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循環器内科ニュースレター
2014/12/20 発行 筑波大学 Vol.10 医学医療系 循環器内科ニュースレター 筑波大学循環器内科 教授 青沼和隆 10年を振り返って: 2004年に筑波大学に赴任し、10年になる。今ま で一施設における時間としては、横須賀共済病院 での 11年が最長であったため、自身のキャリアの 中、後 1年で一つの施設における最長となる。 10年という年月は、あっという間に過ぎる時間 と捉えられるべき時間でもあるが、英語表現に見 る欧米的考えとしては decadeと表現し、一昔とし て取り上げられる時間でもあり、確かに人の営み にとって一事を成し遂げる為の十分な時間でもあ る。 振り返って東洋においては、孔子が自らの人生 70年を 10年毎に刻み、『幼学』、 『志学』 、『而立』、 『不惑』、 『知命』 、 『耳順』、 『従心』 、と表現してい る。孔子はその 10年において、人の生き方を変え るだけの経験が得られるということを示している のである。 2004年 4月に筑波の地を踏み、筑波における新 たな挑戦が始まって、早 10年。それまでは、同門 のいわば同じ釜の飯を食った仲間内での生活であ ったものが、一人自ら筑波大学で活動を開始した のであったが、幸い多くの人々の共感を糧とし、 また吉田健太郎先生を初めとする多くの同志・後 進に恵まれたこともあって、直ぐに筑波の地に馴 染む事ができ、また多くのことを新たに学ぶこと が出来た。 臨床内科学の大学院生として大学における 5年 間の研修・勉強・研究を含めた教育を受けた後、 フロリダ州マイアミ心臓研究所において最新臨床 循環器学の研鑽を積んだ後、筑波に赴任するまで は、一般病院においてのみ臨床・研究・教育を続 け、一度も大学での教員としての経験はなかった のである。この間、武蔵野赤十字病院に循環器内 科を開設し、土浦協同病院ではカテーテルアブレ ーションを開始し、また横須賀共済病院でも循環 器内科を開設し、それこそ第一線野戦病院でのみ 過ごしてきた私であった。その私に、50歳を過ぎ てからの大学生活が務まるのかとの諸先輩の老婆 心もあったが、 『案ずるより生むが易し』で、今ま で何とかやり続けてこられたのは、これを読んで おられる多くの筑波循環器内科同門会の諸氏のお 蔭であろう。 筑波でのこの 10年を今思い起こせば、全くの未 知からの出発であり、楽しくもあり且つ全く厳し い試練でもあった。孔子の言葉に従えば、筑波の 地において『知命』、 『耳順』、の実践が私の責務と 思慮されるのであるが、 『五十にして天命を知り』、 『六十にして耳順う』ことが出来ているかを自問 する必要があろう。 着任後、当時の筑波大学循環器内科に於いて、 最も重要な ”idea (イデア)” は何かと考えた 時、各関連病院においては疾患そのものに対する、 『熱き学問的向上心』であり、その中心に在る筑 波大学循環器内科に在っては、 『挑戦する精神・競 争心の発露』ではないかと思い当るに至った。 更に、着任後 2年を経て、山口巖前教授から教 室を受け継いだけた後、筑波大学循環器内科学教 室を主宰する上で、何が最も重要であるかを考え て、その後 8年を過した。初期においては、 『熱き 学問的向上心・挑戦する精神・競争心』の発露を 促すために、『闊達で自由な教室』を目指した。 ここで、上に起つ者として最も重要なものを 挙げるとすれば、崇高な目標の提示と、目標に 向って遂行する強いリーダーシップでは無い かと考えるに至った。これらの思いを胸に秘め てこの 8年間を歩んできたのである。 教授就任後己を見つめ直し、我が筑波大学循 環器内科の為に何が出来るかを考えた所、大学 を離れて以来、それまで臨床に追われて来たわ が身に取って、想起だにしなかった、心に深く 残るある言葉を思い起こした。それは私の恩師 である、故武内重五郎東京医科歯科大学第 2内 科名誉教授の言葉であり、『高度で豊富な臨床 があって初めて、高度な教育と、高度な研究が 為される』という趣旨の言葉であった。武内重 五郎教授はまた、『同僚から信頼される内科医 の養成』と、『国際的な評価に堪える独創的な 研究を行う』という 2つの言葉でも、自らの考え を示された。この 2つの言葉の意味する真の状態 は、 『幅広い知識を有し、然も、ある領域において 特に深く優れた見識と技術を有する医師たれ』、と 言う言葉で表現される医師像を想起頂ければ良い。 私が大学での 5年間に受けた教育を噛みしめな がら、30年前に親しんだ武内重五郎先生の数々の 言葉を想起しつつ、自分なりに解釈し、事ある毎 に教室の先生方に伝えた。それは、私なりの言葉 で表記すれば、『fo rthepatie nt:即ち、真に患 者の為の医学であれ』と言う事でもある。 現在振り返って観れば、筑波大学循環器内科教 室が大学機関として、最も多くの経皮・経血管的 治療を手掛け、そして多くの臨床研究を成し遂げ、 研究機関としても国内外における高い学問的評価 を勝ち得ることが出来たのは、勿論私自身の力で はなく、武内重五郎先生より教えを受けた、この 私の考えを深く理解して、且つそれを実現すべく 日夜努力してくれた、現教室員諸氏の弛まない努 力と力添えがあってのことであるのは、自明の理 である。 今この時を借りて、今一度筑波大学循環器内科 教室員諸氏に改めて問いたい。貴方は医師として、 『幅広い知識を有し、然も、ある領域において特 に深く優れた見識と技術を有する医師』で有るや 否や、更には『同僚から信頼される内科医』で有 り『国際的な評価に堪える独創的な研究を為す医 師』で有るや否やという問いである。 この機会に全教室員の先生方に再度この意識を 共有して頂きたい。この意識の共有が為されるな らば、筑波大学循環器内科の将来は弥が上にも明 るいものとなると確信する次第である。 《就任の言葉》 ●筑波大学不整脈次世代寄附研究部門 准教授 このたび、青沼和隆教授をはじめ筑波大学循 環器内科の諸先輩方、諸先生方のご高配により、 平成 26年 7月 1日付けで筑波大学医学医療系 循環器内科 不整脈次世代寄附研究部門 准教 授を拝命いたしました。平成 8年に群馬大学を 卒業し 2年間の卒後研修の後に、平塚共済病院、 横須賀共済病院、武蔵野赤十字病院にて循環器 内科医として心不全・虚血性心疾患・不整脈疾 患等の循環器分野全般の診療に携わって参り ました。そして筑波大学には平成 18年 10月か ら勤務させて頂いております。大学に赴任して から 8年が経過したことになりますが、あっと いう間に月日が経ってしまったことに非常に 驚いております。 筑波大学に赴任してからは、主にカテーテル アブレーションやデバイス治療といった不整 脈の治療に携わらせていただいております。 カテーテルアブレーション治療といっても、 以前は発作性上室性頻拍や心房粗動に対する 治療が主でしたが、ここ数年は心房細動や心室 頻拍に対するアブ レーションが増加 し、今ではほとんど の不整脈がカテー テル治療で根治で きるとまでいわれ るほど、医学そして 治療技術が進歩し て参りました。デバ イス治療において も心臓内にリード を留置しない I CDやリードを必要としないリー ドレスペースメーカなど新しい技術がこれか らも次々に登場して参ります。これらの治療内 容や技術を習得することで少しでも多くの患 者様のお役に立てるよう精一杯頑張ると同時 に、次世代の医療に役立つことの出来るような 研究そして教育に邁進したいと考えておりま す。これからも皆様のご指導・ご鞭撻の程何卒 よろしくお願い申し上げます。 ●筑波大学循環器内科 病院講師 関口幸夫 黒木健志 この度、平成 25 年 8月 1日付で筑 波大学附属病院 病院講師に着任い たしました。私は 平成 15年に東北大 学を卒業し、いわ き市立磐城共立病 院にて 2年間の初 期研修および 1年 間の循環器内科後 期研修を行いました。当時の私にとって心臓 電気生理は驚異的に難しく、発作性上室性頻 拍の電気刺激に対する反応を、論理的な分析 から即座に診断し、アブレーションで根治し てしまう先輩医師は憧れの存在でした。青沼 和隆先生から筑波大学へお誘いいただいた際 は、こんな有難い機会はないと思い、卒後 4 年目から筑波大学循環器内科のレジデントプ ログラムに加えていただきました。その年か ら青沼先生が教授となられ、その後の筑波大 学循環器内科の発展は皆様ご承知のとおりで すが、その輝かしい歴史を大学や関連病院の 医局員の皆様とともに経験できたことは、私 の医者人生における最大の誇りです。今は楽 しい思い出ばかりが思い起こされますが、今 回のニュースレターへの寄稿を機に当時のこ とをよくよく思い返してみると、辛いことも 少なからずあったように思います。私は、病 棟業務も、急変対応も、回診のプレゼンも、 学会発表も、論文作成も、初めから得意だっ たものは何一つなかったような気がします。 幸い先輩が辛抱強く指導してくれました。同 輩がいつの間にか苦手な仕事を片付けてくれ たりしました。後輩が斬新なアイデアをくれ たりしました。そのうち少しずつ先輩から怒 られることが少なくなり、また少しずつです が同輩や後輩から頼られる機会が増えていき ました。思えば私の筑波に来てからの日々は、 些細な事でも今日新しくできるようになった ことが嬉しくて、ただ夢中になって、あとは 疲れきって寝る、の繰り返しでした。この間 本当にいろいろな方にお世話になりましたが、 やはり不器用で仕事が遅く困らせてばかりだ った私に、辛抱強く指導に当たってくださっ た諸先輩方には感謝の言葉もございません。 まだまだ未熟な私ですが、素晴らしき伝統を 受け継いでいける様、全力で後進の指導に当 たる所存でございます。今後とも、ご指導と ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたし ます。 ●筑波大学循環器内科 病院講師 加藤 平成 26年 4月にリハビリテーション部の病 院講師に着任しました。小池 朗先生を中心に 各関係者のご尽力をいただき、昨年 10月から 大学病院で心臓リハビリテーションがスター トしましたが、当部門の担当として任命いた だきました。 もともとの出身は早稲田大学で、スポーツ 科学、特に運動生理学やスポーツ医学を専攻 しておりました。学生時代は箱根駅伝で名の 知れた競走部のトレーナーとして活動し、将 来的にはスポーツの世界で生きていこうと思 っておりましたが、周囲からの反対もあり別 の道を模索することになりました。ちょうど、 医学部の社会人編入学が盛んになってきた時 流も追い風となり、早稲田大学卒業後に山口 大学へ進学することにしました。医学部卒業 後は東京で 4年間内科研修を行い、5年目より 筑波大学のお世話になることになり、そして 現在に至っております。早稲田大学在学時に 筑波大学(体育学群)へ訪問する機会もあっ たのですが、当時は TXもなく、埼玉の外れか らバイクで 5時間かけてやってきた茨城の地 ●筑波大学循環器内科 助教 穣 は田んぼだらけの印象 しかありませんでした。 当時はこの地に移住す るなんて思ってもみな かったですが、もしかし たらこの頃から何かの 縁があったのかもしれ ません。 現在は、循環器内 科・外科の病棟患者さん を中心に、他科からもご紹介いただき心臓リ ハビリテーションを行っております。幸い、 うち何割かは外来通院を継続してくれること になり、少しずつ部門として賑わってきた感 じです。活動の規模としては不整脈やエコー 等と比べる程もなく小さな部門ですが、少し ずつ軌道に乗せていきたいと思っております。 このような機会をいただきました青沼和隆先 生、小池先生、ほか各先生方に感謝申し上げ たいと思います。まだまだ皆様にはご面倒を おかけするかもしれませんが、今後ともよろ しくお願い致します。 山本昌良 平成 26年 2月よ り医学医療系、 循環器内科 助教 に着任いたしまし た山本昌良と申し ます。平成 16年に 筑波大学 医学専 門学群を卒業し、 卒後臨床研修と内 科後期研修を経て、 平成 19年に循環器 内科に入局しました。これまで大学病院や多 くの関連病院で諸先輩方から熱心に御指導し ていただいたことを心から感謝しております。 珍しいタイプかもしれませんが、自分は心不 全・虚血性心疾患・不整脈のいずれの分野に も興味を感じたため、分け隔てなく臨床に取 り組んで参りましたが、現在は心不全/心臓超 音波医学を主な診療・研究領域としておりま す。心筋細胞は収縮期に 15% しか厚みを増さな いのに左室駆出率は 60%もあるという心臓の 高い効率性を生み出すメカニズムや、さまざ まな負荷に対して適応するために形態を変化 させる心臓の代償能力に興味を持ちました。 また、プローベの微妙な角度や押し付け加減 により画像が大きく変化する心臓超音波の玄 人技にあこがれたのもこの分野を選択したき っかけです。優れた心不全診療を行うために は糖尿病、腎不全、貧血等の一般内科医とし ての知識を始め、不整脈、虚血性心疾患等の 他の循環器領域の知識を必要とします。また、 各種画像診断、基礎研究、心筋病理などにも 精通する必要があると思います。近年では植 込み型補助人工心臓、経カテーテル的大動脈 弁置換術等の非薬物治療も著しく進歩し、増 加する成人先天性心疾患、E Fの保たれた心不 全(HFPEF)など克服すべき課題も多く、一生 極めることのできない興味深い領域です。ま ずは広く浅く、いずれは広く深くを目指して 勉強に取り組んでおりますが、未だ一人前と はいえるものは無く、今後も努力により着実 な進歩が必要と考えております。諸先輩方に は今後とも一層厳しい御指導のほど、よろし くお願い申し上げます。 ●筑波大学循環器内科 助教 町野 毅 平成 26年 2月付けで筑波大学医学医療系 ります。今後は、カ 循環器内科 助教に着任いたしました。平成 1 5 テーテルアブレーシ 年に筑波大学医学専門学群を卒業後、内科初期 ョン治療を中心とし 研修を筑波大学附属病院で修了し、筑波大学循 た高度先進医療の一 環器内科に入局いたしました。大学病院と一般 端を担い、研究活動 病院の勤務を半年ごとに繰り返しながら、循環 をさらに発展させな 器内科後期研修を修了後、心臓電気生理学のフ がら、これまで自分 ェローとして1年間の研修を大学病院で行い、 が筑波で育てて頂い 筑波大学大学院に進学しました。大学院の4年 たように、後輩の指 間では、カテーテルアブレーション技術の研鑽 導・育成にも尽力したいと思っております。今 を積みながら、基礎・臨床・疫学と幅広い研究 後とも皆様の御指導と御鞭撻のほど、どうぞ宜 手法を経験し、多くの先生方からご指導を頂け しくお願い申し上げます。 るという貴重な機会に恵まれ、大変感謝してお ________________________________________ 《患者数・検査件数・手術件数》 2011年 外来患者数 2012年 2013年 18,900名/年 17,764名/年 16,925名/年 新入院患者数 1,002名/年 1,044名/年 1,083名/年 検査件数 6,650件/年 7,586件/年 8,120件/年 経食道心臓超音波検査 456件/年 661件/年 737件/年 負荷心電図検査 520件/年 664件/年 580件/年 24時間心電図検査 961件/年 812件/年 770件/年 心臓核医学検査 252件/年 240件/年 184件/年 心臓カテーテル検査 480件/年 450件/年 1,196件/年 60件/年 82件/年 64件/年 443件/年 462件/年 610件/年 心臓再同期療法 31件/年 40件/年 32件/年 植込み型除細動器( ICD) 50件/年 51件/年 58件/年 ペースメーカー 35件/年 26件/年 43件/年 140件/年 117件/年 134件/年 23件/年 2件/年 7件/年 9件/年 6件/年 9件/年 心臓超音波検査 電気生理学的検査 手術件数 カテーテルアブレーション 経皮的冠動脈インターベンション 経皮的抹消動脈インターベンション 下大静脈フィルター留置 《近況報告》 ●水戸医療センター 小泉智三 当院は、明治 43年(1910年)に水戸陸 同規模の病院が複数あり、研究会も頻繁に 軍衛戍病院として創設された 100年以上の 行っており、皆仲良く勉強しております。 歴史ある病院です。戦後、昭和 20年(1945 来年には、血管造影装置も新しくなり、 年)厚生省に移管され国立水戸病院として 今後はさらに、カテーテル検査、治療に力 発足され、平成 16年に独立行政法人化に伴 を入れていきたいと考えております。 い国立病院機構水戸医療センターとなりま した。現在、29科の診療科、病床数 500床 を有し、がん、循環器疾患等の専門医療お よび救命救急センターを中心として茨城県 県央地域の医療の向上に貢献しております。 病院名は水戸医療センターですが、住所 は水戸市ではなく、茨城町であり、周りに はコンビニエンスストアーと J A直売の野 菜売り場程度しか見当たりません。しかし、 水戸市街まで行けば、歴史ある老舗の料理 が食べられます。 循環器内科は田口修一部長を中心に計 7 名の医師で診療にあたっております。また、 平成 25年 1月から 12月まで 研修医の先生が1〜2ヶ月ごとに勉強に来 病院全体の病床数 500 ていただいており、大変助かっています。 循環器内科入院総症例数 1088 心不全、虚血性心疾患、弁膜症が主な対象 診断カテーテルのみ 751 疾患で、24時間体制で緊急カテーテル治 PCI 200 療にもあたっており,また、閉塞性動脈硬化 EPSのみ 0 症、下肢動脈形成術にも対応しております。 アブレーション 0 現在、心臓血管外科の先生が当院は常勤が ペースメーカ 35 1名ですが、冠動脈バイパス術、心臓弁置 ICD 0 換術は週 1〜2回のペースで行っておりま CRT/CRTD 0 す。 PTA 34 PTMC 1 IVCフィルター 14 循環器領域の治験にもいくつか参加させ ていただいており、臨床研究も徐々に始め て行く予定です。水戸周辺には、水戸協同 病院、県立中央病院、水戸済生会病院等、 ●総合守谷第一病院 丸山秀和 本年 4月から総合守谷第一病院で勤務 しております。直前までベルギーで肺高血 圧の基礎研究をしておりましたので、環境 が一変しました。 当院は本年で開院 24年になる 203床の 中規模の病院です。現在の医療圏は守谷市 およびつくばみらい市が主で、坂東市、取 手市などからも来院されます。循環器内科 は遠藤優枝先生、齋藤 巧先生、吉田郁夫 先生に、昨年度から川辺正之先生、本年度 から私が加わり、常勤医は 5名です。また 非常勤医として本田洵也先生に外来を助 けていただいています。守谷に住んでいる 循環器医師はおらず、私の場合だとつくば の自宅からは常磐道を使っても約 50分は かかりますので、緊急の呼び出しの場合に はすこし焦ります。病棟業務としては冠動 脈疾患の診断治療、心不全や不整脈の管理 などとともに、一般内科としての診療を多 く行っています。循環器としては週に 2 日カテーテル室で診断カテ、PCI、ペース メーカ植え込みなどが行われており、また その他、冠動脈 CTやトレッドミルテスト、 ホルター心電図なども各ドクターの専門 に依らず担当しています。 守谷地区には循環器を含め専門診療を 行う開業医院も多いのですが、地域の医療 機関の先生方と定期的な会合を設けて関 係の強化が図られており、地域全体として 患者の一人一人にベストなリソースが提 供できるように配慮されています。新棟が 今年夏に完成し、患者当たりの床面積が大 きくなりました。これによりベッドサイド での処置はストレスなく行えるようにな りました。患者の満足度の向上にもつなが ってくれればと思います。 ヨーロッパ呼吸器学会の SchoolCourse; PulmonaryHypertensionandPulmonary VascularDiseaseを修了しました。 またこのたび日本肺循環学会の肺高血圧 症の症例登録施設に、当院は茨城県で 3 施設目になりました。地域における肺高血 圧症の診療に貢献できればと考えていま す。 研究日の研究テーマの一つとして、低酸 素性肺血管収縮の機序を調べています。こ れは肺循環と体循環の最も異なっている 点の一つです。興味深いデータも少し出て 来ました。関心のある方はぜひ声をおかけ ください。 診療活動状況 2013年 4月~2014年 3月 病院全体の病床数 203 循環器内科入院総症例数 734 診断カテーテルのみ 204 PCI 129 EPSのみ 0 アブレーション 5 ペースメーカ 20 CRT/CRTD 0 PTA 4 PTMC 0 ●東京都立墨東病院 安倍大輔 筑波大学 19回生の安倍大輔です。県立 中央病院時代に執筆して以来2度目のニ ュースレター投稿になります。 都立墨東病院は東京都の最東端の歓楽 街、錦糸町にある 14階建 772床の総合病 院です。救命救急センターを含む「東京 ER ・墨東」を併設し、周産期母子医療・精 神科救急医療などの救急医療のセンター 的機能、感染症医療、難病医療の他、東京 都認定がん診療病院・災害拠点病院でもあ ります。三次救急搬送患者受入件数は都内 第1位、救急車搬送患者の受入件数につい ては全国でもトップクラスです(以上 HP より抜粋)。また副院長の富山順治先生、 循環器部長の岩間 徹先生(ともに1回生) をはじめとして 22名の筑波大学出身者が 勤務しており病院を支えています。 私自身は前任地の茨城県立中央病院に 10年間在籍しており 40歳での大異動だっ たので、環境の変化に心と体がついていけ るか心配でしたが、やさしい上司、同僚、 春成先生をはじめとする優秀な部下(以上 常勤スタッフは自分含めて8名)、そして プレゼン・考察・手技がびっくりするほど ハイレベルな墨東生え抜きレジデント達 に助けられてなんとか無事半年勤務する ことができました。カテ室は2室あり連日 フル稼働で、私は週2日の外来以外はほぼ カテ室漬けになっており、週1日はカテ室 の総責任者を任され、診断カテ・予定治 療・緊急治療の運用を行っております。病 院の特徴上やはり ACSが多く、深夜に起こ され自転車で蔵前橋通りを爆走するのは 体力的にキツイ時もありますが、循環器医 として充実した日々を送っております。 マンションを売り、車を売り、家族とと もに水戸を離れ、現在は両国国技館の近く に住んでおります。大相撲の場所中は外国 人が多く集まり賑やかです。隅田川のテラ スはスカイツリーを眺めながらのランニ ングに最適です。花火大会は間近で見られ ます。ただし家賃は高いです。家族は比較 的すんなり東京の生活に慣れてくれまし た。ここまで来られたのは家族の支えがあ ってのことです。感謝しています。 最後になりますが、今振り返ると熊本で の心臓病学会の会場で青沼和隆先生に声 をかけていただいたことが自分の人生の 分岐点だったと思います。この場をお借り して感謝申し上げます。ありがとうござい ました。 ●聖路加国際病院 安達 亨 平素よりお世話になっております、安達 亨と申します。平成 17年 3月に弘前大学を 卒業し、筑波メディカルセンター病院での 初期研修を経て平成 20年 4月より筑波大学 循環器内科の門戸を叩かせていただきまし た。この度、青沼和隆先生・野上昭彦先生 はじめ筑波大学の多くの先生のご支援をい ただき、平成 26年 4月より東京都中央区の 聖路加国際病院で不整脈診療を中心に研鑽 を積ませていただく機会をいただいていま す。 聖路加国際病院 循環器内科は ICCU(循 環器専属 ICU)8床、IMCU(循環器専属 HCU)8 床および中症病棟 32床の計 48床で、連日 満床の中スタッフ一丸でベッドを回しなが ら対応しています。心血管センター内でこ れら集中治療室とカテ室(2室)、心臓外科 専用の手術室が同じフロアにあり、カテ室 の 1室はハイブリッド対応となっています。 救急要請は原則断らない病院の理念の元、 年間 10,000台を超える救急車来院台数(東 京都で 2位だそうです)を受けており、循環 器救急も非常にバラエティに富んでいます。 毎日内科・外科の合同カンファレンスがあ り、各疾患へのアプローチについて両科合 同(ハートチーム)で合意の元、様々な治療 戦略を展開しています。大動脈弁狭窄症へ の経カテーテル的大動脈弁留置(TAVI)を始 め structureheartdiseaseへのカテーテ ルインターベンションも積極的に施行して います。 《平成 27年 4月 ・林 ・山田 不整脈診療は、平成 26年 4月に赴任され た横山泰廣先生とご一緒させていただき、 ご指導を受けながら二人で診療しています。 横山先生は、横須賀共済病院で青沼教授の 謦咳に接しておられたと伺っています。救 急の症例が多く、最近アブレーション治療 へのニーズが高まってきていることもあっ てか、平成 26年 10月現在は週に 5〜6症例 のアブレーション治療を施行しています。 心房細動は、長期持続性心房細動に対して 維持機構を検討しながらアブレーションを 行い、データの蓄積を開始しています。平 成 26年は年間 170症例のアブレーションを 予定しており、今後は 2年以内に年間 300 症例を目指しています。 聖路加国際病院で研修開始させていただ き半年経過して、大分地に足が着いてきた 感じがします。聖路加国際病院が循環器そ して不整脈診療で東京そして全国的に認識 してもらえるように、日々の臨床そして学 会はじめ頑張っていきます。 循環器内科入局者》 孝典 先生 優 先生 《学会報告》 ●HeartRhythm2014 筑波大学大学院博士課程 4年次 中澤陽子 うちの半日だけ講演を聴くだけで精一杯でし た。しかし、自分のまとめた研究を発表できた ことや、少しではありましたが講演を聴き、会 場の雰囲気を味わえたことは、刺激となり今後 の励みとなりました。帰国一か月後に出産を迎 え、現在育児奮闘中ですが、思い返してみると 道中具合が悪くなることもなく無事過ごせた ことにホッとしています。一緒に参加された先 生 方 に は多 大 な ご 心 配 ご迷 惑 を 今回、HeartRhyth m2014へ参加する機会を お か け しま し た いただき 5/6-11までサンフランシスコへ行っ が、先生方のおか て参りました。妊娠 9か月、37週の身重な身体 げ で 無 事に 参 加 であったため、参加するか迷いに迷いましたが、 で き た こと を こ 出産後はしばらく海外での学会へ参加するこ の 場 を お借 り し とが難しくなるだろうという思いと、産科の先 て深謝致します。 生からの後押しもあり思い切って行くことを あ り が とう ご ざ 決意しました。現地は坂道が多く、会場も広く、 いました。 歩くことだけで身体に応えましたので、一日の 《学位取得》 ●筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科・博士(医学) 学位論文: 王 政 The role of tenascin-C during the development of left ventricular remodeling after myocardial infarction in mice model(心筋梗塞後左室リモデリングにおけるテネイシ ン-C の役割の解明) ●筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科・博士(医学) 加藤 穣 学位論文: Relation between oscillatory breathing and cardiopulmonary function during exercise in cardiac patients(周期性呼吸と運動時の心肺機能との関係について) ●筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科・博士(医学) 学位論文: 町野 毅 Prevalence and Influence of Hyperthyroidism on the Log-term Outcome of Catheter Ablation for Drug-Refractory Atrial Fibrillation(カテーテル心筋焼灼術を受けた薬剤 抵抗性心房細動患者における甲状腺機能亢進症の頻度および長期予後への影響) 《受賞》 ●日本心エコ-図学会 第 2回男女共同参画奨励賞 平成 26年 4月 18日 筑波大学医学医療系 循環器内科 講師 石津智子 論文名:Prognosticimpactofplaqueecholucencyincombinationwithinflammatory biomarkersoncardiovascularoutcomesofcoronaryarterydisease. ●2nd WORLD SUMMIT ON ECHOCARDIOGRAPHY: Research Awardを 受 賞 し て 筑波大学医学医療系循環器内科 助教 山本昌良 2013年 10月 に イ ン ド の ニ ュ ー デ リ ー で どこに行っても沢山の物乞いをする子供 開 催 さ れ ま し た 2nd WORLD SUMMIT ON 達や老人に囲まれ、マクドナルドでハン ECHOCARDIOGRAPHYに て 、 Research Award バーガーを残すと店員に説教をされまし を受賞することができましたので御報告 た。今回の学会では地元のインドの方が 申 し 上 げ ま す 。 こ の 会 は 世 界 に あ る 9つ 多くの発表をしていましたが、インドな の心エコー図学会の合同大会であり、 まりの強い英語で力強いプレゼンテーシ 筑波大学からは瀬尾由広先生と小児科の ョンをしている姿が非常に印象的でした。 中村昭宏先生と参加しました。発表の内 立場は違いますが、以前の旅行の際に出 容はこれまで研究してきた三次元経食道 会った貧しい中でも貪欲に力強く生きて 心エコー図で評価した左心耳の形態と血 いる人々の姿を思い出し、元気をもらっ 栓形成との関連を調べたものです。約 6 た気がしました。短時間ですが、会場の 年間研究をしてきたテーマでしたが、今 ホテルを離れてニューデリーの街を観光 回、幸運にも賞をいただき、その後に論 しました。瀬尾先生と中村先生は喧噪の 文化に至ることができました。熱心に御 街並みを見て衝撃を受けていました。 指導くださいました青沼和隆先生、瀬尾 日本に生まれたことを感謝しつつ、彼ら 由広先生、一緒に研究をしてきた超音波 の強い気持ちに負けないように頑張らな 技師の中島英樹先生にこの場をお借りし くてはならないと思いました。 て感謝を申し上げます。 イ ン ド は 10年 ほ ど 前 に リ ュ ッ ク サ ッ ク 1 つ を 背 負 っ て 15日 間 の 貧 乏 旅 行 を し た 自分にとって思い出の国です。今回も何 かの縁を感じて参加することにしました。 エアコンの無い1泊数百円の安宿に泊ま っ て は 体 中 を 蚊 に 刺 さ れ 、お な か を 壊 し 、 腹痛に耐えながら埃まみれのバスに揺ら れて旅をしました。貧しい人も多く、 ●「第 4回日本心臓財団入澤宏・彩記念女性研究奨励」を受賞して 筑波大学医学医療系循環器内科 不整脈次世代寄附研究部門 助教 田尻和子 研究題目名「心筋梗塞における好中球細胞外トラップ(NETs)の役割解明と治療への応用」 去る平成 2 6年 3月に日本心臓財団より第 4 回日本心臓財団入澤宏・彩記念女性研究奨励を 受賞致しました。青沼和隆教授をはじめ、いつ も支えていただいている多くの先生方に深く 感謝の意を申し上げるとともに、この紙面をお 借りして受賞研究内容を少しご紹介させてい ただきます。 急性心筋梗塞(AMI)では、梗塞に伴う過度 な炎症の結果生じる、病的なリモデリングは生 命予後の悪化を引き起こすことが知られてい ます。好中球は AMIの最も早期に梗塞部位に出 この NETsは細菌除去の観点から言えばとて 現する炎症細胞であり、AMIの病態形成に重要 も良い機構ですが、一方で本来細胞内にあるべ な役割を果たしていると推測されますが不明 き成分(核酸、タンパク、プロテアーゼ等)を な点も多く残されています。 細胞外に放出してむき出しにするため、それら そもそも好中球は、生体が細菌などに感染し が自然免疫系に対する内因性リガンドおよび た際に、感染局所にいち早く集積して感染源を 組織破壊酵素として作用し、炎症を過剰に増強 除去する、感染防御の最前線で機能する免疫細 させてしまう可能性が考えられます。そのため、 胞です。これまで好中球は、貪食と活性酸素の 全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾 放出により細菌を不活化すると考えられてき 患の他、動脈硬化や深部静脈血栓症などの非感 ました。しかし最近これらの他に、好中球は自 染性病態に NETsが関与しているという研究報 ら細胞死を引き起こし、自身の核酸と抗菌タン 告がなされてきています。 パクを構成内容とする好中球細胞外トラップ 今回、左冠動脈結紮による心筋梗塞モデルマ (Neutrophilextr acellulartr aps:NETs)と ウスを用いた予備実験において、心筋梗塞の局 よばれる網目状の捕捉構造を形成し、細菌を効 所にも NETsが生じていることが明らかにでき 率よく捕捉・除去するということが明らかにさ ましたが、その病的意義や役割の解明には至っ れてきています。つまりその「ネット」の名の ておりません。私は、好中球が産生する NET s 如く、自分の DNAやタンパクでネバネバの足場 が自然免疫の活性化を介して AM I後の炎症の重 を作って細菌を絡めとり逃さないようにして 症化及び病的リモデリングに深く関与してい 除去しやすくするという面白い機構です。また ると仮説をたて、心筋梗塞モデルマウスを用い このように NETsを放出して自ら死んでいく現 て NETsの役割を解明していきます。さらには 象は”NETosis(ネットーシス)”と呼ばれ、 NETsを標的とした AM Iの新規抗炎症療法の可能 アポトーシスやネクローシスとは異なる新た 性を探っていきたいと思っております。みなさ な細胞死として注目されています。 まどうぞ今後ともよろしくお願い致します。 ●第 39回日本心臓財団研究奨励を受賞して 日本心臓財団による、第 39回日本心臓財団 龍ヶ崎済生会病院 針村佳恵 目したのは、収縮能の保持された心不全 研究奨励を受賞いたしました。一般に公募さ (HFpEF; Heart fa ilure with p reserved れているものの中でも、歴史ある研究奨励賞 ejectionfraction )と呼ばれる病態について でかつ高額(200万円です!)であり、びびりつ です。心エコーの新たな技術として、長軸方 つ応募をしました。今年度は全国から 45名も 向や円周方向の心筋の伸び縮みを評価できる の応募があったそうです。うち、10名が受賞 ストレインという指標があります。EFなど従 となりました。 来の収縮能を表すパラメータのみでは評価で 私は社会人大学院 2年生となるのですが、 きない、 『隠れた収縮機能障害』を、ストレイ 現在心不全の多施設共同研究として ンを用いて評価し、予後予測に役立てようと ICAS-HF(IbarakiCardiovas cularAs sessment 考えております。 Study-HeartF ailure) を中心に研究を行って 研究はまだ道半ばであり、臨床の合間をぬ います。茨城県で 11施設の先生方に、心不全 ってご協力いただいている先生方のお心を無 で入院した症例を登録していただき、前向き 駄にせぬよう、これからも力を尽くしていき 研究を行っています。現在の登録件数は 720 たいと思います。最後に、今回の応募にあた 症例で、今後もさらに増やしていく予定です。 ってご助言をくださいました、瀬尾由広先生、 心不全の予後推定に、心エコー指標のどのパ 石津智子先生、青沼和隆先生に心より御礼申 ラメータが有用であるのか?特に今回私が注 し上げます。 ●「第 25回日本心エコー図学会学術集会 YIA最優秀賞」 「 35th Annual Scientific Meeting of the Korean Society of Echocardiography ModeratedE-PosterPresentationAward」を受賞して 日製日立総合病院 佐藤希美 この度、2014年 4月の第 25回日本心エコー おり、本邦での検証を目的とした多施設共同研 図学会学術集会にて YIA最優秀賞を、2013年 究に参加し、そのデータをもとに発表させてい 11 月に 韓 国の 仁川 で行 われ た 35 th Annua l ただきました。日本人では体格の影響などから ScientificMe etingoftheKoreanS ocietyo f 誤ってこの特殊な病態と評価されてしまう症 Echocardiography で 例が多いこと、心エコーの手法の一つであるス Moderated E-Poste r PresentationAwardを受賞することができまし ペックルトラッキング法により左室長軸方向 た。演題は「Longi tudinalstr ainによる奇異 の収縮能(Longitudina l strain )を評価するこ 性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症の予後 とで、真に重症な予後不良例の層別化が可能で 評価」で、重症大動脈弁狭窄症( AS)のうち、左 あることを示すことができました。 室駆出率が保たれているのに心拍出量が低値、 この研究・発表を行うにあたりご指導いただ 大動脈弁圧較差も低値であるという特殊な病 きました、瀬尾由広先生、石津智子先生をはじ 態”奇異性低流量低圧較差大動脈弁狭窄症” めとした諸先生方、コメディカルスタッフの についての研究です。この病態は、中等度 A S 方々に深く感謝いたします。今後も、精進して と評価されがちですが、近年になり非常に予後 いきたいと思っております。 不 良 と の 報 告 が 欧 米 か ら 相 次 い で ●第 3回(2013年度、78th学術集会)日本循環器学会循環器臨床研究奨励賞を受賞して ライプ・ツィヒ大学 山﨑 浩 2013年 3月に開催されました日本循環器学 いまだ十 会総会において、循環器臨床研究奨励賞を受 分明らか 賞したことを報告させていただきます。本賞 ではない は、 2011年に京都で開催された第 7 4回日本 という状 循環器学会学術集会から設けられた賞であり、 況であり 循環器疾患に関する臨床研究と症例報告でそ ました。今 れぞれ表彰が行われております。筑波大学は、 回は、当院 初回の表彰から 2期連続で症例報告賞を受賞 で経験し しており、今回の受賞で 3期連続の受賞とい た遅発性食道潰瘍が、左房-食道瘻の発生機序 う素晴らしい結果を残すことができました。 を理解する上で極めて重要という思いを 2ペ 症例報告は、肺静脈隔離術後に生じた遅発性 ージという限られた文章にまとめ上げたもの の虚血性食道潰瘍を「Ischemic esophageal が Circulatio n誌および日本循環器学会で認 ulceration that developed after an early められたことを大変うれしく思っております。 endoscopic survei llance in a patient 大学院在籍時より、肺静脈隔離術後に生じる receiving c atheter ablation for atrial 食道潰瘍に関しては継続的に臨床研究を行っ fibrillation」と題し Circ ulation誌に報告 ておりましたが、その継続した研究の中で、 したものになります。左房-食道瘻は肺静脈隔 今回のような臨床例の意義を考えることがで 離術後に現在でも認められる致死性合併症で きたことは大変貴重であり、そのような環境 あり、その合併症を回避するために様々な工 下で研究ができていることに感謝しておりま 夫がなされてはいるものの、その発生機序を す。 ●第 6回植込みデバイス関連冬季大会 BestAbstractAward医師部門最優秀賞を受賞して ひたちなか総合病院 川松直人 2014年 2月に広島で開催されました、 「日本 不整脈学会第 6回 難治性心不全の原因となり得るが、3D心エコ 植込みデバイス関連冬季 ー図がその発見に有用であり、これを用いて 大会」で「Bes t Abstract Award 医師部門 早期に対処することが重要である」というも 最優秀賞」を頂きましたので御報告致します。 のです。 受賞演題は「ペースメーカリード起因性三 日本循環器学会学術集会などでも発表を経 尖弁逆流症の有病率とリスクファクターにつ 験した上で、内容をさらに発展させたもので いて したが、BestAbstractAwardSessionという 3次元心エコー図による検討」です。 これは私が初めて取り組んだ臨床研究でし たが、 場での口演でしたので広島への出発前夜遅く シニアレジデントとして大学で研修 まで瀬尾先生に御指導頂き、明け方までかけ していた際に瀬尾由広先生から初めて頂いた て準備しました。発表直前にもさらにスライ 研究課題でもありました。 ドの修正があり、またアドバイス頂いたプレ 発表内容としては、 「ペースメーカなどのデ バイスリードが三尖弁閉鎖不全を引き起こし ゼン前の挨拶は他の演者の誰よりもばっちり 決まったと思っています。 学会会場では青沼和隆教授、野上昭彦教授 結果発表直前に行 をはじめ、たくさんの先生方にお声かけ頂き、 った厳島神社で引い また発表会場にも応援にいらして頂きました。 たおみくじでは瀬尾 今回の発表は数多くのデバイス治療を行う 先生とともに凶でし 不整脈グループと、また優れた心エコー画像 た。もしや、と思い を描出することができる心エコー室スタッフ ましたが、その後に を擁する筑波大学循環器内科だからこその研 御馳走になった焼き 究であると思います。この場をお借りしまし 牡蠣もとてもおいし て、筑波大学循環器内科チームに深く御礼申 く、広島は良い思い し上げます。 出となりました。 ●第 229回日本循環器学会関東甲信越地方会 YIA sessionの報告 筑波大学附属病院循環器内科 C1 丸田俊介 2013 年 9 月、 した。そしてすぐ近くから感じるお偉い先生方 第 229 回日本循環 の鋭い眼差し、さらに少し遠くから感じる佐藤 器学会関東甲信越 明先生と青沼和隆先生からの威圧感とこれまで 地方会の YIA で にない緊張状態での発表となりましたが、結果 プレゼンテーショ として優秀賞を頂戴することができました。こ ンさせて頂く機会 の回の YIA はどの演題も非常に興味深いものば を頂戴しました。 かりで、その中でこのような栄誉ある賞を頂戴 発表演題は「急性 し大変光栄に思います。 左心不全で発症し 地方会での発表についてご快諾下さった主治 Malignant 医である秋島信二先生(県立中央病院)始め、直接 Fibrous Histiocytoma の 1 例」で、40 代の若年 ご指導下さった安倍大輔先生、予演にお付き合 男性に発症した心臓原発肉腫に対し、外科的心 い下さった県立中央病院と附属病院の先生方、 臓腫瘍摘除後に、分子標的治療薬及び陽子線治 また当日のプレゼンテーションを見守って下さ 療による集学的治療を行ったという内容です。 った石津智子先生、佐藤先生、青沼先生にこの 非常に珍しい症例のため、陽子線治療の成績は 場を借りてお礼を述べさせて頂きます。 た これまでほとんど報告がなく、筑波大学ならで 最後にこの症例に出会えたことへの感謝と、 はの治療選択であり、そこにこの症例報告の そして患者様が今も元気で外来通院され(平均 originality があったと言えます。 余命は 17 ヶ月~20 ヶ月ですが、28 ヶ月目)、こ 当日は私がこれまで経験したことのない人数 (せいぜい 100 人ぐらいですが)の中での発表で れからの治療も奏功することを願って終わりと させて頂きます。 《2 01 4 科研費》 u 村越伸行 ・平成 26年度科学研究費補助金「基盤 C一般」2 014年 4月 1日~2017年 3月 31日(予定) 持続性心房細動における心房内異常電位の成因と機序の解明 u 酒井 俊 ・平成 25年度科学研究費補助金「基盤 B一般」2 013年 4月 1日~2016年 3月 31日(予定) マイクロRNAの発現変動を切り口とした肺動脈性肺高血圧症の理解と新治療法の探索 u 瀬尾由広 ・平成 25年度科学研究費補助金「基盤 C一般」2 013年 4月 1日~2016年 3月 31日(予定) 3次元スペックルトラッキング法による右室機能評価法の開発 u 佐藤 明 ・平成 25年度科学研究費補助金「基盤 C一般」2 013年 4月 1日~2016年 3月 31日(予定) 難治性薬剤抵抗性高血圧に対する革新的な腎動脈交感神経アブレーション法の開発 u 本間 覚 ・平成 25年度科学研究費補助金「挑戦的萌芽」2 013年 4月 1日~2015年 3月 31日(予定) 心筋梗塞の病態形成における好中球細胞外捕捉(NETs)の役割解明と治療への応用 u 木村泰三 ・平成 25年度科学研究費補助金「若手研究 B」20 13年 4月 1日~2015年 3月 31日(予定) 心筋虚血再灌流障害における炎症制御機構の解明 u 田尻和子 ・平成 25年度科学研究費補助金「若手研究 B」20 13年 4月 1日~2015年 3月 31日(予定) 心筋炎発症機序におけるテネイシン Cの分子機能の解析 u 石津智子 ・平成 24年度科学研究費補助金「基盤 C一般」2 012年 4月 1日~2016年 3月 31日(予定) 左室駆出率を超える心不全指標としての左室長軸収縮率の臨床的意義の研究 u 宮内 卓 ・平成 24年度科学研究費補助金「基盤 C一般」2 012年 4月 1日~2015年 3月 31日(予定) 肺高血圧症における血管平滑筋のエンドセリンB型受容体の役割とその遮断の重要性 u 関口幸夫 ・平成 24年度科学研究費補助金「基盤 C一般」2 012年 4月 1日~2015年 3月 31日(予定) 東日本大震災が及ぼす致死性不整脈発現への影響 《関連病院》 筑波大学附属病院 青沼和隆 宮内 卓 渡辺重行 本間 覚 久賀圭祐 野上昭彦 小池 朗 河野 了 瀬尾由広 佐藤 明 酒井 俊 村越伸行 関口幸夫 石津智子 下條信威 五十嵐 都 腰野結希 星 智也 木村泰三 黒木健志 加藤 穣 田尻和子 許 東洙 町野 毅 山本昌良 秋山大樹 深田光敬 蔡 榮鴻 小川孝二郎 酒井俊介 篠田康俊 川松直人 春成智彦 本田洵也 丸田俊介 大谷暢史 中務智文 呉 龍梅 津曲保彰 玄 哲樹 中川大嗣 大学院 油井慶晃 町野智子 渥美安紀子 中澤陽子 増田慶太 立花牧子 関東中央病院 田部井史子 聖路加国際病院 安達 亨 都立墨東病院 岩間 徹 鈴木 紅 安倍大輔 (2014/10 月現在) 筑波メディカル センター病院 野口祐一 平沼ゆり 文蔵優子 仁科秀崇 掛札雄基 相原英明 渡部浩明 菅野昭憲 筑波記念病院 小関 迪 垣花昌明 松田光生 飯田 要 飯田啓治 榎本強志 井川昌幸 會田 敏 日立製作所日立総合病院 鈴木章弘 悦喜 豊 樋口甚彦 常岡秀和 佐藤希美 日立製作所ひたちなか総合病院 山内孝義 田中喜美夫 小宅康之 川村 龍 崔 星河 水戸協同病院 外山昌弘 小島栄治 住吉クリニック病院 山口 巖 栗原 達 筑波学園病院 牛山和憲 藤枝一司 水戸中央病院 坂本和彦 つくばセントラル病院 田中千博 水戸医療センター 小泉智三 霞ヶ浦医療センター 鈴木祥司 西 功 石橋真由 服部 愛 茨城県立中央病院 武安法之 吉田健太郎 美崎昌子 馬場雅子 井藤葉子 平谷太吾 木全 啓 総合守谷第一病院 斉藤 巧 遠藤優枝 丸山秀和 吉田郁雄 川辺正之 龍ヶ崎済生会病院 石川公人 針村佳江 社会人大学院 山本昌良 安達 亨 川村 龍 渡部浩明 會田 敏 長山 医 菅野昭憲 川辺正之 小川孝二郎 針村佳江 崔 星河 佐藤希美 本田洵也 春成智彦 きぬ医師会病院 渡辺秀樹 牛久愛和総合病院 山崎 明 茨城西南医療センター 前田裕史 小原健一 中西啓太 羽鳥光晴 水戸済生会病院 村田 実 大平晃司 小山記念病院 長谷川智明 アハメド・タリブ 臨床修練医 山﨑 浩 ライプ・ツィヒ大学 成瀬代士久 ライデン大学 《編集後記》 早いもので今年も残すところあとわずかとなりました。昨年は同門誌の発行となりまし たので、2年ぶりのニュースレター発行となります。楽しみにされていた先生方、お待た せいたしました。今年も多くの同門の先生方のご協力をいただき無事に第 10号を発行する ことができました。ご多忙な中、原稿をお寄せいただきました先生方に深く感謝申し上げ ます。本号が、筑波大学循環器内科同門の先生方の近況を知る一助になり、教室及び茨城 県の循環器領域がますます発展することを願っております。これから寒さが厳しくなって 参りますのでみなさまお身体をご自愛くださいませ。 (中澤陽子) 《発行・編集》 筑波大学 医学医療系 〒305-857 5 循環器内科 茨城県つくば市天王台 1-1-1 TEL(医局) 02 9-853-31 43 FAX(医局) 02 9-853-31 43 e-mail(医局秘書) tkbca [email protected] kuba.ac .jp 循環器内科ホームページ htt p://www. md.tsuku ba.ac.jp /clinic al-m ed/cardiolo gy/index .html 循環器内科同門会ホームページ(氏名・パスワード必要) htt p://tkbj yunnai.s ecret.jp /index. html 編集委員 石津智子 中澤陽子 額田真紀 小林祥子 ◆次号に掲載希望の記事・写真(jpeg) は電子メールにて tkbcar@ md.tsuk uba.ac.jpまでご送信下さい。 ◆循環器内科ニュースレターの PDF版は筑波循環器内科同門会のホームページで閲覧できます。