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月曜 2 限 異文化言語習得論 博士前期課程 1 年 N.T. ※枠内はテキスト

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月曜 2 限 異文化言語習得論 博士前期課程 1 年 N.T. ※枠内はテキスト
月曜 2 限 異文化言語習得論
博士前期課程 1 年 N.T.
※枠内はテキストに書かれていない関連事項です。
第 2 章 インプット重視の第二言語学習法・指導法 (p. 33)
➌インプット重視の英語指導法: 内容中心の第二言語授業におけるインプット
(1) ティーチャー・トーク (teacher talk): 教師が学習者に向かって話す目標言語
■学習者に理解可能なインプットを与える手段。
■本物の言語使用 (authentic language use) であるために、学習者が言語使用の当事者 (user) になる。
■学習者にとって理解可能になるよう修正する必要  話すスピード, 単純な表現の多用などの工夫
■少し難しいインプットでも状況によって (明示的な説明なしで) 理解される。
【暗示的学習の促進】
(2) オーラル・イントロダクション: 教師が目標言語を用いて教科書の内容を理解可能なインプットに
直しながら、学習者に積極的・体系的に与える指導技術。
■背景知識の活性化: 写真・映像・音楽などから、学習者の背景知識 (content schema) を活性する。
題材と学習者との関連性  内因性の動機を高める (内容を知りたい!)  学習意欲を高める
■理解可能なインプット: 背景知識の活性化によって新しい言語項目の理解が可能になる。
ex. 未知語の推測
■新出言語項目の形式・意味・機能的なつながりをコンテクストの中で提示:
語彙や文法の知識と使う知識を同時に提示できる。
 形式・意味・機能を分けずに提示することで、語彙・文法の知識は多いが使えない状況を防げる。
語彙や文法の知識
語彙や文法を使う知識
宣言的知識 (declarative knowledge):
手続き的知識 (procedural knowledge):
意識的・明示的に記憶された事実や概念についての
無意識的・暗示的に獲得された、いかに適切に行動
知識 (knowledge about)
するか (文法などを用いるか) の知識 (knowledge
how to)
(3) リスニングと音読の重視
オーラル・イントロダクション  範読 (model reading)  学習者が内容を考えながら読解を行う機会
■読解活動のタスク例
・黙読
・スラッシュ・リーディング: 意味のまとまりごと (チャンク) にスラッシュを引きながら読む方法。
スラッシュ・リーディング (チャンク/ フレーズ読み) がなぜ読解活動に有効なのか? (門田, 野呂, 氏木, 2010)
英文を理解する際に和訳しながら読む場合
スラッシュリーディング
・語順通りに読めない
・文頭から英語の語順に沿って理解できる。
 読解時間が長くなってしまう。
 読解時間も短縮される。
・情報をまとめてつかめないので、読み手の記憶に大 ・チャンクごとにまとめて理解するため、一語一
きな負担がかかる。
語を覚えるよりも記憶の負担が少ない。
(例) A parcel from London arrived / at a tailor’s shop in Eyam / on one September day in 1665.
チャンクとは何か?
■情報を記憶する際にその負担をできるだけ減らすため、なるべくまとめて記憶しようとするが、その
まとまり・単位をチャンクという。
■日本人 EFL 学習者は読解の際、句以上のまとまりごとにテキストを処理していると言われている。
・スキャニング読み: 何らかの特定情報を探すように読む
・キー・フレーズ・リーディング: もっとも重要な語句を探しながら読む方法。
※「情報を求めて読む」(reading for information) ことが必要。
・音読: 運用能力を伸ばす上で重要。理解 (リーディング) から産出 (スピーキング) への橋渡しになる。
= 言語知識の自動化・手続き化 を進める効果
□斉読: みんなで声を合わせて音読する。
□バズ・リーディング: 学習者が自分のペースで読む
□個別読み: 一人ずつ指名して読ませる
□リード・アンド・ルックアップ: テキストを黙読した後に文字から目を離して音読する
 活動に「目新しさ」(novelty) が必要
□プラス・ワン・ダイアログ: 役割を決めて対話文を読み、自分の意見を 1 つプラスする。
□通訳読み: 教師が日本語を意味の固まりで言い、生徒はその日本語に該当する個所を英語で読む。
□サイト・トランスレーション(サイトラ): 学習者がフレーズごとに英語を日本語に口頭で直す。
(4) 読後活動
読解事前活動 (pre-reading)
オーラル・イントロダクション
 読解活動 (in-reading activity)
題材内容の理解
セマンティックマッピングなど
 読後活動 (post-reading activity)
自分の考え・意見の表現
要約 概念図 (concept map)
ストーリーテリング
音読とシャドーイング*の仕組み (卯城, 2009; 尾崎, 2002; 門田, 2006, 2007)
■音韻符号化
・リーディングをする際には、文字を聴覚的な音韻情報に変換しなければ情報を認識できない。
・この文字から音声を喚起するプロセスを音韻符号化と呼ぶ。
■ワーキングメモリ
・必要な情報を、必要な期間だけ能動的・意識的に保持し、処理する機構。
ex. 読解時に、前の文の情報を思い出しながら (保持)、次の文を読む(処理)。
・ワーキングメモリ容量 (認知資源) には一定の制限があるため、2 つの機能それぞれに割り当てる容量
を配分する必要がある。 トレード・オフ
■音韻ループ
・ワーキングメモリのシステムの 1 つで、主に音の形式に変換された言語情報を扱う。音韻ストアと
構音リハーサルに大きく分けられる。
・音韻ストアでは、言語情報が一時的に (約 2 秒間) 保持される。この情報を保つために構音リハーサ
ルで音を何度も繰り返す必要がある。
・聴覚提示された場合 (リスニング) は言語情報が直接音韻ストアに入るが視覚提示された場合 (リーデ
ィング) では一度構音リハーサルで音声に変換される。
(図省略)
音読の効果
シャドーイングの効果
↓
↓
音韻符号化 (ディコーディング) の自動化
音声知覚 (音声・音韻表象) の自動化
↓
↓
音韻符号化した音声復唱の効率化
知覚した音声復唱の効率化
↓
↓
約 2 秒間で文字を音読できるスパンの拡大
約 2 秒間で音声入力を復唱できるスパンの拡大
↓
↓
語彙・語彙チャンク・構文の効率的な記憶
語彙・語彙チャンク・構文の効率的な記憶
↓
↓
第二言語の習得
第二言語の習得
*シャドーイング: リスニングした内容を、音声の速さに遅れないように声に出して繰り返す読み方。
第 3 章 インタラクション重視の第二言語学習法・指導法
(p.45 ~)
➊インタラクションの役割
■インタラクション (interaction/ 相互交流 / 相互作用): 言語を使って、他の対話者と情報のやり取りな
どの意思伝達をすること。
1. 相互理解のための意味交渉
■意味交渉 (negotiation of meaning): 相手の言っていることが分からないときなどに、お互いが意思の疎
通を求めて何らかの努力をすること。この意味交渉が第二言語習得にとって重要な働きをする。
■意味交渉の方法
□明確化要求: 聞き手が学習者にもう 1 度より明確に言ってもらうことを要求する。
ex. Could you say that again?
→相互交流的修正: 聞き手に分かりやすいように発話を修正する (ゆっくり易しい表現で話す、など)
→アップテイク (uptake): 学習者が自分の誤りを修正しようとする試み
□理解度確認: 自分の理解が正しいかを相手に確認する。
□繰り返しの要求
□言い直し: 教師が学習者の発話を正しい形に直しながら言い返すフィードバック
Ex. Student: I go to Okinawa last year.
 Teacher: Oh, you went to Okinawa last year!
 インタラクション補強法:
対話者が文法的誤りに対してフィードバックを返すことは通常のインタラクションでは起こらない。
学習者の注意を言語形式に向けようとする指導法。
2. インタラクションが促す認知プロセス
■初期のインタラクション仮説
意味交渉  理解可能なインプットが与えられる  第二言語習得の促進
↓
理解が進むだけで習得も進むと考えるのは短絡的
■現在のインタラクション仮説 (Gass, 1997, 2003; Long, 1996; Pica, 1994)
(1) 意味理解:
意味交渉によって理解不可能なインプットが理解可能なインプットに変化する
 意味理解が促進される可能性
(2) 形式・意味・
機能マッピング:
(3) 仮説検証:
特定の言語形式に関して意味交渉が行われると、その形式の意味・機能が学習者
に理解される可能性が高い。
意味交渉において学習者の発話に対する聞き手のフィードバックは、学習者が自
分の第二言語規則の正しさを検証する上で役立つ。
(4) 強制アウト
プットの機会:
相手に合わせてアウトプットするため、自分の第二言語能力の欠陥に気づく。
意味交渉において、相手のフィードバックを受けて自分の発話を見直すことが仮
説検証において重要な役割を果たす。
➋インタラクション重視の英語学習法
1. 継続的インタラクション
■「インプットの継続的取り入れ」と同様に、目標言語を使ってそのネイティブと継続的に対話 (インタ
ラクション) することが効果的な学習法である。
■継続的なインタラクションを可能にする留学についても、形態と学習者の能力次第で効果は異なる。
2. スタディ・グループ
■日本人同士が英語を使ってインタラクションをしても、意味交渉や仮説検証などのプロセスは起こる。
 英語母語話者とのインタラクションができない場合、日本人同士のインタラクションも有効。
(1) 解決すべき共通課題の設定
問題解決のためにコミュニケーションの必要性が生まれる  インタラクションの発生
ex. 授業改善に悩む教師が集まり、目標言語を使いながら個々の問題を提示して全体で議論する。
(2) 特定トピックについてのプレゼンを中心にした報告会
ex. グループごとに特定のトピックについて調べて報告書を作成し、それに基づいた質疑応答を行う。
= 情報の転換: 文書を読み取る  L2 で書き直す  自分のことばで第 3 者に伝える
➌インタラクション重視の英語指導法
■学習者が自然にインタラクションできるような環境を作り出す必要がある。
1. 情報交換のためのコミュニケーション
2. 問題解決のためのコミュニケーション
1. インフォメーション・ギャップ・タスク: 話者同士の情報のギャップを埋めるために、コミュニケー
ションを取るタスク。
(1) 画像描写タスク: 参加者 A に情報が与えられ、それを目標言語で相手 B に伝え、B は情報を元に絵を
描き、情報と一致しているかを確認する。
(2) 情報交換タスク: 対話者同士がそれぞれ持っている情報を交換して何らかの課題を達成する。
2. 問題解決タスク
■方略的インタラクション: 2 つの異なるシナリオを使って解決すべき問題を、現実感を伴って提示する。
①リハーサル(同じシナリオのグループ同士での相談)、②パフォーマンス(異なるシナリオを持つペア)、
③ディブリーフィング(クラスで数ペアが発表する)
 現実感のあるインタラクションのコンテクストを作ることができる。
■問題解決タスク: タスクに参加する学習者が異なる情報を持ち、それを合わせることで問題を解決する
情報格差を生かしたタスク
■意思決定タスク: 問題解決タスクの一種で、参加者全員で意見を出し合って全体の意思を決定するとい
うプロセスを重視したもの。
タスクの分類① 到達点が定められているかどうか
■開かれたタスク: どのような結末になるのかは定められておらず、タスクの到達点に自由度がある。
 自由な発言が導き出される。
■閉じたタスク: 定められた到達点 1 つを決定する。
 到達点に到るためにより多くの情報交換を必要とし、より多くの意味交渉が行われる。
タスクの分類② 参加者の意見の集約が必要かどうか
■収束タスク = 閉じたタスク 課題を解決するには、参加者全員の意見をまとめる必要のあるタスク。
 意味交渉をより生み出す傾向がある。
■拡散タスク: 参加者の意見の集約は必要とされず、自分の意見を発表したり、相手の主張を批判する
ことが求められる拡散的なタスク。
ex. ディベートやディスカッションなどの「意見交換タスク」
■インタラクション活動例とタスクの分類
分類
タスクの例
開かれたタスク
/ 閉じたタスク
方略的インタラクション
異なる立場 (不動産屋 vs. 学生) のシナリオをペアに与え
開かれたタスク
て、解決すべき問題を設定し、ペアで双方の言い分を主張
しながらインタラクションを行う。
問題解決タスク
【犯人探し】4 人の容疑者についての情報を 4 人の生徒が
閉じたタスク
別々に持っていて、刑事・探偵役の生徒とのインタラクシ
ョンを通して犯人を見つけていく。
【悩み相談】カウンセラー役の数人のグループを作り課題
開かれたタスク
の悩みに対して、アドバイスを出し合いインタラクション
を行って最も適切なアドバイスを決める。
意思決定タスク
【採用者の決定】会社の面接の設定で、求人する役の生徒
閉じたタスク
数人と異なる能力と経歴を持った志願者役数人が面接を
して、採用者 1 名を決定する。
【旅程表作成】修学旅行の 1 日が自由行動になるという設
開かれたタスク
定で、生徒同士で旅程表を相談しながら作成する。
インタラクションの効果 (小池, 2004)
Lynster & Ranta
イマージョン教室のインタラクションの分析から教師によるフィードバックが学習者
(1997)
の言語的誤りの修正 (uptake) を引き出す上で、どのような効果があるのか?
 教師がもっとも多く使っている言い直しは最も効果が薄かった。その他は、以下
誘導 > 明確化要求 > 明示的フィードバック > くり返し > 明示的訂正 > 言い直し
L1 と L2 英語学習者のインタラクションでは、L1 の子どもが与えた言い直しや明確化
Oliver (1995)
要求などの否定的フィードバックを利用して、L2 学習者は発話を修正していた。
Mackey (1999)
教師のフィードバックは学習者の発達段階に合ったときのみ有効である。
Fukuya
インタラクション補強法による指導は一定期間行われた場合には有効である。
et
al.
(1998), Muranoi
(1996, 2000)
明示的に形式に関する説明を加えるとより効果的である。
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