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ソバ春まき栽培マニュアル

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ソバ春まき栽培マニュアル
ソバ春まき栽培マニュアル
平成26年版
平成26年5月
(独)農研機構・九州沖縄農業研究センター
ソバは蕎麦麺として人気が高い食材です。ルチンなど機能性成分を豊富に含
む栄養豊かな食材であり、イネ科の穀物にはない成分を有しています。
ソバは北海道から九州まで広く栽培されています。九州地域では、夏の終わり
から初秋にかけてソバを播種し、晩秋にかけて収穫されています。
九州では温暖な気候を活かし、春に播種して初夏に収穫する新しい栽培型「ソ
バの春まき栽培」が可能です。春まき栽培は夏の需要期に新蕎麦が出荷できる
大きな利点があります。そして、九州沖縄農業研究センターでは春まき用品種「春
のいぶき」を育成しました。
しかし、生育期間が晩霜後から梅雨初期と短期間であるため、適期の播種と収
穫が必要です。そこで、ソバを良質安定生産するために、栽培に関わる関係者・
生産者向けに「春まきソバ栽培マニュアル」を作成しました。
平成26年5月
目
次
1.ソバの基礎知識
P
1~2
P
3~4
P
5
P
6
(1)生育の経過
P
7
(2)播種と播種量
P
7
(3)播種期
P
7
(4)播種作業
P
9
(5)施肥
P
10
(6)開花までの管理
P
11
(7)開花期
P
12
(8)成熟期
P
13
(9)成熟不良の発生
P
13
(10)収穫
P
13
(11)収穫作業
P
15
(12)乾燥作業
P
15
(1)ソバとは
(2)ソバの伝播
(3)ソバの種子
2.ソバ春まき栽培
(1)日本のソバ
(2)ソバの栽培時期
(3)ソバの品種
(4)春まき栽培とは
3.春まき栽培の有利性
(1)蕎麦は夏
(2)九州は暖かい
4.春まき栽培品種「春のいぶき」
5.栽培管理の基本技術
- Ⅰ -
1.ソバの基礎知識
(1)ソバとは
ソバはタデ科に属する作物で、非イネ科の数少ない穀類。作物として栽培され
ているのは普通ソバ(Fagopyrum esculentum Moench)とダッタンソバ(F. tartaricu
m Gaertn)の2種である。日本では普通ソバが広く栽培されており、単にソバとい
えば普通ソバのことをさす。
ソバは他殖性植物に属する。花には2つの形があり、長いめしべと短いおしべ
を持つ個体(長花柱花、Pin type)、短いめしべと長いおしべを持つ個体(短花柱
花、Thrum type)が1:1でソバ畑に混在している。
長花柱花
短花柱花
受精するためには長花柱花の花粉が短花柱の柱頭につくか、その反対が必要
になる。このため、ハチや蝶が開花期間に飛来しないと種子が実らない。
豆知識
ソバの自殖性近縁種が中国で発見された。ソバの花はめしべと
おしべの長さが等しい形(等花柱花)。現在、この自殖性をソバ品種
に導入する研究が進められている。しかし、生育は貧弱で自殖弱
勢の打破が課題になっている。
- 1 -
(2)ソバの伝播
ソバの栽培発祥地は、DNAマーカーなどによる分析や野生祖先種の発見など
からサルウィン川、メコン川、長江の上流域で3つの大河が平行して流れる三江
地域 と推 定さ れている。栽 培化され た
ソバは朝鮮半島を経て日本へ渡来され
たとさ れている。縄文遺 跡からの出 土
記録があり、日本では古くから食料とし
て利用されてきた。
(3)そばの種子
殻(果皮)
種皮
胚芽
胚乳
種子の横断面
ソバ種子は胚乳部分が50%、胚芽15%、種皮10%程度で、殻が20%を占め
る。丸抜き粒(殻を除いた粒)では胚芽が20%で多い。胚乳はほとんどデンプンが
占めているが、種皮や胚芽にはタンパク質が多く含まれている。ソバは種皮や胚
芽も一緒に製粉するので、ソバ粉はデンプンだけでなく、タンパク質や繊維に富ん
だ成分組成になっている。
ソバ粉の成分(g/100g当たり)
水分 蛋白 脂質 炭水化物
糖質 繊維
玄そば 14.5
10.8
2.8
61.0
9.0
全層粉 13.5
12.1
3.1
68.5
1.0
精白米 15.5
6.8
1.3
75.5
0.3
四訂食品成分表から作成
無機質(mg)
備考
Ca P
Fe Na K
42 330
3.1 2 470
玄穀
17 400
2.8 2 410
歩留り65-70%
6 140
0.5 2 110
- 2 -
2.ソバ春まき栽培
(1)日本のソバ
ソバは亜寒帯から温帯地域で栽培されている。日本では北海道から九州まで
栽培されている。大産地は北海道で20000ヘクタールを超えている。九州では約3
000ヘクタール、おもに南九州で栽培されている。近年全国の栽培面積は増加傾
向にある。
70000
60000
表 全国のソバ栽培面積(平成24年)
地域
作付面積ha 収量kg/10a
全国
61000
73
北海道
21700
91
山形県
4960
48
福井県
4050
53
長野県
3970
85
九州
2960
61
ソバ作付面積の推移
面積(ha)
50000
40000
全国
30000
九州
20000
10000
2012
2007
2002
1997
1992
1987
0
作付年
(2)ソバの栽培時期
栽培時期は適期に収穫できるように播種期が決められている。北海道では、ソ
バは6月上旬から中旬に播種されて8月下旬から9月上旬に収穫、関東地方では8
月中旬に播種されて10月中下旬に収穫される。産地が南になると播種時期は遅く
なる。九州では8月中旬から9月中旬播種、10月下旬から11月下旬収穫で、もっと
も収穫が遅い。
ソバの 栽培時 期
月
地域及び品種
4
5
6
7
8
9
10
11
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
北 海道
キタワセソバ
青 森県
階上早生
山 形県
最上早生
茨 城県
常陸秋そば
長 野県
しなの夏そば
信濃1号
福 井県
在来種
鹿 児島
鹿屋在来
春まき
春のいぶき
凡例:
3
播種期
収穫期
農水省HPから作成
- 3 -
(3)ソバの品種
日本の品種は各地の播種時期などの栽培環境に適応して生態型が分化して
いる。これらの在来品種は連続して分布しているため、生態型は特性をはっきりと
分けることができない。
*夏型
長日高温下で成熟する品種。生育期間は短い。北海道や北東北で栽培。
キタワセソバ、牡丹そば、しなの夏そばなど。
*秋型
短日条件下で成熟する品種。生育期間は長い。西日本で栽培。
鹿屋在来などの九州の在来品種
*中間型
2つの生態型の中間的な特性を持つ品種。
常陸秋そばなど
(4)春まき栽培とは
晩霜の危険性がなくなる3月中旬から4月上旬に播種して、梅雨前期の6月中下
旬に収穫する栽培を春まき栽培という。春まき栽培は生育期間が60日程度と短
く、日長が長くなる時期に栽培するので夏型あるいは夏型に近い中間型品種を用
いる。「春のいぶき」は春まき栽培用品種である。
ソバ春まき栽培は生育期間が短いので、様々な作物の前後作として導入でき
る。九州では6月下旬に移植する普通期水稲の前作として、沖縄ではサトウキビ
の後作として2月3月まきソバが栽培可能である。
豆知識
ソバ栽培では栽培型を夏そば、秋そばという。さらに、ソバ品種の生態型は夏型、秋型とい
うので、栽培型と混同しやすい。九州では春に栽培する作型、さらに沖縄では晩秋から春に栽
培する作型が始まり、栽培型が多様化している。そこで、春まき栽培や夏まき栽培のように、
播種時期で栽培型を区別することにする。
- 4 -
3.春まき栽培の有利性
(1)蕎麦は夏
蕎麦の最大の需要期は大晦日
そば粉の消費量推移
であるが、需要は5月頃から上昇
4000
3500
して夏季にもう一つのピークを迎
3000
える。蕎麦は三たて(挽きたて、打
るための条件になる。蕎麦は香り
や味が重視されるが、夏季の需
要期に食する蕎麦は前年産の種
そば粉(トン)
ちたて、茹でたて)が美味しく食す
2500
2000
1500
1000
500
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月
消費月
子を加工している。夏季の需要期
に香りの高い新鮮な蕎麦が供給できるようになれば、消費者は盛夏に新蕎麦が
賞味でき、蕎麦屋は新蕎麦を盛夏に扱うことができる。
(2)九州は暖かい
ソバは降霜により枯死する。九州の気象は温暖なために早くから晩霜の危険
性がなくなる。鹿児島市では晩霜の平均日が3月7日であり、晩霜限界は4月1日
である。鹿児島県では3月中旬にソバ播種ができるようになり、熊本県でも4月上
旬には播種が可能になる。すなわち、生育期間の短い品種を用いると、 3月下旬
から4月に播種して6月上中旬に収穫する新しい作型ソバ春まき栽培が成立する。
春まき栽培は夏季に新蕎麦が出荷できる。こ
れは、日本一早い出荷となり、競合する産地
もなく、有利な市場を形成することが可能にな
る。
表 南九州の晩霜限界
地域
晩霜平均 晩霜限界
大分市
3月23日
4月13日
熊本市
4月 3日
4月13日
宮崎市
3月21日
4月10日
鹿児島市 3月 7日
4月 1日
1974~1993年データから作成
既存の秋まき栽培と組み合わせてソバが年2作栽培できるので、ソバ作期の多様
化による気象災害リスクの分散、機械・施設の稼働効率が向上する。
- 5 -
4.春まき栽培品種「春のいぶき」
春まき栽培では晩霜から梅雨前期までの短い生育期間の品種が用いられる。
日長条件が長くなる時期なので、キタワセソバなどの夏型品種が適する。しかし、
北日本や長野の品種は成熟期の降雨で容易に穂発芽しやすい。
春のいぶきは階上早生を親にして、穂発芽耐性を改善して育成されている。
キタワセソバより成熟がわずかに遅いが、穂発芽は少ない。春のいぶきは霜の
危険性がなくなった時期から4月20日まで播種できる。
表
春のいぶきの特性比較
特性
春のいぶき キタワセソバ 階上早生
開花期
5月15日
5月14日
5月13日
成熟期
6月14日
6月12日
6月13日
草丈cm
73
65
69
子実重kg/a
22.9
18.7
21.1
穂発芽率%
7.0
25.0
29.5
熊本県合志市4月13日播種、5年間平均
表 播種期と収穫期
播種期
出芽揃
4月2日
4月11日
4月9日
4月17日
4月13日
4月19日
熊本県合志市
開花期
5月7日
5月12日
5月16日
蕎麦麺の食味評価
品種
麺色
春のいぶき
16.9
キタワセソバ(前年産)
14.0
熊本県合志市
黒化始
5月29日
6月2日
6月6日
成熟期
6月9日
6月13日
6月17日
ソバは収穫時期の降雨で発芽しやすい
表
香り
16.4
14.0
味
16.4
14.0
麺の食味は良質である。前年産キタワセソ
バより香り高く、緑色の麺である。
緑色が美しい
- 6 -
5.栽培管理の基本技術
(1)生育の経過
春まき栽培では播種期が低温条件になるので、初期生育は緩慢である。開花
始め(始めて開花を見た日)頃から草高、乾物重の増加が著しくなる。草高は開
花盛期(主茎最先端の花房の開花を認めた日)を過ぎるとほとんど伸びなくなる。
一方、乾物重は収穫期まで増加が続く。
120
7
草高の推移
60
N0.3kg/a
40
乾物重g
5
80
草高cm
乾物重の推移
6
100
N0.6kg/a
20
4
3
N0.3kg/a
2
N0.6kg/a
1
0
0
4/23 4/30
5/7
5/14 5/21 5/28
6/4
4/23 4/30
6/11 6/18
5/7
5/14 5/21 5/28
6/4
6/11 6/18
測定日
播種平成25年4月10日
測定日
播種平成25年4月10日 開花期5月16日
(2)播種と播種量
ソバは他殖性なので他の品種が交雑したり、栽培環境によって品種特性が変
わりやすい。播種用種子は3~4年で更新する。
播種量は低温時に出芽率が低下するので秋まき栽培より多めに用意する。10
アールあたり5~8キロ必要である。
(3)播種期
春まき栽培では播種期の決定が
重要である。播種期が早すぎると霜
害で枯死する。各地の晩霜以降に出
芽するように設定する。
霜は、出芽前では心配ないが出芽
後ではソバが枯死する。成長点だけ
降霜で葉に白い斑点
が枯死して、生育しないこともある。
- 7 -
霜害を避けるため、晩霜危険日から7~10日前に播種する。著しい霜害に遭った
ときは、播種晩限(4月20日)前であれば再播種する。
豆知識
地球温暖化のため、九州では春の気温が年々上昇している。
地球温暖化は気温が上昇するだけでなく、気候変動も大きくなっ
ている。突然霜が降ることがある。そこで、霜害を軽減するため耐
霜性品種育成に着手している。写真は耐霜性の選抜試験、霜で
枯死した苗(左)と健全な苗(右)。
出芽までの日数(d)は気
10
温により影響される。気温
9
が20度を超えると4日で出
芽 す る 。低 温 では 出 芽 ま で
7~10日を要する。
8
7
出 6
芽 5
日
4
数
3
2
1
0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
20.0
22.0
24.0
26.0
28.0
30.0
期間平均気温
右図は出芽までの日数を逆
数にした値(1/d)と期間平均気
温との関係を示した。
1/dは播種から出芽までの期間
平均の発育速度である。
1/d=0.01636×(期間平均気温)-0.08303、ただし、20.05度以上は1/d=0.25一定
この式から、出芽に要する有効積算気温は61.1度(基準温度5.1)。
- 8 -
播種晩限は4月20日。
播種が晩限を過ぎると開花はするが成熟が不揃いになるので減収する。
豆知識
播種~出芽までの日数の算出方法は、例えば播種後第1日目平均気温15.5度では有効気
温10.4(気温から基準温度5.1を引く)、第2日目18.5度では有効気温13.4、積算気温は33.8(=1
0.4+13.4)、次の日24度では20.1度以上なので有効気温15.1で一定、次々に有効気温をたし
て、積算気温61.1度を超えた日が出芽日。
(4)播種作業
ソバは湿害にきわめて弱い。とくに、播種直後に冠水すると出芽不良になる。
生育初期に冠水すると枯死したり、生育不良の状態で成熟期に至る。
水はけの悪い圃場は使用しない。額縁排水溝の設置、サブソイラー施工により
排水性を改善する。
播種直後の冠水で出芽不良
地下水位の高い圃場はソバ栽培不適地
①土づくり
たい肥600kg/10a施用。リン酸の肥効がよくなる。
pH6.0になるように苦土石灰を散布。
- 9 -
②耕起
耕起後、降雨にあうと土壌がたっぷり吸水した状態になり、しばらく播種できなく
なる。耕起と続く播種作業は1日で行う。
アップカットロータリによる同時耕起・
播種・施肥作業機は一工程で作業が完
了し、砕度性もよい。
③播種
播種量は秋まき栽培より多め。
苗立ち数は100本/㎡が目標。
播種深度は2~3cm。浅すぎると乾燥時
に出芽が遅れて不揃いになる。
1工程:耕起->砕土->播種・施肥
畝立ても同時
(5)施肥
12
春まき栽培では生育期間が
窒素施用量は10アールあた
り 成 分 量 で 6kgを 基 準 と す る 。 4
10
吸収窒素量g/㎡
短いので、全量基肥が基本。
吸収窒素量の推移
月中旬以降は気温が上昇する
ので窒素を減肥する。リン酸と
8
6
N0.3kg/a
4
N0.6kg/a
2
0
4/23 4/30
5/7
5/14 5/21 5/28
6/4
6/11 6/18
測定日
播種平成25年4月10日
加里は窒素と同量以上施用す
る。
野菜作後では残効を考慮して施肥量を決める。
窒素施肥量 子実重 全乾重 窒素吸収量kg/a
kg/ a
kg/a
種子
葉
茎
0 .3 kg/ a
2 4.0
5 0.8
0.5 3 0 .13 0 .1 1
0 .6 kg/ a
2 7.2
5 8.7
0.6 6 0 .18 0 .1 4
計
0.80
1.00
ソバの窒素吸収量は意外と多くて1.0kg/a程度、20kg/a以上の多収では種子の
窒素吸収量だけで0.5~0.6kg/a。収穫種子は持ち出されるので、多収だったとき
は次のソバ作に充分な施肥を行う。
- 10 -
リン酸肥料はソバの生育に大きく影響する。写真左は、左側ソバがリン酸だけ
無施肥、右側が3要素施用。リン酸が欠乏しただけで初期から生育が悪い。写真
右はリン酸無施用の成熟期頃、黒い成熟した種子がある上側に花が咲いている。
生育が悪いだけでなく、成熟が不揃いで収穫期の判定が難しい。
収量と収量関連形質
試験区
穀実重
g/㎡
無肥料
151
3要素+苦土
245
3要素
232
窒素+カリ+苦土
148
窒素+カリ
149
分散分析(F検定) 10%有意
千粒重
g
30.2
30.5
30.1
30.5
31.5
無し
草丈 主茎節数
cm
70
7.4
86
7.7
82
7.5
65
7.1
67
7.3
5%有意
無し
分枝数
花房数
2.8
3.1
2.9
2.9
2.8
無し
8.8
11.5
10.5
8
7.9
5%有意
茎径
mm
4.5
5.9
5.4
4.3
4.3
5%有意
(6)開花までの管理
①雑草防除
登録除草剤はナブ乳剤だけである。イネ科雑草やイネ科牧草が多発したときに
使用する。
除草剤
適応雑草
ナブ乳剤 一年生イネ科雑草
使用量
処理法
使用時期
1 5 0 ~ 2 0 0 茎葉散布 3~5葉期
ml/10a
回数
散布液量
1回
100~150リッ
トル/10a
収穫45日
前まで
登録薬剤が少ないので、中耕や作付け回避などの耕種的防除で対応する。出
- 11 -
芽苗立ちが順調なときは雑草が多発しないが、
湿害などで出芽不良になるとタデなどが繁茂す
る。ソバの連作圃場では雑草が多くなる。雑草
が多くなった圃場はソバ以外の作物栽培にかえ
る。
タデ
耕作放棄地に春まきソバを導入すると雑草害が著しく、収穫ができない。耕作
放棄地に春まき栽培する場合は、条播して生育初期に中耕して雑草の発生を抑
える。耕作放棄地には雑草の発生の少ない秋まきソバの方が導入しやすい。
②病害虫防除
登録薬剤は立枯れ病とハスモンヨトウの薬剤だけである。ソバは訪虫により受
粉するので、開花期間は薬剤散布をできるだけ避ける。
対象
適応雑草
使用時期
回数
病害虫
立枯れ病
リゾレックス粉剤
播種前
1回
ロムダンフロアブル 収穫21日前まで 2回以内
収穫21日前まで 2回以内
希釈倍数
散布液量
使用量
(L/10a)
20kg/a
2000倍
ハスモン
ロムダン粉剤DL
ヨトウ
クオークフロアブル
収穫前日まで
400倍
ゼンターリ顆粒水和剤
収穫前日まで
2000倍
150~300
4kg/10a
150~300
(7)開花期
出芽揃から開花期(全個体の40~50%が開花を始めた日)までの期間平均気
温(出芽から開花までの平均気温)との関係を見ると、直線の相関(r=-0.90)が認
められる。気温が高いと開花までの日数が短い。
開花までの予想式
開花まで日数=-0.816×期間平均気温+39.218
出芽からの例年の平均気温を使って計算すると、開花期が予想できる。
- 12 -
出芽から開花までの日数と気温
(8)成熟期
35
開 花始 めか ら8日 程度 で開 花盛 期
先端の花房が開花した日)に至る。開
花盛期後は新たな花房の分化がなく、
開花までの日数
(全個体の40~50%の株で主茎の最
30
25
20
15
10
5
0
草丈の伸長が停止して結実に至る。
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
期間平均気温℃
開花期から成熟期(種子の黒化率7
割)までの期間平均気温との関係を見ると、相関が認められない。
測定範囲内(18.5~22.5度)では、開花期から30日で成熟期に至る。
(9)成熟不良の発生
ソバ春まき栽培が各地で始まってから、不稔に似た現象が観察されている。生
育は良好で開花も多いのに結実粒が少ない症状である。開花前の低温が考えら
れるが、特定されていない。他に、干ば
開花から成熟までの日数と平均気温
つ、養 分不 足 (窒素 や リ ン酸 など)、少
40
ない訪虫も考えられる。
成熟までの日数
35
30
25
20
15
10
18
19
20
21
期間平均気温℃
(10)収穫
収穫時期は種子の黒化率を見て判
断する。黒化率7~8割を成熟期として
主茎先端の花房
いる。黒化率とは、熟して果皮が黒くな
った種子の割合をいう。圃場全体の黒
化率は主茎先端の集合花房の種子の
黒化率と同じである。株によって黒化率
にばらつきがあるので10株程度で算出
する。
- 13 -
22
23
黒化率は気温が高いと早く進展する。6月の高温期に
なると、黒化始め(初めて黒色の種子を認めた日)から1
0日程度で黒化率8割に達する。種子粒は黒化始めから
増大して黒化率8割程度で最大になる(下図)。9割を過
ぎると脱粒や穂発芽の発生がおこりやすい。
100
28
90
80
26
60
24
しなの夏そば
50
春のいぶき
40
千粒重g
黒 化率 %
70
30
22
20
20
18
10
0
06 /02
06 /05
06 /08
06 /11
06 /14
16
06/02
収穫時期
06/08
06/11
06/14
06/11
06/14
収穫時期
0
抜き粒(殻を除去した種子)は黒化始め
-1
から緑色が薄くなっていく。刈り遅れる
-2
と麺色 は低下する。図 のa*はマイナス
a*
ソバの麺は緑色が良質とされる。丸
方向が緑、プラス方向が赤を示す。
06/05
-3
-4
-5
06/02
06/05
06/08
収穫時期
粒大は黒化が進むと揃いがよくなる。黒化始めではCV29.0%、黒化率7割ではCV1
6.1%である。
粒大の度数分布(黒化始)
粒大の度数分布(黒化率7割)
30.0
25.0
25.0
20.0
度数%
度数%
20.0
15.0
15.0
10.0
10.0
5.0
5.0
0.0
0.0
粒径mm
粒径mm
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収穫適期は収量と食味を重視すると、黒化率8割、麺色を重視するとそれより
早い時期になる。
(11)収穫作業
春まき栽培では成熟時に茎葉が黄化しないので、茎葉の水分が多い。コンバイ
ン収穫では、茎葉・種子の水分が多いと損失が多くなる。晴天日に作業を行う。
ロール式受け網
コンバインの脱穀部分の受け網は茎葉が詰まりやすく、選別精度が低下しやす
い。受け網部分はロール式かソバ用格子式が詰まりにくい。
収穫時期は梅雨である。収穫作業を数日後に予定していても、降雨が予想され
るときは早めに収穫を実施する。春まき栽培では種子の黒化が非常に速いので、
すぐに黒化率が9割になる。春のいぶきでも成熟期(黒化率8割)を過ぎると穂発
芽しやすい。
次年の播種用種子は圃場の中心部分から採種する。圃場の周縁部分は異な
る品種の花粉によって交雑している可能性がある。
(12)乾燥作業
春まき栽培では茎葉だけでなく、種子の水分も多い状態で収穫される。このた
- 15 -
め、乾燥機で乾燥を仕上げるのが一般的である。
平型静置乾燥機は種子が移動しない
ので乾燥 ムラが生じやすい。乾燥途中
での反転を行う。
循環式乾燥機は種子が循環するので
乾燥ムラがなく、大量の種子を乾燥でき
る。最近 の循 環式乾 燥機はプログラム
で毎時の乾燥水分量を決めて作業がで
循環式乾燥機
きる。
どちらの乾燥機も乾燥温度が高いほど乾燥時間は短い。しかし、高温ほど香り
成分が低下する。乾燥中の穀物温度は30度以下がよいとされている。乾燥温度
は40度以上では行わない。
最終的に種子水分15%に仕上げる。水分が多すぎるとカビが発生しすい。過乾
燥では粒の緑色が薄くなり、容積重が低下する。
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*ソバ春まき栽培に関する一般的な問い合わせは
九州沖縄農業研究センター・広報普及室
〒861-1192
熊本県合志市須屋2421
096-242-7780または7530
*ソバ春まき栽培の栽培の問い合わせは
九州沖縄農業研究センター・資源作物育種基盤グループ
代表 096-242-1150
*ソバ春まき栽培の農作業の問い合わせは
九州沖縄農業研究センター・農機研究グループ
代表 0942-52-3101
作成:九州沖縄農業研究センター
手塚隆久
土屋史紀
原
貴洋
平成26年5月作成
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