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第1章 - ブリッジ エーシア ジャパン

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第1章 - ブリッジ エーシア ジャパン
ごあいさつ
「国別NGO研究会(スリランカ)」事業は、外務省の「NGO活動環境整備支援事業」の
一環で平成15年度に初めて行われることになり、2003年9月から2004年3月までの間、「ス
リランカ復興開発NGOネットワーク」が実施しました。本報告書は、2004年1月にこの事
業で行ったスリランカ合同現地調査に参加したNGOのメンバーが中心となってまとめた
ものです。
日本のNGOがスリランカ北東部での活動を始めて比較的まだ日が浅いこと、「スリラン
カ復興開発NGOネットワーク」の参加団体の中には、現地での活動をこれから本格的に
開始しようとしているところも少なくないことなどから、参加NGOの間には共通の問題
意識があり、共に学び、共に考え、協力して問題に対処していこうとする姿勢がありまし
た。そのため、本研究会は円滑に運営され、スリランカ復興開発支援に関わる日本のN
GOの間で信頼関係を一層強化することができました。また、外務省、国際協力機構(JIC
A)や国際協力銀行(JBIC)のスリランカ担当者にも本研究会の活動に参加していただいた
ことで、スリランカ支援に関して広い視野から率直な意見交換をすることができ、本研究
会の場は、今後のNGO間の連携やODAとNGOとの連携を検討する上で、潤滑油的な役割
を果たしてきたと言えると思います。
今後、本研究会事業の成果を踏まえて、初年度で行ってきたようなネットワークの活動
が今後もさらに継続されて、スリランカの復興と開発に当たって日本のNGOがより協力
関係を深め、その結果スリランカでの和平の確立と人々の生活向上に少なからず寄与する
ことができればと願っています。本報告書が、現在スリランカで活動しているNGO の
人々や、これから現地で活動を始めようとしているNGOの人々にとっての参考書として
役に立つことがあれば、非常に嬉しく思います。
最後に、本研究会の活動にご協力いただいたNGO、外務省、JICA、JBIC、JETRO、民
間コンサルタント企業、大学などの関係者の方々に、改めて深く感謝を申し上げます。
また、本報告書は、本ネットワークの責任において作成したものであり、日本政府なら
びに外務省、その他関係機関の見解や政策を反映するものではないことを付記します。
2004年3月
スリランカ復興開発NGOネットワーク事務局を代表して
新石 正弘
(特定非営利活動法人 ブリッジ エーシア ジャパン事務局長)
1
目 次
第1章 研究会の目的、及び参加団体等……… 9
第2章 第1回∼第3回研究会の報告……… 1 3
第3章 参加団体のスリランカにおける活動状況……… 1 7
第4章 合同現地調査聞き取り調査記録……… 4 5
第5章 「国別NGO研究会(スリランカ)」の結論及び提言……… 8 9
Ⅰ
復興・開発支援の現状及びニーズ……… 9 0
1.スリランカ政府、ADB・WB等、国連機関、2国間援助等の援助概要
2.ニーズの変化
3.移行期に取り残されるニーズ
4.南部、ムスリムへの支援
5.平和構築事業の重要性
日本政府、日本のNGOの支援活動の状況……… 9 3
Ⅱ
1.日本政府の援助
2.日本のNGOの活動
NGO活動実施上の問題点、課題……… 9 4
Ⅲ
1.LTTE、TROとの関係
2.現地NGOとの連携、補完的関係構築の必要性
3.政治状況の情報収集、和平交渉の背景理解の必要
4.安全管理対策について
NGOとして今後求められること……… 9 5
Ⅳ
1.スリランカ北東部支援におけるNGOの役割
2.具体的に必要とされる活動
3.ODAとNGOの連携
「平和構築事業におけるNGOの大胆な活用」
「NGOを含めたオール・ジャパン体制のための知的支援サポートの必要性」
4.ネットワークとしての当面の活動
5.国別研究会の評価と継続に関して
2
平
成
15
年
度
﹁
国
別
N
G
O
研
究
会
︵
ス
リ
ラ
ン
カ
︶
﹂
報
告
書
付属資料 1)第1回研究会「スリランカの歴史・政治・社会」詳細記録… 102
2)第2回研究会「異民族間融和促進における日本NGOの役割」詳細記録… 106
3)第3回研究会「日本の民間セクターの連携・協力の可能性」詳細記録… 112
4)日本のNGOがスリランカで活動を始めるためのガイド… 119
5)スリランカ復興開発NGOネットワーク参加団体概要… 121
3
4
5
6
合同現地調査写真
①合同現地調査で訪れたクルネーガラ県の小
学校。校長先生や大勢の児童の歓迎を受けた。
ここでは、オイスカの「子供の森」計画によ
り豊かな森が育っていた。
(1月20日訪問)
②ワウニア郊外の溜め池から水田地帯へと続
く水路。国際協力銀行(JBIC)は、農村経済
開発復興事業(PEACE)の第 2 フェーズでこ
の近くの溜め池を修復していく予定である。
(1月21日訪問)
①
②
③キリノッチ県ポンナガー村の仮の学校校舎で授
業を受ける子供たち。2004年3月現在、ブリッ
ジ エーシア ジャパン(BAJ)が村人に技術訓練を
行いながら、新校舎を建設中。(1月22日訪問)
④キリノッチの BAJ 職業訓練センターでは、明
石日本政府代表や須田大使を始めとする外務省職
員の訪問を受けた。
(1月22日訪問)
④
③
⑤
⑤国際協力機構(JICA)の事業で病棟や職員住居等の建
設作業が進むキリノッチ県立病院。
(1月22日訪問)
⑥ジャフナでは様々な現地 NGO の人々から意見を聞く
ことができた。
(1月23日、24日訪問)
⑥
7
⑧
⑦
⑦インドに近いマナー県の漁村。浜辺には日本製の船外機
をつけたボートが数多く並んでいる。
(1月24日訪問)
⑧トリンコマレー県サダムナガール村の女性団体。この村
では、シンハラ、タミル、ムスリムの3民族が共存してい
る。
(1月26日訪問)
⑨
⑨ヌワラエリヤの紅茶農園管理者の豪華な住ま
い。植民地時代の名残が感じられる。(1月28日
訪問)
⑩トリンコマレー県サダムナガール村の民家。こ
の村は内戦中に激しく破壊され、戦闘で夫を亡く
した女性も多い。
(1月26日訪問)
⑩
⑪ヌワラエリヤの紅茶農園の中にあるインド系タ
ミル人労働者が住む長屋。ケアがこうした労働者
の支援を実施している。
(1月28日訪問)
⑫コロンボの日本大使館を訪問し、復興開発支援
について意見交換を行った。(1月19日、29日
訪問)
⑫
⑪
8
第1章 研究会の目的、
参加団体等
9
現状と迅速な復興開発の必要性を日本社会に
1.「国別NGO研究会(スリランカ)」概要
訴える共同アピールを発表した。そして、す
本研究会は、「スリランカにおける我が国
でにスリランカ北東部での活動を始めていた
NGOの活動能力向上や、NGOとODAの連携
WVJ はその活動のさらなる展開を進め、ま
のための方策を調査・研究し、草の根レベル
だ活動していなかったAMDA とBAJ は事業
に裨益する具体的な経済・社会開発プロジェ
実施準備をそれぞれで開始した。2003 年に
クトの形成及び実施を視野に入れて、今後の
入ってからも、この3者の間で連絡や情報交
スリランカにおける我が国NGO の活動の方
換が行われ、4月にはWVJの呼びかけで、ス
向性や支援のあり方を提言すること」を目的
リランカで活動しているNG
としている。
後開始しようとしているNGO を構成団体と
O、或いは今
2003年6月に外務省経済協力局民間援助支
して、スリランカ復興開発NGO ネットワー
援室より、上記を目的とする平成 15 年度
クが設立された。当初の事務局はWVJ に置
「国別NGO研究会(スリランカ)」の公示(企
かれ(2003年7月からはBA
Jが事務局を担
画書等提出招請)があった。外務省が主催す
当)、WVJ、BAJの他に日本紛争予防センタ
るこの研究会の目的は、「スリランカ復興開
ー(JCCP)、反差別国際運動(IMADR)が参加
発NGO ネットワーク」の目指すものと合致
した。その後、徐々に参加団体が増え、2004
していたため、同ネットワーク共同で企画書
年3月現在、以下の11団体がメンバーとなっ
を作成し、これに応募した。その後、外務省
団 体 名
に 提 出した 企 画 書 が 7月 2 8 日 に 採 択され 、
2003年9月中旬より同ネットワークでこの事
業を実施してきた。総予算は約600 万円で、
実施期間は2004年3月までの約7ヶ月間であ
る。
本研究会の運営は、5つのNGOのメンバー
から成る運営委員会によって行われ、事務局
は、スリランカ復興開発NGO ネットワーク
の事務局でもあるブリッジ エーシア ジャパ
ンに置かれてきた。
2.「スリランカ復興開発NGOネットワーク」
概要
アムダ(AMDA)、ブリッジ エーシア ジャ
パン(BAJ)、ワールド・ビジョン・ジャパン
(WVJ)の3団体は、2002年6月に実施された
(特活)日本紛争予防センター
(JCCP)
反差別国際運動(IMADR)
参加時期
2003年4月
同上
(特活)ブリッジ エーシア ジャ
パン(BAJ)
同上
(特活)ワールド・ビジョン・ジ
ャパン(WVJ)
同上
(特活)アジア太平洋資料セン
ター(PARC)
2003年5月
(財)オイスカ
同上
(特活)BHN テレコム支援協議
会(BHN)
2003年9月
マリー・ストープス・インター
ナショナル(MSI)
同上
(特活)アジアを紡ぐ会(ASA)
2003年10月
(財)ケア・ジャパン
2004年2月
自立のための道具の会(TFSR) 同上
財団法人アジア福祉教育財団 難民事業本部
主催のスリランカ北部調査に参加した。約
20 年にわたる内戦の戦禍による人々の惨状
を理解した3団体は、帰国後、スリランカの
10
ている。
3.研究会の活動概要
平成15年度「国別NGO研究会
(スリランカ)」
では、毎月1 回の研究会或いは会合を開き、
2004年1月には参加NGOによる合同現地調査
3.活動
(1)月1回程度の会合を持ち、NGO間の意
を実施した。その主な概要は、下記の通りで
ある。
見・情報交換を行う。
(2)NGO 間での相互協力、共同事業に向
●2003年9月25日
けての模索を行う。
第1回研究会「スリランカ和平の現状なら
(3)日本政府等からの資金獲得にあたって
びに見通しと日本の対応、とりわけNGO
の役割」
連携し、共同で働きかけを行う。
(4)必要に応じて共同プレスリリース等の
●2003年10月31日
広報活動を行う。
第2回研究会「スリランカで異民族間の融
(5)その他スリランカ復興開発支援に付随
和を進めるために日本のNGO がなすべき
こと」
4.参加資格
●2003年11月28日
スリランカで事業を実施中、あるいは具体
第3回研究会「今後の復興開発支援におけ
る日本の民間セクターの連携・協力の可能
性」
●2003年12月10日
する活動を行う。
的な事業を計画中のNGO団体。
5.活動期間
2004年3月31日まで。但し、状況に応じて
合同現地調査検討会
●2004年1月18日∼2月1日
スリランカ合同現地調査
延長。
6.参加団体(2004年2月10日現在、下記11
団体が参加)
●2004年2月10日
提言検討会
(特活)アジア太平洋資料センター (PARC)
●2004年3月29日
事業報告会
(特活)アジアを紡ぐ会(ASA)
(財)オイスカ
国別NGO研究会(スリランカ)の実施団体
(財)ケア・ジャパン
■
第
1
章
研
究
会
の
目
的
、
参
加
団
体
等
■
であるスリランカ復興開発NGO ネットワー
クの目的、活動については、下記の設置要領
を参照されたい。
自立のための道具の会(TFSR)
(特活)日本紛争予防センター(JCCP)
反差別国際運動(IMADR)
(特活)BHNテレコム支援協議会(BHN)
スリランカ復興開発NGOネットワーク
(特活)ブリッジ エーシア ジャパン(BAJ)
設置要領
マリー・ストープス・インターナショナル(M
1.名称
SI)
「スリランカ復興開発NGO ネットワーク」
とする。
2.目的
(特活)ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)
※なお、当ネットワークは 2003 年 9 月から
2004 年 3 月まで実施される外務省の「国別
現在スリランカで復興・開発の事業を行う
NGO研究会(スリランカ)」事業の実施団体
日本のNGO、及び今後当地にて事業を行
となり、上記で下線を引かれた団体が、研究
う具体的な計画を持つ日本のNGO が、将
会の運営委員会を構成する。
来にわたり継続的に活動できるよう、その
ネットワーク事務局:特定非営利活動法人
基礎を作ることに寄与する。
ブリッジ エーシア ジャパン
11
12
第 2 章 第1回∼第3回
研究会の報告
13
平成15年度「国別NGO研究会
(スリランカ)」
ることへの期待が表明された。
事業では、平成15年9月∼11月にかけて、ス
その後、龍谷大学の中村教授による講義が
リランカに関する第一線の研究者やスリラン
行われた。講義の中では、スリランカの歴史
カ駐在経験者等を招いて、国内での研究会を
的条件、社会構造、金融市場、政治・経済状
3 回開催した。以下、その概要を記す(各研
況、現地NGO の特徴、近隣国との関係、女
究会の詳細な内容については、付属資料1∼
性の地位、言語、宗教、停戦後への展望、
3を参照のこと)。
様々なアクターによる平和構築・復興開発の
取り組み、日本の援助の課題など、幅広いト
■第1回研究会
ピックが体系的に網羅され、研究会出席者は、
日 時:平成15年9月25日 15:00∼
スリランカの全体像について認識を深めるこ
会 場:アジア太平洋資料センター とができた。また、そうした状況の下、日本
2階会議室
講 師:中村尚司先生 龍谷大学社会科学研究所教授
のNGO はどのような活動を今後スリランカ
で展開していくべきかを広い視野から考察す
ることができた。
テーマ:スリランカ和平の現状ならびに見通
さらに、質疑応答・意見交換のセッション
しと日本の対応、とりわけNGO の
においては、中村教授、外務省アジア大洋州
役割
局南西アジア課、国際協力銀行開発第2部第
参加者:外務省、国際協力銀行、国際協力事
3班、国際協力事業団アジア第二部 南西ア
業団、スリランカで事業を実施・計
ジア・大洋州課、NGO からの出席者の間で
画しているNGO等より多数
活発に意見や情報の交換を行い、O D A と
NGO との連携・協力を深化させる方策につ
第1回研究会では、まず、スリランカ復興
いて考えることもできた。こうしたことから、
開発NGOネットワーク及び「国別NGO研究
この第1回研究会では、「国別NGO研究会(ス
会(スリランカ)」の事務局を務めるブリッ
リランカ)」事業を進めて行く上での基盤が
ジ エーシア ジャパンの新石事務局長より、
固められたと言える。
スリランカ復興開発NGO ネットワーク設立
の経緯や「国別 NGO 研究会(スリランカ)」
■第2回研究会
事業が同ネットワークによって実施されるこ
日 時:平成15年10月31日 15:00∼
ととなった背景、この事業の主な内容などに
会 場:独立行政法人 ついて説明がなされた。
次に、外務省経済協力局民間援助支援室の
中野首席事務官より、「国別NGO研究会(ス
14
国際協力機構(JICA)11階会議室
講 師:足羽與志子先生 一橋大学大学院社会学研究科教授
リランカ)」がNGO活動環境整備支援事業の
テーマ:スリランカで異民族間の融和を進め
一環として開始された経緯、スリランカが初
るために日本のNGO がなすべきこ
年度の対象国として選ばれた理由等について
と
説明があった。また、日本のNGO がスリラ
参加者:外務省、国際協力銀行、国際協力事
ンカで効果的なプロジェクトを実施していく
業団、スリランカで事業を実施・計
ためのステップとしてこの研究会が活用され
画しているNGO等より多数
10月の第2回研究会では、冒頭でブリッジ
田附範雄氏 日本貿易振興機構(ジ
エーシア ジャパンの新石事務局長より、ス
ェトロ)盛岡貿易情報センター所長
リランカ復興開発NGO ネットワークを設置
新石正弘 ブリッジ エーシア ジャ
するに至った経緯、外務省主催の「国別
パン 事務局長
NGO研究会(スリランカ)」事業の背景、第2
大津祐嗣 ブリッジ エーシア ジャ
回研究会の進行等についての説明、足羽教授
パン スリランカ事業担当
の略歴の紹介が行われた。
足羽教授の講義では、スリランカを見つめ
テーマ:今後の復興開発支援における日本の
民間セクターの連携・協力の可能性
る視座、スリランカの文化システムと民族対
参加者:外務省、スリランカで事業を実施・
立の相関関係、異文化や他者への感受性、日
計画しているNGO等より多数
本のNGO がスリランカで活動する上で必要
となる姿勢などについての話がなされた。こ
第3回研究会では、初めに、ブリッジ エー
のことにより、研究会の出席者は、スリラン
シア ジャパンの新石事務局長が、「国別NGO
カで復興開発支援を行っていくなかで忘れら
研究会(スリランカ)」事業開始の経緯、第3
れてはならない視点や、異民族間の融和を促
回研究会の趣旨、本事業の今後の計画などに
進していくための手がかりを数多く得ること
ついて説明を行った。
ができた。
また、足羽教授からは、平成15 年にスリ
この研究会では、スリランカで事業を行う
ランカ北部のジャフナで実施された住民の意
民間の各アクターの間での相互協力の可能性
識調査の結果が包括的に報告され、出席者は、
を模索することを目的に、スリランカでの事
激しい民族紛争の影響を受けた地域の住民が
業実施経験の豊富な開発コンサルタント企
どのような意識を持って生活を続けているか
業、M&Yコンサルタントの今里氏と、コロ
を非常に明確に把握することができた。これ
ンボ駐在経験を持つ日本貿易振興機構(ジェ
は、日本のNGO がこうした地域で住民のニ
トロ)盛岡貿易情報センターの田附氏をパネ
ーズに的確に対応して支援事業を実施してい
ラーとして招いた。今里氏、田附氏からは、
く上で大いに役立つと考えられる。
スリランカでの生活や業務の中で得られた経
この研究会においても、NGOだけでなく、
■
第
2
章
第
1
回
∼
第
3
回
研
究
会
の
報
告
■
験、開発支援事業実施において重視されるべ
外務省、国際協力銀行、国際協力機構から出
き姿勢、日本企業の活動状況等についての話
席者を得ることができ、スリランカ復興開発
がなされ、NGO 側からも、複数の団体が現
支援の関係者の間での交流を深めることがで
地での活動における困難、開発コンサルタン
きた。
トや民間企業との協力の可能性等について意
見を述べ、建設的な意見交換がなされた。
■第3回研究会
日 時:平成15年11月28日 14:00∼
会 場:ワールド・ビジョン・ジャパン 2階会議室
パネラー:今里いさ氏 ㈱エム アンド ワイ
コンサルタント
15
16
第 3 章 参加団体の
スリランカにおける
活動状況
17
特定非営利活動法人アムダ(AMDA)
〈スリランカ医療和平プロジェクト〉
っては、医療費無料という恩恵を授かるこ
1.期間 :2003年2月∼現在
とが非常に難しい状況にある。このため医
2.支援機関:外務省(日本NGO支援無償資
療機関へのアクセスが限られ、もしくは困
金協力)
3.事業地区:スリランカ北部キリノッチ、
ワウニア(すでに終了)、東部トリンコマ
レー、南部ハンバントタ
難となっている地域への巡回診療を実施す
る。巡回診療はスリランカ北東部を対象に
している。
また、公共サービスが遅れていることに
4.受益者: 地域住民、地元小学校
より、医療サービスの面から見れば学校保
5.事業目的:
健システムが未発達のままとなっている。
1)内戦時に激しい戦闘地域となった北東
そこで既存の保健機構及び学校システムを
部地区における巡回診療を主とした医療サ
活用しながら児童の保健衛生教育を充実さ
ービスの実施、そして貧困層の多い南部を
せていく活動を行う。これにはAMDA 健
含めた3地域においてAMDA健康新聞を用
康新聞(シンハラ・タミル・英語の3 言語
いて地域小学校や巡回診療サイトにて保健
で記載)を利用し、児童のみならずその家
教育を行うことにより、バランスのとれた
族や地域住民の保健衛生の増進に貢献して
医療サービスを提供し、スリランカの平和
いく。
構築に寄与する。
7.進捗状況:
2)特に、AMDA健康新聞では、生活習慣
AMDA スリランカ医療和平プロジェク
や予防に関する保健教育の内容に加え、明
トは2002年2月より現地に展開し、スリラ
石日本政府代表をはじめ日本大使館、スリ
ンカ北部・東部・南部においてバランスの
ランカ政府やLTTE側の保健省担当者等か
取れた平和構築(AMDA医療和平)の一環
らの平和へのメッセージを掲載し、命の大
として、医療サービス(主に巡回診療や
切さや子供の健康の大切さをそれぞれの地
AMDA健康新聞の発行)の提供を進めてき
域に住む住民の間で共有していくことによ
た。現在までにAMDA カンボジア支部の
り、民族間の信頼醸成・国民意識形成を目
医師をはじめとし、オーストラリア、イギ
指す。
リス、バングラデシュからの外国人スタッ
3)日本政府によるスリランカ和平構築支
フと、診療放射線技師といった専門家を含
援に寄与する。
めた日本人を合わせ、30 名以上がプロジ
6.事業内容:
18
路状況が劣悪なままとなっており患者にと
ェクトに携わった。
スリランカ北東部は長く続いた内戦の主
昨年8月をもって終了した北部ワウニア
戦場となり多くの医療施設が破壊され、残
地区での事業では地元NGOやMOH(Office
ったところでも簡易な医療器具のみが残さ
of the Medical Officer of Health)やDPDHS
れている状況にある。医師や看護師、診療
(Deputy Provincial Director of Health
放射線技師といった医療専門家が著しく不
Service)と診療サイトを分担しつつ合計8
足している上、公共交通機関が未発達で道
箇所において巡回診療を実施し、1万名以
上の患者を診察した。
4.受益者:
5月より開始した同じく北部のキリノッ
Kaithadi Navatkuli South
チでもスリランカ赤十字やMOH、DPDH
人
S、そしてTEHS(Tamil Eelam Health Ser-
Madduvil North
vice Center)と連携をとりながら主要幹線
裨益人口:約800
裨益人口:約1,500人
5.事業目的:
道路付近を中心に週に4回の巡回診療を実
1)集会の場を提供することにより、住民
施している。1 日の平均患者は100 名から
間のコミュニケ−ションを促進し、円満な
150名である。また、現在はDistrict Hospi-
コミュ二ティ形成を促す。
talと協力し冷凍車輌を改造したX線車輌に
2)帰還民に対し、経済活動がより円滑に
てレントゲン撮影を実施している。今後も
行えるようにキャピタルを物資で提供す
超音波や心電図を使用しての医療協力を進
る。
めていく。
6.事業内容:
東部での巡回診療の平均来所患者数は同
じで、ここでは特にイスラムの人々がいる
1)コミュニティ・センターの建設(2箇所)
2)経済活動支援
村を中心に月に1週の頻度で実施。巡回診
漁業地区:魚網の供給
療と同時にAMDA 健康新聞を利用しての
農村地区:水ポンプ、鍬の供給
学校や診療サイトにおける保健衛生教育を
実施し、昨年末までに「歯を磨きましょう」
「歯の磨き方」「傷を洗いましょう」「手を
洗いましょう」とトピックを決め1万部以
上を配布し衛生教育を行った。
3)コミュニティ・センターの運営支援
各種セミナー実施、保健衛生教育、夜
間自習スペース、小規模図書館 等
7.進捗状況:
a)Kaithadi Navatkuli South
学校保健を中心に進めている南部ではハ
2003年8月―12月 センター建設(完成)
I
2003年8月 魚網供与。供与された魚網を
(Public Health Inspector)と連携しながら保
原資として、住民主体でローン・システ
健教育を実施している。健康新聞は毎月の
ムを確立。2004年1月現在、回収金をも
発行予定で準備に取り掛かっており、今後
とに新たに4名の漁民に対して魚網が供
も継続して行う。スリランカ医療和平プロ
給された。
ンバントタ県内の18の小学校にて、PH
ジェクトは、引き続き北部、東部、南部で
の活動を継続していく。
■
第
3
章
参
加
団
体
の
ス
リ
ラ
ン
カ
に
お
け
る
活
動
状
況
■
2004年2月 ファースト・エイド・セミナ
ー
2004年1月―12月 英語のプライベート・
〈コミュニティ復興支援事業〉
クラスへの一部資金援助、その他、セミ
ナー開催 に関する関係省庁との折衝・
1.期間 :2003年3月∼2004年3月
2.支援機関:外務省(日本NGO支援無償資
金協力)
3 .事業地区:ジャフナ県テンマラッチの
サポート
b)Madduvil North
2003年8月―1月 センター修繕(完了)
2003年11月 灌漑用ポンプ供与
Kaithadi Navatkuli South(漁業地区)及び
2003年11月 耕作用鍬供与
Madduvil North(農業地区)
2004年1月 供与された魚網を原資として
19
住民主体でローン・システムを確立。こ
の時期ローン回収開始。3ヶ月回収後に
農機具が他の農民に供与される予定。
4)母子保健に携わる医療スタッフの技術
や知識が向上する
9.事業背景:
2004 年 2 月 ココナツ栽培・育成セミナ
ワウニアでは、人口流入などに伴う医療
ー、家畜の病気治療講習への一部資金援
保健サービスへの需要増加に対し供給が十
助、セミナー開催に関する関係省庁との
分に追いついていない。特に基盤整備を含
折衝・サポート
む妊産婦への医療保健サービスは早急な復
旧が望まれている。妊婦へのサービスを例
〈保健システム復興支援事業〉
とされるケースのみ上位病院(ワウニアの
1.期間:2004年3月―2006年2月
場合はジェネラル・ホスピタル)で診察・分
2.支援機関:JICA(草の根技術協力事業)
娩が推奨され、それ以外の通常分娩(多く
3.事業地区:ワウニア県 Poovarasankulam
のケースがこれに当てはまる)の場合には
4.受益者:医療スタッフ、母子、住民
各地にあるマタニティ・ホームに行くこと
5.事業目標:母子保健関連の医療サービス
になっている。現在、ワウニア県ではこの
の向上
6.事業目的:Poovarasankulamとその周辺地
区におけるリファーラル・システムの再構
築を支援する
7.事業内容:
システムが十分機能しておらず、実際には
出産のために過多の妊婦がワウニア・ジェ
ネラル・ホスピタルに詰めかけている。
こうした問題は、主に周辺地域の医療
保健施設の機能不全、人材や医療機材の不
1)マタニティ・ホームを建設する
足に起因している。そこで当事業は、ワウ
2)適切な医療機材を設置する
ニア全体の公共サービスが回復する過程に
3)医療スタッフを対象にした医療保健教
おいて、県保健当局(DPDHS)が策定した
育訓練プログラムを行う。
8.期待される成果:
1)Poovarasankulam CD&MHにおける適切
な妊産婦検診が行われる。
2)Poovarasankulam における分娩数が増加
する
3 )病院勤務の助産師 Hospi t al Mi dwi fe
(HMW) と草の根レベルで活動する助産
師Field Midwife(FMW)の連携が強化さ
れる
20
にとると、本来ならば、特別な措置が必要
復興計画の一端を担い、不均衡な医療保健
システムの是正に寄与することを念頭に置
きつつ、妊産婦及び乳幼児に対して医療保
健サービス機会が充分提供されるべく、事
業対象地区における基盤整備と草の根レベ
ルの医療保健システムの回復に重要な役割
を担うFMWやCHPの人材育成及び相互の
協力体制の確立、強化を支援する。
特定非営利活動法人 アジアを紡ぐ会(ASA)
〈裁縫教室〉
活動地域:エンビリピティア及びスーリアウ
ェア
げる。このNSグループの自立を目指した
支援も行っている。農村部での製品への需
要がない中、日本人スタッフが行っていた
初級教室を教えることや、ASA からのオ
対象者:10代後半から20代前半の女性たち
ーダーで胡椒入れ袋、刺繍のカード、ティ
目的:女性たちによる裁縫技術の習得及び裁
ーポット敷きとティーポット・カバーのセ
縫技術を使用した収入向上事業
活動内容:
①初級裁縫教室、上級裁縫教室の開催
(2001年10月―現在)
マハベリ開発庁と協力して、トレーニン
ットなどを製作・販売することにより、現
在は収入を得ている。2003年8月には、女
性銀行組織について学ぶためハンバントー
タへのスタディ・ツアーも行った。
〈女性グループ支援〉
グ・センターなどで、初級教室(週2回3時
■
間、4ヶ月)及び上級教室(週1回3時間、6
活動地域:コロンボ・オベセカラプラ地区
ヶ月)を開催。上級教室の生徒は、初級教
対象者:婦人会の中のビジネス・グループ
室の卒業生の中から、成績優秀かつさらに
目的:手工芸技術を使用した収入向上事業の
学びたいという意欲のある者を選抜する。
上級教室の卒業生は、現在では、初級教室
を教えるまでになる。2001 年10 月から現
強化
活動内容:
①サンプル提供を含む、製品製作へのアド
在まで、初級教室を4 期開催し、3 期51 名
バイス
が卒業、現在は20名程度が学んでいる。
手工芸技術を使用した製品のサンプル
上級教室は3期開催し、2期11名が卒業、
(見本)を製作・提供する。サンプルに基
現在は5名が学んでいる。
いて製作された製品は、A S A が購入し、
②NSグループへの支援(2003年5月―現在)
日本で販売するほか、グループ独自の販路
上級教室の卒業生が、裁縫技術を生かし
でも販売されている。また、製品のデザイ
たビジネスを始めるために、2003年5月ビ
ンや質を向上させるためのアドバイスも行
ジネス・グループ(NSグループ)を立ち上
う。
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上級裁縫教室でクッションを
製作する生徒達
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特定非営利活動法人ブリッジ エーシア ジャパン(BAJ)
スリランカにおけるBAJの活動
【事業開始までの経緯】
BAJは、2002年6月に(財)アジア福祉教育
財団 難民事業本部が実施したスリランカの
国内避難民についての現地調査に職員2名を
派遣した。続いて、同年8 月に第2 次調査団
をスリランカへ派遣し、10月1日には外務省
に日本NGO 支援無償資金協力の申請を行っ
荒れ果てたスリランカ北部地域の復興を目指
た。また、10 月上旬には国連難民高等弁務
して、北部の国内避難民や帰還民を主な支援
官事務所(UNHCR)の委託事業実施へ向けた
対象として事業を実施してきた。北部地域で
ミッションをコロンボへ派遣し、UN
は19 年もの戦争の影響で、教育や技術習得
HCR
との契約交渉等を開始した。1 1 月からは、
の機会が少なく、多くの住居や公共施設が破
現地事務所の開設や北部での事業実施のため
壊されているため、BAJは、①職業訓練と就
の準備に着手し、12月9日にはスリランカ政
業機会の増加 ②基礎インフラ整備 を主な
府へのNGO登録が完了した。
柱として活動を継続してきている。
その後、2003年1月には、日本NGO支援無
また、20 年近く激しい内戦が続いたスリ
償資金協力の契約を締結し、UNHCRとの事
ランカでは地域的・民族的にバランスのとれ
業契約にも署名することができた。こうして、
た開発支援を行う必要があるため、タミル人
BAJは2003年1月から、日本のNGOとしては
の多い北部での事業と平行して、シンハラ人
初めてスリランカ北部に日本人常駐職員を派
が多数を占める南部の貧困地域で支援事業を
遣し、本格的な支援活動を開始した。
開始するための基礎調査も行ってきた。
2004年3月現在、BAJは首都コロンボのほ
【事業の全体状況】
かに、北部のワウニア、キリノッチ、マナー
に現地事務所を構え、3名の日本人常駐職員
BAJは2003年1月以来、長きに渡る内戦で
と約50 名のスリランカ人職員が密接に協力
し合いながら、着実に北部での事業を推進し
ている。
【各事業の詳細】
◆ワウニア県での国内避難民・帰還民等の支
援事業
①学校校舎・公民館建設事業(期間:2003年
22
1月∼11月、主な事業資金:平成14年度日本
段を持っていないワウニア県の戦争未亡人等
NGO 支援無償資金協力)
の社会的弱者が、技術を活かして安定した収
2003 年1 月上旬に開始したこの事業では、
北部のワウニア地区の学校と公民館の修復・
入を得ていけるよう、様々な職業訓練事業を
実施する計画を立てている。
再建を行った。具体的には、チェディクラム
郡クリストヴァクラム村及びムハタンクラム
村における学校校舎の再建と、ヴァリクッデ
◆キリノッチ県・ムラティヴ県での国内避難
民・帰還民等の支援事業
ィウルワ村における公民館(多目的施設)1
棟の建設である。
これらの建設工事は、現地の建設会社に依
頼するのではなく、BAJがミャンマーでも行
①基礎インフラ整備のマイクロ・プロジェク
ト (実施年:2003年、主な事業資金:UNHCR
資金)
ってきた実地訓練(オン・ザ・ジョブ・トレー
UNHCRとの協力事業では、合計56のマイ
ニング:OJT)方式で女性を含む地域住民の
クロ・プロジェクトをキリノッチ県・ムラテ
参加を得て実施し、元いた村に帰還した国内
ィヴ県で実施し、基礎インフラの整備を行っ
避難民が訓練生として建設工事に参加し、
た。給水事業としては、新規井戸の建設を
OJTによって測量、左官、大工などの技術を
21箇所、井戸の修繕を2箇所(1マイクロ・プ
習得しながら、出身地域の公共施設建設に積
ロジェクト)、給水タンクの建設・パイプラ
極的に参画した。
インの設置といった給水システムの建設を4
この事業による建設作業は2003年11月に
箇所において実施した。衛生改善事業として
完了し、12月中旬には現地で式典を行った。
は、19箇所でトイレの建設を行った。また、
8角形のユニークな公民館を建設したヴァリ
4箇所で学校校舎(合計7棟)の修復及び建設
クッディウルワ村では、意欲的な村人から、
を行い、幼稚園、公民館、孤児院の建設を各
「新しい公民館を裁縫やコンピューターの職
1箇所ずつで実施した。さらに、収入向上事
業訓練に使っていきたい」という声も上がっ
業として、キリノッチ県内の4郡で社会的弱
てきている。
者に苗木の配布を行った。
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これらの事業のうち、井戸とトイレのそれ
②職業訓練事業 (2004年開始予定)
BAJスリランカでは、十分な収入を得る手
ぞれ1箇所を除く54のマイクロ・プロジェク
トは、現地NGO を通して実施する必要があ
り、これら現地NGO との調整や事業の監督
がBAJの主な役割であった。
②職業訓練センター事業(実施年:2003年及
び2004年、主な事業資金:UNHCR資金・日
本NGO支援無償資金協力)
2003年、BAJはキリノッチで職業訓練セン
ターの建設を行い、作業は2004年1月中旬で
完了した。この事業では、事務所兼教室を1
棟、実習場を1棟、宿泊棟を2棟建設した。
23
2003 年11 月10 日に開始した第1 期コース
主な事業資金:UNHCR資金)
(大工コース訓練生20名、左官コース訓練生
2004年の新しい事業として、非食料救援物
5名)では、12月下旬に試験を行い、1月13日
資(Non-Food Relief Item)の配給をBAJが行う
に修了式を行った。
ことになった。これは、帰還民や十分に生活
スリランカ北部では、女性が主要な受益者
支援を得られていない社会的弱者を対象に、
となるような復興開発プロジェクトを各地で
マット、蚊帳、なべ等の生活物資を配給する
実施して、女性の開発への参加をさらに促し
活動である。昨年まではUNHCRがこの活動
ていく必要があるため、第2期からは、女性
を行っていたが、今年からBAJが新しい方式
中心のコースも設けることにした。この第2
で携わることになり、年内に9000 家族を対
期コース(トラクター整備、家具作り、裁
象に非食糧救援物資を配給する予定である。
縫:各6ヶ月コース)の準備は12月から行い、
1月19日に開講式を行った。2004年3月現在、
④学校校舎建設事業(期間: 2 0 0 3 年 7 月∼
トラクター整備コースには、キリノッチ周辺
2004年6月、主な事業資金:平成15年度国際
からの21名の男子生徒が、月曜日から金曜日
ボランティア貯金配分金)
まで訓練に参加している。家具作りコースで
2003年7月に開始されたこの事業では、キ
は、グループ訓練方式をとっており、キリノッ
リノッチ中心地の南に位置するポンナガー村
チ、ムラティヴ、マラヴィの各県から、女性
で、シヴァパタカラヤガム学校の校舎を建設
7名構成の1グループずつ(合計21名)が、月
している。住民組織である学校発展協会
曜日から金曜日まで参加している。ムラティ
(School Development Society)と協力して事業
ヴとマラヴィからの生徒は、家からの通学が
を実施しており、2004年3月現在、基礎工事
難しいため宿泊棟に滞在している。裁縫コー
が既に終わっている。
スでも家具作りコースと同様にグループ訓練
この事業で5つの教室と職員室兼図書室を
方式をとっているが、開講は週末のため、遠
備えた校舎が完成すれば、1 日に最高400 人
方より来る訓練生は金曜日の夕方から日曜日
の生徒が学ぶことができるようになり、校舎
にかけて宿泊棟に滞在している。訓練の対象
は、集会所や災害時の避難場所など地域住民
者は戦争孤児、戦争未亡人、離婚者、片親家
の公共福祉施設としても機能することにな
庭や貧困家庭の人々である。
る。破壊された校舎を再建し、帰還した国内
③非食糧救援物資配給事業(実施年:2004年、
避難民の子どもたちの教育環境を整備するこ
とで、帰還民の復興への意欲を後押しできる
と期待される。
◆マナー県での国内避難民・帰還民等の支援
事業
①基礎インフラ整備のマイクロ・プロジェク
ト(実施年:2003年、主な事業資金:UNHC
R資金)
2003年12月末までにマナー県の8箇所で井
24
戸建設が完了した。これらの井戸は、地域の
含む)がフォローアップ・コースに参加した。
青年を対象としたOJTで建設し、生活用水の
2004年3月下旬からは、4輪トラクター整
重要な供給源として住民に使用されている。
備コースを半年間開講する予定で、このコー
スの中では精米機の整備に関する講習会も開
②職業訓練センター事業(実施年:2003年及
く。また、同事業で船外機(ボート・エンジ
び2004年、主な事業資金:UNHCR資金・日
ン)の整備コースを、5月から4ヶ月間開講す
本NGO支援無償資金協力(予定))
る予定である。
マナー地区の職業訓練センターは政府支配
★この職業訓練センターの運営は、今後、政
地域にあるため、BAJが直接地元の青年に大
府の高等教育省職業訓練局(V o c a t i o n a l
工・左官技術のOJTを行いながら建設作業を
Training Authority)とMOUを結んで行って
行い、2003年10月1日に開校された。12月末
いく。
で大工、左官、2輪トラクター・エンジン整
備の3コースが終了した。大工コース、左官
③橋梁建設事業(実施年:2004年、主な事業
コースでは、約半年間、OJTで職業訓練セン
資金:日本NGO支援無償資金協力(予定))
ターの建設を行い、17 名がコースを修了し
マナー県の住民の間では、(県道以下のレ
た。一方、2輪トラクター・エンジン整備コ
ベルでの)橋梁建設のニーズ、期待が大きい。
ースでは、3ヶ月間の理論講義と実習を行い、
そこでBAJでは、ミャンマーのラカイン州北
26名が修了した。
部での経験を活かして、アクセス改善に欠か
2004年2月1日∼29日までは、2輪トラクタ
ー整備のフォローアップ・コースを実施。
2003 年 10 月∼ 12 月の 3 ヶ月で 2 輪トラクタ
ー・エンジン整備の基礎を学んだ26 名の生
徒のうち、継続を希望する8名(3名の女性を
せない橋の建設をマナー県で行う計画を立て
ている。
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特定非営利活動法人BHNテレコム支援協議会
アフガニスタン難民キ
ャンプでの電話サービ
ス風景
BHN は、1983 年の国連決議と1985 年IT U
(世界電気通信連合)の決議による「電気通
信が先進国に偏在していることを是正しなけ
ればならない」を受けて、日本の電気通信従
事者の代表者によって設立された団体であ
る。活動の目的は、会員が持っている、情
報・通信、その他の分野で長年培われた技
術・ノウハウを生かしながら、発展途上国、
特にアジアにおけるベーシック・ヒューマ
(4)テレビ電話を使用して関係国と日本を結
ぶ対話プロジェクトの実施
ン・ニーズ(BHN)
(保健衛生、エネルギー、
食糧生産、環境保護、初等教育)の達成に向
けての自助努力を支援することである。
スリランカにおけるBHNの活動状況
(1)2000 年∼ 自主事業によるアジアの若
手電気通信技術者向け研修プログラムにス
〈主な活動内容〉
(1)電気通信を活用した人道支援
リランカの通信技術者を招請して実施
(2)2003年8月世界銀行、(財)アジア福祉教
最貧国または災害被災国の病院内の電話
育財団 難民事業本部の「スリランカの国
設備の更新、修理、僻地病院間を結ぶ通信
内避難民等の状況」についての現地調査に
網の設置、また、そうした病院と日本の病
通信技術者を派遣し、電気通信に係る支援
院、僻地病院と基幹病院との間のテレメデ
調査を行った。
ィシン・システムの構築等を行う。
(2)電気通信を活用した緊急人道支援
台風、地震被災国の救援用の通信設備の
(3)2004年1月国別NGO研究会(スリランカ)
による現地調査団に職員を派遣し、電気通
信に係る支援調査を行った。
供与、被災者への電話サービス、電気通信
設備の更新など行う。
(3)途上国の電気通信関係者の人材教育と国
際交流
アジア電気通信関係者の研修と国際交流
26
〈今後の活動〉
スリランカで活動する日本のNGOを支援
するため、無線による非常事態用通信システ
ム構築を実施したいと考えている。
反差別国際運動(IMADR)
スリランカにおけるIMADRの活動
スリランカでは、多数派のシンハラ人(シ
た集団を構成していてこの内戦に巻き込まれ
てきた。2002年2月、スリランカ政府とタミ
ル人組織LTTE との休戦協定が結ばれた後、
ンハラ語を話す、主に仏教徒)と少数派タミ
最終的な政治解決を目指す和平交渉が進めら
ル人(タミル語、主にヒンドゥー教徒)が激
れている。こうした状況も受け、IMADRで
しい内戦を繰り広げてきた。また宗教で言え
は以下のような活動を実施、また予定してい
ばムスリム(イスラム教徒)が1つのまとまっ
る。
◆平和構築に向けて
ジャフナ、マナーでのプログラム
人権に関する学習、栄養、食物
に関する指導。内戦で連れ合い
を亡くした女性への収入増加プ
ログラム。南部の女性、青年た
ちとの交流促進。
トリンコマレーでのプログラム
シンハラ、タミル、ムスリ
ムの再定住プログラムを実
施。
道路、井戸、ポンプの整備。
自営および収入増加のため
の資金運用制度の設立と住
民へのトレーニング。
平和教育・啓発のプログラム
女性グループ、行政、市
民団体などを含め、議論
する催しや、シンハラ社
会を啓発するための活動
を各地で開催。
◆内戦にともなう国内避難民女性への支援
にもとづく供
内戦の結果、何らの経済手段も持たないま
述書を作成し
ま家計支持者を失った女性たちの自立を助け
国際機関へ提
るために食糧保存に関するトレーニング、女
供する。
性対象の小規模な有機農場の設立、女性のた
移住労働者
めのジェンダーに関する啓発とリーダー養成
の投票権要求
トレーニング等を行う。
運動の推進と、コミュニティをベースにした
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移住希望者および帰国者への教育プログラム
◆スリランカからの移住労働者支援・人身売
の実施を行っている。
買問題プロジェクト
湾岸諸国などに移住し、家事労働者として
◆国際条約を使ったNGO 及び人道活動家向
働いている女性が、賃金の未払いや性的暴
けトレーニング
力・嫌がらせなどを受けている実態を受け、
NGOや活動家のためにIMADRが制作した
被害にあった移住労働者女性からの聞き取り
『国連活用実践マニュアル∼市民が使う人種
27
差別撤廃条約』のシンハラ語、タミル語訳版
ンチン)、ヨーロッパ委員会(フランス)、国
の作成や人種差別撤廃条約(CERD)を活用す
連事務所(スイス・ジュネーブ)。
るためのNGO 向けトレーニングを行う(ス
リランカ国内・南インド地域対象)。
◆スリランカにおける門地差別の調査と国際
的なアピール活動
スリランカにもあるといわれる出生・出自
スリランカ東部トリンコマレーにおけ
るIMADR予定事業
「自立した定住をめざすシンハラ・タミル・
ムスリム3民族のための多角的復興事業」
【事業の目的】
(門地・世系)に基く差別についてインドの
3民族からなる事業対象地域の住民が、自
被差別カースト(ダリット)、日本の部落の
立し定住した生活を営むための支援を行う。
人たちなどとともに国際的な提言活動を行っ
同時に共同作業、受益の平等配分、人権・平和
ている。北部・東部タミル人、中部プランテ
教育等を通じて、民族共生を促進する。
ーション地帯のタミル人や、シンハラ人の中
【事業の背景】
にもある門地差別被害者の実態調査、権利擁
スリランカ東部トリンコマレーは、シンハ
護運動を行っている。タミル人の無国籍問題
ラ、タミル、ムスリムの3民族が居住し、深
やプランテーション労働者の権利運動への取
刻な紛争の被害を同程度に被った地域であ
り組みも含まれる。
る。様々な社会的・経済的基盤が破壊される
とともに、住民たちは自立のための手段や精
【反差別国際運動(IMADR)について】
神的な自信も失っており、民族間の不信も深
IMADRは、被差別当事者同士の国際的な
い。政府やNGO による復興活動もいまだ進
連帯の促進や被差別当事者と国連との連携の
んでいないため、住民の自立を支援する必要
推進によって、全世界のあらゆる差別の撤廃
がある。
を目指している、国連経済社会理事会
【対象地域】
(E C O S O C )との協議資格をもつ国際人権
スリランカ東部トリンコマレー、ゴメラン
NGOである。本部(国際事務局):東京。地
カダウェラ地区のバックメーガマ、キヴレカ
域事務所:日本委員会(東京)、アジア委員
ダウェラ、およびタンパラカマム地区の、プ
会(スリランカ・コロンボ)、北米委員会(ア
スクディイルップ、コヴィラディー、ポトケ
メリカ)、ラテンアメリカ・ベース(アルゼ
ルニー、サダムナガール
【受益者】
紛争被害の直接性、物理的・経済的基盤の
脆弱性、遠隔の程度、政府による遠隔地活動
の程度、NGO による援助の程度、つれあい
を亡くした女性たちの数、といったいくつか
の調査指標において深刻な経済・社会状況が
示された村落住民。シンハラ、タミル、ムス
リム3民族を平等に含む、あわせて1,404世帯。
【活動及び期待される成果】
28
紛争中に攻撃を受けた建物
①住民たちが健全な日常・商業生活を享受で
村びとたちと
をサポートする。
きるように交通・運搬の便を図り、また水
④事業を行う村落における市民社会組織やそ
の基本的な需要を満たすため、事業を行う
の他の社会の自立支援を行い、この事業に
村落の基本的な物理的インフラを、住民と
おいて行われている活動を計画・履行・運
ともに改善する。
営・持続するために必要な技術を与えられ
②農業生産と収入の増加を目的とする、高地
作物栽培を再開するための農業用井戸を、
住民とともに建設する。
るようにする。
⑤多民族共生の促進のため、共同作業、受益
の平等配分、人権・平和教育等を行う。
③紛争によって直接の被害を被った女性たち
に特に焦点を当て、自立と小規模収入増加
特定非営利活動法人日本紛争予防センター(JCCP)
〈スリランカにおける活動〉
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将来社会のリーダーを目指す優秀な若年層
を教育し、民族共存と平和について考える機
2000年
会を与え、各人の自覚と責任を促すことを目
1.予防外交ワークショップ
的とし、計2回キャンプを行った。
(2000年12月∼2001年2月まで計5回)
スリランカ中央部キャンディ市の地域リー
2.民族融和事業
北部ワウニア市において、国内避難民を対
ダーたちの「紛争の本質」に関する理解増進
象とした「緊急栄養プロジェクト
(2月9日)」、
及び「対話スキル」養成を目的としたワーク
「緊急食料配布プロジェクト(3月23日)」「小
ショップを開催した。
学校緊急援助プロジェクト(3月28日)」とと
もに定住支援活動を通じた国内避難民と地域
2001年
住民との融和を図る活動(11 月∼)を実施し
1.ピース・キャンプ
た。
(2月23∼24日、6月1日∼3日)
3.仏教僧500人平和会議(7月13日)
29
仏教国スリランカにおいて社会的に大きな
期間を与えることにより、若年層の民族間の
影響力を有する仏僧たちの平和運動への積極
交流を促した。
的な参加を促し、全国的な和平機運を高める
4.「平和共存」ワークショップ
ことを目的として実施した。
(2月9日∼11日)
4.第1回宗教間平和会議(10月4日∼7日)
社会的影響力の強いスリランカの4大宗教
多宗教社会であるスリランカにおいては宗
の指導者層を対象に、宗教・民族の違いを超
教指導者たちの影響力が非常に大きいため、
えた平和共存について議論を交わし、平和活
彼らの間での対話を促すことがスリランカ和
動への積極的参加を促した。
平への近道であると考え開催した。
5.警察官に対する人権教育ワークショップ
5.平和構築ワークショップ
(2002年3月∼2003年1月まで計7回)
プッタラムおよびアヌラダプラ州におい
住民の安全保障を司る警察官の意識改革を
て、シンハラ、ムスリム、タミルの若者を対
することは和平合意後のスリランカ社会にお
象とし民族融和を目的としたワークショップ
ける平和構築において非常に重要であると考
(12月1日より計15回)を、また3つの民族お
え、人権教育を中心としたワークショップを
よび宗教の混在するアヌラダプラ市の地域ボ
行った。
ランティア団体を対象とした農村における指
導者理念の開発を目的としたワークショップ
(1月29日∼20日)も開催した。
2003年
1.第2回平和会議(3月7∼9日)
南北の市民団体指導者、政府関係者、反政
2002年
府組織(LTTE)関係者、有識者の間の意見交
1.避難民定住支援プロジェクト
換を通じて相互理解を促すことにより、平和
(2001年12月21日着手、2002年8月完成)
プロセスを市民レベルで支援する目的で開催
プッタラムおよびアヌラダプラ県のコミュ
した。
ニティ・センターを2箇所建設した。幼稚園、
30
2.地雷除去プロジェクト(7月∼現在)
職業訓練、図書館、医療サービス、ワークシ
スリランカ北部ワウニア地域近郊の地雷除
ョップを提供することにより、センターを通
去を行うべく、2003年7月より当センターの
じてコミュニティ全体の民族平和を促すこと
地雷除去スーパーバイザー育成訓練を開始し
ができると考えている。
ました。1 1 月からは現地事務所を開設し、
2.仏教僧平和教育プログラム
地雷除去チーム編成を経て2004年1月12日、
(2月∼3月に2回実施)
正式に日本NGO 支援無償資金協力の承認を
仏教の教えに基いた「平和」教育と農業技
得た。2 月中旬から訓練を開始し、3 月より
術やコミュニティ開発の指導方法の教育を通
実際の除去作業に入る予定である。
じ、仏教僧に平和支持を促すことを目的とし
3.戦争未亡人支援平和構築ワークショップ
て行った。
(9月∼12月)
3.ピース・キャンプ(2002年2月2∼4日)
各民族の戦争未亡人合計100名に対し、地
北中部の各州から 600 人(シンハラ 40 %、
域における対立、問題への対処方法、コミュ
ムスリム40%、タミル40%)
の青年が参加し、
ニティ内・外における紛争解決の手法につい
民族を混合した小グループで共同生活を送る
て講習を行った。
4.戦争未亡人家庭青少年への職業訓練
もに、家庭内の問題解決から民族融和までを
(9月∼2004年3月)
図ることを目的としたワークショップを行っ
ワウニア近郊にて、戦争未亡人家庭青少年
ている。
の家計補助と就業を目的として、自動車エン
ジン修理工の職業訓練を行っている。
今後の事業予定
5.プッタラム平和構築ワークショップ
1.3回平和会議(2004年3月予定)
(9月∼1月)
ムスリム系国内避難民が多数居住している
2.スリランカ総選挙監視事業(2004年3、4
月)
プッタラム地域にて、地域社会指導者層を対
象として、民族融和を目的としたワークショ
ップを開催した。
6.3 レベルにおける民族和解・信頼醸成育
【連絡先】在スリランカ代表事務所:
[住所] No. 12 Don Carolis Road, Off Jawatta
Road, Colombo 5, Sri Lanka
成を目的とした地域指導者層啓蒙ワークショ
[Tel] +94(01)2552381
ップ(2月∼3月)
[Fax] +94(01)2551176
バティカロア、ヌワラエリヤ、コロンボを
[e-mail] [email protected]
回りながら、各地特有の問題を把握するとと
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マリー・ストープス インターナショナル
【スリランカ事業概要】
■現地パートナーNGO 名:Population Services Lanka(PSL)
(Colombo)
■設立年:1973年
■代表者:Dr. Atula Nanayakkara
■活動地域(診療所を含む):18箇所
(プッタラム、ワウニア、ホロパタナ、マ
ナー、アンパラ、トリンコマレー)
■専従職員数:124名
31
特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター(PARC)
【スリランカ事業概要(予定)
】
■スリランカ北部地域における
生活全般の改善し、漁協の雇用を拡大するこ
とで、漁業共同組合を強化し、漁民が和平を
具体的に実感できるよう促すことである。
漁民支援事業《案》
[具体的な活動内容]
[事業実施の背景]
主な活動内容は以下の2点である。
北部地区における漁民は20 年にわたって
①戦禍のために移住を強いられた漁民の漁
度重なる移住を強いられ、漁具を失って生活
業協同組合に、簡易な漁船ならびに漁具
基盤が大きく損なわれている上に衛生などの
を提供し、煮沸・乾燥による技術協力を
生活環境も劣悪である。現在進行中の和平プ
行うことによって、漁獲物の安定的な販
ロセスが成果をもたらすためには、北部の農
売を可能にする。特に、加工には女性の
民・漁民が平和の成果を実感できることによ
参加が可能になるよう、女性への技術訓
って、平和への支持を強めることが重要であ
練を行う。
る。
②漁業共同組合が共同漁業、共同加工、共
水産資源が豊富な地域の中には、漁民が漁
同販売を行うことができるようにするこ
業共同組合によく組織されていて、潜在能力
とで、地域の生活改善や、復興の中心的
を持ったところもあり、支援が有効性を発す
存在となるよう促す。
ると考えられる。
以上の活動を通じて、平和への期待が具体
[事業の目的]
事業の目的は、漁民の再定住と漁業を含む
的な形をとることを住民が実感できるように
協力し、平和の構築に寄与する。
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン
ワールド・ビジョン・ジャパンの
スリランカに対する支援について
域開発では190 万人の子どもたちを支援し、
緊急復興援助等も行っている。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、1987
1.ワールド・ビジョン・ジャパンの沿革
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・
32
年に設立され、2 0 0 2 年度には、チャイル
ド・スポンサーシップによる地域開発事業、
ジャパンは、国連経済社会理事会に公認・登
アフガニスタンやザンビア、アンゴラなどで
録されたキリスト教精神に基く国際的な民間
の緊急・復興援助事業など、総額13億3,990
援助機関(NGO)、「ワールド・ビジョン」を
万円、2 5 ヶ国 6 2 事業を実施した。ワール
構成している日本の民間援助機関である。ワ
ド・ビジョン・ジャパンは、1999 年10 月に
ールド・ビジョンは、世界約100ヶ国で活動
特定非営利活動法人として法人格を取得した
し、チャイルド・スポンサーシップによる地
ほか、2002年5月には国税庁より認定NPO法
人の認可を受けている。
農地の復興整備などを実施する。
(2)生計自立支援:
2.ワールド・ビジョン・ジャパンのスリラ
帰還民の再定住を円滑に進めるため、経済
ンカに対する支援
的自立や栄養状態改善を目的とし、灌漑施設
ワールド・ビジョン・ジャパンでは、1991
維持管理・補修や家庭菜園・農業技術、畜産
年10 月よりスリランカの復興開発を一貫し
技術などの各種のトレーニングを実施すると
て支援してきた。従来は主として南部及び東
ともに、種子や苗木、農具等の支給、コミュ
部での活動が主であったが、今後もこうした
ニティにおける農産物の貯蔵施設建設などを
地域での支援を引き続き継続していくととも
実施する。
に、内戦による疲弊からの復興を支援するた
(3)雇用促進支援:
め、北東部地域での支援活動に本格的に取り
失業率の高い事業地域において、若者が職
組んでいく予定である。また、これまでも国
を得られ安定した収入を確保するための技術
内避難民を対象とした支援事業を数多く実施
を習得できるよう、職業訓練やそのための簡
しており、こうしたノウハウを活用し、今後
易施設の設置などを実施する。
北東部での難民・国内避難民再定住支援に取
り組んでいく予定である。
スリランカでこれまでに実施した、あるい
は実施中の主要な事業は、以下の通り。
●「国内避難民再定住事業」
(平成13年度)
東部州バティカロア県ベラヴェリ地区にお
いて、内戦から国内避難民となった100家族
の住居建設、コミュニティ施設の建設等の支
●「キリノッチ国内避難民再定住支援事業」
(2004年2月―2005年1月)
援を行ない、安定的な再定住に向け、各種生
活基盤を整えるもの。(受益者数:600人)
北部キリノッチにおいて、国内避難民の円
滑な帰還・再定住を支援することを目的とし
て、荒廃した農業基盤の復興・活性化、帰還
●「国内避難民飲料水供給事業」
(2002年11月-2004年4月)
民の生活状況の改善等を図るための各種事業
スリランカ東部州アンパラ県において、国
を実施するもの。本事業では、本邦国際協力
内避難民を対象とし、衛生的な飲料水を安定
団体として農業支援に豊富な実績を有する財
的に供給するため、井戸及び給水関連設備等
団法人オイスカとの連携により事業を実施す
を整備するもの。(受益者数:1,238人)
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る予定である。オイスカからは農業専門家の
派遣を得て、各種農業関連のトレーニングを
●「ガレンビンドゥンヌンエワ地域開発プロ
実施する予定。なお、事業の具体的な事業概
ジェクト」
(1996年10月―2011年9月)
要・活動内容は以下の通りとなっている。
アヌラダプラ県ガレンビンドゥンヌンエワ
(受益者数:約2万2,800人)
郡において、保健衛生(トイレ設置、井戸建
(1)農業基盤整備:
設、健康教育、知的障害児センター等)、教
灌漑施設等の修復・整備を行うため、日本
育(幼稚園運営、保母研修、奨学金支給、学
政府からWFP を通じて提供される食糧を用
用品支給)、経済(農業用貯水池・灌漑用水
いたフード・フォー・ワーク事業と組み合わ
路造成、農業用井戸建設、畜産、低金利ロー
せ、貯水池の修復、排水溝付き道路の整備、
ン貸付、小規模ビジネス支援)、環境保全、
33
女性の地位向上、指導者育成等を通して、地
建設、栄養改善、マラリア対策等)、教育
域経済の活性化と生活環境の改善を図り、持
(学用品支援、学校施設整備、学費支援、識
続的な発展に寄与するもの。(受益者数: 5
字教育、職業訓練等)、経済(農業開発、灌
万6,750人)
漑施設の整備、低金利ローン等)、指導者育
成、災害対策、社会基盤整備(道路、公共施
●「カビティゴッラワ地域開発プロジェクト」
設等)、環境保全(環境教育、植林)等を通し
て、地域住民による持続した地域開発と平和
(1999年10月―2015年9月)
アヌラダプラ県カビティゴッラワ郡におい
て、保健衛生(保健教育、トイレ建設、井戸
の構築を目指すもの。(受益者数:1万8,595
人)
財団法人オイスカ
スリランカでの事業概要
でいっぱいにしたい、そんな思いが「子供の
森」計画に込められている。2001 年からは
《「子供の森」計画》
赤井英和さんに「子供の森」計画親善大使を
お願いしており、各地での植林活動に参加し
この 100 年間で人類は大きな発展を遂げ
た。私たちが築いてきた大量生産・大量消
ていただいている。
スリランカにおいては1980 年から植林プ
費・大量廃棄の経済システムは、地球温暖化、
ロジェクトを続けてきたが、1991 年の本プ
異常気象、オゾン層破壊、森林破壊、砂漠化
ログラムの開始から中南部のクルネーガラ
等深刻な地球環境問題も作り出し、今その解
県、アンパラ県、バドゥッラ県、ラトナプラ
決に向けての早急な対応を迫られている。母
県、キャンディー県、アヌラダプラ県などの
なる地球にも限界がある。
学校を中心に187の学校で計画を推進してい
私たちはこの20 年間、地球規模で進む森
る。日本での1年間の農林業を中心とした技
林破壊を人類共通の重要な課題、また一人一
術研修を終えた研修生のOBたちがコーディ
人の身近な課題としてとらえ、さまざまな活
ネーターとなり、各地の学校に足しげく通い、
動を展開してきた。「子供の森」計画はその
指導、助言を行っている。また、各学校への
プログラムのひとつで、現地の子どもたちを
苗木の提供のため、各地に育苗場を設置し
主役に学校単位で実施されるユニークな森作
「子供の森」計画の推進を安定したものにす
り運動である。子どもたち自身が、学校の敷
るべく努めている。これら育苗場も上記の研
地や隣接地で苗木を植え育てていく実践活動
修生OBたちが運営している。
を通じて「自然を愛する心」「緑を大切にす
これまでにスリランカ国内で336ha、40万
る気持ち」を養いながら、地球の緑化を進め
本近くを植林し、その後の適切な管理もあり、
ていこうというプログラムである。1991 年
成功を収めている。
にスタートし 2003 年 3 月末現在、24 カ国
2,757校で実施されている。さらにその活動
の輪を学校から地域社会全体に広げ地球を緑
34
《クリーン&グリーンプロジェクト》
オイスカでは1980 年からスリランカにお
ける緑化プロジェクトを実施してきた。
環境セミナーや植林など住民参加型の活動
をくり返し行うことで、20 年以上が経った
現在では森作りに対する住民の意識の高揚と
その成果である森が各地で見られるようにな
っている。そのような中、地域社会からさら
に積極的な環境保護活動への協力要請があ
り、新たな活動『クリーン&グリーンプロジ
ェクト』が、その名前の示す通りクリーンで
グリーン(緑)あふれる地域づくりを目指し
て行われている。
スリランカでは、路上や空き地へのごみの
投棄が当たり前になっており、ビンや缶など
ただき、実施した。現在はスリランカ政府環
の資源も生ごみや紙ごみと共に捨てられてい
境省、教育省などの協力の下、ゴミの分別回
るのが現状である。このような中、子どもた
収、リサイクルなどの事業を継続して実施し
ちを含む広く一般を対象として環境セミナー
ている。
を行い、リサイクル、ごみ分別の指導をして
いる。また参加者らがそれを生活の中で実践
《研修センター建設》
できるよう学校やお寺、公園などの公共の場
に分別用バケツを設置している。これは、色
オイスカではアジア太平洋の各地に研修セ
をつけたバケツで、色ごとに燃えるごみ、生
ンターを設け、各国の農業を中心とした人造
ごみ、燃えないごみなどに分けて入れられる
りに協力してきたが、研修生OBたちからの
ようになっている。時間がかかるとは思われ
強い希望で、現地に研修センターのないスリ
るが、くり返しセミナーで指導を行い、徹底
ランカで新たにセンターを建設しようという
していくことでごみの路上投棄を減らすこと
動きが始まっている。クルネーガラ県ワリヤ
を目指している。
ポラ郊外に土地を取得し、現地のオイスカ会
最近ではセミナー参加者らによる発展的な
■
員、研修生 OB が中心となって計画を立て、
活動が出てきた。主に中学・高校生らが、祭
日本国内からの募金も集まり始めて具体化に
りの会場や観光地などでごみの投げ捨てをし
向けて動いている。まずは小規模なもので農
ないよう呼びかけを行ってくれている。私た
場からの生産物の収入など、自助努力で運営
ちはこれまでの 20 年以上の活動を通して
可能なものとし、スリランカ各地からの研修
「子どもたちこそが大人たちの心を動かす」
生を受け入れ、農業の技術指導を行う予定で
ことを確信している。子どもたちによるこの
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ある。
ような働きかけが広がることで、大人たちの
意識も変わっていくことを期待している。
《キリノッチ国内避難民再定住支援事業》
なお、このプロジェクトには環境事業団・
地球環境基金からの助成を2002 年度までい
平成15 年度から16 年度にかけて、ワール
35
ド・ビジョン・ジャパンとの事業委託契約に
多大な協力をいただいている。また、労組関
基き、ワールド・ビジョンが主契約者となっ
係ではUIゼンセン同盟から、企業では荏原
て実施する北部キリノッチの国内避難民の再
製作所などからのご支援もいただきながら
定住事業のうち、避難民に対する家庭菜園・
「子供の森」計画を推進している。
畜産・農業技術・マーケティングの研修を受
託して行う。この指導にも研修生のOBが主
《オイスカ・スリランカ総局、各地方支局の
体的に取り組む。この事業には日本政府の
活動》
「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を
活用する。
コロンボの事務所が主体となって行う上記
活動の他にも、アヌラダプラやキャンディー、
《電機連合支援植林事業》
クルネーガラなどの地方にある総局がそれぞ
れ独自の活動を行っている。定例の会議で事
主に上記の「子供の森」計画への支援で、
36
業計画などを策定し、ごみの分別回収、育苗
来年度より5 年間、毎年100 人規模の日本か
活動、小規模な農業プロジェクトなどを推進
らの植林団を結成して現地で協力していただ
している。上記の研修センター建設もクルネ
く。植林だけではなく、支援校への植林管理
ーガラ支局が中心的な役割を果たして推進さ
費や学用品の提供なども、同計画を通じて支
れている。また、スリランカ総局としては、
援していただく。中心となる植林地は環境省
毎年7 月のオイスカ・デー・イベント(植林
から紹介を受けたコロンボ・キャンディー間
やセミナーを絡め、中央省庁より来賓を招い
を結ぶ鉄道沿線のアラガッラ山やコロンボ市
てのイベント)の開催や各種環境フォーラム
内のレイヤンゴダ学校などを予定している。
の主催、また資金面での支援取り付けなどに
電機連合にはこれまでマレーシアやタイでも
努めている。
国際開発協力組織 財団法人ケア・ジャパン
(CARE Japan)
団体の概要
ケア・ジャパンは他国のケア・メンバー、現
地事業対象者や参加者、ドナー、及び支援・
協力者との協力・連携を通し、「誰もが人間ら
しく共に生きることのできる平和な世界」の
ヴィジョンの下に、「開発途上国で貧困や災
害に苦しむ人々の自助努力の支援と持続的発
展」をミッションとして活動を展開している。
主にアジア地域において、教育を中心とする
調査、事業の計画・実施・評価を行っている。
■
居住者が生活する長屋
ケアのスリランカでの活動
事業名:
プランテーション居住者の生活改善事業
(TEA Project)[JICA 開発パートナー事業]
背景:
スリランカにおけるプランテーション産業
は永年にわたり同国の主要産業の1つであっ
は低下しているが、これはエステート(農園)
内居住者の劣悪な住環境が遠因の1つと考え
られている。
目的:
対象地域の紅茶エステート(茶園)居住者
の社会生活を平成18年4月までに改善する。
たが、プランテーションのエステート(農園)
内に居住する労働者及びその家族の生活環境
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■
対象地域:
の悪化が指摘されている。また近年になり、
スリランカ国中部山岳地帯の中央州及びウ
スリランカのプランテーション産業の生産性
バ州の2州にある15の紅茶エステート(茶園)
―主にヌワラエリヤ県
実施期間:
平成15年5月∼平成18年4月(3年間)
ターゲット・グループ:
同国中部山岳地帯の中央州及びウバ州の2
州にある15の紅茶エステート(茶園)に居住
する労働者およびその家族(そのほとんどが
意識向上活動に参加する居住者
インド系タミル人)
37
主要活動:
各紅茶エステート(茶園)における参加型
チーム(PT)の編成及びPTによる住民に対す
ったが、結果的にはエステート(農園)内に
居住する労働者の生活環境改善に対しても注
目が寄せられることになった。
る住民向け情報・啓発活動。各紅茶エステー
現在スリランカでは、80 万人が紅茶やゴ
ト(茶園)におけるコミュニティ・サービス
ムのエステート(農園)に居住しており、そ
改善および促進活動、及びサービス提供者
のうち約31 万人が民営または公営のプラン
(銀行、教育、政府機関等)に対する紅茶エ
テーション会社に直接雇われている。農園居
ステート(茶園)内居住環境改善の必要性の
住者はスリランカの総人口の5パーセントを
啓発等
占めており、そのほとんどの住人が農園内で
生まれ育ち、人生の大半を農園内で過ごす。
期待される効果:
この農園居住者は、19 世紀のイギリス植民
1)50%以上の紅茶エステート(茶園)居住
地時代に労働力としてイギリスによりインド
者の、情報や様々なサービスへのアクセ
から連れてこられたタミル系の住民である。
スとその活用が増加する。
このような歴史的背景と地理的に隔離され
2)紅茶エステート(茶園)居住者同士及
た状況により、農園に居住するタミル人は社
び居住者と経営者側との間、また茶園居
会的、経済的また文化的にもスリランカのそ
住者と茶園外部の住民とのコミュニケー
の他の地域社会から隔絶されており、実際ほ
ション体制が築かれ、コミュニケーショ
とんどのエステート(農園)が街の中心地か
ンが円滑にまた密に行われる。
ら離れた地域にある。中央高地に位置する紅
茶エステート(茶園)は特にその傾向が強い。
スリランカのプランテーション概要:
スリランカ国内には約460の紅茶とゴムの
エステート(農園)があり、それらは同国中
対象地域のニーズ:
エステート(農園)での貧困を考える場合、
央部から南部にかけて位置している。1992
決して収入面からのみ推し量ることはできな
年までは公営であったが、構造改革を経て、
い。スリランカの地方住民の平均収入と比べ
現在ではそのほとんどが民営となっている。
ると高いという調査結果も出ている。
この構造改革では生産性の向上が主目的であ
エステート(農園)居住者が現実に直面し
ている問題は社会的な隔離によるところが大
きいと言える。
ケアは1999 年に関連政府機関、プランテ
ーション住居福祉組合(PHSWT)、プランテ
ーション企業、現地NGO 及び国際機関との
連携で「世帯における生計安全状況の調査
(Household Livelihood Security Assessment」を
実施し、また2000 年から開始された「プラ
ンテーションにおける労働者教育及びトレー
ニング事業(Worker Education and Training)」
茶園で茶摘をする女性
38
では100 以上の農園を対象に調査を行った。
その結果、エステート(農園)に共通した社
する依存心などであった。これらの問題は、
会問題として挙げられたのは、家計の管理能
限られた公共サービスへのアクセス、経営者
力の欠如、アルコール依存、不衛生な住環境、
側と労働者側との間のコミュニケーション不
女性や子どもの栄養不足、若者の間の非労働
足、及び住民の組織能力や結成意識の欠如な
割合や低い労働意欲、農園経営者や外部に対
どによると言える。
TEA Project の流れ
成果1
プロジェクト・スタッフのキャパシティ向上を通
して事業実施上必要な組織力強化を図る(プロジ
ェクト・スタッフ、紅茶エステート(茶園)スタッ
フ、マネージャーのキャパシティ・ビルディング)
成果 1 でスタッフ(ケアと紅茶エステー
ト(茶園))のキャパシティ向上活動を行
った上で、成果 2 の参加型運営チーム
(PT)の結成を行う。PTが結成された時
点で3と4を具体的に実施開始。
■
成果3は4つのキー・テーマに絞り、そ
れをメインにする(アルコール問題、家
計の適正管理、栄養、ベーシック・ド
キュメント)。これらの情報を紅茶エス
テート(茶園)に広め、4につなげる。
成果3
居住者において、情報や様々なサービスへのアク
セス及び活用を増加する。
*ここで PT 以外の紅茶エステート(茶園)住民に
TEA project のことを広める。
成果2
居住者同士及び居住者と経営者、
そして居住者と紅茶エステート
(茶園)外の住民とのコミュニケー
ション体制が構築され、コミュニ
ケーションが効果的に行われる。
(PTの編成と組織化)
成果4
居住者において、サービス・施設
へのアクセス、活用及びコミュニ
ティーの結団力が改善される。
成果 4 では、キー・テーマを
供給できる団体等との連携を
図り、PTを通して供給を行う。
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プロジェクト目標
プロジェクト対象プランテーションに住む紅茶エステート
(茶園)居住者の社会生活が改善される。
上位目標
自国の発展プロセスから社会的、政治的、構造的に取り残されている15紅茶
エステート(茶園)の居住者が発展のプロセスに参画し、生活水準を改善する。
39
スリランカのプランテーション―概要―
国内に約460のエステート(農園)
場スタッフ、社会福祉オフィサー、託児所ス
紅茶、ゴム、ココナツ、香辛料
タッフ等)の宿舎・住居もある。マネージャ
ーにはバンガローと呼ばれる、専用の住居が
・エステートの分布
エステートの中心にある。
南西部:ゴム、ココナツ、香辛料、一部は
紅茶も栽培
・運営体制
24 のプランテーション・カンパニーがこ
中 部:ゴム、紅茶、香辛料
れらのエステートを運営(採算性・品質の問
山岳部:紅茶
題で民営化が難しい一部のエステートはいま
・エステート
も公社)
。
1つのエステートに約500世帯の労働者家
土地は現在も国有地であるが、そこに上記
族(中規模のエステート)がラインと呼ばれ
プランテーション経営会社が入り、経営して
る長屋に住み、託児所、学校、診療所等もあ
いるスタイル。
る。スタッフ(フィールド・オフィサー、工
■プランテーションの構造
お
も
に
シ
ン
ハ
ラ
人
タ
お
ミ
も
ル
に
人
社 員
{
各種福利厚生
はあるが社員
ではない
マネージャー: エステートの最高責任者
アシスタント・マネージャー:エステートの規模によって1∼4人
フィールド・オフィサー: 4∼5人。現場監督のような仕事
工場スタッフ: 加工工場での現場スタッフ
社会福祉オフィサー: 各エステートに1人。住民の社会福
祉担当
← ワーカー:
茶摘み(女性)、工場労働やエステー
ト内での各種肉体労働等(男性)
}
}
}
・エステート・マネージャーはプランテーション経営学校を卒業した後にプランテー
ション会社に就職、まずはアシスタント・マネージャーとしてエステート(農園)に
派遣される。
・各種スタッフは主に近隣の村などで採用された人々が多い。
・エステート(農園)労働者は19世紀のイギリス植民地時代に労働力としてイギリスに
よりインドから連れてこられたタミル系の住民。
40
こ
れ
異ら
動の
・職
昇種
進枠
はを
な超
いえ
て
の
TFSR Japan(Tools For Self-Reliance Japan)
・
自立のための道具の会
スリランカにおける活動の概要
合った道具を必要に応じて送り、ワークショ
ップを開催して手渡す、という様なやり方で
〈今年で発足10周年〉
活動してきた。勿論カウンターパート選定に
当たっては、現地を訪れ、自分たちの目で確
1993年9月に英国の「TFSR U.K.」の創始
者グリン・ロバーツ氏の講演会を機に有志が
集まり、会が発足してから今年で10 周年を
かめ、当会の理念に合ったカウンターパート
を慎重に決定したことは言うまでもない。
回を重ね、メンバーがスリランカを訪れ、
迎えることができた。その間、色々な方々か
現場を調査するにつけ、中村会長の言葉をお
らの支援や励ましの言葉をいただき、メンバ
借りすれば「発見の旅」と「共働の現場」の
ーの入れ替わりもあったが、何とかここまで
大切さが感じられ、道具の専門家である職人
やってこられ感謝している。
さん達と接触し、国内のワークショップにも
当会では、本年度から体制も一新し、次の
参加して、道具の仕立てをしていただいたり、
ステップに向けて踏み出したばかりである。
整備の仕方を教えていただいたりするように
スリランカ復興開発NGO ネットワークの一
なった。また海外へも助成金を活用して日本
員として、スリランカと日本をつなぐ架け橋
の職人さんが出向き、現地でワークショップ
となれる様、ゆっくりと確実に一歩ずつ、相
が開催できるようになってきた。当初はカウ
手の顔の見える活動を続けていきたいと考え
ンターパートの事業に対して道具を通してフ
ている。
ォローし、必要に応じて金銭的な支援もして
きた。それらを通して、現地の人々の生活が
〈会の活動内容〉
見え、新たな発見があり、独自な事業へと展
開してきた。今では、カウンターパートの事
キャッチコピーは、「地球サイズのリサイ
業サイトでスタッフのフォローを受け、会独
クル。使われなくなって、眠っているあなた
自の開発事業を実施している。内容も道具の
の道具を生き返らせ、アジアの国々で生活の
提供だけに止まらず、エネルギー・食料保
ために道具を必要としている人々に送る、リ
存・水質浄化・雨水タンク改善・レンガの品
サイクルと海外協力を兼ねた運動です。」と
質向上など、多岐に渡るようになってきた。
なっている。もともと発足当初は、日本国内
以下、現在当会がスリランカで行っている事
の家庭や事業所や販売店から道具を提供して
業の概要を紹介したい。
■
第
3
章
参
加
団
体
の
ス
リ
ラ
ン
カ
に
お
け
る
活
動
状
況
■
いただき、会のワークショップで修理や整備
のメンテナンスを行い、現地のカウンターパ
ートを通して道具を必要としている人々へ送
【道具の普及】
道具そのものの普及については、日本の国
り、生活の自立のために役立ててもらおう、
内の事情も反映して、現地に送られる物の中
というのが会の理念(ミッション)であった。
では、大工道具のシェアが圧倒的に多くなっ
それぞれの現地カウンターパートのニーズに
ている。こうした道具が現地でストックされ
41
ているので、手動の鋸の目立てや鉋の砥ぎの
ロ水力発電所の建設と灌漑用溜池を活用し
ワークショップをメンバーの木工や製材の専
た、サイフォン式発電所の提案を行っている。
門家が現地で行い、木工所や大工さんに直接
石田式マイクロ水力発電所は、自然エネルギ
手渡しして活用してもらい、モニタリングを
ーのかんがい用水路の水力を活用した落差
重ね、普及するようにしている。コロンボ等
5m位の小規模な発電所で、60Wの発電能力
の都市部では、押して使う西洋型の道具が普
を持っており、無電化地域の集落内に数ヶ所
及しているので、それ以外の地域の職人さん
設置して、バッテリー・ステーションとして
を中心に実施している。また、2000年より、
運用する。地域分散型エネルギー供給システ
カウンターパートの中間技術開発グループ
ムとして、風力やバイオガスによるエネルギ
( I n ter m ed iate T echnol ogy Devel opment
ーとも組み合わせ、集落単位でカバーしよう
Group/South Asia=ITDG/SA)を通して、教育
というものである。この発電装置は、メンバ
者 の 依 頼 で ス リ ラ ン カ 適 正 技 術 教 育( S r i
ーの石田さんが独自に開発・製作するもので
Lanka Appropriate Technology Education=
クロスフロー型の水車を落差5m位の灌漑用
SLATE)を実施している。
水路を活用して発電するもので、スリランカ
これは、公立の小・中学校のカリキュラム
の無電化地域ならどこにでも設置可能なもの
に沿いつつ、日本の道具(ミニ大工道具箱に
で、装置もスリランカ国内の技術で十分生産
標準的な20 アイテム位の道具をセットした
可能なものである。ダイナモは乗用車に掲載
もの)で物造りの技術を教えるもので、メン
されている直流にVのものを、リコースして
バーの家具職人や製材所の職員が現地で先生
使用している。既にカンデガマ村の寺院に敷
を集めて使い方やメンテナンスについて、実
設して3年以上が経過しているが、メンテナ
際の物造りを通して教示している。また、道
ンスは日常的に和尚さんが行い、メンバーが
具箱が配布された学校へ直接行って、子供た
定期的に消耗品の交換をする程度で今も稼働
ちにも実際に物造りを通して道具の使い方を
しており、電燈やテレビ・ラジオに利用され
学んでもらうワークショップも各地で実施し
大変好評である。今後は村内数ヶ所に建設し
ている。当会のメンバーはほとんど全てがボ
て、各家庭のバッテリー充電用のバッテリ
ランティアとして参加しているので、多くの
ー・ステーションとして、村内をカバーしよ
日数を割いてスリランカに滞在することがで
うと考えている。
きず、費用の問題もあり、年2回のワークシ
ョップではなかなか思うように事が進まな
【雨水利用プロジェクト】
い。それでも、腰を落ち着けてじっくりと取
雨水利用プロジェクトは、ランカ雨水収集
り組んでいる。ただ物を造るだけでなく、ス
フォーラム(Lanka Rain Water Harvesting
リランカと日本の道具の違いなどを通して、
Forum=LRWHF)と水委員会(Water Board)
幅広くデザインや技術を学ぶもので、日本の
とのジョイントで実施しているもので、雨水
道具に関する質問など熱心で、先生方にも子
貯水タンクの改良と飲料水の浄化に取り組ん
供達にもとても好評なプロジェクトである。
でいる。雨水貯水タンクの改良は、材料であ
るレンガの品質向上のために、日本の真空土
【エネルギー事業】
エネルギー事業については、石田式マイク
42
練機をリサイクルして工場に設置し、窯には
温度計などをセッティングして、安定的に省
エネルギーで高品質の煉瓦が焼成できるよう
る。炭焼き窯の築造から焼成行程と浄水器の
に、メンバーの築窯屋さんとレンガ工場の技
作成まで全て、現地で手に入れ易い物と誰で
術者が取り組んでいる。現在スリランカで広
もできるように物造りのワークショップを行
く普及しているレンガよりかなり高品質のレ
うことを通して、技術が地域に根付くことを
ンガの生産の目途が立ったので、これからは
ねらっている。滅菌は太陽光でできるように
現地のレンガ工場の生産性の向上とロー・コ
開発中である。
スト化のためのプログラム作成の実態調査や
マーケティング調査などを立命館大学生のメ
【炭の利用】
ンバーを中心に進めていく。これは、北東部
最後に、炭の利用を促すために、女性向け
の住宅建設の促進のための生産体制作りに繋
の食料保存プロジェクトとして、魚とチキン
がるものと考えている。また、雨水タンクの
の燻製に畜産家とおばあちゃんの知恵で取り
漏水や植物の根による崩壊から守るために、
組んでいる。これは、無電化地域の女性向け
日本の左官技術の普及を実施している。日本
に食料の保存方法を教え、商品化して収入に
とスリランカの左官職人同士が直接日本の道
つなげようとするプロジェクトである。モニ
具を使って、タンクを築造しながらワークシ
タリングを通してスリランカ向けにアレンジ
ョップをするものである。こてや、こて板は
し、装置もドラム缶を利用して誰でも製作で
日本独特のものだが、理にかなっており、タ
きるようにマニュアル化して進めている。こ
ンク表面を密に仕上げることができ、版築も
れはねらい通り、とても好評である。
スリランカでどこでも手に入り安価な土と石
少ない資金と小さな組織でなかなか思うよ
灰とにがりでコンクリートのように硬く固ま
うに進まないが、あせらず地道に一歩ずつ、
るので、試験的に実施してコスト・パフォー
技術が現地に根付くように、メンバーひとり
マンスも考慮してスタンダード化を目指して
ひとりが直接相手の顔が見える支援ができる
いる。
ように、今後もゆっくりと確実に継続できる
飲料水の浄化は、スリランカではどこの家
庭でも手に入る、ヤシ殻をドラム缶を活用し
ようにネットワークの一員として協力してい
きたいと考えている。
■
第
3
章
参
加
団
体
の
ス
リ
ラ
ン
カ
に
お
け
る
活
動
状
況
■
た炭焼き窯で焼成し、浄水器を普及させてい
43
44
第 4 章 合同現地調査 聞き取り調査記録
45
平成15年度「国別NGO研究会(スリランカ)」合同現地調査実施日程
日 付
曜
1月18日
日
19日
月
20日
プログラム
成田空港出発(11:30)→シンガポール着(18:05)
シンガポール発(22:40)→コロンボ着(19日未明00:20)
コロンボ
日本大使館訪問、国際協力機構(JICA)スリランカ事務所訪問、国際協力銀行(JBIC)コロンボ事務
所訪問、政策立案実施省(Ministry of Policy Development and Implementation)訪問
コロンボ
コロンボ→クルネーガラ
ワリヤポラのオイスカ「子供の森」計画実施地(ニカ・ワリ・カラガスウェワ小学校)訪問
クルネーガラ→ワウニア
ワウニア
火
水
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)ワウニア・フィールド・オフィス訪問、JICA連絡所訪問、 日 ワウニア
本紛争予防センター出張所訪問、ワウニア県次官事務所訪問、ブリッジ エーシア ジャパン
(BAJ)
ワウニア事務所訪問、JBIC溜め池修復事業予定地訪問、ワウニアに駐在するNGO・JICAスタッフ
と夕食を交えて懇談
移動
移動
21日
移動
22日
宿泊場所
木
ワウニア→キリノッチ
タミル・リハビリテーション組織(TRO)訪問、JICA事業実施地(キリノッチ県立病院)視察、BAJ
キリノッチ職業訓練センター訪問、タミル・イーラム解放の虎(LTTE)政治部(Political Wing)訪
問、BAJ学校建設事業実施地訪問、キリノッチに滞在する国連機関・NGOスタッフ等と夕食を交
えて懇談
Bチーム BAJ、BHN、OISCA、WVJ
Aチーム IMADR、JCCP、PARC
日 付
曜
プログラム
移動
23日
金
24日
土
25日
日
移動
日 付
曜
26日
月
27日
火
28日
水
宿泊場所
ジャフナへ向けてキリノッチを出発
ジャフナ
アムダ
(AMDA)
事業実施地
(漁村)
訪問、
ジャフナ着、ジャフナ人権団体訪問、
UNHCR ジャフナ事務所訪問、国連開
発計画(UNDP)ジャフナ事務所訪問、
ジャフナ県 NGO コンソーシアム訪問、
ジャフナ県次官事務所訪問、GTZ訪問、
北部漁業協同組合連合訪問、女性開発 ジャフナ
センター(Centre for Women and
Development)訪問
ジャフナ→ワウニア
Bチームと合流しワウニア発
トリンコマリー着
プログラム
移動
トリンコ
マレー
宿泊場所
キリノッチ→マナー
マナー
BAJマンナール職業訓練センター訪問、マナ
ー県次官事務所訪問・他の政府機関・NGO 等
の職員も交えて懇談、UNHCRマナー事務所
訪問、マナー県 NGO コンソーシアム訪問、
夕食を交えて UNHCR・スリランカ停戦監視
ミッション(SLMM)職員と懇談
ZOA 事業実施地訪問、漁業水産資源局訪問、 マナー
漁業水産資源局の職員と共に漁村視察、BAJ
職業訓練センターで現地 NGO スタッフ等と
懇談
マナー→ワウニア
Aチームと合流しワウニア発
トリンコマレー着
プログラム
(2グループに分かれて訪問)トリンコマレー県次官事務所訪問、SLMM訪問、北東部州政府知事
訪問、反差別国際運動(IMADR)事業計画地訪問、東部団結女性団体(Eastern United Women's
Organization)訪問、トリンコマレー県NGOコンソーシアムが主催し現地NGO、国際NGO、国
連機関等の職員が出席する会合に出席、漁村訪問
トリンコ
マレー
宿泊場所
トリンコマレー
移動
トリンコマレー→ヌワラエリヤ(午前中IMADRスタッフのみUNHCRトリンコマレー事務所訪問)
ケアが事業を実施している紅茶農園(エステート)へ向けてヌワラエリヤを出発、エステートでの意
識向上キャンペーン見学、紅茶工場視察、エステートからヌワラエリヤに帰着
移動
ケア・ヌワラエリヤ事務所訪問、エステート訪問 コロンボ
ヌワラエリヤ→コロンボ
アジア開発銀行(ADB)コロンボ事務所訪問、IMADRアジア委員会(Asia Committee)事務所訪
問
29日
キノリッチ
ヌワラエリヤ
コロンボ
(グループに分かれて訪問)サルボダヤ訪問、セワランカ訪問、全国反戦戦線(National Anti-War
Front)訪問、UNDPコロンボ事務所訪問
木
復興・再定住・難民問題大臣訪問、日本大使館での報告、全国平和評議会(National Peace
Council)訪問、資料作成・調査記録作成など
30日
金
31日
土
2月1日
46
日
移動
復興開発に関わる在スリランカ日本人関係者の会に参加
報告書作成検討会、SLMM訪問
コロンボ
報告書作成検討会
コロンボ
コロンボ出発(01:35)→シンガポール着(07:20)
シンガポール発(09:45)→成田空港着(17:05)
機中泊
コロンボ Colombo
■国際協力機構(JICA)スリランカ事務所
日 時:2004年1月19日 11:15 am
場 所:JICAスリランカ事務所
面談者:所長、プログラム・コーディネ
ーター
〈面談内容〉
(1)支援における留意点:北部、南部へバラ
ンスの良い支援を行う
(2)具体的案件
1)草の根技術協力事業(パートナー型)
2003年9月15日から3ヶ月間)
6)その他
①JICAワウニア連絡所の設置
②援助調整専門家の派遣
③円借款事業調整専門家の派遣
(3)JICAの東部、南部支援の取り組み
1)東部支援:民族融和状態を確認しつつ
行う。
2)南部支援:南部は相当大きなプロジェ
クトを考えているので、東京で慎重に
実施を検討するということになると思
「北東部保健システム復興支援」2004年
■
2月・3月∼2年間を予定(AMDA、ワウ
ニア県、母子保健向上)
2)提案型技術協力プロジェクト(PROTE
CO)(一部は仮採択)
①「農業農村開発」
(日本工営、マナ
ー・ワウニア県、農業によって自立の
ための基盤整備)
②「国内避難民再定住コミュニティ支
援」2004年3月から3年間を予定(M&
Yコンサルタント、マナー県)
③「スリランカ南部地域の村落の生活
向上」
(日本工営、南部地域)
3)緊急開発調査
「キリノッチ県立病院の改修(病棟、ス
タッフ住居)」
4)国別特設研修
「北東部州地方自治行政研修」
(年間5∼
10名の受け入れを想定)
5)NGO技術者派遣
う。
(4)JICAのリエゾン活動
コロンボで日本人の援助関係者が集まって
第
4
章
合
同
現
地
調
査
聞
き
取
り
調
査
記
録
■
意見交換会が開かれているが、最近は不活発
になっている。JICA としてはセクターごと
に支援を考えるのが現実的であると考えてお
り、そのための現地タスクフォースの会合を
持っている。しかし、本格的セクター別調査
はスリランカ政府とLTTEとの和平プロセス
が進んでいないので実施が難しくて行われて
いないのが現状である。
JICAはスリランカにおけるNGOのアンブ
①「人道的地雷除去センター設立計画
レラ機関であるCHA(Consortium of Humani-
策定」
(日本紛争予防センター、2003年
tarian Agencies)と契約を結んで、現地NGO
3月17日から3ヶ月間)
の情報を集約する作業を委託しており、これ
②「コミュニティ開発プロジェクト基
が完成したら日本のNGO にも是非活用して
礎調査」
(ブリッジ エーシア ジャパン、
もらいたい。
47
(5)国別NGO研究会とJICAの連携
スリランカ復興開発NGO ネットワークよ
3.支援重点分野
JBICは様々なセクターを支援しているが、
り:「国別NGO研究会(スリランカ)」では、
主な重点分野は、道路と電力セクターである。
参加NGOと外務省、JICA、JBICの実務者レ
道路セクターでは、道路網の未整備や地方道
ベルによる研究会を行っている。ODA の機
路の整備が重要課題となっている。電力セク
関でNGOに近いJICAには企画の段階から提
ターでは、構造改革が遅延している上、水力
案をして事業実現の道を開いてほしい。今後
発電に頼っている結果、安定的な電力の供給
は、現地タスクフォースへのNGO の参加も
が実現しておらず、乾季の水不足時には停電
考えてほしい。
が起きる恐れもある。地域的には、南部や北
■国際協力銀行(JBIC)コロンボ事務所
日 時:2004年1月19日 14:00
場 所:JBICコロンボ事務所
面談者:コロンボ事務所員
〈面談内容〉
1.日本の NGOとの連携
欧米NGO は情報網が広く、経験も豊富で
東部に限らず、島全体にバランスのとれた北
東部の復興開発支援と中長期的な経済開発へ
の支援をするべきであろう。
4.北東部での協力関係
JBIC の北東部向け支援は「貧困緩和マイ
クロファイナンス」、「農村経済開発復興事
業」、「小規模インフラ整備事業」などがある
が、調査などの分野で、日本 N G O や現地
ある。また、世界銀行やアジア開発銀行との
NGOと協力できる可能性はある。
つながりも強い。一方、日本NGO は情報網
5.北東部のデータベース
が狭いように見える。JBIC としては、日本
データベースの作成を現地NGO(前出CH
NGOへ様々な情報を提供しつつ、日本NGO
A)に依頼している。現地実施機関やNGOの
と協力して今後の案件形成や調査等を実施し
オーナーシップを高めつつキャパシティ・ビ
たい。
ルディングを行うことは重要である。一方、
JBICのNGO連携基金の利用や案件形成の
円借款事業への日本のNGO の参加について
ための調査などを今後日本のNGO に依頼す
も認識している。調査等の依頼については、
る可能性はあるが、現在、具体的な案件はな
基本的には総合的に判断した上で、JBIC が
い。今後の案件形成を念頭において、双方に
必要としている情報を迅速且つ正確に提供し
て検討してみてはどうか。
てもらえる先を選択している。
2.在スリランカNGO等ネットワーク会合
事務局を務めているJBICからNGOに会合
の開催について連絡しても返事をもらえない
こともある。NGO の職員はフィールドに行
っていることが多く、このような会合に参加
することが困難なことは理解できるが、参加
への積極性がないように見える。一方、事務
局の課題としては、NGO の方々がもっと積
極的に参加して、活発な意見交換ができるよ
うな、会合内容を考えて行きたい。
48
■国連開発計画(UNDP)コロンボ事務所
日 時:1月29日 13:00
場 所:UNDPコロンボ事務所
面談者:上級地域アドバイザー
プログラム・オフィサー
トランジション・チーム
〈面談内容〉
1.UNDP のトランジション・プログラム
UNDPは、2001年からスリランカで「トラ
デンマーク、アイスランドの5ヶ国から派遣
ンジション・プログラム」を主要な事業とし
された57 名が任務に就いている。また、政
て実施している。これは、緊急人道援助と持
府では Secretariat for Coordinating Peace
続的開発の間に存在するギャップを埋めるた
P r o c e s s(政府和平プロセス調整事務局)、
めに行われているものであり、主として次の
LTTEでは政治部のPeace Secretariat(LTTE和
4 分野に集中している。1)マイクロ・ファ
平事務局)がSLMMのカウンターパートとな
イナンスを通じた経済回復、2)能力開発及
っている。
び訓練、3)県とコミュニティ・レベルでの
元々の活動領域は、スリランカの停戦ライ
参加型計画立案、4)平和と民族融和。これ
ン上を基本とする陸地に限られていた。しか
らの分野を基本として、ジャフナ、ワウニア、
し、政府とLTTEの深刻な対立は海上で発生
トリンコマレー、バティカロアでプロジェク
していることから、2003年9月以降は海上監
トを実施している。
視もその任務に加えられた。
2.雇用・再建プログラム
現在はコロンボに本部が、またジャフナ、
UNDPは現在、人間の安全保障基金へ申請
マナー、ワウニア、トリンコマレー、バティ
しており(資金規模は年間2億円)、これによ
カロア、アンパラにそれぞれ地域事務所があ
って「雇用・再建プログラム」を東部、北東
り、キリノッチにも連絡所が設置されている。
部で実施する予定である。これは、小規模な
また、ジャフナとトリンコマレーでは海上監
地域インフラ整備や雇用創出支援を行うもの
視活動を行っている。
であり、NGO にインプリメンティング・パ
SLMMの停戦監視活動は、各地域に設置さ
ートナー(委託事業実施団体)となってもら
れている地域監視委員会(Local Monitoring
い、共同で実施する。日本のNGO も歓迎し
Committee)を通して行われるのが基本であ
たいが、同時にスリランカのコミュニティへ
る。この委員会は政府とLTTE 各2 名ずつの
直接利益を届けたいとの考えもある。長期間
代表によって構成されており、SLMMが議長
の開発と復興の経験を経て、スリランカの地
を務める。地域における問題や衝突は、各代
域団体(CBO)、現地NGO、政府機関の能力
表からSLMM へ、または地域住民から直接
が充実しつつある。このため、今後は現地組
SLMMへ報告される。
織のキャパシティ構築等を視野に入れていく
■
第
4
章
合
同
現
地
調
査
聞
き
取
り
調
査
記
録
■
地域において、住民の衝突等が発生した場
合は、問題が発生した地区のリーダーへの対
■スリランカ停戦監視団 SLMM(Sri Lanka
処依頼、政府・LTTEの地域指導者への対処
Monitoring Mission)コロンボ事務所
依頼、政府和平推進局とLTTE政治部への対
日 時:1月30日 17:30
処依頼、の3段階の順で行っていくことにな
場 所:SLMMコロンボ事務所
る。
面談者:Press and Information Officer
〈SLMMの活動概略〉
SLMMは2002年2月に締結された停戦合意
を、現場で監視するために設立された。現在
はノルウェー、フィンランド、スウェーデン、
SLMMは政府とLTTE間の停戦監視を任務
としており、北東部で問題となっているムス
リム人と他集団の衝突については、任務には
入っていない。しかし、こうした衝突も地域
を不安定化させる要素となることから、ムス
リム人も活動の対象に含まれている。
49
ムスリムは地域監視委員会のメンバーでは
ないが、SLMMは独自に地域のリーダーを特
定して、連絡を取るように努めている。
■セワランカ
日 時:2004年1月29日(木)
場 所:セワランカ財団本部
面談者:Consultant-Development
■復興・再定住・難民問題省
Head/Consultant
日 時:2004年1月29日 13:30
Promotion Director
場 所:復興・再定住・難民問題省
(M i n i s t r y o f R e h a b i l i t a t i o n ,
Resettlement and Refugees)
面談者:復興・再定住・難民問題大臣ほか
復興・再定住・難民問題大臣を表敬訪問
し、以下のような助言を得ることができた。
◆復興・開発支援においては、草の根レベル
〈面談内容〉
1.スリランカ復興・開発支援におけるニー
ズと課題、セワランカの現在の活動状況
特に北東部における復興支援では、まだま
だ広範囲に多くのニーズがある。支援事業は
追いついていないというのが実感である。
住民自身が訴える「短期的なニーズ」
(住居、
での住民の優先順位を大切にする必要があ
一時金等)に対応することに追われると、長
る。
期的なニーズへの対応が遅れてしまう。住民
◆ニーズは政府などが決定するものではな
の反発を買わずに、限られた予算で真のニー
く、住民が決めるものである。
ズを満たしていくことが援助団体には求めら
◆同省は、援助機関やNGO をコントロール
れている。
する役割を持っているのではなく、あくまで
長い避難生活のせいで、若年層の人々は農
も「ファシリテーター」である。
業を知らず、技術もない。これは、将来の農
◆日本のNGO には、バランスを保った支援
業を担う世代が育っていないとうことで、大
をスリランカで行うよう心がけてほしい。
きな課題であると認識している。
◆各日本NGO ではなく、スリランカ復興開
各援助機関やNGO の多くがハード中心の
発 N G O ネットワークとして、復興・再定
支援を行っていることから、当団体はソフト
住・難民問題省とMOUを締結してみるのも
面での支援、特にソーシャル・モビライゼー
よいのではないか。
ション(Social Mobilization)に力点を置くよ
相談事があれば、Additional Secretaryに気
軽に連絡してほしい。
うになっている。具体的には2004 年からマ
ルチセクター・プロジェクト(多分野にわたる
事業)の推進を通して、地域団体(CBOs)の
強化、農業支援を行う予定である。
セワランカは、LTTEとはオープンに関係
を持っている。これは現実的に必要なことだ。
2004 年からは建築資材の価格が上がるこ
ともあり、事業実施に困難が生じている。
SIHRN が機能しなくなりつつあり、北東
部、特にLTTE支配地域における復興・開発
事業のとりまとめは、LTTEの計画開発事務
50
局(Planning and Development Secretariat)
に実質的に移行しつつあるが、
同団体は、北東部での行政におい
てLTTEアドミニストレーションと
の関係を構築している。開発問題
もここから中央の委員会に上げら
れる。
同団体の認識では、TROはLTTEを代表す
るものではなく、上記のような組織との関係
■National Anti-War Front (全国反戦戦線)
も保っていく必要がある。
日 時:2004年1月29日 13:00
明石日本政府特別代表の度重なる訪問は、
場 所:National Anti-War Front コロンボ
事務所
北東部のみならず、和平進展を願う者に心理
的な支援を与えてくれている。
2.日本のNGOとの連携の可能性と問題点
現状で海外NGOと現地NGOとの事業展開
の競合が起こっていることを憂慮している。
支援スキームの奪い合いもある。Oxfam、
面談者:コロンボ事務所員
〈面談内容〉
1.プロジェクト内容
MOU(停戦合意)後の2002年8月、平和運
動に従事する100を超える団体が集結し、平
Care International等と同団体も競合を経験し
和プロセスへ対抗する勢力に立ち向かうため
た。
の方策を議論した。団結力がある反平和勢力
日本のNGO がさらにスリランカに進出す
に比べ、平和運動側は数こそ多いが、様々な
るに当たっては、現地NGO との連携は重要
グループが別々に運動していることに対して
視されていい。相互補完的な関係があるべき
自己反省がなされ、共通の戦略を見出すこと
である。
の必要性が認識、合意され、当団体が結成さ
(どのようにして競合を避けることが出来
設立加入団体はFoundation for Co-Existence
アンブレラ団体もあり、そのような団体を窓
(FCE)、National Peace Council(NPC)、PAF-
口として現地NGO と事業実施前に十分な接
FREL、MDDR、PRASANNI、CSR、IRDF。
先を募る(50万円程度の事業でもこのような
現在およそ150の団体が加盟。うち10団体
ほどが中心的に活動を組織化している。
公募形式をとる団体もある)ことも検討され
新しい団体を作るのではなく、既存の団体
たい。契約の手続きはシンプルなものである
の活動に、共通する平和アジェンダを盛り込
(同時にCHAは人権擁護活動から出発してい
むことが目的である。学校でも活動を行って
ることからNGO のとりまとめにおいてはま
だ十分機能していないことも説明があった)。
■
れた。
るかという問いに対して)CHAというNGOの
触を図ることが重要である。公募形式で連携
■
第
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同
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地
調
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取
り
調
査
記
録
いる。
今年10 月には全国規模の集会を予定して
おり、それに向け、ビジネス、青年、教員、
労組など10 のセクターごとの集会・協議会
51
を開くことになっている。
あらゆる人々を対象にしており、宗教団体、
におけるSLFP ・JVP の連合体と現政権、統
一国民党(UNP)の対決は、どちらに転ぶか
労使ビジネス関係、文化関係、教育関係、他
は見通しが立たない。
職業集団もターゲットに入れている。
2.大統領の各大臣更迭
メディアに対して大きな懸念を持っており
UNP 政権の安全保障政策に対しては、多
(シンハラ語新聞:現在の平和プロセスに反
数のシンハラ人が危機感を抱いていたのも事
対し、批判的。タミル語新聞:平和プロセス
実である。このため、特に国防相の更迭と大
を支持している)、平和支持の新聞を独自に
統領の国防省権限掌握については、好意的な
発行することを検討している。パートナーの
意見もある。
1団体は既に大規模なメディア・キャンペー
3.望み得る体制
ンを展開中。
主な資金源:AUSAID
2.困難な点
もっと全国規模にしたいが資金不足。
3.今後の予定
上記の事情もあり、理想としては現状維持、
つまり首相が和平を主導しつつ、国防は大統
領が権限を持つという状況が、当面望ましい。
大統領は今まで和平プロセスから完全に除外
されてきたが、大統領も和平に絡むことがで
メディア対策
きるようにするべきであろう。
選挙に向けたキャンペー
4.今後について
もし、総選挙が行われても、選挙制度の問
■ナショナル・ピース・カウンシル(NPC)
日 時:1月29日 16:30
場 所:コロンボ事務所
面談者:Media Director
〈面談内容〉
とは不可能(憲法改正には議会3分の2の賛成
が必要)。また、大統領の任期は2005年、ま
たは2006年まで続く。もしUNPが選挙に勝
利しても現状はどちらにしろ変わらないもの
と思われる。また、大統領の権限にも変更は
ナショナル・ピース・カウンシルは、スリ
加えられず、大統領が今後も国防省の権限を
ランカにて紛争の解決を目的として活動する
握りつづけることも十分ありうる(UNPとし
NGO である。主な活動は、メディアを利用
ても、自分達が大統領ポジションを手に入れ
した反戦キャンペーン、市民の意識調査、紛
たときのことを考えて、あえて大統領権限の
争に関する情報と意見発信、市民社会のキャ
縮小を現時点で行おうとはしないのであろ
パシティ・ビルディング等である。面談では、
う)。
主として近く実施されると言われている選挙
と、それに関連するスリランカ情勢について
意見を伺った。主な点は以下の通り。
1.選挙の見通し
最近、大統領の政党であり、人民連合(PA)
の主要メンバーであるスリランカ自由党
(SLFP)と、急進派政党JVPが同盟に合意し
た(4月頃には総選挙が行われる予定)。選挙
52
題から一方が3 分の2 以上の多数派となるこ
クルネーガラ Kurunegala
■オイスカ学校植林プロジェクト
日 時:2004年1月20日 15:00
場 所:Nika Wari Karagaswewa小学校
面談者:
生徒、学校関係者、オイスカ関係者
スカ・生徒・校長・親・地域住民の間で合意をし
てからプログラムを始める。
現在の問題としては、①資金、②水、③牛
ややぎ、が挙げられる。
①CFPでは5年間オイスカ本部が支援を行い、
その後は自立して緑化を維持していかなけれ
ばならない。
〈面談内容〉
オイスカ「子供の森計画 Children’
s Forest Programme (CFP)」とは、子どもたち自身
が、学校の敷地や隣接地で苗木を植え育てて
いく実践活動を通じて「自然を愛する心」
「緑を大切にする気持ち」を養いながら、地
球の緑化を進めていこうとするプログ
ラムである。
この計画は、スリランカの17県184校で実
施されている。ニカ・ワリ・カラガスウェワ
②水不足の可能性をはらんでいる。
③苗木を食べてしまうので、オイスカの支援
で柵を作り苗木を保護している。
親や学校のOB ・OG も手伝いにくる。以
前は地域住民は活動をなかなか理解してくれ
なかったが、今はみんなが理解し手伝いにき
てくれるようになった。
学校では、「環境を守るクラブ(エコ・クラ
ブ)」を作り、環境維持、後輩育成に努力し
ている。
(Nika Wari Karagaswewa)小学校(1年生∼10
ジャックフルーツを2度植えたが失敗。マ
年生の生徒85名、教師12名)では、10年前に
ホガニー、チーク、アカシヤを植えて成功。
苗木を植え始めた。オイスカ本部から苗木の
その後、ジャックフルーツも成功し現在
ほかに農具、文房具、楽器、タイプライター
18 本が育っており、マンゴーやレモンも育
が提供された。CFPの対象となるには、まず
っている。
オイスカOBからの情報を基に申請をオイス
カ本部に提出し承認を得る必要がある。オイ
■
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記
録
■
「たくさんの関係者の協力で森ができた」、
「精神的に幸せになった」
(教師代表)や「環
境と共にいたい」
(生徒代表)などのコメント
がある。
■合同現地調査団員のコメント――――――
NGO の基本は市民活動であり、ボランテ
ィアの参加を促すことが大切である。CFPで
は、生徒、親、オイスカOB、地域住民がボ
ランティアとして学校の周りの森を保護して
いる。
これこそODA では実施できないコミュニ
ティ参加型の「草の根」レベルでの活動であ
り、NGOだからできる支援であろう。
53
ワウニア Vavuniya
■UNHCRワウニア事務所訪問
日 時:1月21日
場 所:UNHCRワウニア事務所
面談者:Head of Field Office
Re-Integration/Protection Officer
〈UNHCR側説明概要〉
1.UNHCR2004年事業等
た、帰還民への支援も継続し、N o n - F o o d
Item(非食糧救援物資)のパッケージを帰還
民に対して配布する。そのほか、小規模な所
得向上支援や、緊急シェルターの供与なども
ケース・バイ・ケースで行っていく。
去年の委託事業では、井戸や道路の建設、
所得向上支援、灌漑用ポンプの配布、2種類
UNHCRワウニア事務所は、ワウニア、マ
の作物種子の配布などをインプリメンティン
ナー、ジャフナ、バティカロア、トリンコマ
グ・パートナーと行ったが、今年はそうした
レーの5県をカバーしている。
事業をUNHCRは直接行わない。今、アジア
UNHCRは、UNDPと同じくらい長期間ス
リランカで事業を実施してきた。
UNHCRスリランカでは、去年は追加予算
が年間予算の3倍あった。そのため、井戸や
開発銀行や世界銀行、FAO など、他の機関
がこうした分野でのギャップを埋められるよ
う、それぞれの機関と調整を行っている。
UNHCRでは、現在、村のプロファイルを
トイレ、道路等の建設、所得向上活動など、
作成し、帰還民、国内避難民、それ以外の現
実際的な事業を数多く行った。しかし、今は、
地住民、それぞれのグループごとに必要とさ
UNICEF、ILO、FAO、WFP、WHO(トリン
れている支援内容の特定作業を行っている。
コマレー)など、多くの国連機関がそれぞれ
国内避難民の中で、福祉センターにいるの
の任務を持って入ってきている。以前は、こ
は12∼13%で、それ以外の国内避難民は友人
うした国連機関が入ってきていなかったた
や親類の家などで間借りをして生活してい
め、本来はそうした他の国連機関が行うべき
る。福祉センターにいる人々は、それ以外の
事業をUNHCRが行っていたが、最近は他の
場所で部屋を借りることができない最も支援
機関へ事業を引き渡していっている。例えば、
を必要としている人々である。
開発事業はWFPへ、所得向上事業はFAOへ、
子どものケアは UNICEF へと引き渡してい
る。
UNHCRスリランカでは、去年スタッフの
数を増やした。これは、UNHCRの中心任務
であるプロテクション(庇護)活動には人手
が必要で、他の国連機関の資金獲得を支援す
る必要があったからだ。UNHCRスリランカ
では、今年も去年と同じスタッフ・レベルを
維持する。
UNHCR は、今年、福祉センターに住む
IDPが様々な助言を得られるよう、コミュニ
54
ティ・アドバイス・センターを運営する。ま
村のプロファイル作成作業では、各県で、
元の村の人口、戻ってきた人の数などを特定
し、障害者、老人、夫を亡くした女性など、
最も社会的に弱い立場にある人々を見出し、
その上で、そうした人々に必要とされるプロ
テクション活動を特定している。
2.治安
治安面では、ワウニア、マナー、トリンコ
マレー、ジャフナ、バティカロアは、現在
UN フェーズ 3にある。国連のスタンダード
では、フェーズ 1は平常、2は緊迫した状況
が起こる可能性がある状態を指す。治安状況
がフェーズ 4になると、国連職員の避難が必
コロンボまでは運ばれていない。これまでに
要とされる可能性があり、フェーズ5 では、
は、USAID がクッチャヴェリ等の漁民を支
国連事務所の撤退が必要となる。フェーズ 3
援したことがあるが、クッチャヴェリ以北で
は、特別な危険が迫っているわけではないが、
は支援を行ってこなかった。
平静状態から緊迫した状況に移りつつある段
4.平和構築・多民族共存
階を指す。
現在、ワウニアとマナーの治安状況は比較
的落ち着いている。
内戦が継続している間、スリランカ政府側
UNHCRは、プッタラムで異民族間の融和
を進めるための事業を行ったことがあり、こ
のような事業は今後トリンコマレーやバティ
カロア等でも今後展開される可能性がある。
もLTTE側も国連やNGOの職員等を攻撃する
特に、トリンコマレーでは民族構成が複雑
ことはなかったが、間違った場所にいるとタ
で、シンハラ、タミル、ムスリムが同じくら
ミル人とシンハラ人との対立に巻き込まれる
いの割合で住んでいる。トリンコマレーのキ
危険はあった。
ニヤでは、ムスリムとタミルとの間で衝突が
ワウニアでは、最近、国連・NGO 車両の
起こった。プッタラムで多民族共存を進める
屋根に点滅灯をつけることが政府治安当局と
事業を行っている時から、こうした研修やワ
LTTEによって許可された。そのため、夜間、
ークショップ等を通じた平和共存事業はトリ
ICRCは赤いライトをつけ、UNHCRは青いラ
ンコマレーでもやるべきだという声が多かっ
イトをつけるようになった。
た。
3.漁業
5.スリランカへの国際社会の支援
UNHCRは、1996年の所得向上事業で、ト
大統領はJVPとのリンクができたら総選挙
リンコマレーとマナーの漁民に対して漁網や
を行うと発言したが、このような発言はドナ
漁具を供給したことがある。
ーに誤ったシグナルを与えてしまう可能性も
プッタラム周辺やトリンコマレーのクッチ
■
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録
■
ある。一方、LTTE指導部は暴力に訴えない
ャヴェリ・ウェルフェア・センター周辺でも
ということを主張してきている。とにかく、
漁業を営んでいる人々がいる。クッチャヴェ
国際社会の資金は、和平プロセスに進展がな
リ周辺では道路が整っていないため、とれた
ければ十分には来ないだろう。
魚はトリンコマレーの市場には出ているが、
6.国内避難民の帰還
55
北東部では各県に次官(知事)がおり、そ
れぞれの次官によって国内避難民についての
認識が異なる。ワウニアの次官は国内避難民
の支援に強い関心があり、四半期ごとにコー
ディネーション会合を開催している。
トリンコマレーでは、故郷に帰りたくても
帰れない人々がおり、そうした人々に対して
は再移住が検討されている。また、国内避難
民の中には、避難先の社会で定住したいと考
えている人々もいる。
北東部では、過去7年間で15万人が再定住
した。UNHCRが今最も関心があるのは、停
戦合意以降、何人が再定住できるようになっ
も参加できる。
たかということだ。トリンコマレーでの国内
8.LTTEによる児童徴兵
避難民の動きについては、UNHCRトリンコ
マレー事務所に細かな数字がある(ワンニ地
方からトリンコマレーへ戻った人の数を含め
て)。
インドにはスリランカからのタミル難民が
6万4,000人おり、そのうちの12∼15%がトリ
ンコマレーへ帰ると思われ、30 %はワウニ
アへ、8%はジャフナに帰還することになる
が、マナーへ帰還する人々が最も多い。
LTTEの児童徴兵はまだ続けられているが、
子どもを誘拐するようなケースはない。
LTTE兵士だった子どもたちのケアについ
ては、UNICEFから情報を得るとよい。
■JI CAワウニア連絡所訪問
日 時:2004年1月21日 10:30
場 所:JICAワウニア連絡所
面談者:プログラム・コーディネーター
7.援助機関の間でのコーディネーション
スリランカでは、援助機関の間での調整は
バルカン半島に比べれば難しくない。
ワウニアでは、インター・エージェンシー
会合を開催している。この会合を団体間の共
通フォーラムとして、それぞれの団体がどこ
で何をしているかを把握してもらっている。
コーディネーションのためには、情報共有
が重要だ。UNHCRは、サテライト・オフィ
56
〈JICA側説明概要〉
スを通じても他の国連機関や国際NGO など
この連絡所は、北東部のサテライト・オフ
と情報共有を行い、NGO コンソーシアム会
ィス的機能を持つもので、調整と安全対策を
合にも参加してきた。さらに、UNICEF や
実施するためのオフィスであるが、開設して
WFPなどと個別に話し合いも行っている。
間もないのでまだフルには機能していない。
CHA は各県でコーディネーション会合を
今後日本のNGO に対しては、医療、安全情
行っており、この会合にはCBOや現地NGO
報をそして、新しいNGO に対しては参入の
ためのアドバイス、情報提供をしていく予定
である。現在、機能確立のために日本の
NGOからの要望を確認中である。
毒蛇、狂犬病に噛まれたときの血清、毒草
の解毒剤などの便宜供与を行う予定である。
さらに将来的には、マナーでの国内避難民
支援、トリンコマレーの農村開発のための事
務所も開く予定である。
■日本紛争予防センター(JCCP)
ワウニア出張所訪問
日 時:1月21日
場 所:JCCPワウニア出張所
面談者:Administrative Coordinator
〈JCCP側説明概要〉
1.日本NGO 支援無償資金協力事業
去年は、地雷除去プロジェクトを開始する
しての訓練を受けている。
JCCPは今後テクニカル・アドバイザーを
増やしていく予定である。
3.デンマーク地雷除去グループ
デンマーク地雷除去グループでは、チー
フ・テクニカル・アドバイザーの下、JCCP
の日本人スタッフ2名が訓練を受けている。
チーム・リーダーの下に、3人のセクショ
ン・リーダーがおり、それぞれのセクション
ための準備期間だった。最近ようやく日本
に10名、合計30名の地雷除去作業者がいる。
NGO 支援無償資金協力に関する契約に署名
そのほか、3 名のパラ・メディクス、8 人の
することができた。
ドライバー兼ラジオ・オペレーターがいる。
事業資金が確保できたため、今日から、地
チーム・リーダーが指示を出すと同時に、現
雷除去作業要員の採用を行っていく。採用さ
場で技術的なアドバイスを行う。
れた人に対しては、地雷除去の訓練を行う。
4.他の機関・団体との調整
この事業では、ワウニア近郊の諸地域で10ヶ
月間地雷除去を実施する。
今回の日本NGO 支援無償資金協力事業の
を提供してもらっている。こうした国連機関
やNGOは非常に協力的である。
地雷除去事業においては関連団体間の連
のものだが、JCCPとしては3年間継続する予
携・情報交換が重要であることを強く認識し
定である(スリランカ政府が、2006年までに
ている。ワウニアでは、スリランカ政府も調
地雷除去を終えるという目標を掲げているた
整を行っているがキャパシティが十分でない
め)。今年中に、次の日本NGO支援無償資金
ので、UNDPが主にコーディネートしている。
協力事業の申請をしたいと考えている。
UNDPは、将来は事業を政府に引き渡す予定
2.人員構成
である。
ッフが1 名おり、2 人の日本人が、デンマー
ク地雷除去グループ(Danish Demining Group)
との合意の下、テクニカル・アドバイザーと
■
JCCPはUNDPや地雷関連NGO等から情報
予算規模は8,000万円ほど。この事業は1年間
ワウニア出張所にはアドミ業務を行うスタ
■
第
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記
録
5.スリランカ政府との関係
スリランカ政府は、JCCPが輸入する機材
に免税措置をとっている。
ワウニアの県次官は非常に理解がある。
57
6.地雷地図
民である。また、国内避難民の内約3万4,000
地雷地図が更新されることはないが、スリ
人は家族や親戚を頼って暮らしており、福祉
ランカでは雨で地雷が流されることが少ない
施設に滞在している者は1万人ほどである。
ため、特に支障はない。
2.現在の復興開発事業
7.地雷除去スタッフの保険、緊急対応
地雷除去作業者は、スリランカの保険会社
アジア開発銀行のNECORD等と協力して、
住居建設、学校修復等を行っている。また、
の保険でカバーされており、JCCPの日本人
医療の充実を目指し総合病院の改築等を行っ
スタッフも特別な保険でカバーされている。
た。多くの地雷除去団体が活動しており、除
地雷除去現場で緊急事態が発生した時は、け
去地域への国内避難民の再定住を進めてい
が人をコロンボに政府のヘリコプターで輸送
る。
する。
3.今後のニーズ
8.地雷除去作業の評価
地雷除去作業においては、どれだけの時間
でいくつ地雷を除去できたかという効率性よ
特に、国内避難民への住居供給事業、農業
用の灌漑事業、そして地雷除去事業を発展さ
せる必要がある。
りも、安全面での評価が重視される。
9.現地での地雷関連ニーズ
地雷除去事業へ向けた準備を続ける中で見
えてきたニーズとしては、地雷被害者のリハ
ビリと社会復帰が特に挙げられる。
■BAJ ワウニア事務所
日 時:1月21日 17:00
場 所:BAJワウニア事務所
面談者:BAJ事務局長
BAJスリランカ国代表
■ワウニア県次官事務所 Vavuniya District Secretariat
日 時:1月21日 14:00
場 所:ワウニア
面談者:Additional Secretary
BAJのプログラムの現状に関しては、第3
章に詳細が記されている。
■合同現地調査団員のコメント――――――
BAJ は日本のNGO として先駆者的な役割
を果たしており、そのことに伴う特徴や、他
のNGO や団体の参考となる点が多く見られ
る。
BAJは実務的な側面からも、事業を進める
にあたっての関係主体(県次官、住民組織、
LTTE、TRO を含む)との調整、労務関係等
でもきめ細かい配慮を行い、関係作りを行っ
てきている。
地域に入り込んだ形で活動を行うNGO な
〈面談内容〉
1.ワウニア地域の現状
現在、ワウニア地域の人口は、約14 万人
であるが、その内の約4万5,000人は国内避難
58
らではの配慮と関係作りで、NGO が草の根
からの平和構築に役割を果たすことができる
ことを示しているように思われる。
民族紛争の影響で、地域によって大きな格
■JBIC農村経済開発復興事業(PEACE)の
灌漑施設修復事業予定地
日 時:2004年1月21日 15:00
場 所:ワウニア県Iratperoyakulam村の灌
漑施設
面談者:州灌漑局職員
スリランカで典型的な溜池による灌漑設備
を視察した。
差があり、避難民が多い地域では住民の一体
性がなく、事業実施にあたってのニーズ把握
■
や運営にも難しい点があるという。BAJ全体
としては、スリランカ南部での事業実施も検
討しており、民族・地域バランスを配慮した
支援を試みている点など、見習うべき点が多
い。
キリノッチ Kilinochchi
■タミル・リハビリテーション組織 (Tamils
Rehabilitation Organization=TRO)事務所
日 時:1月22日
場 所:TROキリノッチ本部
面談者:Executive Director
Director, Planning Division
Programme Coordinator
Consultant-Water Sector and Community
Development
Consultant for TRO Infrastructure Development
Consultant for Information Technology
〈TRO側説明概要〉
第
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記
録
■
1.TROの構成
TRO の活動は、世界各地に離散したタミ
ル人によって支えられている。
TRO のエンジニアリング・ユニットには
コンサルタントがおり、事業の監督を行って
いる。
2.TROの事業
キリノッチでは、20 年にわたった戦闘の
せいで、他の地域と比べて開発が遅れている。
そうした状況を改善し、平和を回復するため、
インフラ再建、ビジネス活動の促進、国内避
難民の帰還、国内避難民への支援などを精力
的に展開してきた。
LTTE が北東部の暫定統治を行う間、TR
59
OはSIHRNを通じて活動してきた。世銀の資
金を受け、TRO は、住居建設、再定住など
SIHRNの事業を実施してきた。当初は3つの
村で活動し、それが16 の村で行われるよう
になり、後にはより多くの村で実施された。
しかしながら、この地域に平常の生活は戻ら
ず、国内避難民キャンプ等へのさらなる支援
が必要とされた。
TRO は、国内避難民の再定住と生活再建
をプライオリティとしているが、幼児教育、
地雷除去、障害者支援、ジェンダーなど、幅
ュニケーションがスムースになされなけれ
広い分野での活動を行っている。
ば、時間が浪費されてしまう。日本では、技
現在、2003年事業の再検討を行っており、
ムラティヴ、キリノッチ、ワウニアで、県ご
がキリノッチを訪れ、高度な技術研修を行っ
とにニーズ・アセスメントを続けている。
てくれることを期待している。IT技術やソフ
TROの活動は北東部が中心だが、去年の5
月に南部で洪水が起きたときには、ラトナプ
ラで救援活動を実施した。
トウェアなどの訓練も行ってほしい。
日本は高度な技術を発展させながら、伝統
文化も守ってきた。それに倣ってここでも、
国際NGO の活動には、コーディネーショ
文化の保存を行っていきたい。ここでは英語
ンが重要だ。TRO は、草の根の人々をモビ
が教育に使われているので、文化の保存に懸
ライズする力を持っている。
念がある。
3.今後のニーズ
これまでに様々な機関により国内避難民の
帰還が進められたが、国内避難民や帰還民の
幼児教育、女性と開発、水資源管理は重要
なセクターだ。
スリランカ北部での活動は重要だが、東部
緊急ニーズに応える必要は依然として残って
でも支援が必要とされている。
いる。そこで、日本のNGO の果たす役割が
4.通信
強く期待されている。
ジャフナやキリノッチでは、電話網の拡張
日本のNGO には、ワウニアの社会福祉セ
が行われてきた。しかし、中心地を離れると、
ンター(Social Welfare Centre)の様子を是非
道路や電気、電話等が整っていない。我々は、
見てほしい。そこには、まだ故郷に帰還でき
世界の主流から取り残されたくない。そこで、
ない人々が数多く残されている。
TRO では、コミュニケーションを改善する
インフラ整備の分野では、住居再建が急務
ための策を立てることにした。
となっている。また、農村部の道路整備も長
近い将来、キリノッチでインターネット・
期にわたって放置されてきた。インフラ整備
カフェを始めることも考えている。こうした
に携わる日本のNGO とは是非話し合いを持
ITインフラ整備のためには、ネットワーク・
ちたいと思う。
スペシャリストにキリノッチに来てもらうこ
ITインフラの整備も必要だ。コミュニケー
ションの改善が地域開発には不可欠だ。コミ
60
術が高度に発展しているので、日本の技術者
とが重要となる。
5.現地 NGO
計画・立案、モニタリング、財務・会計な
どの面で、現地NGOのキャパシティ・ビルデ
ィングが必要とされている。
■BAJ キリノッチ・プロジェクト
職業訓練センター、学校建設現場訪問
日 時:1月22日 14:00
場 所:BAJキリノッチ事務所、
■JICAキリノッチ県立病院
応対者:BAJ事務局長、
改修プロジェクト
日 時:1月22日 9:30
案内者:
JICAプログラム・コーディネーター
プログラム・マネージャー
BAJのキリノッチ事業の詳細は第3章に記
されている。
緊急開発調査のスキームによる「キリノッ
チ県立病院の改修」を見学。
1.概要:病院職員用住居、一般病棟、産科
病棟、医師用住居の改修、建設である。
■
工事期間:2003年6月下旬∼2004年3月下
旬(予定)
工事請負:パシフィック・コンサルタント
2.問題点:工事が予定より遅れている(免
■合同現地調査団員のコメント――――――
税措置の許可取得の遅れ、現地労働者が不足
視察することのできたキリノッチの職業訓
している等の理由から)。
練センターは、たいへん立派なものであり、
3.この病院は、LTTE支配地域の県立病院で
地域住民にとっても復興へ向けての励みにな
は、一番規模の大きい病院であるが、外科医、
るように思われる。訓練生はBAJのロゴの入
その他の専門医がいない、レントゲン設備が
った作業服を着て、たいへん熱心に作業をし
ない、輸血ができないなどの問題点があり、
ていたが、地域住民に紛争後の将来に向けた
重症患者については、コロンボへ移送してい
希望を作り出しているように思う。地域住民
るのが現状である。
と共に作り、地域住民に有効に利用されてい
第
4
章
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査
記
録
■
る点、政府機関、LTTE、TRO、また国連機
関、他の国際NGO からも高い評価を受けて
いる。
BAJは、こういった紛争地において可能な
ことはすべきであるという観点から、日本政
府が安全上の懸念があるとしていた地域に
も、国連等での活動展開を見た上で、独自の
事前調査に入った。こうした機動性はNGO
であるからこそ持ちえたものであるかと思わ
れる。
また、事業の実施において地域住民の自立
支援を明確に打ち出しており、草の根の支援
61
を行うことのできるNGO の利点を示してい
ていない。人々は経済、医療、教育など、あ
るように思われる。まず、事業の実施に当た
らゆる面で苦しみを抱えながら生きてきた。
っては、最初に地域住民のニーズを把握して
今の和平プロセスはまだこの地域の人々を
いる。そこからまず開始した上で、次の必要
性を探るアプローチがとられている。またキ
リノッチの職業訓練センターの受講生は、応
募者の中から、戦争による被害も含め家庭的
満足させていない。
この地域では、人々の生活再建に必要なイ
ンフラを整備しなければならない。
BAJを始め、日本のNGOには感謝したい。
に困難のある若者をまず選んでいる。また、
BAJはこの地域で職業訓練センターを開いて
OJT(On-the-Job-Training=実地訓練)により、
くれた。この地域の人々には技術修得のため
トレーニングを受けた青年たちが、訓練終了
の基礎的な設備がなかったので、BAJの職業
後、職を得やすくなるようにしている。また、
訓練センターは非常に役に立つ。人々は、教
職業訓練局と交渉の上、BAJの名前と併記で
育を受けられるようになり、再び仕事に就き、
受講終了証明書を発行することでその価値を
経済的な安定を得て、子どもをケアすること
高め、受講生への便宜を図っていこうとして
ができるようになるだろう。この地域への日
いる。
本のNGO のさらなる参入を歓迎したい。日
本のNGOの活動は、フルに支援したい。
■LTTE(Liberation Tigers of Tamil Eelam)
政治部
■UNHCRキリノッチ事務所訪問
日 時:1月22日
日 時:1月21日
面談者:政治担当次席
面談者:Head of Office
Associate Liaison Officer
Associate Field Officer (Protection)
Protection Officer
〈UNHCR側説明概要〉
1.2003年末までの事業
UNHCRキリノッチ事務所は、2002年後半
からは、特に帰還民の支援に力を入れてきた。
2003 年には事業が拡大され、スリランカの
〈政治担当次席による説明の概要〉
62
内外からの帰還民への支援を幅広く行った。
BAJ は既にこの地域で現地NGO と共に事
実施された活動としては、人道面でのモニタ
業を実施しており、他の日本のNGO にもこ
リング、帰還民の基礎的ニーズの充足、住居
こで活動してもらえれば非常に嬉しく思う。
建設、水供給と衛生改善、学校建設、病院建
20 年に及ぶ戦争の後、我々は停戦を遵守
設、所得向上支援などが挙げられる。2003
し、人々の生活を建て直す努力をしてきた。
年は、この地域での基礎インフラ整備活動の
人々は戦争でひどく傷ついた。学校では教
ための特別な補助予算がジュネーブ本部によ
師が不足し、施設も整っていないため、子ど
って認められていた。
もたちはきちんとした環境で教育を受けられ
2.2004年事業
2004 年は、片親家庭、障害者、高齢者な
ど、国内避難民や帰還民の中で特に弱い立場
判所職員などに対して訓練を行っている。
現在、村落部では、養鶏などを促進するた
にある人々への支援に重点を置いて活動して
めの資金が必要とされている。
いく。ドナーの中には、LTTEをテロリスト
3.弱者への支援
組織とみなしているところもあり、全体的に
今年は事業資金が少ないこともあり、
ドナーはまだ資金拠出をためらっている。そ
UNHCRは弱者への支援を重点的に行ってい
こで、ドナーからの支援が不足している部分
く予定で、現在、プロジェクトを形成してい
を埋めるような活動を行っていく。
る。
2004年は、UNHCRのプロテクション任務
受益者の選定にあたっては、UNHCRの脆
を重視し、警察官の訓練、人道法遵守の徹底、
弱性基準を用いている。所得の不足、法への
性的暴力や男女間の暴力の軽減などを行って
アクセスがないことなどが重視される。
いく。しかし、この地域は非国家主体によっ
キリノッチ、ムラティヴ地域では夫を亡く
て管理されているため、UNHCRはプロテク
した女性が多く、そうした人々も重点支援の
ション活動を実施するものの、そのための基
対象となる。
盤が不足しているという問題がある。
4.所得向上支援
今年UNHCRは、コミュニティ・サービス
どんな所得向上支援を行うかは、地域的な
では、法へのアクセスや不動産所有権の強化
特色や、そこに住む人々の持っている技術、
を重点的に行う。また、帰還民への非食糧救
需要、家族構成などによって異なるが、干し
援物資(non-food item)の配給、職業訓練セン
魚作りは支援例の1つとして挙げることがで
ターの運営なども行っていく。水供給と衛生
きる。
改善分野での事業予算はない。
BAJは今年のUNHCR事業では、キリノッ
UNHCR事業では、職業訓練も行うが、全
ての女性が裁縫に興味があるわけではなく、
チ職業訓練センターで、トラクター整備コー
中には大工や左官に興味のある人もいる。そ
スを開講し、女性を対象とした裁縫訓練と家
のため、コミュニティとの相談が重要となる。
具作り訓練も実施していく。さらに、故郷へ
夫を亡くした女性を支援するのであれば、
帰還した人々に対して救援物資の配給も行
牛をあげるだけでは不十分で、牛乳を加工す
う。
る技術も身に付けられるように支援する必要
この地域には、土地を持たない国内避難民
が多くいるため、彼らの基礎的なニーズが満
たされるよう支援していく必要がある。
■
がある。
5.性的暴力・男女間の暴力
公的には、性的暴力や男女間の暴力はない
ジャフナはある程度発展しているが、キリ
とされているが、実際には女性への差別があ
ノッチでは技術革新がまだ起こっていない。
る。特に夫を亡くした女性や離婚した女性へ
また、長い間、外界から切り離されてきたた
の差別は問題だ。
め、この地域の市民社会は、運営・管理、説
この地域では、外に出て働かなくても家で
明責任、資金管理、所得創出などの面でキャ
何かを作って生活している女性が、売春で生
パシティが足りていない。そのため、訓練が
きていると思われて差別されることもある。
必要とされている。
そのため、ジェンダー意識の向上が必要で、
UNHCR は、この地域でLTTE や警察、裁
■
第
4
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録
また所得向上支援も同時に必要とされてい
63
る。
6.精神面でのケア
この地域には、戦争の影響を受け、トラウ
マを持っている人々に対して、カトリックの
司教がカウンセリングを行っているが、こう
した活動を行うための資金が不足している。
また、こうした人々のための医療施設もごく
限られている。
アッカライ地域で精神的な障害を持つ人々
をケアしているNGO がある。この活動によ
り、既に家庭に戻ることができた女性もいる。
そうした女性たちに対しては、救援物資が支
給されているが、電気など、不足しているも
のもまだ多い。アッカライ地域には、病院で
精神的な障害を抱えた人々のケアも行われて
いる。
7.漁業
現地NGO は、分野別というより地域的に
分布しているものが多い。
REERDO は学校教育や幼児教育などを得
意としている。
ワンニ地域ではスリランカ海軍によるコン
2002 年末、キリノッチ地域で活動する国
トロールが少ないため、ジャフナより、ワン
際NGOは、Oxfam、Care、Forut、ACFくら
ニの方が漁業地域は広い。日本のNGO がこ
いしかなく、国連機関もUNHCRとUNICEF
の地域で漁業支援をするのは良いだろう。
だけだった。2003年、UNHCRは1年間でか
8.住居
なり多くの支援活動を実施しなければならな
今年UNHCRは、キリノッチでの住居支援
かったが、リソースが不足していたため、ど
は行わない。LTTE支配地域では、こうした
の村がどのような状況にあるかを十分に把握
活動を行う場合は、現地NGO を通して実施
するのが困難だった。そこで、TRO に事業
しなければならない。キリノッチの行政シス
の調整を依頼した。
テムはトリンコマレーやジャフナのものとは
10.2005年以降の事業
異なり、数多くの段階を経る必要がある。そ
現在、スリランカでは政治的な混乱があり、
のため、ドナーはこうした活動への資金拠出
和平プロセスが停滞している。そのため、ド
を躊躇しがちである。
ナーの資金が十分に来ない状態だ。そこで、
世界銀行は、2005 年、キリノッチで住居
UNHCRは本来の中心任務であるプロテクシ
建設事業を開始する予定である。
ョンに焦点を絞って今年の事業を行う。プロ
9.現地 NGO
テクション活動は、「労働集約的な」仕事な
この地域では、NGO コンソーシアムが活
動を調整しており、国際NGOは現地NGOを
通して活動しなければならないことが多い。
そのため、各団体が直接的に支援を行うのが
難しい。しかし、直接実施しようとする団体
64
があれば、UNHCRはそれを支援できる。
ので、インターナショナル・スタッフの数を
増やした。
マナー Mannar
■マナー県次官事務所 Mannar District Secretariat
日 時:1月23日
面談者:マナー県次官
Assistant Commissioner of Local
Govern-
ment
マナー県NGO コンソーシアム議長
(TROマナー県代表)
セワランカ職員
〈マナー県次官説明概要〉
1.マナー県の構成
マナー県次官は、様々な地方政府の部局と
る。
4.畜産
マナー県では、畜産も行われている。
5.地雷
州評議会との調整を行っている。北・東部の
地雷が、マナー県では大きな問題となってい
州評議会は選挙によって構成されるものでは
る。
ない。
6.IT・通信
マナー県は、ワウニアからマナーの町へ向
IT技術の研修は政府職員や学校教師などに
かう道によって政府支配地域とLTTE支配地
対して行うことがあるが、インドのレベルに
域の2つに分かれており、マンタイ・ウェス
はまだ追いついていない。また、学校の生徒
トとマドゥAがLTTE支配地域にあたる。
へのIT訓練も不足している。
マナー県出身の国内避難民は、プッタラム
電話は現在2,000ラインあるが、再定住地
に4万5,000人おり、インドに3万人いる。そ
域では特に不足している。コミュニケーショ
のため、こうした国内避難民が帰ってくれば、
ンの欠如が民族対立の原因の1つとなってい
県の人口は17万5,000人になる見込みである。
る。
2.漁業
7.援助機関の事業
マナー県は漁業地帯を持っており、漁業協
同組合が35ある。
漁にダイナマイトが使われることがあり、
環境破壊の一因となっている。
小魚までかかってしまうような網が漁に使
用されることもあり問題となっている。
3.農業
農業面では、2万4,000エーカーを灌漑して
いるジャイアント・タンクと呼ばれる溜め池
■
第
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■
マナー県では、UNHCR、UNICEF、WF
P、FAO、UNDPなどの国連機関、ICRC、セ
ワランカなどの NGO が事業を行っている。
NGO コンソーシアムもある。日本からは、
BAJ、JICA、JBICが入ってきている。
世界銀行のNEIAPでは、灌漑施設の修復、
公民館の建設などが行われている。セワラン
カは、NEIAPでソーシャル・モビライゼーシ
ョンを行っている。
がある。中型タンクは10、それより小さな
アジア開発銀行のNECORDでは、2002年
タンクは161、ごく小規模なタンクが340 あ
から350万ドルの予算でインフラ整備等が進
65
められている。提案事業の中には、水路の修
の建設を行い、Rural Development Foundation
復も含まれている。また、こうした事業では、
は、水供給、井戸建設、マイクロ・ファイナ
政府職員のキャパシティ・ビルディングも行
ンスなどの活動を展開した。当時は、夕方5
われている。
時を過ぎるとLTTE支配地域に戻れなかった
8.今後のニーズ
ので、LTTE支配地域でも巡回診療を始めた。
住居・衛生施設・小規模橋梁・灌漑用池等
セワランカとサルボダヤは、水供給、衛生改
の建設、小規模ビジネスの促進、ウォータ
善、学校建設などの事業を行った。また、
ー・ポンプの普及、社会福祉など、今後必要
UNHCRは、6箇所の社会福祉センター(政府
とされる活動が数多く残されている。
支配地域3箇所、LTTE支配地域3箇所)で国
内避難民支援活動も行った。
2.2004 年 UNHCR 事業
■UNHCRマナー事務所訪問
日 時:1月23日
面談者:Head of Office
現在、UNHCR マナー事務所には3 人のイ
ンターナショナル・スタッフがいる。今年
UNHCRはプロテクションに力を入れる。
事業資金が減ってきているので、IDPと帰
〈UNHCR側説明概要〉
1.UNHCR の 2003年末までの事業
きている。支援活動にはある程度の資金が必
UNHCRは1988年5月にスリランカに入っ
要なので、今年実施する支援活動は、保健活
た。スリランカ政府とインド政府の合意を得
動と帰還民への非食糧救援物資の配給のみと
て、難民・国内避難民の帰還及び帰還民の支
なる。
援を開始した。
保健分野では病院やプライマリー・ヘルス
ケア・センター等の建設、農業分野では溜め
スリランカ赤十字社とデンマーク難民評議
会(Danish Refugee Council)が国内避難民へ
の法律サービスを無料で提供する。
池の修復などを行った。また、主要な町から
UNHCRは、他の機関に対して、どの分野
村落への道路を整備したり、1万5,000の住居
での支援が必要かアドバイスを行い、資金探
を建設したりした。
しの支援をするつもりである。
1991年には1万人が帰還すると考えていた
UNHCRは通常5年間の任務期間を持ち、2
が、実際にはそれより多くの人々が帰還した。
∼3年のサイクルで計画を立てている。また
2002年にはスリランカ政府とLTTEとの間
毎年10月に開催されるExecutive Committeeで
で停戦合意が結ばれた。インドにいるタミル
ドナーへのアピールを出している。
難民の約8割はマナー出身で、インドからの
3.インドにいるタミル難民
難民帰還が始まれば、マナーがその大きな受
入地になると考えられた。
66
還民のプロテクションと支援に焦点を絞って
過去には、インドに逃れた9万2,000人のタ
ミル難民のうち、5万4,000人がスリランカに
しかし、マナー県には最低限の医療・保健
戻ったが、1995年∼96年にかけて3万人が再
施設しかなく、その他の施設も未整備だった。
びインドに戻ってしまった。このような経緯
そこで、2003 年は、4、5 のインプリメンテ
もあり、インド政府は難民問題の恒久的な解
ィング・パートナーと大規模なプロジェクト
決を望んでいる。インドにいるタミル難民は
を実施した。BAJは職業訓練センターや井戸
できるだけ早く故郷に帰ることを望んでいる
が、マナー県の土地のおよそ半分は地雷が敷
設されており、スリランカ政府のハイ・セキ
ュリティ・ゾーンもあるため、現在はまだ戻
れない状態にある。
インドからタミル難民が帰還する際には、
マナーかトリンコマレーを通って帰還するこ
とになるだろう。ジャフナはアクセスに制限
があるので問題があるかもしれない。
4.日本のNGOの活動
日本のNGOがマナー県で活動する場合は、
支援内容に重複が起こらないよう、現地の
人々のアドバイスを十分に受けて計画を立て
離れた幹線道路沿いにある。近隣には非常に
大きな溜池や検問所がある。
マナーは漁業の町であり、ニーズの高い船
る必要があるだろう。
外機エンジン整備コースを新設する予定であ
5.通信
る。
■
60km以内であればVHFで通信が行える。
6.治安
3ヶ月前には爆弾事件があったが、今は平
静で安全である。LTTE支配地域でも移動の
自由があり、イスラム教徒への脅迫も特にな
い。
■マナー県 NGO コンソーシアム訪問
日 時:1月23日
面談者:マナー県NGOコンソーシアム議
長兼TROマナー県代表
〈議長による説明の概要〉
1.マナー県 NGOコンソーシアム
■BAJ マナー職業訓練センター
日 時:1月23日 12:00
場 所:BAJマナー職業訓練センター
面談者:BAJスリランカ国代表、
コーディネーター、
フィールド・オフィサー
〈BAJ側説明概要〉
2003 年に UNHCR のインプリメンティン
グ・パートナーとして、職業訓練センターを
建設し、職業訓練を実施。訓練コースは、①
トラクターエンジン修理コース、OJT方式で
②大工・左官コースを実施した。①は26名、
②は 17 名が修了した。訓練生の 3 分の 1 は、
LTTE支配地域から通ってきた。
センターは、マナー中心から17 キロほど
マナー県NGO コンソーシアムには、セー
ブ・ザ・チルドレン・スリランカ(Save the Chil-
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録
■
d r e n S r i La n k a )、デンマーク難民評議会
(Danish Refugee Council)、オランダのZOA、
農村開発財団
(Rural Development Foundation)
、
セワランカ、マナー救援復興協会(Mannar
Association of Relief and Rehabilitation)
、カリ
タスが資金を提供している宗教系団体など、
35のNGOが加わっている。35のNGOのうち、
10が大型NGOで、20は小規模NGOである。
NGOコンソーシアムは、NGOの活動を調
整し、重複がないようにしている。
資金的な支援は、県開発委員会(District
Development Board)が行っている。
マナー県で活動を開始するNGO は、マナ
ー県NGOコンソーシアムに関心表明を行い、
67
所定のフォームに必要事項を記載し提出す
除去されたケースもある。パルミナからは繊
る。その後、NGOコンソーシアム会議に3回
維をとることができ、カスもコロンボでクッ
出席し、どんな活動をする予定かを説明する
ションやマットレスに使われている。マナー
必要がある。
県には豊富な植物資源があるが、十分に活用
2.UNHCR や NGO の活動
されていない。
LTTE支配地域は支援対象から除かれたこ
8.教育
ともあったが、UNHCRが緊急住宅建設を実
マドゥでは、過去に教育施設が建設された
施したり、サルボダヤやセワランカが
が、1999年に戦闘が再開されて破壊された。
UNHCR 資金で支援活動を行ったりしてき
教員訓練学校のミーティング・ホールの再建
た。また、UNHCRは低収入家庭にひと月に
が必要とされている。
1万ルピーを提供して支援してきた。
3.日本からの援助
マナー県には41 の学校があるが、そのう
ちの5つはイスラム教徒の学校で今は閉鎖さ
マナー県で実施されるJICA 事業はコミュ
れている。残りの36 の学校では、英語教師
ニティ開発が中心で、JBIC の事業は灌漑用
が4人しかいない。このような状況を改善す
池の修復など、大規模なものとなっている。
るためには、コロンボやキャンディから英語
JBIC事業では、マナー県の2つのタンクが既
教師を招いて、1年間ほど訓練を行えるよう
に選定されている。
にする必要がある。停戦合意の後、南の人が
4.道路
数多くマナーに来たが、恐れを抱いて帰って
村レベルの道路は、タウン・カウンシル
(Town Council)や村の組織などが管轄してい
るが、長い間整備されてこなかった。現在、
行ってしまった人も多い。
マナーの町の方では、コンピュータを習い
たいと思っている人が多少いる。
ディビジョナル・セクレタリー(Divisional
BAJのマナー職業訓練センターには、大学
Secretary)や様々な政府機関の協力で、車両
に進学するより技術を身に付けて早く職を得
や人材を供給して、100kmの道路整備を行う
ようとしている学生もいる。
計画がある。国際高速道路の建設計画もある。
5.農業
今回の雨季は通常より早く終わってしまっ
た。既にタンクの水位が下がっており、農業
にも被害が出た。マナーの主な産業は稲作と
漁業である。
6.漁業
このところ外国のトロール船がスリランカ
海域に入って、マナーの漁民の網を破ってし
まっており、これは漁民の生活に脅威を与え
日 時:1月24日
場 所:マナー県漁業水産資源局
〈面談内容〉
1.マナー漁場等
マナー県は漁業で有名で、マナーの海には
ている。
様々な生物が生息している。ナマコもとれる。
7.植物資源
マナー沖では様々な潮流がぶつかっているた
マナーの海岸沿いには、パルミナという植
物が 17 マイルにわたって自生しているが、
68
■マナー県漁業水産資源局訪問
め、魚が多く集まる。マナー県には163kmに
もので、エンジンの馬力に制限はない。マナ
ーで実際に見られるのは40 馬力までの船外
機で、40 馬力のものはごく少数である。全
船外機の75%ほどが9.9馬力、15%ほどが15
馬力となっている。船外機のサプライヤーは
1年に1度マナーに来て、販売を行っている。
船外機の簡単な修理は地元のメカニックが行
っているが、さらに訓練が必要となっている。
及ぶ海岸線がある。マナーからインドまでは
船外機整備士のニーズはマナーの漁村で非常
18マイルしか離れていない。
に高い。今は、修理のために船外機をネゴン
マナー島の南北の海域が主な漁場となって
ボまで送ることも多い。マナーの町には、ス
いる。5 月∼9 月の南西モンスーンの時期は
ズキの9.9馬力船外機の部品を扱っている店
島の北側が中心的な漁場となり、雨季以外は
がある。
島の南の方が主な漁場となる。マナー県には
5.漁民への支援
35 ほどの漁村がある。季節によって住む場
マナーでは、政府関係省庁が漁具を漁民に
所を移す漁民も多い。
供給し、漁民へのマイクロ・ファイナンス支
2.漁法
援はUNHCRが行った。ADBは1994年に漁民
マナーでは、浮き網を使った漁、大小の網
にボートをローンで提供したことがあるが、
を使った漁、わなを用いた漁など、様々な漁
この頃は戦争中だったので、ローンの返済は
法が見られる。
十分になされなかった。NEIAP やNE
3.ボート
CORDでは、漁民への支援は行われてこなか
戦争前は、300ほどの1デー・ボート(日帰
り漁に用いられるもの)がマナーにあった。
った。漁民は最も貧しいので、支援が必要。
6.漁業協同組合
今は、手漕ぎボートのほか、船外機付きのフ
漁協は漁民への金融も行っている。船外機
ァイバーグラス・ボートが1,600ほどあり、マ
の価格は10万5,000ルピーと高いので、漁民
ルチ・デー・ボート(数日間にわたる漁に使わ
が購入代金の一部を支払い、大部分を漁協が
れるもの)も導入されている。3.5トンのトロ
貸し付けることもある。
ーリングに使われるボートもある。ファイバ
7.仲買人
ーグラス・ボートは10∼15年くらい使える。
提供し、そうしたものを受け取った漁師は獲
ド南部に運ぶのに使用された。こうしたボー
れた魚を必ず仲買人に持っていかなければな
トはインド政府によって没収された。かなり
らないというケースが多くなっている。その
の数のボートが没収されたと思われる。
ため、マナーの漁獲の大部分は仲買人が買い
登録する必要がある。船体に保険をかけない
取ってしまっている。
国連機関や国際NGO などが漁協を育成し
漁民が多い。
ようと支援したことがあるが、漁協は十分に
4.船外機
育っていない。NGO が漁協を強化しようと
使用されている船外機はヤマハやスズキの
■
マナーでは、仲買人が漁民にボートや網を
エンジン付きボートは、戦争中、難民をイン
漁民は所有するボートを漁業水産資源局に
■
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録
すると、仲買人からの反発を招く可能性があ
69
る。
仲買人は、漁民の冠婚葬祭にも手助けをし
は約800kgの魚を積むことができる。長細い
1デー・ボートの価格は6万4,000ルピー。
ているので、漁民は仲買人に頼ることが多く
なる。こうした仲買人への依存を減らすには、
漁民をモビライズする必要がある。
■漁村(ワァンカライパドゥ村:
Vankalaipadu)訪問
8.魚のマーケティング
過去には、UNDPが2台のローリーを県の
漁協連合に提供したことがある。ローリーに
臨時集落が形成される。
魚を氷と共に積み(ローリー 1 台につき 200
この村には約50家族、計350人ほどが住ん
箱)、都市部で売ろうとしたのだが、漁師が
でいる。本土のワンカラ(Vankala)から来た
仲買人に魚を持っていってしまい、漁協連合
人が多い。この村の浜には海亀が産卵に来る。
には魚が集まらなかった。
この村には175のボートがあり、その多くが
9.製氷所
船外機付きのものである。この村では、9.9
マナーには、漁協の製氷所が1 箇所あり、
馬力、15 馬力、25 馬力のスズキの船外機が
そこでは、50kgのブロックを1日に100ブロ
使用されている。こうした船外機は漁協が販
ック生産できる。民間の製氷所も2箇所あり、
売している。
1日に35トンの氷を生産する能力がある。現
在は1日に20トン生産されている。
■造船所訪問
マナー島の造船所では、ファイバーグラ
ス・ボートが製造されている。
ファイバー・グラスを用いた造船技術を持
った人がジャフナから招かれた。
日帰り用ボートの価格は7万4,000ルピー。
1年間の保証が付いている。15馬力の船外機
は12万5,000ルピーで、船体と合わせると約
20 万ルピーになる。この日帰り用ボートに
70
10月∼3月に、島の北部にあたるこの村に
船外機の燃料はケロシンにエンジンオイル
を混ぜたもので、1日あたりの燃料消費量は
約35リットル。
この村には船外機を修理する小さな作業所
がある。経営しているのは、イスラム教徒で、
修理技術は独学で身に付けたという。彼は高
校を卒業している。彼によると、船外機は日
本から、マナーの町で入手できる部品は台湾
から来ている。
■漁村(ペサレ村:Pesalai)訪問
漁民の話では、インドの漁船がスリランカ
漁業海域に入ってきているという。
■BAJ 職業訓練センターでのNGO会議
会議参加者:
マナー県NGOコンソーシアム議長 スリランカ赤十字社
農村開発財団(Rural Development Foundation)
セワランカ
サルボダヤ
スリランカ復興開発NGOネットワーク参
加団体
〈会議出席者発言内容〉
マナーで活動するNGOは、UNHCRの事業
縮小に伴い、資金不足で苦しんでいる。
マナーには、インドからの難民帰還や国内
避難民の再定住など、大きな問題がある。
この村には約300家族、計1,020人ほどが常
時住んでいる。村内には、船内にエンジンを
1.セワランカ
マナーは地理的に離れている。マナーでは、
備えた59 のトローラーがある。船外機付き
国内避難民の再定住や復興開発など、人々が
のボートは160ある。アジに似た小型の魚は
平常の生活を取り戻せるように支援する必要
キロあたり25ルピーで売られている。
がある。
この村の漁協は魚市場、事務所、銀行を持
セワランカはマナーでUNHCRのインプリ
っているが、魚市場では魚があまり売られて
メンティング・パートナーとして活動してき
いない。仲買人が魚を買い取ってしまうので、
た。
漁協の魚市場には魚が集まらず、漁協は十分
主な事業資金提供者は、UNHCR、デンマ
に役割を果たせていない。仲買人は漁協より
ーク難民評議会 Danish Refugee Council、
色々な恩恵を与えてくれるため、漁師は漁協
ECHO、GTZなどである。
より仲買人を好んでいる。漁師の中には、仲
買人に一生尽くさなければならない者も多い
という。
■
第
4
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き
取
り
調
査
記
録
■
マナー県では、LTTE支配地域にも支部が
ある。
緊急救援活動は今後減らしていき、復興開
発支援を中心に活動していく。現在、支援対
■漁村(Pier 近辺)訪問
マナー島の先端にあるこの村には180家族
が住んでおり、ボートは52ある。
象村を選び、ニーズ・アセスメントを行って
いる。
開発事業では、小規模金融、心理・社会活
動、水と衛生、回転資金導入、CBO強化(村
71
レ ベ ル で の 組 織 作 り )な ど を 行 っ て き た 。
も重要だ。
1998 年からは農業訓練支援に力を入れてき
4.サルボダヤ
た。漁民のキャパシティ・ビルディングも行
っている。
ドイツのGTZ の資金では、小規模企業育
成も行ってきた。
セワランカのマナーでの活動は全てのセク
サルボダヤはUNHCRのインプリメンティ
ング・パートナーである。
マナーでは1984年から活動してきた。行っ
てきた事業の内容は、収入向上支援、住居建
設、水供給と衛生改善、学校建設などである。
ターをカバーしている。
5.農村開発財団(Rural Development Foun-
2.スリランカ赤十字社
dation〈RDF〉)
マナーは北・東部で最も破壊の著しい場所
RDF は 1984 年から事業を行ってきた。
であるにもかかわらず、支援が十分に届いて
1993年にUNHCRのインプリメンティング・
いない。マナーは列車と道路が整備されてい
パートナーになり、UNICEFやデンマーク難
た頃は、インドへの物資輸送の重要地点だっ
民評議会 Danish Refugee Councilなどとも協力
たが、戦争によってそれらが破壊されてしま
して活動してきた。
ってからは、人々の関心が薄れてしまった。
活動内容は、住居建設、村落道路の整備、
漁業は衰退し、地域経済が傾いてしまった。
井戸建設、幼児教育、トイレ建設、コミュニ
インドのトロール船がスリランカの海域に
ティ・センター建設、女性農村開発協会の強
入り魚を奪ってしまっているのも問題だ。
スリランカ赤十字社は、自然災害被災者の
救援、国内避難民や帰還民の支援、学校での
保健・衛生教育などを行っている。
マナーで活動を始めようとするNGO があ
れば歓迎したい。
3.NGOコンソーシアム議長
マナー県では、島部が支援の中心とされて
きたが、県の北部や南部も見なければ本当の
状況はわからない。NGOは、LTTE支配地域
にも行くべきだ。
化、女性による貯蓄グループの形成支援、
CBOの強化(特にワウニアで)などである。
6.TRO
活動資金は主に海外在住のタミル人から来
ている。
マナー周縁部にはIDPが多くおり、TROは
栄養失調の女性と子どもを母子福祉センター
Child/Mother Welfare Centre に受け入れ、栄
養強化、社会復帰支援を行ってきた。
その他、コミュニティ開発事業も行ってき
た。
NGOの多くは良い役割を果たしているが、
今はごく少数のNGOしかマナーにはいない。
マナーの多くの地域には電気供給がなく、
保健・医療サービスは不十分で、飲料水も足
りていない。栄養状態は悪く、8∼12歳で栄
養不良のために失明する子どももいる。衛生
72
■ZOA訪問
日 時:1月24日 10:00
場 所:ZOAマナー事務所
面談者:プロジェクト・マネージャー
状態や道路状況も改善が必要だ。漁業では、
〈面談内容〉
インドからのトローラーが魚を持っていって
1.組織概要
しまっている。これは国家レベルで解決され
1995年設立のオランダNGOである。事務
なければならない。マナーでは溜め池の修復
所はマナー県に3事務所を構えている。活動
内容は、①緊急援助、②復興援助(帰還民へ
の非食糧救援物資配布など)、コミュニティ
復興援助(心理社会療法、所得創出事業、キ
ャパシティ・ビルディングなど)の3つの「草
の根」レベルの支援活動を行っている。
活動資金調達に当たっては、まず現地政府
(スリランカ政府)から資金を得ることを心
がけている。
2.プロジェクトの成果
12村で20,000世帯を支援している。
2007 年に活動を現地組織に引継ぎ、撤退
をする予定。
依存による問題を抱えている。
3.国際機関との連携に関して
紛争による農法ギャップから現在、化学肥
UNHCR、WFP、UNICEF(心理社会療法面
料を使わない有機農法、また季節指向型農法
で)、AUSAID
(オーストラリア政府援助機関)
に依存しているが、今後は市場指向型農法に
から資金を得ている。
移行して、収入を増やしていく必要がある。
4.問題点とその解決策
5.その他
305世帯の再定住者が土地を持っていない。
住民が紛争によるトラウマからアルコール
コミュニティ・レベルでは、タミル人とム
スリムはよい関係を保っている。
ジャフナ Jaffna
■
第
4
章
合
同
現
地
調
査
聞
き
取
り
調
査
記
録
■
■AMDAのジャフナ・コミュニティ復興事
業(Jaffna Community Rehabilitation
Project)
日 時:1月20日 10:30
面談者:AMDAプロジェクト・コーディネ
ーター、漁協の代表数名とコミュニテ
ィ・センター運営委員会の会長、副代表
他
〈面談内容〉
1.プロジェクトの概要
地域:Jaffna県南部TenmarachchiのKaithadi
2003年8月に着工、12月完了(12月19日
Navatkuli South漁業地区
開設式)
(1)内容 ①コミュニティ・センターを建設
着工に当たって、住民の無償協力や相互
の責任に関して協議を重ね、合意書を作
73
成。センター建設は業者に、井戸及び周
成に時間がかかったが丁寧に話し合いを重ね
辺のブロック塀建設はコミュニティに委
ることで相互理解が促進された。
託。
4.現時点でのニーズ
②コミュニティ・センターの運営支援
政府との交渉による漁場の拡大ならびに漁
③経済活動支援(魚網の供給)
法の改善などによって、何よりもまず漁民が
ちなみにAMDA は近隣の農村でも並行し
漁業によって生活できるようにすることが緊
て同種のプロジェクトを実施。
(2)目的 ①集会の場を提供することによって住民間
急のニーズとしてある。魚網は2 年に1 度買
い換える必要があるが、現在の漁業収入では
それもむずかしい。
のコミュニケーションを促進し、円満なコ
ミュニティ形成を促す
②帰還民に対し、経済活動がより円滑に行
■合同現地調査団員のコメント――――――
コミュニティ・センターについて漁民は、
えるようにキャピタルを物資で提供
「コミュニティの生活にとってこのような建
(3)資金:外務省NGO支援無償資金協力
物は不可欠」と言っており、実際に、英語教
2.プロジェクトの背景情報
Kaithadi Navatkuli Southの世帯数=187、総
人口=786名
人々は2000年5月に退去先からこの村に帰
ってきた。
設置網に入った魚を手で取るのがここで見
られる基本的な漁法である。
室が住民自身のイニシアティヴで開始される
など、センターは地域住民に活用されている。
魚網の提供も漁民にとって必須なので喜ば
れている。リヴォルヴィング・ファンドとい
う形で供与しているので、実際にすべての漁
民に等しく恩恵が行き渡るかどうかは今後の
運用によるだろう。
軍の駐屯地に近いため、漁業区域が沖合
1年だけのプロジェクトであるため、コミ
2kmまでと制限されており、漁民の収入は限
ュニティ・センターの運用、漁民の生活支援
られている。軍に陳情した結果、漁業区域が
などに関して継続した関係を維持するのが難
2平米拡大されたが、依然として漁獲は少な
しいかと思われるが、当該プロジェクト終了
い。これが、現在、漁民の抱えている最大の
後も、何らかの形でモニタリングならびに支
困難となっている。漁業で十分な収入を得ら
援を継続することが望まれる。
れないため、近隣で行われる復興事業に日雇
い労働者として従事する漁民も多い。
3.プロジェクト実施上の成功点、困難な点
場所の選定に関しては、ジャフナ県の県次
官と協議して決定している。住民の大半が漁
民という単一カーストで結束力が強く、村内
での意見統一は比較的円滑に行われている。
また、住民は、ローンの実施規則作成などの
各種事務手続きには比較的精通している。
74
■ジャフナ県次官事務所 District Secretariat
日 時:1月24日 10:30
場 所:ジャフナ県次官事務所
〈面談内容〉
①復興開発プロジェクトの概要
紛争によって多くの被害を受けたが、国際
センターの建設開始に至るまでは、たびた
機関、NGO 等とも協力をしながら復興活動
び議論を重ねなければならなかった。合意形
を進めている。とりわけ、多くの避難民が発
生したため、帰還民のための住居建設・修復、
再定住のための生活支援などを進めている。
ハイ・セキュリティ・ゾーン(High Security
Zone:政府高度警戒区域)にある漁業地域が
多いのもジャフナの特徴で、漁業・漁民の支
援も実施している。
②プロジェクト実施上の成功点、困難な点
■UNHCR ジャフナ事務所
日 付:2004年1月23日
場 所:UNHCRジャフナ事務所
面談者:Head of Office
〈面談内容〉
①プロジェクトの内容・成果
復興開発には多くの主体が関わっているた
2002 年の停戦合意締結以降、約30 万人の
め、プロジェクトを行う際には、作業の効率
国内避難民がキリノッチやジャフナ地域に戻
化・円滑化を図らなければならない。そのた
って来た。だが、元の住まいがハイ・セキュ
め、県次官と協議を行うことが必要である。
リティ・ゾーン内に位置していたり、戻って
また、関係行政当局にもきちんと話をしてお
みたら他人が自分の家に住んでいたりして、
かなければならない。地域住民組織とのパー
元の家に帰れない人々も続出した。UNHC
トナーシップの下にプロジェクトを進める場
Rは、主にそういった国内避難民の人々を対
合には、どこがパートナーであるのかを知ら
象に、保健医療や子どものケアなどを行って
せておいてほしい。このような調整を進める
いたが、現在はジャフナ地域内の人々に対し
ため、県次官、国際NGO、国連機関、地域
幅広く支援を行っている。具体的な活動の例
住民組織とで1 ∼2 ヶ月おきの会合を持って
としては、漁民コミュニティを対象にコミュ
いる。
ニティ基金を設立し、漁業で得た利益をコミ
③他のNGO、国際機関との連携に関して
ュニティ全体の福利厚生・漁業発展に利用し
国際機関としては、UNHCR、UNICEF(マ
ていることが挙げられる。現在までのところ、
イクロ・ファイナンスの分野)、UNDPと協
貯金は漁業網の購入などに当てられ、漁業の
力を行っている。NGOとしては、Care Inter-
質の向上に貢献している。その他、小規模プ
nationalおよびGTZ(学校教育の分野)と協力
ロジェクトが複数のコミュニティで進行中で
を行っている。
ある。また、UNHCRは、現地NGOや地域グ
ジャフナ県では、A D B の援助を受けた
ループの調整能力の向上をサポートしてい
NECORD(North East Community Restoration
る。ジャフナの現地NGO/グループは、すで
and Development Project)
(学校修復)、世銀の
にきちんと機能しているものが多いため、多
支援によるNEIAP(North East Irrigated Agri-
少の助言や指導があれば、さらに組織の調整
■
第
4
章
合
同
現
地
調
査
聞
き
取
り
調
査
記
録
■
culture Project)
(農業)、がそれぞれ実施され
ている。
日本からは、最近JICAがChavachache-rri
Hospital(チェバカッチェリ病院)の修復可能
性について調査しているとの知らせを受けて
いる。ジャフナでは医療設備の整備も急務で
ある。
75
能力が向上する。
②他のNGO、国際機関との連携に関して
現在、ジャフナでは複数の国連機関が活動
しており、世銀やADBからの支援も大きい。
また、国際NGO も複数入ってきており、互
いに連携し合っている。また、ここジャフナ
で特に意識すべきことは、現地の人々の提案
を重視するということである。
③プロジェクトの成果
終了を考えており、人道援助と開発の間のギ
今でも問題は多いが、MOU(停戦合意)直
ャップが明白になりつつある。UNDPは、マ
後に比べ大きく進展している。特に、保健・
イクロ・ファイナンスを通じた漁民支援等を
衛生関連のプロジェクトの貢献は大きい。
行っているが、ドナーからの資金が入らなけ
④現時点で今後予想されるニーズ
れば大がかりなプロジェクトを開始できない
ジャフナは切迫した状況を乗り越え、
状況である。
MOU署名以降にかなりのニーズ・アセスメ
ントがなされ、それに従ってプロジェクトが
行われてきたため、キリノッチやムラティブ
地域に比べて、状況は安定している。また、
ジャフナ市民の強い意志を反映して、現在の
ように和平が維持されている。今後は、現在
の和平状況をさらに確固たるものにするため
にも、目に見えるNGO 活動が必要となるだ
ろう。緊急支援のニーズは、キリノッチやム
ラティヴ地域の方がはるかに高いと言うこと
ができる。
■ジャフナ県NGOコンソーシアム
(Council of Non Governmental Organizations, Jaffna District)
日 時:1月23日 15:30
場 所:コンソーシアム事務所
面談者:下記団体の代表
非暴力行動グループ(Non Violent Direction Action Group)
ウートル組織(OOTRU organization)
人民福祉組織(People’
s Welfare Organization)
■ UNDPジャフナ事務所、
コロンボ事務所
サルボダヤ
日 時:1月23日 13:00
スリランカ赤十字社
面談者:Senior Programme Officer(ジャ
女性開発センター(Center for Women and
フナ)
〈面談内容〉
ジャフナでは、ハイ・セキュリティ・ゾー
ンによる海岸線の規制、農地の規制が人々の
経済活動の発展と国内避難民の帰還を阻んで
いる。援助団体はジャフナから撤退する傾向
にあり、事実MSF は既に撤退、GTZ も事業
76
North Ceylon Sarvodaya
Development)
社会開発財団(Social Development Foundation)
ナーサリー・ジェンダー開発研究所
(Institute of Nursery Studies and Gender
Development)
TRO
〈面談内容〉
1.コンソーシアムの構成
1990年に、救援活動に関わるNGOの調整、
援助機関への情報の提供を目的として結成さ
れ、現在の加盟は上記団体を含む 14 団体。
他にCare International、Save the Children UK、
FORUT、MSF、ACFがオブザーバーとなっ
ている。
2.コンソーシアムの意見
停戦合意(MOU)が締結されてからは、(安
心して)よく眠れるようになった。ジャフナ
は1996年から政府軍の支配下に入り、復興・
開発が始まって多額の支援(60 億ルピー)が
ジャフナに投入されたが、大きな変化をもた
■
らしてはいない。ジャフナの住民を①財界、
②中産階級、③低所得層と分けた場合、特に
低所得層の生活の改善はもたらされていな
い。
資金は、①政府、②国連諸機関、③国際
NGO を通して入ってくる。政府は住民の生
活改善に結びつくようなことはあまりできて
い な い 。 国 連 機 関( U N H C R 、 U N D P 、
(3)北部サルボダヤ
島嶼部の飲み水供給、母子家庭支援、教育
プログラムなどを実施している。
(4)社会開発財団
(Social Development Foundation)
1988年創立。ジャフナの8地区で農民支援
UNICEF)も、障害が多く、目標を達成でき
を行ってきた。
ていない。国際NGO は実施地域では従属を
(5)人民福祉組織
生み、住民の自立を支援できていない。世界
1986 年に設立された。当時は住民の大半
戦争中もずっと活動を続けてきた地元の
がキリノッチ等へ強制移住させられていた。
NGO が、現在の復興支援活動では無視され
そうした強制移住の経験者に資金援助を行っ
ていることへの強い不満がある。
てきた。今は裁縫などの技術支援や、「子ど
3.主な傘下団体の活動
もたちに希望を」というプログラムを実施し
マイクロ・ファイナンス事業を行ってい
ている。
(6)サルボダヤ・シラマダナ・サンガマヤ
る。ジャフナには、1 日1 ドル以下で暮らす
(Sarvodaya Shramadana Sangamaya)
母子家庭が7000 世帯あり、その生活支援を
オランダから資金援助を受けて看護学校を
実施している。
(2)TRO
多くのNGO が入ってきて活動領域が重な
り合って、実質的な目標を達成できていない。
■
(People’
s Welfare Organization)
銀行は、1998年にチームによる評価を行った。
(1)ウートル組織(Ootru Organization)
第
4
章
合
同
現
地
調
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き
取
り
調
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記
録
運営している。ユニセフ、日本からの援助で、
母子家庭の支援も行っている。
(7)スリランカ赤十字 ジャフナの16 地区で医療活動を実施して
77
いる。
■ジャフナ女性開発センター
日 付:1月24日
面談者:理事長
■GTZジャフナ事務所
(The Deutsche Gesellschaft Technische
Zusammenarbeit)
日 時:2004年1月24日
場 所:GTZジャフナ事務所
面談者:事務所員
〈面談内容〉
1995 年に住民の大半がジャフナからキリ
ノッチに強制移住させられた。1997年4月に
はジャフナに戻ってきたが、住民のいない間
に町の大半は破壊されており、地雷もあり、
生活を再開することができなかった。破壊さ
れていない家や寺院も軍隊に占拠されてお
り、軍隊と同居しなければならない生活の中
で、多くが再びコロンボなどに出稼ぎに行っ
た。貧しい者たちだけがジャフナに残った。
少年や少女たちが戻ってきても逮捕された。
600人が今も行方不明のまま。寡婦となった
女性は2万4,000人もおり、多数の孤児が発生
した。インフォーマル・セクターの経済は完
全に崩壊し、地雷のために農業ができないと
ころも多く、特に女性には雇用がない。漁民
もハイ・セキュリティ・ゾーンのため、漁場
に入れない。そのため建設労働者にならざる
をえない人たちが大勢出ている。軍による女
性に対するハラスメントも多い。
センターは母子家庭の母親や、戦争被害者
の女性たちのカウンセリングや、技術教育な
どを行っている。今は事務所を借りている状
態なので、自前のセンターが欲しい。
78
〈面談内容〉
1.GTZ復興開発プロジェクトの概要
(1)ジャフナ地域の水利システム再構築
(1997年∼)
―市内の複数ポイントでの上水道設置、地
方への水供給、井戸の設置
(2)学校建設
―GTZが資金的・技術的に支援をし、建設
そのものや建設後の維持は、地域の人々が
主導となって行う。
(3)ジャフナ県内の15地域で、約1,000件の
家屋を再建
(4)地域の人々のエンパワメント、各コミュ
ニティで収入向上プロジェクトを実施
(5)職業訓練プロジェクト
(6)コミュニティ復興開発プログラム(2002
年∼)
(7)現地 NGOが実施するプログラムへの支
援
2.これまでは、実際にGTZがプロジェクト
実施の役割も担っていたが、2004 年からは
以下のような形式でジャフナの復興開発支援
に関わることになっている。
1)ファンド型支援をしつつ、スリランカ
組み込んだが、北東部の学校にはコンピュー
政府と協力しながらプロジェクト支援を行
タもない状態である。
う。
4.学校の一部はまだハイ・セキュリティ・
2)ジャフナ県で行われたプロジェクトの
ゾーンのなかにあって、再開の目途がたって
調査をし、その成果や問題点を明確にする。
いない。教員の数も南部に比例して少ない。
3.他のNGO、国際機関との連携に関して
5.モデムをジャフナに持ち込むことも検問
GTZは、広く様々な団体と連携をしている。
で禁止されるなど、日常生活は依然として軍
ジャフナの現地NGO とも連携をとってい
による統制の下にある。
るが、関係性に問題がある。政府や国際
NGO、国連機関によるプロジェクトに関し
て、ジャフナのNGO コンソーシアムはプロ
ジェクト実施前には特にコメントをしない
が、実施後に強烈な批判をすることがある。
その中には一方的な批判も多く、対話や問
■北部漁民協同組合連合
日 時:1月25日 16:00
面談者:事務局長と漁協の組合長数名
〈面談内容〉
1.事務局長の話
題の解決に発展していかないため、NGO コ
この北部漁民協同組合連合は、1959 年に
ンソーシアムと良好な関係を維持するのが容
最初に結成された。結成当時は、なまこやバ
易ではない。
イ貝を輸出することが主な役割だった。なま
こは香港に、バイ貝はバングラデシュに輸出
していた。スリランカ全土の水産物の35%を
■ジャフナ人権団体
日 時:1月23日 13:00
面談者:
Center for Peace & Humanの司祭
People’
s Council for Peace & Good Will
(教員組合のメンバー、教師)
Tamil Speaking People Forum
Consortium of Humanitarian Agencies(ジ
ャフナ)
この地域の漁協が提供していた。
内戦で15万人の漁民が持ち物も、漁具も、
船も全てを失った。これは、戦闘が海岸地帯
で起こり、爆撃や砲弾が打ち込まれたからで
ある。停戦協定が結ばれてから、5万人の退
■
第
4
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録
■
去させられていた漁民が Jaffna に戻ってき
た。しかし、漁具も船もなく何もできなかっ
た。漁民は、漁業以外には収入を得る手段が
少ない。建設現場で働いてもよくて1 日300
〈面談内容〉
1.北東部への支援を行うのであれば、支援
が北東部に直接来るようにしてほしい。下水
道整備、漁民の生活支援など、ジャフナでは
ニーズが山積している。
2.病院も医師や設備が限られていて、重病
患者は他の地域に送らなければならない状態
である。
3.前政権は学校教育にコンピュータ教育を
79
ルピーの日当しかもらえない。船で魚を採っ
ていれば、500ルピーくらいにはなる。
NGO が魚獲り用の網を提供したり、ヤマ
ハも船舶用のエンジンを寄付してくれたりし
た。75 台のエンジンを20 ヶ月のローンで漁
民に供与する。80%がローンで、20%は自己
資金。ファイバー・グラスの船もUNDPから
提供を受けて、ローンで運用している。
北東部におよそ70 の漁村があり、それぞ
れに漁協(Fishermen’
s Cooperative Society)が
あり、そのいくつかが集まって連合(union)
いので、壊れかかった家やシュロの葉で屋根
を形成し、7つのunionが北東部でひとつの
を葺いた家に数家族が同居せざるをえない状
連合会(Federation)を形成しようとしている。
態である。住宅を含む具体的な生活の再建が
2.漁協メンバーたちの声
まだなされていない。
ハイ・セキュリティー・ゾーンの設定のた
漁具や漁船の支援は部分的にあったが、全
めに漁場が非常に制限されている。漁民には
体には行き渡っていないし、漁業で食べてい
パスが発行されて入ることが認められている
けるようになっていない。インドのトロール
浜から船を出して漁に出かけて、大漁になっ
船がインドの巡洋艦に守られて、つい目と鼻
ても通行が許可されている時間までに帰らな
の先で漁をしていくのを手をこまねいて見て
ければならないので、漁獲も少ない。
いるしかない。
住宅が破壊されてしまって再建されていな
トリンコマレー Trincomalee
■北東部州政府知事
日 時:1月26日 11:00
場 所:北東部州政府庁舎
応対者:北東部州政府知事
〈面談内容〉
日本のNGO からの支援はありがたいこと
であり、歓迎したい。
現在、政府機関、国際 NGO、現地NGO、
国連機関など、多くの機関がトリンコマレー
で活動を行っており、調整には気をつける必
要がある。日本のNGO にもその点には気を
つけてもらいたい。州政府としては持続可能
80
な透明性のある統合的なシステムを作るよう
努力している。県調整委員会(District Coordinating Committee)を通じて適切な調整を図っ
てほしい。例えば、これまで関係省庁が知ら
ないにもかかわらず、地域事務所(Z o n a l
Office)が活動を進めるようなこともあった。
Provincial MinistersやOfficersにも活動につい
ては適切に知らせて欲しい。そうすれば、資
源の適切な配分を行うことができるはずであ
る。
民族和解の試みも重要で、バスで子どもを
ジャフナに連れて行くなどの交流なども重
要。
ルピー(約5,000万円)の事業を展開。12の灌
漑施設、30 の地方道路、その他の施設の建
■トリンコマレー県次官事務所 設を行った。
Trincomalee District Secretariat
NECORDは、昨年は5,000万規模の事業予
日 時: 1月26日
算があり、教育、保健等の事業を行った。
場 所:トリンコマレーKachcheri
North East Emergency Reconstruction Pro-
面談者:県次官(District Secretary)
gramme (NEERP)は、各種一般建設事業で
Deputy Director Planning
6,400万ルピー、下水道関係で1億2,800万ル
Project Director
ピー、保健医療関係で200万ルピー、人材育
〈面談内容〉
成事業で1,500万ルピーの事業を展開した。
1.現在の復興・開発事業の現状について
東部ムスリム開発省下の緊急プロジェクト
地域選出の4 人の国会議員が、1 人あたり
500万ルピー、計2,000万ルピーを一般の開発
予算として配分されている。他にナショナ
でも2,300万ルピーの予算配分があった。
JBICは実際の事業がまだ始まっていない。
4.地域における事業の優先順位について
ル・リスト議員(一種の比例代表)に配分さ
①再定住と再定住者の収入向上
れた予算が昨年は8あり、これらが県の主な
②教育、保健医療
開発資金になっている。昨年度は、ほぼ
③地域道路等、最低限のインフラ
100%の消化率であり、開発事業が滞りなく
④小規模灌漑
進んでいる。
⑤電気等
2.本年度の耕作面積は、3万2,000ヘクター
⑥漁業は多少投入が必要
ルがターゲットであったが、これまでに2万
7,000ヘクタールが耕作されている。他県と
寡婦(寡夫)の多さに特徴がある。統計に
よると1 万800 人のシングル・ペアレントが
農業活動が加速されている。今後、JBI
いる。彼らへの支援が特に必要とされている。
のPEACE(農村経済開発復興事業)により、
また、1,820の両親がいない家庭のケースが
さらに市民の農業活動が復活するだろう。
ある。これらについては、特に収入確保の手
3.ADBのNECORD、世銀のNEIAP、NEERP
段確立が求められる。
等、主な援助機関による支援については、全
6.国内避難民・帰還民の状況
般的に順調に進んでいる。
NEIAPは、本県において2003年に5,000万
■
5.地域の特徴
比べてラッキーな回復状況にあるといえる。
C
■
第
4
章
合
同
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地
調
査
聞
き
取
り
調
査
記
録
99年までに5万7,563世帯が避難したという
現状がある。現在までのところ、5万1,094世
81
帯が帰還。現在も県内の12 の支援センター
に2,000世帯がいる。6,632世帯がまだ他の地
域のキャンプにいる。
UAS(帰還支援の一時金で一律2万5,000ル
ピー)は1,275世帯が受けているに過ぎず、帰
還、再定住に際しての最大の問題は、故郷に
帰還した人の家に別の人が既に住み着いてい
る場合の調停である。
地雷、不発弾も全体に散らばった形で存在
■SLMM(スリランカ停戦監視団 Sri Lanka Monitoring Mission)
トリンコマレー
日 時:1月26日 10:00
面談者:Head of District
〈面談内容〉
1.治安情報について
日本のNGO がトリンコマレーで活動する
し、埋設地域についてはほぼ分かっているこ
際の治安情報の提供について意見を求めた。
とから、除去作業が期待されている。デンマ
先方の返答は、SLMMは治安情報を収集して
ーク地雷除去グループ(DDG)、へーロー・
いるが、それを外部に対して公表することは
トラスト(HELO TRUST)、政府軍による除
できないというものであった。これは、
去作業が続いているが、進捗は遅々としてい
SLMMの任務は政府とLTTE間の停戦監視に
る。
あり、NGO 等への便宜供与は業務の対象外
7.事業実施における県のニーズ・アセスメ
であること、そして中立性を保つこと、とい
ント・パネル等、開発委員会の動き
う2つの理由からであった。
様々な思惑から、色々な委員会が存在する
2.NGO 等が治安情報を求める際は、UNH
が、出席者が殆ど同じであることから、合理
CRと連絡を取るのが最も賢明であるとのア
化が必要だと認識している。出来るだけ早く
ドバイスをもらった。
整理が必要である。
3.トリンコマレーの情勢について
復興事業については、優先順位をつけるこ
トリンコマレー周辺は、政府支配地域と
とが重要で、効率的な資金の使い方を目的に、
LTTE 支配地域が縞模様に入り組んでいる。
県復興委員会会議(DRC)を毎月招集、県次
SLMMの基本的な役割は、あくまで停戦の監
官が議長となって、来月から運営が始まるこ
視であるが、地域住民の衝突は度々発生して
とになっており、より良いコーディネーショ
おり、早期警報を基本として調停のために介
ンを期待している。現状では、主に県調整委
入することもある。
員会(District Coordination Committee)におい
て復興・開発事業の調整がなされている。関
係政府機関、NGOコンソーシアム、国会議員
等が構成員で、事業採択に当たって本委員会
の承認が必要とされている。NGOコンソーシ
アムとは彼らの隔週の会合の他、政府主導の
県レビュー委員会(District Review Board)で
先方を巻き込んで調整を図っている。ここで
はNGOコンソーシアムにおけるLTTEの影響
力はそれほど強くない。
■UNHCRトリンコマレー事務所
日 時:1月27日 9:00
場 所:UNHCRトリンコマレー事務所
面談者:Field Officer
〈会談内容〉
1.復興開発プロジェクトの概要
2003 年まで難民支援に関するほとんど全
ての分野をカバーしてきたが、2004 年以降
は、UNHCRの伝統的任務であるプロテクシ
82
ョン(庇護)に焦点を定めている。とりわけ、
のは歓迎すべきことである。今後、IMADR
国内避難民(IDP)、帰還民を対象としている。
はトリンコマレーでインフラの整備とともに
トイレや井戸のメンテナンス等は、政府機関
民族和解を目指すプロジェクトを進めていく
に引き継がれている。
予定であるので(第3 章 IMADR 活動概要参
難民庇護に関しての、政府、軍、治安維持
照)、UNHCR とも緊密な連携を取っていき
機関、地域住民、NGO などへの訓練を行っ
たい。スリランカの他地域においてもこうい
ている。
った活動は重要であり、国連機関とも連携し
1 1 地区のシンハラ、タミル、ムスリム、
全てのコミュニティを対象としている。
有効性に応じて収入増加プログラムも行っ
て平和構築を促していくことは、日本の
NGO活動の新たな可能性の1つであると思わ
れる。
ている。
2.他のNGO、国際機関との連携
Save The Children(ここを通じて間接的な
キャパシティ・ビルディングを行っている)、
セワランカなどがUNHCRのインプリメンテ
ィング・パートナーとして、共に活動してき
た。
2004 年に関しては、すでにパートナー団
体を決定している。
・PCA(Peace & Community Action):国内パ
ートナー。平和構築の分野で活動。
・ ZOA:オランダのNGO。女性避難民のケ
アを主に行う。
3.合同現地調査団員のコメント
訪問団とトリンコマレーNGO コンソーシ
アムとの会合に参加していた、UNHCRトリ
ンコマレー事務所長が反差別国際運動
(IMADR)の活動に関心を示していたことか
ら、IMADR側から翌日個別訪問を行うこと
となった。トリンコマレーにおける複雑な民
■「東部団結女性団体」
(E a s t e r n U n i t e d
Women’
s Organization)
日 時: 1月26日 17:00
場 所:トリンコマレー県カンタレ村
(Kantalai)
面談者:東部団結女性団体(Eastern United
women’
s Organization)より5∼6名
〈面談内容〉
1.訪問先団体紹介
1986 年に起きたカンタレ貯水池ダムの決
壊による被害に対する政府の復興計画が「不
平等」であったことを受け、地元の女性たち
■
第
4
章
合
同
現
地
調
査
聞
き
取
り
調
査
記
録
■
が立ち上がったことがきっかけ。1994年2月5
日にEastern United Women’
s Organizationが設
立された。現在、会員は600名。
カンタレ村は紛争の被害の大きいトリンコ
マレー県の県境に位置し、その影響で当団体
族構成からか、UNHCRとしてはIMADRが行
っているような民族和解や人権・平和プログ
ラムに関心を持っているようで、すでにイン
プリメンティング・パートナーとなっている
団体ともそういったプログラムを進めてい
る。民族紛争における避難民や帰還民等の保
護には民族和解の視点が欠かせないため、そ
ういったプログラムをUNHCRが進めている
83
の活動ニーズも拡大していった。村自体には
1953 年頃政府が推進したシンハラ人の田園
居住地区に囲まれている。
周辺18 村の村の女性協会と共に活動を村
レベルで行っており、タミル人とシンハラ人
が共生する村や、ムスリムの人々も居住する
村も含まれている。
カンタレは、3つのコミュニティが紛争中
も共生していた点で興味深い。この地区では、
にしている。
資金源:各メンバーから少額の寄付を元に
した回転貸付金(revolving fund)、CARE、
USAID、AUSAID 等からの資金。
2.活動における困難
避難民の再定住を促す上で必要な基本設備
やインフラが不足している。
避難民が帰還しても以前自分たちが住んで
いた家がなくなっている。
過去 20 年間の戦争で避難民となった者が
互いに他の民族を批判しがちである。
8,000人にも及ぶ。
故郷に帰還した各家族には政府から 2 万
東部団結女性団体は、戦争で夫をなくした
5,000ルピーが支給されるものの、カウンセ
女性たちに支援している。職不足等のため、
リングや教育等の支援はなされていない。
寡婦の多くは収入を十分に得ることができな
3.他のNGO、国際機関との連携
い。
主に、小規模ローンや貯蓄プログラムを通
した経済発展プログラム、職業訓練、言語教
室(スリランカでは、例えば、民族学校では
帰属民族の言葉しか教えないため、他の民族
言語を教えることにより、異なる民族間のコ
ミュニケーションを促進し、それにより紛争
トリンコマレーのNGO コンソーシアムの
メンバーとなっている。
4.当面のニーズ
センターの建物を完成させる必要がある
(現在は、窓ガラスが入っていない)。
電気(1万2,000Rs)や電話(2万2,000Rs)を
引きたい。
解決を目指す)、交換プログラム(タミルの
新年の祝日にシンハラの青年をタミル人の家
庭にホームステイさせ、タミルの人々の新年
祝いを楽しんでもらうことによって異文化の
理解を促進)、開発プログラム(飲料水供給、
トイレ建設)などがある。
平和教育では、これまでの戦争が我々全て
の者の責任であり、他の民族に責任を押し付
けてはならないよう教育している。
特に興味深いプログラムとして職業訓練と
日 時: 1月26日
場 所:トリンコマレー市内のコンソー
シアム事務所 〈面談内容〉
1.調査団から参加者へ訪問目的の説明を行
うと同時に、スリランカにおける各団体の事
文化交流、異文化理解を取り入れたものがあ
業内容・計画等を紹介した。
る。このプログラムでは、例えば、シンハラ
2.事業の優先順位、地域における特殊事情
人の女性が結婚する時に、シンハラの女性が
などについて、参加していた国連機関や
タミルやムスリムの女性たちにシンハラの伝
NGO等から以下の内容が話された。
統に沿った新婦の部屋の飾り付けを教え、こ
れにより異文化を理解してもらうと同時に、
装飾を売ることによって収入を得られるよう
84
■トリンコマレー県 NGOコンソーシアム
平和教育・人権の分野における活動がさら
に求められている。
トリンコマレーでは、女性の組合がうまく
機能しているため、こうした団体への支援は
有効である。
トリンコマレーでは、3民族が混住してい
るため摩擦があるが、昔から共に暮らしてき
た経験があり、一部ではすでに融和が進んで
いる。そうした融和へ向けた動きを促してい
く努力が求められる。
トリンコマレーでも漁民への支援は重要だ
が、インフラの整備がそうした支援の中心と
なるだろう。
地雷除去の重要性については繰り返し強調
したい。
NGO コンソーシアムの隔週の会議はコー
■漁業組合連合
(Trincomalee Tamil Development Union)
日 時:1月26日
場 所:トリンコマレー市内の海岸部に
ある集落
面談者:Trincomalee Tamil Development
Unionの約30名の組合員
1.背景
1 0 の漁協が連合(U n i o n )構成員で、計
2,200人が加入している。
NGO コンソーシアムの紹介で、同組合を
訪問。一部関係者と話し合いを行い、漁具の
ディネーションのための会議でもあり、事業
配置状況、生活環境などを視察した。
に必要な機材の貸し借り等も行われている。
2.先方から挙げられた生活上の問題点等
政府軍基地の存在や、軍の指令などにより、
船の停泊が本来の場所でできず、漁民は困難
を抱えている。
漁獲物の貯蔵がままならず、買いたたかれ
ている現状がある。貯蔵庫の必要性が高い。
市場開拓、輸送手段の確保、漁法の改善が
必要である。
灯台の建設を企画したが、政府機関から許
可されなかった。
■
第
4
章
合
同
現
地
調
査
聞
き
取
り
調
査
記
録
■
上記のような問題を解決するために、援助
機関から直接的な基金を受け取りたい。
日本のNGO に船舶機械の修理技術指導を
行ってほしい。現在、修理の行えるドックは
市内に1箇所あるのみ。
85
ヌワラエリヤ Nuwala Eliya
■CARE Sri Lanka
日 時:1月27日及び28日
場 所: CARE Sri Lanka Nuwala Eliya
Office
ヌワラエリヤ県Godenエステート
ヌワラエリヤ県Radellaエステート
面談者:「TEA」プロジェクト・マネージャー
The Manager of Radella Estate
Project Officer of TEA Project
他
〈面談内容〉
1.事業概要
JICAの開発パートナー事業(ケア・ジャパ
ンが受託し、ケア・スリランカを通じて実施)
による、紅茶エステート住民を対象とした生
活改善事業。実施期間は2003年から3年間。
ヌワラエリヤ県、バドゥッラ県にある 15
エステート内の3,500戸が事業の対象である。
エステート住民は、次のような問題を抱え
ている。
①IDや出生証明書等の基本的な社会的ド
この事業では、以下のような活動を通して、
エステート住民への社会保障が改善されるこ
とを目的としている。
①プロジェクト・スタッフのための組織強
化
②エステートにおける住民、労働者とマネ
ージメント・スタッフとのコミュニケー
ションの改善
③基本的な社会情報へのアクセス改善
④各種社会サービスへのアクセス改善
2.視察内容
キュメントへのアクセスが限られている
エステートでの啓蒙活動の一部である、住
②ある程度の収入があるものの家計管理が
民による民族舞踊や寸劇を通した意識改善活
適切でないという傾向がある
③アルコール依存症が多い
86
④植え付けられた依存心が強くある
動を視察。
マネージメント・スタッフの居住環境、紅
茶工場も訪問した。
加えて、エステート労働者の居住環境であ
る、ラインと呼ばれる長屋形式の住居や労働
者のための託児所も視察した。
長期的には、エステートに対するスリラン
カ社会全体の対応が変化することが要求され
ている。
インド・タミルの問題の背景からも、プラ
また、CARE事務所でCAREインターナシ
ンテーション居住タミル人が留まり続けると
ョナル組織、TEAプロジェクトの概要説明を
いう前提を肯定しない事業のあり方が必要と
受けた。
考えている。
3.事業実施上の問題点の聞き取り
北・東部復興・開発支援とは問題の質もレ
プランテーションという特殊な事情を持つ
ベルも違うが、プランテーションはより複雑
対象地域であることから、プランテーション
で根の深い課題を抱えている。解決までには
会社との関係構築に困難が多い。
前者より時間もエネルギーも必要であり、日
プランテーションと労働者の置かれている
政治的な背景から、労働者に与えられるべき、
本のNGO も含め、関係者にはこの問題に対
する関心を失わないでもらいたい。
基本的なサービスが閉ざされている。
■
なお上記以外に、在スリランカ日本国大使館
にて、スリランカの状況に関するブリーフィン
グを受けると共に、フィールド調査終了後の1
月29 日にはNGO 調査団からの報告を大使館で
行った。また1月30日には、JBICコロンボ事務
所で開催された「復興開発に関わる在スリラン
第
4
章
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記
録
■
カ日本人関係者の会」に参加、有意義な意見交
換をさせて頂いた。
その他、以下の団体も訪問したが、充分な時
間が取れなかった等の理由から、上記報告には
記載しなかった。
サルボダヤ(コロンボ)
アジア開発銀行(コロンボ)
Ministry of Policy Development and Implementation(コロンボ)
IMADRアジア委員会事務所(コロンボ)
87
88
第 5 章 「国別NGO研究会
(スリランカ)
」の
結論及び提言
89
Ⅰ 復興・開発支援の現状及びニーズ
1. スリランカ政府、ADB・WB等、
国連機関、2国間援助等の援助概要
2003年9月現在のスリランカ復興開発の現状
【トランジション(「緊急人道援助」から「開発」への移行期)の後期へ】
スリランカ北東部復興開発支援援助額概要
停戦合意後、2003年10月まで(単位:100万米ドル)
援助機関(国)
進行中
確定計画
供与確定合計
支出済額
アジア開発銀行
86.8
28.1
114.9
52.0
世界銀行
91.0
116.0
207.0
20.0
日 本
31.5
31.5
31.5
2002年に12年ぶりに開通した北部ジャ
フナへの国道9号では、連日多くの長距離
国道9号線の主要部分の修復は5割方完
トラックやバスが検問を通過し、北東部の
了しており、238キロにわたる地方道路の
経済が開放され、活発化していることを示
修復もすでに予定されている。また、アジ
している。
ア開発銀行の新たなプロジェクト開始でさ
すでに国内避難民の4割に当たる31万人
らに事業対象道路が拡張される。ほかにも、
が帰還、再定住の動きを見せているが、2
108箇所の灌漑施設と156箇所の井戸が支
万5,000ルピーの帰還一時金を受け取った
援事業の対象となっている。
再定住家族は3万2,734戸に過ぎない。
国際社会は2003年6月の「スリランカ復
住民帰還の結果もあり、地雷が多く埋設
興開発に関する東京会議」で今後4年間に
されている北部でも耕作面積が35%増大、
渡り、スリランカ全土に対し総額 45 億米
2002年の暮れから2003年にかけての収穫
ドルを超える復興開発支援を実施すること
期には、収穫量は前年の8倍に増え、漁獲
を表明し、南部の貧困地域にも各援助機関
量も2002年は、2000年と比べて倍増した。
は相当額の援助を計画している。
これまでに55の学校と25の病院施設が
北東部では、上述のもの以外にも数多く
北東部で再建され、2004年には、93の学
のプロジェクトが実施されているが、主要
校と90の保健医療施設、175の公的事務所
援助国機関の北東部復興・支援供与額は、
が再建、修復される予定である。北東部で
2003年9月末時点で、6億4,900万米ドルで
は、紛争被害を受け、何らかの弱い立場に
ある。
ある子供らは 5 万人いるとされているが、
2 万人の中途退学者が通学を再開してい
90
る。
2.ニーズの変化
60万人∼90万人と言われる国内避難民の
な状態の中でもできることは何か、いまま
での待ちの体制からは視点の異なる対応が
求められる。
うちすでに31万人が帰還を果たした。これ
また、海岸線の様々な規制により、漁業
らの人々の再定住は着実に進んでおり、地域
活動が制限される中でも、漁民組合等、地
の経済活動も徐々に活発化しているが、国際
域住民の経済活動の基盤ともなる組織強化
機関や2国間援助機関による援助では全体と
支援が必要とされる。
してインフラ整備に支援が集中する傾向にあ
一部のドナーの間ではジャフナの治安状
り、庶民の実際の生活支援を通じた地域経済
況に関する判断が厳しく、メジャーなプロ
の底上げ、社会サービスの充実にはほど遠い
ジェクトの実施が進んでいない。特に日本
現状にある。
人による活動は少ない。
また、一部では帰還民も含めた地域での生
早期の地雷除去作業が待たれている。
活レベルでの小競り合いや不和が見られる
キリノッチ……市内は主要道路の整備など
が、これは武装集団同士の対立とは基本的に
中心街でのインフラ整備が進んでいるが、
異なり、草の根レベルでの民族和解に向けた
農村部での復興は十分に進んでおらず、地
取り組みや、不和の芽を摘みとる努力が必要
域内での格差も拡大しつつある。紛争の物
とされている。
的被害が大きく、地方のアクセス道路など
2004年1月の合同現地調査では、時間的な
の早期修復が求められる。
制約があったものの、以下のように、地域ご
ワウニア……中心では商業活動も活発にな
とにレベルや内容の異なるニーズが存在して
りつつあるが、県北部のLTTE支配地域で
いることを把握することができた。
の地雷除去と避難民再定住の促進が求めら
いずれにせよ、トランジション【「緊急人
れる。
道援助」から「開発」への移行期】の後期段
マナー……ムスリム住民は依然としてプッ
階において、間断や空白地帯のないスムース
タラムの避難キャンプにおり、帰還の目途
な移行が行われるよう、きめ細かな支援の実
が立っていない。LTTEとの交渉促進の側
施が求められている。
面支援や、ムスリムの帰還後を見通した、
・・・・地域ごとのニーズの特徴・・・・
生活レベルのニーズに視点を据えると、地
■
中規模の再定住支援計画が必要である。
【東部】
この地域では異なる民族が入り組んで居
域ごとに種類の異なる支援が必要とされてい
住しており、スリランカの他地域に比べ、
る。
民族間の対立も顕著であることから、復
【北部】
■
第
5
章
﹁
国
別
N
G
O
研
究
会
︵
ス
リ
ラ
ン
カ
︶
﹂
の
結
論
及
び
提
言
興・開発においては資源の平等な配分や、
ジャフナ…… HSZ(政府軍高度警戒区域)
民族和解の視点がとりわけ重要となってい
が避難民の帰還を阻んでいる問題は、短期
る。そのような複雑な背景のためか、復
に解決される問題ではなく、元住民の避難
興・開発の遅れが懸念されている。また、
キャンプ等での生活はさらに長引く可能性
行政、政治勢力構造も複雑であることから
がある。漁民らの一部は海岸沿いに仮住ま
事業実施に当たっては、事前の十分な現地
いを設置して漁業を営んでいる。このよう
調査が必要である。
91
これらのニーズに対してNGOがどれだけ
た南部、中部でのプランテーション労働者の
応えていくことができるかは、実施能力、資
生活改善のニーズもあり、南部の住民の間で
金の面から不確実と言わざるを得ないが、特
は、北東部だけに支援が集中し南部の現状が
に草の根のニーズの「存在」を訴えつつ、具
忘れ去られてしまっているという被害者意識
体的な事業の計画・立案を通じて徐々に支援
も生まれている。これらの問題への対応を誤
の基盤を作っていく努力が求められていると
ると、支援が負のインパクトを生みかねない
言えよう。
ことから、各援助機関は慎重な対応を行って
また、「平和構築支援」はスリランカでの
NGO活動における柱であるが、それを日々
の活動の中でどのように実践していくか、そ
の手腕が問われている。
いるように見える。こうした配慮は、NGO
においても踏襲されるべきであろう。
また、90年代前半にLTTEの強制によって
北部から追われ、主にプッタラム周辺の避難
キャンプで生活するムスリムや、東部の一部
3. 移行期に取り残されるニーズ
コミュニティでは多数派となり得るムスリム
UNHCRは、世界的な資金難、スリランカ
への生活支援を中心とする取り組みは依然と
北東部での緊急フェーズは去ったとの判断か
して不十分な状態である。ムスリムは、全体
ら、すでに北東部での支援事業を縮小しつつ
的に見て復興開発事業の裨益対象から外れる
あり、2004年はプロテクション(避難民や帰
傾向にあり、場合によっては南部の住民以上
還民、弱者等の庇護)事業に焦点を絞って事
に配慮が必要である。
業を行っていくことを決定している。これは
UNHCRの基本任務から見て妥当な面もある
が、現在のところUNHCRの事業を引き継ぎ、
5. 平和構築事業の重要性
平和構築事業は、スリランカで活動する日
コミュニティの再生に向けて支援を行ってい
本のNGO団体にとって重要な事業であると
こうとする機関は少なく、援助ステージの変
同時に、大きな挑戦でもある。
わり目における支援の空白がすでに明らかに
なりつつある。
過去のスリランカへの2国間経済協力のあ
り方を顧みたとき、紛争との関わりがどの程
復興・開発はまずコミュニティの基盤作り
度考慮されていたか、紛争解決へ向けてもっ
に主眼が置かれるべきであるが、上記のよう
とできることはなかったか、強く反省する必
に人道緊急援助と復興・開発の移行ステージ
要がある。
で支援の間隙が生じているのは、平和構築支
昨年6月に行われた「スリランカ復興開発
援のあり方として極めて危険な状態であり、
に関する東京会議」で日本政府は今後3年間
今後のコミュニティの発展にも影響が大き
で最大10億ドルの支援を表明したが、これ
い。
はスリランカ政府の1∼2年間の軍事費支出
に等しい。このことからも、これからの経済
4. 南部、ムスリムへの支援
現在の復興・開発ニーズの状況から見て、
北東部に援助が偏る傾向は避けがたい。しか
し、国の南部州地域では生産性の低さや人口
過密に起因する慢性的な貧困状態があり、ま
92
協力において、いかに平和構築が重要視され
るべきかがわかる。
Ⅱ 日本政府、日本のNGOの支援活動の状況
れば、1990年代、スリランカの対外債務残
1. 日本政府の援助
2004年1月の合同現地調査でも現地政府職
高は減少し、債務返済比率はやや低下したも
のの15%前後と高い水準にあった。しかし、
員等からたびたび言及があったように、国際
復興・開発計画を契機に、相当額の対外債務
協力銀行(JBIC)を通じた「PEACE(農村経
を抱え込む流れが続いており、スリランカの
済開発復興計画)」等、日本の政府開発援助
国民の負担がこれまで以上に増えることに対
では実際に大きな成果が期待されている事業
する配慮があって然るべきである。日本は、
が行われているが、全般的に実施が遅れてお
今後、さらに無償資金の比率を増やす等の対
り、前述のニーズに迅速に追いついていない
応を行う必要があると思われる。
という実感がある。
これには、「和平プロセスの進展と援助の
実施は密接に関連している」という多くの援
2. 日本のNGOの活動
スリランカにおける日本のNGOの活動は、
助国側の方針が影響していると思われるが、
一部を除いて小規模な支援に止まっている。
現段階では、和平プロセスが急に大きく前進
これをどのようにしてより継続的で、効果的
する見込みは少なく、現実に残されている大
なものにしていくかが今問われている。
きなニーズと、和平プロセスの流れを照らし
スリランカ人の親日感情、欧米人に対する
合わせ、この援助方針が和平を推進する力と
複雑な感情のあり方、一部に見られる米国へ
なりうるかどうかを検証すべき時に来てい
の敵視感情等から考えて、民族融和事業や、
る。
紛争地での復興活動において日本人であるこ
2003年6月の東京会議の結果はスリランカ
とのアドバンテージは大きい。日本のNGO
国民に広く知られているが、北東部の住民レ
はそうした活動を積極的に実施していくべき
ベルでは、日本政府の援助がほとんど知られ
である。
ていないという現場での感触がある。日本か
また、日本のNGOは草の根での活動を通
らの援助を直接受けた経験が少ないために、
じて、住民の様々な具体的ニーズを明確に認
日本の援助が日々の生活にどのように影響を
識している。今後は、NGOが現場で得た情
及ぼしているか、日本の援助がどこで、どの
報が日本政府の援助機関にもフィードバック
ようにして使われているかという情報も乏し
され、援助計画策定等に活かされるような仕
く、北東部住民はフラストレーションを増大
組みも必要である。
させているように見受けられる。
■
スリランカで活動する日本の NGO は、
このような状況が生じている理由として
徐々にではあるが、現場での事業実施の知見
は、タイミング良く援助事業が実施されてい
を蓄積し、多様な関係者とのネットワークを
ないこと、北東部の現場で政府開発援助業務
作り上げつつある。このことからも、これま
に従事する日本人がまだ少ないことに加え
での開発援助によって出されてきた「アウト
て、効果的な広報が実施されていないことな
プット(成果)」をより良い「アウトカム(結
どが考えられる。
果)」へと繋げる役割を日本のNGOが担える
また、スリランカの公的債務問題に言及す
■
第
5
章
﹁
国
別
N
G
O
研
究
会
︵
ス
リ
ラ
ン
カ
︶
﹂
の
結
論
及
び
提
言
時期に来ていると言うことができる。
93
Ⅲ NGO活動実施上の問題点、課題
が可能である。
1. LTTE、TROとの関係
この点で草の根で活動するNGOには優位
スリランカ北東部で日本のNGOが事業を
性があり、既にLTTE支配地域で活動を展開
行う場合には、LTTEとの関係の構築に十分
している日本のNGOがそれを成し遂げつつ
な配慮が必要である。特に、大きなニーズが
あることには、一定の評価が与えられるべき
存在するLTTE支配地域では、LTTEが実質
である。
の行政権を握っており、LTTEの意向を無視
同時に、ただ安易に密接な関係を持つこと
した事業実施は事実上あり得ない。以下の2
は、LTTEやTROのプロパガンダに利用され
点に留意したい。
る可能性を常に孕んでおり、特にLTTEの民
衆の代表者としての正統性に疑問を呈してい
(1)事業実施に係るLTTE、TROからの要望
について
LTTEは、国際NGOがLTTE支配地域で建
設事業等を実施する際、現地NGO(ほとんど
る南部住民からの(多くは誤解に基づく)反
発を招くことにも繋がりかねないことから、
この点には十分留意しつつ、活動展開を行う
必要がある。
がTROの影響下にある)に事業を委託して行
うべきであると主張することが多く、場合に
よっては絶対条件とされることもある。
2. 現地NGOとの連携、補完的関係構築
の必要性
後述するように、復興開発支援を通じて現
2004年1月の合同現地調査で訪問したある
地の組織や人々のキャパシティを増大させる
現地NGOからは、「事業実施においていくつ
という観点からは、これは歓迎すべき要望で
かの国際NGOと現地のNGOとの競合が存在
もある。
し始めていることから、日本のNGOの進出
しかしながら、実際には現地NGOの事業
実施・運営管理におけるキャパシティが不十
にあたっては、事業選択において配慮が必要」
との苦言もあった。
分で、かつ十分な透明性が確保できないケー
前述したような一部現地NGOの脆弱さか
スもあり、そうした場合には、日本のNGO
ら、日本のNGOが単独で活動せざるを得な
による事業の直接実施をLTTEに働きかける
い状況があることも事実であるが、現地
等、ケース・バイ・ケースの対応が必要である。
NGOとの相互補完的な関係構築の模索が必
要であり、直接あるいは間接的な連携を通じ
(2)LTTEとの関係構築
開発の現場においては、地域行政機関や住
民との長期的な関わりを前提とした、ねばり
94
て、現地NGO等のキャパシティ・ビルディ
ングを行うような努力は当然あるべきであ
る。
強い関係構築が必要不可欠であり、その結果
その一方で、一部の特定現地NGOとの偏
得られる相互理解があって初めて、先方を対
った関係構築は、日本のNGOの現地におけ
話に巻き込むことが可能である。こうした働
る公平性の確保という面からも留意されるべ
きかけを通じてこそ、先方からの信頼感が得
き事である。この点では、機能は不十分なが
られ、住民の本来のニーズを満たす事業展開
ら各地にNGOコンソーシアムが存在するこ
とから、それら民間団体や、関連政府機関と
の協議を経て、事業を選択したり、現地
NGOとの連携を検討したりするプロセスが
求められる。
到に把握しておくことが必要である。
また、和平交渉全般に関する背景、進捗状
況、課題の理解は欠かせない。
北東部全体としては、ムスリム問題等、今
また、国際NGOの中には、過去にLTTE地
後懸念される問題への配慮が必要で、事業選
域で場当たり的な活動を展開したところも見
択だけではなく、スタッフの雇用等の面でも
られ、実際にLTTE、TROからの批判も存在
民族的な配慮が必要である。
する。独善的な事業展開のあり方には、内外
からの厳しい批判の眼があることを認識した
い。
4. 安全管理対策について
北東部の一般治安は総じて良いが、一部特
合同現地調査に参加した現地NGOのスタ
定地域では住民同士の衝突や、政治的な背景
ッフ(シンハラ人)からは、「今回、初めて北
のある暗殺事件といった事件も発生している
東部を訪れ、報道されない地域の実態や、一
ことからも、避難ルートや緊急連絡手段の確
方的な報道では知り得なかったLTTE側の援
保等、今後非常時への対応を充実させていく
助に対する真面目な態度等を見て、今後はこ
必要もある。
のような理解の差をなくすような活動も行っ
具体的には、衛星電話等の機材、中継避難
ていきたい」という感想が述べられた。日本
場所の確保、非常時における複数の移動手段
のNGOには、実際の事業実施だけではなく、
の確保等であり、緊急連絡、安否確認への対
スリランカの人と人を結びつけるような触媒
応は最低限できるように体制を整える必要が
的な役割もさらに期待されていると考えられ
あろう。
る。
日本人スタッフの住居の安全対策等は、近
隣の他の援助機関の例も参考にしつつ、レベ
3. 政治状況の情報収集、和平交渉の
背景理解の必要
ルを考慮する必要がある。際だって目立つ安
全対策施設は、かえってターゲットにされや
政局の動きは日々混迷の度合いを深めてお
すいという面もあるので留意が必要である。
り、事業の各ステージにおいて、国レベルの
活動地の警察、軍関係者とのコミュニケー
社会情勢に関する情報収集が継続して必要と
ションの確立、先行している国際 NGO や U
されると同時に、地域独自の政治状況等も周
N機関との連携、同一地域の日本人での緊急
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連絡網の整備等も必要に応じて考慮したい。
Ⅳ NGOとして今後求められること
1. スリランカ北東部支援における
NGOの役割
NGO にとっても重要な課題である。特に、
スリランカ政府とLTTEとの和平交渉が必ず
しも順調に進まず、和平でも戦争でもないと
「スリランカで平和定着支援の 1 つのモデ
いうような中途半端な政治状況が現在も続い
ルケースを作り出す」という積極性をもって
ている北東部では、日本の政府機関よりも民
取り組むことは、日本政府にとっても、
間のNGOだからこそ、地元住民に密着して
95
平和の定着のためにできることは多い。
することを心し、具体的にも平和教育・人権
教育などを活動の要素として含むようにする
(1)長期的な展望をもった活動
べきである。
今後も、政治状況が不透明ななかで北東部
の住民が平和の成果を実感できるような活動
(4)ネットワークとしての力の発揮
を、日本のNGOがかなりの規模で展開して
スリランカで活動する日本のNGOはまだ規
いくことが必要である。地域によっては地雷
模は小さいが、ネットワークとして協力し合
除去や緊急支援などの活動も必要であるが、
い、各団体が有する経験や個性を生かし、地
長期的に見て自立した経済、社会発展につな
域住民とのパイプを通じて情報を集め、交換
がっていく要素を有した復興支援活動が求め
し合うことで、移行期の多様なニーズに応え、
られる。これからは腰を据えて5年から10年
存在感を示していくことが可能である。また、
くらいの視野と計画を持って活動していくこ
地域の人々の力を生かすことで比較的小さな
とが望ましい。
投入でも効果が住民によって実感されるよう
なプロジェクトを実施することは可能であ
(2)地域住民のエンパワーメントに重点をお
いたローカルNGOとの相互補完的な関係
復興支援活動の実施過程においては、地域
る。
ネットワークとしての力を活かすことは、
NGOだけに必要とされているものではなく、
の住民の力をつけていくことを基本にして活
現在策定作業が進められている『対スリラン
動していく必要がある。実際にジャフナ、ト
カ国別援助計画(案)』で述べられているよ
リンコマレーなどでは女性組織が、小規模で
うなNGO・ドナー間の援助協調のためのチ
はあるが、地域内の帰還難民の女性や子ども
ーム編成なども有効であろう。
たち、あるいは連れ合いを亡くした女性への
物心両面でのきめこまかな支援活動を行って
いる。また、ジャフナでは小規模ながら自立
(5)北東部以外の地域への配慮ならびにムス
リム住民への支援
した地域住民団体がマイクロ・ファイナンス
地域・民族的にバランスのとれた支援がス
やコミュニティ開発、リハビリテーションな
リランカでは必要とされているため、北東部
どに取り組んでいるケースもある。日本の
支援だけでなく、例えばヌワラエリアでケ
NGOを含む国際NGOは、地域住民が独力で
ア・ジャパンが実施しているプランテーショ
実施し得る事業を行ってこのような地域住民
ン労働者への支援、あるいは南部農村貧困地
による活動の芽をつぶすのではなく、これと
帯への支援の重要性も今後留意されなければ
協力し、育てる方向で活動していくように留
ならない。
意する必要がある。
また北東部州においても、未だ帰還できて
いない人々を含めてムスリムの人々への生活
(3)平和教育・人権教育の要素を全ての活動
に
支援と同時に、彼らが地域社会に復帰するこ
とを支援するような活動も重要である。
復興支援・開発協力の諸活動のひとつひと
つのステップに、和平の強化と複数の民族・
集団の平和的共生に向かうという目的を内包
96
2. 具体的に必要とされる活動
(1)現地のニーズに応えて
上記を実現するためにNGOとしてなすべ
きこと、できることは多い。日本のNGOの
これまでの経験やノーハウ、スリランカ国内
c.長期的な経済・社会発展につながるプロ
ジェクト
・農業・漁業その他の生業を生かし発展さ
外に有するネットワークを生かして実施でき
る、社会的弱者のエンパワーメントにつなが
せることにつながる技術協力
・コミュニティや女性たちの活動のための
る活動の具体的な例としては、以下のような
拠点作りとその活動支援
ものが考えられる。これらは必ずしも個々の
・各種の職業訓練
NGOが単独のプロジェクトを実施すること
・農民のための小規模灌漑
を意味せず、各団体の活動を組み合わせるこ
・小さなコミュニティのための生活用水事
とでより大きな効果を生むことがありうる。
業(井戸)
・ごみ問題解決のための活動と環境教育
a.依然として必要とされている緊急救援・
リハビリテーション活動
・地雷除去
・帰還民のための再定住支援
・夫を失った女性のための生活相談及び心
理カウンセリング
・帰還民のための住宅建設
(2)日本の支援者拡大のための市民社会への
広報
日本の市民社会において、スリランカの
人々の苦境、平和への努力があまりにも知ら
れていない現状に鑑み、NGOそれぞれが有
する協力者網を通じて、あるいはスリランカ
復興開発NGOネットワークとしての広報活
b.平和構築のモデルケース作りと平和・人
動で、こうしたことを伝え、日本の市民社会
権教育
にスリランカへの支援を訴えていくことが重
・新しい地域に移住を強いられた人々のコ
ミュニティ構築支援
要である。
具体的には現地新聞社等との協力による日
・地雷除去が完了した土地におけるIDP帰
本での写真展、和平交渉関係者の講演会、和
還・再定住支援に農業支援やスリランカ
平シンポジウムの開催等、単発事業として運
北東部で象徴的な植物パルミナの植林な
営できるものも検討したい。
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どの環境事業を結びつける試み
・学校建設に平和教育、環境教育等を組み
合わせていくこと
(3)人材育成の一環としての日本への招聘
スリランカの人々のエンパワーメントの一
・多民族・集団の共生のための支援(平和
環として、視野を広げる機会を提供し、技術
人権教育や多民族・集団による共同作業
やマネージメント能力の向上のためにスリラ
や交流事業など)
ンカの多様な民族の個人・集団を日本に招聘
・スリランカ南部と北東部の漁民、女性、
し、NGOでの研修を行うことも、今後の自
青年等の直接的な交流と共同事業の支援
立的発展のために重要な要素である。また、
・日本の若者・子どもと戦争の傷を負った
現地のNGOスタッフの若者を日本に招聘し、
スリランカの人々との交流
・南北の子どもたちによる植林交流
NGOでインターンを実施し、スリランカで
の日本のNGO活動への理解者・協力者を増
やすことも今後取り組むべき課題である。さ
97
らに、スリランカの多様な民族の個人・集団、
る。日本NGOのスリランカでの活動が今後
日本のマイノリティとの交流を図り、民族・
さらに発展していくためには、NGOとODA
集団共生に向けての経験を交流するという事
実施機関、双方のたゆまぬ努力が求められて
業も、双方にとってのエンパワーメントにつ
いる。
ながり、NGOとして実施できる事業である。
NGOとODAの相互理解と相互協力は現実
には端緒についたばかりである。活動現場、
3. ODA とNGO の連携
コロンボ、東京、日本国内の各地域、それぞ
日本のNGOがスリランカでさらに活動を
れの場所で相互理解の芽を大切に育てなが
進めていこうとした場合、現状の日本政府や
ら、真の国民参加型援助を実現していくこと
JICA、JBICのNGO連携・支援スキームでは
が必要である。
まだ困難が大きい。外務省の草の根・人間の
安全保障無償資金協力では、2,000万円を超
上記のような認識を基に、以下の2つの具
体的提言を行う。
える案件については事業総額の20%をNGO
が自己調達しなければならない。また、
JICAの草の根技術協力(パートナー型)では、
平和構築事業におけるNGO の大胆な活用
これまで触れてきたように、特に草の根の
人件費の上限が低く、NGO側の大きな負担
ニーズへの対応、現地の民衆やLTTEとの関
が必要である。
係等において、日本のNGOのアドバンテー
従って、スリランカでの活動へ向けた日本
ジは大きい。シンハラ人の現地NGO職員が
国内の支援者がまだ十分に得られていない状
北東部で活動することは困難である場合もあ
況では、日本政府関係の支援スキームは有用
り、多くのタミル人系のNGOはLTTEの影響
ではあるが、それらを使えば使うほど日本の
を少なからず受けている状況があることなど
NGOは資金的に身が細ることになってしまう。
から、民衆の真のニーズを満たすという観点
そのため、スリランカにおける日本のNG
Oの役割と責任の大きさは実感しつつも、実
で、日本のNGOに期待されることは少なく
ない。
際には事業開始に至らなかったり、開始でき
そうした利点を活かして日本のNGOがス
たとしても継続・拡大が容易ではなかったり
リランカで民族融和・平和構築活動を行い、
する状況がNGO側にはある。
この分野における日本の援助の可能性を追求
大部分の日本NGOの財政基盤がまだ脆弱
し、実証していくことが重要である。
であること、また、これを改善するために
そこで、紛争地における「平和構築事業の
NGO側の自助努力が必要なことは言うまで
実施手法に関する試験的研究」として、実証
もない。しかし、日本政府の ODA 予算の
期間を数年間設定し、NGOによるソフト・
NGO関連支出が1%に満たないというような
コンポーネント事業を大きく取り入れた複数
現状では、たとえ活動の意思と人材はあって
のパイロット・プロジェクトを実施していく
も、NGOは資金的制約から現地のニーズに
ことを提案する。
なかなか応えることができない。その一方で、
ODA事業においては、完全な能力主義には
未だ至らず、格付けによる年功序列型の高額
な人件費が支出されているといった現実もあ
98
NGOを含めたオール・ジャパン体制の
ための知的支援サポートの必要性
NGOとODAの連携は、事業実施レベルに
止まらず、知的支援体制の構築においても求
2003年4月に4団体で出発したが、1年余の活
められる。調査研究、政策策定への参画、現
動を経て、2004年3月現在、スリランカでプ
地連携機関職員の日本での技術研修実施等、
ロジェクトを実施・計画している11団体が
幅広く検討されていくべきである。
参加し、有意義な意見・情報交換の場として
また、他の先進諸国における平和構築分野
育ちつつある。ネットワークとしては、2004
でのNGOと政府事業の連携のあり方につい
年度、この成果を基に以下の具体的な共同活
ても事例研究等が行われるべきである。
動を発展させる。
『対スリランカ国別援助計画(案)』で指摘
①日本社会の中で、スリランカの和平や人々
された通り、我が国の知見が積極的に統合さ
の暮らし、NGOの果たせる役割を紹介し、
れ、各援助関係機関とNGO等の連携を飛躍
市民社会の協力を得る取り組みの第一歩と
的に高めるような組織の立ち上げ、チームの
して、ネットワークのホームページを開設
編成等、知的サポート体制の確立が早急にな
し、スリランカ支援に関する政府・NGOの
されるよう提言する。
情報ステーションとなるようにし、各団体
のスリランカ支援に関する情報も集約す
1つ目の提言に関してさらに具体的に述べ
れば、例えば以下のことが考えられる。
平和構築・平和定着関連事業においては、
る。
②各プロジェクトは各団体の責任と判断で行
うが、共通の目的のための情報交換と討議
特に柔軟性、即効性、関係者間の調整が求め
を活性化させることで日本のNGO総体と
られるため、ODAによるNGOへの支援スキ
しての効率的な支援と各団体のキャパシテ
ームにおいてもこの点を配慮した改善が求め
ィ・ビルディングにつなげる。また、先行
られる。
しているNGOから新規にスリランカでの
またJBICがスリランカで「NGO連携基金」
支援を開始するNGOに対して助言や支援
が運用されようとしていることを評価するも
を行い、各NGOの特性を生かしながら共
のであるが、この試みを共に育てていく意味
同で実施できるプロジェクトを模索する。
から、日本のNGOによる調査・研究事業や
③2004年1月の合同現地調査で、復興・再定
パイロット・プロジェクトの実施など、
住・難民問題省の担当大臣より、スリラン
JBIC資金へのNGO側のアクセスを向上させ
カ復興開発NGOネットワークとして同省
る努力が必要になっていると考えられる。
と覚書を締結することでネットワーク参加
さらに、平和構築に精力的なJICAおいて
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団体への免税・通行などの便宜供与を行え
「平和構築・技術協力」という新スキームが
る可能性があるとの申し入れがあり、今後、
創設され、NGOが2、3年間の複数年度に渡
ネットワークとして積極的に同省との覚書
って事業を実施できるようになれば、それは
締結を検討していく。
スリランカのみならず、世界各地での平和構
築における日本の貢献を大きく推進させるこ
ととなるであろう。
5. 国別研究会の評価と継続に関して
「研究会が果たした役割」
平成15年度「国別NGO研究会(スリラン
4. ネットワークとしての当面の活動
スリランカ復興開発NGOネットワークは、
カ)」は、スリランカ支援に関わる NGO ・
ODA の実務者レベルでの率直な情報交換、
99
意見交換の場となり、また実質的に、研究会
のような機能をも果たして来た。
事業を通してスリランカ復興開発NGOネッ
c. これまで、日本ではこのような場が極めて
トワークが活性化され、各団体の連携体制の
少なかったことから、本研究会は、スリラ
基盤を作ることができた。
ンカに関わるODA機関とNGOとの相互理
これには、支援対象国であるスリランカと
解を大きく促進した。と同時に、いくつか
いう国の規模、援助ニーズの性質、加盟団体
の具体的な相互の連携を生み出すことがで
の数といったものも影響したが、研究会への
きた。2004年1月の合同現地調査への日本
資金的な補助が事務局運営を可能にし、それ
大使館、JICA、JBICの協力や、同年2月に
を支えてきた結果でもある。
外務省が実施した「スリランカ和平プロセ
また、NGOの合同現地調査によって、他
団体が実施するプロジェクトの現場視察を行
い、複眼的な視点で事業を捉えた上で、事業
の質の改善に結びつけることができたことは
特筆に値する。
ス推進青年交流プログラム」へのNGO側
の協力などがその例である。
「継続の必要性」
NGOによるスリランカ復興・開発支援の
具体的な方向性を示すという、平成15年度
これらを整理すると、以下のようになる。
「国別NGO研究会(スリランカ)」の初期の
a. 研究会の活動を通じて、参加NGO間での
目的は達成された。今後は、研究会を通じて
相互理解、各NGOの現地プロジェクトへ
提言されたことを具体化していくための継続
の理解が進み、NGO間での信頼が生まれ
的な検討が必要とされている。また、スリラ
つつある。
ンカの状況のモニタリング、新たな知見の蓄
b. 本研究会はNGOの研究会であるが、開か
積や情報発信を行っていくためのやや中・長
れた場であるため、実際には外務省アジア
期的な計画・立案が求められている。そのた
大洋州局南西アジア課やJICA、JBICなど
め、個別のNGO、及びスリランカ復興開発
のODA機関の実務者も国内での研究会に
NGOネットワーク全体としてのキャパシテ
ほぼ毎回出席し、NGOだけでなく、日本
ィ強化を目指し、今後は以下のように継続し
のスリランカ協力に関わる実務者の連絡会
たいと考えている。
フェーズ
年 度
目 的
第1次 【初期】
平成15年度
NGOによるスリランカ復興・開発支援の具体的な方向性を
示す
第2次 【発展】
平成16年度
日本のNGOの活動体制の強化に係る各種活動
東部における事業実施のための現地調査
ODAとの連携に係る具体的プロジェクト形成(第1段階)
NGO平和構築支援事業実証に向けた研究活動(第1段階)
第3次 【実施】
平成17年度
ODAとの連携に係る具体的プロジェクト実施(第2段階)
NGO平和構築支援事業実証活動(第2段階)
第4次 【発信】
平成18年度
中長期的視点からの形成事業継続と調査後の事業実施
スリランカでの知見、経験の他国事業への波及
100
付属資料
101
スリランカ復興開発NGOネットワーク
平成15年度「国別NGO研究会(スリランカ)
」第1回研究会 記録
主 催:外務省
実 施:スリランカ復興開発NGOネットワーク
事務局:特定非営利活動法人 ブリッジ エーシア ジャパン
テーマ:スリランカ和平の現状ならびに見通しと日本の対応、とりわけNGOの役割
講 師:中村尚司先生(龍谷大学社会科学研究所教授)
日 時:平成15年9月25日(木)15:00∼18:00
場 所:アジア太平洋資料センター事務所・2階
配布資料「アメリカ商務長官がスリラン
アメリカ商務長官からスリランカ首相に出され
カ首相宛てに送付した文書」に関して
たものである。この文書から、スリランカがア
1.
歴史的条件
メリカにとっても大きな関心対象となっている
2.
政策の転換とその実施
ことが伺える。北東部ではなく南部のハンバン
0.
2―1.経済政策の転換
トタに、アメリカ政府の与党幹部が熱心に取り
2―2.欧米諸国のNGOと結びついた開発事業
組んでいるということからも、スリランカが輻
2―3.スリランカの主要なNGO
輳した問題を抱えていると検討できる。
2―4.経済力の集中
2―5.LTTE・JVPの人々
1.歴史的条件
2―6.スリランカとインドの関係
3.
独立過程の経験と女性の地位
3―1.軍隊における女性兵士の役割
3―2.女性の就労状況
スリランカの社会は多民族・多言語・多宗教
である。
19 世紀のスリランカは、ヨーロッパの列強
英語の重要性
植民地政策を体現したような社会であった。ヨ
4―1.LTTE/JVP内と英語
ーロッパにおける各国の勢力推移に従って、ス
4―2.海外留学
リランカ植民地の支配国も交替し、ポルトガル、
5.
オランダに続き、最後にはイギリスの植民地と
4.
停戦後への展望と国際平和協力
5―1.和平への道が交錯する島内の諸勢力
5―2.国外の関わり
5―3.大使館/NGO/JBIC/JICA/JETROなど
の関わり
5―4.国別NGO研究会への提言
なった。
植民地時代の制度は、独立後も様々な形で受
け継がれているが、スリランカの昔ながらの慣
行も多く残っている。例えば、農村によっては、
父親が息子に対し土地を貸して小作料を取り上
げる、というようなスリランカ独自の土地制度
0.配布資料:アメリカ商務長官がスリランカ
が今も人々の間で通用している。また、植民地
首相宛てに送付した文書に関して
支配の影響をあまり受けていないシンハラ文化
圏では、一妻多夫制の名残があり、遺産相続な
102
これは、2003 年の 8 月 15 日に、あるアメ
どで問題が生じている。植民地の支配力が強い
リカ企業のスリランカ進出を推進する目的で、
地域では、イギリスがキリスト教の立場から一
妻一夫制を推進したため、未登録の婚姻が多く
行われた。
スリランカでは、大学やそれ以上の高等教育
しかしながら、NGO 間で相互に調整が図られ
ているわけではないため、支援に地域的な偏り
が生じている。
には力を入れているが、初等・中等教育がない
がしろにされがちである。そのため、社会の中
2―3.スリランカの主要なNGO
での分業体制が確立されてしまっている。英語
スリランカの巨大 NGO、サルボダヤは
のできる都市の知識人が、医者やエンジニアな
1950年代に設立され、70∼80年代に勢力を
どの職に就く一方で、戦争に赴く兵士の大多数
伸ばしてきた。現在では、国家の各省に当たる
が貧しい農村の出身で、高等教育を受けていな
ような組織を作り、独自の金融システムを形成
い人々である。兵士の中には、このような現状
している。また、サルボダヤの副理事長だった
に辟易し、武器を所持したまま脱走して犯罪集
人物が、サルボダヤから分かれてセワランカと
団を組織することもある。
いう別の NGO を立ち上げた。セワランカは北
金融市場に関しては、高利子率や複雑な手続
東部で非常に大きな役割を果たしている。国際
きが妨げとなり、企業が借金することが困難な
NGOも、スリランカで活動する際には、何らか
状況にある。特に零細企業や町工場には 50 %
の形でこの2つのNGOと関わることになるだろ
∼ 60 %の高利子がつくため、銀行に借金をす
う。
るのは非常に難しい。
2―4.経済力の集中
2.政策の転換とその実施
スリランカではコロンボとガンパハ両県に経
済力が集中しており、この 2 県がスリランカ全
2―1.経済政策の転換
体のGNPの半分以上を占めている。コロンボ、
1970 年代に、輸入代替型工業化から輸出志
ガンパハ地域では、様々な経済活動が集中して
向型工業化へと移行した。自由貿易地域の中で
行われ、外国援助も集中している。他県の人々
も、輸出加工が重要な地位を占めるようになっ
は、この状況を不愉快な思いで受け止めている
てきており、特に縫製業が大きなシェアを持つ
か、この地域に出稼ぎに出るより他に職を得る
ようになった。また、西アジア諸国への労働力
方法がないと考えている。
■
付
属
資
料
■
の輸出や、先進工業国からの直接民間資本投資
の受け入れなどにも積極的に取り組んでいる。
2―5.LTTE・JVPの人々
また、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、アジ
LTTE(タミール・イーラム解放の虎)やJVP
ア開発銀行、国際協力銀行(JBIC)などから借り
(Janatha Vimukthi Peramuna 或いはPeo-
入れている長期資本の債務が問題視されている
ple's Liberation Front=人民解放戦線)は、そ
が、火急の問題としては、地元の商業銀行から
ういった人々の不満を代弁している。LTTE の
短期で借り入れている膨大な債務の返済である。
大多数は北部の漁民カーストの出身であり、J
VPはシンハラ社会の低階層に属する人々が主
2―2.欧米諸国のNGOと結びついた開発事業
な構成員となっている。ジャフナでは、ヴェラ
現在、欧米諸国は、政府が直接担当するよう
ーラと呼ばれる農耕カーストが高地位を占めて
な大規模な土木建設事業を実施しなくなってお
おり、例えば、医者、弁護士、行政官などの専
り、NGO事業の占める比重が大きい。世界銀行
門職に就いている人の多くがヴェラーラ出身で
のような国際機関が、貧困削減のためのプロジ
ある。この状況を漁民カーストの人びとは大変
ェクトにNGOを活用するということもある。
不満に思っている。一方、JVPは、シンハラ社
103
会の中で高等教育を受けられなかった人々の社
会への不満を代弁している。
英語能力は就職上不可欠である。大学を卒業
しても、英語ができなければ失業するという厳
しい現状がある。従って、これまでは、英語の
2―6.スリランカとインドの関係
スリランカ政府は、インドの強い影響力から
脱するために ASEAN 加盟を希望し、加盟申請
も幾度か行ってきた。それに対しインド政府は、
できないタミール人の若者たちが LTTE に集ま
り、シンハラ人はJVPに集結し、それぞれ武装
蜂起してきた。
ところが、停戦後の経過を見ていると、交渉
時期尚早であると述べている。スリランカは
の前面に出てくる LTTE の人々の多くは、長い
SAARC(南アジアの国家連合)に加盟している
海外生活を経験し、流暢な英語を話している。
が、SAARC は実質的にインド主導のため、力
そのため、英語を使えない大多数の兵士たちが
関係が公平でなく協力が不十分である。
逆に排除されている感がある。
インド政府は ASEAN のオブザーバー・ステ
イタスを持っている。スリランカも、せめてオ
ブザーバー・ステイタスを持ちたいと考えてい
るが、インドはこれにも反対している。
4―2.海外留学
国内の大学入試は、10 倍以上の競争率であ
る。資金的な余裕のある人々は、インド留学を
するのが一般的だが、さらに裕福な人々は、子
3.独立過程の経験と女性の地位
供を欧米諸国の大学へ留学させている。海外留
学後は、医師・弁護士など所得の高い仕事が待
3―1.軍隊における女性兵士の役割
女性の地位は、独立の過程で向上しており、
っている。その結果、エリートと貧困層の格差
はさらに拡大している。
戦闘でも女性兵士の活躍が目立つ。特に LTTE
では女性兵士の役割が大きく、例えば、ラジ
5.停戦後への展望と国際平和協力
ブ・ガンディーを含む要人の暗殺の多くは女性
の自爆攻撃によって行われた。また、激しい戦
5―1.和平への道が交錯する島内の諸勢力
闘の最前線でも、女性が切り込み部隊を務める
和平への道が交錯し、島内の諸勢力の間で合
ことが多い。戦闘場面の撮影も、女性が担当し
従連衡が頻繁に繰り返されている。JVP と PA
ている。政府軍にも女性軍人は多いが、LTTE
(大統領の政党)とが、協力して新政党を作る、
の女性兵士たちのように、最前線で活躍してい
るわけではない。
というような話し合いが延々と続いている。
1970年代後半に出版された、“Family and
*
Caste in the Politics of Sinhalese”
という
3―2.女性の就労状況
本の中で、シンハラ人政治家同士の血縁関係や
日本企業との合弁会社を含む工場労働者の 8
婚姻関係などが詳細に描写されているが、現在
∼ 9 割が女性である。また、プランテーション
もこの関係図が有効だと言われている。この本
の基幹部門も、女性労働者が大半を占めている。
の著者Jugginsによれば、人口の1∼2%のエ
海外出稼ぎ労働者の 7 ∼ 8 割も女性であり、女
リート層を形成している各政党のリーダーたち
性が経済活動を担う部分が大きい。
が、深い親戚関係にあり、そのような人々が、
独立後のスリランカ政治を支配してきたのだと
4.英語の重要性
いう。
スリランカでは、トロツキストが非常に強い
4―1.LTTE/JVPと英語
104
* Juggins,
勢力を持っていた時期があり、トロツキストや
Family and Caste in the Politics of Sinhalese, 1970年代後半, Cambridge Univ. Press
共産党の諸勢力が連合を組んでいる。彼らの多
極的に和平問題に取り組んでいる。
くは知識階級に属しており、JVPと組むことに
アメリカ政府は、スリランカがアメリカ海軍に
批判的な意見が多い。
安定的な補給基地を提供できるのではないか、
現段階では、大統領の弟が次政権獲得のため
にJVPとの提携を模索している。JVPと協力し、
という可能性を模索しており、ハンバントタ地
域を重要視している。
南部州議会を解散させ、南部州の選挙で多数票
スリランカ復興支援の上では、南部地域への
を獲得し、ガンパハ(西部州)でも同様に勢力拡
配慮も欠かせない。南部は政治的にも重要な地
大する、という案を検討している。また、多数
域である。
票を獲得するために、選挙の直前には 20 人の
在外シンハラ人は概してJVPと深く関わって
UNP(統一国民党)議員に大臣ポストを約束し、
いないが、在日シンハラ人に関しては突出して
与党から引き抜く計画も立てている。こういっ
JVPと親密な関係にある。出稼ぎ労働者の在日
た、選挙を目的とした大臣の引き抜きが多いた
シンハラ人の中には、在留資格がなく、旅券を
め、スリランカ政府内には恒常的に大臣の数が
持たずに入国する人々もいる。現在、在日シン
多い。
ハラ人のうち、4000人前後はビザ非所持であ
宗教団体は、政治の上ではそれほど大きな力
る。また、JVPは在外スリランカ人からの支援
を持っていない。むしろ、サルボダヤのような
が少ないが、LTTE は在外スリランカ人から多
大きな NGO は、その活発な動きを政府に警戒
くの支援を受けているため、それもシンハラ人
されることがある。
側の不満となっている。
LTTE は公然組織と非公然組織に分かれてお
り、明らかに非公然組織の方が力を持っている。
現在、LTTE は過渡期にあり、2003 年 10 月
25 日に提案する案に沿って公然化するために
は、非公然な部分を整理する必要がある。LTT
5―3.大使館/NGO/JBIC/JICA/JETROなど
の関わり
日本による支援の問題は、非公式な情報ネッ
トワークの比重が大きいという点である。
E は、ヨーロッパや北米地域に住む、海外在住
そのため、過去に実施されてきた事業の経
タミール人から資金的な援助を受けている。資
緯・内容・結果などが次に受け継がれていない。
金はタイのバンコクで受け取り、そこで武器・
今後は、NGO も含め情報の共有・透明性を
弾薬を調達することも多い。9 . 1 1 以前は武
器・弾薬の輸送が黙認されていたが、9.11 後
は規制が強化され、輸送は制限されている。
■
付
属
資
料
■
追及することが課題である。
また、これまでは大使館の指揮下に各団体・
政府機関があるという体制だった。JICAは大使
館の影響を受けやすい立場にあるが、JBICは比
5―2.国外の関わり
較的大使館から独立した行動・判断ができてい
影響力の大きな、インドとの関係が非常に重
る。ただ、スリランカの復興支援に関する限り
要な問題である。インド政府が、国内の州に認
は、日本国内での位置付けとは別に、それぞれ
めている以上の自治権をスリランカの暫定行政
の団体や機関がお互いに議論を交わし、情報を
機構に認めるかどうかが、独立後の鍵となって
共有しながら協力していくことを願う。
いた。インド政府は、日本政府がインド政府の
許容範囲を越えるのではないか、という懸念を
示している。
世界銀行やアジア開発銀行、国連開発計画等
の在スリランカの国際機関は、停戦を機に、積
5―4.国別NGO研究会への提言
この国別 NGO 研究会を通して、スリランカ
に関わる団体・機関が情報を共有し、共に議論
する場が増えることを期待している。
105
スリランカ復興開発NGOネットワーク
平成15年度「国別NGO研究会(スリランカ)
」第2回研究会 記録
主 催:外務省
実 施:スリランカ復興開発NGOネットワーク
事務局:特定非営利活動法人 ブリッジ エーシア ジャパン
テーマ:スリランカで異民族間の融和を進めるために日本のNGOがなすべきこと
講 師:足羽與志子先生(一橋大学大学院社会学研究科教授)
日 時:平成15年10月31日(金)15:00∼18:00
場 所:独立行政法人 国際協力機構(JICA)11階会議室
1.挨拶
争」という事実が生まれる。
そうした事実が政治化されると、文化とは関
冒頭、スリランカ復興開発 NGO ネットワー
係のないものまでが文化的な差異として拡大解
ク及び「国別 NGO 研究会(スリランカ)」の事
釈され、対立が本質的なものとして理解される。
務局を務めているブリッジ エーシア ジャパン
そうすると、本来はスリランカの文化が文化的
の新石事務局長より、同ネットワークを設置す
な差異を受容していく土壌を持っていても、一
るに至った経緯、外務省主催の「国別 NGO 研
般大衆は、文化的差異と政治的な関心とを結び
究会(スリランカ)」事業の背景、第 2 回研究会
付けて考えてしまうようになる。こうした一般
の進行等について説明を行うとともに、本日の
大衆の傾向を政治家が利用して選挙キャンペー
講演者である足羽教授の略歴の紹介を行った。
ン等で使っていく。その過程では、タミールや
イスラーム教徒のマイノリティーは、政治意識
2.講演
を高めていく。自らを語るとき日常の用語では
なく、「我々タミールはマイノリティーだが、シ
引き続き、足羽教授による講演が行われた。
以下、その概要を記す。
ンハラ族が来る前からそこに住んでいた」、「よ
り純粋なタミール語を、タミールだけのタミー
ルよりも話すタミールである」というように政
はじめに
治化された言葉」を使って語る。一方、マジョ
リティのシンハラは、仏教ナショナリズムを作
パート 1.異文化の和平構築に参入する日本の
ってきた。このように、それぞれの固有の伝統
NGOに求められる姿勢
的文化や民衆の歴史が政治化され、暴力行為が
紛争という既成事実を作ると、元に戻れなくな
1.文化と紛争
スリランカでは文化の問題が政治化され、状
106
り、紛争が加速度的に進んできたのが、この数
十年である。
況的に使われ、民族対立への感情的・歴史的動
停戦後、まず平和意識調査をジャフナ、トリ
機付けとなっていった。それぞれの民族が有す
ンコマレー、マータラ、バンダラウェッラで 2
る固有の文化が一旦政治化されると、それを再
回にわたり、のべ 750 人以上に行った理由は、
び非政治化するのは極めて難しい。紛争が起こ
何よりも人々の直接の声を広く聞き取り、末端
ると、文化的対立が暴力的既成事実として「紛
の人々の正確な情報を入手することが先決であ
り、そして復興支援計画に当たり「数字」を呈
考え方があるが、それに反対して絶対的共通価
示して、より実情にあった政策立案の役に立て
値が文化的差異を超えて存在するという反相対
たいと考えたからである。
主義がある。反・反相対主義とは、相対主義が
正しいとは断定できないが、少なくとも相対主
2,スリランカ、日本、世界
常に日本とスリランカという 2 国間関係の視
点に加え、世界がどのようにスリランカの問題
義を強く否定する反相対主義の考えに対しては
批判していくという立場である。
そこの微妙なバランスを、ある種の見識とい
を見ているのか、という視点が必要となる。
うものを考えながら、スリランカのあらゆる方
例: 2003 年 3 月 20 日イラク開戦の日のニュ
面の援助、支援という問題に取り組む必要があ
ーヨーク・タイムズの論説頁に、ラディカ・ク
る。特に、中間より上、外国人にアクセスでき
マーラスワーミによるスリランカ平和復興につ
る人達の意見が海外援助側に入りやすいスリラ
いての記事が掲載されたことの意味は何か。
ンカの状況では、政治化されていない一般の
多様な国や機関が、それぞれのアジェンダを
持ち復興支援に関わる劇場的なフィールドの中
人々の声をどのように集めていくのかが最重要
課題の一つである。
に入っていくということと、スリランカから見
た援助構造についての認識が NGO には必要。
また、スリランカと日本という対面構造の他に、
5.虫の目、鳥の目、犬の鼻、鴨の渡りと犀の角
虫の目、鳥の目、犬の鼻というのは、鋭敏な
多様な国際関係の機軸の存在を認識する必要が
感受性を持ってスリランカの状況をその末端か
ある。
ら見ていく必要があるということ。鴨の渡りと
いうのは、様々な集団や主体が個々別々に動く
3,植民地的エリート支配の構造蓄積
のではなく、ネットワークで繋がって、互いに
4 世紀近く植民地でいたスリランカには、植
情報を共有しながら、色々な難関を乗り越えて
民地的な体質が現在も温存されている。独立後、
いくこと。同時にネットワークを組みながらも、
反英、反西洋を示しながらも、イギリスの上流
最終的には個人が自らの能力と責任を自覚し、
階級、中産階級の上層部の価値観を身につけた
単なる組織の一員としてではなく、犀の角とし
エリート階層が既にでき上がっていた。現在の
て進んでいく必要性をいう。
■
付
属
資
料
■
スリランカには、自国化した宗主国の支配の体
質と被支配の体質の両方を両義的に包摂し、か
パート2.ジャフナ平和意識調査の結果
つ「独自」の歴史を人々に訴えて立ち上げると
いう難しさと危うさの両方がある。
シンハラ仏教ナショナリズムは、内部的統一
を図るために、常に他者排除を行ってきた。他
1.調査状況
このジャフナでの平和意識調査の結果は、
「Social Survey on the Consciousness of
者排除と見かけの内部均質化である。こうした
P e o p l e i n J a f f n a 」としてまとめられた。
蓄積されてきた文化構造が常に存在し続けてい
2003 年 8 月、ジャフナ大学の人類学専門のシ
る。
ャンムガリンガム教授と N a t i o n a l P e a c e
Council のジハン・ペレーラ氏を研究協力者と
4.異文化・他者への感受性
「反・反相対主義の見識」について。相対主義、
し、人口 10 万人ほどのジャフナ市街地で 300
人位に対して 60 項目以上の質問票を使っての
つまり、ある文化にはその文化固有の価値観が
平和意識調査を行った。約 1 週間をかけジャフ
あり、どの価値も絶対的なものはない、という
ナ大学の学生の協力を得て、ジャフナ市街地の
107
5 箇所を選び、質問票を使った対面インタヴュ
とまだコンタクトをとっているか」という質問
ー及び地域住民への直接インタヴューと、資料
に対し、「はい」、つまり、連絡を保っていると
収集の両方の手法を使った。その後、調査結果
答えた人が約65 %。連絡手段を訊くと「手紙」
については学生および協力者と数度のミーティ
が 42 %、「電話」20 %。別の質問事項で、停
ングを持ち、分析を行った。この調査結果の一
戦後、生活のレベルが向上したアイテムのうち
部は 2003 年 11 月に英語及びタミール語の新
一番大きい領域が「通信」である。携帯電話は
聞に掲載された。
瞬く間に一般的に使用されるようになりつつあ
調査サンプルの殆どがタミールである。男女
る。
比はほぼ均等、また宗教別人口は、キリスト教
徒が約3割、ヒンドゥー教徒が7割である。
3,被害の内容(喪失感)と定住
「20 年間であなたはどんな被害を受けました
2.移動経験
108
か」という質問には、74 %以上の人が、家を
「20 年来の間に強制移住をさせられたことが
壊された、また、家の中の物を盗まれたり、壊
あるか」との質問に96.7%がイエス。「何回強
された家から物が盗まれたりしていたと回答し
制移住させられたのか」という質問には、「2∼
ている。4 分の 3 位が、親戚もいなくなった、
3 回」約 53 %、「4 ∼ 5 回」約 25 %、中には
しかも、物も無くなった、過去も無くなったと
12 回以上というような回答もある。1996 年
いう経験を持って生きていることになる。
に、政府軍が LTTE 支配下にあったジャフナに
「そのような経験をしながら、なぜ、まだジャ
侵攻した際、わずか 3 時間か 4 時間前にジャフ
フナに住み続けているのか」という問いには、
ナ市民が一斉に町の外に避難するという経験が
60.59%が、私の家がここにあるから、私の先
ある。ジャフナの町に住む 10 万人が共有する
祖がここにずっと生活してきたからと回答する。
経験である。25 %がスリランカ国内の難民キ
11.78%の人達が、親戚がジャフナにいるから、
ャンプ、親戚の家が 62.8 %、スリランカ国内
家族がここにいて、ここに職があるからという。
の他の場所が 35.8 %、スリランカ国外に逃れ
60 %以上が、ここが自分の居る場所だと言っ
た。難民キャンプ経験の割合が比較的少ないの
ていることは、非常に興味深い。「ジャフナを離
は、「町」の特徴である。
れる計画はあるか」という問いに対しては、
次に、「避難先の滞在期間」は、スリランカの
85.9 %が、ジャフナを離れる考えはないと回
難民キャンプでは短いもので 1 ヶ月程度、長く
答する。「もしどこでも行っていいという機会が
なると、72ヶ月や84ヶ月という人もいる。ジ
あったらどうするか」という質問に対しても、
ャフナの人々の喪失感を訊くための「親戚とか
「今いるところ、つまりジャフナに住みたい」と
自分の身近な家族、また友達で、ジャフナを離
いう答えは 76.7 %と高い。この数字に、調査
れた人数」に関する質問では、「殆どが離れてし
を行った全員が大変驚いた。これだけ多くの問
まった」が約30 %、「半分以上の自分の親戚や
題や喪失感を抱えているにもかかわらずほとん
友人が離れた」は約 20 %、「3 分の 1 位が離れ
どが住み続けることを希望している。その理由
た」が約 30 %になった。何らかの形で親戚、
は、ジャフナに住んでいること自体が自分たち
友人や家族が離散し、自分を置いて出ていって
の生命線だ、という答えが多かった。ここに長
しまったという感覚を持っている人たちを総合
く居ること自体が、自分たちの生きている意味
すると、80 %近い人々が非常に強い喪失感を
になっている。困難を経験してきた人たちが、
持っている。次に海外からの経済援助を遠隔的
今後、ジャフナは LTTE がコントロールしてい
に訊く「海外へ行ってしまった親戚や友人たち
くだろうということを考えたり、二重行政の中
でどう生活していくかということを考えたりし
いるかと訊いたら、そういう人たちの数は非常
ながら、より厳しい状況になるかもしれないと
に少なかった。たとえ同じ場所に一緒に住んで
予想しながらも、ここに住むと言い続けている。
いるとしても、住み分けがなされていて、民族
今後どういう社会がこのジャフナにできるにせ
間の融和が進んでいるとは言えない。
よ、ここに居続けるということを希望する人々
が新しい社会の基礎を作っていることは心強い
サインである。
5.生活の変化
「停戦合意の後で、インフラ面ではジャフナの
生活状況がどう変わったか」は、良くなったが、
4,他民族についての認識:共存の可能性
73%、悪くなったが5.3%。また、日々の暮ら
「シンハラ人もこの民族抗争の被害者であるの
しの様子ということで、収入や消費財の量など、
か」「シンハラ人も被害を蒙ったと考えるか」
17 項目を挙げて、停戦前との比較を訊いた。
「ムスリムも被害を蒙ったということを認める
所得については、「良くなった」が 36 %、「変
か」という見解に同意するか否かを各見解ごと
わらない」が46%、「悪くなった」が14.8%。
に訊いた。シンハラ人も自分たちと同じように
消費財の量は、「大変良くなった」が 9.9 %、
被害を蒙ったという見解に同意する人々が
「 良 く な っ た 」 が 7 0 % 、「 変 わ ら な い 」 が
50 %、シンハラ人も被害を蒙ったが自分たち
12.2 %、「悪くなった」が 7.26 %。この「悪
より少なかったという見解に同意する人々が
くなった」という回答には、消費財の量そのも
60 %。半分以上の人々がシンハラ人も被害者
のは多くなったが、物価高騰のため買えなくな
であることを認めている。続いて、「シンハラ人
ったというのも入っている。停戦後にたくさん
は、今後、自分たちと一緒に生活をすることが
入ってきた電化製品、冷蔵庫、テレビ、或いは
できるか」という質問については、約 46 %の
バイクといった高級消費財は「大変良くなった」
人々ができると答えている。一方、37 %位の
が30.1%、「良くなった」が50.1%、「変わら
人々がそれは絶対にできないという。
ない」が約10 %。消費財の価格は、「良くなっ
次に、「自分とは違う民族グループに友人がい
た」が25%、「変わらない」が25%、「悪くな
るか」には、いるが37%、いないが62%。質
っ た 」 が 3 7 % 、「 大 変 悪 く な っ た 」 が
問「その友人は、どの民族グループに属してい
12.46%。就労機会は、
「良くなった」が36%、
るか」には、約 8 割がシンハラ人、残りはムス
「変わらない」が34%、
「悪くなった」が25%。
リムだった。ジャフナの人達は、都市部と離れ
水や電気等の生活インフラは、「良くなった」が
た村に住んでいてシンハラ人に接したこともな
71 %と非常に高い。「変わらない」が 20 %、
いというタミール人ではなく、町の中に住んで
「悪くなった」が6%、さらに、この項目だけは
おり、さらに、親戚がコロンボで働いていると
「大変良くなった」が 2 %近くある。教育は、
か、何か問題があったときはコロンボに逃げた
「良くなった」5 8 %、「変わらない」2 3 %、
といった経験を持つ人たちなので、他の民族と
「悪くなった」15 %です。「悪くなった」とい
の交わりにそれほど抵抗がないという意味にと
うのは、教育の質ではなく、モラルの低下を指
れる。その点においてトリンコマレーの人たち
す。医療は、「良くなった」63 %、「変わらな
とは全く違う。シンハラ、ムスリム、タミール
い」27 %、「悪くなった」9 %である。公共交
の 3 民族がすむトリンコマレーでは、民族融和
通機関は、「良くなった」が非常に高い数字で
の象徴になる町だということをスリランカ政府
75 %、「変わらない」が 11 %、「悪くなった」
がよく言うが、そこで、別な民族グループの友
が 7 %。次に少し文化的な側面から、宗教活動
人がいるか、別の民族グループの言葉を話して
は、「良くなった」が67%、「大変良くなった」
■
付
属
資
料
■
109
が 8 %と高い数字である。通信手段「良くなっ
娯楽用途に使うということが、数字ではっきり
た」が 77 %、「大変良くなった」が 14.4 %と
と出ている。停戦後、特に数多く入ってきたの
両方合わせて約 90 %の人たちが改善されたと
がインドからのビデオで、数のみならず、その
言っている。「変わらない」が 5 %、「悪くなっ
質にしても、おもしろさにしても、本当に色々
た」が3.6%。
なものがあって、タミールの悲劇や家族劇に人
ジャフナでは、警察のオフィスがあるだけで、
実際には殆ど機能していないため、何か問題が
気がある。
宗教に関しては、「停戦後、どこかへ巡礼に行
起こると自分たちで解決するか、もしくは、
ったか」という質問には、半数以上の人が「巡
LTTEに行く。ジャフナの治安状況は、「良くな
礼に行っている」と答えている。現在の宗教的
った」が47%、「変わらない」が26%、「悪く
な動きが観察でき、大きな懸念の一つである。
なった」が約20%、
「大変悪くなった」が7%。
スリランカの民族対立は、実際には宗教対立で
「悪くなった」が 20 %、「大変悪くなった」が
はなかった。ところが、最近の宗教に関連した
7 %いるということは、やはり注目すべき数字
色々な動きには注意する必要がある。シンハラ
である。移動の自由については、停戦前は、夜
の仏教徒側、南部を中心としたJVP(Janatha
は外出できず、昼間も自由に動くことは難しか
Vimukthi Peramuna或いはPeople's Libera-
ったが、「良くなった」が59%、「変わらない」
tion Front=人民解放戦線)
やシンハラの極右の
が 20 %、「悪くなった」が 14 %である。文化
動き、或いは、PA(People's Alliance=人民
規範・倫理は、「悪くなった」が約 40 %、「良
連合)が J V P と手を組んで、U N P(U n i t e d
くなった」が 23 %、「変わらない」が 14 %、
National Party=統一国民党)が現在進めてい
「大変悪くなった」が 23 %。従って、「悪くな
る和平路線を妨害するのではないかという懸念、
った」、「とても悪くなった」の両方を合わせる
シンハラ仏教者のフラストレーションの矛先が
と、約 64 %の人たちが文化規範・倫理が低く
キリスト教徒に向けられるのではないかという
なったと考えている。
懸念がある。一旦、民族間の対立が宗教的な対
立へと転化すると、インドの例でも分かる通り、
6.安全保障の変化
次に、ジャフナの民主主義の水準(言論の自由、
公募制度などの機会均等など)では、「良くなっ
それを元に戻すのは、民族間の対立以上に難し
い。復興期において、宗教は、様々な意味で注
意を払っていかなければならない分野である。
た」23%、「変わらない」が50%、「悪くなっ
た」が 20 %、「大変悪くなった」が 7 %。「停
8.日本への期待
戦になったらもっと良くなるだろうと期待して
「日本政府に何を求めるか」という質問で一番
いたが、実際は殆ど改善されていないことへの
多い答えは、ノルウェー政府のような、一層の
失望感から、こういう結果になったのではない
和平プロセスへの貢献(65 %)である。次点は
か」という解釈もある。
大規模インフラ整備への貢献(22.6 %)。これ
は、おそらく小規模ないしコミュニティー・ベ
7.宗教・民衆文化
110
ースの整備を望む声が高いだろうという予想に
大衆文化的な側面では、レジャー活動は、「良
反したものだった。この背景には、大規模イン
くなった」が 60 %、「変わらない」が 18 %。
フラによる雇用増進のニーズが高いことがある。
「どの情報媒体からどのような情報を得ているの
日本がノルウェーと一緒になって和平交渉をし
か」という質問には、新聞からはローカルな情
てほしいということではなく、和平プロセスに
報、ラジオからは国際的なニュース、ビデオは
リンクした形で、様々な方面に日本は関わって
いくのだということを見せてほしいという思い
があるようだ。シャンムガリンガム教授による
この調査報告は、和平構築・復興へ向けた援
助において必要な最初の手続きの一例である。
と、人々は「ジャフナは繰り返し破壊されてお
調査でわかったことのすべての内容を紹介で
り、当然、新しい道路や上水道施設の整備は望
きないが、ジャフナのデータと、トリンコマレ
むが、それらがまた破壊されないという保障は
ー、マータラ、バンダラウェッラのデータとは、
ない」という思いが強いという。
それぞれ明らかな違いが見られる。調査票によ
る対面聞き取りの手法と当事者へのインタヴュ
9.信頼の行方
ーや資料による詳細な地域状況の理解が、どの
最後に、「どこに信頼を置いているか」という
ようなプロジェクトの立案にも先立って必要な
質問には、大統領については、信頼していない
手続きである。プロジェクトが特定目的達成の
が 71.5 %、首相については、信頼していない
ためだけでなく、地域の平和構築やコミュニテ
が 8.8 %、多少信頼しているが 66 %、信頼し
ィ再建に貢献することが最終目的であるならば、
ているが21.39 %、両方合わせると、約87 %
こうした地域状況の把握と人々の意識の理解は、
の人たちが首相を支持しており、クマラトゥン
プロジェクトの地域への影響と効果を最大限に
ガ大統領に対するものと非常に対照的である。
高めるために必要不可欠である。またこうした
その他には、政府を信頼しているという人は約
事前調査や継続調査は地域住民にプロジェクト
60 %、野党、SLFP とPA に対しては、信頼し
に対する信頼感を生み、コミュニケーションを
ていないというのが81%、LTTEのリーダーに
図っていく作用も持つ。最初に述べた和平構築
対しては、大変信頼しているが 78 %、信頼し
のために期待される NGO の条件や特質を高め
ているが16%と、とても高い数字が出ている。
るためにも、こうした調査は今後さらに行われ
てよいだろう。
■
付
属
資
料
■
111
スリランカ復興開発NGOネットワーク
平成15年度「国別NGO研究会(スリランカ)
」第3回研究会 記録
主 催:外務省
実 施:スリランカ復興開発NGOネットワーク
事務局:特定非営利活動法人 ブリッジ エーシア ジャパン
テーマ:今後の復興開発支援における日本の民間セクターの連携・協力の可能性
パネラー:今里いさ氏 ㈱エム アンド ワイ コンサルタント
田附範雄氏 日本貿易振興機構(ジェトロ)盛岡貿易情報センター所長
新石正弘 ブリッジ エーシア ジャパン 事務局長
大津祐嗣 ブリッジ エーシア ジャパン スリランカ事業担当
日 時:平成15年11月28日(金)14:00∼
場 所:ワールド・ビジョン・ジャパン 2階会議室
◆研究会の経緯(司会)
の責任感を持たねばならないと考えている。
国別NGO 研究会(スリランカ)の第3 回目で
は、スリランカでこれまでに事業を行ってきた
2.現地NGOとの密接な協力
日本の民間各セクター(企業部門、開発コンサル
現地 NGO との密接な協力を進めたいと考え
タント、NGO)が、互いの立場を超えて一堂に
ている。協力を進めようとしているNGOの1つ
会し、それぞれの経験を交換する機会を設けた。
に女性銀行(women's bank)がある。これは、
「融資を自分たちの手で」として、住民自身によ
■
第1部 ■
講師 今里いさ氏
(エム アンド ワイ コンサルタント 社会開発部)
り 91 年に設立されたグループ貯蓄融資組織で
ある。役人からコミュニティに押しつけられた
活動ではなく、あくまで主体的な活動であり、
スリランカ 94 年青年海外協力隊に参加。
メンバーの女性たちは話し合いを通して貯蓄融
2001 年に M&Y コンサルタント入社。スリラ
資スキームを持続・拡大している。自分たちの
ンカでの開発関連業務の経験は6、7 年である。
経験を共有し経験値を高め、主体的にルールを
M&Y は南アジアを中心に活動、スリランカで
決め、プロセスを築いている。現在メンバー
はプロジェクト、農業、農村開発、社会開発の
7,000人以上。
分野に関わっている。
3.仮想プロジェクト
1.M&Y社の基本姿勢
現場中心主義で、ニーズに合った開発を目指
112
(今後の日本のNGO事業展開への提案)
今後は、緊急援助ではなく、本格的な「復興」
す。スリランカ全体への理解を深め、政治、文
「開発」に焦点をあてることが必要なのではない
化、歴史など、地域に根付いているものを大切
か。日本は(交渉的)アジア文化圏同士、共感し
に考える。
合える部分が多いはずである。
最低 10 年といった、長期的な視点でプロジ
日本の NGO には、北東部だけでなく、東部
ェクトに取り組むことも心がけている。そして
(ムスリム・シンハラ・タミールの拮抗地域)へ
プロジェクトを持続・継続的なものにするため
も目を向けてほしい。特にアンパラでは、建物
の破壊など目に見える形での戦争による被害も
1.指標で見るスリランカの位置と投資環境
少なく、難民・避難民の数も少ないが、村によ
スリランカは他の国に比べて労働者の賃金が
っては識字率 10%以下の地域があり、トイレ
川
圸
低いにもかかわらず(インドや中国の深 より低
や給水設備など基礎的インフラ整備の必要性が
い)、1人当たりGNI(国民総所得)は高く、非識
高い。紛争による物理的な被害が少なくても、
字率の低いことがわかる。つまり、教育された
紛争により身内や友人を失った家族は多く、
人材を比較的安い賃金で雇えるということであ
人々の紛争による精神的ダメージは大きい。停
る。
戦合意後、安全で自由な時間を得た青少年が何
スリランカは英国の植民地支配が長かったこ
をすればよいかがわからないでいる等の状況が
とで、法律や制度が英国風に整備され、外国か
ある。プロジェクトを行う際有利な点としては、
らの投資受け入れに関しても、法律によるコン
LTTE の影響力が少ないため、住人が比較的自
トロールが効いている。投資に対する許認可は
由に意見を言える環境があることが挙げられる。
法律に則って行われる。
東部のコミュニティで必要とされている事業
つまり投資窓口である投資庁(BOI)が申請書
としては、住民参加型で実施する基礎インフラ
類を受け付けると、投資法に基づき、優遇措置
整備、地域保健・母子保健強化、女性組織支援、
が考慮されない案件は 16 条により 3 日後に、
教育の支援等が考えられる。同地域に居住する
優遇措置のある案件は 17 条により 4 週間で認
先住民族の文化(シンハラでもタミルでもない文
可が下りる仕組みになっている。
化)をどう支援していくかも今後の課題である。
スリランカでは、貸金業、質屋、100万ドル
未満の小売業、輸出関係以外の個人サービス業、
4.スリランカ現地NGO、INGO 等からのエー
沿岸漁業以外のほとんどの分野で、外国企業に
ル
よる100%の出資が認められている。その点で
現地のNGO や、スリランカで活動するNGO
は投資受け入れの制度は先進国に近いとさえ言
からは、「同じアジアに住む日本のNGO の関わ
える。欧米、オーストラリア、韓国、シンガポ
りを歓迎したい」、「日本の NGO はニュートラ
ール、台湾などからは盛んに進出しているが、
ルな立場でスリランカの既存のヒューマン・リ
日本からの投資は、地理的に遠く、危険な国と
ソースを生かし、お互いの長所を活かしつつ活
いうイメージがあるため、あまり多くない。
動できる」というような声が寄せられている。
■
付
属
資
料
■
優遇措置を受けられる 17 条案件に該当する
日本の NGO 職員の給与が意外に低いという
投資分野とは、現地が投資を希望する業種、投
ことを知った現地の人から、逆に心配する配慮
資規模が大きいもの、低開発地域への投資など
の声も聞かれた。日本の NGO が、持続可能な
で、具体的な優遇措置として、35 %の法人税
活動を行う NGO としての体勢作りを進めるた
の最長 15 年間免除、事業に必要な物品の関税
めに、活動地域や直接の関係者以外との交流も
及び物品税の免除、外国為替管理法による規制
深めてほしい。
の免除などである。
また、銀行、保険業、航空輸送、沿岸海運、
■
第2部 ■
講師 田附範雄氏
(ジェトロ盛岡貿易情報センター所長)
1998 年 8 月―2002 年 3 月 ジェトロ・コロ
電気・エネルギー、軍用品関連、宝石類の大規
模採掘等への投資は、BOI 以外の機関の認可が
必要である。しかし全体的に投資環境は、発展
途上国としては比較的整備されていると言える。
ンボ事務所長としてスリランカに滞在
113
2.日本企業の進出例
◆ダイニチ・クリエーション
現在スリランカでは、ジェトロが事務局とな
ディスニーランドのおみやげ用の陶器製キャラ
り、日系企業 53 社からなる日本商工会を組織
クターグッズを生産する合弁会社。スリランカ
して、定例会を2ヶ月に1回開いている。また、
は筆を持たない国だが、スリランカ人は素晴ら
このうちの製造業約 20 社が投資家協会を作っ
しい絵付けの能力を持っている。中国との関係
て工場運営などについての勉強会を開いていた
で最近日本側企業は撤退した。
が、現在は日本商工会に合流している。
◆コロンボ・ドックヤード
日系企業は大きく次の 3 つのタイプに分類さ
コロンボ港で船舶修理と小型船舶の造船をして
れるだろう。1)商社、コンサルタント会社、建
いる。スリランカは中東とアジアの中間にあり、
設会社など援助関係を中心に業務を行う企業、
地理的に優位性がある。社長の山中さんは「ス
2)現地に投資をした製造業者など、3)その他、
リランカ日本商工会」の会長。
日本食レストラン等である。
◆東京セメント
スリランカには BOI が開設し運営する輸出加
東海岸のトリンコマレーにセメント工場があり、
工区(EPZ)が4箇所ある。中でも空港の近くに
和平交渉の動きに合わせて、北東部での復興需
あるカトナヤケEPZは有名で、そこでは約7万
要に期待をかけている。
人が働いている。その他のビヤガマ、ミリガマ、
◆スリランカ・テレコム
コガラのEPZには現在日系企業は進出していな
NTTが35%を出資して現地の国営企業と提携。
い。以前、南部のコガラEPZにはシャランカと
しかし最近スリランカでも携帯電話の普及が進
いう日本の縫製工場があったが、最近撤退した。
み、固定電話中心の事業展開に苦戦している。
キャンディやシータワカのようなEPZ以外の工
◆ FDKランカ
業団地にも日系企業の工場はある。またその他
カトナヤケに工場を持ち、従業員3,600人、電
の地域にも日系工場はあるが、ほとんどはコロ
子部品を製造している。スリランカ政府が外国
ンボ近郊である。
企業誘致の際に同国を代表する先端技術産業の
優良企業として象徴的に取り上げている。
〈日本企業進出の例〉
◆ YKK
アクセサリー用のチェーンを製造。アメリカや
シータワカ(コロンボから1時間程のところにあ
メキシコへ輸出しているが、スリランカから出
る日本の援助によって造成された工業団地)に工
荷する際に何度も盗難にあい、その都度 BOI に
場があり、スリランカ国内の縫製工場向けにジ
抗議した。
ッパーを出荷、染色のために大量の水を必要と
◆ウスイ・ランカ
することから、場所としては不便だが豊富な水
カトナヤケで絵筆を製造し、高級絵筆として欧
資源のあるシータワカを選んだ。
米諸国へ広く輸出している。
◆ノリタケ
◆ミライ
1972 年にキャンディ近郊の国営の陶器工場と
日本から進出している唯一のアパレル産業。高
提携。スリランカには陶器の原料となるカオリ
級婦人服をヨーロッパへ輸出。専門のデザイナ
ンといういい土が出る。カジュアル・タイプの
ーを抱えて自社でのデザイン開発も行っている。
洋食器を製造している。
◆コロンボ・パワー
◆ダンコツアポルセリン
コロンボ港に台船を浮かべて、その上の火力発
空港から北へ車で 30 分ほどのところに工場が
電設備で発電した電力を地元に売っている。
あり、欧州向けに高級洋食器をOEM生産。
114
◆トロピカル・ファインディング
その他として、手袋、温度ヒューズ、精密金
中国より安く、気質的にも日本人と合い、日本
型などのメーカーがあり、また変わったところ
の大手企業は未進出である。このような理由か
では観葉植物やピクルスを扱っている日系企業
ら、日系のソフトウェア・メーカーであるメタ
もある。
テクノ、アルテク・ランカの 2 社が人材トレー
ニングを開始した。また、米国から帰国したス
3.スリランカの縫製産業
スリランカの輸出品のうち約 60%は衣料品
が占める。縫製産業は初期投資コストが低いの
リランカ人がソフトウェア開発で起業している
例があり、日本からのソフトウェア開発の受注
に成功するところも出てきた。
で、比較的参入しやすい労働集約産業である。
スリランカには約3000の工場があり、欧米や
韓国からは多くの企業が進出しているが、日本
5.進出の際の留意点
スリランカでは、提携先のパートナーを選ぶ
企業は1社だけと少ない。日本のデザインは、
際に、おかしなところと組まないように十分注
パターンを起こしてから試作まで 1 週間、デザ
意をする必要がある。日本語のうまいスリラン
イン廃棄までわずか数ヶ月という非常に短いサ
カ人が、BOI の手続きや労働者集めをするとい
イクルで展開するため、現状では中国の工場で
って近づき、彼らに頼んで計画が一向に進まな
しか物理的に対応できない。しかしスリランカ
くなったケースもある。投資の際は、まず
政府は日系企業の進出を望んでおり、これには
100%日本資本で始めることを勧める。
JICAがテキスタイル・トレーニング・センターで
また、スリランカでは中間管理職の人材探し
各種の技術指導を行うことにより対応している。
は至難の業である。それは、優秀な人材が欧米
最近、ユニクロがイギリスへ進出した際に、
へ流出する傾向が強いからである。日系企業の
中国工場からは EU の輸入割当制度があるため
中には、大学の新卒者を採用しトレーニングを
に輸出できなかった。そこで EU 輸入割当制度
行い、時間をかけて中間管理職になるまで育て
の非該当国であるスリランカで、ユニクロはイ
ていこうというところもある。
ギリス向け製品の縫製を始めた。その後ユニク
面倒なことにスリランカの労働法は、ワーカ
ロがイギリスから撤退したために、この発注は
ーやホワイトカラーなど職種によってそれぞれ
なくなった。
異なる。そして社会主義時代の名残から、労働
■
付
属
資
料
■
者は非常に保護されている。たとえ労働者に非
4.インドとのFTA(Free Trade Agreement)
があって辞めさせる際にも、レイバー・コミッ
を利用した事業展開、IT分野での動き
ショナーを通じて裁判に持ちこまれると、逆に
2000 年にスリランカがインドとの間で自由
こちらが支払いをしなければならないケースも
貿易協定(FTA)を締結したのを受けて、その制
ある。勤労社会人として精神的に未熟な労働者
度を利用しようという動きが活発化している。
も多くいることや、文化や慣習が異なるために
基本的には 35%以上の付加価値でスリランカ
例えば近親者・友人の冠婚葬祭や私用での欠勤が
製とみなされて、インドに無税で輸出ができる。
多いのも特徴である。これらのことと生産効率
この制度を利用してインド向けに事業を展開し
との擦り合わせが大切で、労務管理には非常に
ようという日系企業も出てきた。
気を使わざるをえないだろう。
また、スリランカ政府はIT 関係に重点を置く
比較的整備された投資環境と質の良い豊富な
ようになった。スリランカ人は英語が使用でき
労働力があり、途上国の中では投資の穴場と言
る上に、訓練次第でソフト開発能力を十分発揮
える。特に労働集約産業にとっては好条件が揃
できるものと見られている。人件費はインド、
っている。留意点としては、現地の習慣、労務
115
管理への気遣いが必要であろう。しかし、日本
することができた。建設しているのは、事務所
企業が撤退する例は、景気の動向や納品管理等、
兼教室、実習場、宿泊棟である。2003 年 11
日本側の事情によることが多く、おおむね日本
月 10 日からは、大工と左官の実地訓練を開始
企業は現地で上手くやっていると言える。
し、両コース合わせて 25 名以上の地元の青年
が技術を学んでいる。来年度からはトラクター
■
第3部 ■
講師 新石正弘
整備コースを開始する予定である。
BAJはマナーでも職業訓練センターを建設し
(ブリッジ エーシア ジャパン 事務局長)
大津祐嗣(ブリッジ エーシア ジャパン スリ
ランカ事業担当)
ている。このセンターは政府支配地域にあり、
BAJ職員が地元の青年に大工・左官技術を直接
指導しながら作業を進めてきた。10月1日には、
大工、左官の実地訓練コースに加え、トラクタ
1.BAJのスリランカでの活動内容
BAJは2003年1月よりスリランカ北部での
ー整備コースが開講された。この職業訓練セン
ターは、政府支配地域と LTTE 支配地域の境に
事業を本格的に開始した。現在行っている主な
あるため、両地域から訓練生が通ってきており、
事業には、キリノッチ、ムラティヴ、マナーで
BAJは様々な背景を持つ人々の間の交流や相互
の国内避難民・帰還民等の支援事業と、ワウニ
理解を進めていきたいと考えている。
アでの学校校舎・公民館建設事業がある。
③苗木の配布
〈キリノッチ、ムラティヴ、マナーでの国内避難
国内避難民や帰還民などの社会的弱者を対象
民・帰還民等の支援事業〉
に、マンゴー等の苗木の配給をキリノッチ県内
①基礎インフラ整備(主な事業資金: 2003 年
の4郡で行ってきた。
UNHCR 資金、平成 15 年度国際ボランティア
貯金配分金)
BAJ は、キリノッチ、ムラティヴ(事実上の
〈ワウニアでの学校校舎・公民館建設事業〉(主
な事業資金:平成14年度日本NGO支援無償資
金協力)
LTTE 支配地域)において 50 以上のマイクロ・
ワウニア県では、学校 2 校と公民館の建設を
プロジェクトで学校の修復・再建、トイレや井
行ってきた。これらの建設工事は、現地の建設
戸の建設といった基礎インフラの整備を行って
会社に依頼するのではなく、BAJが帰還民も含
いる。UNHCR 事業は 1 年間で時間的制約が厳
む村人への技術訓練を兼ねて実施し、村人は測
しいが、LTTE 支配地域ではこうした事業を現
量、左官、大工などの技術を習得しながら、公
地NGOに委託せざるを得ず、現地NGOの中に
共の建物を建設した。建設作業は 2003 年 11
は実施能力が十分でないところもあるため、な
月に完了した。新しい公民館ができた村では、
かなか予定通りに計画が進まないこともある。
この施設を裁縫やコンピューターの技術訓練の
マナー(政府支配地域・ LTTE 支配地域の両方)
場として使っていきたいという声が村人から上
でのマイクロ・プロジェクトでは、地元青年へ
がってきている。
の技術訓練を兼ねて、生活用水確保に欠かせな
い井戸の建設をBAJが直接行ってきた。
②職業訓練(主な事業資金: 2003 年 UNHCR
資金)
116
2.BAJの直面する困難
BAJの困難は、新規プロジェクトを新しい国
で始めていく際の困難と基本的には同じもので
BAJはキリノッチで職業訓練センターの建設
ある。BAJがスリランカ北東部に日本人スタッ
を行っている。キリノッチは LTTE 支配地域だ
フを派遣したのは日本の NGO の中では早かっ
が、この建設作業に関しては、BAJが直接実施
たのだが、現地では何年も前から大きな国際
NGO や国際機関が活動をしていた。そのため、
との連携の例としては、BAJ では 2003 年に
現地の人たちや国際機関などは、BAJを他の大
JICA の「NGO 技術者派遣制度」を活用して開
きな国際 NGO と同列に置き同じ様に扱う。そ
発コンサルタント会社の職員によるスリランカ
れは当然でまたありがたいことであるのだが、
南部の調査やスタッフ研修などを実施した。ミ
他方、実際には小さな NGO である BAJ として
ャンマーの事業では、ボート・エンジン整備の
は厳しい面もある。また、事業を行うのが初め
分野でメーカーに協力してもらって何度かスタ
てのスリランカで、細かく定められた労働法に
ッフの技術研修をお願いしている。民間の良さ
基づくスタッフとの雇用契約や弁護士を立てて
は官と違って決定が早いことである。国別NGO
の事務所貸借契約などを経験し、いささか面食
研究会にはすでに外務省、JICA、JBIC は参加
らったこともあった。
し情報を共有しつつあるので、民間企業とも何
資金の問題では、2003年からUNHCRの事
業実施団体となって 2 箇所に職業訓練センター
らかの連携が持てたらスリランカへの多様な協
力の可能性が開けると思う。
を建設し、2004 年からの訓練実施を計画して
いたのだが、UNHCRが2004年に「開発と庇
◆おわりに(司会)
護(プロテクション)」から「庇護のみ」へと大
「国別NGO研究会(スリランカ)」やスリラン
きく方針転換をしたことから、UNHCR の資金
カ復興開発 NGO ネットワークができたおかげ
が当てにできなくなり独自財源が必要となった。
で、少しずつ進展している点において希望が持
予期せぬ事態であったが、現地に入ったばかり
てる。今回の研究会には民間企業の講師を招く
なのに「UNHCR からの資金が無くなったので
ことはできなかったが、民間企業でも NGO 支
やめて帰ります」というわけにもいかない。一
援事業を行っているところもあるので、今後は
方、日本の NGO として期待したい日本政府系
さらなる NGO と民間企業の連携の可能性を期
の資金スキームでは、JICAの草の根パートナー
待したい。
■
付
属
資
料
■
事業や外務省の日本 NGO 支援無償資金協力な
ど、現在は NGO 側で人件費の一部を負担せざ
◆質疑応答・コメント
るを得ない仕組みとなっている。そのような中
その後の質疑応答のセッションでは、民間
でプロジェクト経費以外の本部経費や首都コロ
NGOとしての主要な課題である、活動にあたっ
ンボでの事務所経費などをどうやって捻出して
ての資金調達に関する議論があった。2003 年
いくか? 組織運営だけを考えたら自己資金の
7 月に世銀がコミュニティ開発のワークショッ
よほど豊富な NGO 以外は、スリランカでプロ
プをスリランカで開催し、日本の NGO を招待
ジェクトを始めることは困難である。それでも
するなど期待もされているといった指摘があっ
BAJ は始めてしまった。今さら、「初めてだか
た。しかし例えば、スリランカに入っている国
ら」とか「資金がないから」とかの言い訳は何
際NGOと肩並びになると、日本のNGOは資金
にも役立たない。
調達競争に勝てない、という意見も上がった。
当面は、現地でも東京でも努力・奮闘を続け
るしかないと考えている。
その点、現地での様々なネットワーキングも必
要になってくるが、現地では、復興開発に関わ
るNGO、国連機関、日本政府援助機関なども含
3.民間セクターでの連携・協力の可能性
めた日本人の意見交換会があることが紹介され
BAJ はスリランカに関わる NGO 間の協力と
た。また、資金調達の問題を NGO のネットワ
して「スリランカ復興開発NGO ネットワーク」
ークや、企業、コンサルタント等とのセクター
に積極的に参加している。また、民間セクター
を越えたネットワークによって解決を図り、外
117
務省からの資金がより配分されるように望む、
という声もあった。さらに、事業実施期間の延
より以下のコメントがあった。
長、資金面の融通性、対応の迅速性といった点
―今里氏:民間企業・ NGO 双方とも連携を深
につき、外務省による改善の可能性についても
めようと言う意識は確かに感じるが、具体的な
言及があった。
段階ではまだ曖昧である。それぞれの志向して
また、国際機関が入ることによって、現地の
いることがバラバラという可能性もあるので、
物価・人件費が引き上げられ、現地の秀逸人材
今後もこのような会に参加して意見を交換して
も国際機関に吸い上げられてしまうということ
いきたい。
も人材面での問題点の 1 つとして挙げられた。
―田附氏:今日は投資関係の雑駁な話をしたが、
また、現地社会の視点から見れば NGO 職員の
要はビジネス分野ではスリランカはこれからの
給与水準が現地の人と同等レベルであることに
可能性の芽があるということである。しかし皆
は意味がある一方、JICA等が、コンサル等の職
さんは NGO というビジネスとは違った立場で
員と比して同じ経験・力量をもった人材であっ
活動されていると思う。スリランカは個人的に
ても NGO 職員の給与をあまりに低く設定して
好きな国であり、NGOの皆様には特に貧しい人
いるのは問題であるという指摘もあった。
たちのためになるような活動を展開されること
その他、民間NGO 同士の経験交流のために、
いくつかのNGOからの活動紹介がなされた。
118
最後に、民間の連携に関し、2 名の外部講師
を望みたい。
日本のNGOがスリランカで活動を始めるためのガイド
1.NGO登録について
スリランカで活動を始める際、外国の NGO
3.ビザ取得
はスリランカ政府の社会福祉省へ登録をする必
〈観光ビザ〉
要がある。
スリランカでは渡航前に日本で観光ビザを取
〈登録手順〉
得する必要はない。観光ビザは30 日間有効で、
(1)社会福祉省所定の用紙(必要事項を記入)
出入国管理局へ申請すれば、最大 60 日間の延
(2)日本における団体登録の証明書
長が可能となる。
(3)設立綱領、団体概要
以上を、社会福祉省へ提出する。提出された
〈レジデント・ビザ〉
長期にわたってスリランカに滞在する場合、
書類は、スリランカ政府外務省、その他関係諸
レジデント・ビザを取得する必要がある。手順
官庁における確認を経て、問題が無ければ団体
は以下の通りである。
の登録が認可される。
(1)所属先の在スリランカ事務所からの、在日
2.事務所の設立
(2)日本の所属先からの在日スリランカ大使館
スリランカ大使館宛ビザ取得者推薦状(要請状)
〈事務所の借上げ等〉
不動産物件については、新聞等に掲載されて
宛ビザ取得者推薦状(要請状)
(3)ビザ申請書(スリランカ大使館で入手)
いる情報を 1 つずつ見ていくのが普通である。
(4)写真(3.5cm×4.5cm)
しかし、コロンボ、地方を問わず、事務所とし
(5)往復航空券
て使用する物件を探すのに最も適しているのは
(6)その他必要書類
口コミ情報であろう。他のNGO、現地住民等と
以上の書類を持って、在日スリランカ大使館
のネットワークがあれば、適正な値段の物件を
へ「エントリービザ(レジデント・ビザへの書き
見つける大きな助けとなる。また、物件の概観、
換えが可能)」を申請する。また、この際にはス
機能、程度のみでなく、電圧(特に地方では物件
リランカの出入国管理局より、在日スリランカ
によって家屋内の電圧が低く、電気機器使用に
大使館宛に、ビザ発行の要請書(離着陸許可)の
支障があることがある)、周辺の環境(朝夕の騒
FAXが到着していることが前提となる。そのた
音、治安状況等も考慮)も重要な要素となる。
めの手順は以下の通り。
通常、賃貸契約は弁護士を通じて書類を作成
(1)スリランカ社会福祉省 NGO 担当者に、出
し、それに大家と共に署名、それぞれが 1 部ず
入国管理局宛にビザ取得者の推薦状(要請状)を
つを保管するという形を取る。大家とは借上げ
作成、署名してもらう(通常、書面を作成し、署
開始前の家屋修繕、賃貸期間中の大家の家屋修
名を頼みに行く)
理責任等を明確にしておく。多くの場合、1 年
(2)出入国管理局に(1)の文書を持参し、上記
間の家賃全額を前払いで振り込むことを大家か
FAXを在日スリランカ大使館へ送付するよう依
ら要求される。
頼する。
■
付
属
資
料
■
なお、コロンボ以外では基本的に電気の供給
が不安定なため、ジェネレーター(発電機)を準
備しておいた方が良い。
(注)どうしてもスリランカ出発前にレジデン
ト・ビザ取得のための準備ができない場合、観
119
光ビザで入国し、出入国管理局でレジデント・
ビザへ切り替えを依頼する方法もある。この場
5.活動開始に当たっての情報収集
(1)他NGOとの活動内容調整等
合、関係省庁をたらいまわしにされる可能性も
コロンボを本部とする、C o n s o r t i u m o f
あるが、最終的に却下されることはないようで
Humanitarian Agencies(CHA)というNGO
ある。出発前に時間的余裕があるのであれば、
の連合委員会のような組織が存在する。CHAに
所定の手続きを行なうのが良い。
て、国際 NGO の情報の多くを集めることが可
能である。活動を始めるに当たっては、考慮し
4.現地スタッフの雇用
(1)募集について
ている活動内容が他の NGO と地域、内容の双
方で重複することがないようにする必要がある
現地スタッフ雇用の際の募集には、様々な手
ため、CHAにおける情報収集は有益である。な
法がある。他団体、知り合い等、人的ネットワ
お、JICAはCHAへNGO調整員として日本人を
ークを通しての募集が最も確実であるのは言う
派遣する予定。
までもない。新聞での募集の場合には、1 つの
(2)地方における行政機関との調整
ポストへ100人以上の応募が来ることを覚悟し
活動各分野に関連する行政セクション、及び
ておく必要がある(通常、その中でも、明記した
県次官(District Secretary = Government
応募資格を満たして応募してくる人材は 10 %
Agent)に活動を実施する旨を伝え、必要に応
程であろう)。また、国際機関の情報掲示板等を
じて、現地における他団体とのコーディネーシ
利用し、募集する母集団を限定するのも良い。
ョンを依頼する。
(2)雇用・給与等
スリランカでは、雇用に関する法律は比較的
整備されている。このため、現地スタッフ雇用
外国の NGO がスリランカで活動を実施する
の際には、契約書にて諸事項を明記しておく必
に当たっては、分野が関係する省庁等と MOU
要がある。また、雇用者は社会保険、及び失業
を締結しておくことが時として重要となる。
保険を支払う義務がある。それぞれ以下の通り。
MOU に免税等の条項を入れることも交渉次第
・社会保険(Employees Provident Fund)
:
では可能である。また、事業のコーディネーシ
基本給の20%で、雇用者が12%、被雇用者が
ョンを円滑にする、事業のオーソリティを高め
8%負担する。
る等の観点からも、関係省庁等との MOU 締結
・失業保険(Employees Trust Fund):基本
は考慮に値する。
給の3%で、全額雇用者が負担。
120
6.政府機関、省庁とのMOU締結
特定非営利活動法人 アジアを紡ぐ会
Asian Spinning Association(ASA)
1.概要
なることを目指している。
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
・所在地:〒330―0073
埼玉県さいたま市浦和区元町2―5―13―203
・TEL:(048)811―4070
・FAX:(048)811―4070
・E-mail:[email protected]
・ホームページ:
http://homepage3.nifty.com/asa-info
・事務局開所曜日:月∼金
・設立年月:2000年11月
・主務官庁:埼玉県(法人格取得年月: 2003
年12月)
・代表者:佐野汀(理事長)
主な具体的事業
海外活動
(1)スリランカにおける初級・上級裁縫教室
の開催
(2)裁縫教室卒業生によるビジネス・グルー
プへの支援
(3)現地NGOとの交流
国内活動
(1)裁縫教室卒業生及び現地 NGO 女性の作
品の販売
(2)スリランカ・インドの布製作品の制作及
び、その販売
・事務局責任者:佐野千穂
(3)スリランカでの活動についての報告会
・事業対象分野:農村開発、農業、職業訓練、
(4)NGOネットワークへの参加
給水・水資源、平和構築、難民・国内避難民、
女性
・事業形態:物資供給、人材派遣、情報提供、
調査研究、地球市民教育、オルタートレード、
NGO間ネットワーキング
・活動対象国:スリランカ、国内
(5)スリランカ和平関連情報の提供
■
付
属
資
料
■
・定期刊行物:「年次報告書」
・2003年度から2004年度に予定している重
要な活動・新事業等
(1)スリランカへのスタディ・ツアーの実施
(2)裁縫教室卒業生によるビジネス・グルー
プへの支援
2.目的と事業内容
(3)スリランカの在来織物に関する調査、技
術者の発掘
・設立の経緯
(4)難民・国内避難民再定住への支援
アジアの女性たちの手が紡ぎだす布を、女性
たちの手で作品にし、日本の女性たちに渡し
3.組織
ていく。1999 年以来続けてきた交流をより
多くの人たちに紡いでいくために、2003 年
「アジアを紡ぐ会」を設立した。
・組織の目的
アジアの人たちと共に地域を見つめながら、
技術指導、各種情報の提供、教育等を通じ、
・意思決定機構 総会(22名)
、理事会(8名)
・事務局スタッフ
有給非専従:国内2名、海外1名
無給非専従:国内6名
・会員制度
皆が地域の自然や人的資源を活用できる技術
正会員(個人22名)
や知識を身に付け、自活・自立できるように
賛助会員(個人1名/営利団体1団体)
121
6.活動参加への手引き
4.財政(前会計年度)
・会費:(年間一口)個人会員: 3,000 円、
個人賛助会員:20,000円、団体賛助会員:
・総収入 3,257,569円
100,000円
事業収入:100%
・会員および非会員が参加できる企画
・総支出 3,257,569円
報告会、スタディツアー(スリランカ)
事業費:3,172,026
(海外事業費: 332,543 円、国内事業費:
・ボランティア内容
翻訳、手工芸品制作販売、コンピュータ入力、
2,839,483円)
Web作成
事務管理費:0円
・一言アピール
繰越金:85,543円
1つの手、1つの心、1つの夢を紡ぎます。手
を動かす人たちの生活と心を豊かにし、作り
5.海外の主な協力団体
上げたものを手に入れた人たちの心と生活を
豊かにすることをめざしています。
マハベリ開発省(スリランカ)
特定非営利活動法人ブリッジ エーシア ジャパン
BRIDGE ASIA JAPAN(BAJ)
1.概要
(ホーチミン)
・事業対象分野:農村開発、都市(スラム)開発、
・所在地:〒151―0071
職業訓練、小規模融資、環境教育、給水・水資
東京都渋谷区本町3―39―3
源、難民・国内避難民、女性、障害者、少数民
ビジネスタワー4F
族
・TEL:(03) 3372―9777
・事業形態:物資供給、人材派遣、緊急救援、
・FAX:(03)5351―2395
調査研究、研修生受け入れ、情報提供、地球
・E-mail:[email protected]
市民教育、オルタートレード、NGO間ネット
・ホームページ:
ワーキング
http://www.jca.apc.org/baj/
・事務局開所曜日:月∼金
・活動対象国:スリランカ、ミャンマー、ベト
ナム、国内
・設立年月:1993年11月
・主務官庁:東京都(法人格取得年月: 1999
2.目的と事業内容
年12月)
・代表者:根本悦子(理事長)
122
・設立の経緯
・事務局責任者:新石正弘(事務局長)
インドシナ諸国を中心に在日留学生支援、
・海外事務所:スリランカ
(コロンボ、ワウニア、
NGO活動、貿易などを行っていた関係者が主
キリノッチ、マナー)、ミャンマー(ヤンゴン、
要メンバーとなり、1993 年にインドシナ市
マウンドー、シトウェ、バガン)、ベトナム
民協力センターとして設立。94 年にブリッ
ジ エーシア ジャパン(BAJ)と改称。
・組織の目的
『ミャンマー・ラカイン州北部にかける希望の
橋』『ベトナム「都市ごみに関するリサイクル
ブリッジ エーシア ジャパンは、国際協力の
プログラム確立に係る調査」に係る提案型案
活動を通じて人々の交流と相互理解を促進し、
件形成調査』『いっしょにやろうよ 国際ボラ
社会的に困難な状況にある人々の自立のため
ンティアNGOガイドブック』
の支援や、共に生きていくための活動を通し
て、国境を越えた人々の連帯を図る。
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
主な具体的事業
海外活動
(1)UNHCRと協力して難民帰還・再定住促
進のための活動、橋梁・学校・井戸・ト
イレ等基礎インフラの建設、車両・機械
類の整備、救援物資の配給
(2)地域青年に対する職業・技術訓練(自動
車・機械整備、溶接、電気、裁縫、家具
作り、橋梁・井戸・学校等建設)
(3)乾燥地域における生活用水供給事業
(4)障害者の社会参加のための職業教育・生
活訓練、視覚障害者によるマッサージ室
設立や技術支援、料理教室等の実施
・視聴覚資料
『水は金よりも重い∼ BAJ 生活用水供給事業
のとりくみ∼』『ミャンマー深井戸掘削技術―
BAJ 生活用水供給事業―』『ミャンマーにお
けるBAJの活動』
・2003年度から2004年度に予定している重
要な活動・新事業等
(1)建設技術訓練を兼ねた学校・橋梁、トイ
レ・井戸等の建設及び修復
(2)地域青年の技術向上・就業機会の増大を
目指した職業訓練学校の運営
(3)乾燥地域での生活用水供給事業
(4)障害者の社会参加を促すための職業教
育・生活訓練
(5)低所得地域での居住環境改善、リサイク
ル活動
■
付
属
資
料
■
(5)低所得地域での居住環境改善、リサイク
ル活動、有価物分別活動、愛情学級、経
3.組織
験交流、小規模融資
国内活動
(1)ミャンマーの裁縫訓練コース卒業生によ
・意思決定機構 総会及び理事会
・事務局スタッフ
る作品の販売、その他、ベトナム、ミャ
有給専従:国内7名、海外8名 ンマーの民芸品の販売
無給専従:国内3名
(2)報告会、講演会、チャリティー・コンサ
ートの開催
(3)各種教室の開催(ベトナム料理教室、ミ
・会員制度
個人会員256 名、団体会員16 団体、永久会
員6名、購読会員76名
ャンマー裁縫教室、語学講座)
(4)イベントへの参加とボランティア及びイ
4.財政(2002年1月∼2002年12月)
ンターンの受け入れ
(5)相談員活動・各種会議への参加
・総収入 274,227,723円
(6)「国別NGO研究会(スリランカ)」の事務
・総支出 216,925,088円
局運営等、他団体とのネットワーキング
・定期刊行物
「BAJ通信」、「BAJ年次報告書」
・出版物
事業費:183,768,730円
管理費(本部費用):28,170,363円
その他(為替差損):4,985,995円
・次期繰越金 57,302,635円
123
5.海外の主な協力団体
講演会、報告会、学習会、料理教室、コンサ
ート、バザー
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
・ボランティア内容
国内事務、イベント、キャンペーン、翻訳、
(スリランカ、ミャンマー)
フエ市フービン区人民委員会(ベトナム)
手工芸品制作販売、コンピュータ入力、Web
作成、海外活動など
6.活動参加への手引き
・一言アピール
アジアの人々と連帯しながら共生を実現する
・会費:(年間一口)個人会員: 10,000 円、
団体会員: 30,000円
ために、民族、宗教、言語、文化などの違い
を越えて、人々の間に相互理解の橋を共にか
・会員および非会員が参加できる企画
けましょう。
特定非営利活動法人 BHNテレコム支援協議会
ABHN Association(BHN)
・設立経緯
1.概要
1983 年の国連決議と 1985 年 ITU(世界電
・所在地:〒169―0074
東京都新宿区北新宿1―1―15
・TEL:(03)5348―2221
FAX:(03)5348―2223
・E-mail:[email protected]
気通信連合)の決議による「電気通信が先進国
に偏在していることを是正しなければならな
い」を受けて、日本の電気通信従事者の代表
者によって設立した団体である。
・組織の目的
・ホームページ:www.bhn.or.jp
情報通信分野の知職と経験を生かし、①途上
・設立年月:1992年9月
国の病院内電話設備の改善、②自然災害や戦
・法人格取得年:1999年10月(主務官庁:内
争による被災者や難民に対する緊急支援、③
途上国における電気通信の発展を担う人材育
閣府)
のぶさわ たけ お
・代表者:信澤健夫(役職名:理事長)
成事業を中心に活動する。
しのはら こういちろう
・事務局責任者:篠原浩一郎(役職名:常務理事
兼事務局長)
・活動対象国
ウクライナ、ロシア、ベラルーシ、カザフスタ
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
主な具体的事業(次頁表参照)
海外活動
(1)電気通信を活用した人道支援
ン、ウズベキスタン、スリランカ、バングラデ
最貧国または災害被災国の病院内の電話設
シュ、ミャンマー、ラオス、マレーシア、モ
備の更新、修理。僻地病院間を結ぶ通信網の
ンゴル、モルジブ、東チモール、インド、ト
設置、そうした病院と日本の病院、僻地病
ルコ、台湾、ホンジュラス、アフガニスタン
院と基幹病院との間のテレメディシン・シ
ステムの構築等を行なう。
2.目的と事業内容
(2)電気通信を活用した緊急人道支援 台風、地震被災国の救援用の通信設備の供
124
与、被災者への電話サービス、電気通信設
支部・事務所名:大阪支部
備の更新など行なう。
(県・市名:大阪府大阪市)
(3) 途上国の電気通信関係者の人材教育と
TEL:(06)6701―5850
国際交流
・事務局スタッフ
アジア電気通信関係者の研修と国際交流
・専従職員数7名 非専従職員数2名
(4)テレビ電話を使用して関係国と日本を結
・会員制度
ぶ対話プロジェクトの実施
正会員(法人65名、個人570名)
3.組織
4.財政(前会計年度)
・国内の支部・事務所等
事 業 名
年間事業費 約1.7億円
事業分野・事業概要
期 間 国名・地域 資金援助機関
ラオス地方病院PBX設置
PBXの設置
2002年5月
ラオス
自己資金
BHN人材育成プログラム
アジアの通信技術者研修
2002年5月
∼11月
アジア各国
自己資金
チェルノブイリ医療支援
甲状腺がん検査試薬供用
2002年7月
∼2003年6月
ウクライナ
ボランティア貯金
マレーシアテレメディシ
ン・プロジェクト
テレメディシン・システ
ム構築
2002年9月
マレーシア
NGO支援無償資金
アフガニスタン N G O 通
信網構築支援
HF、VHF設置指導
2002年9月
∼2003年3月
アフガニスタン
ジャパンプラット
フォーム
アフガンテレビ電話対話
技術支援
アフガン日本での衛星
TV会議
2002年9月
アフガン/日本
自己資金
僻地病院間無線ネットワ
ーク
無線機設置
2002年12月
∼2004年3月
ラオス
NGO支援無償資金
アフガニスタンICT教室
アフガン女子中高生への
ICT教室
2003年1月∼9月
アフガニスタン
ジャパンプラット
フォーム
イラク難民支援
難民医療支援
2003年2月∼8月
ヨルダン国境
ジャパンプラット
フォーム
通信機材貸与
NGO への衛星通信機材
の貸与
年間
国内NGOへ
自己資金
チェルノブイリ医療支援
甲状腺がん検査試薬供用
2003年7月
∼2004年6月
ウクライナ
ボランティア貯金
アフガニスタン医療無線
ネット
医療機関無線ネットワー
ク構築
2003年11月
∼2004年3月
アフガニスタン
カンダハール
JICA
アフガニスタンICT研修
警察無線研修
2003年12月
∼2004年3月
アフガニスタン
JICA
イラン南東部地震支援
ハンディートーキー、仮
設FM局開設寄贈
2004年1月
∼2004年3月
イラン
ジャパンプラット
フォーム
BHN人材育成プログラム
アジアの通信技術者研修
2004年2月∼3月
アジア各国
自己資金/NTTコム
■
付
属
資
料
■
125
反差別国際運動
The International Movement
Against All Forms of Discrimination and Racism (IMADR)
1.概要
動の国境を越えた連携・連帯の促進、それら
と国内・国際レベルにおける提言活動の連携
・所在地
国際事務局 〒106―0032
東京都港区六本木3―5―11
(財)松本治一郎記念会館内
促進、国際人権保障メカニズムの発展への寄
与、を通じた世界からの一切の差別の撤廃。
・国際協力に関する過去2年間の主な事業
海外事業
・TEL:(03)3586―7447
(1)職業と門地に基く差別の撤廃:実態調査、
FAX:(03)3586―7462
活動家支援・トレーニング、会議開催、
・Email:[email protected]
・ホームページ:http://www.imadr.org
・事務局開所曜日 月∼土
・設立年月 1988年1月
・代表者 ニマルカ・フェルナンド(理事長)
啓発
(2)人身売買・複合差別の撤廃:搾取的移住
の実態調査、草の根活動のネットワーキ
ング
(3)先住民族の権利擁護:グァテマラ、パラ
・事務局責任者 森原秀樹(事務局長)
グアイ、アルゼンチンの先住民族自立支
・事業対象分野
援
人権全般、平和構築、コミュニティ、生活
(4)マイノリティの権利擁護:ロマ、スリラ
少数民族、先住民族、難民・国内避難民、女
ンカ避難民・移住労働者支援、国際機関
性、門地差別当事者
への情報提供、会議開催
・事業形態
(5)国際人権保障メカニズムの発展とマイノ
人権・平和教育、政策提言、NGO間ネットワ
リティによる利用促進:提言、トレーニ
ーキング、資金助成、情報提供
ング、条約実施監視
・活動対象国
インド、スリランカ、グァテマラ、ドイツ、
アルゼンチン、パラグアイ、日本
・国内事業
(1)人種差別撤廃条約を国内で実施させるた
めの活動
(2)部落差別やダリット(カースト制度下の
2.目的と事業内容
「不可触民」)に対する差別など門地差別
撤廃に向けた活動
・設立の経緯
日本の部落解放同盟の呼びかけで、国内外の
に向けた活動
被差別団体や個人により 1988 年 1 月に設
(4)海外事業の国内展開
立。国連経済社会理事会との協議資格保持。
日本、スリランカ、アメリカ、アルゼンチン
に地域委員会、ジュネーブに国連事務所。
・組織の目的
被差別マイノリティ自身による草の根人権活
126
(3)マリノリティ女性に対する複合差別撤廃
・定期刊行物
「IM A DR-JC 通信」(ニュースレター、隔月
刊、3,000部)
「 現 代 世 界 と 人 権 」( 調 査 研 究 報 告 、 年 刊
2,500部)
「IMADR-JC ブックレット」
( 啓発誌、年刊、
総支出 53,264,643円
事業費:16,650,576円
2,500部)
"connect"( ニュースレター、季刊、英文、
5.海外の主な協力団体
800部)
"Peoples"(年刊、英文、800部)
(1)ウヴァ地域開発センター(スリランカ)
・視聴覚資料
「人種差別撤廃条約で日本の人権差別がどう問
われたか」
(ビデオ、2001年)
・今後2年間に予定されている主な事業
(1)スリランカにおける平和構築のための平
和・人権教育
(2)スリランカ東部トリンコマレーにおける
3民族定住・民族和解事業
(3)インドのダリットの子どものためのデイ
ケア・センターの運営
(4)グァテマラにおけるマヤ先住民族共同体
のためのコミュニティ・ラジオ局設置
(2)人間開発機構(HDO)
(スリランカ)
(3)タミル・ナドゥ女性フォーラム(TNWF)
(インド)
(4)農村教育開発協会(SRED)
(インド)
(5)公正な世界をめざす国際運動(JUST)
(マレーシア)
(6)平和をめざす青年運動(MJP)
(グァテマ
ラ)
(7)ドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会
(ドイツ)
(8)人種主義に反対し諸民族の友好をめざす
運動(MRAP)
(フランス)
3.組織
6.参加への手引き
・意思決定機構 総会(団体60、個人258人)
(4年毎)
理事会(13人)(2年毎)
執行委員会(7人)(2年毎)
・事務局スタッフ
有給専従:国内2名、海外3名
インターン常時約2名、ボランティア多数
・会員制度 団体会員(60)、個人会員(258)
■
付
属
資
料
■
*反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)
会費(年間一口)
個人会員A会員:10,000円
個人B会員:5,000円
団体会員:30,000円
・一般参加企画 シンポジウム、セミナー、講
演会、学習会、スタディツアー(国内外)
・ボランティア参加 国内事務、イベント、キ
4.財政(2002年度)
(会計期間:2002年1月∼12月)
ャンペーン、翻訳ほか
・一言アピール 草の根の運動を国際的につな
ぎ、また草の根と国連をつなぐ運動に、皆さ
総収入 53,264,643円
んも加わりませんか!
会費:56% 助成金・寄付金:10% 事業収入:4% その他:30%
127
特定非営利活動法人 日本紛争予防センター
THE JAPAN CENTER FOR CONFLICT PREVENTION(JCCP)
1.概要
・組織の目的
冷戦後の世界において地域紛争、民族紛争等が
・所在地:〒107―0052
頻発していることを懸念し、日本政府、国際機
東京都港区赤坂2―17―12
関、内外 NGO 等の関係諸組織と協力しつつ、
チュリス赤坂803
これらの紛争の発生予防、拡大防止及び再発防
・TEL:(03) 3584―7457
止のために、民間分野における日本の貢献を
FAX:(03)3584―7528
強化し、もって世界平和と国際協力の推進に寄
・E-mail:[email protected]
・ホームページ:http://www.jccp.gr.jp
・事務局開所曜日:月∼金
・設立年月:1999年7月
・主務官庁:東京都(法人格取得年月: 2002
年2月)
与することを活動の目的とする。
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
主な具体的事業
海外活動
(1)スリランカ事業
平和構築、紛争予防、民族融和ワークショ
・代表者:伊藤憲一(理事長)
ップ
・事務局責任者:阿曽村邦昭(所長)
戦争未亡人家庭支援事業
・海外事務所:スリランカ(コロンボ、ワウニ
地雷除去事業
ア)、カンボジア(プノンペン)、アフガニスタ
(2)カンボジア
ン(カブール)
・事業対象分野:平和教育、地雷、職業訓練、小
型武器回収・開発、難民・国内避難民、少数民
族支援、人材育成
・事業形態:参加型ワークショップ、地雷除去、
技術支援、物資供給、人材育成セミナー、調
査研究
・活動対象国:スリランカ、カンボジア、アフ
ガニスタン、国内
小型武器回収・開発事業
少数民族への識字教育事業
小学校の施設改善事業
(3)アフガニスタン
若年除隊兵士の職業訓練、社会復帰支援事業
平和構築ワークショップ
国内活動
インターネットを通じ、紛争予防関係団体
間のネットワーク構築を目的とした「CPNet」を運営。また、「世界の紛争をめぐる
2.目的と事業内容
対話掲示板」の運営と「e-Symposium」
の開催
・設立の経緯
1999年7月、伊藤憲一、入山映、石井一ニら
が中心となって、(財)日本国際フォーラム附
防実施要員育成事業の実施)
・定期刊行物
属日本予防外交センターとして設立された。
「日本紛争予防センター会報」
(四季報)、「紛争
2002 年 2 月、特定非営利活動法人として法
予防ガイド」
(年刊)、「アジア・太平洋紛争予
人格を取得すると共に、名称も日本紛争予防
防団体要覧」
(年刊)
センターと変更、独立した。
128
人材育成事業(紛争予防市民大学院、紛争予
・出版物
『現代予防外交論』
( 2000 年)、『予防外交入
・次期繰越金 6,716,897円
門』
(1999年)
・2003年度から2004年度に予定している重
5.海外の主な協力団体
要な活動・新事業等
(1)スリランカ北部地雷除去事業
(2)カンボジア小型武器回収・開発事業
(3)アフガニスタン若年除隊兵士への職業訓
練・平和教育事業
スリランカ
Danish Demining Groups(DDG)
カンボジア
Cambodian Institute for Development
and Human Rights(CIDH)
3.組織
アフガニスタン
Cooperation for Peace & Unity(CPAU)
・意思決定機構 総会及び理事会
・事務局スタッフ
6.活動参加への手引き
有給専従:国内7名、海外12名
無給専従:なし
・会員制度
個人会員121、団体会員54
・会費:(年間一口)
正会員: 20,000円、
一般会員: 10,000円
・会員および非会員が参加できる企画
4.財政(2002年4月∼2003年3月)
講演会、会議、公開講座、シンポジウム等
・ボランティア内容
・総収入 143,449,101円
事務局事務
・総支出 136,732,204円
・一言アピール
事業費:90,182,559 円
世界から紛争をなくしたい―それが私たちの
事務管理費:43,864,289円
願いです。世界各地の紛争を予防し、持続的
その他:2,685,356円
な平和を可能とするためがんばっています。
■
付
属
資
料
■
129
マリー・ストープス インターナショナル
Marie Stopes International(MSI)
3 8 ヶ国の発展途上国の現地パートナーと、
1.概要
家族計画を中心としたリプロダクティブ・ヘ
ルスケアーの推進、及びエイズ撲滅のための
・所在地:〒156―0043
東京都世田谷区松原3―39―16―1406
予防、広報、教育(IEC)を女性、男性、思春
期の若者や難民に対して持続性を持った支援
・TEL:(03)3322―1780
・E-mail:[email protected]
活動を行う。
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
・ホームページ:
http://www.mariestopes.org.uk
主な具体的事業
国内活動
・事務局開所曜日:月∼金
・設立年月:1995年4月(本部:1921年)
上記に関する
(1)政策提言活動
・代表者:斉藤玲子(日本代表)
(2)情報収集
(3)日本のNGOとMSIのパートナーNGOと
2.目的と事業内容
のネットワークの構築
(4)資金開発
・組織の目的
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター
Pacific Asia Resource Center(PARC)
・事務局スタッフ 国内6名、海外1名
1.概要
・年間事業費 約2,000万円
・所在地:〒101―0063
東京都千代田区神田1―7―11
東洋ビル3F
2.目的と事業内容
・TEL:(03)5209―3455
・組織の目的
FAX:(03)5209―3453
・E-mail:[email protected]
南北の人びとが手をとりあって暮らせるよう
・ホームページ:http://www.parc-jp.org
平等な社会づくりを目指す。調査、研究、情
・設立年月:1973年9月
報提供、開発教育などを通じて南北問題の構
造的原因を広く伝える。
・法人格取得年:2002年4月
い の う え れい こ
な か む ら ひさ し
う つ み あい こ
・代表者:井上礼子、中村尚司、内海愛子
(役職名:代表理事)
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
主な具体的事業
ふ かわ よう こ
・事務局責任者:普川容子(役職名:総務)
・会員数:個人会員650名、
団体会員(非営利団体:5団体)
130
海外活動
(1)東ティモール自立支援プロジェクト
(2)タイ・メイクロン川調査プロジェクト
国内活動
(4)資料(海外からの)提供
(1)調査・研究(グローバリズム)
(2)自由学校
(5)定期刊行物
「オルタ」
(年11回、2000部)
(3)ビデオの製作
(6)出版物
「あぶない野菜」
(2002)
「自由貿易はなぜ間違っているのか
「コーヒーの秘密」
(2002)
∼市民にとってのWTO∼」
「世界でいちばん新しい国−東ティモー
ルと国際社会」
(2001)
「IMFがやってきた」
「食糧と女性:フェミニズムの視点から」
特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン
World Vision Japan(WVJ)
・専従職員数:39名 非専従職員数:5名
1.概要
・年間事業費:15億4,812万7,725円
・所在地:〒169―0073
東京都新宿区百人町1―17―8―3F
2.目的と事業内容
・TEL:(03) 3367―7251
FAX:(03)3367―7652
・組織の目的
・E-mail:[email protected]
飢餓、戦禍、貧困、災害に苦しむ世界の人々
・ホームページ:
の状況を知らせ、支援協力者を募り、世界の
http://www.worldvision.or.jp
・設立年月:1987年10月
・法人格取得年: 1999 年 10 月(主務官庁:
■
付
属
資
料
■
あらゆる地域での緊急・復興援助を行い、ま
た、地域に必要な事業や地域開発を行うこと
により子どもと家族、地域の自立を支援する。
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
東京都)
みね の たつひろ
・代表者:峯野龍弘(役職名:理事長)
主な具体的事業
かたやま の ぶ ひ こ
・ 事務局責任者: 片 山 信彦(役職名:常務理
事・事務局長)
(1)スリランカ国内避難民再定住支援事業帰
還復興支援
・会員数:24名、2団体
131
財団法人 オイスカ
Organization for Industrial Spiritual Cultural Advancement International
(OISCA-International)
普及プロジェクト
(JICAパートナー事業)
1.概要
等
・所在地:〒168―0063
東京都杉並区和泉3―6―12
・TEL:(03)3322―5161
FAX:(03)3324―7111
・E-mail:[email protected]
・ホームページ:http://www.oisca.org
・設立年月:1961年10月
・法人格取得年: 1969 年 5 月(主務官庁:外
務省・農林水産省・経済産業省・厚生労働省)
(2)植林プロジェクト、「子供の森」計画の
推進(平成14年度までの累計 スリラン
カを含む24カ国、2,757校で展開)
(3)国際会議等の開催…アジア太平洋青年フ
ォーラム(カンボジアで実施)
国内活動
(4)開発教育・環境教育に関わる各種プログ
ラムの実施…環境とふるさとづくり国際
青少年フォーラム、学校林整備事業等
なか の よし こ
・代表者:中野良子(役職名:会長)
(5)海外技術研修員の受入(平成14年度 ス
ひろ せ みち お
・事務局責任者:廣瀬道男(役職名:事務局長)
・その他、国内の支部・事務所等
西日本事務所(福岡県福岡市)
TEL:
(092)803―0322
その他14支部55支局 ・会員数:7,609名
・専従職員数112名 非専従職員数2名
・年間事業費:1,227,459,335円
2.目的と事業内容
・組織の目的
宗教や民族、主義主張を越えた人類大家族精
神に基き、人類の「持続可能な発展」を目的
とした活動を展開。途上国の産業開発、人材
育成、環境保全を推進し、併せて国際交流に
より、相互理解と友好親善に寄与する。
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
主な具体的事業
海外活動
(1)海外研修センターにおける技術指導およ
び人材育成…フィリピン・ネグロス養蚕
132
リランカを含む13カ国152名)
(6)「山・林・SUN」体験の実施
財団法人 ケア・ジャパン
CARE Japan(ケア・ジャパン)
・専従職員数:7名 非専従職員数:2名
1.概要
・年間事業費:64,578,000円
(2003年度予算)
・所在地:〒171―0032
東京都豊島区雑司が谷2―3―2
・TEL:(03)5950―1335
2.目的と事業内容
FAX:(03)5950―1375
・E-mail:[email protected]
・組織の目的
・ホームページ:www.carejapan..org
ケア・ジャパンは、誰もが人間らしく共に生
・設立年月:1987年5月
きることのできる平和な世界を目指し、開発
・法人格取得年: 1 9 9 3 年 7 月(主務官庁:
途上国で貧困や災害に苦しむ人々の自助努力
の支援と、持続的発展を目的に活動します。
外務省)
たてうちあつひこ
・代表者:舘内篤彦(役職名:理事長)
・過去 2 年間の国際協力(海外・国内)に関する
の ぐち ち とせ
・事務局責任者:野口千歳(役職名:事務局長)
主な具体的事業(下表参照)
・会員数:5名
事 業 名
事業分野・事業概要
期 間 国名・地域 資金援助機関
女子教育事業 サマキ クマールII
教育/就学、未就学の女子のフォ
ーマル・ノンフォーマル教育へ
のアクセスの改善
平成16年2月
∼18年12月
カンボジア・
プレイベン州
JICA
プランテーション居住者
の生活改善事業
生活環境改善/劣悪な生活環境の
元で生活する茶園居住者の社会
生活環境改善
平成15年5月
∼18年4月
スリランカ・
中央州
JICA
移動教育事業
教育/移動教育活動を中心とした
参加型総合教育の実施
平成15年1月
∼17年12月
タイ・ウボン
ラチャタニ県
ケアフレンズ・
東京
女子教育奨学制度事業
教育/中学就学が困難な生徒の就
学支援
平成14年10月
∼16年9月
カンボジア・
カンダール州
ケアフレンズ・
岡山
環境教育事業
環境教育/環境教育センターの設
営及び環境教育の実施
平成13年4月
∼16年3月
タイ・ラン
プ−ン県
環境事業団
レインボー事業
国際理解教育/絵の交換等による
カンボジア−日本の子どもたち
の交流活動
平成12年7月∼
カンボジア・
カンダール州
立正佼成会
■
付
属
資
料
■
133
自立のための道具の会
Tools for Self Reliance Japan(TFSR Japan)
1.概要
2.目的と事業内容
・所在地:〒450―0003
愛知県名古屋市中村区名駅南1―20―11
NPOプラザなごや 3F南室
・TEL:(052)569―2777
・組織の目的
会員の協力によって日常の生活に必要な道具
の調達に困っているアジアの国々の人たちに、
FAX:(052)569―2778
私たちの身近に眠っている道具を送り、生活
・E-mail:[email protected]
基盤の整備向上と自立のために協力すること。
・ホームページ:www.tfsr.sf21npo.gr.jp
・事務局開所曜日:火 ・水・土
・設立年月:1993年9月
・過去 2 年間の国際協力に関する主な具体的事
業
海外事業
かわしまやすはる
・代表者:川島康治(役職名:代表理事)
(1)スリランカにおける左官技術指導
・事務局責任者:川島康治(役職名:代表理事)
(2)スリランカにおける燻製技術指導
・支部・事務所名:
(3)スリランカにおける道具技術指導
作業本部(愛知県東加茂郡旭)
(4)スリランカにおける水質浄化指導
TEL:(0565)68―2458
(5)国内における道具収集・整備事業
TFSR京都(京都府京都市)
・活動対象国:スリランカ
134
135
外務省委託
平成15年度NGO活動環境整備支援事業
平成15年度「国別NGO研究会(スリランカ)」報告書
実 施:スリランカ復興開発NGOネットワーク
【事務局】特定非営利活動法人 ブリッジ エーシア ジャパン(BAJ)
〒151―0071
東京都渋谷区本町3―39―3
Tel:03―3372―9777
平成16年3月発行
ビジネスタワー4F
Fax:03―5351―2395
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