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「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」 事後評価報告書(案)概要

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「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」 事後評価報告書(案)概要
第 5 回研究評価委員会
資料 4-2-15
「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」
事後評価報告書(案)概要
目
次
(頁)
分科会委員名簿・・・・・・・・・・・・
1
プロジェクト概要・・・・・・・・・・・
2
評価概要(案) ・・・・・・・・・・・・・
5
評点結果 ・・・・・・・・・・・・・・・
10
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会
「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」(事後評価)
分科会委員名簿
(平成16年12月現在)
氏名
分科会
会長
いとう
けんいち
伊藤
献一
分科会
会長代理
いいだ
のりまさ
飯田
訓正
てらおか
やすたけ
寺岡
靖剛
なるさわ
かずゆき
成澤
和幸
に
分科会
委員
わ
しげき
丹羽
茂樹
ふじもと
りょういち
藤本
暸一
ほり
よういち
堀
洋一
所属、役職
北海道宇宙技術創成センター
慶應義塾大学
教授
九州大学
教授
理工学部
副理事長
システムデザイン工学科
大学院総合理工学研究院
独立行政法人 交通安全環境研究所
上席研究員
松下ロジスティクス株式会社
品質環境・事故対策室 室長
生産技術研究所
環境研究領域
輸送本部
早稲田大学 知的財産戦略研究所
知的財産本部 参与
東京大学
教授
物質科学部門
客員教授、
情報・システム部門
敬称略、五十音順
事務局:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価部
1
概
要
作成日
制度・施策(プログラ
ム)名
次世代低公害車技術開発プログラム
事業(プロジェクト)名
高効率クリーンエネルギー自動車の
開発
担当推進部/担当者
省エネルギー技術開発部/松村
0.事業の概要
Ⅰ.事業の位置付け・必
要性について
P97001
プロジェクト番号
敏美
運輸部門における中長期的なエネルギー基盤技術の確立に資するとともに、エネルギー起
源温室効果ガス排出の抑制に資するべく、燃費を大幅に向上するハイブリッド機構、ク
リーンエネルギー及び排出ガスの後処理技術を組み合わせた新しい自動車を開発する。
近年、地球規模での問題となっている二酸化炭素の排出抑制に取り組んでいく上で、運
輸部門、とりわけ自動車部門におけるエネルギー消費量の低減は、極めて重要な課題であ
る。また、一次エネルギーの大宗を石油資源に依存する我が国としては、石油代替エネル
ギー対策として、クリーンエネルギー(天然ガス、合成燃料等)を自動車燃料として導入
していくことが重要である。さらに、大気環境の保全の観点からも自動車からの排出ガス
(窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)等)を低減することが重要である。これら
の課題を達成していくために、次世代低公害車技術開発プログラムの一環として、燃費向
上及び排出ガス低減を可能とする革新的な自動車技術を開発する。具体的には、燃費を大
幅に向上するハイブリッド機構、クリーンエネルギー及び排出ガスの後処理技術を組み合
わせた新しい自動車を開発する。
このため、これらの要求性能を満足すべく、国内外の技術交流・情報交換を図りつつ、
要素技術、システム設計研究等を実施し、クリーンエネルギーを燃料とする高効率の自動
車を開発する。
本技術の確立により、運輸部門における中長期的なエネルギー基盤技術の確立に資する
とともに、エネルギー起源温室効果ガス排出の抑制に資する。
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
・燃費(km/L)の向上
二酸化炭素排出量と概ね相関関係を有する燃費について、各車種別に基準車の 2 倍以上
の向上を図る。なお、重量車については目標値を表 1 の通りとする。
表1.試作車両の目標燃費(単位:km/L)
開発車両
燃費目標*
14.80
CNGセラミックスエンジン搭載ハイブリッドトラック
12.00
CNGエンジン搭載ハイブリッドトラック
4.334
LNGエンジン搭載ハイブリッドバス
3.78
DMEエンジン搭載ハイブリッドバス
事業の目標
*燃費目標は軽油換算値
・排出ガスの低減
天然ガス、合成燃料等のクリーンエネルギーを燃料として利用する。なお重量車に
ついては新短期規制(H15∼)の超低排出ガスレベル(表 2)以下を目指す。
表 2.重量車新短期規制の超低排出ガスレベル(単位:g/kWh)
目標値
NOx
PM
CO
HC
0.85
0.05
16
0.22
NMHC*
0.18
*NMHC: Non Methane Hydrocarbon
主な実施事項
H9fy
10fy
11fy
12fy
13fy
14fy
15fy
H9fy
10fy
11fy
12fy
13fy
14fy
15fy
要素技術開発及び評価
事業の計画内容
車両試作及び評価
総合性能評価
技術動向調査
成果とりまとめ
会計・勘定
開発予算
(会計・勘定別に事
業費の実績額を記
載)
(単位:百万円)
一般会計
特別会計
開発体制
経産省担当原課
総額
210
500
625
564
579
965
797
4240
210
500
625
564
579
965
797
4240
(電多・高度化・石油の別)
総予算額
製造産業局
2
自動車課
プロジェクトリーダー
なし
(財)日本自動車研究所[再委託:(株)本田技術研究所、マツ
ダ(株)、(株)三菱総合研究所]、日野自動車(株)、(株)
いすゞ中央研究所、三菱ふそうトラック・バス(株)、日産
ディーゼル工業(株)、いすゞ自動車(株)、(株)三菱総合研
究所
NEDO が、年に 3 回程度の ACE 技術委員会を開催し、研究開発がプログラム及びプロ
ジェクトの目的・目標並びに国内外の技術開発動向に対して適切であるかを審議し、必要
に応じて基本計画の見直しを行った。
平成 14 年度からは ACE プロジェクト開発車両の排ガス目標を確実とするために、ACE
プロジェクト内で排ガス後処理触媒を開発することを追加した。
研究開発成果を実用化と研究開発レベルに分けて以下に示す。
1.実用化
(1) 14 年度に日産ディーゼル工業(株)がキャパシタハイブリッドトラックを発売。
(2) これに加えて 15 年度は三菱ふそうトラック・バス(株)も大型バスを 2004 年 2
月から販売を開始した。
2.研究開発
(1) クリーン燃料(天然ガスおよび DME )エンジン及び各ハイブリッド要素の適
合・開発を完了した。
(2) 開発エンジンを搭載した各社の開発ハイブリッドトラックおよびバスで都内走行
モードを代表する運転モードでテストを行い、燃費は約 2 倍、排出ガスは新短期規
制値の 4 分の1 レベルの最終目標値達成を確認した。
(3) 排ガス後処理技術については、尿素 SCR システムを試作して排出ガス低減性能等
を確認し、実用性の確認と実用化への課題抽出を行った。
(3) 開発を進めた商用車ハイブリッドについて市場導入方策のシナリオを纏めた。更
に、2010 年を想定した、自動車技術の動向と、それに対応する、燃料選定のシナ
リオを作成した。
委託先(*委託先が管
理法人の場合は参加企
業数も記載)、平成
15 年度
情勢変化への対応
Ⅲ.研究開発成果につい
て
Ⅳ.実用化、事業化の見
通しについて
Ⅴ.評価に関する事項
Ⅵ.基本計画に関する事
項
投稿論文
「査読付き」13 件、
「その他」106 件
特
「出願済」120 件、
「登録」45 件、
「実施」0 件(うち国際出願 7 件)
許
本事業の成果を適用して、以下の実用化を行った。
(1) 日産ディーゼル工業(株)がトラック、三菱ふそうトラック・バス(株)がバスの
ハイブリッド車を発売開始。
これ以外に以下の成果導入をそれぞれに検討中である。
・日産ディーゼル工業(株)はキャパシタ式大型トラック、バスを 2006 年以降に展
開することを検討中
・三菱ふそうトラック・バス(株)はパラレル式小型トラックを 2004 年に実用供試
することを検討中
・日野自動車(株)はワンウエイクラッチ・モータコントローラを 2006 年頃に市場
導入することを検討中
・いすゞ自動車(株)はハイブリッド制御技術を 2005 年に市場導入することを検討
中
(2) 天然ガストラックの導入
H15 年度で天然ガストラック、バスは約 3000 台導入されており、本プロジェクト
で開発されたエンジン技術が効果的に活用されている。
事前評価
○○年度実施
中間評価以降
11年度
担当部
中間評価実施
作成時期
9年5月
作成
変更履歴
14年3月
変更
3
○○部
16年度
事後評価実施予定
「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」全体の研究開発実施体制
研究開発体制(平成15年度)
経済産業省 製造産業局 自動車課
経済産業省 製造産業局 自動車課
技術委員会 委員長 大聖教授(早大)
2~3回/年開催 ・進捗管理 ・アドバイス 委員会
・現地での委員会開催
独立行政法人
新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)
委託先(7社)
日
日
野
野
自
自
動
動
車
車
い
い
す
す
ゞ
ゞ
中
中
央
央
研
研
究
究
所
所
三
三
菱
菱
ふ
ふ
そ
そ
う
う
ト
ト
ラ
ラ
ッ
ッ
ク
ク
・
・
バ
バ
ス
ス
日
日
産
産
デ
デ
ィ
ィ
ー
ー
ゼ
ゼ
ル
ル
工
工
業
業
い
い
す
す
ゞ
ゞ
自
自
動
動
車
車
三
三
菱
菱
総
総
合
合
研
研
究
究
所
所
(財)JARI
(日本自動車研究所)
ワーキング委員会
再委託先(3社)
本
本
田
田
技
技
術
術
研
研
究
究
所
所
4
マ
マ
ツ
ツ
ダ
ダ
三
三
菱
菱
総
総
合
合
研
研
究
究
所
所
「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」
(事後評価)評価概要(案)
1.総 論
1)総合評価
自動車技術は将来にわたって我が国が先導していくべき基幹技術の一つであり、
先行するハイブリッド技術を核とした先進自動車の研究開発による省エネと、ク
リーン燃料導入による低排出ガス化の両立を目指した当研究開発事業は、我が国
にとって極めて重要度の高い先進的技術開発プロジェクトとして位置付けられる。
各要素技術の研究開発は、初期の目標を十分にクリアしており、実用化の見通し
も明確になっており、一部が市販車に採用されるなど素早い対応も見られること
から、プロジェクト全体として十分評価できる。
NEDO 内に技術委員会を設置して開発事業の進捗管理・アドバイスを実施して
きたが、開発事業の責任体制、迅速な開発状況の掌握、開発業務への適切な関与
という点では、もっと戦略的に活動できる位置付けが必要であった。このために
は、強力なプロジェクトリーダーを置くことも検討すべきであった。
今後は、本研究プロジェクトの成果をもとに、参加各社が環境対策、燃費対策
に積極的に取り組み、適切な知的財産戦略のもと、高い国際競争力の維持に努め
てもらいたい。
2)今後に対する提言
燃料電池車が実用・普及されるまでにはかなりの年月が必要と判断されるため、
内燃機関をベースとした高効率・クリーンエネルギー車の開発は必須であり、実
用化が急がれる。本プロジェクトの成果は、次段階の研究開発の指針を得る上で
極めて重要な情報を提供するものであり、回生エネルギーの貯蔵技術開発と併せ
て、長期的な広い視点に立って開発課題を設定して、ハイブリッド技術の研究開
発の実施を検討して欲しい。
一方、地球温暖化防止のための施策は危急の課題と考えられるので、市場動
向・ユーザーニーズを十分に踏まえて、研究成果を反映した車輌を早期に市場投
入する必要がある。普及を促進するためには、クリーン燃料供給システムの構築
や安全基準の整備など、社会基盤や制度の整備を急ぐとともに、本開発成果を採
用した自動車や燃料の製造や購入に対する補助金制度の新設などを求めたい。
2.各 論
1)事業の位置付け・必要性について
先行するハイブリッド技術を核とした先進自動車の研究開発と新燃料の導入を
組み合わせた本研究開発事業は、極めてタイムリで適切な事業といえる。全く新
5
しい技術開発が課題として取り上げられ、複数の企業が参画して成果を共有しな
がら研究開発を実施していくことで開発期間の短縮とリスクの軽減が図られてお
り、NEDO 事業として十分妥当であると評価する。費用対効果としても、将来国
民が享受すると見られる利益からすれば妥当と言える。
ただし、全体の計画作成やエネルギー情勢、国際動向への対応などには立ち後
れが見られるので、近隣諸国の動きをより適切に判断して評価していくべきで
あった。また、わが国を代表する大手企業によるプロジェクトだけに、NEDO が
関与する領域、各企業の役割をもう少し明確にすることが望ましかった。
2)研究開発マネジメントについて
目標設定は定量的であり適切であると評価する。取り上げた技術課題はプロ
ジェクトスタート時の状況を踏まえて適切に設定されており、研究開発計画も長
期的視野に立って検討されている。
研究開発体制は、意欲的な企業ならびに NEDO 推進部と技術委員会により構成
されており、有機的に機能していたと評価できるが、開発事業の責任体制、途中
の段階での迅速な開発状況の掌握、推進者の適切な関与という点でやや曖昧との
印象が残る。プロジェクトリーダーを置かずに成果を上げたが、プロジェクトの
見直しなどが実施企業の判断に委ねられたことは、NEDO のリーダーシップとい
う点からは残念である。情勢変化に迅速に対応していることは十分評価できるが、
最終年度に実施者を追加するなど研究開発体制を変更したことは、計画性という
観点からは理解し難い。
なお、本プロジェクトのような7年間の事業では、中間評価の回数を増やして
も良かったのではないかと思われる。
3)研究開発成果について
全ての研究開発テーマにおいて開発目標をほぼ達成しており、いくつかのテー
マでは当初目標を大幅にクリアしている。成果は世界最高水準の技術レベルにあ
り、投入予算を考慮しても高く評価できる。市場の拡大や創成につながる成果が
得られており、我が国において環境保全に貢献できる技術が育ったという点でも
十分に評価できる。
特許や論文発表は必ずしも数がすべてではないが、統一的に指導がなされてい
ないためか委託先により数にばらつきがあった。国際競争が最も差し迫っている
分野だけに国際特許の出願は必須であり、仮にノウハウ的要素が大きいとしても
基本的な特許などはきちんと抑えて欲しい。なお、成果の公表に関しては、技術
拡散防止の政策的意図も踏まえた対応をしており妥当と評価する。
今後は、研究成果の論文発表や特許取得、製造技術などのノウハウ化などを含
めて、全体的な知的財産戦略を明確にする必要がある。
6
4)実用化、事業化の見通しについて
既に幾つかの要素技術は市販自動車に採用されており、ハイブリッドシステム
に関してはトラック、バスとして市販されている。各実施企業は、実用化に必要
な課題と開発目標の整理が出来ており、実用化の具体化時期も明示していること
から、実用化は視野に入っていると評価する。各実施企業内に技術の蓄積と人材
確保ができていることから、当該分野への研究開発への波及効果も期待できる。
しかし、導入普及や事業化については、ターゲットが市場を見据えたものとし
ているか不透明である。導入普及に伴う経済効果に関しては評価を固めるだけの
決定要因の解析がなされておらず、省エネ効果量に関しても導入計画が漠として
いる。これだけの総合的な開発事業なので、LCA 的な観点も含めて、コストダウ
ン、導入普及・事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果等の見通しを推
計して欲しかった。
7
個別テーマに関する評価(1)
成果に関する評価
8
要素技術開発は概ね当初目標をクリアしている。
取り組んだ要素技術開発は、いずれも独創性、先進
性の点で国際水準を凌駕するレベルにある。
「電動過給」、「トルクアシスト」、「フライホイー
ルバッテリー」は汎用技術としてのポテンシャルが
高く、特に「電動過給」はオリジナル技術でありそ
の効果も大きい。「CNG セラミックス遮熱エンジ
ン」の動力源開発は極めてチャレンジ性が高く、新
たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認め
られる。基礎燃焼技術は、高効率な次世代エンジン
①要素技術
システム開発を支え得る先進的な技術として高く評
の開発及び
価できる。「尿素 SCR システム」の開発は、世界で
評価
初めて実用化した点は評価できるが、アンモニアス
リップ及び尿素由来の未規制物質の課題が残されて
おり、排出量の把握と改善を進める必要がある。ま
た、尿素水噴射系のフィードバック制御化などにつ
いても改善の余地がある。
各要素技術開発はそれぞれ高い成果が得られてい
るので、今後はコストの検討や信頼性克服などを行
い、開発技術の一部導入から実用化を進めて欲し
い。
それぞれ要素技術開発の成果を取り入れて、ハイ
ブリッド車の試作車両を数種類完成するなど、世界
的にも例を見ない成果を得ている。車両としての技
術目標は、概ね達成していると評価する。
「CNG セラミックスエンジントラック」は、要素
的にも全体的にも難しい組み合わせにチャレンジし
ており、多大な成果を出している。「CNG エンジン
②車両試作 トラック」は、要素技術の Li イオン電池の成果を含
め、全体的に素晴らしい成果を得ている。「DME ハ
及び評価
イブリッドバス」は、新たな領域の研究開発を行
い、DME を用いるという前提条件下では良い成果
を出している。
なお、車両の燃費評価については、一定レベル確
認条件に統一性を持たせるべきであり、可能な限り
実用化を想定した条件を採用して欲しい。
実用化の見通しに関する評価
今後に対する提言
開発された要素技術は十分実用化の可能性があり、市場
投入が予定される成果や、市販車に採用されている成果を
得ている。「高効率ハイブリッドシステム」は、現状では
コストの点で引き合わないが、将来燃料価格が上昇した場
合には乗用車向けの基本技術として広く採用される可能性
がある。「尿素 SCR システム」は、課題が抽出されてお
り、既に一部実用化されている。「ANG 燃料貯蔵技術」
は、搭載性、安全性などの観点から可能性は十分にある
が、実用化には時間が必要である。
大型車両用の要素技術の研究開発は、我が国が先行する
独自開発技術として実用化が期待できる。「CNG エンジ
ントラック」はハイブリッドの可能性を追求した点で有意
義であり、今後用途に特化したハイブリッド車の開発につ
なげて欲しい。「CNG セラミックエンジントラック」
は、すぐの実用化は困難であるが、成果はエンジンの遮熱
化と自着火燃焼の研究に生かされると思う。「DME ハイ
ブリッドバス」と「LNG ハイブリッドバス」は、エンジ
ンとハイブリッドシステムの要素技術は優れているので、
自動車等への応用に生かされていくと考える。
実用化には、量産性の確保とコスト削減が課題なので、
これらを克服して次世代型の高効率、低環境負荷型の大型
中型自動車に応用されることを期待する。
一部は市場導入を計画、または市販を開始する成果を得
ており、極めて実用性の高い研究開発を行っているものと
評価する。「LNG ハイブリッドバス」では、ディーゼル
キャパシタハイブリッドトラックとして既に商品化されて
おり、実用化を実証している。
一方、燃料の特性とハイブリッドの特性が必ずしも生か
されて組み合わされているとは言えないため、それぞれの
開発したエンジンおよびハイブリッドシステムの完成度は
高いが、本研究開発により示されたすべての自動車がすぐ
に実用化されるとは考えにくい。それぞれの要素技術が少
しずつ実用化されることになると思われる。
「高効率ハイブリッドシステム」は、燃費改善効
果の向上に更なる取り組みを要望したい。「フライ
ホイールバッテリー」はバスなどの大型車に向いて
おり、他分野への波及効果にも期待する。「尿素
SCR システム」は、NOx 低減効果の高いバナジウ
ム系などの SCR 触媒の開発を望む。実用化の判断
には、耐久性及び未規制物質を含む安全性等に関す
る詳細な検討と競合技術との比較検討が必要であ
る。
将来燃料として考えられている DME は燃料導入
のインフラ整備がネックとなり展望は必ずしも明確
ではないが、今後の技術開発に資する成果が得られ
ており、継続した要素技術開発を望む。
今後は、要素技術をさらに磨き上げていき、ユー
ザーの意見を十分に聞いて、用途に適したハイブ
リッド自動車を開発して欲しい。
本事業では、ハイブリッドの電気エネルギーの蓄
積システムとして「バッテリ方式」と「キャパシタ
方式」の双方が並行して研究・開発されている。総
合評価においては両方式のハイブリッド車の性能お
よび実用性の優位性を評価することが望まれたにも
拘らず、M15 モードという単一の性能比較に止
まっている。その点が、本事業による効果が市場に
どう反映され、どのような成果が具体数値で想定さ
れるのかという視点では、一般ユーザからは見えに
くいと認識が生じる一因となっている。
今後は、経済性をより詳細に検討していく必要が
ある。その場合、ただ単に燃費や車両コストなどを
ユーザやメーカの経費負担中心で経済性を評価する
と新技術は醸成されない。わが国の技術開発政策の
マクロ経済的評価を納得のいく形で実施していかな
ければならない。
個別テーマに関する評価(2)
成果に関する評価
9
概ね当初の目標を達成していると評価する。低公
害車の要素技術はさまざまなバリエーションがある
ため、そのいくつかを組み合わせた開発を行った場
合、比較検討を行うことは必要であり、かつ極めて
有益である。実際に製作した車両だけではすべてを
把握したり予測したりすることは不可能なので、ハ
イブリッド自動車、とりわけ大型自動車の評価手法
が定まっていない中、シミュレーションプログラム
を開発し、詳細な検討を行ったことは有意義であっ
③総合性能 た。
しかしながら、自動車の総合性能評価は実走行を
評価
想定した評価が必須であり、特にハイブリッド車の
燃費性能は走行条件に依存する傾向があるので、こ
とさらその必要性は高い。市場適合性、環境適合性
を評価するには、排出ガスによる都市部での局所汚
染低減効果に加えて、道路インフラに係る要因、交
通状況に係る因子、車両運行に係る要因を把握しな
いと所期の性能が出ない恐れが生じる。各種ハイブ
リッド車の得失について、リアルワールド走行時の
燃費評価、環境負荷評価が望まれる。
時宜を得た、概ね妥当な調査が実施されたと評価す
る。特に、国内企業の実用化を目指した動きなど
は、分かりやすく説明されている。
しかし、世界主要国の開発動向はもう少し丁寧に調
査すべきであり、諸外国の各メーカ、ユーザおよび
政策サイドの次期プロジェクトへの動きを十分把握
して欲しい。次世代低公害車と自動車燃料に関する
④技術動向 調査研究については、燃料および自動車のライフサ
イクルに視点をあてた解析が必要であり、実走行の
調査
視点からの評価があると良い。
個々の成果は評価できるが、プロジェクト全体の
中での位置付けはやや不明確である。調査・研究結
果を踏まえて、今後どうあるべきかの提言等の総括
がなされても良い。特に、国際的なエネルギー動向
や各国の環境規制との関連を踏まえた開発戦略への
反映があっても良かった。
実用化の見通しに関する評価
今後に対する提言
エネルギー消費量、CO2排出率の低減、および排出ガス
目標達成度の評価に関しては、概ね試作車両の成果を裏付
ける結果を得ている。実用化に向けては、要素機器の性能
予測、車両の重量形式・用途・搭載負荷などの変動要素を
組み入れ、より綿密なデータ集積と解析を行う必要があ
る。さらに、予測精度の明示や予測結果の実証も必要であ
る。
実用化は、より市場を見据えて判断して欲しい。
早急に、M15 モード等の限定された条件下では
無く、市街路・ハイウェイなど実走行において、開
発した自動車がどの程度の燃費低減および排ガス低
減の成果が具体数値で想定されるのかを明らかにす
る必要がある。また、開発した自動車のドライバビ
リティ、ライフサイクルコスト等の評価も必要であ
る。
開発した評価システムを応用して、最適ハイブ
リッドシステムの提示や機器に対する要求性能を提
示できれば、その有用性が増す。
今後は、開発が予想される様々なタイプのハイブ
リッド車について評価出来るようにして欲しい。開
発したシミュレーションソフトなどは、大学や研究
機関が自由に使えるような措置を検討して欲しい。
実用化の判断は難しいが、ACE プロジェクト成果の導入
自立期までの市場立ち上げや、市場拡大期間中で
プログラムが概ね示されていることから、研究開発事業の あっても技術開発は必要であり、その間の技術開発
有効性が裏付けられていると評価する。
負担および成果の読み込みが今後重要である。
ただし、次期開発プロジェクトとの関連から、モデル事
技術動向調査は、本事業における位置付け・関連
業時の具体的提案が必要であった。
が明確になっていない。どのように結果が反映され
たのか、されようとしているのかが示されると良
い。
評点結果
2.9
1.事業の位置付け・必要性
2.1
2.研究開発マネジメント
2.4
3.研究開発成果
1.9
4.実用化、事業化の見通し
0.0
1.0
2.0
3.0
平均値
評価項目
平均値
素点(注)
1.事業の位置付け・必要性について
2.9
A
A
A
A
A
A
B
2.研究開発マネジメントについて
2.1
A
A
A
B
B
C
C
3.研究開発成果について
2.4
A
B
B
A
B
B
A
4.実用化、事業化の見通しについて
1.9
B
B
B
B
C
C
A
(注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。
<判定基準>
(1)事業の位置付け・必要性について
(3)研究開発成果について
・非常に重要
・重要
・概ね妥当
・妥当性がない、又は失われた
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
→A
→B
→C
→D
(2)研究開発マネジメントについて
・非常によい
・よい
・概ね適切
・適切とはいえない
→A
→B
→C
→D
(4)実用化、事業化の見通しについて
→A
→B
→C
→D
10
・明確に実現可能なプランあり →A
・実現可能なプランあり
→B
・概ね実現可能なプランあり
→C
・見通しが不明
→D
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