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5 May 2014 Vol.44 Medical Device Daily ライフサイエンス分野の魅力的な新技術に積極投資……1 Hospital Employee Health 米国の針刺し発生件数、いまだ年間 32 万件……4 Hospital Employee Health 滑り・つまずき・転倒…… 医療スタッフがさらされるリスク……5 Same-Day Surgery 患者の意思決定をサポートする支援ツール……7 Healthcare Risk Management 物静かな患者は医療訴訟を起こしやすい!?……8 メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ 犬に教わる次世代デバイスのヒント……9 The Academia Highlight[44] ここまできたバリアフリー支援機器……10 by うのめ・たかのめ Medical Device Daily……11 Kawanishi Hotline……19 カワニシホールディングス トムソン・ロイター AHC Media LLC May 2014 Vol.44 ライフサイエンス分野の 魅力的な新技術に積極投資 Seventure Partners 社 CEO Isabelle de Cremoux 氏インタビュー ――John Brosky/MDD 欧州エディター Isabelle de Cremoux 氏 万ユーロを出資した最初の投資家たちは、このフ ァンドでの投資を始めたがっていました。3 月には、 は、プライベート・エクイ 最初の 2 件の取引を発表できると思います。 ティ(PE)・ファンドを運用 する Seventure Partners 欧州の PE 投資は、現在どのような状況だ 社(仏)の CEO である。 PE ファンドでは、機関投 とお考えですか? 資家、年金基金、事業会社、 個人等の投資家から資金 de Cremoux 2013 年 2 月に資金調達を開始した を集め、ファンドマネジャ 時には、特に欧州、それもライフサイエンス分野 ーが発掘した投資先に投資し、事業支援を行ってそ は厳しいと口々に言われました。 の企業価値を高め、株式公開や第三者への譲渡など 欧州のマクロ経済の現状は、非常に複雑で極め によって売却益を得る。日本での歴史は浅いが、欧 て予測不可能との見方が優勢で、フランスはその 米では銀行に次ぐ資金供給の担い手だ。 筆頭と思われていますが、これはどうしようもあ Seventure 社は、これまでもいくつかの革新的な りません。しかし、私が北米を訪問したときには、 医療機器企業への資金調達を成功させている。同社 欧州には良い兆候が見られ、諸外国よりも欧州市 は新たに立ち上げたファンド Health for Life で、ヒ 場への参入のほうがかなり低コストで企業にとっ トの細菌叢、つまりマイクロバイオームに関する新 ては魅力的だ、という反応が得られました。欧州 たな科学分野を対象に 1 億 2,000 万ユーロ(170 と米国は互いにバランスを取り合っており、政治 億円)を投資するとしている。この新規資金調達が 的、マクロ経済的な不確実性があるとしても、双 医療機器産業にどのような好機をもたらすか、de 方からの資金調達を可能にしています。 Cremoux 氏にうかがった。(編集部) いまのところ、私たちの予想以上に事はスムー ズに運んでいます。12 月に最初のクロージングを 行ったのですが、現在も多くの関心が寄せられて いまのところ集まっているのは 6,200 万ユ おり、実施中のデューデリジェンスも見込みより ーロだけで、目標額の 1 億 2,000 万ユーロに達し 早く終わりそうです。 これは、私たちが受身や日和見的な態度ではな ていないようですね。 く、積極的にマイクロバイオーム分野に参入しよ de Cremoux 多くの投資家がこのファンドにつ うというビジョンを示したおかげだと考えていま いてのデューデリジェンス(投資対象の価値やリ す。戦略的投資家や金融業界からも、今回の投資 スクを詳細に調査する作業)を実施しているとこ 対象は極めて好意的に受け止められています。 ろで、初回のクロージングに間に合わなかったの です。これはよくある話です。デューデリジェン Health for Life は細菌叢に重点を置かれ スが終われば彼らはファンドに参加し、資本は増 ていますが、医療機器企業への投資も想定されて 加します。 いますか? 私たちはすでに投資機会を手にしており、6,200 1 May 2014 Vol.44 de Cremoux 高いリスクをともないます。高解像度の共焦点蛍 医療機器にとっても、マイクロバイ オームでの発見は意味があり、影響を及ぼします。 光マイクロスコープ「Cellvizio」を開発したMauna 医療機器業界の人々は、この分野で先駆けとなる Kea Technologies社のようなイノベーションを生 機会に敏感でなければなりません。2 年前、私たち み出す企業への投資は、見返りも大きいですがリ は細菌叢の遺伝子型判定に基づいて代謝性疾患の スクも高いのです。 診断や治療を行うためのバイオマーカーやコンパ ニオン診断薬を開発する会社を支援し、大きく躍 進しました。今回もそのときと同じように大きな 影響を及ぼし、流れを一気に変えることになると 考えています。 今日、バイオインフォマティクス(生物情報科 Cellvizio 学)の力は強まっており、研究者は体内に住む細 菌のゲノム解析に成功しています。また、肥満、 (http://www.maunakeatech.com/) 糖尿病、炎症、肝臓疾患などの代謝性疾患と関連 づけた研究も広く行われるようになりました。 私たちの医療機器ポートフォリオには、確かに、 マイクロバイオームを使用する製品が、生物学 典型的なインプラントを扱う企業や従来の技術を 的効果を持つような薬剤である必要はありません。 改良していくタイプの企業が含まれています。数 間接的な変更によって、人体に影響を与えること だけで言うと、医療機器分野は革新的な技術・製 なく細菌を変化させる医療機器であってもよいの 品を持たない企業のほうが多いでしょう。しかし、 です。医療機器が人体に生物学的効果をもたらさ きちんとやっていけばビジネスとしてうまくいく ず、細菌に、そして間接的に病気に効果をもたら のです。 す場合には、規制の観点からそれは医療機器のま これは、巨大企業ばかりの医薬品分野では不可 まである、という考え方を欧州や米国の規制当局 能なことです。医薬品業界では市場へのアクセス は受け入れています。これは非常に興味深く、医 にコストがかかりすぎるため、改良型のイノベー 療機器はこれまで想像したことのないような分野 ションではやっていけません。医薬品市場は過去 に参入することが可能になっています。 20年間、市場に製品を投入するまでの時間を短縮 Health for Life は、3 つのセグメントでバランス するために、グローバル化が推し進められてきま を取っています。マイクロバイオーム、医薬品お した。これは、中小規模企業にとって参入障壁と よびバイオテクノロジー、そして医療機器です。 なっています。 これまでの資金調達において、私たちは医療機器 しかし、医療機器市場はまだ地理的に分断され 分野でも、インプラント、医用画像処理、つなが ており、参入は可能です。そのため、革新的な技 る医療(connected health)で力を発揮してきまし 術・製品を持たない、規模の小さな企業でも生き た。この投資戦略は投資収益率が高く、うまくい 残っているのです。私たちも、地域的な医療技術・ っているので、今後も継続していくつもりです。 製品に投資し、それを世界市場に投入することが できます。 一方ではマイクロバイオーム分野の非常 に革新的なプロジェクトを探しながら、医療機器 医療機器分野ではどこに関心を寄せてい については、伝統的なプロジェクトを選んでいる ますか? ように思えます。 de Cremoux de Cremoux 技術の集約です。大企業がうまく動 ポートフォリオ全体で投資収益を けない、手が届きにくいのはこの「つながる医療」 得ようとしているので、必然的にバランスを保っ の分野です。医療機器とエレクトロニクス、また ているのです。非常に革新的なプロジェクトは、 は ICT の組み合わせも魅力的ですね。 2 May 2014 Vol.44 例えば、私たちが ResMed 社(サンディエゴ) 公的資金のような政府からの支援は重要 に売却した Biancamed 社というアイルランドの ですか? 企業は、EDC(臨床データの電子的収集)用のセ ンサーとソフトウェアを持っていました。ResMed de Cremoux 社は Biancamed 社を獲得し、それらを睡眠時無呼 取り組みは、国によって大きく異なります。イノ 吸症の非接触モニタリングに利用しています。 ベーションを支援するための資金は、それが助成 とても重要です。政府や公的部門の 金、借入金、出資などどんな形で提供されるもの であれ、出資を抑えるために重要です。時にはか なりの金額になりますし、私たちが提供する資金 とともに活用することもできます。 私たちが投資している民間のスタートアップ企 業は、公立大学とジョイントベンチャーを設立す ることで、シークエンサーやコンピューターなど の購入費として 2,000 万ユーロを受け取りました。 (http://www.resmed.com/) このようなものには、VC は出資したがりません。 支援の多様性は必要なのです。 医療機器分野での機会はどのように評価 ほかにも、欧州の医療機器企業にとっては、臨 しているのですか? 床試験や製品申請の手続きを明確化することも政 市場、つまり患者・医師・保険者が 府による支援の 1 つと言えます。手続きの円滑化・ 本当に必要としている技術・製品であるかどうか 簡素化は、米国企業を欧州に誘致することにもつ を判断します。あるとうれしいもの、追随的なも ながります。私たちが 2013 年に契約を結んだ 2 社 のではなく、医療ニーズを満足させることができ は、どちらもその科学や知的財産は米国で生まれ るものに目を向けているのです。 たものの、これらの有利な条件によって欧州で事 de Cremoux また、誰が支払い、誰が利益を得るのかといっ 業を開始しました。そのうちの 1 社は、心臓弁を た価格設定に関連するすべてにも注目します。価 開発している Middle Peak 社(ドイツ)で、もう 値ある何かを作り上げようとするならば、その価 1 社は腰痛用の電子刺激を扱っている Mainstay 社 値をきちんと獲得しなければなりません。 (アイルランド)です。 参入障壁も重要です。医薬品分野では特許によ って容易に参入障壁を築けますが、医療機器分野 公開市場ではライフサイエンスに対する ではそれほど容易ではありません。特にソフトウ 関心が高まっていますか? ェアとエレクトロニクスとの組み合わせの場合、 de Cremoux さらに難しくなります。 私たちは IPO(新規株式公開)を、 ほかにも、効率的に業務を遂行できるビジネス 売却益を得る手段というよりも、むしろ資金調達 チームかどうかも判断します。資金調達の件数は の手段として捉えています。欧州における IPO 市 少なくなっています。10 年前には私たちが企業に 場はとても良好で、特にフランスは過去 12 カ月で 出資した後に新たなベンチャーキャピタル(VC) 欧州の IPO の 40%を占めています。これら新規上 が加わったものですが、世界的に VC は減少して 場企業には、バイオテクノロジーの企業もいくつ おり、資金も減っています。 かありますが、多くは医療機器企業です。欧州で はここ 2 年、ライフサイエンス、特に医療機器企 現在では大事を取って、企業に資金を無駄遣い しないよう求めています。PE ファンドでは段階的 業への関心がとても高くなっているのです。 に投資を行いますが、非常に優秀な企業でさえ、 第 2、第 3 の資金調達の出資者が見つからないこと 「Medical Device Daily」 (2014 年 2 月 20 日&27 日号) もあり得るのです。 3 May 2014 Vol.44 米国の針刺し発生件数、いまだ年間 32 万件 「針刺しゼロ」の目標を思い出そう 針刺しはその危険性から長らく対策が講じられて 刺しは思ったより削減できていない。目標を達成 きたが、今なお健康被害は後を絶たない。エイズ拠 するためには、これまで以上の努力と新たな活力 点病院における 1996 年~2000 年の針刺し・切創の が必要だ」と語る。 発生件数は 100 床当たり年間 30~40 件で、日本全 普及が進まぬ安全機構付きシリンジ 体では 45~60 万件と推定されている(2002 年、 米国立労働安全衛生研究所(NOISH)は、2016 木村哲)。100 床当たり 22~30 件(1996 年、Jagger) だった米国の発生件数は、国を挙げて防止に努めた 年には安全機構付きシリンジが普及し、安全機構 おかげで減少に転じたが、今後も気を緩めることな のない従来型器材の使用は全体のわずか 2%にな く取り組みを継続する必要がありそうだ。(編集部) ると予想している。しかし、合法とはいえメーカ ーは従来型器材を生産し続けており、鋭利器材の 安全対策が進まないいちばんの原因は、従来型シ リンジが多用されていることにある。 米国では、2000 年に「針刺し安全防止連邦法」 が可決されて以来、 「針刺しゼロ」をめざして努力 が続けられてきた。米国保健社会福祉省(HHS) が推進する米国民の健康づくり運動「Healthy People2010」では、1998 年に 38.4 万件あった医 療従事者の針刺しを、2010 年までに 30%減らし て 26.9 万件にしようと提唱された。また、米国労 働安全衛生局(OSHA)は医療機関に「血液媒介 病原体に関する基準」 を順守するよう求めており、 2011 年にバージニア大学の国際医療従事者安 そこでは、安全機構付き器材の使用と作業手順の 全センターが 32 施設から集めたデータ(EPINet) 最適化によって、病原体曝露を限りなくゼロに抑 によると、血液曝露の約半数は安全機構のない従 えることが望ましいとされている。 来型器材によるもので、原因器材で最も多かった のはディスポシリンジの 37%だった。 努力の甲斐あって針刺しは一時劇的に減少した が、次第に取り組みの勢いは弱まりつつある。米 マサチューセッツ州の複数の病院で行った調査 国労働衛生専門家協会(AOHP)が、29 州 125 でも、同様の結果となった。血液曝露の 57%は従 施設に行った独自調査「EXPO-S.T.O.P. survey」 来型器材によるもので、最も多かったのは皮下注 射針の 29%だった。針刺しの発生した皮下注射針 によると、毎年 32 万件の針刺しと、11 万件の粘 の 25%は、安全機構がついていなかった。 膜などへの血液の曝露が発生しているという。 「医療従事者の感染リスクは依然として高い」と、 EXPO-S.T.O.P.では、針刺しの発生件数は 100 カリフォルニア州の医療機関 Scripps Health の 床当たり 24 件となり、EPINet やマサチューセッ 雇用労働者サービス責任者で、EXPO-S.T.O.P.を ツ州の調査よりもわずかに高かった。また、大学 とりまとめた Linda Good は話す。 病院では 27.4 件、大学病院以外では 17.8 件と大 きな差が見られた。 また、EXPO-S.T.O.P.の共著者で、鋭利器材の 安全コンサルタントとして国際的に働くニュージ 「自分は大丈夫とか、この病院は目標とする基準 ーランドの微生物学者 Terry Grimmond は、 「針 を満たしている、などと思わないほうがいい。目 4 May 2014 Vol.44 標は、あくまで針刺しゼロなのだ」と Grimmond 「針刺しはスタッフに心的外傷を与え、医療機関 は注意を促す。また Good は、 「血液曝露対策に成 にリスクをもたらす可能性がある。予防措置をと 功している病院では、管理者とスタッフが当事者 ることは、血液曝露の深刻な被害から個々のスタ 意識を持って鋭利器材安全プログラムを実行して ッフを守るだけでなく、病院の収益を守ることに いる」と指摘する。 もつながる。HIV や肝炎への感染は、1件発生し AOHP は、針刺しが平均よりも少ない病院を ただけで毎月数千ドルの薬代がかかる」 「ベストプラクティス(最優良事例) 」として認定 OSHA は、医療機関に血液曝露を防止するプロ しているが、こういった病院では、マンツーマン グラムを作成し、毎年新しい技術が登場していな の熱心な指導や能力テスト、 鋭利器材の安全管理、 いか見直しながら運用することを求めている。 「も 針刺しの監視と対策などが行われている。 し特定の処置で針刺しがよく起こるのなら、現状 に満足してはいけない。新しい技術に目を向け、 針刺しの防止は病院にもメリット スタッフと協力して改善策を探し出そう」と、 Grimmond は呼びかけている。 AOHP は、2014 年に再調査を行う予定にして いる。全米から情報を収集することで有益な情報 「Hospital Employee Health」 を提供し、鋭利器材の安全性を思い出させるのだ (2014 年 2 月号) と、AOHP の最高責任者 Dee Tyler は語る。 滑り・つまずき・転倒…… 医療スタッフがさらされるリスク 労働環境が離職率に影響も ない平衡感覚や反射神経が鈍くなるためで、Scott 日本は高齢化問題の課題先進国だと言われる。社 が 2010 年の BLS のデータを分析したところ、65 会全体で高齢化が進んだ結果、医療・介護が必要な人 歳以上のスタッフの転倒リスクは、18~19 歳のス 口は増え、医師だけでなく看護師が大幅に不足する と厚生労働省は予測している。医療機関では看護師 タッフの 5 倍にのぼった。滑り、つまずき、転倒 確保が大きな課題となっているが、高齢化の波は医 などの労働災害の予防は医療機関にとって急務で 療スタッフにも押し寄せている。負担が大きく、離 あり、対策の必要性はさらに増している。 職率が高い看護師が安心して長く働き続けるために 最も危険なのは濡れた床 は、労働環境の改善が欠かせない。(編集部) 「院内で発生する主な労働災害は、滑り・つまず き・転倒である。特に濡れた床は、スタッフの年 医療機関で働く高齢のスタッフには、優秀な人 齢に関係なく転倒の原因になる」と、米国立労働 材が多い。米国労働省労働統計局(BLS)は、高 安全衛生研究所(NIOSH)の安全研究部門 DSR 齢の医療スタッフは、2020 年までは大幅に増え続 の疫学研究者 Jennifer L. Bell は言う。 院内で床が濡れやすいのは調理場で、食事に関 けると予想している。 高齢スタッフが増えるにつれてスタッフの転倒 する業務を行うスタッフの滑り・転倒事故の発生 リスクは高まると、公衆衛生の研究機関であるコ 率はトップである。老人ホームの転倒事故でも、 ロラド大学 Mountain and Plains ERC の責任者 看護助手の次に食事サービスのスタッフの発生率 Kenneth Scott は指摘する。これは、加齢にとも が高い。このような床が濡れた環境で働くスタッ 5 May 2014 Vol.44 フの転倒予防には、滑り止めの付いた靴がとても ルと濡れたゴムではゴムのほうが滑りにくいし、 効果的だと Bell は言う。 病室や廊下、保管庫を改築することで、つまずき の原因となる床置きされていた物や配線を片付け 床の材質や形状が変わる場所も、スタッフにと ることもできる。 って脅威となる。7 施設で行われた滑りと転倒に 関する研究によると、事故の 58%は乾いた床と濡 転倒はスタッフ個人の過失ではない。問題を解 れた床の境目、 床の表面の材質が切り替わる場所、 決するには、転倒した人に原因を求めるのではな 凸凹のある場所で起こっていることが判明した。 く、対策を考え出すべきだと Gray は主張する。 さらに、散らかった廊下や狭い病室では、床に置 また、滑りや転倒の予防には、ウェルネスプロ かれた物や配線コードが、転倒事故を引き起こす グラムも役に立つ。中国の心身鍛練法である太極 原因となっている。 拳のような、筋力や平衡感覚を改善するエクササ イズが効果的だと Scott は言う。 問題解決にスタッフを巻き込む 滑りや転倒を予防するには、スタッフを巻き込 むことも 1 つの手だ。 ミ ズ ー リ 州 で 13 病 院 を 運 営 す る BJC Healthcare は、スタッフ主導による注意喚起キャ ンペーンを実施した。これは、院内のホットライ ンで危険な場所を報告したスタッフは、素敵な景 品が当たる抽選会に応募できるというものだ。そ の結果、スタッフは滑りそうな場所に注意を促す 立札を自発的に置くようになった。ほかにも、バ ケツ入りの解氷剤をシャトルバスの停留所付近に 熟練看護師の確保が困難に 設置し、スタッフが自ら凍結した場所に解氷剤を 医療機関向けの人材派遣会社 AMN Healthcare 撒けるようにしたり、滑り止めの付いた靴を買う 社が最近行った看護師への調査によると、55 歳以 際に、助成金を出すようにした。 「注意喚起キャンペーンのおかげで、転倒事故の 上の看護師のうち約 4 分の 1(23%)は、退職あ 発生頻度や、重症になるケースが減少した」と、 るいは看護師以外の仕事への転職を考えていると BJC 傘下の Barnes-Jewish Hospital の経営工学 いう。これは 18.7 万人以上の看護師に相当する。 者 Laurie D.Wolf は話す。Wolf は、今後もキャン さらに、約半数(51%)の看護師が、仕事が自分 ペーンを継続するためには、クリエイティブで常 たちの健康に悪影響を与えていることを懸念して に新しいプログラムやインセンティブを考案する いた。過去 4 回の調査をみると、健康への危惧は 必要があるとアドバイスする。 毎回増加している。 設計事務所 Cannon Design 社の医療機関部門 医療機関がこれからも増加するニーズに応えて の責任者 Whitney Austin Gray は、病院の建物を いくためには、 高齢化するスタッフの健康を保ち、 改築・増築する際、現場のスタッフに意見を聞く 労働力として維持することが欠かせない。 よう提案している。「看護師全員が設計者だ。ス 「高齢のスタッフを雇用することは、確実に十分 タッフが院内の環境や障害となるものについて、 な労働力を確保する 1 つの方法だ。高齢スタッフ 『これがベストだろうか?』と常に疑問を持つこ の健康状態は、彼らが働けるかどうかを大きく左 とが大切だ」 。 右する。スタッフの高齢化を考慮して、滑り・つ まずき・転倒を防止するプログラムの強化が必要 滑り・つまずき・転倒事故のすべてを環境の改 だ」と Scott は主張している。 善だけで解決することは不可能だが、目立たない ものであっても改善を行えば確実に事故を削減で 「Hospital Employee Health」 (2014 年 3 月号) きる、と Gray は断言する。例えば、濡れたタイ 6 May 2014 Vol.44 患者の意思決定をサポートする 支援ツール 手術件数と医療費の削減にも有効 シ ア ト ル の 医 療 グ ル ー プ Group Health Cooperative が、シェアード・ディシジョン・メ 関係部門やリーダーと協力体制を構築 イキング(SDM:医師と患者が情報を共有し、治 医師やスタッフによる現行の支援ツール の評価 療法を一緒に決定すること)を行う際の支援ツー ルを開発した。これは、疾患や手術の内容、手術 以外の選択肢やそれぞれの治療法のリスクについ 各施設を訪問し、今ある治療プロセスに 支援ツールを組み込む方法を討議 て、文章や画像、動画で分かりやすく説明したも ので、患者の意思決定をサポートする。 SDM では、医師は患者にさまざまな治療の選 それぞれの施設にあった実施計画の作成 導入後のモニタリングとサポートの実施 択肢とその治療効果、リスクを説明し、医師と患 者が共同で最善の治療を決定する。患者の同意を 支援ツール導入前の 2 年間と導入後の 2 年間の 得て治療方針を決定するインフォームド・コンセ 手術件数を、全体の患者数の変化を考慮したうえ ントに比べ、より患者の決定権が強い。人工関節 で比較した結果、人工股関節置換術は導入前に比 置換術のように、一般的ではあるが高額で、どの べて約 26%、人工膝関節置換術は約 38%減少した。 ような患者に適応するかで意見が分かれるような 医師は、初めて変形性関節症を患った患者のよう 治療法では、患者と医師の選択が、手術を行うか な、手術の必要性が低い患者には支援ツールを勧 どうかの重要な判断基準となる。このような場合 めなかったため、この結果は、支援ツールそのも に SDM は有効であるといわれているが、いまの のの効果に加え、 導入に向けた取り組みのなかで、 ところ医療現場にはあまり普及しておらず、支援 医師やスタッフへの十分な教育がなされたことも ツールの導入も進んでいない。 関係していると考えられる。 総医療費は、入院日数、通院日数、処方薬が減 ったことから、支援ツールの導入後 180 日で、変 形性股関節症の患者で平均 21%、変形性膝関節症 の患者で平均 12%削減できた。また、人工関節置 換術を選択したかどうかに関係なく、患者の満足 度も高くなった。 Group Health の開発チームによると、SDM の 支援ツールは、患者が自分の病状を理解したうえ (http://www.grouphealthresearch.org/) で治療法を選択できる待機的手術の際に効果を発 Group Health が、傘下の 5 つの整形外科医院 揮する。 そのため開発チームは、 変形性膝関節症、 で人工関節置換術の支援ツールを導入したところ、 変形性股関節症、子宮の不正出血、子宮筋腫、腰 手術の件数が減少し、医療費も削減できた。今回 椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、安定型狭 導入したのは動画形式の支援ツールで、対象者は 心症、前立腺肥大症、初期の前立腺癌、初期の乳 人工関節置換術の適応となりそうな患者 9,515 人 癌などでの利用を勧めている。 だった。支援ツールの開発チームは、導入にあた 「Same-Day Surgery」(2014 年 3 月号) って次のような取り組みを行った。 7 May 2014 Vol.44 物静かな患者は 医療訴訟を起こしやすい!? 患者の安全とケアの質は平等に確保すべき 従順で不平不満を漏らさない患者の安全は脅か ケジュールを決め、患者の容体に応じて行うべき されやすい。米国ヘルスケアリスクマネジメント だ。患者を選んで応答するスタッフは、やがて病 協会(ASHRM)の元代表 R. Stephen Trosty は、 院のルールを破るようになる」 。 Trosty は、リスクマネジャーは、こういった忙 実際に起こったケースを挙げて注意を促す。 しいときにやってしまいがちな問題行為について ある高齢の男性が手術のために入院したとき、 スタッフに教育すべきだと忠告する。 週末はスタッフが不足するため予定どおりのケア を行えないことがあると、あらかじめ何人ものス 同じく ASHRM の元代表で、非営利の血液セン タッフが家族に伝えていた。それでも術後 1 日目 ターBlood Connection のコンプライアンスとリ に、患者の家族はスタッフが男性を放置したと不 スクマネジメントの責任者 Jane McCaffrey も、 満を訴えた。 「患者のケアには遵守すべき手順があり、うっか その患者はスタッフに「私は大丈夫」と話し、 り忘れてしまった治療があれば迅速に対処する必 一切文句を言わなかったため、肺の呼吸機能検査 要がある」と、不平の多い患者を優先することに や 1 日 2 回の理学療法は行われず、トイレへ行く 警鐘を鳴らす。 ときの補助もなく、1 日中椅子に座らされたまま McCaffrey はさらに、夜間の巡回時に病室の照 だった。患者は 1 度だけ歩行補助を求めてナース 明を点けないこと、アラームを消すこと、患者を コールを鳴らしたが、スタッフが到着したのは 45 寝かせたままにしておくことなど、患者の満足度 分後で、患者はすでに失禁していた。このような を上げるための行為には負の側面もあると指摘す ことがあっても、患者は家族に「スタッフはとて る。カリフォルニア州の医療機関 MemorialCare もよくしてくれる」と伝えていた。 Health System のリスクマネジメント部長 John C. Metcalfe もまた、寝ている患者をそのままに 患者の家族は、不平を言わない患者の性格も、 しておくことの危険性を訴える。 放置されていることに気づいていないこともよく 分かっている。もしこの患者のアウトカムが望ま ある病院では、男性の看護師がベッドサイドの しいものでなければ、患者の意思に関係なく、患 照明を消したまま、寝入っている女性患者の電極 者の家族と弁護士が、患者は標準以下のケアしか を直そうとした。女性患者は非常に驚き、看護師 提供されていなかったと主張するだろう。そして が不当に触ろうとしたと勘違いした。後で専任の 最終的に訴訟になる。その際に病院側が、 「患者に 看護師が「その男性は夜間当直の看護師で、電極 不満はなさそうに見えた」と主張しても弁明には を直そうとしただけ」といくら説明しても、女性 ならない、と Trosty は言う。 患者の怒りは収まらなかった。 複数の患者から同時にナースコールがあると、 病室の照明を点けないことや、患者に触れる前 スタッフは協力的な患者ほど対応を後回しにして に患者を起こさないことは、通報や訴訟の原因に しまいがちだ。頻繁に補助を要求したり、不満を なる。患者の満足度を優先した行為が仇とならな 訴える患者に注意が向きがちなのは仕方がないが、 いよう、リスクマネジャーはスタッフに注意を促 す必要があるだろう。 そこはプロとしての自覚を持ち、スケジュール調 整やスタッフの配置のやりくりで切り抜けるべき 「Healthcare Risk Management」 だと、Trosty は主張する。 「患者の性格によって、 (2014 年 2 月号) ケアの質に差をつけてはいけない。定期巡回はス 8 May 2014 Vol.44 犬に教わる次世代デバイスのヒント 桁違いの嗅覚の持つ可能性 ――メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ 犬の嗅覚は、人間の 100 万~1 億倍するどい。 の化学物質を検出できるデバイスが続々と開発さ 捜査現場で爆発物や麻薬を探知する犬のニュース れている。例えばこの 3 月に東芝は、呼気から病 はよく見かける。その能力が今、医療分野でも発 気を探知できるコンパクトなブレサライザー(呼 揮されている。 気分析装置)の試作品を公開した。現在早稲田大 第二次大戦後、欧米のてんかん患者らが、予測 学とともに、食事や運動のアドバイスから病気の しようがないと思われていた発作の数時間、とき 早期発見までできるツールとして製品化が進めら には数日前に、飼っている犬が奇妙な行動をする れている。 健康状態を容易に知りたいというニーズは高ま ことに気づいたのをきっかけに、犬の嗅覚を利用 っており、マーカー検出技術の開発はさらに加速 して発作や疾患を察知する研究が始まった。 最初の頃は犬が飼い主の何に反応しているのか している。デバイスの小型化やウエアラブル化と が不明だったため、てんかんの発作を予知するよ あいまって、すでに多くのマーカーが 24 時間モ う犬を訓練することは非常に難しいと思われた。 ニタリング可能であり、入院や医療費の抑制に一 今では高い確率で「てんかん発作予知/介助犬」 役買っている。 を育成できるようになり、さらに複数の実例や研 究から、腫瘍を嗅ぎ分ける「癌探知犬」や、低血 糖発作を予知してくれる「低血糖探知犬」も生ま れている。 人間の血液、汗、尿、唾液などには、さまざま な疾患のバイオマーカーが秘められている。犬は それらを嗅ぎ分けることで、発作や疾患を察知し ていると思われる。例えば、癌患者の呼気にはア ルカンやベンゼン誘導体などが含まれており、そ 特殊な訓練を受けた犬は本当に頼りになる。て れぞれの腫瘍が異なる特徴を持っている。犬にと んかん発作予知/介助犬は、飼い主に発作が起こ って嗅ぎ分けはただのゲームと変わらないので、 ると転んでも危なくないように周りのものをどか 癌探知犬は肺癌、乳癌、子宮癌、大腸癌を区別す し、自分の体を使って飼い主がゆっくり座れるよ ることができ、世界各地で最先端デバイスに劣ら うに介助してくれ、電話まで持ってきてくれる。 ぬ優れた成果を上げている。今後は脳梗塞とくも その犬がさらに血糖値から腫瘍の有無まで探知で 膜下出血の区別や、心臓発作の確認などもできる きるとなれば、なんと心強いことだろう。世の中 ようになると思われる。また、すぐれた嗅覚はほ に数あるデバイスも、そこまでの安心感を与えて かの動物にも備わっており、マウスは、ワクチン くれるものはまだないようだ。 機械にペットの愛情まで求めるのは難しいにし を接種した別のマウスの体内に起こる免疫反応ま ても、常に健康状態をモニタリングしたり簡単に で探知できるという実験結果も出ている。 体臭で健康状態を判断する方法は、古代から幅 病気を診断してくれるデバイスの登場はそろそろ 広く実践されてきたが、近代西洋医学ではほとん 期待できるだろう。いつもそばに寄り添って健康 ど無視されてきた。しかし、今では動物の嗅覚の を見守ってくれるうえに、楽しい会話もできるロ メカニズムをヒントに、分子やイオン、ガスなど ボットの誕生が待ち遠しい。 9 May 2014 Vol.44 The Academia Highlight アカデミア・ハイライト [ 44] ここまできたバリアフリー支援機器 うのめ・たかのめ by この 1 年、医療行政で大きな変化があった。 れている。軽量・安価・簡単操作を実現する 在宅医療の重視と予防による健康寿命の延伸 戦いは続いているが、モジュール化が助けに によって、高齢者急増で膨れ上がる医療費を抑 なるだろう。生活支援ロボットの国際安全規 制しようと多くの措置が講じられたのである。 格 ISO13482 の発行も追い風である。 健常人とは異なった状態にある人が、他者の 個々人にあったフィット性の賦与には、3-D 助けを借りることなくハンディキャップを乗 プリンター技術の活用に期待が寄せられる。 り越えて行動できるように工夫された機器を、 握る動作をサポートするグローブは、試行錯 ここでは「バリアフリー支援機器」とする。こ 誤の末ようやく市販され始めたが、食事介助 れらは使用者の QOL 向上はもちろんのこと、 のように汎用性が求められる場面への適応に 介護を行う側の負担軽減にも寄与するため、今 は発想の転換が必要かも知れない。 最も切実でニーズが高いのは、排泄・入浴・ 後もニーズは高まる一方である。 これまでバリアフリー支援機器が普及しな インコンチネンス(失禁)ケアのアシストで かったのは、作り手の一方的な視点に立った製 ある。入浴支援機器は浴槽側の工夫もあって 品ばかりで、肝心の使用者の声を反映できてい 改善が著しいが、ほかはまだブレークスルー なかったためだと言われる。使用者は、スリ できていない。ウォシュレットが拭う動作を ム・コンパクト・軽量・壊れにくい・安全・低 克服するために考案されたように、誰の介助 コストといった要素に加え、使用法の分かり易 も受けずに用を足せるという原点に立ち返る さ、手軽さといったユーザーフレンドリー性を ときだろう。 また、同じくニーズの高い見守り支援(認 求めるが、ほとんど実現できていない。いずれ 知症対策を含む)は、転倒検知・予防用具の も在宅で使用する際には切実な課題である。 歩行補助や介助者の負荷軽減のエースと目 実現が近い。ウエアラブル生体機能モニター されるロボットスーツ HAL にしても、まだま や GPS 機能にコミュニケーション機能を付 だ高価であるだけでなく、いったんバランスを 加すれば、これまでの懸案が一掃される。 崩すと、その重量のために使用者が自力で体勢 視覚支援では、触覚ディスプレイや触地図 を立て直すことはまず不可能という欠点があ の実用化や視覚代行システムの臨床研究が進 る。軽量化には材料や制御技術のさらなる革新 行中であり、聴覚支援では、音声認識システ が必要で、歩行や協調動作に受動動作機構を取 ムや内耳機能代替システムが実用化に踏み出 り入れる努力も地道に行われている。 したところである。ニューロリハビリテーシ ョンの実現も、これらの機器の完成度によっ 最も古典的で普及したバリアフリー支援機 て時期が決まる。 器である車椅子は、移乗機能、座位保持機能向 上が図られてきた。車輪の一部を跳ね上げ式や 動作不良を補う入力支援装置は、互換マウ 開閉式にする工夫やトランスファーシートの スや代替スイッチの性能向上で解決されつつ 導入、背もたれ部の改良で使い勝手は大幅に良 あるし、着脱では自立補助介護服も上市され くなり、立位車椅子、段昇降可能な車椅子とい た。使いやすいバリアフリー支援機器をめざ った自立支援機構を取り入れたものも開発さ し、これからも格闘は続く。 10 May 2014 Vol.44 Medical Device Daily ― ( 2014/4/1 2014/4/30) Orthopedics Ellipse Technology 社の小児の脊柱側弯症を治 療 す る 矯 正 シ ス テ ム 「 MAGnetic Expansion Control(MAGEC)」が米国で初めて使用された。 VertiFlex 社が棘突起間 スペーサーSuperion の 通常、脊柱側弯症の治療には、患者の成長にあ わせてロッドを伸長できるグローイングロッドが 市販前承認を申請 用いられる。ただ、伸長のたびに手術を行う必要 2014 年 4 月8 日 があり、特に成長が著しい患者は半年毎に手術を 行うため、侵襲性や合併症のリスクの高さが問題 VertiFlex 社は、FDA に腰部脊椎管狭窄症(LSS) になっていた。 MAGEC のロッドは内部に磁石が仕込んであり、 用 の 棘 突 起 間 ス ペ ー サ ー シ ス テ ム 「 Superion Interspinous Spacer System 」 の 市 販 前 承 認 体外式の外部コントローラーで手術を行うことな く非侵襲的にロッドの長さを変えられる。10 歳以 (PMA)を申請した。 LSS は、加齢などで腰椎の内部にある脊柱管が 下の脊椎形成不全をともなう胸郭不全症候群のリ 狭窄して神経を圧迫し、腰痛や下肢のしびれを引 スクを持つ患者、 もしくは脊柱側弯症の患者用で、 き起こす。Superion は約 18mm の小切開から脊 今年 2 月に市販前届 510(k)を取得したばかり。CE マークは 2009 年に取得している。 椎の棘突起の間に挿入し、スペーサーから上下に 拡張する 2 本の爪で両側の棘突起を挟み、隣接す る棘突起の間隔を適正に維持して固定する。 LSS 患者 470 人を対象に行った臨床試験では、 すでに欧米や日本で販売されているメドトロニ ックの棘突起間スペーサー「X-STOP IPD」と術 後 2 年の治療効果が比較され、痛みの軽減、患者 の満足度、安全性について、X-STOP と同等の効 果が確認されている。 (http://www.ellipse-tech.com/) 生体吸収性の人工靭帯 L-C Ligament の 臨床試験が始まる 2014 年 4 月22 日 Soft Tissue Regeneration 社は、生体吸収性の (http://superionstudy.com/) 人工靭帯「L-C Ligament」の臨床試験を欧州で開 始した。L-C Ligament は、ポリ乳酸(PLLA)繊 Ellipse 社の非侵襲的に 維を編み込んだスキャフォールドで、脛骨と大腿 伸長できる脊柱側弯症 治療システム MAGEC 骨に穴を開けて留置し、チタン製スクリューで固 定する。組織のイングロースを促進することで前 2014 年 4 月10 日 十字靭帯(ACL)を再建し、9~12 カ月かけて生 11 May 2014 Vol.44 った。同じく自由行動下24時間血圧測定(ABPM) 体に吸収される。 ACL 再建術の標準治療は自家腱移植だが、組織 でも、降圧効果の差は1.96mmHgにとどまった。 を採取する部位に負担がかかる。また、同種腱移 HTN-3の調査官はこの結果について、プラセボ効 植(献体から採取した腱の移植)には感染リスク 果や良好な服薬遵守により、対照群で予想以上の が、人工靭帯移植には摩耗リスクがあり、どの治 降圧効果が得られたからではないかと結論付けて 療法も一長一短だ。 いる。 L-C Ligament は、これらの短所を克服してお RDN は、服用方法が複雑で十分な効果が得ら り、自家腱移植に比べて施術時間を 30 分短縮で れにくい薬物治療に代わる治療法として期待され きる。また、標準治療と同様の手順で施術できる ているため、同社は今後も承認を取得している地 ため、特別な技術の習得も必要ない。大型動物を 域での販売を継続し、市販後調査を行うとしてい 対象にした実験では、術後 2 年で自己靭帯の再建 る。米国では HTN-4 試験を取りやめ、現在臨床 に成功している。 試験を中止している日本とインドでは、現地の規 制当局と相談し今後の方針を決めるという。 (http://www.medtronic.co.jp/) エドワーズ、AVR 用人工弁 システム INTUITY Elite の CE マークを取得 2014 年 4 月7 日 (http://softtissueregeneration.com/) エドワーズライフサイエンスは、大動脈弁置換 Cardiology 術(AVR)用の人工弁システム「INTUITY Elite」 の CE マークを取得した。 INTUITY Elite は、高い耐久性を誇る生体弁 メドトロニック、 SYMPLITY HTN-3 試験の 「カーペンターエドワーズ牛心のう膜生体弁」 に、 2014 年 4 月1 日 り小切開から挿入し、配置後に拡張できるため、 バルーン拡張式のステントフレームを組み合わせ 最終結果を発表 たシステム。柔軟な細径デリバリーシステムによ 迅速な施術が行える。低侵襲なので患者の負担も メドトロニックは、腎除神経術(RDN)用 RF 少なく、早期回復を実現できる。 INTUITY を使用する群と、拡張式でない一般 ア ブ レ ー シ ョ ン カ テ ー テ ル 「 Symplicity 」 の SYMPLICITY HTN-3 試験の最終結果を、米国心 的な AVR 用人工弁を使用する対照群を比較した 臓病学会(ACC)で発表した。 臨床試験では、INTUITY 群は術中の虚血時間を 今年1月に降圧効果の目標を達成できなかった 対照群より 24%短縮でき、さらに 3 カ月後の血流 ことから試験中止が発表されたHTN-3試験では、 や血行動態も対照群より改善していることが証明 治療抵抗性高血圧患者535人をSymplicityで治療 されている。 するRDN群と、Symplicityを挿入するものの焼灼 を行わない対照群に分け、治療後半年の有効性と 安全性を検証していた。 最 終 結 果 に よ る と 、 収 縮 期 血 圧 は 対 照群 が 11.7mmHg、RDN群が14.1mmHg低下したが、降 圧効果の差はわずか2.39mmHgと有意差はなか (http://www.edwards.com/) 12 May 2014 Vol.44 後は LVEF50%以下で NYHA 分類クラスⅠ~Ⅲ Cardio 社、心不全治療 デバイス Parachute の の患者にも使用できるようになる。対象デバイス は、CRT-P「Consulta」 、 「Syncra」 、CRT-D「Viva」、 追跡調査を報告 「Protecta」シリーズなど 10 種類。 今回の適応拡大は、Block HF 試験の結果を受 2014 年 4 月8 日 けてのものだ。これまで NYHA 分類クラスⅠ~ CardioKinetix 社は、虚血性心不全治療デバイ Ⅲの患者は右室ペーシングのみが適応で、心房ブ ス「Parachute」について、治療後 1 年のフォロ ロックが改善しても心ポンプ機能の低下により心 ーアップ調査の結果を発表した。 不全が進行し、再手術が必要になるケースがあっ Parachute は、 ナイチノール製フレームに ePTFE た。Block HF 試験で、LVEF50%以下の NYHA 製の皮膜を張った傘状デバイス。カテーテルで左 分類クラスⅠ~Ⅲの患者を対象に、両室ペーシン 心室内に留置し、瘢痕化した心筋組織を隔離する グ群と右室ペーシング群の治療効果を比較したと ことで心臓の機能を改善する。CE マークは取得 ころ、両室群は右室群に比べ、死亡や左心機能の 済みで、欧州では販売に向けた最終調整を行って 低下といった有害事象の発生率が 26%低かった。 メドトロニックは今回の適応拡大により、軽度 いるが、米国ではまだ臨床試験中だ。 欧州と米国で臨床試験に参加した 111 人のデー の心不全患者の症状進行を防止できると期待して タを調査したところ、86%で NYHA 心機能分類 いる。 が改善し、47%で 6 分間歩行検査の距離が 20m (http://newsroom.medtronic.com/) 以上延びた。また、手術成功率は 96%と高く、心 不全の悪化による再入院は 21.7%と目標値を下 サイトリ社の再生医療、 Cytori Cell Therapy の 臨床試験結果を発表 回った。死亡率は 5.7%だった。 Cardio 社は今後もフォローアップ調査をすす め、長期的な治療効果を評価する予定だ。 2014 年 4 月15 日 サイトリ・セラピューティクス社は、脂肪組織 由来幹細胞(ADRC)による再生医療 Cytori Cell Therapy を心疾患に用いた臨床試験の結果を、 『American Heart Journal』で発表した。 Cytori Cell Therapy は、同社の遠心分離器「セ ルーション」で患者の脂肪組織から ADRC を抽出 (http://www.cardiokinetix.com/) し、損傷部位に注入することで失った組織を再建 メドトロニックの する治療法だ。欧州で行われたこの試験では、開 軽度心不全患者も適応に 安全性と有効性を調査した。6 カ月後と 18 カ月後 胸手術が行えない難治性の心疾患患者 27 人を、 CRT-P と CRT-D、 ADRC を心筋に注入する群とプラセボ群に分け、 2014 年 4 月14 日 にトレッドミルで最大酸素摂取量(MVO2)を測 定し、運動能力を評価したところ、プラセボ群で メドトロニックの両室ペースメーカ(CRT-P) は瘢痕組織が増加して MVO2 が低下したが、 と 両 室ペ ー シン グ機 能 付き 植込 み 型除細 動 器 ADRC 群は瘢痕組織に変化がなく、MVO2 も維持 (CRT-D)の適応拡大が承認された。従来の適応 できた。同様の試験は米国でも行っている。 は左室駆出率(LVEF)35%未満で NYHA 心機能 セルーションは研究用として日本の薬事承認 を、血管用として CE マークを取得している。サ 分類クラスⅢ~Ⅳの重度心不全患者だったが、今 13 May 2014 Vol.44 イトリ社は今回の試験結果により、心疾患用とし テントグラフト内挿術(EVAR)用のステントグ て CE マークの適応拡大をめざす。 ラフト「Endurant」の臨床試験結果を発表した。 Endurant は、ナイチノール製ステントを骨組 (http://www.cytori.com/) みにしたポリエステル製グラフト。親水性コーテ ィングを施したデリバリーシステムにより、スム ボストン、 ICD と CRT-D 4 製品の 市販前承認を取得 ーズに挿入できる。次世代品の「Endurant Ⅱ」 とともに、すでに日本の薬事承認、市販前承認 (PMA) 、CE マークを取得している。 ドイツで 273 人を対象に行われた PANDORA 2014 年 4 月17 日 試験では、治療後 5 年の再手術率が 9.5%、死亡 ボストン・サイエンティフィックが、植込み型 率が 0.3%、エンドリークの発生率が 2%と良好な 除細動器(ICD) 「DYNAGEN Mini」 「INOGEN 成績をおさめ、ステントグラフトの移動もなかっ Mini」と、両室ペーシング機能付き植込み型除細 た。また、一般的に EVAR ではネック長(ステン 動器(CRT-D) 「DYNAGEN X4」 「INOGEN X4」 トグラフトを留置するために必要な動脈瘤周辺の の市販前承認(PMA)を取得した。 健常な部位)が短い患者は有害事象を起こしやす これらの製品は、本体がコンパクトで薄型なの いとされるが、世界中の 79 施設で 1,200 人を対 が特徴だ。Mini シリーズは他社製品に比べて最大 象とした ENGAGE 試験で、ネック長が短い(10 20%小さく、24%薄いため、植込み後の不快感を ~14mm)患者と長い(15mm 以上)患者を比較 軽減でき、整容性に優れている。4 極リード用の したところ、 両群とも同等の治療成績が得られた。 CRT-D である X4 シリーズは、17 種類(他社は Endurant Ⅱ 10 種類)ものペーシングモードを備えているた め、捕捉閾値の上昇や横隔神経刺激に効果的に対 処できる。ただし、4 極リード「Acuity X4」は、 まだ臨床試験を行っている最中だ。 Mini シリーズ、X4 シリーズ、Acuity はすでに CE マークを取得しており、日本・オーストラリ アでも今年中の承認取得をめざしている。 (http://www.medtronic.com/) メドトロニック、 MRI 対応 ICD Evera の 臨床試験を開始 DYNAGEN X4 2014 年 4 月24 日 (http://www.bostonscientific.com/) メドトロニックが、米国での承認取得をめざし、 MRI 対応の植込み型除細動器(ICD) 「Evera MRI メドトロニック、 EVAR 用ステントグラフト Endurant の試験結果を報告 SureScan」の臨床試験を開始した。 Evera MRI は、スリムで丸みを帯びた本体デザ インにより皮膚への圧迫を 30%軽減し、患者の快 2014 年 4 月21 日 適性を向上している。本体は小さくなってもバッ メドトロニックは、腹部大動脈瘤を治療するス 可能だ。また、致死性不整脈と良性不整脈を判別 テリー容量は従来型と同じで、最長 11 年間使用 14 May 2014 Vol.44 Oncology して不適切作動を低減する SmartShock 2.0 機能 や、胸郭内インピーダンスをモニタリングして心 不全や不整脈の悪化兆候を分析する OptiVol 2.0 First Warning 社の 機能を搭載している。欧州では今年 4 月に CE マ 着用型乳癌検知デバイス ークを取得したばかり。 FWS 今回の臨床試験は世界 45 施設、275 人を対象 に実施される。米国では全身の撮影が行える MRI 2014 年 4 月8 日 対応の ICD はまだ認可されていないため、メドト First Warning Systems 社は、着用するだけで ロニックは米国での主導権を握りたい考えだ。 乳 癌 を 検 知 で き る デ バ イ ス 「 First Warning (http://www.mrisurescan.com/) System(FWS) 」を開発中だ。 Neurology FWS は、スポーツブラに温度センサーとデー タ記録ユニットを内蔵しており、12~24 時間着用 してデータを収集し、細胞周期の温度により乳癌 セント・ジュードが SCS 装置 Protégé の 市販前承認を取得 を検出する。マンモグラフィーのように圧迫した り、放射線を使用する必要がなく、画像診断では 見つけくい若年者やデンスブレスト患者の小さな 2014 年 4 月7 日 腫瘍の発見にも有効だ。 セント・ジュード・メディカルは、脊髄電気刺 94.7%、特異度 91.1%となり、一般的なマンモグ 650 人 を 対 象 に 行 っ た臨 床 試 験で は 、感 度 ラフィー(感度 70%)よりも検知率が高かった。 激(SCS)装置「Protégé」について、慢性疼痛 FWS は 2015 年 1 月にインドとシンガポールで 用として市販前承認(PMA)を取得した。 Protégé は、本体が 48×53×11mm、重量 29g 発売する予定で、同社はその後、欧米、中国での 承認取得をめざす。 と非常にコンパクトで、植込んだまま機能をアッ プグレードできるのが最大の特徴。将来的に新た (http://www.firstwarningsystems.com/) な刺激パターンや機能が開発されても、本体を交 ロシュの HPV 検出アッセイ コバス HPV、 一次検査用として適応拡大 換することなく最新の治療が受けられるうえ、交 換による合併症のリスクやコストの心配をしなく て済む。本体は 7 年保証で、バッテリーの耐用年 数は最長 10 年だ。 同社は、3 月に CE マークを取得した、周波数 2014 年 4 月28 日 の高い刺激を断続的に行う burst モードを備えた SCS 装置「Prodigy」の米国での承認取得もめざ FDA は、ロシュ(スイス)のヒトパピローマウ しており、現在臨床試験を進めている。また、今 イルス(HPV)検出アッセイ「コバス HPV テス 後は SCS と末梢神経刺激を組み合わせた治療の ト」について、子宮頸癌の一次スクリーニング用 効果を検証する臨床試験も行う予定という。 として市販前承認(PMA)の適応を拡大した。 コバス HPV は、全自動核酸抽出装置「コバス 4800 システム」で使用し、子宮頸部の細胞サンプ Protégé ルから子宮頸癌の原因となる HPV16、18 型、そ の他の高リスク型を同定する。今までは、Pap テ スト(子宮頸癌の細胞診検査)で異常が見られた 患者の二次検査用、もしくは Pap テストで異常が ない 30 歳以上の補足検査用として承認されてい (http://media.sjm.com/) 15 May 2014 Vol.44 たが、今後は 25 歳以上であれば Pap テストなし ることで、慢性的な難治性潰瘍をより効率的に治 で使用できるようになる。日本では、Pap テスト 療できると期待している。 で異常が見られた患者用としてのみ保険適用され Bridge Dressing ている。 Pap テストを受けた 25 歳以上の女性 47,000 人 を 3 年間フォローした試験では、Pap テストで異 常がありコバスで HPV16 陽性と判定された患者 の 4 人に 1 人が、3 年以内に子宮頸癌を発症した。 また、Pap テストで異常がなかった患者の 7 人に Dressing Kit 1 人はコバスで HPV16 陽性と判定されるなど、 (http://spiracur.com/) 精度の高さも証明された。 OptiScan 社、米国で ICU 用 CGM OptiScanner の 臨床試験を開始 2014 年 4 月28 日 OptiScan Biomedical 社は、集中治療室(ICU) (http://www.roche-diagnostics.jp/) 用の持続血糖モニター(CGM)「 OptiScanner Other Products 5000」について、治験用医療機器の適用免除(IDE) の承認を取得し、臨床試験を開始した。 ICU に入室する患者の 20%は糖尿病、40~ 着用したまま HBOT が可能な Spiracur 社の NPWT 用ドレッシング材 60%は一時的に血糖値が高くなるストレス高血 糖症を患っており、継続的な血糖値モニタリング が必要とされる。ベッドサイドに置いて使用する 2014 年 4 月3 日 OptiScanner は、患者に留置したカテーテルから Spiracur 社は、 電力不要の陰圧閉鎖療法 (NPWT) ース濃度を測定する。CE マークは取得済みだ。 15 分ごとに血液を採取し、自動的に血中のグルコ システム「SNaP」で使用するドレッシング材 試験は、 米国の 10 施設 200 人を対象に行われ、 「SNaP Dressing Kit」と「SNaP Bridge Dressing」 測定精度とリアルタイム測定の有用性を評価する。 を、高気圧酸素治療(HBOT)装置内で着用する 同社は来年の承認取得をめざしており、承認され ための市販前届 510(k)を完了した。 れば、メドトロニックやエドワーズライフサイエ Dressing Kit はハイドロコロイド製の被覆材で、 ンスの CGM 製品の競合になる。 創部を保護するだけでなく簡単に剥がすことがで (http://www.optiscancorp.com/) きる。また、Bridge Dressing は、創部から離れ たところから陰圧をかけられるようになっている。 HBOT は、通常の 1.5~3 倍の気圧に設定した Mauna Kea 社、 共焦点蛍光マイクロスコープ Cellvizio の薬事承認を取得 特殊な密閉装置内で高濃度の酸素を吸入すること で、創傷や皮膚の感染症の治癒を図る治療法だ。 2014 年 4 月29 日 今回の承認により、SNaP で陰圧治療中の患者で も、陰圧カートリッジを外せばドレッシング材を 着用したまま HBOT を受けられる。 Mauna Kea 社(仏)が、高解像度の共焦点蛍光 Spiracur 社は、HBOT と NPWT を組み合わせ マイクロスコープ「Cellvizio」について、胃腸、泌 16 May 2014 Vol.44 尿器、呼吸器用として日本の薬事承認を取得した。 理と詳細な分析を提供できるようになる。 Cellvizio は、内視鏡の鉗子チャネルに挿入して (http://www.chca.ca/) 使用するマイクロスコープで、粘膜を拡大し、病 変の疑いのある組織をリアルタイムで観察できる。 市販前届 510(k)と CE マークは承認済みで、売れ 行きは好調だ。 日本は内視鏡の普及率が非常に高く、世界市場 の 20%を占める。また、優れた技術を持つメーカ コヴィディエン、 内視鏡の洗浄器を開発する New WaveSurgical社を買収 2014 年 4 月14 日 ーや医師が多く、製品開発の中核を担っている。 Mauna Kea 社は日本をきわめて重要な市場と位 コヴィディエンは、内視鏡用の曇り止めシステ 置付けており、現在、日本の販売代理店であるア ム「D-H.E.L.P.」を開発する New Wave Surgical ムコと協力して発売準備を進めている。 社を 1 億ドルで買収した。New Wave Surgical 社は昨年 2,100 万ドルの売り上げを記録し、従業 員数を増やすなど急成長している。 D-H.E.L.P.には、内視鏡を差し込んで洗浄・曇 り止め加工する本体、トロッカーの内部をふき取 るワイパー「TrocarWipe」、粘着性の高い組織を 除去するマイクロファイバータオル「MicroPads」 (http://www.maunakeatech.com/en) が含まれる。市販前届 510(k)と CE マークは取得 M&A 済みで、米国では 1,200 施設に導入されており、 昨年は 50 万症例以上で使用された実績を持つ。 GE、医用ソフトウェア会社 CHCA 社を買収 コヴィディエンは買収にともない、D-H.E.L.P. を「Clearify Visualization System」と改名して 販売する。 2014 年 4 月3 日 GE ヘルスケアは、手術室用の管理ソフトウェ ア 「 Opera 」 を 開 発 す る CHCA Computer Systems 社を買収する。完了は今年の第 2 四半 期の見通しだ。 (http://surgical.covidien.com/) GE が医用ソフトウェア会社を買収するのは、 API Healthcare 社につづき今年で 2 件目。GE は Global Market 現在、インターネットを通じて即時に製品や社会 インフラの稼動データを収集・分析し、作業の効 イスラエルの 注目の新興企業 率化と生産性向上をめざす「インダストリアル・ インターネット」の構築に力を入れている。これ 2014 年 4 月14 日 により、例えば手術室なら手術の待ち時間や施術 時間を短縮する、機器の不備による手術のキャン セルを防ぐといったことが可能になる。 イスラエルは、国を挙げてイノベーションへの Opera は、手術室やスタッフのスケジュール、 支援を積極的に行っている。政府の助成金を受け 手術にかかるコストなど、手術に関係する事柄す るインキュベーター企業 NGT3 社(イスラエル) べてを効率的に管理できるソフトだ。GE のシス は、国内のさまざまな新興企業をサポートしてい テムと併用することで、リアルタイムのデータ管 るが、そのなかの 3 社を紹介する。 17 May 2014 Vol.44 2008 年に始まった両社の特許訴訟は一応の終 (1) Metallo-Therapy 社 悪性腫瘍に蓄積し、数週間とどまる性質を持 結を迎えるが、 影響はメドトロニックだけでなく、 つ金ナノ粒子「GNP」を開発している。CT 医師や患者にまでおよぶ。現在米国で承認されて 検査の造影剤として使用できるだけでなく、 いる TAVI 用デバイスは Sapien と CoreValve の 2 放射線治療の腫瘍マーカーとしても使用可能 種類のみで、ほとんどの医師はどちらか一方のト だ。2015 年の臨床試験実施をめざしている。 レーニングしか受けていない。CoreValve のトレ (http://www.metallo-therapy.com/) ーニングを受けた医師しかいない医療機関にとっ て販売制限は深刻な問題となるため、エドワーズ の特許が失効する 2016 年 3 月までの間、両社が (2) ParaSonic 社 何らかの合意に達することを望む声も多い。 低レベルの音響振動により、頭皮にダメージ を与えることなく頭ジラミを撃退できるデバ (http://www.edwards.com/) イスを開発中。従来の専用シャンプーとクシ Administration を使う治療法は取り扱いに注意が必要で、頭 皮に異常が現れる場合があった。2014 年後半 に臨床試験を始め、来年中旬の CE マークも 依然厳しい 中国の医療機器規制、 メーカーは柔軟な制度を求む しくは FDA 承認取得を計画している。 (3) Aqueduct Medical 社 2014 年 4 月17 日 子宮鏡検査では子宮頸部を拡張する必要があ るが、一般的に使用されるラミナリアはゆる やかに拡張するため患者に優しいものの、10 中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)は、 ~12 時間を要する。また、ヘガール(金属製 先日、医療機器の規制強化と開発促進をめざして の棒)は短時間で拡張できるが痛みをともな 法改正を行ったが、医療機器業界のニーズとはま う。同社は痛みもなく、わずか数分で子宮頸 だギャップがあるという。 部を拡張できるカテーテルシステムを開発し 改正後の法律では、すべてのメーカーに対して ている。年末までには臨床試験を開始し、来 同じ承認手続きが求められているが、メーカー側 年中の CE マーク取得をめざす。 からは規模や実績に応じて簡略化すべき、との声 が上がっている。大手を優遇すれば買収や統合が エドワーズVS メドトロニック、 TAVI デバイスの訴訟は エドワーズに軍配 促進され、 業界全体の技術向上が見込めるためだ。 また、中国では技術が製品化される割合が低い。 これは新製品の申請者が法人格を持つことが承認 取得の条件とされているためで、法人格を持てな 2014 年 4 月15 日 い大学の研究グループにとって製品化の障壁とな っている。このほか、臨床試験の実施要件が厳し すぎる、知的所有権の侵害への対処が不十分とい 米国の連邦地方裁判所は、メドトロニックの経 った問題もある。 カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)デバイス 「CoreValve」が、エドワーズライフサイエンス さまざまな問題は残されているものの、デバイ の 「 Sapien」 の 特 許を 侵 害し た こと を認 め 、 ス税を課された米国メーカーは以前ほど活発に技 CoreValve の米国内販売を制限する仮差止命令を 術開発を行っていないため、中国メーカーにとっ 出した。CoreValve は、今年 1 月に市販前承認 ては今が成長のビッグチャンスだろう。 (PMA)を取得したばかり。メドトロニックはド イツでも同様の訴訟に敗れ、昨年ドイツ市場から 編集部注:本社所在地が米国の企業は、国名記載を省略し ています。 撤退している。 18 May 2014 Vol.44 Kawanishi Hotline 前号の Medical Device Daily から、カワニシグループの社員が選んだ注目の記事をご紹介します。 MANA が開発する、透析治療が行える ナノファイバーメッシュ〈3/6〉 • 従来の 10 分の 1 の大きさで電池寿命は短くなら ないのか、透視下で本当に容易にデバイスを回収 できるのかなどの疑問は残るが、ドクターの評価 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA) が開発中の、災害時でも利用可能な腕時計型尿 毒素除去システムに装着するメッシュで、細孔 構造を持つ天然鉱石ゼオライトを含有しており、 血中のクレアチニンを選択的に除去できる。 は「今までのものとは一線を画しており、非常に 有用そう」と上々だ。適応は現在と同じなので 400 億円以上の市場が見込める。(齋藤) • ペースメーカの長期植込み患者には、リードの断 線や感染症のリスクがつきまとう。Nanostim は • 日本の透析患者は 30 万人を超えており、年々増 それらの問題点を克服しており、リードレスなら 加傾向にある。この製品が慢性透析患者にルーチ ではの合併症があるにしても、リードによる慢性 ン使用できるかどうかはまだ分からないが、災害 疼痛や腕の稼働制限などを気にする必要はない。 時の慢性透析患者への緊急対応やクラッシュ症 ただ、デュアルチャンバ型が登場しない限り爆発 候群の治療ができるだけでもかなりニーズの高 的な市場の広がりは難しいと思われる。(松本) い製品になる。逆に、使用が緊急対応時に限定さ • バッテリーとパルスを出力するリードが一体と れるなら、製品化されても既存メーカーを脅かす なった低侵襲な製品で、ニーズは高いだろう。た 存在にはならないだろう。(合田) だし、留置時にテクニックや慣れが必要かもしれ • 緊急避難的に使用するデバイスとして開発され ないと懸念されるドクターもいるようだ。 (高橋) ているようだが、将来的に水や電気を使わず、デ バイス交換だけで透析ができるようになれば、も っと使用の幅、可能性が広がっていくと思われる。 いち早く押さえておきたい製品だ。(竹内) • 従来品ほど大量の透析液を使用しなくて済むデ バイスなら、医療費の削減にもつながる。大手メ ーカーが開発競争に参戦すれば、より実用化が進 むのではないか。(河野) • 透析患者にとって、透析治療ができないことは即、 命にかかわる。今後も起こりうる大地震などの災 PEEKにポーラス加工したMedShape社の スーチャーアンカーMorphix SP〈3/7〉 PEEK素材に骨との結合性を高めるポーラス加 工を施してあるが、疲労強度や引き抜き強度は 今までと同じ。本体を骨の穿孔部に挿入し、ア ンカー部を上からかぶせるようにY字型に拡張 して固定する。市販前届510(k)は完了済み。 • 金属製が主流だったスーチャーアンカーも、最近 害時に有効な製品なので、災害拠点病院を中心に は PEEK 製や吸収素材のものが上市されている。 普及するかもしれない。(栗原) この製品はポーラス加工により初期固定性や骨 結合性が高まると期待され、小さいサイズまでそ リードレスペースメーカNanostimの 市販後調査始まる〈3/19〉 ろっているので、市場ニーズにマッチしている。 ただ、吸収素材が主流になる可能性も否定できな リードのない、従来の10分の1以下の大きさの シングルチャンバ型ペースメーカ。カテーテル で心臓内に留置するため、容易に位置変更や回 収が行える。CEマークを取得しており、すでに 欧州各国で販売されている。 いので、需要動向を見極めたい。(原田) • スーチャーアンカーは使用時の引き抜き強度を 気にされるドクターが多く、それ自体を骨と結合 させるという考え方は浸透していない。ただ、基 19 May 2014 Vol.44 本的に抜去しないのだから、長期の固定力を強化 注目のデバイス関連記事を ピックアップ!(未掲載記事より) するという方向性は良いと思う。PEEK 素材なの で金属アレルギーの患者にも使用できる。 (梶原) • ポーラス加工しても通常の PEEK 素材と同等の ■ コヴィディエンの腹壁ヘルニア用 メッシュ「Symbotex」〈3/17〉 ポリエステルのメッシュと生体吸収性コラーゲ ンフィルムの二層構造。メッシュは強度や形状記 憶効果があり、軟部組織のイングロースを促進す る。フィルムは内臓組織への癒着を防止できる。 鏡視下でも直視下でも使用可能。 強度があり、固定方法もいままでにないものなの でドクターの興味は引けそう。単回使用にならな いよう努力が必要だ。靭帯修復などの症例数は全 国的にもかなり多く、臨床成績がついてくれば競 争力のある製品になるかもしれない。(若江) • 骨との固着性が高いに越したことはないと思う が、現場ではそこに重きを置いていないように感 • 腹腔鏡下での展開もスムーズで位置変更も 簡単、何より 4 点固定せずに腹壁に貼りつけ ることができる。手術時間の短縮と術者のス トレス軽減が期待できそう。(大場) • ジョンソン・エンド・ジョンソンも日本での ヘルニア市場に注力すると聞いており、大手 2 社の動向を注視していきたい。(佐野) じる。こういった製品が市場に登場すれば、また 流れが変わるかもしれない。(西山) • 販売中の多くの競合品から考えると、この製品も 30,000 円/個で 1 症例当たり 1~3 個の使用は見 込まれる。素材が珍しく、形状とアンカーの仕組 みがユニークなので引き合いはありそうだ。 (坂) ■ Svelte Medical Systems 社の Tyto Care社の遠隔医療用診断デバイス Tyto〈3/19〉 冠動脈用 DES システム「Svelte IDS」 〈3/13〉 ワイヤー、バルーン、細径ステントを1つのデ リバリーシステムに搭載したオールインワン型 医師が自宅にいる患者を診察するための遠隔医 療用ハンドヘルド型デバイスで、体温や心拍数を 測定したり、咽頭や鼓膜を撮影することができる。 測定結果はクラウドサーバーに転送されるので、 医師はリアルタイムに診断を行える。 で、従来品に比べて作業手順を大幅に削減でき る。CE マークは取得済み。 • 1 本のデバイスで手技が行えるのは魅力的。 すべての症例に用いるのは難しくても、症例 を選べば時間の短縮につながり、病院にも患 者にもメリットが大きい。(服部) • タブレットやスマートフォンを在宅医療に活用 しようという動きは以前からあるが、医師の診療 ■ ボストン、パーキンソン病治療用 をサポートするデバイスについてはあまり聞か ないため、注目されるのではないか。夜間の小児 DBS の普及をめざす〈3/3〉 救急患者のスクリーニング手段、僻地での往診に CE マーク取得済みの脳深部刺激(DBS)システ 替わる手段として使えるほか、セルフメディケー ム「Vercise」を販売するボストン・サイエンテ ションでの対応も迅速化できるだろう。(片桐) ィフィックは、欧州でジストニアとパーキンソ ン病の治療法である DBS の普及に取り組む。 • 医療費の抑制や通院困難な患者に対応するため、 • 神経刺激デバイスには DBS のほか、慢性痛 遠隔医療は今後ますます普及すると予測される。 を抑制する脊髄電気刺激(SCS)や便失禁を 治療する仙骨神経刺激(SNM)、逆流性食道 炎を治療するために下部食道括約筋を刺激 するものがあり、その可能性に驚かされる。 植込み型だけに患者も抵抗はあるだろうが、 症状が緩和できるため、低侵襲な治療法とし てさらなる展開が期待できそう。(重松) すでに遠隔医療用デバイスを製品化している企 業もあるが、測定できるのは血圧、脈拍、体温、 体重程度。Tyto は通信機能を備え、咽頭や鼓膜 の撮影もできるなど、競合と比べ診断性能が高い ので期待できる。ただ、現場からは、「遠隔医療 システムの構築と導入が難しく、高齢患者にシス テムを理解してもらえるか不安」との声も聞かれ ※〈 〉は MDD の配信日、 ( )内は回答社員の名字 る。(後藤) 20 May 2014 Vol.44 [出典紹介] MDD (Medical Device Daily) トムソン・ロイター HRM (Healthcare Risk Management) AHC Media LLC 医療・検査器材を中心に、海外医療の最新情報や将来動向をたんねんに収録したデイリーニュース。 医療制度、市場動向、保険者や病院団体の動向、学会、新技術、FDA、新製品、VIP インタビュー等。 医療訴訟や医療機関におけるリスクマネジメントの最新情報。 CMA (Case Management Advisor) 入院から退院、在宅医療までのケース・マネジメントにまつわるさまざまな問題やその解決方法を収録。 HCM (Hospital Case Management) 病院が抱える多くの問題を病院間で共有・解決するためのアドバイスやテクニック、成功/失敗事例の紹介。 SDS (Same-Day Surgery) 感染症コントロールから償還、コスト削減策まで、日帰り手術の効果と安全性を高める情報を幅広く収録。 HEH (Hospital Employee Health) 安全機能付き器材、感染管理、危険有害性など、医療従事者の安全と健康を維持するための情報を提供。 アドバイザリー・スタッフ――メリー・コーベット/宇野恵裕/福山健 エディトリアル・スタッフ――佐藤崇/海野裕美/岩田斐/宮長夕紀/田中妙子/岡山大学 MESS/三宅優美 デザイン・フォーマット制作――川畑博昭 Medical Globeの定期購読はこちらから Medical Globe は定期購読(年間)ができます。 ご希望の方は、下記の URL よりお申し込みください。 購読会員になると、最新号はもちろんバックナンバーに ついても、PDF をダウンロードしていただけます。 毎月 15 日発刊/年 12 号発行 年間会費 50,544 円 May 2014 Vol. 4 4 http://www.kawanishi-md.co.jp/mg [発行人]―――高井 平 崇 [発行所]―――㈱カワニシホールディングス [編集人]―――佐藤 〒700-0975 岡山市北区今 1 丁目 4-31 TEL: 086-241-9241 Internet:http://www.kawanishi-md.co.jp/mg e-mail:[email protected] Ⓒ2014 カワニシホールディングス [本誌の提携企業] ――当誌で紹介している海外情報は、 トムソン・ロイターならびに AHC Media LLC の許諾を得て、両社の誇る最新のグローバル情報の中から厳 選したコンテンツを中心にわかり易く日本語で編集したものです。 トムソン・ロイターは世界有数の情報企業であり、金融・知財・医薬など 多分野の最新情報を配信しています。AHC は 50 以上の情報誌を持ち、 医療関係者を中心に 5 万人の購読者を抱える医療専門の情報企業です。 引用タイトルについては[出典紹介]をご参照ください。 なお、当誌の情報を無断で転載、複写することを禁じます。