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米国経済情報
米国経済情報 US Economics Monthly Updates 2003 年 6 月 米国経済・金融動向の概況 イラク戦前後にみられた経済活動の著しい停滞感は、足元でやや薄れつつある。株価上昇、長期金利 低下といった外部要因に支えられるなか、企業の業況感が最悪期を脱しつつあると見られる他、設備 投資や雇用の落ち込みにも歯止めがかかる兆しが見え始めてきた。個人消費や住宅需要も底堅さを保 っている。もっとも、回復に向けた動きが裾野の広がりとともに明確になりつつあるとは言い難い状 況。生産はハイテク関連における回復が続く一方で非ハイテク分野の減少はなお続いている。また民 間セクターの雇用は非製造業が増加を示す一方で、製造業では依然として大幅な減少を続けている。 企業の業況感に底入れの動きがみられる一方で、雇用情勢の厳しさを映じて消費者のマインド回復に はやや足踏み感が窺われる。このように、今後の回復を期待させる動きが点在しつつあるものの、米 国経済は全体としてなお不安定な状況から脱していない。 今後については、減税効果が顕在化し始めるとみられることや、長期金利の低位安定が持続すると予 想されること等から、家計部門の需要が失速するリスクは小さいと思われる。そうしたなかで、足元 で見られ始めた企業部門の立ち直りがどの程度のモメンタムを持ったものとなるかが焦点となろう。 2003 年の経済成長率に関する主要予測機関のコンセンサス(6 月)は 2.4%で、前月時点から 0.1%ポイ ント上昇(ブルーチップ、左下図)、2004 年については 3.6%となっている。 政策金利水準は、テーラールールに基づいた理論的な金利バンドの下限を下回る状況(右下図)。但し足 元のディスインフレ傾向の強まりを背景に、連銀は、6 月 25 日の FOMC においてFFレートを 0.25% 引き下げることを決定した。昨年 11 月の 0.5%の利下げに続く、いわば「追加の保険」としての措置 と捉えられる。 経済成長率の実績と市場予測 金融政策の動向とテーラールールに基づく予測 (%) (%) 9 7 2002年:2.4% 2003年:2.4% 2004年:3.6% 6 5 4 3 3.5 実績 ブルーチップ・コンセンサス 3.8 3.6 3.7 3.6 3.5 8 6 5 2.0 2 4 1 3 0 2 △1 1 △2 0 Q12002 Q2 Q3 Q4 Q12003 Q2 FF金利誘導目標(期末値) 3-Mo. Treas. Bills(期中平均) テーラールールに基づく金利:上限 テーラールールに基づく金利:下限 7 Q3 Q4 Q12004 Q2 Q3 実績 現状維持 00Q1 Q4 01Q1 02Q1 03Q1 04Q1 (注)テーラールールに基づく金利は、均衡短期金利=2.0%、インフレ目標=2.0%、 NAIRU=4.5%∼5.5%として計算(ただしインフレ率、失業率は、後方3四半期 移動平均値を用いている)。 金利バンド以外の予測値はブルーチップによるコンセンサスを利用。 (注)2003 年の成長率はブルーチップ(6 月 10 日号)におけるコンセンサス。 (資料)商務省、ブルーチップ(6/10/2003 号) 1 ニューヨーク事務所 June 27, 2003 MHRI Ⅰ New York 経済・金融動向 図1 国防を除く資本財の出荷・受注 (%) 6 月 25 日に開催された FOMC(連邦公開市場委員会)で、連銀は 政策金利を現行水準の 1.25%から 0.25%引き下げ 1.0%とす ることを決定。また、声明文は、当面の景気に対しては明る い材料も指摘しつつ中立的な見方を保持する一方で、 「物価上 昇率のさらなる大幅鈍化という歓迎できない事態が生じる確 率が、わずかではあるが、インフレ加速の確率を上回ってい る」と、前回 5 月の声明文と同様のディスインフレへの警戒 を示し、今後の追加緩和への含みを持たせるものとなった。 40 12 30 8 20 10 4 0 0 △10 △ 4 △20 出荷(右目盛) 新規受注 △30 △40 Jun- Jul Aug Sep △ 8 △ 12 Oct Nov Dec Jan- Feb 2002 Mar Apr May 2003 (注)3 カ月前比伸び・年率。 (資料)商務省 図2 民間建設支出(住宅用を除くビル) (%) 1.企業活動・景況感 (5 月)は、前月 民間設備投資(国防関連を除く資本財出荷) 比▲0.4%と 3 カ月ぶりに減少した。3カ月前比・年率では 4.5%増と 3 カ月連続での増加となり、昨秋からイラク戦直前 にかけての落ち込みから持ち直しの兆しが窺われる(図1)。 もっとも、水準的にはまだ底這いの域を脱したとは言い切れ ない状況。先行指標である新規受注額も、3カ月前比・年率 では 9.6%増加したが、前月比では 4 月横ばい(0.0%)の後 5 月も▲0.9%と減少しており、もたつき感が拭えない。 民間建設支出(住宅用を除くビル建設)(4 月)は前月の反動 もあり3カ月前比・年率で 11.2%の減少となった(図2)。教 育施設や病院施設などの建設が堅調な一方、オフィスビルは 同 26.4%減と落ち込みに未だ歯止めがかかっていない。 15 10 5 0 △5 △10 △15 △20 △25 △30 △35 Jun2002 Jul Aug Sep Oct Nov Dec Jan2003 Feb Mar Apr (注)3 カ月前比伸び・年率。 (資料)商務省 図3 製造・商業部門の在庫投資 (10億ドル) 1.42 14 12 10 8 6 4 2 総合 在庫残高/売上高比率(右目盛) 1.41 1.40 1.39 1.38 0 △2 △4 民間在庫投資(製造業・商業部門の在庫前月比;4 月)は、16 億ドルと 3 月の 38 億ドルから縮小(図3)。一方、売上高が前 月比 128 億ドル減少したため、在庫残高/売上高比率は 1.40 と前月比 0.02 ポイント上昇。 1.37 1.36 Jun- Jul 2002 Aug Sep Oct Nov Dec Jan2003 Feb Mar Apr (注) 前月比。 (資料)商務省 図4 鉱工業生産・稼働率 (%) 鉱工業生産(5 月)は、前月比では 0.1%と 3 カ月ぶりに増加 に転じた。3カ月前比・年率では 4 月の落ち込みに続いて 5 月も▲3.9%と減少が続いているが、減少幅はやや縮小(図4)。 業種別では、コンピュータ及び電子製品が3カ月前比・年率 で 9.1%と堅調さを維持する一方で、自動車及び同部品が同 ▲14.2%と2カ月連続で大きく減少した。コンピュータを中 心とするハイテク関連業種の生産増加と、それ以外の業種で の落ち込みという構図が鮮明化している状況。 (%) 77.0 8 稼働率(右目盛) 生産 6 4 企業の景況判断は最悪期を脱しつつある模様。5 月の製造業 ISM 指数は 49.4 と、活動の拡大・縮小の分かれ目となる 50 をなお下回ってはいるものの、4 月の 45.4 からは持ち直し。 また非製造業指数は 54.5 と2カ月連続で 50 超えとなった。 製造業では、受注判断(51.9)や生産判断(51.5)がともに 3 カ 月ぶりに 50 を上回り、業況底入れへの期待感を抱かせる内容 となった。一方で雇用判断は 43.0 と、前月の 41.4 から 5 カ 月ぶりに上向いたとはいえなお低水準にとどまっており、雇 用に対する企業の慎重姿勢が続いている様子が窺われる。 76.0 2 75.5 0 75.0 △2 74.5 △4 74.0 △6 Jul- Aug Sep Oct Nov Dec 2002 Jan- Feb Mar Apr May 2003 (注)生産は 3 カ月前比伸び・年率。 (資料)連邦準備制度理事会 図5 76.5 企業景況感 (%) 58 56 54 52 50 48 製造業 非製造業 46 44 Jul2002 Aug Sep Oct Nov Dec Jan- Feb Mar Apr May 2003 (資料)Institute for Supply Management (ISM) 2 US Economics Monthly Updates June 27, 2003 MHRI New York 3.雇用・賃金情勢 図6 失業率・失業期間 (%) (週) 5 月の失業率は 6.1%と前月比 0.1 ポイント上昇(図6)。失業 理由別にみると「自発的失業者」が前月比 5.7 万人減少した 一方で、「レイオフによる失業」が同 12.5 万人増と昨年7月 (13.5 万人増)以来の大幅増加となった。 6.2 20.0 非農業部門の雇用者数は、4 月に前月比横ばいとなった後、5 月は同 1 万 7 千人減と小幅減少した(図表7、今回、基準年次 や業種分類の変更などにより過去に遡って事業所調査統計の 大幅改定が行われた。その結果 2001 年から 2002 年にかけて の雇用者数が大きく下方修正された一方で、2003 年入り後の 雇用者数は逆に上方修正されている) 。民間部門に限ると、製 造業が前月比▲53 千人と減少を続ける一方で、非製造業は人 材派遣業やヘルスケア関連業種などでの増加により同 37 千 人増となり、全体では 8 千人増と 2 カ月連続でわずかながら 増加した(4 月は 2 千人増)。もっとも、企業の雇用意欲はな お弱く、当面、雇用回復は弱々しいものになる公算。 5.4 非農業民間部門の週平均労働時間(5 月)は 33.7 時間と前月比 変わらず。製造業では 40.2 時間と前月比 0.1 時間増加(図7)。 時間当たり平均賃金(5 月、非農業民間部門)は前月比 0.3% したが、3 カ月前比・年率では 1.3%の増加にとどまり、第1 四半期平均の同 3.2%から大きく鈍化。 19.0 6.0 18.0 5.8 17.0 16.0 5.6 平均失業期間(右目盛) 失業率 Jul- Aug Sep Oct Nov Dec Jan- 2002 15.0 14.0 Feb Mar Apr May 2003 (資料)商務省 図7 雇用者数・週平均労働時間 (%) (時間) 1.5 40.7 製造業週平均労働時間(右目盛) 非農業民間部門雇用者数 1.0 0.5 40.3 △ 0.5 40.2 △ 1.0 40.1 △ 1.5 40.0 Jul- Aug 2002 Sep Oct Nov Dec Jan- Feb 2003 Mar Apr May (注) 雇用者数は 3 カ月前比伸び・年率。 (資料)商務省 図8 自動車販売台数と小売売上高 (%) (百万台) 8 20 19 6 18 17 2 16 15 0 5 月の自動車販売台数は、年率 1,601 万台と前月の同 1,636 万台から減少。インセンティブ強化による販売台数押し上げ 効果は減衰しているが、水準的にはなお 1600 万台レベルを維 持(図8)。一方、コア小売売上高(自動車・部品ディーラー、 ガソリン・ステーション、及び建材・造園を除く小売)は前月 比 0.7%、3カ月前比・年率でも 4.4%と増加。家具・家電や 外食が好調でコア売上全体を押し上げている。雇用情勢の厳 しさは続いているものの、住宅ローンのリファイナンスに伴 う潤沢な手元資金の存在が個人消費を支えているとみられる。 5 月の新規住宅着工件数は年率 173.2 万件で、前月比 6.1% 増、3カ月前比・年率では 24.4%の大幅増(図9)。着工許可 件数も前月比 4.6%増加した。モーゲージ金利の低下を受け て住宅販売も盛り返している。5 月の中古住宅販売は前月比 1.2%増、新築住宅販売は同 12.6%増加した。販売の好調を 受けて、新築住宅在庫率(供給戸数÷販売戸数)は 3.5 カ月と 既往最低水準にあり、需給バランスは良好な状態。 Jul2002 Aug Sep Oct Nov Dec Jan2003 Feb 消費者マインドは回復にやや足踏み感が窺われる。6 月のミ シガン大学消費者センチメント指数(速報値)は 87.2 と前月 比 4.9 ポイント低下(図 10)。コンファレンスボードの消費者 信頼感指数も 83.5 と前月比 0.1 ポイント低下した。イラク戦 終結後のマインド持ち直しの動きが再び反転したとはいえな いが、雇用情勢改善のもたつきが続くなか、マインド改善の 持続性については引き続き注意を要する。 13 12 Mar Apr May (注)コア小売売上高は自動車・ガソリン販売・建材を 除くベース(3 カ月前比伸び・年率)。 (資料)商務省 図9 新規住宅着工・中古住宅販売 (%) 60 50 40 30 20 10 0 △10 △20 △30 △40 △50 中古販売 新規着工 Jul2002 Aug Sep Oct Nov Dec Jan- Feb 2003 Mar Apr May (注)3カ月前比伸び・年率。 (資料)商務省 図 10 消費者センチメント指数 (66Q1=100) 105 現状判断指数 100 14 国内自動車販売台数(右目盛) コア小売売上高 △2 △4 95 90 センチメント 85 80 75 期待指数 70 65 Jul- Aug 2002 Sep Oct Nov Dec Jan- Feb 2003 Mar Apr May Jun (資料)ミシガン大 3 US Economics Monthly Updates 40.5 40.4 0.0 4 4.消費・住宅投資 40.6 June 27, 2003 MHRI New York 5.貿易・財政 図 11 貿易収支 (10億ドル) 4 月の貿易収支は 420 億ドルの赤字となり、赤字幅は 86 億ド ル縮小した(図 11)。輸出が前月比 2.2%減少(▲18 億ドル)し た一方で、輸入も同 2.1%減少(▲27 億ドル)したため。また、 1∼3 月期の経常収支は 1,361 億ドルの赤字となった。赤字幅 は過去最大を更新し、名目 GDP 比でも 5.1%にまで拡大した。 (%) 0 40 △10 30 20 △20 10 △30 0 △40 △10 △50 △20 Jun- Jul 2002 5 月の連邦財政収支は 905 億ドルの赤字となり、赤字幅は前 年同月比 12.2%拡大した。歳入が同 0.9%増加したものの、 歳出が同 9.5%増加したことによる。昨年 10 月以来の累計赤 字額は既に 2,921 億ドルに達している。 Aug Sep Oct Nov 貿易収支 Dec Jan- Feb Mar 2003 財輸出(右目盛) Apr 財輸入(右目盛) (注)輸出・輸入は 3 カ月前対比伸び・年率。 (資料)商務省 図 12 消費者物価 (%) 6 6.物価 5 総合 コア シェルター項目除くコア 4 5 月の消費者物価は、全体ではエネルギー価格下落の影響に より前月比横ばいとなった一方、食料及びエネルギーを除く コアベースでは前月比 0.3%と昨年 8 月以来の伸び率を示し た。コア財価格が前月比▲0.4%と下落幅を拡大させた一方で、 コアサービス価格が、シェルター項目や医療関連を中心に同 0.6%と大きく上昇したため。 もっとも、コア財価格は 19 ヶ月連続で前年割れを続けており、 下落幅も拡大中。コアサービスもシェルター項目を除くベー スでは3カ月前比・年率でわずか 0.2%の伸びとなっている ことなどを踏まえると、ディスインフレ傾向の強まりに歯止 めがかかりつつあると判断するのは時期尚早(図 12)。 生産者物価は(5 月)は、コア最終財が前月比 0.1%、コア中間 財が同▲0.1%といずれもほぼ横ばいの動き。 3 2 1 0 △1 Jul2002 Aug Sep Oct Nov Dec Jan2003 Feb Mar Apr May Apr May (注) 3 カ月前対比伸び・年率。 (資料)労働省 図 13 生産者物価・輸入物価 (%) 8 6 4 2 0 △2 生産者物価:最終財コア 生産者物価:中間財コア 輸入物価:非石油 △4 △6 △8 Jul2002 Aug Sep Oct Nov Dec Jan2003 Feb Mar (注)3 カ月前対比伸び・年率。 (資料)労働省 7.金融市況 図 14 金利 (%) 長期金利は 5 月入り以降の急低下が 6 月中旬まで続いた後、 FOMC での利下げ幅に関する市場予想が振れるなかでの変動 となった。4 月 25 日時点での 10 年債利回りは 3.38%で 5 月 末(3.37%)とほぼ変わらず(図 14)。 (%) 1.3 4.2 4.0 TB6M (右目盛) 3.8 社債のリスクプレミアム(対米国債。S&P クレジット・インデ ックス)は 6 月 25 日時点において投資適格債が 199.9bp(5 月 末対比 2.4bp 縮小)、投機的格付債が 1071.3bp(同 75.8bp 縮 小)となっている。 1.0 3.4 0.9 3.2 3.0 0.8 Apr 1 May 1 Jun 1 (資料)連邦準備制度理事会 図 15 ドル・レート (1990=100) ドル(名目実効レート)は、5 月入り以降急速に下落した後、6 月に入って以降は落ち着いた動き。対円では、5 月中旬に1 ドル 115 円台にまで下落した後、116 円から 119 円台半ばの レンジでの揉み合いが続いた。6 月 26 日時点では、FOMC での 利下げ幅が 25bp にとどまったことなどを受けてドルが上昇、 1 ドル=119.32 円となっている(図表 15)。 (円/ドル) 102 122 101 100 120 99 98 118 97 96 名目実効レート 95 対円レート(右目盛) 116 94 Apr 1 114 May 1 Jun 1 (注)名目実効レートは対 OECD 加盟国通貨。 (資料)JP モルガン, 連邦準備制度理事会 4 US Economics Monthly Updates 1.1 3.6 TB10Y 1.2 June 27, 2003 MHRI Ⅱ New York 政策動向 図 16 1.ブッシュ減税成立 2003 年ブッシュ減税概要 項目 内容 総額(億ドル) 1481 配当課税+キャピタルゲイン税減 5 月 28 日、2003 年度から向こう 11 年間で総額 3500 億ドル規 模にのぼる減税法案がブッシュ大統領の署名により成立した (図 16)。本年1月7日の大統領による提案以来、減税の規模 や内容について様々な議論が繰り広げられてきたが、最終的 には、大部分の減税措置を 3 年から6年の時限措置とするこ とにより、当初案(11 年間で 7258 億ドル)と減税項目はほぼ 同じであるものの規模は半減することとなった。 しかし一方で、多くの減税措置が当初 3 年間程度に集中実施 される格好となっているため、目先の景気刺激効果という点 では当初案を上回るものとなった(図 17)。特に 2003 年度と 2004 年度の 2 年間の累計額(減税に地方政府への財政支援を 加えた総額)は 2095 億ドルと、当初案ベースの 1537 億ドル を大きく上回る規模。最速で効果が現れるとみられるのは低 所得者向けの児童扶養控除で、間もなく子供1人当たり 400 ドルに相当する小切手還付が開始される予定。 その一方で、短期集中型の対策により当面の財政赤字が増大 することになる。CBO は 2003 会計年度の財政赤字が 4000 億 ドルを上回るとの見通しを示した。さらに、総額は当初案に 比して半減したとはいえ、現状のスケジュールでは 2005 年度 には早くも減税額が前年比で縮小に転じることになる。実質 的な増税を避けるために今回時限措置をとった減税について もいずれ期間延長についての議論が高まる可能性大。 配当課税 所得税率引き下げ 最低対象税率拡大 児童扶養税控除枠拡大 共稼ぎ世帯向け減税 6 月 9 日、連邦住宅貸付抵当公社(通称フレディマック)が グレン総裁兼最高執行責任者の更迭を発表した。過去 3 年間 の決算修正に絡んだ OFHEO(連邦住宅貸付機関監察局)による 監査に対して非協力的だったとの理由。同時に、ブランドセ ル会長兼最高経営責任者とクラーク最高財務責任者の辞任も 発表。同社はデリバティブの会計処理に関して GAAP(一般会 計原則)に反する利益操作を行っていたとの疑惑が持たれて いる。6 月 11 日には SEC が証取法違反の有無についての公式 調査を開始した他、バージニア州検察当局も刑事捜査を開始。 下院金融サービス委員会の資本市場・保険・GSE 小委員会は、 25 日、同社の会計問題や GSE(政府支援機関)の監督体制・規 制等に関する公聴会を実施した。それに先立ち、24 日、同小 委員会のベーカー委員長は OFHEO に代わる独立的な監督機関 の設置などを柱とする改革法案を提案した。 もっとも、現時点では同社の会計疑惑に関する実態が明らか になっておらず、今後 GSE に対する大幅な規制強化といった 法案成立にまでつながるかは不透明。 上席主任研究員 Tel: 212-282-3532 2004年度、2006年度実施分の2003 年度への前倒し 2010年度実施分の2003年度への前 倒し 2010年度実施分の2003年度への前 倒し 2009年度実施分の2003年度への前 倒し 742 119 325 351 AMT調整 2004年度までのAMT控除枠拡大 178 投資減税 2004年度までの加速度償却延長、中 小企業の税控除枠拡大 101 州政府への援助 200 総額 3497 (注)2003∼2013 年度の総額。 (資料)上下両院合同税制委員会。 図 17 ブッシュ減税のスケジュール (億ドル) 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 ▲ 200 05 07 09 11 13 (会計年度) 2.フレディマック会計疑惑 224 1537 2001年ブッシュ減税の前倒し実施 2003 1257 ともに、2003年度-2007年度:15%、5% に軽減、2008年度:15%、0%に軽減 キャピタルゲイン税 矢野 和彦 (注)2011∼2013 年度はネットで増税 (資料)上下両院合同税制委員会 図 18 フレディマックを巡る動き 2002年3月1日 フレディマックの外部監査機関がアーサー・アンダーセンから プライスウォーターハウス・クーパーズに交代 2003年1月22日 デリバティブズの会計処理変更に伴い、過去3年分の決算修正 (利益上方修正)を行う予定を発表 グレン総裁はメディアに対し修正作業を第2四半期末までに終え る意向を表明 6月4日 再監査の結果、会計処理及び従業員の行為に不正あったことが 発覚したとOFHEOが発表 6月6日 グレン総裁を解任、ブレンドセル会長に引退を勧告 6月7日 OFHEOがフレディマック経営陣に向け、会計処理等に関する調査 実施を通知 OFHEOはフレディマックの財務状況は健全としつつも、調査のため 特別チームを派遣することを通告 6月9日 グレン総裁解任、ブレンドセル会長退任、クラーク再高財務責任者 の辞任を正式発表 決算修正作業の終了見込み時期を第3四半期末までに延期 グレン総裁解任の報を受けて同社株が16%下落 6月10日 下院金融サービス委員会の資本市場・保険・GSE小委員会の ベーカー委員長が、フレディマックの会計問題とGSE監督・規制に 関する公聴会を開催する意向を表明 6月11日 バージニア州検察局が刑事調査開始 SECが証取法違反の有無に関して公式調査開始 6月19日 フレディマックの修正申告額が10億ドルから30億ドルに上る見通し とウォールストリート・ジャーナルが報道 6月24日 下院金融サービス委員会の資本市場・保険・GSE小委員会の ベーカー委員長が、住宅関連GSE規制改革法案(H.R.2575)を提出 6月25日 下院金融サービス委員会の資本市場・保険・GSE小委員会が 公聴会を開催 フレディマックがコンファレンス・コールを実施。決算修正額が15億 ∼45億ドルに上る見込みであること、決算修正作業を第3四半期 末までに終える予定であること、などを表明 E-mail: [email protected] (資料)各種報道等 5 US Economics Monthly Updates June 27, 2003 MHRI New York 統計資料 前期比年率 Q4 Q1-02 2.7 5.0 Q4-00 1.1 Q1-01 △0.6 Q2 △1.6 Q3 △0.3 労働生産性(%) 2.1 △1.5 △0.2 1.8 7.6 8.3 1.8 5.8 0.3 2.5 雇用コスト(%) 0.9 1.1 1.0 1.0 1.0 0.9 1.0 0.8 0.7 1.3 Feb-03 Mar 前月比 Apr May Jun Feb-03 △0.5 △0.2 0.1 1.0 #N/A △1.4 △2.8 △2.5 GDP(%) カンファレンスボード景気先行指数(96=100) Q2 1.3 Q3 4.0 Q4 1.4 3カ月前比・年率 Mar Apr Q1-03 1.4 May Jun 3.7 #N/A カンファレンスボード景気一致指数(96=101) △0.3 0.0 0.0 0.1 #N/A △0.7 △0.3 △1.4 0.3 #N/A 国防を除く資本財出荷(%) △1.4 1.3 0.2 △0.4 #N/A △6.9 3.6 0.2 4.5 #N/A 除く航空機・同部品(%) △3.5 1.7 1.3 △0.8 #N/A △7.0 4.6 △2.4 8.9 #N/A 国防を除く資本財受注(%) △4.9 3.2 0.0 △0.9 #N/A △3.3 0.0 △7.0 9.6 #N/A 除く航空機・同部品(%) △2.4 4.8 △2.6 △0.5 #N/A 8.7 34.1 △1.6 6.1 #N/A 民間建設支出(非居住用,%) △0.6 0.3 △2.6 #N/A #N/A △4.9 12.6 △11.2 #N/A #N/A 7.7 3.8 1.6 #N/A #N/A 在庫率:製造業 *1.34 *1.32 *1.35 #N/A #N/A 小売業 *1.62 *1.59 *1.61 #N/A #N/A 卸売業 *1.22 *1.21 *1.23 #N/A #N/A 鉱工業生産(%) 0.0 △0.5 △0.6 0.1 #N/A △0.4 0.7 △4.6 △4.1 #N/A 製造業(%) 0.0 △0.2 △0.7 0.2 #N/A △1.8 1.1 △3.6 △2.8 #N/A *75.3 *74.8 *74.3 *74.3 #N/A △0.5 △0.3 △0.8 △0.5 #N/A △0.8 △0.4 △0.9 △0.4 #N/A 民間在庫投資(10億ドル) 設備稼働率(%) 製造業(%) *73.3 *73.1 *72.5 *72.6 #N/A 製造業景況感指数(%) *50.5 *46.2 *45.4 *49.4 #N/A 新規受注指数(%) *52.3 *46.2 *45.2 *51.9 #N/A 生産指数(%) *55.4 *46.3 *47.0 *51.5 #N/A 非製造業景況感指数(%) *53.9 *47.9 *50.7 *54.5 #N/A #N/A 失業率(%) *5.8 *5.8 *6.0 *6.1 非農業部門雇用者数(千人) △121 △151 0 △17 #N/A 同(%) △0.1 △0.1 0.0 △0.0 #N/A 非農業民間部門雇用者数(千人) △133 △110 2 8 #N/A 同(%) △0.1 △0.1 0.0 0.0 #N/A 製造業週平均労働時間(時間) *40.4 *40.4 *40.1 *40.2 #N/A 国内自動車販売台数(百万台) *15.35 *16.07 *16.36 *16.01 #N/A 同(%) △4.7 4.7 1.8 △2.1 #N/A △14.0 △39.4 6.6 18.3 #N/A 小売売上高(除く自動車,%) △0.6 1.5 △0.9 0.1 #N/A 3.4 9.6 △0.2 2.8 #N/A 同(除く自動車・ガソリン・建材,%) △0.3 0.8 △0.4 0.7 #N/A 3.4 6.3 0.5 4.4 #N/A 新規住宅着工件数(%) △10.3 6.2 △6.3 6.1 #N/A △24.6 △15.1 △36.5 24.4 #N/A 同(1世帯向け,%) △13.1 6.2 △2.5 1.5 #N/A △23.5 △17.6 △34.4 21.7 #N/A モーゲージ金利(%) *5.8 *5.8 *5.8 *5.5 #N/A 3.2 3.2 2.8 3.2 #N/A レント(%) 0.2 0.2 0.3 0.3 #N/A ミシガン大消費者センチメント指数(66Q1=100) *79.9 *77.6 *86.0 *92.1 *87.2 カンファレンスボード消費者信頼感指数(85=100) *64.8 *61.4 *81.0 *83.6 *83.5 #N/A 貿易収支(10億ドル) *△38.6 *△42.9 *△42.0 #N/A 輸出(%) 0.9 △0.1 △2.2 #N/A #N/A △0.0 9.0 △5.7 #N/A #N/A 輸入(%) △0.7 3.5 △2.1 #N/A #N/A △0.2 7.7 2.3 #N/A #N/A 公的建設支出(%) △1.9 △3.0 0.2 #N/A #N/A 0.6 △11.1 △17.3 #N/A #N/A 0.6 0.3 △0.3 0.0 #N/A 4.3 5.2 2.4 0.0 #N/A 消費者物価(%) コア(%) 0.1 0.0 0.0 0.3 #N/A 1.5 0.8 0.4 1.0 #N/A 生産者物価・最終財コア(%) 0.1 0.7 △0.9 0.1 #N/A △0.5 4.9 △0.3 △0.3 #N/A 4.2 5.4 3.8 0.6 #N/A 同・中間財コア(%) 0.7 0.2 0.0 △0.1 #N/A FF金利誘導目標(末値,%) *1.25 *1.25 *1.25 *1.25 *1.00 10年物米国債(末値,%) *3.90 *3.81 *3.96 *3.57 #N/A 商工業向け銀行貸出(%) △0.8 △0.7 △0.3 △1.1 #N/A △6.1 △8.1 △6.9 △8.1 #N/A 0.9 0.2 0.4 1.5 #N/A 7.0 6.9 6.4 8.7 #N/A #N/A マネーサプライ(%) 株価(Wilshire5000,末値,1/2/80=1078.29) *7972.60 *8051.86 *8701.97 *9218.89 円・ドルレート(末値,¥/$) *118.22 *118.07 *119.07 *119.50 #N/A ドル・ユーロレート(末値,$/Euro) *1.0779 *1.0900 *1.1180 *1.1766 #N/A (注)表中、*は水準値を示す。 6 US Economics Monthly Updates June 27, 2003