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10-9 動物(PDF:321KB)
9 動物 (1) 調査結果 調査方法、調査地点及び調査期間・頻度は、 「第 8 章 ① ア 2 (9) 動物」に示したとおりである。 動物相の状況 広域的な動物相の状況 「寄居町の自然 動物編」(寄居町教育委員会、昭和 56 年)及び「小川町の自然 動物編」 (小川町、平成 12 年)によると、寄居町では 2,400 種、小川町では 2,900 種を越える動物の 生息が確認されており、埼玉県動物誌に示される 5,190 種の約 46~56%に相当する動物が生 息する、豊かな自然環境が存在することを示している。また、計画地に隣接する環境整備セ ンターとその周辺における動物相の状況については、 「彩の国資源循環工場整備事業に係る環 境影響評価書」 (埼玉県、平成 15 年)により平成 13 年から平成 14 年にかけて、 「ホンダ寄居 新工場建設事業環境影響評価書」 (本田技研工業株式会社、平成 19 年)により平成 18 年に現 地調査が実施されている。 寄居町は、荒川が山地流から関東平野の平地流に変わる出口地域に当たり、山地・丘陵・ 台地・低地と多様な地形に恵まれている。町の西半分から南にかけては山地が、東には比企 丘陵が、中央部は荒川の流れる台地が広がっている。小川町も同様に山地と平地の中間に位 置する地域で、低山・丘陵・台地・低地などさまざまな地形を見ることができる。低山・丘 陵の水を集めて流れる何本かの河川があるが、渓流から中流域的なところまで多彩な環境を 形成している。このように両町とも大変多様な環境と豊かな自然が残されていて、様々な動 物の生息する地域となっている。 寄居町及び小川町の動物相の概観を、分類別に示した結果は、表 10.9-1 に示すとおりで ある。 549 分類群 表 10.9-1 寄居町・小川町に生息する主な動物種 記載種数 主な生息種注 1) 概要 アズマモグラ、ノウサギ、アカネズミ、 [寄居町]種数は多いが減少 カヤネズミ、タヌキ、キツネ、テン、 傾向。 [小川町]21 種が確認され、 イタチ、アナグマ、イノシシ等 山地や谷戸・田んぼなど、 住む場所も様々。 鳥類 15 目 39 科 131 種 トビ、オオタカ、ノスリ、サシバ、フ [寄居町]水鳥の種類が少な クロウ、ヒヨドリ、サンショウクイ、 く、タカ類の記録も少ない。 トラツグミ、ヤブサメ、ウグイス、セ [小川町]84 種確認され、留 ンダイムシクイ、キビタキ、オオルリ、 鳥が半分以上を占める。 エナガ、ヤマガラ、シジュウカラ、ホ オジロ、ハシブトガラス等 爬虫類 2 目 6 科 12 種 トカゲ、カナヘビ、アオダイショウ、 [寄居町]種類は豊富。 シロマダラ、ヒバカリ、ヤマカガシ等 [小川町]低山で稀なヤモリ などが分布。 両生類 2 目 6 科 14 種 トウキョウサンショウウオ、アズマヒ [寄居町]山地性のカエル・ キガエル、アマガエル、ニホンアカガ サンショウウオ類は見られ エル、ヤマアカガエル、ウシガエル、 ない。 [小川町]台地・丘陵帯から シュレーゲルアオガエル等 山地にかけて見られる種類 が確認される。 昆虫類 21 目 320 科 3826 種 オオツヤセイボウ、キイロコウカアブ、 [寄居町]種類は比較的多 シロスジベッコウハナアブ、ルリボシ い。 カミキリ、ウスバシロチョウ、クビキ [小川町]市町村単位として リギス、コガタカンタン、ミヤマアカ は、記録集数が非常に多い。 ネ 魚類 8 目 13 科 38 種 モツゴ、コイ、ドジョウ、シマドジョ [寄居町]種数は全県の約半 ウ、ホトケドジョウ、トウヨシノボリ 数になる。 [小川町]種数は荒川水系の など 60%。 注 2) その他 7 門 10 綱 27 目 カワニナ、スジエビ、サワガニ [寄居町]カゲロウ類は荒川 101 科 224 種 水系の 60%の種が得られて いる。サワガニは乱獲で減 少している。軟体動物は種 数が少ない。 参考文献:「寄居町の自然 動物編」(寄居町教育委員会、昭和 56 年) 「小川町の自然 動物編」(小川町、平成 12 年) 「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年) 「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年) 注1) 主要な生息種は、近傍で行われた「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)、「ホンダ寄居新工場建設事業環境影響評価書」(本田技研工業株式会社、平成 19 年)を参考として、主 に調査地域周辺に生息していると推定される種を記載した。 注2) その他には、甲殻類や水生昆虫などの節足動物・環形動物・軟体動物等を含む。 哺乳類 7 目 13 科 25 種 550 イ 計画地及びその周辺における動物相の状況 現地調査の結果、計画地及びその周辺では 905 種の動物種を確認した。生息を確認した動 物の内訳は表 10.9-2 に示すとおりである。 計画地は台地・丘陵地に位置する二次林(雑木林)及び湿地環境が主たる環境であり、表 10.9-1 に示す寄居町及び小川町の動物相のうち、低山地や低地の湿地周辺に生息する種が多 くなっている。 今回の現地調査で把握された動物種は、寄居町で確認されている動物種の約 1/2、小川町 で確認されている動物種の約 1/3 程度である。種数が少ない理由は、計画地内には山地性の 樹林、河川敷、池沼、広い草地や耕作地などの環境がほとんどないこと、湿地から森林まで 多様な環境が見られるが、全面積の 7 割はコナラ群落やアカマツ群落等の樹林で占められ、 樹林地以外の環境の面積が狭いことなどが一因と考えられる。以下、各分類群の確認状況を 示す。 表 10.9-2 計画地及びその周辺における現地調査による動物相の確認状況 分類群 哺乳類 確認種数 6目 11 科 17 種 11 目 25 科 50 種 爬虫類 1目 2科 3種 両生類 2目 5科 8種 15 目 168 科 693 種 1目 1科 2種 21 目 69 科 132 種 鳥類 陸上昆虫類 魚類 注) 底生動物 注) 分類群は調査項目に基づいており、底生動物には水中 に生息する昆虫類が含まれている。 551 (ア) 哺乳類の確認状況 現地調査の結果、表 10.9-3 に示す 6 目 11 科 17 種の哺乳類を確認した。 確認種は、様々な環境に幅広く生息するアズマモグラやノウサギ、アカネズミ等のほか、 落葉層が厚く積もった場所を好むヒミズ、イネ科植物がまとまって生育している場所に巣を 作るカヤネズミ、樹上をよく利用するニホンリスやテン、生息に広面積の樹林地を必要とす るイノシシやホンドジカ等であった。 時期別に見ると、多くの種で子育てが終わり個体数が多くなる秋季において最も多い種数 (13 種)が確認され、そのほかの季節では 8~9 種が確認された。 自動撮影カメラでは、合計 9 種の哺乳類が撮影されており、撮影回数も多く、本地域には 中型獣が比較的高密度で生息している状況が推測される。特に、特定外来生物に指定されて いるアライグマは、自動撮影により多くの地点で確認された。 全体としては、樹林地を好む種を中心に、様々な環境を利用する種が確認されており、ま た、小型獣から大型獣まで生息していることから、比較的多様な哺乳類相になっていると考 えられる。これは、草地・湿地・樹林地など多様な環境を有する計画地の状況を反映する結 果であると思われる。 なお、計画地東部の南東端において、アナグマが利用している巣が確認された。 表 10.9-3 哺乳類の確認種 確認時期 No. 1 目名 モグラ目(食虫目) 科名 モグラ科 2 - 種名 コウモリ目(翼手目)- 7月 (初夏季) コテングコウモリ ウサギ目 ウサギ科 ノウサギ ネズミ目(齧歯類) リス科 ニホンリス ネズミ科 アカネズミ ● ● ● ● ● ●‡ ● ● ● カヤネズミ ネコ目(食肉目) 10 アライグマ科 イヌ科 11 12 イタチ科 13 14 ● ● ● ● ● ● タヌキ ● ● ● ● ● キツネ ● テン ● イタチ ● アナグマ ● ジャコウネコ科 ハクビシン 16 ウシ目(偶蹄目) イノシシ科 イノシシ 17 シカ科 ホンドジカ 11科 ● アライグマ 15 6目 ● ● ヒメネズミ 8 10月 (秋季) ●‡ ● ● ヒナコウモリ科 5 合計 ● コウモリ目 7 4月 (春季) ●† 4 6 3月 (早春季) ヒミズ アズマモグラ 3 9 1月 (冬季) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 9種 8種 13種 ● 17種 9種 9種 ● 注1)目名、科名、種名及び配列は「平成 20 年度版河川水辺の国勢調査のための生物リスト」に従った。 注2)†4 月の鳥類調査時に確認された。 注3)‡10 月の鳥類調査時に確認された。 552 (イ) 鳥類の確認状況 現地調査の結果、表 10.9-4 に示す 11 目 25 科 50 種の鳥類を確認した。確認種には猛禽 類調査で確認された猛禽類等も含む。なお、調査結果の詳細は、資料編「7 動物」に示す。 確認種はオオタカやフクロウ、アオゲラなど樹林に依存する種を中心に、キジやウグイス、 ホオジロなどの林縁や低木林、草地に依存する種、カワセミなどの水辺に依存する種などが 確認され、調査地域の里山的な環境を反映した結果となった。渡り区分では、シジュウカラ、 メジロ、ウグイスなどの留鳥 23 種を中心に、サシバやキビタキなどの夏鳥 6 種、ベニマシ コ、ルリビタキ、ツグミなどの冬鳥 20 種のほか、旅鳥としてヤブサメ 1 種となった。調査 時期別では、冬季 33 種、春季 21 種、夏季 17 種、秋季 19 種を確認した。どの調査時期も留 鳥を中心に構成されているが、冬季には冬鳥の増加により、最も多い確認種数を記録した。 また、四季を通じて特定外来生物に指定されているガビチョウを多く確認した。 タカ目の猛禽類は 7 種確認された。確認されたのは森林性のハチクマ、オオタカ及びハイ タカ、里山環境を代表するサシバ、樹林環境に生息するが、狩りは農耕地や河川敷のような 開放的な環境で行うノスリ、崖地や橋脚に営巣し、開放的な空間で狩りを行うハヤブサ、幅 広い環境のもとに生息するトビであった。 計画地内の樹林での営巣状況を調査した結果、オオタカやサシバ等の営巣は確認されなか った。 553 表 10.9-4 鳥類の確認種 No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 合計 目名 科名 種名 ペリカン目 ウ科 コウノトリ目 サギ科 タカ目 タカ科 カワウ ミゾゴイ ハチクマ トビ オオタカ ハイタカ ノスリ サシバ ハヤブサ科 ハヤブサ キジ目 キジ科 コジュケイ キジ チドリ目 シギ科 ヤマシギ ハト目 ハト科 キジバト カッコウ目 カッコウ科 ホトトギス フクロウ目 フクロウ科 フクロウ カワセミ ブッポウソウ目カワセミ科 キツツキ目 キツツキ科 アリスイ アオゲラ アカゲラ コゲラ スズメ目 セキレイ科 ハクセキレイ ヒヨドリ科 ヒヨドリ モズ科 モズ ミソサザイ科 ミソサザイ ツグミ科 ルリビタキ ジョウビタキ トラツグミ シロハラ ツグミ チメドリ科 ガビチョウ ウグイス科 ヤブサメ ウグイス ヒタキ科 キビタキ エナガ科 エナガ シジュウカラ科 ヤマガラ シジュウカラ メジロ科 メジロ ホオジロ科 ホオジロ カシラダカ ミヤマホオジロ アオジ アトリ科 カワラヒワ マヒワ ベニマシコ ウソ イカル シメ カラス科 カケス ハシボソガラス ハシブトガラス 50種 11目 25科 1月 5月 6月 (冬季) (春季) (初夏) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 33種 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 21種 ● ● 17種 10月 猛禽類 渡り区分 (秋季) 調査 留鳥 夏鳥 ○ 夏鳥 ○ 留鳥 ○ 留鳥 ○ 冬鳥 ○ 冬鳥 ○ 夏鳥 ○ 冬鳥 ● 留鳥 ● 留鳥 ○ 冬鳥 ● 留鳥 夏鳥 ○ 留鳥 留鳥 冬鳥 ● 留鳥 ● 留鳥 ● 留鳥 留鳥 ● 留鳥 ● 冬鳥 冬鳥 冬鳥 冬鳥 冬鳥 ● 冬鳥 冬鳥 ● 留鳥 旅鳥 ● 留鳥 夏鳥 ● 留鳥 ● 夏鳥 ● 留鳥 ● 留鳥 ● 留鳥 冬鳥 冬鳥 冬鳥 留鳥 冬鳥 冬鳥 冬鳥 ● 留鳥 冬鳥 ● 冬鳥 留鳥 ● 留鳥 19種 9種 - 注 1)目名、科名、種名及び配列は「平成 20 年度版河川水辺の国勢調査のための生物リスト」に従った。 注 2)猛禽類調査:猛禽類調査時に、調査地域内での確認があった種。 注 3)渡り区分は、埼玉県 RDB、中村登流・中村雅彦(1995)記載内容及び現地調査結果に基づき整理した。 554 (ウ) 爬虫類の確認状況 現地調査の結果、表 10.9-5 に示す 1 目 2 科 3 種の爬虫類を確認した。 確認種は、草原や藪など様々な環境に幅広く生息し人家周辺でも見られるカナヘビやアオ ダイショウ、森林から草地、水田や畑まで幅広い環境に生息し水にもよく入るヒバカリが確 認された。 時期別に見ると、爬虫類の活動が活発になる春季~秋季は 1 種~2 種が見られ、気温が低 い早春季には確認されなかった。 全体としては、カナヘビが比較的多くの地点で確認されたことを除くと、爬虫類の確認は 種数と確認個体数ともに少ない結果となった。 表 10.9-5 爬虫類の確認種 No. 目名 1 トカゲ目 2 3 合計 1目 科名 カナヘビ科 ヘビ科 2科 種名 カナヘビ アオダイショウ ヒバカリ 3種 確認時期 3月 4月 7月 (早春季) (春季) (初夏季) ● ● ● ● 1種 2種 2種 10月 (秋季) ● 1種 注1) 目名、科名、種名及び配列は「平成 20 年度版河川水辺の国勢調査のための生物リスト」に従った。 (エ) 両生類の確認状況 現地調査の結果、表 10.9-6 に示す 2 目 5 科 8 種の両生類を確認した。 確認種は、山間の水田の側溝や湧き水のたまりなどの止水に産卵するトウキョウサンショ ウウオ、平野部から高山帯まで分布し様々な環境を利用するアズマヒキガエル、水田やその 周辺の水路などに好んで産卵するニホンアカガエルやシュレーゲルアオガエル、主に樹上で 生活するモリアオガエルなどであった。 時期別に見ると、多くの種で繁殖期にあたる春季~初夏季で多くの種(6~7 種)が確認 された。 繁殖については、湿性低茎草地やヨシ原にある水たまりやその周辺の水路、斜面の裾の湧 水などにおいて、トウキョウサンショウウオやアズマヒキガエル、ニホンアカガエル、ヤマ アカガエルの卵や幼生が確認された。特にトウキョウサンショウウオについては多くの地点 で卵嚢が確認されており、最も確認数が多かった春季には、合計 43 対の卵嚢と 30 個体以上 の幼生が確認された。また、シュレーゲルアオガエルとモリアオガエルについては、繁殖期 に雄が盛んに鳴いている声が確認された。 全体としては、計画地には水田の跡地や樹林地からの湧水、小規模な沢など様々な湿地環 境があり、比較的多くの両生類が繁殖を行っていることが確認され、確認個体数も多かった ことから、両生類にとって良好な生息場所になっていると考えられた。 555 表 10.9-6 両生類の確認種 No. 目名 科名 種名 確認時期 3月 4月 7月 10月 (早春季) (春季) (初夏季) (秋季) ● ● ● 1 サンショウウオ目 サンショウウオ科 トウキョウサンショウウオ 2 カエル目 ヒキガエル科 アズマヒキガエル ● 3 アマガエル科 アマガエル ● ● ● 4 アカガエル科 ニホンアカガエル ● ● ● ヤマアカガエル ● 5 6 ウシガエル 7 アオガエル科 8 ● シュレーゲルアオガエル ● モリアオガエル 合計 2目 8種 5科 ● 1種 ● ● ● 7種 6種 ● 4種 注1)目名、科名、種名及び配列は「平成 20 年度版河川水辺の国勢調査のための生物リスト」に従った。 (オ) 陸上昆虫類の確認状況 現地調査の結果、表 10.9-7 に示す 15 目 168 科 693 種の陸上昆虫類を確認した。 確認種は平地から低山地にかけて見られる種が大部分を占めていた。目別の確認種数では コウチュウ目が 36 科 226 種と最も多く、次いでチョウ目の 26 科 183 種、カメムシ目の 36 科 91 種であった。 確認種を生息環境別にみると、調査地域の環境を反映して樹林性の種が多かった。谷戸部 の湿地環境には特徴的な昆虫が生息しており、計画地は人手の加わった低山地の典型的な里 山環境であると考えられる。 春季にはガマズミやノイバラなどの花に集まるヒゲブトハナムグリ、ヒメトラハナムグリ、 ツヤケシハナカミキリなどの訪花性の昆虫が多く見られ、夏季にはヤナギやクヌギの樹液の 出ている場所でオオスズメバチ、サトキマダラヒカゲ、オオムラサキ、ミヤマクワガタ、カ ブトムシ、ムナビロオオキスイなどが確認された。計画地内にはやや暗く湿潤な林があり、 このような林内ではヤマトガガンボモドキ、オビコシボソガガンボ、トワダオオカなどが見 られた。 谷戸部の廃田湿地には湿地性の昆虫が見られ、トンボ目のサラサヤンマ、ハラビロトンボ、 ヒメアカネが非常に多数見られたほか、ヒゲナガハナノミ、ヘイケボタル、ツヤネクイハム シ、イネクビボソハムシなどが確認された。 計画地内には、ため池のようなある程度面積がある止水域はなく、止水性のトンボ類など は種数、個体数とも少なかった。また、流水環境としては、廃田脇に細流がある程度で水量 は少なく、渓流的な環境は見られないため、流水性のトンボも少なく、源流域に棲むニホン カワトンボが見られた程度であった。 556 表 10.9-7 陸上昆虫類の確認種数と主な確認種 No. 目名 科 種 主な確認種 1 カゲロウ目 1 1 2 トンボ目 8 18 3 ゴキブリ目 1 1 モリチャバネゴキブリ 4 カマキリ目 1 1 コカマキリ 5 ハサミムシ目 1 1 ヒゲジロハサミムシ 6 カワゲラ目 1 1 Neoperla 属の一種 7 バッタ目 12 27 ケラ、タンボコオロギ、コバネイナゴ 8 カメムシ目 36 91 ツクツクボウシ、トゲカメムシ、ヤスマツアメンボ 9 アミメカゲロウ目 1 1 スカシヒロバカゲロウ 10 シリアゲムシ目 2 2 ヤマトシリアゲ、ヤマトガガンボモドキ 11 トビケラ目 9 13 12 チョウ目 26 183 13 ハエ目 17 65 14 コウチュウ目 36 226 15 ハチ目 16 62 168 科 693 種 計 15 目 (カ) シロタニガワカゲロウ ニホンカワトンボ、サラサヤンマ、ヒメアカネ ウルマーシマトビケラ、ヒゲナガカワトビケラ ヒメキマダラセセリ、オオムラサキ、ヒメヤママユ マダラガガンボ、アリスアブ、マツダマダラバエ エサキオサムシ、ヒゲブトハナムグリ、ツヤネクイハムシ ルリチュウレンジ、オオスズメバチ、コマルハナバチ - 魚類の確認状況 現地調査の結果、表 10.9-8 に示す 1 目 1 科 2 種の魚類を確認した。 計画地における水域としては、小水路及び湧水地があるが、いずれも水深が浅く、確認さ れた種はこのような環境にも生息できるドジョウ及びホトケドジョウのみであり、魚類の生 息はかなり限定的であると考えられた。 確認されたドジョウ及びホトケドジョウのいずれも、小水路など(St.1~4)でのみ確認 され、湧水地では確認されなかった。湧水地は湧水量に変動があり、水深等の生息環境が安 定しにくいことから、魚類の生息には適さないものと考えられる。 St.1~4 は、水深は浅いが水量が比較的安定しているものと考えられ、また、湿地性植物 が生育している環境であるため、これらの生息環境に適したドジョウ及びホトケドジョウが 確認されたものと考えられる。 表 10.9-8 魚類の確認種 No. 目名 1 コイ目 2 合計 1目 科名 ドジョウ科 1科 種名 ドジョウ ホトケドジョウ 2種 魚類相調査 湧水地調査 2 3 4 1 2 3 4 春季 夏季 春季 夏季 春季 夏季 春季 夏季 豊水 渇水 豊水 渇水 豊水 渇水 豊水 渇水 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2 2 2 2 1 2 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 1 注1)目名、科名、種名及び配列は「平成 20 年度版河川水辺の国勢調査のための生物リスト」に従った。 注2)各調査の調査地点は「第 8 章 2 調査方法 (9) 動物」に示す。 557 (キ) 底生動物の確認状況 現地調査の結果は、表 10.9-9 に示す 5 門 9 綱 21 目 69 科 132 種の底生動物を確認した。 なお、調査結果の詳細は、資料編「7 動物」に示す。 確認種は昆虫綱が最も多く、種数全体の 80%を占める 106 種が昆虫綱であった。昆虫綱 の中では、ガガンボ科やユスリカ科などのハエ目を多く確認したほか、トンボ目やコウチュ ウ目、カゲロウ目などが多く確認された。昆虫綱以外では、ミミズ綱を比較的多く確認した。 計画地における水域としては、小水路及び湧水地があるが、小水路などの地点である St.1 ~4 では、湧水地よりも確認種数が多かった。とくに、カゲロウ目やトンボ目、カワゲラ目、 トビケラ目などは、湧水地では確認種数が少なかった。 湧水地は湧水量に変動があり、水深等の生息環境が安定しにくいことから、全般に確認種 数が少なかったものと考えられる。小水路等である St.1~4 は、水深は浅いが水量が比較的 安定しているものと考えられ、また、湿地性植物が生育している環境であるため、これらの 生息環境に適したカワニナ、マルタニシ、ヌカエビなどが確認されたものと考えられる。 表 10.9-9 底生動物の確認種 分類群 扁形動物門 渦虫綱 紐形動物門 有針綱 軟体動物門 二枚貝綱 腹足綱 環形動物門 ミミズ綱 ヒル綱 節足動物門 クモ綱 軟甲綱 昆虫綱(全体) 昆虫綱(目別) カゲロウ目 トンボ目 カワゲラ目 カメムシ目 ヘビトンボ目 トビケラ目 ハエ目 コウチュウ目 5門9綱21目69科132種 全体 1 1 1 1 3 9 4 3 4 106 8 11 4 3 2 13 56 9 132 底生動物相調査 2 3 1 1 3 3 1 1 4 70 7 6 4 2 2 11 32 6 83 1 1 3 1 4 54 3 7 3 2 2 6 28 3 65 4 湧水地調査 2 3 1 1 1 1 1 3 3 1 3 52 6 5 3 1 3 1 1 2 24 1 4 1 2 1 27 2 1 1 1 21 8 25 4 63 14 2 31 2 1 1 1 21 1 30 3 1 1 1 12 3 27 4 1 1 1 2 1 3 2 22 1 1 1 19 1 1 1 1 2 16 1 33 15 3 25 2 1 注1) 表中の数値は確認種数である。 注2) 各調査の調査地点は「第 8 章 2 調査方法 (9) 動物」に示す。 ウ 過去の動物相の変遷 過去の動物相との比較としては、中短期的な変遷として、調査地域に隣接する地域である 「彩の国資源循環工場整備事業に係る環境影響評価書」(埼玉県、平成 15 年)の調査結果と 比較を行った。 ただし、隣接していても調査地域内の環境(耕作地・雑木林の面積の割合、湿地への遷移 の状況等)は異なっているため、あくまで参考として見る必要がある。 558 表 10.9-10 中短期的な動物相の変遷 分類群 約 6 年前の調査にお ける動物相 今回調査の動物相 哺乳類 5 目 6 科 11 種 → 6 目 11 科 17 種 鳥類 14 目 29 科 83 種 → 11 目 25 科 50 種 爬虫類 1目3科3種 → 1目2科3種 両生類 2目5科7種 → 2目5科8種 陸上昆虫類 14 目 139 科 533 種 → 15 目 168 科 693 種 魚類 2目3科3種 → 1目1科2種 底生動物 1目3科3種 → 29 目 69 科 132 種 エ 主たる要因 総確認種数は増加 コテングコウモリ、ニホンリス、ヒメネ ズミ、アナグマ、ホンドジカのほか、外 来種のアライグマ、ハクビシンが新たに 確認された。 総確認種数は減少 過去には水田等を利用する水鳥や草地 性の種が多く確認されていた可能性が 考えられる。現在は湿地やヤナギ林等に 遷移し、水面はほとんど無い。 樹林性の種の構成はほとんど変わらな い。 種数に変化はないが、確認種に違いがあ る。 種数にほぼ変化はない 新たにモリアオガエルが確認された。 総確認種数は増加 旧耕作地の湿地への遷移など、環境の多 様性が増えていることが考えられる。 種数は少ない。 過去には谷戸と水路が維持されていた が、遷移して草が繁茂し、水深も浅くな ったためと考えられる。 甲殻類では、共通種はヌカエビのみで、 サワガニが新たに確認されている。 甲殻類以外の底生動物は、過去に調査が 行われていないため比較できない。 地域住民その他の人との関わりの状況 計画地及びその周辺の動物相の利用としては狩猟が挙げられる。 計画地内には、ノウサギ、タヌキ、テン、ホンドジカ、イノシシなどの哺乳類の生息が確 認されており、これらを狩猟目的としていると推定される狩猟者や、散弾銃の薬莢などが調 査中に確認されている。 559 ② 保全すべき種の状況 ア 保全すべき種の生息域等 (ア) 保全すべき種の生息域及び確認状況 保全すべき種の選定基準は、表 10.9-11 に示すとおりである。 これらの資料に基づき、現地調査で確認された動物種から保全すべき動物種を選定した結 果、表 10.9-12 に示すとおり 60 種を抽出した。 表 10.9-11 保全すべき種の選定基準 番 号 保全すべき種の選定に使用した文献等 1 文化財保護法(昭和 25 年法律第 214 号)及び都道府県及び市町村の文化財保護条例における 特別天然記念物および天然記念物 2 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成 4 年法律第 75 号)における国 内及び国際希少野生動物 3 鳥類、爬虫類、両生類及びその他無脊椎動物のレッドリストの見直しについて(環境省、2006)、 哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物 I 及び植物 II のレッドリストの見直しについ て(環境省、2007)における掲載種 4 埼玉県レッドデータブック 2008 動物編(2008)における掲載種 ※「台地・丘陵帯」のランクを適用した 560 表 10.9-12(1) 保全すべき動物種の一覧 No 分類群 天然 記念 物 種名 種の 保存 法 環境 省 RL 埼玉県 RDB 注 2) 全県 台地・丘 陵帯 コテングコウモリ注 1) VU 2 ニホンリス RT EN 3 ヒメネズミ RT VU 4 カヤネズミ NT1,2 NT1,2 5 キツネ RT NT2 6 テン RT VU 7 アナグマ RT VU 1 8 哺乳類 ミゾゴイ EN EN CR 9 ハチクマ NT VU EN 10 トビ DD DD 11 オオタカ NT VU(NT2) VU(NT2) 12 ハイタカ NT DD(NT2) (NT2) 13 ノスリ NT2(NT2) (NT2) 14 サシバ VU EN EN 15 ハヤブサ VU (VU) (VU) 16 ヤマシギ (NT2) (NT2) 17 フクロウ RT(NT2) VU(NT2) 18 トラツグミ RT VU 19 ヤブサメ RT VU 20 キビタキ RT VU 21 エナガ RT NT2 22 ヤマガラ RT NT2 23 ミヤマホオジロ (NT1) (NT1) 24 ベニマシコ (RT) (NT2) VU VU 25 鳥類 両生類 国内 国内 トウキョウサンショウウオ VU 26 ヤマアカガエル NT2 NT2 27 モリアオガエル LP LP アオダイショウ NT2 NT2 ヒバカリ VU NT2 EN EN 28 爬虫類 29 30 魚類 ホトケドジョウ EN 31 昆虫類 ムカシヤンマ NT1 NT1 32 ヒメアカネ NT2 NT2 33 サラサヤンマ NT2 NT2 34 ヒナバッタ DD DD 35 ヤマトフキバッタ LP NT2 36 ハルゼミ NT1 NT1 37 ヤマトガガンボモドキ VU VU 561 表 10.9-12(2) 保全すべき動物種の一覧 No 分類群 天然 記念 物 種名 種の 保存 法 環境 省 RL 埼玉県 RDB 注 2) 全県 台地・丘 陵帯 ムナグロナガレトビケラ NT2 NT2 39 トワダオオカ NT2 NT2 40 ヘイケボタル NT1 NT1 41 シロスジカミキリ NT2 NT2 42 ツヤネクイハムシ EN EN 43 ミヤマセセリ NT1 NT1 44 オオチャバネセセリ NT2 NT2 45 ウラゴマダラシジミ VU NT1 46 コムラサキ NT1 NT1 47 オオムラサキ VU NT1 48 メスグロヒョウモン NT2 NT2 49 クモガタヒョウモン NT2 NT2 50 ヤママユ RT NT2 51 コトラガ NT1 NT1 NT2 NT2 38 52 昆虫類 底生動物 NT マルタニシ NT 53 ヌカエビ VU EN 54 サワガニ RT - 55 コシボソヤンマ NT1 NT1 56 ヤマトクロスジヘビトンボ NT2 NT2 57 ゲンジボタル VU VU 58 マツムラヒメアブ NT1 NT1 59 コバントビケラ属 NT2 NT2 60 ホソバトビケラ NT1 NT1 60 種 58 種 合計 60 種 0種 2種 10 種 注 1) コテングコウモリは、埼玉県 RDB において「台地・丘陵帯」のランクが記載されていないため、県全域のラン クを適用することとした。 注 2) 埼玉県 RDB のランクの内、鳥類については、繁殖期のランクを示し、非繁殖期のランクがあるものは括弧で括 って併記した。 注 3)保全すべき種の選定基準及び凡例を以下に示す 天然記念物:文化財保護法(昭和 25 年法律第 214 号)及び都道府県及び市町村の文化財保護条例 特天: 特別天然記念物、天然: 天然記念物、地域:地域指定 種の保存法:絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成 4 年法律第 75 号) 国内: 国内希少野生動植物種、国際: 国際希少野生動植物種 環境省 RL:鳥類、爬虫類、両生類及びその他無脊椎動物のレッドリストの見直しについて(2006) 哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物 I 及び植物 II のレッドリストの見直しについて(2007) EX: 絶滅、EW: 野生絶滅、CR: 絶滅危惧 IA 類、EN: 絶滅危惧 IB 類、VU: 絶滅危惧 II 類、NT: 準絶滅危惧、 DD: 情報不足、LP: 絶滅のおそれのある地域個体群 埼玉県 RDB:埼玉県レッドデータブック 2008 動物編(2008) EX: 絶滅、EW: 野生絶滅、CR: 絶滅危惧 IA 類、EN: 絶滅危惧 IB 類、VU: 絶滅危惧 II 類、NT: 準絶滅危惧、 DD: 情報不足、LP: 絶滅のおそれのある地域個体群、要注目:要注目種、-:当該地域では重要種に選定され ていない 562 表 10.9-13 計画地における保全すべき動物種の生息環境 No 種名 1 コテングコウモリ 2 ニホンリス 3 ヒメネズミ 4 カヤネズミ 5 キツネ 6 テン 7 アナグマ 8 ミゾゴイ 9 ハチクマ 10 トビ 11 オオタカ 12 ハイタカ 13 ノスリ 14 サシバ 15 ハヤブサ 16 ヤマシギ 17 フクロウ 18 トラツグミ 19 ヤブサメ 20 キビタキ 21 エナガ 22 ヤマガラ 23 ミヤマホオジロ 24 ベニマシコ 25 トウキョウサンショウウオ 26 ヤマアカガエル 27 モリアオガエル 28 アオダイショウ 29 ヒバカリ 30 ホトケドジョウ 31 ムカシヤンマ 32 ヒメアカネ 33 サラサヤンマ 34 ヒナバッタ 35 ヤマトフキバッタ 36 ハルゼミ 37 ヤマトガガンボモドキ 38 ムナグロナガレトビケラ 39 トワダオオカ 40 ヘイケボタル 41 シロスジカミキリ 42 ツヤネクイハムシ 43 ミヤマセセリ 44 オオチャバネセセリ 45 ウラゴマダラシジミ 46 コムラサキ 47 オオムラサキ 48 メスグロヒョウモン 49 クモガタヒョウモン 50 ヤママユ 51 コトラガ 52 ヌカエビ 53 マルタニシ 54 コシボソヤンマ 55 ヤマトクロスジヘビトンボ 56 マツムラヒメアブ 57 ゲンジボタル 58 コバントビケラ属 59 ホソバトビケラ 59種 合計 計 る 画 利 地 用 に 状 お 況 け C C A A C C A C C C C C C C D C A C A A B C C C A A B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B C C B B B B B B B B B B - 環重 境要 のな 有生 無息 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● - 計画地における植物群落等の利用状況 コ ナ ラ 群 落 ア 群カ 落マ ツ ヒ ノス キギ 植・ 林 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ザア ヤ ヤ 高 低 サズ ナ ナ 木 木 ギ 群マ ギ 林 林 落ネ 類 類 マ グ ワ 群 落 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ヨ シ 群 落 池 沼 ・ 止 水 乾 性 草 地 湿 草性 地低 茎 水 路 ・ 沢 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 作 構 業 造 路 物 ・ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 39 ○ ○ ○ ○ 15 13 1 11 11 10 14 15 15 4 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 20 0 注1)サワガニは、「台地・丘陵帯」では重要種に選定されていないため除外した。 注2)計画地における利用状況の凡例は以下の通りである。 A:計画地内で繁殖している B:生活史全般を通じて利用していると考えられ、当該環境への依存度が高い C:採餌のみ利用。越冬もしくは渡り等、一時的な利用を含む D:上空通過など、当該地域は利用していない 注3)重要な生息地の有無(有:●、無:空白)は、計画地を繁殖地として利用している種(A)及び生活史全般 に利用し依存度が高い種(B)に該当するものを抽出した。 563 (2) 予測結果 ① 予測内容 工事中及び供用後における、保全すべき種の生息地の改変の程度及びその他の生息環境への 影響の程度を予測した。 ② 予測方法 事業計画に水象、地象及び植物の調査結果との重ね合わせによる推定及び類似事例又は既存 知見を参考にして予測した。 ③ 予測地域・予測地点 現地調査地域・地点と同様とした。 ④ 予測対象時期等 工事中は、保全すべき種にとってもっとも影響が大きいと考えられる時期とした。供用後は、 保全すべき種への影響を的確に把握できる時期とした。 ⑤ 予測結果 ア 影響予測の考え方 保全すべき動物種への影響予測の考え方は、図 10.9-1 に示すとおりである。 予測は、計画地における保全すべき動物種の生息環境の変化が本地域(台地・丘陵帯)に おける同種個体群の存続に与える影響について予測することとした。 調査地域における 保全すべき動物種の確認 (生息環境等) 事業計画 (造成計画・ビオトープ等注1)) 事業実施により想定される影響 (直接的・間接的な影響) 計画地における 重要な生息環境の変化 地域(台地・丘陵帯)の状況 (希少性) 保全すべき動物種の 地域(台地・丘陵帯)における 種の存続の可能性 注 1) ビオトープについての詳細は「第 11 章 環境保全のための措置 2 代償措置の実施計画」に示す。 図 10.9-1 保全すべき動物種についての影響予測の考え方 564 イ 事業実施により想定される影響 保全すべき動物種の生息状況と事業内容から想定される影響の種類は、表 10.9-14 に示す とおりである。 動物は一般的に植物に比べれば移動能力が高いが、繁殖場所などの重要な生息場所が造成 工事などにより直接改変されると生息個体数は減少する。また、周辺に移動し、移動した先 の個体群に影響を与えるおそれがある。 また、重要な生息場所が直接改変されない場合でも、生息地を構成する環境が二次的に改 変される場合、影響を受けるおそれがある。間接的な影響としては、移動経路の分断などが 考えられる。 表 10.9-14 保全すべき動物種について想定される影響の種類と時期 影響の 種類 直接的 な影響 想定される影響の内容 造成地・施設の存在によ る生息環境の消失・改変 建設機械の稼働による 騒音・振動 資材運搬等の車両の走 行による騒音・振動 造成等の工事による生 息環境の変化(水質) 造成等の工事による生 息環境の変化(水環境) 造成等の工事による生 息環境の変化(光環境) 間接的 な影響 造成地・施設の存在によ る生息環境の変化 (移動経路の分断) 造成地・施設の存在によ る生息環境の変化 (水質) 工事中 供用後 △ ○ △ - △ - × - × - × - △ ○ - × 備考 ・重要な生息環境の消失。改変は着工後から 徐々に発生し、供用後には恒常状態となる。 ・低騒音・低振動型の建設機械を使用し、騒音・ 振動を低減する。 ・計画地内の資材運搬等の車両の走行は徐行運 転を義務づけ騒音・振動を低減する。 ・工事中は、沈砂機能及び雨水調整機能を持っ た仮設調整池の設置等の土砂流出防止策を 講じる。 ・工事中は、既存水路に流れる水は暗渠排水を 通して下流に放流する。 ・工事中は、工事の時間を原則として 7 時から 19 時までに限定し、照明の使用は極力減らす と共に、照明は上方面、側面への照射を減ら す構造等とする。 ・緑地間の分断は、着工後から徐々に発生し、 供用後に恒常状態となる。 ・本事業に関係する運転者には夜間の運転時 に、動物への配慮を行うよう指導する。 ・工場用水は公共下水道に排水する。工業団地 内を流れた雨水等は、敷地内の防災調節池に 集め、その後、公共用水域に排水するが、保 全すべき種の生息環境として新たに創出す る区域には直接放流しない。 ・現況で既存水路に流れている水は、暗渠排水 を通じて敷地内の防災調節池に集める。 ・新たにビオトープを創出する。 造成地・施設の存在によ る生息環境の変化 - × (水環境) 造成地・施設の存在によ ・供用後の照明は上方面、側面への照射を減ら る生息環境の変化 - × す構造とする。 (光環境) 注 1) 表中の凡例 ○:影響が想定される △:影響は漸次的であるか、または最大となる影響は一時的であり影響は小さいと考えられる ×:一般的には想定されるが、本事業では影響は小さいと考えられる。 -:影響は想定されない。 565 ウ 計画地における生息環境の変化 事業を実施した場合に想定される計画地における植生等の改変率は、表 10.9-15 に示すと おりである。計画地全体で見ると、約 65%の植生が改変され、ヨシ群落・湿性低茎草地・ヤ ナギ林等の湿地環境については、約 98%以上が改変される。また、水路等の水辺環境につい ても、ほぼ 100%が改変される。 この結果、保全すべき動物種について、事業を実施した場合に想定される生息環境の変化 は、表 10.9-16 に示すとおりである。 表 10.9-15 計画地における植生等の改変率 植生区分 コナラ群落 総面積 (ha) 改変域 (ha) 非改変域 (ha) 改変率(%) 27.28 16.07 11.21 58.9% アカマツ群落 1.85 1.06 0.79 57.4% 広葉樹 マグワ群落 0.66 0.54 0.13 80.9% 二次林 ヤナギ類高木林 0.86 0.86 0.00 100.0% ヤナギ類低木林 0.37 0.37 0.00 100.0% スギ・ヒノキ植林 4.83 2.12 2.71 43.8% ヨシ群落 1.56 1.52 0.03 97.8% 二次 湿性低茎草地 1.12 1.10 0.02 98.5% 草地 アズマネザサ群落 0.49 0.49 0.00 100.0% 乾性草地 0.32 0.25 0.07 77.6% 作業路・構造物 0.36 0.34 0.02 94.4% 39.70 24.72 14.98 62.3% - - - 100.0% 落葉 植林 その他 総計 水路等 566 表 10.9-16 計画地における保全すべき動物種の生息環境の変化 直接的な影響 生息環境の変化 陸域 No 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 水域 種名 コテングコウモリ ニホンリス ヒメネズミ カヤネズミ キツネ テン アナグマ ミゾゴイ ハチクマ トビ オオタカ ハイタカ ノスリ サシバ ハヤブサ ヤマシギ フクロウ トラツグミ ヤブサメ キビタキ エナガ ヤマガラ ミヤマホオジロ ベニマシコ トウキョウサンショウウオ ヤマアカガエル モリアオガエル アオダイショウ ヒバカリ ホトケドジョウ ムカシヤンマ ヒメアカネ サラサヤンマ ヒナバッタ ヤマトフキバッタ ハルゼミ ヤマトガガンボモドキ ムナグロナガレトビケラ トワダオオカ ヘイケボタル シロスジカミキリ ツヤネクイハムシ ミヤマセセリ オオチャバネセセリ ウラゴマダラシジミ コムラサキ オオムラサキ メスグロヒョウモン クモガタヒョウモン ヤママユ コトラガ ヌカエビ マルタニシ コシボソヤンマ ヤマトクロスジヘビトンボ マツムラヒメアブ ゲンジボタル コバントビケラ属 ホソバトビケラ 合計 59種 生息環境面 積(ha) 残地面積 (ha) 改変率(%) 33.96 33.96 33.96 1.56 37.30 37.30 37.30 28.40 27.28 31.01 29.13 29.45 29.45 31.01 1.88 28.40 34.29 27.28 32.61 27.28 27.28 27.28 31.06 31.06 36.69 36.69 36.69 38.86 38.86 - 1.12 1.12 29.96 0.32 0.32 1.85 27.28 - 27.28 - 27.28 1.56 27.28 1.56 27.28 28.52 27.28 28.40 28.40 27.28 27.28 - - - - - - - - 14.72 14.72 14.72 0.03 14.93 14.93 14.93 11.23 11.21 12.11 12.00 12.07 12.07 12.11 0.11 11.23 14.79 11.21 13.93 11.21 11.21 11.21 11.45 11.45 14.11 14.11 14.11 14.97 14.97 - 0.02 0.02 11.26 0.07 0.07 0.79 11.21 - 11.21 - 11.21 0.03 11.21 0.03 11.21 11.21 11.21 11.23 11.23 11.21 11.21 - - - - - - - - 56.7% 56.7% 56.7% 97.8% 60.0% 60.0% 60.0% 60.5% 58.9% 61.0% 58.8% 59.0% 59.0% 61.0% 94.3% 60.5% 56.9% 58.9% 57.3% 58.9% 58.9% 58.9% 63.1% 63.1% 61.6% 61.6% 61.6% 61.5% 61.5% - 98.5% 98.5% 62.4% 77.6% 77.6% 57.4% 58.9% - 58.9% - 58.9% 97.8% 58.9% 97.8% 58.9% 60.7% 58.9% 60.5% 60.5% 58.9% 58.9% - - - - - - - - 水路等 改変率(%) 動造 経成 路工 の事 分に 断よ る 移 ● ● ● 100% 100% 100% 100% 100% ● 間接的な影響 る集 る械工 水水 騒・事 環域 音工中 境の ・事の の改 振車建 変変 動両設 化に に機 よ よ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 100% 100% 100% 100% 100% ● ● ● ● ● 100% ● 100% ● ● ● ● ● ● ● ● 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 注1) サワガニは、「台地・丘陵帯」では重要種に選定されていないため除外した。 注2) 水路等については、現段階の計画ではほぼ 100%改変される。 567 環夜 境間 の照 変明 化に よ る 光 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● エ 保全すべき動物種の地域(台地・丘陵帯)における個体群の存続可能性 事業の実施により、計画地内は 5 割以上の面積が改変され、特に水路及び湿地環境は、ほ ぼ全てが改変されるため、現存する動物の生息環境は総じて減少する。この結果、移動能力 が低い又は水域を重要な生息場所(生息・産卵等)に利用する爬虫類、両生類、昆虫類、魚 類などは、生息環境の消失が計画地内の個体群の消失や減少に直結する。また、鳥類や大型 哺乳類などの移動能力が高い種は、計画地内の生息環境が消失あるいは改変された場合、周 辺の類似環境へ移動し、そこで新たに餌等の資源の競争が始まり、地域個体群に影響を与え るおそれがある。 これらの保全すべき動物種の生息環境の変化が、地域(台地・丘陵帯)における保全すべ き動物種の個体群の存続可能性に与える影響について予測した。 影響予測における考え方は図 10.9-2 及び表 10.9-17 に、予測結果は表 10.9-18 に示すと おりである。また、予測の結果、代償措置が必要と判断された保全すべき動物種についての 代償措置の概要は、表 10.9-19 に示すとおりである。 (ア) フクロウ(絶滅危惧Ⅱ類(VU):台地・丘陵帯) フクロウは、計画地内で繁殖している可能性が高いが、主要な採餌環境は計画地やその周 辺の樹林・草地環境と、計画地の南側に広がる耕作地等と推定され、行動範囲も広いと考え られる。しかし、営巣環境である計画地内の樹洞が改変されるため、計画地内で繁殖してい る個体への影響は大きいと予測される。また、工事期間中については、一時的に計画地及び その周辺に生息しなくなる可能性もある。このため、採餌環境である樹林をできる限り残置 すると共に、フクロウが繁殖期に利用していた地域周辺で改変されない樹林地に 2~3 箇所、 巣箱を個設置し、生息環境の保全・代償に努める。 (イ) トウキョウサンショウウオ(絶滅危惧Ⅱ類(VU):台地・丘陵帯) トウキョウサンショウウオは、成体の生息環境であるコナラ群落等の樹林環境の改変割合 は 61.6%だが、産卵環境である水路や水溜まり、湿地環境等はほぼ全て改変されることか ら、地域における個体群への影響は大きいと予測される。 このため、成体の生息環境である樹林をできる限り残置すると共に、新たに創出するビオ トープにおいて、産卵環境となる水路や水溜まり等の湿地環境の保全・代償に努める。また、 工事期間中については環境整備センター周辺を含む計画地周辺において、同種が生息可能な 環境等に卵嚢等を移植し、個体の保全に努める。 (ウ) モリアオガエル(絶滅のおそれのある地域個体群(LP):台地・丘陵帯) モリアオガエルは、計画地内に産卵場所は確認されなかったが、産卵環境として利用可能 な水溜まりや、成体の生息環境である樹林環境等が改変されるため、地域における個体群へ の影響は大きいと予測される。 このため、成体の生息環境である樹林をできる限り残置すると共に、新たに創出するビオ トープにおいて、樹林や灌木等が隣接する水溜まり等の生息環境の保全・代償に努める。 568 (エ) ホトケドジョウ(絶滅危惧 IB 類(EN):台地・丘陵帯) ホトケドジョウは、計画地内の水路等を生息環境として利用し、周年生息していると考え られる。水路はほぼ全て改変されるため、地域における個体群への影響は大きいと考えられ る。 このため、工事期間中については環境整備センター周辺を含む計画地周辺において、同種 が生息可能な環境等に捕獲した個体を移植する。また、新たに創出するビオトープにおいて、 生息環境の保全・代償に努め、完成後の再移植についても検討する。 (オ) ツヤネクイハムシ(絶滅危惧 IB 類(EN):台地・丘陵帯) ツヤネクイハムシは、計画地内の湿地環境にあるスゲ科植物等を生息環境として利用し、 幼虫はスゲ科植物の根を食べていると推定されている。スゲ科植物等が生育する湿地環境等 はほぼ全て改変されるため、地域における個体群への影響は大きいと考えられる。 このため、生息環境となるスゲ科植物が生育可能な湿地環境を、新たに創出するビオトー プにおいて再現し、生息環境の保全・代償に努める。 (カ) ヌカエビ(絶滅危惧 IB 類(EN):台地・丘陵帯) ヌカエビは、計画地内の下流側の水路等の植物等が繁茂する水際を生息環境として利用し ていると考えられる。水路等はほぼ全て改変されるため、地域における個体群への影響は大 きいと考えられる。 このため、工事期間中については環境整備センター周辺を含む計画地周辺において、同種 が生息可能な環境等に捕獲した個体を移植する。また、新たに創出するビオトープにおいて、 生息環境の保全・代償に努め、完成後の再移植についても検討する。 (キ) ゲンジボタル(絶滅危惧Ⅱ類(VU):台地・丘陵帯) ゲンジボタルは、計画地内の下流側の水路でカワニナが生息し、土壁が残っている場所で 幼虫が確認されているが、成虫は確認されていない。ゲンジボタルが生息可能な土壁を伴う 水路はほぼ全て改変されるため、地域における個体群への影響は大きいと考えられる。 生息数が少ないことを勘案し、工事期間前もしくは工事期間中に幼虫が確認された場合に は、環境整備センター内に創出したホタルを対象としたビオトープに幼虫を移植する事を検 討する。 オ 環境の保全に関する配慮方針 表 10.9-18 において、代償措置は検討しないが、生息環境の保全に配慮が必要と考えられ る種を選定した。これらの種については、個別の種に対して保全対策は実施しないが、以下 のような配慮事項を検討している。 ・湿地と樹林地が隣接したビオトープの創出(水溜まり・水路等含む) 569 ・計画地周囲に巡らせる侵入防止用フェンスに小動物が通れる隙間等を設ける ・在来種(落葉広葉樹など)の造成緑地への植樹 (エノキ、イボタノキ、ヤナギ類等の重要な種の食樹の配置も実施) ・残置予定のコナラ群落等の保全 なお、ビオトープや残置森林については、保全すべき動物種への代償措置として検討して いる森林の残置やビオトープの創出等によって対応が可能と考えられる。 570 陸域又は水域に重要な 生息環境があり、その 消失率が80%以上 保 全 す べ き 種 の 生 息 状 況 の 確 認 埼玉県(台地・丘陵帯)に おける希少性が高い (EX、CR、EN、LP、VU) 地域(台地・丘陵帯)に おいて当該個体群に 与える影響は大きい 埼玉県(台地・丘陵帯)に おける希少性がやや高い (NT1・2、DD) 地域(台地・丘陵帯)に おいて当該個体群に 与える可能性がある 陸域又は水域に重要な 生息環境がない又は重 要な生息環境があって も、その消失率が80% 未満 代償措置の検討 配慮事項の検討 行動範囲が広く、計画 地の一部を生息環境と して利用している 地域(台地・丘陵帯)に おいて当該個体群に影響 を与える可能性は低い 通過・漂行・越冬など 一時的に利用している 予測結果 図 10.9-2 地域(台地・丘陵帯)における存続可能性に与える影響予測の考え方 表 10.9-17 保全すべき動物種への影響予測の考え方 計画地における重要な生 息環境の直接的な影響の 内容注 1) 陸域又は水域に重要な生 息環境がありその消失率 が 80%以上 地域(台地・丘陵帯) における希少性注 2) EX,CR,EN,LP,VU NT1・2,DD 地域(台地・丘陵帯)におけ る種の存続可能性への影 響 地域(台地・丘陵帯)におい て当該種個体群に与える 影響は大きい(×) 地域(台地・丘陵帯)におい て当該種個体群に影響を 与える可能性がある(△) 地域(台地・丘陵帯)におい て当該種個体群に影響を 与える可能性は低い(○) 代償措置 の方針注 3) 代償措置実 施後の影響 予測注 4) 代償措置 を検討 △ 配慮事項 を検討 ○ EX,CR,EN,VU, 陸域又は水域に重要な生 NT1・2,DD 息環境がないか又は重要 - ○ な生息環境があってもそ の消失率が 80%未満 行動範囲が広く、計画地の - ○ 一部を生息環境として利 用している 通過・漂行・越冬など一時 - ○ 的に利用している 注 1)「計画地における重要な生息環境の直接的な影響の内容」は、「埼玉県レッドデータブック 2008」(平成 20 年、埼玉県)における絶滅危惧 IA 類の考え方を参考とし、重要な生息地の状況や地域の利用状況などを踏 まえて記載した。 注 2) 希少性は、「埼玉県レッドデータブック 2008」 (平成 20 年、埼玉県)による。 EX:絶滅、CR:絶滅危惧 IA 類、EN:絶滅危惧 IB 類、VU:絶滅危惧 II 類、NT1・2:準絶滅危惧、DD:情報 不足、LP:絶滅のおそれのある地域個体群 注 3) 代償措置の方針 -:保全すべき動物種の観点からは代償措置の必要性は低いと考えるが、生態系保全の観点から可能な範 囲で配慮事項の検討等を行う。 注 4) 代償措置等実施後の影響予測 ○:事業による影響は小さいと予測される。 △:事業による影響は大きいと予測されるが、類似の生息環境を創出することにより、事業による影響を 低減できる。 571 表 10.9-18(1) 保全すべき動物種への影響予測結果 計画地における重要 な生息環境の直接的 な影響の内容注 1) 地域(台地・丘陵帯) における希少性注 2) EX、CR、EN、LP、VU 該当する種 代償措置実 施前の影響 注 3) 代償措置の 方針 代償措置 実施後の 影響予測 注 4) 樹林の残置 フクロウ × トウキョウサンショウウオ × 湿地と樹林の △ モリアオガエル × 保全・創出 △ ホトケドジョウ × 水路の創出 △ ツヤネクイハムシ × 湿地の創出 △ ヌカエビ × 水路の創出 △ ゲンジボタル × 水路への移植 △ カヤネズミ △ ○ ヤマアカガエル △ ○ ムカシヤンマ △ ○ 巣箱設置 △ 重要な生息環境の ヒメアカネ △ ○ 消失率が 80%以上 サラサヤンマ △ ○ NT、DD 重要な生息環境が ないか又は重要な EX、CR、EN、LP、VU 生息環境があって NT、DD ムナグロナガレトビケラ △ ヘイケボタル △ 配慮事項の ○ ○ コムラサキ △ 検討 ○ オオチャバネセセリ △ ○ マルタニシ △ ○ コシボソヤンマ △ ○ マツムラヒメアブ △ ○ コバントビケラ属 △ ○ ホソバトビケラ △ ○ コテングコウモリ ○ ○ ニホンリス ○ ○ ヒメネズミ ○ ○ ヤブサメ ○ ○ キビタキ ○ ○ エナガ ○ ○ ヤマガラ ○ ○ アオダイショウ ○ ヒバカリ ○ ○ もその消失率が ヒナバッタ ○ ○ 80%未満 ヤマトフキバッタ ○ ○ ハルゼミ ○ ○ ヤマトガガンボモドキ ○ ○ トワダオオカ ○ ○ シロスジカミキリ ○ ○ ウラゴマダラシジミ ○ ○ オオムラサキ ○ ○ ヤママユ ○ ○ コトラガ ○ ○ 572 - ○ 表 10.9-18(2) 保全すべき動物種への影響予測結果 計画地における重要 な生息環境の直接的 な影響の内容注 1) 地域(台地・丘陵帯) における希少性注 2) 行動範囲が広く、 該当する種 代償措置の 実施前の影 響注 3) 代償措置の 方針 代償措置 実施後の 影響予測 注 4) キツネ ○ ○ テン ○ ○ 計画地の一部を生息 EX、CR、EN、LP、VU アナグマ ○ ○ 環境として利用して NT、DD ハチクマ ○ いる 通過・漂行・越冬 など一時的に利用 している EX、CR、EN、LP、VU NT、DD - ○ トビ ○ ○ オオタカ ○ ○ サシバ ○ ○ ミゾゴイ ○ ○ ハイタカ ○ ○ ノスリ ○ ○ ハヤブサ ○ ○ ヤマシギ ○ ○ トラツグミ ○ ミヤマホオジロ ○ ○ ベニマシコ ○ ○ メスグロヒョウモン ○ ○ クモガタヒョウモン ○ ○ - ○ 注 1)「計画地における重要な生息環境の直接的な影響の内容」は、「埼玉県レッドデータブック 2008」(平成 20 年、埼玉県)における絶滅危惧 IA 類の考え方を参考とし、重要な生息地の状況や地域の利用状況などを踏 まえて記載した。 注 2) 希少性は、「埼玉県レッドデータブック 2008」(平成 20 年、埼玉県)による。 EX:絶滅、CR:絶滅危惧 IA 類、EN:絶滅危惧 IB 類、VU:絶滅危惧 II 類、NT1・2:準絶滅危惧、DD:情報 不足、LP:絶滅のおそれのある地域個体群 注 3) 代償措置実施前の影響 ×:地域において当該種個体群への影響は大きい △:地域において当該種個体群への影響を与える可能性がある。 ○:地域において当該種個体群への影響を与える可能性は低い。 注 4) 代償措置の方針 -:保全すべき動物種の観点からは代償措置及び配慮事項の検討の必要性は低いと考えるが、生態系保全 の観点から可能な範囲で配慮事項の検討等を行う。 注 5) 代償措置等実施後の影響予測 ○:事業による影響は小さいと予測される。 △:事業による影響は大きいと予測されるが、類似の生息環境を創出することにより、事業による影響を 低減できる。 573 表 10.9-19 保全すべき動物種への代償措置の概要 保全対象種 フクロウ トウキョウサンショウ ウオ 影響の種類 保全方針 造成地・施設の存在に ・営巣環境として巣箱を改変区域外に設置し、残置森林 よる営巣環境の消失 ・新たに創出するビオトープにおいて、利用可能な湿地 よる生息・産卵環境の 環境を整備し、落葉広葉樹等を可能な限り残置して生 消失 息環境を保全する。 造成地・施設の存在に モリアオガエル における生息環境を保全する。 造成地・施設の存在に ・新たに創出するビオトープにおいて、利用可能な樹林 よる生息・産卵環境の に近い水辺環境を整備する。 消失 造成地・施設の存在に ホトケドジョウ ・工事期間中は計画地周辺の生息可能な場所に移植し、 よる生息環境の消失 新たに創出するビオトープにおいて、生息環境を整備 する。 ツヤネクイハムシ 造成地・施設の存在に よる生息環境の消失 造成地・施設の存在に ヌカエビ ・新たに創出するビオトープにおいて、生息場所として 利用可能な湿地環境を整備する。 ・工事期間中は計画地周辺の生息可能な場所に移植し、 よる生息環境の消失 新たに創出するビオトープにおいて、生息環境を整備 する。 造成地・施設の存在に ゲンジボタル ・工事期間中に幼虫が確認された場合には、環境整備セ よる生息環境の消失 ンター内に創出済みのホタル用ビオトープに移植す る。 574 (3) 評価結果 ① 評価方法 ア 回避・低減の観点 保全すべき動物種への影響が事業者により実行可能な範囲でできる限り回避され、または 低減されているかどうかを明らかにした。 イ 基準、目標との整合の観点 表 10.9-20 に示す整合性を図るべき基準等との整合が取れているかで評価した。 表 10.9-20 動物に係る整合を図るべき基準等 項目 整合を図るべき基準等 「彩の国豊かな自然環境づ 第7章 くり計画」 (平成 11 年、埼玉 表 7-1 県) 計画の推進 目標を実現するための 3 つの方針と想定される各主体の役割 「生物多様性の確保」における「事業者の役割」 ■環境影響緩和手法(ミティゲーション)などによる保全対策の推進 ■在来種を用いた緑化の推進 「埼玉県オオタカ等保護指 Ⅲ.本県におけるオオタカ保護対策の基本方針 針」(平成 11 年、埼玉県) 3.生息環境の保全・復元・創出 (4)各種開発行為に際しての配慮 土地利用及び各種開発行為との調整を図るととともに、ミティゲ ーション(生態学的補償制度)によるオオタカ生息地への影響に対 する回避。低減・代償策の導入と活用に関して検討していく。 Ⅴ.開発行為に際してのオオタカの保護のための調査と保護法策 1. 開発行為等に際しての保護方針検討のための調査 2. 開発行為等に際しての保護方策の検討 ② ア 評価結果 回避・低減の観点 保全すべき種のうち、計画地内で繁殖していると予測されるフクロウについては、工事期 間中については、一時的に計画地及びその周辺に生息しなくなる可能性があるものの、供用 後も生息に必要な環境は広く残存すると考えられる。このため、巣箱の設置による営巣環境 の提供と残置森林等の検討を行い、事業者により実行可能な範囲で残存を図るよう検討した。 この結果、フクロウの営巣環境の保全を図ることで、影響は低減できると判断した。 トウキョウサンショウウオとモリアオガエルについては、成体の生息環境である樹林の残 置、新たなビオトープの創出等について検討した。この結果、両種の生息環境の保全を図る ことで影響は低減できると判断した。特にトウキョウサンショウウオについては、工事前に 卵嚢等を採取して周辺の生息可能な場所に移植し、個体の保全を図る事についても検討して いる。 水路等を生息環境としているホトケドジョウとヌカエビは、生息可能な場所に移植して個 575 体の保全を行うと共に、新たにビオトープ等を創出すること、完成後に再移植することによ り、生息環境の保全を図ることで影響は軽減できると判断した。 ツヤネクイハムシについては、生息環境であるスゲ科植物の生育可能な湿地環境を新たに 創出するビオトープに再現し、生息環境の保全を図ることで影響は軽減できると判断した。 ゲンジボタルについては、生息数が少ないことも勘案して、工事期間中に幼虫が確認され た場合には環境整備センター内に整備したホタル用のビオトープに幼虫を移植することで、 地域における個体群の保全は可能であると判断した。 またその他の保全すべき動物種についても、樹林環境の残置、ビオトープにおける樹林地 と湿地が一体となった環境の創出といった、谷戸の自然環境の保全あるいは創出を行うこと としている。 以上の環境保全措置の実施により、地域における保全すべき動物種の個体群への影響は低 減されると予測され、事業による影響は実行可能な範囲で回避・低減されていると考えられ る。 イ 基準・目標等との整合の観点 「彩の国豊かな自然環境づくり計画」(平成 11 年、埼玉県)に示す「生物多様性の確保」 に係る希少野生生物の保護のため、事業者が行うべき役割のうち整合を図るべき方針として は、「環境影響緩和手法(ミティゲーション)などによる保護対策の推進」が挙げられる。 森林の残置・ビオトープの創出による環境の保全を実施し、地域における保全すべき動物 種の個体群維持の観点から、環境影響を緩和する対策を行う予定であり、目標等との整合は 図られていると考えられる。 また、 「埼玉県オオタカ等保護指針」 (平成 11 年、埼玉県)との整合としては、現地調査を 実施し、調査地域周辺でオオタカの営巣場所を確認し、それらが計画地から離れていること、 計画地内に営巣場所がないことを確認しており、整合を図るべき基準等との整合は図られて いると考えられる。 576