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高齢者住宅セミナー2月17日開催の資料

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高齢者住宅セミナー2月17日開催の資料
これからの高齢者住宅とはVOL.22
最近の介護サービス事業の動向
湘南シニア総研 顧問
五十嵐 雅郎
最近の介護サービス事業の動向
新3本の矢「介護離職ゼロ政策」に期待
超高齢化時代を迎え、医療・介護・生活支援・少子化対策・雇用創出の費用が嵩み、国家財政は赤字に転落しています。政府は「社会保障と
税の一体改革」として「財政再建の為、社会保障費の財源不足を消費税増税で何とかしよう」としておりますが、消費税増税だけでは無理で、医
療・介護両保険料の利用者負担を引き上げたり、給付対象を絞ったりして「社会保障の効率化」を図っています。
この間、財政支出増を国債発行で賄った結果、国債発行残高は1000兆円を超えGDPの240%強となっており、政府は国債管理政策を具体
化すべきところですが、まだこの問題に手を付けようとしません。それどころか、昨年は統一地方選を意識して「地方創生」で予算をバラまき、また
今回も本年7月の参院選を考慮して「一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策」を発表し、そしてこれを2015年度補正予算と2016年度予算
に盛り込んでいます。安倍首相は「子育てや社会保障の基盤を強化し、さらに経済を強くして、成長と分配の好循環を構成したい」と述べており
ますが、はたしてそうでしょうか。
わが国の社会保障給付費は年金と医療が高くなっています。日本人の平均年齢は49歳ですし、戦後のベビーブーム世代が既に65歳以上に
なっていますので、年金、医療、介護の数字は一層増える見込みです。他方、欧米先進国は児童手当や育児手当を手厚くし、少子化対策に成
功しておりますが、出生率1.42%の日本の「希望出生率1.8%」はこのままでは無理と見られます(P5表1)。
「新3本の矢」の「介護離職ゼロ」での施設50万人分の整備ですが、具体的には特養40万人分、それにサ高住10万人分を上乗せしたものです。
厚生労働省の基本政策「施設より在宅へ」のスローガンのもと、訪問介護・看護、小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看
護の整備を促進している中での「特養40万人分整備」は、これまでの「地域包括ケアの動き」に逆行しているとの声が上がりました。
どうやら、安倍政権は「介護離職ゼロにするには、施設を作れば済む」と単純に考えていて、「長時間労働の是正」とか、「仕事と介護を両立でき
る働き方」を是正する具体策は持ち合わせていない様です。厚生労働省の調査によれば「年間10万人の介護離職者のうち介護サービスを利用
できなくて離職した人は1万5千人」、これに対し「介護を続ける為の柔軟な働き方が出来ず離職した人は4万5千人」との事です。日本には「仕事
と介護の両立が難しい職場」が多く、これが介護離職を生み出しているのです。昨年11月10日の衆院予算委員会で「長時間労働を規制する制
度が必要ではないのか」と迫られた安倍首相は、「働き過ぎの指導徹底と中小企業の残業代割り増し率の引き上げを行いたい」と、見当違いの答
弁を行いました(P6表2)。
「介護離職ゼロ対策」として、サ高住10万人分整備が言われ、補正予算に2万人分(1万5千戸)、189億円が盛り込まれました。特筆すべきは、
建設助成額が従来1戸当たり一律100万円をタイプ別で1戸120万円から150万円迄引き上げているのが目立ちます。例えば、夫婦型135万 1
円、既存ストック型150万円、それ以外のサ高住120万円で、その上拠点型サ高住(小規模多機能型居宅介護、或は看護小規模多機能を併設
したサ高住)への助成は1施設当たり1000万円が1200万円になります。サ高住に対する国土交通省の肩入れの強さを感じさせます(P7表3)。
診療報酬は2年ごとに改定されますが、この4月からの診療報酬は前2014年度改定より0.84%引下げられます(4月10日の中
央社会保険医療協議会の答申)。ここにも「入院より在宅」の考え方が盛り込まれており、それは①入院期間の短縮、②在宅医療特化型
診療所の助成(かかりつけ医の報酬を新設)に現れています(P8表4)。
介護報酬カットで小規模事業者の倒産増加
これに対し、介護報酬は3年ごとに改定されますので前回の改定は2015年度ですが、
ここで「慢性的な不足に悩む介護人材確保のため、介護スタッフに対し一人当たり月1万2千円を支給する」と決まりました。これだけ
で1.71%の減算になりますが、この人件費アップに介護保険からの補助は付かず、実質的には4.48%の減算でした。この結果、
減算率の大きい介護サ-ビス事業者の業績が下がり、施設・事業所の新設は抑えられています(P9表5)。
高齢者住宅事業者は、地主が建てた建物を、賃借して介護サービスを行いますから、介護報酬で賃借コストと人件費をカバー出来る
かどうかが、鍵となります。昨年、介護報酬改定の内容が発表された際、介護事業者の多くは「経営に与える影響は大きく、よほど
しっかりした事業者以外は事業存続の岐路に立たされる」と感じました。まさにその通りで、入居者減と人件費上昇を理由に、事業者
の倒産が増えています。ページ10の表6に見られる様に倒産件数は大幅に増えましたが、負債額10億円以上の倒産は無く、小規模
事業者の倒産が殆どです(P10表6)。
異業種大企業のM&Aに依る参入本格化
2000年に介護保険制度がスタートした時点から、介護サービス事業へ異業種企業の参入は続いております。その参入目的は
「自社の遊休資産の活用」にありました。建設・不動産からの参入が多いのは、土地・建物についてのノウハウの蓄積を利用するた
めでした。しかし、現在の異業種大企業の参入には、これまでにない真剣さが認められます。その根本に、「介護保険マーケットは
今後10年間で約倍になる成長分野であり、自社本体の重要な多角化戦略として進出する」との考え方があります。
損保ジャパンが買収資金1000億円を用意して、「ワタミの介護」「メッセージ」を買収し,さらに次を狙っているとか、東京
海上が子会社「ヒルデモア」にサ高住、訪問介護、居宅介護支援へ進出させるとか、イオンが子会社「イオンリテール」にショッピ
ングセンター内でデイサービスを行わせるとかが、それです。同時に、介護サービス需要は今後とも膨大であり、政府資金だけでカ
バーするのは絶対に無理ですから、今後は「民間資金の大動員」が必要になります。そして銀行・商社が中心の「投資フアンド」 2
「不動産投資信託」の活用も大切です。民間資金を利用するには、新規参入大手企業の信用力が必要になります(P11表7)。
近年、介護の現場で介護職員による暴言・虐待行為は増えております(P15表8)。これは職場の組織風土や人間関係の不満やストレス
を、入居者にぶつけるのが原因です。新規採用の介護職員に、必要な実地研修を行わずシフトに付ければ、問題を起こすのは当然です。
まともな研修を行い、マニュアルを整備し、作業の効率化を図らなければ、虐待行為は無くなりません。同時に、介護スタッフにモチ
ベーションを与える評価制度、昇給昇進制度の採用も必要になります。暴言・虐待行為が、地方自治体と社会福祉法人経営の施設に多発
しているのも、問題と考えられます(P12表8の参考記事)。
施設介護、在宅介護双方で、利用者の為にケアプランを作成するのが、ケアマネージャーです。独立して個人で働く人もいますが、普
通は介護支援事務所のメンバーとして働きます。ケアマネ資格を取得した後も、87時間の実務研修、88時間の更新研修、さらに主
任ケアマネになるための70時間専門研修が待っています。日常業務をこなしながら研修を受けるには、支援事務所に常勤専従ケアマ
ネを3人以上置くのが必要になっております(旧要件は2人)。
ケアプラン利用者が特定の施設や老人ホームに集中すると、その施設・老人ホームの要望を入れたケアプランの作成を強いられ、入
居者の為のケアプランを作成する独立性が失われる懸念が出ます。利用者の介護度改善に繋がるケアプランを作成するには、絶えざる
自己啓発や更新研修参加が要求されます。「ケアマネは苦労の多い専門職」と言えそうで、そのためか介護支援専門員実務研修受講試
験(ケアマネ試験)の合格率は低下する一方です(P13表9)。
社会福祉法人は、特養やグループホームを運営する公共性の高い法人で、利益を目的にしない非営利法人です。しかし、その代わりに補
助金や非課税などの優遇措置が受けられます。問題は、この特権を利用して社会福祉法人を私物化し、法人役員の親族を厚遇し、ファミ
リー企業に資金を流す「金融犯罪」が増えております(P14表10)。
こうした「社福の私物化」の背景には、社福の運営に対する厚生労働省や自治体の監視体制が甘かった事実があります。今後は社福の
実態を把握するためにも会計監査を義務化し、運営実態の透明化を行わねばなりません(これで同時に、厚生労働省の不正防止策の無さ
が世に知られてしまいました)。
以上が、「終の棲家」を探す私たちを取りまく介護サービス業界の現状です。この業界環境は、今後悪化する方向にあります。そんな
中で、与えられた条件の中で「終の棲家を探すための方策」が必要になります。前回のセミナー資料に「自分に合った高齢者住宅施設の
選び方」を報告しておりますので、それと併せてご検討下さい。
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表1 わが国社会保障費の推移
(参考)主要国の分野別社会保障費
4
(出所)朝日新聞2015年10月24日(右表も同様)
表2 安倍内閣・新3本の矢
(参考)介護離職の原因
5
(出所)東京新聞2015年11月27日号、右表も同じ
表3 補正予算でサ高住が復活
中心は「拠点型サ高住」
(出所)高齢者住宅新聞2016年2月3日
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表4 安倍内閣2016年度予算案を閣議決定(出所はコメントと共に日経ヘルスケア1月号)
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表5 主な介護サービス施設・事業所数
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(出所)シニア・ビジネス・マーケット2016年1月号
表6 老人福祉・介護事業の倒産 年次推移
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表7 介護サービス事業に参入した異業種大手企業
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表8 虐待認定数および相談・通報数の推移
(出所)週刊朝日2015年11月6日号
(参考)介護施設で起きた主な事故・事件・虐待
(注)この他、2015年11月に川崎市の「Sアミーユ川崎幸町」にて入居者3名
がベランダから墜落死している。なお、出所は週刊朝日2015年9月25日号
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表9 介護支援専門員の合格率低下つづく
(出所)高齢者住宅新聞2016年2月3日号
(参考)介護保険とケアマネージャーの役割
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表10 社会福祉法人の闇
―「あそか会」のケース―
(出所)朝日新聞2015年11月16日
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参考資料 1 神奈川県介護保険者別データ集
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(注)高齢者率は「平成22年国勢調査」より引用、他は厚生労働省の資料
参考資料 2 藤沢市に対する見方
15
(出所)朝日新聞2016年2月1日
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