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Analysis of collective decision based on reward structure and
報酬構造と相互作用トポロジーに基づく集団的決定の分析
Analysis of collective decision based on reward structure and
interaction topology
真隅 暁,橋本 敬
MASUMI Akira and HASHIMOTO Takashi
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科
School of Knowledge Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology
キーワード: 集団的決定,報酬構造,相互作用トポロジー
集団的決定は,人間や動物の集団が,集団として環境に適応し存続するために,集団として意思決定を行う
現象である.例えば,人間社会における選挙や合意形成などの社会的決定や,社会性昆虫に見られる採餌行動
などの集団挙動があり [Conradt and List, 2009],おおよそ集団を形成して生存している動物 (人間を含む) の
間に広く観察される現象である.
人間・動物集団における集団的決定は,社会科学および自然科学における様々な対象で観察されることから,
現象理解のためのより一般的な分析枠組みが必要とされている.これに対し Conradt and List は,集団的決
定を aggregated/consensus decision (以降,A./C.) と interactive/combined decision (以降,I./C.) の二種
類に分類し,各々の現象群を分析するために必要な概念や論点を整理・提示した [Conradt and List, 2009].
A./C. は,集団的決定において,多数の主体の決定が集団としての単一の決定へと集約される過程を重視し,
その際の集約の機構に注目する.例えば,選挙を通じた社会的選択において,選挙制度のあり方などが問題と
される.一方 I./C. は,各主体のミクロな意思決定のあり方を重視し,それぞれが具体的にどのような判断の
もとで意思決定を行ったのか,といったことが問われる.例えば,市場メカニズムを通じた最適価格の決定に
おける,各主体の行動戦略などが問題とされる.
上記の分類は有益だが,一方で,(1) 対象によっては,決定主体であるところの「集団」(のメンバー) が自
明でないため,
「集団としての決定」を明確に定義することが困難な場合がある (例えば,上記の市場の例が当
てはまる),(2) 分析者の興味関心によって同じ現象がどちら側にも分類され得る,という難点があり,改善の
余地がある.また,集団的決定は,そもそも集団内の各主体のミクロな意思決定が集積した結果として生じる
マクロな事象であるから,I./C. と A./C. の両者の間を連続的に考察できるような分析枠組みが必要である.
実際,I./C. と A./C. の因果的な関連は [Conradt and List, 2009] でも言及されている.
本研究では,集団的決定を定式化し分析するための枠組み構築へ向けて,報酬構造と主体間の相互作用トポ
ロジーという視点を提示する.報酬構造は,ある集団的決定に伴って生じる報酬 (利得) を,集団内のメンバー
がどの程度共有しているかを現すもので,メンバー間の利害の一致の程度を現している.報酬構造という切り
口を導入することの利点は主に二つある.それは,(1)「報酬を共有する主体の集まり」として「集団」を規
定することができるため,
「集団としての決定」を明示的に定義し得ること,(2) 報酬の共有範囲を細かく操作
することができるため,グループ間競合などの,集約と競合が共存した状況を記述・定式化できること,であ
る.他方で,相互作用トポロジーとは,主体間の情報伝達・コミュニケーションのネットワーク構造を現すも
ので,主体が決定を行う際の情報源を現している.トポロジーを考慮することで,主体間の相互作用のあり方
と集団的な決定 (帰結) との関連を分析することができる.
発表では,現実の多くの状況が,集団的な決定と種々の競合関係が入り混じった状況であることを議論し,
これを本研究の視点で分析できる可能性について議論する予定である.
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