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山形県地域医療情報ネットワーク 整備基本計画 山

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山形県地域医療情報ネットワーク 整備基本計画 山
最終印刷日時:2009/07/01 午後6時0分
山形県地域医療情報ネットワーク
整備基本計画
平成 21 年 6 月
山
形
県
はじめに
現代は、高齢化の進行や食生活・生活習慣の変化とあいまって、いわゆる生活習慣病の増加な
ど疾病構造が変化し、また、県民・患者の健康に対する意識の高まりとともに県民・患者の医療
ニーズが多様化しています。さらに、情報化の進展、医療従事者の不足、医療費の増大など、本
県の保健医療を取り巻く環境は大きく変化しております。こうした状況を踏まえ山形県では、平
成 20 年3月に本県の保健医療施策の基本指針となる「第5次山形県保健医療計画」を策定し、
地域の有する医療資源の効果的・効率的な活用や、医療関係施設間の機能連携の確保・促進を図
りながら、県民誰もが、いつでもどこでも適切な保健・医療・福祉サービスが受けられる保健医
療提供体制の強化・確立を目指しています。
特に、医療従事者や高度医療機器等の医療資源の有効活用、医療安全の確保のためには、情報
技術の活用を一層促進していく必要があります。このため、情報技術を活用した本県の医療提供
の将来像を示す「山形県地域医療情報化に係るグランドデザイン」を平成 20 年8月に取りまと
めるとともに、このたび、各方面におけるニーズや医療情報化に関する動向などを踏まえつつ、
グランドデザインの実現に向けた「第5次山形県保健医療計画」目標年度の平成 24 年度までの
地域医療情報ネットワーク化推進のアクションプランとして、「山形県地域医療情報ネットワー
ク整備基本計画」を策定いたしました。
「地域医療情報ネットワーク」については、県民誰もが、いつでもどこでも適切なサービスを
受けられる環境として、全県域を対象に構築されることが望ましいところですが、現状では、コ
ストや情報管理のセキュリティなど課題も多く、全県を結ぶネットワークを直ちに構築すること
は困難な状況です。そのため、患者の通院圏域が主に二次保健医療圏内で完結している実態も踏
まえ、本計画では、平成 24 年度までの当面の方向性として、二次保健医療圏を中心とした「地
域医療情報ネットワーク」の構築を図るものとし、地域ごとの進め方を示しております。
今後、計画を推進していくためには、県内各地域の基幹病院等を核としつつ、その他の医療機
関、薬局、福祉機関、医師会、行政機関、さらには県民の皆様の協力の下、課題を解決し、各医
療施設が互いに連携できる仕組みを構築していく必要がありますので、今後とも、県民の皆様、
医療機関ほか各関係機関の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
結びに、本計画の策定に当たり、熱心にご検討いただきました山形県地域医療情報ネットワー
ク化推進委員会の各委員及び専門アドバイザーの方々をはじめ、調査にご協力いただきました医
療機関ほか各関係機関の皆様方に対しまして、心から厚くお礼申し上げます。
平成21年6月
目
第1章
次
医療を取り巻く現状及び動向 ··················································· 1
1
概要············································································ 1
2
医療需要、提供体制の現状························································ 3
(1) 年齢階層別人口、患者数及び受療率の推移 ········································ 3
(2) 患者数の推移·································································· 4
(3) 将来推計人口·································································· 4
(4) 医療機関別の入院・外来患者数 ·················································· 5
(5) 本県の通院圏域の形成状況······················································ 6
(6) 各二次保健医療圏における医療機関数の現状 ······································ 7
(7) 各二次保健医療圏における病床数の現状 ·········································· 7
(8) 医療従事者数の現状···························································· 8
(9) 産婦人科・産科医師数の推移···················································· 9
3
医療の情報化に関する施策動向及び技術動向 ······································· 11
(1) 医療・介護・年金等の公共分野における IC カード ································ 11
(2) 医療情報の標準化····························································· 11
(3) 医療情報システムの相互運用性 ················································· 11
(4) 標準的な診療情報提供書を作成するシステムの開発等 ····························· 13
(5) 保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI)の構築 ··································· 13
(6) 安全な診療情報等の取扱いに関するガイドライン ································· 13
(7) 医療知識基盤(オントロジデータベース) ······································· 13
(8) レセプトオンライン化························································· 14
(9) 「国民電子私書箱(仮称)」の創設 ············································· 14
4
医療情報活用のニーズ、活用の実態 ··············································· 15
(1) 医療情報活用の県民・患者のニーズ ············································· 15
(2) 医療情報活用の医療従事者のニーズ等 ··········································· 20
(3) 医療情報活用の実態··························································· 22
5
地域医療情報ネットワークに係る他事例の現状 ····································· 24
(1) Net4U(山形県鶴岡市)························································ 24
(2) 加古川地域保健医療情報システム(兵庫県) ····································· 26
(3) あじさいネットワーク(長崎県) ··············································· 29
6
現状及び動向の考察と地域医療情報ネットワークの方向性 ··························· 32
(1) 現状及び動向の考察··························································· 32
(2) 二次保健医療圏ごとの地域医療情報ネットワークの構築 ··························· 33
第2章
1
山形県における地域医療情報ネットワーク ······································ 35
地域医療の将来像······························································· 35
(1) 地域医療の今後のあり方······················································· 35
(2) 地域医療の提供体制と課題····················································· 36
(3) 地域医療情報ネットワーク化の推進 ············································· 37
2
地域医療情報ネットワークにより達成される将来像と求められる機能 ················· 39
(1) 複数の医療機関間における情報の連携 ··········································· 39
(2) 広域で多数の医療機関間における情報の連携 ····································· 45
(3) 地域医療情報ネットワークに求められる機能 ····································· 51
3
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の構築 ································· 57
(1) 各機能整備のスケジュール····················································· 58
(2) 地域医療連携推進のスケジュール ··············································· 62
(3) 県立病院総合医療情報システム整備のスケジュール ······························· 63
(4) 「第5次山形県保健医療計画」目標年度到達時点でのネットワーク ················· 63
(5) 計画推進のための留意事項····················································· 64
4
ネットワークの評価等··························································· 65
(1) 政策的目標数値······························································· 65
(2) 評価項目····································································· 66
第3章
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の構築に向けて ······················· 69
第1章
医療を取り巻く現状及び動向
第1章
1
医療を取り巻く現状及び動向
概要
現代は、高齢化の進行や食生活・生活習慣の変化とあいまって、がん、心疾患、糖尿病など、
いわゆる生活習慣病にかかる人が増加するなど疾病構造が変化してきており、また、県民・患
者の健康に対する意識の高まりとともに、県民・患者の医療に対するニーズは多様化してきて
います。
一方、情報チャネルが多様化する中で、県民・患者に対して医療情報の迅速な提供の必要性
が高まるとともに、医療分野における情報技術の進歩により、医療施設1が有する医療情報を活
用し、ネットワーク等を通じた医療情報の共有や、遠隔医療などに取り組む環境が整ってきて
います。
このように保健医療を取り巻く環境は大きく変化しており、今後は、その変化に対応してい
くことが求められます。その中で、「第5次山形県保健医療計画」においては、地域の医療資
源を有効に活用して官民連携による効率的なシステムを再構築し、県民一人ひとりが生涯を通
し健康で安心して暮らすことができる山形県の実現を目指すこととしています。
「第5次山形県保健医療計画」における『県民誰もが、いつでも、どこでも、適切な保健・
医療・福祉サービスを受けられる保健医療提供体制を強化、確立する』ための方策を検討する
ことを目的に、第1章では、医療を取り巻く、以下の事項についての現状及び動向の詳細につ
いて示します。
○
医療需要、提供体制の現状
人口の増減等の社会的要因に起因する医療需要の現状及び今後の見込み、医療需要に対応
するための医療提供体制の現状等
○
医療の情報化に関する施策動向及び技術動向
厚生労働省「医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン」等で示されている
医療の情報化に関しての、各種施策及び技術についての現在の動向
○
医療情報活用のニーズ、活用の実態
① アンケート調査に基づく、県民・患者がより強く求めている医療ニーズ、年齢階層別の
医療ニーズの相違等
② ヒアリング調査等に基づく、医療分野における情報技術活用の医療従事者等の所見・ニ
ーズ、地域医療情報連携の取組み及び医療機関2における IT 活用の実態
1
医療施設:医療法第1条の2第2項で定める「病院、診療所、介護老人保健施設、調剤を実施する薬局その他の医療を提供
する施設」
2
医療機関:本計画においては、医師が医療行為を行う「病院」及び「一般診療所」
1
○
地域医療情報ネットワークに係る他事例の現状
既に地域医療情報ネットワークを構築している県内・県外における他事例の現状
図1
第5次山形県保健医療計画で示す「保健医療を取巻く環境の変化」との相関図
保健医療を取巻く環境の変化
(第5次山形県保健医療計画)
疾病構造の変化と医療ニーズ
の多様化
人口減少社会の本格到来と
少子高齢化の進行
把握事項
山形県地域医療情報ネットワーク
整備基本計画
県民・患者のニーズ把握
2 医療需要、提供体制の現状
(P3)
社会的要因に基づく医療需要把握
3 医療の情報化に関する
施策動向及び技術動向(P11)
情報化施策動向及び技術動向把握
情報化の進展
医療情報活用の実態把握
医療提供体制の現状把握
医療従事者の不足
医療従事者のニーズ把握
4 医療情報活用のニーズ、
活用の実態(P15)
地域医療連携の実態把握
医療費の増大
県民・患者のニーズ把握
2
5 地域医療情報ネットワーク
に係る他事例の現状(P24)
2
医療需要、提供体制の現状
(1) 年齢階層別人口、患者数及び受療率の推移
県全体での患者数は横ばい傾向ですが、65歳以上の患者数については増加しています。
65歳以上については、受療率(人口10万人当たりの患者数)が他の年齢階層に比べて高い状
況です。
表1-1 本県の年齢階層別人口、患者数及び受療率の推移
平成8年
14歳以下
15歳~64歳
合計
増減率
(H8~H17)
190,798
178,488
166,653
7,089
7,662
6,575
6,687
▲5.7%
受療率(人口10万人当たり)
3,474
4,016
3,684
4,013
+15.5%
793,831
779,390
759,202
739,030
▲6.9%
34,272
31,801
29,109
29,941
▲12.6%
人口
▲18.3%
4,317
4,080
3,834
4,051
▲6.2%
257,633
279,034
297,905
309,913
+20.3%
患者数
35,161
35,609
36,493
40,473
+15.1%
受療率(人口10万人当たり)
13,648
12,762
12,250
13,059
▲4.3%
294
294
275
585
-
患者数
71
45
13
23
-
受療率(人口10万人当たり)
-
-
-
-
-
1,255,794
1,249,516
1,235,870
1,216,181
▲3.2%
76,593
75,117
72,190
77,124
+0.7%
6,099
6,016
5,841
6,341
+4.0%
人口
20.5%
22.3%
24.1%
25.5%
+5.0ポイント
患者数
45.9%
47.4%
50.6%
52.5%
+6.6ポイント
人口
人口
人口
患者数
受療率(人口10万人当たり)
65歳以上割合
平成17年
204,036
受療率(人口10万人当たり)
不詳
(単位:人)
平成14年
患者数
人口
患者数
65歳以上
平成11年
山形県健康福祉部『山形県患者調査』
3年ごとに行っている「山形県患者調査」によると、年齢階層別人口、患者数及び受療率(人
口10万人当たりの患者数)については、表1-1のとおり推移しています。
平成17年の状況を平成8年と比較すると、県内人口の合計は▲3.2%と減少しており、年齢
階層別については、14歳以下が▲18.3%、15歳以上64歳以下が▲6.9%と、それぞれ減少して
います。一方、65歳以上は20.3%増加しており、65歳以上が県内人口に占める割合は、平成8
年では20.5%でしたが、平成17年では25.5%と5.0ポイント上昇しています。
患者数は、14歳以下が▲5.7%、15歳以上64歳以下が▲12.6%と減少している一方、65歳以
上については15.1%増加しています。そのため、65歳以上の患者がすべての患者に占める割合
も、平成8年の45.9%から平成17年には52.5%と6.6ポイント上昇しており、人口の増加割合
(5.0ポイント)を上回っています。
受療率については、14歳以下、15歳以上64歳以下では4千人前後である一方、65歳以上につ
いては1万3千人前後で推移しており、65歳以上の高齢者が医療機関に受療する割合は、他の
年齢階層に比べ3倍以上になっています。
3
(2) 患者数の推移
「山形県患者調査」(平成17年)によると、医療機関で受療した患者数の総数(調査日一日
当たり)は、77,124人で、県民15.8人に1人が受療したことになります。
表1-2 本県の患者数の推移(歯科を除く)
平成8年
患者総数
受療割合(人に一人)
(単位:人)
平成11年
平成14年
平成17年
76,593
75,117
72,190
77,124
(16.4)
(16.6)
(17.1)
(15.8)
山形県健康福祉部『山形県患者調査』
「山形県患者調査」によると、調査日一日当たりの医療機関で受療した患者総数については、
平成8年から平成17年において大きな変化はみられません。平成17年における医療機関に受療
する割合は県民15.8人に1人となっており、県内の人口が減少していることから、平成8年の
16.4人に1人に比べて若干高くなっています。
(3) 将来推計人口
「日本の都道府県別将来推計人口」(平成19年5月推計)によると、本県の人口は今後減少
を続けて、平成47年には92万5千人(14歳以下:9万5千人、15歳~64歳:49万4千人、65歳以
上:33万6千人)になることが推測されています。
平成17年において14歳以下の人口割合は13.7%、65歳以上の人口割合は25.5%でしたが、
平成47年においては、14歳以下の人口割合が10.3%、65歳以上の人口割合が36.3%と、少子
高齢化が一層進むことが推測されています。
表1-3 本県の将来推計人口(年齢階層別)
平成17年
平成22年
平成27年
(単位:千人)
平成32年
平成37年
平成42年
平成47年
増減率
(H17~H47)
男性
585
564
542
517
492
465
438
▲25.1%
女性
631
613
592
567
540
514
487
▲22.8%
合計
1,216
1,178
1,134
1,084
1,032
979
925
▲23.9%
(14歳以下)
(15歳~64歳)
(65歳以上)
(167)
(739)
(310)
(150)
(707)
(320)
(134)
(657)
(342)
(121)
(607)
(356)
(111)
(565)
(356)
(103)
(528)
(348)
(95)
(494)
(336)
(▲43.1%)
(▲33.2%)
( +8.4%)
14歳以下割合
13.7%
12.7%
11.9%
11.2%
10.8%
10.6%
10.3%
▲3.4ポイント
15歳~64歳割合
60.8%
60.1%
58.0%
56.0%
54.7%
53.9%
53.4%
▲7.4ポイント
65歳以上割合
25.5%
27.2%
30.2%
32.8%
34.5%
35.5%
36.3%
+10.8ポイント
国立社会保障・人口問題研究所『日本の都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)
国立社会保障・人口問題研究所「日本の都道府県別将来推計人口」
(平成19年5月推計)に
よると、平成17年において121万6千人であった本県の人口は、30年後の平成47年においては
92万5千人となり、▲23.9%の大幅減少となることが推測されています。
4
年齢階層別にみると、14歳以下、15歳以上64歳以下の人口が減少し続ける一方で、65歳以上
については、平成32年までは人口増加を続け、その後は減少に転ずるものの、平成47年におい
ても、平成17年の人口の水準を上回ります。
その結果、年齢階層別の割合については、平成47年において、65歳以上が36.3%と、平成17
年に比べ10ポイント以上増加し、県民の3人に1人以上が65歳以上となる一方で、14歳以下は
10%程度にまで減少し、少子高齢化が一層進むこととなります。
また、平成47年の人口について男女別にみると、平成17年の人口に比べ男性▲25.1%、女性
▲22.8%の減少率が推測されています。女性に比べ、男性の減少率が高く、今後は、女性の構
成比が高まっていく見込みです。
(4) 医療機関別の入院・外来患者数
「山形県患者調査」
(平成17年)によると、入院患者の96.0%が病院、外来患者の72.1%が
一般診療所において受療しています。
病院においては、調査日一日当たりで、入院患者数13,087人に対し、外来患者数17,712人
であり、病院であっても外来患者の割合が高い状況です。
表1-4 本県の医療機関別の入院・外来患者数(歯科を除く)
(単位:人)
患者数
入院
患者数
一般診療所
外来
医療機関別
割
合
540
患者数
合計
医療機関別
割
合
4.0%
45,785
患者数
72.1%
46,325
医療機関別
割
合
60.1%
病 院
13,087
96.0%
17,712
27.9%
30,799
39.9%
総 計
13,627
100.0%
63,497
100.0%
77,124
100.0%
入院・外来患者割合
17.7%
82.3%
100.0%
山形県健康福祉部『山形県患者調査』(平成17年)
「山形県患者調査」(平成17年)によると、調査日一日当たりの医療機関で受療した入院・
外来患者の割合は、入院が17.7%、外来が82.3%と外来患者の割合が8割以上を占めています。
また、患者総数における医療機関別割合については、一般診療所が6割、病院が4割となっ
ています。
入院・外来ごとの医療機関別割合では、入院患者については96.0%が病院で受療しほとんど
を占めている状況で、外来患者については72.1%が一般診療所で受療しており多数を占めてい
ます。ただし、病院においても、入院患者数13,087人に対し、外来患者数17,712人であり、相
当程度、外来患者の比重が高い状況です。
5
(5) 本県の通院圏域の形成状況
「山形県患者調査」(平成17年)によると、村山、最上、置賜及び庄内の二次保健医療圏に
おいて、患者の通院圏域が、ほとんど完結している実態が伺われます。
◎三次医療機関
◆二次医療機関
(基幹病院)
◇二次医療機関
計
2
自治体
病院数
1
10
9
46
58
5
25
○救急告示病院
▲療養病床を有
する病院
37
21
24
2
病院凡例
図2 本県の通院圏域
◇順仁堂遊佐病院
88▲
◇町立真室川病院
◆県立日本海病院 528○
◆酒田市立酒田病院 400○
◇本間病院 154▲
◇酒田市立八幡病院 46○
55○
◇金山町立病院
病院数
50○
◇最上町立最上病院
◇庄内余目病院
◆県立新庄病院 465○
◇新 庄徳洲会病院 270○
▲
324○▲
◇尾花沢病院
◆鶴岡市立荘内病院 520○
◇鶴岡協立病院 244○▲
◇産婦人科・小児科三井病院 41○
◇宮原病院 71▲
◇鶴岡協立リハビリテーション病院 156▲
◇斎藤胃腸病院 70▲
◇鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 120▲
◇三川病院 144▲
156▲
◇山形県成人病検査センター 21
◇寒河江市立病院 160○
◆県立河北病院
◇西川町立病院
286○
◆北村山公立病院 380○
◇山形ロイヤル病院 288▲
51○
◇天童市立天童病院 70○
◇天童温泉篠田病院 124○
◇吉岡病院 136○▲
通院等の状況
50%以上
30%以上50%未満
10%以上30%未満
◇朝日町立病院
60○
◇白鷹町立病院
70○
◇県立総合療育訓練センター 60
◇みゆき会病院 183○▲
◇公立置賜長井病院 110
◇吉川記念病院 200▲
◇公立置賜南陽病院
◇小国町立病院
70○
55○
50
◇公立高畠病院
◆公立置賜総合病院 520○
◇川西湖山病院 120▲
130○
◎山形大学附属病院 604○
◎県立中央病院 660○
◆山形市立病院済生館 585○
◆済生会山形済生病院 473○
◇東北中央病院 252○
◇篠田総合病院 386○▲
◇横山病院 45
◇至誠堂総合病院 260○▲
◇小白川至誠堂病院 148○▲
◇矢吹病院 55▲
◇井出眼科病院 26
◇国立病院機構山形病院 308
◇山形徳洲会病院 292○▲
◆米沢市立病院 425○
◇三友堂病院 190○
◇舟山病院 194○▲
◇三友堂リハビリセンター 120▲
◇国立病院機構米沢病院 220
山形県健康福祉部『山形県患者調査』(平成17年)
6
(6) 各二次保健医療圏における医療機関数の現状
二次保健医療圏別に医療機関数をみると、一般診療所数については、最上地域及び置賜地
域で、人口10万人当たりの全国平均を下回ります。
表1-5 本県の二次保健医療圏別医療機関数(歯科を除く)
村 山
最 上
置 賜
(単位:施設)
庄 内
合 計
一般診療所
(人口10万人当たり)
(全国77.2)
463
(80.6)
54
(60.3)
157
(66.4)
250
(81.5)
924
(76.5)
病院
(人口10万人当たり)
(全国7.0)
34
(5.9)
6
(6.7)
13
(5.5)
17
(5.5)
70
(5.8)
山形県『山形県保健医療計画』(平成20年3月)
医療機関数を一般診療所及び病院別にみると、一般診療所については、県合計で人口10万人
当たりの全国平均を下回ります。
表1-4のとおり、外来患者の72.1%が一般診療所で受療している状況を考慮すれば、一般診
療所の数が全国平均を下回る最上地域及び置賜地域においては、外来における医療提供体制が
十分ではないものと推測されます。
病院については、その規模等についても考慮が必要であり、病院の数のみで過不足を判断す
るのは適切ではありませんが、県合計で全国平均を下回っている状況です。
(7) 各二次保健医療圏における病床数の現状
二次保健医療圏別に病床数をみると、病院の病床数については、最上地域、置賜地域及び
庄内地域で、人口10万人当たりの全国平均を下回ります。
表1-6 本県の二次保健医療圏別病床数(歯科を除く)
村 山
最 上
置 賜
(単位:床)
庄 内
合 計
一般診療所
(人口10万人当たり)
(全国125.1)
550
(95.7)
93
(103.8)
241
(102.0)
391
(127.4)
1,275
(105.5)
病院
(人口10万人当たり)
(全国1,273.1)
8,098
(1,409.0)
1,117
(1,247.1)
2,520
(1,066.1)
3,593
(1,171.0)
15,328
(1,268.9)
山形県『山形県保健医療計画』(平成20年3月)
病床数を一般診療所及び病院別にみると、一般診療所については、県合計で人口10万人当た
りの全国平均を下回りますが、表1-4のとおり一般診療所の入院患者は本県入院患者の4.0%と
少なく、一般診療所の病床数の状況については、全県的な影響は少ないものと考えられます。
一方、病院については、村山地域を除いて全国平均を下回ります。入院患者の96.0%が病院
の患者であることを踏まえると、全国平均を下回る最上地域、置賜地域及び庄内地域では、入
院における医療提供体制が十分ではないものと推測されます。
7
表1-7 本県の病床数の現状
病床の種別
(単位:床)
基準病床数
①
既存病床数
(H21.4.1現在)
②
※手続き中を含む
差 引
①-②
11,551
11,328
223
精神病床
3,003
3,879
▲876
結核病床
59
50
9
感染症病床
22
18
4
14,635
15,275
▲640
療養病床及び一般病床
合 計
山形県健康福祉部健康福祉企画課
平成21年4月現在の本県における病床数の状況をみると、県全体の「療養病床及び一般病床」
の基準病床数1は、既存病床数(手続き中を含む。以下同じ。)を上回っていますが、「療養病
床及び一般病床」に「精神病床」
、
「結核病床」及び「感染症病床」を加えた病床数の合計につ
いては、基準病床数が既存病床数を下回っています。
表1-8 本県の「療養病床及び一般病床」の病床数の現状 (単位:床)
二次保健医療圏
基準病床数
①
既存病床数
(H21.4.1現在)
②
※手続き中を含む
差 引
①-②
村 山
6,131
5,567
564
最 上
580
877
▲297
置 賜
2,056
2,102
▲46
庄 内
2,784
2,782
2
合 計
11,551
11,328
223
山形県健康福祉部健康福祉企画課
「療養病床及び一般病床」を二次保健医療圏別にみると、村山地域及び庄内地域では、基準
病床数が既存病床数を上回っていますが、最上地域及び置賜地域においては、基準病床数が既
存病床数を下回っています。
基準病床数が既存病床数を下回る場合は、二次保健医療圏内において病床を設置することは、
原則できない状況にあることから、最上地域及び置賜地域では、新たに病床を設置することは
困難です。
(8) 医療従事者数の現状
人口10万人当たりの医師数は、村山地域は全国平均を上回っていますが、その他の地域で
は全国平均を下回っています。
人口10万人当たりの薬剤師数は、すべての地域で全国平均を下回っています。
1
基準病床数:医療法第30条の4第2項第12号の規定に基づき、都道府県の保健医療計画で定めるもので、一般病床及び療養
病床については二次保健医療圏ごとに、精神病床、結核病床及び感染症病床については、県全域を単位に設定
8
平成18年12月現在において、本県における医療従事者数を職種別にみると、合計で、医師及
び薬剤師については人口10万人当たりの全国平均を下回っていますが、保健師、助産師及び看
護師については全国平均を上回り、准看護師については全国平均と同程度となっています。
全国平均を下回る医師及び薬剤師について地域ごとにみると、医師については村山地域を除
く3地域、薬剤師についてはすべての地域で全国平均を下回っています。
表1-9 本県の医療従事者数(歯科医師を除く)(平成18年12月)
村 山
最 上
置 賜
(単位:人)
庄 内
合 計
医 師
(人口10万人当たり)
(全国217.5)
1,447
(251.8)
118
(131.7)
368
(155.7)
519
(169.2)
2,452
(203.0)
薬剤師
(人口10万人当たり)
(全国197.6)
900
(156.6)
107
(119.5)
300
(126.9)
399
(130.0)
1,706
(141.2)
保健師
(人口10万人当たり)
(全国31.5)
236
(41.1)
47
(52.5)
96
(40.6)
155
(50.5)
534
(44.2)
助産師
(人口10万人当たり)
(全国20.2)
161
(28.0)
17
(19.0)
38
(16.1)
65
(21.2)
281
(23.3)
看護師
(人口10万人当たり)
(全国635.5)
4,754
(827.1)
552
(616.3)
1,517
(641.8)
2,014
(656.4)
8,837
(731.5)
准看護師
(人口10万人当たり)
(全国299.1)
1,369
(238.2)
322
(359.5)
602
(254.7)
1,252
(408.0)
3,545
(293.5)
山形県『山形県保健医療計画』(平成20年3月)
(9) 産婦人科・産科医師数の推移
産婦人科・産科医師数は、全国平均をやや上回るものの、減少する傾向にあります。
また、半数以上が村山地域に集中している状況であり、最上地域及び置賜地域においては、
人口10万人当たりの全国平均を下回っています。
表1-10 本県の産婦人科・産科医師数(産婦人科+産科(重複計上))
村 山
最 上
置 賜
庄 内
(単位:人)
合 計
平成10年
(人口10万人当たり)
(全国9.6)
62
(10.7)
6
(6.2)
20
(8.0)
30
(9.3)
118
(9.4)
平成12年
(人口10万人当たり)
(全国9.4)
66
(11.4)
7
(7.3)
19
(7.7)
24
(7.5)
116
(9.3)
平成14年
(人口10万人当たり)
(全国9.3)
72
(12.4)
6
(6.4)
18
(7.4)
25
(7.9)
121
(9.8)
平成16年
(人口10万人当たり)
(全国8.9)
69
(11.9)
5
(5.4)
16
(6.6)
27
(8.6)
117
(9.6)
平成18年
(人口10万人当たり)
(全国8.5)
61
(10.6)
6
(6.7)
17
(7.2)
26
(8.5)
110
(9.1)
平成18年における
地域構成
55.5%
5.5%
15.5%
23.6%
100.0%
厚生労働省『医師・歯科医師・薬剤師調査』
9
出生率が低下し、年齢階層等の人口構造が変化する中、合併症妊娠等のハイリスク妊産婦や
先天的疾患等のハイリスク新生児を適切に管理する周産期医療体制は、ますます重要になって
います。
産婦人科・産科医師数については、平成18年現在で110人となっており、近年はわずかです
が減少傾向にあります。
また、平成18年現在で、本県における人口10万人当たりの産婦人科・産科医師数については、
県合計で9.1人となっており、全国平均の8.5人を上回っていますが、地域ごとにみると、本県
の産婦人科・産科医師の半数以上が村山地域に集中している状況です。そのため、人口10万人
当たりの全国平均を上回るのは村山地域(人口10万人当たりで10.6人)のみで、庄内地域(同
8.5人)では全国平均と同程度、最上地域(同6.7人)及び置賜地域(同7.2人)では全国平均
を下回っています。
10
3
医療の情報化に関する施策動向及び技術動向
国においては、平成18年1月の「IT新改革戦略」の中で、今後重点的に取り組むIT政策として、
保健・医療・福祉分野を取り上げるとともに、厚生労働省では、平成19年3月に、医療・健康・
介護・福祉分野の横断的な情報化方針、具体的なアクションプラン等を示す「医療・健康・介護・
福祉分野の情報化グランドデザイン」を定めています。同グランドデザイン等で示された施策の
動向及び技術の動向については、現在、以下のとおりとなっており、今後、ITを活用した医療連
携体制を構築するに当たっては、国等の動向を踏まえつつ施策を展開する必要があります。
(1) 医療・介護・年金等の公共分野におけるICカード
厚生労働省では、年金、医療、介護等それぞれの社会保障分野の情報化の共通基盤として、
平成23年度における「社会保障カード(仮称)」の導入を目指し、現在、技術的、制度的な検
討を進めています。
「社会保障カード(仮称)
」は、個人が年金記録やレセプト情報などの自分の情報を確認・
活用できる「情報アクセスの基盤」として、また、健康保険証や年金手帳などが1枚のICカー
ド1になれば医療機関等における「情報連携の基盤」等として活用できる可能性があります。
「社会保障カード(仮称)
」が導入されれば、情報の可視化、効率的できめ細かなサービス
提供が一層進むことが見込まれます。
(2) 医療情報の標準化
医療情報を医療機関間で共有するためには、医療情報システムに関わるさまざまな用語・コ
ード、記述形式などの標準化2が必要です。
医療分野における情報技術の標準化等の作業を行っている関係団体は、現在、多数存在し、
各団体がそれぞれの役割を担いながら標準化が進められている状況です。
厚生労働省の「保健医療情報標準化会議」の中では、
「医療情報標準化推進協議会(HELICS
協議会)
」を「標準に関する関係者合意を形成しうる団体」としています。現在、このHELICS
協議会が「日本HL73協会」、
「保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)」
、「財団法人医療情報
システム開発センター(MEDIS-DC)」等からの規格提案を受け、協議、採択する枠組みで検討
が行われ、これら団体を中心として、各種の標準規格が整備されつつあります。
(3) 医療情報システムの相互運用性
異なるベンダの医療情報システム間で実際にデータ交換をするためには、医療情報を共有す
1
ICカード:名刺サイズのカードにICチップを搭載して、外部読取機との情報交換を行うカード
2
標準化:材料・設備・製品などの仕様、作業方法、業務手続などの標準(規格や測定基準)を合理的に設定すること
3
HL7:米国で提唱された患者管理、検査報告、人事管理、アプリケーション管理など医療情報交換のための国際標準規約
11
るための用語・コード、記述形式などの標準化に加え、相互運用性1の確保が必要です。
相互運用性の確保については、経済産業省において、平成17年度から平成19年度までの3年
間で「医療情報システムにおける相互運用性の実証事業」が行われており、その結果を踏まえ
て、平成20年3月に「相互運用性を確保した医療情報システム導入ガイド」が公表されていま
す。
このガイドの中で「LEVEL4」の相互運用性を要求している項目は、最低限電子化しておく必
要があるものとして、以下のとおり示されています。
1.LEVEL4の相互運用性を以下の項目で確保できること。
医療機関情報、当該機関の受診歴、患者基本情報、病名、保険情報、処方指示(含む
用法)
、検体検査(指示および結果)、放射線画像情報、生理検査図形情報、内視鏡画像
情報、注射、手術術式
医療機関情報および当該機関の受診歴はJ-MIX2 に準拠した形式に容易に変化可能なこ
と、患者基本情報、病名情報、保険情報、処方情報、検体検査情報、注射情報は基本デー
タ項目セットに準拠した形式に容易に変換可能なこと、なお病名情報では標準病名マスタ
ー、処方情報では医薬品マスター、検体検査では臨床検査マスターを用いているか、これ
らの用語・コードに容易に変換できること、生理検査画像情報ではMFER31.0に準拠した形
式を採用するか、それに容易に変換可能な形式であること、放射線画像情報、内視鏡画像
情報ではDICOM4に準拠するか、それに容易に変換可能なこと、手術術式では手術処置マス
ターの管理番号が採用されているか、それに容易に変化できなくてはならない。
さらに、このレベルでは、HL7やDICOMのような医療情報の国際標準規格に基づいてシス
テム間のトランザクション5を行うことが望ましい。システム内に蓄積された診療情報が
相互運用性を持つためには、最低限上記のコンテンツの標準化が必要であるが、統合的な
医療情報システム全体を相互運用性の高い状態におくためには標準交換規約の採用が必
要となる。IHE6テクニカルフレームワーク7が定められている領域ではこれに準拠する必
要がある。このことによって、システムの交換が比較的容易となり、システムの入れ替え
に際して選択肢の幅を広げることにもなる。
相互運用性実証事業普及推進委員会技術部会
『相互運用性を確保した医療情報システム導入ガイド』
1
相互運用性:システムとシステムの間、施設と施設の間で扱われる情報の意味が正しく伝わることで相互に運用できること
2
J-MIX:医療機関で電子保存されている患者の診療録情報を医療機関間で電子的に交換する際に必要なデータ項目セット
3
MFER:心電図、脳波、呼吸波形など医用波形を相互利用するための標準波形情報の標準規格
4
DICOM:CTやMRI等で撮影した医用画像のフォーマット及び画像を扱う医用画像機器間の通信プロトコルを定義した標準規格
5
トランザクション:関連する複数の処理を一つの処理単位にまとめて管理する処理法
6
IHE:医療情報を扱う上での標準的な業務の流れや機能の実現方法など、
「標準規格」の「使い方」を示すガイドライン
7
テクニカルフレームワーク:医療における業務フローや業務に必要な機能をまとめた「統合プロファイル」と「トランザク
ション」の詳細を記述したIHEにおける最も基本的な文書
12
(4) 標準的な診療情報提供書を作成するシステムの開発等
医療機関間における連携手法を構築するため、平成18年度に、厚生労働省の事業として「電
子 的 診 療 情 報 交 換 推 進 事 業 ( SS-MIX : Standardized Structured Medical Information
eXchange)
」が実施されています。当事業の成果である「静岡県版電子カルテシステム」の「情
報ゲートウェイデータ交換仕様書」については、電子カルテシステムに格納された診療情報を
医療機関間で交換するための標準的手法として一般に公開されています。
(5) 保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI)の構築
厚生労働省では、保健医療福祉分野の公開鍵基盤としてHPKI 1 (Healthcare Public Key
Infrastructure)を構築することとしています。
HPKIの技術的な仕様等については、厚生労働省の「保健医療福祉分野における公開鍵基盤認
証局の整備と運営に関する専門家会議」の中で検討されています。
HPKIには、署名用途2と認証用途3があり、署名用途については全国統一のルールが策定され、
既存のサービスもありますが、国家資格の有無等に係る「資格者認証4用途」については、現
在検討中の段階です。
(6) 安全な診療情報等の取扱いに関するガイドライン
厚生労働省では、
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を策定しており、
平成21年3月現在では、第4版まで公表されています。
同ガイドラインでは、「情報システムの基本的な安全管理」、「電子保存の要求事項につい
て」
、「診療録及び診療諸記録を外部に保存する際の基準」など、医療情報を電子的に取り扱う
際の、「善良なる管理者」の注意義務を示しており、医療機関等の責任者、情報システム管理
者、システム開発業者が、それぞれ関連する部分を理解し、対策を講じることが求められます。
また、外部と医療情報を交換する場合のセキュリティ対策の必要性についても示しており、
ITによるネットワーク化を進める上では特に留意する必要があります。
(7) 医療知識基盤(オントロジデータベース)
厚生労働省では、医療情報を高次に分析・活用するための、病名(診断名)、症状所見名、手
術処置名などの患者の身体的状態と医療行為等を表す標準用語を相互に意味的に関係づけた
医療知識基盤(オントロジデータベース5)を、平成21年度末までに完成することとしています。
1
HPKI:公開鍵暗号方式を使って、暗号化通信やユーザー認証などを行うための、保健医療福祉分野で適用される仕組み
2
署名用途:電子データに作成者を明らかにする署名を付け、手書き署名や印鑑押なつと同じ効果を電子上で実現すること
3
認証用途:システムの利用者が、本人であるかどうかの正当性を確認すること、アクセス権限を持っているかどうかを確認
して使用権限を与えること
4
資格者認証:医師・薬剤師・看護師等の25の保健医療福祉分野の国家資格等での認証
5
オントロジデータベース:例えば、インフルエンザ肺炎という病名を、炎症という所見、肺という部位、インフルエンザウ
イルスという病原ウイルスなどと、相互に意味論的に関係づけた医療知識基盤データベース
13
(8) レセプトオンライン化
レセプトオンライン請求システムは、保険医療機関、保険薬局と審査支払機関を全国規模の
ネットワーク回線で結び、レセプト電算処理システムにおける診療報酬等の請求データ(レセ
プトデータ)をオンラインで受け渡すシステムです。
厚生労働省「医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン」の中では、平成23
年4月から、保険医療機関、保険薬局等と審査支払機関間におけるレセプト請求事務を原則と
して、完全オンライン化することとしており、同じく、審査支払機関と保険者間におけるレセ
プト請求事務についても、原則として完全オンライン化することとしています。
また、同グランドデザインにおいては、平成21年度からレセプトデータの収集・分析を段階
的に実施し、平成23年度から厚生労働省において全国規模でレセプトデータを収集し、分析・
公表することとしています。
(9) 「国民電子私書箱(仮称)」の創設
現在、国では、
「IT新改革戦略」に基づき、各個別のサービス提供者(国、地方自治体、保
険者、医療機関、その他)が有する自己の情報を国民一人ひとりが容易に入手・閲覧し、一元
的に管理し、適切に活用できる仕組みとして、平成23年度における「国民電子私書箱(仮称)」
の創設を目指し、現在、技術的、制度的な検討を進めています。
14
4
医療情報活用のニーズ、活用の実態
(1) 医療情報活用の県民・患者のニーズ
医療情報を活用するに当たり、県民・患者がより強く求めている医療ニーズ、年齢階層別
の医療ニーズの相違などを把握するため、県内医療機関の外来患者に対して、アンケート調
査を実施しました。(有効回答数 3,188 件)
① 調査概要
表2-1 二次保健医療圏別・年齢別のアンケート実施状況
調査地域
年齢
0 ~9歳
合計
(比率)
126
4.0%
村山
最上
置賜
庄内
12
19
69
10 ~19 歳
99
3.1%
17
12
43
27
20 ~29 歳
191
6.0%
45
20
79
47
30 ~39 歳
279
8.8%
66
31
108
74
40 ~49 歳
348
10.9%
100
85
83
80
50 ~59 歳
516
16.2%
177
100
120
119
60 ~64 歳
352
11.0%
124
84
59
85
65 ~74 歳
679
21.3%
233
156
120
170
598
18.8%
181
184
84
149
3,188 100.0%
955
691
765
777
75 歳以上
合計
26
※1 各項目に無回答があるため、各項目別の合計数値は一致しません。
※2 比率は、小数点第二位以下を四捨五入しているため、各比率の集計が100%にならない
場合があります。
15
② 調査結果
ア)
「かかりつけ医」
、「かかりつけ薬局」の有無について
「かかりつけ医」を持っている割合は67.8%と、全体的にある程度は浸透しています
が、「第5次山形県保健医療計画」で設定した目標の80%(H24まで)には達していません。
「かかりつけ薬局」については54.8%で、「かかりつけ医」に比べ低い状況です。
「かかりつけ医」を持っている割合、
「かかりつけ薬局」を持っている割合の双方とも、
若年層と高齢者層が高く、中間的な年齢階層が低い状況です。
表2-2-1 かかりつけ医の有無
ある
ない
合計
「ある」の比率
0~9歳 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~64歳 65~74歳 75歳以上
102
65
69
111
178
324
242
545
493
23
32
122
167
169
187
101
121
90
125
81.6%
97
67.0%
191
36.1%
278
39.9%
347
51.3%
511
63.4%
343
70.6%
666
81.8%
583
84.6%
合計
2,129
1,012
3,141
67.8%
「かかりつけ医1」を持っていると回答した県民・患者の割合は、全体で67.8%となっ
ており、全体の三分の二以上の割合となっていますが、「第5次山形県保健医療計画」で
設定した目標である80%(平成24年度まで)には達していない状況です。
「かかりつけ医」を持っていると回答した割合を年齢階層別にみると、0歳~9歳及び
65歳以上の年齢階層では8割以上の高い割合になっている一方で、20歳~39歳では4割に
達しておらず、階層ごとに差が見受けられます。
表2-2-2 かかりつけ薬局の有無
ある
ない
合計
「ある」の比率
1
0~9歳 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~64歳 65~74歳 75歳以上
84
47
61
82
135
255
202
445
399
40
51
129
195
210
256
139
214
178
124
67.7%
98
48.0%
190
32.1%
277
29.6%
345
39.1%
511
49.9%
341
59.2%
659
67.5%
577
69.2%
かかりつけ医:患者の体質や病歴、健康状態を把握して、診療、健康管理上のアドバイスなどをする身近な医師
16
合計
1,710
1,412
3,122
54.8%
「かかりつけ薬局1」を持っていると回答した県民・患者の割合は、全体で54.8%と、
半数を超える割合となっていますが、
「かかりつけ医」との比較においては、すべての年
齢階層を通じて低い状況です。
「かかりつけ薬局」を持っていると回答した割合を年齢階層別にみると、0歳~9歳及
び65歳以上の年齢階層では6割以上の高い割合になっている一方で、20歳~49歳では4割
に達しておらず、「かかりつけ医」の結果と同様に、階層ごとに差が見受けられます。
イ)カルテ内容の開示について
カルテの開示については、肯定的な回答がすべての年齢階層を通じて高く、「とても知
りたい」、「場合によって知りたい」を合わせると、全体で84.5%となり、カルテの記載
内容に対する関心の高さが伺えます。
表2-3-1 カルテ内容の開示
とても知りたい
場合によって知りたい
あまり知りたくない
知らなくて良い
わからない
集計
0~9歳 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~64歳 65~74歳 75歳以上 合計
17.2% 19.4% 27.7% 28.4% 29.0% 33.0% 21.5% 28.5% 30.0% 28.0%
77.0% 62.4% 59.2% 61.9% 62.4% 56.5% 61.2% 52.3% 45.4% 56.5%
0.8%
0.0%
1.6%
2.2%
1.8%
2.8%
2.4%
2.7%
3.9%
2.5%
5.4%
5.4%
4.1%
4.4%
5.4% 10.0% 11.8% 14.2%
8.4%
0.8%
4.1% 12.9%
6.0%
3.4%
2.4%
2.2%
4.8%
4.6%
6.5%
4.5%
100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
カルテの開示については、肯定的な回答がすべての年齢階層を通じて高く、
「とても知
りたい」、
「場合によって知りたい」を合わせると、全体では84.5%となり、カルテの記載
内容に対する関心の高さが伺えます。
年齢階層別にみると、60歳以上では、カルテ内容について「知らなくて良い」と回答し
た割合が1割以上を占めており、60歳未満の年齢階層に比べて高い傾向にあります。一方、
0歳~9歳では、「知らなくて良い」とした回答は、ほとんど見受けられませんでした。
1
かかりつけ薬局:患者の体質、薬によるアレルギー、現在服用中の薬などの薬歴管理や服薬指導をする身近な薬局
17
表2-3-2 カルテ内容について知りたい理由
内容に興味あり
訴えの医師への伝達確認
病気の不安解消
治療内容理解
セカンドオピニオン
集計
0~9歳 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~64歳 65~74歳 75歳以上 合計
6.9% 19.3% 14.9% 14.1% 12.0%
4.3%
3.0%
5.9%
5.8%
8.0%
14.6% 10.2% 12.0% 14.1% 14.9% 15.6% 14.9% 18.0% 18.3% 15.7%
35.4% 30.7% 32.2% 29.8% 30.6% 38.6% 44.4% 38.7% 40.5% 36.6%
38.9% 39.8% 38.5% 38.7% 37.7% 35.9% 34.1% 34.2% 32.4% 35.9%
4.2%
0.0%
2.4%
3.4%
4.9%
5.5%
3.6%
3.2%
2.9%
3.8%
100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
カルテの内容について「知りたい」と回答した県民・患者を対象に、さらにその理由に
ついても回答を求めたところ、「病気の不安解消(36.6%)」や「治療内容理解(35.9%)」
を挙げた回答が多く見受けられました。
ウ)医療機関間の診療情報の活用について
カルテ等に記載された診療情報については、全体として68.5%の県民・患者が、医療
機関間において情報活用することに肯定的です。
表2-4 医療機関間の診療情報の活用
0 ~ 9 歳 10 ~ 19 歳 20 ~ 29 歳 30 ~ 39 歳 40 ~ 49 歳 50 ~ 59 歳 60 ~ 64 歳 65 ~ 74 歳 75 歳以上
良 いと 思 う
思 わない
わからない
合計
「良 い 」 の 比率
90
53
124
187
259
364
200
375
312
合計
1,964
352
4
6
14
20
27
46
48
100
87
24
30
41
53
45
75
57
114
111
550
118
89
179
260
331
485
305
589
510
2,866
76.3%
59.6%
69.3%
71.9%
78.2%
75.1%
65.6%
63.7%
61.2%
68.5%
18
診療情報の活用については、全体として68.5%の県民・患者が「良い」と思っている結
果となりました。ただし、10歳~19歳及び60歳以上の年齢階層においては、
「良い」と回
答した割合が他の年齢階層に比べて少ない傾向にありました。一方、0歳~9歳及び30
歳~59歳の年齢階層では、7割以上が「良い」と思っており、診療情報の活用に積極的な
傾向が伺えます。
エ)地域医療に対する期待について
地域医療に対するものとして「救急医療」、「小児・産科医療」、
「在宅医療」の充実に
対して期待を抱いている県民・患者が多い状況です。
表2-5 地域医療に対する期待
小児・産科医療の充実
救急医療の充実
在宅医療の充実
生活習慣病対策の充実
現状で満足
その他
集計
0~9歳 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~64歳 65~74歳 75歳以上 合計
50.7% 29.3% 33.2% 35.3% 25.6% 19.1% 17.0% 12.5% 10.9% 21.4%
38.4% 44.3% 36.0% 35.5% 37.8% 34.5% 31.7% 29.9% 25.1% 33.0%
3.4% 10.7% 10.5%
9.9% 16.2% 19.4% 16.6% 20.7% 23.9% 17.2%
4.4%
3.6%
7.7% 10.3% 12.1% 17.7% 19.4% 15.7% 14.5% 13.9%
0.5%
9.3% 10.5%
5.9%
5.5%
7.3% 13.6% 19.1% 24.1% 12.4%
2.5%
2.9%
2.1%
3.1%
2.7%
2.0%
1.7%
2.2%
1.5%
2.2%
100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
地域医療に対する期待としては、
「救急医療」、
「小児・産科医療」、
「在宅医療」の充実
に対して期待を抱いている県民・患者が多く、この3項目で全体の70%を超えています。
「小児・産科医療の充実」を求める回答については、0歳~39歳においては30%を超え
ていますが、年齢階層が高くなるにつれ低くなっています。逆に「在宅医療」や「生活習
慣病対策」については、年齢階層が高くなるにつれ、充実を求める回答が高くなっていま
す。
また、60歳以上では「現状で満足」と回答した割合が10%を超えているなど、年齢階層
が高くなるにつれ、現在の医療体制に対し、比較的満足している意識が伺えます。
19
(2) 医療情報活用の医療従事者のニーズ等
病院、診療所等の直接医療を提供する医療機関、それら医療機関の門前にある調剤薬局、訪
問看護ステーションに勤務する医療従事者を対象にヒアリング調査を実施し、医療情報の活用
に対する医療従事者の所見・ニーズ及び地域医療情報連携の取組みとして以下の事項が確認さ
れました。
① 医療情報の共有・参照に関する事項
ア)基幹病院の医療情報システムに保存された患者の医療情報について、地域の診療所が参
照できる独自の仕組みを構築している事例があること
イ)地区医師会等において「医療機関への予約システム」や「病院、診療所、コ・メディカ
ル1間での医療情報の共有」による連携体制を構築している事例があること
ウ)診療所では、電子カルテ等の情報化を進めている施設であっても、他の医療機関との連
絡には電話やFAXを活用している場合が多いこと
エ)診療予約、検査予約、退院時共同指導等への活用及び医療の安全性向上を図るに当たっ
て、ITによる電子的な情報共有が有効であると感じている医師が多いこと
オ)IT導入に要するコスト、セキュリティの確保等に課題を感じている医師が多いこと
② 紹介・逆紹介時のIT活用に関する事項
ア)紹介・逆紹介の際に、ITを活用することが有用であると感じている医師が多いこと
イ)紹介・逆紹介の際の診療情報提供書の送付については「紙のみ」、
「紙とFAX」等で行っ
ている医療機関が多く、ITを活用している事例が少ないこと
ウ)基幹病院を中心として、紹介・逆紹介の患者についての医療情報の公開・参照が効果的
に行われている事例があること
③ 複数の医療施設が連携した医療提供体制に関する事項
ア)複数の医療機関が関わる地域連携クリティカルパス2の作成(大腿骨頸部骨折、脳卒中等)
など、
「診療科群」の単位での連携体制の必要性について、医療従事者の意識が全県的に
高まっていること
イ)地域連携クリティカルパスを実施する上で、患者に係る診療情報の文書を「計画管理病
院3」に返送するに当たっては、「紙」を中心に実施している事例が多いこと
ウ)地域連携クリティカルパスの高度化を目的として、治療内容、処方等の情報を、地域の
医療施設間において電子的に共有している事例があること
エ)
「看護記録」を電子化し、退院後のケアマネージャーを中心とした在宅医療における「多
1
コ・メディカル:一般には医師を除いた検査技師・放射線技師・薬剤師・理学療法士・栄養士などの病院職員のこと
2
地域連携クリティカルパス:良質な医療を安全に効率的に提供するための、地域内の複数医療施設間での診療計画表
3
計画管理病院:転院後、退院後の地域における患者の治療を総合的に管理するため地域連携診療計画を作成する等の病院
20
職種連携1」を強化したいと感じている病院の看護師が多いこと
オ)在宅患者の状況について主治医の指示を必要とする場合、主治医との連絡に時間がかか
り不便を感じている訪問看護師が多いこと
カ)地域の医療施設との連携の窓口となる基幹病院の地域医療連携の部門では、連携に係る
多くの業務が集中していることや、業務に幅広い知識が必要なことから、
「優秀な人材の
確保」が課題となっていること
④ 医療機関と調剤薬局の連携に関する事項
ア)調剤薬局において、薬の容量など医師の処方に対する「疑義」を照会する際に、照会に
時間を要し、患者に過剰な負担をかける場合があること
イ)複数の医療機関で処方された薬を確認するために「お薬手帳」を配布している医療機関、
調剤薬局においても、
「お薬手帳」を持参してこない患者、複数の「お薬手帳」を使い分
けるなど正しい使用方法を知らない患者も多く、処方のチェックが困難な場合があること
⑤ 地域医療連携におけるIT活用に関する事項
ア)DPC2対象病院では、疾病等ごとに地域で機能分担した医療提供体制(地域連携クリティ
カルパス、在宅医療支援等)を必要だと感じている医療従事者、その場合、それぞれの疾
病等ごとの分析を容易にするために、ITを活用したいと考えている医療従事者が多いこと
イ)地域連携クリティカルパスを運用し、改善していくためには、パスの運用結果の事例を
集積し、個別事例ごとにパスにおける治療の過程で発生した計画との差異(バリアンス)
を分析する必要があるが、現状では、連携する医療施設間であっても集計や分析手法が統
一されていないケースが見受けられること
1
多職種連携:医療、福祉に関わる各専門職からなる「チーム」により実施される医療連携
2
DPC:入院患者の病名や症状をもとに、包括評価部分(投薬、注射、処置、入院料等)と出来高評価部分(手術、麻酔、リ
ハビリ、指導料等)を組み合わせて医療費を計算する新しい定額払いの会計方式
21
(3) 医療情報活用の実態
① 医療機関
ITが導入された医療機関において、総体としてどのような活用が図られ、さらに地域医療
連携にどの程度活用されているのかを把握することを目的に、県内の医療機関のうち、既に
電子カルテシステム、オーダリングシステムの導入が確認されている機関に対して、医療情
報技術活用の実態に係るアンケート調査を実施しました。(有効回答数114件)
当アンケート調査については、県内のすべての医療機関を対象に行ったものではなく、ITが導入さ
れた医療機関のみを選定しているため、各項目における回答は、県内全体における医療機関の実態と
は大きく異なる場合があります。
ア)アンケート調査の実施状況について
表3-1-1 アンケート調査の実施状況
調査地域
施設
合計
無床診療所
(比率)
89 78.1%
有床診療所
16 14.0%
病院
合計
9
村山
最上
置賜
庄内
41
5
21
22
3
1
4
8
7.9%
5
1
1
2
114 100.0%
49
7
26
32
イ)医療情報システムの活用状況について
表3-1-2 医療情報システムの活用状況
調査地域
内容
紙運用
オーダリング
電子カルテ
PACS(医用画像保存)
その他部門システム
合計
村山
28.1%
79.8%
77.2%
43.0%
42.1%
最上
32.7%
81.6%
79.6%
61.2%
63.3%
置賜
28.6%
71.4%
71.4%
42.9%
14.3%
庄内
30.4%
87.0%
78.3%
26.1%
30.4%
25.7%
80.0%
79.0%
4.2%
41.9%
電子カルテシステム、オーダリングシステム等が導入されている医療機関であっても、
紙運用を併用している施設は、四分の一以上存在しています。
ウ)他医療機関とのITを活用した連携状況について
表3-1-3 他医療機関とのITを活用した連携状況
調査地域
内容
紹介状(電子媒体)
放射線画像(電子媒体)
診療情報交換(インターネット等)
合計
7.6%
17.1%
16.2%
村山
0.0%
11.4%
6.8%
最上
16.7%
33.3%
0.0%
置賜
0.0%
12.0%
48.0%
庄内
23.3%
26.7%
6.7%
a 電子媒体(メール等)を活用した紹介状のやり取りについては、全県で7.6%となって
おり、ほとんど活用されていません。
b 放射線画像の電子媒体による連携は17.1%、インターネット等を通じた診療情報交換
については16.2%となっており、全県的には低い数字ですが、地域ごとにみると、IT
22
を活用した連携も一部では行われています。
c 置賜地域ではインターネット等を通じた診療情報交換、庄内地域では電子媒体による
紹介状、放射線画像のやり取りが、ある程度行われています。
② 消防署(救急搬送中におけるITを活用した医療機関との連携)
広域救急搬送における医療情報活用の実態を把握することを目的に、広域的消防活動を行
っている消防本部を対象に、アンケート調査を実施しました。
ア)救急搬送中における医療機関に対する生体情報の情報伝達手法について
表3-2-1 医療機関に対する生体情報の情報伝達
項 目
血圧
血中酸素飽和度
心電図
体温
音
声
8
8
7
8
データ通信
0
0
0
0
送付していない
0
0
1
0
救急搬送中において、救急患者の生体情報などを医療機関に伝達する場合、音声による
ものがほとんどで、調査した範囲では、データ通信を行っている事例は確認されませんで
した。
イ)音声による通信での不都合について
表3-2-2 音声による通信での不都合
項
回答数
(複数回答あり)
目
事故現場の状況を伝えられない
1
傷病者の容態を伝えられない
1
指示等を要請することが困難
2
救急救命処置の実施状況を伝えられない
容態変化を迅速に伝えられない
0
聞き違い、聞き直し・聞き返しがある
6
0
データ通信が行われていない現状において、音声による通信でどのような不都合を感じ
ているかの質問に対して、
「聞き違い、聞き直し・聞き返しがある」ことが多く挙げられ、
スムーズな情報伝達ができない実態が伺われます。
ウ)救急搬送中の救急車からの映像伝送の有用性について
表3-2-3 救急搬送中の救急車からの映像伝送の有用性について
有用
1
状況により有用
6
有用でない
1
救急搬送中の救急車からの映像伝送は有用であるかどうかについて質問したところ、
「状況により有用」であるとの回答が多く挙げられました。
23
5
地域医療情報ネットワークに係る他事例の現状
現在、ITを活用した地域医療連携に広がりがある①Net4U(山形県鶴岡市)、②加古川地域保健
医療情報システム(兵庫県)、③あじさいネットワーク(長崎県)の3事例についての実態は以
下のとおりとなっています。
地域医療情報ネットワーク化を推進する上では、これらの事例などを参考にする必要があると
考えられます。
(1) Net4U(山形県鶴岡市)
① これまでの経緯及び医療情報連携の概要
社団法人鶴岡地区医師会が中心となって推進した診療連携型電子カルテシステム「Net4U」
(New e-teamwork by 4 Units:病院、診療所、介護福祉施設、検査センターの「4つのユ
ニット」が関わる、電子カルテによる地域医療機関連携・統合型医療情報システム)は、平
成10年度の郵政省(現:総務省)及び通商産業省(現:経済産業省)の「先進的情報通信シ
ステムモデル都市構築事業」で採択された国立国際医療センターと社団法人新宿区医師会の
包括的地域医療情報システム「ゆーねっと」を原型としています。
平成9年5月に医師会事務局、診療所、訪問看護ステーションを結ぶイントラネット1の
整備、同年9月にデータベース化した在宅患者情報を医師や訪問看護師が共有して24時間連
携体制を支援する「在宅患者情報共有システム」の稼動を経て、平成12年度に、電子カルテ
を中心にした地域医療情報化を進めるための、経済産業省「先進的IT活用による医療を中心
としたネットワーク化推進事業」により「Net4U」が構築されました。
その後、平成18年に訪問看護支援ツール「ハロー」が稼働し、平成19年に大腿骨頸部骨折
治療において、ITを活用した「地域連携クリティカルパス」の運用が開始されています。ま
た、平成19年4月に、鶴岡地域が厚生労働省科学研究費補助の第3次対がん総合戦略研究事
業である「緩和ケア2普及のための地域プロジェクト」に地域選定されるなど、緩和ケアの
推進と在宅ケア連携体制についても検討されています。
平成20年8月現在で、基幹病院の鶴岡市立荘内病院を含む6病院、30診療所、2訪問看護
ステーション、荘内地区健康管理センター、介護老人保健施設みずばしょう及び三つの民間
検査機関が参加しており、医療施設間で情報共有している患者数は、平成21年1月現在で
18,409人となっています。
② ネットワークシステムの機能
1
イントラネット:TCP/IPを初めとするインターネット標準の技術を用いて構築された企業等の構内ネットワークのこと
2
緩和ケア:生命を脅かす疾患に直面している患者とその家族に対して、痛み、身体的問題、心理社会的問題等について評価、
対処するなどで、クオリティー・オブ・ライフ(生活の質、生命の質)を改善することを目的としたケア
24
患者が通院しているそれぞれの医療機関間でカルテ等の診療情報を共有する仕組みを利
用し、他の医療機関で受けた検査、処方薬などを参考にした診察が行われています。受けた
検査結果を経過順にグラフや図にする機能や、他の医療機関に患者を紹介するための補助機
能も含まれています。
ア)在宅患者情報共有システム
在宅医療では、主治医の指示書で訪問看護師が患者宅を訪問し、指示書に従って医師に
報告する必要がありますが、Net4Uを使うことで、医師と訪問看護師間のコミュニケーシ
ョンが向上し、緊密な連携下での、より質の高い在宅医療が可能になっています。
イ)訪問看護介護システム
訪問看護指示書、訪問看護サマリーなどの看護情報や、サービス利用票等のケアプラン
情報もNet4Uと連携可能であり、かかりつけ医、専門医及び訪問看護師の間で情報共有す
ることが可能です。
ウ)臨床検査オンラインシステム
荘内地区健康管理センターに検体の検査依頼をして、検査結果をオンラインにて参照す
ることが可能です。
エ)医療情報の共有
医療機関間を相互につなぐことで、検査データやカルテ内容の共有、紹介等の省力化の
実現が図られています。
図3 「Net4U」の仕組み
『三原一郎氏(社団法人鶴岡地区医師会)
25
発表資料』
③ ネットワークの通信技術及びセキュリティ対策
当初の通信手段は、INS64/INS15001でのISDN2網を使用した閉じたイントラネットでの運
用でしたが、現在は、インターネットを使ったVPN3網へと移行しています。利用者及びサー
バ間の利用にはSSL4を採用する等のセキュリティ対策を講じています。
また、診療情報を共有することについて、事前に患者に説明し、同意を確認した上で、患
者の通院歴のある医療機関以外では参照できない仕組みになっています。
④ 今後の計画等について
今後、システムの改修が計画されており、現状では、Net4Uのシステムのデータ構造が非
開示で汎用性を欠いていることから、次期システムでは、データ構造を標準化するとともに、
オープンソース5として汎用性を持つシステム構築が検討されています。
また、レセプトのオンライン請求に関しては、厚生労働省「レセプトのオンライン請求に
係るセキュリティに関するガイドライン」(平成20年2月)に準拠した、日本医師会ORCAプ
ロジェクト6が推奨するオルカVPNサービスの利用について検討されています。
(2) 加古川地域保健医療情報システム(兵庫県)
① これまでの経緯及び医療情報連携の概要
加古川市、稲美町、播磨町からなる加古川地域は、兵庫県の西南部中央に位置しており、
平成20年5月現在で人口333,942人、世帯数122,605世帯の規模の地域です。加古川市、稲美
町、播磨町の行政と加古川市加古郡医師会の共同出資により昭和55年10月に財団法人加古川
総合保健センターが設立され、当財団において、昭和60年から検査及び健康診断に係る60
万件のデータがコンピュータに蓄積されていました。
その後、昭和63年に「地域保健医療情報システム協議会」が設置され、システムの設計を
協議し、実証試験などを経た後、
「加古川地域保健医療情報システム」として平成6年に供
用を開始しています。
平成20年10月現在の参加医療機関は病院、診療所、検査センターなど123施設であり、平
成21年2月現在のシステム登録患者数は75,636人、ICカード発行枚数は47,489枚となってい
ます。
② ネットワークシステムの機能
昭和60年から集積されている検査及び健康診断のデータベースを基に運用しているオン
1
INS64/INS1500:総合デジタル通信網サービス提供の商品名
2
ISDN:電話やFAX、データ通信を統合して扱う総合サービスデジタル網
3
VPN:インターネットなど公共のネットワークを利用して、専用線のような環境を実現した仮想閉域ネットワーク
4
SSL:インターネット上で情報を暗号化して送受信するプロトコル
5
オープンソース(ソフトウェア)
:ソースコードが無償で公開され、改良や再配布を行えるソフトウェア
6
ORCAプロジェクト:日本医師会の研究事業プロジェクト
26
ラインシステムと、可搬記録媒体としてICカードを用いたオフラインシステムを併用してい
る点が、加古川地域保健医療情報システムの特徴です。
検査・健診オンラインシステムにより、①各医療施設に対する検査データの自動配信②検
査及び健康診断のデータベースの照会③地域住民の健診受診状況の詳細把握が可能となっ
ています。
また、ICカードにより、診療記録や検査・健康診断結果などの記録を個人が保持できるた
め、適切な保健指導や病診連携などを効率的に進めることが可能です。
ア)検査・健診オンラインシステム(平成6年度供用開始)
検査及び健康診断のデータベースに蓄積されたデータの照会を行うシステムです。デー
タ加工は、医療施設側の端末で行います。
イ)ICカードシステム(平成6年度供用開始)
患者個人の基本データや診療データをカードに記録し、保持・管理することが可能なシ
ステムです。平成18年度からICカードであるKINDカードでの運用を始めており、安全性が
向上しています。
ウ)診療所支援システム(平成6年度供用開始)
ネットワーク接続により、診療所の端末から、その他の医療施設に分散している個人の
病歴や検査歴等の保健医療データを時系列的に参照することが可能です。
エ)画像情報システム(地域PACS平成10年度供用開始)
地域PACS1により、各医療施設で撮影されたデジタル検査画像を地域内で共有・参照す
ることが可能です。
オ)健康増進システム(平成10年度供用開始)
軽度の循環器系疾病を持つ患者への運動療法と食事指導、生活習慣病の対象者への運動
療法や運動指導のための文書作成機能を有しています。
1
PACS:CT、MRI等の画像撮影装置で撮影した画像データを保管、参照、管理することを目的とした医療用画像管理システム
27
図4
「加古川地域保健医療情報システム」の仕組み
『加古川地域保健医療情報システム-ご案内-』
③ ネットワークの通信技術及びセキュリティ対策
システムの運用が始まった当初は、ネットワーク基盤はINS64を採用していましたが、現
在は、トラフィック1増や運用コスト削減のため、インターネット網を使ったNTTPCコミュニ
ケーションズのサービスである「IP-Members」を採用しています。
加古川地域保健医療情報システムで運用されているKINDカードは、患者の個人認証機能を
備えるほか、個人の保健医療の情報を記録することが可能なカード式カルテとしての機能も
有しています。KINDカードには保有者の保健医療情報が記録されており、各医療施設におい
て提示することで病気の治療・指導に活用することが可能です。
KINDカードは、ICチップに秘密鍵2、接続先のPKI3証明書及びアクセス制御リストを格納し
ているため、鍵の管理や接続設定が容易であり、ネットワーク接続にはオンデマンドVPN4の
認証技術を用いています。加古川地域保健医療情報システムに加入を希望する患者は、
「地
域保健医療情報システム同意書」をシステム参加医療施設に提出します。同意書については、
KINDカードの申込みも兼ねています。
④ 今後の計画等について
1
トラフィック:一定時間に特定のネットワーク上を移動する、音声、文書及び画像などのデジタルデータの量
2
秘密鍵:暗号技術の一つである公開鍵暗号方式で使う、本人だけが持つ鍵
3
PKI:公開鍵暗号方式を使って、暗号化通信やユーザー認証などを行うための仕組み
4
オンデマンドVPN:IP-Membersにおいて提供される、セッション単位に通信相手とPKIを用いて機器や機器の所有機関を相互
認証するVPNサービス
28
厚生労働省「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」において、
診療報酬の請求方法として認められている保健医療の公開鍵基盤を実装した商用サービス
の「IP-Members」を採用し、IPsec-VPN1によるインターネット網を使ったレセプトのオンラ
イン請求システムへの対応も行われています。
(3) あじさいネットワーク(長崎県)
① これまでの経緯及び医療情報連携の概要
長崎県における地域医療情報連携は、平成12年に社団法人大村医師会が設置した「医療情
報システム委員会」におけるIT化に向けた検討から始まっており、平成15年5月に、長崎医
療センター(現:国立病院機構長崎医療センター)、大村市立病院(現:市立大村市民病院)
、
長崎県離島医療圏組合、社団法人大村市医師会、社団法人諫早医師会が参加する「地域医療
IT化検討委員会」が設立されて動きが活発化しました。
その後、平成16年10月に「長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会」が設立され、
平成17年10月における同協議会の特定非営利活動法人の認可と同時に、「長崎地域医療連携
ネットワークシステム」
(通称:あじさいネットワーク)の運用が開始され、現在、国立病
院機構長崎医療センター、市立大村市民病院における医療情報を、その他の医療機関におい
て参照することが可能となっています。
平成21年3月現在で、参加施設数は73施設(うち基幹病院数は5施設)、登録患者数は7,141
人となっています。
② ネットワークシステムの機能
病院の画像、検査データなどの医療情報を診療所で参照することが可能で、インターネッ
トVPNを用いた比較的安価なネットワークです。
あじさいネットワークで参照可能な医療情報は、市立大村市民病院の検査画像と国立病院
機構長崎医療センターの画像を含む検査データ、処方、処置を含む診療録データとなってい
ます。インターネット網を経由して、市立大村市民病院の画像サーバ、国立病院機構長崎医
療センターの公開用サーバへ接続する仕組みとなっています。
診療所側はインターネットに接続できるパソコンを用意することで、複数の基幹病院の診
療情報、検査情報や画像データを参照することが可能となります。
1
IPsec-VPN:IPによる通信を暗号化するためのプロトコル群で、IPプロトコルのレベルでデータを暗号化
29
図5
「あじさいネットワーク」の仕組み
③ ネットワークの通信技術及びセキュリティ対策
インターネット網を使ったIPSec-VPNによる暗号化通信網を採用しています。厚生労働省
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を踏まえた安全なネットワークを構
築するために、株式会社エスイーシーのサービスである「ID-LINK」を採用しています。
ID-LINKにおいては、PKI証明書要求(PKCS7及びPKCS101)によるIPSec-VPNによる拠点間の
データ暗号化とファイアウォール機能を用いており、センター側の機器によるウイルス定義
ファイルの管理、更新を行うことが可能です。
患者同意については、患者から「あじさいネット説明同意書」の提出を受け、
「かかりつ
け医」が、情報連携する基幹病院にFAXすることにより、基幹病院側で対象患者の医療情報
の参照を許可する仕組みとなっています。
④ 今後の計画等について
これまでの大村市を中心とする医療連携に加え、平成21年度から長崎市医師会が参加する
などネットワークが拡大しています。また、ネットワークに参加している医療機関のレセプ
トオンライン請求への対応手法についても現在検討されています。
1
PKCS7及びPKCS10:公開鍵の認証を要求するために認証局へ送信されるメッセージのフォーマット
30
表4
地域医療情報ネットワークに係る他事例の現状について
県外の事例
県内の事例
項 目
Net4U 鶴岡地区医師会
加古川地域保健医療情報システム
あじさいネットワーク
NPO法人長崎地域医療連携ネットワークシステ
ム協議会
・加古川市・稲美町・播磨町
・国立病院機構長崎医療センター
社団法人鶴岡地区医師会
・加古川市加古郡医師会
・市立大村市民病院
・社団法人大村市医師会・社団法人諫早医師
会・長崎県離島医療圏組合
「医療情報共有・コミュニケーションツール」の提 検査・健診データの集積・参照、個人へ保健医 地域における医療機関間での診療情報等の共
供
療情報の提供
有化
○各医療機関における患者診療情報の共有
○検体検査システムからデータ取得し、患者カ ○平成17年10月より長崎医療センターの診療
ルテと連携して参照
情報を診療所側より参照可能
○検体検査システムからデータ取得し、患者カ ○各種住民健診時データと医療機関に掛かっ ○平成18年12月からは 市立大村市民病院の
ルテと連携して参照
た時の検査データを個人ごとに一元管理
診療情報の一部が参照可能
財団法人加古川総合保健医療センター
構築・運営母体
事業概要
連携項目
○訪問看護システムとの連携
・訪問看護指示書、計画書・報告書、
・訪問看護サマリーの参照
○検査予約システム
○地域連携クリティカルパス
○健診画像の蓄積管理
稼働年
平成13年度
昭和63年度
平成16年度
連携ネットワーク
インターネットVPN
オンデマンドVPN
ICカード(検査結果を患者に提供)
インターネットVPN
同意確認方法
同意書の確認
同意書の提出
同意書の提出
システム構築費
203百万円
3百万円(平成17年)
※人件費除く
運営費/年
補助(国・自治体)
医療機関の参加費
維持費負担金
参加施設数
登録患者数
HPKIへの取組み
特記事項
2400百万円(平成16年まで累計)
120百万円(平成16年)
1百万円(平成18年)
※人件費含む
【参加医療機関からの負担金】
【 (財)加古川総合保健医療センターで実施す
【鶴岡地区医師会で実施する健康診断事業等】
る健康診断事業等】
経産省(平成12年)
加古川市・稲美町・播磨町(財団へ出資)
なし
入会時:診療情報暗号化システム料(66,000
無償
無償
円)、年間維持費(27,000円)/年
病院、診療所、訪看、介護施設、
検査センターなど38施設(平成21年1月)
18,409人(平成21年1月)
病院、診療所、検査センターなど123医療機関
(平成19年)
75,708人(平成21年3月)
厚労省版PKI準拠
オンラインレセプト請求へ対応
31
病院、診療所 73施設(平成21年3月)
7,141人(平成21年3月)
平成21年度から社団法人長崎市医師会が参加
6
現状及び動向の考察と地域医療情報ネットワークの方向性
(1) 現状及び動向の考察
① 医療需要、提供体制の現状
少子高齢化が一層進行する中で、県内の全人口における65歳以上の高齢者が占める割合は、
平成17年の25.5%に対し、平成47年には36.3%まで高まることが推測されています。このよ
うな社会の年齢構造の大きな変化は、医療需要の質にも影響を及ぼすことが想定されます。
高齢者は受療率が高く、複数の医療機関にかかっている割合が多く、複数の医療機関を受
療する高齢者の増加は、医療サービスの総量確保に加え、医療機関が連携して医療サービス
を提供する必要性が高まることを示唆しているものと考えられます。
これら医療需要の現状に対し、本県における医療従事者の数については、医師数、薬剤師
数ともに、合計で人口10万人当たりの全国平均を下回っている状況です。医師数については、
村山地域においては全国平均を上回っているものの、村山以外の地域においては全国平均を
下回っています。このような状況の下、従来の単独の医療機関を中心とした医療提供体制で
は、社会の年齢構造の大きな変化に十分対応することが困難になるおそれがあります。
これらの課題を解決するためには、医師確保及び定着化の促進、医師の地域偏在等の是正
を図るとともに、医療従事者が効率的に診療するための仕組みの構築が求められます。
なお、患者の通院圏域が主に二次保健医療圏内で完結していることから、医療連携の範囲
は二次保健医療圏が中心となり、圏域外との連携のケースは、専門性の高い基幹病院等との
緊急連絡などに限られるものと考えられます。
② 医療の情報化に関する施策動向及び技術動向
現在、国をはじめとする各関係機関においては、
「IT新改革戦略」(平成18年1月)及び「医
療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン」(平成19年3月)等に基づき、医療
情報を効率的に活用するための標準化等、各種施策を進めています。本県においても、これ
らの動向を受けて、将来の県地域医療情報ネットワークの構築を一つの目的に、平成20年10
月に「医療情報システムの導入に関する指針」を策定しており、地域医療情報ネットワーク
化を推進する上では、標準化などに関する国等の動向に常に留意するとともに、当該指針を
十分踏まえる必要があります。
③ 医療情報活用のニーズ、活用の実態
今回の調査の中で、県民・患者は、カルテ及び診療情報の開示や活用については総じて肯
定的である点が確認され、地域医療に対しては「救急医療」
、「小児・産科医療」、
「在宅医療」
の充実に対して期待を抱いている割合が高い結果となりました。今後、地域医療連携を進め
る上では、これらの点に配慮する必要があります。
32
一方、医療を提供する側においては、地域連携クリティカルパス、在宅医療支援など、医
療施設の連携により、効率的に医療の提供を図りたいと考えている医療従事者、その手段の
一つとしてITを活用することについても有効であると考えている医療従事者が多いことが
確認されました。
また、現在、医療施設等におけるIT化は進展しつつありますが、ITを地域医療連携に活用
している割合はまだ少ない状況です。救急搬送時において、消防本部では携帯電話等を中心
とした音声情報伝達が中心であり、調査した範囲では、ITを活用している事例は見当たりま
せんでした。これらは、医療従事者等が、地域医療連携におけるIT活用については有効であ
ると認識しているものの、情報化投資に係る負担、情報管理のセキュリティ、医療従事者の
業務内容の変化等を懸念している事にも起因しているものと考えられます。
地域医療情報ネットワーク化を推進するに当たっては、県民・患者及び医療従事者のより
強いニーズに対応する必要があるとともに、医療従事者等の懸念事項についても十分考慮す
る必要があります。
④ 地域医療情報ネットワークに係る他事例の現状
他事例においては、基幹病院等を中心としつつ、その他の医療機関、薬局、福祉機関、医
師会、市町村などの行政機関等が一体となった運営体制を構築し、この運営体制の下で、収
益事業の展開等により財源を賄っている点が共通しています。また、最低限必要なシステム
の機能及び二次保健医療圏等の限られたエリアから医療情報連携を始めて、段階的に機能及
びエリアを拡大し、運営費用等を過大なものとしないよう留意している点も共通しています。
本県においても、各地域の実情を踏まえた二次保健医療圏単位等での地域医療情報ネットワ
ークの構築を図り、持続可能性の観点を踏まえて段階的に進める必要があると考えられます。
また、地域医療情報ネットワークの運用に当たっては、他事例の状況を参考に、ネットワ
ークへの参加についての県民・患者から同意を得る手法を検討する必要があるとともに、ネ
ットワークセキュリティについては、その医療情報連携の内容、セキュリティに要する費用
を相互に比較した上で、最適な対策を講じる必要があります。
(2) 二次保健医療圏ごとの地域医療情報ネットワークの構築
① 今後の方向性
現在、社会の年齢構造は、少子高齢化が進んでおり、今後も一層進展することが予測され
ています。その結果、高齢者の人口比率が高まるなど、社会的要因に基づく二次保健医療圏
単位での地域医療連携の必要性が高まっています。
実際に、地域医療連携を行う上では、医療従事者が効率的に連携するための仕組みを構築
する必要があります。現在、厚生労働省をはじめ関係する各機関においては、ITを活用した
33
地域医療連携を実現するために必要な技術的要件を随時定めており「地域医療情報ネットワ
ーク」の可能性が広がっています。
一方、県民・患者は、継続的な医療提供体制、質の高い医療を効率的に提供する体制を求
めており、それらのために医療情報を活用することについて、全体としては、県民・患者の
一定の理解は得られています。また、多くの医療従事者は、効率的に医療を提供するために、
ITを活用した地域医療連携も有効であると考えています。医療の現場においては、地域医療
情報ネットワークに対する理解や期待が高まっています。
以上のとおり、ITを活用した地域医療連携の必要性や期待は高まっており、実現の可能性
は広がっています。
「山形県地域医療情報化に係るグランドデザイン」で示す将来像の達成
に向けて「地域医療情報ネットワーク」を構築し、
「安心・信頼できる医療」、
「効率的な医
療」
、「質の高い医療」を実現する必要があります。
② 地域医療情報ネットワークの構築
「救急医療」
、「小児・産科医療」
、「在宅医療」の充実に対して期待を抱いている県民・患
者の割合が高く、地域医療情報ネットワーク化を推進するに当たっても、これらの点に配慮
する必要があります。また、ITを活用した地域医療連携を行うに当たって、医療従事者は、
その整備、運用のためのコストの課題、患者情報の取扱いに対するセキュリティの課題など
を強く懸念しています。
これらの課題を解決し、地域医療情報ネットワークを実現するためには、既にネットワー
クを進めている他事例の現状を十分踏まえる必要があります。各事例における事業手法を参
考に「①利用者視点、②医療安全の視点、③持続可能性の視点、④全体最適の視点」に基づ
き、まずは、二次保健医療圏単位の地域医療情報ネットワークの構築を図る必要があります。
図6 地域医療情報ネットワークの方向性
医療を取り巻く現状及び動向
施策動向及び技術動向
• 医療分野における情報技術の
標準化の進展
• セキュリティ技術等の進展
医療分野における情報技術の
活用可能性が広がっている
医療情報活用のニーズ、活用の実態
(県民・患者)
• 診療情報活用への理解の高まり
• カルテ内容に対する関心の高さ
• 救急医療、小児・産科医療、在宅
医療等に対する期待
(医療従事者)
• 情報共有の必要性の高まり
• 不十分なIT活用の実態
医療現場における「医療情報
連携」への期待が高まっている
• 実現すべき機能を抽出
• コスト・セキュリティ等課題を抽出
他事例の現状
•
•
•
•
持続可能な確立された運営基盤
情報連携における患者の同意
システムの段階的な機能拡張
ネットワークエリアの段階的拡大
地域医療情報ネットワークの構築
社会的要因により地域医療連
携の必要性が高まっている
地域医療情報ネットワークの方向性
必要性・
期待の高まり、実現可能性の広がり
医療需要、提供体制
• 高齢者の増加
• 医療提供体制の偏在
現状及び動向の考察
• 機能整備の手順を整理
• 課題解決の手法を整理
34
①利用者視点
②医療安全
③持続可能性
④全体最適
地域医療連携がもたらす
医療の「将来のすがた」
安心・信頼
効率的
質の高い
地域医療情報ネットワーク
複数の
医療機関間連携
(二次保健医療圏)
広域の
医療機関間連携
段階的な機能整備
第2章
山形県における地域医療情報ネットワーク
第2章
1
山形県における地域医療情報ネットワーク
地域医療の将来像
(1) 地域医療の今後のあり方
地域医療の今後のあり方を考える上では、医療需要の現状と今後の見込み及び医療需要に対
応するための医療提供体制の現状並びに県民・患者がより強く求めているニーズを正しく踏ま
える必要があります。
現代の多様化する医療ニーズに対し、医療提供体制の現状は、病院、診療所等の直接的に医
療を提供する医療機関を中心として、調剤薬局、訪問看護ステーション、介護福祉施設などが
多数関わっています。
現在、県民・患者の中で、
「かかりつけ医」、
「かかりつけ薬局」等の浸透はある程度みられ
ますが、
「安心・信頼できる医療」、
「効率的な医療」、
「質の高い医療」を県民・患者一人ひと
りに対し、等しく提供するためには、限られた医療資源の下、これら単独の医療施設のみでの
医療提供には限界があります。
これらのことを踏まえると、限られた医療資源を効率的に活用するために、地域内の医療施
設が連携して県民・患者一人ひとりの診療に携わる、地域内における医療提供体制の構築を推
進する必要があります。
35
(2) 地域医療の提供体制と課題
図7-1 現在の地域医療提供体制のイメージ
診療所
行政
病院
住民・患者自身が各施設を利用し、
それぞれから独立したサービスを受けている
住民
健診
薬局
・
センター
患者
場合によっては、各施設から重複した
サービスを受けている
消防・
訪問看護
救急
介護福祉
① 現在の一般的な地域医療
現在は、一部の例を除いて一般的には、地域で一体となった医療サービスが効率的に提供
されていません。そのため、個人は自らの健康状態に応じて、それぞれの医療施設を個別に
利用することになります。
② 現在の一般的な地域医療の課題
医療施設を個別に利用している状況においては、下記のような課題があります。現在の各
医療施設における個々のサービス提供を中心とした手法では、多様化する患者ニーズに十分
対応することは困難です。
ア)利用するそれぞれの医療施設において、待ち時間や一からの病状説明が生じるなど、患
者の負担が大きい。
イ)重複検査や薬の重複投与などにより、県民・患者の身体的負担や医療費負担が過剰にな
る場合がある。
ウ)不十分な併用禁忌1チェック、病名と薬のミスマッチなどが生じるおそれがある。
エ)他の医療施設における病状と、患者の現在の病状とを比較するのに技術的制約があり、
主に患者の訴えと現在の検査結果で診察・診断を行うことになるため、効果的に医療を提
供できない場合がある。
1
併用禁忌:併用した場合、作用の減弱、副作用の増強など体に悪い影響が出る薬剤投与
36
(3) 地域医療情報ネットワーク化の推進
図7-2 山形県における将来の地域医療提供体制のイメージ
診療所
行政
病院
住民・患者自身が各施設を利用し、
それぞれから独立したサービスを受けている
住民
健診
薬局
・
センター
患者
診療所
場合によっては、各施設から重複した
サービスを受けている
消防・
訪問看護
救急
行政
病院
介護福祉
県民
・
患者
健診
センター
消防・
救急
薬局
訪問看護
介護福祉
① 地域の医療施設が連携する医療提供
本県においても、一部の例を除き、地域で一体となった医療サービスが提供されている状
況ではありませんが、地域の医療施設が連携することで、県民・患者を中心とした「地域医
療連携の環」が形成され、一貫性のある切れ目のない医療サービスの提供が可能となります。
これらの結果、県民・患者のさまざまな負担の軽減が図られるとともに、県民・患者一人
ひとりに対する医療の質の向上、医療の安全性の確保が図られます。
② 地域医療情報ネットワークの構築
地域医療連携は人的ネットワークを基本とし、医療機関間の情報伝達を確実かつ迅速に行
う必要があります。しかし、医療情報には多種多様なものがあり、県民・患者一人ひとりに
適切な医療を提供するための医療機関間の情報伝達として、従来の電話、FAX等を中心にし
た手法には限界があるとともに、検査情報、画像情報等に関して紙やフィルムを用いた手法
では、迅速に行うことは困難で情報連携の範囲も限られてきます。
他方、病院、診療所を中心として、医療施設における医療情報の電子化が近年進展してい
る中で、一部の地域においては、地域医療連携を行う手段としてITを活用している事例も見
受けられます。これらの地域では、医療施設における患者の医療情報を有効活用することで、
県民・患者を中心とした「地域医療連携の環」がより太く、強固なものになっています。
しかしながら、全県的な状況としては、ITが導入された医療機関であっても、それらの情
報が地域医療連携に十分活用されていない実態があり、それぞれの医療機関においては、医
療情報が蓄積されているものの、地域全体でそれらの情報が有効に活用されておらず、県
37
民・患者のさまざまな負担軽減に還元されていない状況です。
技術的な課題、セキュリティ上の課題、運用上の課題等が多かったことから、現在のとこ
ろ医療施設を結ぶ「地域医療情報ネットワーク」が形成されている状況にはありませんが、
国をはじめとする各関係団体における医療情報標準化の動き、セキュリティ技術の普及など
により、ITを活用した地域医療連携のための基本的環境は整いつつあります。
これらの状況を踏まえ、本県においても、医療を効率的に提供するための基盤である「地
域医療情報ネットワーク」の構築に向け、運用面にも十分配慮しつつ、さまざまな取組みを
推進します。
38
2
地域医療情報ネットワークにより達成される将来像と求められる機能
地域医療情報ネットワークにより達成される図7-2の「山形県における将来の地域医療提供体
制のイメージ」を、具体的な将来像に結びつけるためには、より詳細な場面を想定し、地域医療
情報ネットワークに求められる機能要件を整理する必要があります。
ただし、地域医療情報ネットワーク化については、
「①県民の目線で、②安全のもとに、③持
続可能なサービスを、④さまざまな角度から総合的に提供する」視点に立ったうえで、県民の理
解、実際に医療連携に携わる医療従事者等の理解を深めながら進める必要があります。また一方
では、まだ制度的、技術的な課題も数多く、機能のすべてが即座に実現できるものではありませ
ん。
そのため、「山形県地域医療情報化に係るグランドデザイン」においては、「ITを活用した地域
医療連携の将来像」を段階的に実現していくことを想定し、3つのフェーズに分けてそれぞれの
段階で実現できる将来像を整理しています。
ここでは、3つのフェーズのうち、医療情報連携に関わる「複数の医療機関間における情報の
連携により実現可能なすがた」、「広域で多数の医療機関間における情報の連携により実現可能
なすがた」を達成する上で、地域医療情報ネットワークに求められる機能要件を示すとともに、
それらの要件に基づいて具体的な機能を整理します。
「山形県地域医療情報化に係るグランドデザイン」(平成20年8月)
本県の地域医療において、ITの活用により、実現される医療サービスの将来像を取りまとめたもの。
http://www.pref.yamagata.jp/ou/kenkofukushi/090001/gd.html
(1) 複数の医療機関間における情報の連携
① 安心・信頼できる医療の実現
他の医療機関等で受診した際のアレルギー情報や病歴等の情報を共有・参照すること
で、患者の訴えから漏れた情報についても把握が可能となり、安全性が向上する。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
b 機能要件の詳細
アレルギー、病歴等の患者情報については、医療機関において診察、治療を確実かつ
安全に行う上では非常に重要な情報です。
医療機関等にかかった場合、これらの情報は、患者の基本情報としてそれぞれの医療
機関において確認され、医療情報システム等に蓄積されますが、それらが医療機関間で
等しく共有・参照されることで、情報の精度が高まり、医療の安全性の向上につながり
ます。
39
図8-1 医療情報の共有・参照機能のイメージ
他の医療機関等にて処方された薬、検査内容を迅速に把握することにより、重複投与
や併用禁忌、重複検査(画像診断を含む)を未然に防ぐことができる。また、災害等の
緊急時において投薬状況の把握が容易になり、継続した投薬が可能となる。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
・
医療施設間の処方チェック
b 機能要件の詳細
患者は、複数の傷病を同時に受療している場合があります。
「かかりつけ医」が、患
者の診療を包括的に行っている場合もありますが、専門性、地域的事情等により、必ず
しも同一の医療機関のみで受療しているとは限りません。また、疾病によっては、症状
が異なるなどにより、複数の医療機関で受療している場合もあります。このように、患
者が複数の医療機関を受療している場合は、重複投与や、併用禁忌等の確認が不十分と
なるおそれや、同じ検査を繰り返すことで、患者の信頼を損ねるおそれもあります。
これらの機能により、処方、検査を安全かつ効率的に提供することが可能になるとと
もに、災害等の緊急時においても医療情報を活用した適切な治療が可能となります。
レントゲン画像情報等の連携・共有により、大学などの中核病院との間で画像診断(読
影)や病理診断が可能となることから、専門医が不在または不足する地域にあっても、専
門的な医療を受けることができるようになる。また、セカンドオピニオンについても診療
情報の共有、参照によって遠隔地からでも可能となる。
40
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
・
遠隔診断の支援
・
医療情報の提供
b 機能要件の詳細
画像診断及び病理検査については、専門的で高度な判断を要する場合も多くみられま
す。
現在、本県においては地域ごとに医療提供体制に偏在がみられ、特定の地域において
は、近くの医療機関に専門の医師が不在であることなどから、適切な画像診断、病理診
断を受けにくい状況となっています。
これらの機能により、各地域の医療機関において撮影した画像、採取した病理検体を
元に、大学などの基幹病院の専門医が画像診断(読影)、病理診断を行い、各地域にお
いて安全な医療が提供されます。
また、特に画像診断を行うためには、医療機関において多額の施設、設備投資をしな
ければならず、すべての医療機関において画像検査のための高度な医療機器を設置する
ことは困難です。そのため、基幹病院等における画像情報などを、その他の医療機関で
参照することにより、各地域の医療機関においても診療精度の向上が期待できます。
さらに、これら画像、検査内容等の医療情報について、県民・患者に提供を行うこと
で、県民・患者は、直接診察している医師以外の専門的な知識を持った第三者に意見を
求める「セカンドオピニオン」も容易に行えるようになります。
図8-2 遠隔診断の支援機能のイメージ
41
出産施設・設備を持たない診療所にて出産前の定期健診を行い、病院にて出産を行う
際に、診療所での健診データが利用可能となり、病院での出産に関する安全性が向上す
る。また出産後も、出産時の記録を診療所にて参照することにより、より効果的なフォ
ローが診療所において可能となる。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
・
遠隔診断の支援
b 機能要件の詳細
現在、本県における産婦人科・産科医師については、人口10万人当たりの医師数では
全国平均を上回っているものの、村山地域に産婦人科・産科医師の半数以上が集中して
いる状況で、産婦人科・産科医師が少ない地域においては、より効率的に医療を提供す
ることが求められます。
これらの機能により、妊婦の健診データの情報共有・参照を行うことが可能となり、
出産施設・設備を持たない診療所で出産前の定期健診を行うなどの機能分担が図られま
す。その結果、特定の医療機関における過剰な診療の集中が抑制され、安全な医療につ
ながります。
施設内に検査施設を持たない場合においても、検査センターとの情報連携を行うこと
で、データの時系列表示や結果のグラフ化等について分りやすい説明を受けることがで
きる。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
b 機能要件の詳細
医療機関においては、医療機関で直接検査を行う場合と、特定の検査項目について外
部の検査センター等に検査依頼を行う場合があり、医療機関及び検査センター内の検査
データを一元的に管理するのは困難な状況です。
この機能により、医療機関と検査センターの検査結果をグラフ化するなど一覧表示す
ることが可能となり、医療機関においては、県民・患者に対し、より丁寧で分かりやす
い医療を提供できるようになることから、安心・信頼できる医療につながります。
調剤薬局と調剤情報(疑義照会や後発医薬品への変更した情報)を共有することによ
り、医師が処方した薬歴と、実際に患者が処方されている薬歴の“ズレ”を解消するこ
とが可能となり、処方に関する安全性が向上する。
a 求められる機能要件
42
・
医療情報の共有・参照
・
医療従事者間の情報伝達
・
医療施設間の処方チェック
b 機能要件の詳細
近年、医療機関が処方せんを発行し、患者が医療機関外の調剤薬局に持参する院外処
方の割合が高まっています。医療機関内における院内処方に限れば、院内の医療情報シ
ステム等により処方チェックは可能ですが、院外処方の場合、統一的なシステムによる
一元的管理が行われないため、処方チェックについては困難な状況です。
現状では、処方に明らかな疑義がある場合や、調剤薬局で「お薬手帳」等により他の
医療機関における処方をチェックし、処方内容に問題が考えられる場合などは、調剤薬
局から処方せんを発行した医療機関に対して電話などで照会する必要があり、時間がか
かるケースがあります。また、後発医薬品(ジェネリック)への変更がある場合などは、
FAX等による報告で対応しており、それらの情報が、医療機関側の医療情報システムに
取り込まれず次回の診療時に反映されないケースもあります。
これらの機能により、医療機関と調剤薬局において調剤情報を共有し、処方、薬歴に
ついて一貫性を持って、効率的に管理することが可能になり、医療の安全性の向上につ
ながります。
② 効率的な医療の実現
医療文書の転送により、紹介状等の受け渡し業務が効率化されることにより迅速で確
実な患者紹介を実現できる。また紹介された患者が来院する前段階から情報収集ができ
るため、診療業務の効率化も可能となる。
a 求められる機能要件
・
紹介状等の作成支援
・
医療情報の共有・参照
b 機能要件の詳細
医療機関間において紹介・逆紹介を行う場合、紹介状の作成等については、少なから
ず医師の作業負担が生じているとともに、紹介先に送付する検査データ、画像フィルム
等が不十分な場合や、逆に多すぎて重要情報が分かりにくくなるなど効率的に行えない
場合があります。
紹介状の作成を支援する機能により、医師の作業の効率化、診断における確実性の向
上が図られ、医療情報の共有・参照機能により、医療機関間での効率的な情報交換が可
能になり、併せて画像フィルム等を患者が運搬する労力等の省力化につながります。
43
他の医療機関等における投薬や検査の状況まで把握することができるため、重複投与、
重複検査を防ぐことにより、県民の医療費負担軽減にも寄与する。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
b 機能要件の詳細
患者は、複数の医療機関において受療している場合があり、現状では、それら医療機
関間の情報連携が十分ではないことから、処方薬、検査内容が重複する場合があります。
この機能により、処方及び検査を効率的かつ安全に提供することが可能になり、加え
て県民・患者の医療費負担の軽減も図られます。
③ 質の高い医療の実現
地域連携クリティカルパスを運用する上で、医療機関等との間での切れ目のない医療
提供が可能となることに加え、効果の解析が容易になることから、パスの高度化に寄与
する。
a 求められる機能要件
・
地域連携クリティカルパスの支援
・
医療従事者間の情報伝達
・
臨床データの集積
b 機能要件の詳細
現在、地域連携クリティカルパスについては、疾病ごとに複数の関連する医療施設が
連携協力して作成されている状況にあり、パス作成に当たって医療施設間の調整等に多
大な労力を要するなど、医療従事者の大きな負担になっています。
また、二次保健医療圏の中において、医療施設の幅広い調整等が困難であるとの理由
などから、身近な医療施設間におけるパス作成が優先され、結果的に、同じ疾病、同じ
地域であっても複数のパスが運用されるなど、非効率的な実態が認められます。
さらに、地域連携クリティカルパスの精度を高める上では、パスにおける治療の過程
で発生した計画との差異(バリアンス)を分析する必要がありますが、それらデータを
集計するための手法は、連携する医療施設間であっても必ずしも統一されている状況で
はありません。
これらの機能により、二次保健医療圏ごと、疾病ごとの地域連携クリティカルパス作
成の効率化が図られるとともに、統一的パスの運用が可能となれば、パスのバリアンス
分析の精度が高まり、将来的にはパスの改善も含めた医療の質の向上につながります。
44
ヒヤリ・ハット、未遂事故(インシデント)、医療事故(アクシデント)等の情報の分
析・共有を行うことで、各医療機関における医療安全対策の立案・実施を効率的に行う
ことができる。
a 求められる機能要件
・
臨床データの集積
・
ヒヤリ・ハット事例の共有
b 機能要件の詳細
ヒヤリ・ハット1、未遂事故(インシデント)
、医療事故(アクシデント)等について
は、起こらないための運用上の手立てを講じることは当然ですが、それらを講じたとし
ても、どの医療機関においても、起こりうる可能性が全くない訳ではありません。
これらの機能を通じて、関連事例についての情報を広く共有し情報交換することで、
各医療機関における効果的な医療安全対策の立案・実施が可能となります。
(2) 広域で多数の医療機関間における情報の連携
① 安心・信頼できる医療の実現
救急搬送時において、患者基本情報(血液型やアレルギー、既往歴、薬歴)をかかり
つけ医等から迅速に情報を収集することができるため、適切な初期医療を受けることが
可能となる。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
b 機能要件の詳細
患者の基本情報及び診療情報を確認できない場合、救急搬送先においては迅速かつ適
切な対応に支障を来たす場合も想定されます。
救急患者個人が特定されることが前提ですが、救急搬送先において、患者情報をいち
早く確認することができれば、適切な初期医療を実施することが可能となり、救急医療
における安全性の向上が図られます。
なお、傷病者の状況によっては、二次保健医療圏を越えた対応が必要な場合があるた
め、広域的な情報共有・参照機能が求められます。
救急搬送時に患者の生体情報(心電図情報やバイタル情報)の転送を行うことで、か
かりつけ医又は中核病院の医師から救急救命士等の救急隊に対し、適切な初期医療の指
示をすることが可能となることから、受け入れ際の迅速な対応が可能となるため、救命
1
ヒヤリ・ハット:重大な医療事故には至らないものの、事故を誘発する一歩手前の所作
45
率が向上する。
a 求められる機能要件
・
救急情報の転送
b 機能要件の詳細
現在、消防署においては、救急搬送時に患者の生体情報(心電図情報やバイタル情報)
を医療機関に伝える際には、携帯電話など「音声のみ」で行っている例が多く、
「聞き
違い、聞き直し・聞き返し」などの不都合が生じている場合があります。この場合、十
分な病院前救護ができず、救急搬送先における患者の医療処置にも影響を及ぼすおそれ
があります。
救急情報の転送機能により、患者の生体情報を、搬送先の医療機関に正確に伝えられ
るようになり、医師の的確な指示の下で、迅速な救急処置が可能になります。
幼児期からの健康診断記録、予防接種記録、検診記録等自身の健康に関する情報を蓄
積することで、より適切な初期医療を受けることが可能となる。また、患者自身が自身
の健康管理に役立てることができる。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
・
医療情報の提供
b 機能要件の詳細
現在、個人の健康に関わる各種情報は、乳幼児期等における母子健康手帳の各種健診
データに始まり、予防接種、定期健康診断など、それぞれの医療施設において管理され
ています。
これらの機能により、個人の健康に関わる各種情報が関連性を持って各医療施設から
横断的に提供され、県民・患者が、自ら健康管理を行うことも可能になり、安心・信頼
できる医療につながります。
この場合、自分の医療情報を安全に、かつ容易に県民・患者が取得し活用するために
は、ICカード等を用いた「個人認証」等の仕組みが必要です。
なお、健康管理については疾病等の有無に関わらず、すべての県民について当てはま
り、さまざまな施設が関わる情報共有・参照機能が求められます。
46
図8-3 医療情報の提供機能のイメージ
② 効率的な医療の実現
保険医療機関や福祉機関等で行われた保健・医療・福祉サービスの記録を施設間で共
有・参照することにより、より多くの情報を活用することができるようになり、より効
率的で質の高い医療の提供が可能となる。
a 求められる機能要件
・
医療情報の共有・参照
b 機能要件の詳細
現代は高齢化が進展している状況にあり、将来的に、医療機関と福祉機関が連携する
在宅医療等の需要は一層高まることが予想されます。
医療情報の共有・参照機能により、医療、福祉サービスの一体的な提供が可能となり、
効率的で質の高い医療につながります。
救急指定病院における医師の待機状況、受入れ状況の情報を提供・共有することによ
り、救急患者の迅速な受入れが可能となり、救急搬送の効率化が図られる。
災害時において、各医療機関の収容能力情報の提供・共有による傷病者の緊急度や重
傷度に応じた迅速かつ的確な搬送を可能とすることができる。
a 求められる機能要件
・
医療機関情報の共有・参照
b 機能要件の詳細
現在、救急指定病院、災害拠点病院における医師の待機状況を含む受入態勢等につい
47
ては、迅速な状況確認が困難であり、救急、災害時においては携帯電話等で搬送先の医
療機関を調整する必要があります。そのため、傷病者の緊急度、重傷度に応じた的確な
搬送を十分行うことは難しい状況です。
各医療機関の受入態勢などの情報を共有・参照することにより、限られた医療資源を
効率的に活用し、患者の症状に応じた迅速、効率的な救急搬送、災害時搬送が可能とな
ります。
なお、当機能については、救急医療、災害時医療を想定する必要があるため、広域的
な情報連携機能が求められます。
医療機関の施設・設備が損壊し、各施設の医療情報システムが復旧不可能になった場
合でも、バックアップデータから迅速にデータの復旧が行える。
a 求められる機能要件
・
医療情報のバックアップ
b 機能要件の詳細
医療機関においては、医療情報システムの普及が進展していますが、自然災害やシス
テム障害などにより、医療情報システムが当面は復旧不可能になった場合であっても、
医療機関は県民・患者に対し医療サービスを提供する必要があります。
これら不測の事態に対応するため、医療情報システムとは別にバックアップデータを
確実に保持する機能が求められます。医療情報のバックアップについては、最低限、そ
れぞれの医療機関内においては、対策を講じる必要がありますが、この機能により、各
医療機関の医療情報システムが復旧不可能になった場合でも、データ復旧が迅速化され、
非常時であっても医療機関の混乱を最小限に抑え、継続的に医療サービスを提供するこ
とが可能となります。
ICカード等を利用し、患者自身の健康情報又は病歴やアレルギー等の重要な診療情報
を持ち歩くことで、緊急時などにおいて、自身の既往歴等を医師に対して正しく伝達す
ることができる。
a 求められる機能要件
・
医療情報の提供
b 機能要件の詳細
現在通院していない県民であっても、日常生活の中で、不測の事故、突発的な疾病は
起こり得るものであり、このような緊急時にあっても、医療機関においては、県民・患
者の自己基本情報、過去の診療情報等を確認して、適切に処置する必要があります。
医療情報などを県民・患者に提供し、県民・患者がその情報を持ち歩くことで、各医
48
療機関においては県民・患者の医療情報を迅速に確認できるようになり、効率的に医療
を提供することが可能になります。
なお、これらを円滑に実施するためには、個人認証機能を有するICカード等を活用し
て、医療施設にある県民・患者の医療情報に直接アクセスする手法や、医療情報を直接
記録したCD-R等の可搬記録媒体を県民・患者に提供する手法などが考えられます。
③ 質の高い医療の実現
過去の多くの診療結果を分析することにより、客観的な疫学的研究が可能となり、科
学的根拠に基づく医療(EBM)を実践することができる。
a 求められる機能要件
・
臨床データの集積
b 機能要件の詳細
現在、基幹病院を中心に医療情報システムが順次導入され、個々の医療機関内におい
ては臨床データが蓄積され、それらを活用して医療の質の向上が図られつつありますが、
まだ、それぞれの医療機関の独自の取組みがほとんどです。
この機能により、地域内における多くの臨床データを集積するための医療機関間の仕
組みの構築が図られ、分析精度のさらなる向上につながります。また、データの同列比
較が容易になり、科学的根拠に基づく医療(EBM)の実践が可能になります。
なお、当機能を実現する上では、患者氏名などの情報を匿名化するとともに、情報の
安全な保存に十分留意する必要があります。
49
図8-4 臨床データの集積機能のイメージ
がん登録を含む疾病登録を行い、それぞれ診療内容や結果について情報を蓄積するこ
とにより、診療内容・結果の解析を行うことが可能となる。また予後調査(※)についても
効率的に実施ができる。(※)生存確認調査、追跡調査
a 求められる機能要件
・
臨床データの集積
b 機能要件の詳細
現在、特定の地域における住民の健康上の問題に関して、情報を収集し公衆衛生上の
研究に役立てるため、がん等の疾病登録が行われています。
臨床データを集積、活用することにより、登録が必要な疾病についての分析精度が高
まり、公衆衛生上の研究促進が図られ、医療の質の向上につながります。
カルテ等に保存された情報から必要な情報を効率的に収集し、集計・解析を行うこと
により、医療水準の向上や効率的な研究活動を行うことができる。
a 求められる機能要件
・
臨床データの集積
b 機能要件の詳細
医療の質を高める上では、臨床における情報を元にした各医療従事者の研究活動が必
要です。
50
臨床データの集積機能により、各医療機関が所有している幅広い診療情報を効率的に
収集することが可能となり、医療従事者の研究活動の促進及び医療水準の高度化につな
がります。
(3) 地域医療情報ネットワークに求められる機能
「(1)複数の医療機関間における情報の連携」及び「(2)広域で多数の医療機関間における情
報の連携」を達成する上で求められる機能要件を整理すると、①医療情報共有・参照機能、②
コミュニケーション機能、③処方チェック機能、④医療情報集積機能、⑤医療情報提供機能、
⑥救急情報転送機能にまとめられます。
これらの機能の概要及び機能を整備するに当たっての留意すべき事項は、以下のとおりとな
ります。
① 医療情報共有・参照機能
ア)機能概要
アレルギー歴、病名等の「患者の基本情報」や、処方結果、検査結果等の「処方情報」
、
「検体検査情報」
、「放射線画像情報」など、それぞれの医療施設にある医療情報について、
県民・患者が同意した医療施設に限って、これら医療情報を共有・参照することが可能に
なる機能です。
当機能については、ネットワークへの接続者が、特定の医療情報についての利用権限を
有する医療従事者であるかどうかを判別するため、ネットワークの利用許可の有無や使用
制限等を管理する、資格者認証のための仕組みを備える必要があります。
また、医療情報の共有・参照機能を活用することにより、
「効率的な紹介・逆紹介」
、「遠
隔地における画像診断(読影)・病理診断」、
「医療施設間における処方のチェック」等さ
まざまな機能への応用が可能となり、例えば、産婦人科・産科医師の少ない地域等におけ
る定期健診等についても容易になります。
イ)機能整備に係る留意事項
a 医療情報連携の地域実情
県内においては、ITを活用した地域医療連携が進んでいる地域と、まだ地域の基幹病
院においても医療の情報化が進んでいない地域があり、医療情報連携に係る地域の実情
を踏まえない県内一律の手法を取ることは効率的でなく、各地域の医療従事者の理解を
得ることは困難です。
b セキュリティに関する事項
医療情報は、極めて情報の秘匿性が高く、特に慎重に取り扱う必要があり、その手法
については細心の注意が払われなければなりません。
51
そのため、他の医療施設が医療情報を共有・参照する場合には、県民・患者から事前
に同意を得るなどの、明確な県民・患者の意思確認の手続きを取る必要があるとともに、
連携先の医療施設を限定するなど、医療情報の管理に最大限配慮する必要があります。
また、ネットワーク接続におけるセキュリティ対策についても特に留意すべきであり、
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に対応する必要があ
ります。
c 医療施設に関する事項
・ 医療情報システムは、医療機関ごとに大きく異なっており、その中のデータを元に
地域内で医療情報の共有・参照を実現するためには、それぞれの医療機関において標
準的手法によりデータを蓄積する必要があります。現在、このような標準的手法に医
療情報システムを開発している各ベンダは対応しつつありますが、すべての医療情報
が標準化されている状況ではありません。このため、標準化に対応するための医療情
報システムの改修コストや、作業の手間などが別途発生し、医療機関がネットワーク
に参加する上での妨げになるおそれがあります。
・ 医療情報の共有・参照等が可能な「独自のネットワーク」を構築している医療機関
においては、標準的手法による医療情報ネットワークへの参加を、当面見合わせるこ
とも考えられます。
・ 各医療機関における医療情報システムの整備については多額の経費負担を要するこ
とから、基幹病院等の電子カルテ等の医療情報システムを、地域の医療機関で共同利
用する「Web型電子カルテ1」等が進展することも想定されます。
・ 当機能によりネットワークの効果を高めるためには、できるだけ多くの医療施設や
県民の参加が求められます。ただし、他事例においては、いずれも、限られた地域に
おけるネットワーク形成から始め、ネットワークエリアを段階的に拡大しています。
それらを踏まえると、新たにネットワークを構築する場合には、まずは、地域を限定
して開始することも考慮する必要があります。
・
医療機関が有する医療情報に比べ、健診センター等の健康情報については、現在、
標準化の作業は遅れています。これら健診センターが有する情報を活用するためには
技術的な課題が多い状況です。
d 県民・患者に関する事項
・
医療施設間で医療情報の共有・参照を行う場合には、個人情報の保護の観点から、
県民・患者の同意を得る必要があります。そのため、特に初期の段階においては、連
1
Web型電子カルテ:Web技術を用いて地域内の複数の医療機関等が共同利用し、システムの管理・運用等が一元化された電子
カルテ
52
携患者数に広がりがみられない可能性があります。
・
現在、国において技術的、制度的な検討を進めている「社会保障カード(仮称)」、
「国民電子私書箱(仮称)
」により、国、地方自治体、保険者、医療機関等、さまざ
まなサービス提供者が有する情報を、県民・患者が容易に入手、活用できるようにな
ることも想定されることから、今後も、これらの検討状況に留意する必要があります。
e 費用に関する事項
・ 当機能の内容に合わせて、セキュリティ対策を講じることが求められますが、セキ
ュリティ対策の内容に応じて費用が大きく異なるため、参加者、参加医療施設の数を
踏まえた最適な対策を講じる必要があります。
② コミュニケーション機能
ア)機能概要
地域医療連携を行う上では人的ネットワークの強化が求められることから、当機能は、
医療従事者が各種情報交換を行うための「場」の提供を基本とし、人的ネットワークの強
化を支援するものです。
具体的には、医療施設間における多職種連携を補助するツール(地域連携クリティカル
パス支援、在宅医療支援)や、医療情報共有・参照機能を活用した地域医療連携を補助す
るツール(遠隔診断支援、紹介状等作成支援)
、医療従事者間の情報伝達をスムーズに行
うためのツール(医療従事者間情報伝達、ヒヤリ・ハット事例共有、医療機関情報共有・
参照)等が考えられます。
イ)機能整備に係る留意事項
当機能については、必ずしも医療機関の医療情報システムに蓄積された医療情報を扱う
ものではなく、それぞれのツールごとに整備を検討することが可能です。
a 多職種連携を補助するツール(地域連携クリティカルパス支援、在宅医療支援)
当ツールを整備するに当たっては、まず、連携を行う上での検討体制の確立が求めら
れます。当ツールはあくまでも、多職種連携の補助を目的としているものであり、連携
そのものを新たに形成することを目的としているものではありません。そのため、ツー
ルの整備に当たっては、医療連携を行うための検討体制が、地域内に整っている必要が
あります。例えば、地域連携クリティカルパスについては、パスを作成するための意思
決定体制や、運用するための協議体制の構築が図られていない中では、ITが効果的な役
割を果たせないことから、ツールの整備を行うことは困難です。
b 地域医療連携を補助するツール(遠隔診断支援、紹介状等作成支援)
当ツールについては、医療情報共有・参照機能を活用することで効果的になるツール
であるため、医療情報共有・参照機能と同様に、参加医療機関、参加患者の規模等を踏
53
まえて段階的に整備する必要があります。
なお、遠隔診断支援については、無医地区や産婦人科・産科医師等の特定の診療科の
医師が不在である地域における対応など、別途、検討を要する場合があります。
c 医療従事者間の情報伝達をスムーズに行うためのツール(医療従事者間情報伝達、ヒ
ヤリ・ハット事例共有、医療機関情報共有・参照)
「医療従事者間情報伝達」、
「ヒヤリ・ハット事例共有」に関しては、既に同等のもの
を実現している商用等のサービスがある実態を踏まえて検討する必要があります。
「医療機関情報共有・参照」については、入力する医療機関の運用における作業負担
に配慮するなど、具体的な運用手法に留意する必要があります。
③ 処方チェック機能
ア)機能概要
各医療施設に点在する処方情報を元に、重複投与や併用禁忌等を自動的にチェックし、
医療事故等を未然に防止するとともに、薬剤にかかる県民・患者の医療費負担の抑制につ
なげる機能です。
イ)機能整備に係る留意事項
処方チェック機能については、県民・患者及び医療施設が地域医療情報ネットワークに
数多く参加することで、効果的な機能として成立するものであることから、ネットワーク
への県民・患者及び医療施設の参加状況を踏まえる必要があります。
また、処方チェックを全県的に行う場合には、医療機関、調剤薬局に点在する患者の処
方情報を、即座に検索・抽出、チェック、表示する必要があり、システム的に極めて高い
性能が求められます。さらに、処方する手続きのどのタイミングでチェックを行うのが適
切なのかなど、運用面についても詳細に検討する必要があります。
なお、処方チェックについては、「お薬手帳」等の紙媒体を活用したチェックがある程
度浸透している実態があり、ITを活用したチェック手法に限定して検討すべきではないも
のと考えられます。
④ 医療情報集積機能(臨床データ集積機能、医療情報バックアップ機能)
ア)機能概要
a 臨床データ集積機能
複数の医療機関が有する医療情報を匿名化して保存し、参加医療機関が情報を等しく
共有することを可能にする機能です。
科学的根拠に基づく医療(EBM)を実践し、質の高い医療を提供するためには、臨床
データを集積し、分析することが求められます。また、これら臨床データに基づく疫学
的研究により、医療の質そのものを高めることが可能になります。また、地域連携クリ
54
ティカルパスの向上を図る上で必要な「バリアンス(パスにおける治療の過程で発生し
た計画との差異)分析」のためのデータ集計手段としても活用が考えられます。
b 医療情報バックアップ機能
各医療機関が有する患者の医療情報を一元的に管理する機能ですが、この機能により、
データ復旧が迅速化され、非常時であっても医療機関の混乱を最小限に抑えることが可
能となります。
イ)機能整備に係る留意事項
a セキュリティに関する事項
・
臨床データ集積機能
医療情報を匿名化のうえ保存するものですが、匿名化された情報とはいえ、その管
理には細心の注意を払う必要があり、ネットワークのセキュリティ対策を十分講じる
とともに、情報の改ざん等への対策が求められます。
・
医療情報バックアップ機能
災害時等の際のバックアップとして、すべての医療機関における患者の医療情報を
すべて外部に一元的に保存する機能であり、医療情報の保管責任を明確化するための
関係規程等を整備した上で、最大限のネットワークセキュリティ対策を講じる必要が
あります。また、極めて高い性能のハード、ソフトが求められるなど、当機能の整備
については、現状では極めて困難です。
なお、医療情報のバックアップについては、それぞれの医療機関内においては、積
極的に対策を講じる必要があります。
b ネットワーク参加に関する事項
・
臨床データ集積機能
臨床データについては、多くの県民・患者及び医療機関が地域医療情報ネットワー
クに参加し、多くのデータが集積されることで、統計データとしての精度の向上が図
られるものです。そのため、ネットワークへの県民・患者及び医療機関の参加状況を
踏まえて、当機能の整備について検討する必要があります。
・
医療情報バックアップ機能
当機能を有効なものとするためには、地域医療情報ネットワークに参加するすべて
の医療機関における患者の医療情報をすべてバックアップする必要があります。しか
し、ネットワークの運用に当たっては、県民・患者の同意を取得することを前提にし
ており、すべてのデータをバックアップすることを目的とする当機能の整備について
は、現状では極めて困難です。
⑤ 医療情報提供機能(個人認証、可搬記録媒体)
55
ア)機能概要
医療機関における「患者情報」や、健康診断センター等における「健康情報」などを、
県民・患者が持ち歩くことで、医療機関においては、不測の事故、突発的な疾病等の緊急
時においても、適切な医療体制を迅速に整えることが可能になります。
当機能については、ICカード等の県民・患者の個人認証機能を活用して、各施設に保存
されている医療情報に県民・患者自らが直接アクセスする手法と、CD-R等の可搬記録媒体
に医療情報を直接記録したものを県民・患者に配布する2つの手法が考えられます。
イ)機能整備に係る留意事項
a 個人認証の場合
個人認証機能を活用して当機能を実現する場合、安全かつ確実に認証するためのIC
カード等の仕組みが必要です。この仕組みを用いるためには、情報管理のあり方の関係
規定を整備するとともに、コストが継続的に発生するため、費用負担のあり方について
検討する必要があります。
また、現在、ICカードについては、厚生労働省において、社会保障制度全体を通じた
情報化の共通基盤として「社会保障カード(仮称)」が検討されており、この「社会保
障カード(仮称)」とは異なるフォーマットのICカードを、別途発行するのは非効率で
あると考えられます。
b 可搬記録媒体の場合
コンピュータウイルスの対策など、十分なセキュリティ対策を前提として、可搬記録
媒体を活用して当機能を実現する場合は、参照元、参照先それぞれの医療施設において
標準的な手法によるデータ交換が可能であることが必要です。
さらに、可搬記録媒体の運用を定め、運用内容に応じて、記録する情報の種類及び記
録媒体の種類を決定する必要があります。
⑥ 救急情報転送機能
ア)機能概要
救急患者の生体情報等を測定する心電計などのデータを搬送先の医療機関に送信する
機能です。救急車等の移動体でも送信が可能で、個人情報に配慮した通信機器及び通信網
を整備する必要があります。
なお、救急患者の容態によっては、三次救急医療機関に搬送される場合があるため、そ
れらの状況にも対応できる広域的機能として構築することが求められます。
イ)機能整備に係る留意事項
救急車側からのデータを、搬送先の医療機関に送信する機能が中心であることから、各
医療機関の医療情報システムの整備状況等に影響される部分は少ないと考えられます。
56
3
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の構築
「山形県地域医療情報化に係るグランドデザイン」において示した将来像の実現に向けて、本
県の地域医療情報ネットワークとして「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」の構築を図る
こととします。
ここでは、
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の構築に向けて、
「第5次山形県保健医
療計画」の目標年度である平成24年度までの整備スケジュールを示すものです。
第一に、ネットワークに含める各機能(①医療情報共有・参照機能、②コミュニケーション機
能、③処方チェック機能、④医療情報集積機能、⑤医療情報提供機能、⑥救急情報転送機能)に
ついての整備スケジュールを示します。これは、機能ごとの留意事項を踏まえつつ、実現可能な
ものについては「第5次山形県保健医療計画」の目標年度である平成24年度までの運用開始を目
指すものです。
また、ネットワークを実現するためには、できるだけ多くの県民・患者や医療施設が参加する
ことが求められます。そのため、県民・患者、医療従事者、医療関係の各団体に対して広く周知
し、啓発を行うことが重要です。さらに、ネットワークの成果を適正に分析・評価するための継
続的な検討や、地域連携クリティカルパス、在宅医療支援など、さまざまな医療連携の体制の構
築など、地域医療連携のための基礎的活動を推進する必要があります。
これを踏まえ、第二に、地域医療連携の総合的な推進についてのスケジュールを示します。
また、山形県病院事業局では、平成21年1月に「県立病院医療情報化基本計画」を策定し、同
計画に基づき総合医療情報システムを整備・運用することとしていることから、県全域もしくは
地域における基幹的・中核的役割を担っている県立病院の今後のスケジュールについても併せて
示します。
57
図9
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」の整備スケジュール(※)
各機能整備のスケジュール
21年度
医療情報共有・参照機能
村山地域
複数の基幹病院を中心とした検討
最上地域
県立新庄病院を中心とした検討
置賜地域
医師会・基幹病院を中心とした検討
庄内地域
医師会・基幹病院を中心とした検討
コミュニケーション機能
22年度
23年度
24年度
25年度以降
地域(二次保健医療圏等)の実情に応じた地域医療情報ネットワーク化の推進
構築
運用
構築
運用
構築
運用
構築
運用
地域の実情に応じた検討
実情に応じた地域ごとの構築
地域ごとに運用
ネットワークへの参加状況を踏まえて検討
処方チェック機能
国の動向、ネットワークへの参加状況を踏まえて検討
医療情報集積機能
医療情報提供機能
各医療施設単位で医療情報が提供されるよう働きかける
救急情報転送機能
各地域において整備が促進されるよう働きかける
※国の動向についても注視(社会保障カード、国民電子私書箱等)
地域医療連携推進のスケジュール
21年度
22年度
23年度
24年度
25年度以降
24年度
25年度以降
山形県地域医療情報ネットワーク化推進委員会を継続的に運営
二次保健医療圏単位でのネットワーク構築に向けた連携体制の構築
医療連携体制構築に向けた取組み
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」を構築する上で求められる諸条件の提示
県民・患者及び医療従事者に対する普及・啓発事業の展開、医療機能情報の提供
県立病院総合医療情報システム整備のスケジュール
21年度
総合医療情報システム整備・運用
22年度
23年度
●中央病院稼働予定
●鶴岡病院稼働予定
システム運用
●新庄病院・河北病院稼働予定
システム整備
(※)現状における実現可能性に基づき整理したもので、基幹病院における医療情報システムの整備状況、県内各関
係団体の地域医療連携についての検討状況及び国等の施策動向などによって、今後、変わる場合があります。
(1) 各機能整備のスケジュール
各機能の整備に当たっては、技術的な課題、セキュリティ上の課題、運用上の課題等が多数
想定されます。そのため機能ごとの課題に留意しつつ、国、標準化に関わる各団体、医療情報
システムの業界等の動向を踏まえ、県内の医療関係の各団体とともに協議した上で、実現の可
能性が高いと判断できる機能から段階的に整備を図るよう努めます。また、一部では、既にIT
を活用して地域医療連携を行っている地域もあるため、これらの実態を踏まえた効率的な手法
及び手順を検討します。
① 医療情報共有・参照機能
県民・患者の通院圏域の状況をみると、地域の基幹病院、診療所を中心とする二次保健医
療圏単位での医療連携の割合が高く、二次保健医療圏を越えた「全県レベルでの医療連携」
についての割合は限られています。
また、現在、医療情報の共有・参照については、基幹病院、医師会等の団体を中心として、
県内の一部の地域において既に実施されています。
以上を踏まえ、将来における全県レベルでの地域医療情報ネットワークの構築を目指しつ
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つ、当面は、
「第5次山形県保健医療計画」の目標年度である平成24年度までに、二次保健
医療圏ごとの各地域において標準的手法を踏まえた当機能の活用による地域医療情報ネッ
トワークの構築が図られるよう、整備を推進します。
ア)村山地域
村山地域において病院は34施設(平成20年3月現在)あり、県内では、最も医療機関の
整備が進んでいます。東南村山地域は基幹病院などの拠点となる病院が集中しており、西
村山地域は県立河北病院、北村山地域は北村山公立病院が基幹病院として中核的役割を担
っています。
村山地域のほとんどの基幹病院において医療情報システムが導入されており、一部では、
自らの電子カルテシステム内の医療情報を公開している病院も存在するなど、個々の医療
機関においては情報化が進んでいます。ただし、それぞれの病院における医療情報システ
ムの技術仕様が異なっていることから、そのままでは、地域全体を結ぶ医療情報ネットワ
ークを構築することは多大な経費がかかるなど困難な状況です。
ただ、それぞれの基幹病院ごとに異なるネットワークを構築することは効率的ではなく、
標準的手法を介して、これらの基幹病院が有する医療情報を可能な限り同一のネットワー
クで結び、診療所をはじめ医療施設と共有する必要があります。
そのため、合意を得ることを前提に、地域内の複数基幹病院が連携する医療情報共有・
参照機能を実現し、地区医師会等の協力のもと、多くの医療施設が参加する地域医療情報
ネットワークの構築を推進します。
イ)最上地域
平成20年3月現在で最上地域内の病院は6施設、一般診療所は55施設で、人口10万人当
たりでは、病院は、6.6で県平均の5.8を上回っていますが、一般診療所は60.6で県平均の
76.5を大きく下回り、県内で最も少ない状況となっています。
このような中で、最上地域における唯一の基幹病院である県立新庄病院は、最上地域の
医療の中心的な役割を担っています。現在、県立新庄病院においては、「県立病院医療情
報化基本計画」に基づき、平成22年度に医療情報システムを整備する予定です。
そのため、県立新庄病院を中心として、地域内の自治体病院・診療所、新庄市最上郡医
師会等の協力のもと、多くの医療施設が参加する地域医療情報ネットワークの構築を推進
します。
ウ)置賜地域
置賜地域では、公立置賜総合病院及び米沢市立病院が基幹病院としての役割を担ってい
ます。それぞれ医療情報システムが既に導入されており、これら基幹病院等を中心として、
ITを活用した地域医療連携についても検討が進められています。
59
また、一部の病院では、「Web型電子カルテ」により地域の診療所とカルテを共有してお
り、米沢市医師会においても、地域の病院と協力して積極的に医療情報連携を行っている
など、広くITを活用した地域医療連携が進められています。
これらの地区医師会及び地域の基幹病院等を中心とした医療情報連携のための活動が、
標準的手法を介して、可能な限り一体的な取組みにつながることを目指して、多くの医療
施設が参加する地域医療情報ネットワークの構築を推進します。
エ)庄内地域
酒田地区においては日本海総合病院、鶴岡地区においては鶴岡市立荘内病院が、庄内地
域の基幹病院として地域医療の中心的役割を担っています。それぞれ医療情報システムが
既に導入されており、ITを活用した地域医療連携について検討が進められています。
また、鶴岡地区医師会においては、診療所等の医療機関を結ぶ医療情報連携システムと
して「Net4U」が整備・運用されており、診療所等を中心としてITを活用した医療施設間
の相互連携が進められています。
これらの地区医師会及び地域の基幹病院等を中心とした医療情報連携のための活動が、
可能な限り一体的な取組みにつながることを目指して、多くの医療施設が参加する地域医
療情報ネットワークの構築を推進します。
また、基幹病院等の電子カルテなどの医療情報システムを地域の医療機関で共同利用する
「Web型電子カルテ」など、効率的な医療情報システムの構築の取組みを推進します。
図10 平成24年度時点での「医療情報共有・参照機能」のイメージ
A医療圏
A医療圏
病院・診療所
標準化された
医療情報
患者基本情報
検査情報
処方情報 ほか
調剤薬局
その他
基幹病院
1 基幹病院を中心とした医療情報参照
※ 医療圏を越えた連携については
二次保健医療圏ごとの整備終了後に検討
B医療圏
B医療圏
標準化された
医療情報
医師会等
標準化された医療情報
入力
A基幹病院
病院・診療所
病院・診療所
標準化された医療情報
調剤薬局
参照
C医療圏
C医療圏
調剤薬局
B基幹病院
その他
参照
その他
標準化された医療情報
医師会等
2 医師会等を中心とした医療情報共有
3 複数の基幹病院等を中心とした医療情報参照
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② コミュニケーション機能
地域医療連携を行う上では人的ネットワークの強化が求められ、当機能は、医療従事者間
の人的ネットワークの強化を支援するものです。当機能においては、さまざまなツールが想
定され、それぞれのツールごとに整備を検討することが可能です。
そのため、二次保健医療圏単位における検討状況を踏まえた上で、
「第5次山形県保健医
療計画」の目標年度の平成24年度までに、地域の実情に応じたツールを各地域において整
備し、運用することを目指します。
なお、各ツールを整備する上での考え方について以下に示します。
ア)多職種連携を補助するツール(地域連携クリティカルパス支援、在宅医療支援)
当ツールについては、地域の医療施設間における検討体制の確立状況や、その中におけ
る協議の過程を踏まえつつ、整備の内容、時期、手法、範囲等について判断することと
します。
イ)地域医療連携を補助するツール(遠隔診断支援、紹介状等作成支援)
当ツールについては、医療情報共有・参照機能の整備状況を踏まえつつ検討を進めるこ
とを基本としますが、「遠隔診断支援」に関しては、無医地区や、産婦人科・産科等の特
定の診療科医師が不在になるなどで、著しく地域医療を維持するのが困難な地区におい
ては、継続的に医療提供するための手段として、別途、整備について検討します。
ウ)医療従事者間の情報伝達をスムーズに行うためのツール(医療従事者間情報伝達、ヒヤ
リ・ハット事例共有、医療機関情報共有・参照)
a
「医療従事者間情報伝達」については既存の商用サービス、
「ヒヤリ・ハット事例共
有」については財団法人日本医療機能評価機構等における同等のものがあることも踏
まえ、必要性について検討します。
b 「医療機関情報共有・参照」については、具体的な運用に留意しながら、機能整備の
必要性について、今後検討することとします。
③ 処方チェック機能
全県的な処方チェック機能については、
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」の運用
開始後に、県民・患者及び医療施設のネットワークへの参加状況を踏まえ、費用対効果等
を検証した上で、「お薬手帳」等による他の手法による機能達成を視野に入れつつ、当機能
の整備手法について検討します。
④ 医療情報集積機能(臨床データ集積機能、医療情報バックアップ機能)
ア)臨床データ集積機能
当機能については、多くの県民・患者及び医療機関が「やまがた医療連携ネットワーク
(仮称)」に参加することで、より統計データとして精度の向上が図られるものです。ま
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た、レセプトのオンライン請求等が拡大し、これらレセプトデータを代替的に活用する
ことが可能になれば、一部データに限れば、効率的に集積することも可能になります。
以上を踏まえ、「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」の運用開始後に、国の動向、
ネットワークへの参加状況等を踏まえて、当機能の整備手法について検討します。
イ)医療情報バックアップ機能
課題が多く、現時点において実現は困難ですが、将来の機能整備を視野に、技術的な動
向、セキュリティの動向を踏まえつつ、実現可能性について検討します。
⑤ 医療情報提供機能(個人認証、可搬記録媒体)
ア)個人認証について
国においては、平成23年度における「社会保障カード(仮称)
」の導入及び「国民電子
私書箱(仮称)」の創設を目指して検討を進めており、それらの活用を視野に、国の動向
などを踏まえつつ検討します。
イ)可搬記録媒体について
全国的には、CD-R等の可搬記録媒体を活用して、標準的手法による診療情報提供を行っ
ている例があり、これらの技術等を活用しながら、各医療施設単位において医療情報が提
供されるよう働きかけます。
⑥ 救急情報転送機能
各地域における医療提供体制の実情を踏まえ、情報連携の種類や範囲、費用対効果などを
十分考慮し、各地域における整備が促進されるよう働きかけます。
(2) 地域医療連携推進のスケジュール
① 山形県地域医療情報ネットワーク化推進委員会
「山形県地域医療情報ネットワーク整備基本計画」の着実な推進を目的に、計画推進のた
めの基本方向、システム構築・運用、ネットワークの普及・啓発等の手法について、広く関
係各団体等の意見等を踏まえながら協議をしていくための組織を継続的に運営します。
また、ネットワーク運用開始後において、定期的に現状分析、評価をしつつ、ネットワー
クの改善について継続的に検討します。
② 二次保健医療圏単位でのネットワーク構築に向けた連携体制の構築
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」における、二次保健医療圏の実情に応じた各
機能の整備を目指し、関係各団体等との意見調整を図るため、地域における連携体制を構築
します。
③ 「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」を構築する上で求められる諸条件の提示
他の医療施設との情報連携や患者に対しての情報提供を効率的に行うためには、医療情報
62
システムに格納された医療情報が相互運用性を確保しているものであるとともに、標準的な
方式によるデータ出力が可能である必要があります。
具体的には、厚生労働省における「電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX)」により構築
された「静岡県版電子カルテシステム」の「情報ゲートウェイデータ交換仕様書」等に基づ
く標準的手法を用いることが必要で、
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」を構築する
上で特に求められる事項については、別途詳細な諸条件を示し、標準規格に基づくネットワ
ーク構築の推進を図ります。
④ 県民・患者及び医療従事者に対する普及・啓発事業、医療機能情報の提供
ネットワークの整備、運用に当たっては、ネットワークに要する「費用」とネットワーク
により達成される「効果」を比較する必要があり、効果を高めるためにはできるだけ多くの
県民・患者や医療施設が参加することが求められます。そのため、県民・患者、医療従事者、
医療関係の各団体に対して、地域医療連携のあり方、また、その手段としてのIT活用等につ
いての一層の理解を深めるための啓発事業を広く展開するとともに、現在実施しているイン
ターネットを活用した医療機能情報の提供等を継続的に実施します。
(3) 県立病院総合医療情報システム整備のスケジュール
山形県病院事業局においては、平成21年1月に「県立病院医療情報化基本計画」を策定して
おり、「機動的で効率的な病院マネジメントの確立」を目指し、すべての県立病院に効率的・
計画的に総合医療情報システムを整備・運用するとともに、地域医療連携の推進を図ることと
しております。なお、現時点で、県立中央病院、県立新庄病院及び県立河北病院は平成22年度、
県立鶴岡病院は平成24年度のシステム稼動を予定しています。
「(1)各機能整備のスケジュール」における「①医療情報共有・参照機能」においても示し
ていますが、村山地域においては、
「地域内の複数基幹病院が連携する医療情報共有・参照機
能」の実現を目指すことから、県立中央病院及び県立河北病院の「総合医療情報システム」の
整備の時期も踏まえつつ、地域医療情報ネットワークの構築を推進します。また、最上地域に
おいては、最上地域における唯一の基幹病院である県立新庄病院のシステムの稼動時期を踏ま
えて、県立新庄病院を中心とした地域医療情報ネットワークの構築を推進します。
県立鶴岡病院については、本県の精神医療の基幹病院として救急医療システムの充実、精神
科救急情報センターの設置に向けて整備を進めます。
(4) 「第5次山形県保健医療計画」目標年度到達時点でのネットワーク
図11については、県内の各地域において医療情報連携が進展した場合における「第5次山形
県保健医療計画」目標年度(平成24年度)到達時点での、「やまがた医療連携ネットワーク(仮
称)
」のイメージです。二次保健医療圏ごとに、医療情報共有・参照機能を通じた「地域医療
63
連携の環」の形成を目指すとともに、コミュニケーション機能については、各地域の実情に応
じて必要なツールを整備・運用することを目指します。
図11 当面実現を目指す「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」のイメージ
診療所
行政
病院
診療所
診療所
行政
病院
県民
・
患者
健診
センター
健診
センター
県民
・
患者
薬局
行政
薬局
消防・
救急
病院
○医療従事者間の人的ネットワークの
強化を支援する機能
訪問看護
介護福祉
診療所
行政
健診
センター
病院
県民
・
患者
消防・
救急
県民
・
患者
健診
薬局
二次保健医療圏ごとの
センター
「地域医療連携の環」
訪問看護
薬局
介護福祉
診療所
行政
健診
センター
病院
県民
・
患者
消防・
救急
■コミュニケーション機能
訪問看護
介護福祉
消防・
救急
薬局
消防・
救急
訪問看護
訪問看護
介護福祉
介護福祉
○地域の実情に応じて、地域ごとに必
要なツールを整備
○ツールの種類(例)
・地域連携クリティカルパス支援ツール
・遠隔診断支援ツール
・紹介状等作成支援ツール
など
(例)「遠隔診断支援ツール」のイメージ
「医療情報共有・参照機能」のイメージ
■医療情報共有・参照機能
○医療機関が有する医療情報を、地域
の各施設で共有・参照する機能
○各地域の基幹病院、医師会等の現状
を踏まえ、地域の実情に合わせて、す
べての地域で実現
○共有・参照する医療情報
・アレルギー、病名等の患者基本情報
・画像検査、検体検査等の情報
・薬の処方情報
など
○プライバシー保護対策
(5) 計画推進のための留意事項
今後の導入計画も含めると、数年後には県内のすべての基幹病院において電子カルテシステ
ムなどの医療情報システムが導入される見込みであるとともに、医療情報システムを早期に導
入した病院においては、医療情報システムの更新期を迎えている状況です。
医療情報システムについては、システムの規模が非常に大きく、その整備に際しては、多額
の経費負担及び病院の運用見直し等の作業負担を要するもので、各医療機関において容易にで
きるものではありません。
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」については、それぞれの病院における医療情報
システムや医師会等の医療情報連携システムを活用して、多くの医療施設が関わる「地域医療
連携の環」の構築を目指すもので、基幹病院等の医療情報システムなどの構築・更新時期につ
いて、十分留意する必要があります。
64
4
ネットワークの評価等
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」の構築に当たっては、その政策目的の達成状況に
ついて検証が求められるとともに、直接的事業の成果を、適正に分析・評価するための指標をあ
らかじめ設定することが必要です。
この観点から、「第5次山形県保健医療計画」において設定されている評価目標の中で、「やま
がた医療連携ネットワーク(仮称)」に関連する部分を、「政策的目標数値」として設定します。
また、
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」を定期的に分析し、PDCAサイクルを通じて「ネ
ットワークの改善」を図ることを可能とする「評価」を行うための具体的な項目を設定し、その
数値を把握するための手段についても併せて示します。
(1) 政策的目標数値
① 「かかりつけ医」普及率(H18:59.8% →
H24:80%)
「かかりつけ医」普及率については、
「平成18年度第2回新世紀やまがた課題調査」によ
ると平成18年時点では59.8%となっていますが、このたび実施した「県民・患者ニーズ調査」
においては、67.8%となっており浸透してきていることが伺えます。
一方、
「山形県患者調査」によると、病院及び診療所の機能分担はある程度は認められま
すが、病院においても外来患者の比重が高く、病院における医療従事者の負担となっている
ものと考えられます。そのため、二次保健医療圏を単位として、地域内の医療施設が連携し
た医療提供体制を構築する必要があります。
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」により、基幹病院等が持つ医療情報について、
他の医療機関においても共有・参照することが可能となれば、診療所等の機能が強化され「か
かりつけ医」の定着にもつながることから、目標数値として設定するものです。
② 地域連携クリティカルパスへ参加している病院の割合(H19:9.9% →
H24:90%)
大腿骨頸部骨折などの一部の疾病については、発症後の入院治療からリハビリ等を経て自
宅へ復帰するまでの複数の医療施設にまたがる診療計画(地域連携クリティカルパス)の作
成に関する取組みが広がりつつあります。
これらの地域医療連携の取組みに、ITの活用が見込まれる場合には、各地域における検討
状況を踏まえ「地域連携クリティカルパス支援ツール」を整備することとし、当項目につい
ては、
「地域連携クリティカルパス支援ツール」が整備された場合の目標数値として設定す
るものです。
③ 遠隔医療システムを導入している病院数 (H19:8病院 → H24:16病院)
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」においては、遠隔での病理診断、読影など遠
隔医療の推進を図ることとし、当項目については、医療情報共有・参照機能やコミュニケ
ーション機能(遠隔診断支援ツールなど)が整備された場合の目標数値として設定するも
65
のです。
(2) 評価項目
① 連携患者数、連携データ参照回数
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」においては、医療施設が連携して、限られた
医療資源を有効に活用することが求められます。
医療資源の有効活用を評価するためには、ネットワークを活用して医療連携をしている実
数把握が必要です。そのため、ネットワークに参加している「連携患者数」、
「連携データ参
照回数」を評価項目として設定し、参加推移の統計に基づき評価します。
② 県内患者カバー率(推定値)
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」を評価する場合、
「連携患者数」等をもって捉
えるのは重要ですが、県民・患者の意思を最大限尊重する必要があることから、ネットワー
クに参加する「連携患者数」等については、参加医療機関にかかっている患者の総数より少
なくなります。
しかし、現時点では、地域医療連携を求めていない患者であっても、その後、地域連携ク
リティカルパス、在宅医療などによる地域医療連携が必要となる場面も十分考えられます。
そのため、すべての患者については、潜在的にネットワークに参加する可能性がある患者数
として捉え「県内患者カバー率(推定値)」を評価項目として設定し、
「山形県患者調査」及
びネットワークへの参加医療施設等を踏まえた、統計に基づく推定値により評価します。
③ ネットワークへの参加医療施設数
ITを活用した地域医療連携の効果を高めるためには、より多くの医療施設が同一のネット
ワークの元に連携することが求められます。
これらを踏まえ、「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」に参加している医療施設数(病
院、診療所、調剤薬局、訪問看護ステーション等)を評価項目として設定し、参加推移の統
計に基づき評価します。
④ 全体の紹介率、逆紹介率の向上
患者の紹介・逆紹介をスムーズに行うための紹介状等作成支援ツールが整備されれば、こ
れらの機能を介して、直接的に紹介・逆紹介がスムーズになる等の効果が期待できることか
ら、全体の紹介率、逆紹介率の向上を評価項目として設定するものです。
なお、具体的な紹介率、逆紹介率の算定については、病院の機能等により、複数の手法が
あることから、それらの手法を比較し、より効率的手法を選択する必要があります。
⑤ 県民・患者、医療従事者の満足度
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」について正しく評価するためには、各種統計
66
等に基づく評価に加え、ネットワークによる地域医療連携を実際に体験する県民・患者及び
実際にネットワークシステムを利用する医療従事者の声を把握する必要があります。
そのため、アンケート等による定期的な調査を実施し、県民・患者及び医療従事者の満足
度等の結果により評価します。
67
第3章
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の
構築に向けて
第3章
○
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の構築に向けて
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の構築
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」は、県民・患者の多様化する医療ニーズに対応す
るために、限られた医療資源を有効に活用することを可能にする地域医療連携のためのネットワ
ーク基盤です。
この「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」により、各医療施設においてITを活用した地
域医療連携が可能となるもので、「山形県地域医療情報化に係るグランドデザイン」で掲げてい
る①安心・信頼できる医療の実現、②効率的な医療の実現、③質の高い医療の実現を図る上では、
速やかな構築が求められるものです。
○
医療施設との協力、医療従事者理解の醸成
県民・患者に対し、
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」により可能となるサービスを地
域内で包括的に提供するためには、医療施設が多数参加することが必要であり、参加施設の増加
のためには、医療従事者はもとより医師会、看護協会、薬剤師会及び市町村などの行政機関等の
理解及び協力が不可欠です。
また、必ずしもITの活用を前提にしたものではありませんが、近年、地域連携クリティカルパ
ス及び在宅医療支援等、各医療施設の連携による医療サービスの必要性が高まってきています。
これらの医療サービス等についても、「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」の中で支援する
こととしますが、これらは、医療従事者を中心とした人的ネットワークを基本にして地域内に構
築される必要があり、ITはあくまでもそれを補助するための手段となります。これらの医療従事
者を中心とした人的ネットワークの構築、運営に当たっては、当然ながら関係する医療施設、県
内の医療関係の各団体及び行政等が相互に協力することが求められます。
○
県民理解の醸成
本計画を策定するに当たり実施した「県民・患者ニーズ調査」によれば、医療情報の活用につ
いて、肯定的な意見が多数(68.5%)を占めているところですが、受療率の高い65歳以上の高齢
者については、他の年齢階層に比べ肯定的な意見が比較的少ない等の傾向があり「やまがた医療
連携ネットワーク(仮称)
」の実現に当たっては、県民・患者の理解をさらに深める必要があり
ます。
また、医療資源が限られている中においては、多くの県民・患者の参加により、効率的な医療
の実現が図られることになるため、各場面において、県民・患者に対する普及・啓発のための活
動を広く展開する必要があります。
69
○
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の運営の検討
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」については、ネットワークの整備、構築と並んで、
ネットワークを持続的に維持、運営していく手法及び体制の確立が強く求められます。ネットワ
ークにおいては、県民・患者、関係する医療施設、県内の医療関係の各団体及び行政等さまざま
な受益者が想定されます。
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の実現による、県民・患者
のメリット、医療施設のメリット、各団体のメリット、行政等のメリットを整理し、関係者の理
解を得たうえで、運用管理体制、費用負担のあり方等について幅広く検討する必要があります。
○
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)」の継続的な見直し
「やまがた医療連携ネットワーク(仮称)
」は、著しく進歩している情報技術等の動向や、将
来の医療需要及び医療の供給体制の激変等に対応するために、運用を開始した後、ネットワーク
の全体、もしくは一部の機能の発展、拡張等を検討することが必要になる場面も想定されます。
また、設定している評価項目に基づき、十分な成果が挙げられない等の部分については、必要
性を検討した上で、機能縮小、廃止についても考慮することが求められます。
そのためには、急激に変化する医療を取り巻く社会情勢や、県民・患者及び医療従事者のニー
ズを定期的に把握しながら、ネットワークを見直していく持続可能な体制を構築する必要があり
ます。
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