項 目 は ,予 備 調 査 を も と に 作 成 さ れ ,加 55 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 表3-6 保健指導の失敗に関する原因帰属因子の分析結果( プロマックス回転後の因子行列 ) 質問 No 項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 〔第1因子 面接者要因(α = 0.83)〕 15 自分の保健指導能力が不足していたから 0.78 -0.12 0.09 9 自分の知識が不足していたから 0.76 -0.02 0.01 3 保健指導の経験が不足していたから 0.75 -0.02 -0.15 4 指導内容をわかりやすく説明できなかったから 0.75 -0.04 0.05 5 自分に保健指導の才能がないから 0.57 0.16 -0.14 1 相手に合った方法を提示できなかったから 0.44 0.00 0.16 11 保健指導の準備が不十分だったから 0.43 0.17 0.13 〔第2因子 面接の統制不能要因(α = 0.76)〕 21 たまたま忙しく,時間がかけられなかったから 0.01 0.75 -0.10 20 保健指導の時間が足りなかったから 0.03 0.67 -0.00 12 相手に時間があまりなかったから -0.05 0.58 -0.00 23 相手のやる気がなかったから -0.09 0.52 0.04 16 たまたまうまくいかないケースにあたってしまったから -0.06 0.52 -0.04 13 相手との相性が悪かったから -0.02 0.47 0.23 25 保健指導の途中にあきらめの気持ちがでてきてしまったから 0.11 0.41 -0.04 24 保健指導に関する学校教育がよくなかったから 0.10 0.40 -0.13 〔第3因子 対象者中心の面接方略不全(α = 0.71)〕 19 相手の気持ちをくみ取れなかったから -0.10 -0.16 0.90 17 相手のやる気を引き出せなかったから 0.16 -0.14 0.53 14 一方的に話してしまったから -0.00 0.25 0.52 8 話しやすい環境をつくることができなかったから 0.09 0.29 0.42 4.03 24.57 24.57 2.53 16.08 40.65 0.98 7.91 48.56 因子負荷量二乗和 寄与率(%) 累積寄与率(%) 56 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 え て 行 動 科 学 を 専 門 と す る 大 学 教 員 ,研 究 員 が 各 1 名 ,お よ び 医 療 施 設 に お い て 退 院 指 導 を 含 め た 臨 床 経 験 の あ る 看 護 師 1 名 が ,内 容 的 妥 当 性 ,お よ び 表 現 の 適 切 さ の 検 討 を 行 い ,本 研 究 で 抽 出 さ れ た 各因子の内容的妥当性が確認された. ③検証的因子分析を用いた構成概念妥当性の検討 因 子 分 析 に よ り 抽 出 さ れ た モ デ ル を 検 証 す る た め に ,検 証 的 因 子 分 析 を 行 っ た .図 3 -2 と 図 3-3 は ,保 健 指 導 の 成 功 お よ び 失 敗 原 因 に関する検証的因子分析によって得られた変数間の関連性を示し たものである. さ ら に ,モ デ ル の あ て は ま り の よ さ に つ い て 適 合 度 指 標 に よ っ て 検 討 を 行 っ た .初 期 モ デ ル に 対 し て 修 正 指 標 に よ り 誤 差 変 数 間 の 共 分散を仮定することでカイ二乗値が有意な減尐を示すもののなか で ,内 容 的 に 解 釈 可 能 で あ り 有 意 性 の 確 認 さ れ た 共 分 散( 相 関 )を 追 加 し た モ デ ル を 修 正 モ デ ル と し た .「 仕 事 の 余 裕 」 は 面 接 能 力 か ら 間 接 的 に 生 じ る 項 目 で あ る と 定 義 し た が ,時 間 的 な 要 素 も 含 ま れ る と 判 断 し た た め ,「 十 分 な 時 間 」 と の 間 に パ ス を 追 加 し た . 修 正 モ デ ル で 得 ら れ た 適 合 度 指 標 の 値 は ,保 健 指 導 の 成 功 に 関 す る モ デ ル で は , GFI=0. 93 , AGFI =0. 89 , R MS EA =0.08 で あ り , 失 敗 に 関 す る モ デ ル で は , GF I =0.9 0, AGF I =0. 87 , RMSEA =0.0 6 で あ っ た . 5) 原 因 帰 属 尺 度 と 保 健 指 導 SE の 関 連 お よ び 比 較 保 健 指 導 の 成 功 原 因 の 認 識 ,お よ び 失 敗 原 因 の 認 識 を 構 成 す る 各 因 子 と 保 健 指 導 S E の 相 関 関 係 を 検 討 し た .そ の 結 果 ,保 健 指 導 S E と 成 功 原 因 帰 属 で あ る「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 」と の 間 に は r = 0.37 ( p < 0.01 ),「 面 接 能 力 」 と の 間 に は r = 0.35 ( p < 0.01 ),「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」と の 間 に は r = 0.29( p < 0.01 )と や や 弱 い 正 の 相 関 57 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 e1 共同目標 .91 e2 喚起的会話 e3 適切な方法提示 .85 対象者中心の 面接方略 .72 .37 e4 優れた能力 .79 e5 十分な経験 .74 面接能力 .52 e6 仕事の余裕 e7 保健指導の才能 .64 .66 .55 .24 e8 分かりやすい説明 .65 e9 本気のかかわり .64 .20 e10 面接の .71 十分な準備 統制不能要因 .52 .17 e11 十分な時間 .51 e12 図3-2 面接時の雰囲気の良さ Χ 2 値 = 126.0 df = 48 GFI = 0.93 AGFI = 0.89 RMSEA = 0.08 保健指導の成功に関する原因帰属尺度についての検証的因子分析の結果 58 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 .14 e1 能力不足 .82 e2 知識不足 .78 e3 経験不足 .62 e4 説明方法悪い .22 .72 面接者要因 .50 .21 e5 才能不足 .49 e6 不適切な方法提示 .53 e7 準備不十分 .10 e8 偶然の忙しさ .54 e9 時間不足 .44 e10 対象者の忙しさ .52 .52 .28 e11 .49 .59 対象者やる気なし .57 e12 .23 偶然難しい事例 e13 対象者との相性の悪さ e14 対象者のあきらめ e15 専門教育の悪さ e16 非共感的面接 e17 非喚起的面接 .36 e19 図3-3. 統制不能要因 .69 .43 .40 .60 .50 .38 .65 e18 面接の 一方的な面接 対象者中心の 方略不全 .72 話しづらい環境 Χ 2 値 = 281.1 df = 142 GFI = 0.90 AGFI = 0.87 RMSEA = 0.06 保健指導の失敗に関する原因帰属尺度についての検証的因子分析の結果 59 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 を 示 し た .ま た ,保 健 指 導 S E と 失 敗 原 因 帰 属 で あ る「 面 接 者 要 因 」 と の 間 に は r = -0. 34 ( p < 0.01 ) と や や 弱 い 負 の 相 関 が 示 さ れ た . 「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」お よ び「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 不 全 」と 保 健 指 導 SE と の 間 に は 有 意 な 相 関 は 認 め ら れ な か っ た . 4. 考 察 本 研 究 は ,保 健 指 導 の 成 功・失 敗 に 関 す る 保 健 師 の 原 因 認 識 の 特 徴 を 明 ら か に す る た め に ,保 健 指 導 の 成 否 に 関 す る 原 因 帰 属 尺 度 を 作 成 し , 保 健 指 導 SE と の 関 連 を 検 討 し た . そ の 結 果 , 保 健 指 導 の 成功原因は, 「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略( 3 項 目 )」 「 面 接 能 力( 4 項 目 )」 「 面 接 の 統 制 不 能 要 因( 5 項 目 )」と い う 3 因 子 12 項 目 か ら 構 成 さ れ , ま た , 失 敗 原 因 は ,「 面 接 者 要 因 ( 7 項 目 )」「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 ( 8 項 目 )」「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 不 全 ( 4 項 目 )」 と い う 3 因 子 1 9 項 目 に よ り 構 成 さ れ た .尺 度 の 内 的 整 合 性 を 測 る C ronbach の α 係 数 は 0.7 以 上 と 高 い 値 を 示 し て お り ,十 分 な 信 頼 性 が 得 る こ と が で き た .尺 度 の 妥 当 性 に 関 し て は ,モ デ ル の 適 合 度 指 標 に お い て , 両 原 因 帰 属 尺 度 と も GFI は 0.9 以 上 の 値 で あ っ た が , AGFI は 0 . 9 に 満 た な い や や 不 十 分 な 値 で あ っ た( 豊 田 ,1988 ).ま た RMSEA は と も に 0.05 の 基 準 に 満 た な か っ た も の の , 中 等 度 の 適 合 を 示 し て い る こ と か ら ( Browne & C udeck, 1993 ), モ デ ル の 解 釈 が 可 能 で あると判断した. 因 子 分 析 の 結 果 か ら は , 成 功 原 因 , お よ び 失 敗 原 因 と も Wei ner モ デ ル を 基 に し た 2 ( 統 制 の 位 置 ) × 2( 安 定 性 ) を 想 定 し た 4 因 子 で は 因 子 の 説 明 が 困 難 と な り ,最 終 的 に は 原 因 帰 属 様 式 の 二 次 元 構 造 モ デ ル と は 異 な る 構 造 で ま と ま っ た .そ の 理 由 の 1 つ と し て は 60 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 対 象 行 動 の 種 類 の 違 い が 考 え ら れ る .R ej eski & B rawl e y( 1983 )は , 原 因 帰 属 理 論 の ス ポ ー ツ 場 面 へ の 適 用 に 関 し て ,学 習 場 面 と の 要 因 の 違 い が あ る と 指 摘 し て お り ,ま た R obert s & P ascuzz i( 1979 )は , 大学生の男女に対してスポーツ場面における原因帰属を自由記述 に よ っ て 調 査 し た と こ ろ , Wei ner の 4 要 因 に 該 当 す る 回 答 が 占 め た 割 合 は 45% に 過 ぎ な か っ た こ と を 示 し た . つ ま り , 対 象 と す る 行 動 が 変 わ る こ と に よ り , 当 該 行 動 の 原 因 帰 属 を Wei n er の 4 要 因 で説明できる割合が変わることが考えられる. も う 1 つ の 理 由 と し て ,保 健 師 の 指 導 結 果 に 関 す る 評 価 構 造 の 影 響 が 考 え ら れ る .一 般 的 に 原 因 帰 属 を 扱 っ た 研 究 に お け る 当 該 行 動 の 成 否 の 評 価 は ,行 為 者 自 身 が 自 己 の 行 為 を 直 接 的 に 評 価 す る の に 対 し ,保 健 指 導 場 面 に お い て は ,保 健 師 が 指 導 対 象 者 の 行 動( 結 果 ) を 通 じ て 間 接 的 に 自 己 の 指 導 効 果 の 評 価 を 行 っ て い る .ま た ,保 健 指 導 は 保 健 指 導 実 施 者 と 対 象 者 と の 相 互 作 用 に よ っ て 行 わ れ ,こ の 相 互 作 用 の 効 果 を 保 健 師 が 認 識 し て い る た め に ,成 功 お よ び 失 敗 原 因 と も に ,統 制 の 位 置 と し て 内 的・外 的 2 つ の 要 因 に ま た が っ た 因 子が抽出されたとも考えられる. Wei ner の モ デ ル と 研 究 結 果 を 比 較 す る と , 成 功 原 因 に 関 し て は 外 的 統 制 - 安 定 帰 属 に 該 当 す る「 対 象 者 の や る 気 の 高 さ が 成 功 の 原 因 で あ る 」と い う 因 子 が 抽 出 さ れ ず ,一 方 で 失 敗 原 因 の 原 因 帰 属 に 関 し て は , 内 的 統 制 -不 安 定 帰 属 で あ る 「 保 健 師 の 努 力 が 足 り な か っ た か ら 」に 該 当 す る 項 目 が 抽 出 さ れ な か っ た .更 に ,失 敗 原 因 に は「 相 手 に や る 気 が な い 」な ど の 対 象 者 に 関 連 し た 項 目 が 多 く 抽 出 さ れ て い る こ と か ら も ,成 功 原 因 を 保 健 師 自 身 に ,失 敗 原 因 を 対 象 者 に 帰 属 さ せ る と い う や や 偏 っ た 傾 向 が 示 さ れ た .こ の よ う な 偏 り 61 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 は,セルフサービングバイアスの視点で解釈することができる ( R hodewal t & Mor f, 1998 ). 成 功 の 原 因 を 内 的 な 要 因 ( 面 接 者 の 能 力 )に 帰 属 さ せ る よ う な 自 己 高 揚 的 帰 属 傾 向 は ,個 人 の セ ル フ ・ エ スティームを常に高めて維持し,望ましくない結果を外的な要因 ( 対 象 者 の 動 機 の 高 さ や 面 接 時 間 な ど )に 帰 属 さ せ る 自 己 防 衛 的 な 帰 属 に よ っ て セ ル フ・エ ス テ ィ ー ム が 傷 つ く こ と を 未 然 に 防 い で い る と も 解 釈 で き る ( B aum ei st er & Ti c e, 1985 ). こ の こ と か ら , 保 健 師 ら が ,過 去 の 経 験 か ら 自 己 防 衛 的 な 対 処 を し て い た 可 能 性 も 示 唆 される. 尺 度 と 保 健 指 導 SE の 関 連 に お い て は , 成 功 原 因 の 3 因 子 は , そ れ ぞ れ の 因 子 に お い て 保 健 指 導 SE と の 有 意 な 正 の 相 関 が 確 認 さ れ た . こ れ は 学 習 場 面 に お け る B andur a ( 1977 ) や S hunk ( 1984 ) が 示 し た 内 的 安 定 と 内 的 不 安 定 要 因 へ の 帰 属 と 成 績 に 対 す る SE の 関 係 ,な ら び に 樋 口 ら( 1983 )や 穂 坂( 1989 )の 報 告 と 類 似 し た 結 果 で あ っ た .し か し な が ら ,先 行 研 究 と 本 研 究 に お い て は 調 査 場 面 が 異 な っ て お り ,学 習 場 面 と 同 様 の 活 用 を 行 う た め に は 詳 細 な 検 討 が 行 わ れ な く て は な ら な い . ま た , 保 健 指 導 SE が 向 上 す る こ と に よ っ て ,保 健 師 の 活 動 が 促 進 さ れ る 可 能 性 は あ る も の の ,成 功 原 因 の 認 識 に 自 己 本 位 的 な 偏 り が み ら れ る た め ,保 健 指 導 S E の 向 上 を 意 図 し た 教 育 内 容 を 作 成 す る 際 に は ,自 己 本 位 的 に 過 剰 な S E の 増 加 が 導 か れ な い よ う な 配 慮 が 必 要 で あ る .特 に ,指 導 内 容 と は 関 係 な く ,才 能 や 経 験 を 成 功 原 因 と 考 え る 面 接 能 力 の 因 子 得 点 が 高 い 者 に は ,教 育 過 程 に お い て 実 際 の 保 健 指 導 を 他 者 と 共 有 し ,自 己 評 価 と 実際の行動を確認することによる客観的な評価が求められる. 一 方 , 失 敗 原 因 に つ い て は ,「 面 接 者 要 因 」 と 保 健 指 導 S E と の 62 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 間 に 有 意 な 負 の 相 関 が 認 め ら れ た も の の ,「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」 お よ び「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 不 全 」の 2 つ の 因 子 と の 間 に は 有 意 な 相 関 は 認 め ら れ な か っ た .こ の 結 果 は ,学 業 達 成 に 関 す る 失 敗 原 因 の 内 的 - 安 定 帰 属 と 成 績 に 対 す る SE の 低 さ と の 関 連 を 示 す 研 究 ( 樋 口 ら ,1983; S il ver, 1994 )と 類 似 し て い る .学 習 場 面 に お い て は ,学 習 者 の ネ ガ テ ィ ブ な 感 情 に 対 し て ,好 ま し く な い 結 果 の 帰 属 の 仕 方 を 変 え る こ と で 無 力 感 の 克 服 ( Dw eck, 1975 ), あ る い は S E の 向 上( 坂 野 ら ,1 988 )を 導 く こ と が あ る が ,保 健 指 導 場 面 に お け る 同 様 の 効 果 は 明 ら か に さ れ て い な い .ま た ,帰 属 様 式 と 保 健 指 導 ス キ ル の 関 係 性 に つ い て も 不 明 確 で あ る た め ,今 後 保 健 指 導 S E の 向上を行うための方略として帰属様式の使用に関するエビデンス を得る必要がある. 現 時 点 で は ,失 敗 原 因 で あ る「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」,お よ び「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 不 全 」へ の 帰 属 と 保 健 指 導 S E に は 有 意 な 相 関 は 認 め な か っ た た め ,面 接 者 要 因 得 点 が 高 く な け れ ば ,速 や か に 技 術 的 な 援 助 の 実 施 が 可 能 で あ る と 言 え る .し か し な が ら ,成 功 原 因 に 関 す る 得 点 が 低 く ,さ ら に 面 接 者 要 因 得 点 が 低 い 場 合 に は ,保 健 指 導 の 実 施 に 対 す る SE が 非 常 に 低 く な っ て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る.このような場合には,心理的な支援の必要があるだろう. 本 研 究 で 抽 出 さ れ た 成 功 原 因 の 要 因 と B -M I( あ る い は , M I) の 要 素 の 関 連 性 を 検 討 し て み る と ,特 に「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 」と い う 点 に お い て 共 通 項 を 見 出 す こ と が で き る .対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 は 3 つ の 項 目 か ら 構 成 さ れ て い る が ,こ の う ち「 共 同 目 標 」お よ び 「 喚 起 的 会 話 」 は , M I の 3 つ の 原 理 (“ 協 働 性 ”“ 喚 起 性 ”“ 自 律 性 ”) の う ち , 協 働 性 と 喚 起 性 に 関 連 し て い る と 言 え る . 協 働 性 と 63 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 は ,面 接 に お け る 面 接 者 は 対 象 者 に 対 し て 意 見 を 押 し 付 け る こ と な く ,協 働 作 業 の パ ー ト ナ ー と し て 向 き 合 い ,説 得 で は な く 援 助 を 提 供 す る こ と を 指 し て お り ,「 共 同 目 標 」 と の 類 似 性 が 考 え ら れ る . 相 手 に 押 し 付 け て 対 象 者 の 目 標 を 専 門 家 が 設 定 す る の で は な く ,共 に対象者に適した目標を考えて目標設定するという点で非常に共 通 し て い る と 考 え ら れ る .ま た ,喚 起 性 と は ,面 接 者 が 知 識 を 与 え る の で は な く ,対 象 者 に 備 わ っ て い る 知 恵 な ど を 見 出 し て 引 き 出 し , 対 象 者 の 内 的 な 動 機 を 拡 大 さ せ る こ と を 指 し ,「 喚 起 的 会 話 」 と の 類 似 性 が 考 え ら れ る .専 門 家 が ,理 想 的 な 生 活 習 慣 に 関 す る 教 育 を 一 方 的 に 行 う の で は な く ,で き る 限 り 対 象 者 か ら 言 葉 を 引 出 し て 目 標設定に活用できる情報を収集するという点で共通点が見出せる. 保 健 指 導 は 青 年 期 女 子 学 生 に 対 す る 面 接 と は 異 な る も の の ,定 期 的な運動習慣をもたない対象者に対する面接という視点で評価し た 場 合 ,多 く の 示 唆 を 得 る こ と が で き る .こ れ ま で ,青 年 期 女 子 学 生 を 対 象 と し た ,身 体 活 動 量 の 増 加 を 目 的 と し た 面 接 が 行 わ れ て い な い が ,1 )保 健 指 導 の 現 場 に お け る 面 接 方 略 の 要 素 と し て , 「共同 目 標 」な ら び に「 喚 起 的 会 話 」と い う 要 素 が 成 功 要 因 と し て 認 め ら れ て い る こ と ,そ し て 2 )M I の 要 素 と し て も「 協 働 性 」,お よ び「 喚 起 性 」 が 挙 げ ら れ て い る こ と が 確 認 で き た . 以 上 よ り , MI の 要 素 を 含 ん で い る B-M I の 特 長 が ,青 年 期 女 子 学 生 の 身 体 活 動 量 の 増 加 に対して適切である可能性が示唆された. 本 研 究 の 限 界 と し て 2 つ の 点 が 挙 げ ら れ る .1 つ は ,質 問 紙 へ の 回 答 に 際 し て ,想 起 す る 保 健 指 導 場 面 と 回 答 時 の 時 間 差 が 対 象 者 に よ っ て 異 な る と い う こ と ,2 つ 目 は ,保 健 指 導 の 成 否 の 条 件 が 定 義 さ れ て い な い と い う こ と で あ る .本 質 問 紙 の 実 施 は 現 行 制 度 の 開 始 64 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 以 前 で あ り ,明 確 な 成 否 基 準 が 設 定 さ れ て い な か っ た た め ,今 後 は 特定保健指導の基準に基づいて検討する必要がある. 保 健 指 導 に 関 す る 原 因 帰 属 尺 度 を 用 い る こ と に よ り ,自 己 本 位 的 な 保 健 指 導 を 回 避 す る 契 機 と な り ,ま た ,保 健 指 導 実 施 者 に 対 す る 心 理 的 支 援 ( 保 健 指 導 SE の 低 減 予 防 ) の 必 要 性 を 査 定 し , 実 施 者 の 認 識 に 適 合 し た 教 育 に 向 け た 情 報 を 得 る こ と が で き る .本 研 究 は , 横 断 的 研 究 で あ り ,本 尺 度 と 実 際 の 行 動 の 関 係 は 明 ら か に な っ て い な い .今 後 は ,先 述 し た 制 度 の 基 準 に 合 わ せ た 評 価 を 行 う と と も に , 保健指導に関連した行動との因果関係を検討するための縦断的調 査 を 行 う こ と が 求 め ら れ る .ま た ,保 健 師 に 対 す る 心 理 的 支 援 の 具 体的方略を考案することが必要である. 第 2 節 で は ,保 健 指 導 の 成 功・失 敗 原 因 に 関 す る 保 健 師 の 認 識 を 調 査 し , そ れ ぞ れ の 要 因 と B-M I の 要 素 と の 関 連 性 を 検 討 し た . 保 健 師 へ の 調 査 か ら , 保 健 指 導 の 成 功 に も 失 敗 に も , B- M I の 要 素 と 類 似 し た 要 因 が 関 連 し て い る こ と が わ か っ た . つ ま り , B-M I は , 保健指導実施者が重要だと評価した面接内容を備えている可能性 が 示 さ れ た . ま た , こ の 結 果 か ら , B-M I は 保 健 指 導 実 施 者 に と っ て受け入れやすい方略だと言える. 65 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 第 3 節 大 学 健 康 管 理 施 設 に お け る 身 体 活 動・運 動 の 促 進・阻 害 要 因 に つ い て ( 研 究 2) 1. 目 的 本研究の目的は,大学施設に勤務する保健師ならびに看護師が, 身体活動・運動量の増加のために実施してきた介入内容を調査し, 介 入 に お け る 促 進 要 因 ,お よ び 阻 害 要 因 を 抽 出 す る こ と で あ る .ま た , B -M I の 内 容 が , ど の 程 度 大 学 施 設 で の 介 入 に 適 合 す る の か を 評価する. 2. 方 法 1) 調 査 対 象 者 お よ び 倫 理 的 配 慮 合 計 4 つ の 大 学 の 健 康 管 理 室 ,健 康 相 談 室 ,な ら び に 保 健 室 に 勤 務 す る 職 員 を 対 象 に 調 査 を 実 施 し た .対 象 者 に は ,研 究 目 的 ,測 定 内容,データの取扱い,研究参加(不参加)による利益・不利益, な ら び に 個 人 情 報 保 護 に つ い て 事 前 に 文 書 を 郵 送 し ,説 明 を 行 っ た . な お 本 研 究 は ,早 稲 田 大 学 に お け る「 人 を 対 象 と す る 研 究 に 関 す る 倫理委員会」の承認を得て実施した.4 つの大学のうち,2 つの大 学 か ら「 本 大 学 で は ,学 生 に 対 す る 運 動 ・ 身 体 活 動 量 増 加 に 向 け た 関 わ り を 行 っ て い な い た め ,調 査 に 回 答 で き な い 」と い う 回 答 を 受 け,最終的に 2 つの大学を調査対象校とした. 2) 質 問 項 目 ①学生の身体活動状況 担 当 者 が 把 握 し て い る 学 生 の 身 体 活 動・運 動 状 況 に つ い て ,お よ び,学生が有する日々の習慣や問題点についても尋ねた. 66 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 ②女子学生の身体活動状況 ①のうち,特に女子学生に限った場合の状況を調査した. ③実施している具体的な介入法 ( 不 活 動 の 状 況 が 明 ら か に な っ て い る 場 合 )そ の よ う な 状 況 に 対 し て 行 っ て い る 具 体 的 な 働 き か け を 抽 出 し た( 女 子 学 生 に 対 す る 特 有の働きかけ方があれば,その内容について) ④介入に関する実施者の自己評価 学 生 の 運 動・身 体 活 動 量 の 増 加 に 向 け た 関 わ り の 効 果 に 関 す る 自 己評価を聞いた. ⑤介入内容の阻害要因 学 生 の 運 動 ・ 身 体 活 動 増 加 に 向 け た 専 門 家( 保 健 師 ,看 護 師 等 の 担 当 者 )の 関 わ り を 妨 げ て い る 要 因 に つ い て 尋 ね た( 学 生 側 の 要 因 , 環境的要因,実施者側の要因等) ⑥介入内容の促進要因 学 生 の 運 動 ・ 身 体 活 動 増 加 に 向 け た 専 門 家( 保 健 師 ,看 護 師 等 の 担当者)の関わりをより一層促進ために必要な要因を聞き出した. 3. 調 査 方 法 半 構 造 化 面 接 を 用 い た 1 対 1 に よ る 聞 き 取 り 調 査 を 行 っ た .調 査 場 所 は ,会 話 が 阻 害 さ れ な い 個 室( 対 象 大 学 施 設 )に お い て 行 わ れ た. 4. 結 果 表 3 -7 は 2 大 学 に お け る 調 査 結 果 を 要 約 し た も の で あ る . ま ず , 「 質 問 1」の“ 学 生 の 身 体 活 動 の 実 施 状 況 ”に つ い て は ,両 大 学 と 67 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 表3-7 聞き取り調査の結果要約 質問1 学生(全体) の身体活動・ 運動状況 質問2 女子学生の身 体活動・運動 状況 A大学 B大学 保健師1名 医師1名 身体活動・運動状況に関する調査は実施し ておらず,具体的には把握していない.把 握できる学生は,保健室を利用する学生の みである. 1年次には体育は必修であるが,2年次には 選択科目となり,3・4年では授業を利用し た運動は行われていない. 運動や身体活動を問題として保健室を利用 する学生はおらず,メンタルの問題で保健 室を利用する. 身体活動・運動状況については調査を実施 しておらず,具体的には把握していない. 特に男子学生において,20歳代のメタボ リックシンドローム該当者が増えてきてい る. 学生の身体活動・運動状況に関して把握し ていないため,不明である. 体型に関しては,「やせ」該当者が増えて いる. 学生の身体活動・運動状況に関して把握し ていないため,不明である. 身体活動や運動を促進する介入は実施して いない 肥満学生を対象に個別の保健指導を行って いる. 指導の内容としては,運動の実施や食事内 容の改善などを扱っている. 実施した方がよいとは思うが,授業が忙し く,あらためて体を動かす時間を作って行 うことは難しい. 現状においては限界であると考える. 個別指導を行った学生については改善をみ せている 大学授業の忙しさ 大学授業の忙しさ 医療系の学部のため,学生は健康に興味を もっている.それを利用して何か活動がで きるのではないかと考えている. 医学部生のため,将来患者への指導を見込み, 学生自身の健康管理を行う経験は有意義である と考える. 質問3 実施している 具体的な介入 方法 質問4 介入内容に関 する実施者の 自己評価 質問5 介入における 阻害要因 質問6 介入における 促進要因 68 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 も に ,健 康 診 断 時 ,な ら び に そ の 他 の 機 会 を 利 用 し て ,学 生 の 身 体 活 動 や 運 動 の 実 施 状 況 に つ い て は 聞 き 取 り を 実 施 し て い な い .B 大 学 は 医 科 大 学 で あ る た め ,採 血 結 果 か ら 血 中 脂 質 な ど の デ ー タ を 分 析 し ,肥 満 学 生 の ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ て い る .A 大 学 で は ,体 型 に つ い て Bod y Mas s Index の 算 出 を 行 う の み で あ る . 「 質 問 2」の“ 女 子 学 生 の 身 体 活 動 状 況 ”は ,両 大 学 と も に 身 体 活 動 ・ 運 動 に 関 す る 聞き取りを実施していないため,状況は不明である. 続 い て ,「 質 問 3 」 の “ 実 施 し て い る 具 体 的 な 介 入 法 ” に つ い て は ,B 大 学 は ,肥 満 学 生 に 対 し て 個 別 の 保 健 指 導 を 実 施 し て い る が , A 大学は身体活動・運動量の増加に向けた介入は実施していない. 「 質 問 4 」と し て ,保 健 指 導 を 実 施 し て い る B 大 学 の“ 介 入 に 関 す る 実 施 者 の 自 己 評 価 ”は ,B 大 学 で は ,継 続 的 に 介 入 を 実 施 し た 学 生 に お い て は ,体 重 の 減 尐 や 血 液 デ ー タ の 改 善 を 認 め た た め ,継 続 的に関わりによって効果的な介入になったと評価した. 「 質 問 5 」の“ 介 入 内 容 の 阻 害 要 因 ”は ,A 大 学 ,B 大 学 と も に , 大 学 の ス ケ ジ ュ ー ル が 挙 げ ら れ た .授 業 が 過 密 に 組 ま れ て お り ,個 別 介 入 を 行 う 時 間 や 機 会 が な い こ と が 示 さ れ た .A 大 学 は 医 療 系 学 部 が 調 査 対 象 で あ り ,進 級 に 伴 い 実 習 時 間 が 増 加 し ,学 内 に い る 時 間 の 減 尐 や 体 育 の 必 修 授 業 が な く な る こ と 等 も 影 響 し て い る .B 大 学 で も 同 様 に ,進 級 に 伴 い 学 外 で の 医 学 臨 床 実 習 が 増 加 し ,時 間 的 な 問 題 が 介 入 の 阻 害 要 因 と な る .個 別 の 保 健 指 導 も ,進 級 に よ っ て 実 施 困 難 と な る . 一 方 ,「 質 問 6 」 の “ 介 入 内 容 の 促 進 要 因 ” と し て は ,A 大 学 で は , 学 生 の「 健 康 」 へ の 興 味 が 挙 げ ら れ る . そ れ ゆ え ,興 味 を 生 か し て 健 康 問 題 を 考 え る 機 会 を 設 け る こ と が で き る こ と が 示 さ れ た .環 境 的 な 阻 害 要 因( 例 え ば ,時 間 的 問 題 )が 存 在 す 69 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 る が ,学 生 の 健 康 に 対 す る 興 味・関 心 に よ っ て 困 難 の 克 服 の 可 能 性 も示唆された B 大学においては,学生が将来患者に対して生活習 慣 指 導 を 行 う こ と を 考 え る と ,学 生 自 身 が 自 己 の 健 康 問 題 に 取 り 組 む 意 義 が あ る だ ろ う と い う こ と で あ っ た .将 来 的 に 授 業 の 中 に 取 り 入れることが検討できれば望ましいということであった. 5. 考 察 本 研 究 で は ,不 活 動 な 学 生 に 対 す る 運 動 促 進 介 入 を 行 う 上 で ,大 学 内 の 健 康 管 理 施 設 に お け る 環 境 的 問 題 ,な ら び に 対 象 者 ,実 施 者 側の問題点(阻害要因)を明らかにすることが目的であった. ま ず ,対 象 校 の 特 徴 に つ い て 述 べ る .合 計 4 つ の 大 学 に 調 査 を 依 頼 し た 結 果 ,2 つ の 大 学 か ら は「 本 校 で は 学 生 に 対 す る 運 動 促 進 を 目 的 と し た 介 入 を 行 っ て い な い た め ,調 査 に 協 力 で き な い 」と の 回 答 を 受 け た .1 校 は 全 校 生 徒 4 万 人 程 の 首 都 圏 総 合 大 学 で あ り ,も う 1 校 は 全 校 生 徒 250 人 程 の 看 護 短 期 大 学 で あ っ た .介 入 を 実 施 し て い な い 理 由 に 関 し て は 明 確 に な っ て い な い も の の ,何 ら か の 介 入 を妨げる要因の存在が示唆された. 調 査 に 参 加 し た 2 校( A 大 学 ,B 大 学 )の 学 生 の 身 体 活 動 ・ 運 動 実施状況については聞き取り等による実態の把握は行われていな か っ た .た だ 一 方 で ,不 活 動 や 偏 っ た 食 生 活 等 の 結 果 と し て 表 れ る 肥 満 や 肥 満 傾 向 を BM I や 血 液 デ ー タ か ら 確 認 し て お り , ス ク リ ー ニ ン グ は 行 っ て い た .A 大 学 で は ,肥 満 よ り も む し ろ 痩 せ や 低 体 温 の 問 題 ,な ら び に 人 間 関 係 を 原 因 と し た メ ン タ ル ヘ ル ス の 問 題 が 顕 在化しており,それらに対する対策を検討している.B 大学では, 比較的男子学生に肥満が見られ,女子学生は A 大学と同様にやせ 70 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 が多いという状況が挙げられた. し か し な が ら ,両 校 と も に 予 防 と い う 観 点 か ら 学 生 の 行 動 に 着 目 す る こ と は な く ,ま た そ の 他 の「 痩 せ 」や「 メ ン タ ル ヘ ル ス 」へ の 対 策 と し て 身 体 活 動 や 運 動 が 検 討 さ れ る こ と は な か っ た .心 身 の 健 康 に 関 す る 問 題 意 識 を 有 し て い る も の の ,現 実 的 に 問 題 の 改 善 に 向 け た 対 策 を 計 画 す る こ と ,な ら び に 介 入 を 行 う た め の マ ン パ ワ ー の 不足が影響していた. 将来的な身体活動・運動量の増加に向けた介入の見通しとして, A 大 学 ,B 大 学 と も に ,医 学 ・ 医 療 系 学 部 を 設 置 す る 大 学 と し て の メ リ ッ ト お よ び デ メ リ ッ ト を 有 し て い る .一 般 的 な 総 合 大 学 学 生 の 場 合 ,4 年 次 に は 授 業 数 を 減 ら し ,就 職 活 動 に 割 く だ け の 時 間 的 余 裕 を 作 り 出 す こ と も 可 能 で あ る .一 方 ,医 学 部 ,あ る い は 医 療 系 学 部 の 場 合 ,デ メ リ ッ ト と し て ,国 家 資 格 試 験 や 臨 床 実 習 な ど の 授 業 数 が 学 年 を 増 す ご と に 増 え て い く .し た が っ て ,現 行 の カ リ キ ュ ラ ム の 中 で ,ど の よ う に し て 個 別 面 接 や 学 生 自 身 に 対 す る 健 康 教 育 の 時 間 を 増 や す の か と い う ,時 間 的 な バ リ ア 要 因 を 克 服 す る こ と が 1 つ の 課 題 と し て 考 え ら れ る .現 状 の ま ま で は ,定 期 的 か つ 継 続 的 な 保 健 指 導 や 健 康 教 育 等 の 介 入 を 行 っ て い く こ と は 困 難 で あ る .メ リ ッ ト と し て は ,学 生 側 ,な ら び に 大 学 側 の 健 康 に 対 す る 興 味 ・ 関 心 で あ る .特 に 医 学 ・ 医 療 系 学 部 の 学 生 は ,健 康 に 関 し て 何 ら か の 関 心 を 持 っ て お り ,こ の 関 心 を 生 か し て 健 康 教 育 な ど を 行 っ て い く こ と が 効 果 的 で あ る と い う 意 見 が 両 校 か ら 聞 か れ た .ま た ,大 学 側 と し て も ,医 療 ・ 医 学 教 育 の 中 に お い て ,学 生 自 身 が 自 己 の 体 験 を 通 して健康管理の学びを深めるという,教育的側面が促進要因の 1 つであると考えていることがわかった. 71 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 現 状 を 鑑 み る と ,現 行 の 大 学 ス ケ ジ ュ ー ル や カ リ キ ュ ラ ム を 変 更 し て 学 生 に 介 入 す る こ と は 極 め て 難 し い .た だ し ,調 査 を 実 施 し た 2 校 に お い て は ,学 生 の 身 体 活 動 ・ 運 動 量 を 増 加 す る た め の 介 入 に お い て 上 述 し た よ う な 阻 害 要 因 は 存 在 す る も の の ,介 入 実 施 に 向 け た 潜 在 的 な ニ ー ズ が 存 在 す る こ と も 明 ら か に な っ た .さ ら に ,単 に 不 活 動 そ の も の や ,不 活 動 に よ る 肥 満 の 予 防 や 改 善 を 目 的 と す る だ け で は な く ,他 に も 問 題 が 指 摘 さ れ た「 痩 せ 」や「 メ ン タ ル ヘ ル ス 」 の 改 善 を 目 的 と し た 身 体 活 動・運 動 の 効 果 を 期 待 で き る .し た が っ て ,現 在 の 状 況 に お い て は 健 康 診 断 後 等 の 機 会 を 利 用 し た 介 入 に よ り ,尐 し で も 対 象 者 の 心 理 ・ 行 動 的 な 変 容 を 導 く こ と ,あ る い は 次 の 介 入 機 会 を 生 み 出 す 必 要 が あ る .特 に ,短 時 間 ,か つ 尐 な い 介 入 回 数 に よ っ て 変 容 を 促 す こ と が で き る 介 入 法 が 求 め ら れ る .本 研 究 の 調 査 対 象 と な っ た 2 校 は ,医 療 ・ 医 学 系 の 大 学 ・ 学 部 を 対 象 と し て お り ,一 般 の 大 学 が 有 す る 特 徴 と の 差 異 が 考 え ら れ る .将 来 的 に は 非 医 療 系 学 部 の 特 徴 と 比 較 す る こ と が 求 め ら れ る が ,簡 易 的 な 身 体 活 動・運 動 介 入 は ,非 医 療 系 学 部 に お い て も 適 用 可 能 な 実 用 的 な 介入である. 第 3 節 で は ,大 学 施 設 に 勤 務 す る 健 康 管 理 担 当 者 に 聞 き 取 り 調 査 を 行 い ,身 体 活 動・運 動 量 の 増 強 介 入 に お け る 促 進 要 因 と 阻 害 要 因 を 抽 出 し た . さ ら に , こ れ ら の 要 因 の 特 徴 を も と に , B-M I の 実 施 可 能 性 を 検 討 し た .そ の 結 果 ,医 学 系 お よ び 医 療 系 学 部 の 場 合 ,カ リキュラムの過密さといった時間的な問題が最も大きな阻害要因 で あ る .し か し な が ら ,両 校 と も に 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 強 介 入 に 向 け た 意 欲 は 高 い た め ,短 時 間 介 入 の 方 略 を 整 え る こ と に よ り ,介 入 が 可 能 と な る .こ の 短 時 間 介 入 は ,B-M I の 内 容 に 合 致 し て お り , 72 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 B-M I の 実 施 可 能 性 が 高 い と 評 価 で き る . 第 4 節 本章のまとめ 研 究 1 で は ,保 健 指 導 実 施 者 で あ る 保 健 師 を 対 象 に ,保 健 指 導 の 成功要因,ならびに失敗要因に関する調査を実施した.その結果, 保 健 指 導 の 成 功 要 因 と し て ,面 接 方 法 に 関 す る「 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 」,比 較 安 定 的 な 要 因 と 考 え ら れ る「 面 接 能 力 」,な ら び に 状 況 に よ っ て 変 化 し や す い「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」の 3 要 因 を 抽 出 す る こ と が で き た .ま た ,失 敗 要 因 と し て , 「 面 接 者 要 因 」,面 接 者 が コ ン ト ロ ー ル で き な い と 考 え ら れ る 「 面 接 の 統 制 不 能 要 因 」, な ら び に「 対 象 者 中 心 の 方 略 不 全 」と い う 3 要 因 を 抽 出 し た .面 接 の 要 素 と し て ,成 功 要 因 と し て も 失 敗 要 因 と し て も 対 象 者 中 心 の 面 接 方 略 と い う 要 素 が 認 め ら れ ,生 活 習 慣 の 指 導 を 行 っ て い る 臨 床 現 場 の 専 門家の認識および体験としてこの要素が重要であることが示され た .こ の 点 か ら は ,M I の「 協 働 性 」お よ び「 喚 起 性 」を 備 え た B-M I が適切である可能性が示唆された. ま た ,研 究 2 で は ,特 に 個 別 面 接 の 実 施 を 想 定 し た 介 入 の 阻 害 要 因 と 促 進 要 因 に つ い て 調 査 お よ び 検 討 を 行 っ た .そ の 結 果 ,調 査 対 象 校 が 医 学・医 療 系 学 部 と な っ た た め ,進 級 す る こ と に よ る 実 習 等 の忙しさから,介入が困難であることがわかった.しかしながら, 健 康 に 対 す る 学 生 の 意 識 の 高 さ ,な ら び に ,自 己 の 健 康 管 理 を 通 し て他者の健康管理について学ぶ機会を設けたいという学校側の意 図 か ら ,健 康 管 理 室 等 の 介 入 だ け で は な く ,授 業 内 容 に 組 み 込 む こ と も 不 可 能 で は な い こ と が 示 唆 さ れ た . す な わ ち , ま ず , 1) 忙 し さ と い う 阻 害 要 因 が あ る た め ,介 入 を 行 う 場 合 に は ,非 常 に 限 ら れ 73 第 3 章 面接者から見た個別介入の課題 た ,短 い 時 間 で の 介 入 で な け れ ば 実 施 が 難 し い と い う こ と ,な ら び に , 2) 医 療 系 学 部 の 場 合 , 個 別 介 入 と は 別 の , 授 業 時 間 を 活 用 し た 集 団 的 ア プ ロ ー チ が 実 施 で き る 可 能 性 が あ る ,と い う こ と が 言 え る .非 医 療 系 学 部 の 場 合 に は ど の よ う な 阻 害 要 因・促 進 要 因 が 存 在 す る の か 明 確 で は な い も の の ,非 医 療 系 学 部 の 学 生 も 忙 し さ が 運 動 の 阻 害 要 因 と し て 挙 げ ら れ て い る ( 飯 干 ら , 2003 ; 涌 井 ら , 1998 ) こ と か ら ,個 別 面 接 介 入 を 実 施 す る 場 合 に は ,短 時 間 で の 介 入 の 必 要性が考えられる. 以 上 よ り ,青 年 期 女 子 学 生 に 対 し て 個 別 介 入 を 実 施 す る 場 合 に は , M I( な ら び に B-M I) の 「 協 働 性 」 お よ び 「 喚 起 性 」 と い っ た 要 素 が適しており,また,短時間の介入を実施するために開発された B-M I は , 時 間 の あ ま り な い 学 生 へ の 介 入 と し て は 適 し て い る 可 能 性が高いと言える. 74 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 第 4章 第 1 節 行 動 変 容 を 意 図 し た 発 話 と SE の 関 連 本章の目的 介 入 の 妥 当 性 が 検 討 さ れ た B-M I, な ら び に M I は , こ れ ま で 運 動 行 動 の 開 始 ,継 続 に 対 し て 効 果 を 示 し て き た .し か し な が ら ,そ の メ カ ニ ズ ム に つ い て は 不 明 な 点 が 多 く ,先 述 し た よ う に 行 動 的 ア ウトカムを導く心理的変数の影響は検討がほとんど行われていな い . 特 に SE は MI に お け る 重 要 な 要 素 で あ る も の の , 介 入 に よ っ てどのように変容するのかについては明らかになっていない. 以 上 の よ う に , MI に お け る 心 理 的 変 容 プ ロ セ ス の メ カ ニ ズ ム が 明 ら か に な っ て い な い と い う 現 状 を 鑑 み , MI の 効 果 を 導 く と 考 え ら れ て い る チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と SE に 焦 点 を 当 て , 両 者 の 関 連 性 を 検 討 す る 必 要 が あ る と 考 え る .そ こ で 本 研 究 で は ,女 子 大 学 生 を 対 象 に MI に 準 じ た 面 接 1を 行 い , SE の 変 化 , な ら び に 変 数 間 の 関 連 性 を 検 討 す る .と り わ け ,女 子 大 学 生 の 運 動 行 動 の 開 始 ,な ら び に 継 続 に は ,運 動 行 動 に 対 す る S E( 以 後 運 動 S E と 略 記 )が 大 き く 関 与 し て い る こ と か ら も , S E に 注 目 す る 必 要 が あ る ( Wa kui , 2002 ; 松 本 , 2007 ). 特 に , 任 意 の 行 動 の 習 得 場 面 に お い て は , 操 作 す べ き S E を 特 定 す る た め に 課 題 特 異 的 な S E お よ び 一 般 的 な S E ,そ れ ぞ れ の SE と 当 該 行 動 の 関 連 を 評 価 す る こ と が 求 め ら れ て い る よ う に ( 坂 野 ・ 東 條 , 1 986 ), 本 研 究 で は , 運 動 全 般 に 関 す る S E で あ る 運 動 S E と ,一 般 的 な S E の 変 化 を 測 定 す る .運 動 S E は ,そ の 得 点 が 高 く な る 程 ,運 動 実 施 に 向 け た 意 欲 が 高 ま り ,運 動 行 動 が 促 さ 1 M I に 準 じ た 面 接 と は ,M I の 非 専 門 家 で も 活 用 で き る 面 接 で あ り ,診 療 時 間 の 短 い プ ラ イ マ リ ケ ア の 場 面 に お い て 1 回 の 面 接 実 施 を 目 的 に Rollnick et al. ( 1992) が 開 発 し た B-MI を 指 す 75 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 れ る こ と が わ か っ て お り , 変 容 ス テ ー ジ 2の 概 念 を 用 い て こ の 一 連 の 過 程 が 説 明 さ れ て い る( P rochaska & Di C l em ent e, 1983; 岡 ,2003 ). 前 述 し た よ う に , MI は 会 話 に よ る 認 知 的 変 容 を 通 じ て 行 動 的 ア ウ ト カ ム を 導 く こ と か ら も ,運 動 行 動 の 実 施 に 向 け て ,認 知 的 な 変 容 が 求 め ら れ る 運 動 行 動 の 未 実 施 者( 変 容 ス テ ー ジ に お け る“ 前 熟 考 ス テ ー ジ ”“ 熟 考 ス テ ー ジ ”) に 適 し た 方 略 で あ る と 言 え る . 第 2 節 で は ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン に よ り チ ェ ン ジ ・ ト ー ク を 引 き 出 す 面 接 を 実 施 す る 群 と ,ク ロ ー ズ ド・ク エ ス チ ョ ン に よ り チ ェ ン ジ ・ ト ー ク の 発 生 を 抑 え た 面 接 を 実 施 す る 群 の SE の 変 化 の 差 を 検 討 す る . こ れ に よ り , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク が SE に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 す る .ま た ,第 3 節 に お い て は ,更 に オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い た 面 接 を 会 話 形 式 で 実 施 す る 群 と ,面 接 で は な く テ キ ス ト に 回 答 す る 形 式 で 回 答 を 求 め る 群 の S E の 変 化 の 差 を 検 討 す る .同 じ 質 問 を 会 話 と テ キ ス ト に よ っ て 行 う こ と に よ り , SE に ど の よ う な 差が生じるのかを検討する. 第 2 節 質 問 様 式 の 違 い が SE に 与 え る 影 響 ( 研 究 3) 1.目 的 本 研 究 で は ,M I に 準 じ た 面 接 を 実 施 す る こ と に よ り ,チ ェ ン ジ ・ ト ー ク が SE に 与 え る 効 果 に つ い て 検 討 す る こ と が 目 的 で あ る . 2 変 容 ス テ ー ジ と は , Prochaska et al( 1983) に よ っ て 提 唱 さ れ た Tr a n s t h e o r e t i c a l M o d e l を 構 成 す る 概 念 の 1 つ で あ る . 変 容 ス テ ー ジ は , 過 去 お よ び 現 在 に お け る 実 際 の 行 動 と そ の 行 動 に 対 す る 心 の 準 備 性 ( readiness) によって分類される 5 つの段階(ステージ)から構成されている. 76 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 2. 方 法 1) 対 象 者 と 倫 理 的 配 慮 に つ い て A 大学および B 短期大学に通う女子大学生に対して研究参加へ の 募 集 を 行 っ た .募 集 に あ た っ て は ,” 「 健 康 行 動 の 採 択( 開 始 )を 意 図 し た 面 接 」に 関 す る 調 査 へ の 参 加 者 募 集 ”と 記 載 し た 書 面 を 授 業 終 了 後 に 配 布 し た .書 面 に は ,研 究 目 的 ,実 施 内 容 ,謝 礼( 1000 円 分 の 図 書 カ ー ド ), デ ー タ の 取 り 扱 い , 研 究 参 加 に よ る 不 利 益 は 生 じ な い こ と ,研 究 へ の 参 加( 不 参 加 )と 授 業 評 価 に は 一 切 関 係 が な い こ と ,な ら び に 個 人 情 報 の 保 護 に つ い て 記 載 し た .応 募 者 に 対 し て は ,調 査 実 施 時 に 定 期 的 な 運 動 習 慣 の 有 無 を 確 認 し ,定 期 的 な 運 動 習 慣 の な い 学 生 を 分 析 の 対 象 者 と し た .な お 本 研 究 は ,早 稲 田 大 学 に お け る「 人 を 対 象 と す る 研 究 に 関 す る 倫 理 委 員 会 」の 承 認 を 得て実施された. 2) 手 続 き 本 研 究 の 流 れ を 図 4 -1 に 示 し た .A 大 学 と B 短 期 大 学 そ れ ぞ れ の 応 募 者 に 対 し て ,面 接 前 に 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ に 関 す る 質 問 紙 へ の 回 答 を 求 め ,運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ が 準 備 ス テ ー ジ ,実 行 ス テ ー ジ ,な ら び に 維 持 ス テ ー ジ に 属 す る 者 を 除 外 し ,運 動 非 実 施 者 で あ る 前 熟 考 ス テ ー ジ ,お よ び 熟 考 ス テ ー ジ に 属 す る 者 を 本 研 究 の 対 象 者 と し た . 次 に , 対 象 者 を チ ェ ン ジ ・ ト ー ク ( CT) 群 と 統 制 群の 2 つの群へ無作為に割り当てた.A 大学では,8 名が応募し, CT 群 が 3 名 , 統 制 群 が 5 名 と な っ た . B 短 期 大 学 で は , 応 募 者 は 2 1 名 だ っ た が ,6 名 は 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ が 準 備 ス テ ー ジ 以 降 に 属 し て い た た め 除 外 と な っ た .残 り の 15 名 は ,C T 群 が 8 名 ,統 制 群 が 7 名 と な っ た .両 群 の 対 象 者 に 対 し て は ,表 4- 1 の 流 れ に 沿 77 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 A大学 B短期大学 応募者 8名 応募者 21名 運動行動の 変容ステージ調査 運動行動の 変容ステージ調査 除外者 0名 除外者 6名 採用者 8名 採用者 15名 CT群 3名 統制群 5名 CT群 8名 統制群 7名 pre 測定 pre 測定 pre 測定 pre 測定 個別面接介入 (OQベース) 個別面接介入 (CQベース) 個別面接介入 (OQベース) 個別面接介入 (CQベース) post 測定 post 測定 post 測定 post 測定 図4-1 研究3の流れ 78 「身体を動かす」ことに関して,この先 どのように変えていきたいと思います か? the future & the present + exploring concern 79 Q6 「身体を動かす」ことに関して,この先 変えていきたいと思いますか? ・「変えていきたいと思う」 ・「変えていきたいと思わない」 将来なりたい自分について現状とのギャッ プを引き出しながら質問する。複数の選択 肢を引き出し,現状に即した行動を見つけ るように導く Q4と同様 今のままの活動(運動)状況でいること の悪い点はありますか? ・「悪い点がある」 ・「悪い点はない」 今のままの活動(運動)状況でいること の悪い点は何ですか? the less good things Q5 不活動状態にあることに関する対象者の気 持ち・考えを聞く 今のままの活動(運動)状況でいること の良い点はありますか? ・「良い点がある」 ・「良い点はない」 今のままの活動(運動)状況でいること の良い点は何ですか? the good things Q4 対象者に関する最近の行動の話題を取り上 げる。また,行動変容に向けたレディネス を評価する 身体を動かしていないこと(運動不足 等)を感じることはありますか? ・「感じることがある」 ・「感じることはない」 身体を動かしていないこと(運動不足) をどのように感じますか? typical day/session Q3 対象者が認識する健康と身体活動・運動と の関連について聞く opening strategy あなたのふだんの活動(運動)状況に よって,あなたの健康に何らかの影響が あると思いますか? ・「影響があると思う」 ・「影響はないと思う」 あなたのふだんの活動(運動)状況は, あなたの健康にどのような影響があると 思いますか? Q2 日常生活における対象者の身体活動量ある いは運動量について聞く ふだん身体を動かしていますか? ・「身体を動かしている」 ・「身体を動かしていない」 opening strategy ふだんどのくらい身体を動かしています か? 各項目の内容 close-ended question の内容 (統制群) open-ended question の内容 (CT群) Q1 The menu of strategies 表4-1 CT群と統制群の質問内容および面接プロセス 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 っ た 面 接 を 実 施 し た .ま た ,面 接 終 了 後 に 再 度 質 問 紙 へ の 回 答 を 求 めた. 3) 面 接 内 容 に つ い て 面 接 プ ロ セ ス は ,R ol l ni ck が 作 成 し た B -M I の“ 方 略 リ ス ト( Th e m enu of st rat eg y)”( R ol l ni ck et al ., 1992 ) を , 表 4 -1 に 示 す よ う に 身 体 活 動・運 動 量 増 強 を 目 的 と し た 内 容 に 著 者 が 改 編 し て 使 用 し た . R ol l ni ck に よ れ ば , B-M I の プ ロ セ ス は , 当 該 行 動 に 対 す る 対 象 者 の 心 の 準 備 性 に 基 づ き , 面 接 者 は 使 用 す る 項 目 ( st rat e g y) を m enu の 中 か ら 選 択 し て 面 接 を 行 う こ と が 求 め ら れ て い る .本 研 究 の 対 象 者 は ,定 期 的 な 運 動 を 実 施 し て い な い 学 生 が 対 象 で あ る た め ,対 象 者 の 運 動 実 施 状 況 の 聞 き 取 り ,な ら び に 両 面 感 情 の 抽 出 を 目 的 と し た 項 目 を 使 用 し た .両 群 と も に 同 じ 面 接 プ ロ セ ス に 沿 っ て 面 接 が 進 行 す る が ,チ ェ ン ジ・ト ー ク と 認 知 的 要 因 の 関 連 を 検 討 す る た め に , チ ェ ン ジ・ト ー ク を 意 図 的 に 抑 え る よ う な 面 接 を 行 う 統 制 群 を 設 定 し 介 入 を 行 っ た . CT 群 は , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク を 引 き 出 す た め に 6 つ の 質 問 項 目 に 関 し て オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 中 心 に 用 い て 面 接 を 行 い ,統 制 群 で は ,チ ェ ン ジ・ト ー ク を 抑 え る た め に ,6 つ の 質 問 項 目 に 関 し て ク ロ ー ズ ド・ク エ ス チ ョ ン に よ り 構 成 さ れ た 面 接 を 実施した. 1 つ 目 の 質 問 で は ,「 C T 群 : ふ だ ん , ど の く ら い 身 体 を 動 か し て い ま す か ?( 統 制 群:ふ だ ん ,ど の く ら い 身 体 を 動 か し て い ま す か ? 選 択 肢 ;「 身 体 を 動 か し て い る 」 「 身 体 を 動 か し て い な い 」)」と 質 問 し ,日 常 生 活 の 身 体 活 動 ・ 運 動 量 を 確 認 さ せ た .2 つ 目 の 質 問 に お いては, 「 C T 群 : あ な た の ふ だ ん の 活 動( 運 動 )状 況 は ,あ な た の 80 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 健 康 に ど の よ う な 影 響 が あ る と 思 い ま す か ?( 統 制 群:あ な た の ふ だ ん の 活 動( 運 動 )状 況 に よ っ て ,あ な た の 健 康 に 何 ら か の 影 響 が あ る と 思 い ま す か ? 選 択 肢; 「影響があると思う」 「影響はないと思 う 」)」と 尋 ね ,対 象 者 が 認 識 す る 健 康 と 身 体 活 動 ・ 運 動 と の 関 連 を 意 識 さ せ た . 3 つ 目 の 質 問 は ,「 C T 群 : 身 体 を 動 か し て い な い こ と ( 運 動 不 足 )を ど の よ う に 感 じ ま す か ?( 統 制 群 : 身 体 を 動 か し て い な い こ と ( 運 動 不 足 ) を 感 じ る こ と は あ り ま す か ? 選 択 肢 ;「 感 じ る こ と が あ る 」「 感 じ る こ と は な い 」)」 で あ り , 対 象 者 の 最 近 の 行 動 を 取 り 上 げ る と と も に ,身 体 活 動 量 の 増 強 に 向 け た レ デ ィ ネ ス を 評 価 す る . 4 つ 目 の 質 問 で は ,「 C T 群 : 今 の ま ま の 活 動 ( 運 動 ) 状 況 で い る こ と の 良 い 点 は 何 で す か ?( 統 制 群:今 の ま ま の 活 動( 運 動 ) 状 況 で い る こ と の 良 い 点 は あ り ま す か ? 選 択 肢 ;「 良 い 点 が あ る 」「 良 い 点 は な い 」)」 と 質 問 す る こ と に よ っ て , 不 活 動 状 態 に あ る こ と の 対 象 者 の 気 持 ち や 考 え を 振 り 返 ら せ ,引 出 し た . 5 つ 目 の 質 問 は ,現 状 の 悪 い 点 を 質 問 し ,4 つ 目 の 質 問 と 同 じ よ う に ,対 象 者の気持ちや考えの振り返りを求め,それらを引出した.最後に, 6 つ 目 の 質 問 で は ,「 C T 群 : 身 体 を 動 か す こ と に 関 し て , こ の 先 ど の よ う に 変 え て い き た い と 思 い ま す か ?( 統 制 群:身 体 を 動 か す こ と に 関 し て , こ の 先 変 え て い き た い と 思 い ま す か ? 選 択 肢 ;「 変 え て い き た い と 思 う 」「 変 え て い き た い と 思 わ な い 」)」 と 尋 ね , 対 象 者 の 理 想 の 自 分 と 現 状 と の ギ ャ ッ プ を 意 識 さ せ る .ま た ,複 数 の 選 択肢を引出して,実行可能性の高い行動を見つけさせる. 4) 面 接 の 実 施 者 と 面 接 環 境 に つ い て 面 接 は ,大 学 院 博 士 後 期 課 程 に 在 籍 し て い る 看 護 師 が 行 っ た .面 接 者 は ,動 機 づ け 面 接 の 公 式 ト レ ー ナ ー 2 名 に よ る 2 日 間 の ワ ー ク 81 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 シ ョ ッ プ に 14 時 間 参 加 し , 面 接 ス キ ル の 習 得 を 行 っ た . 面 接 内 容 の 誤 差 を 統 制 す る た め に ,全 て 1 名 が 面 接 を 実 施 し た .面 接 の 実 施 場 所 は ,対 象 者 が 会 話 に 集 中 で き る こ と ,な ら び に 会 話 を 阻 害 す る 要 因 を 排 除 す る こ と を 目 的 と し て 大 学 施 設 の 一 室 ,な ら び に 公 共 の 会議室を利用した.面接者と対象者は,向かい合わず L 字型,つ ま り 両 者 の 体 の 向 き が 直 角 に な る よ う に 座 り ,1 対 1 で 面 接 を 行 っ た. 5) 測 定 項 目 ①対象者の属性 年齢,高校時代の部活動の所属状況を聞き取った. ②運動行動変容ステージ Oka ら( 2000 )に よ る 運 動 行 動 変 容 ス テ ー ジ 尺 度 を 用 い た .対 象 者の実際の運動行動とその行動の動機づけの準備性を測定する項 目 で 構 成 さ れ て い る .対 象 者 の 変 容 ス テ ー ジ は ,面 接 実 施 前 の 聞 き 取 り に よ り 回 答 を 求 め た .対 象 者 に は ,ま ず 定 期 的 な 運 動 の 定 義 を 次のように教示した. 「 定 期 的 な 運 動 と は ,体 力 の 向 上 を 目 的 と し , 計 画 的 に 行 わ れ る 身 体 活 動( 例 え ば ,速 歩 き ,ジ ョ ギ ン グ ,サ イ ク リング,水泳,テニスなど)を息が上がり,汗をかくレベルで 1 回 2 0 分 以 上 ,週 3 回 以 上 行 う こ と を 意 味 し ま す 」.教 示 に 続 き ,現 在の対象者の考えや行動に当てはまる変容ステージの選択を求め た . 各 項 目 の 内 容 は ,「 私 は 現 在 運 動 を し て い な い . ま た , こ れ か ら 先 も す る つ も り は な い ( 前 熟 考 ス テ ー ジ )」,「 私 は 現 在 運 動 を し て い な い .し か し ,近 い 将 来( 6 ヵ 月 以 内 )に 始 め よ う と は 思 っ て い る ( 熟 考 ス テ ー ジ )」 ,「 私 は 現 在 運 動 を し て い る . し か し , 定 期 的 で は な い ( 準 備 ス テ ー ジ )」,「 私 は 現 在 運 動 を し て い る . し か 82 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 し , 始 め て か ら 6 ヵ 月 以 内 で あ る ( 実 行 ス テ ー ジ )」,「 私 は 現 在 運 動 を し て い る . ま た , 6 ヵ 月 以 上 継 続 し て い る ( 維 持 ス テ ー ジ )」 である. ③ 一 般 的 な SE 坂 野 ・ 東 條( 1986 )が 作 成 し た 一 般 性 セ ル フ ・ エ フ ィ カ シ ー 尺 度 ( Gen eral S el f -Effi cac y S cal e: 以 後 G S ES と 略 記 ) を 用 い た . GS ES 尺 度 は 16 の 質 問 項 目 か ら な り , 行 動 の 積 極 性 ( 7 項 目 ), 失 敗 に 対 す る 不 安( 5 項 目 ),能 力 の 社 会 的 位 置 づ け( 4 項 目 )の 3 因 子 か ら 構 成 さ れ て い る . 回 答 は 「 は い ( 1 点 )」 か 「 い い え ( 0 点 )」 の 2 件 法 で 求 め た . 得 点 範 囲 は 0-16 点 で あ る . ④ 運 動 行 動 に 対 す る SE 岡 ( 2003 ) が 作 成 し た 運 動 S E 尺 度 を 用 い た . 運 動 S E 尺 度 は 5 つ の 質 問 項 目 か ら 構 成 さ れ ,疲 労 ,気 分 が の ら な い ,忙 し さ ,休 暇 中 ,天 候 不 良 と い っ た 各 状 況 に お け る 運 動 実 施 の 自 信 を 問 う も の で あ る(「 休 暇 中 」は 無 相 関 項 目 ).そ れ ぞ れ の 状 況 に お け る 運 動 実 施 の 自 信 が 「 ま っ た く そ う 思 わ な い ( 1 点 )」 か ら 「 か な り そ う 思 う ( 5 点 )」 の 5 件 法 で 回 答 を 求 め た . 得 点 範 囲 は 4 -20 点 で あ る . ⑤チェンジ・トーク チ ェ ン ジ ・ ト ー ク は , Mi l l er & R ol l ni ck の 「 現 状 を 維 持 す る こ と に よ る 不 利 益 」, 「 変 化 を 起 こ す こ と の 利 点 」, 「 変 わ る こ と へ の 意 志 」, 「 変 わ る こ と へ の 楽 観 性 」 と い う 定 義 ( Mi l l er & R ol l ni ck, 松 島 義 博 ・ 後 藤 恵 訳 ,2007 ) を 参 考 と し , 面 接 内 容 の 録 音 デ ー タ ( 逐 語 録 ) の中から抽出した. ⑥面接内容の質的評価 M I の セ ラ ピ ス ト の 技 術 評 価 に 用 い ら れ る M I S ki ll C ode ver 1.0 83 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 ( 以 後 , M IS C と 省 略 ) の う ち , 下 記 2 つ の 指 標 を 用 い た ( The M i d -Atl ant i c Addi ct i on Technol og y Tran sfer C ent er ,2000 ). ( 1) オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 数 お よ び オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 割 合 質 問 に は 回 答 者 の 回 答 を 「 は い 」「 い い え 」 に 限 定 す る ク ロ ー ズ ド・ク エ ス チ ョ ン と , 「はい」 「 い い え 」に 限 定 し な い オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン が あ る . オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン は ,「 カ ウ ン セ ラ ー が ク ラ イ エ ン ト に 会 話 の 主 導 権 を 渡 す 質 問 」で あ り ,ク ラ イ エ ン ト の 考 え ,関 心 ,態 度 と い っ た ,全 般 的 な 気 持 ち を 広 く 知 る た め に 役 立 つ と 言 わ れ て い る .ク ロ ー ズ ド ・ ク エ ス チ ョ ン と は ,カ ウ ン セ ラ ー が 会 話 の 主 導 権 を 握 り ,特 定 の 情 報 を 得 る た め の 質 問 で あ る .ま た , 一 つ か 二 つ の こ と ば( イ エ ス と か ノ ー な ど )で ク ラ イ エ ン ト が 答 え ら れ る 質 問 で あ る ( 小 林 , 200 4 ). オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 数 は , 面 接 に お い て 使 用 さ れ た オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン の 合 計 で あ る .オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン 割 合 と は ,面 接 の 中 で 対 象 者 に 投 げ か け ら れ る 全 質 問( オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン と ク ロ ー ズ ド ・ ク エ ス チ ョ ン の 総 計 ) に 占 め る オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン の 割 合 を 指 す . MI に お い て は , 入 門 レ ベ ル の オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 割 合 は 50 % 以 上 , エ キ ス パ ー ト レ ベ ル は 70 % 以 上 に 設 定 さ れ て お り , 面 接 者 が 投 げ か け る 全 質 問 の う ち 半 分 以 上 が オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン で あ る こ と が 求められている. ( 2) 面 接 者 会 話 時 間 お よ び 面 接 者 会 話 時 間 割 合 面 接 者 会 話 時 間 割 合 と は ,面 接 実 施 時 間 に 占 め る 面 接 者 の 会 話 時 間 の 割 合 を 指 す . MI に お け る 面 接 者 会 話 時 間 割 合 の 入 門 レ ベ ル は 6 0 %以 下 , エ キ ス パ ー ト レ ベ ル は 50 %以 下 と 定 め ら れ て い る . 84 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 6) 分 析 方 法 C T 群 に お け る 対 象 者 の チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と GS ES 変 化 量 お よ び 運 動 S E の 関 連 を 検 討 す る た め に ,S pearm an の 順 位 相 関 係 数 を 求 め た . 各 群 の 面 接 前 後 の 認 知 的 変 数 の 差 の 検 定 に は , Wi l cox on の 符 号 付 き 順 位 検 定 を 用 い ,ベ ー ス ラ イ ン 期 に お け る 群 間 の 認 知 的 変 数 の 変 化 量 の 差 の 検 定 に は ,Mann -W hi t ne y の U 検 定 を 用 い た .な お , 統 計 学 的 有 意 水 準 は 5 % に 設 定 し ,分 析 に は ア プ リ ケ ー シ ョ ン ソ フ ト S P SS 17.0J for wi ndows を 利 用 し た .IC レ コ ー ダ に よ っ て 録 音 し た 会 話 内 容 は ,文 字 起 こ し を 行 い ,評 価 者 2 名 に よ り チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 特 定 し ,集 計 を 行 っ た .会 話 時 間 の 測 定 は , M IS C の 方 式 に 倣 い , 話 者 の 発 話 開 始 か ら 終 了 ま で , あ るいは発話開始からもう一方の話者の発話開始までを会話時間と し て 計 測 し た . 評 価 者 は , 臨 床 心 理 学 を 専 門 と し , MI の セ ミ ナ ー に 参 加 し 一 定 の 知 識 を 有 す る 大 学 教 員 ,な ら び に M I の 公 式 ト レ ー ナ ー が 主 催 す る 14 時 間 の ト レ ー ニ ン グ を 受 け た 博 士 課 程 の 大 学 院 生( 看 護 師 )が 担 当 し た .ま た ,チ ェ ン ジ ・ ト ー ク の 評 価 の 信 頼 性 を 検 討 す る た め ,評 価 者 2 名 の 評 価 内 容 の 一 致 度 を κ 係 数 の 算 出 に より検討した. 3. 結 果 1) 対 象 の 属 性 お よ び 面 接 結 果 各 群 の 属 性 お よ び 面 接 結 果 を 表 4- 2 に 示 し た . 対 象 者 数 は , C T 群 が 11 名 ,統 制 群 が 12 名 と な っ た .年 齢( 中 央 値 )は C T 群 が 22.5 歳 , 統 制 群 が 21. 5 歳 で あ っ た . 高 校 時 代 の 部 活 動 所 属 状 況 に つ い て は , 運 動 系 の 部 活 動 所 属 者 は , CT 群 5 名 , 統 制 群 7 名 で あ り , 85 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 表4-2 対象者の属性および面接結果 p値 CT群 統制群 11 12 22.5 (19 , 26) 21.5 (19 , 25) n.s. a 運動系 5 7 n.s. b 文科系および無所属 6 5 n.s. b 前熟考ステージ 9 7 n.s. b 熟考ステージ 2 5 n.s. b 面接時間(秒) 760 (480 , 1056) 98.5 (80 , 145) 面接者会話時間(秒) 278 (215 , 385) 72 (58 , 92) 面接者会話時間割合(%) 37.1 (31.9 , 44.8) 73 (60 , 81.2) オープン・クエスチョン数 15.5 (12 , 22) 0 (0 , 1) 6.5 (1 , 9) 6 (6 , 7) 69.6 (63.2 , 95.2) 0 (0 , 12.5) 14 (4.5 , 22.5) 0 (0 , 0) 人数 年齢 〔Me ( min ,max )〕 高校在学時の部活動 運動行動の変容ステージ 面接内容〔Me ( min ,max )〕 クローズド・クエスチョン数 オープン・クエスチョン割合(%) チェンジトーク数 Me = 中央値,min = 最小値,max = 最大値, n.s. = not significant a Mann-Whitney の U 検定 b カイ二乗検定 86 p < .01 a 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 文 化 系 部 活 動 お よ び 部 活 動 無 所 属 者 は , CT 群 6 名 , 統 制 群 5 名 で あ っ た . CT 群 お よ び 統 制 群 の 年 齢 , 高 校 時 代 の 部 活 動 の 所 属 状 況 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た .ま た ,運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ に 関 し て は ,前 熟 考 ス テ ー ジ 者 は C T 群 が 9 名 ,統 制 群 が 7 名 と な り , 熟 考 ス テ ー ジ 者 は , CT 群 が 2 名 , 統 制 群 が 5 名 と な り , そ れ ぞ れ の ス テ ー ジ に お け る 分 布 に 群 間 差 は 認 め ら れ な か っ た .群 ご と の 面 接 の 実 施 結 果 に 関 し て は , CT 群 が 統 制 群 に 比 し て 面 接 時 間 , 面 接 者 会 話 時 間 ,な ら び に 面 接 者 会 話 時 間 割 合 に お い て い ず れ も 有 意 に 多 い こ と が 示 さ れ た . 面 接 内 容 に つ い て は , CT 群 の 面 接 時 間 , 面 接 者 会 話 時 間 ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 数 ,な ら び に オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 割 合 が 統 制 群 と 比 べ て 非 常 に 多 い 結 果 と な っ た .一 方 で , CT 群 の 面 接 者 会 話 時 間 割 合 は 統 制 群 よ り 尐 な い こ と が わ か っ た . チ ェ ン ジ ・ ト ー ク 数 は , 統 制 群 の 対 象 者 は 発 す る こ と は な く , CT 群 の 対 象 者 の 方 が 有 意 に 多 い こ と が 示 さ れ た( p < .01 ).チ ェ ン ジ ・ ト ー ク の コ ー デ ィ ン グ の 信 頼 性 を 検 討 し た 結 果 ,評 価 者 2 名 の κ 係 数 は , κ =.66 と い う 値 を 得 た . 統 制 群 の 回 答 内 容 に つ い て は 表 4-3 に 示 し た .統 制 群 の 対 象 者 は ,ふ だ ん の 運 動 状 況 に つ い て は ,身 体 を 動 か し て い る 人 と そ う で な い 人 に 大 き な 差 は み ら れ な か っ た .し か し な が ら ,全 員 が 現 在 の 自 分 の 活 動 量 不 足 を 感 じ ,ほ と ん ど の 人 ( 91.7%) が , こ の 状 態 は 健 康 に 何 ら か の 影 響 を 与 え る と 考 え て い た . 現 状 の 良 い 点 に つ い て は , 良 い 点 が あ る ( 33.3% ) と 良 い 点 が な い ( 66.7% ) と 分 か れ た が , 現 状 の ま ま で い る こ と の 悪 い 点 に つ い て は , ほ と ん ど の 人 ( 91.7% ) が 悪 い 点 が あ る と 感 じ て い た . さ ら に ,将 来 的 に 身 体 を 動 か す こ と に つ い て ,ほ と ん ど の 人( 83.3% ) が 変 え て い き た い と 思 っ て い る こ と も 明 ら か に な っ た .つ ま り ,統 87 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 表4-3 統制群における質問への回答内容 質問No Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 質問および選択肢 回答数(割合) ふだん身体を動かしていますか? 体を動かしている 5 (41.7%) 体を動かしていない 7 (58.3%) あなたのふだんの活動(運動)状況によって,あな たの健康に何らかの影響があると思いますか? 影響があると思う 11 (91.7%) 影響はないと思う 1 (8.3%) 身体を動かしていないこと(運動不足等)を感じる ことはありますか? 感じることがある 12 (100%) 感じることはない 0 (0%) 今のままの活動(運動)状況でいることの良い点は ありますか? 良い点がある 4 (33.3%) 良い点はない 8 (66.7%) 今のままの活動(運動)状況でいることの悪い点は ありますか? 悪い点がある 11 (91.7%) 悪い点はない 1 (8.3%) 「身体を動かす」ことに関して,この先変えていき たいと思いますか? 変えていきたいと思う 10 (83.3%) 変えていきたいと思わない 2 (16.7%) 88 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 制 群 の 大 部 分 の 対 象 者 が ,現 状 維 持 が も た ら す 健 康 へ の 影 響 ,な ら び に 悪 い 点 を 感 じ ,将 来「 体 を 動 か す 」こ と に 関 す る 改 善 を 考 え て いることがわかった. 2) チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と SE の 関 連 C T 群 の チ ェ ン ジ・ト ー ク と GS ES 変 化 量 ,お よ び 運 動 S E 変 化 量 の 相 関 関 係 を 分 析 し た .そ の 結 果 ,す べ て の 項 目 間 に 有 意 な 相 関 を 認めなかった. 3) SE に 対 す る 面 接 効 果 ベ ー ス ラ イ ン 期 ( 面 接 前 ) の SE 得 点 の 比 較 結 果 , な ら び に 群 ご と の 面 接 前 後 の S E 得 点 の 比 較 し た 結 果 を 表 4-4 に 示 し た ( 対 象 者 別 の 面 接 前 後 の S E 得 点 を 表 4 -5, 4- 6, 4 -7 に 示 し た ). ベ ー ス ラ イ ン 期 に お け る S E 得 点 を 群 間 で 比 較 し た 結 果 ,す べ て の 得 点 に お い て 有 意 な 差 は 示 さ れ な か っ た .群 ご と に 面 接 前 後 の 得 点 を 比 較 し た 結 果 , C T 群 に お い て は , GS ES の 合 計 得 点 お よ び 各 下 位 項 目 得 点 に は 有 意 な 差 は 見 ら れ な か っ た が , 運 動 S E 得 点 ( p < .05 ) が 有 意 に 増 加 し た .一 方 ,統 制 群 に お い て は ,GS ES の 合 計 得 点( p < .05 ) お よ び「 行 動 の 積 極 性 」得 点( p < .05 )に 有 意 な 増 加 が 示 さ れ た が , そ の 他 の 下 位 項 目 得 点 ,お よ び 運 動 S E 得 点 に 有 意 な 差 は 認 め な か っ た .続 い て ,面 接 効 果 を 比 較 す る た め 群 間 に お け る 各 得 点 の 変 化 量 を 比 較 し た . 分 析 の 結 果 , GS ES 合 計 得 点 お よ び 下 位 項 目 得 点 , な ら び に 運 動 S E 得 点 の 変 化 量 は ,群 間 に 有 意 な 差 を 認 め な か っ た . 4. 考 察 こ れ ま で 報 告 さ れ た MI に 関 す る 研 究 に お い て ,チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と 認 知 的 変 数 の 関 連 が 明 ら か に さ れ て い な い .そ こ で 本 研 究 で は , 89 90 2 2 12 13 面接前 面接後 面接前 面接後 3 4 面接後 面接後 4 面接前 2 9 面接後 面接前 8 面接前 * 8 , 17 8 , 15 0,4 0,3 0,5 0,5 2,5 2,5 4 , 11 4 , 10 min , max * p < .05,Me = 中央値,min = 最小値,max = 最大値 運動SE GSES (能力の 社会的位置づけ) GSES (失敗に対する不安) GSES (行動の積極性) GSES (合計) Me CT群(N = 11) 表4-4 セルフ・エフィカシー得点の変化 14.5 12 3 3 3 2.5 3.5 3 9 9 Me * * 4 , 18 4 , 18 0,4 0,4 0,5 0,4 3,5 2,5 4 , 14 4 , 12 min , max 統制群(N = 12) 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 表4-5 GSES合計得点の変化 群 CT群 統制群 対象者ID 面接前 面接後 A 10 6 B 9 9 C 4 4 D 7 9 E 9 9 F 8 8 G 7 7 H 7 9 I 7 8 J 10 11 K 9 9 L 9 8 M 9 11 N 7 9 O 9 10 P 7 7 Q 10 10 R 4 4 S 7 8 T 6 7 U 11 14 V 9 9 W 12 12 91 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 表4-6 GSES「行動の積極性」得点の変化 群 CT群 統制群 対象者ID 面接前 面接後 A 5 2 B 3 2 C 2 2 D 5 5 E 4 4 F 3 3 G 3 3 H 4 5 I 4 4 J 5 5 K 4 5 L 4 4 M 4 5 N 3 3 O 3 4 P 3 3 Q 4 4 R 3 3 S 2 3 T 3 3 U 5 5 V 3 3 W 4 5 92 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 表4-7 運動SE得点の変化 群 CT群 統制群 対象者ID 面接前 面接後 A 12 14 B 11 12 C 9 11 D 13 13 E 12 12 F 14 14 G 8 8 H 15 17 I 15 17 J 10 12 K 13 17 L 15 18 M 12 16 N 14 15 O 4 4 P 17 15 Q 7 9 R 12 12 S 18 18 T 12 12 U 9 7 V 14 14 W 12 15 93 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と SE の 関 連 を 仮 説 と し て 設 定 し , MI に 準 じ た 面 接 ( B -M I) を 実 施 す る こ と に よ り , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク が S E に 与 える効果について検討することが目的であった. ま ず ,面 接 内 容 な ら び に コ ー デ ィ ン グ の 質 に つ い て 述 べ る .M IS C に よ る 面 接 内 容 の 評 価 で は ,C T 群 の オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン 割 合 , および面接者会話時間割合はエキスパートレベルの基準を超えて お り ,面 接 内 容 に つ い て は 非 常 に 高 い 質 を 確 保 し て い る と 評 価 で き る .一 方 統 制 群 は ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 割 合 ,面 接 者 会 話 時 間 割 合 と も に 入 門 レ ベ ル を 大 き く 下 回 り , MI の 基 準 に お い て 質 が 低 い と 評 価 す る .コ ー デ ィ ン グ の 質 に 関 し て は ,評 価 者 間 の 一 致 度 に よ り 信 頼 性 を 検 討 し た 結 果 ,κ = .66 と い う 値 を 得 て お り ,Landi s & Koch ( 1977 ) に よ る κ = 0.6 ~ 0.8 ( か な り 十 分 に 一 致 し て い る ) と い う 基 準 に 照 ら し 合 わ せ る と ,十 分 な 一 致 度 で あ っ た と 評 価 で き る . 以 上 に よ り ,面 接 内 容 ,な ら び に チ ェ ン ジ ・ ト ー ク の 信 頼 性 が 確 認 された. ま ず , SE の 変 化 に つ い て 検 討 す る . 面 接 内 容 と 結 果 に 注 目 し て み る と ,統 制 群 に 関 し て は ,ク ロ ー ズ ド ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い て 具 体 的 な 運 動 に 関 す る 会 話 は 行 わ ず ,不 活 動 の 影 響 性 お よ び メ リ ッ ト , デ メ リ ッ ト の 有 無 を 問 う な ど ,抽 象 的 な 会 話 に よ り 構 成 さ れ て い る . 面 接 の 結 果 ,抽 象 度 の 高 い GS ES 得 点 が 面 接 後 に お い て 有 意 に 増 加 し ,相 対 的 に 具 体 性 が 高 い 運 動 S E 得 点 が 有 意 な 変 化 を 示 し て い な い . 反 対 に , CT 群 に 関 し て は , オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い た 具 体 的 な 運 動 実 施 状 況 の 改 善 方 法 等 ,目 標 行 動 お よ び 会 話 内 容 の 具 体 性 が , 統 制 群 よ り も 高 く な っ て い る . そ の 結 果 , GS ES 得 点 の 有 意 な 変 化 を 認 め ず ,面 接 後 の 運 動 S E 得 点 に 有 意 な 増 加 が 認 め ら れ 94 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 た. 面 接 内 容 に よ っ て 影 響 を 受 け る SE の 種 類 が 異 な る 理 由 と し て , 会 話 お よ び S E の 具 体 性 の 程 度 が 関 連 し て い る と 考 え ら れ る .統 制 群 で は ,面 接 の 中 で 具 体 的 な 目 標 行 動 の 決 定 は 行 わ な い が ,83.3% の対象者が「体を動かす」ことに対する改善の意思を示している. 運 動 内 容 に 関 す る 具 体 性 は 务 る た め ,運 動 S E の 増 加 は 認 め ら れ な か っ た も の の , 運 動 行 動 の 改 善 の 意 思 を 示 し た こ と に よ り , GS ES の 中 で も 行 動 実 施 に 対 す る 努 力 を 示 す「 行 動 の 積 極 性 」得 点 の 有 意 な 増 加 に 影 響 を 与 え た . 一 方 , C T 群 で は GS ES で は な く 運 動 S E が 有 意 に 増 加 し た .運 動 S E は 運 動 を 妨 げ る 状 況 下 に お け る 運 動 実 施 の SE を 表 し て お り , 運 動 SE の 測 定 時 に は , 回 答 者 が 想 定 し た 具体的な運動行動が阻害要因下で実施可能であるかを評価するた め に ,特 定 の 運 動 内 容 を 想 起 し な く て は い け な い .そ れ ゆ え ,統 制 群 で 行 わ れ た 抽 象 的 な 会 話 で は 運 動 SE に 影 響 を 与 え る こ と が で き ず , CT 群 で 行 わ れ た 具 体 的 な 運 動 行 動 の 会 話 が 運 動 SE に 影 響 を 与 え , そ の 結 果 運 動 SE が 有 意 に 増 加 し た . つ ま り , 運 動 行 動 の 内 容について,具体的な会話を通じて目標行動を決めるほど,運動 S E が 増 加 し ,会 話 内 容 が 抽 象 的 で あ る 場 合 に は 一 般 的 な S E の 下 位 項目「行動の積極性」が増加する可能性が考えられる. さ ら に , オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン に よ る 具 体 的 な 会 話 が 運 動 SE を 高 め る メ カ ニ ズ ム と し て は ,次 の よ う な 過 程 が 想 定 さ れ る .例 え ば ,問 題 飲 酒 を 行 っ て い る 禁 酒 へ の 意 識 の 低 い 大 学 生 に ,問 題 飲 酒 に 関 す る オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 行 う こ と で ,よ り 問 題 飲 酒 に 関 連 し た 要 因 を 喚 起 さ せ る こ と が 指 摘 さ れ て い る ( Gi nt n er & C hoat e, 2 0 0 3). ま た , こ れ ら 先 行 研 究 の 結 果 か ら , オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ 95 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 ン を 投 げ か け る こ と に よ っ て ,行 動 変 容 に 向 け た 意 思 決 定 を 可 能 に さ せ る こ と も 指 摘 さ れ て い る( B aer & P et erson, 2002 ).つ ま り ,B-M I の 中 で ,現 状 に 関 す る 質 問 や メ リ ッ ト・デ メ リ ッ ト に 関 す る オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 投 げ か け る こ と に よ っ て ,不 活 動 に 関 す る 問 題 意 識 を 喚 起 し ,行 動 変 容 に 向 け た 意 志 を 強 化 す る 働 き を も っ て い る ことが考えられる. チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と SE の 関 連 性 に つ い て は , 相 関 関 係 の 検 討 を 行 っ た 結 果 , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク 数 と GS ES 変 化 量 , な ら び に 運 動 S E 変 化 量 に 有 意 な 相 関 関 係 が 認 め ら れ な か っ た .続 い て ,S E に 対 す る チ ェ ン ジ ・ ト ー ク の 効 果 を 検 討 す る た め に , CT 群 と 統 制 群 の 認 知 的 変 数 の 変 化 量 の 差 の 検 討 を 行 っ た . そ の 結 果 , CT 群 と 統 制 群 の 間 に GS ES , 運 動 S E の 変 化 量 に お け る 有 意 な 差 は 認 め ら れ な かった. 以 上 の 結 果 に よ り ,対 象 者 が チ ェ ン ジ・ト ー ク を 発 す る こ と に よ り SE が 高 ま る と い う 仮 説 は 採 択 さ れ な か っ た . こ の 理 由 と し て , 課 題 特 異 的 な SE の 測 定 が さ れ て い な い こ と が 影 響 し て い る と 考 え ら れ る . 本 研 究 で は , そ れ ぞ れ の 群 の 面 接 後 に お い て SE の 増 加 が 認 め ら れ た も の の , 変 化 量 に 関 し て は , GS ES お よ び 運 動 S E に お い て 群 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た .一 般 性 の 高 い S E に 関 し て は チ ェ ン ジ ・ ト ー ク に よ る 影 響 は な い 可 能 性 が 示 唆 さ れ た . CT 群 で は 対 象 者 ご と に 抽 出 さ れ る 目 標 行 動 の 種 類 ,頻 度 ,難 易 度 が 異 な っ て お り , GS E S や 運 動 S E で は 対 象 者 の 多 様 な 運 動 行 動 に 対 す る SE を 測 定 で き な か っ た . 先 述 し た よ う に , CT 群 に お い て は よ り 具 体 的 な , す な わ ち 課 題 特 異 的 な SE の 変 容 が 考 え ら れ る た め , 今 後 は 面 接 テ ー マ を 絞 っ た 上 で 課 題 特 異 的 な SE を 比 較 す る こ と が 96 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 求められる. 最 後 に 本 研 究 の 限 界 点 に つ い て 述 べ る .本 研 究 は ,面 接 の 内 容 を 実 験 的 に 統 制 し た た め ,現 実 的 な 面 接 内 容 と は 異 な る 面 接 を 実 施 し て い る .こ の よ う な 面 接 を 実 施 す る こ と に よ り ,本 来 生 じ る こ と が 予測される対象者と面接者の相互作用が失われている可能性があ る .ま た ,両 群 に お け る 面 接 時 間 な ら び に 会 話 時 間 の 割 合 等 ,面 接 の 要 素 に 差 が 認 め ら れ ,こ の 要 素 が 結 果 に 与 え る 影 響 に つ い て は 本 研 究 で は 検 討 し て い な い .し た が っ て ,現 実 場 面 に お け る 適 用 お よ び 面 接 に 関 連 し た 要 素 の 検 討 な ど を 重 ね る こ と に よ っ て ,よ り 実 用 可能な資料を蓄積することが望まれる.一般化可能性に関しては, 対 象 者 が 女 子 大 学 生 か つ 小 標 本 で あ る た め ,研 究 結 果 を 大 学 生 全 般 へ 適 用 す る 際 に は 十 分 な 配 慮 が 必 要 で あ る .上 記 の よ う な 限 界 点 は あ る が ,動 機 づ け を 意 図 し た 面 接 に お け る 対 象 者 の 発 話 内 容 と 認 知 的変化の関連性についてはこれまでほとんど言及されていないた め ,本 研 究 に お け る 検 討 は 有 益 で あ っ た と 言 え る .特 に ,女 子 大 学 生 の 身 体 活 動 に 焦 点 を 絞 っ た こ と に よ り ,学 校 現 場 に お け る 活 用 に 向けた新たな知見を得ることができた.将来的な研究においては, 標 本 数 を 増 や す だ け で は な く ,使 用 す る 尺 度 の 変 更 や 発 話 内 容 の 詳 細 な 分 類 に よ り ,会 話 お よ び 面 接 内 容 と 認 知 的 変 化 の 関 連 性 に つ い て更なる検討が求められる. 第 2 節 で は , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク が SE に 影 響 し な い 可 能 性 が 示 唆 さ れ た が ,会 話 の 具 体 性 の 程 度 と S E の 具 体 性 の 程 度 と の 関 連 性 が 示 さ れ た . 特 に , 身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増 強 に 最 も 影 響 す る 運 動 SE は ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 使 用 し て ,よ り 身 体 活 動 に 関 す る 具 体的な会話を行うことが推奨される. 97 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 第 3節 会 話 に よ る オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン が S E に 与 え る 影 響( 研 究 4) 1. 目 的 研 究 4 で は ,オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 用 い て 身 体 活 動 に 関 す る 具 体 的 な 会 話 を 行 う こ と が ,運 動 S E を 高 め る 方 略 で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た ( 藤 澤 ら , 2010c ). 本 研 究 の 目 的 は , オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン が も た ら す 効 果 の う ち ,特 に 会 話 を 用 い る こ と の 影 響 を 検 討 す る こ と で あ る .身 体 活 動 や 運 動 の 実 施 に 関 す る 質 問( オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン )を ,会 話 形 式 の 面 接 で 行 う 群 と ,面 接 で は な く テ キ ス ト 形 式 の 質 問 に よ り 記 述 回 答 を 求 め る 群 に 分 け ,各 群 の S E の 変 化の差を検討する. 2. 方 法 1) 対 象 者 と 倫 理 的 配 慮 に つ い て A 看護専門学校に通う女子学生に対して研究参加への募集を行 っ た .募 集 に あ た っ て は ,” 「 健 康 行 動 の 採 択 を 意 図 し た 面 接 」に 関 す る 調 査 へ の 参 加 者 募 集 ”と 記 載 し た 書 面 を 授 業 終 了 後 に 配 布 し た . 書 面 に は ,研 究 目 的 ,実 施 内 容 ,デ ー タ の 取 り 扱 い ,研 究 参 加( 不 参 加 )に よ る 利 益 ・ 不 利 益 ,な ら び に 個 人 情 報 の 保 護 に つ い て 記 載 し た .応 募 者 に 対 し て は ,調 査 実 施 時 に 定 期 的 な 運 動 習 慣 の 有 無 を 確 認 し ,定 期 的 な 運 動 習 慣 の な い 学 生 を 分 析 の 対 象 者 と し た .な お 本 研 究 は ,早 稲 田 大 学 に お け る「 人 を 対 象 と す る 研 究 に 関 す る 倫 理 委員会」の承認を得て実施された. 2) 介 入 内 容 98 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 本 研 究 で は , M I に 準 じ た 面 接 ( B - M I) の 効 果 が 発 話 を 通 じ て 表 れるのかを検討することが目的であるため,次の 2 群を設定した. ①会話オープン・クエスチョン群(会話群) 研 究 3 で 適 用 し た 面 接 と 同 様 に R ol l ni ck が 作 成 し た B- M I の“ 方 略 リ ス ト( The m enu of st rat eg y )”を 参 考 と し た( R ol l ni ck et al ., 1992 ). 本 研 究 の 対 象 者 は ,定 期 的 な 運 動 を 実 施 し て い な い 学 生 が 対 象 で あ る た め ,対 象 者 の 運 動 実 施 状 況 の 聞 き 取 り ,な ら び に 両 面 感 情 の 抽 出を目的とした項目を使用した.面接実施者と面接環境も研究 3 と同様である. ②テキスト・オープン・クエスチョン群(テキスト群) 対 象 者 は ,会 話 オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン 群 と 同 様 の 質 問 内 容 が 記 載 さ れ た 質 問 用 紙 に 回 答 の 記 入 が 求 め ら れ た .図 4 -2 に ,質 問 用 紙 の内容を示した. 3) 手 続 き 本 研 究 の 流 れ を 図 4-3 に 示 し た . 本 研 究 の 応 募 者 21 名 の う ち , 10 名 は 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ が 準 備 ス テ ー ジ 以 降 に 属 し て い た た め , 研 究 の 対 象 か ら 除 外 し た . 残 り の 11 名 を 無 作 為 に 2 つ の 群 に割り当てた.対象者のうち,5 名が会話群,6 名がテキスト群と な り , そ れ ぞ れ 介 入 前 後 に SE の 測 定 を 行 っ た . 4) 測 定 項 目 ①対象者の属性 年齢,高校時の部活動の所属を尋ねた. ②運動行動変容ステージ Oka ら ( 2000 ) に よ る 運 動 行 動 変 容 ス テ ー ジ 尺 度 を 用 い た . ③ 一 般 的 な SE 99 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 以下の質問の回答を質問の下にある枠内に記載してください。 また,回答は1つだけではなく,その他にある場合には思いつく限り記載してください。 Q1 あなたは,ふだんどのくらい体を動かしていますか?ちょっとした体を動かす活動から,激しい運動ま で,体を動かしていると思われる活動を教えてください Q2 あなたのふだんの活動(運動)状況は,あなたの健康にどのような影響があると思いますか? Q3 (自分はあまり体を動かしていないと思う人は)体を動かしていない事をどのような事から感じますか? (自分は体を動かしていると思う人は)体を動かしている事をどのような事から感じますか? 自分は体を動かして(いる・いない)←当てはまる方を○で囲んでください Q4 今のままの活動(運動)状況でいることの良い点は何ですか? Q5 今のままの活動(運動)状況でいることの悪い点は何ですか? Q6 「体を動かす」ことに関して,この先どのように変えていきたいと思いますか? 図4-2 テキストによるオープンクエスチョン・シート 100 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 対象者 38名 応募者 21名 運動行動の 変容ステージ調査 除外者 (準備~維持ステージ者) 10名 採用者 (前熟考・熟考ステージ者) 11名 会話群 5名 テキスト群 6名 pre 測定 pre 測定 個別面接介入 テキスト介入 post 測定 post 測定 図4-3 研究4の流れ 101 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 坂 野 ・ 東 條 ( 1986 ) が 作 成 し た GS E S を 用 い た . ④ 運 動 SE 岡 ( 2003 ) が 作 成 し た 運 動 S E 尺 度 を 用 い た . 5) 分 析 方 法 ベ ー ス ラ イ ン 期 の SE 得 点 の 差 , お よ び SE 得 点 の 変 化 量 の 差 の 検 定 に は , M ann -W hit ne y の U 検 定 を 用 い た . な お , 統 計 学 的 有 意 水 準 は 5 % に 設 定 し , 分 析 に は ア プ リ ケ ー シ ョ ン ソ フ ト S P SS 17.0J for wi ndows を 利 用 し た . 3. 結 果 1) 対 象 者 の 属 性 対 象 者 の 属 性 を 表 4 -8 に 示 し た . 会 話 群 の 年 齢 ( 中 央 値 ) は 21 歳 ( 1 9 -35 歳 ), テ キ ス ト 群 の 年 齢 は 20.5( 18-28 歳 ) と な っ た . ま た,高校時の部活動の所属は,会話群は,3 名が運動系,2 名が文 科系および無所属であった.一方,テキスト群は,3 名が運動系, 3 名 が 文 化 系 お よ び 無 所 属 で あ っ た .各 群 に お け る 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ の 分 布 は 次 の よ う に な っ た .会 話 群 の 前 熟 考 ,熟 考 ス テ ー ジ 者 は ,そ れ ぞ れ 2 名 ,3 名 と な っ た .一 方 ,テ キ ス ト 群 は ,そ れ ぞれ 1 名,5 名となった. 2) ベ ー ス ラ イ ン 期 に お け る SE ベ ー ス ラ イ ン に お い て 2 群 の GS E S 得 点 合 計 , GS ES 下 位 項 目 得 点 , な ら び に 運 動 SE 得 点 の 測 定 を 行 っ た 結 果 , 各 群 の 尺 度 得 点 は 表 4-9 に 示 す 通 り で あ っ た .ベ ー ス ラ イ ン 期 に お け る 2 群 間 の 尺 度 得 点 の 差 を 検 討 し た 結 果 ,す べ て の 尺 度 の 得 点 に お い て ,有 意 な 差 は認められなかった. 102 103 2 文科系および無所属 3 熟考ステージ Me = 中央値,min = 最小値,max = 最大値, n.s. = not significant a Mann-Whitney の U 検定 b カイ二乗検定 2 前熟考ステージ 運動行動の変容ステージ 3 21 (19,35) 5 運動系 高校在学時の部活動 年齢 〔Me ( min ,max )〕 人数 会話群 表4-8 対象の属性および面接結果 5 1 3 3 20.5 (18,28) 6 テキスト群 n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. b b b b a p値 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 表4-9 セルフ・エフィカシー得点の変化 会話OQ群 (N = 5) テキストOQ群 (N = 6) 介入前 6 (1,9) 9.5 (4,12) 介入後 6 (2,10) 9 (4,14) 変化量 1 (-3,2) 0 (-1,2) n.s. 介入前 3 (1,4) 4 (0,6) n.s. 介入後 4 (2,5) 4.5 (0,6) 変化量 1 (-1,1) 0 (0,1) n.s. GSES 失敗に 対する 不安 介入前 2 (0,4) 3 (1,5) n.s. 介入後 2 (0,4) 2.5 (1,5) 変化量 0 (-2,1) 0 (-1,1) n.s. GSES 能力の 社会的 位置づけ 介入前 1 (0,2) 3 (0,4) n.s. 介入後 1 (0,2) 3 (0,4) 変化量 0 (0,0) 0 (-1,0) n.s. 介入前 9 (8,17) 9 (4,12) n.s. 介入後 17 (11,18) 8.5 (4,10) 変化量 3 (0,9) 0 (-3,0) p値 中央値(min , max ) GSES (合計) GSES 行動の 積極性 運動 SE 104 n.s. p <.05 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 3) 介 入 に よ る SE の 変 化 会 話 群 お よ び テ キ ス ト 群 の S E 得 点 の 変 化 量 の 差 を 分 析 し た .そ の 結 果 , 介 入 前 後 の 運 動 SE 得 点 の 変 化 量 に 有 意 な 差 が 認 め ら れ , テキスト群に比して,会話群の変化量が大きいことが示された. 4. 考 察 本 研 究 で は ,研 究 3 に お い て 著 者 ら が 明 ら か に し た 面 接 法 の 特 徴 を よ り 明 確 に す る こ と を 念 頭 に お き ,オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 用 い た 面 接 に お け る 会 話 の 影 響 を 検 討 す る こ と が 目 的 で あ っ た .会 話 に よ り オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 用 い た 群 と ,テ キ ス ト に よ り オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い た 群 の SE 得 点 の 変 化 量 を 比 較 し た と こ ろ , 会 話 群 に お け る 運 動 SE 得 点 は , テ キ ス ト 群 よ り も 有 意 に 大 き な変化量を示した. テ キ ス ト 群 に 比 べ て ,会 話 群 の 運 動 S E 得 点 の 変 化 量 が 有 意 に 大 き い と い う 結 果 を 認 め た 理 由 と し て は ,質 問 手 段 が も た ら す 対 象 者 の 回 答 の 具 体 性 と 網 羅 性 が 関 係 し て い る こ と が 考 え ら れ る .対 面 の 会 話 に よ る オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン は ,対 象 者 の 回 答 の 後 ,面 接 者 が 「( 回 答 は ) 他 に も あ り ま す か 」 と 更 に 質 問 を 投 げ か け , 他 の 回 答 の 可 能 性 に つ い て 考 え さ せ る と い う 特 徴 が あ る .そ し て ,対 象 者 が 「( 回 答 は ) 他 に あ り ま せ ん 」, あ る い は 「( 回 答 は ) そ れ く ら い で す 」な ど の 返 答 を 行 う ま で 面 接 者 は 質 問 を 行 っ て い る .こ れ に 対 し て 質 問 紙( テ キ ス ト )に よ る オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン で は ,面 接 者 に よ り 他 の 回 答 の 可 能 性 を 探 ら れ る こ と が な く ,当 面 想 起 さ れ た 回 答 を 記 入 す る に と ど ま る こ と が 考 え ら れ る .つ ま り ,会 話 に よ る 質 問 の 場 合 に は ,対 象 者 の 考 え を 漏 れ な く 網 羅 し て 抽 出 す る 可 能 性 105 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 が 高 ま り , MI の 効 果 を 導 き や す い と 言 え る . こ れ に よ り , 運 動 行 動 の メ リ ッ ト ,お よ び デ メ リ ッ ト に つ い て 十 分 に 秤 量 す る こ と が で き,一方で面接者は対象者の矛盾を広げやすくなる.また同様に, 上 記 の プ ロ セ ス を 経 る こ と に よ り ,将 来 実 施 す る 身 体 活 動 や 運 動 目 標 の 内 容 に つ い て 具 体 性 を 高 め る こ と も 可 能 と な る .週 当 た り の 頻 度 ,活 動 内 容 の 強 度 ,実 施 場 所 な ど ,詳 細 な 内 容 を 考 え る 過 程 に お いて,実行可能性の高い目標行動に絞り込まれ,これにより運動 SE が 増 加 し た と 考 え ら れ る . 本 研 究 に お い て は ,質 問 紙 に よ る オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン よ り も , 会 話 に よ る オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 用 い る こ と が 運 動・身 体 活 動 に 関 す る 具 体 的 な 会 話 を 引 き 出 し ,結 果 的 に 運 動 S E の 変 化 量 が 会 話 群 に お い て 有 意 に 高 ま っ た .運 動 や 身 体 活 動 の 目 標 内 容 を 具 体 的 に 設 定 す る こ と は ,目 標 行 動 の 達 成・未 達 成 の 評 価 が 行 い や す い と い う こ と ,ま た 特 に ,ス ポ ー ツ に 関 し て は 対 象 者 の パ フ ォ ー マ ン ス が 高 ま る と い う こ と が こ れ ま で 指 摘 さ れ て き た .し か し な が ら ,本 研 究 の 結 果 を 考 慮 す る と ,目 標 行 動 の 具 体 性 を 高 め る こ と は ,単 に 目 標 の 達 成 度 が 高 ま る だ け で は な く , SE を 高 め る こ と に 対 し て も 影響があることが示唆された. 最 後 に 本 研 究 の 限 界 点 に つ い て 述 べ る .本 研 究 は ,研 究 3 と 同 様 に ,面 接 の 内 容 を 実 験 的 に 統 制 し た た め ,現 実 的 な 面 接 内 容 と は 異 な る 面 接 を 実 施 し て い る .こ れ に よ り ,対 象 者 と 面 接 者 の 相 互 作 用 が 失 わ れ て い る 可 能 性 が あ る .ま た ,サ ン プ ル サ イ ズ が 極 め て 小 さ い と い う こ と か ら ,研 究 結 果 を 一 般 化 す る こ と は で き な い .し か し な が ら ,会 話 に よ り オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い る 質 問 は ,運 動 行 動 に 関 し て 対 象 者 に 十 分 考 え さ せ る と い う 行 為 を 促 し ,普 段 あ ま 106 第 4 章 行動変容を意図した発話と SE の関連 り 運 動 の こ と を 考 え る こ と の な い ,運 動 行 動 に 関 す る 前 熟 考 お よ び 熟考ステージ者に対して特に有効であると考えられる. 第 4 節 本章のまとめ 本 章 で は , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク が SE に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し , SE に 対 す る 質 問 様 式( オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン &ク ロ ー ズ ド ・ ク エ ス チ ョ ン )の 影 響 を 検 討 す る こ と が 目 的 で あ っ た .ま た ,会 話 に よ る 質 問 が , SE に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 し , 身 体 活 動 量 の 増 強 を 目 的 と し た 対 面 式 面 接 が 備 え る 要 素 の 特 徴 , な ら び に , MI が 心 理 的 変容を導くメカニズムの解明を目的とした. 本 章 の 結 果 は ,身 体 活 動・運 動 量 の 増 強 を 目 的 と し た 面 接 を 実 施 す る 場 合 に は ,で き る だ け オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 用 い た 対 面 式 面 接 が 効 果 的 で あ る こ と を 示 し た .す な わ ち ,面 接 者 の 役 割 は ,従 来 の よ う に ,指 導 に 必 要 な 情 報 を 集 め る た め に 質 問( 問 診 )を 行 い , 収集した情報を基にして効果的なアドバイスを行うだけではない. こ れ か ら は , 対 象 者 の 気 づ き を 高 め る た め に ,“ 意 図 的 に ” オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 用 い ,対 象 者 の 自 発 的 な 行 動 変 容 を 引 き 出 す こ とが求められる. 107 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 第 5章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検 討 第 1 節 本章の目的 B-M I に 限 ら ず , M I, な ら び に 5A な ど の 面 接 に お い て も , 目 標 設定の方法については詳細に検討されていないことがわかってい る .し か し な が ら ,ど の 面 接 方 略 に お い て も ,最 終 的 に は 目 標 設 定 を 行 い ,そ の 後 目 標 行 動 の 遂 行 度 を 追 跡 し て い く こ と が 一 般 的 で あ る .そ の た め ,対 象 者 中 心 の 面 接 に お け る ,目 標 設 定 に 関 す る 議 論 を行う必要がある.特に,これまでの目標設定に関する議論では, 目 標 実 施 者 で は な く ,専 門 家 側 の 視 点 か ら 目 標 の 遂 行 度 と 目 標 内 容 の 関 連 に つ い て 検 討 さ れ て お り ,実 施 者 の 視 点 か ら の 検 討 が そ れ ほ ど 行 わ れ て こ な か っ た .例 え ば ,目 標 行 動 の 遂 行 に 関 し て は ,よ り 目 標 実 施 に 対 す る SE が 高 い 目 標 が 好 ま し い と い う こ と が 指 摘 さ れ て い る が , 実 際 の 自 分 の 能 力 を 超 え る よ う な SE を も つ 者 は , 課 題 達成能力の過大評価を通して困難な状況を招くことも知られてお り ,対 象 者 の 視 点 か ら の 目 標 設 定 の 方 法 と 実 際 の 遂 行 度 の 関 連 性 に ついて検討が必要である. そ こ で ,第 2 節( 研 究 5)で は ,日 常 生 活 に お い て 容 易 に 実 施 可 能なウォーキングに関する複数の目標を提示するという状況にお い て , 目 標 を 選 択 /実 行 す る 者 の 心 理 的 側 面 に 焦 点 を 当 て , 目 標 設 定に関する思考プロセスおよび実施しやすい目標の特徴を明らか に す る こ と が 目 的 で あ る .な お ,本 研 究 で は 目 標 選 択 に お け る 選 好 構 造 を 把 握 す る た め に ,コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 を 用 い た .コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 は ,計 量 心 理 学 や マ ー ケ テ ィ ン グ リ サ ー チ の 分 野 で 誕 生 し 108 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 た 「 コ ン ジ ョ イ ン ト 測 定 法 ( conj oi nt m easurem ent )」 の 理 論 を 用 い て ,対 象 と な る 概 念 お よ び 物 を 構 成 す る 要 因 の 重 要 度 を 測 定 す る 手 法 で あ る( Luc e & Tuke y, 1964 ).人 は 任 意 の 行 動 選 択 場 面 に お い て , 選 択 に 影 響 を 与 え る 要 因 を 独 立 に 評 価 す る の で は な く ,複 数 の 要 因 を 同 時 に 評 価 し て 判 断 し て お り ,こ の よ う な 現 実 的 な 思 考 過 程 を 反 映 し た 分 析 が コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 で あ る .従 来 の ニ ー ズ 調 査 で は 人 の 思 考 に 影 響 を 与 え る 要 因 を 独 立 に 評 価 し て い る た め ,要 因 間 の 重 要 性 ,あ る い は 優 先 度 の 程 度 を 把 握 す る こ と が で き な か っ た .ま た , 複数の要因の組み合わせをそれぞれに評価することは現実的に困 難 で あ る と い う 問 題 が あ る .そ れ に 対 し て コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 で は , 最小限の組合せを用いた検討により上記の問題を解決することが できるという特徴を有している. 第 2 節 ウ ォ ー キ ン グ 目 標 の 内 容 と 目 標 達 成 度 の 関 連 ( 研 究 5) 1. 目 的 本 研 究 の 目 的 は ,ウ ォ ー キ ン グ に 関 す る 複 数 の 目 標 の 選 択 肢 を 提 示 す る 状 況 に お い て ,目 標 設 定 に 関 す る 思 考 プ ロ セ ス お よ び 実 施 し やすい目標の特徴を明らかにすることである. 2. 方 法 予備調査(コンジョイントカードの作成) 本 調 査 に 先 立 ち ,コ ン ジ ョ イ ン ト カ ー ド に 用 い る ウ ォ ー キ ン グ 目 標 の 属 性 と 水 準 の 項 目 探 索 の た め ,質 問 紙 に よ る 項 目 の 収 集 を 行 っ た .コ ン ジ ョ イ ン ト カ ー ド と は ,考 え う る 各 要 因 に お け る 水 準 の 組 109 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 合せを必要最小限に絞り込み,カード形式で表したものである. 看 護 専 門 学 校 教 員 1 名 ,看 護 師・保 健 師 の 資 格 を 有 し 健 康 心 理 学 を 専 門 と す る 大 学 院 生 1 名 ,な ら び に 健 康 心 理 学 を 専 門 と す る 大 学 院 生 2 名( 男 性 2 名・女 性 2 名 ,平 均 年 齢 27.8 ±2.87 歳 )に 対 し て , 「学生に提示するウォーキング目標としてどのような項目を入れ る 必 要 が あ る と 思 い ま す か 」と 質 問 し ,自 由 記 述 に よ る 回 答 を 求 め た . そ の 結 果 ,「 歩 行 距 離 ( 2 )」,「 場 所 ( 3 )」,「 誰 と ( 2 )」,「 い つ ( 3 )」, 「 歩 数 目 標( 3 )」, 「 歩 行 時 間( 2 )」に 関 す る 項 目 が 挙 げ ら れ た ( カ ッ コ 内 は 回 答 数 ). コ ン ジ ョ イ ン ト カ ー ド の 属 性 と 水 準 の 決 定 に 際 し て は ,自 由 記 述 で 得 ら れ た 回 答 を も と に 著 者 ら に よ る 合 議 を 行 っ た .そ の 結 果 ,回 答 数 が 3 票 で あ る「 場 所 」 「いつ」 「 歩 数 目 標 」に 関 す る 項 目 を コ ン ジ ョ イ ン ト カ ー ド の 属 性 と し て 決 定 し た . た だ し ,「 い つ 」 に 関 し て は ,帰 宅 後 や 通 学 中 等 と い っ た“ 場 面 ”と い う 解 釈 と ,一 週 間 の う ち 何 曜 日( あ る い は 何 日 )で あ る か と い う“ 頻 度 ”の 解 釈 が 考 え ら れ る .本 研 究 で は ,ど ち ら も 重 要 で あ る と 考 え ,場 面 を「 い つ 」, 頻 度 を 「 ど の く ら い 」 と い う 項 目 に 置 き 換 え , 最 終 的 に 「 場 所 」「 頻 度 」「 い つ ( 場 面 ) 」 「歩 数 」 と い う 4 つ の 属 性 を 設 定 し た . 続 い て , 各 属 性 の 水 準 は 次 の よ う に 設 定 し た .「 場 所 」 は , 対 象 者 に よ っ て 様 々 な 場 所 を 想 起 す る こ と が 考 え ら れ ,コ ン ジ ョ イ ン ト カードにおいて場所を限定することにより対象者が望む場所が選 択 肢 か ら 除 外 さ れ る 可 能 性 を 考 慮 し ,歩 く 場 所 を「 決 め て お く 」お よ び「 特 定 し な い 」の 2 水 準 と し た . 「 歩 数 」は ,平 成 1 8 年 度 国 民 健 康・栄 養 調 査 の 1 日 の 歩 行 数 の 分 布 を 参 考 と し て 作 成 し た( 厚 生 労 働 省 ,2008 ).20 ~ 29 歳 の 男 女 が も っ と も 多 く 属 し て い た 階 級 が 110 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 「 1 0 0 00 歩 以 上( 男 31.5% ,女 24.3% )」で あ る こ と か ら 目 標 歩 数 と し て「 1 0000 歩 」を 採 用 し ,10000 歩 に 次 い で 多 く 属 し て い た「 6000 ~ 7 9 9 9( 男 19 % , 女 22.3% )」 を 参 考 に 「 7000 歩 」 を 2 つ 目 の 目 標 と し た . 選 択 肢 の バ ラ ン ス を 考 え , 7 000 歩 と 10000 歩 の 間 隔 を 参 考 に 3 つ 目 の 目 標 を 「 1300 0 歩 」 に 設 定 し た . 以 上 よ り , 歩 数 目 標 は 「 7 0 00 歩 」,「 10000 歩 」,「 13000 歩 」 の 3 水 準 と し た .「 ど の く ら い ( 頻 度 )」 に つ い て は , 水 準 数 を 4 つ 以 下 に す る こ と が 望 ま し い と い う こ と ( 岡 本 , 1999 ), な ら び に 等 間 隔 か つ 回 答 し や す い 頻 度 と い う こ と を 考 慮 し ,「 毎 日 」,「 4 ・ 5 日 / 週 」,「 1 ・ 2 日 / 週 」 の 3 水 準 と し た .「 い つ ( 場 面 )」 に つ い て は ,「 場 所 」 の 水 準 と 同 様 の 判 断 を 行 い ,「“ 帰 宅 後 ”“ 通 学 ” な ど , 決 め る 」 お よ び 「 特 定 し な い」の 2 水準に設定した. 本 研 究 に お い て は ,実 施 し や す い と 評 価 さ れ る 詳 細 な 目 標 項 目 の 特 定 が 目 的 で は な く ,目 標 設 定 時 に お け る 項 目 選 考 の 傾 向 を 把 握 す る こ と が 目 的 で あ る .し た が っ て ,簡 易 的 な 目 標 項 目 を 用 い た 上 記 の 属 性 と 水 準 に 基 づ き , S PS S C onj oi nt を 用 い て 直 交 計 画 を 行 い , 11 種 類 の カ ー ド を 作 成 し た . カ ー ド に 記 載 さ れ た 目 標 の 組 み 合 わ せ を 表 5 -1 に 示 し た .11 種 類 の う ち ,2 枚 が ホ ー ル ド ア ウ ト カ ー ド と な っ て い る .ホ ー ル ド ア ウ ト カ ー ド は ,コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 に よ る部分効用値の推定における信頼性の検証に用いる. 本調査 1) 調 査 対 象 者 お よ び 倫 理 的 配 慮 に つ い て A 看 護 専 門 学 校 の 保 健 体 育 履 修 者 で あ る 1 年 生 36 名( 男 性 5 名 , 女 性 3 1 名 ,平 均 年 齢 22.63 ±5.26 歳 )を 対 象 に ,保 健 体 育 の 授 業 後 111 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 表5-1 コンジョイントカードの組み合わせ カードNo 歩く場所 頻度 いつ(場面) 歩数目標 1 特定しない 毎日 ”帰宅後””通学”など, 決める 7000歩 2 特定しない 1・2日/週 特定しない 10000歩 3 決めておく 毎日 特定しない 10000歩 4 特定しない 4・5日/週 特定しない 13000歩 5 決めておく 1・2日/週 ”帰宅後””通学”など, 決める 13000歩 6 決めておく 4・5日/週 特定しない 7000歩 7 特定しない 4・5日/週 ”帰宅後””通学”など, 決める 10000歩 8 特定しない 毎日 特定しない 13000歩 9 特定しない 1・2日/週 特定しない 7000歩 10 特定しない 毎日 ”帰宅後””通学”など, 決める 13000歩 11 特定しない 4・5日/週 ”帰宅後””通学”など, 決める 13000歩 112 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 の時間を利用して調査対象者の募集を行った.倫理的配慮として, 調 査 へ の 参 加 は 自 由 意 志 で あ る こ と ,デ ー タ は 統 計 的 に 処 理 さ れ 個 人 情 報 は 保 護 さ れ る こ と ,調 査 期 間 中 の 中 途 辞 退 が 可 能 で あ る こ と , さらに調査への参加ならびに調査結果は成績と関連がないことを 調査実施前に口頭および紙面により説明を行った. 2) 手 続 き 対 象 者 に は ,調 査 に 関 す る 説 明 を 行 っ た 後 ,下 記 の 質 問 紙 へ の 回 答 を 求 め た . そ の 後 , 目 標 が 記 載 さ れ た 11 枚 の コ ン ジ ョ イ ン ト カ ー ド を 並 び か え て も ら い ,最 も 実 施 し や す い カ ー ド の 内 容 を 4 週 間 実 施 す る 目 標 と し て 決 定 し て も ら っ た .目 標 決 定 の 翌 日 か ら , 4 週 間にわたる歩数計の装着,ならびに選択した目標の実行を促した. 3) 調 査 内 容 ①対象者の属性 年齢,性別について質問した. ②運動行動の変容ステージ Oka et al ( 2000 ) に よ る 運 動 行 動 変 容 ス テ ー ジ 尺 度 を 用 い た . ③1 ヵ月間実施するウォーキング目標 対 象 者 に 対 し て 「『 自 分 の 健 康 増 進 を 目 的 と し た ウ ォ ー キ ン グ 』 の 実 施 に あ た り ,ど の よ う な 内 容 の 目 標 が 実 施 し や す い と 思 い ま す か . 質 問 者 か ら 配 ら れ る 11 枚 の カ ー ド に 書 か れ た 目 標 の 組 み 合 わ せ を 見 て ,あ な た が ウ ォ ー キ ン グ を 実 施 す る 際 に『 達 成 し や す い と 思 う 目 標 』 を 1 位 か ら 11 位 ま で 順 番 に 並 べ て く だ さ い 」 と い う 教 示 文 を 示 し , 11 枚 の カ ー ド を 渡 し 回 答 を 求 め た . さ ら に 対 象 者 に は ,最 も 実 施 し や す い 目 標 と し て 選 択 し た カ ー ド に 記 載 さ れ た 内 容 を ,4 週 間 実 施 す る こ と を 求 め た .設 定 し た 歩 数 以 上 歩 く 日 が ,目 113 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 標頻度を超えることにより,目標が達成されることを説明した. ④目標達成度 歩 数 計 を 装 着 し た 4 週 間 の う ち ,対 象 者 が 設 定 し た 目 標 を 何 週 間 達 成 で き た の か を 歩 数 計 の 測 定 値 か ら 算 出 し て 達 成 度 と し た( 4 週 間 目 標 達 成 = 達 成 度 100 % ; 3 週 間 目 標 達 成 = 達 成 度 75 % ; 2 週 間 目 標 達 成 = 達 成 度 50 % ; 1 週 間 目 標 達 成 = 達 成 度 25% ; 目 標 達 成 し た 週 な し = 達 成 度 0% ).「 頻 度 : 1 ・ 2 日 / 週 」 を 選 ん だ 場 合 は 1 日 ,「 頻 度 : 4 ・ 5 日 / 週 」 を 選 ん だ 場 合 は 4 日 を 超 え て い れ ば , 頻 度 に 関 す る 目 標 を 達 成 し た と 評 価 し た .ま た ,75% 以 上 の 目 標 達 成 した者を目標達成者と定義した. 4) 分 析 方 法 ウ ォ ー キ ン グ 目 標 の 選 択 プ ロ セ ス を 明 ら か に す る た め に ,コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 を 適 用 し て ,部 分 効 用 値 お よ び 各 属 性 の 重 要 度 を 求 め た .運 動 を 行 っ て い な い 前 熟 考 ス テ ー ジ 者 と 熟 考 ス テ ー ジ 者 か ら 構 成 さ れ た 「 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 」 と 不 定 期 だ が 運 動 を 行 っ て い る「 準 備 ス テ ー ジ 群 」と い う 群 ご と に 分 析 を 行 っ た .部 分 効 用 値 の 推定には,最小二乗法を用い,コンジョイントモデルの適合性は, 回答者の評価値とモデルによる推定値との相関分析により評価し た .ま た ,選 択 し た 目 標 項 目 別 の 目 標 達 成 度 の 関 連 を 検 討 す る た め に , 最 も 好 ま れ た 「 頻 度 」「 歩 数 」 に 関 す る 項 目 を と も に 含 ん だ 目 標 の 選 択 者 と そ れ 以 外 の 目 標 選 択 者 に 分 類 し ,Fi sher の 直 接 確 率 検 定 を 用 い て 目 標 達 成 度 の 差 異 を 検 討 し た .な お ,統 計 学 的 有 意 水 準 は 5 % に 設 定 し た .分 析 に は ア プ リ ケ ー シ ョ ン ソ フ ト S P SS 17.0J for wi ndows を 用 い た . 114 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 3. 結 果 1) 運 動 実 施 に 関 す る 行 動 変 容 ス テ ー ジ 調 査 に 応 募 し た 35 名 の う ち , 各 ス テ ー ジ に 属 す る 人 数 は , 前 熟 考 ス テ ー ジ 9 名 ( 男 性 : 2 名 ), 熟 考 ス テ ー ジ 9 名 ( 1 名 ), 準 備 ス テ ー ジ 16 名 ( 2 名 ), 実 行 ス テ ー ジ 0 名 , 維 持 ス テ ー ジ 1 名 と な っ た .定 期 的 な 運 動 習 慣 の な い 者 を 対 象 と す る た め ,維 持 ス テ ー ジ に 属 す る 1 名 を 除 外 し ,さ ら に 対 象 者 全 体 に 占 め る 男 性 の 割 合 が 低 く 性 別 に 偏 り が 生 じ る た め ,男 性 5 名 を 分 析 か ら 除 外 し た .そ の 結 果 , 前 熟 考 / 熟 考 ス テ ー ジ 群 は 15 名 ,準 備 ス テ ー ジ 群 は 14 名 と な っ た . 2) コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 に お け る 重 要 度 と 部 分 効 用 値 コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 の 結 果 を 図 5- 1 お よ び 図 5 -2 に 示 し た .前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 に 関 す る 目 標 項 目 の 各 重 要 度 は , 歩 数 が 最 も 高 く ,場 所 ,頻 度 ,場 面 と 続 い た .ま た ,各 属 性 に お け る 水 準 の 好 ま し さ を 示 す 部 分 効 用 値 は , 場 所 「決 め て お く ( -0.47 ) 」「 特 定 し な い ( 0 . 4 7 )」 ,頻 度 「 1・2 日 / 週( 2.43 )」「 4・5 日 / 週( 1.62 )」「 毎 日( 0.81 )」 , 場 面「“ 帰 宅 後 ” “ 通 学 ”な ど ,決 め る( 0 .07 )」 「 特 定 し な い( -0.07 )」, 歩 数 「 7 000 歩 ( 2.63 ) 」「 10000 歩 ( 1.76 ) 」「 13000 歩 ( 0 .88 ) 」 と な った. 準 備 ス テ ー ジ 群 に 関 す る 目 標 項 目 の 各 重 要 度 は , 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 と 異 な り 場 所 が 最 も 高 く ,頻 度 ,歩 数 ,場 面 と 続 い た .部 分 効 用 値 は , 場 所 「 決 め て お く ( 1.25 ) 」「 特 定 し な い ( - 1.25 ) 」 , 頻 度 「1 ・ 2 日 / 週 ( 1.0 0 ) 」「 4 ・ 5 日 / 週 ( 0.67 ) 」「毎 日 ( 0.3 3 ) 」 , 場 面 「“ 帰 宅 後 ”“ 通 学 ” な ど , 決 め る ( 1 .75 )」「 特 定 し な い ( -1.75 )」, 歩 数 「 7 000 歩 ( 4.00 ) 」「 10000 歩 ( 2.67 ) 」「 13000 歩 ( 1 .33 ) 」 で あ った. 115 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 属性 (カッコ内は重要度) 場所(24.6%) 水準 決めておく 特定しない 1・2日/週 頻度(24.1%) 4・5日/週 毎日 場面(16.5%) 決めておく 特定しない 7000 歩数(34.8%) 10000 13000 -2 -1 0 1 2 3 4 部分効用値 図5-1 前熟考 / 熟考ステージ群のコンジョイント分析結果 116 5 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 属性 (カッコ内は重要度) 場所(35.1%) 水準 決めておく 特定しない 1・2日/週 頻度(27.6%) 4・5日/週 毎日 場面(10.6%) 決めておく 特定しない 7000 歩数(26.7%) 10000 13000 -2 -1 0 1 2 3 部分効用値 図5-2 準備ステージ群のコンジョイント分析結果 117 4 5 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 ま た ,回 答 者 の 評 価 値 と コ ン ジ ョ イ ン ト モ デ ル に よ る 推 定 値 と の 相 関 分 析 の 結 果 ,前 熟 考 / 熟 考 ス テ ー ジ 群 に 関 す る P eas on の 相 関 係 数 は 0 . 99( p < .001 ), K endal l の 順 位 相 関 係 数 は 0.83( p = .001 ) と な り ,準 備 ス テ ー ジ 群 に 関 す る P eason の 相 関 係 数 は 0.98( p = .001 ), Kendal l の 順 位 相 関 係 数 は 0.89( p = .0 03 ) と な っ た . 3) 目 標 項 目 の 違 い に よ る 目 標 達 成 度 の 比 較 コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 の 結 果 , 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 , お よ び 準 備 ス テ ー ジ 群 と も に「 場 面 」の 重 要 度 が 低 く ,難 易 度 に 関 し て は「 歩 数 7 0 0 0 歩 」「 頻 度 1・ 2 日 / 週 」に 関 す る 効 用 値 が 高 い こ と が わ か っ た .こ れ ら の 結 果 お よ び 歩 数 計 に よ る 目 標 達 成 度 の 測 定 可 能 性 を 考 慮 し , 目 標 項 目 に 「 歩 数 70 00 歩 」「 頻 度 1・ 2 日 / 週 」 が と も に 含 ま れ て い る 目 標 の 選 択 者 ( fe asi bl e goa l 群 ) と そ れ 以 外 の 目 標 選 択 者 ( 対 照 群 )と の 間 で 達 成 度 を 比 較 し た .各 ス テ ー ジ に お け る そ れ ぞ れ の 目 標 選 択 者 の 目 標 達 成 度 を 表 5- 2 お よ び 表 5 -3 に 示 し た .前 熟 考 / 熟 考 ス テ ー ジ 群 に お い て ,「 歩 数 7 000 歩 」「 頻 度 1・ 2 日 / 週 」 を と も に 含 む 目 標 を 選 択 し た 8 名 の う ち ,目 標 達 成 者 は 5 名 ,未 達 成 者 は 3 名 で あ っ た .一 方 ,上 記 2 項 目 両 方 を 含 ま な い 目 標 を 選 択 し た 7 名 の う ち ,目 標 達 成 者 は 0 名 ,未 達 成 者 は 7 名 と な っ た .準 備 ス テ ー ジ 群 に お い て は ,「 歩 数 7000 歩 」「 頻 度 1 ・ 2 日 / 週 」 を 含 む 目 標 を 選 択 し た 7 名 の う ち ,目 標 達 成 者 は 5 名 ,未 達 成 者 は 2 名 と な っ た .ま た ,上 記 2 項 目 両 方 を 含 ま な い 目 標 の 選 択 者 6 名 の う ち , 目標達成者は 0 名,未達成者は 6 名であった. 選択した目標項目の違いによる目標達成度を比較するために, Fi s her の 直 接 確 率 検 定 を 行 っ た . そ の 結 果 , 前 熟 考 / 熟 考 ス テ ー ジ 群 , な ら び に 準 備 ス テ ー ジ 群 と も に 「 歩 数 7000 歩 」「 頻 度 1・ 2 日 / 118 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 表5-2 前熟考/熟考ステージ者の目標ごとの達成度 達成 未達成 feasible goal 群 (7000 歩,1・2日/週) 5 3 対照群 0 7 119 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 表5-3 準備ステージ者の目標ごとの達成度 達成 未達成 feasible goal 群 (7000 歩,1・2日/週) 5 2 対象群 0 6 120 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 週 」と い う 2 項 目 同 時 選 択 の 有 無 に よ り ,目 標 達 成 度 に 差 が あ る こ と が 示 さ れ た( 前 熟 考 / 熟 考 ス テ ー ジ 群:p = .026 ,準 備 ス テ ー ジ 群 : p = .021 ). 4. 考 察 本 研 究 の 目 的 は ,看 護 学 生 の 目 標 設 定 プ ロ セ ス と 実 施 し や す い 目 標 の 特 徴 を 明 ら か に す る こ と で あ っ た .分 析 の 結 果 ,運 動 行 動 を 行 っ て い な い 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 は , 具 体 的 な 歩 行 場 所 を 特 定 せ ず,難易度に関連した歩数を最も重要視していることがわかった. 一 方 ,不 定 期 に 運 動 を 行 っ て い る 準 備 ス テ ー ジ 群 は ,歩 行 場 所 を 最 も重要視しており,歩く場所や場面の特定を重視していた.また, 両 群 と も 難 易 度 が 低 い レ ベ ル の 目 標 を 好 む こ と が 示 さ れ ,実 施 し や すいと評価した目標は高い達成度を導く可能性が示唆された. コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 の 信 頼 性 に 関 し て は ,両 群 そ れ ぞ れ に お い て peas on の 相 関 係 数 お よ び kendal l の 順 位 相 関 係 数 に 高 い 相 関 が 認 め ら れ ,統 計 的 な 信 頼 性 は 確 保 さ れ て い る と 考 え ら れ る .調 査 対 象 者 は 前 熟 考 / 熟 考 ス テ ー ジ 群 1 5 名 , 準 備 ス テ ー ジ 群 14 名 と サ ン プ ル サ イ ズ が 小 さ い も の の , 価 値 観 が 類 似 し て い る 場 合 , 20 程 度 の サ ン プ ル サ イ ズ で 分 析 可 能 で あ る こ と や ,対 象 者 の 特 徴 を 調 整 し な い 場 合 で あ っ て も 40 程 度 の サ ン プ ル サ イ ズ で 信 頼 性 が 確 保 さ れ る こ と が 示 さ れ て い る ( 服 部 , 200 5 ). ま た , コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 は 個 人 レ ベ ル で 実 行 さ れ て き た 分 析 法 で あ り ( Gr een & S ri ni vasan, 1 9 9 0), 分 析 に お い て サ ン プ ル サ イ ズ が 小 さ い こ と が 問 題 に は な ら な い こ と が 指 摘 さ れ て い る( Aut y, 1995 ).本 研 究 で は ,看 護 学 生 と い う 将 来 に 向 け た 同 一 の 目 標 を 有 す る 同 年 代 を 対 象 と し ,運 動 行 動 121 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 の 実 施 に 対 す る 心 の 準 備 性 ( 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ ), な ら び に 学年,性別を絞り込むことによって特徴を調整していることから, 小標本での分析が可能であると判断した. 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 や 準 備 ス テ ー ジ 群 が , 頻 度 や 歩 数 に 関 し てより難易度の低い目標を実施しやすいと評価した理由について は 次 の こ と が 考 え ら れ る . 運 動 を 実 施 し て い な い 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 は ,運 動 を 行 う こ と に 無 関 心 ,あ る い は 6 ヵ 月 以 上 先 に 実 施 す る と い う 考 え を 有 し ,こ れ ま で 何 ら か の 理 由 に よ り 定 期 的 な 運 動 を 実 施 し て い な い .し た が っ て ,難 易 度 が 低 い レ ベ ル の 目 標 と は い え , そ の よ う な 者 が 新 た に ウ ォ ー キ ン グ 目 標 を 選 択 /遂 行 す る こ と に は ,心 理 的 に 大 き な 負 担 が 加 わ っ て い る こ と が 考 え ら れ る .ま た , 準 備 ス テ ー ジ 群 は 不 定 期 に 運 動 を 行 っ て は い る も の の ,定 期 的 に ウ ォ ー キ ン グ 目 標 を 遂 行 す る こ と に 対 し て は ,4 週 間 と い う 短 期 間 で あ れ 負 担 を 感 じ る 可 能 性 が 考 え ら れ る .以 上 よ り ,両 群 の 対 象 者 が 難 易 度 の 低 い 目 標 を 選 択 す る 理 由 と し て ,定 期 的 な 運 動 を 行 っ て い ないことに起因した心理的負担の影響が考えられる. M arcus & Owen ( 1 992 ) の 研 究 で は , 身 体 活 動 の 実 施 に 関 し て 前 熟 考 ,熟 考 ス テ ー ジ 者 は ,身 体 活 動 を 行 う こ と に よ っ て 得 ら れ る 恩 恵 感 よ り も 負 担 感 の 方 が 大 き く 知 覚 さ れ ,ス テ ー ジ が 上 が る に つ れ て 2 つの知覚が入れ替わることを報告している.また,松本ら ( 2 0 0 7)は ,女 子 大 学 生 300 名 を 対 象 に 変 容 ス テ ー ジ 移 行 の 関 連 要 因 を 検 討 し た 結 果 ,前 熟 考 ス テ ー ジ 者 の ス テ ー ジ 移 行 に は ,負 担 感 の 軽 減 が 関 連 し て い る こ と を 明 ら か に し た .以 上 の こ と か ら ,前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 が ウ ォ ー キ ン グ を 開 始 す る た め に は , 難 易 度 が 低 く ,よ り 負 担 感 の 尐 な い 目 標 が 適 し て い る と い え る .一 方 ,成 人 122 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 を 対 象 と し た 研 究 か ら は 概 ね 熟 考 ~ 準 備 ス テ ー ジ ,あ る い は 準 備 ~ 実行ステージにおいて恩恵感と負担感の交差が生じることが明ら か に な っ て い る ( 岡 , 2000 ). す な わ ち , 準 備 ス テ ー ジ に お い て も 依 然 と し て 負 担 感 が 恩 恵 感 を 上 回 る こ と が 示 唆 さ れ て お り ,本 研 究 における準備ステージ群も負担感を軽減させるために難易度の低 い内容を選択した可能性が考えられる. 両 群 の 目 標 設 定 プ ロ セ ス に お い て 差 異 が 認 め ら れ た 部 分 は ,ウ ォ ー キ ン グ 場 所 に 関 す る 評 価 で あ っ た . 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 が , ウォーキングの実施に向けて歩行場所や場面に関する項目を設定 し な い 理 由 と し て は ,近 時 の 運 動 実 施 経 験 と 目 標 を 実 施 す る こ と に 対 す る 心 の 準 備 性 の 影 響 が 考 え ら れ る .不 定 期 に 運 動 を 実 施 し て い る 準 備 ス テ ー ジ 群 は , 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 に 比 し て 運 動 実 施 へ の 準 備 性 が 高 く ,具 体 的 な 目 標 の 設 定 へ 移 行 し や す い と い え る .そ れ に 対 し て 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 は , 近 時 の 運 動 機 会 が な い こ と に 加 え ,運 動 実 施 の 準 備 性 が 低 い た め に ,具 体 的 な 目 標 設 定 へ の 意 識 が 低 い 可 能 性 が 考 え ら れ る .岡( 2 000 )は ,人 が 活 動 的 な 行 動 を 採択し,維持する過程をトランスセオレティカル・モデル ( P rochaska & Di C l em ent e, 1983 )の 視 点 を 用 い て ま と め て い る .そ の 中 で は ,熟 考 ス テ ー ジ 者 は ,い つ ・ ど の 程 度 運 動 を 行 う の か と い う 行 動 契 約 を 結 ぶ 等 の 方 略 を 活 用 し ,準 備 ス テ ー ジ 者 は ,で き る だ け 具 体 的 な 内 容 の 目 標( い つ ,誰 と ,ど こ で ,何 を )を 設 定 す る こ とにより変容ステージを進行させていることを示した.すなわち, 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 と 比 べ て , 準 備 ス テ ー ジ 群 が よ り 具 体 的 な 目 標 項 目 を 重 要 と 評 価 す る こ と は ,変 容 ス テ ー ジ が 進 行 す る 過 程 に おいて形成される特徴であるといえよう. 123 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 実 施 し や す い 目 標 と 達 成 度 の 関 連 に つ い て は ,コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 に よ っ て 確 認 さ れ た 実 施 し や す い 目 標 の う ち ,歩 数 計 で 実 施 度 を 確 認 可 能 な 「 頻 度 1・ 2 日 / 週 」「 歩 数 7000 歩 」 を と も に 含 む 目 標 選 択 者 が 高 い 達 成 度 を 示 し た .こ の 2 項 目 は ,実 施 に 対 す る 負 担 感 が 低 い と い う こ と ,な ら び に 難 易 度 が 低 い と い う 特 徴 を も つ .こ れ に よ り ,目 標 に 取 り 組 む 機 会 の 増 加 や 目 標 達 成 度 の 向 上 が 導 か れ ,達 成 度 に 差 が 生 じ た と 考 え る こ と が で き る .こ の 結 果 に よ り ,コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 が 一 般 的 な ニ ー ズ 調 査 と 比 較 し て ,実 現 性 の 高 い 結 果 を 導 く と い う 特 徴( 真 城 ,2001 )が 支 持 さ れ る 結 果 と な っ た .し か し な が ら ,こ の 2 項 目 は と も に 難 易 度 が 低 い 目 標 で あ る た め ,単 に 達 成 が 容 易 で あ っ た と 捉 え る こ と も で き る .そ の た め ,今 後 の 研 究 に お い て ,目 標 項 目 や 難 易 度 の 設 定 を 詳 細 に 行 い ,実 施 し や す さ と 目標達成度の関連を検討する必要がある. 本 研 究 は 女 子 看 護 専 門 学 校 1 年 生 を 対 象 と し て お り ,研 究 結 果 を 一 般 大 学 生 に 適 用 す る 際 に は 十 分 な 配 慮 が 必 要 で あ る .ま た ,健 康 に 関 す る 教 育 を 受 け て き た 3 年 生 と 1 年 生 で は ,健 康 維 持 に 対 す る 考 え 方 が 変 容 し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る た め ,学 年 ご と の 健 康 信 念 に 関 す る 差 異 も 考 慮 す べ き で あ る .そ の た め ,研 究 結 果 の 一 般 化 に 向 け て ,一 般 女 子 大 学 生 や 男 子 大 学 生 と い っ た 異 な る 集 団 を 対 象 と し て 研 究 を 行 う こ と や ,一 般 成 人 を 対 象 と し た 研 究 を 行 う こ と に よ っ て ,そ れ ぞ れ の 特 徴 を 明 ら か に し て い く 必 要 が あ る .こ の よ う な 限 界 は あ る も の の ,尐 な く と も 運 動 習 慣 を 有 し な い 女 子 看 護 学 生 に お い て は ,運 動 の 実 施 に 対 す る 心 の 準 備 性 に よ っ て 目 標 内 容 に 対 す る 評 価 が 異 な る こ と ,ま た 実 施 し や す い と 評 価 さ れ た 項 目 と 目 標 達成度に関連がある可能性が示唆された. 124 第 5 章 健康行動に関する実施しやすい目標についての検討 第 3 節 本章のまとめ 本 章 で は ,看 護 学 生 の 目 標 設 定 プ ロ セ ス と 実 施 し や す い 目 標 の 特 徴 を 明 ら か に す る こ と で あ っ た .分 析 の 結 果 ,運 動 行 動 を 行 っ て い な い 前 熟 考 /熟 考 ス テ ー ジ 群 と 不 定 期 に 運 動 を 行 っ て い る 準 備 ス テ ー ジ 群 に お い て ,目 標 内 容 の 具 体 性 に お い て 差 異 が 認 め ら れ た .ま た ,両 群 と も 難 易 度 が 低 い レ ベ ル の 目 標 が 好 ま れ ,実 施 し や す い と 評価した目標は高い達成度を導く可能性が示唆された. 125 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 第 6章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接 の受け入れ易さ 第 1 節 本章の目的 第 4 章 に お い て は ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い ,身 体 活 動 ・ 運 動 に 関 す る 具 体 的 な 会 話 を 行 う こ と に よ り ,運 動 S E を 高 め る こ と が 示 さ れ た( 藤 澤 ら ,201 0c ).つ づ い て 第 5 章 で は ,特 に 定 期 的 な 運 動 を 実 施 し て い な い 者 に 関 し て は ,難 易 度 が 低 く ,対 象 者 が 実 施しやすいと評価する目標項目が 1 ヵ月間の目標行動の遂行度を 高 め る こ と が 示 唆 さ れ た( 藤 澤 ら ,2 010b ).し か し な が ら ,こ れ ら の 研 究 は ,そ れ ぞ れ 独 立 に 実 施 さ れ て お り , 1 つ の 面 接 と し て 2 つ の要素を同時に用いた効果について検討を行っていない. そ こ で 本 章 で は ,オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン を 中 心 に 構 成 さ れ た 面 接 ,お よ び 目 標 設 定 法 の 要 素 を 適 用 し て 簡 易 面 接 を 実 施 し , 1 ヵ 月 間 の 目 標 達 成 行 動 を 評 価 す る こ と を 目 的 と し た .ま た ,目 標 設 定 法 と 同 様 に ,対 象 者 側 の 視 点 か ら 評 価 し た 面 接 内 容 の 受 け 入 れ や す さ について評価を行うことも目的とした. 第 2 節 身体活動量の増強を意図した面接の効果および受け入れ 易 さ ( 研 究 6) 1. 目 的 青 年 期 女 子 学 生 に 対 し て B-M I に 準 じ た 面 接 を 行 い ,面 接 の 短 期 的な効果および面接内容の受け入れやすさについて評価すること が目的である. 126 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 2. 方 法 1) 対 象 者 と 倫 理 的 配 慮 に つ い て A 看 護 専 門 学 校 に 通 う 女 子 学 生 6 名 に 対 し て B-M I に 準 じ た 面 接 を 実 施 し た .募 集 は ,同 校 保 健 体 育 の 授 業 終 了 後 の 時 間 を 利 用 し て 公 募 し ,研 究 へ の 参 加 は 自 由 意 志 で あ る こ と ,デ ー タ は 統 計 的 に 処 理 さ れ 個 人 情 報 は 保 護 さ れ る こ と ,さ ら に 調 査 へ の 参 加 な ら び に 調 査 結 果 は 成 績 と 関 連 が な い こ と を 口 頭 お よ び 紙 面 で 説 明 し た .本 研 究 の デ ー タ に 音 声 デ ー タ が 含 ま れ る た め ,音 声 デ ー タ に 関 す る 取 り 扱いについても説明を行った. 2) 手 続 き 対 象 者 に 対 し て ,面 接 前 に 質 問 紙 へ の 回 答 を 求 め ,続 い て 対 面 に よ る 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ に 関 す る 質 問 を 行 っ た .運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ が 準 備 ス テ ー ジ ,実 行 ス テ ー ジ ,な ら び に 維 持 ス テ ー ジ に 属 す る 者 を 除 外 し ,運 動 非 実 施 者 で あ る 前 熟 考 ス テ ー ジ ,お よ び 熟 考 ス テ ー ジ に 属 す る 者 を 本 研 究 の 対 象 者 と し た .対 象 者 に は ,研 究 3 と 同 様 の 流 れ に 沿 っ た 面 接 を 受 け て も ら い ,面 接 終 了 後 に 再 度 質 問 紙 へ の 回 答 を 求 め た .ま た ,面 接 最 後 の 段 階 に お い て ,1 ヶ 月 間 実 施 す る 目 標 設 定 を 行 い ,目 標 行 動 の 1 ヶ 月 間 の 実 施 ,な ら び に セルフモニタリングシートに実施の有無に関する記入を求めた.1 ヵ月後セルフモニタリングシートの提出を求めた. 3) 面 接 内 容 面 接 プ ロ セ ス は ,研 究 3 と 同 様 の B- M I の“ 方 略 リ ス ト( The m enu of s t rat e g y)” を 参 考 と し ( R ol lni ck, 1992 ), 表 6 -1 に 示 し た 内 容 を 実施した. 127 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 表6-1 質問内容および面接プロセス The menu of strategies 質問内容 Q1 opening strategy ふだんどのくらい体を動かしていま すか? 日常生活における対象者の身体活動量 あるいは運動量について聞く Q2 opening strategy あなたのふだんの活動(運動)状況 は,あなたの健康にどのような影響 があると思いますか? 対象者が認識する健康と身体活動・運 動との関連について聞く Q3 typical day/session 体を動かしていないこと(運動不 足)をどのように感じますか? 対象者に関する最近の行動の話題を取 り上げる。また,行動変容に向けたレ ディネスを評価する Q4 the good things 今のままの活動(運動)状況でいる ことの良い点は何ですか? 不活動状態にあることに関する対象者 の気持ち・考えを聞く Q5 the less good things 今のままの活動(運動)状況でいる ことの悪い点は何ですか? Q4と同様 Q6 the future & the present + exploring concern 「体を動かす」ことに関して,この 先どのように変えていきたいと思い ますか? 将来なりたい自分について現状との ギャップを引き出しながら質問する。 複数の選択肢を引き出し,現状に即し た行動を見つけるように導く 128 各項目の内容 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 4) 面 接 者 お よ び 面 接 環 境 に つ い て 面 接 者 ,お よ び 面 接 環 境 に つ い て は ,研 究 3 と 同 様 の 条 件 を 準 備 して面接を実施した. 5) 測 定 項 目 ①運動行動の変容ステージ Oka ら ( 2000 ) が 作 成 し た 運 動 行 動 変 容 ス テ ー ジ 尺 度 を 用 い た . ② 一 般 的 な SE 坂 野 ・ 東 條 ( 198 6 ) が 作 成 し た GS ES を 用 い た . ③ 運 動 行 動 に 対 す る SE 岡 ( 2003 ) が 作 成 し た 運 動 S E 尺 度 を 用 い た . ④ チ ェ ン ジ ・ ト ー ク ( C T) チ ェ ン ジ ・ ト ー ク は , Mi l l er & R ol l ni ck ( 2007 ) の 定 義 を 用 い , 面接内容の録音データ(逐語録)の中から抽出した. ⑤面接の質評価 研究 3 と同様に,オープン・クエスチョン割合,および面接者 会話時間割合の 2 項目を用いた. ⑥目標達成度 面 接 で は 1 ヶ 月 間 実 施 す る 目 標 の 設 定 を 求 め ,達 成 度 を 測 定 し た . 原 則 的 に 1 週 間 単 位 で 実 施 す る 目 標 の 立 案 を 求 め ,そ の 達 成 率 を 算 出 し た〔 目 標 達 成 週 数 / 4( 週 間 )×1 00 〕.目 標 達 成 の 判 定 は 対 象 者 自 身 に 委 ね ら れ ,1 ヶ 月 間 は 目 標 達 成 の 有 無 を セ ル フ モ ニ タ リ ン グ シートへ記録してもらった. ⑦面接内容の対象者評価 面 接 内 容 に 関 す る 対 象 者 の 評 価 は ,研 究 者 が 独 自 に 作 成 し た 項 目 を 利 用 し た . 調 査 項 目 と し て は ,「 話 し や す い 雰 囲 気 で 面 接 に 参 加 129 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ す る こ と が で き た 」「 自 分 の こ と に つ い て , 面 接 者 に 聞 い て も ら う こ と が で き た 」「 面 接 に よ っ て 「 体 を 動 か す こ と 」 に 関 す る 何 ら か の 気 付 き を 得 る こ と が で き た 」「 面 接 に よ っ て , 自 分 に 合 っ た 目 標 を 立 て る こ と が で き た 」「 面 接 に よ っ て , 目 標 を 達 成 し よ う と い う 意欲がでた」 「 目 標 達 成 の た め に ,も う 一 度 面 接 を 受 け た い と 思 う 」 の 6 項 目 で あ る . 回 答 は , 質 問 項 目 に 対 し て ,「 ま っ た く あ て は ま ら な い( 1 )」か ら「 非 常 に よ く あ て は ま る( 6 )」の 6 件 法 に よ り 求 め た ( カ ッ コ 内 は 得 点 ). 6) 分 析 方 法 対 象 者 の S E と 面 接 内 容 の 関 連 を 検 討 す る た め に ,S pearm an の 順 位 相 関 係 数 を 求 め た .面 接 前 後 に お け る 対 象 者 の S E の 変 化 に つ い て は , Wil cox on 符 号 付 順 位 検 定 を 用 い て 分 析 を 行 っ た . ま た , 分 析 に は ア プ リ ケ ー シ ョ ン ソ フ ト S P SS 17.0J for wi ndows を 利 用 し た . 一 方 , IC レ コ ー ダ に よ っ て 録 音 し た 会 話 内 容 は , 文 字 起 こ し を 行 い , 特 定 し た C T 数 を 算 出 し た . 会 話 時 間 の 測 定 は , Moti vat i onal Int ervi e wi ng S ki l l C ode の 方 式 に な ら い( Mo yers et al ., 20 03; Am rhei n, 2 0 0 3), 話 者 の 発 話 開 始 か ら 終 了 ま で , あ る い は 発 話 開 始 か ら も う 一方の話者の発話開始までを会話時間として計測した. 3. 結 果 1) 対 象 者 の 属 性 お よ び 簡 易 面 接 結 果 対 象 者 の 属 性 お よ び 面 接 結 果 に つ い て は ,表 6 -2 に 示 し た .対 象 者 の 年 齢 は 29 歳 ( 範 囲 18−37 歳 ) で あ っ た . ま た , 運 動 行 動 の 変 容 ス テ ー ジ は ,対 象 者 全 員 が 前 熟 考 ス テ ー ジ で あ っ た .面 接 時 間 は 1 2 9 0 秒 ( 範 囲 714 - 1669 秒 ) で あ り , そ の う ち 面 接 者 が 全 会 話 時 間 130 1669 1290 (714,1669) 27 29 29 29 18 29 (18,37) 2 3 131 4 5 6 中央値 (min , max ) 1255 1418 1201 1325 714 37 1 面接時間 (秒) 年齢 対象者 No 515 (311,654) 501 529 654 642 391 311 面接者 会話時間(秒) 48 (30.8,56.1) 32.5 48 48 56.1 30.8 50.5 面接者 会話時間 割合(%) 8 (7,12) 12 9 7 8 8 7 チェンジ トーク数 15 (10,26) 10 26 14 17 15 15 オープン クエスチョン数 表6-2 対象者の基本属性および対象者ごとの実施した面接内容の概要 60.4 (53.6,70.8) 62.5 70.3 58.3 70.8 53.6 57.7 オープン クエスチョン の割合(%) 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ に 占 め る 割 合 は 48 % ( 範 囲 30.8 -5 6.1 % ) で あ っ た . ま た , 面 接 に お い て 面 接 者 が 用 い た オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン 数 は 15( 範 囲 10-26 ) で あ り , 対 象 者 が 発 し た チ ェ ン ジ ・ ト ー ク 数 は 8( 範 囲 7 -12 ) で あ っ た .ク ロ ー ズ ド ク エ ス チ ョ ン も 含 め た 全 質 問 に 占 め る オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン の 割 合 は , 60.4% ( 53. 6 - 70.8 % ) で あ っ た . 2) 面 接 お よ び 会 話 内 容 と SE の 関 連 性 に つ い て 面 接 者 の 要 因( 面 接 者 会 話 時 間 ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン 比 ,面 接 者 会 話 時 間 割 合 ),対 象 者 の 要 因( チ ェ ン ジ ・ ト ー ク 数 ),お よ び 対 象 者 の S E( GS E S 得 点 変 化 量 , 運 動 S E 得 点 変 化 量 ) の 相 関 関 係 の 分 析 を 行 っ た .分 析 結 果 は 表 6-3 に 示 し た .面 接 者 会 話 時 間 と 運 動 S E 得 点 の 間 に 有 意 な 負 の 相 関 が 認 め ら れ た ( r = -. 81, p < .05 ). ま た ,チ ェ ン ジ ・ ト ー ク 数 と GS ES 得 点 変 化 量 に 相 関 の 傾 向 が 認 め ら れ た ( r = .78, p < .10 ). 3) 簡 易 面 接 に よ る SE の 変 化 に つ い て 面 接 前 後 の S E 得 点 の 差 を 図 6 -1 に 示 し た . 運 動 S E 得 点 ( 中 央 値 ) は 面 接 後 に 8 か ら 10.5 に 増 加 し , 面 接 前 後 の 得 点 に 有 意 な 差 が 認 め ら れ た( p < .05 ).GS ES 得 点( 中 央 値 )は 6 か ら 7 へ と 増 加 し , 面 接 前 後 の 得 点 に 有 意 な 差 の 傾 向 を 認 め た ( p < 0.1). 4) 面 接 後 の 目 標 達 成 度 に つ い て 対 象 者 6 名 に は ,面 接 中 に 身 体 活 動 量 の 増 加 を 目 的 と し た 目 標 設 定 ,お よ び 面 接 翌 日 か ら 目 標 達 成 に 関 す る 1 ヵ 月 間 の セ ル フ モ ニ タ リ ン グ を 求 め た . そ の 結 果 , 1 名 は 目 標 達 成 率 が 25 % ( 4 週 間 の う ち 1 週 間 の み 目 標 達 成 )で あ っ た も の の ,残 り 5 名 の 目 標 達 成 率 は 1 0 0% で あ っ た . 132 133 .60 .26 2.オープン・クエスチョン比 3.面接者会話時間割合 † -.51 -.81* 5.GSES変化量 6.運動SE変化量 p <.10, *p <.05 -.03 4.チェンジ・トーク数 対象者 ― 1.面接者会話時間 面接者 1 -.58 .17 .44 .55 ― 2 -.09 -.26 -.40 ― 3 表6-3 会話内容と心理的変数の相関 -.19 .78† ― 4 .43 ― 5 ― 6 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 8 GSES 得点 7.5 7 6.5 6 5.5 面接前 面接後 面接前 面接後 17 16 運動SE 得点 15 14 13 12 11 10 9 図6-1 面接前後におけるSE得点の変化 134 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 5) 面 接 内 容 に 関 す る 対 象 者 評 価 ( 対 象 者 に お け る 面 接 内 容 の 受 け 入れ易さに関する評価) 本研究で実施された面接内容を対象者の受け入れ易さの側面か ら 評 価 し た 結 果 を 表 6-4 に 示 し た .「 話 し や す い 雰 囲 気 で 面 接 に 参 加 す る こ と が で き た 」「 自 分 の こ と に つ い て , 面 接 者 に 話 す こ と が で き た 」な ら び に「 自 分 の こ と に つ い て ,面 接 者 に 聞 い て も ら う こ と が で き た 」に 関 す る 得 点( 中 央 値 )は ,そ れ ぞ れ 5. 5 点 ,5 点 ,5 点 と い う「 あ て は ま る 」か ら「 非 常 に よ く あ て は ま る 」の 間 の 得 点 で あ り , 得 点 範 囲 は 5-6 点 と 3 項 目 と も に 同 様 の 値 で あ っ た .「 面 接 に よ っ て“ 体 を 動 か す こ と ”に 関 す る 何 ら か の 気 づ き を 得 る こ と が で き た 」「 面 接 に よ っ て , 自 分 に 合 っ た 目 標 を 立 て る こ と が で き た 」な ら び に「 面 接 に よ っ て ,目 標 を 達 成 し よ う と い う 意 欲 が で た 」 に つ い て は , す べ て 5 点 (「 あ て は ま る 」) で あ り , 得 点 範 囲 も 4-6 点(「 ど ち ら か と い え ば あ て は ま る 」か ら「 非 常 に よ く あ て は ま る 」) と な っ た .「 目 標 達 成 の た め に , も う 一 度 面 接 を 受 け た い と 思 う 」 に つ い て は , 4 点 で あ り , 得 点 範 囲 は 3 -6 点 (「 ど ち ら か と い え ば あ て は ま ら な い 」 か ら 「 非 常 に よ く あ て は ま る 」) で あ っ た . 4. 考 察 本 研 究 は ,運 動 S E の 増 加 に 効 果 的 で あ る M I に 準 じ た 介 入( B -M I) が ,女 子 学 生 の 運 動 行 動 の 開 始 と 短 期 的 な 運 動 継 続 に 与 え る 影 響 の 可 能 性 を 検 討 す る こ と ,な ら び に 面 接 内 容 の 受 け 入 れ 易 さ の 評 価 を 行うことが目的であった. MI の 面 接 評 価 枠 組 み を 用 い た 評 価 に よ る と , オ ー プ ン ・ ク エ ス チョン割合は入門レベルとエキスパートレベルの中間値である 135 136 5.5 (5,6) 5 (5,6) 5 (5,6) 5 (4,6) 5 (4,6) 面接によって,自 分に合った目標 を立てることがで きた 面接によって「体 を動かすこと」に 関する何らかの 気づきを得ること ができた 自分のことにつ いて,面接者に 聞いてもらうこと ができた 自分のことにつ いて,面接者に 話すことができた 話しやすい雰囲 気で面接に参加 することができた 回答 「非常によくあてはまる(6)」 「あてはまる(5)」 「どちらかといえばあてはまる(4)」 「どちらかといえばあてはまらない(3)」 「あてはまらない(2)」 「まったくあてはまらない(1)」 中央値 (min,max) Q5 Q4 Q3 Q2 Q1 表6-4 面接内容の受け入れやすさに関する評価結果 5 (4,6) 面接によって,目 標を達成しようと いう意欲がでた Q6 4 (3,6) 目標達成のため に,もう一度面接 を受けたいと思う Q7 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ 6 2 . 2% を 示 し , 一 定 の レ ベ ル を 確 保 し て い た と 言 え る .ま た , 面 接 者 会 話 時 間 割 合 は 平 均 70% 程 度 で あ り ,エ キ ス パ ー ト レ ベ ル を 満 た し て い た .以 上 の 点 か ら ,面 接 内 容 に 関 し て は ,質 的 に 十 分 な 内 容 であり,質が確保されていたと評価できる. 課 題 特 異 的 に 作 用 す る 運 動 SE と チ ェ ン ジ ・ ト ー ク 数 の 間 に お い て関連性が確認されなかった理由としては,面接におけるチェン ジ・ト ー ク の 内 容 が ,運 動 で は な く 身 体 活 動 に 関 す る 内 容 で あ っ た こ と が 影 響 し た 可 能 性 が 考 え ら れ る .研 究 3 に お い て ,運 動 に 関 し て よ り 詳 細 な 会 話 を 行 う こ と に よ っ て 運 動 S E が 高 ま り ,そ の 一 方 で ,特 定 の 行 動 で は な く ,一 般 的 な 行 動 の 実 施 に 関 す る 会 話 の 場 合 に は , 一 般 的 な SE が 高 ま る こ と が 示 さ れ た .本 研 究 結 果 も 同 様 の 作 用 が 働 い て い る 可 能 性 が 考 え ら れ ,会 話 の 内 容 が ,一 般 的 な 運 動 で は な く ,対 象 者 自 身 が 実 施 し や す い 身 体 活 動 と い う こ と で 比 較 的 低強度の活動から高強度の運動まで範囲が広く捉えられていたこ と か ら 運 動 S E に 影 響 を 与 え な か っ た 可 能 性 が 考 え ら れ る .対 象 者 が 実 行 ス テ ー ジ 以 降 の 定 期 的 な 運 動 習 慣 保 持 者 で あ れ ば ,よ り 運 動 S E と チ ェ ン ジ・ト ー ク と の 関 連 性 が 示 さ れ る 可 能 性 が 考 え ら れ る . 次 に , 面 接 前 後 に お け る SE の 変 化 に つ い て は , 運 動 SE 得 点 が 面 接 後 に 増 加 し , 一 方 , 一 般 的 な S E で あ る GS ES 得 点 は 増 加 し た も の の , 有 意 傾 向 で あ っ た . 運 動 SE 得 点 の 有 意 な 増 加 , な ら び に GS ES 得 点 の 増 加 傾 向 に 関 し て は , 研 究 3 と 同 様 に , オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い て 会 話 を 行 う こ と で ,運 動 S E が 増 加 す る こ と が 示唆された. 目 標 達 成 度 に 対 す る 面 接 効 果 に 関 し て は ,6 名 中 5 名 の 対 象 者 が 1 ヶ 月 間 の 目 標 を 達 成 し た こ と か ら ,運 動 実 施 に 無 関 心 な 女 子 学 生 137 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ に 対 す る 簡 易 面 接 の 効 果 が 示 さ れ た .本 研 究 の 対 象 者 は 前 熟 考 ス テ ー ジ 者 で あ り ,運 動 行 動 を す る つ も り の な い 対 象 者 で あ っ た に も か か わ ら ず ,面 接 を 通 し て 身 体 活 動 に 対 す る 実 施 意 欲 を 高 め ,実 際 の 目 標 行 動 へ 繋 げ る こ と が で き た .対 象 者 側 か ら の 視 点 で 行 わ れ た 面 接 内 容 の 受 け 入 れ や す さ 評 価 の 結 果 か ら も ,面 接 が 対 象 者 に 気 づ き を与え,行動変容を促したことを確認することができる. 本 研 究 で は ,簡 易 面 接 の 実 行 可 能 性 と 受 け 入 れ や す さ に 関 す る 検 討 も 行 っ た . 面 接 に 要 し た 時 間 は , 約 20 分 前 後 で あ り , 忙 し い 学 生 を 対 象 と し た 場 合 に も 実 行 は 可 能 で あ る と 考 え る .ま た ,藤 澤 ら ( 2010 a ) の 研 究 で 示 さ れ た 保 健 指 導 の 平 均 実 施 時 間 を み て も , 本 研 究 の 面 接 の 方 が 短 い 時 間 で 行 わ れ て い る こ と が わ か る .一 方 ,面 接 内 容 に 関 す る 対 象 者 側 の 評 価 に 関 し て は ,話 し や す い 雰 囲 気 で 会 話 を す る こ と が で き ,十 分 に 会 話 を 実 施 す る こ と が で き た と 評 価 し て い る .面 接 で は オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 多 用 し ,対 象 者 の 会 話 時 間 が 増 す よ う に 工 夫 し た こ と で ,対 象 者 の 発 言 量 が 増 加 し ,対 象 者 が 聞 い て も ら う こ と が で き た と 評 価 す る こ と に つ な が っ た .目 標 設定や実行に向けた意欲についても高い評価を得ており,研究 7 で 示 唆 さ れ た よ う な ,で き る だ け 難 易 度 が 低 く 実 行 し や す い と 思 わ れ る 目 標 へ と 導 い た こ と が 影 響 し た と 考 え ら れ る .ま た ,簡 易 面 接 に よ り 体 を 動 か す こ と に 関 す る 何 ら か の「 気 づ き 」を 得 て ,さ ら に 立 案 し た 目 標 の 実 行 意 欲 を 高 め て い た .面 接 を 再 度 受 け た い か ど う か に つ い て は ,高 い 評 価 で は な い も の の ,受 け た い と 評 価 す る 者 が 多 か っ た .前 熟 考 ス テ ー ジ 者 に 対 す る 様 々 な 介 入 の 場 合 ,継 続 的 な 介 入 が 難 し く ,介 入 機 会 を 作 る こ と が 難 し い と さ れ て い る .し か し な が ら ,本 研 究 で 用 い た 簡 易 面 接 は ,半 数 以 上 の 対 象 者 が 再 度 面 接 138 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ を 受 け た い と 評 価 し て お り ,運 動 行 動 に 無 関 心 で あ る 対 象 者 に 継 続 的に介入する面接として有効である. 最 後 に 本 研 究 の 限 界 点 に つ い て 述 べ る .ま ず ,サ ン プ ル サ イ ズ が 非 常 に 小 さ く 一 般 化 が 極 め て 難 し い .ま た 将 来 的 な 保 健 指 導 へ の 適 用 を 考 慮 し た 場 合 に も ,看 護 学 生 を 対 象 と し た 介 入 結 果 を 一 般 成 人 に 対 し て 適 用 す る こ と に は 問 題 が あ る .し か し な が ら ,行 動 変 容 を 意 図 し た 面 接 効 果 に 関 す る 研 究 に お い て ,面 接 の 詳 細 な 内 容 や 質 が 検 討 さ れ る こ と は 極 め て 尐 な く ,ア ウ ト カ ム の 関 連 要 因 が 検 証 さ れ る こ と も 非 常 に 尐 な か っ た .そ の 意 味 で は ,本 研 究 に お け る 方 法 論 な ら び に 結 果 は 有 益 な 資 料 で あ る .そ し て ,準 実 験 デ ザ イ ン を 用 い た こ と に よ る 解 釈 の 限 界 が 挙 げ ら れ る .本 研 究 は , 1 群 事 前 事 後 テ ス ト デ ザ イ ン を 採 用 し て お り ,得 ら れ た 結 果 に 影 響 を 与 え て い る 要 因 の 特 定 が 困 難 で あ る と い う 欠 点 を 有 し て い る .短 時 間 の 面 接 介 入 で あ る た め ,単 な る 時 間 経 過 に よ っ て 変 化 が 生 じ た 可 能 性 は 低 い が , 介 入 前 の 測 定 そ の も の ,あ る い は 面 接 以 外 の 環 境 要 因 ,あ る い は 面 接 者 要 因 の 影 響 ,さ ら に は ホ ー ソ ン 効 果 な ど を 否 定 す る こ と が で き な い .し た が っ て ,将 来 的 に は よ り 望 ま し い 研 究 デ ザ イ ン を 用 い る ことで,研究結果の解釈を洗練させることが求められる. 第 3 節 本章のまとめ 本 章 で は , 青 年 期 女 子 学 生 に 対 し て B-M I に 準 じ た 面 接 を 行 い , 1 ヵ月という短期間の面接効果および面接内容の受け入れやすさ に つ い て 評 価 す る こ と が 目 的 で あ っ た .分 析 の 結 果 ,面 接 後 に 運 動 S E,お よ び 一 般 的 な S E の 増 加 が 認 め ら れ た .研 究 デ ザ イ ン が 準 実 験デザインであるため,研究結果の解釈には限界があるものの, 139 第 6 章 身体活動量の増強を意図した面接効果および面接の受け入れやすさ M I に 準 じ た 面 接 ( B-M I) を 実 施 す る こ と に よ り , 身 体 活 動 ・ 運 動 に 関 連 し た 行 動 を 促 進 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .ま た ,本 面 接 内 容 は ,運 動 行 動 の 実 施 に 無 関 心 で あ る 青 年 期 女 子 学 生 に と っ て 受 け 入 れ や す い 内 容 で あ り ,面 接 を 受 け る こ と に よ っ て 健 康 行 動 に 関 す る 気 づ き を 得 て ,目 標 達 成 に 向 け た 意 欲 の 向 上 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ た . 140 第 7 章 総合論議 第 7章 総合論議 本 章 で は ,第 1 節 に お い て 本 研 究 全 体 の 概 要 を ま と め ,そ れ ぞ れ の 研 究 か ら 得 ら れ た 知 見 を 述 べ た .第 2 節 で は ,本 研 究 の 結 果 を も と に ,身 体 活 動・運 動 量 の 増 強 を 目 的 と し た 面 接 法 に 関 す る 提 案 を 行った. 第 1 節 本研究の概要および研究の知見 本 研 究 で は ,第 1 章 に お い て ,主 に わ が 国 の 身 体 活 動 ・ 運 動 の 実 施 状 況 を 背 景 と し ,行 動 変 容 理 論 を 活 用 し て 身 体 活 動・運 動 を 促 進 す る 必 要 性 を 示 し た .ま た ,不 活 動 が も た ら す 心 身 の 健 康 問 題 に つ い て 述 べ ,不 活 動 状 態 を 改 善 す る た め の 面 接 介 入 方 略 に つ い て 概 観 し た . 対 象 と な る 面 接 介 入 と し て , M I, B-M I, お よ び 5A を 挙 げ , な か で も B-M I は , 先 行 研 究 の レ ビ ュ ー に よ り , 実 際 の 臨 床 現 場 で の 活 用 に 適 し て い る こ と を 示 し た .た だ し ,問 題 点 と し て ,中 等 度 強 度 の 身 体 活 動 の 促 進 に 対 す る B-M I, お よ び 目 標 設 定 法 の 議 論 が 不 十 分 で あ る こ と を 指 摘 し た .最 後 に 本 研 究 で は ,医 療 現 場 で の 適 用 に 先 立 ち ,不 活 動 が 多 く の 健 康 問 題 を 導 い て い る 青 年 期 女 子 学 生 を 対 象 と す る .つ づ い て 第 2 章 で は ,本 研 究 の 目 的 お よ び 意 義 に つ いて述べた. 第 3 章 で は ,研 究 1 と し て ,保 健 指 導 実 施 者 で あ る 保 健 師 に 対 し て 調 査 を 行 い ,保 健 指 導 の 成 功 要 因 お よ び 失 敗 要 因 を 抽 出 し た .抽 出 し た 要 素 と B-M I を 構 成 す る 要 素 を 比 較 し た と こ ろ , 面 接 の 成 功 ・ 失 敗 要 因 に 含 ま れ る 要 素 と MI の 要 素 に 共 通 性 が 認 め ら れ た . と り わ け 「 協 働 性 」, お よ び 「 喚 起 性 」 は , 両 者 の 重 要 な 構 成 要 素 で あ る だ け で は な く ,共 通 し た 要 素 で あ る こ と も わ か っ た .研 究 2 141 第 7 章 総合論議 で は ,大 学 の 健 康 管 理 室 職 員( 医 師 お よ び 保 健 師 )に 対 し て ,簡 易 面 接 の 実 施 に 関 す る 阻 害 要 因 と 促 進 要 因 に つ い て 調 査 を 行 っ た .そ の結果,学生に対する面接介入は,授業の忙しさ(介入時間不足) が 面 接 介 入 を 妨 げ る 要 因 で あ る こ と が わ か っ た .時 間 不 足 を 克 服 す る た め に は ,短 時 間 の 面 接 介 入 が 求 め ら れ る .し た が っ て ,診 察 時 間 の 尐 な い 医 療 現 場 で の 適 用 を 目 的 に 開 発 さ れ た B-M I は ,本 研 究 に適した面接である. 第 4 章 で は ,研 究 3 と し て ,簡 易 面 接 に お い て 対 象 者 が 発 す る チ ェ ン ジ・ト ー ク や 面 接 者 が 使 用 す る オ ー プ ン・ク エ ス チ ョ ン が 対 象 者 の S E に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た .心 理 的 変 数 と し て は ,GS ES ,お よ び , 運 動 SE を 用 い た . そ の 結 果 , オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い て ,身 体 活 動 ・ 運 動 に 関 す る 具 体 的 な 会 話 を 行 う こ と に よ り ,対 象 者 の 運 動 SE が 有 意 に 増 加 す る こ と が わ か っ た . し か し な が ら , チ ェ ン ジ ・ ト ー ク と SE と の 関 連 性 は 認 め ら れ な か っ た . 研 究 4 に お い て は , 会 話 に よ る オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン が SE に ど の よ う な 影響を与えるのかを検討した.その結果,テキスト形式によって, オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン へ の 回 答( 記 述 )を 求 め る よ り も ,対 面 の 会 話 形 式 で オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 使 用 し た 場 合 に , 運 動 SE の 有 意 な 増 加 を 認 め た .つ ま り ,想 起 す る だ け で は な く ,対 象 者 が 自 分 自 身 の 発 話 内 容 を 客 観 的 に 認 識 す る こ と に よ り ,運 動 S E が 高 ま る可能性が示唆された. 第 5 章 で は ,研 究 5 と し て ,健 康 行 動 と し て ウ ォ ー キ ン グ を 選 択 し ,ウ ォ ー キ ン グ の 目 標 設 定 プ ロ セ ス と 実 施 し や す い 目 標 の 特 徴 を 明 ら か に し た .分 析 の 結 果 ,定 期 的 な 運 動 を 行 っ て い な い 者 と 不 定 期 に 運 動 を 行 っ て い る 者 に お い て ,実 施 し や す い と 評 価 す る 目 標 内 142 第 7 章 総合論議 容 に 差 異 が 認 め ら れ た .不 定 期 に 運 動 を 行 っ て い る 者 の 方 が ,よ り 具 体 的 な 目 標 内 容 を 好 む 傾 向 が あ る こ と が 認 め ら れ た .ま た ,対 象 者 が“ 実 施 し や す い ”と 評 価 す る 傾 向 に あ る 目 標 は ,高 い 達 成 度 を 導く可能性が示唆された. 第 6 章 で は , 研 究 6 と し て , 女 子 看 護 学 生 に 対 し て B- M I に 準 じ た 面 接 を 行 い , 面 接 前 後 の SE の 変 化 , お よ び 面 接 1 ヵ 月 後 の 目 標 達 成 度 ,お よ び 面 接 内 容 の 受 け 入 れ や す さ を 測 定 し た .分 析 の 結 果 , 面 接 後 に 運 動 SE, お よ び 一 般 的 な SE の 増 加 が 認 め ら れ た . ま た , 対 象 者 の 多 く が 立 案 し た 目 標 を 1 ヵ 月 後 に 達 成 し た .面 接 内 容 の 評 価 に つ い て は ,運 動 行 動 の 実 施 に 無 関 心 で あ る 女 子 看 護 学 生 に と っ て 受 け 入 れ や す い 内 容 で あ り ,面 接 を 受 け る こ と に よ っ て 健 康 行 動 に 関 す る 気 づ き を 得 て ,目 標 達 成 に 向 け た 意 欲 の 向 上 の 可 能 性 が 示 唆された. 第 2 節 身 体 活 動・運 動 量 の 増 強 を 目 的 と し た 面 接 法 に 関 す る 提 案 本 節 で は ,本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 を も と に ,身 体 活 動 ・ 運 動 量 の 増強を目的とする面接法に関して以下の提案を行う. 1) 矛 盾 の 拡 大 に 焦 点 を 当 て た 面 接 法 2) 簡 易 面 接 の 構 成 要 素 が SE に も た ら す 影 響 の 検 討 1. 矛 盾 の 拡 大 に 焦 点 を 当 て た 面 接 法 本 研 究 で は , B- M I に 準 じ た 面 接 を 用 い て , 身 体 活 動 や 運 動 に 関 す る 具 体 的 な 会 話 を 行 っ た 結 果 ,運 動 S E が 増 加 す る 可 能 性 が 認 め ら れ た . こ れ は つ ま り , B -M I に よ っ て 身 体 活 動 ・ 運 動 に 関 す る 現 143 第 7 章 総合論議 状 と 理 想 の 矛 盾 を 広 げ る こ と が ,身 体 活 動・運 動 量 の 増 加 に 効 果 的 で あ る 可 能 性 を 示 し て い る .こ の よ う な ,健 康 行 動 に 関 す る 理 想 と 現 状 の 矛 盾 を 広 げ る こ と が 行 動 変 容 を 導 く 例 と し て ,M cNal l y et al . ( 2 0 0 5 )の 研 究 が 挙 げ ら れ る .McNa ll y et al . は ,問 題 飲 酒 が 指 摘 さ れ て い る 大 学 生 男 女 に 対 し て ,禁 酒 を 目 的 と し た 介 入 を 行 っ た .そ の 結 果 , 非 介 入 群 に 比 べ て , 簡 易 的 な MI を 実 施 す る 群 の 方 が , 対 象 者 が 両 面 感 情 を 多 く 表 出 す る こ と を 通 し て ,飲 酒 量 が 有 意 に 減 尐 す る こ と を 示 し た .こ れ ら の 研 究 は ,チ ェ ン ジ ・ ト ー ク を 抽 出 す る こ と が な く と も ,健 康 行 動 に 関 す る 現 状 と 理 想 の 矛 盾 を 広 げ る こ と で,身体活動・運動量を増強させる可能性を示唆している. 従 来 の 研 究 で は ,チ ェ ン ジ ・ ト ー ク の 量 が 行 動 的 ア ウ ト カ ム( 例 え ば ,身 体 活 動 量 の 増 強 ,禁 酒 等 )に 強 く 関 連 し て い る こ と が 指 摘 さ れ て い る た め ,面 接 介 入 に お い て チ ェ ン ジ・ト ー ク の 抽 出 に 注 目 が 集 ま っ て い る .し か し ,チ ェ ン ジ ・ ト ー ク を 引 き 出 す 質 問 は ,訓 練 せ ず に 容 易 に で き る も の で は な い .そ れ に 対 し て ,矛 盾 の 拡 大 は 現状と理想状態を尋ねることによって実現ができ,矛盾の拡大が B-M I に 組 み 込 ま れ て い る こ と か ら も 実 践 し や す い 方 略 で あ る . 医 療 現 場 で は ,身 体 活 動・運 動 の 促 進 を 目 的 と し た 介 入 を 行 う に あ た っ て ,時 間 不 足( 例 え ば ,短 い 診 察 時 間 ,忙 し さ )が 問 題 と し て 挙 げ ら れ ,解 決 が 難 し い .本 研 究 で 適 用 し た 面 接 は ,短 時 間( 20 分 以 内 )の 簡 易 介 入 で あ る こ と か ら ,面 接 時 間 に 制 限 が あ る 医 療 現 場 で の 活 用 に 適 し て い る . し か し な が ら , 現 実 的 に は 20 分 程 度 の 面接時間を作り出すことも難しい場合も考えられる.したがって, 本 研 究 で 利 用 し た B-M I よ り も さ ら に 矛 盾 の 拡 大 に 特 化 し た 面 接 方 略を開発し,医療現場での適用を目指すことが期待される. 144 第 7 章 総合論議 2. 簡 易 面 接 の 構 成 要 素 が SE に も た ら す 影 響 の 検 討 簡 易 面 接 で は ,オ ー プ ン ・ ク エ ス チ ョ ン を 用 い ,対 象 者 自 身 の 感 情や思考を客観的に認識させることによって心理的な変容を導く 可 能 性 が 認 め ら れ た .こ の よ う な ,面 接 の 要 素 が 対 象 者 の 心 理 に 与 え る 影 響 は ,予 防 行 動 に お い て は こ れ ま で ほ と ん ど 検 討 さ れ て こ な か っ た .す な わ ち ,面 接 技 術 の 効 果 に つ い て 検 討 さ れ な い ま ま ,様 々 な面接技術が臨床現場で利用されてきたと言える. 医 療 現 場 の 現 実 的 な 要 求 と し て は ,結 果 的 に 対 象 者 の 行 動 が 変 わ り,生活習慣が改善されればよいという風潮があるかもしれない. し か し な が ら ,行 動 変 容 理 論 を 用 い た 介 入 は ,介 入 の 要 素 を 用 い て , “ 意 図 的 に ”対 象 者 の 変 化 を 引 き 出 す と こ ろ に 特 徴 が あ る .そ の た め ,理 想 的 に は 介 入 に よ っ て 得 ら れ る 効 果 を 理 解 す る こ と が 求 め ら れ る . 医 療 現 場 に お い て は , 近 年 , Evi dence Based M edi ci ne や Evi dence B ased Nu rsi ng と い う 言 葉 が 積 極 的 に 用 い ら れ , 根 拠 に 基 づ い た 治 療 や ケ ア が 一 般 的 に な っ て い る .予 防 医 学 の 場 面 に お い て も 同 様 の 質 が 必 要 で あ り ,予 防 医 学 の 専 門 家 は ,根 拠 に 基 づ い た 介 入を実践すべきである. さ ら に ,本 研 究 で 対 象 と し た 青 年 期 女 子 学 生 で は な く ,中 高 年 の 生 活 習 慣 病 の リ ス ク を 有 す る ,あ る い は 生 活 習 慣 病 罹 患 者 に 対 し て B-M I 介 入 を 行 い ,S E に ど の よ う な 影 響 を 与 え る の か に つ い て 検 討 を 行 う こ と も 望 ま れ る .特 に 中 高 年 者 を 対 象 と す る こ と は ,現 実 的 な問題解決に繋がることから,社会的にも意義のある課題である. オープン・クエスチョンの他にも,肯定,聞き返し,要約など, 面 接 に お い て 活 用 す る 面 接 技 術 は 多 く 存 在 す る .対 象 者 の 行 動 を 意 図 的 に 引 き 出 し ,望 ま し い 結 果 を 得 る た め に も ,面 接 技 術 の 効 果 に 145 第 7 章 総合論議 関 し て 検 討 を 行 う 必 要 が あ る .本 研 究 で は ,面 接 の 構 成 要 素 の 一 部 を 取 り 上 げ た に 過 ぎ な い が ,研 究 の 範 囲 を 広 げ ,面 接 技 術 と 効 果 の 関連性が明らかになることが望まれる. 146 第 7 章 総合論議 文献 足 立 由 美 ・ 吉 川 弘 明 ・ 廣 川 早 苗 ・ 高 信 雅 子 (2009) . 肥 満 , や せ の 大 学 生 の QOL 評 価 と 健 康 教 育 の 可 能 性 スタイル(食事,運動)の調査 S F-36 に よ る 評 価 と ラ イ フ C A MPUS HEALT H , 46, 167 -172 Al ex y, B. 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In Levi ne J M & Wangg MC (Eds), Teac her and st udent percept i ons: Im pl i cat i ons As s oci at es for l earni ng. Hi l l sdal e, N.J .: Lawren ce Erl baum 第 7 章 総合論議 財団法人 づ く 健康・体力づくり事業財団 り 運 動 ( 健 康 日 kenkouni ppon21.gr.j p/i ndex.ht m l > 21 世 紀 に お け る 国 民 健 康 本 21 ) < ht t p: // www. 謝辞 本 博 士 学 位 論 文 を ま と め る に あ た り ,多 く の 方 々 の ご 指 導 と ご 協 力を頂きました. 早 稲 田 大 学 人 間 科 学 部 の 竹 中 晃 二 教 授 に は ,本 論 文 の 主 査 を 引 き 受 け て 頂 き ま し た .先 生 に は ,修 士 課 程 お よ び 博 士 後 期 課 程 の 計 5 年 間 ,常 に 温 か く ,ま た 厳 し い ご 指 導 を 頂 き ま し た .看 護 師 の 世 界 か ら 来 た ,そ し て 研 究 に つ い て ほ と ん ど 理 解 し て い な い 私 に ,研 究 方 法 か ら 研 究 の ア イ デ ア ,そ し て 研 究 者 と し て の 心 構 え ま で ,研 究 のイロハを教えていただきました. 早 稲 田 大 学 人 間 科 学 部 の 野 村 忍 教 授 ,鈴 木 晶 夫 教 授 の 両 先 生 に は , 大 変 ご 多 忙 の 中 ,本 論 文 の 副 査 を 引 き 受 け て 頂 き ま し た .野 村 先 生 か ら は ,論 文 内 容 へ の 指 摘 の ほ か ,本 研 究 の 今 後 の 方 向 性 に 関 す る 助 言 も 頂 き ま し た .鈴 木 先 生 か ら は ,論 文 内 で 扱 っ て い る 変 数 間 の 関 連 や 用 語 の 定 義 な ど ,本 論 文 を よ り 明 確 に 示 す こ と に 向 け た 助 言 を 頂 き ま し た .今 後 の 論 文 作 成 に 生 か し ,多 く の 人 に 読 ん で い た だ ける論文を作っていきたいと思っております. 同 期 の 満 石 寿 君 に は ,博 士 後 期 課 程 の 3 年 間 に お い て ,切 磋 琢 磨 で き る 仲 間 と し て と て も 感 謝 し て お り ま す .研 究 の ペ ー ス が 遅 い 私 に と っ て ,先 頭 に 立 っ て 研 究 を 進 め て い る 満 石 君 は ,大 き な 刺 激 を 与 え て く れ る と と も に ,と て も 頼 り に な る 存 在 で し た .今 後 も お 互 い に 協 力 し ,高 め あ え る 関 係 で い た い と 思 い ま す .ま た ,研 究 室 の 仲 間 に も 支 え ら れ ま し た .特 に ,博 士 課 程 の 前 場 康 介 君 と 飯 尾 美 沙 さ ん に は ,論 文 の 共 同 執 筆 や 修 正 に お い て 支 援 し て も ら っ た だ け で は な く ,常 に 励 ま し の 言 葉 を か け て も ら い ,辛 い 時 期 を 乗 り 越 え る こ と が で き ま し た .上 村 真 美 さ ん ,斉 藤 め ぐ み さ ん ,細 井 俊 希 さ ん , 堀 内 明 子 さ ん に は ,同 じ 博 士 課 程 の 仲 間 と し て ,多 く の 助 言 を い た だ き ま し た .上 村 さ ん ,細 井 さ ん に は ,研 究 施 設 の ご 紹 介 も し て い ただき,大変感謝しております.また,福山大学教授堤俊彦先生, お 茶 の 水 女 子 大 学 准 教 授 赤 松 利 恵 先 生 ,神 戸 親 和 女 子 大 学 講 師 葦 原 摩 耶 子 先 生 に は ,研 究 に 関 す る 多 く の ア ド バ イ ス を 頂 き ,研 究 を よ り質の高い内容にすることができました. 質 問 紙 調 査 お よ び 面 接 介 入 に あ た り ,参 加 者 と し て 協 力 し て い た だ い た ,医 師 ,保 健 師 ,看 護 師 ,管 理 栄 養 士 ,医 療 施 設 の 事 務 職 員 の 方 々 ,な ら び に 学 生 の 方 々 に は ,多 大 な る 協 力 を 頂 き ま し た 。突 然 の 調 査 に も 関 わ ら ず ,快 く 引 き 受 け て い た だ い た こ と に 心 よ り 感 謝いたします。 最後に,修士および博士後期課程の学生生活を支えてくれた母, そして多大なる励ましや支援をしてくれた妻に心より感謝致しま す。 2011 年 1 月 藤澤雄太 付録 研究 3 面接実施内容の記録(チェンジ・トーク群) 面=面接者,対=対象者 対象者ID:A 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Hさんは普段どのくらい体を動かしていますか? 対 普段ですよね。えっと,家がここからちょっと歩いて30分くらいのところな ので,それを往復で歩いたり,毎日じゃないですけど,歩く日もあるし,自 転車で来る日もあるし,っていう運動?っていうかちょっとわからないです けど。 面 体を動かすというのでは? 対 腹筋ですかね。あと週1で体育をやっています。そのくらいです。 面 あとは特になさそうですか? 対 そうですね,はい。 面 通学は歩くのと,自転車とどっちが多いですか? 対 通学は自転車です。 面 たまに・・・ 対 時間があるときは歩こうかなとか,あと,雨降ったら歩こうかなと。 面 それ以外は大体自転車と。あとは腹筋すると。授業は何をとっているんで すか? 対 生涯スポーツっていう,毎週毎週やることが違って,バスケットボールやっ たり,バレーボールやったり,昨日だったんですけど,昨日はサッカーを やったり。 面 それは週に一回ですか? 対 そうですね。 OQ OQ CQ CQ OQ CQ 質問2 面 Hさんの今の体を動かす状況というのは,通学で動かすというものと,体 育と腹筋かなというところなんですけれども,このHさんの普段の活動状 況っていうのは,Hさんの健康にどういう影響があると思いますか? 対 腹筋をやってるのは,ちょっと腰痛があるので,お医者さんにちょっと腹 筋やったほうがいいんじゃないかって言われてから,もう1・2ヶ月やって るんですけど。 OQ その腹筋は腰痛のためにやってて,歩くとか自転車っていうのは,なんと なくバスには頼ったらダメなんじゃ,ほんとに運動しなくなるんじゃない かって思って,通学くらいは行こうかなと,最低限・・・。 面 少しはやって,と。 対 はい。 面 他にはどんな影響があると思いますか? OQ 対 そうですね・・・。ちょっと高校生まではすごい運動してて,すごい筋肉が あったんですけど,ちょっと受験になってそれが衰えて,今はまたちょっと 腹筋とか初めて,ちょっと戻って,少しずつ戻りつつあるかな,と。 面 前みたいに戻したいな,と。前は何をやってたんですか? 対 剣道です。 面 では,結構ハードですよね。 対 結構ハードですね。 面 今の状況だと,まったく動かないよりは,ちょっと歩いたりとか,自転車に 乗ったりとか,腹筋して腰痛予防をしたりとか,前の状態に戻ったらいい な,ということですね。 対 はい。 OQ Sum 質問3 面 現在体を動かしていないな,ということなんですけれども,体を動かしてい ないことをどういうふうに感じますか? 対 そうですね・・・。高校生まではすっごい動いていたので,なんでこんなに 動いていなくて,自分はいいんだろうかっていう,結構このままで大丈夫 なのかなっていうのは,素直に感じます。 面 このままでいいのかっていうのは,具体的には? 対 うーん。食べたいだけ食べて,動けていないので,健康的にもよくない し,そんな若いときから怠けてたら将来が心配ですね。 面 少し感じることとしては,これでいいのかな,っていうのはあるんですね。 対 そうですね。 OQ OQ CQ 質問4 面 今運動量が減っているっていうことなんですけれども,今の状況でいるこ との良い点って何かありますか? 対 えーと。今のままの活動・・・。やっぱ,通学とかだと,4月からずーっと続 けているので,今やっていることはずっと続けられそうな項目なので,今 日はできないからいいやっていうものが今の中で入っていないので, ずっと続けられるっていうのが良い点かな,と思います。 面 高校に比べたら動けていないけど,それでも良いかなと思えるところはあ りますか? 対 勉強する時間ができました。 面 部活やっているときよりは勉強時間が・・・ 対 できました。 面 部活やっていたら,勉強する体力もなくなりますよね。 対 電車通学なので,1時間に電車が1本っていう生活だったので,帰ったら ご飯食べて寝ちゃうっていう感じだったので,部活中心でした。 面 その分ちょっとやる時間ができたかなという感じですね。 OQ CQ 質問5 面 反対に,今のままの活動状況でいることの悪い点というと具体的にありま すか? 対 運動不足になるっていうのが,一番大きいかなと思うんですけど,その運 動しないことで自分の外見的に自分が望むような体とかじゃなくなった ら,精神的に,自分が悪いんですけど,落ち込んで何もかも物事を悪い 方に考えちゃうんじゃないかなっていう・・・。 OQ あと運動しないって言うのを何かのせいにしてしまいそうです。 面 今はそういうのはあるんですか? 対 学校にあんまりサークルがないから,とか。 面 剣道はあんまりないですよね。 対 ないんですよねー。 では今のところは,健康に良くないかなっていうのと,運動不足になっ ちゃうとか,運動しないことで外見的にももし変化してきたら,今は大丈夫 ですか? 今はなんとか・・・。 面 対 面 CQ CQ もし望まない体になっちゃったら,ちょっとマイナス思考というか,悪い方 に考えちゃうかもしれないと。あと,運動しないのを何かのせいにしがちに なってしまうと,そういう悪いところがあるかな,と。 質問6 面 体を動かすということに関して,この先,どのように変えていきたいとHさん は思いますか? 対 とりあえず今やっていることは継続するっていうことは最低で,剣道じゃな くても,他のサークルに入ろうとか考えたんですけど,ちょっと元から入っ ている人に聞くと,そこまでやってないとか聞いてしまうので,やっぱ何か を始めるっていうのは難しいかなと思うんですけど,自分のうちでできるこ とを増やしたり,素振りだけでもやったり。 OQ ちょっと自分の意識だけで変えられることを少しずつ増やしていきたいな とは,やってないですけど,思っています。 面 なかなか新しいサークルに入ったりとか,大きく帰るのは難しいけど,自 分のやれることからやっていこうかな,というのは,変えられることかな,と いう感じですかね。まだ他にもありそうですか。 対 だいたいそんなところです。 面 大体そのようなところですかね。 OQ 対象者ID:B 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Sさんは普段どのくらい体を動かしていますか? 対 普段ですか?通学でだいたい往復で30分くらい。あとは,学校の体育が 週1日で,90分間あるので,それくらいですかね。 面 他にはもうあまりないですか?体を動かすというのは? 対 えっと,また,12月からバイトを始めるので,そこではまた多分フロアとかで 運んだりするので,・・ 面 そのとき体を動かすかな,ということですね。今のところは通学と学校の体 育と。この先としては,バイトで動かすんじゃないかというところですね。ま だありそうですか? 対 たまに気分がのったときに休日とかテスト,じゃないや,実習前の休みが すごいあったときに,駅から駅まで歩いてみるとか,そういうのはやってま したけど,でも定期的にはやってないです。 面 はい,ありがとうございます。 OQ OQ OQ 質問2 面 Sさんの普段の活動状況,体を動かす状況というのは,今は通学,学校の 体育,たまに駅から駅を歩いたりということなんですが,こういった今の活 動状況というのは,Sさんの健康にどのような影響があると思いますか? 対 体を動かすということはすごいいいとは思うんですが,特に通学とか,朝と かすごい遅刻しそうになると朝食とかもあまり食べないでがーっと走ったり するので,あれはちょっと体に負担がかかったりしていると思うんだけど, 運動すること自体はすごくいいと思うし。 OQ あと気分的にもそういう体育とかだと,みんなと騒いだりできるから,楽しい なーって思うんで,ストレス解消になるかなと思います。 面 なかなかみんなと体を動かすっていうのも機会がないですよね。 対 大学に入ってからはほんとに体育とか,まぁ,ほかに行事・・・あったっ け・・・。 面 あと,みんなでわーっとやるのは,学園祭くらいかな・・。もう終わっちゃっ たかな。 対 はい10月にありました。 面 では,イベント的にはもう今年はなさそうだね。 対 まあ,あとは,実習とか,結構動きまわるけど,どうなんだろう。 面 他には,では今のSさんの状態が健康に与える影響って,他に何か考えら れますか? OQ 対 健康に与える影響・・・。今ですよね。あ,でもたまにこう,無理して歩いた りしたときとか,足が痛くなったりとか,すぐマメができたり,靴ずれ?とかよ くなるから,あ,でも楽しんでできると思います。 面 では比較的体育とか気分転換に歩くっていうので,精神的な健康としては いいなーっていう効果を感じていると。 対 はい。なんか,やる前は面倒くさいなーとか,やめようかなーって思うんで すけど,やり始めると意外と夢中に。 面 やる時さえ乗り越えれば,あとは結構楽しめるな,と。 対 やる前は気分的にうーんって思うし,やったあとは,体がうーんって。 面 そこを逆になる感じなんですね。はい。わかりました。 質問3 面 体を動かしていないことをどのように感じるでしょうか? 対 あー,運動量は今は少ないか,あそっか,えっと,動かしていないこ と・・・・。今すごいイメージであるのは,動かしてないと太るなーって,そう いうのはあるかなー。 面 今,このままだと太っちゃうなーっていう感じですか?それとも,もっと動か ないと太っちゃうなーって感じですか? 対 たぶん,いろいろ考えていくと,筋肉つくからそんなに体重的には変わん ないなと思うけど,うーん,まぁこれ以上動かなかったらちょっとやばいかな と思います。 OQ CQ 質問4 面 今のままの活動状況,運動状況というと,通学と体育ということなんです が,今のままの活動状況でいることのよい点というのは何かありますか? 対 良い点・・・。良い点・・・,うーんと。今のままの・・・・ 面 今のままでいいなーと思うところはありますか? 対 やっぱり体育とかだとみんなとできる,みんなと騒ぐっていうのが好きなの で,そういうのは気分的にもいいし,あと体も「あー体育やったー」って感じ がするので,それはいいなと思います。 OQ OQ で,あとは,歩くのは結構好きなので,それで通学とかもできてるし,程よ い運動になってるのかな,と思います。 面 今やってるのが通学と体育っていうことだったんですけど,それはすごく みんなで騒げるし,歩くのも好きだし,いいかなーっていうところですか ね? 対 あとは,通学とかでも結構近所の人とか挨拶してくれるので,歩く感じでい いなと思ってますけど,どうなんだろ・・・。 面 近所の人が話してくれるんだね。 対 話すっていうか,まあ挨拶とか。 面 おはよーとか。すごい走ってるから,心配なんじゃないの? 対 そうかなー。そうかもしれない。 CQ CQ 質問5 面 逆に今のままの活動状況でいることの悪い点,今通学・体育だけですけ れども,今のままでいることの悪い点というのは何でしょうか? 対 そうですね,やっぱり,定期的な運動とかができてないっていうのもそうだ し,あとはさっきも朝飯食べずに走るとかがあって,学校着くと,心臓ばく ばくで,すぐ授業だから,それはちょっときつい・・,体にも悪いし,集中も できないかなと思いました。 OQ あとは,遅刻しそうになったときに,短縮ができない。自転車にしちゃえ ば,短い時間でいけたりするかなーと思ったけど。 面 これ以上は短くは・・・ 対 できない。ほんとに授業始まる5分前とかに家出ちゃったとかもあります。 面 まだ他にも思い浮かぶことはありますか? 対 うーん。そうだなぁ。あ,体育とかで急にバレーとかすると,次の日すごい 筋肉痛とかですか。悪い点,悪い点・・・。 面 大体こんなところでしょうかね。 対 うーん,やっぱり休日とかに歩くって言ったんですけど,あんまり時間がな くてとか,普段ちょっと疲れたりしていると,運動したくないなーって思うの で,もうちょっとそういうのを改善できたらなーと思うけど。 面 疲れていなければもうちょっと歩く気持ちも出てくるかもしれないし,歩い たりも実際できるかもしれないなーと。 対 疲れていると,ああもう今日一日寝てよーとか,買い物もいいやーとか。 面 まず休もうとなりますからね。 対 普段から運動していれば違うのかなぁ・・・。 面 前はしていたりとかしてましたか? 対 小さい頃は水泳を習っていました。 面 今水泳をやったらどのようになると思いますか? 対 あー,でも・・,高校くらいまではプールがあったのでやってたんですけ ど,まぁでも今だったら,50泳ぐだけで息ゼーゼーになると思います。 面 もしかしたら疲れやすさなどは変わっているかもしれないですね。 対 あとタイムとかも,絶対ムリ。 面 泳ぎ方はできても,心臓とか肺がついていかないかもしれないですね。水 泳やっていたんですね。 対 はい。でも,未だに夏とかは泳ぎたいなーとか思います。 面 この辺はどこか泳げそうなところはありますかね? 対 調べたんですけど,なんか会員になっちゃえば安いけど,何か行きたいと きに行くっていうのにしちゃうと,割高になったりとか,安いところでも, ちょっとM?の方まで出て行かないと・・・ 面 Tプールだっけな?清掃工場の余熱を使った温水プールがあるから。 えっと,Kの隣の駅近くまで行くと,確かあると思います。 対 調べてみます。 面 ちょっと見てみてください。 OQ OQ CQ 質問6 面 体を動かすということに関して,この先どのように変えていきたいと思いま すか? 対 体を動かすことに関して,この先どのように・・・ 面 現在の状況から,この先どんな風に変えていきたいと思いますか? 対 やっぱり,さっきの水泳とかだったら,自分の動きたいときに,やりたいとき にやれたらいいなーと。 OQ OQ 体動かしても,時間無いとか,お金が無いとか,そういうのにあんまり左右 されないっていうか。 何がいいたいかわからないけど,やりたいときにやれるようになっていけば いいかなと思います。 面 今は,障害まではいかないけど,それを妨げる何かがあるんでしょうか? やりたいときにやれないような。 対 やっぱり,こういう学校とかだと,帰ればやっぱり夕方とか夜になっちゃう し,で,疲れているのもあるし,たぶんこれからバイトとか始めちゃえば,や る機会とかも少なくなっちゃうと思うので。 面 時間がやっぱりちょっと減りそうな感じですよね。 対 たぶん,時間を作ろうと思えば作れると思いますけど,そうするとやっぱり 疲れとかが出てくるかなーとか,あの,私よくやる前に考えちゃって,いろ いろ考えつつ,ちょっとやってみるみたいな。 OQ それでやり始めればいいんですけど。いろいろ考えすぎなんだと思いま すが。 面 無理すれば時間ができるかもしれないけど,どっかでしわ寄せもくるか なーという感じですかね。 対 レポートとかもありますしね。 面 学校はいっぱいあるからね。具体的には何かやりたいなーという,今あ がったものではプールで泳いだりっていうのがありましたが,他にもありま すか? 対 親に言ったら親に危ないって言われましたが,夏場とか行ったんですけ ど,夜涼しくなってから,街の明かりを目指して歩くのが,あっち行ってみ ようとか,無造作に行ったりとかいいし,あとはちょっと遠出もしたいけど, 高校生のときに事故にあって自転車がまだ怖くて・・・・。どうなんだろう。あ れ何の話でしたっけ? 面 できそうな運動は何かありますか,という・・・。 対 自転車で行きたいけど,ちょっと怖いという。 面 今やれるとしたら,プールに行ったりとか,夜ちょっと怖いかもしれないけ ど歩くことかな,という感じですかね。 対 あとは,もし時間の余裕ができれば,早起きすればいい話なんですけど, 今日はちょっと違う道に行ってみようとか,遠回りしていったりとか,余裕 もっていけるようになったらいいなと思っています。 OQ 面 プールとか,歩いたり,やっぱり歩くっていうのは好きって行ってましたが, 歩くのは結構いいですね。 対 あ,でもそうなったのは最近かも。 面 こっちにきてからですか 対 向こうにいるときは大体自転車だったんで,あ,でも実家に帰ったらスキー とか,スケートとかに行きたい。 面 向こうに行ったら結構やることはあるんですね。 対 あー,家の近くにスケートやるところとか,あでも,はい,なんだろう・・・。や るのは好きだけど,やるまでが面倒くさい。 面 なるほど。わかりました。ではこっちにいるときにやるなら,ちょっと歩いたり とか,プールに行くとか。 対 あと,特売しているお店とかだったら,ちょっと遠いけど行ってみるかとか。 特売品を買いに行くとか。 面 なるほど,わかりました。やれるとしたら,このようなところでしょうか。 対 多分思いつかないだけで,色々あると思います。 対象者ID:C 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Tさんは普段どのくらい体を動かしていますか? 対 えっと,体育の時に動かす程度です。 面 他には? 対 他には特に運動はしていないんですけど,えー,どのくらいかなー。普通 に歩いたりとか,そういう程度です。 面 通学は何で通学していますか? 対 バスと電車です。 面 では歩く時間はそんなにないですか? 対 そうですね。10分,20分程度です。はい。 面 あと,週末などはどうですか? 対 あ,バイトの時に動かします。 面 バイトのときはどのくらい動きますか? 対 時間ですか? 面 時間とかですね。 対 えっと,日によるんですけど,平日は3時間で,休日だと6・7時間です。 面 今は体育のときと通学で10分くらい歩くのと,バイトで歩くということです が,他にも歩いたり,体を動かすことはありますか? 対 ないです。 面 はい,わかりました。 OQ OQ OQ CQ OQ CQ OQ 質問2 面 Tさんは,通学,体育,バイトのときで体を動かしているということですが, 現在のTさんの活動状況,これがTさんの健康にどのような影響があると 思いますか? 対 今は,多分,そこまで影響はないと思うんですけど,やっぱり年をとってい くうちに,のちのち,体にこう,支障が出てくるんじゃないかなーという風に 思うんですけど。 OQ 例えば,それこそ,何て言うんだろう,やっぱり筋肉じゃなくて脂肪になっ ているから,それでこう血糖値が上がったり,糖尿病とかになったりとかあ りそうだし。 そうですね,今思い浮かぶのはそういうことですね。 面 今はこのくらいですか。今は大丈夫だけど,将来的には良くないかな,と いうことですね。年をとるとっていうと,どのくらいですか? 対 30歳すぎくらい・・・・ OQ 面 私はもう30歳過ぎたので,そろそろやばいですね。 質問3 面 体を動かしていないという現在の状況みたいですが,どのように体を動か していないことを感じますか? 対 いけないかなーという風には思いつつ,でも面倒くさいからいいかなーっ ていう風に思いますね。 面 いけないかなーって思いつつ,面倒である,と。他にも何かありますか? 対 うーん。そのくらいです。 面 ちょっといけないかなーと思っているということですね。ちょっと動かした いなーと思うときがあっても,そこには至らないという・・。 対 そうですね。例えば,団体とかでやるスポーツだったら,楽しいけど,1人 で体を動かすっていうのは,自分の意志だけじゃないですか。だから,面 倒に感じてしまいます。 面 体育だと,結構楽しくできますもんね。 対 そうですね。 OQ OQ 質問4 面 今のままの活動状況,通学,バイト,体育ということですが,今のままの活 動状況でいることの良い点は何でしょうか? 対 いい点というか,まぁ,疲れない。 OQ あと,その,運動する時間を作らないことで,その時間を有効に使える。 面 他のことに使える,と。まだ他にもありますか? 対 特にないです。 面 動かないから疲れない,運動時間を他のことに使える,と。 OQ 質問5 面 反対に,今のままの活動状況でいることの悪い点,さっきは年をとると体 に支障がでるということを言っていましたが,重複しても構いませんので, 今のままでいることの悪い点を上げるとしたら,どのようなことがあるでしょ うか。 対 やっぱり年をとった時の問題だったりとか・・・。 OQ 体力の低下だったりとか・・・・。うーん。 面 こんなところでしょうか? 対 そうですね,やっぱり,今っていうと,考えられないけど,のちのちのことを 考えると,こう病気に関連してくるんじゃないかって言う気持ちはあります ね。 面 体力の低下っていうのは,今は感じないですか? 対 中学時代とかに比べれば感じるけど,今現在はそんなに感じないです。 OQ CQ 質問6 面 現在は体育とか通学,バイトで動かしているということなんですが,体を動 かすっていうことに関して言うと,この先,どのように変えていきたいです か? OQ 対 時間ができたら,軽い運動から始められたらいいなーと思っていて, まぁ,とりあえず一番最初はストレッチじゃないけど,お家でできることから 始めていって,徐々に,こう,慣れていったら外に出て行くっていうような 運動をしたいとは思っています。 面 まずは,時間を作るというか,できたら簡単な運動をやって,簡単な内容 としてはストレッチとか,家の中でできることをやってみて,それができれ ば外に出る。家でやるといったら,ストレッチになりますか? 対 腹筋とか,背筋とか,基礎的なものですね。 面 こういうのは今までやったりした経験はありますか? 対 部活をやってたときは結構毎日とかやったりとかしたんですけど,もう辞 めてからは大変です。 面 もし腹筋とか背筋とかやるようになって,よし外でもできるかなーと思った ときには,どんなことができそうですか? 対 ジョギングだったり,ランニングだったり,それこそ余裕ができたらですけ ど,ジムとか水泳とか行ってみたいなとか思っています。 面 ジムとか水泳ですね。では結構体を動かし始めたら,いろいろと積極的 に動けるような内容までできるかなーという感じですか? 対 はい。 面 他にもまだありそうですか?体動かして変えていけそうなことって。あるい はやってみたいな,ということ。 対 ちょっとまだ浮かばないです。はい。 面 大体このくらいでしょうか。 CQ CQ OQ CQ 対象者ID:D 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Tさんはふだんどのくらいからだを動かしていますか?運動に関わらずで 大丈夫です。 対 運動に関わらずで・・・。えっと,朝の登校と下校のときに,継続じゃないん ですけど,30分くらい歩いています。合わせて30分です。 面 Y駅からかな? 対 Y駅から,歩いてきて,あとは地元から家まで歩くのに時間がかかって,っ て感じです。 面 では,通学の30分と,他にはまだ歩く以外でもいいですし,何かありそう ですか?体を動かしていることは。 対 あとは,スーパーを歩き回っています。 面 これはみたいものがあってっていうことですか? 対 いや,買い物をしなくちゃいけないので,ちょっと・・・。 面 家の買い物を・・・ 対 夜ご飯をつくらなきゃいけないので,それで・・・。 面 これは結構しょっちゅう歩いていることになりますね。 対 しょっちゅうです。ちょっと時間に余裕があったり,荷物が重くなかったら, また20分,家まで歩いています。 OQ CQ OQ CQ 元々は,家からいつも,最寄りだと10分なんですけど,家まで。 でもちょっと離れたところのスーパーは良くて,ちょっと軽かったり,ひとり でいたいなーって思うと,20分かけて家まで帰ります。 面 ということは,状況によって変えるということですね。そのとき20分歩く,と。 登下校,スーパーで歩く以外にもありそうですか? 対 あとは・・・ないです。 面 大体これが体を動かすことかな,と。 OQ 質問2 面 Tさんの普段の活動の状況というのは,登下校の歩行,スーパーへ歩くと いうことなんですけれども,こういった活動の状況というのはTさんの健康 にどのような影響があると思いますか? 対 うーん。どんな影響・・・。なんだろうな・・・・。どういう影響があるんだろ う・・・。あー,ええっと,そうですね。ストレス解消とか。 面 ストレス解消。いいですね。 対 あとは・・・。なんかあるかな・・・。あとはない気がする。 面 ストレス解消というと,登下校とスーパーの両方ともそうかな? 対 スーパーは時々ストレッサーになります。 面 行くのがストレスになるっていうこと。まあいろいろ登下校であるいたり,少 し体を動かしてすっきりするときもある,と。 OQ CQ 質問3 面 体を動かしてないというか,登下校とスーパーを歩くくらい,ということです けれども,体を動かしていないことをどのように感じますか? 対 うーん。どのように・・・。うーんと,つまんなくないのかな,と思います。 OQ なんか変化が見られないじゃないですか。体を動かしていないと。 あと,太るのか心配じゃないのかな,と思います。 面 自分の体の状況としてはどうですか?例えば,高校からこういう学校に 入って太るのとか心配になったりしますか? 対 心配になったりします。 OQ でも頭を使うので,食べちゃうんですよね。 面 いっぱい勉強した後は,特に甘いものとかね。 対 なんかお菓子とか買わないと決めても,結局買っちゃうんですよね。 面 つまんなくないのかなーっていうのがあったんですけど,自分ではどうで すか?つまんないなーと思ったりしますか? 対 やっぱり,私,基本体を動かすのが好きなので,でも面倒くさいな,と思う ので,家の中で引きこもっていると,やっぱり何か今日一日何してたんだ ろうって思うし,今日外で何があったんだろうって思うし。 CQ なんか,頭が活性化されてないっていうか,って感じです。 面 高校のときには何かやっていたんですか? 対 部活ですか? 面 部活でもいいし,他の習い事でも言いし。 対 合唱やっていました。 面 合唱。あれも結構お腹を使ったりとか体も使ったりとかしますね。 対 使いました。 面 では今体を動かしていないことで感じることとしたら,元々体を動かすのは 好きだけど,今動かしてなく,ちょっとつまんないかなーとか,あるいは,動 かさないのに結構勉強して食べちゃって,太ったりすることも少し気になる なということですね。 OQ 質問4 面 今は登下校の歩行,スーパーに行ったときの歩行,っていうことなんです けれども,今のままの活動状況でいることの良い点,あるとしたら何でしょう か? 対 良い点・・・。ストレスが少ないことです。あとは・・・。ないです。 面 ストレスが少ないことっていうと,具体的にどのような感じですか。 対 やっぱり外を見ていると,何か気持ちが晴れるって言うか,一人で歩いて いるんで,自分を見つめなおすことができるっていうか。で,何か,気持ち をリセットできるみたいな感じで。 あとは買い物に行ったりすると,色々なものがあって,いいかなーと。 面 ではいい点としては,ストレスが少なくなる,ということですね。 OQ OQ 質問5 面 今のままの活動状況でいることの悪い点があるとしたら,これは何でしょう か? 対 多分このままだと体重が増える。 OQ あとは・・・,あとはあんまり体を動かさないので,骨も弱くなるんじゃないか と思います。 で,一番最初のとかぶるんですけど,あんまり運動しないで食べてばっか りなので,体調も悪くなるんじゃないかと思います。 面 バランスがちょっと・・・。勉強して食べて動かずにっていうのが続くと ね・・・・。 対 だいたいそれくらいです。 質問6 面 体を動かすということに関していうと,この先どのように変えていきたいと思 いますか? 対 この先・・・。ちゃんと,筋肉をつける運動をしたいなと思っています。 面 具体的にはどのようなことを考えていますか? 対 ジムに行きたいな,って。 面 他にもどうでしょうか? 対 1人じゃつまらないので,誰かと一緒にジョギングとかしたいなーっていう のはあります。 OQ OQ OQ ジョギングとかじゃなくても,球技が好きなんですけど,球技とかできたらい いなーと思います。 面 1人じゃなくて,誰かとやれるものですね。今は筋トレ,ジムでやるのと,誰 かと体を動かすというものがでたんですが,まだ他にもありそうですか? 対 特にないです。 面 今,ジムに行って筋トレするのと,誰かとジョギング,球技できたらいいなー ということなんですけれども,Tさんにとってはどちらがやりやすいというの はありますか? 対 私はたぶん,ジムのほうがいいかな,と思います。 面 これは近所にあるとかですか? 対 ちょっと遠いんですよね・・・。ちょっと遠いから,お金もかかるかもしれない なと思います。 面 やりやすいとしたら・・・ 対 自分の時間で行けるので,ジムの方がやりやすいです。 OQ CQ CQ 1人でやらないとなると,時間が決まって,その時間に行かなくちゃいけな くなるじゃないですか。そうなると,何かあったときに嫌だなーと思います。 面 相手の時間にも合わせなくちゃいけないですしね。場所も取ったりするか もしれないですし。今は学校の中は忙しくないですか?例えば,ジム行く 時間とかはありそうですか? 対 ありそうなんですけど,お金がないです。 面 障害があるとしたらお金かな,というところですね。 CQ 対象者ID:E 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Sさんは普段どのくらい体を動かしていますか? 対 どのくらい・・・。学校の行き帰りの徒歩と,あと体育の授業の時と,ぐらい ですかね。 面 学校の行き帰りは何分くらい歩くんですか? 対 片道20分くらいです。 面 体育は週に? 対 一回です。90分くらいです。 面 他には動かしていることってないですか? 対 あとは自転車に乗って街を・・・みたいな・・・。街を散策とか言わないか。 OQ OQ OQ OQ ちょっとどっか遊びに行くときに自転車に乗るとか。 面 通学は定期的というか,決まった時間にという感じですが,自転車に乗っ てなどは,そういう機会があるときに,という感じですね。あとはどうでしょ う。 対 あとは,テレビ番組の体操を親と一緒にやったり・・・。ダイエットのために 面 テレビの体操くらい。それもやろうかなっていうとき? 対 たまたまテレビを見たときに,やっていればやるみたいな。 面 かなり不定期な感じですね。 対 不定期です。全然。 面 では,大体定期的にやっていると言えば,通学と体育というくらいでしょう か。買い物とか体操というのは・・ 対 ほぼやっていないっていうか・・・。 OQ CQ 質問2 面 Sさんの普段の活動状況というのは,登下校と週一回の体育がメインだと 思うのですが,これがSさんの健康にどのような影響があると思います か? 対 影響・・・。 面 生活習慣とか,活動状況が,どういう影響を・・・ 対 影響・・・。でも,基本的に私一人で歩くの早いんですよ。だから多分,そ のくらいの運動にはなっていると思うので,体重は変わってないんです よ。 体重変わらないのと,みんな太ったとか言ってるけど,私基本的に歩くの 早いので,それがいい運動になっているんじゃないかと。 OQ たぶん,そんな太らないし,まぁ一応病気とか怪我もしてないから,それく らいの運動でいいのかな,とか,そういう風に思っちゃったりとか。 面 今の状況ですごい悪くなっている訳ではないという感じですね。あとこ の,体重とか,太らない,病気,以外にも何かありますか? 対 あ,でも・・・。なんでもないです。でもなんか,中学・高校って,超バリバリ 運動してたんですよ。 OQ 部活とかあって,その時に比べると,全然運動していないので,食べる量 がほとんどないです。 食べないです。ほとんど食べないです。家帰っても,そのまま寝る,みた いな。それも体重が増えないところに。 多分,でも,それでも病気とかしてないから,いいのかな,って。栄養取れ てないと思うんですけど。 面 運動していた時は食べたと。 対 運動していた時はすごい食べてました。 面 ちなみにどんな運動をしていましたか? 対 卓球部です。部長とかやっていました。毎日毎日部活でした。 面 結構激しいですよね。 対 激しいです。それで室内温度40度くらいの中で,必死になって・・・。 面 それはわざとそうやってるのかな? 対 いえ,閉めなきゃいけないんですよ。ドアを閉めて,風と光が入ってき ちゃうといけないので・・。夏は地獄でしたよ。 OQ CQ そのせいもあって,中学の時はむっちゃ食べてました。 高校に入ってからは部活入ってないし,大学に入ってからも部活入って いないので,運動量はすごく減りました。 高校の時は体育の授業の時間がもっとあったし,週3くらいだったんで す。 で,毎朝自転車で20分かけて,プラス徒歩とかあったので,それに比べ たら運動量は減ったけど,食べなくなったので・・・。でも別に健康には特 に・・。 面 いまのところは影響がない・・・というか。 対 悪い影響はないかな,って感じです。 質問3 面 中学校のときに比べたら動かしていないということなんですが,体を動か していないということをどのように感じますか? 対 確かに,体が重くなったなと思います。動かしづらいなって思います。 体重とか特に変わっていないけど,脚が重かったり,多分絶対50メートル 走を走ったら,すごく遅いなーと。 汗をあまりかかなくなりました。あとは,今年は特に運動していないことも あって,汗かかないですね。 自分でも驚いているんですけど。危ないなと思っているんですけど。 OQ 面 変化は随分感じているんですね。 対 危ないなと思っているんです。正直。体を動かさなくちゃな,と思っている んです。でも体を動かす時間もないですし。 面 危ないっていうのは,具体的にどういうことでしょうか。 対 たぶん,今は体大丈夫だけど,いつか体に病気が出そうだし。 OQ 今年もインフルエンザかかるんじゃないかとか。あります。 体重もきっと,いつかボンってでてくるんじゃないかなってすごい心配に なるんです。 面 駅から徒歩2・3分の学校だったら歩かないもんね。遠くてよかったです ね。他にも感じるところはありますか?体重は変わっていないんだけど重 い,とか,汗かかない,などありますが,他にもありますか? 対 あ,でも,胃が痛くなりました。もともと消化器系が弱かったんです。中学 の時もあったんですけど,なんでか最近特に多いんです。 OQ 今年学校入ってから,運動始めてない時から・・・。 なんか消化してないのかわかんないんですけど,胃と腸がよくっていうの と,便があまり出なくなりました。 面 消化器系がね・・・。 対 健康じゃないんだって,思いました。 面 ではもう,体の重さだけでなく,内臓系がちょっと・・・ 対 そうです。やられてきているんです・・・。 質問4 面 今は登下校と体育,という今のままの活動状況でいることの良い点をあげ るとしたら,どのようなことがあるでしょうか? 対 良い点・・・。良い点? 面 今のままでいることの良い点は何でしょうか? 対 ない・・・です。たぶん,悪いとは思いますけど,でももしこの今の状況で 体重も特に変わらず,このままで病気も特にせずいったら,自分にはこの 運動量があってるんだなっていうのがわかるんですけど。 OQ OQ 健康維持にはいいんだろな,っていうのはわかるんですけど。 面 自分には,もしかしたら,このくらいのほうがいいのかな,っていうことです ね。 対 中学校のときは運動量が激しすぎたのかなっていうのは思います。 面 他にもまだありそうですか? 対 うーん。ないですね。 面 最初からないって言っていましたもんね。 OQ 質問5 面 逆に,今のままでいることの悪い点。これまでと重複してもいいのです が,悪い点を挙げるとしたら何でしょうか。 対 予想ですけれども,多分このままでは,体調も悪くなってくると思います し。 OQ まぁ,体重もいつか増えるんじゃないかって。 免疫力も落ちたりとか・・・。色々なことがあると思います。 多分,骨もろくなると思います。うーん。なんか将来運動できなくなりそう ですね。なんか周りの友達はみんなできてるのに・・・。 60歳くらいになったら,なんかゲートボールみたいな。できない,みたい な。私,足腰弱い,みたいな。そういうことが起こりそうです。 面 では結構,今のままでもいいなと思いつつも,ちょっと・・・ 対 心配なところがあります。今は若いっていうのもあるし,10代だし,なんと か維持できているのもあると思うんですけど,20代・30代になったら変 わっていくと思います。 全然違うと思います。もっと運動しておけばよかったって後悔すると思い ます。 面 今は体調が悪くなるんじゃないかとか,体重とか,免疫・骨など結構あげ てもらいましたが,他にはまだ悪い点はありそうですか? 対 なんか,いざというときに逃げられなさそう。地震があったときとか。脚が遅 いから置いて行かれたみたいな。 面 災害の時ですね。 対 くだらないですけど。 面 でもさっきも,動くのがちょっと・・・と。走れなくなるんじゃないかとか。言っ てましたよね。 対 多分絶対足遅くなって,体が重くなっているんですよ。 面 その辺関連してそうですね。逃げられなさそうとか,走れないとか。 対 恐怖感を感じて・・・・。いざという時に使えないと・・・。 面 例えば,何か襲われそうになったりとか。学校からの帰り道も危ないです よね。 対 変質者が出ます・・・。 面 このくらいでしょうか。 OQ 質問6 面 体を動かすということに関して言うと,この先どのように変えていきたいと 思いますか? 対 もっと運動量を増やした方がいいかなと思いますね。多分,体育の90分 も,2・3年生になったらなくなりますよね。だから,そしたらもう徒歩しかな いじゃないですか。 OQ 周りの友達は結構ジムに通ったりしているんですよ。だから,それもいい かな,って。 でなんか,正直運動すると,確かにストレス発散とかになるんですよ。体 育終わった後はすごく楽しいですし。 これからきっとストレスがたまることもあるだろうから,もっと運動はしたい なっていうのは思いますね。ジムいいな・・・。 面 ジムは結構行っているんですね。 対 結構行っていますね。家族で行ったりとか。 面 家族はいいですね。お金も払ってもらえますし。 対 自分だと結構大きいですね。 面 一人暮らししちゃうとなかなか行けないけど,今家族の枠というか,割引 みたいなのもあったりしますしね。 対 あとバランスボールもやってみようかと思うんですよね。 面 持っているんですか? 対 持っていないです。テレビ見ながらとか。テレビ見ながら何か運動できる とか。ご飯作りながらできる運動とか,そういうのができたらいいですよね。 CQ 何かしながらっていう,忙しいながらもできるっていうのがいいです。 面 今出たのだと,ジムとかバランスボールとか,何かしながらとかでましたけ ど,まだ何かありますか? 対 うーん,何だろ・・・。でもまぁ,忙しいっていうのもあって,なかなかできな いですよね。やっぱり何かしながらじゃないと・・・。 面 今出たジムとか,あるいはその何かしながらっていうところでいうと,どっち がやりやすいとか,やりたいなーというのはありますか? 対 多分何かしながらだと思います。 OQ OQ ジム行くのはお金のこともあるし,いいなっていうのはありますけど,時間 もなかったり,ないっていうか,なかなか作れないなっていうのは思うの で,何かしながらって言うほうが効率的かなって思います。 面 今浮かぶものっていうのは,何かしながらやるっていうものはありますか? 対 料理作りながら踊ったり,わかんない。全然何があるのかわからない。 例えばテレビ見ながらバランスボールとか,テレビ見ながら踊ったりとか。 あと,自転車みたいな。あれもお金かかるな。置く場所もないし。 面 でもやるとしたら,まずやるなら,お金もかからないし,家の中でできるこう いうものがいいかな,ということですね。ありがとうございました。 OQ 対象者ID:F 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 普段はどれくらい体を動かしていますか。 対 普段・・・,普通の速さの歩きで,15分くらい歩いています。 面 それは何で歩いているんですか? 対 家の周りを歩くときとか,今はほんとにサークルも引退しましたし,運動す る機会がほんとにないので,家の周りを歩くくらいしかやっていないで す。 面 これは,頻度はどのくらいでやっているんですか? 対 多い日は,1日3・4回とか5・6回やるときもあれば,一回も家からでないこ ともあります。 面 では,定期的な散歩というよりは,行きたいなーというときに,行くと。 対 気分転換で外に行きたいなーというときに行きます。 面 他には何か,体を動かすようなことは。 対 家でよくストレッチしています。 面 これはどのくらいやっているんですか?頻度とか回数とか。 対 これも同じように気分転換で1回5分くらいのやつを暇があれば結構3回く らいの時もあれば,1回の時もあるし。 面 結構気分転換で今は体を動かすことが多いと。 対 そうですね。 面 ストレスが高いんですかね。 対 そうかもしれないです。 面 では,家の周りを歩くのと,ストレッチということですね。他にもまだありそう ですか? 対 先月までは週に1回剣道はしてたんですけど,今はやっぱりちょうど幹部 交代の時期で,上が練習に行っちゃいけない時期なので・・・。 面 それは大学の部活ですか? 対 サークルですね。行くに行けなくて・・・。 面 では,それ以来はあまりやっていない,と。週1回やっていたんですね。 対 はい。先月まではそうでした。 面 では剣道やめてからは,本当に家の周りを歩くか,家の中でストレッチくら いになってしまう,と。特に最近は。 対 そうですね。 OQ OQ OQ OQ OQ OQ CQ 質問2 面 現在のSさんの活動状況というのは,Sさんの健康にどういう影響があると 思いますか? 対 筋力が落ちてると思います。運動不足だなーとは感じるんで・・・・。 面 それがどのような影響とかというのはどうでしょうか? 対 うち今6階に住んでるんですけど,ときどき階段上るんですね。前は息切 れしなかったんですけど,息切れするようになって,ああ体力が落ちたっ て。 OQ OQ そこでもうやめようって思っちゃうんですよね。 面 何をですか? 対 階段を上るのをです。この状況でいきなりやると,ああもうやだっていうの が,あんまりよくない傾向だな,と思います。 OQ 遠まわしな影響があると思います。 面 剣道をやっているときにはなかったんですか? 対 防具をもって駆け上がっていました。 面 そうなんですか。すぐに落ちちゃうんですね。 対 剣道をやっていたっていっても,やっていた時期はTに住んでいたんで。 面 引っ越したんですか? 対 はい。実家に戻ったんです。Tのときは3階だったんで。3階くらいだった ら・・・。 面 6階はちょっと高いよね。 対 そうですね。それに引退して1年以上経つので。 面 では,健康への影響っていうと,体力的に落ちているかな,ということです ね。あと筋力が落ちているとか。運動不足を感じるとか。 対 自分の内面に対する影響っていうのがまだわからない。わからないです ね。 面 例えば,気分転換が多くなったっていうことですが,そういう意味での やっている頃と今の違いって何かありますか? 対 思いっきり汗をかくのが好きなので,さっぱりした気持ちがないかな,と思 いますね。 面 歩くとか,ストレッチでは汗をかかないですよね。大体このくらいですか ね。 CQ CQ OQ 質問3 面 体を動かしてないことをどのように感じますか? 対 どのように・・・。うーん。どのように・・・。不安に感じます。 面 不安に感じる。不安というのは具体的にどのような不安ですか? 対 このまま太り続けるんじゃないかとか。 OQ OQ このまま体力落ち続けるんじゃないかとか。それは感じますね。 面 これは動かさなくなってからということですか? CQ 対 そうですね。もともと体型については気にしていたので,それで更に運動 が少なくなってってなると,余計気になってますね。 面 体型と,あと体力も落ちるんじゃないかと。体力の面では息切れすると か。筋力が落ちているのは感じるところはあるんですか? 対 変な基準ではあるんですが,後輩を持ち上げられなくなったというか。 面 変な基準ですね。 対 うちのサークルは飲みサーなんで,それで後輩を私が3年の引退直後く らいは後輩をヒョイとできたんですけど,こないだの飲み会では引きずっ ちゃって。コイツ重い,ってなって。 面 持ち上げられないと。 対 持ち上げられなかったです。腕の筋肉が落ちたなーと。 CQ 階段を駆け上がれないというので,足の筋肉が落ちたなーって思いま す。 面 剣道は足も腕の筋肉も使いますもんね。この体力の低下と不安は結構関 連した感じですね。 質問4 面 今のままのSさん,今は家の周りを歩く,ストレッチということですが,今の ままの活動状況でいることのいい点というと何かあるでしょうか。 対 いい点・・・。少なくとも,体は動かしている点ですかね。 面 まったく動かしていないわけではない,と。他にはありますか? 対 一応,気分転換になっているかな,っていう・・・。うん・・・。 面 そのようなところでしょうか。いい点としては。 OQ OQ 質問5 面 今のままの活動状況でいることの悪い点,さっきと重複するかもしれませ んが,悪い点を挙げるとしたらどのような点でしょうか。 対 ちょっと運動量が少ないかなって。 面 さっきと結構重複しちゃうかもしれないですね。さっきのものだと,筋力低 下とか息切れ,運動不足とか,さっぱり感がないとか,そういうところでしょ うか。 対 そうですね。 面 大体さっきと同じような感じでしょうか。 対 あと,頻度が決まっていないことかな。頻度っていうか。行かない日,まっ たく動かない日っていうのがあるんで。 面 家の周りの散歩とかストレッチとか,全くしない日があると。 対 ありますね。 面 だいたいそんなところでしょうか。 対 そうですね。 OQ 質問6 面 Sさんは,現在はストレッチとか,散歩ということですが,この体を動かすっ ていうことに関して言うと,この先どのように変えていきたいと思いますか。 対 もっと汗かいてやりたいです。汗かくことをもっと週に2・3回とかやりたい ですね。 面 何か具体的にやりたいこととかありますか。 対 とりあえず剣道やりたいです。剣道やりたいです。 面 今はこれから将来的にやるとしたら,週に2・3回できそうな場所っていう のはありますか? 対 一応小学校のときに行っていた道場か,大学のサークルに顔出すか,一 応ありますね。最悪,高校に行くこともできるので。 面 高校の部活ってことですか。 対 はい。高校に顔出すってことです。 面 このくらいやって汗をかきたい,と。他にもやりたいこととか,やった方がい いなということはありますか? 対 あとはランニングとかやりたいですね。体力ほんとにないので。 OQ OQ CQ OQ すごい体が大きくて筋力があって,体力があるように見られるんですけ ど,人並み以下なんですよ。 面 体力っていうか,持久力なのかな。 対 持久力ですね。ほんと人並み以下ですね。 面 剣道って持久力は必要ですよね。 対 必要ですね。 面 3分前に倒す,と。 対 大抵はその勢いで。 面 ランニングと剣道,あとはやりたいことってありますか? 対 テニスをやりたいです。大学1年生のときに少しだけやったことがあって, 楽しかったなーと。 面 結構体を動かすものが多い感じですね。 対 そうですね。体を動かすのは好きなので,機会があればやりたい。 面 やるとしたら,こういう・・。前に動かしていたっていうのが,比較的強度が 高い運動を選んでいるのかもしれないですね。剣道とかランニング,テニ スだったら,一番やれそうとか,やりたいものっていうと何ですか。 対 やるのが簡単なのはランニングかテニスだと思うんです。 CQ OQ OQ ランニングだったら,自分が勝手に走っていればいいし,テニスはコート を借りて,友だちを誘えば結構できるので。 面 ランニングは,家の周りを走る感じですか? 対 そうですね。近くではないんですけど,ちょっと行ったところに土手がある ので,そこかな。 面 もし走るとしたら,どのくらい走るとかありますか。距離か,週に何回とか。 対 多分すぐにばてると思うので,5キロ行けたらいいな,と。 CQ OQ 面 走るんだったら,5キロくらいがいいかな,と。さっき,簡単なのはランニン グとテニスって言っていましたが,剣道はでは・・。 対 防具がないとできない。 面 やりたいものといったら,剣道ということになりますか? 対 です。やりたい。 面 やりたいのは剣道で,やりやすいのはテニス,ランニングだと。 OQ CQ 対象者ID:G 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Kさんは,普段,どのくらい体を動かしていますか? 対 えっと,学校に行くときの通学とか,バイトでちょっと動くくらいしかしてな いですね。 面 具体的にどのような・・・ 対 歩く・・・ 面 通学は歩く時ですね。どのくらい歩くのですか? 対 大体家から10分くらいですね。往復で,トータル20分くらいです。 面 アルバイトはどのくらい動きますか? 対 大体6時間くらい入っているので,その時間は常に動いていますね。 面 バイトは週に何回くらいですか? 対 週に2回くらいです。 面 他にも体を動かすことはありますか? 対 他には全くしてないですね・・・。 面 全くないですか・・・。学校は週に3・4回で,20分歩くのと,バイトは週に2 回くらいで6時間くらい動いている・・・。 対 あとは,家事で掃除したりとか・・・。 面 これは不定期ですか? 対 はい。そうですね。 面 このようなところでしょうか? 対 そうですね。 OQ OQ OQ OQ OQ OQ CQ OQ 質問2 面 現在のKさんは,通学とバイトがメインなのですが,Kさんの普段の活動の 状況というのは,Kさんの健康にどんな影響があると思いますか。 対 どのような・・・。うーん,まったく動いてないわけではないので,そんなに 体力低下っていう意味ではそんなにないかな,って思うんですけど,別に 健康増進っていうのはあんまり意味がないというか・・・。 面 健康度が高まるわけではないかな,と。他にも何かありますか? 対 うーん・・・。そんな感じで・・・。 OQ OQ 質問3 面 体を動かしていないこと。すごい動かしているわけではないと思うのです が,今の状況はどのように感じますか? OQ 対 実際に,小・中・高と部活に入ってて,常に体を動かしているっていうよう な生活をしていたので,もうちょっと時間とか,余裕があれば運動したい な,とは思ってるんですよね。 面 小・中・高は何をやっていたんですか? 対 小・中はバスケットボールで,高校はバトミントンをやってたんですけど。 面 では結構激しいんですね。それに比べたら,入学してからは全然動いて いないんですね。 対 そうなんですよね。 面 何か体の変化などはありますか? 対 太ったとか,代謝が悪くなってきたりとか。 面 そのようなことは実感しますか? 対 うん。 面 はい,わかりました。 OQ OQ OQ 質問4 面 今のまま,通学で20分歩くのと,バイトの6時間の活動という,この状況で いることの良い点があるとしたら何でしょうか? 対 良い点・・・。うーん・・・。何か,時間,ゆとりがあるというか,運動に費やす 時間がとられないので,まぁ自然に生活できるというか。 面 そんなに無理もしなくてよい,と。他にもまだありそうですか? 対 うーん,でもやっぱり動かした方がいいんだろうなーとはいつも思ってい るんで。うん。 面 では,いい点としては,時間のところという感じでしょうか。 OQ OQ 質問5 面 今のままの状況でいることの悪い点。最初には健康増進ではないかなー という感じを言っていましたが,他にも何か悪い点は浮かびますか? 対 なんか,気分転換とかで体を動かしたり,もしいつも習慣化してたら,なん かその,また走りにいこう,とか体を動かそうとかで気分転換できるので, でもまた新たにやろうと思うと,労力というか,エネルギーがいるので・・・。 面 ではちょっと今は,よしやるか!といっても,なかなかできないという感じ ですね。 対 そうですね。なかなかできないです。 面 では今は,不健康ではないけれども,健康でもない,と。必要もないから そんなに体を動かしていないということなのかもしれませんが,ではいざ やろうと思うと,動かさずにやっぱり面倒だなと思って,動かずに今のまま かなっていう感じですかね。そんなところでしょうか?他にもまだありそう ですか? 対 うーん。そんな感じです。 OQ OQ 質問6 面 体を動かすことに関して,この先,具体的にどのように変えていきたいで すか? 対 うーん,ちょっと習慣化して,少しでもなんか散歩とか,なんか行けたらい いなーとは思っています。 面 散歩だと,具体的に,どこを歩くとか,週に何回くらいとかっていうイメージ はありますか? 対 うーん,週に2・3回とか,なんか,時間の余裕があるときに,っていう感じ ですね。 面 では特に,何歩歩こうとかではなくて,さっき言っていたみたいに,気分 転換するときの運動よりもちょっと散歩しようとか,そういう感じですか。 対 そうですね。 面 散歩以外にも何か今後やっていきたいこととか,変えたいことってありま すか? 対 できれば,みんなでなんか楽しみながら体を動かせたらって思っている んです。 面 バトミントンとか。 対 そうです。バスケットとか。なんか1人で走ったりとかしたんですけど, ちょっと飽きちゃって。 面 ちょっとつまんない。 対 つまんないっていうか,うーん。 面 そういう機会っていうのは,バスケットとかバトミントンとかやる機会は。 対 今はないですね。うーん。なんか,なかなか人を集めるのも大変ですし, 遊びでスポーツにいくとか,突発的にはあるかもしれないですけど。 面 習慣にはなっていない,と。今後変えていくとしたら,散歩みたいなもの の習慣的にやっていくか,みんなで単発よりも,少し習慣的に集まってと いうことでしょうか。だいたいこのようなところでしょうか。他にもありそうで すか。 対 こんな感じです。 OQ OQ OQ 対象者ID:H 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Tさんは,普段,どのくらい体を動かしていますか? 対 えっと,ここ最近はですね。する時は3時間くらいの運動で,けっこう強め のテニスとか,激しめの運動をしています。 面 他には何かしていますか? 対 そうですね,気が向いたら歩いてみたり,とか。 OQ OQ あとは,スポーツが好きなので,このシーズンだとスノボにいったり,スキー に行ったりが多いですね。 面 これは3時間というと結構強い強度でやっていますが,定期的ではない, ということですか? 対 そうでうすね,大会が近づくと,ほぼ週5とかテニスしたりするときもあります が,今みたいに期間が空いているときは週1したりしなかったりですね。 面 ではシーズンによって,体の動かし具合が違うということですね。 対 はい,そうですね。特に,夏場は多いですけど,冬場は少し少なくなりま す。 面 歩くのも,こういうスノボとかスキーとかも,定期的ではないということです か? 対 そうですね。でも基本,その外出することが多いので,毎日結構歩いては いると思うんですけれども。心がけて歩こうというわけではないです。 面 どうでしょう。まだ他にもありそうですか?今までは,テニスや歩くことのほ かに,スキーやスノボなどがありましたが・・・。 対 あとは,そうですね。すごく運動したいときは,昔はジムに行って,走ったり とか,あとは水泳をしたりとかしていました。 面 今は,それほどしていない,という感じですか。 対 今はしていないという感じですね。 面 だいたいこんなところでしょうか。 対 はい。 CQ CQ OQ CQ 質問2 面 今挙げてもらったのが,Tさんの普段の活動状況だと思うのですが,この 普段の活動状況というのは,Tさんの健康にどんな影響があると思います か。 OQ 対 はい,そうですね。えーっと,まぁ,2つくらいあると思うんですけれども。ま ずは,みんなとやることでストレス発散になるということが1つと。 もう1つは,やっぱり運動することは体にいいことじゃないかなあと思うの で。 その分いっぱい食べることもできますし,筋肉もつきますし,太らないし, 体にいいと思います。 面 では,健康の影響というと,結構いいことがあるんじゃないかということです ね。今の活動状況で,ストレス発散など,比較的からだによさそうな活動が できているかなという感じですかね。 対 はい,そうですね。 質問3 面 オンシーズンではない,今のときというのは,多少運動量が減っているか な,と思うんですが,動かしていないと感じること,あるいはどのように感じ ることがありますか 対 体がたるんでるな,と感じたり。やっぱり家に引きこもったりデスクワークが 好きではないので,動かしていないと,外に出て行きたくなったり,とか。 OQ やっぱり運動したい,っていう気持ちをすごく強く感じます。 面 では,気分的にまずひとつ,外に出たいと感じるということですかね。あと は,体がたるんでるっていうのは,具体的にどのようなことですか。 対 たるんでるって感じるのは,運動していないと,筋肉とかも少し落ちたなっ て感じたりすることとか,やっぱりその分脂肪が増えて,お腹周りにいつも 以上にお肉が乗っているような気がしたりとか。 OQ 実際にのっていなくても,そういう気分になります。使っていないので。 面 ではやっているときと,やっていないときの差ははっきりわかるんですね。 対 そうですね。 面 では,体としてもたるんでる感じがあるし,心理的にも体を動かしていない ときっていうのは,外に出たいなと思うんですね。 対 はい,感じます。 面 はい,それでは他にもありますか? 対 健康によくないっていうふうに感じます。動かさないことは。 面 はい,わかりました。 OQ 質問4 面 今は,大体テニスとか,歩くとか,シーズンになれば,スノボとかスキーを やるということですが,今の活動状況でいることの良い点を挙げていくとす ると,どのようなものがあるでしょうか。 OQ 対 無理をせずやりたいときにやっているので,そういう意味では縛られてい ないというのがいい点だと思います。 あとは,運動量が少ない方ではないと思いますので,そういう意味では健 康的なのかな,と感じています。 面 他にもまだありそうですか? 対 なんか,その運動すること自体が,1人ですることが少なくて,集団でする ことが多いので,よいコミュニケーションの場になっているっていうのは,い いことかなあと思います。 面 テニスもそうですもんね。 対 新しい場所に行けたりするのもいいですね。スノボとかもあんまり行けない ですし。 面 旅行みたいなところはありますよね。 対 はい,気分的には。 OQ 質問5 面 では反対に,今のままの活動でいることの悪い点を挙げるとしたら,どんな ものでしょうか。 対 忙しくなると,運動量が極端に減ること。卒業論文のときとか,テスト勉強と か,就職活動のときとか。 OQ 時間がないと,運動しなくなります。 面 それによって,引き起こされる悪いことというのはありますか? 対 気分転換があまりうまいこといかなくなります。 CQ あと,やっぱりその,昔から運動してきたので,家にいるとうずうずしたくな ります。そういうのが良くない点ですかね。 面 なんか,あんまりじっとしてられない感じなのかね。 対 そうですね。 面 体を動かしているほうがいい感じですね。 対 大体,そういうときって,一人でいることが多いので,勉強する時とか。 そういう意味でも,人と話す量が減るのが嫌な感じですね。 面 では,体を動かすのと,人とあったりコミュニケーションが結構一緒になっ ている感じですね。 対 そうですね。 面 なるほど。他にも何か悪い影響というのはありそうですか。今のところ,気 分転換ができないということとか,人と話す機会が減るなというのが悪い点 としてありますが。 対 あとは,別に時間がなくても家でストレッチしたりとか家の中での運動をや ろうと思えばできるんですけど,やらないときはずっとやらないというのが 続くのが,悪い点かな,と思います。 面 はい,わかりました。 OQ 質問6 面 体を動かすということに関して,この先どのように変えていきたいと考えて いますか。 対 えーっと,また生活環境が変わって忙しくなるので,そうなった時にこう今 までのパターンでいくと,その忙しさと反比例して運動量が減るんですけ ど,それに気をつけて休日は体を動かすようにするとか決めて,運動量を 保っていきたいと思います。 面 具体的に何か,体を動かして運動量を保つための種目とか,曜日決めた りとか,やる時間とかというのは,イメージできるものはありますか? 対 そうでうすね,種目はやっぱりテニスが多くなると思うんですけど。 OQ OQ 社内でやっている人の仲間を見つけて,そのコミュニティに入ることですと か,やっぱり地元にかえる分,行っていたジムとかもあるので,夜もし早く 仕事が終わったら,会員になってしまえば行かないともったいないと思うの で,そういうところで習慣づけようかな,と思っています。 あとは,ゴルフとか,新しいスポーツとかを始めていければいいなと思って います。 面 では具体的に言えば,そういう今までやってきたテニスのサークルを見つ けて入るとか,新しいスポーツを始めたりとか,あるいは仕事の時間によっ ては地元のジムに行ったりということですかね。まだ他にもやれることって ありそうですか? 対 うーん。やっぱり,あんまり体を動かすのを自分を一人でするっていうイ メージがないので,テニス以外でも,新しいそういう運動をしているところ で楽しそうなものがあれば挑戦していきたいなーと思っているくらいです ね。 面 一番やりたいなーとか,やれそうだなーっていうのを挙げるとしたら何です か? 対 今だと一番は,やっぱりテニスです。 面 テニスですかね。わかりました。こういうところで仲間を見つけてやったりと いうことが,この先やれることかな,ということですね。 OQ OQ 対象者ID:I 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Tさんは,普段どのくらい体を動かしていますか? 対 週に1回テニスを2時間するか,2週間に1回テニスをするか,です。 面 他には何かありますか? 対 特にはやっていないです。 面 あとは,通学などはどうですか? 対 通学は,歩きなんですけど,5分10分くらいです。すごい近いところなん で。 面 徒歩ですか? 対 徒歩です。 面 週に1回のテニス2時間,あるいは2週間に1回のテニスということですね。 このくらいで他にはどうですか。 対 他には動きはないですね。買い物とかに行ったらずーっと歩きっぱなし で,というのはあるんですけど,でも,そんな息があがるくらいにはないで すね。 面 あと,例えば,運動じゃないにしても,今言ってもらったような,買い物と か,通学の徒歩もそうですが,軽い強度で体を動かすことはありますか。 対 バイトでマックなんですけど,それが週に3回で,3-4時間ずっと立ちっぱ なしで,動きっぱなしでっていうのがあります。 面 などほど,では運動ではテニスをやっていて,立ったりちょっとした歩きで はバイトで週に3回,3・4時間っていうのが当てはまりそうですね。他にも ありそうですか。 対 他は・・・ないですね。 面 はい,わかりました。 OQ OQ OQ CQ 対 質問2 面 Tさんの普段の活動は,テニスと,軽いものとしてはアルバイトに なると思うんですが,このTさんの活動の状況っていうのは,健康 にどのような影響があると思いますか。 対 健康というか,体力維持みたいな。 面 テニスが,ということですか。 対 テニスが,ということですね。テニスもバイトもやらなかったとき,年末とかだ と,体調崩してたりしちゃったので,いくらかからだを動かさないとだめか なーって思っています。 面 実感しているんですね。動かしていないと。 OQ OQ OQ OQ CQ 対 はい。なんか,やるときはすごいやるんで,やらないときはほんとゼロなん で,一気に落ちるというか。 面 では,体調っていうこと以外にも,まだ今の活動状況っていうのは影響す ると思いますか。運動しなくなっちゃうと崩すということなんですが。 対 あの,肩こりとか,そういうのには今ずっと研究室で座りっぱなしなので,動 いたりすると,自然に体全体を動かすとそれもちょっとは解消できるのか な,とか,思います。 面 では,健康としては,やらなくなっちゃうと体調崩しちゃうのと,やっている と,研究室にこもって肩こりになっちゃうのが多少解消されるんじゃない か,ということですね。このほかにもまだありそうですか。 対 健康かどうかわかんないですけど,動かないとやっぱり鬱というか,すっき りしないんで,いくらか動きがあったほうが・・・。 面 精神的なところにもいい影響があるんじゃないかな,っていうことですね。 やっぱりやっていないときっていうのは,気持ち的にも違ってきますか。 対 やってない時っていうのは,本当に研究で忙しい時なので,それもプラス されていう事だとは思うんですけど,でも急に動きたくなる時とか出てくる んで,心理的に影響するかな,と思います。 面 今の話を聞いていると,そのような感じですね。忙しいときって,まさに研 究ばっかりやっていて,体も動かせないし,楽しいほど根つめてやってい るわけではないですからね。 OQ OQ CQ 質問3 面 体を動かしていないということをどういう風に感じていますか。 対 悪いとかっていうことですか? 面 何か,体を動かしていないことを感じる瞬間,あるいは動かしていないこと についてどのように感じるかなどです。 対 動かしていないと,健康に悪そうだなっていうのはすごく感じます。 面 これはどういう時に感じたりしますか。 対 本当,1日中座っていたり,あと土日とか,休みの日でも1日中研究室にい たりすると,動いてないなーって感じます。 面 では,特に今みたいな,研究発表が近いとか,提出が近いときっていうと, 土日もずっと・・・ 対 そうですね,ほぼ。どっちかは空けようと思っていたんですけど。 なんか,本当に全然動かしていないと,急にもう走りたくなったり。なんか, うーん。 面 テニスって,結構ハードな運動ですよね。ハードな運動と,全然動かない ものがどっちかっていうのは結構差が激しいですね。 対 なので,テニスやる予定がないときはバイトは絶対入れたりはして,それで 体を動かすっていうか。っていうのは作ろうとしています。 面 運動の代わりになるかわからないけど,気分転換にはなるかな,ということ ですね。 OQ OQ 質問4 面 今のままの活動,週1回,2週間に1回のテニスとアルバイトという状況です が,今のままの活動状況の良い点を挙げるとしたら,どのようなことでしょう か。 対 ストレス解消,ですかね。 面 ストレス解消。 対 あと,なんだろう。研究を軸に運動の予定とかバイトの予定とか入れている んで,そういう予定的な。 面 計画を立てるときに軸になると。 対 そうですね。ということですかね。 面 これはテニスということですか? 対 定期的な運動が,週3とかだと,平日も行かなくちゃいけなくなるので。テ ニスはサークルに入っているので,コートとかもタダで行けるんですけど。 お茶大のコートとか使ったり。 OQ CQ あと何か,もしジムとか通うとかなると,お金もかかっちゃうんで。 面 では,もうそんなにやろうとは思っても,なかなかできないし,研究も忙しい し,というところですかね。 質問5 面 逆に,今のままの活動状況でいることの悪い点を挙げるとしたら,どのよう なことがあるでしょうか。 対 健康に悪いという事ですね。ずっと座りっぱなしとか。もうちょっと運動した ほうがいいかな,っていうのはあります。 OQ なんか,だんだん若いときはいいんですけど,年とってくると,代謝がすご い悪くなるなーとか。 面 若い時はよかった,と。 対 よかったですね。 面 何か感じますか,若い時の代謝と,今は違うな,と。 対 代謝は,やっぱり,本当に大学1・2年生のときは,ずっとテニスをずっと やっていたんで,あの,冷え性とか,あまり感じなかったんですけど,最近 になってすごい感じて・・・。 面 手足が冷たくなって・・・ 対 はい,手足が冷たくなって。 あと,ほんと風邪を引きやすくなったなと。 面 この辺は,実感するんですね。 OQ 対 実感します。これまでは,風邪なんて自分はひかないって思っていたんで すけど,ここ1・2年は毎年ひくようになって・・・。 面 テニスって寒いなかでも結構やるんですよね。今は,あったかい部屋で研 究するようになって・・ 対 はい,そして何も動かず・・・。 面 若い時っていうか,数年前とは随分かわったな,と。 対 はい。 面 もうちょっと運動したほうがいいっていうのは,自分としてはどのくらいが理 想としてはできたらいいなっていうのはありますか? 対 週2くらいで,本当に思いっきり体を動かすのは,走るのでも,テニスで も・・・。 面 何かしたいな,と。 対 何かしたいです。 面 少しやっぱり足りないし,もうちょっとしたいなというのは感じているんです ね。他にも何か現在の活動状況でいる事の悪い点というのはありそうです か。 対 でもなんか,疲れが変に溜まるというか,運動したときの疲れはなんか,い い睡眠取れるんですけど,ずっと座っているときの疲れは,睡眠も,いい 睡眠が取れなくて,で,またなんか疲れが溜まっていくみたいな。 面 悪循環が続いていくんですね。では,動いている方が,ストレスにもいい し,代謝もいいし,いい疲れがでて,睡眠にもいい,と。そういうのと比べる と,今の状況というのはそんなによくないということですね。 OQ OQ 質問6 面 今後,体を動かすということに関して,この先どのように変えていきたいと 思いますか? 対 でも,とりあえず,週1回はテニスはやって,社会人になるから,お金をちょ こっと出てくるかもしれないから,ジムに通って走るなり,あとはもし何か運 動しやすい場所,公園とかあれば,走るなりなんなりしたいなーって。 面 もっと体を動かしたいな,っていうことですね。今自分の中で,テニスとか, ジムとか,公園で走ったりとか,体を動かすものを挙げてもらったんです が,自分の中でやりやすいとか,やりたいっていうものはありますか? 対 やりやすいっていうのはテニスで,場所とかも準備してくれますし,ジムと かは値段と場所との兼ね合いで,公園とかも近くにないと走りやすい場所 がないとできないかな,と思うので。 あとは,ウォーキングは,やろうと思えばやれるとは思うんですけど,今学 校と家が近すぎて,そんなにできないんですけど,これからどっか引っ越 すと思うので,どうなるかはわかんないんですけど。 面 では,テニスか,行く場所によって,ちょっとウォーキングとか,そういうこと かな,というところですかね。では,体を動かすことに関しては,テニスと か,お金が貯まってきたらジムに行ったりとか,今後行く先によって, ウォーキングとか,何かできればいいな,というところですかね。 OQ OQ 対象者ID:J 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Tさんは普段どのくらい体を動かしていますか。 対 普段は,先ほどの定期的な運動の定義に出てきたような運動を週に1・2 回しています。 面 具体的にはどのような内容ですか? 対 サイクリングとか,それで,休日に,多い時だと1・2時間ぐらいまとめて運 動したりする程度で,平日は逆に普通に歩く以外にはほとんどしないで す。 面 平日の歩くっていうのは,どういう時に歩いているんですか? 対 通学するときに,家から駅までと,駅から学校までで,ちょうどどちらも10 分くらいです。 面 片道だと・・・ 対 片道だと20分,それの往復です。 面 なるほど。では,休日のサイクリング1・2時間するのと,平日は通学で歩 く,と。それ以外にたとえば,サイクリングみたいな,ちょっと運動みたいな もの以外に,通学のような強度の低いもので他にしていることはあります か? 対 あとは,その買い物とか,こう街の中を歩くみたいなのは,週1回くらいあり ます。 OQ OQ OQ OQ あと,家事とかも入るのであれば,そういうのは週末に2・3時間は拭き掃 除とか片付けとかしています。 面 結構しているんですね。 対 はい,まとめて。 面 運動でいうと,サイクリング以外にはやっているものはありますか? 対 続けてやっているものですか? 面 特に続けていなくてもいいんですが,自分が最近やっているものというこ とではどうでしょうか。 対 半年前にはなっちゃうんですが,水泳をやったりしていました。 面 もうやっていないんですね。 対 ここ最近は,修士論文が忙しくてできていないです。 面 では,定期的にやっているものとしては,サイクリングと,あとは通学と,あ と軽いものでいうと,掃除とか買い物というところでしょうか。 OQ OQ CQ 対 はい,そうですね。 面 はい,わかりました。 質問2 面 Tさんの普段の活動状況は今挙げていただいたものになると思うんです が,この普段の活動状況は,Tさんの健康にどういう影響があると思いま すか? 対 やっぱりその,運動したあとに,スッキリするっていうか,汗をかくとスッキリ する感じがあるので,そういう気分転換みたいなそういうのはすごく運動 直後に感じます。 OQ あとは,よく逆にストレスで食べ過ぎたときに,運動するからいいかな,っ ていうような気休め的なものとしても,健康にいいことしてるのかなというの は感じますね。 面 他にもまだ現在の活動量とか,活動状況で影響ありそうなことはあります か。 対 あとは,なんか,そんなに強くはないんですけど,将来的にもというか, まぁ,ずっと倒れずにっていうか,まぁ健康でいられるようにするには,歩 いたりするのは毎日やってたほうがいいかな,とか思いながら歩いていま す。 面 サイクリングは,大体どういうところを走るとか,決めて走っているんです か? 対 割とこう家の周りで休日は遠くまで買い物に行くとかで,ふた駅先に行くと か,あとたまには,河川敷沿いというか,川沿いをひたすら走ったりとか, そういうのも2・3時間走るときは割とそういうところにいって走ったりしま す。 面 では,体の面でも将来を考えていいなーというのと,あと心理的なところ でも気分転換になったりしていいかな,というところでしょうか。まだありそ うですか?健康に対しての影響としては。 対 今直接感じているのは,大体このようなところです。 面 はい,わかりました。 OQ CQ OQ 質問3 面 定期的な運動というところまではいっていないということですが,最近論 文作成などで動いていないようですが,動かしていないということをどのよ うに感じたりしていますか。 対 なんかこう逆に動いていないと,罪悪感じゃないですけど,ウズウズしてし まって,こう動きたいという気持ちがすごく出てきてしまうので,動きたいけ ど現状的に動けない,やらなきゃいけない事っていうギャップがストレスに なります。 こういう気持ちがすごく強くて,なんとか動こうと,逆に通学とかにちょっと 歩いていたのを走ったりとか,そういう感じでとにかく溜まるのをなんとか やめたい,という気持ちが強いですね。 OQ 面 では,今体を動かしていないのは,結構なストレスになっているんです ね。 対 ストレスになりますね。はい。 面 あと,例えばこんな時に動いていないなーと感じるとかってありますか? 対 休日とかで,家で論文を書いたりする時は,本当に一歩も家から出ない 日があって,そういうときは,限界を感じるというか,これで大丈夫なの かっていう。 OQ あと,食べる時も,動いてなくて食べるので,すごく変な感じがするってい う・・・。 なんか,それこそ体に悪いことをしている感じがありますね。 面 例えば,その体大丈夫かな,っていうのは,具体的にどういう不安につな がっているんでしょうか。 対 何か,実際にこう,重く感じてくるので,なんかその時すぐ思いつくのは, 体重とかが増えるとやっぱり食物を勉強している分,よくないな,っていう のがすごくあるので。 CQ このまま重くなってしまうっていうのがあるので,すごい動いて消費した い,すっきりしたいっていう2つですね。 面 では,動かしていないと,体も体重っていう具体的なものもそうだし,主観 的にもちょっと重いなと感じたり,あと,ストレスの方にもつながってきてい る感じですかね。 質問4 面 今のままの活動状況でいることの良い点を挙げるとしたらどのようなところ でしょうか。 対 やっぱり,こう,今の勉強とのバランスみたいなもので,このくらいの頻度 だと無理なく睡眠時間とかを削らずにできる範囲かなというのはあるの で,時期的にバランスは取れているという感じはします。 面 他にも良い点というのはありそうですか。 対 良い点は・・・。あとは,日常生活の中で,無理なくできているというのがあ るので,買い物でサイクリングしたりとか,通学のときに歩いたりとか,なん かこう,無駄なく運動で来ているというのが今なので,そこはいいかな,と 思います。 OQ OQ 質問5 面 今度は反対に,今のままでいることの悪い点を挙げるとしたら,どんなとこ ろでしょうか。 対 やっぱり,まだストレスがたまってしまう弱いレベルの運動なので,もう ちょっと激しい運動とか,ほんとに気持ち良くなれるくらいの運動ができる 時間とかがあればいいなーとか,すごく思いますね。 OQ なんかあとは,自分の趣味みたいなので,何かひとつこの運動続けるみ たいな,楽しみになるような運動をひとつもてたらいいなと思っていて,そ れがないのがちょっと悪いところかなーと思います。 面 では,今のサイクリングとか,通学よりも,もしできるなら,もうちょっとやり たいな,というところですか。 対 やりたいと思っていますね。 面 ほかにも悪い点はありそうですか? 対 あとは,本当に,先ほどの健康上の面で不安になるのと,実際に体重が 増えたりだとか,消費とのバランスが崩れるので,やっぱ運動をした方が いいかな,と感じるのはあります。 面 わかりました。 CQ OQ 質問6 面 体を動かすということに関して言うと,この先どんな風に変えていきたいと 思いますか? 対 先ほどの定期的な活動レベルというところまではいきなりはいかなくても, 自分が1つ何か,このスポーツをやってみようというのを決めて,それを ずっと通す,何かの教室でもいいし,自分でできるものでもいいし,何か のスポーツをやっていきたい。 OQ それは1人でもいいし,できたら仲間みたいな,誰かと一緒に同じスポー ツをやったりとかっていうのをすごく考えています。 面 具体的にたとえば種目でいうと,やってみたいものっていうのはあります か? 対 私は,部活とかサークルがバドミントンだったので,バドミントンをまたやっ てみたいな,というのがひとつと, OQ あとは,今までまったくというか,ほとんどやったことがなかった,バレーみ たいな団体スポーツとか,逆に弓道みたいな,そういうものもやってみた いなというのを考えています。 本当に,こう,楽しくっていうか,自分の趣味でできるスポーツを作りたい なっていうのがあります。 面 バドミントンとかバレーだったらみんなでできそうですね。弓道はひとりで もできそうですかね。 対 そうですね。ひとりでもできそうなので。 面 では,バドミントン,バレー,弓道などが出ましたが,今後一番やってみた い,あるいはやれそうというものは何でしょうか? 対 この中ででしょうか? 面 いえ,ここに今出ていなくても,今後やってみたいものがあれば,それで も大丈夫です。 CQ OQ 対 とりあえず,今はこの3つくらいを考えていて,就職したあととかになるんで すけど,バドミントンとか弓道っていうのは結構やっているところがあるみ たいなので,そういう団体に加わって一緒にやるっていうのはすぐにでき るかなーと思っています。 それを週1とか,週2とかでできればいいなって思っています。 面 サイクリングの方はいかがですか? 対 あ,サイクリングは,もう続けたいと思っていて,はい。 面 新たにやるとしたら,こういうこと,ということですね。 対 そうですね,はい。 面 サイクリングはもっと強度を上げたいですか? 対 強度ですか?そうですね・・・。 面 今はどのくらいの速さで走っているんですか? 対 今は,えっと,街の中を走る時はほんとにふつうに走るペース,一般の人 のペースで走るんですけど,自然の中を走るときには,結構飛ばして,時 速15キロくらいで走ったりしますね。 面 立ちこぎのちょっと手前くらいですか。 対 はい,そうですね。そのくらいの速さで走ります。 面 サイクリングは今と同じような,走る場所があれば続けていくと。新たにや るとしたら,バドミントンとか弓道などがやりやすいかな,ということです ね。 対 はい,そうですね。 OQ CQ OQ 対象者ID:K 面接記録 会話内容 話者:面or対 コード 質問1 面 Aさんは,普段どのくらい体を動かしていますか? 対 体を動かすのは,全く運動をはしていないです。はい。 面 運動ではないとしたとき,もっと軽い程度の,体を動かすというものも含め ると,どのくらい,あるいはどんなことをしていますか? 対 全く動いていないです。あえて言うなら,階段の上り下りくらいです。 面 階段の上り下りくらいなんですね。あとは・・・ 対 全く・・・。 面 全くですか。 対 はい。 面 通学は何分くらいですか? 対 通学は徒歩5分くらいです。 面 近いですね。電車使わずにですか? 対 はい。ほぼ敷地内というくらいなんです。 面 ではもう通学片道5分と,階段の上り下りということですね。 対 あ,あとでも,週に1回非常勤講師で電車を使って移動に1時間くらいの をしているので,あと立ちっぱなしで3時間くらい講義しているので,それ くらいです。動いていると言えば。 面 あとは・・・ 対 後は座ってパソコンをいじっています。 面 はいありがとうございます。 OQ OQ OQ CQ 質問2 面 Aさんの普段の活動状況としては,ほとんど座っているということでした が,こういう活動状況というのは,Aさんの健康にどんな影響があると思い ますか? 対 まず筋肉がなくなっていって,基礎代謝も下がっているだろうと思ったり。 OQ 老廃物とか溜まってそうだなと思います。 面 筋肉がなくなっているっていうのは,何か具体的に感じるときというのはあ りますか? 対 昨日本当に感じたんですけど,服の試着をして,腕の,上腕二頭筋が垂 れ下がっているのを見て,きたーって思いました。 面 実際に見ちゃったんですね。 OQ 対 はい,きたーって思いました。あと階段の上り下りで息が切れやすくなっ たりとかですね。 面 他にも何か健康にこんな影響があるんじゃないかっていうのはあります か? 対 影響・・・。健康にですよね。健康そのものに悪いっていう気はあるんです けど,具体的ななんていうんでしょう,イメージがわかないです。 OQ 高血圧でもないし,そんな太ってきたっていうわけでもないので。はい。 面 漠然と,という感じですね。 対 漠然といけないな,って思うんですけど・・・。 面 精神的なところではどうでしょうか。何か影響ってありそうですか? 対 あー,何か半年くらい前に,1か月くらいジムに行ったんですけど,その時 はなんかストレス解消っていうか,汗かいてすっきりしたんで,続けたかっ たんですけど。あのー時間的余裕がなくなりまして・・・。 面 その時のジムはなぜ行くことになったんですか? 対 そのときは,研究室の後輩と,夏だし,なんか行きたいよねーっていうノリ で行き始めて,はい,はまったっていう感じなんですけど。 面 短く終わっちゃったんですね。 対 はい。 面 なるほど,大体こんな感じですね。漠然と健康に悪そうだということと,動 くとすっきりした感じがあるかな,ということですね。 対 はい,できれば動きたいです。 OQ OQ 質問3 面 体を動かしていない事をどういう風に感じるか,あるいはどんな時に感じ るかっていうのはありますか? 対 うーん。体力がないなーって感じるときが一番,動かしてない体だなーと か,持久力がないなーとか,疲れやすくなったなーとか。うーん。 面 やっぱり実際に体を動かした時に,ああ体が弱いな,というか,体を動か してないなと感じるんですね。 対 そうですね。はい。あとはほんとに,ハリがなくなったっていうか。そうです ね。 面 過去はどうなんでしょうか。例えば,大学院,あるいは大学入る前の活動 量と比べて,どうなんでしょうか。 対 大学4年生のときとかは,毎日自転車通学とか,自転車で30分普通に買 い物いったりとか,テニスも1・2年生のときには週に2・3回やったりとかし てたんで,それなりに気分転換とかはできてたんですけど・・・。 OQ OQ 最近はここ2・3年はほんとにパタリと・・・はい。 面 ではその時と比べると,全然違いますか? 対 全然違います。はい。たぶん,東京にきて,交通の便が発達しすぎて,自 転車に乗らなくなったりしたっていうのがあるんですけど。 面 では,一気に減ったんですね。 対 一気に減りましたね。 面 テニスもしなくなり,自転車もあまり乗らなくなり・・・。 対 はい。家も近いしみたいな感じです。 面 はい,わかりました。 CQ 質問4 面 今はちょっと悪い点に話が多かったんですが,今のままの活動状況でい ることの良い点を挙げるとしたら,どんなことがあるでしょうか。 対 良い点ですか・・・。良い点は・・・,今の活動量で良い点は・・・。あるのか なぁ。 OQ 作業の時間がいっぱい取れる。とか,休日の時間をまったり過ごす方が 今あってるのかもしれないなーって思っているので,疲れをとるとか寝ると か,人としゃべったりとか,そういうことに重点が行っているかなーって思 います。 面 では,結構忙しく体を動かしているときには過ごせなかった使い方は少し できているかもな,っていう感じなんですね。他にもまだ良い点ってありそ うですか? 対 運動しなくて良い点・・・。うーん。あ,お金がかからないです。 OQ ジムに行くとお金がかかるので。こんな感じですね。 質問5 面 反対に,今のままでいることの悪い点,ちょっと重複してしまうところもある かと思いますが,体,心の面,色々あると思いますが,どのようなものがあ るでしょうか。 対 体力,持久力以外ですよね・・・。あー,なんだろう。人と体を動かしながら のコミュニケーションをしなくなったっていうのは,うーん,なんか運動して いる時の方が,コミュニケーションとりやすかったなーって思います。 テニスしながら待ち時間とか,なんか楽しかったなーとか。 面 そうですよね。 対 ジム行ってても,後輩と「どう?」とか話しながらとか,そういうのがない所 が健康面以外ではある気がします。 面 そうですね。何か,運動しているときしかしない話というか,研究室の中で はなかなかしない話っていうのはありますよね。コミュニケーションに影響 があるんですね。 対 それもあった気がします。 OQ 面 他に,体でもいいですし,コミュニケーションでもいいのですが,他にもま だありそうですか? 対 悪いこと・・・。運動しない状況の悪いこと・・・。 面 大体こんな感じでしょうか。漠然と悪いかなというところでしょうかね。 対 そうですね。 OQ 質問6 面 体を動かすっていう事に関して言うと,この先どんな風に変えていきたい と思いますか? 対 変えていきたい事は,できるだけ休日とかも体を動かすものを取り入れた いなと思います。できれば,ジムにもう一回行けるようになりたいなーって 思うので,時間の使い方を変えて,はい。 OQ 体を動かすこと。そうですね,週1でもいいので,もう一回汗かくようになり たいなって思います。 面 今ジムっていうのは具体的に出てきましたが,前の時でもいいのですが, ジムに行っても色々やる事がありそうですが,こんな運動がよかったとか, こういうのをジムに行ったらやりたいとかありますか。 対 私は何か,道が動くやつ,あれが向いていたみたいで,地道に自分の目 標走るって決めて,走るのがいいなと思います。あれが好きでした。です ね。 面 あれをひたすらやる感じですか。 対 あれやったり,あとは,バイクですか? OQ あれとか,あとヨガみたななんかマットの上でストレッチのビデオが流れて て,あれも結構気持ちよかったんで,そういうところですかね。 面 教室でやるようなものはどうですか?ダンスとか。 対 あー,リズム関連はやりたくないです。ああいうのはやらないです。地道に ひとりでやるのがいいです。 OQ でも,テニスとかももう一回できたらいいなと思います。 面 ジムには,テニスコートとかついていないんですか? 対 プールはついているんですが,泳ぎが苦手なもので。陸上向きなんで す。 面 テニスは大学の敷地内にあるグラウンドでやるんですか? 対 それとかもありますし,サークルの社会人の先輩とかもいますので,学外 で場所をとってやることもありますけど。 でもちょっとイベント的になりそうなので,定期的ではないと思います。 CQ CQ 面 もし,ジムでやるそういうマシンで走ったり自転車こいだり,あるいは他の 人とテニスやるとかいくつ出ていますが,もしこのうちやるとしたら,やりた いとか,あるいはやれそうだなーとかを選ぶとしたら,どれがやりやすそう ですか? 対 ジムですかね。一番現実的でやれそうなのは。 面 どんな環境が整ったらできそうっていうのはありますか? 対 環境は,とりあえず,時間・・・・。休みがあるのが一番ですね。 面 1人でも行けそうでしょうか? 対 1人でも行けそうだと思います。 面 行く場所も,あの辺だなっていうのは決まっているんですか? 対 はい,大学と自宅とジムがちょうど三角形の距離なので・・・ 面 すごい近いんですね。 対 はい,徒歩5分くらいです。 面 では行くとしたら,一人でも行けるし,すぐに行けるし,ジムにいくのがい いかな,ということですね。 OQ OQ CQ CQ