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町民と森林事務所による黒松内岳の利用充実について(PDF:938KB)
町民と森林事務所による黒松内岳の利用充実について 黒松内岳愛好会 辻野 健治 辻野 治子 1.課題を取り上げた背景 黒 松 内岳 は 、渡 島半 島の 付 け 根「 北 限の ブナ の里 」 黒 松内町にある739mの山で、北海道百名山にも選ばれ、 年 々 登 山者 が 増加 して きて い ま す。 登 山道 沿い にブ ナ の 純 林 を 楽し む こと がで き、 頂 上 から は 、噴 火湾 から 日 本 海まで望める、手軽に登れる山です。 黒 松 内岳 愛 好会 は、 黒松 内 岳 の自 然 を守 りつ つ、 こ の 山 の 利 用充 実 を図 り、 黒松 内 岳 のフ ァ ンを 増や した い と 黒松内岳 願う、黒松内町民の集まりです。 登山道の9合目付近が崩壊して危険なので、なんとか したいと、黒松内森林事務所に相談に行ったところ、「な ん と か しま し ょう 」と 快く 対 応 して く れた こと が、 私 た ちと森林事務所との共同作業の始まりでした。 2.取組の経過 黒 松 内岳 愛 好会 と黒 松内 森 林 事務 所 は2 度の 現地 調 査 を 含 め 、何 度 かの 話し 合い を 行 いま し た。 20 05 年 1 0 月 2 2日 に 簡単 な測 量を 行 い 、雪 解 け後 の2 00 6 年 5 月 2 0日 に も調 べ、 崩れ て い る箇 所 の絞 りこ みを 行 い ました。 我 々 の 調査表 現 場 を見 る と、 急 勾配で 脆 弱 な表 土 が剥 げ て 、 足 場が 悪 くな り 、その た め 植生 に 踏み 込 ん で 、 更に 植 生を 崩 し裸地 が 出 来、 そ こか ら 石 が 頻 繁に 落 ちて く るとい う 危 険な 状 態で し た。 対 策 とし て 、新 た な道を 作 る か、 木 階段 を 設 置 す るか 等 話し 合 い、結 局 自 然に 与 える ス トレスが小さい、手すりロープの設置をして、 登山道の固定化を行うことにしました。 浮石露出状況 ところが現場には、ロープ 太径鉄杭 を支える支点となる太い立 木が無く、岩も柔らかい凝灰 岩のため普通の支点が作れ ません。そこで、土木・建築 工事で使われる接着系アン カ ー と ロッ ク クラ イミ ング 用 埋 め込 み ボル ト、 及び 薄 い表 アンカーボルト 設置状況 土の下の凝灰岩に刺さる、太い径の鉄杭を使ってみることとしました。 ロープは、引っ張っても伸びづらい、耐久性の高い、ケービング用のスタッティクロープを 使うこととしました。 2006年7月10日に黒松内町観光協会、岩内山岳会の協力を受け、9合目の危険箇所に ケミカルカンカー 設置状況 ロープ約100mと注意看板2枚を設置しました。更に利用充実を図るため、1合から3合目 間の急な登山道を迂回する「迂回路入口」看板、登山口周辺にある滝の名前看板の設置も同時 に行いました。 7月15日には、黒松内岳山開きが行われ、登山口隣にある、綺麗な滝「ぶな滝」の襲名も 同時に行いました。この日は、約20名の参加があり、設置したロープも、登り降りしやすく なったと好評でした。 植生進入状況・ 植生進入状況・ロープ 設置確認 3.実行結果 崩壊地は 、手すり ロープ 設置で、 登山道の 固定化 が行 われたことにより、踏圧による表土の破壊が著しく減り、 さ らに植生 への踏み 込みが 減ったこ とにより 、植生 が徐 々に回復しているように見受けられます。心配していた、 ロ ープの支 点も4ヶ 月後確 認しまし たが、問 題はあ りま せんでした。ただ、今年の雪解け後、どのように遷移しているかの確認は必要と思われます。 4.考察 手作 り 看板 森林 や山 地の 登山 道の維 持は 、管 理す る官 庁に依 存し て いま した が、 最近 、官庁 とそ の山 を愛 する 地元ボ ラン ティアが、協力し合う例が増えてきました。 黒松 内岳 にお いて も、森 林事 務所 が看 板の 材料を 用意 し 、町 民ボ ラン ティ アがも って いる ロッ クク ライミ ング 技 術を 応用 して ロー プを設 置し 、絵 心の ある 会員が 手書 き 看板 を作 成す る等 、お互 いの 出来 るこ とを 出し合 って 協力し、大きな成果をあげることができました。 このように官庁と地元登山者が一緒に係わりあって、山を守り、利用充実を図っていくこと は、とても大切なことと感じます。 私も、道内を転勤していますが、各地でこの様な活動に、協力しています、 今後、黒松内岳周辺では、町民、地元NPO、研究者そして、黒松内町を交えてブナの森を 増やそうとする試み「黒松内岳ブナの林再生フロジェクト」が動き出しています。 この活動により、私がここで味わったブナの森の神秘性を、さらに多くの方々に味わってい ただけるようになればと思う次第です。