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金融機関の現在と今後について - NIKKEIBP Blog

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金融機関の現在と今後について - NIKKEIBP Blog
目次
・はじめに
1、 金融とは
(1)
金融機関の役割
2、 銀行業
(1)
銀行業界の歴史
(2)
銀行の 3 つの機能
3、 銀行の社会的位置づけ
(1)
銀行の役割は「信用の創造」
(2)
社会における銀行の位置と業務
4、 銀行の組織編制
5、 さまざまな銀行
(1)
日本銀行
(2)
普通銀行
(3)
信用金庫
(4)
信用組合
6、 メガバンク
7、 現在の金融業界
8、 米国サブプライム問題から始まった世界的金融危機
(1)
サブプライムローン
(2)
サブプライムローンの焦げ付き
(3)
焦げ付きの影響
(4)
リーマンブラザーズの破たん
(5)
世界的金融危機の背景と要因とは
(6)
危機の全治は 1 年半∼3 年
9、 日本における金融危機の影響
(1)
リーマンブラザーズ破綻・日本での影響
(2)
地域金融機関の現状
10、まとめ
(1)金融危機の今後
11、感想
pg. 2
・はじめに
今回、私が卒業論文のテーマを「銀行業界」にした理由は、平成21年4月からの就
職先が銀行であること。また、就職活動においても銀行業界を中心に回り、銀行業界の
様々な魅力を感じもっと銀行業界の内部のことや、いまどんなことが起きているのか、
これから銀行業界はどうなっていくのかを、銀行業界の中で働く行員として学びたいと
思ったからです。
銀行業界ときけば固いイメージなどを持ちがちだと思いますが、私が魅力に感じた主
な3点は「究極の接客業であること」、
「お金を扱うことで人との深い信頼関係が必要不
可欠であること」
、
「多くの人の生活に関われること」の3点です。預金をほかの人に融
資する。その融資先の会社が商品を顧客に提供する。このように間接的ではありますが、
たくさんの人とかかわれることができるのです。
日本にも多くの銀行がありますが、大体の銀行が取り扱っている商品は一緒です。な
ので、重要になるのがそこで働く「銀行員」なのです。銀行業界では、働く人間自体が
商品になり、商品がどのようにしてお客に提供されるのかが重要なのです。自身の財布
の中身を信頼して、見せることができる銀行が一番、顧客を作ることができると考えら
れます。
信頼創造が重要な銀行業界ですが、現在は米国サブプライムローン問題に端を発した
金融危機が世界経済を大混乱に落とし込んでいます。日本でも貸し渋りがおきたり、新
生銀行、あおぞら銀行といった金融機関が赤字に転落したりしています。今後、金融業
界はどのようになっていくか、どのようにして採算をとっていくかも金融危機の経緯を
まとめたうえで考えたいと思います。
1、金融とは
金融とは「金銭の融通」を意味する。広義では「お金の流れ」という意味。言い換え
ると一時的な過不足を調整するためのお金の貸し借りのことである。 1経済を有効に機
能させるためには金融という血液が不可欠なのである。なぜなら、お金は持っているだ
けでは、いつまでも増えない。そこで、ほとんどの人はすぐ必要としないお金を銀行に
預けたり、株などの金融商品に変えておく。そうすることで、お金を増やすことが可能
だからである。
(1) 金融機関の役割
では、金融機関の役割とはなにか。金融機関の役割とは、「お金を貸したい人と借り
1
http://www.moneypartners.co.jp/beginners/glossary/glossary_ka.html#ki
pg. 3
たい人とのパイプ役」である。上文でも述べたように、世の中には、お金が余っている
人もいれば、足りない人もいます。その両者をとりもつのが、銀行(金融機関)なので
す。銀行(金融機関)では、資金に余裕のある人から預金や貯金をしてもらい、それを
元手に、資金を借りたい人に貸し出します。つまり銀行は、世の中のお金の流れをよく
する役割を担っているのです。
図12
では、銀行は預かった以上に、どうやってお金を増やしているのでしょうか。実は金
融機関)では、資金に余裕のある人から預金や貯金をしてもらい、それを元手に、資金
を借りたい人に貸し出します。つまり銀行は、世の中のお金の流れをよくする役割を担
っているのです。
銀行は個人や銀行から借りたお金を、企業の事業資金や個人の住宅ローンなどに貸し
出して運用している。貸した相手から利息を受け取り、こんどはお金を預けてくれた個
人や企業に利息を付けて返す。この差額が銀行の利益(業務純益)になるのです。
2、
銀行業
1、銀行の歴史
日本のメガバンクはバブル崩壊後に大きな変革期を迎えました。下の図2のように大銀
行は合併を繰り返して現在の姿に行き着き、日本に3大メガバンク(三菱東京 UFJ・三井
住友・みずほ)が誕生しました。銀行の歴史は統合と合併の繰り返しともいえるでしょう。
2
http://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/shakai/keizai/05_1_ginkou.htm
pg. 4
三和銀行
東海銀行
東京銀行
三菱銀行
┗━━ 合併(2001 年) ━━┛
┗━━ 合併(1996 年) ━━┛
UFJ銀行
東京三菱銀行
┗━━━━━━ 合併(2006 年 1 月) ━━━━━━┛
三菱東京UFJ銀行
太陽神戸銀行
三井銀行
┗━━ 合併(1990 年) ━━┛
太陽神戸三井銀行
(1992 年∼さくら銀行)
住友銀行
┗━━━━━━━ 合併(2001 年) ━━━━━━━┛
三井住友銀行
富士銀行
第一勧業銀行
日本興行銀行
┗━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┛
合併(2000 年)
みずほ銀行
あさひ銀行
大和銀行
日本長期信用銀行
┗━━ 合併(2002 年) ━━┛
(1998 年経営破たん)
りそな銀行
↓
新生銀行
図23
そして、2007年10月に郵政民営化により「ゆうちょ銀行」が誕生しました。ゆ
うちょ銀行の総資産額は約222兆円。これは、現在1位の三菱 UFJ フィナンシャル
グループ(以下、三菱 UFJ FG)をおおきく上回り、3位の住友フィナンシャルグル
ープの2倍以上の額である。既存のメガバンクにとっては、顧客や融資先の移動などの
影響が出るのは必至である。
また、メガバンク3行は、公的資金を完済し、不良債権の処理も一段落。しかし、
期待していた消費者金融が、貸金業法改正で軒並み大幅赤字に転落。三菱 UFU FG は
アコムを中心に、ノンバンク(預金を受け入れずに、融資を行う会社)関連で約130
0億円もの減益(経常利益)となった。グループ全体で収益、利益が伸びたのは、売上
3
http://www.777money.com/torivia/ginkou.htm
pg. 5
高3676億円、経常利益203億円の三菱 UFJ ニコスが連結決算(資本的および実
質的に支配従属関係にある法的に独立した複数の会社からなる企業集団を、経済的な観
点から単一の組織体とみなして行う、その経営成績および財政状態を把握するための決
算のこと)に加わったからである。
ゆうちょ銀行
総資産
222兆2250億円
純資産
7兆6670億円
直営店
234ヵ所(ATM 全国2万6000台)
従業員数
1万1600名
総資産
三菱 UFJFG
みずほ FG
三井住友 FG
187 兆2810億
149兆8800億
100兆8583億円
円
円
15 兆円
時価総額
9兆9739億円
9兆1257億円
3兆9012億円
経常収益
6兆940億円
4兆996億円
経常利益
1兆4570億円
7481億円
自己資本比
12.58%
12.48%
不良債権残
1兆 3258 億円
7986億円
11.28%
率
1兆2467億円
7386 億円
高
図34
(2)銀行の3つの機能
銀行は、個人や企から預金という形で資金を集め、個人や企業に融資する金融機関で
す。銀行の機能の秘密は、預金勘定にあります。この預金勘定が「金融仲介機能」、
「信
用創造機能」、「決済機能」の3つの銀行の主要な機能を生み出しています。
1、金融仲介機能
金融仲介機能とは、お金の借り手と貸し手を仲介することです。銀行は、お金の運用
先を探している預金者と、お金の調達を必要とする企業を見つけ出してくれます。借り
手と貸し手のニーズをうまく調整したり、銀行がプロの目で貸出先を選択することによ
って、金融取引に伴うリスクやコストを軽減させることができます。
2、信用創造機能
信用創造機能とは、預金を持つ銀行が果たす役割の一つです。銀行は預金の一部を現
4
参考資料:業界地図
pg. 6
金で手元に残し、残りを貸し出します。企業に貸し出されたお金は取引先に支払われ、
取引先からまた銀行に預金されます。これを繰り返すことによって預金通貨というお金
が新しく生み出され、銀行全体の預金残高は、どんどん増えていきます。
取
預
貸し出しに回す→
金
預 金 銀
者
→
企
支払→
業
引
先
預金 銀
→
・・・
行
行
一部を現金で手元に
置く
図4 信用創造機能
3、決済機能
決済機能とは、銀行の預金口座を利用することにより、現金を使わずに口座振替で送
金や公共料金の支払いなどができることです。
これらの3つの機能は、すべて銀行の信用に支えられています。信用のある安全な銀
行には預金が集まり、豊富な資金が確保されます。銀行は、豊富な情報力を使って貸出
先の信用を見極めることができるのです。
銀行が信用を保つには、社会的な責任とリスクをとって仲介を行っているという自覚が
必要といえます。
3、
銀行の社会的役割と位置づけ
私たちの暮らしになくてはならない銀行。社会的にどんな役割を担っているのか。ま
た、どんな役割が求められているのでしょうか。
(1)銀行の役割は「信用の創造」
銀行業は、産業社会や経済環境の変化に対し自らを変革し、それを支え、また、と
きにはそれをリードしていく存在である。
別な言い方をすれば、産業と銀行業の発達は切っても切れない関係にある。銀行業
の社会的な役割は、大きな意味で「経済社会発展の要」にある。これこそが、まさに銀
行業の存在意義であり、銀行が必要とされる理由なのである。
具体的にいえば、経済活動において避けられない金融というリスクを、銀行が預金
や融資や決済業務を通じて経済の血液ともいえる資金を流通させ、信用創造行うことに
よって引き受けているということである。
pg. 7
つまり銀行(銀行員)は、
「お客様(社会・法人・個人)のために何ができるのか」
という自らへの問いかけを常に忘れてはならないし、「社会に貢献できる仕事に携わっ
ているのだ」という、その「社会的役割」と、「公共的使命」を常に意識して、日々の
信用創造業務に励むことが重要なのである。
(2)社会における銀行の位置と業務
金融の自由化、証券化、国際化などの進展により金融業界における垣根がどんどんな
くなってきている。
銀行業務の最大の特徴は、預金業務と決済業務である。なぜなら、貸出業務につい
ていえば、すでに、生命保険会社、損害保険会社、証券会社、クレジット会社、信販会
社、消費者金融会社などのそれぞれが貸金業務をなんらかの形態で行っているからであ
る。また決済業務の一部である公共料金の代金回収についても、コンビニエンスストア
などの店頭において行われている。
私たちの経済社会を大きな視点で眺めると、3つの参加者(経済主体)によって構
成されている事がわかります。
商品やサービスを購入する個人
商品やサービスを生産する企業
公共活動(社会保障や行政サービス、企業への産業振興など)を行う国、地方
公共団体
個人や企業が物を買ったり、国や地方公共団体が学校や道路を建設したりと、お金は
私たちが豊かな社会生活を営むために活動するあらゆるシーンで使われます。しかし、
個人も、企業も、そして国や地方公共団体も、いつも必要なだけのお金を持っていると
は限りません。そこで、お金の不足している者がお金の余っている者に、利息を支払う
ことを条件にお金を融通してもらうことになります。この経済活動を行っているのが銀
行(金融機関)になります。
4、
銀行の組織編成
銀行の機能は8つの部門から成り立っている。銀行という組織は、基本的には、①企
画部門・経営部門(企業の経営戦略、経営企画を行う部門)、②人事部門(企画部門が
立案した企画を実現するための人員の適材適所や配置を調整する部門)、③営業推進部
門(業績を上げていくための施策実行部隊である営業推進を図る部門)、④審査部門(取
引先の審査や融資の審査を行う部門)、⑤事務部門(金融商品の取り扱いによって事務
処理を行う部門)、⑥法務部門(義務手続き等が法律上問題ないか、取引先と締結した
契約が法律上有効か否かなどを判断する部門)、⑦システム部門(効率的な情報処理や
顧客データベース等のシステム管理運営を行う部門)、⑧総務部門(営業活動、事務、
pg. 8
システムなどの営業効率などの管理などを統括する部門)を備えることで成り立ってい
るのです。
しかし、それぞれの銀行(金融機関)の生い立ち、市場規模、戦略の違い、時代の環
境の変化や合併・統合などにより組織の在り方は違ってきます。逆にいえば、組織図を
見れば、現在の銀行が、どの分野に力を入れ、どのような戦略を取ろうとしているのか
が見えてくるのです。
メガバンクなどでは、国際部門、投資銀行部門、リテール営業部門、法人営業部門
などの事業戦略の強化を図っています。
では次に銀行組織の各部門と、その主な仕事内容、そして魅力について紹介したいと
思います。現在の大手銀行における組織の各部門は、呼称は異なりますがおおむね以下
のようになっています。
商品開発部門(リテール)
個人顧客向けの商品やサービスの開発を行う。融資商品をはじめとする預金・
運用商品やダイレクトバンキング商品の企画開発などが大きな課題の一つであ
る。この仕事では、顧客への最高のサービスを開発提供できるという使命感や緊
張感、達成感を味わうことができるのが魅力である。
マーケティング部門(リテール)
マーケティング部門では、銀行に取引口座のある顧客のデータベースや市場調
査等の活用により、新しい金融商品のプロモーチョンや新商品開発のサポートな
どを行っている。銀行の業績向上につながるダイレクトメール活用の販売促進キ
ャンペーンなどでの成果を直接実感できる魅力がこの部門にはあります。
個人営業部門(リテール営業・ダイレクトバンキング)
リテール営業は、一人ひとりの顧客に対する資産管理・運用サービスの充実に
力を入れている。具体的には、個人顧客の開拓と FP(フィナンシャル・プラン
ニング)サービスの紹介等の営業活動を行っている。新しい金融サービスの道を
開拓していくパイオニア的な側面が体験できる。
ダイレクトバンキングは、電話、携帯電話、インターネットを通じて、横イ
ン残高照会や振込、投資信託、ローンなどの取引が行える仕組みになっています。
利便性の提供を仕掛けていくという金融サービス部門のさいぜんせんにいると
いう実感ンがこの部門の魅力です。
法人営業部門(ホールセール)
企業の資金効率の多様化、事務効率化等のニーズに対して、大口融資、シンジケ
ートローン(協調融資のこと。複数の金融機関が共同して協調融資団(シンジケー
ト団)を組成し、各金融機関が同一の貸出条件のもと同一の契約書に基づき、融資
を実行する契約形態のことを言う)、企業再生・再編、M&A、資産(不動産)・債
権の流動化、株式引受や外国為替等の経営課題解決のための金融サービスの提供を
pg. 9
行う。
具体的には、顧客企業の財務内容や経営状況を把握し、顧客企業が抱えている
ニーズや課題を探し出すことが重要である。解決の方向性が見えれば、あとは、コ
ーポレートファイナンス部門などの他部門と協力したり、場合によっては信託銀行
などの力を借りて、顧客企業の問題解決に力を注ぎます。そこに、この部門の魅力
があると考えられます。
法人営業部門(中小企業)
自分が担当する地域(支店)の中小企業に対して、設備投資資金等の融資、資金
調達、資産運用の提案など、幅広い営業活動を行います。具体的には、顧客企業の
経営者を訪問面談し経営環境や将来ビジョンなどを聞き出し、顧客企業の事業内容
にふさわしい提案を行い、顧客企業の成長発展をサポートしていく。顧客企業の業
績成果の向上を感じられるのが、この部門の魅力である。
コーポレートファイナンス部門(シンジケートローン/
証券化)
コーポレートファイナンス部門は、従来の融資では対応しにくかった課題を解決
する方法を顧客企業に対して提案・提供する。たとえば、シンジケートローン(複
数の金融機関からなる融資団による大型融資)
、リース料債権やオートローン債権、
クレジットカード債権などの証券化を行うことによる資金調達や M&A なども手掛
けることで、企業サポートの企画戦略立案から実行までを担当する。
資金調達面での悩みにより事業拡大にブレーキがかかっている企業に対して問
題解決方法を提案し、事業拡大のための支援を行うという充実感がこの仕事の魅力
である。
システム企画部門(IT/システム)
システム産業としての銀行の中核となるインターネットバンキング等のシステ
ム企画から設計、開発、導入までを行う。
証券(プライマリー)
企業や地方公共団体といった取引先を開拓し、債権発行の引き受けによる資金調
達(直接調達)のサポートを行う。
市場(金利・証券・為替)部門(トレーディング)
金利・証券・為替マーケットにおいて、積極的にリスクをとりながら収益を稼ぐ。
また、為替や資金、デリバティブ商品の値付けを行い、市場の価格変動リスクを読
みつつ資金の投資運用を行う。
市場営業(金融工学)部門
市場営業部は、デリバティブや為替レートに連動した、金融工学に基づいたモデ
ル等の開発を行うことを課題としている。
投資銀行・国際部門(事業金融プロジェクトファイナンス)
プロジェクトファイナンスは、技術力など企業が行う事業そのものが生み出すキ
pg. 10
ャッシュフローに返済原資を限定する融資。
投資銀行・国際部門(海外コマーシャル)
すでに海外進出している日系企業や進出予定のある日系企業、非日系企業(地場
企業)などへのファイナンスを中心としたサービスを行う。また行政府や自治体と
の折衝、情報収集・提供などを行っている。
特定職 運用相談
定期預金、外貨預金、投資信託、生命保険など顧客に合わせた資産運用をアドバ
イスする。
運用相談業務は、営業時間中は主に来店された顧客への商品案内および提案と、
電話による営業活動を行う。
特定職 融資
カードローンや住宅ローン、事業向けローンなどの融資(ローン)の相談や申し
込みを受け付ける。新規融資以外にも、借換えなどにも対応する。顧客ニーズを把
握し、返済計画や金利等のアドバイスを通じて顧客の役に立てることが、この仕事
の魅力といえる。
特定職 外国為替
外貨預金(普通・定期預金)の口座開設、預入れ、引出し、解約手続きなどの業
務を行う。
また、顧客企業の貿易業務や資金調達に伴う為替予約などの外国為替業務を通じ
て顧客の生の声に直接触れることができるところに、この仕事の他の新規があると
いえる。
5、さまざまな銀行
私たちの生活において銀行の存在は欠かせません。アルバイトの給料を預金したり、
田舎から仕送りがされたり、携帯電話代、公共料金を自動的に払ってくれたりと、お金
にまつわるいろいろな仕事をこなしてくれます。距離や時間を超えて「お金」という私
たちの生活に最も大切なものを流通させ、守っているのです。
私たちは働いて得たお金を全部使ってしまうのではなく、将来に備えて蓄えます。
これを「貯蓄」といいます。一方、企業や国、地方公共団体では、ものを生産したり、
同道路や学校を作るために多くのお金を必要としている。じゃた、個人でも家を建てた
いけど資金が足りないといった人々がいます。自前のお金で足りればいいのですが、足
りない時は銀行に貯蓄されているお金を借りることで解決します。
また金融には「間接金融」と「直接金融」の二つのタイプがあります。
銀行などの金融機関が家庭や企業から預かったお金を別の企業や国、個人に貸し出
すことを「間接金融」といいます。つまり、お金を預ける人とお金を借りたい人を金融
pg. 11
機関(銀行)が仲立ちをするのです。間接金融の業務を行うのは銀行の他にも、保険会
社、公的な金融機関、投資信託などがあります。これに対して「直接金融」は、お金を
必要としている国や企業が国際・社債(会社の借金のようなもの)などを発行して世の
中から直接集めることを言います。
間接金融を担うのが銀行といっても、業務内容により様々な形態に分かれています。
以下で代表的な金融機関とその役割について説明しようと思います。
(1) 日本銀行
日本銀行は、日本の中央銀行で、いわば全国の銀行の総元締めの役割を担い「バ
ンク・オブ・バンク」ともいわれる。その業務内容は大きく分けて4つに分けるこ
とができます。
日本で唯一の
発券銀行 として銀行券(紙幣)を発行する。財務省
印刷局で印刷されたお札は、日本銀行を通過することではじめてお金にな
ります。その手続きが済むまでは、形式的にはお札はただの紙切れにすぎ
ないのです。
「銀行の銀行」として、全国の金融機関を相手にお金を預かったり、
お金を貸し出したりする。金融機関は集めたお金のすべてを手元に持って
いるわけではありません。貸し出したり、資産として運用したりしている
ので、帳簿のうえではお金はありますが、手持ちのお金がなくなった時な
ど、こうした時に日銀(日本銀行)からお金を借りるのである。したがっ
て一般企業や個人との直接取引はおこないません。
そうした金融機関とのお金のやり取りを利用して、公定歩合の変更な
どの金融政策を練り、国全体の金融を調整して経済の安定を図る「金融政
策決定機関」としての役割がある。日銀に限らず、世界各国の中央銀行に
とって金融政策の決定は最も大きな役割といえます。
「日本国政府の銀行」として、政府のお金の出し入れはすべて、日本
銀行に預けられた政府の預金を通して行われます。所得税などの国税は日
本銀行に集められ、そこから公共工事代金の支払いや補助金、国際援助資
金などの支出が行われる。
(2) 普通銀行
世の中から広く預金を受け入れてそれを貸し出し、また、送金や振り込みなどの為替
を主な業務とする銀行。この普通銀行が、私タッチの生活にもっとも密接にかかわって
います。普通銀行にもいくつかのタイプがあり、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、
外国為替専門銀行、在日外国銀行などがあります。
①
pg. 12
都市銀行
都市銀行とは、東京や大阪などの大都市に本店を置いていて、全国規模の業務展開を
している普通銀行です。短期融資を中心に行う銀行で、預金者からお金を預かり、それ
を企業などに貸付けることで利益を出しています。全金融機関の資金量の4分の1を、
都市銀行が占めています。
②
地方銀行
地方銀行とは、各都道府県に本店を置いていて、各地方を中心に営業を展開している
普通銀行です。小口取引が主体で、取引対象を地元の中小企業や個人においています。
資金量は全金融機関の 1 割程度です。
全国銀行協会に正会員として加盟している地方銀行は、2004年7月末時点で64行
です。
③
第二地方銀行
第二地方銀行とは、1989(平成元)年以降に、相互銀行が普通銀行へ転換してで
きた地方銀行です。全国銀行協会に正会員として加盟している第二地方銀行は、200
4年7月末時点で49行です。
④
信託銀行
信託銀行とは、資産管理を代行し、信託業務を行う銀行です。お金、株、土地な
どの資産を預かり、本人にかわって資産を動かし、その管理・運用により利益を出
しています。長期にわたって資金を調達・運用する長期金融機関としての性格を持
っています。普通銀行が預かるのはお金だけですが、不動産や有価証券(株券、国
債など)代表的な日本の信託銀行としては三菱 UFJ 信託銀行、住友信託銀行、中央
三井信託銀行、みずほ信託銀行の4行をあげることができます。
⑤
長期信用銀行
長期信用銀行とは、大企業向けの長期融資を主な業務とする銀行です。長期資金の調
達に「金融債」という債券を発行して、資金を集めています。
長期信用銀行は、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、日本興業銀行の3行があり
ました。しかし、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行は、バブル時代に不動産関係の
融資に手を出して、バブル崩壊後に不良債権化し、2行とも経営破綻してしまいました。
現在は、新生銀行(旧 日本長期信用銀行)と、あおぞら銀行(旧 日本債券信用銀行)
に行名を変更しています。
2002年4月1日に、日本興業銀行は第一勧業銀行・富士銀行とともに、みずほ銀
行とみずほコーポレート銀行に再編されました。
2004年4月1日に、新生銀行が普通銀行に転換したため、長期信用銀行はあおぞ
ら銀行のみとなりました。
2006年4月1日に、あおぞら銀行が普通銀行に転換しました。
pg. 13
(3) 信用金庫
信用金庫は、中小企業や地域住民のための非営利の金融機関です。営業地域で集めた
資金は、その地域に還元されます。2004年2月9日時点で、信用金庫は全国に30
7あります。
1951(昭和26)年に信用金庫法が制定され、以前から存在していた信用組合の
うち、金融機関に近いものが信用金庫に転換しました。
信用金庫では、預金・貸付・手形割引・内国為替・外国為替などの業務を行っていま
す。融資は原則として会員を対象としていますが、預金は会員以外からも受入れていま
す。会員になれるのは、信用金庫の営業地域の在住者、在勤者、事業所所有者です。た
だし、事業者で、従業員数が300人を超える場合または資本金が9億円を超える場合
は会員になれません。
(4) 信用組合
信用組合は、組合員の出資による協同組織の法人で、組合員の相互扶助を目的とする
非営利の金融機関です。2004年1月16日時点で、信用組合は全国に185ありま
す。
信用組合は、1900(明治33)年の産業組合法によって制定されました。194
9(昭和24)年には中小企業等協同組合法が制定され、これに基づいて現在の信用組
合に進展しています。
信用組合では、預金・貸付・手形割引・内国為替・外国為替などの業務を行っていま
す。組合員が預金した資金を組合員が必要なときに利用するシステムで、預金の受入れ
と貸付けが組合員に限られているところに特徴があります。組合員になれるのは、信用
組合の営業地域の在住者、在勤者、事業所所有者です。ただし、事業者で、従業員数が
300人を超える場合または資本金が3億円を超える場合は、原則として組合員になれ
ません。
組織
営業地区
銀行
株式会社
なし
信用金
会員の出資に
あり
庫
よる非営利法人
信用組合
組合員の出資に
よる非営利法人
会員資格
制限なし
地区内の従業員300人以下また
は資本金9億円以下の企業、個人
あり
地区内の従業員300人以下また
は資本金3億円以下の企業、個人
図5 銀行・信用金庫・信用組合の違い
pg. 14
業務の範囲
制限なし
預金については
制限なし
原則として組合
員に限る
6、 メガバンク
統合されて減少されてきた都市銀行は、規模においてほかの銀行を大きく引き
離す。メガバンク化とリテール戦略を同時に標榜している。
都市銀行は三菱東
京 UFJ 銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行の5行である。
三菱東京 UFJ 銀行−合併により世界最大級の銀行誕生
東京三菱銀行と UFJ 銀行が経営統合し「三菱東京 UFJ 銀行」となった。リテ
ール事業戦略(世界トップ水準の商品・サービスの提供)、法人事業戦略(国
内外の日系企業取引においてなんばー1の地位確立)、受託財産事業戦略(銀
行系トップの運用規模をさらに拡大)の3つが事業戦略の柱である。
なお、システム統合については基本的には両行の既存システムを並存させ、
海外拠点システムや市場システムは、原則として東京三菱銀行のシステムに統
合するが、普通預金の入金や、支払いや振り込みなどの基本的サービスは両行
いずれの拠点でも提供できる体制をとっている。同時に、24時間365日の
ATM サービス、口座振替システム、テレフォンバンキングなどを中心とする UFJ
銀行の優れた点を積極的に取り入れ、活用する方針をとっている。
みずほ銀行−最大級のネットワークを誇る
みずほ銀行は、個人、国内一般事業法人及び地方公共団体を主な顧客とした
強固な顧客基盤にくわえ、全国都道府県に広がる有人店舗網、インターネット
支店、ATM 等の利便性の高い国内最大級のネットワークをベースに、以下各グ
ループによる戦略的な業務展開を図っている。
①
個人グループ(リテール強化、住宅ローンの積極的展開、迅速・簡便
なローン受け付け・実行体制の構築、戦域マーケットへの取り組み、クレジッ
トカード事業の強化)、②法人グループ(新規開拓スタッフ 500 人名体制によ
る優良中堅・中小企業の新規取引獲得)、③公共グループ(地方自治体関連取
引のきめ細かい推進)、④市場 ALM グループ(先進的な ALM 運営とリスクコン
トロール能力の強化)、⑤プロダクト部門(証券と共同店舗拡大、IC 化推進、
貿易金融 EDI への対応推進)。これらにより高付加価値の総合金融サービスを
提供していく。
pg. 15
みずほコーポレート銀行―法人顧客の基盤に強み
みずほコーポレート銀行は、事業法人および金融・公共法人などの、層のあ
つい顧客基盤に強みをもっている。顧客の様々な財務ニーズや経営ニーズに的
確にこたえるソリューション営業を中核としたリレーションシップマネジメ
ント体制がそれを支える柱である。また、シンジケーションビジネスを中心と
する資産回転型ビジネスモデル、アジアにつよいみずほとしての国際業務への
取組み、企業再生への強化推進などを戦略の中心に据えている。
三井住友銀行―事業展開のスピードが特徴
三井住友銀行は、2005年3月時点において、総資産預金、貸出、業務純
益においてトップランキングの銀行である。2001年4月にさくら銀行と住
友銀行が合併して発足し、2002年12月に株式移転により持ち株会社三井
住友フィナンシャルグループ(SMFG)を設立し、その 100%子会社となり、グ
ループの基幹金融機関としてグループを牽引している。たとえば、リテール分
野については、ATM によるカードローン推進販売や医師開業ローン(担保・保
証人不要、最長10年、最大 5000 万円、申込から融資まで 10 日間を目安)を
販売するなど、その事業展開のスピードに特徴がある。
りそな銀行―従来の常識にとらわれないサービス向上を目指す
りそな銀行は、再生銀行として、「厳格に」「嘘をつかない」「先送りしな
い」を基本方針として掲げ、黒字経営への体質転換とブランドの回復を最大の
経営課題として改革を進めている。成果は着実胃に表れており、顧客接点であ
る店舗サービスにおいても、「待ち時間0運動」や「窓口営業時間の拡大」「次
世代型店舗の試行」など、従来の銀行の常識にとらわれないサービス向上の取
り組みが評価されている。
7、現在の金融業界
(1)銀行業界の再編
①金融ビックバン
「ビックバン」とは宇宙の誕生が大爆発によりできあがったことをあらわしたことば
である。金融ビックバンとはこのビックバンになぞらえて、金融システムのこれまでの
慣習を捨てより自由とするための大改革を実施することを総称して呼ばれているもの
pg. 16
です。特に金融ビックバンといった場合にはサッチャー首相が手がけた英国証券制度の
大改革を指し、これに対比して日本が実施する金融改革を「日本版ビックバン」と言っ
ています。
本家英国の金融ビックバンの始まりは、戦後の英国証券取引所が流通市場の重要な役
割を演じてきたものの、旧来の制度や慣習が妨げとなり、自由化を進めたニューヨーク
市場に徐々に取引が流れていった経緯から、制度改正による自由化を進め英国市場の復
権を図ったことである。自由化に伴う外資の参入からウィンブルドン化現象(自国の市
場を外資が独占してしまうといった現象)による英国証券会社の整理統合と言う痛みが
伴ったものの、結果として英国市場が国際金融市場として復活する契機となったのです。
日本は1996年10月17日に経済審議会の金融作業部会が97年度中に銀行、証
券、保険の垣根を実質的になくし、99年度までに商社などを含め、あらゆる業態が金
融サービスを提供できるように制度改正を行うことを提言したことが始まりである。
これを受け橋本竜太郎首相(当時)は11月に6大改革の柱の1つとして「日本版ビッ
クバン」構想を発表した。この構想は金融を取り巻く規制を一気に取り除き、2001
年までに東京をニューヨークやロンドン並みの国際金融市場として再生することが目
標となっている。
日本版ビックバンの第一弾は、98年4月に施行した改正外為法による為替取引の自由
化である。これは銀行の専業であった外国為替業務の規制を撤廃し、誰でも自由に外為
取引ができるようにしたものである。そして、第二段が98年12月に施行した金融シ
ステム改革法である。これは証券業務の規制を解禁し、取引の自由度を高めたものであ
る。
これまでの金融制度改革としては92年6月に成立した「金融・証券制度改革法」があ
り、この改革法はこれまで禁じてきた他業務への参入を解禁し、子会社方式による他業
務への参入を認めた。子会社で実施できる業務は既存業界への影響から業務制限がつく
ものであったが、業務の垣根を崩す第一歩となった。しかし、国内市場の活性化や地位
向上にはならず、次なる金融改革としてこの日本版ビックバンへと至ったと言える。
8,米国サブプライム問題から始まった世界的金融危機
2007 年夏におきたサブプライム問題を震源とする世界金融危機は、2008 年 9 月 15 日
のリーマンブラザーズ破綻を契機に金融激震の様相を一段と濃くし、世界を「霧の中の
不安」に突き落した。米国を軸とする各当局は、相次ぐ大規模な金融打開策を繰り出し
た。
今回の迅速かつ大胆な打開策は 1990 年代後半の金融危機の日本の苦い経験に照らせ
ば、驚くというよりも感動を覚えるものである。米国の 70 兆円規模の金融安定化策に
pg. 17
せよ、EU 諸国の米国規模を超える大胆な公的資金投入策や預金保護拡充策にせよ、誰
もが「これで株式市場もひとまず落ち着き、信用収縮も鎮静化する」と期待した。
だが、金融溶融(メルトダウン)状態にはなかなか歯止めがかからず各国株式市場は
方向感覚を失ったまま乱高下を繰り返し、緊張状態は続いている。NY 発の衝撃波は早々
に収束すると安易に期待できず、世界をさらなる金融大津波が襲う恐れがある。
ではなぜ、不透明な「霧と不安」が晴れないか。今回の世界的な金融危機は 80 年ほ
ど前の 1929 年 10 月 24 日の NY 株暴落とそれに続く世界同時恐慌の悪夢を思い出させる
点で、人類史上「100 年に 1 度の異変」という「歴史」的な現象とも言われている。「歴
史は繰り返さない」という観点から見れば、30 年代の危機と今回の金融危機を同一視
することはできない。核心は、今回の危機が表層的な「経験知」では計り知れない諸要
因で生起していること。つまり、今回の金融危機が市場はじめての「特異な本質」を持
っていることだ。
今、日本では大手銀行に巨額融資の申し込みが殺到している。三菱東京UFJ銀行、
三井住友銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ銀行の4行だけでも合計20兆円を超
えている。主役は大企業、トヨタ自動車、三菱商事、オリックス、東芝といった日本を
代表する一流企業が資金確保のために大手銀行の門前に市をなしているのである。理由
は、9月のリーマンショックによってコマーシャルペーパー(CP:信用力のある優良
企業が短期資金の調達を目的に発行する無担保の約束手形)、社債といった直接調達市
場が崩壊しているからだ。機関投資家は、優良企業のCP、社債ですら買わなくなって
しまっているのが現実である。
ではなぜこんなにも金融危機が世界規模になってしまったのでしょうか。主に金融危
機の震源となったサブプライム問題とリーマンブラザーズの破たんから目をむけたい
と思います。
(1)サブプライムローン
「サブプライムローン」とは、所得の低い人やクレジットカードで返済延滞を繰り返
す人など、いわゆる信用力の低い個人を対象とした住宅ローンのことです。通常の住宅
ローンに比べて金利が高く設定されている分、審査基準は緩くなっています。米国で住
宅ブームが本格化した 2004 年ごろから普及・拡大しました。今日では、米国で住宅ロ
ーンを借りる人の約 15%が利用していると言われ、残高は米国における住宅ローン全
体の 1 割程度にまで達しています。
一般にサブプライムローンは、最初の 2 年ほどは金利が低く固定され、それ以降は大
幅に金利が高くなり、なおかつ変動金利が採用される仕組みになっています。そのため
利用者は、購入した住宅の価格が値上がりした時点で、その住宅を担保にローンを借り
pg. 18
増して対応したり、信用力が高い個人向けの「プライムローン」に借り換えをおこない、
金利負担を軽減するといった措置を講じてきました。
(2)サブプライムローンの焦げ付き
図65米国の住宅ローン残高とサブプライムローン比率
しかし 2006 年、米国の住宅ブームが終わって住宅価格が上昇から下落に転じると、
このような担保価値を裏付けとした借り増しや借り換えができなくなりました。FRB(米
連邦準備制度理事会)が実施した利上げによってローン金利が上昇したことも影響し、
ローンの返済に行き詰まるケースが続出します。 こうして破綻するサブプライムロー
ンが急増したわけですが、そもそもこのローンが一時的にでも機能したのは、米国で住
宅価格が一本調子に上昇を続け、多くの人が今後も上昇が続くと楽観的に信じたからで
す。米国では 2005 年ごろから住宅が投機の対象になる例も多く見られ、関係者のあい
だでは「住宅バブル」を危惧する声もあがっていました。いわばサブプライムローンは、
米国における住宅ブームの異常な加熱ぶりを象徴するような存在だったわけです。
問題点は、上記のような危うさにもかかわらず、多くのヘッジファンドや金融機関がサ
ブプライムローンと直接的、間接的に関係をもっていたことです。同ローンで個人に融資
した住宅ローン会社は、回収リスクの一部を回避・転嫁する目的でその債権を小口証券化
し、RMBS(住宅ローン担保証券)として売り出しました。RMBS は米国債などに比べて
利回りが高かったため、ヘッジファンドなどがこれを購入したのです。
ヘッジファンドは銀行や証券会社などから資金を借り入れ、RMBS の投資を大きく膨ら
ませていきました。さらには投資信託など、一般の投資家向け金融商品のなかにも RMBS
を組み入れるものが現れました。こうしてサブプライムローンに関連した投資が世界中に
広がるなか、2006年から2007年にかけて同ローンの焦げ付きが増加し、RMBS の
価格が大きく下落。住宅ローン会社の破綻が相次ぐとともに、RMBS に投資していたヘッ
ジファンドも、その資金を提供した金融機関も連鎖的に損失を被ることになったのです。
5
読売新聞 マネー・経済
pg. 19
図76サブプライムローン焦げ付きの経緯
(3)焦げ付きの影響
昨年から今年にかけて同ローンの焦げ付きが増加し、RMBS の価格が大きく下落。住宅
ローン会社の破綻が相次ぐとともに、RMBS に投資していたヘッジファンドも、その資金
を提供した金融機関も連鎖的に損失を被ることになったのです。ヘッジファンドから火の
手が上がり、2007 年 6 月以降、サブプライムローンを証券化した RMBS などで運用して
いた世界中のヘッジファンドが、RMBS 相場の下落にともなって巨額の損失を被り、清算
や解約停止などの措置に追い込まれるケースが相次ぎました。
その背景には、高利回りを追求するあまり、米国の住宅バブルにもとづく危い投資を大
きく膨らませてきたヘッジファンド側の問題も当然あります。しかし同時に、ファンドに
運用を委託していた機関投資家などが投資資金の引き揚げに動いたり、ファンドに RMBS
の購入資金を融資していた金融機関が追加で担保を差し出すよう要求したことなども、フ
ァンドの破綻を加速させた原因のひとつと言えます。そんななか、7 月には米国の格付け会
社が、2006 年中に発行された RMBS を大量に「格下げ」しました。投資家のあいだでは高
リスク商品に対する警戒感が急速に強まり、不安心理が世界の株式市場にも波及していき
ます。
米国の代表的な株価指数であるダウ工業株 30 種平均は、7 月 19 日に終値で初めて 1 万
4000 ドル台(14,000.41 ドル)に乗せた後、乱高下を続け、8 月 16 日には終値で 12,845.78
ドルまで下落。日経平均株価も 7 月 20 日の 18,157.93 円から 8 月 17 日の 15,273.68 円ま
で、終値ベースで 16%近くも下落しました。7 月末から 8 月にかけて株安の連鎖は欧州や
アジアの市場にも広がり、2 月末に起きた上海ショック以来の大規模な世界同時株安となり
ました。このサブプライムローン問題によって、どこの誰が最終的にどの程度の損失を被
るのかよく分からないこともあり、世界の金融市場ではいわゆる「信用収縮」が拡大。実
体経済に及ぼす影響も懸念されるようになりました。
(4)リーマンブラザーズの破綻
6
読売新聞マネー・経済
pg. 20
9月14日、アメリカで4番目に大きな投資銀行であるリーマンブラザーズが破綻
した。リーマンは、米の不動産相場の悪化を受けて商業不動産関連投資の損失が拡大
し、デリバティブ資産の価値も下落し続けていた。リーマンブラザーズの負債総額は
6,130 億ドル(およそ 64 兆 5000 億円)で、世界でも一流の投資銀行であったリーマ
ンの破綻のニュースによる影響は「リーマンショック」といわれ、世界経済に相当の
影響を及ぼしています。
① リーマンブラザーズ破綻の経緯
リーマンブラザーズの破綻の経緯ですが、サブプライム問題が騒がれた同じ頃、リー
マンブラザーズにおいても、証券大手決算を前に、サブプライム関連の巨額損失処理を迫
られ資本不足の懸念が生じており、リーマンブラザーズは増資を計画。しかし頼みの綱だ
った韓国産業銀行が、リーマンの財務内容に疑問を持ち増資引き受けに消極的になったた
め、計画は頓挫仕掛けていました。
同じ頃、米政府系住宅金融会社の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ・連邦住宅抵当公庫。
1938 年、大恐慌の為に融資余力のなくなった民間金融機関から住宅債権を買い取るために
創設した政府系金融機関)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2社の株価が、
2∼3ドル台まで下落。市場では一時、
「株主価値が消失する」と危機感が高まったが、2
008年9月7日に住宅金融2社への公的資金投入が決まったのを境に、市場の標的はリ
ーマンに絞られる形になった。
同9日には韓国産業銀行との交渉が不調に終わったとの報道が伝わり、リーマン株に
対する売りが殺到、この日だけで値下がり幅は約45パーセントに達した。事態を重く
見たリーマン経営陣は急きょ、決算発表を1週間前倒ししたが市場の不安は晴れず、リ
ーマンの株価が12日までの4日間で8割も下落、リーマンの株価は4ドル台になり、
週末にはほぼ「身売り」が確定となった。
②リーマンブラザーズの救済・買収について
リーマンブラザーズの救済についてですが、米の主要な金融機関の経営者たちが集まっ
て、救済案について協議。救済案の一つは、大手の商業銀行(仲介専業の投資銀行と異な
り、預金を集めて投資する一般銀行)であるバンクオブアメリカ(バンカメ)と、イギリ
スの大手銀行バークレイズが、リーマンを買収する案だった。
バンカメとバークレイズは、自分たちも金融危機で弱体化しているため、当局が支援
融資をしてくれない限り、不良債権を抱えるリーマンを買収できないと主張し、米当局に
公金注入を求めた。しかしポールソンは、公金注入は金融の自己責任原則を崩し「モラル
ハザード(倫理崩壊)」につながるとして断固拒否した。バンカメとバークレイズは相次い
で買収交渉から離脱した。
2008年3月、銀行のベアースターンズがJPモルガンチェースによって救済買収さ
pg. 21
れた際には、米当局はJPモルガンに300億ドルの救済融資をしている。このとき米政
府が救済融資した理由は、ベアスタは巨額のCDS(債券倒産保険)を抱え、そのまま倒
産すると62兆ドルのCDS市場がシステム的に全崩壊しかねないからだった。
リーマンは、ベアスタよりも巨額のCDSを抱えており、3月の基準を適用するなら、
当局の救済融資を受ける資格があった。しかしポールソンは、3月の危機は突然だったが、
今回の危機はそれから半年たっており、リーマンには十分な対応期間があったとして、前
回同様の救済金の支出を拒否した。
土日のNY連銀ビルでは、バンカメとバークレイズによる買収交渉と並行して、別の救
済案も検討された。それは、リーマンから不良債権だけ分離し、残った良い部門をバンカ
メかバークレイズが買収し、不良債権は米金融界の大手10−15社が資金を出し合って
損切り処分(償却)する案だった。米当局が救済資金を出さない以上、金融業界が金を出
し合って救済するしかないという案である。
リーマンが買収ないし救済されずに破綻すると、CDSなどデリバティブ市場の崩壊、
米不動産相場の下落加速など、金融界全体にとって非常に悪い影響が予測される。それな
らむしろ、米金融界が金を出し合ってリーマンを救済する方が損失が少ないという理屈だ
った。いずれの救済案もまとまらず、14 日午後には、リーマンの破綻が確定した。破綻す
ると、リーマンが発行ないし保証した債券などが不履行になる。債券の多くには、破綻時
の債務保証(債券保険)としてCDSの契約がついている。リーマンの破綻によって、C
DS発行者(他の金融機関)は保険金の支払いを迫られるが、発行者の多くは、破綻など
想定せずにCDSを発行してきたので、準備金の積み立てがほとんどない。リーマンの破
綻によって、多くの金融機関がCDS保険金の支払不能に陥る。連鎖倒産の危険がある。
一方、リーマン自身もこれまで巨額のCDSを発行してきた(発行総額は非公開だが、
おそらく市場全体の5%程度)
。これらも債務不履行となり、リーマン発行のCDSがかけ
てあった債券の価値が急落する。CDSには公開市場が存在せず、すべて店頭での相対取
引であり、しかも多くのCDSは発行後に転売され、もとの債券債務者とは全く別の投資
家が保有していることが多い。CDS市場は総額 60 兆ドル(保険金総額は 400 兆ドル)と
いう巨額だが、リーマン破綻後のCDSの混乱は予測がつかない。
リーマンだけでなく、破綻の懸念を持たれているフレディマックとファニーメイ、メ
リルリンチ、AIG、ワシントンミューチュアルといった金融機関は、いずれもCDSの
支払不能の可能性を問題にされている。
そのため 14 日午後、CDSを管轄する国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)が、
NYに店を出す金融機関を集め、リーマン関係のCDSやその他のデリバティブを所有す
る金融機関どうしが、リーマンを介さずCDSを相殺決済する予防的な仕掛けを作ろうと
した。しかし各金融機関は、先行きが不透明な中で保有するCDSの内容を機密解除する
ことに消極的で、相殺決済は一つも成立しなかった 。
CDSを相殺決済すると、相殺した後の各社の損失がいくらになるか早々に確定して
pg. 22
しまい、かえって連鎖破綻の危険が増すとの指摘も出ていた。
最終的に、韓国産業銀行やバークレイズ、バンカメなどが、交渉にあたっていたの
ですが、公的資金を入れない。との政府見解により、最後まで有力視されていたバン
クオブアメリカは一転、業界 3 位のメリルリンチの買収へ転換したことで、リーマン
ブラザーズの破綻は決定的になりました。
(5) 世界的金融危機の背景と要因とは
危機の発端は言うまでもなく、米国のサブプライム問題である。低所得者向けの返済可
能性が低い住宅ローンが焦げ付いて、大規模な不良債権が発生した。これが単なる住宅関
連の不良債権問題なら、1980 年代の S&L(貯蓄貸付組合=貯蓄と住宅ローンに特化した
米国の貯蓄金融機関)問題7と同じだが、今回は証券化された複雑な金融商品が世界中に売
られたことで問題が肥大化したのである。端的にいえば、世界中の金融機関がリスクの見
えない商品に手を出して騙されてしまったのである。
では、今回の金融危機の「本質」や、「経験知」では捉えられない「病根」とはな
にか。
100 年に一度の「異変」を発生させたメカニズムとは、米国型金融モデルの「不具合」
だといわれている。このモデルは史上初めての「世界資本主義」の高税調の具現化に必
要な役割を果たしてきた。世界成長にはマネーが不可欠である。これが注意してみるべ
きマネーマシーンの機能である。この雛型(物理的な模型)が米国型金融モデルである。
これは 71 年のドルショック、70 年代の 2 度の石油危機を経て 80 年代以降、米国金融
革命の下で醸成され、90 年代の新潮流になった証券化と軌を一にした。
その明確な契機は、80 年代後半の BIS 合意成立による銀行(預金取扱機関)の自己
資本比率規制だった。国際的な活動を行う銀行は自己資本比率 8%以上が必要になった
から、貸し出しなど総資産を抑制せざるを得なくなった。
この結果、銀行は住宅ローン、商業用不動産担保ローンなど貸し出し債権を証券化し、
投資銀行・各種ファンドなどに売り渡す(手数料ビジネス)とか、CP など短期市場で
証券化商品運用する簿外の投資会社(SIV)を創設するなど、貸出や資産運用の比重を
証券関連ビジネスに大きくシフトさせた。
これら証券化ビジネスの拡大に際し、「レバレッジ」を活用する利点がある。非銀行
は小学資本で多額の借り入れ(レバレッジ)によって資産運用が可能になった。銀行の
貸出は一般的に最大限で資本の約13倍弱までですが、非銀行は 30 倍前後が可能だっ
た。ゴールドマン・サックス、メリルリンチなどは総資産対資本倍率が約 27∼33 倍だ。
S&L 問題:貯蓄貸付組合(S&L)は当時の日本の住専と同じように、住宅抵当融資の
提供を主要業務とする金融機関。バブル崩壊による不動産不況によって 1980 年代後半に
次々と破たんし、米国は 89 年に整理信託公社(RTC)を設立して集中的に処理。約 1000
憶ドルの処理費用が投じられた。
7
pg. 23
96∼07 年の米国を軸とする世界同時好況をささえた主役は、証券化の旗手である投
資銀行だ。しかし異変が 08 年 3 月 16 日に生起。全米第 5 位の投資銀行のベアー・ス
ターズに対する異例の救済。ベアー救済を見過ごせば金融市場に信用収縮の連鎖が広が
ると当局が判断したためだった。
当局も異例な非銀行救済はそれ以上起こらない「特殊ケース」と考え、この異例救済
でかえって金融市場は最悪期を脱し徐々に鎮静化すると読んだ。だから 2008 年秋に強
欲で鳴るリーマンの危機が表面化したとき、当局は「ベアー以後の救済」は想定外だっ
たし、市場主義的伝統の遵守もあって、リーマン破綻を決定した。
しかし現実の金融世界では、FRB(連邦準備銀行)の監督下にある銀行と、規制当局
からかなり自由度をあたえられる非銀行などが、証券化やデリバティブ、各種市場を通
じて複雑、多様に関連し倒産させられない関係が形成されていた。
当局は、90 年代後半以降の、米国型金融モデルが支配する「新しい現実」を見過ご
していた。
リーマン破綻で、金融危機が全米の銀行、投資銀行、保険など全金融機関巻き込む大
津波に転化、さらに欧州を急襲するとは全くの想定外だったのである。なんと、リーマ
ン破綻後の 1 週間前後でウォール街の象徴の五大投資銀行が瞬く間に事実上消滅。
この「投資銀行の死」は何を意味するのか。証券化を機軸とする米国型金融モデルが、
自らの「構造的不具合」によって頓挫したといえる。
今回の金融危機は通常の火事ではおさまらない。広がるリスクを持つ山火事とたとえ
ることもできる。証券化によってリスクが広範に、しかも目に見えない形で随所かつグ
ローバルに拡散化しているため、「火種」がどこにどれだけあるか不確かだし、証券化
される原資産の価格下落しだいでこれら「火種」がいつ出火してもおかしくない状況な
のである。
(6) 危機の全治は1年半∼3年
では、この金融危機はいつになったら収束するのか。金融危機で金融市場に緊張が続く
中で 96∼07 年の「世界同時好況」の牽引役の米経済の悪化で世界同時不況が始まる。
この世界同時好況は人類史上、はじめての現象だったのである。先進諸国は当然とし
て、旧社会主義諸国、発展途上諸国をも包摂する史上はじめての全員参加だったからだ。
その世界好況が金融危機を契機に屈折し始めた。史上初の「同時好況」だったがゆえ
に落ち込みも大きく、米国をはじめ欧州統合に沸く EU、BRICsを軸とする新興諸国
など、力強い再興と勃興で地球上の大部分の諸国が世界好況に酔ったのである。これが
巨大なバブルを生み出した。しかし、サブプライム問題を発端に、このバブルが随所で
綻びはじめてきた。
2009 年以降の世界経済を推測すると、最短で 3∼5 年の長期不況。09∼10 年に欧米の
pg. 24
実体経済はマイナス 1∼2%に転落死、しばらく長い停滞。
金融機関の整理・清算過程が 2 年前後続くので、世界経済に下方圧力が加わる。さらに
失業率は 8∼10%前後推測することができる。第一に金融危機の広がりと深さが大で、多く
の金融機関、企業の生産、倒産が生起し、この大火事を消化しても再建にかなりの時間要
するのである。
次に、90 年代後半からの日本の金融危機の経験を見れば、不良債権処理や金融機関再
建をやり遂げたとしても、実体経済の突破力が復元するかどうかは別問題ですし、実体
的に世界経済が悪化するのはこれからが本番なのである。
第三に、米国型金融モデルの浮上も不確かなうえ、世界成長の新エンジン力としての
新興諸国のパワー復元にはなお少し時間がかかるからである。
ただ、大不況や恐慌の確率は小さい。
なぜならば、1930 年代に比べ世界各国は極めて協調的であること。30 年代と異なり、
新産業や技術革新の可能性が存在していること。そして 30 年代 1917 年のロシア革命が
あった後で社会主義への期待感が強かったが、現在は社会主義に夢はないことだ。
なお、30 年代の恐慌的混乱は結局は第二次世界大戦で完全に生産されたといえるが、
今回の金融危機は基調的に平和的ゆえに政策が小出しで、修復さらには復活まで意外に
時間がかかる点で、たとえ大不況・恐慌は回避しても「長期停滞(不況)」の可能性が
高いのである。
9、 日本における金融危機の影響
この世界的な金融危機は、上文にも書きましたが、証券化によってあらゆるところに飛
び火しています。では、日本ではいったいどのような影響が出ているのでしょうか。
日本ンお金融機関はこれまでも散々ひどいめにあってきたから、あまりこのような商品
に手を出すことなく、日本全体の金融機関の自己資本から考えれば、傷は浅い程度にとど
まっている。ただし、欧州の金融機関はかなり強烈にだまされて、証券化商品を大量に購
入してしまった。欧州の金融機関のサブプライムローン関連の損失は、おそらく米国の金
融機関と同じくらいだとされている。金融危機は欧州に完全に飛び火したのである。
日本の金融機関が抱えたサブプライム関連の損失は、大手銀行でもそんなに大きな額で
はない。
経営が苦しい中で高利回りの魅力にひかれて証券化商品に手を出して、破綻に至ったと
してもそれはごく一部の話なのである。たとえば「大和生命」は、一般の人には名前さえ
知られていなっかたはずなのである。
日本の場合、メインでない金融機関の一部で問題があったのは事実だが、米や欧州と比
べれば金融危機というほどのことではない。米国の場合は大手金融機関でさえ必ずしも信
用を置けず、預金者はどこで預けても不安感をふしょくできないほどの事態が悪化した。
pg. 25
日本はこれとは全く状況が異なる。
ただし日本の場合、これまで外需頼みの成長をしてきたので実体経済への影響は免れな
い。簡単にいえば、「外需がこければ日本もこける」。日本の株式市場の花形は国際優良銘
柄で、有料という響きはいいのだが、要するに海外需要に依存しているメーカーが中心。
貿易を通じて悪影響が日本に伝播することは避けられないのである。
しかし、日本の金融機関の傷は相対的に浅いと言えど、一部に経営状態の悪い金融機関
もあるのである。そして、日本の金融機関の傷が相対的に浅いことを理由に円高買いが加
速したのである。株式市場と為替市場には逆相関の関係があるので、編んだかになると株
式が売られるのである。特に、国際優良株は円高に弱い。世界中が金融緩和している中で、
日本にはもう緩和余地がないので、それも円高要因となる。
政府は財政を拡大して、景気を刺激しようとしているが、金融緩和しないで財政出動だ
け増やすと金利が上昇して、それによって外為市場では円も上昇する。これによって株式
市場が悲鳴を上げている側面もあるのである。
相場の乱高下が激しくなると、市場参加者は経済のファンダメンタルズを冷静に評価す
ることが難しくなる。時にはオーバーシュートして下がりすぎてしまうのも仕方がないこ
となのである。
だんだん落ち着いて来れば、
「実態はここまで悪くならないのか」という判断も出てくる。
株価の先行きを予測するのは難しいが、株価がさらに下落して、大手行の自己資本を毀損
するようなところまでいかないのではないだろうか。
(1)リーマンブラザーズ破綻・日本での影響
日本においてのリーマンブラザーズと言えば、ライブドアがニッポン放送買収に出た際
に資金協力を行なったニュースが有名です。リーマンブラザーズ日本法人オフィスは、東
京・六本木ヒルズにあり、積極的に日本企業への金融活動を行なっていました。
リーマン破綻による日本への影響ですが、リーマンブラザーズの日本法人及び持株会社
は、2008年9月16日に東京地方裁判所へ民事再生法適用を申請、同日に保全命令を
受けています。リーマンブラザーズ日本法人及び持ち株会社の負債総額は、約 3 兆 9520 億
円で、大型倒産としては戦後 2 番目の額となりました。リーマン破綻における日本経済へ
のダメージについて、影響は小さくはないようです。リーマンブラザーズ提出の資料では、
リーマンブラザーズへの融資金融機関として、あおぞら銀行(約 480 億円を融資)や、み
ずほコーポレート銀行・新生銀行・三井住友 HD・信金中央金庫・中央三井信託銀行・日本
生命保険が、合計で約 1700 億円の融資を行なっているということです。2008 年 1 月には
みずほコーポレート銀行が米メリルリンチに 1300 億円、6月には三井住友銀行が英バーク
レイズへ 1000 億円出資。10 月には三菱東京UFJが米モルガン・スタンレーへ 9000 億円
の出資を決定しました。しかし、わずか数ヶ月のうちに状況は一変し、増資を迫られるこ
とになった。
pg. 26
増資予定金額
三菱 UFJ FG
7900 億円
調達方法
4000 億円の普通株式発行と
3900 億円の優先株式発行
みずほ FG
最大で約 3000 億円
優先出資証券を発行
三井住友 FG
約 4000 億円
優先出資証券を発行
三井住友信託銀行
約 500 億円
優先出資証券を発行
中央三井トラスト HD
300∼400 億円
優先出資証券を発行
図 88
各行の増資予定額(2008 年 12 月現在)
邦銀以外でも、リーマンにお金を貸している人やリーマンの株主には、破たんは直
撃しています。また、気づかないうちに影響を受けている人も。例えば、契約してい
る個人年金や生命保険、勤務先の企業年金、投資信託や確定拠出年金で選んだ投資信
託などが、リーマンの債券や株式で運用していれば、資産の減少の要因です。
日本の各金融機関は、資金繰りが相当苦しければ、破たんなどで一般の預金者にも
影響は及びますし、貸し渋りをすれば景気が悪くなります。また、米国の金融不安で
米ドルが下がれば、輸出企業の業績悪化により日本の景気が悪くなります。
すると、就職氷河期の再来や、企業倒産、給与やボーナスが増えない時代が続くと考
えられるのです。このように米で起きた金融危機は日本にもさまざまな飛び火をもた
らしているのです。特に、地方銀行が最近では不景気に陥り、なにかと騒がれていま
す。
(2)地域金融機関の現状
九州を皮切りに関西、東北地方へと次第に拡大してきた地方銀行の再編劇は、次はど
のような地域で、いつ「発火」するのだろうか。これからの金融界で、つねに注目すべ
きテーマの一つともいえる。
2008 年の3月期の地銀決算は厳しい数字が並んだ。地銀 109 行のうち、本業の収益
であるコア業務純益が増益、かつ最終利益も増益を確保したのはわずか 11 行だけであ
る。全体の1割にとどまった。
それ以外の大半の地銀は、保有する有価証券の関連損失に加え、建設や運輸関係など、
地方企業の相次ぐ破たんで信用コストがじわじわと上昇し始めている。さらに、構造的
8
週刊
ダイヤモンド
pg. 27
な資金余剰と低スプレッドが常態化している資金利益、投信販売が期後半に失速した役
務取引等利益を中心に、トップライン収益も伸び悩む「三重苦」だ。
一般論として考えてみても、単独で生き残ることのできない会社は、コスト構造やビ
ジネスモデルの革新は、おそらく一朝一夕にはならない、営業店の運営も、人件費を含
め、早晩、抜本的な変革を迫られるであろうが、ことはそう簡単ではないだろう。
これら「三重苦」に耐え切れなくなった地銀が、合併や経営統合などの再編を選んで
も不思議ではないだろう。
① 再編の条件とは
では、今後の地銀の動向を占ううえでの「再編の条件」とは何なのだろうか。
一つは、一つの県で 3 行以上の地銀が存在する地域である。つまり、オーバーバンキ
ング状態にあるエリアのことである。地銀が3行以上ある地域は、北海道、岩手など
17 都道府県。
すでに再編をきめた地銀のある山形県や、長崎県などを除くと、愛知や茨城、福島県
などの地銀に関心が集まる。
2 番目のポイントは、期間損益や財務体質の状況である。08 年 3 月期に最終赤字と
なった 13 行を地域ブロック別に分類すると、九州 3 行、四国、中国、東北がそれぞれ
2 行と、不振行が地方に集中していることが分かっている。
08 年 3 月期の決算の特徴として、損益計算書上の赤字もしくは大幅減益に加え、有
価証券の評価損が規制自己資本を大きく毀損し、資本調達を迫られるケースがあったこ
とがあげられる。銀行にとって、規制自己資本の多寡は経営の死命を制するのである。
ただ、予防的に公的資金を注入する金融機能強化法が 3 月に廃止された今、自己資本
に陥った地銀は民間から調達するしかない。
相対的に財務基盤の弱い地銀が、資本調達を機に、経営統合の道を選ぶことは十分考
えられる。この点、08 年 3 月末の単体自己資本比率が 8%以下の 11 行がどのように資
本を増強していくのだろうか。07 年 3 月末と比べ、比率が改善したのは長崎と東和、
それに足利のみである。北都、福邦、西京の悪化ぶりが際立つ。
このうち、北都は荘内銀との経営統合の道を選び、西京は地元企業を中心に 30 億円
弱の優先株調達を行った。
1 位:
横浜銀行
[勝因]
東京西南部まで広がる良好な地盤に支えられ、貸出
金が順調。貸出金利回り上向き、利ザヤも改善。
経費率は 40%台と低水準。東海東京証券と合弁証券も。
2 位:
千葉銀行
[勝因]
2005 年の増資で健全性高まり、上位に定着。地盤の
千葉県北部は TX 開通し活況。市原市、守屋に支店開業、東
pg. 28
陽町営業所の支店昇格などネットワーク拡充に積極的。
3 位:
静岡銀行
[勝因]
健全性に定評。高格付け。自己資本比率は 14%台と
邦銀有数の高財務。貸出金平残は前期比 5%と好伸。2010 年
までの中計で証券子会社含め、個人預かり資産 1 兆円増目指
す。
4 位:
三井住友銀行
[勝因]
効率性の高さに定評あり。粗利経費率は 40%台前半
を堅持。不良債権比率は 1%台と低水準。グループのクレジ
ット、新反再編、海外拠点開設等前向き投資に積極的。NY
上場も視野。
5 位:
スルガ銀行
[勝因]
個人向け比率や独自商品比率が高く総資金利ザヤが
高水準。毎期、貸出金量拡大と利ザヤ改善を並行してすすめ
た希有な存在。ゆうちょ銀 50 拠点が代理店となり、当行住宅
ローン等を販売。
図9
2008 年期総合期決算ランキング9
② 減益・赤字の信金・信組が増加
金利上昇の影響は極めて大きかった。2008 年 3 月期、業務純益が赤字の信金は前期
の 0 から 12 へ、信組は 3 から 8 に増えた。
全国 280 の信金のうち業務純益、経常利益、当期利益すべてで前期比増益を達成
したのは 20、信組では全国 164 のうちわずか 9。
金利上昇による資金調達コストと債権償却額の大幅増のダブルパンチで、業務純益は
280 信組合計では前期比 27.6%減、164 信組合計では 18.6%減と大幅に減少した。
そこへ、個別貸倒引当金の増加と株式売却損や株式等の償却コストが加わり、経常
利益の減少率は信金が 64.2%、信組では実に 98.2%である。
金利上昇の影響は自己資本にも及んだ。全国 280 信金の合計当期純利益は 820 億円
と、前期から 7 割近く減りながらも黒字は維持した。 が、資本直入分の有価証券評価
損差額金の減少が響いて、自己資本比率は 11.7%で前期比 0.2%ポイント減の 10.0%と
なった。
信用金庫
信用組合
07 年
08 年
07 年
08 年
3月
3月
3月
3月
業務純益赤字
0
12
3
8
経常赤字
31
53
33
52
最終赤字
27
49
30
41
9
金融ビジネス NO255
pg. 29
118
59
83
27
0
0
3
0
114
75
78
40
うち、赤字縮小または黒字化
2
6
7
7
最終増益
132
78
90
50
うち、赤字縮小または黒字化
1
6
8
4
54
20
48
9
業務純益増益
うち、赤字縮小または黒字化
経常増益
業務・経常・最終増益
図910 前年比増益を達成した信金・信組は激減
10、 まとめ
(1) 金融危機の今後
① 危機による 4 つの変更点・メガバンク化による地域間のつながりが再編に
今回の世界的金融危機によって変わった点が4つあると思います。1つ目に流動性の
確保が非常に難しくなったことである。2つ目が信用の収縮。3つ目は規制強化。世界
中で当局による規制が非常に厳しくなりました。そして、4つ目が、金融機関の合併が
余儀なくされたということである。今後の金融界については、ここ1年では、欧米銀行
の損失額が過去 10,20 年で最大規模になっている。生き残るのは、大きなユニバーサル
バンク。日本でいうメガバンだけである。
さらに、地方銀行や信用金庫では業務の共同化が進んでいる。ATM の相互解放によ
って入出金手数料を相互に無料にするなど顧客向けサービスのほか、システム開発の共
同化、現金輸送や市場調査など間接部門の合理化でも連携が始まったのである。本支店
間の文書や現金の輸送を共同化するなど、複数の金融機関が行う同じ作業を 1 つにまと
め経費を削減する効率化の連携が多いが、ほかにも、情報を提供し合うことで知識やノ
ウハウを共有し金融商品を開発するなどの共同研究も始まっているようである。
巨大な規模とネットワークをもつゆうちょ銀行の登場は、地域金融機関がネットワーク
を広域化する取り組みからさらに広がり、今後の再編に結びつく可能性もある。
② 金融危機への政府の対応は危機を回避させたのか
危機に対する各国政府・中央銀行の対応については、評価できない点とできる点があ
る。
まず、評価できない点はリーマンブラザーズを破たんさせたことである。これは大き
な間違いといってもいいだろう。金融機関すべてを救済したのではモラルハザード(金
10
金融ビジネス NO256
pg. 30
融機関や預金者が道徳的節度を失って行動すること)に陥るという大義はともかく、タ
イミングも、破たんさせる対象も、何もかもが大間違いだったのである。結果、金融市
場が大混乱に陥り、特に短期金融市場の新長官を高めてしまいました。
評価できる点は、当局による救済プランです。その内容は様々ですが、柱は金融機関
の2つの問題を解決するということにあります。これは流動性と支払い能力です。この
2つを確保すれば、金融システムにも信用が戻ってくると考えられる。
ニューヨークの株価は今後、債券市場の信用収縮の影響を受けて下落するだろうと予測
されている。
③ 金融危機の解決策とは
危機から脱出する解決策としては、一つには借入を増やすことが考えられます。国や
一般家庭、企業が借入を増やして資金を調達する方法です。理論的に可能でも実際には
無理だろう。信用が戻らない今の状況では借り入れは難しいからである。消費者もなか
なか消費しないだろう。
特に、アメリカの消費者は慎重になるだろう。借り入れができないし、失業率も高く
なっているので、かなり楽観的に見たとしても個人消費は横ばいだろう。
企業も個人消費と同じく頼りになりません。利益率も収益率も下がっていて、需要の
増加も見込めない中で投資する企業はないでしょう。
それでは輸出はどうだろうか。
この 2,3 年、アメリカの国内総生産(GDP)の伸びの8割は輸出から伸びてきていま
した。その相手としては、エマージングマーケット(新興国市場)が大きかったのです
が、今回は、エマージングマーケットも含めて世界景気が低迷しています。
最後に残った解決策が公的資金で道路を造るなど、公共投資をすることである。財政
出動、公的資金の注入事例がこれから出てくるが、過度の期待は禁物である。効果が出
るまでには時間がかかるからである。
そして問題は「信用がいつ回復するか」である。この点は非常に判断しにくい。今や
すべてを売り払って現金化するという弱気な投資家もいる。危機を乗り越えるには2年
はかかるといわれているが、日本の「失われた 10 年」のように長時間かかることも十
分に考えることができる。
金融危機を打開する手段を持たない国では、社会不安が高まったり、全体主義的な極
端な思想が台頭するような動きが出てくることも考えられる。今後の投資銀行のあり方
について考えてみると、高レバレッジ(自己資本と他人資本=負債との比率)の仕組み
や複雑な金融商品は当面姿を消すであろう。
投資銀行は、資産運用業務(アセットマネジメント:機関投資家・富裕層等資金の運
用管理受託、投資顧問、運用ファンドの組成運用受託等業務)や企業のM&A(合併・
買収)仲介業務など得意分野を生かした経営に特化し、資産を過度に膨らませずに収益
の確保を目指す可能性が高い。さらに、リスク管理の強化と優れたノウハウを活用する
pg. 31
とともに、より実体経済に近い業務に注力することが大切だと考えられる。
④ これから本番を迎える金融危機
現在では、市場パニックはとりあえず沈静化したが、危機は継続している。今後金融
危機はどういった展開を迎えるのだろうか。
ひとつめに、過去、金融危機の翌年は世界同時不況に陥っている。今年前半にかけて
世界経済は、先進国を中心に景気後退色を強める可能性が大きい。一方で、オバマ新大
統領のもとで、中所得者向け減税・雇用対策を主体とした大規模な財政出動が実施され
る可能性が大きい。日欧および新興国も大型景気対策を打ち出しており、1923 年から
1932 年に起きたような世界大不況は何とか回避されるだろう。しかし、不良債権処理
や金融バランスシート調整など経済成長の抑制要因が残存するため、先進国経済は
2010 年前半ごろまで低迷を続けるだろう。
二つ目に、「超低金利政策と大規模な流動性供給の継続」により、過度な金融バラン
スシート調整(経済収縮)を抑制させ、次の景気大循環を待つ。米国は日本型の量的緩
和政策に踏み込みつつある。
3 つ目に金融の原点回帰。信用リスクの相対的取引、銀行・証券の融合化モデルが主
流になるだろう。資本市場における安価な調達コストは修正され、直接金融における信
用コストが上昇するだろう。以上の 3 つが今後のポイントとなる。
金融危機の段階
第1段階
第 2 段階
第 3 段階
07 年秋∼年末
08 年初∼2 月中旬 2 月末∼7 月末
第 4 段階
第 5 段階
8 月末∼現在
サ ブ プ ラ イ ム モノライン危機
ソ ルベ ンシ ー 連 鎖的 な金 融 戦後最悪の
危機
危機
機関破綻
金融不況
・サブプライム ・モノライン保険 ・モーゲージ危 ・連鎖的な支払 ・ 戦 後 初 の
関 連 の 巨 額 損 会社の格下げ
失
価格急落
い 能力 の破 た 大手銀行の
・クレジット危機 ・金融機関のク ん
・証券化商品の の拡大
クレジット危機
機の深刻化
連鎖破綻
レ ジ ッ ト ラ イ ・金融シテミッ ・ グ ロ ー バ
・証券化市場の機 ン厳格化
ク リス クの 増 ルな金融危
・SIV 問題(資 能停止
・大手ヘッドフ 大
金流動性リス
ァンド破たん
ク)
・ベア証券の経 急 落 と ド ル 安 暴 落 、 資 本
営危機
機の伝播
・世界的な株価 ・ 世 界 株 大
の加速
の自国回帰
が加速
・金融市場
の機能不全
pg. 32
・断続的な利下 緊急利下げ、大規 大 幅 利 下 げ 継 危 機 対 応 の 金 金 融 モ ラ ト
対策(米国)
対策(米国)
げ
模 な 減 税 ( 1680 続
融政策
リアムの発
・TAF(緊急避 億ドル)決定
・ベア証券への ・住宅ローン救 令
難 的 な 資 金 流 ・自己資本増強
緊急融資
動性供給)
金 融 監 督 体 制 ・公的資金投入 救 済 執 行 法
・サブプライム
改革
済措置拡大
・金融機関
・住宅ローン借 等の制定
ローン債務者
り 入れ 救済 措 ・現代版ニ
の金利減免要
置の拡大
請
ューディー
ル政策
・TAF の協調 G7 で「世界経済 TSLF の 協 調 ・政策協調の強 ・ 世 界 的 な
参加(4中銀: の下方リスクと金 参加(4中銀) 化
金融モラト
ECB、BOE、 融機関の自己資本 ・自己資本増強 ・不良債権処理 リ ア ム ( 支
対策(先進国)
カ ナ ダ 、 ス イ 増強」を表明
ス)
の強化
の セイ フテ ィ 払い猶予)
・BOE は利下げ実
ネット(公的資 体制
施
金投入)
・大規模な
財政支出
実質マイナ
ス金利政策
の長期化
・クリスマス商 個 人 消 費 が 急 失 雇 用 調 整 が 加 信 用 収 縮 加 速 失 業 者 増 大
戦 以 降 に 急 失 速、雇用も減少に 速し、景気後退 で 深 刻 な セ ッ や 資 産 デ フ
速。
米国経済
転じ、リセッショ 局 面 入 り が 現 ション入り(企 レ の 深 刻 化
・マインド先行 ン懸念強まる。
実味を帯びる。 業倒産・個人破 か ら 将 来 不
の悪化。
住宅危機の長 産、失業者増 安 が 急 拡
期 懸 念 か ら マ 大)
大。消費・
インド下振れ。
投資が大幅
な減少を示
し、3∼4 年
の深刻な景
気後退を余
儀なくされ
る。
米 国 経 済 は 概 欧州は景気減速の 新 興 国 株 価 も 新 規 投 資 案 件 世 界 経 済 が
ね堅調。特に新 兆候。新興国経済 大 幅 な 調 整 を の キ ャ ン セ ル 縮 小 均 衡 に
興 国 経 済 は 景 は引き続き堅調、 余儀なくされ、 が相次ぎ、消費 入 り 、 貿 易
pg. 33
気 過 熱 懸 念 が 特に資源国の需要 世 界 的 な 減 速 者 需 要 も 冷 え 取 引 、 生 産
強く、中国・イ は強い。
リスクが拡大。 込み、国際商品 量 が 激 減 す
ン ド で は 金 融 しかし世界的な株 ただし、新興国 市 況 も 急 落 に る 。 各 国 と
グローバル経済
引き締め強化。 安で先行き減速懸 の 内 需 経 済 は 転じ、新興国経 も 保 護 主 義
念が台頭。
引 き続 き底 堅 済 も急 失速 す 政策(ブロ
く、世界経済の る。世界経済は ッ ク 経 済 )
失 速リ スク は 同 時景 気後 退 へ傾斜。非
小さい。
局面に陥る。
資源国・輸
出依存国が
深刻な打撃
を受ける。
図10 金融危機の移行
サブプライム危機から始まった金融危機を 5 段階に分けると図10のようになる。そし
て今後の金融危機は第 5 段階に入ることが考えられる。しかし、米国で、金融システム
を回復させる避難策が実施されつつあり、第 5 段階の金融危機に陥るリスクは後退しつ
つある。 実際に米国在台 7000 億ドルの公的資金を注入する金融安定化法案を可決し、
欧米 6 中銀による金利下げが敢行されたのである。
今後の金融危機の動向については、銀行のメガバンク化と地域間のつながりや、ゆう
ちょ銀の再編への動き、金融危機による世界的不況、金融機関の原点回帰などに注目す
るとよいだろう。
11、感想
今回の卒業論文制作にあたって、就職活動で勉強した金融業界のしくみや魅力をさらに
深めることができました。また、リアルタイムな金融危機の問題に関しても、どこから
が始まったのか、なぜおこったのか、なぜこんなにも世界に広がってしまったのかを作
成にあたり学ぶことができてよかったです。
金融危機は今後どのように動くか、という視点に関しては日々、日本含め世界の経済状
況が目まぐるしく動くのでとても難しかったです。
金融危機の影響といっても、金融機関や身近な経済にだけ影響するのではなく、たとえ
ば金融危機によって中国人留学生がピークを迎える。といったことがおきるというのも
初めて知りました。これは、金融危機にある米国では、各大学が中国人留学生に門戸を
開放しており、これも留学生大幅増を後押ししているのです。これは国家にとっても学
生にとっても良いことだと思います。国家は教育に必要な経費を節約できるし、学生は
視野を広げることができるからです。留学を通して世界の動向を見極める人材が増える
ことも考えられます。
pg. 34
2009 年の今年は金融危機により世界的な大不況が心配されますが、さまざまな観点や
視野から今後日本の経済はどうなっていくのか、またこの問題はどのような影響を私た
ちに与えるのかを学んでいきたいです。
pg. 35
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