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学位申請論文 EU 経済・通貨統合とユーロ危機【論文要旨】 学位申請

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学位申請論文 EU 経済・通貨統合とユーロ危機【論文要旨】 学位申請
学位申請論文 EU 経済・通貨統合とユーロ危機【論文要旨】
学位申請論文
EU 経済・通貨統合とユーロ危機
星野 郁
【論 文 要 旨】
アメリカに端を発したグローバルな金融・経済危機はヨーロッパをも襲い、ヨーロッパの場合、ギリシャ
の財政破綻をきっかけにソブリン危機さらには銀行危機へと発展し、ついにはユーロの存続すら危ぶま
れるユーロ危機へと至った。なるほど、ユーロの崩壊こそ起きなかったものの、危機脱却の展望は依然見
えない。ユーロ圏の経済は慢性的なデフレに近い状況にあり、繰り返されるギリシャ危機、脆弱なままのヨ
ーロッパの銀行・金融システムに加えて、反 EU 勢力の台頭に見られるように、危機は、政治・社会危機、
さらにはヨーロッパ統合の正当性の危機へと広がりつつある。本書の目的は、ユーロ危機そのものの分析
だけではなく、ユーロ危機の背景にあったヨーロッパの経済・通貨統合、さらにはヨーロッパ統合そのもの
が抱える根本的な問題点を包括的かつ批判的に検証することにある。
序章での問題提起の後、第 1 章では、ヨーロッパ経済・通貨統合とユーロに託された目的がどの
ようなものであり、その目的の実現のために、どのような仕組みやガバナンス、戦略が立てられ、
実行に移されることになったのかについて概説する。第 2 章では、ユーロ導入以降危機に至るまで
のヨーロッパ経済の動向を紹介し、EU 当局の狙いと異なり、ユーロ圏の経済構造はユーロの導入
によって収斂には向かわず、逆に参加国の間で乖離や格差が広がり、それが後に危機を引き起こす
遠因となったことを明らかにする。第 3 章では、ユーロ危機を引き起こすことになった金融危機に
焦点を当て、その原因がユーロ導入後に急速に進んだヨーロッパおよび大西洋間での金融統合と、
アメリカの投資銀行顔負けの投機的な取引にのめり込んだヨーロッパの金融機関の暴走にあったこ
と、および金融危機発生後の危機の展開について述べ、併せて、危機に対する EU 当局および各国
政府による対応とその問題点について詳述する。第 4 章では、ユーロ危機で最も大きな打撃を受け
ることになった南欧諸国を中心に、ユーロ危機および救済と引き換えに EU・IMF らによって強制
された厳しい緊縮政策が EU 各国に与えた経済的、社会的影響と、危機に伴う EU 内の権力構造の
変容、さらには主要国における政治、社会動向について述べる。第 5 章では、EU 当局によって危
機再発防止のために打ち出された銀行構造改革案を批判的に分析・検討すると共に、同じくユーロ
危機克服の切り札として打ち出された銀行同盟についても、その概要を明らかにしたうえで批判的
な検証を行なう。第 6 章では、今回のユーロ危機によって絶大な権限と影響力を手に入れ、ユーロ
存続の鍵を握るといわれる ECB(ヨーロッパ中央銀行)による金融政策の運営、ならびに同行が直面
している課題について、批判的に分析・検証する。第 7 章では、ユーロ危機から最終的に脱却する
ために EU および各国で取られている、もしくは取られようとしている、成長戦略を含む諸施策に
ついて批判的に検証すると同時に、EU 当局ならびに統合推進派の進める more Europe 戦略につい
て、その問題点を批判的に検証する。最後に、結論では、本書全体の分析から、ユーロ危機は、単
なる金融・経済危機ではなく、経済・通貨統合やヨーロッパ統合そのもののあり方とも絡んだ複合
的な危機であり、ゆえにそこからの脱却は容易ではなく、今後も危機は続くとの見方を示す。
以上
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