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ナノメートルオーダーの分子集団における超高速現象
ナノメートルオーダーの分子集団における超高速現象 ダーの構造、場合によっては分子・原子レベルの像 を直接とらえることが可能となっている。これらの 技術を融合し、更なる新技術を発展させていけば、 究極的には分子の動きのタイムスケールで、数えら れる程度の分子数の現象を直接測定することが可能 となろう。 こうした測定手段は、将来の分子科学の発展に とって、大きな力を発揮すると期待される。物質科 学の応用面においても、最近では1∼数分子のス ケールで分子に機能を与える研究が行われるように なってきている。そのような分子系の機能を理解・ 評価するにはナノスケールの超高速測定が必要とな る。我々の研究グループでは、分子科学の基礎研究 としての立場で、ナノスケールの分子・分子集団の (超)高速現象の研究を行っている。超高速分光法の 実験手法に、ここ数年間で急速に発展した近接場光 学の技術を組み合わせ、高い時間・空間分解能を同 時に(ナノメートルかつフェムト秒)実現している。 従来の光学的方法では、空間分解能は光の回折で制 限されるため、用いる光の波長程度が限界となる。 しかし近接場光学を用いると、これを超えるナノ メートルオーダーの空間分解能が可能となる。 このような実験法を用い、さまざまなナノスケー ルの構造を持つ対象(分子集合体、機能性高分子、金 属・半導体微粒子等)に特徴的な、超高速応答、エ ネルギー・物質移動、電子物性などに関連した現象 を直接時空間軸上で観測し、そのメカニズムを解明 する。このような研究には、物質開発を行っている 研究者との連携が重要であり、所内外との協力も積 極的に行う。また構造を持たない物質、等方的な物 質の系(特に溶液、液体など)に対する時空間分解 分光の適用という新たな試みを行う。近接場光を液 体中に照射することによって過渡的なナノスケール の構造を発生させ、それに特徴的な時空間ダイナミ クスを追求する。これは、これまでに多くの蓄積の ある液相での超高速現象の研究に対する、新たな方 向からのアプローチとなる。 岡本 裕巳(教授) 専 門 領 域 構造分子科学専攻 1983年東京大学理学部卒業、 1985年同大学大学院理学系 研究科博士課程中退、理学博士 1985年分子科学研究所 助手、1990年東京大学理学部助手、1993年同助教授を経 て、2000年11月より現職。 TEL: 0564-55-7320 FAX: 0564-55-4639 電子メール: [email protected] 物質・材料の機能や性質は、究極的には分子一つ 一つの性質に還元される。機能や性質の起源となる 分子の性質を調べるために、多種多様な分光法が用 いられている。以前の分光法では、極めて多数の分 子の集団の平均像、分子の動きのタイムスケールに 比べて極めて長い時間の平均像をとらえていた。こ のような限られた情報から、場合によってはモデル を仮定した解析によって、一つの分子について極め て短い時間で起こっている出来事を、推測していた のである。しかし現在では、分光学的に直接に測定 可能な、分子集団の空間的な大きさ(言い方を変え れば空間分解能)や時間分解能の両面で、大きく進 歩している。分子の動きのタイムスケールで分光測 定をすることが可能となってきたし、一方で走査プ ローブ顕微鏡等の進歩によって、ナノメートルオー ナノスケール分子集団の超高速現象解明 近接場光学 散乱光 入射光 非平衡状態 緩和 色素分子会合体の 近接場励起蛍光像 + 近接場光 回折限界以下の 空間広がり ファイバプローブ 金属プローブ 超短パルス光 1 µm 入射光 14 超高速分光