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造園 - 中央職業能力開発協会

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造園 - 中央職業能力開発協会
平成 25 年度厚生労働省委託事業
技能競技大会を活用した
人材育成の取組マニュアル
造園職種編
中央職業能力開発協会
造園職種編
はじめに
技能五輪全国大会をはじめとする技能競技大会は、国内の青年技能者の技能レベルを競うこと
により、青年技能者に努力目標を与えるとともに、技能に身近に触れる機会を提供するなど、広
く国民一般に対して、技能の重要性、必要性をアピールし、技能尊重気運の醸成を図ることを目
的として実施されており、近年参加選手数が増加傾向にあるなど、活性化を見せています。
この理由として、技能競技大会が単に技能レベルを競い合う大会であるだけでなく、大会参加
に向けた訓練を通じて技能レベルはもとより、段取り構成力、応用力、判断力、忍耐力など、技
能者として必要な人格形成にも大きな影響を及ぼし、将来、ものづくり立国日本を支え、日本の
マザー工場機能を維持するのに必要な中核技能者の育成に大きな役割を果たしていることが挙げ
られます。
しかしながら、技能競技大会に出場するには各都道府県で開催される地方予選を勝ち抜き、決
められた大会会場に集まる必要があるため、会場から遠方の企業や、訓練方法のノウハウを持た
ない企業にとってはハードルが高いことは否めません。
このため厚生労働省では、
「ものづくりマイスター」が企業、職業訓練施設、工業高校等の若
年者に対して、技能競技大会の競技課題等を活用した実技指導等を行うことにより、若年技能者
を育成する新しい事業を創設しました。
「技能競技大会を活用した人材育成の取組マニュアル」は、
「ものづくりマイスター」はもと
より、企業、職業訓練施設、工業高校等の関係者が、技能競技大会の競技課題等を活用した人材
育成等を理解し、訓練計画の策定、実技指導等を行う際に使用されることを想定して作られてお
り、製造、建設業関係の職種について、職種共通編及び職種別編の2種類から構成されています。
職種共通編では、①技能競技大会の競技課題等を活用した訓練の特徴及び人材育成の効果、②
技能競技大会の競技課題等を活用した訓練の取組方法の概要、③技能競技大会及び技能検定の実
技課題の入手方法などが説明されています。
職種別編では、①競技課題、②採点基準、③得点と大会での順位等の評価方法、④競技課題が
求める技能の内容、⑤技能習得のための訓練方法、⑥課題の実施方法(作業手順)
、⑦期待され
る取組の成果などを説明しています。
これらのマニュアルのほかに、技能競技大会の競技課題等を活用した訓練による人材育成の具
体的な取組について、
企業、
教育訓練機関での事例を紹介した「好事例集」も作成されています。
そちらも参考としてください。
最後に、ご多忙の中、本マニュアル作成にご協力いただいた次の方々に心から感謝申し上げま
す。
荻原 博行 (一般社団法人日本造園組合連合会)
井上 花子 (一般社団法人日本造園組合連合会)
加藤 輝昭 (一般社団法人日本造園組合連合会)
(敬称略、順不同)
【実演協力】
株式会社 白井造園
造園職種編
目 次
1 このマニュアルの使い方
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 1
2 造園職種に求められる技能
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 2
3 競技課題
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 3
4 採点基準
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 8
(1)採点項目及び配点
(2)採点方法
5 得点と大会での順位等の評価方法 -
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 11
(1)大会の成績結果
(2)大会の様子
6 競技課題が求める技能の内容- ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
13
7 技能習得のための訓練方法- ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
16
(1)課題で必要になる技能要素
(2)技能要素習得カリキュラム
(3)競技時間内に課題を仕上げるためには
8 課題の実施方法(作成手順)-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
18
(1)作業1 図面判読作業
(2)作業2 位置出し作業
(3)作業3 造園工事作業
(4)作業4 仕上げ作業(整地、清掃)
(5)石割作業に使う工具について
(6)その他、課題への対応における留意事項
9 期待される取組の成果-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
巻末資料
第46回技能五輪全国大会 造園職種 課題一式
50
造園職種編
1 このマニュアルの使い方
この職種別マニュアルには、技能五輪全国大会の競技課題や採点基準(公開が可能な部分)の
他、競技課題の具体的な実施方法(作業手順)や競技課題を通して培った技能を現業でどのよう
に役立てるかのヒントとなる事例等を記載している。
特に、
「課題の実施方法(作業手順)
」については、
課題作製の作業手順を写真や解説で紹介し、
現場でスムーズな実技指導が行えるよう配慮している。しかしながら、そもそも技能五輪全国大
会の競技課題は、技能検定1級レベルの技能を必要とするだけでなく、多くの技能要素を含んで
いること、限られた時間内で完成させなければならないこと等から、受講者や職種によっては、
短時間・短期間の訓練で課題全てを完成させることは難しいと考える。
本マニュアルの利用にあたっては、訓練時間・訓練期間等を考慮の上、受講者の技能レベルに
合わせて必要な箇所(特定の作業や一部部品の作業手順等)を利用されることをお勧めする。
本マニュアルを参照し、若年者に技能を身につけさせる指針として活用願いたい。
次ページ以降の各項目の記載内容の概要は以下のとおり。
項 目
概 要
2 造園職種に求められる技能
競技に限らず、造園職種において求められている技能
について、一般論を掲載。
3 競技課題
本マニュアルで取り上げた競技課題について、その概
要と競技課題図等を掲載。
4 採点基準
どこを採点対象とするのか等、採点基準や評価方法につ
いて、今後の大会運営に支障を来さない範囲で掲載。
本マニュアルで取り上げた大会時の参加選手の成績を
5 得点と大会での順位等の評価方法 得点分布で紹介。併せて、どれくらいの得点で入賞し
ているか等を掲載。
6 競技課題が求める技能の内容
競技課題を作製するのに必要となる技能について、特
徴的技能やその内容について掲載。
7 技能習得のための訓練方法
技能要素習得に要する時間、競技課題を制限時間内に仕
上げるポイント、参加者・指導者のコメント等を紹介。
8 課題の実施方法(作業手順)
課題のポイント、具体的な課題作製の手順、取組・作
業のポイント等を紹介。
9 期待される取組の成果
技能五輪で優秀な成績を収めた企業等の事例。
競技課題を用いた訓練等を行う目的や期待する成果等
について紹介。
1
2 造園職種に求められる技能
人間の生活の中で、庭は身近に触れることのできる自然である。造園職種は、自然を相手に
することがその大きな魅力で、小さな大自然を追求することができる。
造園は、庭造りはもとより公園緑地や街並みを計画し、快適な住環境を作ることも重要な仕
事である。造園の作業は設計、庭の下準備、石組みや植栽、細部の仕上げなど、見る人が心和
む、より自然に近い景観になるよう工夫を凝らしている。そのためには、樹木、草花や石に関
する深い知識、空間構成力やデザインセンスから、それらを表現するための施工技術までさま
ざまな技能要素が必要となる。
植栽する樹木は、四季折々、南北に長い日本列島の気候条件・土壌条件により多種多様な植
物がある。造園は、時代・場所の風土気候や土壌の性質をよく調査し、その土地に根付く庭園
を造る。小さな土地であっても、風の向きや乾燥条件等の微妙な差異を感知し、その場所に住
む人々の気質を考慮して作庭する。造園樹木・地被植物・草花類とその増殖方法、土壌及び土
壌改良材、肥料、農薬、垣根・支柱用材料、庭石及び石材、石造添景物、敷砂利・敷砂、セメ
ント等コンクリート材料、レンガ等の種類、性質と用途に関する知識・技術を習得しておかな
いと、5年後、10 年後を見据えた作庭仕事はできない。
造園職種の仕事を行う上では、植栽、門及び垣根、景石・石組み・飛石及び延段、池・流れ
及び噴水、つくばい・灯籠・石塔等の石造添景物、築山、園路、広場、花壇、擁壁及び階段等
の種類と特徴に関する技能・知識を身に付けなければならない。
造園工事に使用する機械・道具類の種類・使用方法についての知識の習得も必要である。木
材・合板、タイル、鋼材・鉄筋、金属板・金網、プラスチック製品、配管用管類、照明器具、
遊技器具、塗料、舗装材、園路・広場用材料等の造園に限らず建築や外構に関係する全ての工
事材料についても知る必要がある。
実技技能においては、見取図、平面図・断面図の作成、地割り、庭木・庭石の選定に始まり、
工具の選定、地ごしらえ、植栽(配置・植付け、移植、剪定、保護及び養生)
、垣根の作成(生垣・
竹垣・袖垣等)
、庭石・石敷き・飛石等の配置・据付け、石組み・石積み作業、石造添景物(灯
籠・石塔等)の据付け、クレーン等の玉掛け(重量目測、用具の選定・使用方法)、設計図・
仕様書等に基づく積算・見積作成等がある。これらの技能を習得することが造園工事を行う上
での基本となる。
2
造園職種編
3 競技課題
本マニュアルでは第 46 回技能五輪全国大会の競技課題を題材として取り扱う。公開されてい
る競技課題の概要と課題図面・支給材料等及び競技実施における留意点は次のとおりである。
競技課題の概要
2人1組のチームで、2日間、11 時間の競技時間内(打切り時間 11 時間 30 分)に、3.5m
× 5m の作業区画内に、支給された材料を使用して、施工図に示す庭園を見栄え良く作庭する。
作業要素としては、①地均し(盛り土含む)
、②石積み(左右2種類)
、③小舗石敷き、④レン
ガ敷き、⑤石貼り、⑥枯れ池の位置出し、⑦敷石、⑧トレリス、⑨植栽、⑩草花の植付け、⑪
芝の植付け、⑫砂利・砂の敷き均し、⑬地均し・整地の作業が含まれている。
作業区画の外側には支給材料や工具を置いたり、石割りをしたりするためのスペースがチー
ムごとに用意されている。
競技課題の図面・支給材料等
競技課題図面、一組に支給される材料・トレリス材料及び持参すべきトレリス材料は次のと
おりである。
(競技課題図面)
3
(支給材料:1組分)
品名
4
寸法又は規格
数量
備考
1 小端積み用石材
(右)
600×100×100 ㎜
600×100×50 ㎜
25本
30本
御影石
御影石
2 小端積み用石材
(左)
600×100×100 ㎜
600×100×50 ㎜
20本
25本
砂岩
砂岩
3 レンガ
オーストラリアレンガ 230×110×50 ㎜
50個
4 小舗石
90×90×90 ㎜
5 石貼り用石材
150個
御影石
600×600×30 ㎜
2枚
御影石
6 砂利
さび砂利 20 Kg/袋 3袋/m2
4袋
7 川砂
3袋/m2
7袋
8 エゴノキ
H=1,800 ㎜
1株
9 シマトネリコ
H=1,800 ㎜ 鉢物 株立ち
1株
10 低木
サツキ H=300 W=300 ㎜
15株
11 針葉樹
H=1,000 H=1,200 H=1,500 ㎜
12 季節の花
現地で調達できる物
13 コウライ芝
360×280 ㎜(1m2)×10 枚
各1本
100ポット程度
10m2
目地、池用
造園職種編
(トレリス支給材料:1組分)
品名
寸法又は規格
数量
備考
1 山割り竹
1,800×45 ㎜
28枚
立子用、
押し縁用
2 檜角柱
90×90×3,000 ㎜ 溝彫り加工済み
1本
3箇所に使用
3 檜無目板
90×30×4,000 ㎜ 溝彫り加工済み
1枚
笠木、
無目板に使用
数量
備考
5個
柱、
無目板固定用
L=35 ㎜、
L=45 ㎜
必要量
長さ2種類
#18 鉄線または銅線
10m
(トレリス持参品:1組分)
品名
1 L金具
2 ビス
3 結束線
寸法又は規格
スチール製
競技実施における留意点
季節の花は、競技当日に公表される。支給された材料は残しても構わない。材料については
都合により直前に変更することもあるので、大会前でも競技に関する情報収集を怠らないよう
にする。
課題図面が印刷の関係で縮尺に誤差が生じ、読取寸法と図面表示寸法とが異なる場合は、図
面表示寸法を優先する。
あらかじめ寸法や完成形を示した型紙や基準棒を持ち込むことはできない。石を割る時に使
うマクラは使用してもよいが、寸法を示したものは使用できない。
作業区画内(3500 × 5000㎜)に入れる人は選手のみである。外側の作業スペースには選手
と競技委員だけが立ち入ることができる。指導員、見学者等は非常時でない限り仕切りの内側
に入ることはできない。さらに選手も、受付後の決められた時間以外は作業区画内に入ること
ができない。開会式終了後、休憩時間、早朝なども立入りは禁止されており、時間外に立ち入っ
た場合は失格となる。
また、選手が区画内にいる時は、選手から指導員等(親方・事業主・社長など)に、あるい
は指導員から選手に話しかけることは禁止されている。気分が悪くなった時や何か用事がある
ときには、競技委員や補佐員(統一のユニフォーム・腕章を着用)に申し出る。
作業区画を仕切る木枠を利用する場合は、木枠の内側を利用する。その際、木枠に印(しる
し)などを付けても構わないが、後で消去する。枝葉については、木枠からはみ出しても構わ
ない。
競技は屋外で行われるので、雨天でも作業ができるように雨具や着替えを用意することが、
この大会では必要となる。
安全対策も厳格で、例えば石割り等、保護メガネの着用が必要な作業ではその着用が義務付
けられているだけでなく、他の選手や見学者の迷惑にならないようにしなければならない。
作業態度も採点項目にあるので、保護具の着用、道具の整理整頓、また加工時、石の破片等
が他へ飛ぶようなことがないように普段からの注意が必要である。
競技は美を追究する課題が多く含まれているが、見た目が良くても各工程(作業場所)の計
測ポイントにおける寸法精度が劣っていると評価が低くなる。
5
前述以外の課題で公表された主な注意事項は次のとおりである。
1) 支給材料の石材の仕上げは、右側の小端積みは正面から見える2面は割肌(コブダシ)
仕上げとし、左側は小端が出るように相互に組み合わせて仕上げる。
2) トレリスの詳細図は、当日に公表する。
3) 小端積み用の石材を割る時に、ロッドソーやグリッドソーのようなタイルや大理石用の
カットソーでノコ目を入れ、その後「タンギリ」などで割るのは構わない。
4) 課題の正面は、観客側から見た方を正面とする。ただし、正面は区画抽選の日に指示す
る。
5) 持参工具については原則自由であるが、手作業で行うことを原則とするため電動工具や
油圧を使う工具については使用不可とする。ただし、トレリス製作時のビス止めに使用
する充電式インパクトドリルについては、使用しても構わないが、刃を交換してサン
ダーのように使うことは禁止とする。
6) 工具の大きさについても通常使用する標準的な工具とする。
7) 作業区画の前で、例えば見学者を装い2〜3名で競技の内容に関する会話によって間接
的に選手へ指導をしていると思われる場合は、補佐員が警告する。
8) 警告2回で失格または退場を宣告する。
9) 大会会場内には、休憩時間も含め携帯電話の持ち込みは禁止である。
10) 支給する2枚のベニヤ板(1800 × 900㎜)は、自由に使用できる。
11) 区画の盛り土の GL から下を掘ることは可能である。
作業を安全に行うために
安全に作業を行うことは言うまでもない基本である。体は職人の大切な資本であり、けがを
招きかねない行為は厳に避けなくてはならない。
作業は安全ヘルメットを着用して行う。
石割作業では必ず保護めがねと手袋を着用すること。割ったばかりの石の端は尖っており、
不用意に触れると切れるため、面取りしておく。近年の大会では割れた破片が飛んだ先で観客
にけがをさせないような配慮をしたチームもあった。
あし
大きな石など重量物を持ち上げる際には、腰を下ろして体の近くで持ち、脚の力で上げる。
決して腰をかがめたまま腕の力で持ち上げようとしてはならない。
安全靴は硬いこともあり、必須ではない。
工具・支給材料など、整理整頓に心がけること。また、狭い中を行き来するため、放置され
た工具を踏んでしまうと、けがをするおそれもある。工具を使用した後は、必ず元の位置に戻
す一手間をかけること。
6
造園職種編
技能五輪国際大会におけるLandscape Gardeningとの関係について
造園職種の大きな競技大会は、毎年開催される技能五輪全国大会の他に、2年に1回開か
れる技能五輪国際大会(World Skills Competition)がある。この大会の特徴は、選手2名に
よるチーム制で、かつモジュール形式の競技となっていることである。全国大会は1名の選
手による個人競技として実施しているが、国際大会が開催される前年の全国大会は、国際大
会代表予選会を兼ねているので、チーム制による競技として行われる。このため、全国大会
に参加する選手は、大会の開催年に十分注意し、競技課題を精査・確認する必要がある。
国際大会では、許容誤差(寸法)を厳格に測定される。そのためミリ単位の作業精度で対
応しなければならない。例えば、位置出しにおけるピンポールに水糸を張る作業では、ポー
ルの真中で張るのとポールの端で張るのとでは3cmくらい違ってしまうことがある。
国際大会では主観的採点の比率を低く、客観的採点の比率を高くする傾向がある。寸法が
厳格に測定されるのもこの流れの一環である。これを踏まえ、全国大会においても許容誤差
は厳格となりつつあり、寸法には十分注意して訓練を積むことが肝要である。
第46回技能五輪全国大会はカルガリー(カナダ)で行われた第40回技能五輪国際大会の前
年であり、その予選会を兼ねていたため、国際大会同様のチーム制で行われた。2名の選手
のチームワークが求められる競技内容である。
7
4 採点基準
第 46 回大会においては採点に関する事項は公開されていない。翌 47 回大会から採点項目及び
配点が公表されるようになった。採点項目は、作品に対する正確さ及び作業時間を問う客観評価
と、作品の出来栄え及び作業態度を問う主観評価とに分かれる。
近年の全国大会の採点は、技能五輪国際大会の許容誤差(± 0.5 〜 1cm)を念頭に置き、第 46
回大会当時に比べても年々厳しくなっている。
本マニュアルでは、当時の採点基準等を参考にして、採点における採点項目及び配点、作品採
点の方法、作業態度の採点方法、その他(順位の決定・失格要件)を以下のとおり定めた。
(1)採点項目及び配点
採点項目
作品採点
配点(点)
正確さ
25
出来栄え
55
作業時間採点
10
作業態度採点
10
(2)採点方法
採点は加点法で行う。以下の項目ごとの得点を合計する。
ア 作品採点の方法
① 正確さの採点方法(25 点)
競技当日公表される平面図の①〜⑪をスケールを用いて計測する。
基準寸法(㎜) 配点
8
測定方法
①
1,800
3
木枠の内のりから小舗石敷きの始まりまでを測定
②
2,500
2
木枠の内のりから小舗石敷きの終わりまでを測定
③
1,880
2
トレリスの長さを測定
(外〜外)
④
930
2
GLからトレリスの高さを測定
⑤
2,500
2
木枠の内のりから右の石積みの起点までを測定
⑥
480
2
敷砂から右の石積みの起点までの高さを測定
⑦
500
3
石貼りの幅を測定
⑧
700
2
右の石積みのタテ幅を測定
⑨
1,400
2
右の石積みのヨコ幅を測定
⑩
1,800
2
左の石積み(手前)の長さを測定
⑪
±0
3
木枠の内のりからレンガ敷きまで2箇所の差異
造園職種編
② 出来栄えの採点方法(55 点)
下記の評価項目について、複数の評価者がそれぞれ 10 段階評価で採点し、最高点と最
低点を除いた平均を、項目点に換算して得点とする。
(評価基準)
10段階評価基準
完璧
10
大変良い
9
良い
8
やや良い
7
まあまあ
6
普通
5
いま一歩
4
不十分
3
悪い
2
大変悪い
1
(評価項目)
部門
総合評価
工種別評価
評価項目
得点
全体的な景観
10
石積み(右)の出来栄え
5
石積み(左)の出来栄え
5
小舗石の出来栄え
5
レンガ敷きの出来栄え
5
貼り石の出来栄え
5
植栽の出来栄え
4
花もの植栽
5
砂と砂利の出来栄え
3
芝貼りの出来栄え
3
整地・かたづけ
5
9
イ 作業時間の採点方法(10点)
作業時間により 10 点までの得点を与える。
ウ 作業態度の採点方法(10点)
評価者がそれぞれ採点し、その平均点を得点(10 点満点)とする。
エ 失格要件
下記の要件に該当する選手は失格とし、採点しない。
○ 11 時間 30 分を超えても完成しなかった場合
○ 作業の途中で作業を放棄した場合
○ 作業の途中で退場を宣告された場合
10
造園職種編
5 得点と大会での順位等の評価方法
本課題を用いた第 46 回技能五輪全国大会における競技成績と得点分布は、以下のとおりで
ある。
なお、本課題の採点基準は公開されておらず、本マニュアルには独自に作成した採点基準を
掲載しているので、本マニュアルに即した採点結果と大会結果を直接比較することはできない
ことに注意されたい。
(1)大会の成績結果
本課題を用いた第 46 回技能五輪全国大会における競技結果は、次のとおりである。
(成績)
大会での成績
チーム数(組)
金 賞
1
銀 賞
2
銅 賞
2
敢闘賞
2
(得点分布)
造園職種 得点分布
(点)
95.0∼100
90.0∼94.9
85.0∼89.9
80.0∼84.9
75.0∼79.9
70.0∼74.9
65.0∼69.9
60.0∼64.9
0
1
2
3
4
5
6
(組)
11
(2)大会の様子
第 46 回技能五輪全国大会造園職種の競技風景である。
一般見学者、サポーター、指導者、競技審査員の見守る中での競技。二人一組のチームによ
る競技なので二人の「あ・うん」の呼吸が美しいリズムを醸し出すのを間近に見ることができ
る。競技課題のコンセプトを読み解いて、更にチームの個性を短い競技時間内で、どのように
表現していくかのストーリーを見るのも面白い。
12
造園職種編
6 競技課題が求める技能の内容
⑨ 植栽
⑨ 植栽
⑩草花の植付け
⑩草花の植付け
⑥枯れ池の位置出し
⑪芝の植付け
⑫敷砂
②石積み
⑩草花の植付け
⑦敷石
②石積み
⑧トレリス
⑤石貼り
⑫敷き砂利
⑨ 植栽
⑩草花の植付け
⑪芝の植付け
③小舗石敷き
④レンガ敷き
⑩草花の植付け
競技課題における技能のポイント
この競技課題は、チームワークと段取りを上手にしなければならない。共同作業、分担作業
をどの時点で行うか、普段の訓練での打合せが必要である。
競技課題で求められる具体的な作業と技能のポイントは次のとおりである。
① 地均し
客土を使用し、地盤を計画高に施工する。
② 石積み
石材を使って図面のように2箇所石積み(小端積み)を行う。
右側の石積みの正面から見える2面(Ⓐ面)は、割肌(コブダシ)仕上げとする。
左側の石積み(砂岩の小端積み)の終わりの2箇所は、生け込みとするとともに、小端が
出るように相互に組み合わせて仕上げる。
13
③ 小舗石敷き
小舗石を砂ぎめ・砂目地で仕上げる。
④ レンガ敷き
レンガを砂ぎめ・目地なしで施工する。小舗石敷きの園路との接点部分は、レンガを4つ
以上加工し、隙間は砂ぎめとする。
⑤ 石貼り
板石を割り、乱貼りする。砂ぎめ・砂目地で仕上げる。
⑥ 枯れ池の位置出し
課題図面から枯れ池に砂利を敷く外円形と砂を敷く形を判読し、位置出しを行う。敷砂部
分の土を掘り出す。
⑦ 敷石
石積み用の砂岩を使って敷石を施工する。
⑧ トレリス
支給された材料を使用し、当日配布された設計図面を元にトレリスを作成し、図面の所定
位置に設置する。
⑨ 植栽
支給された高中木及び低木は、図面の位置に修景を考慮して土ぎめで植え付ける。また、
必要と思われる剪定を行う。
⑩ 草花の植付け
支給される季節の花を、小端積みの中と指定された場所に修景を考慮し植え付ける。
⑪ 芝の植付け
目地なし・目土なしで施工する。
⑫ 砂利・砂の敷き均し
位置決めした枯れ池の部分に砂と砂利を敷く。
⑬ 地均し・整地
土が余った場合は、区画内で処理する。地こぶ等をつくっても構わない。
課題図面に基づいて寸法を入れた作業図面を作成する。ただし、競技大会ではこの作業図面
の持ち込みが禁止されているので、事前の練習を通じて作成した段取りなどは自分たちの頭の
中に記憶させておかなければならない。反復練習で技能を高められるトレリスや石割作業など
もあるが、植栽などのように感性が求められる技能もある。支給された材料の特性を理解し、
自然物である石や樹木、草花の特徴を見極めることが必要である。小舗石(ピンコロ)にして
14
造園職種編
も1個1個違った顔を持っているので、競技が始まる前によく見て、どう使うかを決めなけれ
ばならない。大会前日に下見時間が設けられているので、その時間を有効に活用することが大
切である。
競技大会の設営者は支給する植物を同じ形態にする努力をしているが、例えば、1.5m のサ
ザンカにしても1本1本の樹高が違っている。そのため、どの樹が与えられるかによって対応
方法を変えなければならない。
支給された高中木や低木を図面の位置に土ぎめで植付け作業を行うが、どの位置にどの木を
植えるか、修景を考慮して、大会初日に決めなければならない。そして、草花も小端積み及び
指定された場所に、修景を考えて、植付けしなければならない。課題では、植栽や花色の設計
技量が求められている。
15
7 技能習得のための訓練方法
(1)課題で必要になる技能要素
競技を遂行するに当たり、必要な作業は概ね次の3作業である。
① 図面判読作業
② 位置出し作業
③ 造園工事作業
(2)技能要素習得カリキュラム
習得すべき技術の内容及び習得に掛かる時間配分の概略は下表のとおりである。
教科の細目
内 容
時間配分(%)
① 図面判読作業
設計図面から何をどのように作るかを判読し、図面に表
示されていない数値を算出することや円弧と曲線を三角
スケールであたる等の技能・知識を習得する。
10
② 位置出し作業
基準杭・引照杭(逃げ杭)の設置、水平点の割出し、水
平・垂直方向の目視等に関する技能・知識を習得する。
10
③ 造園工事作業
造園工事の施工(地均し、植栽の配置、植付け、移植、
生垣・竹垣等の垣根作成、庭石の配置及び据付け、小舗
石・レンガ・石貼り・敷石等による舗装、飛石等の配置
及び据付け等)、水景に関する技能・知識を習得する。
80
(3)競技時間内に課題を仕上げるためには
2日間にわたる競技であり、競技時間は 11 時間 00 分(標準時間)
、そして 11 時間 30 分を
経過した時点で打ち切りとなる。時間配分に気を配らないと、綺麗に作られていても、時間切
れでは失格となる。
そのために、
課題作品を手際よく流れるように作業する訓練が大切である。
自分たちで「この作業には何分」というように時間を決めて、
訓練時から常に時間を計測し、
自分たちのぺース配分を把握しておくことも大切となる。例えば、石積みの予定時間を2時間
と設定したのに実際には3時間掛かってしまった場合、どうしたら2時間に短縮できるかを指
導者と一緒に考えて訓練することが大切である。
一つ一つのミスをクリアして、大会までに課題作品をできるだけ多く試作し経験を積むこと
が必要である。作業に集中することも重要である。集中すれば、動きに迷いや悩みなどの無駄
がなくなり、スムーズな動きとなる。大会では沢山の見学者や競技委員の視線の中での作業と
なるが、動じることなく平常心で作業するためには強い集中力で作業と真正面から向き合うこ
とを心がけるとよい。
二人のチームで作業を進めることが他の競技と異なる。作業をスムーズに進めるためには二
16
造園職種編
人の呼吸が一つになることが大切で、大会前訓練における練習の成果が問われる。
競技に使用する工具には細かい道具が多いので、置く場所を決め、使ったら戻すことを励行
することで工具を探さずに済み、時間短縮につながる。
トレリス(竹垣)
・花もの・石割り等は、選手の自由に任せられる部分が多いが、ここでの
デザイン等に凝りすぎて競技時間内に製作が終わらないことのないように注意する。
制限時間終了まで、あきらめない気持ちが大切である。
競技に使われる材料は、
生きている植物と自然石であるので、
規格どおりに造られた石であっ
ても、一つ一つ、多少、違っている。樹木にしても、1本1本の特性が異なっており、環境に
よっても違う。同じものは一つもないので見極める力を持たなければならない。この特性をど
う使うかは、いろいろな人に教わらないとならないし、自分の感性を磨かなければできない。
大会の説明時間の際、自分たちの使用する材料を、最初に選別することがポイントとなる。
17
8 課題の実施方法
(作業手順)
(1)作業1 図面判読作業
技能ポイント
課題図面を判読し、自分で作成した図面に、作業を
行うのに必要となる寸法等を書き入れて、作業の段取
りを策定する。
遠近透視図法(パースペクティブ)によりイメージ
デザインを考える。
二人作業なので作業分担・手順を作成する。
課題図面から寸法を判読する。
記載されている数字はどの工程の寸法なのかを確認しな
がら、図面を各工種(作業)の寸法等に色分けし、自分
なりに見やすい図面を作成する。
図面に書かれていない寸法もある。実際に位置出しする
のに必要な寸法は自分たちで計算して出す。
図面・寸法等はある程度覚え、作業時は確認のために見
る位にする。
課題が発表されたら、最初に図面を元に課題庭園のイ
メージを膨らませてスケッチを描き、庭園の全体像を把
握する。
図面・仕様書をよく読み、どこから作業するのが良いか
の段取りを決める。
段取り
○ 木枠からの測り出しになる。課題図面にあるゼロ
ポイント(基準点)木枠の内側から寸法を測り出
す。
○ 課題仕様の「図面のように」という文言の意味す
るところは、寸法記載部分は正確に、また寸法記
載のない部分は選手の裁量に任されている、とい
うことである。
○ 床掘り土の移動のタイミングと場所を考える。土
の移動等の単純作業は二度手間にならないように
する。
18
造園職種編
(2)作業2 位置出し作業
技能ポイント
全ての要素に共通な作業で、要素作業前に行うこと
もある。
課題図面から石積み(2箇所)
、小舗石(ピンコロ)
・
レンガ敷き、石貼り(サンセットピンク)
、敷き砂利、
敷石、トレリス等を配置する位置出しを行う。
① 地均し及び位置出し
作業区画の地均しと、あらかじめ決められた基準点から、ピンポール・水糸・水準器等を使
用して位置・高さを決定する位置出し作業を行う。
課題の正面は観客側から見た方向で、区画抽選日に指示
がある。
指示された基準点を確認する。
全ての基準となるので慎重に、指差しをして確認する。
寸法を覚え、いかに速く・正確に位置出し作業を行える
かが重要である。
ピンポール等は、しっかり立てておかないと、水糸を
張った際にふらついて寸法狂いの原因となる。
石の稜線にぴったり合うように水糸を水平に張る。
石の稜線を綺麗な一直線に並べるための面合わせが簡単
にできる。
19
水糸の高さ、基準点とピンポール間の距離、2本の水糸
角度(90度)を、巻き尺や曲尺を利用して正確に測定す
る。
(ピンポールの設置距離)
(水糸の交差角度)
(水糸の高さ、基準点と
ピンポール間の距離や2
本の水糸角度)
POINT
作業の邪魔になる水糸は、高さ・通りを写し
て杭・ピンポール等に打ちかえる。一手間か
けることで、後の作業効率がアップする。
曲尺、巻き尺を使用して水糸を引いたり、ピンポールを
立てる時には、二人の息が合ってないと上手にできな
い。
20
造園職種編
寸法や角度が図面どおりになっているかを確認しながら
作業を進める。
●ピンポールへの水糸の張り方
上段は「もやい結び」である。
下段は業界用語で「コロシ」と呼ばれる仮止め方法であり、外
国にはない結び方である。
「コロシ」の結び方は、ピンポールの軸に水糸を上方向に3回
巻き、張った最下段の水糸を上方に持ち上げ巻いた水糸に引っか
ける。糸の張力で引っ張られるので、はずれなくなる。
この方法は、
「もやい結び」のように結び目ができないので狂
わないこと、結ぶスピードが早いこと、水糸を解くのが楽なこと
などの利点がある。
「コロシ」の結び方では、ピンポールの太さに関係なくポールの側面に水糸の張り糸がくる。
「もやい結び」ではピンポール軸の中心にくる。この違いが、張り方による差である。
「コロシ」で水糸を張るには、石の稜線と水糸との間隔を1㎜離し、さらに糸が石のコブ等に
当たらないように注意する。
21
(3)作業3 造園工事作業
位置取り課題要素毎に、石割り、割肌(コブダシ)
、石積み、舗装、樹木・草花の植栽、芝張り、
敷き砂・敷き砂利の作業を行う。
●石の扱い方について
○ 支給された石により積み方(野面積み、小端積み等)も変わる。石の材質・加工方法によ
り道具を使い分ける。石積みの選定順位は次のとおりである。
1)角石:二面角がある石、天端の角石は三面、大きめのどっしりした石を据え付ける。
2)天端石:大きく安定した、角が出ている石を据え付ける。
3)根石:土圧・荷重に耐えられる石を据え付ける。
4)中石:残った石を丁寧に据え付ける。
○ 石の中心線を水平に持ってくると安定させることができる。
○ 根石・中石等が決まったら、その石の裏に土を盛っておくと次に石を据えやすくなる。
○ 上に積む石、隣に来る石のことを常に考えて据え付ける。
○ 素材の良さを生かし、加工(時間も含め)をなるべく減らす。
○ 大中小のバランスが大切である。
○ 極端に薄い石・小さな石の使用、根が切れている積み方、四つ目地・通し目地は、見栄え
が良くない。
○ 石割り作業等をブルーシートの上で行うと、最後に残った石かす・木くず・土などを片付
けにかかる時間を短縮することができる。
●石積み、石貼りにおける注意事項
石積み、石貼りの作業を行う際には、次のような形にならないように注意する。
1)目地の接点に 4 枚の石が集中すること(四つ目)
2)石の周囲に 8 枚の石を貼ること(八つ巻き)
3)目地が通ってしまうこと(通り目地)
これらを回避するため、石割りの際に次のことを心がける。
1)鋭角な石(90 度以下の尖った角のある石)は造らない。
2)多角形の石にする(五角形の変形にすると、通り目地、四つ目を避けることができる)。
22
造園職種編
① 石積み
御影石及び砂岩の石積みを小端積みにより行う。支給された石の種類により積み方が変わる
ので、材料の見極めが重要である。
【課題図面右側の石積み】
御影石(600 × 100 × 100 or 50 ㎜、
600 × 600 × 3㎜)の加工と石積みを見栄えよく造る。
石積みの正面から見える2面(Ⓐ面)は割肌加工した御影石を使用する。
石割作業
タガネは、タンギリを使用する(刃の面は真中が尖って
いる)。
石の4面の割る位置に鉛筆で墨入れを行う。
無垢の石をそのまま使うと目地が通ってしまうので注意
する。
タガネの尖った刃先を線上にのせ、「せっとう」で叩
く。石材の角の部分を、コバが飛ばない程度に優しく割
る。
刃のキズが4面の線上に一様に付くように少しずつ優し
く叩く。徐々に叩く強さを増していき、叩き音が甲高い
音から低音に変わる時に綺麗に割れる。
POINT
石の表面は平らではないので、出っ張った箇
所にだけ刃の力が加わると、思いどおりに割
ることができない。
割れた角は鋭利になっているので、「せっとう」で軽く
叩いて面取りし、角を滑らかにする。
23
綺麗に割れると、見栄えがよいだけでなく後工程が楽に
なる。
割肌加工作業
割肌加工は、コブダシ(業界用語)とも呼ばれる。石の表面にコブという石の模様があること
により、石積み全体のアクセントができ、のっぺりした面ではない表情を作り出せる。
コブダシする面に隣接する側面(4面)に、その角から
1.5cmの位置に鉛筆で墨入れを行う。
「こやすけ」と「せっとう」を利用して割る。
「こやすけ」の刃先が平らなものを使用して石の角
(隅)から石を優しく落とす。
角が取れたら端から大胆に取る。
石積みで石面を合わせる際、線があると容易となるので
線がわずかに見える位置に「こやすけ」の刃を当ててコ
ブダシを行う。
石に当てる刃の角度によって割れ具合が異なるが、基本
は平らな刃を垂直に立てる。
切出し御影石は機械で切るため、石の内部に石目があっ
ても見た目にはわかりづらいので注意する。
POINT
石には目があり、石の目に沿って割れるので
注意が必要である。
24
造園職種編
元の平らな面が石の表面に残っている状態ではコブダシ
とはいえない。
コブダシの石積みは、石の角出しが一直線になるように
行う。
失敗した石は、はじくか使える場所(ポイントから見え
ない箇所)に使用する。
割肌加工(コブダシ)の完了。
刃が平らなので、垂直に近い状態に立てて大きく取らな
いと手間が掛かる。
刃を寝かして石の表面だけを落としてもよい。
石の角線が一直線になるように削ることが大切である。
課題図面右側の石積み
御影石を井桁状に、目地が通らないようにしながら石積みを行う。
石積み石の選定を行う。
常に上に積む石、隣に来る石を考えながら据え付けるこ
とが大切である。
素材の良さを生かし、加工の手数をできる限り減らすこ
とが時間短縮につながる。
大中小の石のバランスを大事にすると安定した石積みと
なる。
あご
たな
良い石積みをするには、正面の石に「コブ」があっても
良いが、「あご」や「たな」がないように神経を集中し
て積む。競技では、石と石の合わせの目地にモルタルで
カバーをすることはできない(「空積み」となる)の
で、多少の穴が開いても石積み全体の稜線が水平である
ことが大切である。
石積みは目地が通らないように注意する。
「あご」と「たな」があると2〜3段積んだ時に「なじ
み」が悪くなる。厚みの異なる石を積むときは、すき間
に石の破片等を詰めて「かいもの」にする。
「なじみ」を良くしたいという気持ちで石積みをするこ
とが大切である。
25
【課題図面左側「船」の石積み】
砂岩の石割りを行う。競技課題は、先端が直角でない「船」の石積みを行う。
石割作業
砂岩を小端積み用に裁断すると共に、
「船」の内面・外面の2面の石を斜めに割る。
鋭利なタンギリの刃先を線上にのせ、「せっとう」で叩
く。
砂岩の表面は凸凹があり、硬い台の上では異常な割れ方
をするので砂のような柔らかなところで作業し、叩く力
が一点に集中しないように力の分散が必要である。
「せっとう」で叩くリズムは、一音は小さく、二音は強
く叩くが、自分に合ったリズムで叩く(例えば、優しく
軽やかにタ・タン、タ・タン、―タンのリズム)。刃を
入れることでひび割れを少しずつ造っていく。このひび
割れが均等な深さで入ると、力が均等に加わるので綺麗
に割れる。
POINT
砂岩は、堆積物なので石目(筋になってい
る)がはっきりしている。石目に逆らって割
る作業で、石目があるだけにもろい石である
ことに注意する。
面取りをする。
石の表面(稜線・石目など)をよく見て無垢の石と割石
の段取りをし、1本しかない稜線を反対側にも作る。
課題図面から角度を判読する。
図面から読み取った角度を石に写し取る。
26
造園職種編
石積みで目地が開かないように丁寧に割る。
斜め切りに使用するタンギリの刃は「尾根」よりもわず
かにずらす(約5㎜逃がす)と尾根の稜線を綺麗に残す
ことができる。
POINT
角に石目がある石は、思わぬ角度に割れてし
まうこともあるので注意する。
石積みをするときと同じように、石を並べ曲尺を使用し
て角度が正確に出ているかを確認する。
(この写真の赤丸部分は、石に目があったために思わぬ
角度で割れてしまった例である。)
課題図面左側の「船」の石積み
砂岩を「船」形に石積みする。
石積みの正面は、堆積層の筋を見せる。
水糸と石の稜線が綺麗に一致していなければならない。
上段に積む石、隣接する石を考えて据え付ける。
石積みの終わりの2箇所は、生け込みにする。
27
石積み(課題図面右側・左側)の完了。
28
造園職種編
② 小舗石敷き作業
小舗石を使用し、砂ぎめ・砂目地で施工する。
小舗石はピンコロ(業界用語)とも呼ばれている。
9cmの真四角は一面だけなので、石を選ぶ際には正面
が綺麗で同じ形のものを選ぶ。
POINT
裏側面が変に凸凹となっている石は、石目が
ある可能性が高い。
石に凹凸があると、その凹凸が平らになるまで割れない
ので、平らな表面で刃がぴったり付く石を選ぶ。
裁断する位置に曲尺を使用して墨入れを行う。
石面に刃がぴったり吸い付く状態であれば、石の周囲に
ひびを入れなくとも一回で割れる。
小舗石敷きでは、出口・入口は半丁物と真物を交互に敷
く。
石の大きさは一つ一つ異なるので、おおまかに床堀をし
て、その後に下をほぐし、叩いて据え付けると水平を取
りやすくなる。
29
小舗石をRに敷く場合は、薄い角材を利用してライン、
高さを確認して作業を行う。Rについては、中心点に向
かってピンコロの中心ラインを揃えると綺麗に仕上が
る。
目地を均等に作る。
石を置くための基準となる位置印を棒に付ける。
Rラインは、大きな石を外側に、小さな石を内側に配置
すると綺麗なラインを作ることができる。
同じ四角であっても台形に近い石を選び使用することに
より綺麗に仕上げることができる。
小舗石敷き作業の完了。
30
造園職種編
③ レンガ敷き
課題図面に従ってレンガを割り、砂ぎめ・目地なしで敷きつめる。
レンガ割りには、刃の幅が広いカットチゼル(平たが
ね)を使用する。
曲尺を使用して裁断する位置(4面)に墨入れを行う。
レンガの端・端からひびを入れる。
POINT
レンガは、無垢な物でも表面が滑らかなの
で、カットチゼルのような刃の鋭利な道具は
食い込みが良く、直線的にひびを入れること
ができる。
割った後の面取りを忘れずに行う。
小舗石敷きとの接点部分は4つ以上加工し、他の隙間は
砂目地で仕上げる。
31
④ 石貼り
板石を見栄えの良い大きさに割り、裁断した石を乱貼りする。自分にあった割り方を見つけ
ることが大切である。砂ぎめ・砂目地で仕上げる。
課題ではサンセットピンクが用いられているので、これ
を乱貼りする例について説明する。
細いタンギリがよく、小さなタガネを用いるとよい。
もし、ひび割れ(石の目)のある石が支給されたら、ひ
びのある箇所を割ってから加工する。
石材料をよく見て表裏を確認する。
大事な部分(角石・R部分・外縁等)から作る。
大きな長方形の板石からは、一回でL字形の割り石を切
り出すことができないので、1本通しで大きく一度割
り、二度目でL字形につくる。
大盤の板石の上にチョークで下絵を描き、小タガネで切
り出す(割る)方法もある。
初心者は直線・直線で割り、多角形を作り出す。
割りの最初は、カンカンと高音がするが、ひびが入って
割れる時には鈍い音に変わる。
乱貼り用の石に加工するには、コミキリで石の端を叩い
て取る。使う台には、アテミキリを使用する。
コミキリの刃を石にあてて、
裏面の割れる位置(石の下)
にアテミキリの角をあてが
う。
角を取りつつ、なるべく大き
な石に割る。
32
造園職種編
乱貼りをする上では、課題図面から想定した「大」、
「中」、
「中の小」程度の石を利用する。そのバランスが
重要である。
「小」にあたる石は、技術的に入れざるを得ない場合に
のみ使うが、見栄えは悪くなる。
目地幅を均等にする。
石を貼る際は、真中に大きな石を置いてしまうと「八つ
巻き」になってしまうので注意する。
五角形の変形の石を使うと、見栄え(おさまり)が良く
なる。
材料を無駄なく、かつ効率よく加工する。
石割加工が主な作業となるので、反復練習が大切で、習
熟すると時間短縮につながる。
33
⑤ 枯れ池の位置出し
課題図面から枯れ池に砂利を敷く池の外円と砂を敷く部分を判読して位置出しを行う。敷砂
部分は土を課題図面の指定どおり掘り出す。
枯れ池の外円を決める。
敷砂部分を3cm掘り出す。
ハート型の敷砂部分の形状は、大まかな位置は指定どお
りとするが、細かなところは自由裁量である。
掘り出した土は、箱ものや山の盛り土に使用する。
34
造園職種編
⑥ 敷石
課題は、石積み用の砂岩を使用して施工するが、ここでは、大型の長方形の板石を二点盛り
法により敷く方法について説明する。
石貼り用の大きい長方形の板石を指定された位置に仮置
きする。
敷石を敷く位置の基準となる1辺を決め、その位置に2
本のピンポールを立てる。整地面から指定された高さの
所に水糸を張る。
水糸を張る際は、ポールに水準器の端をあて、また水準
器稜線を水糸にあてがって水平を取りながら、水糸をコ
ロシで止める。
板石を脇にどけて床堀を行う。
二点盛りの場合、板石の下の軟らかな土の山を2つ盛
る。
2つの山のバランスを確認する。
35
石の稜線が水糸にピッタリと合うように山盛りの上に石
を軽く置く。
水準器で確認しながら、軽く石を動かして、位置と高さ
を調節する。
水平が取れたら石の下の隙間(3列)にこうがい板で土
を堅く押し込む。この時、盛り土した2山そのものをつ
つくことはせずに、そのすき間に土を押しむようにす
る。
地面と石の境界線をはっきりと綺麗に出す。
課題図面に従って正確に敷かれていることを確認する。
36
造園職種編
● こうがい板による整地について
整地を行うには、こうがい板を利用する。
こうがい板(かき板・手板)は、土や砂を均す・突く・
掻く・削る等の作業に合わせて使い分ける。
こうがい板は自作する。使用用途により厚さの異なる数
種類を用意するとよい。
こうがい板の刃は、1枚板(長さ25cm×幅10cm×厚さ
1cm)でつくる台形(斜辺の先端角度は30〜45度)の
長辺に付ける。右利き用・左利き用で刃の向きを変え
る。(写真は右利き用)
代表的なこうがい板の使い方は次のとおりである。
整地に際して、地面に埋まっている土の固まりなどを除去す
る。
地面の地均しを行う。
敷石をする際に石の位置が確定したら、石の下部と地面との
間にある土を突き固め、境界線をはっきりさせる。
地面を整地する。
37
⑦ トレリス
支給された材料(山割り竹、檜材の板・柱)を使用してトレリスを作成する。
競技当日に配布された課題図面を読み、作り方を検討す
る。
木材を切るとき、鉛筆線の内側で切るのか、外側で切る
のかで誤差が発生する。寸法どおり、正確に切断する。
課題図面をよく読んで、正確に加工し、組み立てる。
竹は太さ・曲がりや竹の元末はどちらか等を見極めて、
竹のどの部分を胴縁に使うか選定する。
柱との取付け部分等を綺麗に行う。
POINT
竹垣の結束等は反復練習を繰り返すことで時
間短縮が図れるので、図面指示がない期間で
も、自分で幾つかのパターンを想定して試作
を重ねることで習熟しておく。
38
造園職種編
⑧ 植栽
支給された針葉樹、低木(サツキ)
、エゴノキ、シマトネリコを、修景を考慮して土ぎめで
図面の位置に植え付ける。
課題図面から樹木や草花の状態を見極めて、剪定作業な
どの植え付ける段取りを決める。
高木の向きだけでなくサツキ等も裏表をよく考えること
が大切である。
植栽樹木の向きと高さのバランスが大切である。
高木の植栽は、幹の芯が図面で指定された寸法どおりに
なるように正確に植え付ける。
針葉樹(3本)については、高さと位置が不等辺三角形
となるように植え付ける。
サツキなどは自然に育ったように感じられる植付け方を
する。
1株1株の大きさや高さに気をつける。
きおもて
高木の向きだけでなく、日光を最も多く受けた樹
表、そ
き う ら
の反対側の樹裏の配置を、主な視点から良く揃って見え
るように配慮する。
(エゴノキの株立て)
(シマトネリコの株立て)
39
⑨ 草花の植付け
現地で調達した季節の草花(約 100 ポット)が支給される。これらの草花を石積みした箱も
のや船等指定された場所(5個所)に植え付ける。
草花は、高さ・色等のバランスの組合せをしっかりと考
えて植え付ける。
花の種類は一週間前に公表されるので、配色等のデザイ
ンやバランス等を考慮して、どのように作庭するかのイ
メージを事前に検討しておく。目立つ強い色の花を散ら
ばせて植えると散漫になってしまうので注意する。
POINT
植栽と花色で作品の見栄えが全く変わってし
まうので、良い植付けが確実にできるように
練習の積み重ねが大切である。
40
造園職種編
⑩ 芝の植付け
芝の植付け作業を行う。
目地なし、目土なしで芝生の植付けを行う。
芝はべた張りにし、目地がないように、目地部分を織り
込んで張り付ける。
目地の部分を目立たないようにする工夫が必要である。
芝芽は一定方向になるように張る。
支給された芝の形を生かして植えるのが基本であるが、
R部などどうしても切断せざるを得ない場合は、芝の端
を切るなど切断面積を最小限にする。
正面に見える部分(見付)には小さな芝は使わない。
他要素との接点はラインをはっきりさせることが大切で
ある。
41
⑪ 敷き砂・敷き砂利
位置決めした枯れ池の部分に敷き砂・敷き砂利の作業を行う。
砂と砂利を使用して、曲線で枯れ池をつくる。
POINT
砂・砂利・芝生・境界に注意する。
厚い箇所・薄い箇所がないよう均等にかつ平
らにラインをはっきりして敷くことが重要で
ある。
42
造園職種編
(4)作業4 仕上げ作業(整地、清掃)
技能ポイント
ちり(石の縁や砂利、石貼り・ピンコロ等の目地な
ど)をしっかりと出す。
こうがい板、箒を使用して整地・清掃を行う。さら
に木枠の周囲まで目配りすることも必要である。最後
の仕上げをきっちりできているかどうかにより、見た
目の印象が全く違った作品となる。
残材・廃棄物の片付け、現場の掃き掃除をして庭園
の美しさを表現する。
規定時間の最後まで、隅々にまで目を通す。
整地作業
こうがい板を用いて整地する。
清掃作業
石の表面も箒で綺麗にする。泥がついていれば、布でぬ
ぐう。
石の側面の土をこうがい板を用いて除き、仕上げる。
目地の清掃も怠らないこと。
切りくずなどがないか、剪定した枝・葉が残っていない
か、植栽した木や花をチェックする。
その他
寸法指示のあるポイントが正しく施工できているかを
チェックする。
自分の足跡も消す。
使用した工具、使用しなかった支給材料の整理整頓、枠
及びその周辺まで掃除する。
43
完成。
44
造園職種編
(5)石割作業に使う工具について
石割には、沢山ある工具の中から石の種類により適正な工具を選択し使い分ける。
石割に使用する「こやすけ」及び「せっとう」
石割りに大きな力を発揮する道具が「こやすけ」と「せっとう」である。
■こやすけ
「こやすけ」は、ハンマーのような形をしているが
刃先は平である。使用する前に柄を水に濡らして、木
部に水分を含ませ、多少、膨潤させておく。
「こやすけ」をハンマーのように用いて石を直接叩
くことはしない。必ず「こやすけ」の刃先を石にあて
た状態で、その頭を「せっとう」で叩く。
■せっとう
「せっとう」は叩く相手の道具により使う重さを変
える。例えば、
御影石を割るには重たい「せっとう」
(約
1.3kg)
、小刻みに叩くには軽い「せっとう」
(約 0.5kg)
を使用する。
□こやすけの使い方
「せっとう」で「こやすけ」の頭を叩き優しく石を
削り落としたり、割ったりする。
45
石割に使用する平タガネ類
■タガネ
タガネは、はつり・石ノミとも呼ばれ、タンギリ、
トバクロなどの種類がある。割肌(コブダシ)のよう
な石の表面を薄く削る(はつり)時に使用する。
タンギリは、軟らかい石にひびを入れるときには食
い込みを良くしたいので鋭角な刃を、また硬い石には
鈍角の刃を使用する。
□タガネの使い方
■カットチゼル
タガネを片手に軽く握り、刃がぶれないようにしな
がら石の表面に当てて「せっとう」で叩く。
レンガ割に威力を発揮する工具がカットチゼルであ
る。
先端の刃の部分が平たく、刃幅の広いタガネで、平
タガネの一種である。
レンガは軟らかいため、強く叩くと不必要な箇所を
欠いてしまうので注意する。
46
造園職種編
石割用コミキリ及びアテミキリ
■コミキリ
乱貼り用の石を加工するために使用するコミキリ(写
真:左)とアテミキリ(写真:右)
。
コミキリは、先が細くなった方も使うが、平たい頭
の上の角(赤丸内の指差し部分)を刃としても用いる。
■アテミキリ
アテミキリは、コミキリを当てる際の台として使用
する。
形が「こやすけ」に似ているが、
「こやすけ」として
は絶対に使うことはない。
□コミキリとアテミキリによる石割
割りたい石の裏面(石の下)位置にアテミキリの角
をあてがい、石の上面をコミキリの刃で叩く。
47
○アテミキリ代替法
アテミキリの持ち方が出来ずに使えない人は、台に
鉄板を打ち付けた、マクラ(業界用語)と呼ばれる道
具を使う。
片袖に、鉄板を打ち付けてある。この鉄板がアテミ
キリの役割をする。
軟らかな土・砂や麻袋の上にアテミキリの代わりに
山形鋼(アングル)を置いて、板石を割る。
レールの端材や H 形鋼を利用することもできる。
48
造園職種編
(6) その他、課題への対応における留意事項
造園は、全体の段取りを上手にしないと仕上がらない競技である。本課題は二人チームで取
り組むため、二人共同で行う作業と分担して行う作業をどう分けるか、などの段取りが大切で
ある。段取りを組むには、まずは図面の読解力が必要だ。課題図面はいわば基本設計図である
から、図面から植栽、水景、花色、景石等の修景を具体的な計画として練らなければならない。
課題図面から自分なりの図面を引くこと、すなわち、与えられた課題図面を元に、樹の寸法や
配置、花色の組合せ等を入れた課題を作成する訓練を行う。
なお、競技会場には事前に作成した作業図面を持ち込むことができないので、訓練成果を自
分の頭の中に記憶させなければならない。課題図面作成は、課題が発表された後の選手個々の
努力によるところが大きい。指導者とも頻繁に連絡をとることも必要である。
大会初日の石材加工作業がいくら上手でも、最後の植栽や花色で作品の出来栄えが大きく
違ってしまうことが往々にしてある。競技の内容は石仕事が多いように見えるので、また選手
が行ったことのないこともあって石仕事の練習ばかりする傾向があるが、大会二日目の植栽・
花・芝の作業も重要である。
造園は、木々の持つ息吹や水の持つ清純さなどの機能をいかにして美しく見せるかという感
性が問われる職種である。支給された石材・樹木・草花で修景を考慮して作庭しなければなら
ない。これには基礎の知識が大事となる。その一方で、植栽や自然石の取扱いは、反復練習だ
けで得ることのできない技能が必要である。それが感性である。感性を磨くためには、配色や
植栽系の本を読むことをはじめ、その仕事の名人などいろいろな人に教わることも必要であ
る。各地の庭園を見学したり、花、山野草、ガーデニングの本を研究したり、絵の勉強をした
りして基礎知識を高めないと応用力は身に付かない。
例えば、淡いピンクや白色の花だけを支給する課題では、選手は無難にまとめることができ
るが、強烈な色の花が材料として出された場合は、選手には処理の仕方のアイデアを豊富に出
すことが求められる。
色味の強い花を全体に散りばめるチームもあれば、
一箇所にまとめるチー
ムも出てくる。一箇所にまとめる方法が見栄えを良くするかもしれないし、寄植え風にしたり
することもできる。配置によって印象が全く異なってしまうのをどうするか、感性の訓練を積
む必要がある。
49
9 期待される取組の成果
競技大会に参加する都道府県のうち、日本造園組合連合会(造園連)が協力をして実施した
訓練の例について概説する。
今回の課題では、競技選手は2名1組である。若年者の参加する大会なので、選手の中には
学生もいるし、別会社に所属する人もいる。この大会に選ばれた選手は、いずれも技能検定2
級を取得していたが、一人は実務経験が数年、もう一人は未経験の学生であった。訓練は、支
部会が指導チーム(5名)を組んで集中的に指導した。学生選手は、訓練の期間(3か月)休
学しなければならなかったが、学校の配慮で公欠扱いにしていただけたことは大きな力となっ
た。
訓練では、毎日の現場練習だけでなく、訓練後に図面に対する読解力を高めるための宿題を
出した。選手に対しては、パソコンを利用した練習(図面の模様・寸法の割出し等について)
で得られた独自に工夫した回答を、指導員に提出させることも行った。
訓練における基本は、次のとおりである。
1. 正しい姿勢で作業することが、無駄のない動きにつながる。
2. 技能向上は、試行錯誤の繰り返しである。技能習得のためには、以下の点に配慮する。
① はじめから上手にできる選手はいない。うまくできなかったことの分析、そして、ど
うやればうまくいくかを探求することが大切である。
② ひとつのことにこだわってやること・執着心・毎日やることが必要である。
3. 最低限の知識は必要である。そして、工具の手入れが大切である。
① 基本となる理論をまず教え、具体的な詳しい手作業は訓練の中で教えていく。
② 美的感性を自主的に磨く努力が重要である。
③ 百を超える道具の名称には、専門用語(業界用語)があるので、これを覚える。
④ 工具の手入れは訓練終了後に毎回行う。
競技大会の訓練指導では会社を挙げての選手支援、特に技術的なサポートよりも精神的な支
えとなることが選手にとっての大きな心の糧となる。それはまた、選手を応援することで会社
が一つになれることでもある。
競技大会までの3か月間は、指導員が生活、会話の受け応え、技能レベルの向上、造園に対
する考え方などについて厳しく訓練する。また、訓練の中では、石積み名人と呼ばれる指導員
に4日間程度だが学ぶこともできた。選手は若いので1回でも大会に出場すれば大きく成長す
る。特に、高校生の成長には著しいものがある。技能の飲み込みが早くどんどん先に進んでい
くのが傍目にもわかる。競技課題は1級技能検定よりも難しく、1級技能士でも簡単には仕上
げることができない内容を3か月の訓練でできるようなる。
これはすごいことである。選手は、
大会終了後には、実技指導を堂々とできるまでに成長する。本来、競技で扱う技能は入社5〜
10 年のベテランにならなければ、技能を教えはしても作業をさせてもらえない分野である。
この技能を短期間で訓練する機会を与えられるのが技能競技大会である。
準備から大会終了まで緊張の連続の中で学んだスキルをいかにして職場へ浸透させるかを考
え、また、若い後輩を育成する上でも、職人としてのプライドを持ち伝えてほしいものである。
競技を終えた選手には、各自の持ち場でのスキルをさらに磨いて、造園業のプロとして、模
範となる取組を広めてほしい。
50
造園職種編
指導をしていただいた
荻原博行さん
実技演習をしていただいた
白井造園の白井大介さん(左)、白井恭男さん(右)親子
(白井大介さんは第 46 回技能五輪全国大会で銀賞受賞)
51
巻 末 資 料
造園職種編
公 表
第46回技能五輪全国大会「造園」職種競技課題
次の注意事項及び仕様に従って、指定された区画内に施工図に示す庭園を見栄え良く作庭しなさい。
1 競技時間
標準時間
打切り時間
11時間00分
11時間30分
2 注意事項
(1) 支給された材料の品名、寸法、数量等が「競技用材料(支給材料)
」のとおりであるこ
とを確認すること。
(2) 支給された材料に異常がある場合は、申し出ること。
(3) 競技開始後は、原則として支給材料の再支給はしない。
(4) 使用工具等は、各自必要と思われるものを使用してよい。ただし、電動工具の使用はで
きない。また、あらかじめ印をした用具などは使用を禁止する。
(5) 競技中は、工具の貸し借りを禁止する。
(6) 競技中に観客等と話しをしたり、指導を受けたと判断されたときは、減点をする。
(7) 原則としてあらかじめ設定された木枠(3500×5000 ㎜)の中で作業する。
(8) 作業時の服装等は、作業に適したものとし、保護帽(ヘルメット)を着用すること。
なお、保護メガネを必要とする作業においては着用すること。
(9) 標準時間を超えて作業を行った場合は、超過時間に応じて減点される。
(10) 競技中は携帯電話(メール、時計、電卓の使用を含む)の使用を禁ずる。
(11) 競技中は課題と図面以外の参照を禁止とする。
(12) 課題と図面にあらかじめメモ書きを入れ競技会場に持ち込むことは禁止とする。
(13) 作業が終了したら、競技委員に申し出て確認を受けること。
3 仕様
3-1地均し
客土を使用し、地盤を計画高に施工すること。
3-2石積み
石材を使って図面のように2箇所石積み(小端積み)を行うこと。
(1)右側の石積みの正面から見える2面(A面)は、コブ出し仕上げとすること。
(2)左側の石積みの終わりの2箇所は、生け込みとすること。
3-3小舗石敷き
小舗石を使用し、図面のように砂ぎめで砂目地で仕上ること。
3-4レンガ敷き
レンガを図面のように砂ぎめで目地なしで施工すること。
小舗石敷きとの接点部分は、4つ以上加工し、他の隙間は砂ぎめとすること。
3-5石貼り
板石を使用し、乱張りをすること。砂ぎめで砂目地で仕上ること。
3-6敷き砂利
図面のように砂と砂利を使い、曲線で枯れ池を作ること。
3-7敷石
石積み用の砂岩を使って敷石を図面のように施工すること。
-155
3-8トレリス
支給された材料を使用し、図面の位置にトレリスを施工すること。詳細図は当日公表とす
る。
3-9植栽
支給された高中木及び低木は、図面の位置に修景を考慮して土ぎめで植え付けること。
必要と思われる剪定はしてもよい。
3-10 草花等の植付け
支給された草花を、小端積みの中と指定された場所に修景を考慮し植え付けること。
花は当日公表とする。
3-11 芝の植付け
目地なし、目土なしで図面のように施工すること。
3-12 地均し・整地
4 支給材料(1 組分)
品
名
寸法又は規格
600×100×100 mm
小端積み用石材(右)
600×100×50 mm
600×100×100 mm
小端積み用石材(左)
600×100×50 mm
レンガ
オーストラリアレンガ 230×110×50 mm
小舗石
90×90×90 ㎜
石貼り用石材
600×600×30 mm
砂利
さび砂利 20 Kg/袋 3袋/㎡
川砂
3袋/㎡
エゴノキ
H=1,800 mm
シマトネリコ
H=1,800 mm 鉢物 株立ち
低木
サツキ H = 300 W= 300 ㎜
針葉樹
H=1,000 H=1,200 H=1,500
季節の花
現地で調達できる物
コウライ芝
360×280 mm×10 枚(1㎡)
5 トレリス支給材料(1組分)
品
名
寸法又は規格
山割り竹
1,800×45
45 mm
檜角柱
90×90×3,000 mm 溝彫り加工済み
檜無目板
90×30×4,000
mm 溝彫り加工済み
30
6 トレリス持参品(1組分)
品
名
寸法又は規格
L金具
スチール製
ビス
L=35 mm、L=45 mm
結束線
#18 鉄線または銅線
-256
数
量
備
御影石
御影石
砂岩
砂岩
考
25
本
30
本
20
本
25
本
50
個
150
個
2
枚
4
袋
7
袋 目地、池用
1
株
1
株
15
株
各1
本
100ポット程度
10
㎡
数
量
28
1
1
数
量
備
考
枚 立子用、押し縁用
本 3箇所に使用
枚 笠木、無目板に使用
備
考
5
個 柱、無目板固定用
必要量
長さ2種類
10
m
造園職種編
7 持参工具
(1) 必要と思われる工具は持参しても良いが、手作業で行うことを原則とするため電源(発電
機も含む)を必要とする電動工具や油圧を使う工具については使用出来ない。
ただし、トレリス施工のビス止めに使用する充電式インパクトドリルについては持参可と
する。
(2) 工具の大きさについては特に指定はないが、通常使用している標準的な工具とする。
(3) 充電式ドリルの刃を交換してサンダーのように使用することはできない。
8 その他の注意事項
(1) 石材を加工する作業の際は、必ず保護めがねを着用し、他の選手又は見学者の迷惑になら
ぬよう配慮すること。
(2) ベニヤ板を2枚支給するので自由に使用して良い。
(3) 材料については都合により直前に変更することもある。
(4) 課題図面が印刷の関係で縮尺に誤差が生じ、読み取り寸法と図面表示寸法とが異なる場合
は、図面表示寸法によること。
-357
公 表
第46回技能五輪全国大会「造園」職種競技会場設備基準
設備の名称
区 分
設備類
品 名
寸 法 又 は 規 格
作業区画 一人当たり5000×3500㎜
客土
(予備)
3
数 量
13組
3㎥
m3
3
一組当たり0.25㎥
m
備 考
・別紙配置図を参照
・各区画は、角バタ角(90㎜)で
水平に枠を作り、枠上部まで山
砂で盛土する。(別添図を参
照。)
・四隅はかすがいで止めるこ
と。
・残土及び剪定枝集積場所を設
ける。
・会場周辺はフェンス等で囲い、
夜間警備すること。
ストックヤードに準備しておく
山砂(礫のないもの)
13組
テント
雨天が予想される時は張る
一連式テントでも良い
運搬具
6台
一輪車
工作用
測定具類
検査用
計測棒
2本
一寸角、長さ3000㎜
測定具類
58
-4-
補佐員等から借用
造園職種編
公 表
(公表山砂の盛土)
-559
60
造園職種編
61
Fly UP