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第 2 回 OSS 関連の訴訟例、OSS と特 1

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第 2 回 OSS 関連の訴訟例、OSS と特 1
連載企画:オープンソースソフトウェアを利用した製品開発の現状と課題
株式会社オージス総研
ソリューション開発本部
吉井雅人
『第 2 回 OSS 関連の訴訟例、OSS と特許を巡る議論』
※ 本稿は、財団法人経済産業調査会発行 「特許ニュース」 No.12961 (2011 年 4 月 7 日発行)への寄稿記事です。
1. はじめに
第 1 回では『OSS 利用実態とソフトウェア開発者にとっての著作権上の課題』と題して、OSS
が世の中で必要とされている背景、OSS の概要・歴史やそのメリットなどを紹介した。その一方
で、OSS にも不安要素が潜んでいることを説明した。本稿では『OSS 関連の訴訟例、OSS と特
許を巡る議論』と題して、OSS の不安要素の内、OSS ライセンス違反のリスクを中心とした視点
で OSS を利用し製品化している企業の現状や課題などを解説する。
2. OSS ライセンス違反
OSS ライセンス違反のニュースを目にすることがここ数年で増えている。つい先日(2011 年 3
月 10 日)も OpenLogic 社の調査で、モバイルアプリケーション(iOS および Android 用)の実に
71%がライセンスに違反しているとの報道がされたばかりである。ではどのようにして OSS ライセ
ンス違反が起こるのだろうか。まず一つ目の理由として考えられるのは、OSS ライセンスを利用
する際に、条件があることを利用者が正しく理解していないということである。OSS は現在のソフ
トウェア開発には不可欠なものとなり、幅広く利用されているが、何の制約もなく自由に使えると
誤解している利用者もいまだ多い。その結果、OSS をソフトウェアに組み込んで利用しながらラ
イセンス条件を遵守せず、結果としてライセンス違反となるケースがある。
ライセンス違反が起こるもう一つの理由は、OSS ライセンスの記述が難解ということである。
OSS ライセンスは、2011 年 3 月現在、OSI(Open Source Initiative)で認定されているものだけで
も 70 種類以上ある。これらは OSS の利用者がソフトウェアを利用・複製・改変・再頒布する際の
条件を定めたものである。以下の 3 つの条件は多くのライセンスで共通して見られる許諾条件
である。
著作権表示の保持
再頒布の条件
免責事項
まず「著作権表示の保持」であるが、OSS の著作権者が OSS 利用者に対して、著作権表示
を消さずに保持することを求めるものである。「免責事項」は損害賠償責任の否認である。これ
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ら 2 点は、ほとんど決まり文句に近く、多くのライセンスで同じような文言が使用されている。OSS
を利用しそれを組み込んでソフトウェアを開発する立場の者にとって悩ましいのが、「再頒布の
条件」である。ライセンスによって再頒布の条件は様々であり、しかもその記述は非常に難解な
ものがある。OSS の利用者はこの再頒布の条件に特に注意する必要があるが、法律の専門家
でも断定できないような記述があり、OSS の利用者を悩ませている。このようにライセンスの記述
が難解なために正しく利用条件を把握できず、見切りでソフトウェアに組み込んでしまいライセ
ンス違反を起こすというケースがあると考えられる。
このケースは OSS ライセンス違反が起こる一つの例であるが、違反が明らかになった場合に
は法的手段で対抗するという事例が近年欧米では目立っている。
3. 係争事例
OSS ライセンス違反を起こしたとしても、それが全て係争に発展する訳ではない。係争に発
展するのは、数あるライセンス違反の内のほんの氷山の一角である。ここでは OSS ライセンス違
反が実際に係争となった事例と、OSS と知的財産権を巡る訴訟を紹介する。OSS ライセンスを
めぐる係争数は国別では米国が最も多く 10 数件、ドイツ、フランスでそれぞれ数件、イスラエル
でも 1 件確認されている。日本では法廷での争いとなったケースは無いようだが、ライセンス違
反が発覚した例が複数件ある。これら日本の例は、日本の企業にいまだ大きな影響を与えて
いるため、第 4 章で考察する。係争事例を紹介するに当たり、その内容や特徴から以下の 3 種
類に分類した。
(1) OSS と知的財産権をめぐる係争
事例 1
(2) OSS ライセンスの本質が争点となった係争
事例 2、事例 3
(3) 利用者が OSS ライセンスに違反しており、指摘を受けたが十分に対応しなかった係争
事例 4、事例 5、事例 6
実際の係争事例を紹介する前に、係争に登場するソフトウェアや団体について説明しておこ
う。
FSF(Free Software Foundation)
FSF とは、フリーソフトウェアの開発と普及のため、1985 年に Richard Stallman 氏が設立した
非営利団体である。「フリーソフトウェア財団」と訳されることが多い。FSF のホームページ
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(http://www.fsf.org/)によれば「世界中でコンピュータのユーザの自由を促進しフリーソフトウェ
アユーザの権利を守るというミッションを掲げている非営利団体」である。FSF の GNU プロジェ
クトからはライセンスの GPL(General Public License)をはじめ、多くの開発プロジェクトで利用さ
れている高品質なソフトウェアや概念が数多く生み出されている。
SFLC(The Software Freedom Law Center)
SFLC(http://www.softwarefreedom.org/)とは、Richard Stallman 氏らとともに FSF の GPL
version3 を起草した Eben Moglen 氏を代表者とし、オープンソースソフトウェアを非営利目的で
開発する者のために、法的代理人や関連するサービスを提供する組織である。特に BusyBox
の代理訴訟で有名になった。
BusyBox
BusyBox(http://www.busybox.net/)とは別名「組み込み Linux の十徳ナイフ」とも呼ばれるよ
うに、数百の UNIX のコマンド機能を単一の実行ファイルで実現できるオープンソースのソフトウ
ェアである。組み込み機器では記憶装置の容量に制限がある。そのため多くの機能を一つの
実行ファイルで実現でき、使用容量を大幅に削減できる BusyBox は、組み込み Linux 開発で
はデファクトスタンダードとなっている。これだけ高品質なソフトウェアを企業が利用しない訳が
なく、現在ではテレビ、オーディオプレイヤー、ルータ、携帯電話等、挙げればきりがないほど
様々な機器に搭載されている。この BusyBox は GPL version2 で公開されているが、ライセンス
を遵守しない企業が後を絶たなかったため、そのような企業を過去に BusyBox プロジェクトのホ
ー ム ペ ー ジ 上 に て 名 指 し で 非 難 し て い た 経 緯 が あ る ( 恥 の 殿 堂
http://www.busybox.net/shame.html)。このような主張を SFLC が代理となって引き取り、場を
法廷に移したため、以降の事例で紹介するように一気に多数の大企業が訴えられるという結果
になった。
(1) OSS と知的財産権をめぐる係争
事例 1
係争内容
2003 年 3 月 Linux が SCO 社の UNIX コードを不正に組み込んでいるとし
て、SCO 社が IBM を提訴。その後、他の Linux のディストリビュータやエン
ドユーザなどに対してもライセンス料の支払いを要求。
結果
2010 年 6 月米国ユタ連邦地裁が出した判決は「米 Novell が UNIX に関す
る知的財産権(著作権、特許権)を有している」。これによって SCO が最初
に起こした IBM への訴訟や、Linux ディストリビュータ、エンドユーザへの主
張も無効になった。
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ポイント
SCO は、UNIX の知的財産権(著作権、特許権)は同社が保有する
とし、UNIX のソースコードが OSS である Linux に流用されたと主張
した。これにより Linux ユーザは Linux を OSS として自由に使うこ
とができなくなる可能性が生じた。
UNIX の知的財産権(著作権、特許権)を SCO と Novell のどちらが
保有するのかが争点の 1 つとなった。
SCO 社や IBM 社だけではなく Microsoft 社や Sun Microsystems
社といった Linux と敵対する企業の思惑もこの訴訟では見え隠れ
した。
(2) OSS ライセンスの本質が争点となった係争
事例 2
係争内容
2001 年 6 月 MySQL AB が NuSphere を提訴
結果
2002 年 11 月和解にて決着。
GPL が法的拘束力を持つかどうかが初めて審理された。
ポイント
間接的ではあるが GPL の法的拘束力が認められた。
係争内容
2006 年 3 月 Daniel Wallace 氏が、GPL は反トラスト法に違反しているとして
事例 3
FSF を提訴。
結果
2002 年 11 月和解にて決着。
GPL は自由競争を促進しており、反トラスト法には違反していないとの判
決を下された。
ポイント
反トラスト法には違反していない点が認められた。
(3)利用者が OSS ライセンスに違反しており、指摘を受けたが十分に対応しなかった係争
事例 4
係争内容
2007 年 9 月から 12 月にかけて BusyBox の開発者が GPL 違反で複数の
企業を提訴。
結果
2007 年 10 月から 2008 年 3 月にかけて和解が成立。
和解条件は以下
ソースコードの公開
OSS 遵守責任者の任命
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和解金の支払い
ポイント
SFLC が原告の代理人。
事例 5
係争内容
2008 年 12 月 FSF が GPL 違反で Cisco 傘下の Linksys を提訴
結果
2009 年 5 月和解。
和解条件は以下
ソースコードの公開
OSS 遵守責任者の任命
和解金の支払い
ポイント
FSF が GPL 違反で提訴した初の係争。
係争内容
2009 年 12 月 BusyBox の開発者が GPL 違反で韓国 Samsung、米
事例 6
Westinghouse、JVC など 14 社を提訴
結果
2010 年 8 月 Westinghouse が欠席裁判で敗訴。
以下を命じられる。
製品の販売停止
損害賠償金(9 万ドル)
訴訟費用の支払い(約 4 万 7000 ドル)
ポイント
米国の司法が GPL 違反を理由に初めて該当製品の販売/配布を禁じた。
ここまで係争事例をご覧いただいたが、どのような感想を持たれただろうか?まず、係争の
内容が段階を追って変化していることに、お気づきいただけたかと思う。SCO 社が IBM 社を
提訴した事例 1 は特許権や著作権など、知的財産権の帰属が争点となった点で他の係争と
は性質が異なる。この訴訟は SCO 社にとって無謀な提訴という見方が当初から多かった。し
かしそれだけ Linux を始めとする OSS の市場が企業にとって魅力的なものであったということ
を示している。この訴訟では Linux と敵対していた Microsoft 社や Sun Microsystems 社が
SCO の訴訟を支援していたという情報も飛び交ったが真偽は定かではない。また、この訴訟
を教訓として、SCO 社のような第三者からの知的財産権に対してのクレームから OSS コミュニ
ティの権利と利益を保護する目的で、SFLC が設立されたとも言われている。
続いて OSS ライセンスの本質が争点となった事例 2、事例 3 を見てみよう。これらの係争の
結果として、GPL が法的拘束力を持つこと、反トラスト法には違反していないことが認められ
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た。GPL についての法的な有効性が、法廷の場で確認されたことは以降の訴訟に大きな影
響を与えたと考えられる。
最後に、OSS ライセンスに違反している OSS 利用者が指摘を受けたが、十分に対応しな
かったケースを見てみよう。事例 4 から事例 6 までは、ほぼすべて和解という結果ではあるが
SFLC、FSF など原告側の実質的な勝訴に終わっていることがわかる。和解の中では賠償金
や OSS 遵守責任者の任命などが具体的に提示されており、より懲罰的、再発防止的な条件
になっている。
最近の傾向としては FSF、SFLC などフリーソフトウェアを推進する団体が、ライセンス違反
をしている企業を見つけ出し訴える、という構図が見える。今後ますますこのような傾向が強
まっていくことが予想される。
4. 日本の事例
次に場所を変えて日本の事例を見てみよう。日本では OSS ライセンス違反が係争に発展
した事例は未だかつて無いようである。しかし、日本の企業に大きな影響を与え続けている
事例が 2 件ある。
ルータ製品での GPL 違反発覚
ルータ製品のファームウェアに Linux カーネルなど GPL のソフトウェアを利用・改変してい
たが、ソースコードを公開していない事がユーザの指摘により発覚した。当初メーカ側は
GPL 違反についてソースを公開する必要性がないことをユーザに回答していたが、後に方
針を転換しファームウェアのソースコードを希望者に送付する見解を発表した。
ゲームソフトに GPL 違反発覚
あるゲームソフトの熱心なユーザがテキスチャを解析しようとし、逆アセンブルしたところ
GPL のライブラリを発見した。ゲームメーカ側は「GPL 違反疑惑そのものを認識していないた
め現在確認中」とコメントを発表したが、その後、このゲームの生産終了、廃盤を決定した。
これらの結果から我々は何を学べばよいのだろうか。先にも述べたが、OSS ライセンスに
関する理解の不足が OSS ラインセンス違反を引き起こす原因の一つであることは間違いな
い。また、日本の 2 つのケースが、ともにハードウェアを媒体として配布される製品であったこ
とも注目すべき点であろう。実際には両方のケースでリバースエンジニアリング等によってハ
ードウェアの中のソフトウェアの内部が解析された。
企業にとってダメージを与えるのは対象製品の発売停止による実害だけではない。最も
企業にとって脅威となるのは OSS ライセンス違反がメディアに取り上げられることによる影響
である。ネットワークを介して OSS ライセンス違反を起こしたという情報は、あっという間に広
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がり、それに対する批判は苛烈を極める。そのため企業イメージの低下を免れることはでき
ない。さらに OSS ライセンス違反に対して発売停止等の対応をとったとしても、OSS ライセン
ス違反が発覚したという事実はホームページ等に残り続けるのである。
5. 日本の企業の現状
筆者は、これまで多くの企業の担当者から OSS ライセンスの管理についての悩みをヒアリ
ングしてきた。OSS ライセンスの管理が必要と考えている企業の多くは過去のライセンス違反
事例を教訓とし、自社でも同様な事例が発生する事を危惧している。このような係争やライセ
ンス違反の報道の当事者にはなりたくないというのだ。このような理由により、ライセンスを最
も厳しく解釈した上、なおかつそれに抵触しない条件であれば OSS を利用可能としている企
業が多い。また、伝播性の強いライセンスは利用しないというポリシーを設定している企業も
少なくない。リスクの低減を第一に考えて OSS を利用する傾向があるようだ。
日本の企業を OSS に対して消極的にさせているもう一つの理由は、ソースコード公開によ
って自社の技術・ノウハウが流出することへの危惧である。ソースコードには企業のノウハウ
が蓄積されており、これには特許権などの知的財産も含まれる。ソースコードの公開によって
これらが外部に流出してしまうと、強みが失われると企業は考えるため、伝播性の強いライセ
ンスを利用することに対しては慎重になる傾向がある。
6. OSS ライセンス違反が発覚した場合
もしあなたの会社で OSS ライセンス違反が発覚したとしよう。GPL のソースコードを利用し
ているにもかかわらず、ソースコードを公開するなど適切な対応を取っていないことが公にな
ったのだ。その場合はどのように対処すべきなのだろうか。
日本の企業に見本とすべき対応例がある。ある企業では GPL で公開されていた OSS のソ
ースコードを Linux 向けの商用プリンタドライバに流用してバイナリを無償頒布した。ところが
そのバイナリが解析され、GPL のソースコードが流用されているにも関わらず、適切に公開さ
れていないことが判明したのだ。
ここまではこれまで発覚した例とほぼ同じである。この企業の対応が素晴らしかったのは、
ここからである。コミュニティから指摘を受けた同社は、すぐに自社のウェブサイトで謝罪した。
さらに当該ソフトウェアを差し替え、ライセンスを修正して公開したのである。
この例から、以下のようなことが言える。まず、ライセンス違反をしたとしてもいきなり提訴さ
れることはないということである。FSF であれ SFLC であれ、提訴する前にはまず警告のメー
ルを送付する。その段階できちんと対応しさえすれば、提訴されることもないのである。またこ
の企業はライセンスリテラシーが非常に高かったため、素早く適切な対応を取り、その結果
OSS コミュニティからも逆に高い評価を受けるようになった。結果として最も企業が恐れる企
業イメージの低下を防ぐことができた上に、ライセンスリテラシーの高さを評価されることにな
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ったのである。
もし提訴を受けた場合、訴訟費用はどの程度になるのだろうか。米国の大企業間の OSS
訴訟での弁護士費用は月$300,000 が相場であるとの情報がある。100 円/$換算で一ヶ月当
たり 3000 万円である。また先に見た事例 6 での訴訟で証拠開示要求に応じなかった
Westinghouse 社に対しては、欠席裁判となった結果、BusyBox を搭載した製品の販売を禁
じるという判決が下された上に、9 万ドルの損害賠償金および約 4 万 7000 ドルの訴訟費用の
支払いも命じられている。だが賠償金よりも、企業イメージの低下によるダメージのほうが企
業にとっては大きい事は言うまでもない。
7. 企業が採るべき方針
FSF や SFLC は今後さらにライセンス条件が遵守されているかどうか目を光らせるだろう。
広く企業で使われている OSS は BusyBox 以外にも多数あるため、第 2 の BusyBox が現れ、
ライセンス違反を起こしている多くの企業が提訴されることも予想される。では、これらのリス
クに対して企業はどのように対応すべきだろうか。以下の 2 つの対応策を提案したい。
知的財産コンプライアンスの強化
OSS の利用ポリシーの策定と管理
まず知的財産コンプライアンスの強化である。ライセンス違反の原因の多くは、OSS ライセ
ンスを正しく理解していないことである。OSS は普及しているが、その普及に対応できるだけ
の OSS ライセンスのリテラシーをすべての利用者が持っているとはまだ言えない。コンパイル
しさえすれば、ハードウェアに格納しさえすれば、ソフトウェアの中身は誰にもわからないとい
う不用意な対応は、ライセンス違反を招く可能性がある。どのような形式で出荷する場合でも
適切なコンプライアンス意識を持って対応することが必要である。
二点目に提案したいのは、OSS の利用ポリシーの策定である。OSS 利用ポリシーとは、ソ
フトウェアの開発において、利用可能な OSS と、利用してはいけない OSS をポリシーとして定
めたものである。OSS はますます高品質となり、利用も広がっている。もはや OSS なしのソフト
ウェア開発はありえない状況である。このような状況の中、OSS を全く利用しないというポリシ
ーでは、OSS ライセンス違反の危険はなくなるものの、OSS からの利益は享受することはでき
ない。その結果、開発コストが増大し競合製品に負ける、または収益が減少するといったリス
クが予想される。OSS はソースコードを取得、変更、再頒布できる点に特徴がある。適切に利
用すれば企業にとっても利益の大きいものなのである。そのためには、OSS 利用ポリシーを
全社あるいはプロジェクト単位で策定する必要がある。また、このポリシーは策定されるだけ
ではなく、実際の開発の現場で遵守されているかどうか、適切に管理する必要もあるだろう。
本稿では、OSS ライセンス違反のリスクを中心とした視点で、OSS を利用し製品化している
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企業の現状や課題などについて説明した。次号では、『主要 OSS ライセンスと留意すべき事
柄』と題して、主要な OSS ライセンスを分類しそれぞれの特徴について詳しく解説し、その上
で留意すべき点についても述べる。
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