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第13回世界水中写真競技大会 参戦記

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第13回世界水中写真競技大会 参戦記
第13回世界水中写真競技大会
参戦記
サマータイムを採用しているトルコは
日本から6時間遅れ。日本時間では、もう
真夜中です。
フォトグラファー:尹志乙
器材の準備ももどかしく、急いで就寝。
アシスタント :門野洋子
2011年5月26日から31日にかけ第13回
CMAS世界水中写真競技大会(13th CMAS
<5月26日(木)>
この日は、自主練習とリサーチに充てて
World
Underwater
Photography
Championship)が開催され、各国の精鋭
おいた日です。
が トル コ の リ ゾー ト 地 ボ ドル ム
えてくれたようで、もたもたしていたら
(Bodrum)に集結しました。大会は2年
「すぐ船着き場に来て下さい。」との電
ごとに開催されその技を競う、いわば水中
話 。 重 い 器 材 を 担 い で、 桟 橋 へ ダ ∼ ッ
写真界のオリンピックです。
シュ。
日本からメールしたので、スタッフが覚
結果は、今大会の開催国であるトルコ
すでに10名程のダイバーが集まっていま
が、地元の利を最大限に活かして見事優勝
した。彼らのほとんどが火曜日から現地に
しました。13回を数える大会ですが、意
乗り込んでいるとか…挨拶を交わしつつ、
外にも日本が参加するのは、今回が初め
海の様子を尋ねると、口を
て。日本からは、尹志乙さんと門野洋子の
「透明度はいいんだけど、魚はあんまりい
2名が出場しました。以下に、大会の模様
ないね∼。水温は19℃くらいだよ。」
をレポートします。
との答え。伊豆よりは高めですが、19℃の
えて
海は厳しそうです。
<5月25日(水)>
成田からイスタンブールまで、直行便で
約13時間のフライト。イスタンブールで国
内線に乗り換え、約1時間半でボドルムに
到着します。
機体トラブルにより、1時間待たされた
せいもあり、ボドルムのミラス空港に着い
たのはもう夜中なんとかバスを乗り継ぎ、
やっとこさ会場となるエルサン・リゾート
&スパ(Ersan Resort & Spa)へ到着。
<カメラチェックに余念のない尹さん>
今日のポイントは、
①エアプレイン ②ビッグリーフ
会場であるホテル内は大会の旗が
あちらこちらに飾られて雰囲気が
出てました。
<IDカード>
18時 セレモニーが始まりました。
メインホールに入場し、各国選手が整列
すると、いよいよ気分も高まります。
<ブリーフィングするスタッフ>
尹さんは、ロクハンですが、私は5ミリ。イ
ンナーを着こむ作戦にしたのですが、寒く
て震えが止まらず、皆さんに心配をかけて
しまいました。
リサーチ・ダイブを終え、ホテルに戻り、
15時 か ら メ イ ン ホ ール に て 選 手 登 録 開
<各国の選手と記念撮影>
始。
20:30「テクニカルミーティング」
ルール説明会です。
予め、ウェブにアップされた規定を確認し
ていきます。
・競技日程は、各90分間の潜水時間×2本×2
日間。
・その日の競技が終了する毎にメモリーを
審判に提出し、審判がフォーマットする。
・競技終了後、選手は5つのカテゴリーに
沿って1点ずつ、合計5点のベストショット
を提出する。
5つのカテゴリーとは:
1)魚(fish)
まさに「魚のみ」。
パスポート、CMASのCカード、国旗、
亀、タコ、ヒトデ、哺乳類はNGです。
国歌のCDを提出し選手番号と氏名の
書かれたIDカードと大会のロゴが入った
ポロシャツ2枚を貰います。
2)テーマに沿ったクローズアップ
(close up with theme)
毎回、開催地の特徴に沿ったテーマが
発表されるのですが、今回は ''Echinoderms'' 棘皮(きょくひ)動物=
2つのゾーンにそれぞれ2つのポイントが設
棘皮動物門 (Echinodermata) に属する生
定され、選手は希望を聞かれます。
物の総称で、ウニ、クモヒトデ、ナマコな
希望が重なった場合は『“特別なソフト”を
どを指します。
使用して決定する』との事。
ミーティングでは、画像ををもとに説明が
ゾーンやポイントの仕組みがよくわからな
あります。
くて混乱する選手も…
なんとか割り当てられました。
日本は、
第1日目:Kara Zone
第2日目:Reef Zone
になりました。
波乱含みのスタートの予感です。
<5月27日(金)>
今日はAdaptation Dive。
競技と同じスタイルで潜り、ルールに慣れ
るための「公式練習日」です。
指定されたボートに乗り込むと、器材を入
れるバスケットが割り当てられ、選手番号
3)テーマに囚われないクローズアップ
(close up without theme)
の入ったマスク・ストラップを支給される
と、否が応でも士気が高揚します。
4)ダイバー無しのワイド
(wide angle without diver)
5)ダイバー有りのワイド
(wide angle with diver)
<器材を入れるバスケット>
<選手番号の入ったマスク・ストラップ>
ルールにより、
『潜水時間は90分以内』
やはり気になるのはポイントの割り当て。
ダイバーの頭が水面下に沈んだ段階で計
測開始、乗船したタイミングがエギジット
です。
『水深30mを超えてはならない』
エギジットすると、すぐさま審判がやっ
て き て ダイ ビ ン グ ・ コ ン ピ ュ ー タ ー を
チェックします。
<5月28日(土)>
いよいよ競技1日目。
尹さんの作戦は『エアプレイン・ポイン
トでワイドを片づけ、残りはマクロに充て
そして、その人のIDカードを持った審判
る』というものです。
を撮影します。
当日朝の打合せ中に、急遽アイデアが生ま
れ、小道具を準備。
いざ出陣!
今日のボートは、小さめの船でルクセン
ブルグ、スイス、日本チームが一緒です。
ポイントは、
①エアプレイン
②スマグラーズ・ベイ
ルクセンブルク・チームから『どのチー
ムもエアプレイン目がけて行くだろうか
ら、ずらしてエントリーしないか』と提案
があり、①スイス②ルクセンブルク③日本
の順に10分ずつ間をおいて出発すること
になりました。
長∼く感じられた順番待ちの後、漸く水
中へ。前のチームがまだ撮影中だったの
で、辛抱強く待って、準備した小道具を
昨夜は「審判が選手のメモリーをフォー
使って撮影。
マットして回収する」という作業がありま
「頑張れ日本」のメッセージを発信しよう
した。
ということで、バスマットとTシャツで日
フォーマット係は二人しかいないので、
時間がかかる、かかる…ブーイングする選
手を尻目に、マイペースで作業が進みま
す。
ボートの上でメモリーを返却され審判の
目の前でカメラにセットします。
の丸を作成。カテゴリー5)『ダイバー有
りのワイド』はこれで頂き!
しかし、なかなか尹さんのイメージする
構図が取れず苦心していると、前にエント
リーしたルクセンブルク・チームが舞い
戻ってきました…
う∼む…
のは、フォトグラファーだけだったのです
が、今日はアシスタントも確認されまし
なんとか撮影終了し、エギジットしまし
た。後に分かった事ですがモデルが30m
たが、まるで日本チームの苦悩を映したか
ならば、カメラマンは30mを超えていい
のように天気まで悪くなり、激しい雷雨と
そうで厳しくダブルチェックだったようで
なりました。
す。
2本目がスタートする頃は、お天気もやや
回復。ここで審判に前でワイドポートから
マクロポートへ切り替えます。
泣いても笑っても、これで撮影は終わり。
今度は、提出する写真選びに頭を悩ませる
番です。
気を取り直してエントリー。
ところで、各国選手の器材を見ると、なか
こうして競技第一日目が終了しました。
なか“BIG”です。
<5月29日(日)>
大会2日目は、好天に恵まれました。
今日は、ブラジル、クロアチア、韓国、
ロシア、トルコチームと同船です。
尹さんのコンパクトなハウジングに驚きの
声が挙がっていました。
「おおっ、なんでこんなに小さいのに一眼
レフが入るんだ!!」
世界に冠たる日本の技術です。
<今日の審判>
今日のポイントは、
<5月30日(月)>
ぎりぎりまで悩んだ選手たちも、最後の
①ビッグリーフ
決心をして提出。あとは、夕方のセレモ
②スモールリーフ
ニーまでフリータイム。思い思いにボドル
やはりお天気がいいと気分もいい。おま
ムを楽しみました。
け に 陽 気 な ブ ラ ジル チ ーム が 一 緒 な の
で“和気藹藹“としたいい雰囲気です。
競技用ボートは全部で6
あるのですが、
今日のボートは「1番」
「本部」になる船なのか、審判もスタッフ
もキビキビしています。
昨日、コンピューターをチェックされた
16:00 フェリーでボドルム城へ向か
います。
<フェリー船内>
<「一緒に写真撮って∼」と、モテモテの尹さん>
<さすがイタリアチーム。後ろ姿もカッコいい∼>
およそ30分の船の旅の後、会場となる
ボトルム城が見えてきました。
<力持ち∼> ボトルム城、水中遺跡博物館を見学。
<ボドルム城>
港に着くと、ボトルム城までパレードです。
<トルコチーム>
屋外バーティ会場では、伝統的なトルコ
料理が振る舞われました。
<表彰される受賞者>
5部門のトップ10入賞者にはそれぞれ、
<どれもこれも美味しそうで欲張ってしまいます>
会場を城内のアンフィ劇場に移し、 1位:55点、2位:34点、3位:21点、
4位:13点…という具合に点数が加算さ
れ、一番得点の高かったチームが優勝しま
す。
結果、 「テーマに沿ったクローズアッ
プ」で銅メダル、「ダイバー無しのワイ
ド 」 で 銀 メダル 「 ダイバー 有 り の ワ イ
ド」で金メダルを取った トルコが見事優
勝。
セレモニーが始まりました。
歓迎の挨拶、ベリーダンスショー等のア
トラクションの後、いよいよ成績発表で
す。予め審査員が選んだカテゴリー別の
トップ10がスライドに映し出されます。
そして、その10作品に審査員がその場で投
票し、金・銀・銅メダルが確定します。
深夜に及ぶ授賞式を終え、バスでホテル
へと向かいました。
<5月31日(火)>
長かったような短かったような6日間も
終わり、共に戦った選手たちと別れを惜し
みました。
<最後に>
事前に前回大会の模様などをブログなど
でチェックしていったのですが、現地に
行って初めて分かる事がたくさんあり、貴
合言葉は ”See you in Cuba!”
重な経験を積む事ができました。
やはり『入賞するには何度も参加して経
次回開催国のキューバでの再会を誓って
験と実績を積み重ねるのが不可欠』との想
帰国の途に就きました。
いを強くしました。
この記録が、以降の日本の代表者への一
助になれば幸いです。
最後に、今回、貴重な経験を積む機会を
与えて下さったフォトグラファーの尹さ
ん、関係者の皆さん、応援して下さった皆
さんにこの場を借りて感謝したいと存じま
す。
ありがとうございました。 <陽気なチリ・チームと記念撮影>
<イタリア・チーム>
今回の入賞・入選作品 カテゴリー別
1)魚(fish)
2)テーマに沿ったクローズアップ
(close up with theme)
3)テーマに囚われないクローズアップ
(close up without theme)
4)ダイバー無しのワイド
(wide angle without diver)
5)ダイバー有りのワイド
(wide angle with diver)
自分の作品です 1)魚(fish)
2)テーマに沿ったクローズアップ (close up with theme)
これが今回最大の勘違い!
クローズアップが、どん引きで
撮ってしまった(汗)
3)テーマに囚われないクローズアップ
(close up without theme)
そして勘違いは一回で終わらず
これも魚は入らないのを知らず
土壇場で撮っといたケヤリを入れた
本当は下記の写真を入れたかった!
4)ダイバー無しのワイド
(wide angle without diver)
蛍の墓を思い出す感じで撮影しました。
5)ダイバー有りのワイド
(wide angle with diver)
日の丸特攻隊です!
<編集後記>
今回は人生で本当に貴重な体験をする事が
だから2年後のキューバには大勢の仲間
出来ました。
最強の日本チームを立ち上げてリベンジが
いろんな意味で日本はまだスタートライン
したい!!!!
に立った所です!
しかし殆どの選手が日本のメーカーの
そう思いました。
カメラを持って参加してました
それには、まだまだこの大会を知らない人
この競技はカメラのテクニックだけでは駄
が多すぎるので、とにかく知名度を上げて
目なのです
いきたい
ダイビングのテクニックに魚が探せる能力
中性浮力、ダイビングのプランニング
ライティング、チームワークそして体力
それにましてプレッシャーに負けない
精神力!これが一番でした。
それには1人より2人!
2人より3人…とにかく最後まで同じ
目標に向かってモチベーションを高めて
持って行くものは「仲間!!」
そう思いこの記録を作成しました。
さぁ∼2013年キューバに向かって
体力作りを一緒に始めませんか?
素敵な仲間に出会える為、私は今から
全国を回って探し続けるつもりです!
そしてキューバでは、上位入賞を目指して
頑張って行きたいと思います。
それだけです!
仲間がいなければ、これには参加出来ませ
ん
2011年6月
日本代表フォトグラファー 尹 志乙
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