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岡山県内での自然毒による食中毒の発生状況 [PDFファイル/1MB]
2016/2/9 岡山県環境保健センター・岡山県立図書館連携講座 「気をつけよう!身近な自然毒」 本日の内容 自然毒とは? 岡山県内での 自然毒による食中毒の発生状況 岡山県での発生状況 分析事例等 岡山県環境保健センター 衛生化学科 2 1 自然毒とは? 食中毒の種類 細菌 サルモネラ 黄色ブドウ球菌 腸管出血性大腸菌など ウイルス ノロウイルス E型肝炎ウイルスなど (1)植物性自然毒 スイセンやジャガイモなど 微生物 食中毒の 原因 自然毒 植物性自然毒 動物性自然毒 化学物質 農薬・洗剤など (2)動物性自然毒 フグ毒や貝毒など アニサキス クドア・セプテンプンクタータ サルコシスティス・フェアリーなど 3 寄生虫 参考:全国食中毒統計 原因物質別発生割合(平成26年) 岡山県での発生状況 平成22年~平成26年の原因物質別の食中毒発生状況 細菌 22.9% その他 18.8% 4 化学物質 1.0% その他 18.8% ウイルス 30.8% 動物性⾃然毒 12.5% 植物性⾃然毒 4.9% ⾃然毒 8.1% ⾃然毒 植物性⾃然毒 20.8% 8.3% ウイルス 37.5% 寄⽣⾍ 12.5% 細菌 45.1% 植物性⾃然毒 8.3% 動物性⾃然毒 3.2% 細菌 22.9% 判明数:48件 食中毒原因が判明した中で、 約21%が自然毒が原因 総件数:976件 5 6 1 2016/2/9 参考:全国食中毒統計 分析事例等 原因高等植物別発生割合(平成元年~22年) (平成18~27年度) 食用と間違えやすい植物 ヨウシュヤマゴボウ 2.9% その他 クワズイモ 5.8% ◆スイセンによる食中毒 ◆チョウセンアサガオによる食中毒 バイケイソウ類 26.7% ジャガイモ 7.4% スイセン 10.7% 時期や状態により有毒成分を多く含む植物 トリカブト 19.0% チョウセンアサ ガオ類 21.1% ◆ジャガイモによる食中毒 総件数:242件 7 8 ◆スイセンによる食中毒 スイセンには、リコリンという有毒成分が 含まれています。(炒めても壊れない) 誤って食べると・・・ 食用と間違えやすい植物 ◆スイセンによる食中毒 食後30分以内・・・嘔吐、下痢、発汗、頭痛 (ひどい場合は昏睡、低体温) 嘔吐の症状で、食べたスイセンを吐き出して症状がおさまる 場合がほとんどだが、まれに胃洗浄が行われる。 (日本中毒情報センターより) 10 9 ◆スイセンによる食中毒 ◆スイセンによる食中毒 花は全く違う・・ 食中毒は花が無く なる春先に多い! ①自宅近くの土手に自生していたスイセンの葉 をニラと間違えて食べた ②栽培していたスイセンの葉をニラと間違えて 食べた ニラ 症 状:嘔吐 ニラ スイセン ニラ(市販品) ニラの花 スイセン スイセン(鱗茎) 参考:ニラの根 ※玉ねぎと間違えやすい 葉は断面に違いが ある! スイセン(全草) スイセンの花 画像:札幌市保健所 自然毒パンフレットより 11 厚生労働省HP、東京都薬用植物園HP及び札幌市パンフレットより 12 2 2016/2/9 分析結果の一例(①の事例) ◆スイセンのリコリンの分析 粉砕 抽出 遠心分離 ろ過 調理品の残りの葉 「前処理」 この作業によって分析を 妨害するものを取り除く。 分析装置 「液体クロマトグラフ質量分析計」 リコリン 13 14 ◆スイセンによる食中毒 ◆リコリンの中毒量は? 問題点 ●食用か確認せずに食べた ●家庭菜園で、食用の野菜の近くに区別せずに 栽培していた 中毒発症量は2~3g程度(致死量は10g)。 また、スイセン1g当たり0.03~0.15mgのリコリンを含む。 3茎から一束くらいの量のスイセンの葉を食べることで 中毒を起こす可能性あり。 公益財団法人日本中毒情報センターより 葉1g中にリコリン0.13mgが検出された。 食中毒を防ぐには・・ 16 15 ◆チョウセンアサガオによる食中毒 チョウセンアサガオには、アトロピン・スコポラミン という有毒成分が含まれています。 (炒めても壊れない) 誤って食べると・・・ 食用と間違えやすい植物 ◆チョウセンアサガオによる食中毒 食後30分・・・吐き気、めまい、口が渇く、 手足のしびれ、まぶしい (ひどい場合は幻覚、錯乱) 医療機関においては、胃洗浄と活性炭投与が行われる。 (日本中毒情報センターより) 17 18 3 2016/2/9 ①食用植物との取り違え(根の例1) ◆チョウセンアサガオによる食中毒 ゴボウと間違えてチョウセンアサガオの根を キンピラにして食べた ①食用植物との取り違え(3例) ②知人からの譲り受け(1例) 残っていたキンピラ 患者の家庭菜園で採取された チョウセンアサガオの根 19 チョウセンアサガオの各部位(根) 20 ①食用植物との取り違え(葉の例) 家庭菜園で育てた野菜とチョウセンアサガオ の葉を取り違えて食べた 繊維質 もろく、折れやすい 患者宅で採取された植物 ゴボウ チョウセンアサガオ 患者が調理で使い残したもの 22 21 ①食用植物との取り違え?(花の例) チョウセンアサガオの各部位(葉) キダチ(コダチ)チョウセンアサガオの花を 煮物にして食べた 患者宅から採取されたチョウセンアサガオの葉 キダチチョウセンアサガオ モロヘイヤ アシタバ 23 24 4 2016/2/9 チョウセンアサガオの各部位(花・つぼみ) チョウセンアサガオの各部位(種子) チョウセンアサガオのつぼみ 事例②の患者の自宅裏庭で 採取されたチョウセンアサガオ のつぼみを刻んだもの オクラ 東京都福祉保健局HPより チョウセンアサガオの実 チョウセンアサガオ キダチチョウセンアサガオ (エンゼルトランペット) 種子をゴマと間違えて食べた 食中毒事例が起こっている。 ケナフの一種(ローゼル) 食用のものもある。 属は異なるが、どちらも有毒。 25 26 分析結果の一例 ②知人からの譲り受け(根の例2) 事例①の食べ残しのキンピラの分析結果 XIC of +MRM (6 pairs): 291.1/124.0 amu from Sample 7 (std 0.25) of 1201tropane.wiff (Turbo Spray) Max. 5.3e4 cps. 5.3e5 知人からチョウセンアサガオの根をゴボウとして譲り 受け、煮込んで食べた 5.0e5 4.5e5 食べ残しのキンピラ 4.0e5 Intensity, cps 3.5e5 3.0e5 2.5e5 2.0e5 1.5e5 患者が友人から譲り受けたもの 1.0e5 16.84 5.0e4 0.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Time, min 11 12 13 14 15 16 17 18 XIC of +MRM (6 pairs): 291.1/124.0 amu from Sample 10 (NE 2g_20mL) of 1201tropane.wiff (Turbo Spray) 19 20 Max. 1.7e4 cps. 2.0e6 1.9e6 1.8e6 1.7e6 家庭菜園から採取された 植物の根 1.6e6 1.5e6 1.4e6 1.3e6 Intensity, cps 1.2e6 1.1e6 1.0e6 9.0e5 8.0e5 7.0e5 6.0e5 スコポラミン 5.0e5 4.0e5 3.0e5 アトロピン 2.0e5 1.0e5 0.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Time, min XIC of +MRM (6 pairs): 291.1/124.0 amu from Sample 4 (kinpira x100) of 1201tropane.wiff (Turbo Spray) 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 Max. 2.9e4 cps. 3.7e5 3.6e5 キンピラ1g中 アトロピン 0.08mg スコポラミン 0.16mg が検出された。 3.4e5 スコポラミンの標準物質 3.2e5 3.0e5 2.8e5 2.6e5 2.4e5 Intensity, cps 2.2e5 2.0e5 1.8e5 アトロピンの標準物質 1.6e5 1.4e5 1.2e5 1.0e5 8.0e4 6.0e4 4.0e4 16.87 2.0e4 0.0 0.92 1.08 1 2.14 2.68 2.89 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Time, min 11 12 13 14 15 16 17 17.83 18 19 20 27 28 ◆チョウセンアサガオによる食中毒 ◆アトロピン・スコポラミンの中毒量は? 問題点 アトロピンの経口最小中毒量は 3.5mg スコポラミンの経口最小中毒量は 0.7mg ●家庭菜園で、食用の野菜(ゴボウ等) の近くに区別せずに栽培していた 本事例のキンピラで考えると、 ●食用か確認せずに食べた(花の例) 2~3口くらいを食べると中毒を起こす。 (全て体重50kgの成人換算による) ●判断を誤ったものを他人に譲り渡す ことで被害が出た 公益財団法人日本中毒情報センターより 29 30 5 2016/2/9 スイセン・チョウセンアサガオによる食中毒を防ぐには? 時期や状態により有毒成分を多く含む植物 ◆ジャガイモによる食中毒 31 ◆ジャガイモによる食中毒 32 ◆ジャガイモによる食中毒 ジャガイモには、ソラニン類という有毒成分が もともと含まれていますが、収穫の時期や状態 により、通常より多く含まれる場合があります。 (ソラニン類は茹でても壊れない) 学校菜園で栽培したジャガイモを 蒸して食べた小学生11名中6名が 発症 ソラニン類中毒が起こると 食後30分~1時間・・・嘔吐、下痢、腹痛 (ひどい場合は呼吸困難) 症 状: 食後30~40分→吐き気・嘔吐・腹痛 医療機関においては、胃洗浄と活性炭投与が行われる。 (日本中毒情報センターより) 33 ◆ジャガイモによる食中毒 34 ◆ジャガイモによる食中毒 実際に検査に使用した ジャガイモ 全体が緑化しているジャガイモの例 参考までに・・・ 色の変わっていないジャガイモ 調理済みの皮 (カレールウ付着) 皮の内側が緑色 身の外側が緑色 画像:農林水産省ホームページより 35 36 6 2016/2/9 分析結果の一例 ◆ソラニン類の中毒量は? 9.94分 ソラニン類の中毒発症量は、 成人で200mg~400mg。 9.67分 学校菜園で収穫された ジャガイモ しかし子供の場合は15.6~40mg。 成人の10分の1の量です! ソラニン なお、本事例でのソラニン類の検出量は、 ジャガイモ1個中8mg~28mgでした。 チャコニン 検体1g中 ソラニン 0.03~0.30mg チャコニン 0.04~0.46mg が検出された。 37 公益財団法人日本中毒情報センターより 38 平成21年8月 厚生労働省→文部科学省 通知文より ジャガイモによる食中毒を防ぐには? 1 未成熟で小さいジャガイモは、全体にソラニン類 が多く含まれていることもあるため食べないこと。 2 ジャガイモの芽や日光に当たって緑化した部分 は、ソラニン類が多く含まれるため、これらの部 分を十分に取り除き、調理を行うこと。 3 ジャガイモは、日光が当たる場所を避け、冷暗所 に保管すること。 39 厚生労働省HP 「有毒植物による食中毒に注意しましょう」 40 ご静聴ありがとうございました。 参考URL ★厚生労働省 ホームページ 「自然毒のリスクプロファイル」 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu /poison/index.html (自然毒全般) ★農林水産省 ホームページ 「知らない野草、山菜は採らない、食べない! 」 http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/rinsanbutsu/natural_toxins.html (きのこや山菜について) ★公益財団法人日本中毒情報センター ホームページ http://www.j‐poison‐ic.or.jp/homepage.nsf 41 42 7