...

平成 23 年度 包括外部監査の結果報告書

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

平成 23 年度 包括外部監査の結果報告書
平成 23 年度
包括外部監査の結果報告書
平成 24 年 3 月
長崎市包括外部監査人
柴田
良智
目 次
第1 監査の概要 ............................................................... 1
1. 監査の種類 ............................................................. 1
2. 選定した特定の事件...................................................... 1
(1) 監査テーマ.......................................................... 1
(2) 監査の対象期間...................................................... 1
3. 特定の事件として選定した理由............................................ 1
4. 監査の方法 ............................................................. 1
(1) 監査の視点.......................................................... 1
(2) 監査の対象及び実施した監査手続 ...................................... 2
5. 監査の実施期間.......................................................... 2
6. 監査実施者 ............................................................. 2
7. 利害関係 ............................................................... 2
第2 監査対象の概要............................................................ 3
1. 地方自治体の状況........................................................ 3
(1) 地方自治体を取り巻く環境の変化 ...................................... 3
(2) 学校施設を取り巻く環境の変化 ........................................ 9
2. 長崎市における状況..................................................... 15
(1) 長崎市の現状....................................................... 15
(2) 長崎市における市立学校施設の現状 ................................... 19
3. 長崎市の取り組み....................................................... 22
(1) 施設全般に関する取り組み ........................................... 22
(2) 教育に関する全般的取り組み ......................................... 25
(3) 学校施設の再編及び有効活用について ................................. 29
第3 監査の結果及び監査結果報告に添えて提出する意見 ........................... 33
1. 監査の視点及び手続き................................................... 33
(1) 公の施設(特に学校施設)の管理運営に関する事務の適切性 ............. 33
(2) 公の施設(特に学校施設)の管理運営に関する事務の経済性、有効性、効率性
........................................................................ 33
2. 監査結果の概要......................................................... 34
(1) 指摘の概要......................................................... 34
(2) 意見の概要......................................................... 34
3. 財務書類の分析......................................................... 35
(1) 分析の目的及び方法................................................. 35
(2) 分析の結果......................................................... 36
(3) 資産・債務改革の加速的推進について(意見) ......................... 42
4. 学校施設に係る分析..................................................... 43
(1) 校舎等更新費用の試算............................................... 43
(2) 分析の結果......................................................... 44
(3) 学校の統廃合、学校施設の複合化及び有効活用について(意見) ......... 45
5. 学校の適正配置について................................................. 46
(1) 学校規模によるメリット、デメリット ................................. 46
(2) 学校規模における国と地方の役割分担 ................................. 48
(3) 長崎市における取り組み............................................. 49
(4) 学校規模の他都市比較............................................... 50
(5) 集落分散と学校配置................................................. 51
(6) 児童生徒数の減尐と学校規模 ......................................... 54
(7) 学校統廃合を検討するうえでの考え方について(意見) ................. 56
6. 公共施設の複合化の検討について ......................................... 61
(1) 背景 .............................................................. 61
(2) 複合化施設の例..................................................... 64
(3) 複合化により期待できる効果 ......................................... 67
(4) 地域力の向上のための複合化検討について(意見) ..................... 68
7. 学校施設の有効活用について............................................. 70
(1) 余裕教室の有効活用について ......................................... 70
(2) 学校開放について................................................... 86
第4 終わりに ................................................................ 91
第1 監査の概要
1.監査の種類
「地方自治法」第 252 条の 37 に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件
(1)監査テーマ
公の施設の管理運営及び有効活用について(学校施設を中心に)
(2)監査の対象期間
原則として平成 22 年度とし、必要と認めた場合、平成 23 年度及び平成 21 年度以前の
過年度分についても監査対象とした。
3.特定の事件として選定した理由
公の施設については、人口減尐や尐子化、市町村合併、施設の老朽化等により利用度
とコストのバランスが変化してきており、厳しい財政状況のもと、施設の効率的な管理
運営はもちろん、施設の建替や新設の検討に当たっては、統廃合や転用、多目的化など
についても検討するとともに、住民ニーズに対応すべく、所有する財産を再点検し有効
活用する取り組みが求められている。
その中でも、学校施設は市の行政財産における建物面積の 4 割を占めるなど、市の財
産上も非常に重要であるとともに、機能面においても、学校教育、家庭教育及び社会教
育等の教育目的に利用されるだけでなく、地域におけるコミュニティ活動の拠点として
の利用や健康の維持増進等を目的としたスポーツ活動の拠点としても利用されているな
ど重要な位置を占めている。
さらに、今般の東日本大震災にみられるように、災害時には住民の避難所や支援物資
の集積拠点となるなど、災害対策や災害時における地域の拠点としてもその重要性が高
いといえる。
以上、公の施設、特に学校施設の重要性を考慮し、包括外部監査のテーマとすること
が相当であると判断した。
4.監査の方法
(1)監査の視点
① 公の施設(特に学校施設)の管理運営に関する事務が、法令及び条例等に従い、適
切に行われているか。
② 公の施設(特に学校施設)の管理運営が経済性・効率性及び有効性の観点から、合
理的かつ適切に行われているか。
なお、管理運営は、大規模改修、耐震化及び建替等工事、土地・建物の貸借及び目的
外利用、さらに有効活用の観点から施設の適正配置等に関することを含む。
1
(2)監査の対象及び実施した監査手続
長崎市が保有する公の施設のうち、学校施設及び地区施設について、以下の手続きを
実施した。なお、地区施設とは、市民利用施設のうち市立図書館等の全市的施設や市庁
舎等の施設を除き、利用圏が主に施設周辺の生活圏にとどまる施設である。
ただし、施設の複合化を検討するために、全市的施設である市民会館については現地
調査を実施した。
① 公の施設(特に学校施設)の管理運営に関する事務手続について、担当者への質
問及び契約書その他文書の査閲を行い、関連諸法令・規則への準拠性を確かめた。
② 各施設を所管する部署から関係書類や資料の提供を受け、これらの閲覧及び担当
者への質問、文書の検討を行って、公の施設の管理運営の状況と問題点を把握し
た。
③ 一部の施設については、現地調査を行って、公の施設の管理運営状況を確かめる
とともに、問題点がないかを検討した。
なお、現地調査については、以下の視点により実施した。
① 施設の利活用状況の把握
② 施設管理状況の把握(バリアフリー、省エネルギー、防災等への対応状況を含む)
③ 近隣施設や他施設との統廃合可能性の検討
④ 施設利用者の要望や施設維持管理担当者の意見などの把握
5.監査の実施期間
平成 23 年 6 月 3 日から平成 24 年 3 月 22 日まで
6.監査実施者
包括外部監査人
柴
田
補
智
公認会計士
香
野
剛
公認会計士
同
五
島
賢
公認会計士
同
谷
川
淳
公認会計士、行政実務経験者
同
小
嶋
博
文
公認会計士
同
湯
田
高
弘
公認会計士
同
松
尾
潤
一
特定社会保険労務士、行政実務経験者
助
者
良
7.利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載す
べき利害関係はない。
2
第2 監査対象の概要
1.地方自治体の状況
(1)地方自治体を取り巻く環境の変化
公の施設、特に学校施設について有効活用を考えていくとき、人口の推移及び人口構
成の変化の状況を把握することが必要である。なぜなら、現在の鉄筋コンクリート造の
施設の耐用年数は 60 年と長期にわたっているため、現時点で最適であるものが必ずしも
将来において最適であるとは限らず、施設規模や施設の内容を決定する要素の一つとな
るからである。
また、施設の建設には一時に多額の資金が必要になる。そのため、地方自治体におい
ては、維持管理費等の将来負担も含め、自らの財政状態を考慮のうえ、進める必要があ
る。さらには、学校施設に関する方針を決定する場合でも、全体最適化の観点から、地
方自治体全体あるいは周辺地方自治体も含めた公有財産の状況を網羅的に把握したうえ
で、新たな行政ニーズに組織横断的に対応することが必要になる。
そこで、まず、全国的な地方自治体の施設を取り巻く環境の変化を把握するために、
総人口及び人口構成の推移と将来推計、地方自治体の財政状況について述べることとし
たい。
ア. 人口の推移、人口構成の変化
① 人口の推移
全国の人口は、次のとおり、これまで増加してきたが、今後減尐することが予想さ
れている。
人口増加社会においては、公共施設に対する需要の拡大に対応して、新たに土地を
取得し開発することが必要になるが、人口減尐社会においては、すでに中心市街地に
存在する施設を時代の要請に合わせて更新し、利用度を維持・向上させていくこと、
すなわち、資産の有効活用が求められる。
【総人口の推移(全国)
】
万人
14,000
H22:1億2,806万人
13,000
12,000
11,000
H42推計:1億1,662万人
10,000
S40:9,921万人
9,000
8,000
S35
S45
S55
H2
H12
H22
H32
H42
H52
H62
H72
※出所「H22(2010)年以前実績値:国勢調査
H22(2010)年以降推計値:国立社会保障・人口問題研究所推計」
3
② 人口構成の変化
全国の 14 歳以下人口(以下「年尐人口」という。
)及び 65 歳以上人口(以下「老
年人口」という。
)は、次のとおり、一貫して尐子高齢化傾向にある。
総人口が減尐していることもあり、高齢化率(老年人口の総人口に占める割合)は、
昭和 55 年の 9.1%から平成 22 年には 23.1%へと大きく増加している。
総人口の推移が量的な変化をもたらすのに対し、人口構成の変化、現在でいえば尐
子高齢化は、公共施設に対する需要を質的に変化させる。
児童生徒数の減尐によって小中学校に対する需要は減尐する一方、高齢者の増加に
よって高齢者福祉施設等に対する需要が増加する。厳しい財政状況下においては、新
たに高齢者施設を設置するだけでなく、小中学校施設の転用・複合化も検討すること
が求められる。
【年尐人口及び老年人口の推移(全国)
】
万人
4,500
4,000
年尐人口:2,751万人(S55)
3,500
3,000
3,868万人(H52推計)
2,500
2,000
1,073万人(H52推計)
1,500
1,000
500
老年人口:1,065万人(S55)
0
S35
S45
S55
H2
H12
H22
H32
H42
H52
H62
H72
※出所「H22(2010)年以前実績値:国勢調査
H22(2010)年以降推計値:国立社会保障・人口問題研究所推計」
4
イ. 地方自治体財政の悪化、市町村合併の進展
① 地方自治体の財政状況
次のグラフは、実質的に地方自治体が自らの収入で負担すべき借入金の残高推移を
示したものである。地方債は、地方自治体が直接借り入れているものである。企業債
は、水道・病院などの公営企業が借り入れているものであるが、料金収入で返済がで
きない場合は、一般会計からの拠出金で負担することになる。地方交付税は、税収の
地域的偏在を是正する目的で国から地方自治体に交付されるものである。財源不足の
ため、国は交付税特別会計にて借り入れを行っているが、この返済原資は、地方自治
体への交付金の減尐によって賄われる。
借入金残高は、バブル経済崩壊後一貫して増加し続け、平成 16 年度に 200 兆円を
超えてからはほぼ横ばいで推移している。
【地方自治体における年度末借入金残高の推移】
兆円
220
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
企業債現在高(普通会計負担分)
交付税特別会計借入金残高
地方債現在高
S60
H3
H5
H7
H9
H11
H13
H15
H17
H19
H21
※出所「平成 23 年地方財政白書」
これに対し、地方自治体の預金というべき積立金のうち、使途が特定の目的に限定
される特定目的基金を除いた積立金の残高の推移をみると、約 6 兆円程度でほぼ横ば
いとなっている。
5
【地方自治体における積立金(特定目的基金を除く)現在高の推移】
兆円
8
減債基金現在高
7
6
5
4
3
2
財政調整基金現在高
1
0
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
※出所「平成 23 年地方財政白書」
また、地方自治体が環境の変化に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保
される必要がある。これを測る指標の一つとして「経常収支比率」がある。これは、
経常的な収入に対する経常的な支出の割合であり、例えば、90%である場合は、経常
的な収入が 100 万円の場合、人件費などの経常的支出に 90 万円が必要で、残り 10
万円で臨時的な支出を賄わなければならない状況を示している。
すなわち、この数値が高ければ、それだけ臨時的経費に充てることのできる収入が
ないということであり、財政構造の弾力性が小さくなる。
地方自治体全体の経常収支比率は、高齢化の影響を受け、高齢者福祉費等の増加に
伴い上昇傾向にあり、健全な範囲とされる 80%を大きく上回って推移している。
【地方自治体における経常収支比率の推移】
95.0%
94.0%
93.0%
92.0%
91.0%
90.0%
89.0%
88.0%
87.0%
86.0%
85.0%
84.0%
93.8%
93.4%
91.5%
92.8%
90.3%
91.4%
91.4%
H17
H18
89.0%
87.5%
H13
H14
H15
H16
H19
H20
H21
※出所「平成 23 年地方財政白書」
6
② 市町村合併の進展
平成 11 年からいわゆる平成の大合併が進み、平成 11 年度には 3,229 団体であった
市町村数が、平成 23 年度には 1,724 団体と半分近くに減尐している。
市町村合併の進展に伴い、重複している施設の解消のため、施設の統廃合が進む一
つのきっかけとなっている。
【市町村数の推移(各年度 4 月 1 日現在)
】
3,500
3,000
2,500
568 568 567 562 552
538
1,990
2,000
1,990
339
1,987
1,981
1,500
1,961
1,872
197 195 193 192 184 184
1,317
844
1,000
500
村
827
812
802
757
754
671 671 672 675 677 695 739 779 782 783 783 786 786
町
市
0
H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23
※出所「総務省資料」
ウ. 資産・債務改革と新公会計制度の導入
平成 18 年 6 月、小さく効率的な政府を実現し財政の健全化を図るために、
「簡素で
効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」
(以下「行政改革推進法」
という。
)が制定された。
「行政改革推進法」は 5 つの重点分野から構成されており、
その一つが資産・債務改革である。資産・債務改革とは、資産の効率性を高めること
で国の債務残高を圧縮・抑制し、国民負担を軽減するというものであり、具体的には
次のとおり定められている。
【行政改革推進法の重点分野】
 国有財産の売却、剰余金の見直しなどによって、今後 10 年間で国の資産を対国内
総生産(GDP)比 2 分の 1 までに圧縮する。
 国有財産については、売却収入、保有による逸失利益等を考慮し、売却の可能性
を検討する。
 庁舎等の設置については、取得及び賃借のうち有利な方法によるものとし、既存
の庁舎等については使用の効率化を図るとともに、余裕が生じた部分を国以外の
者に貸し付けるように努める。
 未利用地(宅地)については、不整形な土地の区画の変更等により売却の容易化
を図るとともに、売却までの間、国以外の者に貸し付けるように努める。
7
 企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備を促進する。
 地方公共団体においては、これら規定の趣旨を踏まえて、資産・債務の実態とそ
の管理体制の状況を確認するとともに、資産・債務改革の方向性とこれを推進す
るための具体策を策定する。
※出所「行政改革推進法 第 5 節」を要約
これを受けて、総務省は平成 18 年 8 月に、「地方公共団体における行政改革の更な
る推進のための指針」を策定した。この中では、複式簿記の考え方を導入した財務書
類(貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書の 4 表)の
作成・活用を通じて資産・債務に関する情報開示と適正な管理を一層進めること、未
利用財産の売却促進や資産の有効活用等を内容とする資産・債務改革の方向性と具体
的な施策を策定することとされている。なお、財務書類は地方自治体卖体だけでなく、
公営企業や地方公社、第三セクター等も含めた連結ベースでの作成も求められている。
多くの市町村では、平成 20 年度から財務書類 4 表を「総務省方式改訂モデル」
(以
下「改訂モデル」という。
)によって作成、公表している。
改訂モデルとは、平成 12 年及び 13 年に公表された「地方公共団体の総合的な財政
分析に関する調査研究会報告書」に示された方法(以下「旧総務省方式」という。)を
改訂したものであり、旧総務省方式に発生主義、複式簿記の考え方をより一層採り入
れたものである。その一方で、実務上の負荷という点にも配慮し、複式簿記に基づい
て記帳された帳簿によることなく、従来の決算データ(決算統計等)を活用する方法
も認めている。したがって、改訂モデルは発生主義、複式簿記の基本的考え方をその
基礎としつつ、財務書類の作成における実務にも配慮したモデルといえる。
改訂モデルによる財務書類は、電算処理化された昭和 44 年以降の地方財政状況調査
のデータと、歳入歳出決算書の数値を用いて作成される。固定資産については、個別
物件ごとに記録された固定資産台帳の整備を前提としておらず、決算統計の普通建設
事業費の累計によって計算されている。したがって、決算統計における科目分類より
詳細なレベルでのコスト把握はできない。
しかし、地方自治体の資産・債務の状況を総括的に記載しており、多くの地方自治
体が統一的な方法で作成している書類であることから、地方自治体の財政状態を概括
的に比較するには適している。
8
(2)学校施設を取り巻く環境の変化
ア. 児童生徒数の減尐に伴う学校数の減尐(廃校の増加)
尐子化に伴い、次のとおり、児童生徒数は減尐している。平成 22 年には 1,055 万人
となり、昭和 56 年の約 1,750 万人から約 40%減尐している。
【全国児童生徒数の推移】
万人
1,800
S56:1,753万人
1,700
1,600
1,500
1,400
1,300
1,200
1,100
1,000
H22:1,055万人
900
800
S50 S53 S56 S59 S62
H3
H6
H9
H12 H15 H18 H21
※出所「学校基本調査」
児童生徒の減尐等に伴い、全国で毎年 300 校以上が廃校となっている。特に、平成
12 年度以降市町村合併の進展に伴い増加している。
【公立学校の年度別廃校発生数の推移】
校
600
500
117
400
300
51
200
100
160
122
163
122
153
72
64 68
374
47
50
46
43
136
43
47
42
100
71
82
43
199 221 227
274
314
88 109
中
学
校
333 322
小
学
校
75 87
250 275 272
123
0
H4
H6
H8
H10
H12
H14
H16
H18
H20
H22
注:平成 22 年度については、東北 3 県(岩手県、宮城県及び福島県)を除く。
※出所「公立学校の年度別廃校発生数(文部科学省)」
9
イ. 施設の耐震化、防犯対策の強化、環境への配慮、バリアフリー化
学校施設の整備等に際し、国(文部科学省)は、施設整備基本方針等において、耐
震化、防犯対策の強化、環境への配慮、バリアフリー化などを推進している。
地方自治体においては、この方針等に基づき、国からの補助などを活用しながら取
り組みを行っており、特に耐震化については、多額の経費を要している。
① 施設の耐震化
学校施設については、従来から災害時等の避難所に指定されているものが多いため、
施設の耐震化等防災面での対応が求められている。
国及び地方自治体は、耐震化に取り組んでおり、次のとおり、全国では平成 17 年
度には 51.8%であったものが、平成 22 年度には 73.3%となっており、さらに東日本
大震災の発生を受け、取り組みが推進されている。
長崎市においても、平成 20 年度までは 30%台であったが、平成 21 年度から集中
して耐震化に取り組んでおり、平成 22 年度には 6 割近くになっている。
長崎市の計画によると、平成 27 年度までに、校舎等の改築予定がある学校を除く
全ての小中学校について耐震化の完了を目指している。
【学校施設の耐震化率の推移】
80.0%
73.3%
全国
67.0%
70.0%
58.6%
60.0%
51.8%
62.3%
54.7%
58.9%
50.0%
46.6%
40.0%
30.0%
34.3%
36.0%
37.3%
H18
H19
長崎市
39.0%
20.0%
H17
H20
H21
H22
※出所「公立学校施設の耐震改修状況調査結果について」
② 防犯対策の強化
平成 13 年に発生した大阪教育大学附属池田小学校事件等を受け、防犯カメラの設
置や不審者侵入の対応訓練の実施などが進められている。
長崎市においても、
「学校における安全管理の手引き(マニュアル)
」を各学校で作
成している。
10
③ 環境を考慮した学校施設の整備
国では、環境負荷の低減や自然との共生を考慮した学校施設を整備し、環境教育の
教材として活用する「エコスクール」の取り組みを推進している。これにより、学校
が児童生徒だけでなく地域にとっての環境・エネルギー教育の発信拠点になるととも
に、地域における地球温暖化対策の推進・啓発の先導的な役割を果たすことが期待さ
れている。
その整備に際しては、次の 3 つの点に留意することが必要とされている。

施設面…やさしく造る

学習空間、生活空間として健康で快適である。

周辺環境と調和している。

環境への負荷を低減させる設計・建設とする。

運営面…賢く・永く使う

耐久性やフレキシビリティに配慮する。

自然エネルギーを有効活用する。

無駄なく、効率よく使う。


教育面…学習に資する
環境教育にも活用する。
長崎市においては、最近建替又は新設された学校施設において、太陽光発電設備の
設置やトイレへの雤水利用などが行われている。
④ バリアフリー化の取り組み
学校施設は、障害の有無にかかわらず、児童生徒が支障なく学校生活を送ることが
できるよう配慮することが必要である。それとともに、地域コミュニティの拠点、災
害時の地域住民の応急的な避難場所としての役割を果たすうえでも、バリアフリー化
を進めることは重要である。
国の「障害者基本計画」において、学校施設等のバリアフリー化の推進が示されて
おり、
「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する
法律の一部を改正する法律」では、学校施設がバリアフリー化の努力義務の対象とな
っている。
このため、文部科学省では、学校施設におけるバリアフリー化などの推進に関する
基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」
を策定している。この指針では,次のとおり、既存施設のバリアフリー化に関する整
備計画を策定し,計画的に整備を実施することが重要であると示されている。
さらに、障害のある子どもたちがいない学校についても、地域コミュニティの拠点
としての機能を十分に果たすことができるよう、スロープや障害者用トイレ、エレベ
ーターなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行うなど、各地方
自治体などによるバリアフリー化の取り組みを支援している。
11
【学校施設バリアフリー化推進指針の概要】
第1章
学校施設のバリアフリー化等の推進に関する基本的な考え方
1 学校施設のバリアフリー化等の視点
(1) 障害のある児童生徒等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよ
うに配慮
(2) 学校施設のバリアフリー化等の教育的な意義に配慮
(3) 運営面でのサポート体制等との連携を考慮
(4) 地域住民の学校教育への参加と生涯学習の場としての利用を考慮
(5) 災害時の応急避難場所となることを考慮
2 既存学校施設のバリアフリー化の推進
(1) 関係者の参画と理解・合意の形成
(2) バリアフリー化に関する合理的な整備計画の策定
(3) 計画的なバリアフリー化に関する整備の実施
第2章
学校施設のバリアフリー化等に係る計画・設計上の留意点
1 計画・設計上の基本的留意事項
2 わかりやすく、円滑に建物に至ることができる配置計画
3 わかりやすく、快適に動きやすい平面計画
4 使いやすく、安全で快適な各室計画
※出所「学校施設バリアフリー化推進指針」を要約
長崎市においては、平成 15 年に完成した桜町小学校にエレベーターが設置されて
いる。今後、校舎の新築・改築・増築の際には、エレベーターを設置する予定であり、
既存校舎においても配慮が必要な児童生徒が在学しているか在学が見込まれる場合
は、設置を検討することとしている。
12
ウ. 東日本大震災の影響
学校施設は、児童生徒の学習・生活の場であるとともに、災害時には地域住民の応
急避難場所としての役割を果たすことから、学校施設の安全性、防災機能の確保は、
極めて重要である。
しかし、平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では、津波等により学校施設
に多くの被害が生じたり、応急避難場所としての施設機能に支障が生じたりするなど、
従来想定していなかった新たな課題がみられた。
このため、文部科学省では、平成 23 年 6 月に「東日本大震災の被害を踏まえた学校
施設の整備に関する検討会」を設置し、今回の震災被害を踏まえた、学校施設の津波
対策や耐震対策、防災機能の確保など、今後の学校施設の整備方策について検討し、
本検討会において緊急提言が、次のとおりとりまとめられている。
【緊急提言の概要】
第1章
学校施設の安全性の確保
(1) 学校施設の耐震化の推進
平成 22 年 4 月 1 日現在で、全国の公立小中学校施設の耐震化率は 73.3%に
とどまっており、約 3 割の学校施設については耐震性が確保されていないこ
とから全国の学校施設の耐震化を一層加速させる必要がある。
(2) 非構造部材の耐震化
多くの学校施設において天井材や照明器具などの非構造部材の被害が発生し
たため、構造体の耐震化だけでなく、非構造部材の耐震対策も速やかに実施
する必要がある。
特に、致命的な事故が起こりやすい屋内運動場の天井材等の落下防止対策を
進める必要がある。
(3) 津波対策
子どもたちや地域住民の命を守るために、今回の震災で津波被害を受けた被
災地やその他全国の津波による浸水が想定される地域では、各地域の状況に
応じて必要な対策を講じる。
児童生徒等の通学に配慮する必要があり、また、学校は地域コミュニティの
拠点であり、学校と地域は密接な関係にあることから、対策を講じる際には
学校と地域の関係を十分考慮する必要がある。
地域によっては学校施設整備による有効な津波対策の実施が困難な場合も考
えられるが、そのような場合でも安全な避難場所へ避難できるよう、避難訓
練など十分な対策を講じることにより、津波から安全に避難できるようにす
ることが必要である。
第2章
地域の拠点としての学校施設の機能の確保
(1) 今回の震災を踏まえた学校施設の防災機能の向上について
学校が子どもたちや地域住民の応急避難場所としての役割を発揮したが、災
害発生直後から学校再開までの間、避難生活上様々な課題がみられたため、
教育機能のみならず、あらかじめ避難場所として必要な諸機能を備えておく
という発想の転換が必要である。
13
【学校機能再開までのプロセスと必要な施設設備】
プロセス
応急避難所機能
学校の機能
必要な施設設備
救命避難期
地域住民の学校
子どもたちの
避難経路
(発災直後
への避難
安全確保
バリアフリーなど
生命確保期
避難場所の開
子どもたちや
備蓄倉庫・備蓄物資、
(避難直後
設・管理運営
保護者の安否
トイレ、情報通信設備、
確認
太陽光発電設備、プール
~避難)
~数日程度)
の浄化装置など
生活確保期
自治組織の立ち
学校機能再開
ガス設備、和室、
(発災数日後
上がり、ボラン
の準備
更衣室、保健室など
~数週間程度)
ティア活動開始
学校機能
学校機能との同
学校機能の再
学校機能と応急避難場所
再開期
居→避難場所機
開
機能の共存を考慮した施
能の解消
設整備
(2) 防災担当部局との連携
学校が本来果たすべき役割を果たしたうえで、地域住民の応急避難場所とし
ての役割も担っていくためには、あらかじめ教育委員会と防災担当部局との
間で、以下に示すような事項について、お互いの役割を明確にしながら、防
災機能の向上を図っていくことが必要である。
・学校の応急避難場所としての位置付け
・応急避難場所として使用する際の学校施設利用計画の策定
・応急避難場所の運営
・応急避難場所として求められる諸機能の整備・維持管理
・備蓄物資や支援物資の確保・管理など
(3) 地域の拠点としての学校を活用するための計画・設計
今回の震災で、地域における学校の重要性が再認識されたため、今後の学校
施設の整備に当たっては、防災機能の強化に加え、地域コミュニティの拠点
として様々な地域ニーズに柔軟に対応できるよう、学校の機能強化を図るこ
とが重要である。
(例:社会教育施設や福祉施設等との複合化、近接化等)
第3章
電力供給力の減尐等に対応するための学校施設の省エネルギー対策
今回の震災では、電力供給力が大幅に減尐し、学校施設においても従前以上に
省エネルギー対策を講じることが求められているため、既存施設を含め環境を考
慮した学校施設(エコスクール)の整備を一層推進することが必要である。
電力供給減尐への当面の対応として、短期間で効果が得られる方策や子どもた
ちなど学校関係者自ら改善できる対策を講じることも必要である。
※出所「東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備について」を要約
14
2.長崎市における状況
(1)長崎市の現状
ア.人口の推移、人口構成の変化
長崎市の総人口は、次のとおり昭和 50 年の約 50 万人をピークに、近年一貫して減
尐傾向にある。また、今後年間 5 千人のペースで減尐し、20 年後の平成 42 年には、約
35 万人となることが予想されている。
【長崎市の総人口の推移(市町村合併等により編入された地域分を含む)
】
万人
55
S50:50.6万人
50
45
40
35
H42推計:35.4万人
30
S35
S45
S55
H2
H12
H22
H32
H42
※出所「H22(2010)年以前実績値:国勢調査
H22(2010)年以降推計値:国立社会保障・人口問題研究所推計」
長崎市の年尐人口(14 歳以下人口)及び老年人口(65 歳以上人口)についてみると、
近年一貫して尐子高齢化傾向にあり、総人口の減尐も相俟って、高齢化率(老年人口
の総人口に占める割合)は昭和 55 年の 8.9%から平成 22 年には 24.9%へと大きく増
加している。
【長崎市年齢別人口推移(市町村合併等により編入された地域分を含む)
】
万人
16
14歳以下人口
14
12
10
8
6
4
2
65歳以上人口
0
S55
S60
H2
H7
H12 H17 H22 H27 H32 H37 H42 H47
※出所「H22(2010)年以前実績値:国勢調査
H22(2010)年以降推計値:国立社会保障・人口問題研究所推計」
15
イ.市町村合併の状況
長崎市は、明治 22 年の市制施行以来、次のとおり合併(編入)を繰り返し、平成 22
年 10 月 1 日現在、行政面積は 406.43k㎡となっている。編入時においては、旧町立又
は旧村立の小中学校がそのまま市立小中学校とされたケースが多い。
【長崎市市域への編入等の状況】
年
編入等状況
明治 22 年(1889 年) 市制施行
面積(k ㎡)
7.00
明治 31 年(1898 年) 下長崎村、戸町村、淵村等編入
16.00
大正 9 年(1920 年) 上長崎村、浦上山里村編入
41.10
昭和 13 年(1938 年) 小榊村、土井首村、小ヶ倉村、西浦上村編入
90.54
昭和 25 年(1950 年) 福田村網場の脇編入
90.60
昭和 30 年(1955 年) 深堀村、福田村、日見村編入
121.32
昭和 37 年(1962 年) 茂木町、式見村編入
165.41
昭和 38 年(1963 年) 東長崎町編入
206.62
昭和 48 年(1973 年) 三重村、時津町(横尾地区、巡り地区)編入
239.03
平成 17 年(2005 年)
香焼町、伊王島町、高島町、野母崎町、外海町、
三和町編入
平成 18 年(2006 年) 琴海町編入
338.72
406.35
※出所「平成 22 年長崎市統計年鑑」
ウ.中期財政見通しと行財政改革の取り組み
長崎市の歳入についてみると、歳入総額約 2,000 億円のうち、使途の限定されない
一般財源と使途が限定される特定財源がほぼ半々となっている。一般財源のうち、半
分の約 500 億円が市税収入、約 400 億円が普通交付税となっている。
歳出についてみると、歳出総額約 2,000 億円のうち、経常的経費が約 9 割の約 1,800
億円、投資的経費が約 1 割の約 200 億円となっている。経常的経費のうち、職員等の
人件費が約 300 億円、福祉等経費に充てられる扶助費が約 700 億円、市債すなわち長
崎市の借金の支払いに充てられる公債費が約 300 億円となっている。
平成 23 年 10 月に作成された平成 24 年度から平成 28 年度までの中期財政見通しに
よると、市税収入は、人口の減尐と地価の下落に伴い、中期的には減尐することが予
想されており、普通交付税は期間中にはほぼ横ばいで推移すると見込まれるものの、
平成 27 年度から市町村合併の特例措置が段階的に縮小されることとなっている。平成
33 年度には、特例措置がなくなり、平成 23 年度ベースで約 39 億円減尐する見込みで
ある。これは、現在の普通交付税の約 1 割に相当する。
歳出に関する中期見通しでは、職員数の削減等により人件費は減尐するものの、高
齢者人口の増加等により扶助費は増加し、公債費は一旦減尐するが、平成 28 年度以降
増加に転じることが予想されている。
16
投資的経費は、小中学校の校舎建替事業などにより、現在より 2 割近く増加し約 240
億円程度で推移することが予想されている。
その結果、歳入から歳出を差し引いた収支は、年間約 20 億円前後の赤字となること
が予想されており、年度中の改善努力による収支改善効果を見込んでも財源不足が発
生する年度が予想されている。
財源不足に対応するための基金は、平成 22 年度末現在の残高が約 90 億円であり、
平成 28 年度末が約 109 億円になると予想されている。
【長崎市の中期財政見通し(一般会計)
】
内
訳
(卖位:億円)
H22
H23
H24
H25
H26
H27
H28
2,117
2,169
2,261
2,216
2,146
2,065
2,048
1,094
1,096
1,089
1,084
1,086
1,074
1,068
うち市税
532
529
529
531
525
514
511
うち普通交付税
390
397
398
401
409
409
406
1,023
1,073
1,172
1,131
1,060
991
981
184
219
301
303
246
192
177
2,101
2,195
2,280
2,225
2,156
2,088
2,069
1,882
1,984
2,035
1,976
1,912
1,843
1,841
1,351
1,420
1,422
1,395
1,359
1,326
1,338
うち人件費
317
316
311
306
295
290
280
うち扶助費
720
766
764
770
771
771
771
うち公債費
314
338
347
319
293
265
288
219
211
244
249
244
244
228
16
▲26
▲19
▲9
▲10
▲23
▲21
0
18
18
18
18
18
18
5.収支改善後財源過不足
16
▲8
▲1
9
8
▲5
▲3
8.基金残高
89
90
91
102
112
109
109
1.歳入
一般財源
特定財源
うち市債
2.歳出
経常的経費
義務的経費
投資的経費
3.収支
4.年度中の収支改善
※出所「長崎市中期財政見通し」(平成 23 年 10 月 長崎市)
しかし、前述のとおり、今後の普通交付税の減額などを考えると、厳しい財政状況
は続くと予想されること、また毎年度の収支改善を着実に実行することが前提となっ
ていることから、長崎市では平成 23 年 8 月に「長崎市行財政改革プラン」を策定し、
行財政改革に取り組むこととしている。
その概要は次のとおりである。
17
【長崎市行財政改革プランの概要】
○基本理念
人口減尐社会に対応する行財政改革
○基本的視点と具体的な取り組み
1
市民との協働による事業推進
(1) わかりやすい情報の発信
(2) 市民からの積極的な意見聴取
(3) 官民協働の基本的方針の明確化
(4) 市民の公益活動に対する支援の強化
2
選択と集中による事業の重点化と業務の効率化
(1) 優先度に応じた事業の取捨選択
(2) 業務手法の抜本的改革
(3) 外郭団体等の健全経営
3
効率的な行政体制の構築と人材育成
(1) 適正な職員配置
(2) 効果的で効率的な行政体制の構築
(3) 自律した職員の育成
(4) 環境にやさしい行政運営
4
健全な財政基盤の確立
(1) 自主財源の確保
(2) 経常的経費の抑制
(3) 実質的な公債費負担の軽減と財政調整基金等の確保
※出所「長崎市行財政改革プラン」
(平成 23 年 8 月)
「2 選択と集中による事業の重点化と業務の効率化 (2)業務手法の抜本的改革」
の具体的な取り組みとして「公共施設の有効活用」が挙げられている。
項目名
項目の概要
公共施設の有効活用
公共施設マネジメント計画を策定し、効果的・効率的な管
理運営を行うとともに、公共施設の有効活用及び適正配置
を図ります。
また、
「長崎市市有建築物耐震実施計画」に基づき、施設
の耐震化を図ります。
※出所「長崎市行財政改革プラン実施計画」
18
(2)長崎市における市立学校施設の現状
ア.概況
① 小中学校数の推移
小中学校の数をみると、平成 2 年ごろまで一貫して増加しており、その後ほぼ数に
大きな変化はない。特に中学校は、近年、平成 2 年に 1 校、平成 14 年に 1 校(分校)
の新設を除き増減していない。
【長崎市立小中学校数の推移】
S35
S40
(卖位:校)
S45
S55
H2
H12
H17
H22
小学校
55
69
68
75
78
78
78
73
中学校
16
26
35
36
40
40
41
41
注:市町村合併により編入された地域における小中学校を含む。
※出所「長崎市教育委員会提供資料」より監査人が作成
② 児童生徒数の推移
長崎市における児童生徒数は、昭和 30 年代をピークに一貫して減尐傾向にあり、平
成 10 年度時点でピーク時と比べ約半分となり、平成 21 年度までの約 10 年間でさらに
約 16%減尐している。長崎市教育委員会の推計によると、平成 27 年度までの 6 年間
でさらに約 12%減尐することが想定されている。
【長崎市立小中学校児童生徒数の推移】
ピーク時
※
(卖位:人)
平成元年度
平成 10 年度
平成 21 年度
平成 27 年度
(推計)
小学校
52,068
33,985
26,107
22,688
19,782
児童数
(100)
(65.3)
(50.1)
(43.6)
(38.0)
中学生
28,414
18,710
14,520
11,480
10,246
生徒数
(100)
(65.8)
(51.1)
(40.4)
(36.1)
※ピーク時は、小学生が昭和 34 年度、中学生が昭和 38 年度
( )内の数字は、ピーク時を 100 としたときの割合である。
※出所「第二次長崎市立小中学校適正配置計画」
③ 1校当たり児童生徒数の推移
上記①及び②から、児童生徒数の大幅な減尐に対し、学校数がほとんど変化してい
ないことがわかる。そのため、次のとおり、平成 22 年度の 1 校当たりの児童生徒数を
みると、上記②の児童生徒数と同様、昭和 45 年の約 4 割程度となっており、小中学校
とも約 300 人となっている。
19
【1 校当たり児童生徒数の推移】
小
学
校
中
学
校
(卖位:人/校)
S45
S55
H12
H22
児童数
50,862
48,184
37,630
27,174
22,260
学校数
68
75
78
78
73
748
642
482
348
305
生徒数
25,017
21,738
19,966
15,217
11,152
学校数
35
36
40
40
41
715
604
499
380
272
1 校当たり児童数
1 校当たり生徒数
H2
④ 小中学校に係る費用(一般会計決算の状況)
長崎市の一般会計における教育費は次のとおりである。学校施設の建設及び修繕費
はこの中に含まれている。歳出総額に教育費が占める比率は約 6%、小学校費と中学
校費の合計が歳出総額に占める比率は 2~3%で推移していることがわかる。
【教育費決算額の推移】
(卖位:百万円)
平成 20 年度
決算額
歳出総額
平成 21 年度
割合
決算額
平成 22 年度
割合
決算額
割合
191,243
100.0%
205,353
100.0%
210,091
100.0%
11,771
6.2%
13,122
6.4%
13,033
6.2%
小学校費
3,452
1.8%
3,647
1.8%
3,397
1.6%
中学校費
1,388
0.7%
2,209
1.1%
2,475
1.2%
その他
5,186
2.7%
5,587
2.7%
5,477
2.6%
教育費
※出所「長崎市歳入歳出決算書」
小学校費及び中学校費のうち、校舎建替、大規模修繕及び耐震補強工事にかかる費
用の推移は次のとおりである。耐震診断の結果を受けて、平成 21 年度から耐震補強工
事が本格化しているため、
小学校・中学校ともに耐震補強工事の金額が増加している。
なお、平成 20 年度は大浦小学校(北大浦・单大浦・浪平の 3 小学校を統合)の新設
工事があったため、小学校の校舎建替の金額が膨らんでいる。
【校舎等更新費用の推移】
内
容
小学校
(卖位:百万円)
平成 20 年度
平成 21 年度
平成 22 年度
1,545
1,275
1,366
1,194
333
354
大規模修繕
172
84
250
耐震補強工事
179
858
762
189
790
1,241
-
-
49
大規模修繕
91
99
255
耐震補強工事
98
691
937
校舎建替
中学校
校舎建替
※出所「長崎市歳入歳出決算事項別明細書」
20
⑤ 教育資産及び学校施設の状況
長崎市の貸借対照表によると、
公共資産の状況は次のとおりである。
公共資産とは、
土地・建物・備品など、長期間にわたって行政サービスの提供に用いられる有形の資
産のことである。これらは、時の経過や使用によって価値が減尐すると考えられるた
め、減価償却を行った後の金額で表示される。なお、公共資産には、道路、橋梁及び
市営住宅などが「生活インフラ」の項目に含まれている。
教育資産は教育費によって形成された資産であり、小中学校の校舎、体育館、プー
ル等の施設及びその敷地だけでなく、図書館、公民館、市民会館等社会教育施設及び
その敷地も含まれている。
フローの視点からみた場合、教育費は一般会計の約 6%であるが、ストックの視点
からみた場合、教育資産は公共資産全体の約 30%となっている。
【公共資産(土地及び建物)の状況】
項目
教育
有 生活インフラ
形 福祉
固
定 環境衛生
資 産業振興
産
消防
総務
売却可能資産
公共資産合計
(卖位:百万円)
平成 20 年度末
金額
構成比
193,681
27.2%
339,301
47.6%
13,825
1.9%
29,956
4.2%
59,970
8.4%
11,151
1.6%
64,102
9.0%
436
0.1%
712,422
100.0%
平成 21 年度末
金額
構成比
189,986
26.9%
339,294
48.1%
13,215
1.9%
30,181
4.3%
58,599
8.3%
11,029
1.6%
63,160
8.9%
414
0.1%
705,878
100.0%
※出所「長崎市貸借対照表(平成 20 年度~平成 21 年度)」
また、市有施設(建物)の状況をみてみると、延床面積では、学校施設は市有施設
全体の約 30%を占めていることがわかる。公の施設の管理と有効活用を考えるうえで、
学校施設は重要な位置を占めているといえる。
【公有財産(建物)の延床面積】
区
分
庁 舎 等
消防施設
行
校
政 公 学
財 共 市営住宅
産 用
そ の 他
合 計
普通財産
公
用
総合計
(卖位:千㎡)
平成 20 年度末
面積
構成比
56
2.9%
26
1.3%
618
31.8%
621
32.0%
519
26.7%
1,840
94.8%
101
5.2%
1,940
100.0%
平成 21 年度末
面積
構成比
56
2.9%
26
1.3%
611
31.3%
634
32.4%
517
26.5%
1,844
94.4%
110
5.6%
1,954
100.0%
平成 22 年度末
面積
構成比
54
2.8%
26
1.3%
605
30.9%
635
32.5%
514
26.3%
1,834
93.8%
121
6.2%
1,955
100.0%
※出所「財産に関する調書」を要約
21
3.長崎市の取り組み
(1)施設全般に関する取り組み
ア. 組織横断的な会議体等の設置
長崎市では、公共施設の適正配置(統廃合)に関し、組織横断的な取り組みが必要
であるため、次のとおり会議体を設置し計画の策定などに取り組んでいる。
① 公共施設の適正配置・適正管理計画の策定にかかる関係課長会議
設
置:平成 20 年 4 月~平成 21 年 3 月
委
員:長崎市関係課長
内
容:施設の統廃合と適正配置の方針の策定、民間委託、県や民間の類似施設
との連携、長寿命化策など管理・運営面の検討
経
過:プロジェクトチームを設置し報告書を作成
② 公共施設の適正配置にかかる関係課長会議
設
置:平成 21 年 5 月~平成 22 年 3 月
委
員:長崎市関係課長
内
容:プロジェクトチーム報告書をもとにした統廃合の基本方針・基本計画の
策定
経
過:市民アンケート、市民意見交換会の実施
③ <長崎市議会>公共施設利活用特別委員会
設
置:平成 22 年 4 月~平成 23 年 1 月
委
員:長崎市議会議員
内
容:公共施設の現状と問題点を把握し、公共施設の有効活用を図ることを目
的として、公共施設の配置や利活用の現状について調査するとともに、
市民にとって有効な今後の公共施設のあり方や利活用のための諸方策
について調査検討
経
過:報告書の作成
④ 支所等あり方検討委員会
設
置:平成 22 年 6 月~
委
員:関係団体の役員、有識者、長崎市民等
事務局:総務部行政体制整備室
内
容:長崎市が設置する支所及び行政センター等(以下「支所等」という。)
の機能・組織・配置等を含め、具体的な支所等のあり方の検討
22
⑤ 大型公共施設更新計画検討会議
設
置:平成 22 年 6 月~
委
員:長崎市各部長
事務局:企画財政部総合企画室
内
容:市庁舎、公会堂、市民会館の耐震診断結果にもとづき、耐震化の方法な
ど、大型公共施設の更新について検討
⑥ 公共施設利活用検討に関する関係課長会議
設
置:平成 22 年 7 月~
委
員:長崎市関係課長
事務局:企画財政部総合企画室
内
容:公共施設の利活用度向上策の検討、地区別基本方針の提案など
経
過:長崎市議会公共施設利活用特別委員会への資料提供、機能については、
次の公共施設マネジメント会議に引継ぎ
⑦ 公共施設マネジメント会議
設
置:平成 23 年 4 月~
委
員:長崎市関係課長
事務局:理財部財産活用課
目
的:長崎市の公共施設を重要な経営資源として効果的かつ効率的に管理及び
活用する
所
掌:公共施設白書の作成及び更新に関すること
公共施設マネジメント基本計画の策定及び進行管理に関すること
その他公共施設の利活用の取り組みに関すること
経
過:公共施設白書の作成が完了しており、公共施設マネジメント基本計画に
ついては、平成 23 年度中に策定予定。基本計画策定後は、公共施設マ
ネジメント実施計画の策定に向けて検討する
イ. 公共施設白書及び公共施設マネジメント基本計画
前述した「公共施設マネジメント会議」において、公共施設白書の作成が完了して
おり、公共施設マネジメント基本計画の策定を平成 23 年度中に予定している。
対象となる施設は、病院施設、上下水道施設及び山林等を除く、長崎市の全施設で
ある。なお、学校、住宅及び公園については、それぞれ「長崎市立小中学校適正配置
計画」、「長崎市公営住宅等長寿命化計画」及び「公園施設長寿命化計画」を策定して
いることから、整合性を図る必要があるとしている。
今後は、公共施設マネジメント基本計画に基づき、実施計画となる施設別計画や地
区別計画を策定することとしている。
23
長崎市公共施設マネジメントの概要は次のとおりである。
【長崎市公共施設マネジメントの概要】
※出所「長崎市資料」
24
(2)教育に関する全般的取り組み
ア. 長崎市教育方針及び長崎市教育努力目標
長崎市教育委員会では、長崎市の教育方針及び教育努力目標を次のとおり定めてい
る。
【長崎市教育方針及び長崎市教育努力目標】

長崎市教育方針
長崎市教育委員会は、生涯学習の振興を目指し、学校・家庭・地域社会が連携
を保ちながら、一体となってそれぞれの教育機能を十分発揮するよう努め、もっ
て教育基本法に明示された教育の目的の達成を期する。
特に、長崎市の地域的特性と社会的要請にかんがみ、相互信頼と平和希求の精
神に満ち、国際性に富む市民の育成に努める。

長崎市教育努力目標
◎ 自ら学ぶ力と豊かな心を育てる学校教育の実現
◎ 平和希求の心を培う教育の推進
◎ 平等な社会づくりをめざす人権教育の推進
◎ 心豊かで、たくましく生きる青尐年の育成
◎ ふれあい、学びあうまちづくりの推進
◎ 潤いとゆとりをもたらす市民文化の振興
◎ 健康な心とからだを育む体育・スポーツの振興
※出所「平成 23 年度教育要覧」
イ. 教育振興基本計画
教育基本法第 17 条第 2 項の規定に基づき、長崎市は平成 18 年 12 月に「長崎市教育
振興計画」を策定している。その概要は次のとおりである。
【長崎市教育振興計画の概要】

本市教育の理念
「体験や人とのかかわりの中で、豊かな心を育み、生涯にわたって自分らしく
生き抜く長崎人の育成」

具体的な教育活動の指導方針
「体験や人とのかかわりを生かした教育活動の創造」

計画の具現化に向け配慮すべき事柄
① 家庭・学校・地域社会が一体となった教育の実現。
② 長崎の地域性や特色を生かした教育の実現。
③ 最優先で取り組むべき重要課題を明らかにし、課題解決への施策の実施。
※出所「長崎市教育振興計画」
25
ウ. 学校適正配置基本方針及び適正配置計画
長期的な児童生徒数の減尐傾向を受けて学校規模が総体的に小規模化する中、長崎
市は、平成 11 年 2 月に「長崎市立小中学校適正配置の基本方針」を策定している。そ
の概要は次のとおりである。
【長崎市立小中学校適正配置の基本方針」(平成 11 年 2 月)
】
1
適正配置の基本的考え方について
(1) 次代を担う子どもの教育を最優先させる
(2) 全市的視野に立って、順次、学校の適正規模校化・適正配置を図る
(3) 児童・生徒、学校、地域住民に配慮した計画に努める
2
学校の適正規模について
子ども達は集団生活のなかで学習することによって、知的にも社会的にも成長
するものであり、活気に満ちた子ども同士の切磋琢磨ができる集団を形成するた
めには、適正な複数学級を有する学校規模が必要となる。
3
通学区域の設定について
学校の分離新設、統廃合及び通学区域の一部見直し等により、新たに通学区域
を設定する必要があるときは、子どもへの教育効果の向上を図ることを念頭に置
き、次のような基本的な観点をもって総合的見地から通学区域を設定することと
する。
(1) 学校規模や施設の収容力への考慮(概ね 12~24 学級をめど)
(2) 良好な通学条件の確保(小学校は概ね 4km 以内、中学校は概ね 6km 以内)
(3) わかりやすい境界の設定
(4) 同一小学校から同一中学校への進学を原則としつつ、弾力的運用へも配慮
(5) 地域住民の組織・活動への配慮
4
統廃合について
(1) 統廃合の形態(新設統合、吸収統合)
(2) 新設校の用地
(3) 新設校の校名
(4) 新設校の施設整備
将来に向かっても豊かな学校教育が可能となるよう、高機能かつ多機能
な学習環境及び健康かつ安全で快適な施設環境を確保する必要がある。ま
た、統廃合により新設する学校が地域社会の核となるように、地域に開か
れた施設とするため、文教施設や地域の行政関係施設との複合化を検討す
る必要がある。
※出所「長崎市立小中学校適正配置の基本方針」
26
この基本方針に基づき、平成 11 年 5 月に「長崎市小中学校適正配置計画」が策定さ
れた。
小規模化の解消が図れない学校については、その学校を中心に周辺校とブロックを
設定し、学校施設の老朽化の状況等も勘案しながら、適正配置を推進していくとして
いる。
しかし、その後も尐子化の進行で小規模化が総体的に進んでいること、平成 17 年及
び 18 年の市町村合併に伴い市域が拡がり、さらに小規模の学校が増加している実情を
踏まえ、平成 22 年 1 月に「長崎市立小中学校適正配置の基本方針」を改正し、同年 2
月に「第二次長崎市立小中学校適正配置計画」を策定している。
この計画では、次のとおり学校規模が推計されている。この推計結果をもとに、平
成 27 年度に小学校は 11 学級以下、中学校は 5 学級以下となることが見込まれる学校
を中心として、学校施設の建築経過年数と想定される学校規模で分析し、ブロック別
に統廃合を視野に入れた検討を行っている。
【学校規模の推移(小学校)
】
学級数
(卖位:校)
H元
H10
H21
H27(推計)
過小規模校
5 学級以下
1
2
11
(3)
12
(4)
小規模校
6~11 学級
9
17
26
(16)
29
(22)
適正規模校
12~24 学級
38
37
37
(36)
30
(29)
大規模校
25~30 学級
5
0
0
(0)
0
(0)
過大規模校
31 学級以上
3
1
0
(0)
0
(0)
56
57
74
(55)
71
(55)
合
計
【学校規模の推移(中学校)
】
学級数
(卖位:校)
H元
H10
H21
H27(推計)
過小規模校
2 学級以下
0
0
3
(0)
3
(0)
小規模校
3~11 学級
5
15
22
(17)
27
(21)
適正規模校
12~24 学級
22
16
15
(14)
10
(10)
大規模校
25~30 学級
3
0
0
(0)
0
(0)
過大規模校
31 学級以上
0
0
0
(0)
0
(0)
30
31
40
(31)
40
(31)
合
計
※平成元年度及び平成 10 年度の数値は合併した旧 7 町を含まない。したがって、
比較のため、合併前の長崎市域内の学校数を( )で示している
※出所「第二次長崎市立小中学校適正配置計画」長崎市教育委員会
27
エ. 学校給食の実施状況
学校給食の調理実施方式としては、次のとおり、卖独調理場方式(自校方式)、親子
方式、共同調理場方式(センター方式)
、保温食缶配送方式(外注方式)がある。
【学校給食の調理実施方式】
調理実施方式
内
卖独調理場方式
容
学校の敷地内に給食調理場があり、そこで調理する方式
(自校方式)
親子方式
卖独調理場方式の調理場で、近隣学校の給食も一緒に作って
供給する、卖独調理場方式と共同調理場方式の折衷的な方式
共同調理場方式
複数の学校の給食をまとめて調理し、配送車で各学校に届け
(センター方式)
る方式
保温食缶配送方式
民間企業と契約し、民間の調理場で給食を調理し、配送車で
(外注方式)
各学校に届ける方式
長崎市では、従来から小学校では卖独調理場方式による完全給食を実施していたが、
中学校では一部を除いて実施していなかった。平成 12 年度から中学校でも完全給食
を開始したが、給食室が設置されていないため、近隣の小学校で調理し供給する親子
方式又は保温食缶配送方式を採用した。
また、平成 17 年及び 18 年に合併した地域においては、合併前に導入した調理実施
方式を現在も継続しているところが多いため、複数の調理実施方式が混在している。
長崎市における調理実施方式別の学校給食実施状況は次のとおりである。
【長崎市における調理実施方式の状況(平成 23 年 9 月現在)】 (卖位:校、人)
調理実施方式
小学校
校数
中学校
人数
校数
計
人数
校数
人数
卖独調理場
直営
31
9,429
3
1,275
34
10,704
方式
委託
7
4,384
2
1,148
9
5,532
直営
12
2,964
5
391
17
3,355
委託
10
4,009
8
2,903
18
6,912
共同調理場
直営
8
880
6
668
14
1,548
方式
委託
3
162
2
84
5
246
委託
-
-
13
4,462
13
4,462
71
21,828
39
10,931
110
32,759
親子方式
保温食缶配送
方式
合 計
※出所「長崎市作成資料」
児童数の減尐によって小学校の給食設備に余力が生じたことから、これを有効活用
するため、中学校の給食を保温食缶配送方式から親子方式に転換している。また、小
規模な小学校の給食を卖独調理場方式から親子方式に切り替え、効率化を図っている。
28
(3)学校施設の再編及び有効活用について
ア. 学校施設の再編について
① 学校施設の再編(統廃合等)について
平成元年以降の長崎市立小中学校の統廃合の状況は次のとおりである。
小学校は、本校 11 校が 5 校に統合、1 校が新設、分校 1 校が廃止となっている。
一方、中学校の統廃合は行われていない。
【長崎市立小中学校の統廃合の状況(平成元年~平成 23 年)
】
年月日
内容
平成 9 年 4 月 1 日
磨屋・新興善・勝山の 3 小学校を統合し、
諏訪・桜町の 2 小学校を新設
平成 13 年 3 月 31 日
立神小学校を廃止し、小榊小学校に吸収統合
平成 18 年 3 月 31 日
小ヶ倉小学校大山分校を廃止
平成 19 年 4 月 1 日
北大浦・单大浦・浪平の 3 小学校を統合し、
大浦小学校を新設
平成 20 年 4 月 1 日
高城台小学校新設開校
平成 22 年 4 月 1 日
樺島・高浜・野母・脇岬の 4 小学校を統合し、
野母崎小学校を新設
※出所「教育要覧」
また、長崎市においては、次のとおり小中併設の学校があるが、これらは超小規模
校におけるものである。
なお、高島においては、小中学校の校長が高島幼稚園の園長も兼務しており、実質
的に幼小中連携による学校運営が行われている。
【長崎市立小中併設校一覧(平成 23 年 5 月 1 日現在)】
小中学校名
小学校
学級数
(卖位:学級、人)
中学校
児童数
学級数
小中計
生徒数
学級数
児童生徒数
日吉
5
35
3
32
8
67
单
4
40
3
18
7
58
高島
3
8
休校
0
3
8
池島
4
7
1
1
5
8
注:学級数及び児童生徒数には特別支援学級及び特別支援児童生徒を含む
※出所「平成 23 年度教育要覧」
29
② 学校施設の再編等に伴う遠距離通学者対策について
長崎市では、市立小中学校の児童生徒(以下この項目において「児童等」という。
)
の通学費を補助することにより、保護者の負担の軽減を図るため、一定の基準を満た
す遠距離通学児童生徒の保護者に対し補助を行っている。補助金交付要綱における補
助対象者は次のとおりである。
【長崎市立小、中学校遠距離通学費補助金交付要綱における補助対象者】
補助対象者
補助対象校
(1) 自宅から学校までの片道の通学距離が、小学校にあって
市立小、中学校
は 4 キロメートル以上、中学校にあっては 6 キロメート
ル以上で、公共交通機関を利用している児童等の保護者
(2) 第 1 号との均衡を考慮し、地理的条件により、公共交通
機関を利用して通学することが適当であると教育長が認
めた児童等の保護者
(3) 通学状況が特殊なため通学距離が第 1 号と同じ程度で、 東長崎中学校
同一世帯から 2 人以上公共交通機関を利用して通学して
いる児童等の保護者
(4) 小学校又は中学校の統合等に伴い廃校となった学校の通
小榊小学校
学区域から新設又は統合後の学校に通学し、かつ、通学
(H13.3.31
路の道路事情等により公共交通機関を利用して通学する
立神小学校廃校)
ことが適当であると教育長が認めた児童等の保護者
野母崎小学校
(H22.3.31
樺島、高浜、野母、
脇岬小学校廃校)
(5) 通学路の道路事情等により公共交通機関を利用して通学
することが適当であると教育長が認めた児童等の保護者
(6) 廃校となった大山分校の通学区域から学校までの片道の
野母崎中学校
(現在仮移転中)
小ヶ倉小学校
通学距離が 4 キロメートル以上で、学校長が自家用車で (H18.3.31
の送迎を許可している 1 年生及び 2 年生の保護者
大山分校廃校)
(7) 自宅から学校までの片道の通学距離が、3 キロメートル以 尾戸小学校
上の児童等の保護者
形上小学校
長浦小学校
村松小学校
琴海中学校
※出所「長崎市立小、中学校遠距離通学費補助金交付要綱別表」を加工
30
補助対象者の状況は、次のとおりである。ただし、補助対象者には就学援助制度に
より通学費の助成を受ける者を除くため、実際の遠距離通学児童生徒数(小学校で 4
km以上、中学校で 6km以上)とは一致しない。
【遠距離通学費補助金対象者の状況(平成 24 年 1 月末現在)
】
学校名
(卖位:人)
対象者数
全児童等
対象者率
補助金交付要綱適用条項
(A)
数(B)
(A/B)
(前ページ参照)
矢上小学校
20
606
3.3% 第 1 号、第 2 号
日見小学校
2
446
0.4%
茂木小学校
6
236
2.5%
福田小学校
16
566
2.8%
高城台小学校
32
863
3.7%
104
589
17.7%
東長崎中学校
50
872
5.7% 第 1 号、第 2 号、第 3 号
小榊小学校
34
436
7.8% 第 1 号、第 2 号、第 4 号
野母崎小学校
101
192
52.6%
野母崎中学校
82
133
61.7% 第 1 号、第 2 号、第 5 号
小ヶ倉小学校
0
三重中学校
- 第 1 号、第 2 号、第 6 号
尾戸小学校
13
36
36.1% 第 1 号、第 2 号、第 7 号
形上小学校
2
71
2.8%
長浦小学校
4
84
4.8%
村松小学校
62
453
13.7%
琴海中学校
213
371
57.4%
※出所「平成 23 年度長崎市立小、中学校遠距離通学費補助金交付実績」
なお、上記遠距離通学に関することも含め、学校施設の再編に関しては、
「第3 監
査の結果及び監査結果報告に添えて提出する意見 5.学校の適正配置について」に
おいて、詳細に検討している。
31
イ. 既存学校施設の有効活用
長崎市では、平成 22 年 7 月に「市庁舎等の空き室実態調査」を実施し、市有施設に
おける空き室等の実態を把握している。
その中で、小中学校施設に関する活用事例として、次のようなものがある。
【長崎市における空き教室等の活用事例】
学校名
利活用方法
伊良林小学校など 12 校
旧教室等を放課後児童クラブ(学童保育)として活用
佐古小学校など 4 校
旧教室等を倉庫(市の機関等)として活用
西城山小学校
旧多目的室を地域住民の運動施設として活用
高尾小学校
旧教室を教育関係団体の事務室として活用
※出所「市庁舎等の空き室実態調査結果」
なお、学校施設における有効活用に関しては、「第3 監査の結果及び監査結果報告
に添えて提出する意見 7.学校施設の有効活用について」において、詳細に検討し
ている。
32
第3 監査の結果及び監査結果報告に添えて提出する意見
1.監査の視点及び手続き
「第1 監査の概要 4.監査の方法 (1)監査の視点」に記載した 2 つの監査要点に
ついて、以下のとおり監査を実施した。
(1)公の施設(特に学校施設)の管理運営に関する事務の適切性
ア. 学校施設の大規模改修、耐震化、建替等工事に関する監査手続
平成 22 年度及び平成 21 年度完了分について、下記の資料等を各所管部署から入
手し、事務の適切性について検討した。
 計画から予算要求、設計、積算、起工、入札等業者選定、契約、進捗管理、竣
工検査、支出等に至る一連の書類
 補助事業の場合は補助金等の申請、実績報告等に関する書類
イ. 土地・建物の貸借(目的外使用許可、土地の借り上げ等)に関する監査手続
平成 22 年度及び平成 21 年度分について、
下記の資料等を各所管部署から入手し、
事務の適切性について検討した。
 目的外使用許可の場合は、申請、審査、許可、調定、使用料の収納に至る一連
の書類
 土地・建物の借上げの場合は、契約伺、契約、支出(有償の場合)に至る一連
の書類
 その他、学校施設(施設敷地を含む)の貸し借りに関する書類
ウ. 学校施設の開放や目的外使用に関する監査手続
平成 22 年度及び平成 21 年度分について、
下記の資料等を各所管部署から入手し、
事務の適切性について検討した。
 施設開放に関する手続き(運営協議会への委託関係、団体登録関係を含む)に
関する一連の書類
(2)公の施設(特に学校施設)の管理運営に関する事務の経済性、有効性、効率性
① 長崎市の学校施設に関する状況を把握するために、財政状況、学校規模等の他都
市比較を行った。
② 学校施設の統廃合、他施設との複合化について検討するため、各所管部署にヒア
リングを実施した。
③ 余裕教室の実態等を把握するために、学校施設(14 校)を現地調査した。
④ 地区施設の機能等を把握するために、公民館、ふれあいセンター等(17 施設)を
現地調査した。
⑤ 複合化の状況を把握するために、併設施設(8 施設)を現地調査した。
⑥ 地域性の特徴を把握するために、特定の地域(4 地域)の地区施設を現地調査し
た。
33
2.監査結果の概要
(1)指摘の概要
前述の手続を実施した結果、公の施設(特に学校施設)の管理運営に関する事務の
執行において、規則に反しているもの、又は著しく不当であるものは発見されなかっ
た。
(2)意見の概要
前述の手続を実施した結果、監査結果報告に添えて提出する意見は、次の 5 項目で
ある。詳細については次ページ以降に記載している。
3.財務書類の分析
4.学校施設に係る分析
5.学校の適正配置について
6.公共施設の複合化の検討について
7.学校施設の有効活用について
「3.財務書類の分析」では、長崎市の財務書類を他都市のものと比較分析し、長崎
市は他都市に比べて資産の保有量が多いこと、特に教育分野において資産の保有量が
多いこと、投資余力が小さいことを明らかにしている。
これを受けて、
「4.学校施設に係る分析」では、小中学校の校舎等の更新に必要な
費用の試算を実施している。試算の結果、建替面積を半分にする必要があるとの見解
を示し、その方法として、①学校統廃合の推進、②公共施設の複合化、③学校施設の
有効活用の 3 点を挙げている。この 3 点については、さらに具体的検討を進めている。
「5.学校の適正配置について」では、人口推移と学校規模の他都市比較を行い、長
崎市の小中学校は小規模化が著しいことを明らかにしている。また、学校統廃合が進
まない要因を分析し、学校の統廃合を検討するうえでの考え方に関する意見を述べて
いる。
「6.公共施設の複合化の検討について」では、長崎市及び他都市における複合化施
設の事例を分析し、地区施設に求められる機能と、これらを学校施設と複合化するこ
とによって期待できる効果を検討している。複合化は卖なる施設の合体ではなく、地
域力を向上させるために機能するものでなければならないとし、教育委員会だけでな
く、市民も交えた組織横断的な取り組みが必要であることを述べている。
「7.学校施設の有効活用について」では、余裕教室の有効活用として、放課後児童
クラブ(学童保育)施設への転用を提言している。また、学校選択制が余裕教室の状
況の把握に大きな影響を与えていると考え、これに関する検討結果を述べるとともに、
長崎市の実情に合った学校選択制についても検討している。さらに、学校体育館の有
効活用について、意見を述べている。
34
3.財務書類の分析
(1)分析の目的及び方法
「第2 監査対象の概要
1.地方自治体の状況
(1)地方自治体を取り巻く環境
の変化 ウ.資産・債務改革と新公会計制度の導入」に記載したとおり、総務省改訂モ
デルによる財務書類は、地方自治体の資産・債務の状況を総括的に記載しており、多
くの地方自治体が統一的な方法で作成している書類であることから、地方自治体の財
政状態を概括的に比較するには適している。そこで、公表されている財務書類を使っ
て、長崎市の財政状態を他都市と比較して分析することにした。
財務書類を分析する目的及び方法は以下のとおりである。
【財務書類の分析方法】
目
的
用いる指標
分析方法
① 有効活用度の分析
行政コスト対公共資産比率
左指標の他都市比較
② 老朽化度の分析
公共資産老朽化率
①及び②のクロス分析
(他都市比較)
③ 投資余力の分析
将来世代負担比率
②及び③のクロス分析
(他都市比較)
① 学校施設を中心に公の施設の有効活用の程度を比較分析する。
具体的には、事業量に比べて資産の保有量が大きい場合は有効活用の程度が
低く、資産の保有量が小さい場合は有効活用の程度が高いと判断する。
② 長崎市が保有する公共資産の老朽化の程度を比較分析する。
老朽化が進んでいる場合は、資産残高が相対的に小さくなる。したがって、
「①有効活用度の分析」は、老朽化の程度と合わせて検討することが必要であ
る。
③ 投資余力を把握するために将来世代負担比率を比較分析する。
老朽化が進んでおらず保有する資産が比較的新しい場合は、市債発行残高が
大きく将来世代の負担が大きくなっている可能性がある。したがって、将来世
代負担比率は「②老朽化の程度」と合わせて検討することが必要である。
上記の目的から、財務書類は貸借対照表を中心に分析を行い、必要に応じて行政コ
スト計算書を利用する。また、財務書類は普通会計の財務書類とこれに公営事業会計、
公社、第三セクターを含めた連結財務書類があるが、学校施設は一般会計で手当され
ており、連結財務書類については公表していない地方自治体もあることから、普通会
計の財務書類を利用する。
35
なお、比較対象とする都市は、長崎市と人口、面積、標準財政規模が同規模である
大分市、福山市、金沢市、松山市の 4 都市とした。分析対象とした財務書類は、分析
実施時点において入手可能な最新版である平成 21 年度のものとした。
【比較対象とする都市の概要】
内 容
長崎市
大分市
福山市
金沢市
松山市
444,757
470,293
464,790
444,125
514,924
面積(k ㎡)
406.40
501.28
518.07
467.77
429.03
標準財政規模(百万円)
99,225
93,517
97,708
100,158
101,892
人口(人)
※出所「総務省 決算カード(平成 21 年度)
」
(2)分析の結果
ア. 行政コスト対公共資産比率による分析
算式:行政コスト対公共資産比率=経常行政コスト÷公共資産
※経常行政コストは行政コスト計算書、公共資産は貸借対照表の金額を使用
経常行政コストは、一会計期間の経常的な行政活動に伴う費用である。これには、
公共資産の減価償却費や職員に対する賞与及び退職手当に係る引当金繰入額が含まれ
ており、発生主義ベースの費用が計上されていることから、地方自治体の業務量を表
しているといえる。経常行政コストと公共資産は、生活インフラ・国土保全、教育、
福祉といった行政目的別に把握することができる。
行政コスト対公共資産比率を用いることにより、どれだけの資産でどれだけの行政
サービスを提供しているかを測ることができる。この比率が高ければ、事業量(経常
行政コスト)に比べて公共資産残高が相対的に小さいということであるから、資産を
効率的に使用して行政活動を行っており、投資効率が高いと考えられる。
次の表は、行政コスト対公共資産比率を他都市比較したものである。各地方自治体
全体ベースのものと教育に係るものを示している。なお、長崎市は、国の補助金を受
け入れ原爆被爆者に対する医療援護費などの原爆関係経費に多額の費用を支出してい
るという他都市にない特性がある。そのため、他都市比較に当たっては、原爆関係経
費 221 億円を経常行政コスト(福祉)から除外している。
【行政コスト対公共資産比率 他都市比較(全体)
】
長崎市
大分市
福山市
(卖位:億円)
金沢市
松山市
経常行政コスト
1,479
1,346
1,374
1,396
1,462
公共資産残高
7,058
6,481
5,172
8,655
6,477
21.0%
20.8%
26.6%
16.1%
22.6%
行政コスト対
公共資産比率
※長崎市の経常行政コストは原爆関係経費 221 億円を除外している。
36
【行政コスト対公共資産比率 他都市比較(教育)
】
長崎市
経常行政コスト
公共資産残高
行政コスト対
公共資産比率
大分市
(卖位:億円)
福山市
金沢市
松山市
135
155
162
181
145
1,900
1,402
1,320
2,038
1,402
7.1%
11.1%
12.3%
8.9%
10.3%
長崎市の行政コスト対公共資産比率は、全体ベースでは 5 都市の中で平均的な値で
あるが、教育に関しては最も低くなっている。ただし、公共資産の老朽化が進んでい
る場合(減価償却が進んでいる場合)
、公共資産残高は相対的に小さくなるため、行政
コスト対公共資産比率は相対的に高くなる。上の表で資産効率が高いと考えられる都
市は、他都市に比べて公共資産の老朽化が進んでいる可能性もある。
次では、各都市の公共資産の老朽化の程度を比較し、行政コスト対公共資産比率と
合わせて検討する。
イ. 公共資産老朽化率による分析
算式:公共資産老朽化率=減価償却累計額÷有形固定資産(償却前金額)
※有形固定資産=公共資産-売却可能資産
※有形固定資産(償却前)=有形固定資産-土地+減価償却累計額
※有形固定資産は貸借対照表、土地及び減価償却累計額は注記の金額を使用
公共資産の減価償却がどれだけ進んでいるかをみることによって、公共資産の老朽
化の程度を比較する。公共資産のうち、減価償却の対象とならない売却可能資産と土
地は除外して算定する。
次の表は、公共資産老朽化率を他都市比較したものである。土地及び減価償却累計
額は地方自治体全体ベースの情報しか公表されていないため、公共資産老朽化率は全
体ベースのものを算定しており、教育に係るものは算定していない。
【公共資産老朽化率 他都市比較】
(卖位:億円)
長崎市
大分市
福山市
金沢市
松山市
有 形 固 定 資 産 (A)
7,054
6,458
5,159
8,625
6,414
土
地(B)
2,731
1,950
1,589
3,468
2,224
減 価 償 却 累 計 額 (C)
3,308
3,110
2,760
3,845
3,459
7,631
7,618
6,330
9,002
7,649
43.3%
40.8%
43.6%
42.7%
45.2%
有形固定資産(償却前)
(D=A-B+C)
公共資産老朽化率(C/D)
全体ベースの公共資産老朽化率をみる限り、長崎市は 5 都市の中で平均的な値とな
っている。
37
次に、行政コスト対公共資産比率と公共資産老朽化率を合わせて検討してみる。次
のグラフは公共資産老朽化率を縦軸、行政コスト対公共資産比率を横軸として、各都
市の状況をプロットしたものである。
【行政コスト対公共資産比率と公共資産老朽化率のクロス分析】
公共資産の老朽化が進んでいる場合(減価償却が進んでいる場合)、公共資産残高は
相対的に小さくなるため、行政コスト対公共資産比率は高くなる。上のグラフでは、
上の方向に行くほど右側に、下の方向に行くほど左側に行く傾向にある。
そこで、長崎市について、行政コスト対公共資産比率と公共資産老朽化率の相関関
係を算出した。グラフ上で右上に向かって伸びている矢印が、この相関関係を表した
ものである。この矢印は、他の条件を一定として減価償却(186 億円:平成 21 年度実
績)を進めて行った場合の軌跡である。
この矢印よりも右側に位置する都市は、公共資産老朽化率を加味しても長崎市より
は行政コスト対公共資産比率が高く、資産効率が高いということになる。
38
ウ. 将来世代負担比率による分析
算式:将来世代負担比率=地方債残高÷公共資産残高
この指標は、社会資本形成の世代間負担比率のうち、将来世代の負担比率を表した
ものである。
現存する公共資産は、税金及び国や県からの補助金で賄った部分と地方債を発行し
て賄った部分とがある。地方債で賄った部分のうち未償還部分は、将来返済しなけれ
ばならないものであり、今後の世代が税金等によって負担することになる。これを図
に表すと次のようになる。
【社会資本形成に対する世代間負担の状況】
社会資本
地方債
(公共資産)
(将来世代負担)
純資産
(過去及び現役世代負担)
正確には、上記算式の地方債残高には、貸借対照表の未払金のうち社会資本形成の
財源となった部分を含め、貸借対照表の地方債のうち社会資本形成の財源とならなか
った部分を控除して算定すべきである。しかし、いずれも金額的重要性に乏しく、比
較分析に影響を与えることはないと判断し、これらは加味していない。
上記算式に基づいて将来世代負担比率を算定すると、次の表のようになる。
【将来世代負担比率 他都市比較】
長崎市
(卖位:億円)
大分市
福山市
金沢市
松山市
地方債
2,316
1,938
1,561
2,473
1,695
公共資産
7,058
6,481
5,172
8,655
6,477
32.8%
29.9%
30.2%
28.6%
26.2%
将来世代負担比率
この表をみる限り、将来世代負担比率は長崎市が最も高くなっている。
しかし、この指標も公共資産老朽化率と合わせて検討する必要がある。多額の公共
投資を行う場合、通常は投資額の何割かを起債によって賄うことが多い。資産が新し
いうちは地方債の未償還残高が多くなるため、公共資産老朽化率が低いほど将来世代
負担比率は相対的に高くなると考えられる。
そこで、将来世代負担比率を縦軸に、公共資産老朽化率を横軸にして、各都市の状
況をプロットしてみた。
39
【将来世代負担比率と公共資産老朽化率のクロス分析】
老朽化率が低いほど将来世代負担比率は相対的に高くなると考えられるため、上の
グラフでは、左側に行くほど上方に、右側に行くほど下方に行く傾向にある。したが
って、長崎市よりも左下側に位置している金沢市と大分市は、老朽化率を加味しても
将来世代負担比率が長崎市よりも低いということになる。
長崎市よりも右下側に位置している福山市と松山市は追加で検討する必要がある。
そこで、両市が地方債を財源に追加で公共投資を行った場合、将来世代負担比率と老
朽化率がどのように推移するかをみることにした。グラフ上の矢印は、両市が追加投
資を行った場合の推移を表しており、追加投資後は矢印先端部分にポジションが移動
する。福山市については、100 億円の公共投資を全額地方債で賄うという条件、松山市
については、250 億円の公共投資を全額地方債で賄うという条件をそれぞれ設定してい
る。
追加投資後のポジションをみると、福山市・松山市ともに長崎市の左側に位置して
いるのがわかる。長崎市は、公共資産の老朽化率を加味しても、5 都市の中では将来世
代負担比率が一番高いということになる。
40
エ. 分析結果のまとめ
他都市比較の結果をまとめると、次の 2 点に集約される。

長崎市の行政コスト対公共資産比率は、公共資産老朽化率を加味した全体ベー
スでは 5 都市の中で金沢市の次に低く、公共資産老朽化率を加味せず算定した
教育分野においては最も低い。

公共資産老朽化率を加味した将来世代負担比率は、5 都市の中で最も高い。
長崎市は、他都市に比べて行政コスト対公共資産比率が低く、事業量に比べて資産
の保有量が大きい。教育分野においては、これが顕著に表れている。これは、長崎市
の地形が山がちで平地が尐なく、複雑で長い海岸線が連なる半島部と離島から構成さ
れているため、市域に点在する小集落に合わせて小中学校を分散化せざるを得ないこ
とが主因と思われる。公民館、ふれあいセンター、老人福祉センター、支所・行政セ
ンターなど、地区ごとに配置されている施設についても、小中学校と同様に分散して
いると思われる。
将来世代負担比率が限度を超えると借入金の返済が困難になると考えられるため、
これを一定水準以下に抑える必要がある。将来世代負担比率が高いということは、起
債が制限されやすいということであり、投資余力が小さいということになる。長崎市
は、公共資産の老朽化率は 5 都市の中で平均的な値だが、投資余力が小さく、老朽化
した公共資産の更新については、5 都市の中で最も困難な状況にあると考えられる。
<仁田小学校からの風景(仁田小学校校舎から撮影)>
運動場
渡り廊下(歩道橋)
長崎市中心部にある仁田小学校の校舎から撮影した。写真中央にあるのは仁田小
学校の運動場で、児童が道路上空にある渡り廊下(歩道橋)を通って校舎から移動
しているのが見える。このように長崎市には、斜面地に立地している学校が多い。
41
(3)資産・債務改革の加速的推進について(意見)
他都市に比べて投資余力が小さい長崎市が、他都市に比べて保有量が多い公共資産を
すべて更新することは困難である。したがって、長崎市は、他都市に先んじて他都市以
上に資産・債務改革を進めていく必要がある。
将来世代負担比率が一定で推移したとしても、尐子高齢化の進展は、実質的な将来世
代の負担を増加させるため、投資余力は更に小さくなり、公共資産の更新はますます困
難なものになる。現状分析の結果が示す以上に危機感を持って、資産・債務改革に取り
組む必要がある。
次の表は、平成 17 年の国勢調査結果を基に、平成 47 年までの生産年齢人口の推計を
表したものである。生産年齢人口とは、15 歳から 64 歳までの人口であり、税負担能力
のある世代の人口である。平成 17 年時点において、長崎市は生産年齢人口が 5 都市の中
で最も尐なく、税負担能力のある世代の人口が尐ない。尐子高齢化の進展によって、ど
の都市も生産年齢人口は減尐傾向にあるが、長崎市の減尐は著しい。表下のグラフは、
表中の平成 17 年の人口を 100 とした場合の推移を示したものである。
【生産年齢人口推計】
(卖位:人)
H17
H22
H27
H32
H37
H42
H47
長崎市
291,452
273,802
249,623
226,482
207,567
189,658
172,758
大分市
311,534
303,409
287,498
273,991
262,752
251,652
238,635
福山市
299,698
285,192
266,281
252,296
240,821
228,226
212,574
金沢市
307,748
294,692
276,076
265,370
254,326
240,195
223,139
松山市
343,979
335,377
318,858
306,186
294,318
279,799
262,751
※出所「国立社会保障・人口問題研究所 平成 20 年 12 月推計」
【生産年齢人口の推移(平成 17 年人口を 100 とした場合)】
100.0%
100.0%
90.0%
93.9%
85.6%
80.0%
77.7%
70.0%
71.2%
60.0%
50.0%
65.1%
59.3%
H17
H22
長崎市
H27
大分市
H32
福山市
H37
H42
金沢市
H47
松山市
※出所「国立社会保障・人口問題研究所 平成 20 年 12 月推計」を基に監査人作成
以上の結果をまとめると、
「長崎市は、将来世代負担比率が 5 都市の中で最も高くなっ
ているが、税負担能力のある世代の人口は最も尐なく、しかも、将来世代の負担能力は
最も低下すると予想される。
」ということになる。長崎市は、他都市に先駆けて他都市以
上の資産・債務改革を加速的に推進する必要がある。
42
4.学校施設に係る分析
(1)校舎等更新費用の試算
「3.財務書類の分析」の中で、他都市に比べて投資余力の小さい長崎市が、他都市
に比べて保有量が多い資産をすべて更新することは困難であると述べた。財務書類に
よる分析は概括的に他都市と比較した結果に過ぎないため、ここでは長崎市立小中学
校における校舎、体育館、プール等の施設(以下「校舎等」という。
)が、どの時期に
どの程度の建替工事・大規模修繕工事が必要となるか試算し、学校施設における資産・
債務改革をどの程度進めていけばよいか考察する。
試算に必要な基礎データは、教育委員会施設課から入手した。これには、学校別に
校舎等の建築年度、延床面積、大改修実施時期が記録されている。また、工事台帳を
入手して、校舎等の新築・建替工事、大規模修繕工事の実態を把握し、以下の前提条
件を設定した。
【校舎等更新費用試算に当たっての前提条件】
<耐用年数>
校舎等の耐用年数はいずれも 60 年とする。これは、日本建築学会「建築物の耐
久計画に関する考え方」にある目標耐用年数を参考に設定した。
校舎等建設後 60 年が経過した時点で現有資産を現状どおりに建て替える。例え
ば、昭和 30 年(1955 年)に建設された校舎は、平成 27 年(2015 年)に建替工事
が行われると仮定する。
<建替工事費用>
建替工事費用は、工事卖価に 60 年経過した物件の延床面積を適用して算出する。
児童生徒数の減尐による統廃合や規模縮小は考慮しない。
工事卖価は 330 千円/㎡とした。これは、財団法人自治総合センター「地方公共
団体の財政分析等に関する調査研究会報告書」にある「学校教育系、子育て支援施
設等」の更新卖価を採用した。工事台帳で校舎等新築事例を調べたところ、290 千
円/㎡から 348 千円/㎡と様々であったが、旧校舎等の解体費用も含めれば、330
千円/㎡は妥当な卖価であると判断した。
<大規模修繕費用>
校舎等建設後、30 年が経過した時点で大規模修繕工事を行うと仮定する。工事台
帳を通査したところ、大規模修繕工事の実施時期は建設後 25 年から 45 年と様々で
あるが、計算の便宜上 30 年経過時点で実施することにした。
工事費用は、工事卖価に 30 年経過した物件の延床面積を適用して算出する。工
事卖価は 170 千円/㎡とした。これも建替工事費用と同様に、財団法人自治総合セ
ンター「地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会報告書」にある「学校教育
系、子育て支援施設等」の大規模改修の卖価を採用した。
<工期>
工事の規模にかかわらず、工期は 1 年とした。工事台帳によれば、新築の場合も
大規模修繕の場合も実際の工期は 3~4 年となっているが、計算上の便宜から工期
は 1 年とした。
43
(2)分析の結果
次のグラフは、前述の前提条件に基づいた平成 23 年度から平成 42 年度までの 20 年
間に発生すると予想される校舎等の建替及び大規模修繕費用(以下「校舎等更新費用
という。
)の推移である。
【長崎市立小中学校 各年度の校舎等更新費用予測金額】
(百万円)
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
③
①
4,000
3,000
②
2,000
1,000
0
H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34 H35 H36 H37 H38 H39 H40 H41 H42
建替費用
大規模修繕
※出所 長崎市教育委員会資料に基づき監査人が作成
また、校舎等更新費用の大きさを判断する材料として、上記グラフ中に線①~線③
を示している。その内容は次のとおりである。
【グラフ中の線①から線③の内容等】
線
内容
金額
線①
校舎等更新費用の今後 20 年間の予測金額の平均値
5,098 百万円
線②
校舎等更新費用の平成 22 年度決算額
2,607 百万円
線③
小学校費・中学校費の平成 22 年度決算額合計
5,872 百万円
校舎等更新費用の予測金額は、年度によってバラツキがあるため、20 年間の平均値
を示している(線①)
。ここでは、期間を今後 20 年に区切って示しているが、現有資
産を維持する限りは、これと同等規模の金額が未来永劫必要になると考えてよい。
この予測金額に対して、長崎市の財政状況を勘案すると、どの程度ならば支出可能
なのかを示す指標として、平成 22 年度の校舎等更新費用(線②)及び小学校費・中学
校費(線③)の決算額を示している。小学校費・中学校費は、校舎等更新費用のほか
に、教材整備費、水道光熱費、就学援助費、給食調理員等の人件費など、小学校・中
学校の運営に必要なすべての費用を含んだものである。
44
現有資産を現状どおり維持するためには、平成 22 年度校舎等更新費用決算額の約 2
倍の投資を 20 年間継続しなければならない計算になる。しかし、次の表からも明らか
なように、平成 21 年度から耐震補強工事が本格化しているため、平成 22 年度は校舎
等更新費用がすでに高水準になっている。
さらに、財務書類の分析で明らかになったように、既に高水準にある将来世代負担
比率と生産年齢人口の減尐を考慮すれば、現水準の投資を 20 年間継続することは極め
て困難であるといわざるをえない。
【校舎等更新費用実績の推移】
内 容
(卖位:百万円)
平成 20 年度
平成 21 年度
平成 22 年度
校 舎 建 替
1,194
334
403
大規模修繕
263
183
505
耐震補強工事
277
1,549
1,699
1,734
2,066
2,607
合 計
※出所「長崎市歳入歳出決算事項別明細書」
(3)学校の統廃合、学校施設の複合化及び有効活用について(意見)
ア. 学校統廃合の推進
現有資産を現状どおり維持するには、現水準の 2 倍の投資を 20 年間継続する必要が
あるが、長崎市の財政状況等からかんがみれば、これは極めて困難である。一方、今
後必要な投資額を現水準まで引き下げようとするのであれば、統廃合等によって建替
面積を半分にして、将来の校舎等更新費用を削減しなければならない計算になる。学
校統廃合については、
「5.学校の適正配置について」で詳細に検討する。
イ. 学校施設の複合化
校舎等更新費用を削減するためには、複数の学校を一つにまとめる統廃合のほかに、
学校とその他の公共施設を統合する「複合化」がある。学校を公民館などと一体で整
備することにより、地域交流と防災の拠点としての機能を強化することができる。ま
た、子育て支援施設や老人福祉施設と複合化することによって、多世代間交流の促進
も期待できる。
複合化については「6.公共施設の複合化の検討について」で詳細に検討する。
ウ. 学校施設の有効活用
長期にわたって児童生徒数が減尐しているため、小中学校には使用されていない余
裕教室がある。前述した学校の統廃合・複合化は校舎等の建替を伴う中長期的な課題
といえるが、短期的には余裕教室の有効活用が考えられる。また、学校開放を推進す
る取り組みも必要である。
学校施設の有効活用は「7.学校施設の有効活用について」で詳細に検討する。
45
5.学校の適正配置について
(1)学校規模によるメリット、デメリット
学校施設を含め、子どもたちの教育環境を整備する上で重要な視点の一つとなるの
が学校規模である。財政的な側面からみれば、学校規模が大きいと児童生徒一人当た
りの経費が小さくなって効率的と考えられるが、教育効果の側面からみれば、必ずし
も規模が大きければよいというものではない。
小規模校の場合、児童生徒・教職員・保護者を含めて互いの結びつきが深くなり、
児童生徒の個性や能力に応じた丁寧な指導や家庭的な人間関係を形成しやすいという
メリットがあるが、評価が固定化されやすく学習意欲や競争心に問題が生じやすい、
選択教科や部活動などで選択肢の幅が狭いなどのデメリットがある。大規模校の場合、
多様なクラス替えができることによって新たな価値観や人間関係の形成に寄与し、学
習意欲や競争心を活発にするなどのメリットがあるが、学校としての一体感を保ちに
くい、施設利用に制約が生じる、生徒指導の面で十分に目が行き届かないなどのデメ
リットがある。
学校規模は、学習面、生活面、教育指導面、学校経営面などに様々なメリット、デ
メリットが生じると考えられる。次の表は、これらをまとめたものである。
【学校規模によるメリット・デメリット】
学
習
面
(○:メリット
●:デメリット)
小規模化
大規模化
○児童生徒の一人ひとりに目がとど
きやすく、きめ細かな指導が行いや
すい。
●集団の中で、多様な考え方に触れる
機会や学びあいの機会、切磋琢磨す
る機会が尐なくなりやすい。
●学級間の相互啓発がなされにくい。
●児童生徒数、教職員数が尐ないた
め、グループ学習や習熟度別学習、
小学校の専科教員による指導など、
多様な学習・指導形態を取りにく
い。
●中学校の各教科の免許を持つ教員
を配置しにくい。
○学校行事や部活動等において、児童
生徒一人ひとりの個別の活動機会
を設定しやすい。
●運動会などの学校行事や音楽活動
等の集団教育活動に制約が生じや
すい。
●部活動等の設置が限定され、選択の
幅が狭まりやすい。
○集団の中で、多様な考え方に触れ、
認め合い、協力し合い、切磋琢磨す
ることを通じて、一人ひとりの資質
や能力をさらに伸ばしやすい。
●全教職員による各児童生徒一人ひ
とりの把握が難しくなりやすい。
46
○児童生徒数、教員数がある程度多い
ため、グループ学習や習熟度別学
習、小学校の専科教員による指導な
ど、多様な学習・指導形態を取りや
すい。
○中学校の各教科の免許を持つ教員
を配置しやすい。
○運動会などの学校行事や音楽活動
等の集団教育活動に活気が生じや
すい。
○様々な種類の部活動等の設置が可
能となり、選択の幅が広がりやす
い。
●学校行事や部活動等において、児童
生徒一人ひとりの個別の活動機会
を設定しにくい。
生
活
面
学
校
運
営
面
・
財
政
面
そ
の
他
小規模化
大規模化
○児童生徒相互の人間関係が深まり
やすい。
○異学年間の縦の交流が生まれやす
い。
●クラス替えが困難なことなどから、
人間関係や相互の評価等が固定化
しやすい。
●集団内の男女比に極端な偏りが生
じやすくなる可能性がある。
●切磋琢磨する機会等が尐なくなり
やすい。
○児童生徒の一人ひとりに目がとど
きやすく、きめ細かな指導が行いや
すい。
●組織的な体制が組みにくく、指導方
法等に制約が生じやすい。
○全教職員間の意思疎通が図りやす
く、相互の連携が密になりやすい。
○学校が一体となって活動しやすい。
●教職員数が尐ないため、経験、教科、
特性などの面でバランスのとれた
配置を行いにくい。
●学年別や教科別の教職員同士で、学
習指導や生徒指導等についての相
談・研究・協力・切磋琢磨等が行い
にくく、一人に複数の校務分掌が集
中しやすい。
○施設・設備の利用時間等の調整が行
いやすい。
○クラス替えがしやすいことなどか
ら、豊かな人間関係の構築や多様な
集団の形成が図られやすい。
○切磋琢磨すること等を通じて、社会
性や協調性、たくましさ等を育みや
すい。
●学年内・異学年間の交流が不十分に
なりやすい。
○学校全体での組織的な指導体制を
組みやすい。
●全教職員による各児童生徒一人ひ
とりの把握が難しくなりやすい。
○教員数がある程度多いため、経験、
教科、特性などの面でバランスのと
れた教職員配置を行いやすい。
○学年別や教科別の教職員同士で、学
習指導や生徒指導等についての相
談・研究・協力・切磋琢磨等が行い
やすい。
○校務分掌を組織的に行いやすい。
●教職員相互の連絡調整が図りづら
い。
●特別教室や体育館等の施設・設備の
利用の面から、学校活動に一定の制
約が生じる場合がある。
○保護者や地域社会との連携が図り ○PTA活動等において、役割分担に
やすい。
より、保護者の負担を分散しやす
●PTA活動等における保護者一人
い。
当たりの負担が大きくなりやすい。 ●保護者や地域社会との連携が難し
くなりやすい。
※出所 文部科学省作成資料
47
(2)学校規模における国と地方の役割分担
公立小中学校の設置及び廃止は、学校を設置する市町村の判断に基づいて行われる
ものであり、それぞれの地域の実情に応じて適切に行われることとされている(学校
教育法 29 条)
。一方、国は学校の規模や通学距離について、
「義務教育諸学校等の施設
費の国庫負担等に関する法律施行令」において、以下のとおり規定し、市町村に対し
て助成を行っている。
【義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行令】
第 4 条 法第 3 条第 1 項第 4 号の適正な規模の条件は、次の各号に掲げるものとす
る。
一 学級数がおおむね 12 学級から 18 学級までであること。
二
通学距離が、小学校にあってはおおむね4キロメートル以内、中学校にあっ
てはおおむね6キロメートル以内であること。
【公立小・中学校の統合に係る助成等】
○施設関係
公立の小学校及び中学校を適正な規模にするため統合しようとすることに伴って必
要となり、又は統合したことに伴って必要となった校舎又は屋内運動場(体育館)の
新築又は増築に要する経費の一部を国が負担する。
(負担率:2 分の 1、離島・過疎地
域等の特例あり)
○通学関係(スクールバス・ボート等の国庫補助)
市町村合併や人口の過疎現象に起因する学校統合に伴い、スクールバス・ボートの
購入費や遠距離通学費の一部を国が補助する。(補助率 2分の1)
48
(3)長崎市における取り組み
「第2 監査対象の概要
2.長崎市における状況
(1)長崎市の現状」にもある
ように、長崎市の総人口及び年尐人口(14 歳以下の人口)は一貫して減尐傾向にある。
そのため、長崎市は「第2 監査対象の概要
3.長崎市の取り組み
(2)教育に
関する全般的取り組み」に記載したとおり、平成 11 年 2 月に「長崎市立小中学校適正
配置の基本方針」を策定し、小規模化が進む学校については、通学区域の変更や統廃
合によって学校規模を適正化するとしている。学校の適正規模については、より望ま
しい集団生活の中で活気に満ちた活動ができる規模とし、小学校・中学校ともに 12 学
級から 24 学級を適正規模校としている。また、通学距離については、小学校がおおむ
ね 4km以内、中学校がおおむね 6km以内としている。
この基本方針に基づき策定された(第一次)
「長崎市小中学校適正配置計画」におい
て、小規模化の解消が図れない学校は、その学校を中心に周辺校とブロックを設定し、
学校施設の老朽化の状況等も勘案しながら、適正配置を推進していくとしている。
しかし、その後も尐子化の進行で小規模化が総体的に進んでいること、平成 17、18
年の市町村合併によって検討対象となる学校数が増えていることから、平成 22 年 2 月
に「第二次長崎市立小中学校適正配置計画」を策定している。
学校規模の推移は次のとおりであり、今後もさらに小規模化が進行することが予想
されている。
【学校規模の推移(小学校)
(再掲)
】
学級数
(卖位:校)
H元
H10
H21
H27(推計)
過小規模校
5 学級以下
1
2
11
(3)
12
(4)
小規模校
6~11 学級
9
17
26
(16)
29
(22)
適正規模校
12~24 学級
38
37
37
(36)
30
(29)
大規模校
25~30 学級
5
0
0
(0)
0
(0)
過大規模校
31 学級以上
3
1
0
(0)
0
(0)
56
57
74
(55)
71
(55)
合
計
【学校規模の推移(中学校)
(再掲)
】
学級数
(卖位:校)
H元
H10
H21
H27(推計)
過小規模校
2 学級以下
0
0
3
(0)
3
(0)
小規模校
3~11 学級
5
15
22
(17)
27
(21)
適正規模校
12~24 学級
22
16
15
(14)
10
(10)
大規模校
25~30 学級
3
0
0
(0)
0
(0)
過大規模校
31 学級以上
0
0
0
(0)
0
(0)
30
31
40
(31)
40
(31)
合
計
※平成元年度及び平成 10 年度の数値は合併した旧 7 町を含まない。したがって、
比較のため、合併前の長崎市域内の学校数を( )で示している
※出所「第二次長崎市立小中学校適正配置計画」長崎市教育委員会
49
(4)学校規模の他都市比較
次の表は、学校規模を 1 校当たりの児童生徒数で他都市比較したものである。
長崎市は、小学校・中学校ともに学校数が多く、学校規模は 5 都市の中で最も小さ
い。大分市と比較すると、小学校が 69%、中学校が 57%の規模しかないことがわかる。
【1 校当たりの児童生徒数
他都市比較(平成 22 年度)
】
長崎市
大分市
(卖位:人、校)
福山市
金沢市
松山市
児童数
小
学 学校数
校 1 校当たり児童数
22,260
27,261
26,561
24,841
28,022
73
62
80
60
59
305
440
332
414
475
生徒数
中
学 学校数
校 1 校当たり生徒数
11,152
12,926
11,714
11,638
12,341
41
27
36
25
26
272
479
325
466
475
※出所「中核市市長会 都市要覧(平成 22 年度版)」
次のグラフは、小学校・中学校を規模別に分類し、その構成比を他都市比較したも
のである。長崎市は、小学校・中学校ともに 100 人以下の学校の比率が 5 都市の中で
最も高く、300 人以下の小規模校が過半数を占めている。
【市立小学校 学校規模別構成比他都市比較(平成 22 年度)】
19
長崎市
大分市
7
福山市
9
金沢市
7
19
12
16
26
0%
100人以下
4
9
13
13
14
20%
40%
60%
101~300
301~500
50
501~700
0
6
12
20
9
5
6
25
12
12
松山市
21
6
6
12
80%
701~900
0
1
5
100%
901~
【市立中学校 学校規模別構成比他都市比較(平成 22 年度)
】
11
長崎市
3
大分市
15
3
9
6
福山市
金沢市
3
松山市
3
2
1
5
14
7
8
6
20%
40%
60%
301~500
501~700
0
2
5
5
101~300
7
5
10
0%
100人以下
7
1
0
4
11
4
80%
0
0
100%
701~900
901~
※出所「各市統計年鑑」に基づいて監査人作成
長崎市は他都市と比較して学校数が多く、小規模校の比率が高い。この要因として
は、次の 2 点が考えられる。この 2 点について、更に分析を進めることにする。
【小規模校の比率が高い要因】
① 市域が半島(長崎半島・西彼杵半島)と離島(伊王島・高島・池島)から構成さ
れており、集落が分散していること
② 児童生徒数の減尐に比べて、学校の統廃合が進んでいないこと
(5)集落分散と学校配置
次の表は漁港数を他都市比較したものである。漁業は半島・離島の重要産業であり、
半島・離島の地域振興策として漁港整備が行われていることから、集落分散の程度を
表す指標として有効である。
【漁港数 他都市比較(平成 23 年 7 月 1 日現在)
】
長崎市
漁港数
大分市
17
(卖位:港)
福山市
13
金沢市
6
松山市
0
24
※出所 水産庁 漁港一覧
長崎市と松山市で漁港数を比べると松山市の方が多いが、学校規模別構成比をみる
と、100 人未満の学校は小学校・中学校ともに長崎市の方が比率が高くなっている。
松山市の漁港数が多いのは、離島が多いためである。従来から興居島・釣島の離島
があったが、平成 17 年 1 月に北条市・中島町と合併してから 9 つの有人島を有するこ
とになった。このうち、小学校のある島は 8 つ(うち 3 校が休校中)
、中学校のある島
は 2 つである。
51
長崎市、松山市における離島の小学校・中学校の児童生徒数は、次のとおりである。
【離島の小中学校の児童生徒数比較(平成 22 年 5 月 1 日現在)】
離島小学校
児童数
計
離島中学校
生徒数
長崎市
伊王島小学校
高島小学校
池島小学校
14 人
8人
5人
3校
伊王島中学校
27 人
12 人
高島中学校
2人
池島中学校
2人
計
3校
16 人
松山市
興居島小学校
釣島分校
中島小学校
怒和小学校
津和地小学校
睦月小学校
野忽那小学校
二神小学校
35 人
5人
88 人
9人
8人
休校中
休校中
休校中
8 校(うち休校 3 校)
興居島中学校
145 人
30 人
中島中学校
2校
68 人
98 人
※出所「学校基本調査」
長崎市では、3 つの離島それぞれに小学校・中学校(形式は小中併設校)があり、学
校規模が小さい。
松山市では、小学校はほぼ全島にあるが、中学校は寄宿舎を設置するなどして集約
化しているため、学校規模が比較的大きい。また、学校が設置されていない安居島に
ついては、所要時間 35 分の定期船で本土の小中学校に通っている。離島の学校配置に
ついては、松山市の方が集約化されているといえる。
次に、半島地区の学校配置について検討する。次の表は、長崎市を半島地区と本土
地区に区分し、人口密度を比較したものである。
なお、半島地区は、旧三和町、旧野母崎町、旧外海町(池島を除く)及び旧琴海町
の地域を指し、本土地区は、平成 17 年及び 18 年の市町村合併前の長崎市の地域を指
すものとする。
【半島地区・本土地区の人口密度(平成 22 年 12 月現在)
】
人口(人)
面積(k ㎡)
人口密度(人/k ㎡)
半島地区
34,335
156
220
本土地区
404,131
242
1,668
※出所「住民基本台帳に基づく町別人口・世帯数」
52
【半島地区・本土地区の学校規模分類(平成 22 年 5 月 1 日現在)
】
100 人未満
校数
割合
100~299 人
校数
割合
(卖位:校)
300 人以上
校数
合計
割合
校数
割合
半島
小学校
8
66.7%
3
25.0%
1
8.3%
12
100%
地区
中学校
2
40.0%
2
40.0%
1
20.0%
5
100%
本土
小学校
8
14.0%
15
26.3%
34
59.6%
57
100%
地区
中学校
6
18.8%
12
37.5%
14
43.8%
32
100%
※出所「平成 22 年度教育要覧」
上の表は、半島地区と本土地区の学校規模分類を示したものである。人口密度が希
薄なため、本土地区に比べると半島地区の学校は小規模校が多い。特に小学校は 100
人未満の学校が 3 分の 2 を占め、集落が分散していることを反映している。
中学校については、半島地区の方が、規模は小さいながらも集約化が進んでいると
考えられる。100 人未満の学校数をみると、半島地区は小学校 8 校、中学校 2 校である
のに対し、本土地区は小学校 8 校、中学校 6 校となっている。合計でみても、半島地
区は小学校 12 校、
中学校 5 校で、
中学校 1 校に対し小学校が 2.4 校配置されているが、
本土地区は小学校 57 校、中学校 32 校で、中学校 1 校に対し小学校が 1.78 校配置され
ている。
これを他都市比較すると、次の表のようになる。長崎市は他都市と比較しても中学
校が集約化されておらず、その要因は本土地区にあるといえる。
【中学校 1 校に対する小学校の配置数比較(平成 22 年度)
】
(卖位:校)
長崎市
大分市
福山市
金沢市
松山市
小学校数(A)
73
62
80
60
59
中学校数(B)
41
27
36
25
26
1.78
2.30
2.22
2.40
2.27
A/B
※出所「中核市市長会 都市要覧(平成 22 年度版)
」より監査人作成
次の表は、1 校当たりの児童生徒数を比較したものである。半島地区は、全国平均と
同様に小学校に比べ中学校の方が多いのに対し、本土地区は、逆に中学校の方が尐な
くなっている。本土地区の中学校が集約化されていないと考えられる。
【1 校当たりの児童生徒数(平成 22 年 5 月 1 日)
】
(卖位:人/校)
長崎市
市全体
うち半島地区
うち本土地区
全国平均
1 校当たり小学校児童数
305
127
359
321
1 校当たり中学校生徒数
272
176
317
337
※出所「学校基本調査」
53
(6)児童生徒数の減尐と学校規模
次のグラフは、年尐人口(14 歳以下の人口)の推移を他都市比較したものである。
いずれの都市も市町村合併を行っているが、合併前の年度については編入された市町
村分を合算して表示している。
【年尐人口推移の他都市比較】
人
200,000
150,000
100,000
50,000
0
S35 S40 S45 S50 S55 S60 H2 H7 H12 H17 H22 H27 H32 H37 H42 H47
長崎市
大分市
福山市
金沢市
松山市
※出所「国勢調査結果」及び「国立社会保障・人口問題研究所推計」
全国の年尐人口は、第二次ベビーブームの影響もあって、昭和 45 年から 55 年まで
は増加している。各都市の年尐人口もこれに連動した形で増加しているが、長崎市だ
けは昭和 35 年以降一貫して減尐傾向にある。
これは、長崎市の人口動態が昭和 40 年代前半から転出超過に転じており、第二次ベ
ビーブームによる影響を減殺したことによるものと思われる。最近では、進学・就職
等で県外に転出する人が多く、15~24 歳の人口流出率が大きくなっている。子育て世
代予備軍ともいうべき世代の流出は将来的にも続くとの仮定で、平成 22 年以降の推計
人口は他都市以上に減尐している。
長崎市内を地域別にみると、年尐人口が最も減尐しているのは本庁地区である。次
の表は、長崎市立小中学校の児童生徒数の推移を地域ごとに示したものである。他の
地区に比べて本庁地区の児童生徒数減尐が著しい。周辺部(北部支所、单部支所)に
新しい学校が設置されたことによる減尐もあると思われるが、主因は地区内の年尐人
口が減尐していることにある。
54
【地域別長崎市立小・中学校児童生徒数の推移】
人
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
S45
本庁
S55
東部支所
H2
西部支所
H12
单部支所
北部支所
H22
合併7地区
※出所 長崎市教育委員会作成資料
本庁地区の推移をみると、昭和 50 年度は 35,848 人であった児童生徒数が、平成 23
年度は 12,257 人と約 3 分の 1 に減尐している。この間、小学校は統廃合によって 4 校
減尐しているが、中学校の統廃合は行われていない。この結果、小規模校化が進み、
現在では次のような状況になっており、小学校に比べると、統廃合が行われていない
中学校の小規模校化が進んでいることがわかる。
【本庁地区の学校規模分類(平成 22 年 5 月 1 日 現在)
】
100 人未満
校数
本庁地区
割合
100~299 人
校数
割合
(卖位:校)
300 人以上
校数
割合
合計
校数
割合
小学校
2
8.3%
8
33.3%
14
58.3%
24
100%
中学校
1
7.7%
7
53.8%
5
38.5%
13
100%
※出所「平成 22 年度教育要覧」
55
(7)学校統廃合を検討するうえでの考え方について(意見)
ア. 環境の変化と適正配置計画
「長崎市立小中学校適正配置の基本方針(以下「基本方針」という。
)
」及び「長崎
市立小中学校適正配置計画(以下「配置計画」という。)
」に基づいて、小学校の統廃
合が行われてきた。
「配置計画」については、策定から 10 年が経過していること、市
町村合併によって検討対象となる学校が増えたことから、平成 22 年 2 月に「第二次配
置計画」が策定されている。
しかし、児童生徒数の更なる減尐と長崎市の財政状況を考慮すると、現在の「基本
方針」及び「配置計画」は不十分であると考えられる。以下、その理由について、具
体的に解説する。
イ. 配置計画と資産・債務改革
学校の適正規模校化を優先し複数の学校を統合すると校区が拡大するため、小学校
で 4km、中学校で 6kmの通学距離を超える児童生徒が出てくる可能性がある。適正
規模校化と遠距離通学は、
学校統廃合を検討するうえで考慮すべき重要な要因である。
学校の適正規模校化と遠距離通学の関係は次のとおり 4 つのケースに分類され、そ
れぞれがどのような影響を与えるかについて表にまとめた。
統廃合によって、適正規模校化が実現すれば、子どもの教育環境は大きく改善され
ると考えられる。しかし、統廃合しても依然として小規模校にとどまる場合は、改善
効果が小さい。また、遠距離通学の問題が発生する場合は統廃合に伴う痛みが大きい
が、発生しない場合は小さい。
【学校統廃合による影響】
分類
統合後の学校
遠距離通学
教育環境の改善
痛み
ケース1
適正規模
発生しない
大きい
小さい
ケース2
小規模
発生しない
小さい
小さい
ケース3
適正規模
発生する
大きい
大きい
ケース4
小規模
発生する
小さい
大きい
ケース1は、教育環境の改善効果が大きく、統廃合に伴う痛みが小さいため、子ど
もの教育環境の改善という観点から、統廃合によるメリットを説明しやすい。
「基本方
針」が想定しているのもこのケースである。児童生徒数が大幅に減尐したものの人口
密度が高い本庁地区においては、このような統廃合が可能であると考えられる。特に
集約化が遅れている中学校については、積極的に統廃合を進めていくべきであろう。
しかし、児童生徒数の減尐が更に進むと、隣接校同士を統合しても依然として小規
模校であったり(ケース2)
、適正規模校化を目指して統合すると遠距離通学の問題が
発生する(ケース3)というケースが増えてくると考えられる。今後は、このような
場合の統廃合も進めて行くことが必要になる。
56
繰り返すが、長崎市の財政状況は厳しく、校舎の建替面積は現有面積の半分に減ら
す必要があるとの試算結果が出ている。
【長崎市立小中学校 各年度の校舎等更新費用予測金額(再掲)
】
(百万円)
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
③
①
4,000
3,000
②
2,000
1,000
0
H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34 H35 H36 H37 H38 H39 H40 H41 H42
建替費用
大規模修繕
【グラフ中の線①から線③の内容等】
線
内容
金額
線①
校舎等更新費用の今後 20 年間の予測金額の平均値
5,098 百万円
線②
校舎等更新費用の平成 22 年度決算額
2,607 百万円
線③
小学校費・中学校費の平成 22 年度決算額合計
5,872 百万円
【長崎市立小中学校の統廃合の状況(再掲)
】
年月日
平成 9 年 4 月 1 日
平成 13 年 3 月 31 日
平成 19 年 4 月 1 日
平成 22 年 4 月 1 日
内容
磨屋・新興善・勝山の 3 小学校を統合し、
諏訪・桜町の 2 小学校を新設(①)
立神小学校を廃止し、小榊小学校に吸収統合(②)
北大浦・单大浦・浪平の 3 小学校を統合し、
大浦小学校を新設(③)
樺島・高浜・野母・脇岬の 4 小学校を統合し、
野母崎小学校を新設(④)
これまで行われてきた学校統廃合をみてみると、上の表の①から③はケース1、④
はケース4に該当する。④は合併前の旧野母崎町時代に検討していたものが合併後に
実現したものであるから、
「基本方針」に基づいて実施された統廃合は全てケース1に
該当する。尐子高齢化が進み、財政状況の厳しさが増していることを考えれば、現在
の「基本方針」及び「配置計画」を環境の変化に合わせて、ケース2からケース4に
も対応できるような形に発展させていく必要があるだろう。換言すれば、資産・債務
改革、すなわち「長崎市の財政状況に基づいて公共施設の総量を圧縮する」という枠
組みの中で小中学校の適正配置を検討しなければならないということである。
57
ウ. 学校施設の老朽化について
現在の小中学校は、小規模校化と施設の老朽化が同時に進行しているため、統廃合
を機に校舎を建て替えることが多い。既存施設の収容力が不十分な場合は、老朽化し
た施設に増築するよりも新しく建て替えた方が経済的である。また、校舎の建替に当
たっては、通常、文部科学省から補助金の交付を受けることになるが、施設の経過年
数が基準を超えていないと交付の対象とはならない。したがって、学校統廃合を検討
するに当たって、学校施設の老朽化の程度も考慮すべき要因の一つとなる。
しかし、
学校の適正規模校化と老朽化した施設の更新は、
基本的に別の問題である。
施設の老朽化が進んでいないことを理由に統廃合を検討しないというのは、本末転倒
である。
「第二次配置計画」にあるブロック別検討結果を見ると、小規模校化が進んで
いるが、校舎の老朽化が進んでいないことを理由に、
「状況に変化が生じた場合に検討
する」としているものが多い。
統合しても既存施設の収容能力が十分な場合には、老朽化の程度に関係なく、統廃
合を進めていくべきである。一方、既存施設の収容能力が不十分な場合には、施設の
経過年数や児童生徒数の将来推計を勘案し、どのような状況になったら統廃合を進め
るのかを明確にしたうえで、それまでの間は状況を見守るものとすべきであろう。統
廃合の実現には長い年月を要するため、早い段階で将来構想を描き、地域住民の理解
を得ながら進めていくことが必要である。
平成 21 年度までに行われた耐震診断の結果、
小中学校の施設のうち 334 棟について、
耐震補強工事が必要とされた。これらは平成 27 年度までの完了を目指して工事が行わ
れている。平成 22 年度は、震度6強以上の大規模地震で倒壊等の危険性が高いと診断
された緊急性の高い 95 棟(総工費 17 億円)の耐震補強工事が行われた。校舎の耐震
性確保は緊急かつ重要な課題ではあるが、他都市に比べて学校数の多い長崎市の現状
を勘案すると、統廃合を進めていれば不要だったかもしれない耐震補強工事が存在す
るのではないかと思われる。施設の集約化が遅れると、それだけ維持修繕費が膨らみ、
将来世代に負担を残すことになるということを忘れてはならない。
58
エ. 遠距離通学について
「配置計画」における適正配置の考え方は、小規模校化している学校を中心とした
ブロックを設定し、施設の老朽化を加味しながら、ブロックごとに統廃合を検討する
というものである。
このブロック設定を見ると、離島は卖独で 1 ブロックとなっており、
「児童生徒が一
人でもいる限り、小中学校を配置する」という前提になっている。しかし、伊王島・
高島は都心部の港から 20~30 分の便利なところにあり、定期便も頻繁に運行されてい
る。長崎市よりも財政状況のよい松山市においては、これよりも不便なところから遠
距離通学している児童生徒が存在する。
伊王島・高島については、都心部からの利便性を考慮すれば、小規模特認校として、
豊かな自然環境を生かした特色のある教育を全市域の児童生徒に開放することも考え
られる。これが実現できないようであれば、遠距離通学の問題は発生するが、統廃合
も視野に入れるべきであろう。
なお、小規模特認校については、「7.学校施設の有効活用について (1)余裕教
室の有効活用について イ.学校選択制について」で詳細に検討している。
オ. 全市的視野に立って適正配置を図るために
「基本方針」には、適正配置の基本的考え方として、「全市的視野に立って、順次、
学校の適正規模校化・適正配置を図る」とある。確かに、全市域をブロック設定し、
各学校の学校規模(学級数及び児童生徒数)と施設の老朽化の程度を検討している。
しかし、全市的な校舎建替計画のようなグランドデザインはなく、「4.学校施設に係
る分析」において実施したような経済的分析も行われていない。
「3.財務書類の分析」において述べたように、他都市に比べても長崎市の財政状況
は厳しい。具体的な建替計画を作成しても、予算を確保できる可能性は低く、絵に描
いた餅のようなものを作成することになるかもしれない。しかし、
「様々な視点から現
状を分析した結果、学校の統廃合は、いつまでにここまで進める必要がある」という
一定の指標がないと、全市的な視野に立った適正配置は困難ではないだろうか。
全市的視野に立った適正配置とは、財政状況・尐子化の進行・校舎の老朽化など、
学校を取り巻く環境を理解したうえで、すべての地域の住民が痛みを分かち合うよう
なものであると考える。統廃合しても適正規模校化されない半島地区においては、野
母崎小学校のように遠距離通学という痛みを伴う学校配置を受け入れているという実
例もある。他の地域においては、どのような痛みを受け入れるのであろうか。小規模
校化した学校を維持する代わりに、
「公民館の建替を断念する」「道路改修工事の要望
を取り下げる」
「特色のある教育を実現するために、学校への協力を惜しまない」とい
う選択もあり得るだろう。このような協議を地域住民と進めていくための基礎となる
ものが、全市的視野に立った適正配置であると考える。
59
これを実現するためには、
「基本方針」及び「配置計画」に基づき、教育委員会だけ
で対応している現在の体制では不十分であり、全市的・組織横断的な対応が必要であ
る。
「4.学校施設に係る分析」では、校舎等更新費用の試算の結果、校舎等の延床面
積を現在の半分にする必要があるとの見解を示した。しかし、他の領域に係るものを
最大限に削減し、子どもの教育環境の整備に財源を回すという選択もあるだろう。そ
れには、学校以外の施設の建替費用や道路・橋梁の維持補修費等に係る試算が必要で
あり、将来の財政状況に与える影響についても、より詳細な分析が必要になる。
市は、平成 23 年度から公共施設マネジメント会議を開催し、公共施設マネジメント
基本計画を策定することとしている。学校の適正配置計画については、当該公共施設
マネジメントの一環として、全市的視野に立って進めるべきである。
学校統廃合の問題は、長崎市民が長崎市の財政状況を身近な問題として捉え、責任
ある一市民として今何をすべきかを考えるよい機会になると思う。長崎市職員にとっ
ては、多大な労力を必要とするが、住民意識向上のためのチャンスと捉えて、前向き
に取り組んで欲しい。
60
6.公共施設の複合化の検討について
(1)背景
尐子高齢化等の環境変化に対応するため、公共施設の設置、維持管理及び更新に当た
っては、限られた資源の有効活用が求められる。以下のとおり、特に長崎市においては
その重要性は高く、将来を見据えた施設の集約化の検討が必要である。
ア. 環境の変化への対応
長崎市は、他都市と比較しても人口減尐や尐子高齢化が進んでおり、財政状況も決
して余裕があるとはいえない。また、各公共施設、特に地域に密着した地区施設に求
められる機能も変化が生じている。
① 人口減尐や尐子高齢化
尐子化による児童生徒数の減尐、共働き世帯の増加による保育需要の増加、高齢者
の増加による医療・介護・福祉需要の増加がみられ、高齢者卖身世帯及び高齢者のみ
の世帯が増加している。
しかし、卖純な需要の変動だけでなく、ニーズが多様化していることや民間企業等
によるサービスの提供などにより、公共施設に求められるニーズの量と質は今後も変
化すると考えられる。そのため、あらかじめ変化に柔軟に対応できる施設整備(更新
を含む。
)や、変化に柔軟に対応した施設運営が必要となる。
② 厳しい財政状況
長崎市の財政状況については「第2 監査対象の概要」に記載しているとおりであ
り、生産年齢人口の減尐と地価の下落などによる市税収入の減尐や市町村合併の特例
措置が段階的に縮小されることによる普通交付税の減尐が見込まれることにより、歳
入、特に使途の限定されない一般財源の減尐が見込まれている。
また、高齢者の増加による医療・介護・福祉に要する経費や施設の老朽化等に伴う
維持管理や更新に要する経費の増加が見込まれることから、今後厳しい財政運営が求
められると考えられる。
施設の設置、維持管理及び更新に当たっても、有効性、効率性及び経済性の観点か
らコストの縮減等財政面での努力が求められる。
③ 公共施設に求められる機能等
地域における様々な課題を解決するために、様々な機能が各地域の公共施設に求め
られる。現在、長崎市においては、おおむねそれぞれの機能をそれぞれの施設が担っ
ている状況にある。
これらの機能は、相互に関係している部分がある。地域の防災拠点においては、災
害時要援護者の適切な対応の面でバリアフリー化などが必要であったり、学校の体育
施設が学校教育のほか、地域住民に開放されスポーツ活動に活用されたりする。
また、現在の施設整備に当たっては、環境への配慮、バリアフリー、安心安全など
の視点から、省エネやエレベーター設置、防犯カメラの設置なども求められることか
ら、それらのコストが施設整備の際、追加されることになる。
61
【地域(地区)における(公共)施設の担うべき主な機能】
担うべき機能
現在担っている施設
教育の拠点
学校施設(学校教育)、公民館等(社会教育)
地域コミュニティの拠点
公民館、ふれあいセンター等
スポーツ活動の拠点
学校体育施設、地域体育施設等
地域の防災拠点
避難所(学校体育館等)
、消防団詰所等
高齢者・障害者福祉の拠点
デイサービスセンター、地域包括支援センター等
子育て支援の拠点
子育て支援センター、保育所等
さらに、道路網や公共交通機関の整備又は撤退による交通環境の変化、高速通信網
の整備や高速インターネットの普及による高度情報化の進展、NPO、ボランティア
活動及び企業による社会貢献活動の活発化など施設のおかれている環境や、運営の担
い手について変化が生じている。
イ. 環境の変化に対応するための限られた資源の有効活用
① モノ(土地及び建物)
長崎市の地理的特徴として、平地が尐なく、市域の約 1 割の土地に総人口の 4 分の
3 が集中しており、人口集中地区における人口密度が高いことがあげられる。
他の都市においては、施設を集約する場合、施設を統廃合し利用者の地理的な対象
範囲を広くして母数を増やし、利用度の向上を目指す広域化の手法をとることができ
る。しかし、長崎市においては集落が分散しているため、交通アクセスがよいほんの
一部の地域を除き、施設の統廃合を行ったとしても公共交通機関、特にバスによる交
通アクセスの改善等を行わない限り母数が増加せず、利用度を向上させることは難し
い。
すなわち、地域に必要な施設は、その地域に設置をせざるを得ないともいえる。そ
の際、現在の学校施設又は統廃合により廃校した後の施設及び跡地は、ある程度まと
まっていることや地域の中ではアクセス等の環境が比較的よいことが多いことなど
から、資源の有効活用について、学校施設を中心に考えることが望ましい。
② カネ(市の財源など)
長崎市において新規に土地を取得して施設を整備する場合、交通アクセスのよい土
地は極めて限定されるため、土地の取得コストが高くなる。郊外の高台等の土地を利
用するとなると土地取得コストは軽減されるが、造成費や取り付け道路等の周辺環境
整備にコストがかかるし、場合によっては、新たなバス路線の設置が必要となる。傾
斜地などを利用すると、災害防止のための構造物の工事等にコストがかかる。そのた
め、
「ふれあいセンター」の建設においてみられるように、既存の市有地を有効活用
して整備することとなる。
62
また、前述したとおり、集落が分散しているため施設の地域的集約化が難しく、設
置及び維持管理にかかるコストの低減効果が限定的となる。
さらに、施設の老朽化が集中して進行している場合、短期間に投資できる財源がな
いと、先延ばしになり、その結果、維持管理及び修繕費等管理コストが増加し、サー
ビス低下につながることになる。
加えて、人口、特に生産年齢人口の減尐や経済や雇用情勢の悪化等により税収が減
尐しており、市町村合併の特例措置として増額されている地方交付税も平成 27 年度
から逓減し、平成 23 年度ベースで平成 33 年度には約 39 億円の減尐となることが予
想されている。
公共施設に求められる機能(防災・防犯や環境への配慮、バリアフリー化など)へ
の対応も考えると、いかにコストを抑え、市民サービスの向上につながるような施設
整備及び維持管理ができるかが問われている。
③ ヒト(地域リーダー、市職員など)
施設はあくまで「ハコ」であって、それを有効活用し、市民の福祉の向上につなげ
るかは、活用するヒトの力にかかっている。
しかし、地区における高齢化も進んでおり、地区における役員なども担い手の確保
が難しかったり一部の人に集中する傾向にある。市では、地域リーダーの養成講座を
実施するなど地域のリーダーや担い手の確保に取り組んでいるが、養成しても活動の
場がなければ意味がない。
市職員も、職員数は減尐してきており、市町村合併後の広域的な人事異動の実施な
どもあって、地域のことをよく知る職員の養成が難しくなっている可能性がある。
現在、
「ふれあいセンター」は地域の運営委員会が施設の指定管理者として運営し
ている。現地調査の結果、地域の地域による地域のための運営がなされているように
感じたが、この施設における活動をきっかけとして地域コミュニティが強化された、
あるいは住民のコミュニティ活動への新規参加につながったというレベルには至っ
ていない状況であった。
例えば、先般の東日本大震災等災害発生時の対応をみても、市役所が地域の隅々ま
で細やかな対応を一度に行うことはほぼ不可能である。
すなわち、市民自らが、地域の課題や解決案を考え、市役所の公助を得ながら実行
できる地域コミュニティを形成できるかが重要であると考える。
そのためには、市役所、施設の設置運営に関係する者及び地域住民が、施設の有効
活用を念頭に置きながら、設置運営に参画していく必要がある。
63
(2)複合化施設の例
ア.長崎市における事例
長崎市における複合化施設としては、「ふれあいセンター」の一部が該当する。ふ
れあいセンターの設置目的の一つが多世代交流であり、15 ヶ所の「ふれあいセンタ
ー」のうち 4 ヶ所に「デイサービスセンター」が併設されている。なお、デイサービ
スセンター部分は、貸付され、運営は社会福祉法人等が行っている。
その他、
「老人福祉センター」の入居している建物の一部を改装して「子育て支援
センター」を開設している事例がある。
学校施設に関する複合化の事例としては、学校敷地内への「ふれあいセンター」の
設置や放課後児童クラブ(学童保育)施設の設置、さらに特殊な事例として資料館を
併設したものがある。
① 「ふれあいセンター」に「デイサービスセンター」を併設している事例
<ふれあいセンターの概要>
目
的
地域住民が自主的に学び活動することの中から温かい人間関係をつ
くり、明るく住みよいまちづくりをするための公民館類似施設で、
地域住民の教養の向上、生活文化の振興、福祉の増進を図り、多世
代交流・地域住民の連帯の高揚を図ること
整備方針
中学校区ごとに、公民館類似施設としての「ふれあい機能」に欠け
ている地区について整備を図る。現在 15 ヶ所設置済み
事業内容
地域住民の「いこいの場」
、「親睦の場」
、「集会、行事の場」として
開放するとともに、自主的な学習・研修活動、多世代交流事業、図
書の貸し出し等を実施
運
営
地域住民の自主的な活動を推進し効率的な運営を図るため、地域の
連合自治会等の公共的団体の代表者等で構成する「ふれあいセンタ
ー運営委員会」を指定管理者に指定し、管理
施設規模
耐火構造の 2~3 階建、延べ面積:約 650 ㎡、施設内容:事務室、図
(モデル)
書室、研修室(軽スポーツ室、会議室、和室)、調理室ほか
「デイサービスセンター」が併設されている 4 ヶ所の「ふれあいセンター」のうち、
「滑石地区ふれあいセンター」を現地調査した。デイサービスの利用度は高いとの印
象を受けた。一般の方も「デイサービスセンター」の入浴施設を利用できるとのこと
であったが、両施設の利用者の大部分は、それぞれの施設だけの利用にとどまってお
り、施設間のシナジー効果及び利用者に対する施設複合化の効果は限定的と感じられ
た。
64
② 「老人福祉センター」が入居している建物の一部を改装し「子育て支援センター」
を開設している事例
長崎市北部のJR西浦上駅から徒歩 2 分の場所に、
「老人福祉センター すみれ荘」
と「子育て支援センター ぴよぴよ」が開設されている。それぞれの施設概要は次の
とおりである。
<子育て支援センターの概要>
施設内容
在宅で育児をしている保護者、特に母親の子育て負担感を軽減する
ため、
「いつでも・だれでも」、自由に、そして気軽に利用できる地
域に密着した施設
整備状況
平成 22 年度現在、週 6 日開設型 5 箇所、週 3 日開設型 3 箇所整備
事業内容
親や子どもの交流や仲間づくりができる「つどいの広場」の機能
親同士が悩みを話したり、子育ての不安や疑問などの相談・援助を
行う「相談の場」の機能
親同士の情報交換や身近な地域の様々な子育て情報を適切に提供す
る「情報提供の場」としての機能
対 象 者
就学前児童(おおむね 3 歳未満児)及びその保護者
利用状況
ぴよぴよ…平成 22 年度約 5,000 組(11,000 人)(1 日平均約 17 組)
運
社会福祉法人、NPO法人、公益法人等の民間団体が長崎市からの
営
補助を受け運営、施設は長崎市から無償貸付
<老人福祉センターの概要>
施設内容
高齢者に対し、健康の増進、教養の向上、レクリエーション等の便
宜を図るため設置(和室、入浴設備等)
整備状況
平成 22 年度現在、6 箇所(その他老人憩の家が 11 箇所 )整備
利用状況
各種講座等の開催、入浴利用、娯楽室等での囲碁、将棋、カラオケ
等の利用など
対 象 者
原則として 60 歳以上の者
利用状況
すみれ荘…平成 22 年度約 6 万人(1 日平均約 200 人)
運
社会福祉法人が長崎市から指定管理者に指定され委託料を受け運
営
営、施設は長崎市所有
「子育て支援センター」は、
「老人福祉センター」の入居している建物の一部にあ
った長崎市水道局の事務所を改装して開設されている。現地調査の結果、交通の便が
良いこともあり利用者は多いように感じたし、実際、利用者は平成 22 年度で約 5,000
組約 11,000 人とのことであった。
「老人福祉センター」も、交通の利便性がよいこともあり、利用者は年間約 6 万人
と市内にある 6 箇所のうち最大である。
しかし、この両施設においても利用者はそれぞれの施設だけの利用であり、複合化
施設の視点からの効果は限定的であると感じられた。
65
イ.全国における事例
全国における事例としては、地価が高く用地の確保が困難な首都圏において、学校
施設の高層化や複合化の事例が多く見受けられる。
用地確保の困難性の観点からは長崎市と共通するものがあると考える。
なお、ここで記載している事例は京都市の例である。京都市では、平成 14 年度か
ら平成 23 年度にかけ、小学校 15 校及び中学校 14 校が関係する大規模な統廃合が行
われている。統廃合の必要性の観点から長崎市としても参考になるものと考える。
しかも、この京都市の事例においては、施設整備の手法として民間資金等の活用に
よる公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)に基づくPFI方式により
整備がなされている。PFI方式では、施設の整備と維持管理を一括して業者に委託
し、毎年サービス利用料の形で整備費及び維持管理費を負担するため、一時的に多額
の資金を確保することなく、施設整備を行うことが可能である。
① 中学校、デイサービスセンター、在宅介護支援センター、保育所、災害用備蓄倉
庫、オフィススペース、賑わい施設(レストラン等)が一体的施設として整備さ
れている事例(京都市立京都御池中学校・複合施設)
目
的
京都市の中心部に存在する 3 つの中学校を統合した新設校の校舎等
整備に関し、敷地の立地条件を活かし、教育及び福祉の充実はもと
より、都心部の活性化に寄与すること、都心部のまちづくり・ひと
づくりの拠点施設となることを目指し整備
内
容
中学校施設に加え、地区における必要性の高いデイサービスセンタ
ー、在宅介護支援センター、保育所、災害用備蓄倉庫、オフィスス
ペース(将来的には教室への転用も可能)、レストラン等の賑わい施
設を複合的に整備
期待効果
中学生と乳幼児及び高齢者との相互交流による心のふれあいを実現
し、京都のメインストリートである御池通の活性化に大きく寄与す
ること
運
営
中学校の運営は京都市、デイサービスセンター、在宅介護支援セン
ター及び保育所の運営は京都市が選定した社会福祉法人が実施
なお、
「第2 監査対象の概要 1.地方自治体の状況
(2)学校施設を取り巻く
環境の変化 ウ.東日本大震災の影響」で示したとおり、東日本大震災の被害を踏ま
え文部科学省の有識者会議が提言をまとめているが、その中で、今回の震災で 622
校が避難所になったとし、通信設備の充実やバリアフリー化などに加え、学校に公共
施設を集める複合化が提案されている。
66
(3)複合化により期待できる効果
ア. 投資及び維持管理コストの削減
施設を複合化することにより、共通する設備が不要となったり、維持管理等の委託
コストが低減できるなどの効果が期待できる。
また、施設整備に当たり京都市の事例のようにPFI方式を導入することにより、
コストの平準化を図ることも可能となる。
【期待できるコスト削減効果の例】
区分
投資コストの削減
維持管理コストの削減
削減効果
複合化により共通部分にかかる設備が不要となる。
駐車場管理、警備、清掃等維持管理費が削減できる。
イ. サービスの向上(多世代交流効果)
長崎市における複合化施設の事例をみると、施設の設置や維持管理コストの低減に
はつながっているものの、利用者間の交流などはあまり行われておらず、二次的に期
待できる効果はまだ十分には表れていないと考える。
卖独施設、例えば小学校であれば、地域行事などのため地域の自治会等役員が参加
することなどを除けば、利用するのは小学生とその親がほとんどである。
しかし、複合化施設であれば、多世代が利用することが考えられ、いわば、地域に
おける多世代同居の家族のようなものとなることが期待できる。
具体的に期待できる多世代交流の効果としては次のようなことが考えられる。
【多世代交流により期待できる効果の例】
利用者層
児童生徒
及びその親
高齢者
未就学児
及びその親
その他
地域住民
期待できる効果
核家族化や尐子化により兄弟姉妹が尐なく、祖父母が身近にいない
環境の児童生徒が増加している中、高齢者や未就学児との交流が日
常的に実践できる。
豊かな心を育むことができる。
高齢者をいたわる心が育まれる。
異年齢の子どもとの交流により自らの成長を実感できる。
子どもたちとの交流が常時できる。
子どもたちの声が常に聞こえる、また遊ぶ姿がみえる。
身体的、精神的な健康の維持につながる、生きがいにつながる。
災害時等において、災害対応の設備等が整備でき、卖独施設よりも
スタッフが多いため安心できる。
学校(施設)に対し、早期に慣れることが可能である。
保育園・幼稚園から環境が大きく変わることにより、落ち着かなく
なったりする「小 1 プロブレム」の防止につながる。
兄姉が同じ小学校にいれば、ワンストップで子どもへの対応が可能
となる。
地域での子どもの姿、高齢者の姿がみえる。
地域で子どもを守り育てること、地域で高齢者を見守り送ることが
でき、地域の結びつきが強化できる。
67
(4)地域力の向上のための複合化検討について(意見)
長崎市は、事例に記載したとおり、既存施設の有効活用や施設の複合化に一部取り
組んでいる。しかし、長崎市の現状をかんがみると、さらなる資源の有効活用が必要
である。環境の変化に対応し、地域の課題を解決するため、施設の複合化についても
検討されることが望ましい。施設の複合化の検討に当たっては、全市的視点、中長期
的視点、分野横断的視点の 3 つの視点が不可欠であり、立地条件等を勘案すると、複
合化の拠点としては学校施設を中心に検討することが望ましい。
「第2 監査対象の概要」で長崎市の財政状況及び財政見通しについて述べたが、平
成 28 年度まで毎年 18 億円の収支改善効果を織り込んで期間中の収支が均衡するよう
な見通しとなっている。しかし、改善とは濡れた雑巾を絞るようなもので、年を追う
たびに得られる効果は逓減するのが通常である。持続可能な行政経営を行うためには、
中長期を見通しながら、現在の市民サービスのあり方を常に見直し、変化に対応でき
る仕組みを構築する必要がある。
その場の対応に終始し、問題を先送りすることは、将来の市民に負担を先送りする
だけである。関係するすべての市職員が部局の壁を越え、世代の枠を超え、役所の殻
を破り、市民のために何がベストなのかを中長期的な視点を持って、計画的に対処す
ることが求められる。市民も「わが地域」のあり方について、地域や世代などの枠を
超え、現在だけでなく将来も見据え、全市的視点も持って対応することが求められる。
市長が就任されて最初の議会である平成 19 年 6 月市議会の施政方針演説において、
「地域力とは、地域の課題を見つけ、さまざまな人々の参画のもと、その課題を乗り
越えていく地域の総合力のこと」であり、
「地域力を高めるには、市民力、そして職員
力の向上が必要」であると述べられている。
地域の課題解決のためには、分野ごとのタテ割りで整備され、限られた利用者(層)
だけが利用する施設が複数整備されるよりも、一体感のある連携施設や複合施設が整
備され、それぞれの利用者や運営者など地域住民が多く参加することで、さらなるコ
ミュニティの一体感を醸成することが必要ではないかと考える。
現在、全庁的な公共施設白書の作成が完了し、公共施設マネジメント基本計画につ
いては、平成 23 年度中に策定予定であるが、次のステップである実施計画の策定に当
たり、各論、すなわち具体的な施設の統廃合が俎上にあがった時点で、アクションプ
ランの策定及び実行が遅々として進まない、いわゆる「総論賛成、各論反対」となる
ことが考えられる。
これを回避し、公共施設マネジメントを実行していくためには、施設のハード及び
ソフト両面に関する幅広い知識と経験が必要であり、これらを兼ね備えた職員等から
構成する時限的な専任部署を設けるなど推進体制を構築することが必要である。
また、全市的視点、中長期的視点、分野横断的視点をもって、市長をはじめとする
マネジメント層の理解と協力のもと推進していくことが望ましい。
68
長崎港から单西に約 19kmの沖合いに、端島(通称:軍艦島)がある。端島は、小
さな海底炭鉱の島で、塀が島全体を囲い、高層鉄筋アパートが立ち並ぶその外観が軍
艦「土佐」に似ていることから「軍艦島」と呼ばれていた。昭和 49 年に炭鉱が閉山し、
現在は無人島になっている。
資料によると、主要エネルギーが石炭から石油へ転換する中、炭鉱は閉山となった
が、この島の閉山は黒字閉山であったという。しかし、炭鉱の関係者は、その時代の
趨勢を理解し、会社側も従業員側も閉山を決意し、その結果、従業員の再就職が比較
的うまくいったとのことであった。
「一山一家」という言葉があるが、これは、生死の危険と隣り合わせの炭鉱経営の
ためには、炭鉱に関わる者及びその家族すべてが一家のように団結しなければならな
い、というような意味である。この精神が結果として環境の変化に対応した決断を生
んだとも考えられる。
長崎市は、原爆の惨禍や長崎大水害といった災害から復興してきた実績がある。ま
た、炭鉱の閉山による人口の激減なども経験している。核家族化や尐子化が進行する
中において、
「一地域一家」、あるいは「一市一家」といった、地域や市全体が家族の
ように団結し、将来も世界に冠たる「長崎市」であり続けることを期待する。
<高島小学校 ランチルーム>
高島小学校(児童数 8 名 平成 23 年 5 月 1 日現在)では、地域のお年寄りが、児
童・教職員とともにここで食事をすることもある。旧産炭地のこの島には、一山一
家の精神が残っている。
69
7.学校施設の有効活用について
(1)余裕教室の有効活用について
ア. 余裕教室について
① 全国における余裕教室の状況
平成 21 年の文部科学省の調査によると、尐子化による児童数の減尐等により、次
の表のとおり、余裕教室は全国で 6 万教室を超えている。その 9 割以上が学校施設と
して活用されており、学校施設以外への活用は 1 割未満にとどまっている。学校施設
以外への活用の内訳をみると、放課後児童クラブを実施している放課後子ども教室等
が最も多くなっている。
【全国の余裕教室の活用状況(平成 21 年 5 月 1 日現在)
】
学校区分
余裕教室数
(卖位:室)
学校施設として
学校施設以外へ
の活用教室数
の活用教室数
未活用教室数
小学校
40,209
36,658
3,169
382
中学校
20,893
20,453
267
173
合
61,102
57,111
3,436
555
計
※出所「余裕教室の活用状況に関する調査(文部科学省)」を加工
【全国における活用内訳の状況】
(卖位:室)
活用内訳
小学校
中学校
計
構成比
15,707
8,882
24,589
40.6%
特別教室の学習スペース
9,255
4,471
13,726
22.7%
児童・生徒の生活・交流スペース
4,889
2,647
7,536
12.4%
教職員のためのスペース
2,155
1,436
3,591
5.9%
授業準備のスペース
1,781
1,037
2,818
4.7%
813
1,167
1,980
3.3%
1,106
330
1,436
2.4%
952
483
1,435
2.4%
2,076
4
2,080
3.4%
社会教育施設等
266
83
349
0.6%
備蓄倉庫
280
63
343
0.6%
社会福祉施設
139
18
157
0.3%
児童館等
90
0
90
0.1%
保育所
39
4
43
0.1%
279
95
374
0.6%
学習方法・指導方法の多様化に対応し
学
校
施
設
と
し
て
の
活
用
たスペース
心の教室カウンセリングスペース
地域への学校開放を支援するスペース
学校用備蓄倉庫等
学
校
施
設
以
外
へ
の
活
用
放課後子ども教室等
その他(廃校含む)
合
※出所「余裕教室の活用状況に関する調査(文部科学省)」を加工
70
なお、上記の調査で「余裕教室」とは、
「普通教室として使用するために整備され
た教室であって、現在普通教室として使用されていない教室」から「将来の学級数の
増加、学年毎の学級数の変動等の理由により留保している一時的余裕教室」を除いた
ものとされている。
しかし、学校施設の有効活用の観点から、一時的余裕教室についても検討する必要
があるため、次のとおり、教室を分類することとする。
【教室の分類】
分類
定義
活用方法
現在使用している普通教室又は
普通教室又は特別教室として使
特別教室
用
一時的
現在は使用されていないが、将
会議室や倉庫など使用教室等の
余裕教室
来の児童の増加等に対応するた
機能を維持したままの一時転用
め確保している教室
に限定
恒久的
今後とも教室として使用する見
必要に応じて工事等を行い、学校
余裕教室
込みのない教室
施設以外にも転用可能
使用教室
(上記調査でいう「余裕教室」
)
② 長崎市の余裕教室の状況
「① 全国における余裕教室の状況」に記載した調査に関して、長崎市では恒久的
な余裕教室はない(ゼロ)と回答している。
長崎市立小中学校における学級数と教室の状況は次のとおりであり、学級数よりも
教室数が 48 室多くなっている。ただし、学校別にみると、その差は 3 教室以内であ
り、一時的余裕教室の範囲と思われる。
【長崎市立小中学校における学級数と教室数(平成 22 年 5 月 1 日現在】
(卖位:室)
学校区分
教室数
学級数計
(A)
計
うち普通(B)
普通教室数
うち特別
-学級数
計(B-A)
小学校
871
1,533
905
628
34
中学校
386
923
400
523
14
1,257
2,456
1,305
1,151
48
合
計
※出所:「平成 22 年度教育要覧」を加工
71
③ 余裕教室の実態把握について(意見)
教室数の状況について、特別教室数を学校別にみると、同じ普通教室数である学校
間で、次のとおり、小学校で最大 6 室、中学校で最大 8 室の差が見受けられた。
また、現地調査の結果、1 学年 1 学級の学校において、多目的室や交流室が普通教
室とほぼ同数存在するなど利用度が高くないと思われる多目的室等の教室が見受け
られた。
【普通教室数が同数で特別教室の差が最大の学校(平成 22 年 5 月 1 日現在)】
小学校
中学校
特別教室数が多い学校
西町小学校及び小島小学校
(普通教室 15、特別教室 15)
山里中学校
(普通教室 18、特別教室 21)
三和中学校
(普通教室 11、特別教室 18)
特別教室数が尐ない学校
深堀小学校及び諏訪小学校
(普通教室 15、特別教室 9)
岩屋中学校
(普通教室 18、特別教室 13)
福田中学校
(普通教室 11、特別教室 10)
※出所:「平成 22 年度教育要覧」を加工
特別教室数の差や現地調査の状況から、一時的余裕教室とされている教室には、今
後使用する見込みの想定や利用状況に差があると考えられる。
また、後述する学校選択制の影響により児童生徒が流出したため普通教室から転換
されたが、学校選択制が見直されたことにより普通教室に戻す必要があるような一時
的余裕教室なども多数存在すると考えられる。
したがって、長崎市は、学校からの報告に加え現地の状況の確認や特別教室の利用
状況の調査などを実施し、余裕教室の状況について適切な把握に努めることが望まれ
る。
72
イ. 学校選択制について
余裕教室の状況に影響を与えたと考えられる学校選択制について、検討を加える。
① 制度の概要
学校選択制とは、市区町村又は一部事務組合(以下「市区町村等」という。
)の
教育委員会が、あらかじめ保護者の意見を聴取して、就学校の指定を行うものであ
る。
学校教育法施行令第 5 条により、市区町村等内に小学校又は中学校が 2 校以上あ
る場合、教育委員会は就学予定者が就学すべき小学校又は中学校を指定することに
なっている。多くの市区町村等においては、あらかじめ通学区域を設定し、これに
基づいて就学すべき学校の指定を行っている。
指定された学校を変更できるのは、保護者が教育委員会に申立てを行い、教育委
員会が相当と認めた場合に限られている。相当な理由とは、身体的理由、地理的要
因、いじめの対応など、限定的に解釈されており、子供を通わせたいと思う学校を
保護者が選択する機会は、制度的に提供されていなかった。
その後、規制緩和の推進に伴い、文部科学省は平成 15 年 3 月に学校教育法施行
規則を改正し、
「市区町村等の教育委員会が就学校を指定する際には、あらかじめ
保護者の意見を聴取することができることを明確化し、その場合の手続を定めて公
表すること」
「保護者の申立に基づき市区町村等の教育委員会が就学校指定校を変
更する際の要件及び手続を定めて公表すること」を規定し、学校選択制の導入が可
能となった。
その後、平成 17 年 6 月に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2005」で、
「学校選択制について、地域の実情に応じた導入を促進し、全国的な普及を図る。」
と閣議決定されている。
② 全国における学校選択制導入の状況
次の表は、文部科学省が実施した平成 18 年 5 月 1 日現在の学校選択制導入の状況
の調査結果である。平成 15 年に市区町村等教育委員会の判断で学校選択制が導入で
きるようになってから 3 年後の時点において、学校選択制を導入した市区町村等は小
学校、中学校ともに 14%程度であった。
【学校選択制導入の状況(平成 18 年 5 月 1 日現在)
】
小学校
(卖位:市区町村等数)
中学校
導入済み
240
14.2%
185
13.9%
検討中
214
12.6%
193
14.5%
今後導入予定
355
20.9%
289
21.7%
導入しない
887
52.3%
662
49.8%
合計
1,696
100.0%
1,329
100.0%
※出所「小中学校における学校選択制等の実施状況について」
73
学校選択制は、地域の実情に応じて様々な形で導入されている。市区町村等内の小
中学校ならばどこでも自由に選択できる場合もあれば、従来の通学区域は残したまま、
特定の学校に限定して、市区町村等内のどこからでも通学を認めている場合もある。
学校選択制の形態については、以下のように分類できる。
【学校選択制の分類】
分類
自由選択制
内容
市町村内のすべての学校のうち、希望する学校に就学を認め
るもの
ブロック選択制
市町村内をいくつかのブロックに分け、そのブロック内の希
望する学校に就学を認めるもの
隣接区域選択制
従来の通学区域は残したまま、隣接する区域内の希望する学
校に就学を認めるもの
特認校制
従来の通学区域は残したまま、特定の学校について、通学区
域に関係なく、市町村内のどこからでも就学を認めるもの
特定地域選択制
従来の通学区域は残したままで、特定の地域に居住する者に
ついて、学校選択を認めるもの
その他
上記以外の形態
次の表は、学校選択制を導入していると回答した市区町村等(小学校 240、中学校
185)について、どのような形態を採用しているかを示したものである。複数の形態
を合わせて導入している地方自治体もあるため、割合の合計が 100%を超える。
【学校選択制の形態】
(卖位:市区町村等数)
小学校
自由選択制
中学校
24
10.0%
55
29.7%
ブロック選択制
5
2.1%
2
1.1%
隣接区域選択制
45
18.8%
36
19.5%
特認校制
88
36.7%
41
22.2%
108
45.0%
66
35.7%
5
2.1%
13
7.0%
特定地域選択制
その他
※出所「小中学校における学校選択制等の実施状況について」
74
③ 長崎市の学校選択制の現状
長崎市では、
「通学の利便性の確保」と「特色ある学校づくり」を目的として、学
校施設の受入許容範囲の中で、平成 17 年度から隣接区域選択制による学校選択制を
導入した。ただし、選択した隣接校の教室数等の問題もあるため、受入可能人数を超
えた場合には抽選となる。
次の表は、平成 18 年度以降の学校選択制の利用状況を表したものである。
長崎市全体でみれば、全入学者数の約 1 割の児童生徒が学校選択制を利用している
ことになる。
【学校選択制利用状況の推移】
H18
小
学
校
中
学
校
(卖位:人)
H19
H20
H21
H22
H23
入学者
3,839
3,761
3,681
3,612
3,471
3,468
利用者
258
299
366
370
267
293
利用率
6.7%
8.0%
9.9%
10.2%
7.7%
8.4%
入学者
3,925
3,945
3,750
3,759
3,601
3,583
利用者
322
383
383
403
343
324
利用率
8.2%
9.7%
10.2%
10.7%
9.5%
9.0%
※出所「教育委員会学校教育課作成資料」及び「教育要覧」より監査人作成
次の表は、学校選択制によって児童生徒数が大きく変動している学校の状況を示し
たものである。学校ごとにみると、5 割から 6 割の数の変動がある学校もあり、その
影響が大きい。
なお、表の「増減数」は、
「他校からの流入児童生徒数」から「他校への流出児童
生徒数」を差し引いたものである。学校選択の機会は入学時だけであるため、小学校
の場合は平成 18 年度から 23 年度までの 6 年間、中学校の場合は平成 21 年度から 23
年度の 3 年間の流入と流出の合計によって、学校選択制による増減数を測定した。
表の「在校児童生徒数」は平成 23 年 5 月 1 日現在の在校児童生徒数である。これ
から「増減数」を減算して、学校選択制を導入しなかった場合の児童生徒数「校区内
児童生徒数」を算出し、学校選択制の導入による児童生徒数の「変動率」を算定した。
その結果、変動率の絶対値が大きい小学校・中学校の上位 5 校を記載している。
75
【学校選択制の影響の大きい学校】
(卖位:人)
選択制による
在校児童
校区内児童
変動率
増減数(A)
生徒数(B)
生徒数(C=B-A)
A/C
朝日小学校
△ 73
87
160
△45.6%
坂本小学校
小
学 城山小学校
校
大園小学校
△ 93
131
224
△41.5%
153
545
392
39.0%
146
559
413
35.4%
戸石小学校
△ 153
329
482
△31.7%
大浦中学校
△ 117
85
202
△57.9%
三川中学校
中
学 淵中学校
校
江平中学校
△ 133
120
253
△52.6%
135
459
324
41.7%
△ 64
110
174
△36.8%
丸尾中学校
△ 44
85
129
△34.1%
※出所「学校教育課提供資料」及び「教育要覧」より監査人作成
上の表から、学校選択制によって児童生徒数が大きく減尐している学校は、斜面地
の高台等通学に不便なところが多いという一つの傾向がみえてくる。
長崎市では、生活道路や公園の整備と併せて、老朽化した住宅の改善を促進するた
め、総事業費 228 億円を投じて斜面市街地再生事業(全 8 地区)を行っている。朝日
小学校、坂本小学校、大浦中学校、江平中学校、丸尾中学校は、当該事業の対象地域
にある学校である。江平中学校区には坂本小学校が、丸尾中学校区には朝日小学校が
あり、
両地域には校区の学校に通っていない児童生徒が多い。
大浦中学校においても、
中学校区内の小学校 2 校がいずれも学校選択制の影響で児童数を 2 割減らしており、
校区内の学校に通っていない児童生徒が多い。特に、これらの学校は市街地にあるた
め、隣接区域にある学校として選択できるところが多く、近隣の平地にある通学しや
すい学校に児童生徒が流出しやすいと考えられる。
斜面市街地の多い長崎市で、隣接区域選択制による学校選択制を導入した結果、こ
のような現象が起こったものと考えられる。
76
④ 学校選択制が教室の利用等に与える影響について
学校選択制導入による児童生徒の流入及び流出が、余裕教室の状況に大きな影響を
与えている。
ここでは、仮に設定した隣接するA小学校B小学校間において、学校選択制の導入
により、各学年 35 人ずつB小学校からA小学校へ移動した場合、教室の分類にどの
ような変化が生じるかについて検討してみる。
【A、B小学校の設定】
学級数:各学年 2 学級計 12 学級
児童数:各学年 70 人計 420 人
教室数:18 室
(使用教室:各学年 2 室計 12 室、一時的余裕教室:2 室、恒久的余裕教室:4 室)
学校選択制による移動:各学年 35 人ずつB小学校区内からA小学校に通学
A小学校は児童数が各学年 35 人ずつ計 210 人増加し 6 学級増加することになり、
B小学校は各学年 35 人計 210 人減尐し 6 学級減尐することになる。
その結果、次の表のとおり、A小学校では使用教室が 6 教室新たに必要となるため、
余裕教室を減らすこととなり、B小学校では使用教室と同数の一時的余裕教室が追加
で必要となるなど余裕教室が増加する。
このように、学校選択制導入前後において、流入児童生徒数が多い学校においては、
教室の配置や活用の柔軟性が尐なくなる一方、流出児童生徒数が多い学校では、学校
における使用教室の割合が尐なくなり、余裕教室が多くなるものの、児童生徒数も減
尐しているため、余裕教室の活用に苦慮することが考えられる。
【学校選択制導入前後において予想される教室の変化】
学校選択制導入前
使用教室
(卖位:室)
学校選択制導入後
一時的
恒久的
余裕教室
余裕教室
使用教室
一時的
恒久的
余裕教室
余裕教室
A小学校
12
2
4
18
0
0
B小学校
12
2
4
6
8
4
77
⑤ 学校選択制の見直しについて
長崎市教育委員会は学校選択制の現状を把握するために、平成 21 年度にアンケー
ト調査を行っている。調査の結果、学校選択制の導入による成果及び問題点が、次の
ように指摘されている。

成果

学校の活性化が促進されている

通学の利便性が確保されている

学校教育の質的向上が図られている など

問題点

住居から遠い隣接校を選択した遠距離通学者がいる

通学の便の良し悪しにより入学者数の偏りが生じている

児童生徒数が減尐した学校では、PTA 活動や地域での子ども会活動に支障が出
ている

実際にできる部活動数が減ったり、活動が制限されたりしている など
長崎市は、市民の日常生活を暮らしやすくするために、
「地域力」の向上を目指し
ており、地域コミュニティの醸成や地域リーダーの育成、小学校区子どもプランなど
に取り組んでいる。地域社会においては、家庭・学校・地域の三者が連携して子育て
の環境づくりを行うことが重要であるが、現在の学校選択制は「地域で子どもを育て
る」という動きに逆行している側面がある。
そこで、学校選択制を見直し、平成 24 年度からは、原則として通学区域の就学校
(指定校)へ入学する制度への変更が予定されている。ただし、特別な事情がある場
合は、必要に応じて、保護者の申立てにより、教育委員会が認める範囲内で、指定学
校変更を許可するものとしている。具体的には、通学距離が近くなる場合、希望する
部活動が指定校になく隣接校にあって、児童の活動実績や強い活動意思が確認できる
場合については、現行の指定学校変更申立許可事項に新たに項目を追加し対応するこ
ととしている。また、学校選択制見直しに伴う経過措置として、兄弟姉妹関係及び小
学校入学の際に学校選択制を利用した者が、在籍学校の指定中学校に入学する際につ
いては配慮することとしている。
78
⑥ 特認校制による学校選択制の導入について(意見)
<特色のある学校づくりと学校選択制>
長崎市が学校選択制を導入した目的の一つに、
「特色のある学校づくり」がある。
公立の小中学校は、全国どこの学校でも同様の教育を提供するというナショナ
ル・ミニマムの考え方のもとに整備されており、しかも、人事異動によって教職員
が常に入れ替わることから、私立の学校に比べると教育内容の特色を出しにくい。
このような中で教育内容に特色を出すとすれば、その学校が所在する地域の教育的
資源によるところが大きいと思われる。換言すれば、地域との結び付きが強く、地
域住民の協力が得やすい学校ほど、特色のある教育を実施できると考えられる。
長崎市の学校選択制の見直しは、学校と学校を支える地域との関係が希薄化する
ことを懸念し、適用要件を従来よりも厳格に行うことで、これを防止しようとする
ものであり、
「特色のある学校づくり」という観点からも理解ができる。しかし、
学校選択制見直しの議論が隣接区域選択制の枠組みの中だけで行われている点で、
不十分であるといわざるをえない。
「② 全国における学校選択制導入の状況」でも述べているように、学校選択制
には様々な形態があり、もっと広い視野で議論すべきと考える。
ここでは、特認校制による学校選択制の導入を提案したい。それは、離島や農山
漁村地域で、児童生徒数が尐なく学校存続の危機に瀕している超小規模校を、特認
校として、希望者には通学区域に関係なく長崎市内全域から就学を認めるというも
のである。
離島や農山漁村地域は、海や山など自然に恵まれた環境の中にあり、自然を生か
した体験的教育活動が可能である。また、このような地域の学校は、地域住民の多
くが同校の卒業生であることから、地域との結び付きが強く、地域住民の協力が得
やすい。
例えば、手熊小学校(児童数 32 名 平成 23 年 5 月 1 日現在)では、毎年稲作活
動を行っており、田おこし、田植えから稲刈り、脱穀まで一連の農作業を児童に体
験させている。こうした体験的学習は、学校周辺に農地が多いという立地条件だけ
でなく、農地の提供・農作業の指導といった地元農家や保護者の理解と協力がある
からこそ、実現可能なものである。また、このような活動が年間を通して毎年継続
的に実施できるということは、児童数が尐ないために地域社会も児童を受け入れや
すいという小規模校のメリットでもあると考える。
79
<福岡市における事例について>
「② 全国における学校選択制導入の状況」で述べたとおり、特認校制による学
校選択制を導入している地方自治体は多い。この場合、離島や農山漁村地域にある
超小規模校を特認校として、市内全域からの就学を認めているケースが多くみられ
る。ここでは、福岡市が実施している小規模校特別転入学制度(通称「海っ子山っ
子スクール」
)を紹介する。
福岡市では、小学校・中学校ともに教育委員会が定めた通学区域内の学校(指定
校)に通学することが原則となっている。しかし、自然環境を生かした教育活動を
行っている小規模特認校(小学校 3 校、中学校 1 校)での教育を希望する場合に限
り、特別に指定校の変更を認めている。転入学するための条件は次のとおりである。
【特認校へ転入学するための条件】

保護者、児童生徒ともに福岡市内に居住していること。

保護者、児童生徒ともに制度の趣旨を理解し,その学校の教育活動等に賛同
していること。

通学は、児童生徒自身が自力で公共の交通機関を利用し、通学時間は児童生
徒の負担を考慮して原則 1 時間以内とする。保護者の責任と負担において通
学するものとする。

転入学の時期は 4 月 1 日とし、在学期間は 1 年以上とする。夏季間又は冬季
間など,一定の学期等に限定した短期間の転入学はできない。
特認校の概要は次のとおりであり、いずれも全校児童生徒の半数以上が「海っ子
山っ子スクール生」
(転入学生)である。
【特認校の概要】
学校の概要
地理的特徴
特色ある教育内容
勝馬小学校
志賀島の北側に位
シーカヤック体験学習、米づくり、
全校児童数 22 名
置する小学校
もちつき大会、勝馬の海の調査、海
校区内人口約 300 人
岸清掃、地域合同運動会など
曲渕小学校
標高 1,055mの背
一人一畝野菜作り、たけのこ掘り、
全校児童数 30 名
振山系の山ふとこ
バードウォッチング、野河内渓谷探
校区内人口約 210 人
ろに位置する山間
検、竹炭焼、地域合同運動会など
部の小学校
能古小学校
博多湾に浮かぶ能
小中合同の運動会・持久走・駅伝大
全校児童数 74 名
古島の中にある小
会・学芸会・文化祭、地引き網、磯
校区内人口約 800 人
学校
遊び、海岸清掃など
能古中学校
博多湾に浮かぶ能
遠泳大会、玉ねぎ収穫、イモ収穫
全校生徒数 44 名
古島の中にある中
販売(ユニセフ募金活動)、地域チ
校区内人口約 800 人
学校
ームとの駅伝大会、貝掘り大会、
釣り大会など
80
<地域の実情に適した学校選択制について>
「5.学校の適正配置について (4)学校規模の他都市比較」に記載している
とおり、長崎市は他都市に比べて、小学校、中学校ともに児童生徒数 100 人以下の
小規模校の比率が高い。これは、山がちで平地が尐なく複雑で長い海岸線が連なっ
ている半島部と、伊王島・高島・池島などの離島から構成される長崎市の地形的特
徴によるところが大きい。
こうした地形的特徴は、小中学校等の公共施設を分散化せざるを得ないという、
地方自治体経営にとってはデメリットとなる側面を有している。しかし、自然に恵
まれた環境の中で自然を生かした体験的教育活動を実施できる場所が多いと考え
ることもできる。
しかも、長崎市の場合は、市街地・住宅地と自然に恵まれた地域が近接している。
例えば、伊王島・高島へは、長崎市中心部にある港から船で 20~30 分で到着する。
小規模校化が進んでいる西部の式見地区、東部の茂木地区のような漁村地域も、そ
れぞれ滑石、東長崎という新興住宅地が近くにある。
こうしてみると、小規模特認校制度は、長崎市の実情にあった学校選択制である
といえる。小規模特認校制度を利用した児童や生徒が増えれば、保護者も含めた家
族ぐるみの地域間交流が促進され、必ずや離島や農山漁村地域の活性化にもつなが
るものと考える。
⑦ 施設の有効活用の観点からみた学校選択制の評価について(意見)
学校選択制に関する評価は、賛否両論様々であると思うが、
「施設の有効活用」と
いう観点からみた場合、長崎市が実施した隣接区域選択制による学校選択制は、懸念
すべき側面がある。
児童生徒数の減尐によって、多くの学校で空き教室を有している。このような状況
下、個々の学校に目を向けると、学校選択制の導入によって、他校からの流入生徒数
が多い学校(以下「流入校」という。)は空き教室が減尐し、他校への流出生徒数が
多い学校(以下「流出校」という。
)は空き教室が増加することになる。すなわち、
学校選択制の導入によって、流入校から流出校へ空き教室が移転することになる。
こうして移転した空き教室を、流出校は他の目的に転用することができるであろう
か。流出校からみれば、学校選択制導入の結果、生徒数が大幅に減尐したとしても、
自校区に居住する子どもの数に合わせて教室を用意せざるを得ないであろう。このよ
うに、空き教室の有効活用の観点からみれば、学校選択制の導入は有効活用を阻害す
る要因となり得ると考えられる。
81
<大浦中学校>
仁田小学校(P41 写真参照)から更に坂道を 500 メートル以上登った高台にある
大浦中学校(生徒数 85 名 平成 23 年 5 月 1 日現在)は、学校選択制の導入で生徒
数が半分以下となり、各学年 1 学級しかない。
「多目的室」という名の空き教室は 6
室あるが、自校区に居住する子どもの数を勘案すれば、これらを他の目的に転用す
ることは困難であろう。
⑧ 学校選択制の検証結果の活用について(意見)
「4.学校施設に係る分析 (3)学校の統廃合、学校施設の複合化及び有効活用
について(意見)
」に記載したとおり、将来の校舎等更新費用を削減するためには、
学校の統廃合は避けて通ることができない課題である。
長崎市を取り巻く環境からすれば、学校統廃合については、小規模化老朽化した学
校について個別に対応するのではなく、長崎市内の小中学校を再配置するという大き
な観点から実施するべきである。学校選択制の導入による児童生徒数の増減及びその
理由を分析することにより、再配置を検討するに当たっての有用な情報が得られるで
あろう。制度導入から 7 年で事実上廃止となった今回の学校選択制であるが、その結
果を今後の行政活動に活かすべく総括しておくことが望ましい。
82
ウ. 放課後児童クラブ(学童保育)について
① 全国における放課後児童クラブ数と利用児童数の推移
「放課後児童クラブ」とは、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校等に通
う子どもたちに、遊びや生活の場を提供し、その健全な育成を図る事業であり、女性
の就労の増加や尐子化が進行する中、仕事と子育ての両立支援、児童の健全育成対策
として重要な役割を担っている。
「学童保育」ともよばれるが、ここでは「放課後児童クラブ」とする。
次の表は、厚生労働省の調査による放課後児童クラブの実施箇所数と利用児童数の
推移である。平成 23 年にはそれぞれ、約 2 万箇所、約 83 万人に増加している。しか
し、供給が十分ではないなどの理由により、全国で約 14,000 人利用できなかった児
童がいるとされている。
【全国の放課後児童クラブの実施状況推移(各年 5 月 1 日現在)
】
(卖位:箇所、人)
H19
H20
H21
H22
16,685
17,583
18,479
19,946
20,561
利用児童数(A)
749,478
794,922
807,857
814,439
833,038
全 児 童 数 (B)
7,132,874
7,121,781
7,063,606
6,993,376
10.5%
11.2%
11.4%
11.6%
7,408
8,021
11,438
13,096
実施箇所数(箇所)
利 用 割 合 (A/B)
利用できなかった
児童数
H23(注)
14,029
注:H23 は東北 3 県(岩手、宮城、福島)の一部の市町村(12 市町村)を除く
そのため、全児童数に対する利用割合は算定していない。
※出所「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」厚生労働省
② 長崎市における放課後児童クラブの状況
長崎市の調査によると、次の表のとおり、全児童数は平成 19 年から平成 23 年にか
けて 1,565 人減尐しているが、利用児童数は 245 人増加している。また、実施箇所数
は 28 箇所増加しており、利用割合も増加傾向にある。これは、全国と同様に、長崎
市でも共働き家庭が増加していることなどが要因と考えられる。
【長崎市の放課後児童クラブの推移(各年度 4 月 1 日現在)
】
H19
実施箇所数(箇所)
H20
H21
(卖位:箇所、人)
H22
H23
59
66
71
82
87
利用児童数(A)
3,662
3,735
3,872
3,751
3,907
全 児 童 数 (B)
23,397
23,085
22,688
22,260
21,832
利 用 割 合 (A/B)
15.7%
16.2%
17.1%
16.9%
17.9%
21
11
24
25
38
登録できなかった
児童数
83
※出所「長崎市こどもみらい課資料」
③ 長崎市における放課後児童クラブ施設の状況
厚生労働省の「放課後児童クラブガイドライン」によると、放課後児童クラブの適
正規模は 1 箇所当たり 40 名程度であり、児童一人当たりの生活スペースはおおむね
1.65 ㎡以上とされている。しかし、全国学童保育連絡協議会が求める設置・運営基
準では、児童一人当たり 1.98 ㎡とされている。
長崎市では、
「長崎市放課後児童クラブ設置運営基準」
(以下「設置運営基準」とい
う。
)において、定員規模を 40 人程度とすることが望ましく、最大 70 人までとして
いる。また、児童一人当たりおおむね 1.65 ㎡以上の広さを確保することが望ましい
としている。
しかし、平成 23 年度では、児童一人当たり 1.65 ㎡に満たない施設が 87 施設中 16
施設と 18.4%を占めている。また、1 箇所当たり 46 人以上の施設が 42 施設と 48.3%
を占め、そのうち 70 名を超える施設が 2 箇所ある。
また、実施施設としては、学校内において余裕教室を活用する方法、学校敷地内に
専用施設を設置する方法、公民館や児童館などの学校外の公的施設や民間施設を利用
する方法などがある。
設置運営基準では「放課後児童クラブの実施に当たっては、小学校の余裕教室や小
学校敷地内の専用施設のほか、児童館、保育所、幼稚園、団地の集会室などの社会資
源を活用して実施すること」とされており、学校施設やその他の公的施設を積極的に
活用する方針である。
市の設置状況別の推移は次のとおりであり、学校内施設の割合が高くなってきてい
ることがわかる。しかし、全国平均と比較すると、民間施設の割合が高く、公的施設
(余裕教室、学校内の専用施設、その他の公的施設)の利用割合が尐ない状況にある。
【長崎市における放課後児童クラブの施設利用状況別推移】
H19
学
校
内
学
校
外
余裕教室
専用施設
公的施設
民間施設
計
箇所数
H20
H21
10
10
合
16.9%
15.2%
箇所数
7
合
箇所数
(卖位:箇所数)
H22
14
16
15.5%
17.1%
18.4%
11
14
16
19
11.9%
16.7%
19.7%
19.5%
21.8%
13
15
16
17
16
合
22.0%
22.7%
22.5%
20.7%
18.4%
箇所数
29
30
30
35
36
49.2%
45.5%
42.3%
42.7%
41.4%
59
66
71
82
87
割
割
割
割
合
11
H23
※出所「長崎市こどもみらい課資料」を加工
84
【全国との比較(平成 23 年 5 月現在)】
余裕教室
学校内専用施設
学校外公的施設
民間施設等
長崎市
18.4%
21.8%
18.4%
41.4%
全
28.3%
22.8%
21.8%
27.1%
国
※出所「長崎市こどもみらい課資料」及び「厚生労働省全国調査」を加工
④ 放課後児童クラブ施設としての余裕教室の積極的活用について(意見)
放課後児童クラブは、児童の健全な成長を助け、親が安心して働ける地域をつくる
ために重要な事業であり、そのための施設は良好な環境を整備する必要がある。
しかし、長崎市の実施施設は、民間施設の割合が高く、一人当たり面積が基準に満
たない施設等があるため、施設の整備を進める必要がある。
公的施設の放課後児童クラブへの利用を考えた場合、学校外よりも学校内の施設の
方が、交通、不審者対策の面から安全性を確保しやすい。また、学校内施設としては
余裕教室の転用とプレハブ等の専用施設の新設があるが、余裕教室のほうが設置コス
トが安くまた耐震性も高いと考えられる。一方、長崎市では児童数が長期的に減尐し
ているが、学校の統廃合が進んでいないため、余裕教室が増加していると考えられる。
したがって、需要の増加や環境の改善のため施設整備を行う場合においては、余裕
教室を積極的に活用することが望まれる。
85
(2)学校開放について
ア. 制度の概要
学校には、運動場、体育館、武道場といったスポーツ施設があり、長崎市全体では
相当数のスポーツ施設となる。これらは、授業や行事、部活動等で利用される時間を
除けば、一般市民も利用できることから、学校のスポーツ施設は有効活用の余地が高
いと考えられる。
そこで、学校におけるスポーツ施設の開放(以下「スポーツ開放」という。
)につい
て検討する。
① スポーツ開放の概要
<開放の状況>
長崎市では、スポーツ及びレクリエーションに利用するために、運動場及び体育
館を市民に開放している。その概要は次のとおりである。運動場、体育館とも日曜
祝日の一部以外、昼間は開放が行われていないが、これは部活動等を優先している
ためと考えられる。
【スポーツ開放の概要】
月曜~金曜
土曜
日曜・祝日
昼間
夜間
昼間
夜間
昼間
夜間
小学校運動場
×
×
×
×
×
×
中学校運動場
×
△注 2
×
△注 2
△注 3
×
小学校体育館
×
○
△注 4
○
△注 4
○
中学校体育館
×
○
×
○
△注 3
×
注1 ○:原則開放 △:限定して開放 ×:原則開放なし
注2 12 月から 2 月を除く
注3 年間 10 日間に限る
注4 学校教育上支障のない日に限る
※出所 長崎市教育委員会ホームページより監査人作成
<スポーツ開放利用登録要件>
スポーツ開放を利用する場合には、あらかじめ教育委員会に登録しておかなけれ
ばならない。登録要件は、長崎市に在住・在勤する者 10 人以上をもって構成し教
育委員会に登録された団体である。ただし、小学校の利用登録団体は地域(地区)
で構成された団体に限られる。
中学校運動場及び中学校体育館については、個人利用が可能であるが、長崎市公
共施設案内・予約システムに利用登録する必要がある。
86
<運営管理>
運営管理は、学校ごとに学校施設開放運営協議会又は管理員(以下「協議会等」
という。
)を設置して行われる。具体的には、スポーツ開放に伴う、利用者の危険
防止のための管理、施設及び設備の管理等を、教育委員会が協議会等に委託して行
われる。
協議会等は、利用状況について、毎月(夜間運動場については毎週)
、教育委員
会に報告することとされている。
② スポーツ開放施設の利用状況
平成 21 年度におけるスポーツ開放施設の利用状況は、次のとおりである。
表の「利用可能日数」は、
「① スポーツ開放の概要」で示した条件に基づき監査人
が試算した日数であり、
「実際利用日数」は、各学校で利用者がいた日数(利用者一
人でも 1 日とカウントされる)を対象となる学校数分、合計した延べ日数、
「稼働率」
は、年間の延べ利用可能日数に対する実際利用日数の割合である。
【スポーツ開放施設の利用状況(平成 21 年度)】
利用可能
開放
延べ利用
実際利用
日数
校数
可能日数
日数
(A)注
(B)
(C=A*B)
(D)
稼働率
D/C
中学校
昼間
10 日
35 校
350 日
96 日
27.4%
運動場
夜間
224 日
12 校
2,688 日
1,542 日
57.4%
小学校
昼間
114 日
69 校
7,866 日
3,236 日
41.1%
体育館
夜間
359 日
69 校
24,771 日
13,731 日
55.4%
中学校
昼間
10 日
32 校
320 日
81 日
25.3%
体育館
夜間
297 日
32 校
9,504 日
7,731 日
81.3%
注
中学校の運動場及び体育館の昼間利用は年間 10 日間に限る。
日曜・祝日は 68 日として計算
中学校運動場の夜間利用は、12 月から 2 月まで期間を除く
※出所「平成 21 年度体育施設開放利用状況報告一覧表」に基づき試算
上記の表によると、年間 10 日間に限り開放している中学校の運動場及び体育館の昼
間の利用割合や土曜・日曜・祝日(学校運営上支障のない日)に限り開放している小
学校の体育館の昼間の利用割合はそれほど高くない。しかし、そのほかの利用割合は
高く、中学校体育館(夜間)は 81.3%と非常に利用されている。
長崎市の学校は、斜面地に位置したり、駐車スペースが尐なかったりするなど、必
ずしもアクセスや利便性がよいものではない。しかし、利用割合が非常に高いことを
考えると、スポーツ施設の利用ニーズは非常に高いといえる。現地調査を行った仁田
小学校では、駐車スペースは 2 台ほどしかないが、利用者は多い様子であった。
87
イ. 体育館の平日昼間の利用状況について
小中学校の授業は学級ごとに時間割表に沿って実施される。時間割表は、文部科学
省の新学習指導要領に基づく学年別・科目別の標準授業時間数を勘案して作成される。
つまり、時間割表は授業の総コマ数を表している。長崎市では児童生徒数の減尐によ
り学級数が減尐しているので、授業の総コマ数は減尐することになる。
中学校の体育の授業は各学年週 3 コマが標準とされていることから、式見中学校な
ど 1 学年 1 学級(特別支援学級除く)の学校の場合には、体育の授業は 9 コマ(3 コ
マ×3 学年)実施されることになる。
週 5 日間授業、一日当たり授業時間 6 コマとすると体育館の使用可能コマ数は、週
当たり 6 コマ×5 日=30 コマである。
すなわち、体育の授業は運動場や教室を使用する場合もあるが、すべて体育館で授
業を行ったとしても、21 コマの未使用時間帯があることになる。
【体育館使用状況イメージ①】
月
火
水
木
金
1 時限目
1 年生①
3 年生①
1 年生②
空き
2 年生③
2 時限目
空き
空き
空き
空き
空き
3 時限目
2 年生①
空き
空き
3 年生③
空き
4 時限目
空き
2 年生②
空き
1 年生③
空き
5 時限目
空き
空き
3 年生②
空き
空き
6 時限目
空き
空き
空き
空き
空き
この場合、全校集会や卒業式等の行事等を考慮しても、学校が体育館を使用する割
合は 3 分の 1 程度であると考えられる。
一方で、現地調査した「ふれあいセンター」は、講堂や会議室が卓球等の軽スポー
ツで平日の昼間に盛んに利用されていた。卓球の登録団体も複数あり、予約が取りに
くい状況であるとのことであった。このことは、スポーツ施設を利用したいが利用で
きない市民が潜在的に多く存在することを意味している。
また、今後団塊の世代の退職等により、さらに平日の昼間にスポーツを楽しみたい
市民も増加することが予想される。
88
ウ. スポーツ開放の拡大について(意見)
これまで述べたとおり、学級数が尐ない学校においては、平日昼間の体育館の利用
割合が低くなっている。一方で、平日昼間にスポーツ施設を利用したい市民は多いと
考えられる。そこで、学校教育を優先しつつ、スポーツ開放を平日昼間の体育館の一
部に拡大することを提案する。
例えば、学校における時間割編成を工夫し、学校教育と地域開放を区分して利用で
きるようにするなどといった方法が考えられる。
次のイメージ図のように、午後は毎日、火曜日と木曜日は終日開放した場合、体育
館の利用割合は飛躍的に高まると考えられる。
【体育館利用状況イメージ②】
月
火
水
木
金
1 時限目
1 年生①
開放
1 年生②
開放
2 年生③
2 時限目
空き
開放
2 年生②
開放
3 年生③
3 時限目
2 年生①
開放
空き
開放
空き
4 時限目
3 年生①
開放
3 年生②
開放
1 年生③
5 時限目
開放
開放
開放
開放
開放
6 時限目
開放
開放
開放
開放
開放
ただし、平日昼間、児童生徒が学校にいる時間に、学校施設を開放するに当たって
は、不審者の侵入防止や器物の破損等防止などの対策を講じる必要がある。これらの
対策が整い、学校、児童生徒及び保護者、地域住民の合意が図られた施設から段階的
に導入することが適切である。
対策としては、利用者を制限する方法と、利用者を児童生徒がいる校舎に侵入させ
ない方法が考えられる。
利用者を制限するために、現在実施されているスポーツ開放と同様、あらかじめ登
録することを必要とし、さらに利用できる者を地域住民に限定することで、事前に利
用者情報を把握することが可能である。
利用者を校舎に侵入させない方法としては、外部者が利用可能なトイレ等の付帯設
備を備えることが効果的である。
例えば、現地調査を行った式見中学校には、写真のとおり、体育館の脇に外部から
利用できるトイレがあり、トイレ利用のために校舎内に入る必要がなく、利用者も利
用しやすい状況にあった。また、学校の安全管理上も不審者侵入のリスクが軽減され
るというメリットがある。
89
<式見中学校体育館>
外部から利用できるトイレ
外側にトイレが敷設されており、体育館内からも外からも利用できるようになっ
ている。このような一工夫が、学校施設の有効活用に大きく貢献する。
90
第4 終わりに
私は、長崎市の包括外部監査人として平成 21 年度から平成 23 年度までの 3 年間、
「資源
の有効活用」を大きなテーマとして、平成 21 年度は「情報システム」、平成 22 年度は「土
地」
、平成 23 年度は「施設」をテーマに監査を実施してきた。
3 年間の監査を通じて感じたことは、都度、
「包括外部監査の結果報告書」で述べてきた
が、それは「資産・債務改革の必要性」と「資源(人、物、金)の有効活用」という 2 点
に集約される。
長崎市は現況をしっかりと受け止め、より効率的、経済的かつ効果的な行政サービスを
提供していく必要がある。そして、取り組みにはスピードが求められる。なぜなら、対応
が早ければ早いほど効果が大きいものとなるからである。
人口減尐、尐子高齢化の進行等により歳入が伸びず、後述するように地理的な制約から
行政コストが嵩みがちであることなどから、現在厳しい財政状況にあり、この傾向は今後
も継続する可能性が極めて高い。歳入の増加が期待できない場合、将来を見据えた行政コ
ストの圧縮や資産の有効活用、すなわち本報告書で紹介した「資産・債務改革」への取り
組みが不可欠である。財政の問題がどのような事態を招くか、欧州の債務問題など事例は
余りある。問題を先送りして将来に負担を残すようであってはならないのである。
また、人口減尐、尐子高齢化の進行等、環境の変化は住民のニーズを質的に変化させる。
厳しい財政状況下、ニーズの変化に対応するためには、既存の土地や施設等を有効活用す
る方法が効率的かつ効果的である。これは、資産・債務改革を進めることに通じるし、何
といっても前述した財政面への対応として注目すべきものである。
資産の有効活用のためには、縦割りの組織だけでは対応が不十分となる場合がある。縦
割りの組織はときに強力な力を発揮するが、資産の有効活用に求められているのは全庁横
断的な対応である。トップマネジメントが強力なリーダーシップを発揮して、この課題に
対処する必要がある。
なお、現在長崎市が取り組んでいる「公共施設マネジメント」は、将来の長崎市を左右
する重要なプロジェクトといっても過言ではない。なんとしても成功させる必要があるが、
そのためには全庁横断的な専任部署の設置など推進体制の強化が不可欠であろう。
91
長崎市は、改めていうまでもなく、異国情緒あふれた自然豊かな都市である。また、歴
史的にも江戸時代は鎖国政策の中、唯一世界に開かれた場所であり、開国後は、坂本龍馬
をはじめ明治維新の立役者たる数々の志士が遊学している土地である。明治 22 年(1889
年)4 月 1 日に、全国で最初に市制を施行された都市のひとつでもある。その後、昭和 20
年の原爆投下による惨禍や昭和 57 年の長崎大水害などから復興をとげてきた歴史もある。
しかし、これまで記載してきたとおり、現在は、他都市と比べても人口減尐や尐子高齢
化が進んでいる。斜面地が多く集落が分散せざるを得ないという地形的な制約も大きく、
下水道料金等の公共料金の高さなどをみても行政コストが嵩みがちな都市でもあり、将来
的にみても厳しい財政運営が求められる可能性が高い。
したがって、地方自治法における「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、
住民の福祉の増進に努めるとともに、最尐の経費で最大の効果を挙げるようにしなければ
ならない。
」という行政運営の根本原則を厳に実施しなければならない都市といえる。
これを進めるためには、まず地方自治体としての長崎市及び長崎市職員の意思及び能力
が必要である。監査の過程で対応された職員の能力は高く、地域に対する思いも強いもの
を感じた。一方で、市政やまちづくりに対する地域住民の意識及び協力も必要である。今
回の学校施設をみても、長崎市が継続してサービスの維持及び向上を図るためには、ある
程度地域住民が痛みを受け入れることも必要であるし、施設の効果的かつ効率的な整備運
用に関しても地域住民の理解と協力なしには進まない。
一言でいえば、市長はじめとする市職員、地域住民、企業及び各種団体など、長崎市に
関係する者すべてが、
「住民の福祉の増進」に関する「最大の効果」を「最尐の経費で」実
現できるよう「チーム長崎市」として一致協力することが必要ではないかと考える。
今回、複数の小中学校を訪問し現地調査を行った。その中で、児童数 9 人の高島小中学
校を訪問した際にいただいた学校長の「学校経営に関する資料」に次のような一文があっ
た。
【長崎市立高島小中学校 学校長資料(抜粋)】
生かされるということ
「児童・教職員・保護者・地域のみなさんが組織の一員として必要とされれば,組織
の中で,切磋琢磨しながら力を発揮し,笑顔いっぱいになれチーム力が高まる。
」
※出所「長崎市立高島小中学校 学校長資料」
92
また、市長は、平成 23 年 6 月市議会の施政方針演説の中で、次のとおり、
「多様な主体
による地域経営」について述べている。
【平成 23 年 6 月市議会 市長施政方針演説(抜粋)
】
(8)多様な主体による地域経営
ライフスタイルの変化に伴い、地域のニーズが多様化してきていることから、市民
一人ひとりが地域への思いを共有し、まちづくりの主役となり、地域が本来持ってい
る課題解決力を高める必要があります。そのため、地域コミュニティの強化を積極的
に図っていきます。
また、まちづくりの方向性を市民、企業、行政が共有し、つながりを強化していく
ことで、活力あるまちづくりを進めていきます。
(中略)
さらに、市役所も、市民から信頼される市役所へと進化します。職員一人ひとりが
市民とつながり、ニーズを的確に把握しながら、前例にとらわれず、成果重視型の行
政運営、より効率的な行財政運営をしなければなりません。
そのため、事業見直しや事務改善により、市役所の仕事の仕方を変え、職員の意識
改革を図るとともに、重点プロジェクトや重点事業を着実に進め、政策立案機能を強
化する組織体制を構築します。
また、今年度を初年度とする新たな「行財政改革プラン」を策定し、
「量」の改革だ
けではなく、
「質」の改革も図りながら、着実に行財政改革を進めていきます。
※出所「平成 23 年度市長施政方針演説」
繰り返しになるが、人口減尐や尐子高齢化、厳しい経済・雇用情勢、厳しい財政状況、
多い公共資産、地理的制約などを考えると、今後の市政運営には様々な困難があると考え
る。しかし、長崎市はこれまで様々な困難を乗り越えてきた歴史もある。
高島小中学校長の言葉を借りれば、市長はじめとする市職員、地域住民、企業及び各種
団体など、長崎市に関係する者すべてが「チーム長崎市」という組織の一員として必要と
されれば、組織の中で、切磋琢磨しながら力を発揮し、笑顔いっぱいになれチーム力が高
まることになると確信する。
以上
93
Fly UP