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死刑の存廃について

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死刑の存廃について
死刑 の 存廃 につ いて
河
I は
相
俊
之
じめ に
死刑 の 存廃 の議論 は,そ の 時 の社 会状 況 に よ って大 き く影響 を受 け る問題 で
あ る。 わが 国 にお い ては,冤 罪判決,永 山事 件 判決,三 年 の 無執行 後 の大 量執
行 等 は,死 刑 の廃 止 を促 す方 向へ の社 会 的状 況 で あ った よ うに思 われ るが ,現
在 はサ リン事 件 に よ って, も とも と死刑 廃 止 には厳 しい世 論 が よ り厳 しい方 向
へ と進 ん で い るよ うで あ る。死刑 存廃 に 関す る論 争 は18世紀 の 啓蒙思想 か ら始
ま って現在 に到 ってお り,そ の到達 点 は す でに社会 的状 況 に よ って影響 を受 け
る もの で な い ともい え るが ,議 論 の本 質 に,個 人 の正 義 感,人 道論 そ の他 に よ
って規定 され て い る部分 が あ るため , ど うして も感情 的 な論 とな らぎるをえな
いの も事 実 であ る。
本稿 は,死 刑 存廃 とい う問題 に つ い て,経 済学 的 な手法 か ら考 察 を行 うもの
で あ る。 経 済学 的 な手法 が価値 中立 的 で あ る とは い えな い が,論 点 を明確 に し,
一 定 の観 点 を提供 で きれ ば,本 考 察 の 目的 は達 成 され た こ とに な る。
死刑 とい う一般的には法学的な問題 が,経 済学に よって取 りあげ られ るよ う
になったの は最近 の こ とではない。Becker(1968)によって始 まる犯罪の経済学
の流れ の 中で,Ehrich(1975)が計量経済学的手法 に よ り死刑 の犯 罪抑止力 の分
析 を行 ったこ とがその最初 である。 しか し,こ れ ら最初 の研究 の影響力が強 い
の であろ うか,以 後 の経済学的な死刑存廃 の議論 が犯 罪抑 止力 の研究に偏 りす
ぎて い る と筆者 には感 じられ る。抑止力が存在す るのか否か,存 在す るとすれ
ば どの程度 の大 きさなのか とい う問題 は重要 であ り, また極めて果味深 い問 い
ではあ るが,死 刑存廃 に関す るその他 の観点が切 り捨 て られて良 い とい うもの
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梶 田 公 教授退官記念論文集 (第305号)
で は な い と考 え る。
H 死 刑存廃 の論点
死刑 の存廃 の根拠につ いての主 な論点 として,次 の ような ものが挙げ られ る。
生命 の尊 重,誤 判 の可能性,刑 の不平等性 (不連続性),再 犯 の防止,世 論,金
銭的費用,犯 罪抑止,応 報 (被害者感情,法 的確信)等である。前三 者 は廃 止論,
点である。概論 して い くこ とに しよう。
後五 者は存置論 の立場 か ら指摘 され る論″
生 命 の尊重 とい う論点 は,廃 止論 の立場 か ら提起 され,殺 人 を犯 した者で も,
宗教 的,人 道的,人 権 的な見地か ら生命 までは奪 うこ とはできない とす るもの
であ る。 しか し, 自己の生命 を保証 された うえでの殺人 を認め ることになる,
被害者 の人権 をよ り重 く見 るべ きだ, との反論がある。双方 とも基本的に個 人
それぞれ の正義感等 に根 ざして い る部分 が大 きいため,生 命尊重 の論点 だけで
は水掛け論的にな り, また応報,抑 止力 その他 の論点 とも密接 に関連 して い る
の で,こ れだけでまとめ るの は難 しい とい えるだろ う。最終的 には,理 念的,
歴史的に い って,生 命尊重 の考 え方 をないが しろにす るこ とはで きない ことが,
確認 されねばな らない点 なので あろ う。
誤判 の可能性 は,死 刑廃止 の論拠 のか な り重要 な部分 を占め るよ うになって
きて い るよ うに思 える。 その論拠 は,死 刑執行 の後に誤判 が発見 されたな らば,
回復 が不可能 とい う点 である。反論 として,精 神的動物 としての人間には,有
期 自由刑 におけ る誤判にお いて も釈放や補償金 の給付 に よる回復が完全 である
わけではな く,ま た誤判 の問題 は死刑 存廃 とは基本的 に次元 の違 う問題 である,
1)
との指摘がある。誤判をなくすよう努力すべ きだとの″
点では双方一致するが,
1)日 本 におけ る存置論者が この種 の反論 とともに,死 刑 の誤判 の可能性がほ とん どな い と
い う 日本 の裁判 に対す る信頼 を往 々 に 口に して い たの を見 る と,個 人的には存置論者 の方
に誤判 に対す る認識 に甘 い点があ るので はな いか との 印象 が ある。 また これ も個 人的 な印
象 で しか な いが,サ リン事件 での河野氏に対す る一 連 の捜査,報 道に関す る出来事 は,筆
者 に誤判 の可能性 とい うものが 必ず しもガヽさい ものではな い と感 じさせ た。 しか しなが ら,
誤判 の可能性 につ いては,最 終的には,綿 密 な調査研究に よらねばな らな い こ とは い うま
で もな い。
死刑の存廃について 151
死刑にまつわる誤判 とい うコス トをどれ ぐらいの大 きさと見 るか, 他 の刑罰で
の場合 とどれほど差があるのか とい う点で, か なりの不一致があるといえるだ
ろ う。
刑 の不平等性 (不連続性)とい う論拠は,死 刑 と無期刑 とい う不連続的な刑罰
の適用に一定の基準をお くことが本質的な点で不可能 であることを問題 とする。
犯罪の軽重に一定の順序 を付けること自体にバ ラツキが生 じるのは不可避であ
ろ うが,そ こに人の生死 を分ける死刑 と無期 の選択点を設けなければならない
点に不合理,不 平等 とい う問題が存在す るのである。特にア メリカにおいては
その不平等性が人種や貧富の格差等に結びつ き,問 題 を大 きくしている。批判
としては,問 題が生 じるほどの不平等はない とい うものであろ うが,結 局は不
平等 とい うコス トの大 きさ,許 容範囲の取 り方に存廃論者によって差があると
い うことであろう。
再犯 の防止 とい う論点は存置論者から提起 され,死 刑制度は犯罪者の社会か
らの隔離 と再犯 の防止において完全 であるとい う,刑 罰において優れた性質を
持つ とするものである。批判 としては,死 刑相当罪を犯 した ものが必ず再び殺
2)
人を犯す とい うことで もな く,そ の数 も少ない とい うものがあ り, また再犯可
能性 を裁判所が正確 に予測 できる前提がない限 り,こ の種 の議論は不完全 であ
るとする。 また完全無期懲役刑 もほぼ同じ再犯防止 とい う性質 を持つことは明
D
らか で あ る。
死刑 存続 の 支持率 が 高 い こ とは事 実 で あ り,わ が 国 の法務 当局 もそ の こ とを
死刑 存続 の 大 きな一 つ の柱 に して い るよ うであ る。 しか し,死 刑 存続 の 意見 に
2)1982∼ 86年の平均 で,殺 人新 入所者725人中,前刑 と本刑 が ともに殺 人の者は20人 (2.8%)
との数字 があ る (犯罪 白書昭和63年度版)。 この数字 が大 きいか否か の 印象は人 に よって違
うであ ろ うし, また どの ような殺人 を犯 した者が再 び殺人 を犯 したのか 等,数 年 の大 きさ
ものが あ る
に隠れ た印象 の変 わ る要 因 も存在 しよう。ア メ リカの研 究 では,Sellin(1980)の
ヽ
い
が, これ も概 して刀 さ 数字 であ る。
3)死 刑廃止論者 の 中には完全無期懲役 を残酷す ぎる と主張す るもの も多い。 また,現 在 の
無期慾役刑 も15∼20年で 多 くが仮釈放 されて い るようであ る。完全無期懲役 は実務 にお い
て執行側 に もか な り負担 をかけ る点 もあ る。死刑廃止 の場合 に代替刑 をどうす るか とい う
問題 も,死 刑 存廃 の 中 での一 つの論点 である。
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梶 田 公 教授退官記念論文集 (第305号)
誘 導 して い るよ うな世 論 調査 であ る,死 刑 に 関す る情報 が少 な い こ とが そ の理
由 であ る, と批 判 され た り,ま た将 来 的 には死 刑 は廃 止 され るべ き との 意見 に
対 す る支 持率 が 結構 高 い とい う現 象 も見 られ る。諸外 国 におけ る死刑 廃 止 の経
過 にお い て も,必 ず しも死刑 廃 止 の支持 率 が 高 か ったか ら とい うわけ で もな い。
世 論 を単純 に そ の ま ま社 会 的 な厚 生 の 判 断 に使 え るか とい う問題 を考 えなけれ
つ
ばならないの であろ う。
犯 罪者 を刑務所 に拘禁す るよ りも処刑す る方が安 くつ くとい う主張 も,死 刑
の存置 の一 つの根拠 として挙 げ られ るこ とがある。確 かに普通 に考 えた場合,
死刑 の方 が 費用 が安 くすむ と考 えられ るが, しか し,ア ムネ ステ ィ ・インター
ナ シ ョナ ル (1989)によると,裁 判 の長期化 ,再 審請求 その他等 で,死 刑 の方 が
費用 が掛 か るとい う研究報告 もあ るようである。
犯罪抑止 とい う論 点は,死 刑 の存廃 に関 して もっ とも論 争的な部分 であ り,
無期懲役刑 に較べ て よ り大 きな犯罪抑止力が在 るか無 いかで死刑存廃 の問題 が
決す るとす る意見 も見 られ る。犯 罪抑止力 の統計的研究は,社 会学者その他 の
先達者 に よってか な り前 か ら始め られて いたが,Ehrich(1975)による計量経済
学的手法 に よって一 つの転機 を迎 え,特 にその分析結果が一件 の死刑 は 8人 の
5)
潜在的被害者を救 うとい うものであったため,以 後大 きな論争が起 こっている。
それら論争を受けて全米科学アカデ ミー (1978)は
評価委員会で種 々の実証研究
を検討 し,抑 止力について意味ある結論 を導 くには現存す る証拠は不十分なも
のである, とい う評価 を下 してお り,そ の後 も確定させ るような研究はない と
4)94年 度 の総理府 に よる調査 に よる と,「場合 に よっては死刑 もや む を得 な い」 が73.8%,
「どんな場合 で も死刑 は廃止すべ きだ」 が13.6%,存 続派 の 中 で 「
将来 も存続」 が53.2%,
「
状況が変 われば廃止 して もよい」 が39.6%,で あ る。議論が前後す るが,死 刑抑止力に
つ い ては52.3%が 積極 的 な評価 を し,な い とす るのが12.0%,一 概 に い えな いが30.8%で
あ る。
点につ いて,九 州大学法学部,大 出良和教
世論調査 の 設間に よって数字が変 わ る とい う″
授 のゼ ミに よるア ンケー ト調査 が新 聞 で報道 された (94年5月 25日朝 日新 聞夕刊)。設間 に
よって影響 を受 け る こ とが ある程度確 認 で きた ようであ る。
5)た だ し Ehrichは,雇 用機会や所得 の増大 が死 刑執行 よ りも強 い抑止効果 を もつ とも分
析 して い る。
死刑 の存廃 につ いて
153
6)
いえるのであろ う。死刑がない と自己の生命 を保証 したうえでの殺人を認める
ことになって しまうとい う考えの裏 に も,死 刑 の抑止力に関する期待があると
考えることができるだろ うから,私 的社会 を考えた場合 には,抑 止力の考え方
は根源的な概念 ともなりえるだろ う。よって, も し死刑に無期懲役刑 を上回る
犯罪抑止力がなければ,死 刑存置の意味は半減 してしまうことも考えられるも
逆がどの程度 まで真であるかは,そ の他 の刑罰の抑止力等 も考えつつ議論 しな
ければならないであろ う。
応報 (被害者感情,法 的確信)とい う論″
点は,人 の素朴な正義感 もしくは確信
的感情に根 ざしてお り,一 定の犯罪者は非難のために殺されなければならない,
また被害者,そ の遺族 (もしくは広 く考えて国民全体)の感情を充足するために
必要である, との主張である。批判 としては,素 朴な 「目には目を,歯 には歯
を」 とい う考え方はすでに否定 されてお り,現 実的に も我が国において年間殺
人件数は種 々なもの を含むにしても1000件以上であるが,死 刑執行数は年間10
7)
件 を上 回 らな い, とい うもの,他 に変 わ る被 害者,遺 族 の保護政策 を採 ること
の方が適切 ではないか,一 律 に被害者感情 を死刑 によって充足 で きるとい うの
は本 当なのか,等 が あ る。一般的市民 の素朴 な感情 を無視す るこ とはできない
の は確 かであ るが,逆 に素 朴 な感情 のみ によって近代社会 におけ る政 策 を論 じ
るわけに もいかないの も事実 であるだろ う。
III 経済学的合理的個人のモデル
ぢ
巳罪,特 に経済犯罪ではない殺人の ような犯罪を犯す こ とが,経 済学が考え
るような合理的行動か ら本当に導かれるのか, とい う指摘は必ず しも無視 され
6)計 量経済学的 な研究 は,松 村 (1982),秋葉 (1993)に詳 しい。社会心理学者に よるもの と
しては,Archer and Gartner(1984)が 参考 になった。 日本 に関す る研 究 は少 な く,計 量
経済学的 な手法 の もので,松 村 =竹 内 (1990)と秋葉 (1993)があ り,前 者は抑止に否定的結
論 を導 き,後 者 は肯定的結論 を下 して い る。
7)平 均 の数 では,昭 和30年代 は殺人件数 は2500件ほ ど,死 刑数 は約20,昭 和40年代 は殺人
件数約 2000,死 刑数約 10,昭 和50年代 はそれ ぞれ,約 1800,約 4,昭 和60年か ら平成 1年
はそれ ぞれ,約 1500,約 2, と い う数字 である。
154
梶
田 公 教 授 退 官 記 念論 文 集 ( 第3 0 5 号)
D
るべ きでは な い と考 え るが,こ こでは合理 的個 人 を仮 定 して考 察 を行 う。まず犯
の
罪供 給 関数 の 導 出 で あ るが , 基 本 的 に は B e c k e r ( 1 9 6 8 ) のモ デ ル と同 等 で あ る。
フ ォ ン ・ノ イマ ン = モ ルゲ ン シ ュ テ ル ンの効 用 関数 ( % ) をもつ 個 人 を考 え, 犯
罪 とは逮捕収 監 され る可能性 をは らむ不確 実性 下 の行 動 であ る とす る。犯 罪 に
よ って得 る正 の 利得 を θ, 逮 捕収 監 され る確 率 を 夕 とし, 刑 罰 の重 さを表 す変
数 を θとして,そ の不利益は F(θ),た だ し F′(θ
)>0,と い うかたちで表せ る
もの とする。最 も簡単な線形の効用関数 を採用 し,犯 罪を犯さない場合 の効用
は 0で あるとすると,
E(勿 )=(1-夕 )θ―夕F(θ)>0
の場合 , そ の個 人 は犯 罪 を 1 単 位 犯 す こ とに な る。
筋ブ( ク
)=_θ _F(θ
(ク
)=_夕 F′
)<0, 6だ
(θ
)<0
であ るか ら, い わゆ る刑 罰 の確 実性, 刑 罰 の 厳 罰性 の効 果 は, 抑 止 効 果 が あ る
方 向 で, 一 般 的 な結 果 で あ る。 ( 1 ) 式を変 形す る と
θ> 緋
こ こで,θ は各個 人 に よ って相 違 し,θ の分布 につ き累積分 布 関数 を 0(θ)とす
る。 人 口 を N,犯
罪者数 を 打 とす る と,犯 罪供 給 関数 は,
一
=N←
労
。
l)の
( 器 ) ) lg―
8)犯 罪者が合理的か どうかについては,心理学的な観点 と経済学者 とでは見解が180度異な
一度有
ってい るとされる。それを端的に示す ものに次の ような再犯に関する言説がある。「
罪 とされた り刑務所に入 ったら犯罪が割に合わないこと知 るはずである。それにもかかわ
らず犯罪を繰 り返すのは犯罪者が非合理に行動 してい るか らだ, と普通の人は考えるのに
対 し,経 済学者は,犯 罪者は コス トと利益 の確率 を知 った うえで犯罪を行 ったのであるか
ら,再 び犯 罪を行 うのは当然である, と考 える」 (松村良之 (1982))。
9)Tirole(1988)第
2章 の品質に関す る議論 も含んでい る。
10)殺 人の ような犯罪には,何 単位, もしくはどれ ぐらいの犯罪を犯すか とい うもの より,
殺人を犯すのか犯 さないのか とい う判断が重要であるだろう。 また動学的な枠組みを考え
る,不 確実'性を含んでい ると考 えることに よって も,こ の ようなかたちが導出できるとも
考えられよう。
死刑の存廃について
155
となる。θをこの ようなかたちで扱 うことには,殺人の ような犯罪が個 人によっ
て価値 が違 う,そ れは状況によって違 って くるなど,不 確実性のあることが念
頭にある。一般に θは小 さい値 であろ うが,お かれた状況によって θが大 きく
な り個人は犯罪を犯す と考えるのである。
次に最適刑罰を導 く。 ここでは基本的には犯罪を犯さない (犯していない)個
人が,刑 罰 とい う政策の判断を行 うことを考える。代表的個人で考察 できるも
の として,焦 点を絞 るために効用は犯罪者数のみに依存 しているもの とし,個
人は減少関数 の効用関数 (υ
)を持つ もの とする。個人は次の ように考 えてい る
基本的に自分は犯罪者になる予定はない。しか し,将 来には経
と仮定 しよう。「
済的苦境,社 会的苦境,精 神的苦境 その他 に陥って (犯罪を犯すべ きでないこ と
誤判に
は理性的には承知 しつつ も),罪 を犯 してしまうか もしれない。
」 また 「
よって無実の罪で罰せ られるか もしれない。
」その ように犯罪を犯 してしまう状
態に陥る主観的確率 と誤判の確率 を合計 して,す なわち刑罰を被 る確率 を ?で
表せば,解 かれなければならない問題 は,
max (1-?)υ
(χ)一 ?F(θ )
sub.to.死 =。 (θ)
1 3 )
とな る。
11)犯 罪供給関数 の導出 の 際 の θの扱 い と,あ る点で整合 的であ ろ う。 しか し,こ の ような
扱 いが どこまで正 当かは議論 の あ るところだ ろ う。犯 罪 を起 こ した とき罰 を受 け るこ とが
当然 と考 える場合 が あ る等,議 論 を深め る余地 はあ るだろ う。何 が刑罰の重 さを決め るの
かに関す る考 察 は まだ不十分 か もしれな いが,こ こでは ?の 解釈 の 問題 であ るので,分 析
を進め た い。
12)犯 罪 を犯す のが効用関数 を持 つ その個 人 自身であ る必要 はな いだろ う。家族,友 人その
他 が犯 罪 を犯す確率 を含め て考 えて もよいだ ろ う。
13)モ デ ル的 には,誤 判確率 も操作変数 と考 えるこ とが可能 であろ う。誤判 は一般的に い っ
て許 され な い もの ではあ るが,刑 事制度 もシステムであ る以上 ,エ ラー を考 えなけれ ばな
らな いの は当然 であろ う。人 を運 ぶ あ らゆ る交通手段 の 危険率 は 0%で はな く,薬 が完全
合理的
に安全 である必要が あるな ら,薬 は販 売 で きな い。裁判 にお い て も立証 の基準は 「
な疑 い を越 えて」 と表現 され る。 しか し現実的に誤判確率 を操作変数 と考 えるには,そ の
具体 的方法 と,そ の方法 に よ って どこ まで厳密 に操 作可能 か 等,問 題が存在す るであろ う。
また厳密 には ?は θに依 存す ると考 えなければな らな いだろ う。
梶 田 公 教授退官記念論文 集 (第305号 )
刑罰 の重 さにつ いて何 が それ を決め るのかにつ いて,そ の大 きな要 因 をここ
では 自分 が将来犯罪 を犯すか もしれない とい う不確実性 と誤判 であると考 えて
い るこ とになる。誤判 を無視す るな ら, もし将来にお いて絶対 にガ
巳罪 を犯 さな
いの であれば,刑 罰は重ければ重 いほ どよい とい うこ とになるだろ う。 それが
最 も犯罪 を抑止す る方向 だろ うか らである。 しか しそれは現実的でないだろ う。
刑罰 の重 さ を決め る要 因につ いては,犯 罪者 を逮捕す る費用,そ して刑罰 を科
す るため の貨幣的費用 等 を考 える Becker(1968)や,誤 判 を考 える BenOit and
Osborne(1995)などがある。前者 の費用 とい う考 え方は刑罰全般 に関 して考 え
るとき重要 であろ う。 しか しここでは死刑 の問題 を考 えて い る,主 に殺人等 の
凶悪犯 罪 を念頭にお いてお り, また論点 との関係 もあ り,考 察対象 とは して い
ない。
I V 死 刑 に関 す る考 察
最大化 問題 の一 階 の 条件 は
(1-?)グ (ガ
)ダ(θ)― ?F′(θ)=0
であ る。 この 式 を中心 に死 刑 の 論 ″
点を考 察 して い くこ とに な る。
生 命 の 尊 重 の観 点 は,具 体 的 に は モ デ ル に 内包す るこ とは で きな い とい え る。
よ って 以後触 れ な い が ,死 刑 を論 じる際 の 基本 的論 点 であ る こ とは再 び確 認 し
てお く必要 は あ るだ ろ う。
誤判 の可能性 につ いて, ま た刑 の不平等性 とい う観点は, ? と い う確率 を与 え
て い るこ とに よって考察対象になって い ると考 える。前者 の誤判 の可能性 につ
いては直接的に対象 となって い るが, 後 者 の不平 等性 について も, 本 当は軽 い
罪であるはず なの に よ り重 い判決 を受け るとい うかたちで捉 らえることが可能
14)誤 判 の重要性 を指摘 したの は Stigler(1970)で
あ る。Benoit and Osborne(1995)は
誤判
確率 を考 え,犯 罪率 が 警察機構や所得分配のための社会的 な支 出に も関係 して い るとして
モデル を構成 し,犯 罪 と社会 的支 出,所 得水準に関 して分析 して い る。 そこで解 かれ る最
大化 問題 と本稿 の最大化問題 の基本的 なか たちは 同 じである。
死刑 の存廃 について
157
で , 誤 判 の 一 部 と解 釈 で き る と思 わ れ る。 死 刑 の 誤 判 の 際 の コ ス ト, ま た生 死
を分 け る基準 を設けなければならない とい う点 に関 しては,P(θ )の値 が大 き
い と解釈 して考察す るこ とが可能 であろ う。無期懲役 と死刑 とではその不利益
の差 が大 きいか らこそ,誤 判 の際 の コス トが問題 とな り, また刑罰 のバ ラツキ
による コス トが大 きい と考 えられ るか らである。
死刑 の方 が再犯 防止につ いて完全 であるとい う論点は,抑 止 力 を死刑 の方が
よ り大 きい と解釈す るこ とでモデル に内包す るこ とが一 応可能 であろ う。 また
死刑 と無期懲役 との比較 とい うこ とであれば,全 く無視 で きるとまでい えない
が,こ こでは特別 に考慮す るこ ともないであろ堺。
死刑 存続 の支持率 に関す る議論 はここでは扱 えない問題 であろ う。
効用関数 が所得 に も依存す るもの として,刑 罰によって掛か る費用 が相違 し,
その費用 が税金 で賄われ るとい うかたちで,安 価 な刑罰 としての死刑 とい う論
点は含む こ とが可能 であ るが,変 数 の増加 は議論 を複雑 にす るし,現 状 の 日本
にお いて, ま た生 命尊重 の観点か らも費用 の側面は重要視 しな くて もよい と考
える。 よってモデルには安価 な刑罰 としての死刑 は含 まれない。
′
抑止 とい う論 ″
点は,犯 罪供給関数 に含 まれてお り,ョ (θ
)<0で あれば犯罪抑
止 力が存在す るこ とになる。一 階 の条件式 か ら明 らかであるが, も し犯 罪抑止
力が存在 しなければ,一 階 の条件 は満 たされず,明 らかにそ こでは刑罰が重 す
ぎるこ とになる。 よって死刑 に犯 罪抑止力が存在 しなければ,本 稿 の現行 のモ
デル にお いては死刑 の存置 には意味が ない こ とが直 ちに導かれ る。確かに抑止
力 の存在 につ いての証拠は重要 であ り,死 刑存置 の立場 か らは抑止力 の存在 を
確定す る作業 が必要 であろ う。
応報 とい う論点 は,若 子 の相違 が あるか もしれないが,υ′
位)の値 をそれ とし
て捉 えるこ とが可能 であると思 われ る。グ (ィ
)の値 は犯罪が増 えるこ とによって
15)死 刑 が人種 問題や貧富 の格差 と関連 して不平 等 になって い る とい う問題 は,こ こでは取
り扱 えな い問題 であ る。
16)再 犯防止に関 しては,死 刑 だけの 問題 ではな い。通常 の有期懲役刑 の 際 に も, どこ まで
再犯防止 の観点に比重 をお いて刑 の長 さを決め るべ きか とい う問題 は,再 犯 の予測可能性
と絡 んで存在す るであろ う。 ア メ リカにお いては三振即 ア ウ ト法が導入 されて きて い る。
158
梶 田 公 教授退官記念論文集 (第305号)
下 が る効用値 であるが, 犯 罪が凶悪 であるほ ど被害者感情 は強 い ものが あ り,
犯 罪が増 えるこ とに大 きな効用 の低下 が あるだろ うこ とは容易 に推測で きるか
′
らである。ここでは殺 人の ような犯 罪 を考 えてい るの で, υ ( 死
) の値 は絶対値 で
大 きい とい えるだろ う。
さて一 階 の条件式 をみ ると, い ま F ′( θ
) の値 は大 きい と考 えて い るか ら, 等
′
′
式 が成 り立つ には, 例 えば ? が 小 さい こ と, す ( θ
) , υ 位) の絶対値 が大 きい こ
となどが必要 であろ う。
? が 小 さい こ とは納得 で きるこ とだろ う。 凶悪 な犯 罪ほ どそれ をガ巳す のに は
大 きな垣根が あ り, 自身が犯 す可能性 はイヽさい と普通 は考 えられ るか らである。
ここで逆に 自身の犯 罪 を犯す可能性 が高 い場合, ? が 大 きい場合 には, 刑罰 が重
くない方 を個 人は選ぶだろ うとい うこ とであ り, こ れは軽 い犯罪には軽 い処罰
とい うこ とをある程 度裏書 きす る結果 とい えるか もしれない。
(θ
) であ るが, そ の絶対値 が大 きければ大 きいほ ど, よ り重 い刑罰 が選ばれ
o′
るだろ うか ら, 犯 罪抑止力 の存在 が死刑 を支持す る方向であるのは間違 い ない。
しか し, 本 稿 モデ ルにお いて犯 罪抑止カ ダ( θ
) の大 きさを決め る要 因につ いて
は
亀 井
―
確
′
(祥 鍬
)宅拳 キ
0
であ るか ら, 刑 罰 で あ る死刑 が どこ まで本 質 的 に凶悪犯 罪抑 止 に関係 して い る
か は議論 の あ る ところか も しれ な い。 す なわ ち本稿 の モ デ ルに お い ては抑 止 力
が 0の 値,す なわち θの分布 にかなり依存 していると考 えられるとい う点 で
ある。 このこ とは,死 刑以外 の方策により凶悪犯罪を減 らすべ きではないか,
θの分布 に関す る考察を行 うべ きではないか, とい う議論 に もつ ながるであろ
う。人は死 に対 して最大 の恐怖 を感 じるのは事実 としても,そ れだけで犯罪抑
止力の大 きさを判断するわけにはいか ないのである。ただ し,F′(θ
)が大 きくな
1 7 ) 当 然 なが ら二 階 の条件 は成立 す るもの とす る。
1 8 ) θ の値 が個 人に とって不確 実, 偶 然的 であるな ら, 犯 罪 も偶然 とみ えるのか もしれ な い。
また , の 分布 につ い ては 国民所得, 貧 富 の差 な どが関係 して くるので あろ う。
死刑の存廃について
159
れ ば犯 罪抑 止 力 も大 き くな るか ら,確 か に刑 罰 の効 果 は 存在 す るの であ り,そ
して最終 的 には死 刑 の犯 罪抑 止 力 は事 実 の 問題 であ り,級 密 な実証研 究 に よっ
て計測 され るべ き問題 であ る。
ところで,実 は (2)式を一 階 の 条件 式 に代 入 す る と,F′ (θ
)は消 えて しま う。
よ って モ デ ル にお い て は,誤 判 の 可能性 ,刑 罰 の不平 等性 (不連 続性 )の コス ト
は,明 示 的 に は影 響 を与 えな い。 よ り詳 し くい えば そ の コス トは犯 罪抑 止 に 関
係 して そ の分 利益 を生 み,相 殺 され る。 これ はあ る″
点で本稿 の モ デ ルが 不 十分
であ るこ とを意 味す るのか も しれ な いが ,逆 に モ デ ルが 死刑 抑 止 力 と死刑 の コ
ス トの 関係 に つ い て明確 だか らであ って,こ の こ とは死刑 の廃 止 の要 因であ る
誤判 の 可能性 ,刑 罰 の不 平 等性 を無視 して よい とい うこ とでは な い。往 々 に し
て死刑存置 の見解 は抑止 力 を評価 し, コス トを軽視す る傾 向が ある。死に対す
る恐怖か ら死刑 の犯罪抑止効 果 を十分 存在す ると評価 し,逆 に他 の刑罰にお い
て も誤判 は存在す るとして死刑 問題 と誤判 は別次元 の問題 とす る。 しか し,抑
止 力が評価 で きるとい うことは,逆 に他 の刑罰に較べ てそれ相応の コス トが存
在す るか らであ り,抑 止力 を評価す るならば, まさに誤判 の可能性,刑 罰 の不
平等性 を考慮 に いれなければな らない こ とをモデルは主張 して い るの である。
υ′
(ダ
)が大 きい値 であるこ とは既 に述べ た。よって応報,被 害者感情 とい う要
因は,確 かに死刑 を存置す るため の一 つの大 きな要 因 とい って差 し支 えない と
思 われ る。 また ここで も逆 に応報感情 が大 き くない場合,凶 悪 な犯罪ではない
場合 には軽 い刑罰 を望 むだろ うこ とが考 えられ るが,こ の点 も常識に適 うとい
19)犯 罪行動 を定式化す る際 の刑罰 の不利益 の 関数 と,刑 罰 の重 さを決め る際 の刑罰 の不利
益 の関数 が相 違す る もの とすれ ば,誤 判 の可能性 ,刑 罰 の不平等性 (不連続性)の コス トは
明示 的に一 階 の条件式 の 中に残 るこ とになるだろ う。 これは,誤 判 で罰せ られ る場合 の不
利益 は,ガ巳罪 を犯 して罰せ られ る時 の不利益 に較 べ て大 きいのが普通 である と考 えれば よ
い。 罪 を犯 して の刑罰 と罪 を犯 さな い での刑罰の差 であ る。 この ような考 え方は,そ の他
の システムで もみ られ るのではな いだろ うか。例 えば,四 年前 のMMRワ
クチ ンの 問題 に
お い て, 自然感染 でのおたふ くかぜ に よる死亡があるのだか ら,ワ クチ ンに よる目u作用が
1000人に 1人 現れて もMMRワ
クチ ンは有効 である との見解 もあ った よ うだが,人 工 的 な
予防接種 で親 の不安 を考 える と大 きな数字 で不適切,と の意見その他 (当初 の見込 み との差
が あ りす ぎる とい う点 も大 きな理 由なので あろ うが)もあ り,中 止 されて い る。
160
梶
田 公 教授退官記念論文 集 (第305号)
えるだろ う。
さて, もし死刑の犯 罪抑止力がほとん ど無 い ぐらいに小 さい としたら,死 刑
は支持 されないのであろ うか。死刑 を廃止 しているヨー ロッパ諸国において も
大量殺人等の凶悪犯罪が起 これば死刑復活の声が上が るようであ り,筆 者には
それは応報 による感情からではとも思える。 モデルでは代表的個人 とい うかた
ちであるが,現 実 に多様な個人が存在 し,あ る個人は犯罪者数に関 して極めて
敏感な効用関数 をもっている可能性があるから,そ のこ とはモデルの修正がな
くて も説明可能 であるだろ う。しか し ク′
位)を応報であると解釈 したが,純粋な
応報感情を考えるならば,効 用関数 の中に直接的に刑罰の変数 θが入って くる
)。
と考えるべ きか もしれない とい う理解が可能であろ掛 そうでぁれば死刑 の存
置がより成立 しやす くなるだろ うし, また死刑に犯罪抑止力が存在 しない場合
に も一階の条件が満 たされ る可能性,死 刑が支持 される可能性がでて くるであ
ろう。経済学の理論的な観点からい うと,そ れは消費者問題において効用関数
の中に直接に貨幣量が入って くる,人 々は貨幣錯覚 をもつ とい うの と同等な方
向であるので,非 合理的な個人 とい うかたちで少 し馴染み難い方向と思われる
が,必 ず しも否定 で きないのではないか とも感 じられる。応報,被 害者感情は
無視 されてはならない重要な要因であると考えられる。
V 終
わ りに
現実 的 な状 況 として,1993年 度 の アムネ ス テ ィ ・イ ン ター ナ シ ョナ ルの調査
に よ る と,死 刑 を全 面 的 に廃 止 した国が53,通 常犯 罪 につ い てのみ廃 止 した 国
が16,過 去 十 年 以上 死刑 を執行 した こ との な い事実上 の廃 止 国 が21で,死 刑 存
置国 は103と な って い る。死 刑 廃 止 国 の 中心 は ヨー ロ ッパ 諸 国 であ り,中 南米諸
国 に も多 い。死刑 存 置 国 としては,ア メ リカ,′そ して 中国 を筆頭 とす るア ジア
諸 国 が 挙 げ られ よ う。 しか し,ア メ リカにお い て も死刑 が行 われ て い なか った
時期 が 存在 す る とい う事 実 もあ る。
20)そ の場合には,将 来に犯罪を犯 して罰せ られるとい う不確実性による刑罰の不利益は,
修正 を受けるべ きか もしヤ
化ない。
死刑の存廃 につ いて
161
基 本 的 に 筆 者 は死 刑 は 廃 止 され た 方 が よ い , と考 え る。 ま だ まだ不 十分 で は
あ るけ れ ど も本 稿 で の 分 析 に よ り, 死 刑 の 存 置 に は特 に犯 罪 抑 止 力 と応 報 感 情 ,
被害者感情が重要であることが分かったように思われる。前者の死刑 の犯罪抑
止力は,種 々の研究から必ず しも抑止力が大 きい必然性 もなく, またその存在
が疑われているとい うのが現状であ り,抑 止力に大 きな期待 を抱 くことはで き
ない とい うのが筆者の判断である。最終的には綿密な実証分析によらなければ
ならないことはい うまで もな く,統 計的手法に十分精通 していない筆者が即断
をする資格はないのか もしれないが,実 験ができない社会科学において,最 終
的な判断がす ぐに出て くるわけでもない。そして後者の応報,被 害者感情の問
題が存在する。無視 されてはならない要素であ り,筆 者は犯罪抑止力の問題 よ
りも,応 報,被 害者感情の方がより大 きな争″
点になるのではないか とも考えて
いる。 しか し,そ の ような要因はあるにして も,逆 に死刑存続によるコス トも
明確に存在するのであって,ベ ネフィットと比較衡量されねばならない。
ヨー ロッパ諸国での死刑廃止による経験から,わ が国において も廃止による
影響は小 さいのではないか と考えて もよいのではないだろ うか。 ヨー ロッパ諸
国に導入できたことがわが国で導入できないことはないだろ う。まだ まだ不確
定な要因があ り,凡 庸な筆者には死刑廃止に対する絶対的確信があるわけで も
ない。一抹の不安は残 っているといって よい。 しか し,ベ ネフィットが十分す
ぎるほどコス トを上回ってい るとも思えない。そしてそうであるならば,そ の
ような判断に悩む ときこそ,生 命の尊重 とい う原則によって乗 り越えるのがわ
れわれの社会であるように思える。
参
考
文
献
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死刑 の存廃 につ いて
163
The PrObleH1 0f Capital Punishment
Toshiyuki Kawai
Since Becker(1968)econo■
lists have studied crirninal behaviOr
and punishment,especially on deterrent effect tO generate a large
literature.On the prOblem of capital punishment,deterrent effect
has been a main suttect since Ehrich(1975).Deterrent effect of
capital punishment is certainly an important issue,but we shOuld
not ignore other aspects of the problenl, such as respect for life,
■1lscarriages of justice,discrirninatiOn and retributiOn.
This article discusses lnany aspects Of capital punishment based
on econornic analysis Of rational behav10r. AlthOugh the author
considers that capital punishment shOuld be ab01ished, the main
purpose of this paper is tO shO、
v an analytical framework.
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