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少子化と女性の社会進出

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少子化と女性の社会進出
卒業論文
少子化と女性の社会進出
経営学部会計学科
4年4組22番
小林桃子
目次
はじめに
第一章
第一節
第二節
少子高齢化社会
少子高齢化社会とは
少子化から起こる問題
第二章
第一節
第二節
第三節
少子化の主な原因
晩婚化・未婚率の上昇
女性雇用の現状
日本経済への影響
第三章
少子化と女性の社会進出の因果関係
第四章
女性の社会進出に向けて
第一節
第二節
第三節
第四節
スウェーデンにおける女性の活用政策
日本での仕事と家庭の両立支援策
男性の育児参加の重要性
まとめ
おわりに.
参考文献一覧および URL 一覧
あとがき
1
はじめに
私が卒論のテーマに取り上げた問題は「少子化と女性の社会進出」である。このテーマ
に決めた理由は、育児に時間がとられ自分のキャリアデザインを実現できない女性が多く
いる中、どのようにすれば双方を両立できるか考えたからである。
生きがいとは人それぞれであるが、かつては、結婚し子供を授かり育てていくことが一
般的であった。しかし、現在では社会の中で働きたいという女性が増え、育児と仕事の間
で悩む女性は少なくない。少子化の原因としては女性の社会進出の増加、晩婚化、結婚を
望まない若者が増えていることが挙げられる。結婚を望まないだけでなく、中には結婚し
たくても結婚できない若者も増えていると思う。女性が相手に求める条件の変化、不景気
による終身雇用の慣習の崩壊によって家族を養っていく自信がない男性の増加が原因だろ
う。
今では生涯独身であったとしても老後の心配がいらないような年金制度等が普及してい
るので子供が好きな人だけが結婚し出産するようになったのかもしれない。実際私の周り
では同世代でも出産を経験した人は多い。高卒で社会に出た年齢が大学進学者より早いこ
とである。社会にでることは経済的自立ももちろんだが、職場内での良きパートナーと出
会える機会がある。大学4年生の現在、卒業後変わる環境によって今まで通りの人間関係
でなくなってしまうとなると、大きな変化があると実感する。特に学生時代の恋人がいる
人はこれから先の付き合い方や距離による寂しさから上手くいかない難しい転換期だと思
う。戦後、人工中絶手術が開始されてから、日本で最も高い死亡者数となっている。もし、
中絶という選択肢がなかったら、女性の社会進出は少なくなってしまうかもしれないが、
少子化においても今のようにそこまで深刻な問題ではなかったかもしれない。人工中絶手
術はいろいろな問題が生じ、やむをえなく女性は決断する。出産とは計画なしにはできな
いのである。最近では少子化対策の必要性が唱えられ、人口規模が均衡する 2.07 まで回復
させる動きがある。しかし、このことは女性に子供を産ませるための“量”に関する方策
として捉えられてしまいがちなのは仕方がないことかもしれない。だからこそ、女性はど
のように産み、どのように育てるかという“質”に関して考えなければならない。日本特
有の女性の労働力率を表した M 字カーブでは、学校を卒業した 20 代でピークに達し、30
代の出産・育児で落ち込み、ひと段落ついた 40 代で再上昇するという曲線のことを指す。
最近では、M 字雇用は改善されつつあり、女性の社会進出が進んでいる表れだろう。
私は、自分自身が生涯仕事に就きたい思いがあるのと同時に家族も築き上げていくつも
りであるが、この論文ではそのための最善の方法、配偶者の協力の大切さを少子化と女性
の社会進出の関係性に触れながら考察していきたいと思う。第一章では、日本の少子化の
現状をデータとともに説明していき、少子化からなる問題点を指摘していく。第二章では、
少子化の原因をあげ、その中の一つである女性の社会進出について掘り下げていく。女性
の就業状態を先進諸国と比べ、日本の女性の社会進出は進んでいるのか、出生率もあげて
比較していく。そして日本経済に目を向け、少子高齢化の下での経済活力について見てい
く。第四章で、少子化を解消しつつ、女性が社会で輝くためはなにかを明らかにしていく。
2
第一章
少子高齢化社会
第一節 少子高齢化社会とは
少子高齢化社会という言葉を最近よく耳にする。まず少子化の定義とは、出生率が持続
的に人口の置換水準を下回っている状態である。置換水準とは、人口一定に保つための必
要な出生率をいう。死亡率が高ければその分産まなければ人口を一定に保てないので、置
換水準は死亡率に依存する。人口を維持できる合計特殊出生率は 2.08 であるのに対して現
在の日本の合計特殊出生率は 1.43 である1。2004 年 5 月 1 日に、明治元年(1868 年)以
来はじめて人口が減ったと総務省から報じられたように、日本は戦時中の一時をのぞけば、
明らかに人口減少の時代を迎えるに至った2。未成年人口が減少傾向にあるなか、65 歳以
上のいわゆる団塊世代を含む高齢者は年々その数を増やしている。その結果、日本は少子
高齢化社会と呼ばれるようになったのである。先進諸国でも出生率が 1.8 以上ある国はほ
とんどないが、日本は急速に伸びた寿命も相まって急速に高齢化が進んでしまったのであ
る。
第二節
少子化から起こる問題
少子化がなぜ悪いことなのか。通勤ラッシュ等もなくなりメリットもあるように思われ
る。リストラもなくなり雇用が安定するかもしれない。しかしそれ以上にデメリットが大
きいのが少子高齢化なのである。悪影響として一番に考えられるのが 15 歳~65 歳を対象
とする生産年齢人口が減少することである。その結果日本の経済が低迷してしまう。65 歳
以上の人が退職することによって、全体の労働投入量が必然的に減少してしまい、その分
今まで以上の国内総生産(GDP)を維持できなくなってしまう可能性がある。もし仮にそ
の状態で一人当たりの GDP が維持されれば、国民の豊かさも維持され、人口減少社会も
必ずしも悪いことではないと言えるかもしれない。しかし現状では難しく、経済の維持の
ためにも生産年齢人口を増やしていくことが必要である。
日本の少子化は 1974 年に始まり、それ以降合計出生率が置換水準を下回っている。
しかし、その当時はまだ少子化という言葉がなかったのであまり問題視されていなかっ
た。戦後の過剰人口意識が強かった 1950 年から 1960 年代は出生率が低くなることで過
剰人口を解消するのに有効な現象とされ、むしろ少子化は歓迎されていたのである。し
かし 1970 年代に入っても出生率は下がり続け、置換水準との乖離がどんどん広がって
いき、少子化は深刻な問題として認識されるようになった。
厚生労働省 HP(2015/01/06 アクセス)人口動態調査、参照。
藤正巌著 「変貌する労働と社会システム」『高齢社会の雇用変化』信山社出版、2008
年、23 ページ。
1
2
3
現在の少子化傾向を無視すると、日本の未来はどうなっていくのか。70 年後日本の人
口は半分になってしまうかもしれない。(図表―1)
図表-1:100 年の人口の減少傾向
現在
30 年後
総人口
減少割合
1億2759万人
(現在を 100%とする)
1億
370万人
81%
70 年後
6457万人
51%
100 年後
4534万人
36%
出典:BusinessJournalhttp://biz-journal.jp/2013/10/post_3019_2.html より引用。
これだけの人口が減ってしまうと地域の過疎化はもちろん、市町村や都市のほとんど
を放棄して社会インフラをギリギリ維持できる大都市への移住が強制的に行われてし
まうかもしれない。その上、日本はこの先 40 年間高齢化社会がより悪化すると見込ま
れる。若い世代の人は3人に1人が高齢者という世界を生きていかなければならなく、
介護問題等が深刻になるだろう。
第二章
第一節
少子化の主な原因
晩婚化・未婚率の上昇
まず挙げられるのが、若者の未婚化、晩婚化である。2010 年の生涯未婚率は、男性が
20.14%、女性が 10.61%であった。特に男性は 2005 年から 2010 年にかけて約 4%も上
昇している3。女性の未婚化、晩婚化に関しては女性の高学歴化、社会進出の増加が原因と
いわれている。
3公益財団法人
生命保険文化センター(2015/01/06 アクセス)
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/mariage/12.html より引用。
4
図表-2:性別生涯未婚率及び初婚年齢 1920~2010 年
男
女
年次
生涯未婚
率(%)
初婚年齢
(歳)
生涯未婚
率(%)
初婚年齢
(歳)
1920
1925
1930
1935
1940
1950
1955
1960
1965
2.17
1.72
1.68
1.65
1.74
1.45
1.18
1.26
1.50
25.02
25.09
25.77
26.38
27.02
26.23
27.05
27.44
27.41
1.80
1.61
1.48
1.44
1.46
1.35
1.47
1.88
2.53
21.16
21.18
21.83
22.51
23.33
23.61
24.69
24.96
24.82
男
女
年次
生涯未婚
率(%)
初婚年齢
(歳)
生涯未婚
率(%)
初婚年齢
(歳)
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
1.70
2.12
2.60
3.89
5.57
8.99
12.57
15.96
20.14
27.46
27.65
28.67
29.57
30.35
30.68
30.81
31.14
31.18
3.34
4.32
4.45
4.32
4.33
5.10
5.82
7.25
10.61
24.65
24.48
25.11
25.84
26.87
27.69
28.58
29.42
29.69
出所:国立社会保障・人口問題研究所・人口統計資料集
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/Popular2012.asp?chap=6 より引用。
図表-2から、生涯未婚率・初婚年齢ともに年々高くなっていることがわかる。1920
年から比較すると 2010 年にはおよそ 10 倍の年齢まで達している。つまり女性の四人に一
人は一生独身の道を選んでおり、結婚して子供を産まない人を加えると、3分の一を上回
る女性が子供を産まない予測である。男性においては約半分もの人が生涯子供を持たない
結果となっている。
なにが若者へ結婚を躊躇わせるのか。男性の就労状況調査によると、1992 年までは、学
生を除く未婚男性のほとんど(90%以上)が正社員もしくは自営業者であった。1997 年
5
頃から非正規雇用が増え、2005 年では学生を除くと非正規と無職者の割合はほぼ三割を占
めている4。若者は不安定な雇用により、将来収入の見通しが立たなくなってしまっている
のである。これが婚姻率の低下の一因ではないだろうか。そしてこのことは同時に少子化
の原因でもある。
次に挙げられるのが、上記の原因でもあった女性の社会進出である。1999 年に男女雇用
機会均等法が制定され、女性が社会に出るための法的整備が進んでいる。かつて女性の雇
用は、企業にとって結婚前の一時的な雇用と考えられており、女性は制度に守られ家庭に
専念でき保護の対象であった。その後、差別をなくし継続して働くための裁判が行われ、
現在の男女平等社会へと向かったのである。
自分の能力を活かしたい、社会にでてキャリアを積みたいと願う女性が増えてきた。女
性の大学進学率は 1970 年代から約二倍に増えており、年々増加傾向にある。高学歴女性
は家庭においての責任に対しての教養を身につけていると解釈されており、つまり家庭を
持ったときに母親として家庭を守る力が養われているということである。安倍政権の成長
戦略の中でも女性の管理職の増加は盛り込まれている。
「全上場企業において、積極的に役員・管理職に女性を登用していただきたい。まずは役
員に、一人は女性を登用していただきたい5。」
そして、職場復帰、再就職の支援も唱えられており、女性が働き続けられる環境を目指
している。しかし、現状の支援策では不十分で女性が社会進出を機に退職してしまうケー
スが多い。現在の育児休業制度で定められている最長1年半の休暇制度では、女性が働き
続けることができるまで対応できていない。世界的には3年の育児休業制度が保障されて
いることは珍しくなく、ジェンダー指数が日本より高いスウェーデンでは男女ともに労働
日数 480 日の休業が認められかなりの割合で消化されている。
山田昌弘著「なぜ若者は保守化するのか」『少子化の真因』2009 年、95 ページ。
首相官邸 HP(2015/01/06 アクセス)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/women2013.html より引用。
4
5
6
図表-3:先進国の HDI・GDI・GMI ランキング
HDI
国名
順位
GDI
数値
順位
合計特殊出生率(参
考)
GEM
数値
順位
数値
出生率
(年次)
ノルウェ
ー
1
0.965
1
0.962
1
0.932
1.81
2004
アイスラ
ンド
2
0.96
2
0.958
3
0.866
1.94
2002
オースト
ラリア
3
0.957
3
0.956
8
0.833
1.75
2002
アイルラ
ンド
4
0.956
4
0.951
17
0.753
1.96
2002
スウェー
デン
5
0.951
5
0.949
2
0.883
1.75
2004
カナダ
6
0.95
7
0.947
11
0.81
1.51
2001
日本
7
0.949
13
0.942
42
0.557
1.29
2004
アメリカ
合衆国
8
0.948
8
0.946
12
0.808
2.05
2004
24
16
9
53
0.653
0.755
0.816
0.502
1.33
1.74
1.37
1.22
2004
2004
2004
2002
(以下抜粋)
イタリア
イギリス
ドイツ
韓国
17
18
21
26
0.94
0.94
0.932
0.912
18
16
21
25
0.934
0.938
0.928
0.905
出所:http://www.sanfujinka-debut.com/topics/birthrate/index.html より引用。
図表-3は国連開発計画によって各国の社会の豊かさを指す人間開発指数(HDI)、男
女間の格差を指すジェンダー開発指数(GDI)、女性の政治参加や意思決定に参加できるか
どうかを表すジェンダー・エンパワーメント指数(GMI)のランキングである。日本は他
の先進国に比べて劣っていることがわかる。出生率を見てみると女性の社会進出の指数が
高い国でも日本より、出生率が高くなっている。このことから、女性の社会進出が少子化
の原因になっている根拠になっていないことがいえる。
日本よりはるかに数値が高いノルウェーはどんな政策がとられているのだろうか。伝統
的にノルウェーでは女性の解放運動が盛んであり、1990 年代以降から生産性向上のために
女性の社会参加が必要であると社会的コンセンサスが形成された。社会進出の支援のみな
らず家庭においての男性の役割が注目され、男女平等に関する政策の中でも重視されてい
る。1988 年、95%の男性が家事は女性の仕事であると回答したのに対し、2007 年では同
7
様の回答した男性は約半数の 48%になるなど男性の意識に大きな変化が生じている6。そ
の上ノルウェーでは男女共同参画を推し進めた結果、合計特殊出生率が上昇している。こ
のことから女性の社会進出が問題なのではなく、周囲の協力、つまり男性の理解が大きく
関わっていることがわかる。少子化が進むと、生産年齢人口の減少とともに経済への影響
も出てきてしまうので、女性の社会進出は推進していくべきなのである。
第二節
女性雇用の現状
日本の経済社会は現在大きな転換期を迎えており、経済は成熟期を迎え、今後の経済成
長の実現は、中長期的にバブル崩壊前のような高い実質経済成長率を期待できない状況で
ある。こうした中で企業が女性の活用を進めるには厳しいのが現状だ。しかし、高齢化に
よる労働力人口の減少を考慮すると、経済の持続的な発展や国民全体が豊かで質の高い生
活を送るためには女性の能力発揮を推し進め、生涯にわたり充実な職業生活をおくること
ができるようにすることが課題となっている。女性労働者は、量的に増大するのみでなく、
質的にも変化しつつある。1企業あたり、総合職で働く女性の割合は総合職全体の 3.5%
に高まり、中でもサービス業は 11.6%と最も高い。部門別にみると、女性は広報としての
割合が最も高い。
「有能な女性を積極的に登用していく」とする企業が6割を超え、今後の
女性の活用方針を定めている。また、勤続年数は伸長する傾向にあり、同じ職場における
勤続年数は平均8年余りとなっている。また、女性労働者の約3割は 10 年以上という長
期勤続者なのだ。男女の賃金格差は年々縮小傾向にあり、学歴構成、勤続年数、職階に関
係している。しかし、勤続年数による格差は徐々になくなっているのに対して、職階の違
いはそれ程縮まっていないため、職階による格差はほとんど変わっていないに等しい。こ
のことから日本の男女の平均賃金の差は、欧州諸国と比べるといまだ大きい。
6
ノルウェー大使館 HP(2015/01/06 アクセス)http://www.no.emb-japan.go.jp/index_j.ht
myori より引用。
8
図表-4:女性の勤続年数の推移
出所:厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/09/h0928-6c.html より引用。
女性雇用者のうち、有配偶者は6割弱を占めており、子供のいる世帯においても、半
数以上が就業者である。いわゆる共働きの夫婦が多い。就業形態については多様化が進ん
でいる。女性雇用者の約半数はパートタイム等の非正規雇用者であり、中でもパートタイ
ム労働者の増加傾向は顕著である。自分の都合の良い時間に働きたいという理由や家庭や
介護と両立したい理由があげられる。男性の場合、正規と非正規の割合が逆転するのは 65
歳以上であり女性よりずっと遅い。非正規と正規での年収差は大きく、約 200~300 万もの
差が生じている。女性の労働力率は全ての年齢層において上昇傾向にあり、女性と社会の
関わりは大きくなっている。職業選択時に女性向きといわれる職業より、新たな分野にチ
ャレンジしようとする女性が増ええつつあり、希望する就職先、キャリアアップを目指し
た資格取得や教育訓練の受講も多くみられる。長い間職場から離れることによって労働意
欲の低下、情報交換の乏しさ等からなかなか育児休暇をとる前のパフォーマンスにもどる
ことは難しいという意見もある。私自身4年間非正規労働者として働いてきたが、半年職
場を離れるだけで戻りにくくなってしまった経験がある。その時思ったことは、社員の皆
さんの気配り、そして自分の居場所が残っているという事が復帰の道へと導いてくれるの
だと思った。
第三節
日本経済への影響
総務省による 2013 年 10 月時点の人 7 人口推計で、15~64 歳の生産年齢人口が 32 年ぶ
りに 8000 万人を割り込んだという発表があったように、日本では 18 年連続で生産年齢人
口が減少している。このことは少子高齢化によって起こった現象である。
9
図表-5:生産年齢人口の推移
図表―5から、少子高齢化によって総人口は
数値を維持しているのに対し、生産年齢人口は
年々減少していくとみられる。生産年齢人口と
は、生産活動の中心となる年齢の人口層を指す
のでこの数値が日本の経済活動に影響してくる
のである。人口の増加は経済成長にプラスの影
響をもたらすので、経済成長は人口成長率に依
存するのである。働く人が増えれば生産は増え
やすくなり、貯蓄が増えて国内での投資が増え
れば生産力は高まり、経済成長を遂げることが
できる。少子高齢化の下では生産年齢人口を増
やすためにも女性の活用が重要だろう。
出所:日本経済新聞(2014/04/15)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS15
03L_V10C14A4MM8000/より引用。
第三章
少子化と女性の社会進出の因果関係
今の女性の働き方は、女性が求めて働いているのではなく家計を助けるために働いて
いる方が多いと思われる。実際に時間の融通がきく非正規雇用、パートタイマーは主婦
層の割合が高くなっている。私の周りの主婦の方々は、子供の学校行事や習い事を優先
にシフトを組んでおり、子供中心に動いている。3~4人子供がいる方の初婚年齢、第
一子出産年齢は若く、今の私の年齢の時にはすでに母親になっていることを考えると、
社会人になる年齢が結婚・出産に関係していると実感する。少子化の原因が必ずしも女
性の社会進出といえないのは、先進国の国々が日本よりも高い人間関係指数を達成して
いる上に、合計特殊出生率も日本を上回る数値を記録していることからである。女性の
社会進出と、出産・育児の関係で最も大事なことは、出産・育児の機会コストとされて
いる。ここでの機会コストとは、有職者女性が出産・育児を機に退職し非正規労働者へ
の転職などによる将来的な所得の減少のことである。機会コストが減少してしまう要因
は3つが挙げられ、1つ目は教養や職業経歴の個人による資質や、男女差別からなる社
会的制約により定まる個人の所得獲得能力である。この所得獲得能力が高いと機会コス
トは高くなる。2つ目は転職を余儀なくさせられる度合いであり、女性の立場からみた
仕事と家庭の役割の両立のし易さから特に規定されている。この両立度は家族環境、職
場環境、地域環境、法的環境といった社会環境に依存することになる。三つ目は転職に
よる収入の大幅な減少や同じ職に復職することが難しくなる等、柔軟な働き方ができな
10
い度合いによる要因である。働き方については、女性は現実主義者であり、男性の方が
理想と現実との差が大きい。厚生労働省の委託で三菱UFJリサーチ&コンサルティン
グが実施した「子育て期の男女への仕事と子育ての両立に関するアンケート調査」
(2009
年)によると、「家事と仕事・子育てを両立」させたいと考えている正社員は、女性で
52.3%、男性 58.4%となっている。しかし、実際には、「仕事に専念」「どちらかという
と仕事優先」が女性では 31.2%、男性では 74.5%となっており、男性においての理想と
現実との差が顕著に現れている7。この調査から、夫婦での家庭においての認識の違い
がみてとれる。
図表-6
出典:http://www.babycome.ne.jp/online/research/detail.php?vol=76 より引用。
図表-6からわかるように、子育てにおいて一番の障害は経済的な問題である。夫婦
はお互い合意のうえで子供を作るので、第一子まではスムーズにいくかもしれない。し
かし、第二子になると妻の就業が出生意欲に影響を及ぼすようになってくる。性別によ
って効果を及ぼす方向性は異なり、男性は妻が就業すると二人目が欲しいと思うのに対
し、女性は自分自身が社会に出ていると二人目は欲しくないと思う割合が高くなる。こ
のすれ違いは、日本社会に根付いている性別役割分業が大きく関係しており、昔から日
7朝日新聞(2015/01/07
アクセス) http://www.asahi.com/diversity/data/より引用。
11
本では男性は外に出て安定した稼ぎを持ってくることを期待されているし、女性は家
事・育児を担い、家を守ることが期待されてきた。近年の雇用情勢の変化によって、男
性の雇用は必ずしも安定的なものでなくなってしまったので、夫婦共働きで家族を支え
る方が経済的安心度はかなり高くなる。このことが夫の出生意欲を高めている原因と推
定される。一方妻の立場から考えられる心理は、現状の女性に大きな負担がかかる子育
てにおいて一人目の出産を終えた際では、働きながら二人の子供を育てることは難しい
と感じてしまうだろう。世帯収入に対する妻の収入の割合が相対的に高ければ、出産を
機に仕事を辞められては経済的に困ってしまう状況になりかねない。このことから、夫
婦での出生意欲に対する認識の違いが生じてくるのだろう。妻の就業が夫婦の経済面で
大きなウェイトを占めている場合、意思決定、家事分担、出生意欲は女性に決定権が委
ねられることが多くなる。長期的な展望がないと子供をもつことは難しいので、雇用の
安定化、格差の是正、教育費の負担軽減等の子育てに関する環境を整えることが結果と
して少子化の歯止めに繋がっていく。少子化の問題でなくても格差を減らす政策は必要
で、男女の賃金格差を埋め、男性でも女性でも働ける方が働くという柔軟な考えを持て
るような社会になっていけたら、少子化も改善されていくのではないだろうか。賃金格
差の問題においては、もし女性の賃金を男性と同等なものにした場合、女性も競争社会
の中で働くことになり、産休や育児休暇を取得後男性と同じような不安にかられ職場復
帰が困難になってしまう可能性も否定できない。少子化傾向を逆転さえるためには文明
システム、つまり、男女の家庭においてのあり方の考え方を変えていくべきである。女
性が社会進出することは、少子化による生産年齢人口の減少を解消するとともに、男性
に第二子への出生意欲を高めるという効果を生み出すのである。出産できるのは女性の
特権であり能力的には変わりない男女かもしれないが、女性の出産をサポートするため
の支援策は必要であり、男性とは異なる制度、政策を作っていくことが大事なのである。
12
図表-7:少子化対策
出典:宮若市役所
市民アンケート(2008 年)
http://www.city.miyawaka.lg.jp/hp/page000001700/hpg000001662.htm より引用。
では、一般の国民は少子化対策として何を望んでいるのだろうか。福岡県若宮市では
この点を市民にアンケートをとっている。図表 7 はそれをまとめたものであるが、これ
を見ると「安心して仕事ができる子育て環境の充実」「経済負担の軽減」を強く望んで
いることがわかる。安心して仕事ができる子育ての環境は、地域によって異なる(地域
子育て支援整備の促進や保育サービスの充実に取り組んでいる等)。私の出身地である
千葉県四街道市では子育て支援センターがあり、お母さん方の交流の場である。子供を
預けられるだけでなく、お母さんを対象にしているサークルもあり、育児による悩みを
共有できることだけでも心強いと思う。子供によって親の輪も広がっていくことは楽し
みの一つであり、将来、進んで参加していきたいと思う。
第四章
第一節
女性の社会進出に向けて
スウェーデンにおける女性活用政策
これまで、少子化と女性の社会進出の関係性を人口や経済と結び付けて論じてきたが、
女性の社会進出は少なからず少子化の原因であった。しかし、日本より合計特殊出生率
が高い国の方が、男女平等も進んでおり、経済成長を遂げている。
図表―3から、スウェーデンは人間開発指数、ジェンダー開発指数、ジェンダー・エ
ンパワーメント指数すべてにおいて日本より数値が高いことがわかる。女性の社会進出
13
が日本より進んでいるのに関わらず、合計特殊出生率は 1.75 と日本より高い数値を維
持している。スウェーデンを始めとする北欧福祉国家は、社会保障制度・税制への信頼
がとても高く、経済グローバル化の中で競争力を発揮しつつ、高い福祉や教育の水準を
維持しているのである。このように女性の社会進出が進んでいるスウェーデンにおいて
も、以前は日本と同様に「女性は家庭に」という考えが常識であった。スウェーデンで
は 1960 年代に急速な高度経済成長を遂げたことにより労働力不足が深刻な問題となり、
女性の社会進出が進んだという背景がある。いまでは、女性の生産年齢人口の 76%が職
業をもって働いており、ほとんどの女性が職を持っている8。保育所は朝7時から夕方
6時までと決められており、就学前の子供全員が入れる保育所が整備されているのであ
る。これは、子供が少なくなると一人遊びやテレビゲームに時間を費やしてしまう子供
が増え社会性や協調性に欠けた異常な社会集団を生む危険性があることから保育所整
備に力が注がれているのである。そして 450 日間の育児休暇制度では、父親があまり育
児に参加しないという問題が生じた経験から、30 日間は必ず父親がとらなければいけな
い規定になっている。スウェーデンでの育児休暇は 100%消化されている。一方日本男
性の育児休暇取得率は 2.03%であり、改善傾向ではあるが低い数値を記録している9。
そして、児童手当金制度である。この制度は義務教育が終了する 16 歳までに支給され
る制度であり、子供1人の場合には月額 12000 円、2人の場合には 24000 円、3人の場
合には 39200 円と支給され、16 歳を過ぎても高校在学者である場合には、
「教育手当金」
として継続支給されることになっている。このことから、スウェーデンでは国民から集
められた税金がしっかりと国民に還元されていることがわかる。そして、強制的に父親
の育児参加を決めており、育児休暇制度 100%消化率も決まりであるから実現できてい
るのだと思われる。日本では男性の育児休暇制度を 20%までに上げる目標を掲げている
が、現実的にはかなり低い数値になってしまっている。制度等を強制的にして女性の社
会進出を社会全体で支えている点が日本との大きな違いではないだろうか。
第二節
日本での仕事と家庭の両立支援策
では、女性の雇用を増やすためにはどのような支援策、制度が必要なのだろうか。
女性が結婚、そして出産を終えた後も継続して働き続けるためには、子供の保育の問
題があがるだろう。改正前の労働基準法では、産前産後6週間の休暇が保障されていた
が、産休明けに、生後一か月半の乳児の保育者を探すために母親は様々な苦労をしてき
たと思われる10。
女性が働くことが一般的になった今、共働き夫婦が大多数を占める社会では、保育サ
ービスの質と量が確保されることが重要である。まず、待機児童の問題を解消するのが
目標であり、潜在的待機児童は約24万人いるといわれている。その他の保育所の問題
スウェーデンの社会保障制度ページ(2015/01/30 アクセス)。
http://www12.ocn.ne.jp/~y-syaho/sisatuhoukoku/sweeden.htm
9 日本経済新聞(2014/06/23)mw.nikkei.com より引用。
10 手塚和彰・中窪裕也著「変貌する労働と社会システム」73 ページ参照。
8
14
点として、利用者との直接契約が認められていないことである。児童福祉法(平成 10
年)の改正により、認可保育所に入るためには、利用者が保育所を選び、その順位を市
町村に申し込む「利用者選択方式」に改められた。しかし利用者の直接的な契約者は市
町村であり、市町村が定める個々の保育の必要度に応じて、希望する保育所を独自の基
準で判断し割り当てる仕組みであることに変わりはない。これは保育サービスの供給が
限られていることから公正性に基づいた制度とされているが、事業主からしてみれば、
営業努力をしなくても市町村が割り当ててくれるので、サービス価格が一律に定められ
ている仕組みとなっている。このように行政が利用者を認可保育所の空き状況に応じて
割り当てが行われる限り、認可保育所は質の高い保育サービスを提供しようとする意欲
がないのも当然だ。
保育の利用料は、保育の必要度に応じてサービスを受け取り、その能力に応じて費用
を負担する原則である。このような社会主義的な制度は今後女性が働くことが当たり前
の時代になった時に幅広い一般の社会階層対象とする場合には機能し難い。割り当て制
度により潜在的に保育サービス顕在化が妨げられている。この状況を打開するためには
保育サービスに見合った費用を支払えるような制度にする必要がある。
ではなぜ少子化なのに待機児童が発生してしまうのか。一般的に考えれば、子供が少
なくなれば保育所に入所する子供も減り待機児童は減ると思われる。たしかに、少子化
によって過疎化が進んでいる地域もあり、廃校になるなど少子化の減少が実感できる。
しかし、主要都市部ではいまだに人口が増えているのである。都市部は仕事を理由とし
て住んでいる人が多いため必然的に保育所に預けられなければ子供を産むことができ
ないのである。反対に、子供を産みたいと思っても預け先がないなら躊躇ってしまう人
も少なからずいると思われる。
子供への教育も考慮すると、幼稚園の方が入学前の準備や学習できる、長期休暇もき
ちんとあり、親子参加の行事が多いことから子供の成長を逐一見守れるメリットがある。
幼稚園では親同士の交流も盛んであり、時間に余裕がある人はおすすめである。一方保
育所のメリットとしは、保護者の負担が少なく、帰りも夕方、行事も土日など働く親へ
の配慮がされている。栄養のある食事を食べさせてくれ、生活習慣のしつけ等を行って
くれる。デメリットとしては、生活や遊びが中心なので学習的な側面はあまり期待でき
ない。幼稚園は3歳からであり、年齢的には職場復帰できるので、働く親を元に作られ
ている保育所の人気がわかる。
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図表-8:幼稚園と保育所の違い
出所:http://momomamablog.pink/archives/65.html より引用。
少子化時代の女性労働政策として、合計特殊出生率を上昇させるための方策において両
立支援である保育政策の重要性が理解され、児童福祉という狭い分野から国の重要な政策
目標として注目されるようになった。この目標が掲げられた理由として、女性の労働力率
が高い国は出生率も高いという OECD 加盟 24 ヶ国の 2000 年データに対応したものであ
る11。これまでの児童福祉分野を中心とした政策に加えて、2003 年に少子化社会対策基本
法と次世代育成支援対策推進法12が成立され、女性の雇用労働化が進められた。
日本における少子化対策としては 1994 年「エンゼルプラン」を発表から始まり、保
育施設を充実させることが推し進められた。次に発表された政策として、1999 年「信エ
ンゼルプラン」が制定される。エンゼルプランとの違いは、働き方および保育サービス
の充実に加え、相談、教育、住宅などの総合的な実施計画が組み込まれた面であり、2004
年を目標に実施されたのである。そして 2004 年には、男性を含めた働き方の見直しを
盛り込んだ「少子化対策プラスワン」が発表され、実現のために少子化対策基本法の制
定、児童手当法、児童福祉法、育児・介護休業法の改正も同時に行われた。2004 年には、
少子化社会対策大綱を具現化した「子供子育て応援のプラン」も発表されたのである。
上記のように日本政府は少子化に対して様々な対策を行い努力してきたが、少子化の
進行は止まることがなく、政府だけでは十分な効果は得られないと政府の限界が指摘さ
れ、違う視点から少子化を対策することが必要になるのである。まず、子供にかかる費
用を軽減させることが一番に考えられる。子供を持つかどうか、あるいは何人持つかと
いった選択は子供一人にかかる費用と効用によって決まる。子供が欲しくても経済的な
見通しがつかなければ、意図的に子供は作れないのである。子供にかかる養育費は、一
人当たり約 3000 万円ともいわれている13。乳幼児から大学を卒業するまでの 22 年間の
間で見積もられた額であるが、もし私立に入学することがあればもっと費用が嵩むであ
るだろう。しかし、費用と効用については個々の価値観や教育費、母親が子育てによっ
男女共同参画会議少子化・男女共同参画に関する専門調査会(2005 年)より。
雇用環境の整備や保育サービス等の充実、地域社会における子育て支援体制の整備等基
本的政策、そして内閣府に少子化社会対策会議の設置を定めた。
13 All about money(2015/01/30 アクセス) http://allabout.co.jp/gm/gc/12003/参照。
11
12
16
て働けない期間の収入の減少や再就職する際の費用も計算に入れなければならないの
で、把握が難しいとされている。子育てにかかる費用が少子化の原因ならば児童手当を
充実させようと政府はこれまで児童手当の給付額や対象年齢について制度を変更して
きたが、それらの改正の結果として少子化の改善には結びつかなかったのである。理由
としては児童手当が家計の出生行動に与える影響が極めて小さく、所得の増加が更なる
養育費の増加へと繋がってしまったからである。児童手当によって少子化の解消を期待
するのであれば、児童手当をかなり増額し、北欧諸国の様な充実した制度でなければ効
果は期待できないだろう。このように様々な政策が展開されてきたが、実効性はみてと
ることができないでいる。日本企業の雇用管理や企業風土が原因と考えられており、日
本においての「女性は家庭を守るもの」という伝統的な価値観がいまだ根強いのだろう。
女性の社会進出を拡大させるために必要なことは、今ある支援策や制度を十分に利用す
るための周囲の協力や配慮ではないだろうか。
第三節
男性の育児参加の重要性
子育てにかかる時間は週平均で 37 時間であり、女性にかぎれば 53 時間となっており、
一日平均 5.3 時間となる14。
図表-9:子育てに費やしている時間
図表-9は 20 歳~49 歳の男
80
70
60
50
40
30
20
10
0
女を対象に調査したものであり、
男性の子育ては 16.8 時間/週と
少なめであるのがわかる。一方
時間
女性に関しては有職者女性が
41.1 時間/週子育てに費やして
男性
有職者女性
おり、専業主婦に限れば 73.0 時
専業主婦
間/週となり一日平均およそ 10
時間もの時間を育児に費やして
出所:Garbagenews.com(2013 年)より引用。
いることがわかる。
専業主婦に比べ、就業している女性は相対的に子育てに費やせる時間が少ないので、
子供の教育にマイナスの影響を与えるのではないかとの意見もあるが、母親が働くこと
によるメリットもある。世帯所得が高いほど子供の教育への投資が多くなり、つまり、
勤労所得が高い世帯では、質の高い家事・育児に関連する市場のサービスを利用できる
機会が増える。母親が就業しているか否かではなく、母親が子供に対する接し方、態度
が重要であり、このことは仕事に対する態度および価値観がそのまま子供への接し方へ
と影響されやすいことから言える。例えば、仕事の満足度が高い状態で帰宅し良い情緒
である場合、子供への接し方はより温かくなると指摘されている。仕事でのストレスが
高いと、子供へマイナスの影響を与えてしまうことになる。以上より、母親の就業は必
ずしもマイナスの影響を与えるとはいえないのである。
14
内閣府国民生活白書-第4節「子育てにかかる時間」参照。
17
次に夫の家事参加は子育てにどのような影響があるのだろうか。共働きの夫婦におい
て夫の家事参加は必須になってくるが、家事は自分の役割と認知している妻とそうでな
い妻とでは夫の家事参加の量に違いが生じる。つまり前者の妻は、ほとんどの家事をや
ることは当然のことと思っているのに対して、後者の妻はそのようにほとんどの家事を
やる状況になった場合、夫への不満が生じ、このことから夫の家事参加への要求へとつ
ながっている。男性の家事参加の少なさが問題となるのは、妻が夫に対して家事参加を
期待する場合であり、期待されていない場合は問題とならないが、少子化との関連を見
てみると問題となっていることがわかる。(図表-10)
図表-10:夫の家事参加と出生割合の関係
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/ottonokyouryoku.html より引用。
図表-10から、第二子以降の出生に関して夫の家事・育児への協力が関係している
ことがわかる。家事、育児不参加の夫の家庭では 9 割が第2子の出生がないのに対し、
6時間以上の家事、育児参加の協力がある夫の家庭では約7割もの割合で第2子の出生
があるのである。休日に6時間以上、家事・育児に時間を費やしてくれる男性は一般的
に“育メンパパ”とよばれている。この調査の結果から、二人以上子供を育てていくこ
とは夫の協力なしでは実現できないということが言えるのである。
夫の家事参加に及ぼす妻の就業の効果については4つの仮説があり、家族の生活のあ
18
り方は学歴や職種、収入などによってかなり異なるという研究結果が得られている15。
・相対的資源説
夫婦間での相対的な社会経済的資源の量に着目する仮説である。たとえば妻の資源が
相対的に多くなれば夫は「家事をやらなければまずい」と思うのに対し、夫の稼ぎの
方が良ければ「家事をしなくても構わない」と正当化する理由になる。
・時間制約説
夫に「手伝いたい」という気持ちがあったとしても残業等で家にいる時間が少なくな
り、その結果家事を手伝えないというように、時間的な制約が夫の家事参加に影響を
及ぼしている。
・性役割説
性別の役割の違いが夫の家事参加を規定するとみなす説であり、妻が性別役割分業を
肯定する価値観を持っていれば、夫に対して家事参加を求めないことになり、妻が男
女平等的な分業を支持する場合には、夫に家事参加を求めるだろう。
・代替的マンパワー説
日本では三世代が同居している家庭が他の国に比べると多く、日本で独自に考え出さ
れた説である。夫が家事に参加できない場合には同居している親に助けを求めること
ができるという関係があることを言う。
上記の4つの説から、夫の家事参加は妻の性別役割分業観の価値観や仕事による家庭
での時間の減少によって左右されることがわかる。最近では男性の意識にも変化があり、
できることならもっと育児にかかわりたいと願う夫も近年では徐々に増えてきている16。
女性が子供を育てながら継続して働くためには、少しでも女性の育児負担感を軽減する
ことが大事である。男性が育児参加、家事参加をするためにも男性の働き方の見直しも
必要であるといえる。
第四節
まとめ
安倍首相による成長戦略の中核をなすものは女性の活用政策であり、①上場企業に女
性役員を1人起用②待機児童を5年目標に0へ③育児休業を3年に延長といった内容
である17。このように政策や支援策等は努力され続けてきたのである。少子化によって
厚生労働省、独立行政法人労働政策研究、第一章「仕事と育児の両立支援策と研究の課
題」(2006 年)参照。
16 ベネッセ次世代育成研究所(2006 年)より引用。
17 日経ビジネス(2015/01/30)アクセス
http://www.nikkeibp.co.jp/article/matome/20130612/354019/?rt=nocnt を参照。
15
19
生産年齢人口の減少傾向から、女性の活用はこれから一層進められていくだろう。スウ
ェーデンの様に育児休暇消化率 100%を実現するには、制度に強制力をもたせることが
必要である。なぜ育児休暇の取得率が低いのか、原因を把握し改善するべきである。こ
の社会全体による女性の出産、社会進出への協力の姿勢が育児への負担を軽減させるの
であり、特に夫の協力が不可欠である。日本は親切な国としての印象が強いが、子連れ
の母親へは冷たい印象がある。例えば電車内で子供が泣き出したら母親は肩身の狭い思
いをしている。一方で海外は子育てを楽しいと感じている人が多い。社会全体が子育て
に対して優しいのである。少子化問題を解消するためには、女性の仕事と子育てを両立
したいという思いを理解し協力していく社会的風土の形成が必要である。
おわりに.
女性は家庭と社会の両方から、これから先もより求められる存在になっていくと思う。
だからこそしっかりと意思決定できる女性に私はなりたい。少子化から生じた労働力の減
少を女性が補い、世帯収入においての安定を女性が社会に出ることによって確保する。出
生意欲の意識調査によって男性が第二子を欲しいと思うか否かは女性の就業状態に左右さ
れることから、女性の社会進出は男女においても社会においても喜ばしいことである。先
進諸国の出生率と女性が社会に出て活躍しているデータから、必ずしも女性の社会進出が
少子化に直結している原因でないことがわかった。女性の高学歴化によって、大学を卒業
する年齢は 20 代前半であり、晩婚化を引き起こしてしまっているかもしれない。しかし、
配偶者との出会い、そして、親になる教養を学び、自分の能力を社会に生かせられる等メ
リットが多くある。子供を持つという事は経済的な面と精神的な面が大きいことがわかっ
た。自分の子供へ質の高い教育をなるべく受けさせてあげたいと思うので、できるかぎり
働き続けたい。超少子化社会の到来は“国の宝”といわれる子供を生み育てるということ
を国民全体が考え直すきっかけではないだろうか。
女性の労働問題を考える際、家庭責任の問題が永遠の課題であるといわれている。男女
ともにバランス良く担わなければならないが、実際は女性がかなりの家庭責任を負ってい
るのが現状である。昔からある「男性は外で働き、女性は家庭を守る」という意識を変え
させることが必要である。私は家事をやることに抵抗はないが、お互い感謝の気持ちを忘
れてしまうと、夫婦関係が冷めてしまい子供への悪影響に繋がってしまう。配偶者との関
係は子供が 22 歳で離れて暮らすことになると仮定した場合、夫婦で過ごす時間の方が長い
のである。家族をデザインする事は、女性が進んで作っていかなければならない。その為
には、社会で活躍しそして家庭においても輝ける女性に成長していきたい。
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参考文献一覧および URL 一覧
・ 手塚和彰、中窪裕也『変貌する労働と社会システム』信山社出版、2008 年
・ 森下紀夫『超少子化時代の未来学』論創社出版、2007 年
・ 志田原勉『少子・高齢化時代の女性活用』労働調査会出版、2001 年
・ 小長谷有紀『家族のデザイン』東信堂出版、2008 年
・ 山田昌弘『なぜ若者は保守化するのか』東洋経済新報社出版、2009 年
・ 小島隆夫『人口減・少子化社会の未来』明石書店出版、2007 年
・ 前野弘『少子・高齢化と日本経済』文眞堂出版、2014 年
・ 公益財団法人(2015/01/06 アクセス)
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/mariage/12.html
・ 首相官邸(2015/01/06 アクセス)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/women2013.html
・ 産婦人科デビュー
知っているようで知らない少子化のこと(2015/01/06 アクセス)
http://www.sanfujinka-debut.com/topics/birthrate/index.html
・ 厚生労働省(2015/01/06 アクセス)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/09/h0928-6c.html
・ ノルウェーにおける男女平等政策(2015/01/06 アクセス)
http://www.no.emb-japan.go.jp/index_j.htmyori
・ Garbage news.com 子育てのページ(2015/01/06 アクセス)
http://www.garbagenews.net/archives/2066913.html
・ 総務省統計局
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・ ベビカムリサーチ(2015/01/06 アクセス)
http://www.babycome.ne.jp/online/research/detail.php?vol=76
・ 幼稚園と保育園の違い(2015/01/06 アクセス)
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・ Business Journal(2015/01/06 アクセス)
http://biz-journal.jp/2013/10/post_3019_3.html
・ 宮若市役所
少子化のページ(2015/01/06 アクセス)
http://www.city.miyawaka.lg.jp/hp/page000001700/hpg000001662.htm
・ 四街道市(2015/01/06 アクセス)
http://www.city.yotsukaido.chiba.jp/index.html
21
あとがき
最初少子化という大きなテーマが決まったところでずっと止まっていて、どう女性の社
会進出と関連付けていくか最後まで悩んでいました。自分が三人兄弟なので、将来は三人
のお母さんになりたいと思っています。大学へ進学させることも考慮すると共働きは避け
ていけないと思うので、社会に通用するような女性になれるよう今後努力していきます。
ありがとうございました。
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